説明

粉末状共重合体の製造方法及びその共重合体、並びに高分子乳化剤

【課題】 カルボン酸類と、長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの粉末状共重合体の製造方法が有する問題点を解消することと、性能に優れた上記粉末状共重合体の提供。
【解決手段】 炭素原子数が3〜6の不飽和カルボン酸またはその塩と、炭素原子数が8〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合を、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの四分の一未満(質量換算)は、重合開始時に水可溶性有機溶剤を重合媒体とする重合系に存在させ、残りの四分の三以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、重合開始後に重合系に添加して共重合を行うとともに、アルカリを添加して、得られた共重合体を粉末として析出させる方法で行い、高分子乳化剤として優れた粉末状共重合体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉末状共重合体、より具体的には、不飽和カルボン酸またはその塩と、アクリル酸またはメタクリル酸エステル(以下、アクリル酸とメタクリル酸を合わせて(メタ)アクリル酸という。)の、粉末状共重合体の製造方法及びその共重合体、さらには該共重合体からなる高分子乳化剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不飽和カルボン酸またはその塩と、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体粉末で水に可溶なものは、クリーム、ローション、歯磨き、シャンプーなどの化粧品、水性塗料、水性接着剤、シーリング剤などの増粘剤、顔料や滑剤の沈降防止剤、乾電池の金属粉の分散安定剤などとして様々な分野で使用されている。これらの共重合体粉末のなかには、水と油を混合する際の乳化能力に優れているものがあり、それらは、クリーム、ローション、シャンプーなどの化粧品における高分子乳化剤として用いられている。
【0003】
それら高重合度の水溶性ポリカルボン酸系重合体粉末の製造方法は、従来から種々知られているが、例えば、特公昭52−127993号公報(特許文献1)には、水可溶性有機溶媒中に、α、β−不飽和カルボン酸、又はこれを主体とする他の共重合可能なビニル化合物との混合単量体を逐次投入し重合させつつ、同時にアルカリの逐次投入により、重合の間に中和反応を行う、いわゆる析出(沈殿)重合法が提案されている。
【0004】
また、特公昭60−12361号公報(特許文献2)では、ポリカルボン酸類と長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの水可溶性の共重合体粉末を、析出重合によって調製することが提案されている。
【0005】
さらに、特公平2−62651号公報(特許文献3)では、特定の有機溶剤中で一部中和させた状態で、析出重合によってポリカルボン酸を調製することが提案され、カルボン酸類と長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの共重合体粉末に関しても開示している。
【0006】
一方、水中油滴型エマルションまたは油中水型エマルションを形成させる乳化技術は、化粧品、医薬品(医薬部外品を含む)等の分野においては必須の技術であって、通常、乳化を行う場合は、比較的低分子の界面活性剤を乳化剤として用いて、所要の乳化を行っている。例えば、水中油型のエマルションを形成させるためには、比較的高いHLBを有する親水性界面活性剤を乳化剤として使用し、油中水型のエマルションを形成させるためには、比較的低いHLBを有する親油性界面活性剤を乳化剤として用いることが、通常行われている。
【0007】
また、近年、化粧品の多様化が進み、特性の異なるものへの要求が多く、そのための手段として、乳化手段に関しても種々要望が出されている。そこで、これらの要求に応えるものとして、水中油型エマルションの形成に関して、アクリル酸−メタアクリル酸アルキル共重合体(例えば、PEMULEN:NOVEON(米)社)を乳化剤として用いることで、より刺激性の少ない水中油型組成物を調製することが提案されている。
【特許文献1】特公昭52−127993号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特公昭60−12361号公報(特許請求の範囲、実施例1)
【特許文献3】特公平2−62651号公報(特許請求の範囲、例1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の共重合体粉末の製造方法では、水溶性有機溶剤に難溶あるいは不溶な単量体との共重合は、単量体そのものが重合工程中に析出してしまうため、良好な共重合体を得ることが困難で、得られた共重合体粉末を水に溶解したときに不溶解物が生じることが多く、分離乾燥工程などでそれら水不溶解物を除去したとしても、目的とする特質を有する重合体が得られ難いという問題を残している。
【0009】
また、特許文献2に記載の方法では、重合媒体として、ベンゼン、トルエン、ヘプタンなどの有機溶剤を使用しているので、得られた重合体中にそれらの有機溶剤が微量とはいえ残存しているため、化粧品、医薬品などの用途には不適切なものである上、これらの重合体は酸タイプであるので、乳化増粘を行う際には、中和剤等が必要になり乳化増粘工程に時間を要するという問題を有している。
