説明

粉体塗料の製造方法

【課題】 簡単な手段で硬化型アクリル樹脂と硬化剤とを均一に分散することができ、低コストで、平滑性や光沢性に優れた塗膜を形成し得るアクリル系粉体塗料を製造する方法を提供する。
【解決手段】 (1)グリシジル基及び/又はメチルグリシジル基含有不飽和化合物、及びメタクリル酸メチルを一定割合含む原料モノマーを重合して得られた、特定の性質の硬化型アクリル樹脂(A)、(2)1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)、及び(3)沸点が特定温度以下であり、特定の範囲から選ばれた1種以上である溶剤(C)を使用して粉体塗料を製造する方法であって、(A)と(B)と(C)とを、特定温度以下で少なくとも(B)が(C)に溶解するように混合する混合工程と、次いで、(C)を特定温度以下の温度で脱揮する脱揮・除去工程を含むことを特徴とする粉体塗料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化型アクリル樹脂、および硬化剤からなる粉体塗料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体塗料は、焼き付け時に揮発性有機物質の発生が無く、大気汚染等の環境問題を生じないことから、溶液型塗料に代わり広い分野で用いられている。
このような粉体塗料として、例えばグリシジル基を有する硬化型アクリル樹脂とドデカン二酸に代表される硬化剤を含有するアクリル系粉体塗料が知られている。
【0003】
また、粉体塗料は、一般に、硬化型樹脂、硬化剤、塗料用添加剤及び顔料を乾式混合した後、溶融混練機で混練分散し、次いで粉砕、分級させることにより製造されている。しかしながら、この方法では硬化型樹脂と硬化剤とを熱で溶融させて混練させる際、硬化型樹脂と硬化剤との架橋反応の進行を抑制する必要がある。このため、混練を硬化剤の融点以下の温度で行う等の制約を受け、樹脂と硬化剤とを均一に分散することが困難であった。このようにして製造された粉体塗料により形成される塗膜は、外観、特に表面平滑性に欠けるといった問題点を有している。
【0004】
そこで、このような問題点を改善する方法として、硬化型樹脂と硬化剤等とを、湿式で、すなわち溶剤中で混合する方法(特許文献1、2、3、4参照。)が提案されている。
これらの方法によっても、硬化型樹脂と硬化剤等との均一分散が必ずしも十分でなく、キシレンなどの高沸点溶剤を脱揮・除去するための大型脱揮・回収装置が必要となる等、未だ多くの問題点を残している。
【0005】
焼き付け温度の低温化、塗膜の耐擦傷性の向上を狙い1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートを硬化剤として製造された粉体塗料(特許文献5参照。)が提案されているが、高い架橋反応性のため、通常の溶融混練では製造が困難で、得られる塗膜は、平滑性に劣っていた。
【特許文献1】特開昭54−25531号公報
【特許文献2】特開平10−53729号公報
【特許文献3】特開平11−302567号公報
【特許文献4】特開2000−103866号公報
【特許文献5】特開2003−138200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡単な手段で硬化型アクリル樹脂と硬化剤とを均一に分散することができ、低コストで、平滑性や光沢性に優れた塗膜を形成し得るアクリル系粉体塗料を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の硬化型アクリル樹脂、硬化剤の1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、および特定の溶剤を用い、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートが該溶剤に溶解するように用いることにより、均一に分散することができ、低コストで、平滑性や光沢性に優れた塗膜を形成し得るアクリル系粉体塗料の製造方法を見出した。
すなわち、本発明は、(1)少なくともグリシジル基及び/又はメチルグリシジル基含有不飽和化合物を15〜60モル%、及びメタクリル酸メチルを10〜50モル%含む原料モノマーを重合して得られた、数平均分子量が1000〜20000であり、かつガラス転移温度が30〜90℃の硬化型アクリル樹脂(A)、(2)1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)、及び(3)常圧における沸点が120℃以下であり、アルコール類、ケトン類、エーテル類、および水から選ばれた1種以上である溶剤(C)を使用して粉体塗料を製造する方法であって、
硬化型アクリル樹脂(A)と1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)と溶剤(C)とを、130℃以下の温度で少なくとも1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)が溶剤(C)に溶解するように混合する混合工程と、次いで、溶剤(C)を130℃以下の温度で脱揮する脱揮・除去工程を含むことを特徴とする粉体塗料の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
グリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物、及びメタクリル酸メチルを含む原料モノマーを重合して得られた硬化型アクリル樹脂(A)、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)とを、常圧における沸点が120℃以下であり、アルコール類、ケトン類、エーテル類、および水から選ばれた1種以上である溶剤(C)の存在下で混合し、次いで溶剤(C)を除去して得られた、硬化型アクリル樹脂(A)と1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)との混合物から、平滑性、光沢性、鮮映性に優れた塗膜を与える粉体塗料を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、湿式混合のために用いる溶剤としては、常圧における沸点が120℃以下であり、アルコール類、ケトン類、エーテル類、および水から選ばれた1種以上である溶剤(C)が使用される。溶剤(C)としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、および水から選ばれた1種以上が1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)に対する溶解性が良好であり好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルビニルエーテル、ジオキサン、トリオキサン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、アセタール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、1−メトキシ−2−プロパノールが挙げられる。本発明においては、これらの中でも、メタノール、イソプロパノール、アセトンが好適に使用される。これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0010】
また、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)を均一に分散させる機能及び脱揮性が損なわれない限り、他の溶剤を少量(例えば溶剤(C)100重量部当たり10重量部以下)併用することもできる。他の溶剤としては、ヘキサン、メチルペンタン、ベンゼンなどが挙げられる。
【0011】
溶剤(C)は、硬化型アクリル樹脂(A)と1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)とを混練するに際し、すべてを第1供給口から供給することができ、サイドフィードにより、混練機に供給してもよい。
サイドフィードの場合、硬化型アクリル樹脂(A)および/または1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)を上記溶剤に溶解させた溶液を調製し、このような溶液を用いてサイドフィードにより混練を行うこともできる。つまり、硬化型アクリル樹脂(A)の溶液と1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)、硬化型アクリル樹脂(A)の溶液と1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)の溶液、あるいは、硬化型アクリル樹脂(A)と1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)のアルコール溶液を混練機に投入して湿式混合を行ってもよい。
硬化型アクリル樹脂(A)の溶液は、予め得られた硬化型アクリル樹脂(A)を溶剤に溶解させて調製してもよいし、溶剤を重合溶媒として用いて重合することにより調製することもできる。
【0012】
本発明において、粉体塗料の樹脂成分として使用される硬化型アクリル樹脂(A)は常温(20℃)で固体であり、グリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物を15〜60モル%、及びメタクリル酸メチルを10〜50モル%含む原料モノマーを重合して得られた、数平均分子量が1000〜20000であり、かつガラス転移温度が30〜90℃の硬化型アクリル樹脂である。
硬化型アクリル樹脂(A)の原料モノマーとして、グリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物を15〜60モル%、及びメタクリル酸メチルを10〜50モル%、好ましくはグリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物を25〜55モル%、及びメタクリル酸メチルを15〜45モル%含むものである。
上記原料としてのグリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物モノマーの使用割合が前記15モル%未満では、得られる塗膜の耐食性や硬度が低下し、一方、前記60モル%を越えると、粉体塗料の貯蔵安定性や塗膜の平滑性が低下し、外観が劣る。
上記原料としてのメタクリル酸メチルモノマーの使用割合が前記10モル%未満では、得られる塗膜の耐侯性や高級感(深みのある透明感)が低下し、前記50モル%を越えると得られる塗膜の平滑性が低下し、外観が劣る。
他方、硬化型アクリル樹脂(A)は、モノマーに由来する構成単位として、グリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物に由来する構成単位を15〜60モル%、好ましくは25〜55モル%、及びメタクリル酸メチルに由来する構成単位を10〜50モル%、好ましくは15〜45モル%含有するものであり、更に必要により、他の不飽和化合物に由来する構成単位を含んでいてもよい。硬化型アクリル樹脂(A)中にこれらの構成単位を含むと前記したと同様の効果が得られる。
例えば、グリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物(以下、単にグリシジル系アクリル化合物と呼ぶことがある)、メタクリル酸メチル及び必要により他の不飽和化合物を共重合することにより得られる。
【0013】
グリシジル系アクリル化合物としては、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジル、アクリル酸β−メチルグリシジルなどが挙げられ、特にメタクリル酸グリシジルが好ましく用いることができる。
【0014】
