説明

粉体塗装装置及び粉体塗装方法

【課題】被塗装物の塗装領域の寸法精度を高めることのできる粉体塗装装置及び粉体塗装方法を提供すること。
【解決手段】粉体塗装装置が、粉体塗料からなる粉体を貯留する粉体貯留部(21)と、粉体貯留部(21)の下側に設けられたプレナム室(22)と、粉体貯留部(21)とプレナム室(22)とを流体連通可能に区画する多孔板(23)とを有する粉体流動槽(20)、及び粉体流動槽(20)を水平方向に加振する水平加振手段(30)を具備し、プレナム室(22)から多孔板(23)をとおして粉体貯留部(21)に空気が供給され、かつ粉体流動槽(20)が水平加振手段(30)により水平方向に加振されている間に、被塗装物の塗装領域だけが塗装されるように被塗装物が粉体中に部分的に浸漬される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動浸漬法による粉体塗装装置及び粉体塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流動浸漬法による粉体塗装、即ち、予熱された被塗装物を、粉体流動槽内の塗料粉体に浸漬し、被塗装物表面に塗料を融着させることにより粉体塗装を行うことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。流動浸漬法に用いられる粉体流動槽は、通常、粉体貯留部の底面に隣接して設けられたプレナム室とそれらを流体連通可能に区画する多孔板を備えており、粉体貯留部に貯留された粉体塗料は、プレナム室から多孔板を介して供給される空気により流動化される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本塗装技術協会編「塗装技術ハンドブック」日刊工業新聞社、1989年2月20日、p. 308
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被塗装物に、塗装領域と、塗料粉体の付着が許容されない塗装禁止領域とが設けられていて、塗装領域だけを流動浸漬法により粉体塗装する場合がある。その場合には、塗装禁止領域に塗料が付着しないように浸漬深さを管理する必要がある。しかしながら、流動浸漬法では、多孔板の微細な孔から噴出した空気により形成された気泡が、粉体の密度を不均一にするとともに、粉体の流動表面に凹凸を引き起こして流動表面の高さを不均一にし、その結果浸漬深さの比較的大きな変動を招いていた。そのため、従来技術による粉体塗装装置又は粉体塗装方法では、塗装領域の寸法許容誤差を相当に大きく設定することが必要であった。しかしながら、被塗装物が小型化するという昨今の状況においては、塗装領域の寸法許容誤差を縮小することが望まれていた。
【0005】
本発明は前述した従来技術の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、被塗装物の塗装領域の寸法精度を高めることのできる粉体塗装装置及び粉体塗装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被塗装物(W)に部分的に設けられた塗装領域(a)を流動浸漬法により粉体塗装するための粉体塗装装置であって、被塗装物(W)の進退が可能な上部開口(24)を備え、粉体塗料からなる粉体(P)を貯留する粉体貯留部(21)と、粉体貯留部(21)の下側に設けられたプレナム室(22)と、粉体貯留部(21)とプレナム室(22)とを流体連通可能に区画する多孔板(23)とを有する粉体流動槽(20)、及び粉体流動槽(20)を水平方向に加振する水平加振手段(30)、を具備し、プレナム室(22)から多孔板(23)をとおして粉体貯留部(21)に空気が供給され、かつ粉体流動槽(20)が水平加振手段(30)により水平方向に加振されている間に、被塗装物(W)の塗装領域(a)だけが塗装されるように被塗装物(W)が粉体(P)中に部分的に浸漬されること特徴とする、粉体塗装装置を提供する。
【0007】
本発明によると、多孔板(23)を通して噴出された空気により形成される気泡が減少するとともにそのサイズが縮小して流動表面の凹凸が小さくなることが観察された。その結果、被塗装物(W)の塗装領域(a)の寸法精度を高めることが可能になった。このように気泡が減少するとともにそのサイズが縮小して流動表面の凹凸が小さくなるのは、粉体流動槽(20)に加わる水平方向の振動力に起因して、粉体(P)と空気との混合が促進されたことが要因として考えられる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、粉体(P)が溢れ出る限界まで粉体貯留部(21)に貯留される。