【0010】
さらに、特許文献3に記載の方法においては、カルボン酸類と長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの共重合体粉末の析出重合をも示唆しているが、この方法で共重合体粉末の析出重合を行うと、ポリカルボン酸と長鎖アルキル(メタ)アクリル酸エステルが分離した状態で析出し、また水に溶解させたときに不溶解物が生じるなど、問題が多く、目的とする特質を有した重合体が得られ難い方法である。
【0011】
一方、市販されている、例えば上記した、アクリル酸−メタアクリル酸アルキル共重合体も、酸タイプのポリマーであるので、水、油を乳化させる乳化組成物を作製する際に、水にポリマーを添加して分散させるのに時間が掛かり、また、中和剤を添加する工程が必要で、乳化増粘工程に時間を要するという問題を有している。
【0012】
発明者等は、カルボン酸類と、長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの共重合、さらには、得られる共重合体が有する上記のような問題点を解消し、性能に優れた、カルボン酸類と、長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの粉末状共重合体を提供すべく、それらの共重合方法について検討の結果、カルボン酸類と長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの析出共重合において、それらを特定の条件下に分割重合することにより上記課題が解決でき、得られた粉末状共重合体が高分子乳化剤として格別に優れていることを見出して、この発明を完成したのである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、この発明の請求項1に記載の発明は、
炭素原子数が3〜6の不飽和カルボン酸またはその塩と、炭素原子数が8〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合を、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの四分の一未満(質量換算)は、重合開始時に水可溶性有機溶剤を重合媒体とする重合系に存在させ、
残りの四分の三以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、重合開始後に重合系に添加して共重合を行うとともに、アルカリを添加して、得られたポリカルボン酸系の共重合体を粉末として析出させること
を特徴とする粉末状共重合体の製造方法である。
【0014】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の粉末状共重合体の製造方法において、
前記共重合が、
不飽和カルボン酸またはその塩と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量の割合が、70〜99:30〜1(質量比)である条件下に行われること
を特徴とするものである。
【0015】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載の粉末状共重合体の製造方法において、
前記共重合が、
不飽和カルボン酸またはその塩と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの10〜40質量%を重合開始時に重合系に存在させて行われること
を特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の粉末状共重合体の製造方法において、
前記水可溶性有機溶剤が、
炭素原子数が1〜3のアルコール、または炭素原子数3〜5のケトンから選ばれた1種または2種以上の混合物からなるものであること
を特徴とするものである。
【0017】
また、この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1〜4のいずれかに記載の粉末状共重合体の製造方法において、
前記粉末状ポリカルボン酸系共重合体が、
電気伝導度が0.20mS/s以下に調整されたイオン交換水に2質量%溶解させた際に、膨潤状態で粒径が50μ以上ある不溶解分粒子が検出されないものであること
を特徴とするものである。
【0018】
また、この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項1〜5のいずれかに記載の粉末状共重合体の製造方法において、
前記粉末状ポリカルボン酸系共重合体が、
その2%中和粘度が8,000mPa・s以上のものであること
を特徴とするものである。
【0019】
さらに、この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項1〜6のいずれかに記載の粉末状共重合体の製造方法で調製されこと
を特徴とする粉末状ポリカルボン酸系共重合体である。
【0020】
また、この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1〜6のいずれかに記載の粉末状共重合体の製造方法で調製された粉末状ポリカルボン酸系共重合体からなること
を特徴とする高分子乳化剤である。
【発明の効果】
