説明

粉末形態にある無菌生成物を保存しかつ輸送するとともに、その中でその生成物の溶液を作るための袋

【課題】粉末形態にある無菌生成物を保存しかつ輸送するとともに、その中でその生成物の溶液を作るための袋。
【解決手段】粉末形態にある無菌生成物を含むポリオレフィン構造体からなる袋1であって、膜によって塞がれた口部2を有しており、口部2を通って液体が袋1の中に送られ、粉末で無菌溶液を作ることができ、可撓性材料の3つの層から作られた外袋12の中にそれ自体収容することのできる中袋11の中に収納されるのが好ましい袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末形態にある生成物を無菌状態の下に保存することができ、また、その中へ供給される液体によって生成物の無菌の溶液(この用語には分散液あるいは懸濁液もまた含まれる)をその中で作ることができる袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体状態で無菌の形態で得られる多くの生成物は、無菌の溶液、懸濁液、分散液などのように、液体状態で用いられることが知られている。
【0003】
典型的な例は、抗生物質あるいはビタミンのような医薬品、あるいは、使用時に液体に溶かされあるいは分散される、細胞、バクテリアあるいは糸状菌のような微生物のための培養基である。
【0004】
無菌の粉末を液体に溶かしあるいは分散させ、その一方で無菌状態を維持するという問題は重大であり、かつ費用のかかるものであり、また、さまざまな方法で解決されるが、そのすべてには、特に重要な2つの場合について言及して以下に要約する諸問題が含まれている。
【0005】
たとえば、細胞培養基は、ポリエチレン袋あるいはねじ付き栓で塞がれたポリエチレンびんなどの中に入れて販売することができる粉末の形態に作られる。使用時に、この生成物は、液体に溶かされて、全体として無菌の環境の中で溶液(普通はアミノ酸、電解液あるいはビタミン溶液)が形成されるが、これには、時間とかなりの費用がかかる。
【0006】
このような方法で得られた無菌溶液は、適切な無菌びん詰め環境にあるガラス製のジャーあるいはびんの中へ送り込まれ、次いで、密封されたびんが、特別なハウジングと保護容器の中に入れられてクライアントへ急送される。その後、使用者は、その中に含まれた溶液を流し出すために無菌状態の下でびんを開けねばならない。
【0007】
この方法は、よく知られており、たとえば米国特許第4,910,147号の明細書における第1欄の第9〜59行に説明されている。
【0008】
これらの問題を解決するために、米国特許第4,910,147号の明細書には、生成物を販売するのではなく、半自動無菌充填機を使って密封可撓袋に送り込まれてその袋の中に納められた細胞培養基の調製ずみ無菌溶液を使用者に販売することが提案されている。溶液で完全に満たされたそのような袋は、ガラスびんよりも扱いやすく、また、生産者によって容易にかつ経済的に使用者へ急送することができ、使用者は、特別な装置や無菌環境によることなく、無菌溶液の全部または一部を袋に設けられた1つ以上の口部を通して直接流し出すことができる。
【0009】
しかしながら、このようなシステムにもまた、いくつかの問題がある。すなわち、比較的大量、たとえば5リットル以上の液体容積が含まれている袋の場合に、液体で満たされた小袋を保管して輸送することは比較的簡単であるが、輸送中にその液体によって加わる水圧の強さによってその袋が破れるおそれがある。このことは、米国特許第4,910,147号明細書と同じ発明者及び同じ権利者に与えられた米国特許第4,968,642号明細書の第1欄の第34〜50行に明確に説明されている。
【0010】
このため、米国特許第4,968,624号明細書には、そのような溶液が含まれている袋を保管と輸送のために納めなければならない、きわめて複雑な剛性構造物について説明されている。
【0011】
また、たとえば、ゴム栓で密封されたガラスびんの中に一回分の量が含まれたそうした結晶性無菌抗生物質(粉末形態にある)を用いる方法に言及することができる。このような抗生物質を用いるために、注射器を使って無菌溶媒(水)を小びん(第1にこわされるかあるいは開けられる)から取り出し、次に、注射器の針を栓に突き刺すことで溶媒をびんの中へ送り込み、びんを振って抗生物質粉末を溶かし、そして、このような方法で作られた溶液が、びんの栓を通る針を介して注射器の中へ流し込まれ、その後、溶液は患者の体内へ注射することができる。
【0012】