グリシジル系アクリル化合物およびメタクリル酸メチルの共重合に際して必要により用いられる他の不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、カプロラクトン変性メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、カプロラクトン変性アクリル酸2−ヒドロキシエチル、スチレン、αメチルスチレン、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
上記の他の不飽和化合物は、グリシジル系アクリル化合物及びメタクリル酸メチルに由来する構成単位量が前述した範囲内となる限り、その使用量は特に制限されないが、一般的には、全モノマー当たり20〜60モル%の範囲であるのがよい。
グリシジル系アクリル化合物およびメタクリル酸メチルを用いての共重合は、これらの化合物を、アゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤と共に重合溶媒中に分散乃至溶解させ、50〜150℃、常圧〜20MPaの重合条件で行われ、重合終了後、重合溶媒を脱揮・除去することにより、目的とする常温で固体の硬化型アクリル樹脂(A)を得ることができる。
【0016】
重合溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤や前述した湿式混合用溶剤などを使用することができるが、本発明においては、特に、常圧における沸点が120℃以下であり、アルコール類、ケトン類、エーテル類、および水から選ばれた1種以上である溶剤(C)を好適に使用することができる。これらの湿式混合溶剤は、低沸点であるため、脱溶剤を容易に行うことができる。
【0017】
また、かかる重合溶媒は、通常、全重合反応成分(重合溶媒を含む)中の濃度が10〜90重量%となるような量で使用される。
また、上記の共重合は、重合率が98モル%以上、好ましくは99モル%以上、最も好適には、99.5モル%以上となる程度行うのがよい。重合率が低いと、未反応単量体の脱揮に多大な労力を要するからである。
【0018】
このようにして得られる常温で固体の硬化型アクリル樹脂(A)は、数平均分子量が1000〜20000、好ましくは1300〜10000、更に好ましくは1500〜7000の範囲にあるのがよく、そのガラス転移温度は、30〜
90℃、好ましくは35〜80℃、更に好ましくは40℃〜70℃の範囲にあるのがよい。数平均分子量やガラス転移温度が上記範囲よりも低いと、得られる粉体塗料の保存安定性が低下し、かかる塗料により得られる塗膜が、可撓性のないものとなるおそれがある。また、数平均分子量やガラス転移温度が上記範囲よりも高いと、前述した湿式混合用の溶剤との混和性が低下し、均一な組成の粉体塗料を得ることが困難となり、平滑性に優れた塗膜を形成することが困難となるおそれがある。
尚、本発明において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定する。
また、ガラス転移温度(℃)は、DSC法により測定し、中間点ガラス転移温度(Tmg)をガラス転移温度(Tg)とする。
【0019】
このような常温で固体の硬化型アクリル樹脂(A)は、後記する混合工程に供されるが、重合溶媒として前述した湿式混合用の溶剤を用いた場合には、かかる重合溶媒を脱揮・除去することなく、重合生成物である硬化型アクリル樹脂(A)の溶液をそのまま混合工程に供することができる。
【0020】
本発明において用いられる1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)は、通常、硬化型アクリル樹脂(A)中のグリシジル基及び/またはメチルグリシジル基当たり、0.7ないし1.3倍当量、好ましくは0.8ないし1.2倍当量、さらに好ましくは0.8ないし1.1倍当量の範囲で使用される。
【0021】
本発明において用いる1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)と併用できる硬化剤として、前述した硬化型アクリル樹脂(A)中のグリシジル基と反応性を有するものが用いられる。例えば、アゼライン酸、ノナン二酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アジピン酸、マレイン酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水イタコン酸などの二塩基酸もしくはその無水物;トリメリット酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの多塩基酸もしくはその無水物;メタフェニレンジアミン、メタキシレンジアミン、ジシアンジアミド、脂肪族アミン、脂環族アミンなどのアミンもしくはジアミン化合物、アミド化合物、メラミン化合物、ヒドラジン化合物、マレイミド化合物、シアネート化合物等を単独または2種以上の組み合わせで使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明においては、これらの中でも、二塩基酸、特にドデカン二酸が好適に使用される。
【0022】
本発明においては、上述した硬化型アクリル樹脂(A)や1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)に加えて、それ自体公知の塗料用添加剤、例えば、溶融流動調節剤、ピンホール防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、硬化触媒、可塑剤、耐ブロッキング性向上剤、粉体流動付与剤、脱泡剤等を、必要により使用することができる。
このような塗料用添加剤は、粉体塗料の塗膜形成能などの特性を損なわずに所定の機能が発揮される程度の量で使用される。例えば、硬化型アクリル樹脂(A)100重量部当たり、0.1ないし10重量部の範囲で使用される。
【0023】
本発明においては、粉体塗料の用途に応じて、更に顔料が使用される。顔料としては、これに限定されるものではないが、酸化チタン、ベン柄、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラック、酸化鉄等が挙げられる。かかる顔料は、通常、硬化型アクリル樹脂(A)100重量部当たり、200重量部以下の量で使用される。
【0024】