【0021】
この発明の粉末状共重合体の製造方法は、炭素原子数が3〜6の不飽和カルボン酸またはその塩と、炭素原子数が8〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合によるので、上記した問題点が解消され、重合系のスラリー粘度が適正に維持され、反応釜の壁面や攪拌翼に付着し易い凝集ポリマーが生成しない。
【0022】
特に、この発明の製造方法は、製造過程において塊状物が発生しないため、重合系が均一に維持され、壁面などを利用した熱交換を支障なく行うことができる。また、重合反応を安定に、かつ安全に行うことができ、反応後の未反応モノマーが少なく、高い収率で、品質が均一の粒度の細かい共重合体粉末が得られる。
【0023】
さらに、この発明の製造方法で得られたポリカルボン酸系の粉末状共重合体は、水に溶解する際、溶解に格別な時間を要せず、得られた水溶液中に不溶解粒子が殆ど発生することもなく、水溶液の粘度を著しく向上させるという増粘効果に優れ、しかも、共重合体中には、有機溶剤が殆ど存在せず、化粧品、医薬品などの用途にも良好に使用されるという優れた効果をも奏するものである。
【0024】
また、この発明のポリカルボン酸系の粉末状共重合体は、増粘効果に加えて、乳化機能にも優れ、親油性界面活性剤などの界面活性剤を併用しなくとも、油性物質を水中に乳化させることができ、安全性に優れ、かつ使用感触の良好な乳化組成物の形成を可能とするもので、化粧品や医薬品等(医薬部外品を含む)を含めた広範な分野で使用され得るという優れた特性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の粉末状共重合体の製造方法とその共重合体、および高分子乳化剤について詳細に説明する。
【0026】
この発明において、炭素原子数が3〜6の不飽和カルボン酸または塩(以下、単量体群Aという。)としては、具体的に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、イタコン酸、クロトン酸、ソルビン酸、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなどの有機アミン塩などが挙げられる。
【0027】
これらの中では、アクリル酸及びそのナトリウム塩は、得られる重合体の増粘特性を良好にするため、この発明において好ましく、特に、アクリル酸は、市場からの入手が容易である点で、さらに好ましい。
【0028】
また、炭素原子数が8〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、単量体群Bという。)としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、トテラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル其、ノナデシル基、イコシル基、ウンイコシル基、ドイコシル基、トリイコシル基、テトライコシル基、ペンタイコシル基、ヘキサイコシル基、ヘプタイコシル基、オクタイコシル基、ノナイコシル基、トリアコシル基、分岐アルキル基として、tert−オクチル基、イソオクチル基などの炭素原子数が8〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0029】
これらの単量体群Bの中でも、得られる共重合体に良好な乳化力を付与するには、炭素原子数が12以上20以下の直鎖アルキル基、すなわち、ドデシル基、トリデシル基、トテラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル其、ノナデシル基、イコシル基などのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0030】
この発明において、単量体群AとBの併用割合は、単量体群Aが70〜99質量%、単量体群Bが1〜30質量%の割合であることが好ましい。より好ましくは、それぞれが75〜95質量%、5〜25質量%で、それぞれ、80〜90質量%、10〜20質量%であることが特に好ましい。
【0031】
単量体群Aの割合が99質量%を超え、単量体群Bの割合が1質量%未満になれば、油に対する乳化力が低下し、増粘させることができても乳化させることができなくなる。また、単量体群Aの割合が70質量%未満、単量体群Bの割合が30質量%を超えると、単量体群Bで重合せず、単量体で残るものが増加する上、水に対し不溶性となり、不溶解物が発生し、増粘効果も乳化効果も劣るようになるため、避けるのが望ましい。
【0032】
この発明における重合は、基本的に、重合開始時に、一定量の単量体を重合系に存在させ、残りの単量体は、重合開始後に重合系に連続または逐次に添加して重合を行う、分割重合である。すなわち、単量体群Bの四分の一未満(質量換算)は重合開始時に、水可溶性有機溶剤を重合媒体とする重合系に存在させ、残りの四分の三以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは重合開始後に重合系に添加して共重合を行うことを必須の条件とするものである。
【0033】
以下、その他の条件を、好ましいものを含めて詳説すると、上記単量体群A及びBは、分割重合であるため、重合開始時及び重合開始後に分けて重合されるもので、その分割割合は、単量体群A及びBの総量の、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%、特に好ましくは20〜30質量%を重合開始時に用いる。したがって、当然のことであるが、重合開始後に好ましくは60〜90質量%、より好ましくは65〜85質量%、特に好ましくは70〜80質量%が添加重合される。
