粉体塗型剤塗布装置
【課題】閉じられた状態の金型の内型面で囲まれたキャビティが屈曲していても、その内型面に対して、粉体塗型剤を吹き込み、優れた密着性の、均一かつ膜強度の高い塗膜を形成すること。
【解決手段】金型内の屈曲したキャビティ形状に沿って、塗型ノズル12を支える円筒状中空フレキシブル部材からなるチューブ17をワイヤ43、44によって屈曲させて、塗型ノズル12が金型の内型面に当たらないように、塗型ノズル12をキャビティ内に進行させる。この塗型ノズル12の進行中に、粉体塗型剤60を塗型ノズル12から回転中のデフレクタ11に吐出し、デフレクタ11によって偏向された粉体塗型剤60を内型面に塗布する。
【解決手段】金型内の屈曲したキャビティ形状に沿って、塗型ノズル12を支える円筒状中空フレキシブル部材からなるチューブ17をワイヤ43、44によって屈曲させて、塗型ノズル12が金型の内型面に当たらないように、塗型ノズル12をキャビティ内に進行させる。この塗型ノズル12の進行中に、粉体塗型剤60を塗型ノズル12から回転中のデフレクタ11に吐出し、デフレクタ11によって偏向された粉体塗型剤60を内型面に塗布する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中子造型用金型(特に、シェル中子造型用金型)を閉じた状態のまま、同金型の内型面に、粉体塗型剤をKY法によって塗布する粉体塗型剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、中子造型用金型を閉じた状態のまま、ガン(本明細書では、一般的なガン(銃)の形態に特に限ることなく、塗型剤を吐出することが可能なノズルを含む吐出手段を広義に指す。以下同様。)の粉体塗型剤の吐出先にデフレクタを設けたノズルから同金型の内型面に対して略垂直に粉体塗型剤を吹き付けることで好適な塗膜が得られるKY法による塗布について開示する。(「KY法」は、スプレー塗型とシェルモールド造型法とを組み合わせて成る、(株)小松製作所により提示された方法である。[特許文献2]参照。)
【0003】
しかし、特許文献1(特に第5図参照)に示す方法によれば、内型面によって形成されるキャビティが一箇所以上、屈曲しているような複雑構造を持つ内型の場合、粉体塗型剤が、塗布ノズルから内型面に対して略垂直に吹き付けることが難しくなり、優れた密着性の均一な塗膜が内型面に形成されなかった。
そこで、中子製造現場では、金型を開いた状態とし、金型の内型面の双方に対し略垂直に、粉体塗型剤を手動でガンによって吹き付け、中子を造型せざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−64452号公報
【特許文献2】特公昭51−43813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、優れた密着性の均一な塗膜が得られ、かつ、その膜強度も高くなり、さらには中子造型作業の省力化及び環境安全化も図れる等、多くの有益な効果が得られるため、金型の内型面の形状が複雑構造であっても、金型を閉じた状態で、内型面に対して略垂直に自動でガンから粉体塗型剤を吹き込むようにしたいとの要請が依然としてあった。
【0006】
そこで、本発明は、中子造型用金型内の内型面の形状が、金型内のキャビティが一箇所以上屈曲している複雑なものであっても、金型を閉じた状態で、金型の内型面全体に優れた密着性の、均一かつ膜強度の高い塗膜を形成することができる粉体塗型剤塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の態様)
以下、発明の態様を示し、それらについて説明する。なお、(1)項、(2)項、(3)項、(4)項及び(5)項が、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4及び請求項5に対応する。
【0008】
(1) 閉じられた状態の中子造型用金型の内型面に、ガンからの粉体塗型剤を塗布する粉体塗型剤塗布装置であって、前記ガンからの前記粉体塗型剤を吐出することができる粉体塗型剤供給用チューブと、該粉体塗型剤供給用チューブの周囲に配置され、かつ三次元に屈曲可能な円筒状中空フレキシブル部材とを含む塗型ノズルと、前記円筒状中空フレキシブル部材の屈曲すべき箇所に、第1のワイヤの末端を固定し、その屈曲箇所の該円筒状中空フレキシブル部材の径方向の対向部のいずれかの箇所に、第2のワイヤの末端を固定し、第1のワイヤの張力を維持しながら、第2のワイヤを引っ張ることによって、前記塗型ノズルを屈曲することができるワイヤ駆動部を含む屈曲手段と、前記塗型ノズルの先端に配置され、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの開口から吐出した前記粉体塗型剤の吐出方向を、前記内型の面に対して略垂直に前記粉体塗型剤が当たるように偏向かつ回転可能なデフレクタとを備えていることを特徴とする粉体塗型剤塗布装置。
【0009】
本項によれば、中子造型用金型を閉じた状態で、金型内に形成されるキャビティが屈曲している複雑構造であっても、その屈曲したキャビティに沿って、屈曲手段によって、塗型ノズルを屈曲させることができ、かつ、塗型ノズルの先端部に設けられた回転可能なデフレクタから、粉体塗型剤をキャビティ面(内型面)に略垂直に吹き込むことができる。
これにより、従来は中子造型用金型を開いた状態で、手動で粉体塗型剤をキャビティ面(内型面)に略垂直に吹き込んでいた作業が省力化され、密着性の優れた均一性のある、そして膜強度の高い中子造型用塗膜を形成することができる。このことは、ひいては、造型された中子に金属を鋳込んで作製される鋳造品の表面粗さも小さく抑えることを可能とする。
【0010】
(2) 前記円筒状中空フレキシブル部材の屈曲すべき箇所に、第1のワイヤの末端を固定し、その屈曲箇所の、前記円筒状中空フレキシブル部材の径方向の対向部であって粉体塗型剤が供給される下流のいずれかの箇所に、第2のワイヤの末端を固定することを特徴とする(1)に記載の粉体塗型剤塗布装置。
本項によれば、前記円筒状中空フレキシブル部材が、第1のワイヤの末端を固定し、その屈曲箇所の、前記円筒状中空フレキシブル部材の径方向の対向部であって粉体塗型剤が供給される下流のいずれかの箇所に、第2のワイヤの末端を固定しているため、両ワイヤを、後述のエアシリンダ又はモータ電動機のような動力手段を用いて、適宜引っ張ることによって、当該塗型ノズルを、所望の位置において任意の角度で屈曲させることができる。
【0011】
(3) 前記デフレクタは、円錐体であり、円錐形状の対称軸が、モータ軸に結合されており、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸に略一致するように配置されていることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の粉体塗型剤塗布装置。
本項は、(1)項又は(2)項のデフレクタ構造を例示する。当該デフレクタは円錐体であり、さらに好適には正円錐体である。回転中、偏心すると、回転動作が不安定になり、粉体塗型剤の吐出方向も安定しないからである。また、正円錐体にすると、回転中、風圧を受けにくく、無用な負荷を受けることがないためである。
【0012】
(4) 前記デフレクタは、円錐体形状であり、円錐体形状の対称軸が、モータ軸に結合されており、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸に略一致するように配置され、かつ、前記円錐体形状の底面が前記中心軸を対称軸とした半ドーナツ状曲面を形成していることを特徴とする(1)又は(2)に記載の粉体塗型剤塗布装置。
【0013】