前述した硬化型アクリル樹脂(A)、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)及び必要により使用される塗料用添加剤や顔料を、前述した溶剤(C)の存在下で連続的に湿式混合し、次いで、該溶剤を減圧下で連続的に脱揮・除去する。これらの連続的混合および溶剤脱揮・除去は、常温で行ってもよいし、130℃以下の加熱下で行ってもよい。加熱下で連続混合および溶剤脱揮・除去を行う場合には、加熱温度を硬化型アクリル樹脂(A)と1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)の架橋反応温度以下に設定される。また、後述するように、溶剤を、単独であるいは1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)の溶液としてサイドフィードするときには、均一混練効果を高める為に、50〜130℃の範囲に加熱して混練を行うことが好適である。
上記連続的混合には、後述する押出機、ニーダー、インラインミキサーなどを用いるが、使用する溶剤(C)の沸点と加熱温度との関係によって加圧条件になることがある。
【0025】
本発明において、溶剤の使用量は、通常、硬化型アクリル樹脂(A)、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)、及び溶剤(C)との混合物である混合組成物中における溶剤(C)の量が、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)100重量部当り、10〜1000重量部の範囲である。
ただし、該重合反応により得られた当該硬化型アクリル樹脂(A)と溶剤(C)との混合物を、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)と混合して粉体塗料を製造する場合は、混合組成物中における溶剤(C)の量を、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)100重量部当り、50〜1000重量部の範囲とするのがよい。
また、溶剤(C)や1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)の溶液をサイドフィードする場合は、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)100重量部当り、10〜200重量部の範囲でも湿式分散の効果が十分にあり、溶剤脱揮・除去も簡略化できるという利点がある。
溶剤供給量が上記範囲よりも少ないと、溶剤による均一混練効果が小さく、上記範囲よりも多量に供給すると、大型の混練−脱揮・除去装置が必要となり、経済的に不利となってしまう。従って、重合溶媒として、上記の溶剤を使用し、得られた硬化型アクリル樹脂(A)の溶液をそのまま使用する場合には、重合溶媒の使用量が上記条件を満足するように設定しておくのがよい。
【0026】
上述した連続混合及び溶剤脱揮・除去は、例えば連続的に混合と、減圧により揮発した溶剤分の脱揮・除去を行う混合−脱揮・除去装置を用いて行うことができる。また、連続混合機と、脱揮・除去装置とを直列に連結して、連続混合及び脱揮・除去を行うこともできる。
【0027】
連続混合に供する硬化型アクリル樹脂(A)、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)、必要に応じて使用される塗料用添加剤や顔料は、それぞれ別個に、上記の混合−脱揮・除去装置や連続混合機中に投入することもできるし、これらを予め混合した後に投入することもできる。投入前の混合は、これに限定されるものではないが、ヘンシェルミキサー、タンブラー等を用いて行うことができる。
【0028】
溶剤(C)は、他の成分と混合せずに直接、混合−脱揮・除去装置や連続混合機にサイドフィードすることができるし、また、既に述べたように、硬化型アクリル樹脂(A)の溶液として使用することができるし、この溶剤を用いて1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)の溶液を調製し、このような溶液としてサイドフィードすることもできる。
なお、本発明において、サイドフィードとは、混練に用いる装置に、主たる供給ライン(第1供給口)とは別個の主たる供給ラインの下流側に位置するライン(第2供給口)から別個の投入口を介して混練すべき物質を供給することを意味する。
【0029】
また、本発明において必要により使用される塗料用添加剤や顔料は、硬化型アクリル樹脂(A)または硬化型アクリル樹脂(A)の溶液と混合して連続混合に供することもできるし、上記の1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)または1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)の溶液中に溶解ないし分散させて連続混合に供することもできる。
【0030】
前述した混合−脱揮・除去装置は、各成分(粉体塗料用原料)を安定に供給することが出来るホッパーや、定量フィーダー、溶剤や溶液を供給する定量ポンプ等を備え、かつ減圧下に溶剤を脱揮・除去することができるものであれば、その構造は特に制限されないが、一般的には、単軸もしくは二軸の押出機又は単軸もしくは二軸のニーダーが使用される。
【0031】
単軸押出機としては、スクリュー形状、或いは混練に適したトレスター型、マドック型、トピード型等の高剪断形状を有する回転シャフトを備え、切り欠け型、ダルメージ型等のそれ自体公知の混練部を有するものが使用される。また、二軸押出機としては、互いに異なる方向あるいは同じ方向に回転し、且つニーディング機能を持つ一対のスクリューシャフトを備えたものが好適である。いずれの押出機も、揮発分を除去するための少なくとも1個の脱揮口が設けられており、この脱揮口から減圧下に溶剤を脱揮・除去できるものが好ましい。特に複数の脱揮口を有するものは、それぞれの脱揮・除去帯域で別々に減圧度を設定することができ、押出機下流に向けて減圧度を上げていくときに、一般に優れた脱揮・除去性能を有す。また、溶剤または溶液はベント口上流の混練ゾーンに供給されるが、複数のベント口を有す場合は任意の混練ゾーンに供給でき、1箇所からでも2箇所以上に分割して供給しても良い。このような構造の押出機としては、東芝機械株式会社製の「TEM−37BS」、サーモ・プラスティックス工業株式会社製の「TP−25−T」が例示できる。