これによれば、粉体(P)の流動表面の高さの検知が不要になると共に、流動表面の高さの誤差を、その平面度に基づくものを除けば、ほぼゼロにすることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、多孔板(23)に対向してプレナム室(22)中に配置された第2の多孔板(72)にして、前記多孔板(23)を構成する孔よりも大きい孔で構成された第2の多孔板(72)を粉体流動槽(20)がさらに有している。これにより、粉体の流動表面の平面度を更に高めることが可能である。これは、プレナム室に配置された第2の多孔板(72)の作用により、多孔板(23)の表面に作用する空気圧力の均等化が更に促進されて、流動化した粉体(P)の密度の一様性が増すためと考えられる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、粉体貯留部(21)の大きさが、一つだけの被塗装物(W)の浸漬が可能な大きさである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、被塗装物(W)に部分的に設けられた塗装領域(a)を流動浸漬法により粉体塗装するための粉体塗装方法であって、粉体(P)が貯留された粉体貯留部(21)を有する粉体流動槽(20)準備する段階と、プレナム室(22)から多孔板(23)を介して粉体貯留部(21)内に空気を供給するとともに粉体流動槽(20)を水平方向に加振する段階と、加振する前記段階中に、被塗装物(W)の塗装領域(a)に粉体(P)が付着するように被塗装物(W)を粉体(P)中に部分的に浸漬する段階と、予め定められた時間が経過した後、被塗装物(W)を粉体(P)中から取り出す段階と、を含む粉体塗装方法を提供する。
【0012】
前記粉体塗方法を用いると、多孔板(23)を通して噴出された空気により形成される気泡が減少するとともにそのサイズが縮小して流動表面の凹凸が小さくなることが観察された。その結果、被塗装物(W)の塗装領域(a)の寸法精度を高めることが可能になった。
【0013】
請求項6に記載の発明では、粉体流動槽(20)を準備する前記段階において、粉体(P)が少なくとも溢れ出る限界まで粉体貯留部(21)に貯留される。これによれば、粉体(P)の流動表面の高さの検知が不要になると共に、流動表面の高さの誤差を、その平面度に基づくものを除けば、ほぼゼロにすることができる。
【0014】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】本発明による粉体塗装装置及び粉体塗装方法が適用される被塗装物である回転電機の固定子の塗装前の正面図である。
【図1B】前記固定子の塗装後の正面図である。
【図1C】図1BのC部の拡大詳細図である。
【図2】本発明による第1の実施形態の粉体塗装装置の要部の正面断面図である。
【図3A】第1の実施形態の粉体塗装装置とその支持構造体と基礎との関係を示す正面図である。
【図3B】図3Aで示される粉体塗装装置とその支持構造体の平面図である。
【図4】第2の実施形態の粉体塗装装置の要部の正面断面図である。
【図5】第3の実施形態の粉体塗装装置の要部の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に、本発明による粉体塗装装置及び粉体塗装方法が適用される被塗装物Wについて説明する。本明細書では、図1A、図1B、及び図1Cに示される回転電機の固定子Wを被塗装物Wの例として発明を説明する。ただし、そのような固定子W以外の物に対しても本願発明が適用され得ることは勿論である。
【0017】
図1Aは、塗装前の固定子Wを示しており、固定子Wは、固定子コアW1と巻線W2とを含んでいる。図1Bは塗装後の固定子Wを示しており、この図に示されるように巻線W2はその下端側に塗装領域aが部分的に設けられていて、その塗装領域aがエポキシ樹脂により粉体塗装され、また塗装領域a以外は塗料の付着が許容されない塗装禁止領域bである。この図の例では、粉体塗装により形成されたエポキシ樹脂被覆は絶縁被覆として機能するものである。またこの例では、図1BのC部の拡大詳細図である図1Cに示されるように、塗装領域aと塗装禁止領域bとの境界線が、固定子コアW1の端から下方へ2.75mmの位置で許容誤差±1.25mmで水平に延びている。
【0018】
次に、本発明による第1の実施形態の粉体塗装装置10をその要部断面正面図である図2及び概略的正面図と平面図である図3A及び図3Bを参照して説明する。
第1の実施形態の粉体塗装装置10は、粉体流動槽20と、前記粉体流動槽20を水平方向に加振するための水平加振手段30とを主要構成要素として具備している。また、図2に示される粉体塗装装置10は、それを床面等の基礎Bに固定するための支持構造体40、及び粉体を供給するための粉体供給装置50も具備している。
【0019】