本項は、(1)項又は(2)項の他のデフレクタ構造を例示する。当該デフレクタは円錐体形状の底面が前記中心軸を対称軸とした半ドーナツ状曲面を形成している。そのため、対称軸(回転軸)に対して垂直方向に粉体塗型剤が吐出するのに対し、該垂直方向から曲がるようにして粉体塗型剤を内型面に対して吹き込むことができる。内型面が一定角度のジグザグ状に形成されているような複雑な面の場合に有効である。
【0014】
(5) 前記デフレクタは、回転軸付きプロペラ体であり、該回転軸が、モータ軸に結合されており、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸に略一致するように配置されていることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の粉体塗型剤塗布装置。
【0015】
本項は、(1)項又は(2)項の他のデフレクタ構造を例示する。当該デフレクタは回転軸付きプロペラ体である。そのため、粉体塗型剤の吐出対象が、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸の前方にある場合に好適なものである。デフレクタが回転軸付きプロペラ体であると、粉体塗型剤を、同中心軸に沿った方向を中心として広がるように(輻輳的に)、内型面に吹き込むことができるからである。
なお、当該デフレクタは、(3)項、(4)項又は(5)項のものに限られず、当業者によって適宜改変が可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、閉じられた状態の金型内のキャビティが屈曲していても、そのキャビティ面(内型面)に対して粉体塗型剤を吹き込むことができ、もって、優れた密着性の均一かつ膜強度が高い塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る粉体塗型剤塗布装置のシステムの全体を説明するための概略図である。
【図2】デフレクタ付きノズル機構に含まれる蛇腹状チューブを説明する図である。
【図3】図2(c)の蛇腹状チューブに、テフロン(登録商標)製スリーブを被せた図である。
【図4】金型内のキャビティが屈曲している場合であっても、本発明に係る粉体塗型剤塗布装置が好適に使用されることを示す図である。
【図5】図4の一部の鳥瞰図であって、粉体塗型剤が屈曲先の内型面に塗布される様子を示す図である。
【図6】(a)は比較例によって造型された中子の写真、(b)は実施例によって造型された中子を写した写真である。
【図7】(a)は比較例によって造型された中子に金属を鋳込んで得られた鋳物品の写真、(b)は実施例によって造型された中子に金属を鋳込んで得られた鋳物品の写真である。
【図8】(a)は、比較例によって造型された中子に金属を鋳込んで得られた鋳物品と、この従来法の鋳物品をホーニング加工した鋳物品と、実施例によって造型された中子に金属を鋳込んで得られた鋳物品との面粗度を比較するグラフである。(b)は、同比較例と、同実施例の鋳物品のそれぞれに流体を流したときの流量係数を示すグラフである。
【図9】正円錐体のデフレクタと粉体塗型剤の吐出方向を示す断面図である。
【図10】正円錐体の底面に半ドーナツ状の凹部が形成されたデフレクタと粉体塗型剤の吐出方向を示す断面図である。
【図11】プロペラ体のデフレクタと粉体塗型剤の吐出方向を示す断面図である(風が前方に吹くようにプロペラが回転する場合)。
【図12】プロペラ体のデフレクタと粉体塗型剤の吐出方向を示す断面図である(図11の場合とプロペラの回転を反対向きにした場合)。
【図13】塗型ノズルに、クーラントライナーを適用した場合の変形例を示す概略図である。
【図14】塗型ノズル(特に先端部)に、スプリング部材を適用した場合の変形例を示す概略立面図である。
【図15】塗型ノズルに、スプリング部材を内挿した可撓性チューブを適用した場合の変形例を示す概略立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1を参照しながら、本発明に係る粉体塗型剤塗布装置の好適実施形態(以下「本実施形態」という)を、塗布方式が静電塗布(静電塗装)の場合を代表例として説明する。ただし、本実施形態は、静電塗布に限られず、スプレー塗布も適用が可能である。例えば、スプレー塗布を採用した場合には、下記の静電式粉体塗型供給機構50の代わりに、空気圧による吹き付け塗装機構を具備させればよく、係る場合には静電気を付与する装置や手段を要しない。
【0019】
図1は、粉体塗型剤塗布装置100のシステム全体の概略を示す。図1に示されるように、粉体塗型剤塗布装置100のシステムは、デフレクタ付きノズル機構10、ノズル先端回転機構20、リニア駆動機構30、塗型ノズル屈曲機構40、及び静電式粉体塗型供給機構50を具備する。
デフレクタ付きノズル機構10は、モータ21によって駆動される回転軸13に一体結合されたデフレクタ11と、1箇所以上で屈曲可能な塗型ノズル12とを含む。デフレクタ11は、好適には正円錐体であり、回転軸13と正円錐体の中心軸とは同一軸上にある。
【0020】
ノズル先端回転機構20は、モータ21と、このモータ21の回転軸に配置されたカップリング部材23を介して、チューブ内でモータ21の回転動作を伝達できるワイヤ23とを備えている。このワイヤ23は、上記の塗型ノズル12の中央の開口を通って、デフレクタ11の回転軸13と結合している。
【0021】
リニア駆動機構30は、静電ガン51の、粉体塗型剤の吐出部51Aの延長部である支持体51Sの延長線に沿って、矢印32A、32Bの方向に塗型ノズル12をリニア駆動できるエアシリンダユニット31を含む。また、リニア駆動機構30によって、図4で示す金型60、61のキャビティ58に塗型ノズル12を挿入する角度を、0度から45度の範囲で可変でき、また挿入位置を、金型60、61の分割面59に対して平行に移動させながら調整することもできる。さらに、金型60、61のキャビティ58の形状により、挿入長さの調整も可能である。以上の駆動・調整は、エアシリンダに加えられる圧縮エアによって行われる。この圧縮エアの量(若しくはエア圧)を調整することによって、塗型ノズル12の移動速度(駆動速度)を可変することもできる。
【0022】
塗型ノズル屈曲機構40は、2個のエアシリンダ41、42を含み、エアシリンダ41、42の駆動部には、2本のワイヤ43、44の端部が固定されている。ワイヤ43、44は、チューブ状の塗型ノズル12の内側に隣接して延在する蛇腹状チューブ17(上記(1)項の「粉体塗型剤供給用チューブの周囲に配置され、かつ、三次元に屈曲可能な円筒状中空フレキシブル部材」の好適部材の一態様)に沿って形成された溝であって、ワイヤがスナップ嵌め可能な溝を通り、その先端が後述のスリット(図2の参照符号15)に固定されている。本実施形態は、屈曲箇所が1つの場合を例示するが、屈曲箇所が2つ以上の場合には、さらに、2個のエアシリンダと2本のワイヤとをワンセット単位で追加するようにする。
なお、本実施形態では、粉塵が蛇腹状チューブ17に付着して屈曲がスムーズに行われなくなることを防ぐために、又は、ワイヤが溝から外れることを防止するために、スリーブ18を設けている(但し屈曲動作自体にはスリーブ18は寄与しないため必須ではない)。
【0023】
静電式粉体塗型供給機構50は、静電ガン51と、エア圧制御部52と、粉体塗型剤収納部53と、電圧制御部54とを含む。静電ガン51と、エア圧制御部52及び粉体塗型剤収納部53とは、チューブ部材55、56によって接続されており、さらに、静電ガン51と、電圧制御部54とは、リード線(導線)57によって通電可能に接続されている。電圧制御部54は、静電ガン51から吐出する粉体塗型剤に電荷を与えるための印加電圧を可変・制御する。
【0024】
次に、粉体塗型剤塗布装置100のシステムが、図4に示された一対の金型60、61の内型の面に粉体塗型剤を静電塗布し、KY法による中子造型を行うときの、同システムの作用を説明する。
【0025】