この操作は、そうした溶液を調製してそれを1日にせいぜい1回か数回注射しなければならない使用者なら比較的簡単に実行されるが、専門的職員(看護婦)がそれと同じ操作を毎日、かなり多数回繰り返さなければならない病院においては、それは、きわめて多大の労力を要しかつ費用がかかることになり、また、かなりの時間の浪費と、高い費用と、無菌状態を維持するという深刻な問題とをはらんでいる。多数のゴム栓付き空ガラスびん、ガラス小びん、および多種多様な包装材料を棄てる必要があるために、さらに問題は大きくなる。
【0013】
病院へ急送するのに適した施設で抗生物質の溶液を(たとえば、米国特許第4,910,147号の明細書に記載されたような袋の中で)調整することは不可能であることに再度留意すべきである。なぜならそのような溶液が、きわめて短い時間しか無変化のままで維持されず、従って、それらの保存に特別な注意が払われたときにだけ無変化のままで維持されるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記のことを考慮に入れると、本発明の主な目的は、粉末形態にある無菌生成物を保存しかつ輸送するために、また、それを溶媒の中へ送り込んで、無菌状態の下にその中で直接、粉末の生成物の溶液、分散液あるいは懸濁液を作るために、使用することのできる袋であって、溶液などの全部あるいは一部が、それらを使用するために容易に、速く、しかも安全に流れ出るための少なくとも1つの口部が設けられている袋を提供することである。
【0015】
さらに別の目的は、粉末形態にある無菌生成物を、保管可能かつ輸送可能な可撓袋の中へ容易に入れることができ、さらに、そのような生成物の溶液などを、溶液が使用されるときに袋の中で続けて直接作ることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的およびさらに別の目的は、周縁で密封されたポリオレフィン構造体の袋であって、通路を画定し、通路の2つの端部が袋の内側へ開口するとともにそれぞれ袋の外側へ開口する、ポリオレフィン構造体の少なくとも1つの口部を有し、前記通路が、口部の一部分を形成しかつ袋の中で無菌状態を確実に維持するための破れやすい膜によって塞がれており、
袋が、粉末形態にある無菌生成物を含み、袋の容量が、液体を前記の口部および前記の膜を通して袋の中へ送り込むことによって得られる最終的な無菌生成物の溶液、分散液あるいは懸濁液の直接使用可能な容積を超えていることを特徴とする袋によって達成することができる。
【0017】
袋の構造および使用方法は、添付図面を参照して非限定的な例によって与えられた好ましい実施形態の説明で、いっそう明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】袋の模式的正面図である。
【図2】袋入口部が設けられた袋の一部と同じ平面にある部分の一部拡大断面図を示している。
【図3】図1の3−3線に沿った、袋を通る断面図であり、袋が粉末形態にある生成物で最小量だけ満たされ、口部が塞がれた状態が示されている。
【図4】図3に類似しているが、袋の容量の一部だけを占める容積がある液体を袋の中へ送り込むために口部が開いている。
【図5】粉末の生成物の保管および使用者への急送のために使われる、さらに2つの袋の中へ挿入されて閉じられた袋を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、図1〜図4について言及するが、これらの図には、ポリオレフィン、好ましくは低密度ポリエチレンから構成され、全周縁に沿って密封された袋1が示されている。袋1には、一方の端部に口部2があるが、口部2は、細長いテーパ状本体3と一体構成であってそこから突出する形態に形成されており、本体3から、さらに別の口部4が突出している。これらの口部2および4と本体3とは、袋1と同じ材料から構成されており、本体3は、口部2および4の一方の端部が袋の内側へ開口し、他方の端部がこの袋の外側へ開口するように、袋1の周縁における接合用綴じ目5の中へ組み入れられている。
【0020】
図2からわかるように、口部2および4によって、それぞれの膜6および7でそれぞれ塞がれた管路が区画されている。これらの膜6および7は、口部と一体に形成されているとともに、後で説明するように、袋の中に粉末形態にある生成物が含まれるときに、その袋の中の無菌状態を確保するように構成されている。
【0021】
これらの図から、2つの口部2および4の自由端部に保護栓8および9がそれぞれ取り付けられており、これらは必要に応じて取り外すことができるということも理解される。
【0022】
