説明

粉末組成物及びそれから物品を製造する方法

粉末組成物及び物品並びに粉末組成物から物品を形成する方法を提供する。粉末組成物は少なくとも1種のポリマー粉末及び、好ましくは少なくとも約5:1のアスペクト比を有する一定量の強化用粒子を含有する。好適な実施態様では、レーザー焼結処理により、粉末組成物は、高温環境で1種以上の所望の機械特性を示す三次元物品に形成できる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2006年11月9日に出願され、発明の名称が「粉末組成物及びそれから物品を製造する方法」である米国仮出願第60/865,112号の利益を主張し、当該出願の全てを参照として本明細書に含める。
【技術分野】
【0002】
本発明は粉末組成物及び粉末組成物から物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
レーザー焼結(選択的レーザー焼結とも呼ばれる)(Laser sintering:LS)は、ディスペンサーが粉末化物質の層を標的領域に沈着させる処理である。レーザー制御機構は、典型的には、所望の物品の設計を収容するコンピューターを含むが、その設計の画定した境界内に粉末層を選択的に放射するためにレーザービームを調節し、かつ変動させ、レーザービームが当たる粉末の溶融をもたらす。制御機構は、逐次的粉末層を選択的に焼結するためにレーザーを操作し、結果的に一緒に焼結させた複数層を含む完成物品を生じさせる。LS技術の詳細な記述は、米国特許第4,247,508号、第4,863,538号、第5,017,753号、及び第6,110,411号明細書に見出すことができる(各々を参照として本明細書に含める)。
【0004】
LS技術は、ポリマー粉末を含む種々の粉末化物質から高解像度(resolution)及び高寸法精度の三次元物品の直接製造を可能にする。これらの物品は、ラピッドプロトタイピングや種々のその他の応用に良く適している。しかし、LS法により慣用ポリマー粉末から製造した物品は、典型的には、より慣用的な製造方法(例えば、射出成形)により製造した物品に対して相対的により劣った機械特性を示す。加えて、このような物品は、概して、機械特性の低下が原因で高温環境の使用に適していない。
【0005】
炭素繊維やガラス繊維は、LS物品の機械特性を改良するために充填物質として考えられてきた。しかし、炭素繊維は相対的に高価であり、粒子吸入問題を可及的に少なくするか又は回避するために注意深い取扱が必要となることがあり(炭素繊維に典型的に関連する粒子寸法及び嵩密度のため)、黒色着色及びそれに関連する追加の赤外線吸収のために、LS装置で処理するのが困難になる可能性があり、そして白色、明色及び/又は彩色を生じさせるのに適していないことがある。ガラス繊維に関して、それらは相対的に高価であり、安定して適切な品質の予測可能な商業ベースの量で得るのが困難なことがある。
【0006】
したがって、環境温度及び/又は高温で適切な機械特性を発揮するLS物品を製造するのに使用するための改良した粉末組成物の継続的必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
一実施態様では、本発明は、好ましくは、レーザー焼結可能な少なくとも1種のポリマー粉末及び好ましくは少なくとも約5:1のアスペクト比及び約300ミクロン未満の最大寸法を有する好ましくはで強化用粒子を含む粉末組成物を提供する。強化用粒子は、好ましくは、粉末組成物総重量を基準に、粉末組成物の少なくとも約3重量%(wt−%)含む。好ましくは、強化用粒子は、粉末組成物総重量を基準に、粉末組成物の少なくとも約1wt−%含む鉱質粒子を含有する。
【0008】
別の実施態様では、本発明は、三次元物品を形成するための本明細書で記載するレーザー焼結用組成物を提供する。
さらに別の実施態様では、ポリマーマトリックスと、当該ポリマーマトリックス全体にわたって分散した強化用粉末とを含有する複数の焼結層を含有する三次元物品を提供する。好適な実施態様では、強化用粉末のアスペクト比は少なくとも約5:1であり、最大寸法が約300ミクロン未満である。好ましくは、強化用粒子は、複数の焼結層の総重量を基準に、少なくとも約3wt−%の複数の焼結層を含み、そして、複数の焼結層の総重量を基準に、少なくとも約1wt−%の複数の焼結層を含む鉱質粒子を含有する。
【0009】
さらに別の実施態様では、本発明は型を形成する方法を含む。当該方法は、ポリマー粉末と少なくとも3wt−%の強化用粒子を含有する粉末組成物を提供することを含み、好ましくは、前記強化用粒子のアスペクト比が少なくとも約5:1であり、最大寸法が300ミクロンである。この粉末組成物をレーザー焼結をして、好ましくは、約130℃よりも高い温度の物質から成形性品を形成できる型を形成する。
【0010】
本発明の上記概要は各開示した実施態様又は本発明の実施の全てを記載することを意図していない。さらに続く記述は例証的実施態様を例示する。本願全体の数カ所で例のリストにより指針を与えるが、それらの例は様々の組み合わせで使用できる。各例では、記載したリストは代表群としのみの役割であり、限定的な例として解釈すべきでない。
【0011】
本発明の一以上の実施態様の詳細は以下の記述で記載する。その他の特徴、目的、及び発明の利点は記述及び図面から、及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【選択した定義】
【0012】
特記しない限り、本明細書で使用する下記の用語は下記に与える意味を有する。
「アスペクト比」という用語は、粒子の三次元形状全体がコンパクトな三次元形状(例えば、球形や立法形)からの大体の偏差の程度を記載する。一定の粒子又は粒子集団のアスペクト比は長さ:幅の比率として表現される。アスペクト比の大きい粒子は一般に長くて細く、一方で、アスペクト比が1に近い粒子は一般にコンパクトである。定義により、粒子は1未満のアスペクト比を取り得ない。
【0013】
図1は、平行四角面10及び12を有する一般代表的粒子Pを示し、ここで、面10は面12よりも表面積が大きい。図1でグラフにより例証したように、粒子Pのアスペクト比の「長さ」成分は、主軸Aに沿って取った粒子Pの最大寸法Lである。アスペクト比の「幅」成分は、主軸Aに対して直角に位置した平面(すなわち断面)内に位置する粒子Pの最大横寸法Wを表す。図1に示したように、最大横寸法Wは、短軸A及びAにより画定される平面の短軸Aに沿って取った。粒子のアスペクト比の測定方法は当業界で公知である。この一代表方法の記述は米国特許第6,984,377号明細書に見出される。
【0014】