前記粉体流動槽20は、流動浸漬法により粉体塗装を行うために、粉体塗料であるエポキシ樹脂粉体P(以下「粉体P」と呼ぶ)を貯留する粉体貯留部21と、この粉体貯留部21の下側に設けられたプレナム室22と、粉体貯留部21とプレナム室22とを流体連通可能に区画する多孔板23とを具備している。
【0020】
粉体貯留部21は、被塗装物搬送装置(図示せず)によって把持された被塗装物Wが進退する矩形状の上部開口24を有しており、この上部開口24の大きさは、本実施形態では一つだけの被塗装物Wが通過できる大きさで作られている。また、粉体貯留部21の底部には、上部開口24よりも拡大したフランジ状部分25が形成されており、前記フランジ状部分25において、粉体貯留部21は、多孔板23等を間に挟んでプレナム室22を形成する側壁部26にボルト29により固定される。但し、粉体貯留部21は、粉体Pを支持するための底面を有さず、したがって粉体Pは多孔板23によって支持される。
【0021】
多孔板23は、本実施形態では、矩形の平面形状を有するものであり、約φ0.01mmの微細な孔(図示せず)が多数設けられたものである。また、多孔板23の下面側には補強のための枠板23aが付着されていて、この枠板23aと共に多孔板23は、ボルト29を使って粉体貯留部21とプレナム室22を形成する側壁部26との間に挟まれて固定される。
【0022】
本実施形態におけるプレナム室22は、側壁部26と底板部27と上に配置された多孔板23とによって直方体状に形成されている。またプレナム室22の図の右側の側壁部26には、空気入口28が設けられていて、前記空気入口28には、一定圧力の高圧空気を供給することができる空気供給源(図示せず)に接続された管路60が連結されている。したがって、空気供給源から高圧空気がプレナム室22内に供給されると、高圧のプレナム室22から多孔板23の微細な孔をとおしてほぼ均一な圧力の空気が粉体貯留部21側へ噴出する。
【0023】
本実施形態における前記水平加振手段30は、回転式のバイブレータ30から構成されており、このバイブレータ30はブラケット31によって粉体流動槽20のプレナム室22の底板部27の外面に固定される。バイブレータ30は、回転軸線Raから偏心した重心を有するロータ32を内部に有しており、前記ロータ32を空気管路(図示せず)から供給される高圧空気により回転させることにより、前記回転軸線Raに直交する各方向に振動力を発生するものである。したがって、図2で示されるように、バイブレータ30のロータ32の回転軸線Raが鉛直方向に向くようにバイブレータ30を粉体塗装装置20に固定することにより、粉体流動槽20を水平方向で振動させることができる。
【0024】
また、本実施形態では、回転式のバイブレータ30の振動力の方向が回転して変化するので、粉体流動槽20は、基本的には旋回運動を行う。但し、図3Bに示されるように、ロータ32の回転軸線Raの位置と粉体流動槽20の中心あるいは4個のゴムブッシュ43が形成する仮想的矩形の中心位置が一致しないこと、及び支持構造体40の剛性に方向性があることから、粉体流動槽20は、円軌道に沿う旋回運動ではなく略長円軌道に沿う旋回運動により振動する。
【0025】
図3Aは、第1の実施形態の粉体塗装装置10と支持構造体40と基礎Bとの関係を示す正面図であり、図3Bはその平面図である。なお、図3A及び図3Bでは、図2で示された粉体供給装置50等の作図は省略されている。
【0026】
支持構造体40は、図3A及び図3Bに示されるように、基礎B面に固定されるみぞ形部材41と、粉体流動槽20のプレナム室22の底板部27に結合される平板部材42とをそれぞれ左右一対具備しており、前記平板部材42とみぞ形部材41の上側部分とが左右片側2個ずつの円筒形のゴムブッシュ43を介してボルト44で固定される。本実施形態におけるゴムブッシュ43は、粉体流動槽20を所定の振幅で振動させるため、及び基礎Bへの振動の伝達を防ぐ防振のために用いられている。ただし、防振機能が求められないのであれば、このようなゴムブッシュ43を含まない支持構造体も可能であり、その場合には、粉体流動槽20の振動の所望の振幅に対応する支持構造体の全体の剛性が得られる支持構造体を準備すればよい。
【0027】
再び図2に戻って、粉体供給装置50について説明する。粉体供給装置50は、粉体貯留部21の上部開口24から粉体Pを供給するためのホッパー部51と、前記ホッパー部51を支持するために粉体流動槽20の側壁部26に固定された略Z字形の支持フレーム52と、前記支持フレーム52の上部に連結されて粉体Pの落下を促進する粉体供給用バイブレータ53とを具備している。粉体供給装置50は、例えばレーザー光を利用した液面センサ(図示せず)を使って検知された粉体貯留部21内の粉体Pの流動表面の高さに応じて粉体Pを粉体貯留部21に補充するように構成されている。
【0028】