袋1は、周縁全体に沿って接合される前に、(たとえばベータ線で)滅菌される。その後、無菌環境にある自動機械を使って、粉末状態にある一定量の無菌生成物10が袋の中へ送り込まれるが、生成物は、図3からわかるように、袋の容量の小さい部分だけを占める。粉末は、有利に、口部2および4の備わった端部から遠い方の端部を通して送り込むことができ、その後、口部のある端部が熱接合される。
【0023】
説明されている袋は、袋の中に含まれた粉末形態の無菌生成物を、無菌環境に納めるとともに保護する。
【0024】
この袋を包装した生産者は、袋を、容易にかつ経済的に、保管して使用者へ輸送することができる。
【0025】
保管と輸送とをごく安全に行うために、説明されている袋1は、同様にポリオレフィンから、好ましくは高密度ポリエチレンから構成された中袋11(図5)の中に挿入され、密封された後に外袋12の中に挿入されるのが好ましい。外袋12は、互いに接合された、異なる材料で作られた3つの層からなり、内側層13がポリオレフィン(好ましくは高密度ポリエチレン)あるいはポリ塩化ビニルから構成され、中間層が包装材料(好ましくはアルミニウム)から構成され、外側層がポリオレフィン、ナイロンあるいはポリエステルから構成されている。
【0026】
袋11および12の中に袋1を包装する技術は、既知であり、また、ヨーロッパ特許出願公開公報第201,880号に対応する米国特許第4,700,838号の明細書に例示された種類のものである。
【0027】
包装材料の性質は、一般的に言うと(アルミニウムに加えて)、米国特許第4,910,147号明細書に定義されたものである。
【0028】
粉末形態にある無菌生成物を用いるときには、袋1が保護袋から取り出され、栓8がねじ外されて、灌流器が口部2の中へ挿入され、その自由端16によって膜6(図4)が破られる。この灌流器は、既知の装置であるので、簡潔さのために説明を行わない。その端部は突起部2のくぼみに密封状に係合し、そこを通って所望量の水を無菌状態で袋1の中へ容易に送り込み、粉末状の生成物とともに袋の容量の一部だけを満たす溶液17を作ることができる。このように袋1の一部だけを満たすことは、力強く振り動かされる袋の中の液体が粉末形態にある生成物を速くかつ完全に溶かし、分散させあるいは懸濁させて、使用に適したものにするために必要である。
【0029】
説明されている袋の好ましい1つの使用例は、結晶性無菌抗生物質を保存して輸送し、次いで、病院などで注射することのできる溶液を作ることである。
【0030】
詳細な実施例を示すために、袋1は、厚さが150ミクロンの低密度ポリエチレンのシートから作製され、35cmの高さと45cmの幅とを有している。粉末形態にある300グラムの抗生物質が、この袋の中へ送り込まれて、無菌環境に保存される。袋1は、厚さが100ミクロンであり、高さが40cm、幅が48cmである高密度ポリエチレンの中袋の中で密封される。次いで、中袋は、互いに接合された3つの層から作られた、高さ43cm、幅54.4cmの外袋の中へ挿入される。外袋の内側層は厚さ0.075mmの高密度ポリエチレから作られており、中間層は厚さ0.01mmのアルミニウムのシートから作られており、外側層は厚さ0.012mmのポリエステル樹脂である。
【0031】
抗生物質が用いられるときには、内袋1が中袋11および外袋12から取り出されて、3000ミリリットルの注射級の水が説明ずみの灌流器(図4)を介して内袋1の中へ送り込まれ、特定の治療薬のために必要な濃度、ここでは100ミリグラム/ミリリットルの溶液が作られる。抗生物質の溶液17が袋の容量の一部だけを占めることで、袋を強く振れば抗生物質を速くかつ完全に溶かすことができる、という点に留意することは重要である。袋の容量はその中で調製される溶液の容積の1.5〜2倍であるのが好ましい。
【0032】
このようにして得られた抗生物質の溶液は直接用いることができ、たとえば、それぞれ30ミリリットルの溶液が入る無菌注射器の中へ移すことができる。液体をこのような袋の中へ送り込むために使われる灌流器の自由端16を通して溶液を流し出す(袋をその口部2を下に向けて配置することで)既知の種類の自動機械によって、注射器にまとめて(たとえば、一度に10本、20本、あるいはそれ以上の注射器)満たすことができる。
【0033】
所望であれば、抗生物質溶液の個々の量を、口部4(厳密には必要でないが、ある方が好ましい存在)を通して流し出すことができる。このようにするためには、栓9が取り外され、次いで、注射器の針によって、ゴム栓20(口部4のくぼみを袋1の外側へ封止する)と膜7とが突き刺される。
【0034】