まず、一対の金型60、61(参照番号59は両金型の分割面を指す)を閉じ、金型60、61の間に造型すべき中子の外形に対応した内型の面又はキャビティを形成する。そして、粉体塗型剤が正に、金型が負に帯電するように電圧制御部54から電圧を供給する。
次に、図1の矢印32Aの向きに、リニア駆動機構30に含まれるエアシリンダ31を駆動させて、塗型ノズル12を真直ぐにしたまま、塗型ノズル12を、図4のキャビティ58の直進部12Lに沿って進行させながら、粉体塗型剤の吹き込みを始動する。なお、粉体塗型剤の吹き込み前に、金型60、61の内型面に離型剤をあらかじめ塗布しておくようにしてもよい。
【0026】
図4で図示されたようなキャビティ58は、先端付近(奥付近)で屈曲箇所12Bがあり、このまま進行すると、デフレクタ11がキャビティ58面と衝突してしまう。これを防ぐため、塗型ノズル屈曲機構40のエアシリンダ41、42のそれぞれに接続されたワイヤ43、44を、エアシリンダ41、42により引っ張る遠隔操作を行い、先端部分の屈曲したキャビティ58の形状に沿うように、塗型ノズル12を屈曲させる。このとき、さらにデフレクタ11が先に進行しキャビティ58面と衝突することを防ぐために、エアシリンダ41、42に予めリミッタを設定することが好ましい。
この塗型ノズル12の屈曲動作に関しては、蛇腹状チューブ17の構造・動作を説明の中心として後述する。
【0027】
さらに、電圧制御部57によって正に帯電され、かつ、エア圧制御部52によってエア圧によって加速された粉体塗型剤70が静電ガン51から符号19の方向に向かうように、デフレクタ11の面に向けて吐出する。それと同時に、ノズル先端回転機構20のモータ21を回転させてデフレクタ11を回転させる。これにより、図5に示すように、粉体塗型剤を、デフレクタ11の回転軸13に対して垂直方向に吐出することができ、内型面62、63に対して垂直に粉体塗型剤を吹き込むことができる。その結果、本実施形態によれば、図4のような屈曲した箇所12Bの奥の内型面62、63に対しても、粉体塗型剤を優れた密着性で均一にその膜強度も高くなるように塗布することができる。
なお、デフレクタ11の回転軸の延長線が突き当たる内型面の正面部分58Fは、キャビティ面としては使用せず、一般に、いわゆる「巾木」用に使用され、中子を金型にセットするときの座部となる。よって、正面部分58Fに対する塗型剤の塗膜品質は問われないし、塗型剤が正面部分58Fに全く塗布されなくてもよい。仮に、当該塗膜品質が問われるときは、ディフレクタ11の形状や型構造を改変して対応することができる。また、内型面の正面部分58F(巾木に相当する部分)には、図示しないが、塗型剤の吹き付けの際(塗型剤の塗布中)、キャビティ内で塗型剤が舞い上がるのを抑制すべく、噴霧状の塗型剤を外部に適宜逃がす貫通口を、正面部分58Fの部位に設けておくこともできる。
【0028】
さらに、エアシリンダユニット31によって、塗型ノズル12を矢印32Bの方に徐々に移動させる。このとき、同時に、エアシリンダ41、44の駆動により、塗布ノズル12を徐々に真直ぐにする。このようにして、塗布ノズル12を金型60、61のキャビティから抜くようにする。
このようにして、本実施形態によれば、キャビティが屈曲しているような複雑な構造の内型面に対して、金型を閉じた状態のまま、粉体塗型剤を全体にわたり、優れた密着性で均一に吹き込み、塗布することができる。この後、分割面11を境界として金型60、61を開くことで、造型された中子を得ることができる。
【0029】
ここで、さらに、塗型ノズル12(塗型ノズル屈曲機構40)の、屈曲のメカニズムについて、主に図2、図3を参照しながら、詳述する。
塗型ノズル12(図1参照)は、三層構造からなる。この三層構造は、最外層がテフロン(登録商標)製樹脂のスリーブ(図3の参照符号18)、中間層が蛇腹状チューブ(図2の参照符号17)、最内層が粉体塗型剤が送られる粉体塗型剤用チューブ(同図の参照符号16)からなる。最内層の粉体塗型剤用チューブは、フッ素ゴム製のチューブを用いることが好ましい。
【0030】
中間層の蛇腹状チューブ17は、図2(a)〜(c)で示されるように、その周面が凹部17A、凸部17Bからなる凹凸状(襞状)になっており、一定の凹凸パターンの連続構造を含む。図示しないが、凸部17Bには、図2(b)で示すように、塗型ノズル12の長尺方向に沿って、ワイヤ43、44をスナップ嵌め可能な(好ましくは断面が鍵穴型の)極小幅の溝(不図示)が長尺方向に沿って直線状に形成されている。そして、ワイヤ43、44のそれぞれ末端には、チューブ溝の極小径よりも大きな豆粒状の係止部材15A、15Bが設けられている。そして、図2(b)に示すように、まず屈曲させたい箇所に、係止部材15Bを配置し、ワイヤ43をチューブ溝に対してスナップ嵌めし、次に、上記の極小径の直径方向の対向側であって、例えば、ノズル吐出口19寄りの位置に係止部材15Aを配置し、同様にワイヤ44をチューブ溝にスナップ嵌めする。
【0031】
この状態で、エアシリンダ42が、係止部材15Bの位置が移動しないようにワイヤ44にかかる張力を維持し、一方、ワイヤ43については、エアシリンダ41によってエアシリンダ41側に引っ張るようにする。そうすると、蛇腹状チューブ17は、係止部材15Bの配置箇所が屈曲の起点となり、図2(c)のように、紙面の上側に反るように屈曲する。この後、エアシリンダ41、42の駆動を停止した後も、蛇腹状チューブ17は当該屈曲状態のままに固定され、図3に示されるような屈曲状態を維持するようになる。
【0032】
このようにして、金型60、61の組み合わせによって形成されているキャビティの屈曲状態と略一致するように、図4の屈曲部12Bに入るところから徐々に屈曲するように、塗型ノズル12を屈曲・制御する(このとき、好ましくは、図示しない記憶手段によって、この屈曲・制御に係る動作を記憶する)。これにより、同図に示すように、奥の深いキャビティ箇所の内型の面62、63(図5参照)に対しても、粉体塗型剤を吹き込むことができ、好適な中子造型を達成することができる。
【0033】
そして、塗型粉体剤の吐出とデフレクタ11の回転を停止してから、好ましくは、記憶手段によって記憶された屈曲制御の動作を逆に辿るようにエアシリンダ41、42及びワイヤ43、44に制御して、塗型ノズル12を、金型60、61のキャビティから内型面に衝突することなく抜いてゆく。塗型ノズル12を金型60、61のキャビティに挿入した後、塗型ノズル12を金型60、61のキャビティから抜くときに、塗型粉体剤の吐出を金型60、61のの内型面に対して行い、塗布作業を完了させるようにしてもよい。
【0034】
このようにして、本実施形態によれば、屈曲したキャビティを含む中子造型用金型の内型面であっても、同金型を閉じた状態で、内型面全体にわたり、内型面に垂直に粉体塗型剤を吹き込むことができ、もって、密着性の優れた均一かつ膜強度の高い塗膜を形成することができる。
また、同塗膜の膜厚及び/又は膜強度を、静電粉体塗布供給機構50からの粉体塗型剤の供給量とエア圧、粉体ノズル12のエアシリンダ31の移動速度、及び、デフレクタ13の回転速度によって制御することができる。
【0035】
[比較例・実施例]
比較例では、金型を開いた状態で、静電塗布によって、手動によって静電ガンを用いて金型の内型面に粉体塗型剤を塗布し、図6(a)の写真で観察される中子を得た。一方、実施例では、金型を閉じた状態で、本実施形態に係る粉体塗型剤塗布装置のシステムによる静電塗布によって、金型の内型面に粉体塗型剤を塗布し、図6(b)の写真で観察される中子を得た。
【0036】
図6(a)、(b)とも、金型は、エンジン周りのINポート(以下、単に「INポート」という)に係る鋳物品であって、キャビティ形状が屈曲しているものを用いた。なお、図6(a)、(b)の写真から分かるように、当該金型は、キャビティ形状が紙面に沿って外側の方に屈曲しているものであった。
【0037】