【0032】
また、混合−脱揮・除去装置として使用し得るニーダーは、少なくとも1個の脱揮口を供え、本体のバレル内に2本の攪拌軸を横一列に並べ、それぞれの軸にスクリューとパドルを組込み、同一方向に等速で回転させ、バレルの一端上部から供給された原料がスクリューで混練ゾーンに送り込まれ、ここでパドルにより混練された後、バレルの他端下部、側面または前方より連続的に混練物を排出することのできる構造を有するものがよい。このようなニーダーとしては、株式会社栗本鉄工所製の「SCプロセッサー」、「KRCニーダ」が例示できる。
いずれのタイプの混合−脱揮・除去装置においても、混合ゾーンに前述した溶剤を供給することで、粉体塗料原料を均一に混練することができる。
【0033】
混合により得られた溶液を噴霧乾燥に供する場合の噴霧乾燥装置には可燃性有機溶媒用噴霧乾燥装置(例えば、坂本技研(株)ターニングスプレードライヤー 不燃性ガス クローズドシステム型、大川原化工機(株)CLシリーズなど)があり、ノズルアトマイジング方式が好適に使用されるが他に噴霧乾燥装置も使用することができる。ノズルアトマイジング方式噴霧乾燥装置により得られる粉体塗料の平均粒子径は1〜100μmの間で任意に調節でき、粒径分布も非常に小さくすることが可能である。
【0034】
また、連続混合機と、脱揮・除去装置とを直列に連結してする場合、このような連続混合機や脱揮・除去装置としては、何れも、上述した単軸もしくは二軸の押出機や単軸もしくは二軸のニーダーを用いることができる。硬化型アクリル樹脂溶液と1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート溶液を混合する場合にはインラインミキサーを用いることができる。勿論、上述した押出機、ニーダーやインラインミキサーを連続混練機として用いる場合には、これらには、脱揮口は不要である。更に、この場合には、脱揮・除去装置も混合機能を有しているため、前述した溶剤(C)の少なくとも一部を脱揮・除去装置に投入することも可能である。
本発明においては、脱揮・除去装置で減圧下に加熱することにより不揮発分濃度が98.5重量%以上、好ましくは99.0重量%以上となるまで溶剤を蒸発脱揮させて除去する。不揮発分濃度がこれらの値より低くなると、耐ブロッキング性の向上が図れないおそれがある。
【0035】
以上の説明から理解されるように、連続混合及び溶剤脱揮・除去は、用いる装置等に応じて種々のパターンでおこなうことができる。その代表的なパターンのいくつかを以下に示す。
【0036】
例えば、溶剤の存在下での重合によって、得られた硬化型アクリル樹脂(A)の溶液をそのまま使用する場合には、次のパターンで、連続混合及び溶剤脱揮・除去を行うことができる。
【0037】
以下に、本発明の態様を説明する。
(1)図1に示すように、前述した混合−脱揮・除去装置13を使用し、この混合−脱揮・除去装置13に、硬化型アクリル樹脂(A)の溶液4と1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)2とを供給して連続的に混練と脱揮口14からの溶剤の脱揮・除去とを行い、混練組成物6を混合−脱揮・除去装置13から取り出す。この場合において、図2に示すように、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)を溶剤に溶解させた硬化剤溶液5を調製し、この硬化剤溶液5と硬化型アクリル樹脂(A)の溶液4とを、混合−脱揮・除去装置13に供給することもできるが、このときには、溶剤の総重量が前述した範囲内となるように調整するのがよい。
【0038】
(2)図3に示すように、前述した連続混合機11と脱揮・除去装置20とを直列に連結し、この連続混合機11に、硬化型アクリル樹脂(A)の溶液4と2で示す1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)を供給して連続的混合を行い、得られた混合物を連続混合機11から脱揮・除去装置20に供給して脱揮口14からの溶剤(C)の脱揮・除去を行い、混練組成物6を脱揮・除去装置20から取り出す。この場合においても、上記の図1と同様、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)を溶剤(C)に溶解させた硬化剤溶液5を調製し、図4に示すように、この硬化剤溶液5と硬化型アクリル樹脂(A)の溶液4とを、インラインミキサーなどの連続混合機に供給することもできる。
【0039】
また、予め製造された硬化型アクリル樹脂(A)(重合溶媒が溶剤脱揮・除去されているもの)を使用する場合には、次のプロセスで、連続混合及び溶剤脱揮・除去を行うことができる。
【0040】
(3)図5に示すように、図1で用いるものと同様の混合−脱揮・除去装置13を使用し、該混合−脱揮・除去装置13に硬化型アクリル樹脂(A)1、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)2を供給して連続的に混合すると共に、サイドフィードにより、溶剤(C)3を直接、混合−脱揮・除去装置13に供給し、混合と脱揮口14からの剤の脱揮・除去とを行い、混練組成物6を混合−脱揮・除去装置13から取り出す。この場合において、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)を溶剤(C)に溶解させた硬化剤溶液5を調製し、図6に示すように、この硬化剤溶液5を、サイドフィードにより、混合−脱揮・除去装置13に供給することもできる。
【0041】