「レーザー焼結可能なポリマー粉末」という用語は、LSマシン中で焼結し、三次元物品を形成できるポリマー粉末を意味する。レーザー焼結可能な粉末は、好ましくは、(1)LSマシンのビュルド表面(build surface)に施用でき、(2)LSマシンのレーザービームにより溶融して第1層を形成でき(1以上の追加物質の存在下又は非存在下のいずれかで)、そして(3)第1層に接着した第2上層を形成できる。
【0015】
「熱たわみ温度(heat deflection temperature)」(以下、「HDT」)という用語は、一般に、LS試験標本が特定昇温速度で特定荷重に付したとき、特定距離までたわむ温度を意味する。さらに詳細には、用語「HDT」は、国際標準機構国際標準75−2のA法、セカンドエディション、2004−05−15(以下、「ISO 75−2:2004」)を使用して決定したLS試験標本について荷重(「Tf」)下のたわみ温度を意味する。
【0016】
「LS物品」という用語は、レーザー焼結処理を使用して組成物から製造した三次元物品を意味する。
「最大寸法」という用語は、粒子の主軸に沿って取った粒子の最長線寸法(すなわち、直径)を意味する。例えば、図1の最大寸法L参照。
【0017】
「最大横寸法(maximum crosswise dimension)」という用語は、前記最大寸法に直角に位置する粒子のいずれかの平面内に存在する粒子の最大線寸法(すなわち、直径)を意味する。例えば、図1の最大横寸法Wを参照。さらに、例えば、粒子の最大横距離を、a)楕円断面、その場合、最大横寸法が楕円断面の二つの焦点を通過する;b)矩形断面、その場合、最大横寸法は矩形断面の斜辺に相当する;そしてc)円断面、その場合、最大横寸法は円断面の直径に等しい、範囲内にあると予測する。
【0018】
「鉱質」という用語は、確定化学組成物及び特徴的結晶構造、色、又は硬質を典型的に示す天然無機物質(化石化有機物質を含む)のいずれかの類を意味する。この用語は、天然鉱質の精製物質及び合成製造均等物の双方を包含する。
【0019】
「強化用粒子」という用語は、三次元物品に適量で含ませたときに物品の1以上の機械特性(例えば、引張強度、破断点伸び、弾性率、熱たわみ温度等)を改良する粒子の類を意味する。
【0020】
「試験標本」及び「LS試験標本」という用語は、HDTとの関連で使用するとき、LS処理により製造し、ISO 75−2:2004で特定した好適な寸法を有する(すなわち、80×10×4ミリメートル(長さ×幅×厚さ))棒を意味する。試験標本の焼結層は平面方向(すなわち、試験標本の幅及び長さにより確定される平面に対して平行)に配向されている。
【0021】
「含む(comprise)」及びその変形は、当該用語が明細書及び特許請求の範囲に出現する場合、限定的意味を示さない。
「好適」及び「好ましくは」という用語は、一定の環境下で一定の利点を与える本発明の実施態様を意味する。しかし、その他の実施態様も同じ又はその他の環境下で、好適であり得る。さらに、1以上の好適な実施態様の記載は、その他の実施態様が有用でないことを意味していなく、本発明の範囲からその他の実施態様を排除することを意味しない。
【0022】
明細書等中で使用する、「ある」若しくは「1つの」若しくは「その」(“a” or “an” or “the”)「少なくとも1種」及び「1種以上」等は交互に使用できる。したがって、例えば、「1つの」添加剤を含む被覆用組成物は、「1種以上」の添加剤を含む被覆用組成物を含む。
【0023】
さらに、明細書等中における、終点による数値範囲の記載は、その範囲内に含まれる総ての数値を含む(例えば、1〜5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等)。さらに、開示の範囲は、広範囲内に含まれる総ての部分的範囲を含む(例えば、1〜5は、1〜4、1.5〜4.5、1〜2等)。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は粒子のアスペクト比を例証するために与えられた一般的粒子の透視図である。
【図2A】図2Aは強化用粒子を含有する物品の一部略断面図である。
【図2B】図2Bは引張荷重をかけた場合の、図2Aの物品部分の略断面図である。
【図3A】図3Aは強化用粒子を含有するLS物品の一部略断面図である。
【図3B】図3Bは図3Aの3B−3B線に沿って取った図3AのLS物品部分の略断面図である。
【図4A】未充填DURAFORM PAナイロン12粉末の反射電子顕微鏡写真である。
【図4B】75wt−%DURAFORM PAナイロン12粉末及び25wt−%A60珪灰石を含有する粉末組成物の反射電子顕微鏡写真である。
【詳細な記述】
【0025】
本発明は、(a)好ましくは、少なくとも約5:1のアスペクト比及び約300ミクロン未満の最大寸法を有する一定量の強化用粒子、及び(b)好ましくは、レーザー焼結可能な少なくとも1種のポリマー粉末を含有する粉末組成物を提供する。当該粉末組成物は、好ましくは、それから形成される物品の1種以上の機械特性を増強するのに適した一定量の強化用粒子を含有する。好ましくは、強化用粒子の少なくともいくつかは鉱質粒子である。
【0026】
本発明の粉末組成物は、例えば、周囲温度及び/又は高温で1種以上の増強した機械特性を好ましくは発揮するLS物品を含有する種々の物品の製造に有用であり得る。
図2A及び2Bは、いくつかの実施態様において、強化用粒子の物理特性が、強化用粒子を含有する物品の1種以上の機械特性をいかに増強できるかを例証する。図2A及び2Bは物品20の一部(物品部分20)の略断面図であり、原寸通りに描写していない。物品部分20は、ポリマーマトリックス22及びポリマーマトリックス22全体にわたって分散した強化用粒子を含有する。例証の目的のため、一個の強化用粒子24を示す。参照線26aは、図2A中で互いに等距離で間隔を置いているが、変形されていない状態のときのポリマーマトリックス22を例証する目的のために含まれている。
【0027】
図2Bに示されている通り、物品20に引張荷重Fの適用時、ポリマーマトリックス22は長手方向に変形する。ポリマーマトリックス22の変形は変形した参照線26B(図2Aの参照線26aに比較して長手方向に変位している部分)により例証されている。理論により束縛されることを意図しないが、強化用粒子24は、強化用粒子24がポリマーマトリックス22よりも好ましくはより剛性であるので、ポリマーマトリックス22内の歪み量の全般の減少をもたらすと考えられる。この歪み減少は、変形参照線26bの湾曲により明らかなように、強化用粒子24近くに位置するポリマーマトリックス22の部分に特に見られる。
【0028】
好適な実施態様では、本発明の粉末組成物から形成したLS試験標本は、適切量の適切強化用粒子を欠く同一の粉末組成物から同様に形成したLS試験標本のHDTよりも高いHDTを発揮する。このような実施態様では、本発明の粉末組成物から形成するLS試験標本は、好ましくは、強化用粒子は含有しないが、その他は同一である粉末組成物から形成されるLS試験標本のHDTよりも少なくとも約10℃高いHDTを示す。好適な実施態様では、本発明の粉末組成物から形成したLS試験標本は、少なくとも約130℃、より好ましくは、少なくとも約140℃、そしてさらにより好ましくは少なくとも約150℃のHDTを示す。