上記得られた中子の上から、同一条件で、溶解金属を鋳込み、それぞれ図7(a)、(b)に示す写真で観察されるINポート用鋳物品(半製品)を得た。
両INポート用鋳物品の内面を、比較例を指す図7(a)の写真と、実施例を指す図7(b)の写真とで比較すると、明らかに、実施例の方が比較例より鋳物品の内面に光沢があり、すなわち、表面粗さが小さいことが分かった。これは、図6(a)(b)の写真を観察すると分かるように実施例によって得られた中子の面、すなわち、粉体塗型剤によって形成された塗膜からなる面の表面粗さが小さかったからであり、さらに、本実施形態によって、金型の内型面に、粉体塗型剤が優れた密着性で均一かつ高い膜強度で塗布されたためである。
【0038】
図8(a)は、実際に、鋳造品の表面粗さ[ポート面粗度(Z):INポートのない面の表面粗度Rz]を、表面粗さ計によって測定し、グラフにしたものである。比較例1は、図8(a)の左の棒グラフ(比較例1)に対応し、実施例は、図8(a)の右の棒グラフ(実施例)に対応している。図8(a)の中央の棒グラフは、比較例1の鋳造品の表面をホーニング加工したもの(比較例2とする)の表面粗さである。
【0039】
図8(a)の結果から、実施例の鋳造品の表面粗さは、比較例1の、鋳造品の表面粗さの約1/7であり、かつ、比較例2のホーニング加工後の表面粗さと同等であった。この結果から、本発明に係る粉体塗型剤塗布装置100によって、閉じた金型の内型面に、粉体塗型剤を塗布して中子を造型すれば、この中子に金属を鋳込んだ面をホーニング加工のような後加工処理(表面調整)を行う必要がないほどの、表面粗さの小さい鋳造品を作製することができることが分かった。
【0040】
図8(b)は、上記の比較例1のINポート鋳造品と、上記の実施例のINポート鋳造品の流量係数を比較するグラフである。比較例1の流量係数は0.546であったが、実施例の流量係数は0.565であった。流量係数が大きいほど、INポート鋳造品の中において流体がより良く流れる。本発明に係る粉体塗型剤塗布装置100によって得られた鋳造品は、流量係数が大きいため、その表面がホーニング加工面並みになっていた。
【0041】
これにより、本発明に係る実施例によれば、INポート鋳造品の内面の表面粗さを小さくするために従来必要であったホーニング加工並みの表面調整を省略することができ、製造工程の省力化をも図れることが分かった。
【0042】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、デフレクタ11及び塗型ノズル12に関し、以下のような変形例を採用することが可能である。
【0043】
デフレクタ11は、図9に示したもの以外に、例えば、図10に示した形状Aの底面を半ドーナツ(半円環)状にした形状のもの11Aや、図11に示したプロペラのもの11B、図12に示したプロペラ11Aの回転に対し逆に回転させたプロペラ11Cのいずれかを採用することもできる。上記のデフレクタ11A、11B及び11Cは、金型内のキャビティ形状に鑑みて、粉体ノズル12を屈曲したときに、デフレクタ11では粉体塗型剤が吹き込めないような内型面やデフレクタ11の回転軸の、真正面方向の箇所へ粉体塗型剤の吹き込みに、適宜採用することができる。
【0044】
また、蛇腹状チューブ17は、図13に示す市販のクーラントライナーノズルのチューブ部17A(クーラントライナー17A)を利用するようにしてもよい。この場合は、クーラントライナー17Aの側壁に二本のワイヤ43、44の端部を適宜、係止部E1、E2に固定する。そして、クーラントライナーのチューブ部17のエアシリンダ41、42でワイヤ43、44を適宜引っ張ることで、塗型ノズル12を好適に屈曲させる(デフレクタ11の向きを任意に変える)ことができる。
【0045】
また、蛇腹状チューブ17は、代わりに図14に示すスプリングを含む構造16Sを使用するようにしてもよい。図14に示すスプリング構造16Sでは、塗型ノズル12の先端部Eにスプリング部材16Sを、塗型ノズル12とスプリング部材16Sとを同軸状に固着している。そして、スプリング部材16Sの先端面に、該中心軸と垂直になるように、ばね径よりやや大きな径のリジッドな円板Dが固着されている。この円板Dの中心に、上記粉体塗型剤用チューブ16を貫通させ、スプリング部材16Sの先端面Pの中心軸に沿って貫通孔から延伸する回転軸にデフレクタ11を設ける。また、平板Dには、二本のワイヤ43、44が、中心軸を対称軸として固定されている。この場合は、スプリング部材16Sを、上記エアシリンダ41、42によってワイヤ43、44を適宜引っ張ることで、塗型ノズル12の、特に先端部について、好適に屈曲させることができる。
【0046】
或いは、蛇腹状チューブ17は、図15に示すスプリング16Sを内挿した可撓性樹脂(例えばいくらかリジッドなウレタン樹脂)製の中空フレキシブル部材16Uを使用するようにしてもよい。この場合には、スプリング16Sを伸ばしたときにできるいずれかの隙間箇所E3、E4に、ワイヤ43、44の端部を固定する。この場合も、上記エアシリンダ41、42でワイヤ43、44を、同様にして適宜引っ張ることで、塗型ノズル12を、スプリング部材16Sを好適に屈曲させることができる。
【符号の説明】
【0047】
11:デフレクタ、15B:屈曲箇所、17:蛇腹状チューブ(円筒状中空フレキシブル部材)、43:第1のワイヤ、44:第2のワイヤ、51:静電ガン、70:粉体塗型剤、100:粉体塗型剤塗布装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、中子造型用金型(特に、シェル中子造型用金型)を閉じた状態のまま、同金型の内型面に、粉体塗型剤をKY法によって塗布する粉体塗型剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、中子造型用金型を閉じた状態のまま、ガン(本明細書では、一般的なガン(銃)の形態に特に限ることなく、塗型剤を吐出することが可能なノズルを含む吐出手段を広義に指す。以下同様。)の粉体塗型剤の吐出先にデフレクタを設けたノズルから同金型の内型面に対して略垂直に粉体塗型剤を吹き付けることで好適な塗膜が得られるKY法による塗布について開示する。(「KY法」は、スプレー塗型とシェルモールド造型法とを組み合わせて成る、(株)小松製作所により提示された方法である。[特許文献2]参照。)
【0003】
しかし、特許文献1(特に第5図参照)に示す方法によれば、内型面によって形成されるキャビティが一箇所以上、屈曲しているような複雑構造を持つ内型の場合、粉体塗型剤が、塗布ノズルから内型面に対して略垂直に吹き付けることが難しくなり、優れた密着性の均一な塗膜が内型面に形成されなかった。
そこで、中子製造現場では、金型を開いた状態とし、金型の内型面の双方に対し略垂直に、粉体塗型剤を手動でガンによって吹き付け、中子を造型せざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−64452号公報
【特許文献2】特公昭51−43813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、優れた密着性の均一な塗膜が得られ、かつ、その膜強度も高くなり、さらには中子造型作業の省力化及び環境安全化も図れる等、多くの有益な効果が得られるため、金型の内型面の形状が複雑構造であっても、金型を閉じた状態で、内型面に対して略垂直に自動でガンから粉体塗型剤を吹き込むようにしたいとの要請が依然としてあった。
【0006】
そこで、本発明は、中子造型用金型内の内型面の形状が、金型内のキャビティが一箇所以上屈曲している複雑なものであっても、金型を閉じた状態で、金型の内型面全体に優れた密着性の、均一かつ膜強度の高い塗膜を形成することができる粉体塗型剤塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の態様)