【0034】
この発明の製造方法において、単量体群Bの分割は必須の構成要件で、単量体群Bの総量の四分の一(25質量%)未満、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは10〜15質量%を重合開始時に、したがって、重合開始後に四分の三(75質量%)以上、好ましくは75〜99質量%、より好ましくは80〜95質量%、特に好ましくは85〜95質量%が添加され重合される。
【0035】
前記の単量体群Aの分割量は、上記した単量体群A及びBの併用割合、分割割合、単量体群Bの分割量が定まれば、必然的に定まるものである。また、重合開始後に添加される単量体群A及びBは、連続的に添加されても、断続的に添加されてもよい。また、それらを単独でまたは混合して添加してもよく、構成単量体の種類や割合、重合速度、共重合体粉末の析出状況等を考慮して、添加方法が定められる。
【0036】
上記の単量体群A及びBの分割割合において、重合開始時に用いられる単量体群A及びBの割合が10質量%未満では、初期の仕込み濃度としては低濃度となり、乳化機能は発現しても増粘機能に満足できなくなるおそれがある。また、40質量%以上より多くなれば重合開始後の不溶なポリマーが凝集し易く、その凝集体が反応釜の壁面や攪拌翼に付着したりして、反応混合物のスラリー粘度が非常に高くなる。その結果、最終製品である粉末の粒度が大きくなったり、場合によっては、塊状となり粉末化できなかったり、付着物によって熱伝導の低下による未反応モノマーの増加、付着領域での過熱による品質上のバラツキ、収量の低下などを引き起こし易く、不均化された熱伝導によって溶剤が突沸するなど、操業安全上好ましくない状態になりやすい。
【0037】
単量体群Bの分割添加において、重合開始時の添加量が25質量%以上で、重合開始後の添加量が75質量%未満であると、得られる共重合体粉末に単量体群Bのモノマーが組み込まれる割合が多くなり、水に対して不溶となり、不溶解物が発生し、増粘効果も発揮されない。
【0038】
一方、重合開始時の添加量が1質量%未満で、重合開始後の添加量が99質量%以上であると、単量体群Bの重合反応が余り早くないために、共重合体粉末にほとんど組み込まれなく未反応のモノマーが増加することになり、また、増粘効果は高くても、乳化させる機能が極端に低下してしまうため、性能上好ましくないものとなる。
【0039】
この発明において、共重合体の増粘機能をより高めるため、あるいは、水溶液にチキソ性を付与するため、架橋剤としての多価ビニル重合性単量体を使用してもよい。
【0040】
多価ビニル重合性単量体の例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル、メンタリスリトールジメタクリレート、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、メンタエリスリトールジアリルエーテル、テトラアリルエタン、ジビニルベンゼン、ジビニルベンゼンスルホン酸などが挙げられる。
【0041】
これらの多価ビニル重合性単量体は、ゲル化して共重合体の水溶性を損なう傾向があるために限定された量の使用が好ましい。具体的には、この発明の粉末状ポリカルボン酸系共重合体を構成する単量体のうちの2質量%未満が好ましく、より好ましくは1質量%未満である。
【0042】
この発明において、使用される溶剤は、炭素原子数1〜3の低級アルコールまたは炭素原子数3〜5のケトン類で、単量体は溶解するが、重合体は溶解しない水可溶性溶剤が用いられる。好ましい溶剤としては、粉末製品の乾燥により残存溶剤の少なくなるもので、沸点が低い有機溶剤、例えば、メタノール(沸点65℃)、エタノール(沸点78℃)、アセトン(沸点56℃)などが好ましいものとして挙げられる。
【0043】
この発明の製造方法においては、重合開始剤としてラジカル重合開始剤が用いられ、過酸化物、アゾ系開始剤などから選ばれた化合物、またはそれらの混合物が使用でき、その使用量は単量体100質量部に対して、0.01〜2.00質量部が好ましく、より好ましくは、0.005〜0.1質量部である。
【0044】
具体的な開始剤としては、油溶性に優れている2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス1−アセトキシ−1−フェニルエタン、ラウリロイルペルオキシドなどが挙げられる。
【0045】
この発明における粉末状共重合体の製造方法は、単量体群Aと単量体群Bとを、上記したように、水可溶性有機溶剤を重合媒体とする分割重合により行う方法であって、得られた重合体は粉末として析出することを特徴とするものであるが、重合体の析出をスムーズに行うため、単量体を重合させつつ、同時にアルカリを添加して、重合中に中和反応を行わせることも特徴とするものである。
【0046】
水可溶性有機溶剤中に、単量体群Aおよび単量体群Bの混合単量体を仕込み、アルカリを添加して、単量体群Aを構成する酸の中和反応を一挙に行った場合、重合物が塊状となり、製造操作が困難となる。また、単量体群Aを全て塩とし、それと単量体群Bの混合単量体を重合する方法でも、重合物が塊状となり、含水量が大で不溶解物の多い重合体しか得らないことが多いのに対し、分割重合により、単量体を重合させつつ、同時にアルカリを添加することにより、粉末状共重合体が極めて容易に得られる。