次に、本願発明の第1の実施形態の粉体塗装装置10の作用について、それを使う粉体塗装方法の例に基づいて以下に説明する。
【0029】
最初に、粉体貯留部21に所定の量の粉体Pを準備しておく。ここで、所定の量とは、空気で流動化した粉体Pにより定まる流動表面の高さが所定の高さを示す量である。また、所定の高さとは、浸漬された被塗装物Wの塗装領域aと塗装禁止領域bとの境界線に対応する高さであり、浸漬される塗装領域aの体積により上昇する分も考慮された高さであり、図2に示される例では粉体貯留部21の上端縁21aまでの最大高さの約80%の高さである。
【0030】
次に、空気供給源から高圧空気をプレナム室22内に供給することにより、多孔板23をとおして空気を粉体貯留部21内へ噴出させる。
【0031】
次に、回転式のバイブレータ30を作動させることにより粉体流動槽20を水平方向に加振する。このとき、本実施形態では、粉体流動槽20は、振動数が400〜500rpm、振幅が約0.02mmで振動する。
【0032】
次に、前述の空気による粉体Pの流動化及び水平方向での加振を継続しながら、予熱炉(図示せず)で約180℃に予熱していた一つの被塗装物Wを、被塗装物搬送装置(図示せず)を使って粉体貯留部21の上方に搬送した後、下方に移動させることにより被塗装物Wを粉体P中に部分的に浸漬させる。このとき、被塗装物Wの塗装領域のみが粉体Pに浸漬されるように被塗装物搬送装置の下降距離が定められている。代わりに、液面センサ(図示せず)で検知した流動表面の高さに応じて被塗装物搬送装置(図示せず)の下降距離を制御してもよい。
【0033】
所要の膜厚等により規定された時間が経過した後、被塗装物搬送装置(図示せず)によって被塗装物Wを上昇させて粉体P中から引き上げ、その後他の場所へ移動させて自然乾燥させる。あるいは、塗料の種類によっては、被塗装物Wは粉体貯留部21から引き上げられた後に焼付け炉(図示せず)に運ばれることもある。
【0034】
以上で、一つの被塗装物Wに対する粉体塗装が終わる。次に、流動表面の高さが液面センサ(図示せず)で検知され、それが所定の下限高さよりも低ければ粉体供給装置50により粉体Pを供給する。また、後続する一つの予熱された被塗装物Wを同様に効率的に処理するために、通常は、前述の空気による粉体Pの流動化及び水平方向での加振は止めること無く継続させておく。
【0035】
前述の実施形態による粉体塗装装置10あるいは粉体塗装方法を用いると、気泡が減少するとともにそのサイズが縮小して流動表面の凹凸が小さくなることが観察された。これは、粉体流動槽に加わる水平方向の振動力に起因して粉体Pと空気との混合が促進されたことが要因として考えられる。
【0036】
次に、本発明による第2の実施形態の粉体塗装装置200について、図4を参照して説明する。この実施形態の粉体塗装装置200は、図2で示された第1の実施形態の粉体塗装装置10と構造的にはほとんど同じであるが、粉体Pが、粉体貯留部21の上端縁21aに達して、溢れ出る限界まで粉体貯留部21に貯留されていること、及び粉体Pが粉体貯留部21から溢れ出たときそれを粉体貯留部21の周囲で受け止めるように形成された粉受け71を粉体貯留部21のフランジ状部分25の上に備えることで異なっている。
【0037】
第2の実施形態では、粉体貯留部21はその上端縁21aに達する粉体Pで満たされているので、粉体流動表面の高さは常に一定に維持される。また、粉体Pが一時的に粉体貯留部21の上端縁21aを越えて山状に盛り上がったとしても、粉体Pを空気で流動化し且つ水平方向に加振することにより余分な粉体Pは溢れ出して、粉体Pの流動表面の高さは粉体貯留部21の上端縁21aと同一レベルになる。従って、この第2の実施形態の粉体塗装装置200を使用すると、粉体Pの流動表面の高さの検知が不要になると共に、流動表面の高さの誤差は、その平面度に基づくものを除けば、原理的にゼロになる。また、粉体Pを粉体供給装置50を使って補給する場合には、粉体Pが溢れ出るほどに多めに補給したとしても流動表面の高さは一定に維持されるので、粉体Pの補給量の管理が簡単になる。なお、粉体貯留部21から溢れ出て粉受け71で回収された粉体Pは、通常は再利用することが可能である。
【0038】
次に第3の実施形態の粉体塗装装置300について、図5を参照して説明する。この実施形態の粉体塗装装置300は、プレナム室22の内部に第2の多孔板72を更に具備することにおいて前述した第2の実施形態の粉体塗装装置200と異なっている。第2の多孔板72は、本実施形態では、前述した多孔板23(以下「第1の多孔板23」と呼ぶ)の約φ0.01mmの孔よりはるかに大きいφ2mmのサイズの多数の孔があけられた板である。また、第2の多孔板72は、プレナム室22の空気入口28よりも上側で、第1の多孔板23に平行に対向するように配置され、その結果プレナム室22を、空気入口28を備える下側空間22Lと第1の多孔板23に接する上側空間22Uとに区画している。