以下、発明の態様を示し、それらについて説明する。なお、(1)項、(2)項、(3)項、(4)項及び(5)項が、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4及び請求項5に対応する。
【0008】
(1) 閉じられた状態の中子造型用金型の内型面に、ガンからの粉体塗型剤を塗布する粉体塗型剤塗布装置であって、前記ガンからの前記粉体塗型剤を吐出することができる粉体塗型剤供給用チューブと、該粉体塗型剤供給用チューブの周囲に配置され、かつ三次元に屈曲可能な円筒状中空フレキシブル部材とを含む塗型ノズルと、前記円筒状中空フレキシブル部材の屈曲すべき箇所に、第1のワイヤの末端を固定し、その屈曲箇所の該円筒状中空フレキシブル部材の径方向の対向部のいずれかの箇所に、第2のワイヤの末端を固定し、第1のワイヤの張力を維持しながら、第2のワイヤを引っ張ることによって、前記塗型ノズルを屈曲することができるワイヤ駆動部を含む屈曲手段と、前記塗型ノズルの先端に配置され、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの開口から吐出した前記粉体塗型剤の吐出方向を、前記内型の面に対して略垂直に前記粉体塗型剤が当たるように偏向かつ回転可能なデフレクタとを備えていることを特徴とする粉体塗型剤塗布装置。
【0009】
本項によれば、中子造型用金型を閉じた状態で、金型内に形成されるキャビティが屈曲している複雑構造であっても、その屈曲したキャビティに沿って、屈曲手段によって、塗型ノズルを屈曲させることができ、かつ、塗型ノズルの先端部に設けられた回転可能なデフレクタから、粉体塗型剤をキャビティ面(内型面)に略垂直に吹き込むことができる。
これにより、従来は中子造型用金型を開いた状態で、手動で粉体塗型剤をキャビティ面(内型面)に略垂直に吹き込んでいた作業が省力化され、密着性の優れた均一性のある、そして膜強度の高い中子造型用塗膜を形成することができる。このことは、ひいては、造型された中子に金属を鋳込んで作製される鋳造品の表面粗さも小さく抑えることを可能とする。
【0010】
(2) 前記円筒状中空フレキシブル部材の屈曲すべき箇所に、第1のワイヤの末端を固定し、その屈曲箇所の、前記円筒状中空フレキシブル部材の径方向の対向部であって粉体塗型剤が供給される下流のいずれかの箇所に、第2のワイヤの末端を固定することを特徴とする(1)に記載の粉体塗型剤塗布装置。
本項によれば、前記円筒状中空フレキシブル部材が、第1のワイヤの末端を固定し、その屈曲箇所の、前記円筒状中空フレキシブル部材の径方向の対向部であって粉体塗型剤が供給される下流のいずれかの箇所に、第2のワイヤの末端を固定しているため、両ワイヤを、後述のエアシリンダ又はモータ電動機のような動力手段を用いて、適宜引っ張ることによって、当該塗型ノズルを、所望の位置において任意の角度で屈曲させることができる。
【0011】
(3) 前記デフレクタは、円錐体であり、円錐形状の対称軸が、モータ軸に結合されており、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸に略一致するように配置されていることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の粉体塗型剤塗布装置。
本項は、(1)項又は(2)項のデフレクタ構造を例示する。当該デフレクタは円錐体であり、さらに好適には正円錐体である。回転中、偏心すると、回転動作が不安定になり、粉体塗型剤の吐出方向も安定しないからである。また、正円錐体にすると、回転中、風圧を受けにくく、無用な負荷を受けることがないためである。
【0012】
(4) 前記デフレクタは、円錐体形状であり、円錐体形状の対称軸が、モータ軸に結合されており、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸に略一致するように配置され、かつ、前記円錐体形状の底面が前記中心軸を対称軸とした半ドーナツ状曲面を形成していることを特徴とする(1)又は(2)に記載の粉体塗型剤塗布装置。
【0013】
本項は、(1)項又は(2)項の他のデフレクタ構造を例示する。当該デフレクタは円錐体形状の底面が前記中心軸を対称軸とした半ドーナツ状曲面を形成している。そのため、対称軸(回転軸)に対して垂直方向に粉体塗型剤が吐出するのに対し、該垂直方向から曲がるようにして粉体塗型剤を内型面に対して吹き込むことができる。内型面が一定角度のジグザグ状に形成されているような複雑な面の場合に有効である。
【0014】
(5) 前記デフレクタは、回転軸付きプロペラ体であり、該回転軸が、モータ軸に結合されており、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸に略一致するように配置されていることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の粉体塗型剤塗布装置。
【0015】
本項は、(1)項又は(2)項の他のデフレクタ構造を例示する。当該デフレクタは回転軸付きプロペラ体である。そのため、粉体塗型剤の吐出対象が、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸の前方にある場合に好適なものである。デフレクタが回転軸付きプロペラ体であると、粉体塗型剤を、同中心軸に沿った方向を中心として広がるように(輻輳的に)、内型面に吹き込むことができるからである。
なお、当該デフレクタは、(3)項、(4)項又は(5)項のものに限られず、当業者によって適宜改変が可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、閉じられた状態の金型内のキャビティが屈曲していても、そのキャビティ面(内型面)に対して粉体塗型剤を吹き込むことができ、もって、優れた密着性の均一かつ膜強度が高い塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る粉体塗型剤塗布装置のシステムの全体を説明するための概略図である。
【図2】デフレクタ付きノズル機構に含まれる蛇腹状チューブを説明する図である。
【図3】図2(c)の蛇腹状チューブに、テフロン(登録商標)製スリーブを被せた図である。
【図4】金型内のキャビティが屈曲している場合であっても、本発明に係る粉体塗型剤塗布装置が好適に使用されることを示す図である。
【図5】図4の一部の鳥瞰図であって、粉体塗型剤が屈曲先の内型面に塗布される様子を示す図である。
【図6】(a)は比較例によって造型された中子の写真、(b)は実施例によって造型された中子を写した写真である。
【図7】(a)は比較例によって造型された中子に金属を鋳込んで得られた鋳物品の写真、(b)は実施例によって造型された中子に金属を鋳込んで得られた鋳物品の写真である。
【図8】(a)は、比較例によって造型された中子に金属を鋳込んで得られた鋳物品と、この従来法の鋳物品をホーニング加工した鋳物品と、実施例によって造型された中子に金属を鋳込んで得られた鋳物品との面粗度を比較するグラフである。(b)は、同比較例と、同実施例の鋳物品のそれぞれに流体を流したときの流量係数を示すグラフである。
【図9】正円錐体のデフレクタと粉体塗型剤の吐出方向を示す断面図である。
【図10】正円錐体の底面に半ドーナツ状の凹部が形成されたデフレクタと粉体塗型剤の吐出方向を示す断面図である。
【図11】プロペラ体のデフレクタと粉体塗型剤の吐出方向を示す断面図である(風が前方に吹くようにプロペラが回転する場合)。
【図12】プロペラ体のデフレクタと粉体塗型剤の吐出方向を示す断面図である(図11の場合とプロペラの回転を反対向きにした場合)。
【図13】塗型ノズルに、クーラントライナーを適用した場合の変形例を示す概略図である。
【図14】塗型ノズル(特に先端部)に、スプリング部材を適用した場合の変形例を示す概略立面図である。