【0029】
本発明の粉末組成物は、種々の用途に使用するための種々の物品を形成するのに使用できる。本発明の好適な粉末組成物は、高温環境に耐えることができ、一方で1種以上の適切な機械特性をなお発揮するLS物品を形成できる。前記特性を必要とし得るLS物品の例には、自動車部品(例えば、エンジン部品及びエンジンに接近したその他の部品);燃料系部品;耐熱性が要求される家電部品(自動皿洗い機部品やオーブン部品);加熱した物質から成形物品を形成するための型;加熱液体と接触するための液圧部品;吸気マニホールド(例えば、温風吸気及び吸気ダクト);照明装置部品;並びに昇温環境で行う必要のある可能性のあるその他の用途の部品若しくは物品(例えば、航空宇宙産業用途、モータースポーツ用途、デザイン用途、電子用途、産業用途及び包装用途)等がある。
【0030】
本発明の粉末組成物は、所望の機械特性を達成するのに適した種々のアスペクト比を有する強化用粒子を含有できる。理論に拘束されることを意図しないが、適切に高いアスペクト比を有する粒子は一定のLS物品のHDTを高くすると考えられる。好適な実施態様では、本発明の粉末組成物は、アスペクト比が少なくとも約5:1、より好ましくは、少なくとも約10:1、さらにより好ましくは、少なくとも約15:1、そして最適には少なくとも約20:1を有する適切量の強化用組成物を含有する。好ましくは、強化用粉末は、約200:1未満、より好ましくは、約100:1未満、そしてさらにより好ましくは、約75:1未満のアスペクト比を有する。所望の場合、粉末組成物は、上記特定のアスペクト比以外のアスペクト比を有する一定量の粒子(例えば、充填剤として)も含ませることができる。
【0031】
本発明の粉末組成物は、強化用粒子が適切なアスペクト比を示す限り、いずれの適切な規則的又は非規則的三次元形状のいずれかの強化用粒子を含有できる。適切な粒子形状の例には、針状、刃形、柱状、等方状、繊維状、微細繊維状,線維状、及びプリズム形等があり得る。好適な実施態様では、少なくともいくつかの強化用粒子は針状である。強化用粒子は、事実上、固体又は実質的に固体であることができ、1以上の空隙を含有できる。
【0032】
LS用途に有用であるために、強化用粉末は、強化用粉末を含有するLS物品が達成することが期待されるLS処理の間か最大温度かのいずれかで、好ましくは、溶融しないか、非適切になり得る程度まで軟化しない。あるいは、LS処理の間強化用粒子の溶融を避けるために、強化用粒子は、好ましくは、レーザー焼結可能なポリマー粉末の溶融温度(又は分解温度)よりも高い溶融温度を有するべきである。好適な実施態様では、強化用粒子は、好ましくは、約200℃よりも高い、より好ましくは、約500℃よりも高い、そして、さらにより好ましくは、約1,000℃よりも高い溶融温度(又は分解温度)を有する。幾つかの実施態様では、このような溶融温度を有する強化用粒子の配合が、得られるLS物品の難燃性を増強させ得る。
【0033】
本発明の粉末組成物は、所望の機械特性を達成するのに足るいずれかの量の強化用粒子を含有できる。好ましくは、該粉末組成物は、粉末組成物の総重量を基準に、少なくとも約3wt−%、より好ましくは、少なくとも約15wt−%、そして、さらにより好ましくは、少なくとも約20wt−%の強化用粒子を含有する。好適な実施態様では、粉末組成物は、粉末組成物の総重量を基準に、約80wt−%未満、より好ましくは、約50wt−%未満、そして、さらにより好ましくは、約40wt−%未満の強化用粒子を含有する。
【0034】
本発明の粉末組成物は、所望の機械特性を達成するのに足るいずれかの適切な寸法の強化用粒子を含有できる。LSマシンにおいて粉末組成物の効率的な処理を可能にするために、強化用粒子は、好ましくは、約300ミクロン未満、より好ましくは、約250ミクロン未満、そして、さらにより好ましくは、約200ミクロン未満の最大寸法を有する。所望の機械特性を与えるために、強化用粒子は、好ましくは、約10ミクロンを超え、より好ましくは、約50ミクロンを超え、そして、さらにより好ましくは、約80ミクロンを超える最大寸法を有する。
【0035】
幾つかの実施態様では、強化用粒子の総量の中央若しくは平均最大寸法は、好ましくは、約300ミクロン未満、より好ましくは、約250ミクロン未満、そして、さらにより好ましくは、約200ミクロン未満である。幾つかの実施態様では、強化用粒子の総量の中央若しくは平均最大寸法は、好ましくは、約10ミクロンを超え、より好ましくは、約50ミクロンを超え、そして、さらにより好ましくは、約80ミクロンを超える。
【0036】
所望の場合、本発明の粉末組成物は、上記特定した値以外の最大寸法を有する量の粒子も含むことができる。
該強化用粒子は、所望の機械特性を達成するためにいずれかの適切な最大横寸法を示すことができる。好適な実施態様では、強化用粒子は、約100ミクロン未満、より好ましくは、約80ミクロン未満、そして、さらにより好ましくは、約50ミクロン未満の最大横寸法を示す。好ましくは、強化用粒子は、約3ミクロンを超え、より好ましくは、約10ミクロンを超え、そして、さらにより好ましくは、約15ミクロンを超える最大横寸法を示す。
【0037】
幾つかの実施態様では、強化用粒子の総量の中央若しくは平均最大横寸法は、好ましくは、約100ミクロン未満、より好ましくは、約80ミクロン未満、そして、さらにより好ましくは、約50ミクロン未満である。幾つかの実施態様では、強化用粒子の総量の中央若しくは平均最大横寸法は、好ましくは、約3ミクロンを超え、より好ましくは、約10ミクロンを超え、そして、さらにより好ましくは、約15ミクロンを超える。
【0038】
所望の場合、本発明の粉末組成物は、上記特定した値以外の最大横寸法を有する量の粒子も含むことができる。
所望の機械特性を有するLS物品を製造するのに適することのできる強化用粒子はいずれの適切な物質からも形成できる。適切な強化用粒子の例には、下記の種類の粒子(好ましくは、粒子形態において、適切なアスペクト比、最大寸法、及び/又は最大横寸法を有するとき)等がある。すなわち、例えば、ホウ素粒子、セラミック粒子、ガラス粒子(例えば、ガラス繊維)、及び鉱質粒子のような無機粒子;例えば、炭素粒子(例えば、炭素繊維粒子やカーボンナノチューブ)及びポリマー粒子(例えば、ポリエステル粒子、ポリアミド粒子(KEVLAR繊維のようなアラミド粒子やポリビニルアルコール粒子を含む)のような有機粒子;有機及び無機成分の双方を含有する粒子;並びにその混合物等である。さらに下記に論じる理由のため、好ましくは、強化用粒子のうち少なくとも幾つかの(及び幾つかの実施態様の全て若しくは実質的に全て)は鉱質粒子である。