注射器の針が取り外されると、溶液は袋1から流れ出すことはできない。ゴム栓20によって阻止されるからである。
【0035】
注射器は、満たされてから短時間、使わないときには、冷凍庫の中に保存され、その後、温度管理された容器に入れられて病院の使用者へ急送される。
【0036】
先の説明から、抗生物質の溶液は、無菌環境において所望の濃度で、きわめて容易にかつすばやく作ることができ、また、注射器は、従って、同じように容易にかつ経済的に満たすことができる、ということが明らかである。
【0037】
先に説明したような方法によれば、伝統的なシステムと比べて、次のようなきわめて重要な利点が得られる。すなわち、粉末形態にある無菌抗生物質をガラスびんの中に保存することはもはや必要ではなく、最終医薬品の汚染のおそれをかなり減らすことができ(伝統的なシステムでは、それぞれの注射器について溶液を個々に用意しなければならず、また、一般的に無菌でない環境の中で溶液を注射器に送り込まなければならない)、また、ガラスびん、金属リング、ゴム栓(それぞれのびんに1つ)、溶媒のためのガラス小びんなどを使用することはもはや必要でない、という事実に伴って、かなりの費用節約および環境保護になる。
【0038】
これらのすべてによって、かなりの費用減少がもたらされるが、とりわけ、病院や、かなりの量の抗生物質溶液を調製しなければならない施設では、個々の抗生物質溶液を調製するためのかなりの数の専門的職員がもはや必要でないので、かなりの費用減少がもたらされる。
【0039】
袋の中に含まれる無菌生成物が、医薬品ではなく、粉末形態にある他の生成物であって、それらの使用のために細胞培養基のようなさまざまな液体の中に溶かされたり分散されたりする生成物であっても、きわめて大きい利点が得られる。
【0040】
本発明は、説明された袋に加えて、この明細書の導入部分とこの明細書に添付されている特許請求の範囲とに定義されたように、粉末形態にある無菌生成物を保存しかつ輸送し、さらに無菌状態の下でそれらを液体の中に溶かしたり分散させたりする方法にも関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末形態にある無菌生成物を保存しかつ輸送するとともに、その生成物の溶液、分散液あるいは懸濁液を作るための袋であって、袋は、ポリオレフィン構造体からなり、周縁で密封されており、同様にポリオレフィン構造体からなり、2つの端部が袋の内側へ開口するとともに外側へそれぞれ開口する通路が画定されている少なくとも1つの口部を有しており、前記通路が、口部の一部分を形成するとともに袋の内部で無菌状態を確実に維持するための破れやすい膜によって塞がれており、
袋は、粉末形態にある無菌生成物を含み、袋の容量は、口部および膜を通して袋の中へ液体を送り込むことによって得られる最終的な無菌生成物の溶液、分散液あるいは懸濁液の直接使用可能な容積を超えていることを特徴とする袋。
【請求項2】
前記ポリオレフィンが、低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の袋。
【請求項3】
同様にポリオレフィンから構成される中袋の中に収められ、密封され、かつ互いに接合された、異なる材料からなる3つの層で構成される外袋に挿入され,密封されることおよび内側層がポリオレフィンあるいはポリ塩化ビニルからなり、中間層が包装材料から構成され、外側層がポリオレフィン、ナイロンあるいはポリエステルから構成されていることを特徴とする請求項1および2に記載の袋。
【請求項4】
粉末形態にある無菌生成物を保存しかつ輸送するとともに、前記生成物の溶液、分散液あるいは懸濁液を作るための方法であって、
前記生成物は、可撓性材料から構成された無菌袋であって、液体を袋の中へ送り込むことのできる、膜によって塞がれた開口が設けられた無菌袋の中に納められて密封されており、袋の最小容量は、液体の容積と袋の中へ送り込まれる粉末の容積との合計の少なくとも1.5倍であることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−13188(P2010−13188A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−176069(P2009−176069)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【分割の表示】特願2000−576813(P2000−576813)の分割
【原出願日】平成11年4月23日(1999.4.23)
【出願人】(594135140)
【Fターム(参考)】