(4)図7に示すように、図2と同様に、直列に連結された連続混合機11と脱揮・除去装置20とを使用し、連続混合機11に、硬化型アクリル樹脂(A)1、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)2を供給して連続的に混練するとともに、溶剤(C)3を、サイドフィードにより直接、連続混合機11に供給し、混練と脱揮口14からの溶剤(C)の脱揮・除去とを行い、混練組成物6を脱揮・除去装置20から取り出す。この場合において、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)を溶剤(C)に溶解させた硬化剤溶液5を調製し、図8に示すように、この硬化剤溶液5をサイドフィードにより、連続混合機11に供給することもできる。
また、上述した図1〜8の何れにおいても、必要により使用される顔料や塗料用添加剤は、通常、硬化型アクリル樹脂(A)或いは硬化型アクリル樹脂(A)の溶液と予め混合して供給されるが、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)の溶液に溶解ないし分散させて供給することもできる。
【0042】
本発明において、かくして得られるアクリル系粉体塗料は、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)や、必要に応じて使用される塗料用添加剤や顔料が、硬化型アクリル樹脂(A)中に均一に分散されており、特に硬化剤は微小粒子として存在する。この粉体塗料からは、これまで類のない表面が平滑、美麗な塗膜を得ることが出来る。
【実施例】
【0043】
本発明を、以下の参考例、実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみ限定されるものではないのはいうまでもない。また、これらの例において、配合量はすべて重量基準で示した。
尚、硬化型アクリル樹脂および粉体塗料の物性等は以下のようにして評価した。
1)数平均分子量:テトラヒドロフラン100重量部に対して硬化型アクリル樹脂0.3重量部を溶解したテトラヒドロフラン溶液を、東ソー(株)製8020型GPCにより測定し、ポリスチレン換算により数平均分子量を算出した。
2)ガラス転移温度(Tg):DSC法(示差走査熱量測定法、昇温速度10℃/min)により測定し、中間点ガラス転移温度(Tmg)をガラス転移温度(Tg)とした。
3)不揮発分濃度(wt%):粉体塗料2gを140℃で30分乾燥し、乾燥前後の重量保持率(wt%)を算出した。
4)粒子径(μm):粉体塗料の体積平均粒径は、レーザー回折式散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、型式:LA−910)を用いて測定した。
5)耐ブロッキング性:粉体塗料30gを直径2cmの円筒容器に入れ、40℃に7日間貯蔵した後の粉体塗料の塊について以下の基準で評価した。
○…粉体塗料の塊が全くなく、凝集物が認められない。
△…粉体塗料の塊が若干認められるが、塊の凝集力が弱いので指で摘み取ることができない。
×…粉体塗料の塊が認められ、塊を指で摘み取ることができる。
6)塗膜外観(平滑性):粉体塗料を燐酸亜鉛処理鋼板に静電塗装し、160℃のオーブン中で20分硬化させて得た塗膜の表面平滑性を目視により評価判定した。
○…へこみ、凹凸などがまったく無く、平滑性が良好である。
△…少しへこみ、凹凸が認められ、やや平滑性が劣る。
×…相当にへこみ、凹凸が認められ、平滑性が劣る
【0044】
7)膜厚:塗装・硬化後の塗膜の膜厚を(株)ケット科学研究所製、膜厚測定器(型式:LZ−300C)を用いて測定した。
8)中心線平均粗さ(Ra):塗装・硬化後の塗膜の表面を(株)東京精密製、サーフコム(SURFCOM)触針式表面粗さ計を用い、凹凸の平均値を数値化した。カットオフは0.8mmであり、数値が小さい程、塗膜が平滑である。
9)光沢(60°):塗装・硬化後の塗膜表面の60°鏡面反射率(%)を測定した。JIS K5600 4.7に従った。
【0045】
<実施例1>(樹脂の溶液使用)
温度計、撹拌機、還流冷却器、窒素による圧力調整装置および底部抜き出し管
を備えた反応器中にイソプロパノール120部を仕込んで110℃に加熱し、
メタクリル酸メチル40部、メタクリル酸グリシジル30部、スチレン15部、メタクリル酸n−ブチル15部、t−アミルパーオキシイソノナノエート6部
を2時間かけて加え、同温度に3時間保持して硬化型アクリル樹脂の溶液(以下、樹脂溶液)を得た。
これとは別に、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(四国化成(株)製)19部、ベンゾイン(脱泡剤)0.5部、PL−540(楠本化成(株)製流動調整剤)0.5部をイソプロパノール40部に加えて溶液(以下、硬化剤溶液)を調製し、樹脂溶液と70℃に保温されたインラインミキサーで湿式混合した。引き続き上記の樹脂溶液と硬化剤溶液の混合溶液を、連続的に脱溶剤ベント付き押出機(サーモ・プラスティックス工業(株)製TP−25−T)に供給し、シリンダー温度85℃、スクリュー回転数170rpm、脱溶剤ベント圧力3kPaで溶剤を脱揮・除去し、混練組成物を得た。
この混練組成物を衝撃式粉砕機を用いて粉砕し、さらに分級し平均粒径25μmの粉体塗料を得た。得られた粉体塗料を燐酸亜鉛処理鋼板に静電塗装し、160℃のオーブン中で20分硬化させて塗膜を得た。得られた塗膜について物性を評価し、結果を、得られた硬化型アクリル樹脂の物性と共に、表1に記した。
【0046】
<実施例2>
イソプロパノールをアセトンに変更した以外は実施例1と同様に粉体塗料を製造し、粉体塗料および塗膜の物性を評価した。結果を、得られた硬化型アクリル樹脂の物性と共に、表1に記した。
【0047】
<参考例1>
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素による圧力調整装置および底部抜き出し管を備えた反応器中に、キシレン100部(重量部、以下同じ)を仕込んで115℃に加熱し、メタクリル酸メチル40部、メタクリル酸グリシジル30部、スチレン15部、アクリル酸n−ブチル15部、アゾビスイソブチロニトリル8部を3時間かけて加え、同温度に6時間保持して樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を170℃、1kPaで溶剤が留出しなくなるまで減圧蒸留し、冷却後、常温固体の硬化型アクリル樹脂を得た。