【0039】
所望の機械特性を達成し得る一定の強化用粒子(例えば、アスベスト類)は人に対する健康危害のおそれがある。このような強化用粒子は一定の環境下で使用することはできる。しかし、本発明の粉末組成物は、好ましくは、粉末組成物又はそれから形成した物品の取扱者に健康危害をもたらさない強化用粒子を含有する。好ましくは、強化用粒子は、(1)粉末組成物又は続いてそれから形成される物品の製造中に空気中に粒子の不適切量の粉化、及び/又は(2)一旦空中にある粒子が空気中に浮遊する時間を回避するか又は可及的に少なくする物理特性(例えば、粒度及び/又は嵩密度)を示す。
【0040】
上述したように、本発明の粉末組成物は、好ましくは、少なくとも幾つかの鉱質粒子を有する一定量の強化用粒子を含む。例えば、珪灰石のような鉱質粒子は廉価であり、(例えば、一定のガラス繊維と異なり)安定して適切な品質大量に市場で容易に入手できる。あるいは、鉱質粒子を本発明の粉末組成物に含ませることができ、より高い価格の粒子(例えば、炭素繊維やガラス繊維)の使用を減少させるか排除することができる。加えて、例えば、ケイ灰石のような鉱質粒子は白色〜その他の明色形態で入手でき、例えば、炭素繊維のようなその他の類似量の粒子を使用してはできないような美的特質をもつ物品を製造できる。このような美的特質は、白色、明色及び/又は鮮明外観(light-colored, and/or bright appearance)を有する物品の製造をできる。さらに、一定の鉱質粒子の着色が、LS処理を効率的にする利点がある(それと異なり、例えば、炭素繊維の暗色は、背景の項で記載したように、LS処理を妨害し得る不適切量の赤外線エネルギーの吸収をもたらし得る)。
【0041】
本発明の粉末組成物は、好ましくは、少なくとも幾つかの鉱質強化用粒子を含有する。好適な実施態様では、鉱質強化用粒子は、本発明の粉末組成物中に、当該粉末組成物の総重量を基準に、少なくとも約1wt−%、より好ましくは少なくとも約2wt−%、さらにより好ましくは少なくとも約3wt−%、最適には少なくとも約5wt−%の量で存在する。好ましくは、鉱質強化用粒子は、本発明の粉末組成物中に、当該粉末組成物の総重量を基準に、約80wt−%未満、より好ましくは、約50wt−%未満、さらにより好ましくは約40wt−%未満の量で存在する。幾つかの実施態様では、鉱質強化用粒子は、少なくとも約10wt−%、より好ましくは少なくとも約25wt−%、さらにより好ましくは少なくと約50wt−%、そして、最適には、少なくとも約75wt−%の、粉末組成物に含有してなる総重量の強化用粒子で構成する。
【0042】
適切な寸法をもつ鉱質粒子を製造するのに使用される一定の粉砕手順は、所望の機械特性を有するLS物品を製造する目的に不適切なアスペクト比を有する粒子をもたらす。適切なアスペクト比を有する鉱質粒子を与えるために、鉱質粒子は、好ましくは、過度に厳しくない粉砕技術又はその他の適切な技術を使用して製造する。適切なアスペクト比を有する鉱質粒子を製造できる鉱質類の例には、珪酸塩鉱物類(例えば、珪酸カルシウム類)、カルシウム鉱物類(例えば、炭酸カルシウム類)、バリウム鉱物類(例えば、硫酸バリウム類)、マグネシウム鉱物類(例えば、水酸化マグネシウム類)、及びその混合物等がある。
【0043】
好適な実施態様では、鉱質粒子は、適切に処理された珪酸塩鉱物類である。適切な強化用粒子を製造できる珪酸塩鉱物類の例には、フェロブスタマイト、Ca(Fe2+,Ca,Mn2+)[Si2O6];ブスタマイト、(Mn2+,Ca)[SiO3];ビステパイト、Mn5SnB2Si5O20;カスカンダイト、Ca(Sc,Fe3+)[HSi3O9];ペクトライト、NaCa2[HSi3O9];デニソバイト、Ca2(K,Na)Si3O8(F,OH)2;セランダイト、Na(Mn2+,Ca)2[HSi3O9];フォシャガイト、Ca4[(OH)2|Si3O9];ヒレブランダイト、Ca2[(OH)2|SiO3];珪灰石、CaSiO3(例えば、ウオラストナイト−7T、ウオラストナイト−2M等);ランキナイト、Ca3Si2O7;キルコアナイト、Ca3Si2O7;ラルナイト、Ca2SiO4;ブレジガイト、Ca7Mg(SiO4)4;ハツルライト、Ca3[O|SiO4];ロセナーナイト、Hca3[Si3O9(OH)];デラライト、Ca6Si3O11(OH)2;アフウイルライト、Ca3[HSiO4]2・2H2O;ゾノトライト、Ca9Si6O17(OH)2;ジャファイト、Ca6[(OH)6|Si2O7];スオルナイト、Ca2[H2Si2O7]・H2O;キラライト、Ca3[Si2O7]・0.5H2O;オーケナイト、CaSi2O5・2H2O;リバーシダイト、Ca5Si6O16(OH)2・2H2O;トラブゾナイト、Ca4Si3O10・2H2O;ジロライト、Ca4(Si6O15)(OH)2・3H2O;フォシャラサイト、Ca3[Si2O7]・3H2O;トバモライト、Ca5Si6(O,OH)18・5H2O;クリノトバモライト、Ca5[Si3O8(OH)2]2.4H2O-Ca5[Si6O17]・5H2O;ネコアイト、Ca3Si6O12(OH)6・5H2O;プロムベライト、Ca5Si6O16(OH)2・7H2O;ジェンナイト、Ca9H2Si6O18(OH)8・6H2O;シリマナイト、[A]2SiO5];透角閃石、[Ca2Mg5Si8O22(OH)2]等、及びその混合物等がある。
【0044】
珪灰石は、強化用粒子の好適鉱質源である。上述した利点に加えて、珪灰石は、低水分及び低油吸収、低揮発性成分含量、及び/又は高明色度若しくは白色度であり、その各々は一定の実施態様で望ましい。幾つかの実施態様では、珪灰石は、カルシウムと置換し得る少量の鉄、マグネシウム及びマンガンを含有し得る。
【0045】
現在の好適な実施態様では、珪灰石強化用粒子は針状である。好適な市販針状珪灰石強化用粒子の例には、KG, GermanyのH.Osthoff−Perasch GmbH&Coから入手できるFILLEX系列製品(例えば、FILLEX 1AE1、7AE1、6−AF3、及び2AH3製品)、Wolkem(India)、NYCO Minerals Inc.(USA)及びR.T Vanderbilt Co.Inc.(USA)から市販されているA−60製品等がある。
【0046】
本発明の強化用粒子は、表面処理若しくは表面改質をすることができる。このような表面改質は下記のような利点の一つはもたらす。すなわち、改良した美観(例えば、外観、解像度等)、改良した製造、改良寸法安定性、増強表面特性(例えば、改良撥水性や疎水性)、レオロジー特性を制御する樹脂成分及び充填剤成分間の改良水分開放(wet-out)(例えば、粘度増加の除去若しくは減少を伴うより高い荷重)、改良充填分散性(例えば、充填剤凝集の起こることの排除若しくは減少)、及びそれらの組合せ等をもたらす。シラン−表面処理は、好適な表面処理の例である。