【図15】塗型ノズルに、スプリング部材を内挿した可撓性チューブを適用した場合の変形例を示す概略立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1を参照しながら、本発明に係る粉体塗型剤塗布装置の好適実施形態(以下「本実施形態」という)を、塗布方式が静電塗布(静電塗装)の場合を代表例として説明する。ただし、本実施形態は、静電塗布に限られず、スプレー塗布も適用が可能である。例えば、スプレー塗布を採用した場合には、下記の静電式粉体塗型供給機構50の代わりに、空気圧による吹き付け塗装機構を具備させればよく、係る場合には静電気を付与する装置や手段を要しない。
【0019】
図1は、粉体塗型剤塗布装置100のシステム全体の概略を示す。図1に示されるように、粉体塗型剤塗布装置100のシステムは、デフレクタ付きノズル機構10、ノズル先端回転機構20、リニア駆動機構30、塗型ノズル屈曲機構40、及び静電式粉体塗型供給機構50を具備する。
デフレクタ付きノズル機構10は、モータ21によって駆動される回転軸13に一体結合されたデフレクタ11と、1箇所以上で屈曲可能な塗型ノズル12とを含む。デフレクタ11は、好適には正円錐体であり、回転軸13と正円錐体の中心軸とは同一軸上にある。
【0020】
ノズル先端回転機構20は、モータ21と、このモータ21の回転軸に配置されたカップリング部材23を介して、チューブ内でモータ21の回転動作を伝達できるワイヤ23とを備えている。このワイヤ23は、上記の塗型ノズル12の中央の開口を通って、デフレクタ11の回転軸13と結合している。
【0021】
リニア駆動機構30は、静電ガン51の、粉体塗型剤の吐出部51Aの延長部である支持体51Sの延長線に沿って、矢印32A、32Bの方向に塗型ノズル12をリニア駆動できるエアシリンダユニット31を含む。また、リニア駆動機構30によって、図4で示す金型60、61のキャビティ58に塗型ノズル12を挿入する角度を、0度から45度の範囲で可変でき、また挿入位置を、金型60、61の分割面59に対して平行に移動させながら調整することもできる。さらに、金型60、61のキャビティ58の形状により、挿入長さの調整も可能である。以上の駆動・調整は、エアシリンダに加えられる圧縮エアによって行われる。この圧縮エアの量(若しくはエア圧)を調整することによって、塗型ノズル12の移動速度(駆動速度)を可変することもできる。
【0022】
塗型ノズル屈曲機構40は、2個のエアシリンダ41、42を含み、エアシリンダ41、42の駆動部には、2本のワイヤ43、44の端部が固定されている。ワイヤ43、44は、チューブ状の塗型ノズル12の内側に隣接して延在する蛇腹状チューブ17(上記(1)項の「粉体塗型剤供給用チューブの周囲に配置され、かつ、三次元に屈曲可能な円筒状中空フレキシブル部材」の好適部材の一態様)に沿って形成された溝であって、ワイヤがスナップ嵌め可能な溝を通り、その先端が後述のスリット(図2の参照符号15)に固定されている。本実施形態は、屈曲箇所が1つの場合を例示するが、屈曲箇所が2つ以上の場合には、さらに、2個のエアシリンダと2本のワイヤとをワンセット単位で追加するようにする。
なお、本実施形態では、粉塵が蛇腹状チューブ17に付着して屈曲がスムーズに行われなくなることを防ぐために、又は、ワイヤが溝から外れることを防止するために、スリーブ18を設けている(但し屈曲動作自体にはスリーブ18は寄与しないため必須ではない)。
【0023】
静電式粉体塗型供給機構50は、静電ガン51と、エア圧制御部52と、粉体塗型剤収納部53と、電圧制御部54とを含む。静電ガン51と、エア圧制御部52及び粉体塗型剤収納部53とは、チューブ部材55、56によって接続されており、さらに、静電ガン51と、電圧制御部54とは、リード線(導線)57によって通電可能に接続されている。電圧制御部54は、静電ガン51から吐出する粉体塗型剤に電荷を与えるための印加電圧を可変・制御する。
【0024】
次に、粉体塗型剤塗布装置100のシステムが、図4に示された一対の金型60、61の内型の面に粉体塗型剤を静電塗布し、KY法による中子造型を行うときの、同システムの作用を説明する。
【0025】
まず、一対の金型60、61(参照番号59は両金型の分割面を指す)を閉じ、金型60、61の間に造型すべき中子の外形に対応した内型の面又はキャビティを形成する。そして、粉体塗型剤が正に、金型が負に帯電するように電圧制御部54から電圧を供給する。
次に、図1の矢印32Aの向きに、リニア駆動機構30に含まれるエアシリンダ31を駆動させて、塗型ノズル12を真直ぐにしたまま、塗型ノズル12を、図4のキャビティ58の直進部12Lに沿って進行させながら、粉体塗型剤の吹き込みを始動する。なお、粉体塗型剤の吹き込み前に、金型60、61の内型面に離型剤をあらかじめ塗布しておくようにしてもよい。
【0026】
図4で図示されたようなキャビティ58は、先端付近(奥付近)で屈曲箇所12Bがあり、このまま進行すると、デフレクタ11がキャビティ58面と衝突してしまう。これを防ぐため、塗型ノズル屈曲機構40のエアシリンダ41、42のそれぞれに接続されたワイヤ43、44を、エアシリンダ41、42により引っ張る遠隔操作を行い、先端部分の屈曲したキャビティ58の形状に沿うように、塗型ノズル12を屈曲させる。このとき、さらにデフレクタ11が先に進行しキャビティ58面と衝突することを防ぐために、エアシリンダ41、42に予めリミッタを設定することが好ましい。
この塗型ノズル12の屈曲動作に関しては、蛇腹状チューブ17の構造・動作を説明の中心として後述する。
【0027】
さらに、電圧制御部57によって正に帯電され、かつ、エア圧制御部52によってエア圧によって加速された粉体塗型剤70が静電ガン51から符号19の方向に向かうように、デフレクタ11の面に向けて吐出する。それと同時に、ノズル先端回転機構20のモータ21を回転させてデフレクタ11を回転させる。これにより、図5に示すように、粉体塗型剤を、デフレクタ11の回転軸13に対して垂直方向に吐出することができ、内型面62、63に対して垂直に粉体塗型剤を吹き込むことができる。その結果、本実施形態によれば、図4のような屈曲した箇所12Bの奥の内型面62、63に対しても、粉体塗型剤を優れた密着性で均一にその膜強度も高くなるように塗布することができる。
なお、デフレクタ11の回転軸の延長線が突き当たる内型面の正面部分58Fは、キャビティ面としては使用せず、一般に、いわゆる「巾木」用に使用され、中子を金型にセットするときの座部となる。よって、正面部分58Fに対する塗型剤の塗膜品質は問われないし、塗型剤が正面部分58Fに全く塗布されなくてもよい。仮に、当該塗膜品質が問われるときは、ディフレクタ11の形状や型構造を改変して対応することができる。また、内型面の正面部分58F(巾木に相当する部分)には、図示しないが、塗型剤の吹き付けの際(塗型剤の塗布中)、キャビティ内で塗型剤が舞い上がるのを抑制すべく、噴霧状の塗型剤を外部に適宜逃がす貫通口を、正面部分58Fの部位に設けておくこともできる。
【0028】
さらに、エアシリンダユニット31によって、塗型ノズル12を矢印32Bの方に徐々に移動させる。このとき、同時に、エアシリンダ41、44の駆動により、塗布ノズル12を徐々に真直ぐにする。このようにして、塗布ノズル12を金型60、61のキャビティから抜くようにする。
このようにして、本実施形態によれば、キャビティが屈曲しているような複雑な構造の内型面に対して、金型を閉じた状態のまま、粉体塗型剤を全体にわたり、優れた密着性で均一に吹き込み、塗布することができる。この後、分割面11を境界として金型60、61を開くことで、造型された中子を得ることができる。
【0029】
ここで、さらに、塗型ノズル12(塗型ノズル屈曲機構40)の、屈曲のメカニズムについて、主に図2、図3を参照しながら、詳述する。