この樹脂の数平均分子量は3000、ガラス転移温度(Tg)は48℃であった。
得られた硬化型アクリル樹脂50部を粉砕機で粗粉砕した後、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート12部、表面調整剤0.3部、ベンゾイン0.3部を加え、ドライブレンドし、アクリル粉体塗料用原料混合物とした。
【0048】
<実施例3>(溶剤のサイドフィード)
混合−脱揮・除去装置として、実施例1と同様の押出し機を用いた。参考例1で得られたアクリル粉体塗料用原料混合物を、上記混合−脱揮・除去装置に供給し、シリンダー温度85℃、スクリュー回転数170rpmで、3kg/hの速度で押し出した。
このとき、混合−脱揮・除去装置の原料供給口の下流にあたる第1混練ゾーンにメタノールを1kg/hで供給してアクリル粉体塗料原料を連続的に混練しつつ、下流にある53kPaに調節された第1ベントで揮発分を一部脱揮した。更に第2混練ゾーン、第2ベント(5kPa)、第3混練ゾーン、第3ベント(3kPa)を経て混練と脱揮・除去を行い、混練組成物を得た。
この混練組成物を、実施例1と同様に粉体塗料を製造し、粉体塗料および塗膜について物性を評価し、結果を表1に記した。
【0049】
<実施例4>
連続混合機として、連続式二軸混練機S1型KRCニーダ((株)栗本鉄工所製、スクリュー径25mm)を使用し、脱揮・除去装置として、単軸押出機TP20(サーモプラスティック工業(株)製、スクリュー径20mm)を、吐出配管により、連続混合機に直列に連結した。
参考例1で得られた粉体塗料用原料混合物を、上記連続混合機のホッパーに定量フィーダーを用いて2kg/hで供給し、連続混合機胴体に、メタノールを0.5kg/hで供給し、シリンダー温度85℃、スクリュー回転数100rpmで連続的に混練した。
この混練組成物を、シリンダー温度85℃、スクリュー回転数100rpmに調節された上記の脱揮・除去装置に直接供給し、ベント圧力3kPaの条件で溶剤を脱揮更にした。溶剤が脱揮・除去された混練組成物を実施例1と同様に粉体塗料を製造し、粉体塗料および塗膜について物性を評価し、結果を表1に記した。
【0050】
<比較例1>
イソプロパノール120部をキシレン100部に変更し且つ加熱温度110℃を125℃に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂溶液を調製し、且つ同様にして粉体塗料を製造した。この粉体塗料および塗膜の物性の評価結果を、表2に示した。
この例では、キシレンが押出機中で完全に脱揮・除去できず、また硬化剤が均一に分散しておらず、ブロッキング性や塗膜物性に劣るものであった。
【0051】
<比較例2>
メタノールを供給せずにアクリル粉体塗料原料を混練した以外は実施例3と同
様に粉体塗料を製造し、粉体塗料および塗膜の物性を評価したところ、平滑性お
よび光沢に欠けるものであった。結果を表2に記した。
【0052】
<比較例3>
メタノールの代わりにトルエンを供給した以外は実施例3と同様に粉体塗料を製造し、粉体塗料および塗膜の物性を評価したところ、平滑性および光沢に欠けるものであった。結果を表2に記した。
【0053】
表1
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
硬化型アクリル樹脂
数平均分子量 4500 4500 3000 3000
Tg (℃) 51 51 48 48
粉体塗料
不揮発分濃度 (wt%) 99.5 99.6 99.6 99.5
粒子径 (μm) 25 26 27 26
耐ブロッキング性 ○ ○ ○ ○
膜厚 (μm) 45 45 43 42
塗膜外観 (平滑性) ○ ○ ○ ○
光沢 (60°) 95 94 95 94
Ra(μm) 0.12 0.12 0.10 0.10
【0054】
表2
比較例1 比較例2 比較例3
硬化型アクリル樹脂
数平均分子量 4500 3000 3000
Tg (℃) 51 48 48
粉体塗料
不揮発分濃度(wt%) 97.8 99.8 98.2
粒子径 (μm) 27 23 25
耐ブロッキング性 × ○ ×
膜厚 (μm) 52 51 49
塗膜外観 (平滑性) × × ×
光沢 (60°) 88 85 87
Ra(μm) 0.21 0.19 0.19
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、混合−脱揮・除去装置を用い、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)と硬化型アクリル樹脂(A)の溶液とを供給して、混合と溶剤の脱揮・除去を行うプロセスである。
【図2】図2は、混合−脱揮・除去装置を用い、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)の溶液と硬化型アクリル樹脂(A)の溶液とを供給して、混練と溶剤の脱揮・除去を行うプロセスである。
【図3】図3は、混合装置と脱揮・除去装置を用い、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)と硬化型アクリル樹脂(A)の溶液とを供給して、混合と溶剤の脱揮・除去を行うプロセスである。
【図4】図4は、混合装置と脱揮・除去装置を用い、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)の溶液と硬化型アクリル樹脂(A)の溶液とを供給して、混合と溶剤の脱揮・除去を行うプロセスである。
【図5】図5は、混合−脱揮・除去装置を用い、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)と硬化型アクリル樹脂(A)とを混合するに際して、溶剤を直接、サイドフィードし、混合と溶剤の脱揮・除去を行うプロセスである。