【0047】
本発明の強化用粒子は、好ましくは、少なくとも約0.3g/立方センチメートル(g/cc)、より好ましくは、少なくとも約0.5g/cc、そして、さらにより好ましくは、少なくとも約0.7g/ccの嵩密度を有する。好適な実施態様では、強化用粒子の嵩密度は、好ましくは、約5g/cc未満、より好ましくは、約4g/cc未満、そしてさらにより好ましくは約2g/cc未満である。
【0048】
上述したように、本発明の粉末組成物は、好ましくは、1種以上のレーザー焼結可能なポリマー粉末を含有する。LSマシンで適切に処理するとき、レーザー焼結可能なポリマー粉末は、好ましくは、ポリマーマトリックスを有するLS物品を形成できる。適切なレーザー焼結可能なポリマー粉末の例には、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリオレフィン類(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリエーテルケトン類、ポリウレタン類、ポリビニルアセテート類、ポリメタクリレート類、フェノール樹脂類、イオノマー類、ポリアセタール類、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー類、ポリイミド類、ポリカルボーネート類、並びにそのコポリマー類及びその混合物等があり得る。
【0049】
現在、商業的に入手可能なLSマシンは、典型的には、約230℃以下の溶融温度を有する物質を焼結できる。このようなマシンを利用して処理において有用にするために、本発明の粉末組成物は、好ましくは、約230℃未満、より好ましくは、220℃未満、そしてさらにより好ましくは約210℃未満の溶融温度を有する少なくとも1種のレーザー焼結可能なポリマー粉末を含有する。
【0050】
本発明の粉末組成物は、好ましくは、当該粉末組成物から形成されるLS物品が望ましく達成される最大温度未満かそれに等しい温度で溶融しない。好適な実施態様では、1種以上のレーザー焼結可能なポリマー粉末は、好ましくは、約130℃を超える、より好ましくは、約140℃を超える、さらにより好ましくは約150℃を超える、そして最適には約170℃を超える溶融温度を有する。
【0051】
本発明の粉末組成物は、1種以上のレーザー焼結可能なポリマー粉末のいずれかの適切量を含有できる。好ましくは、粉末組成物は、粉末組成物の総重量を基準に、少なくとも約20wt−%、より好ましくは、少なくとも約50wt−%、そしてさらにより好ましくは少なくとも約60wt−%のレーザー焼結可能なポリマー粉末を含有する。好適な実施態様では、粉末組成物は、粉末組成物の総重量を基準に、約97wt−%未満、より好ましくは約85wt−%未満、そしてさらにより好ましくは、約80wt−%未満のレーザー焼結可能なポリマー粉末を含有する。
【0052】
好適な実施態様では、本発明の粉末組成物は1種以上のレーザー焼結可能なポリアミド粉末を含有する。適切なポリアミドの例には、ナイロン6;ナイロン6,6;ナイロン6,10;ナイロン6,12;ナイロン6,13;ナイロン8,10;ナイロン8,12;ナイロン10,12;ナイロン11(例えば、PA,フィラデルフィアのArkemaから入手できるRILSAN D60製品);ナイロン12(例えば、CA,Valenciaの3D Systemsから入手できるDURAFORM PA製品);ナイロン12,12;コポリマーナイロン類(例えば、DE,WilmingtonのDupont Co.から入手できるELVAMIDE系のナイロンコポリマー類及びドイツ、フランクフルトのDegussaから入手できるVESTAMELT系のナイロンコポリマー類);並びにそのコポリマー及びその混合物等があり得る。追加的に有用なポリアミド粉末は例えば、VESTOSINT系の末端カップリングナイロン(例えば、ドイツ、フランクフルトのDegussaから入手できるVESTINT X−1546)のような末端カップリングポリアミド類等があり得る。
【0053】
本発明の粉末組成物中に熱硬化性樹脂も含有させることができる。熱硬化性樹脂は、典型的には、LS処理において非可撓性物品を与える。適切な熱硬化性樹脂の例には、エポキシ類、アクリレート類、ビニルエーテル類、不飽和ポリエステル類、ビスマレイミド類、並びにそのコポリマー類及びその混合物等があり得る。幾つかの実施態様では、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は1種以上の熱可塑性樹脂と1種以上の熱硬化性樹脂との混合物を、本発明の粉末組成物の粉末成分に含ませることができる。
【0054】
レーザー焼結可能なポリマー粉末を製造するポリマー粒子の最大寸法は、好ましくは、少なくとも10ミクロン、より好ましくは、少なくとも約20ミクロン、そして、さらにより好ましくは、少なくとも約40ミクロンを示す。好適な実施態様では、レーザー焼結可能なポリマー粉末の最大寸法は、好ましくは、約200ミクロン未満、より好ましくは、約150ミクロン未満、そして、さらにより好ましくは、約80ミクロン未満を示す。幾つかの実施態様では、強化用粒子とレーザー焼結可能なポリマー粉末とは、強化用粉末の最大寸法が、レーザー焼結可能なポリマー粉末のポリマー粒子の最大寸法と概ね等しいか又はそれより小さくなるように選択する。
【0055】
レーザー焼結可能なポリマー粉末の嵩密度は、好ましくは、少なくとも約0.3g/cc、より好ましくは、少なくとも約0.35g/cc、そして、さらにより好ましくは、0.4g/ccである。好適な実施態様では、レーザー焼結可能なポリマー粉末の嵩密度は、好ましくは、約3g/cc未満、より好ましくは、約2g/cc未満、そして、さらにより好ましくは、約1g/cc未満である。
【0056】
本発明の粉末組成物は、1種以上のその他の任意成分も含有できる。好ましくは、該任意成分は、粉末組成物又はそれから形成される物品に悪影響を与えない。このような任意成分は、例えば、美観を増すために、粉末組成物若しくはそれから形成される物品の製造、処理及び/又は取扱容易のために、及び/又は粉末組成物若しくはそれから形成される物品の特定の特性を改良するために含ませることができる。各任意成分は、好ましくは、その意図する目的を達成するのに足る量であるが、粉末組成物若しくはそれからもたらされる物品に悪影響を与えないような量で含ませる。これらの任意成分は、好ましくは、粒子状物質であり、有機及び/又は無機物質を含有できる。任意成分の粒度は、好ましくは、ポリマー粉末及び/又は強化用粉末の粒度の範囲内である。各任意成分は、必要の場合、粉砕して所望の平均粒度及び粒度分布にする。
【0057】