塗型ノズル12(図1参照)は、三層構造からなる。この三層構造は、最外層がテフロン(登録商標)製樹脂のスリーブ(図3の参照符号18)、中間層が蛇腹状チューブ(図2の参照符号17)、最内層が粉体塗型剤が送られる粉体塗型剤用チューブ(同図の参照符号16)からなる。最内層の粉体塗型剤用チューブは、フッ素ゴム製のチューブを用いることが好ましい。
【0030】
中間層の蛇腹状チューブ17は、図2(a)〜(c)で示されるように、その周面が凹部17A、凸部17Bからなる凹凸状(襞状)になっており、一定の凹凸パターンの連続構造を含む。図示しないが、凸部17Bには、図2(b)で示すように、塗型ノズル12の長尺方向に沿って、ワイヤ43、44をスナップ嵌め可能な(好ましくは断面が鍵穴型の)極小幅の溝(不図示)が長尺方向に沿って直線状に形成されている。そして、ワイヤ43、44のそれぞれ末端には、チューブ溝の極小径よりも大きな豆粒状の係止部材15A、15Bが設けられている。そして、図2(b)に示すように、まず屈曲させたい箇所に、係止部材15Bを配置し、ワイヤ43をチューブ溝に対してスナップ嵌めし、次に、上記の極小径の直径方向の対向側であって、例えば、ノズル吐出口19寄りの位置に係止部材15Aを配置し、同様にワイヤ44をチューブ溝にスナップ嵌めする。
【0031】
この状態で、エアシリンダ42が、係止部材15Bの位置が移動しないようにワイヤ44にかかる張力を維持し、一方、ワイヤ43については、エアシリンダ41によってエアシリンダ41側に引っ張るようにする。そうすると、蛇腹状チューブ17は、係止部材15Bの配置箇所が屈曲の起点となり、図2(c)のように、紙面の上側に反るように屈曲する。この後、エアシリンダ41、42の駆動を停止した後も、蛇腹状チューブ17は当該屈曲状態のままに固定され、図3に示されるような屈曲状態を維持するようになる。
【0032】
このようにして、金型60、61の組み合わせによって形成されているキャビティの屈曲状態と略一致するように、図4の屈曲部12Bに入るところから徐々に屈曲するように、塗型ノズル12を屈曲・制御する(このとき、好ましくは、図示しない記憶手段によって、この屈曲・制御に係る動作を記憶する)。これにより、同図に示すように、奥の深いキャビティ箇所の内型の面62、63(図5参照)に対しても、粉体塗型剤を吹き込むことができ、好適な中子造型を達成することができる。
【0033】
そして、塗型粉体剤の吐出とデフレクタ11の回転を停止してから、好ましくは、記憶手段によって記憶された屈曲制御の動作を逆に辿るようにエアシリンダ41、42及びワイヤ43、44に制御して、塗型ノズル12を、金型60、61のキャビティから内型面に衝突することなく抜いてゆく。塗型ノズル12を金型60、61のキャビティに挿入した後、塗型ノズル12を金型60、61のキャビティから抜くときに、塗型粉体剤の吐出を金型60、61のの内型面に対して行い、塗布作業を完了させるようにしてもよい。
【0034】
このようにして、本実施形態によれば、屈曲したキャビティを含む中子造型用金型の内型面であっても、同金型を閉じた状態で、内型面全体にわたり、内型面に垂直に粉体塗型剤を吹き込むことができ、もって、密着性の優れた均一かつ膜強度の高い塗膜を形成することができる。
また、同塗膜の膜厚及び/又は膜強度を、静電粉体塗布供給機構50からの粉体塗型剤の供給量とエア圧、粉体ノズル12のエアシリンダ31の移動速度、及び、デフレクタ13の回転速度によって制御することができる。
【0035】
[比較例・実施例]
比較例では、金型を開いた状態で、静電塗布によって、手動によって静電ガンを用いて金型の内型面に粉体塗型剤を塗布し、図6(a)の写真で観察される中子を得た。一方、実施例では、金型を閉じた状態で、本実施形態に係る粉体塗型剤塗布装置のシステムによる静電塗布によって、金型の内型面に粉体塗型剤を塗布し、図6(b)の写真で観察される中子を得た。
【0036】
図6(a)、(b)とも、金型は、エンジン周りのINポート(以下、単に「INポート」という)に係る鋳物品であって、キャビティ形状が屈曲しているものを用いた。なお、図6(a)、(b)の写真から分かるように、当該金型は、キャビティ形状が紙面に沿って外側の方に屈曲しているものであった。
【0037】
上記得られた中子の上から、同一条件で、溶解金属を鋳込み、それぞれ図7(a)、(b)に示す写真で観察されるINポート用鋳物品(半製品)を得た。
両INポート用鋳物品の内面を、比較例を指す図7(a)の写真と、実施例を指す図7(b)の写真とで比較すると、明らかに、実施例の方が比較例より鋳物品の内面に光沢があり、すなわち、表面粗さが小さいことが分かった。これは、図6(a)(b)の写真を観察すると分かるように実施例によって得られた中子の面、すなわち、粉体塗型剤によって形成された塗膜からなる面の表面粗さが小さかったからであり、さらに、本実施形態によって、金型の内型面に、粉体塗型剤が優れた密着性で均一かつ高い膜強度で塗布されたためである。
【0038】
図8(a)は、実際に、鋳造品の表面粗さ[ポート面粗度(Z):INポートのない面の表面粗度Rz]を、表面粗さ計によって測定し、グラフにしたものである。比較例1は、図8(a)の左の棒グラフ(比較例1)に対応し、実施例は、図8(a)の右の棒グラフ(実施例)に対応している。図8(a)の中央の棒グラフは、比較例1の鋳造品の表面をホーニング加工したもの(比較例2とする)の表面粗さである。
【0039】
図8(a)の結果から、実施例の鋳造品の表面粗さは、比較例1の、鋳造品の表面粗さの約1/7であり、かつ、比較例2のホーニング加工後の表面粗さと同等であった。この結果から、本発明に係る粉体塗型剤塗布装置100によって、閉じた金型の内型面に、粉体塗型剤を塗布して中子を造型すれば、この中子に金属を鋳込んだ面をホーニング加工のような後加工処理(表面調整)を行う必要がないほどの、表面粗さの小さい鋳造品を作製することができることが分かった。
【0040】
図8(b)は、上記の比較例1のINポート鋳造品と、上記の実施例のINポート鋳造品の流量係数を比較するグラフである。比較例1の流量係数は0.546であったが、実施例の流量係数は0.565であった。流量係数が大きいほど、INポート鋳造品の中において流体がより良く流れる。本発明に係る粉体塗型剤塗布装置100によって得られた鋳造品は、流量係数が大きいため、その表面がホーニング加工面並みになっていた。
【0041】
これにより、本発明に係る実施例によれば、INポート鋳造品の内面の表面粗さを小さくするために従来必要であったホーニング加工並みの表面調整を省略することができ、製造工程の省力化をも図れることが分かった。
【0042】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、デフレクタ11及び塗型ノズル12に関し、以下のような変形例を採用することが可能である。
【0043】
デフレクタ11は、図9に示したもの以外に、例えば、図10に示した形状Aの底面を半ドーナツ(半円環)状にした形状のもの11Aや、図11に示したプロペラのもの11B、図12に示したプロペラ11Aの回転に対し逆に回転させたプロペラ11Cのいずれかを採用することもできる。上記のデフレクタ11A、11B及び11Cは、金型内のキャビティ形状に鑑みて、粉体ノズル12を屈曲したときに、デフレクタ11では粉体塗型剤が吹き込めないような内型面やデフレクタ11の回転軸の、真正面方向の箇所へ粉体塗型剤の吹き込みに、適宜採用することができる。
【0044】
また、蛇腹状チューブ17は、図13に示す市販のクーラントライナーノズルのチューブ部17A(クーラントライナー17A)を利用するようにしてもよい。この場合は、クーラントライナー17Aの側壁に二本のワイヤ43、44の端部を適宜、係止部E1、E2に固定する。そして、クーラントライナーのチューブ部17のエアシリンダ41、42でワイヤ43、44を適宜引っ張ることで、塗型ノズル12を好適に屈曲させる(デフレクタ11の向きを任意に変える)ことができる。