【0047】
アルカリの濃度調整用に使用する水、及び中和で生成する水は、制限することが好ましい。その際、水の量は、アルカリ中和により生成する単量体塩を基準にして、その10質量%〜250質量%の範囲にすることが好ましく、10質量%未満では、塩類単量体自身の水可溶性有機溶剤に対する溶解性が不良となり、250質量%を超えると過剰な水分のため塊状の重合物が生じることがある。
【0048】
中和は、重合反応系中に存在する単量体群Aの30質量%以上が中和されているように行うことが好ましい。
上記の条件で、アルカリを添加することにより、重合反応系の水分を極力少なくした状態にすることができ、乾燥工程における時間の短縮化が図れ、経済的有利に水溶性共重合体粉末ができる。
【0049】
この発明の製造方法によれば、操業上安全に、品質上のバラツキが少ない共重合体粉末を調製することができ、得られる共重合体粉末は、中和剤を添加することなく水性組成物を増粘させることができるもので、さらに、以下のような特性を有するものの調製が可能となる。
【0050】
前記の製造方法によって得られるポリカルボン酸系の粉末状共重合体は、水に対する不溶解物の存在しないものである。水に対する不溶解物は、電気伝導度が、0.20mS/s以下、さらには0.10mS/s以下のイオン交換水に、共重合体粉末2質量%を溶解させ、膨潤状態で粒径が50μ以上ある粒子を検出することにより確認される。なお、イオン交換水の電気伝導度が0.20mS/s以下に限定するのは、それを超えた電気伝導度を有するイオン交換水には、イオン交換水自体に不純物が存在する可能性が大きく、50μ以上ある粒子が存在しても、それが共重合体粉末の不溶解物かイオン交換水の不純物かが不明になるためである。
【0051】
また、この発明のポリカルボン酸系の粉末状共重合体は、その2質量%、中和粘度が8,000mPa・s以上あるもので、さらに10,000mPa・s以上のものである。
【0052】
また、この発明の粉末状共重合体は、以下のように、高分子乳化剤としても優れた機能を発揮するもので、この発明のポリカルボン酸系の粉末状共重合体からなる高分子乳化剤は、化粧料、医薬品、医薬部外品等に使用される油脂を始めとして各種成分を、効率的に水中に乳化分散させて、乳化した組成物を調製することができ、結果として、品質の向上された化粧料、医薬品、医薬部外品等の調製を容易にするものである。
【0053】
乳化組成物の調製に、この発明の高分子乳化剤を使用する際の配合量は、乳化組成物全体の0.1質量%以上、10質量%以下、好ましくは0.3質量%以上、3.0質量%以下、より好ましくは同0.5質量%以上、2.0質量%以下の範囲である。
【0054】
この発明の高分子乳化剤は、単独で、すなわち、他の乳化剤、特に親油性界面活性剤を配合する必要がなく、実質的に界面活性剤使用せずに、乳化組成物を調製することが可能なものである。
【0055】
なお、この発明において、実質的に界面活性剤を使用せずにとは、全く界面活性剤を配合することを排除するものではなく、例えば乳化組成物の使用感触の調節、特殊な油(例えば、メチルポリシロキサン、デカメチルペンタシロキサン等の特定のシリコーン油)に対する乳化力を、さらに向上させる等の目的で親油性界面活性剤を配合するなどの対応をとることは、当然可能である。ただし、かかる場合においても、親油性界面活性剤の配合量は、せいぜい乳化組成物の1.0質量%以下程度に抑えるのが好ましい。
【0056】
また、油中水型(W/O型)乳化組成物を、この発明の高分子乳化剤で調製する場合や、W/O/W型乳化組成物、O/W/O型乳化組成物等のマルチブルエマルションを調製する場合において、それぞれの目的に応じて、脂肪酸金属石鹸、ソルビタンエステル系界面活性剤、ポリオキシエチレン系界面活性剤を併用することも可能である。
【0057】
この発明の高分子乳化剤は、外皮に適用される化粧料、医薬品、医薬部外品等の応用に適用することが可能なもので、それらの剤型は、乳化系、特に水中油型乳化剤の剤型を取り得るもので、基礎化粧品であれば、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス(美容液)、パック、マスクなどで、それらにこの発明の高分子乳化剤を適用できる。また、メークキャップ化粧品であれば、ファンデーション等に適用可能である。さらに、医薬品または医薬部外品であれば、各種の軟膏剤等に適用可能である。しかしながら、この発明の高分子乳化剤は、これらの剤型および形態への適用に限定されるものではない。
【0058】
この発明の高分子乳化剤は、油脂を乳化させる機能に優れたものであるが、化粧料、医薬品、医薬部外品等に適用される乳化組成物における油脂の乳化はもちろん、それらに使用される各種成分を、乳化しあるいは分散させることができるもので、それら油脂や成分を例示すると、以下のとおりである。
【0059】
液体油脂として、アボガド油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリンなどが挙げられる。
【0060】
固体油脂として、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モウロウ、硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0061】