各、個々の任意成分は、存在する場合、典型的には、粉末組成物中に約0.1wt−%〜約50wt−%の量で存在する。粉末組成物中の任意成分の総量は、好ましくは、約0wt−%から最大約50wt−%までの範囲である。LS処理の間任意成分は溶融することは必須でない。好ましくは、各任意成分は、1種以上の粉末ポリマー及び/又は強化用粒子と適切に相容性であり、強力で耐久性のある物品を与える。
【0058】
幾つかの実施態様では、本発明の粉末組成物は任意のフロー剤を含有する。フロー剤は、好ましくは、LSマシンのビルド表面に粉末組成物が流動し平らにすることができるのに足る量で存在する。存在するとき、粉末組成物は、好ましくは、当該粉末組成物の総重量を基準に、約0.01wt−%〜約5wt−%、より好ましくは、約0.05wt−%〜約2wt−%、そして、さらにより好ましくは、約0.1wt−%〜約1wt−%のフロー剤を含有する。この任意フロー剤は、好ましくは、約10ミクロン未満の最大寸法を有する粒子状無機物質である。適切なフロー剤の例には、水和シリカ、無定形アルミナ、ガラス状シリカ、ガラス状ホウ酸塩、ガラス状酸化物、チタニア、タルク、雲母、ヒュームド・シリカ、カオリン、アタパルジャイト、珪酸カルシウム、アルミナ、珪酸マグネシウム、及びその混合物等がある。ヒュームド・シリカが好適なフロー剤である。
【0059】
幾つかの実施態様では、本発明の粉末組成物は、例えば、アルミニウム粉末、銅粉末、錫粉末、ブロンズ粉末、及びその混合物のような金属充填剤を含有できる。
追加の任意成分には、例えば、トナー類、増量剤、充填剤、着色剤(例えば、顔料や染料)、滑剤、防食剤、チキソトロピー剤、分散剤、抗酸化剤、接着促進剤、光安定剤、有機溶剤、界面活性剤、難燃剤、及びその混合物等がある。
【0060】
好ましくは、本発明の粉末組成物の各成分は適切に乾燥している(例えば、可及的に少ない量の水分、好ましくは、2wt−%以下を含有)。全ての組成物成分は、粉砕、挽く、又はその他の処理をして(必要な場合)、所望の粒度又は粒度範囲にする。
【0061】
本発明の粉末組成物は、いずれかの適切な技術を使用して形成できる。各成分を全て一緒に又は任意の順序でブレンドできる。好ましくは、各成分を均一な粉末組成物が形成されるまでブレンドする。各成分を、機械式混合、空気式混合(例えば、種々の成分を含有するサイロ中に空気を送り込むことにより)、又はその他のいずれかの適切な混合技術を使用してブレンドできる。ブレンド後、得られた粉末組成物を、所望の粒度及び粒度分布の粉末を与えるように篩がけできる。
【0062】
幾つかの実施態様では、強化用粒子を、ポリマーペレット若しくはポリマー粉末と溶融ブレンドし、次いで、中に埋めこまれた強化用粒子を含有する小ペレットにペレット化できる。次いで、得られたペレットをいずれかの適切な技術(例えば、低温粉砕)を使用して処理し、適切な粉末組成物を形成する。
【0063】
本発明のLS物品は、いずれかの適切なLS処理を使用して粉末組成物から製造できる。本発明のLS物品は、好ましくは、ポリマーマトリックス全体にわたって分散した強化用粒子を有するポリマーマトリックスを含有する、複数の上に重なり接着した焼結層を含む。
【0064】
本発明のLS物品の焼結層は、LS処理に適した任意の厚さであることができる。複数の焼結層は、各々、平均で、好ましくは、少なくとも約50ミクロン厚さ、より好ましくは、少なくとも約80ミクロン厚さ、そして、さらにより好ましくは、少なくとも約100ミクロン厚さである。好適な実施態様では、複数の焼結層は、各々、平均で、好ましくは、約200ミクロン厚さ未満、より好ましくは、約150ミクロン厚さ未満、そして、さらにより好ましくは、約120ミクロン厚さ未満である。
【0065】
図3A及び3BはLS物品30の一態様の代表的試料を例証するが、図3AはLS物品30の略側断面図を示し、図3Bは図3Aの3B−3B線に沿って取ったLS物品の略平断面図(top cross-sectional view)を示す。図3A及び3Bは縮尺通りに描いていない。LS物品30は、好ましくは、ポリマーマトリックス34及びマトリックス34全体にわたって分散した強化用粒子36を含有する複数接着焼結層32を含む。図4A及び4Bに示すように、幾つかの実施態様では、強化用粒子36の最大寸法Lが、好ましくは、焼結層32の平面方向PDに実質的に平行に配置されている。
【0066】
本発明の粉末組成物の一定の実施態様は、適切なLS処理によって、型中に形成でき、溶融物質(例えば、プラスチックスやゴム類)を成形製品に成形できる。好適な実施態様では、粉末組成物を、それから成形した型が、130℃を超える、より好ましくは、約140℃を超える、そして、さらにより好ましくは、約150℃を超える温度の溶融物質を適切に成形して、成形した製品を得ることができる。
【試験方法】
【0067】
別に特記しない限り、下記の試験方法を後続の実施例に利用した。破断点伸び、破断点引張強度、及び引張弾性率試験は、国際標準化機構(ISO)3167タイプA、150mm長さの多目的犬骨試験標本を使用して行った。当該犬骨標本は、長さ80mm、厚さ4mm、幅10mmであり、試験標本の平らな面に対して平らな平面方向に配置した複数焼結層を有する(すなわち、HDT試験用LS試験標本の方向と類似の方向)。
【0068】
A.加熱撓み温度
高温のLS物品の機械特性を評価するために、ISO 75−2:2004 方法Aを使用して行った。ISO 75−2:2004 方法Aにしたがって、80×10×4ミリメートル(mm)(長さ×幅×厚さ)LS試験表面の平面位置に1.8メガパスカル(MPa)をかけた。
【0069】
B.破断点伸び
破断点伸び試験をISO 527に従って行った。本発明の粉末組成物から形成したLS試験標本の破断点伸びは、好ましくは、少なくとも約3%、より好ましくは、少なくとも約5%、そして、さらにより好ましくは、少なくとも約10%を示す。
【0070】
C.破断点引張強度
破断点引張り強度試験をISO 527に従って行った。本発明の粉末組成物から形成したLS試験標本の破断点引張り強度は、好ましくは、少なくとも約30MPa、より好ましくは、少なくとも約40MPa、そして、さらにより好ましくは、少なくとも約50MPaを示す。
【0071】
D.引張弾性率
引張り弾性率試験をISO 527に従って行った。本発明の粉末組成物から形成したLS試験標本の引張弾性率は、好ましくは、少なくとも約3,000MPa、より好ましくは、少なくとも約4,000MPa、そして、さらにより好ましくは、少なくとも約5,000MPaを示す。
【実施例】
【0072】
次の実施例により本発明を例証する。特定の実施例、物質、量及び手順は本明細書中で記載した範囲及び精神にしたがって、広く解釈すべきであることを理解すべきである。別記しない限り、全ての部、%は重量によるものであり、全ての分子量は重量平均分子量である。特記しない限り、全ての化学品は、例えば、Sigma−Aldrich,St.Louis,Missouriから市販されている。