【0045】
また、蛇腹状チューブ17は、代わりに図14に示すスプリングを含む構造16Sを使用するようにしてもよい。図14に示すスプリング構造16Sでは、塗型ノズル12の先端部Eにスプリング部材16Sを、塗型ノズル12とスプリング部材16Sとを同軸状に固着している。そして、スプリング部材16Sの先端面に、該中心軸と垂直になるように、ばね径よりやや大きな径のリジッドな円板Dが固着されている。この円板Dの中心に、上記粉体塗型剤用チューブ16を貫通させ、スプリング部材16Sの先端面Pの中心軸に沿って貫通孔から延伸する回転軸にデフレクタ11を設ける。また、平板Dには、二本のワイヤ43、44が、中心軸を対称軸として固定されている。この場合は、スプリング部材16Sを、上記エアシリンダ41、42によってワイヤ43、44を適宜引っ張ることで、塗型ノズル12の、特に先端部について、好適に屈曲させることができる。
【0046】
或いは、蛇腹状チューブ17は、図15に示すスプリング16Sを内挿した可撓性樹脂(例えばいくらかリジッドなウレタン樹脂)製の中空フレキシブル部材16Uを使用するようにしてもよい。この場合には、スプリング16Sを伸ばしたときにできるいずれかの隙間箇所E3、E4に、ワイヤ43、44の端部を固定する。この場合も、上記エアシリンダ41、42でワイヤ43、44を、同様にして適宜引っ張ることで、塗型ノズル12を、スプリング部材16Sを好適に屈曲させることができる。
【符号の説明】
【0047】
11:デフレクタ、15B:屈曲箇所、17:蛇腹状チューブ(円筒状中空フレキシブル部材)、43:第1のワイヤ、44:第2のワイヤ、51:静電ガン、70:粉体塗型剤、100:粉体塗型剤塗布装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じられた状態の中子造型用金型の内型面に、ガンからの粉体塗型剤を塗布する粉体塗型剤塗布装置であって、
前記ガンからの前記粉体塗型剤を吐出することができる粉体塗型剤供給用チューブと、該粉体塗型剤供給用チューブの周囲に配置され、かつ三次元に屈曲可能な円筒状中空フレキシブル部材と、を含む塗型ノズルと、
前記円筒状中空フレキシブル部材の屈曲すべき箇所に、第1のワイヤの末端を固定し、その屈曲箇所の、前記円筒状中空フレキシブル部材の径方向の対向部のいずれかの箇所に、第2のワイヤの末端を固定し、
第1のワイヤの張力を維持しながら、第2のワイヤを引っ張ることによって、前記塗型ノズルを屈曲することができるワイヤ駆動部を含む屈曲手段と、
前記塗型ノズルの先端に配置され、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの開口から吐出した前記粉体塗型剤の吐出方向を、前記内型の面に対して略垂直に前記粉体塗型剤が当たるように偏向かつ回転可能なデフレクタと、
を備えていることを特徴とする粉体塗型剤塗布装置。
【請求項2】
前記円筒状中空フレキシブル部材の屈曲すべき箇所に、第1のワイヤの末端を固定し、その屈曲箇所の、前記円筒状中空フレキシブル部材の径方向の対向部であって粉体塗型剤が供給される下流のいずれかの箇所に、第2のワイヤの末端を固定することを特徴とする請求項1に記載の粉体塗型剤塗布装置。
【請求項3】
前記デフレクタは、円錐体であり、円錐形状の対称軸が、モータ軸に結合されており、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸に略一致するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体塗型剤塗布装置。
【請求項4】
前記デフレクタは、円錐体形状であり、円錐体形状の対称軸が、モータ軸に結合されており、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸に略一致するように配置され、かつ、前記円錐体形状の底面が前記中心軸を対称軸とした半円環状曲面を形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体塗型剤塗布装置。
【請求項5】
前記デフレクタは、回転軸付きプロペラ体であり、該回転軸が、モータ軸に結合されており、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸に略一致するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体塗型剤塗布装置。
【請求項1】
閉じられた状態の中子造型用金型の内型面に、ガンからの粉体塗型剤を塗布する粉体塗型剤塗布装置であって、
前記ガンからの前記粉体塗型剤を吐出することができる粉体塗型剤供給用チューブと、該粉体塗型剤供給用チューブの周囲に配置され、かつ三次元に屈曲可能な円筒状中空フレキシブル部材と、を含む塗型ノズルと、
前記円筒状中空フレキシブル部材の屈曲すべき箇所に、第1のワイヤの末端を固定し、その屈曲箇所の、前記円筒状中空フレキシブル部材の径方向の対向部のいずれかの箇所に、第2のワイヤの末端を固定し、
第1のワイヤの張力を維持しながら、第2のワイヤを引っ張ることによって、前記塗型ノズルを屈曲することができるワイヤ駆動部を含む屈曲手段と、
前記塗型ノズルの先端に配置され、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの開口から吐出した前記粉体塗型剤の吐出方向を、前記内型の面に対して略垂直に前記粉体塗型剤が当たるように偏向かつ回転可能なデフレクタと、
を備えていることを特徴とする粉体塗型剤塗布装置。
【請求項2】
前記円筒状中空フレキシブル部材の屈曲すべき箇所に、第1のワイヤの末端を固定し、その屈曲箇所の、前記円筒状中空フレキシブル部材の径方向の対向部であって粉体塗型剤が供給される下流のいずれかの箇所に、第2のワイヤの末端を固定することを特徴とする請求項1に記載の粉体塗型剤塗布装置。
【請求項3】
前記デフレクタは、円錐体であり、円錐形状の対称軸が、モータ軸に結合されており、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸に略一致するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体塗型剤塗布装置。
【請求項4】
前記デフレクタは、円錐体形状であり、円錐体形状の対称軸が、モータ軸に結合されており、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸に略一致するように配置され、かつ、前記円錐体形状の底面が前記中心軸を対称軸とした半円環状曲面を形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体塗型剤塗布装置。
【請求項5】
前記デフレクタは、回転軸付きプロペラ体であり、該回転軸が、モータ軸に結合されており、かつ、前記粉体塗型剤供給用チューブの中心軸に略一致するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体塗型剤塗布装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−601(P2011−601A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144318(P2009−144318)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(393026283)株式会社松村精型 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(393026283)株式会社松村精型 (13)
【Fターム(参考)】
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