ロウ類として、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナルバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテルなどが挙げられる。
【0062】
炭化水素油として、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セシレン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。
【0063】
高級脂肪酸として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等の高級脂肪酸などが挙げられる。
【0064】
高級アルコール、分岐鎖高級アルコールとして、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシルノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどが挙げられる。
【0065】
合成エステル油として、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン三グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリ−2−エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル−2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パリミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セパチン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチルなどが挙げられる。
【0066】
シリコン類として、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン,メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン,デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン,テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサンなどの環状ポリシロキサン、3次元網目構造を形成しているシリコン樹脂、シリコンゴムなどが挙げられる。
【0067】
防腐剤として、メチルパラペン、エチルパラペン、ブチルパラペン等が挙げられる。
【0068】
金属イオン封鎖剤としてはエデト酸ナトリウム塩、EDTAなどが挙げられる。
【0069】
植物系などの天然水溶性高分子として、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ,トウモロコシ,バレイショ,コムギ)、グリチルリチン酸などが挙げられる。
【0070】
微生物系などの天然水溶性高分子として、キサンタンガム,デキストラン、サクシノグルカン、プルランなどが挙げられる。
【0071】
動物物系などの天然水溶性高分子として、コラーゲン、カゼイン,アルブミン,ゼラチンなどが挙げられる。
【0072】
半合成水溶性高分子として、カルボキシメチルデンプン,メチルヒドロキシプロピルデンプンデンプン等のデンプン系高分子メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボシキメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン三酸ナトリウム、アルギン酸プロピルグリコールエステルなどが挙げられる。
【0073】
有機合成水溶性高分子として、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー(カーボポール)、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリエチレングリコール2000、4000、6000等のポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体共重合系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等の合成の水溶性高分子などが挙げられる。
【0074】
無機の水溶性高分子として、ベントナイト、ケイ酸A1Mg(ベーガム)、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸などが挙げられる。
【0075】
増粘剤として、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、ガセイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA、PVM、PVP、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライトなどが挙げられる。
【0076】
無機粉末として、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム、(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素などが挙げられる。
【0077】