【0073】
【表1】

【0074】
物質製造
実施例1〜8並びに比較例A及びB各々の粉末組成物の組成構成を下記の表1に示す。比較例A及びBは購入した市販粉末組成物である。
【0075】
実施例1〜7)珪灰石含有ポリマー粉末の製造
実施例1〜7の粉末組成物の各々について、表1に列挙した物質の表示量を、Mixaco Mischer CM 150ミキサーの混合容器に加えた。100毎分回転数(rpm)で、3回45秒長さ混合工程で物質を乾燥ブレンドして均一粉末ブレンドを形成した。
【0076】
実施例8)珪灰石含有ポリマー粉末の製造
表1に列挙した実施例8の物質の表示量をMixaco Mischer CM 150ミキサーの混合容器に加え、室温で2回30秒長さ混合工程でブレンドした。得られたブレンドを、FVB 19/25二軸スクリュー押出機(Saronno,ItalyのOMC製)中で配合し、次いで、小ペレットにペレット化した。LS用途に適する粉末を製造するために、得られたペレットを100〜300g/分の速度でAlpine Contraplex 160 Cミル中に連続的に供給し、約−50℃の温度で約12,000を16,000rpmで低温粉砕した。
【0077】
【表2】

【0078】
珪灰石含有ポリマー粉末の反射電子顕微鏡写真
図4Aは、未充填DURAFORM PA ナイロン12粉末の反射電子顕微鏡写真である。図4Bは、75wt−%のDURAFORM PA ナイロン12粉末及び25wt−%のA60珪灰石を含有する実施例1〜7の方法にしたがって製造した本発明の粉末組成物の反射電子顕微鏡写真である。図4Bに示されているように、珪灰石粒子は、ギザギザで針状粒子である。
【0079】
LS物品の製造
LS物品を製造する実施例1〜8の粉末の適性を評価するために、実施例1〜8の各粉末を、VANGUARD HS LSシステム(Valencia,CAの3D Systems製)のビルド表面に施用し、LS物品を作成するのに使用した。約0.1〜0.15mmの層厚さ、約20〜50ワットのレーザー強度設定、及び約0.15mm〜0.40mmのレーザー走査空間を使用してLS物品を製造した。得られたLS物品は良好な着色及び解像を示し、いずれの顕著なカールを示さず、それにより、実施例1〜8の粉末はLS物品を形成するのに適していたことを示す。
【0080】
機械特性
本発明のLS物品の機械特性を評価するために、VANGUARD HS LSシステムを使用して、実施例1〜8並びに比較例A及びBの各粉末から試験標本を製造した。各粉末の試験標本のうち4及び5の間で前掲試験方法の項に記載の試験方法に付した。これらの試験結果を下記の表2に示す。
【0081】
表2に示したように、実施例1〜8の試験標本は比較例Aの未充填試験標本に対して1以上の望ましい機械特性を示し、これらの実施例の各々の試験標本は比較例Aの試験標本よりも著しく高いHDTを示した。加えて、実施例1〜6の試験標本は、比較例Aの破断点引張強度と類似の破断点引張強度を示した(実施例4の試験標本は、比較例Aの試験標本の破断点引張り強度よりもわずかに高い破断点引張り強度を示した)。さらに、実施例1〜8の試験標本により示された破断点伸び及び引張り弾性率は許容できた。
【0082】
比較例B(50wt−%の球形ガラス充填粒子を含有する)も、比較例Aに対して上昇したHDTを示したが、実施例1、2及び4〜6の試験標本により示されたHDTほど高くなかった。しかし、実施例1〜6の試験標本と異なり、比較例Bの試験標本は比較例Aの試験標本に対して実質的に低下した破断点引張強度を示した。比較例Bの組成物から形成したLS物品は、約134℃を超えるHDT及び/又は約27MPaよりも高い引張り強度を必要とする一定のLS用途に適することができない場合がある。理論により制限されることを意図しないが、比較例Aの試験標本の低下した引張り強度は球形ガラス充填剤粒子の低アスペクト比に起因し得ると考えられる。
【0083】
したがって、表2の結果は、実施例1〜8の珪灰石含有試験が、未充填LS物品(すなわち、比較例Aの試験標本)に関して上昇したHDTを示すことを表示する。さらに、実施例1〜6の珪灰石含有試験標本は、慣用ガラス充填剤粒子を含有するLS物品(すなわち比較例Bの試験標本)により示されるような破断点引張強度(比較例Aの試験標本に関して)の低下を示さなかった。
【0084】
【表3】

【0085】
追加のレーザー焼結実験を実施例6及び比較例Aの粉末を使用して行い試験標本を形成した。レーザー焼結系の実験パラメーターを最適化することにより、実施例6の珪灰石含有試験標本を製造し、(i)50MPaを超え且つ(ii)比較例Aの試験標本の引張強度よりも高い双方を備えた引張強度を示した。増強された引張強度は、試験標本のその他の機械特性を妥協することなく達成した。
【0086】
本明細書中で引用した、全ての特許、特許出願、及び公開公報の完全な開示並びに電子的に入手できるものを参照として本明細書に含める。前述の詳細な説明及び実施例は理解を明確にするためにのみ与えた。本発明は示し且つ記載した正確な詳細に制限されず、当業者に自明な変更は請求の範囲に記載した発明の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末組成物であって、
少なくとも1種のレーザー焼結可能なポリマー粉末;並びに
粉末組成物の総重量を基準に少なくとも約3重量%の、少なくとも約5:1のアスペクト比及び約300ミクロン未満の最大寸法を有する強化用粒子を含み、
ここで、強化用粒子の少なくとも一部が、粉末組成物の総重量を基準に、粉末組成物の少なくとも約1wt−%を含む鉱質粒子である、粉末組成物。
【請求項2】
鉱質粒子が、粉末組成物の総重量を基準に、粉末組成物の少なくとも約3wt−%を含む、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項3】
強化用粒子のアスペクト比が少なくとも約10:1である、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項4】
強化用粒子のアスペクト比が少なくとも約20:1である、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項5】
鉱質粒子の少なくとも一部が、1種以上のフェロブスタマイト、ブスタマイト、ビステパイト、カスカンダイト、ペクトライト、デニソバイト、セランダイト、フォシャガイト、ヒレブランダイト、珪灰石、ランキナイト、キルコアナイト、ラルナイト、ブレジガイト、ハツルライト、ロセナーナイト、デラライト、アフウイルライト、ゾノトライト、ジャファイト、スオルナイト、キラライト、オーケナイト、リバーシダイト、トラブゾナイト、ジロライト、フォシャラサイト、トバモライト、クリノトバモライト、ネコアイト、プロムベライト、ジェンナイト、シリマナイト、透角閃石、又はその混合物を含む、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項6】