【0039】
第3の実施形態の粉体塗装装置300の粉体流動槽20を使って粉体Pを流動化すると、第1及び第2の実施形態の場合よりも粉体Pの流動表面の平面度がさらに高まることが観察された。これは、第2の多孔板72を追加することにより、第1の多孔板23の表面に作用する空気圧力の均等化がさらに促進され、その結果、流動化した粉体Pの密度の一様性が高められたためと考えられる。
【0040】
本願発明による、前述の実施形態の様々な変形形態が可能であり、例えば、第2の多孔板72を第1の実施形態の粉体塗装装置10に追加してもよい。
【0041】
また、第1の実施形態の説明では粉体流動槽20の振動の振幅と振動数が示されているが、それら振幅と振動数は、粉体Pの流動化表面の平面度を高めることができる範囲であれば特に限定されず、またその最適値は、粉体Pの材質、貯留量、粒径、供給空気量等の条件により異なる。
【0042】
前述の実施形態では、粉体Pの流動化のための気体として空気が用いられたが、空気に代えて、例えば窒素やアルゴンのような不活性ガスが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0043】
20 粉体流動槽
21 粉体貯留部
21a 上端縁
22 プレナム室
23 多孔板
24 上部開口
25 フランジ部
26 側壁部
28 空気入口
30 水平加振手段
40 支持構造体
41 みぞ形部材
42 平板部材
43 ゴムブッシュ
50 粉体供給装置
60 管路
a 塗装領域
P 粉体
W 被塗装物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物(W)に部分的に設けられた塗装領域(a)を流動浸漬法により粉体塗装するための粉体塗装装置であって、
前記被塗装物(W)の進退が可能な上部開口(24)を備え、粉体塗料からなる粉体(P)を貯留する粉体貯留部(21)と、前記粉体貯留部(21)の下側に設けられたプレナム室(22)と、前記粉体貯留部(21)と前記プレナム室(22)とを流体連通可能に区画する多孔板(23)とを有する粉体流動槽(20)、及び
前記粉体流動槽(20)を水平方向に加振する水平加振手段(30)、を具備し、
前記プレナム室(22)から前記多孔板(23)をとおして前記粉体貯留部(21)に空気が供給され、かつ前記粉体流動槽(20)が前記水平加振手段(30)により水平方向に加振されている間に、前記被塗装物(W)の前記塗装領域(a)だけが塗装されるように前記被塗装物(W)が前記粉体(P)中に部分的に浸漬されること特徴とする、粉体塗装装置。
【請求項2】
前記粉体(P)が溢れ出る限界まで前記粉体貯留部(21)に貯留されていることを特徴とする、請求項1に記載の粉体塗装装置。
【請求項3】
前記多孔板(23)に対向して前記プレナム室(22)中に配置された第2の多孔板(72)にして、前記多孔板(23)を構成する孔よりも大きい孔で構成された第2の多孔板(72)を前記粉体流動槽(20)がさらに有する、請求項1又は2に記載の粉体塗装装置。
【請求項4】
前記粉体貯留部(21)の大きさが、一つだけの前記被塗装物(W)の浸漬が可能な大きさであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉体塗装装置。
【請求項5】
被塗装物(W)に部分的に設けられた塗装領域(a)を流動浸漬法により粉体塗装するための粉体塗装方法であって、
前記粉体(P)が貯留された粉体貯留部(21)を有する粉体流動槽(20)準備する段階と、
プレナム室(22)から多孔板(23)を介して前記粉体貯留部(21)内に空気を供給するとともに前記粉体流動槽(20)を水平方向に加振する段階と、
加振する前記段階中に、前記被塗装物(W)の前記塗装領域(a)に前記粉体(P)が付着するように前記被塗装物(W)を前記粉体(P)中に部分的に浸漬する段階と、
予め定められた時間が経過した後、前記被塗装物(W)を前記粉体(P)中から取り出す段階と、を含むことを特徴とする粉体塗装方法。
【請求項6】
前記粉体流動槽(20)を準備する前記段階において、前記粉体(P)が少なくとも溢れ出る限界まで前記粉体貯留部(21)に貯留されることを特徴とする、請求項5に記載の粉体塗装方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−235240(P2011−235240A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109452(P2010−109452)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】