有機粉末として、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末などが挙げられる。
【0078】
無機顔料として、二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機白色顔料、γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料黒酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン等の無機黒色系顔料、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料、群青、紺青等の無機青色系顔料、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末などが挙げられる。
【0079】
有機顔料として、赤色201号,赤色202号,赤色204号,赤色205号,赤色220号,赤色2226号,赤色228号,赤色405号,橙色203号,橙色204号,黄色205号,黄色401号および青色404号などの有機顔料、赤色3号,赤色104号,赤色106号,赤色227号,赤色230号,赤色401号,赤色505号,橙色205号,黄色4号,黄色5号,黄色202号,黄色203号,緑色3号,青色1号などのジルコニウム、バリウムまたはアルミニウムレーキなどが挙げられる。
【0080】
天然色素として、クロロフィル,β−カロリンなどが挙げられる。
【0081】
色剤として、チタンイエロー、カーサミンなどが挙げられる。
【0082】
さらに、香料、紫外線防御剤、保湿剤、美白剤、消炎剤、賦活剤、血行促進剤、抗脂漏剤、植物抽出物、ビタミン類なども分散させることができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例によって、この発明をより具体的に説明する。しかしながら、これらの実施例により、この発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0084】
<実施例1>
ジブロート氏冷却器、温度計、窒素ガス吹き込み管および攪拌翼を備えた1リットルの4つ口フラスコに、368.75gのエタノールを仕込み、そこに99%水酸化ナトリウム9.0g(中和剤1)を加えよく攪拌し、その後、表1に示される、メタアクリル酸69.00gとアクリル酸ステアリル0.5gの混合液を加え、200ml/minの流量の窒素ガスを吹き込みながら昇温した。
続いて、ラウリロイルペルオキシドを133mg投入した。重合中は、反応器内を温度65〜66℃に維持し、100ml/minの流量の窒素ガスを吹き込み続けた。
重合が開始し系が白濁した後、表1に示される、メタアクリル酸とアクリル酸ステアリルの混合液180.50gと48%水酸化ナトリウム55.58g(中和剤2)を、4時間に亘って連続添加し、中和しながら重合させ、3時間後に冷却した。
重合終了後の中和率は31%であった。
冷却後、99%水酸化ナトリウム71.38g(中和剤3)で中和し、最終の中和率を93%とし、その後、ろ過、乾燥し、共重合体粉末を得た。
【0085】
<実施例2>
単量体、中和剤、開始剤及び水可溶性有機溶剤を、表1および表2に示したものに変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合体粉末を得た。その赤外線吸収スペクトルを図1に示した。なお、図1における2300cm−1において×印を付与したピークは、炭酸ガス混入に起因するものであり、図2はポリアクリル酸ナトリウムの赤外線吸収スペクトルである。
【0086】
<実施例3>
単量体、中和剤、開始剤及び水可溶性有機溶剤を、表1および表2に示したものに変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合体粉末を得た。その赤外線吸収スペクトルを図3に示した。なお、図3における2300cm−1において×印を付与したピークは、上記と同様に、炭酸ガス混入に起因するものである。
【0087】
<実施例4>
単量体、中和剤、開始剤及び水可溶性有機溶剤を、表1および表2に示したものに変更し、表2に示したように架橋剤を用い、中和剤2の99%NaOHを分割添加した以外は、実施例1と同様にして、共重合体粉末を得た。
【0088】
<比較例1>
単量体、中和剤、開始剤及び水可溶性有機溶剤を、表1および表2に示したものに変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合体粉末を得た。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
<重合体の特性評価1>
実施例1〜4及び比較例1で得られた共重合体粉末の2.0%水溶液のpH、およびB型粘度計による粘度を測定した結果を表3に示した。
【0092】
【表3】

【0093】
<重合体の特性評価2>
実施例1〜4及び比較例1で得られた、共重合体粉末の水不溶解物の有無を、以下の方法で測定した結果を表4に示した。
共重合体粉末の0.5%水溶液を十分に混合した状態で5g採取し、100ccビーカーに入れ、水10gを100ccビーカーに入れガラス棒で攪拌する。その後1%メチレンブルー溶液を1cc入れ、ビーカー内の溶液をよく混合させる。
つぎに、18.5cm×2cmのシャーレに入れ、シャーレを1cm角に黒線を引いた白紙の上に乗せて、10cm×10cmの面積上の不溶解物の数を見分ける。50μ以上100μ未満の不溶解物の個数、100μ以上の不溶解物の個数を数えた。