鉱質粒子が珪酸塩を含む、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項7】
鉱質粒子が硅灰石を含む、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項8】
強化用粒子の最大寸法が約250ミクロン未満である、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項10】
強化用粒子の最大寸法が約200ミクロン未満である、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項11】
強化用粒子の最大寸法が約10ミクロンを超える、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項12】
少なくとも1種のポリマー粉末がポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリメタクリレート、フェノール樹脂、イオノマー、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリイミド、ポリカルボーネート、又はその混合物を含む、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項13】
少なくとも1種のポリマー粉末がポリアミドを含む、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項14】
少なくとも1種のポリマー粉末がナイロン6,10;ナイロン6,12;ナイロン6,13;ナイロン8,10;ナイロン8,12;ナイロン10,10;ナイロン10,12;ナイロン12,12;ナイロン−11;ナイロン−12;又はその混合物を含む、請求項13に記載の粉末組成物。
【請求項15】
レーザー焼結可能なポリマー粉末のポリマー粒子の最大寸法が、平均で、少なくとも約200ミクロン未満である、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項16】
粉末組成物をレーザー焼結して試験標本を形成するとき、試験標本は、強化用粒子の不存在の少なくとも1種のポリマー粉末をレーザー焼結することにより製造した参照試験標本の加熱撓み温度よりも高い加熱撓み温度を示す、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項17】
粉末組成物をレーザー焼結して試験標本を形成するとき、強化用粒子が、強化用粒子の不存在の少なくとも1種のポリマー粉末をレーザー焼結することにより製造した参照試験標本に対して少なくとも約10℃まで試験標本の加熱撓み温度を上昇させるのに足る量で存在する、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項18】
粉末組成物をレーザー焼結して試験標本を形成するとき、試験標本の加熱撓み温度が少なくとも約130℃である、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項19】
粉末組成物をレーザー焼結して試験標本を形成するとき、試験標本の加熱撓み温度が少なくとも約140℃である、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項20】
粉末組成物をレーザー焼結して試験標本を形成するとき、試験標本の加熱撓み温度が少なくとも約150℃である、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項21】
粉末組成物をレーザー焼結して試験標本を形成するとき、試験標本の引張強度が少なくとも約40MPaである、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項22】
請求項1に記載の粉末組成物を与え、そして
当該粉末組成物を選択的レーザー焼結して三次元物品を形成することを含む方法。
【請求項23】
少なくとも1種のポリマー粉末及び強化用粒子をブレンドして粉末組成物を形成することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
強化用粒子と、
少なくとも1種のポリマー粉末又は少なくとも1種のポリマー粉末からなる物質を含有するペレットとを溶融ブレンドし;そして
得られたブレンドから粉末組成物を形成する
ことをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
請求項22に記載の方法により製造した三次元物品。
【請求項26】
三次元物品であって、
ポリマーマトリックス;と
少なくとも約5:1のアスペクト比、及び
少なくとも約300ミクロン未満の最大寸法を
を有し、前記ポリマーマトリックス全体にわたって分散されている強化用粒子と
を含む複数の焼結層を含み、
ここで、強化用粒子が
複数の焼結層の総重量を基準に、複数の焼結層の少なくとも約3wt−%を含み、そして
複数の焼結層の総重量を基準に、複数の焼結層の少なくとも約1wt−%を含む鉱質粒子を含有する
前記三次元物品。
【請求項27】
方法であって、
少なくとも1種のレーザー焼結可能なポリマー粉末;と
粉末組成物の総重量を基準に少なくとも約3重量%の、少なくとも約5:1のアスペクト比及び約300ミクロン未満の最大寸法を有する強化用粒子と
を含む粉末組成物を与え、
当該粉末組成物をレーザー焼結して、約130℃を超える温度の物質から成形製品を形成できる型を形成する、
前記方法。
【請求項28】
前記型を使用して、約130℃よりも高い温度の物質から成形製品を形成すること
をさらに含む、請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2010−509459(P2010−509459A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536385(P2009−536385)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/082953
【国際公開番号】WO2008/057844
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(503026211)ヴァルスパー・ソーシング・インコーポレーテッド (15)
【Fターム(参考)】