【図6】図6は、混合−脱揮・除去装置を用い、硬化型アクリル樹脂を混合するに際して、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)の溶剤を直接、サイドフィードし、混合と溶剤の脱揮・除去を行うプロセスである。
【図7】図7は、混合装置と脱揮・除去装置を用い、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)と硬化型アクリル樹脂(A)とを混合するに際して、溶剤を直接、サイドフィードし、混合と溶剤の脱揮・除去を行うプロセスである。
【図8】図8は、混合装置と脱揮・除去装置を用い、硬化型アクリル樹脂(A)を混合するに際して、硬化剤の溶剤を直接、サイドフィードし、混合と溶剤の脱揮・除去を行うプロセスである。
【符号の説明】
【0056】
1・・・硬化型アクリル樹脂(A)
2・・・1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)
3・・・溶剤(C)
4・・・硬化型アクリル樹脂(A)の溶液
5・・・1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)の溶液
6・・・混練組成物
11・・・連続混合機
13・・・連続混合―脱揮・除去装置
14・・・脱揮用ベント口
20・・・連続脱揮・除去装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(1)グリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物を15〜60モル%、及びメタクリル酸メチルを10〜50モル%含む原料モノマーを重合して得られた、数平均分子量が1000〜20000であり、かつガラス転移温度が30〜90℃の硬化型アクリル樹脂(A)、(2)1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)、及び(3)常圧における沸点が120℃以下であり、アルコール類、ケトン類、エーテル類、および水から選ばれた1種以上である溶剤(C)を使用して粉体塗料を製造する方法であって、
硬化型アクリル樹脂(A)と1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)と溶剤(C)とを、130℃以下の温度で少なくとも1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)が溶剤(C)に溶解するように混合する混合工程と、次いで、溶剤(C)を130℃以下の温度で脱揮する脱揮・除去工程を含むことを特徴とする粉体塗料の製造方法。
【請求項2】
1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)が、硬化型アクリル樹脂(A)を構成するグリシジル基及び/またはメチルグリシジル基当たり、0.7〜1.3倍当量の官能基を含む量で使用される請求項1記載の粉体塗料の製造方法。
【請求項3】
硬化型アクリル樹脂(A)が、グリシジル基及び/またはメチルグリシジル基含有不飽和化合物に由来する構成単位を25〜55モル%、及びメタクリル酸メチルに由来する構成単位を15〜45モル%含有し、数平均分子量が1300〜10000であり、かつガラス転移温度が35〜80℃である請求項1又は2に記載の粉体塗料の製造方法。
【請求項4】
溶剤(C)を、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)100重量部当り、10〜1000重量部の量で用いる請求項1ないし3のいずれかに記載の粉体塗料の製造方法。
【請求項5】
硬化型アクリル樹脂(A)が溶剤(C)を重合溶媒として用いての重合反応により製造されたものであり、該重合反応により得られた当該硬化型アクリル樹脂(A)と溶剤(C)との混合物を、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)または1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)および溶剤(C)と混合する請求項1ないし4のいずれかに記載の粉体塗料の製造方法。
【請求項6】
硬化型アクリル樹脂(A)と1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)と溶剤(C)との混合工程、及び溶剤(C)の脱揮・除去工程を、一台の混合−脱揮・除去装置を用いて連続的に行う請求項1ないし5のいずれかに記載の粉体塗料の製造方法。
【請求項7】
脱揮・除去装置が、少なくとも1個の脱揮口を備えた、単軸もしくは二軸の押出機またはニーダーである請求項6に記載の粉体塗料の製造方法。
【請求項8】
硬化型アクリル樹脂(A)と1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)と溶剤(C)との混合工程で使用する装置と、溶剤(C)の脱揮・除去工程で使用する装置とを直列に連結して、混合及び脱揮・除去を連続して行う請求項1ないし5のいずれかに記載の粉体塗料の製造方法。
【請求項9】
混合工程で使用する装置が、単軸もしくは二軸の押出機、単軸もしくは二軸のニーダー、又はインラインミキサーである請求項8に記載の粉体塗料の製造方法。
【請求項10】
溶剤(C)を脱揮・除去して得られた硬化型アクリル樹脂(A)と1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(B)との混合物を粉砕して粉体塗料を得る請求項1記載の粉体塗料の製造方法。
【請求項11】
溶剤(C)の脱揮・除去工程を噴霧乾燥装置を用いて行なう請求項1に記載の粉体塗料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−28443(P2006−28443A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212841(P2004−212841)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】