【0094】
【表4】

【0095】
<重合体の特性評価3>
実施例1〜4及び比較例1で得られた共重合体粉末及び市販品(アクリル酸−メタアクリル酸アルキル共重合体:比較例2)を乳化剤として用い、200mlの瓶に、常温下で油性物質20gに対し1g添加して分散させ、イオン交換水を加え、手動で瓶を上下に振動させて乳化させ、その乳化安定性を、乳化組成物の作製直後、常温で1ヶ月及び温度50℃の恒温槽中に静置して1ヶ月後に評価した結果を表5に示した。
【0096】
なお、評価基準は下記の通りである。また、市販品に関しては、使用量は0.5gで、中和剤としてトリエタノールアミンを用いた。
◎:目視で変化が見られない。
○:若干の油浮きが見られる。
△:しばらくして完全に乳化状態が崩れる
×:乳化直後から乳化が不安定である。
【0097】
【表5】

【0098】
この結果から明らかなように、この発明の高分子乳化剤は、シリコン油、非極性油及び極性油に対して、市販品と比較して、優れた乳化力を有し、かつ乳化性安定性を有し、また中和剤を必要とせず、簡単に乳化組成物を調製できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】実施例2で調製された粉末状ポリカルボン酸系共重合体の赤外線吸収スペクトルチャートである。
【図2】ポリアクリル酸ナトリウムの赤外線吸収スペクトルチャートである。
【図3】実施例3で調製された粉末状ポリカルボン酸系共重合体の赤外線吸収スペクトルチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数が3〜6の不飽和カルボン酸またはその塩と、炭素原子数が8〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合を、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの四分の一未満(質量換算)は、重合開始時に水可溶性有機溶剤を重合媒体とする重合系に存在させ、
残りの四分の三以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、重合開始後に重合系に添加して共重合を行うとともに、アルカリを添加して、得られたポリカルボン酸系の共重合体を粉末として析出させること
を特徴とする粉末状共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記共重合が、
不飽和カルボン酸またはその塩と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量の割合が、70〜99:30〜1(質量比)である条件下に行われること
を特徴とする請求項1に記載の粉末状共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記共重合が、
不飽和カルボン酸またはその塩と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの10〜40質量%を重合開始時に重合系に存在させて行われること
を特徴とする請求項1又は2に記載の粉末状共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記水可溶性有機溶剤が、
炭素原子数が1〜3のアルコール、または炭素原子数3〜5のケトンから選ばれた1種または2種以上の混合物からなるものであること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉末状共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記粉末状ポリカルボン酸系共重合体が、
電気伝導度が0.20mS/s以下に調整されたイオン交換水に2質量%溶解させた際に、膨潤状態で粒径が50μ以上ある不溶解分粒子が検出されないものであること
を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粉末状共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記粉末状ポリカルボン酸系共重合体が、
その2%中和粘度が8,000mPa・s以上のものであること
を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粉末状共重合体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の粉末状共重合体の製造方法で調製されこと
を特徴とする粉末状ポリカルボン酸系共重合体。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の粉末状共重合体の製造方法で調製された粉末状ポリカルボン酸系共重合体からなること
を特徴とする高分子乳化剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−36910(P2006−36910A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218568(P2004−218568)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(390039974)日本純薬株式会社 (13)
【Fターム(参考)】