粉流体定量排出器および排出間隙オンラインモニタリングシステム
【課題】回転羽根と底板とのギャップ(間隙)を逐次測定することが可能な構成を備える粉流体定量排出器を提供することにある。また、他の目的として、回転羽根と底板とのギャップ(間隙)の測定結果に基づき、ギャップが予め定められ値よりも小さくなった場合に、粉流体定量排出器の運転を停止させることを可能とする、粉流体定量排出器の排出間隙オンラインモニタリングシステムを提供する
【解決手段】容器底部に設けられる底板101と、この底板101の上面側において、所定の間隙を隔てて回転通過するように配置される回転羽根102,103と、底板101の下面側に設けられ、回転羽根102,103と前記底板101との間隙を測定するための間隙センサ200とを備え、この間隙センサ200は、渦流探傷法により回転羽根102,103と底板101との間隙を測定するための渦流コイルである。
【解決手段】容器底部に設けられる底板101と、この底板101の上面側において、所定の間隙を隔てて回転通過するように配置される回転羽根102,103と、底板101の下面側に設けられ、回転羽根102,103と前記底板101との間隙を測定するための間隙センサ200とを備え、この間隙センサ200は、渦流探傷法により回転羽根102,103と底板101との間隙を測定するための渦流コイルである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉流体定量排出器の排出間隙の測定およびその測定結果に基づいた排出間隙オンラインモニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用タイヤなどのゴム類や電線被覆材などの絶縁材料等の高分子材料には、劣化防止、耐候性向上、絶縁性向上などの性能向上を目的に、粉体の添加剤が混練される。添加剤を製造する際に、添加剤を製造するプラントを構成する配管や設備に由来する錆や金属滓などの金属異物を徹底的に排除することが、混練された高分子材料に上記性能を与えるために極めて大切である。
【0003】
添加剤等の粉流体の定量排出には、下記特許文献1に開示されるような、サークルフィーダと呼ばれる粉流体定量排出器が用いられる。この粉流体定量排出器は、医薬中間体や添加物等の粉体およびウェットケーキ等の流体の定量排出に採用されている機器である。粉流体定量排出器の一般的なレイアウトは、ホッパー・サイロ底部に設置され、粉流体を定量排出する機械である。
【0004】
図18、図19、および、図20に粉流体定量排出器100の構成を示す。図18は、内部構造の理解を容易にするために部分的に破断した全体斜視図であり、図19は、内部構造を示す平面図であり、図20は、内部構造を示す縦端面図である。
【0005】
排出原理は、底板101の上を薄い水平な回転大羽根102が回転することにより(図19の矢印参照)、ホッパ107内に収容された内容物は図20内の矢印で示すように、円筒外周部側に送られ、外周の内容物は外周に配置された回転小羽根103により、排出部104から定量排出される。回転大羽根102はモータ105の回転が伝達される回転軸106を軸芯とした片持ち梁構造である。そのため、回転大羽根102には撓みが発生する。
【0006】
この撓み量を考慮した上で、回転大羽根102と底板101とのギャップ(間隙)を確実に確保しておかなければ、回転大羽根102が底板101に接触する可能性がある。これらは詳細設計時点で十分な強度、寸法を有するよう決定されている。しかし、排出部104の閉塞等が発生すると、回転大羽根102が底板101の方向へ沈み込む現象が確認されている。
【特許文献1】特開平06−64756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は粉流体定量排出器において、排出部の閉塞等が発生すると、回転大羽根が底板の方向へ沈み込み(撓み)、この沈み込み量が設計時の予測値を超えた場合には、回転大羽根が底板に接触し、回転大羽根を含む回転羽根が回転しなくなる点、さらには、回転大羽根が底板に接触することに起因する、金属異物が混入するおそれがある点にある。
【0008】
したがって、この発明の目的は、回転羽根と底板とのギャップ(間隙)を逐次測定することが可能な構成を備える粉流体定量排出器を提供することにある。また、他の目的として、回転羽根と底板とのギャップ(間隙)の測定結果に基づき、ギャップが予め定められ値よりも小さくなった場合に、粉流体定量排出器の運転を停止させることを可能とする、粉流体定量排出器の排出間隙オンラインモニタリングシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に基づいた粉流体定量排出器においては、容器内に収容された粉流体を定量排出する粉流体定量排出器であって、容器底部に設けられる底板と、上記底板の上面側において、所定の間隙を隔てて回転通過するように配置される回転羽根と、上記底板の下面側に設けられ、上記回転羽根と上記底板との間隙を測定するための間隙センサとを備えている。
【0010】
また、この発明に基づいた排出間隙オンラインモニタリングシステムにおいては、上記粉流体定量排出器と、上記間隙センサからの情報に基づき、上記回転羽根と上記底板との間隙を測定する渦流探傷器と、上記渦流探傷器により測定された間隙を表示する表示盤と、上記渦流探傷器により測定された間隙に基づき、上記間隙が第一の所定値以下の場合に注意を喚起するための報知手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
この発明に基づいた粉流体定量排出器および排出間隙オンラインモニタリングシステムによれば、底板の下面側に回転羽根と底板との間隙を測定するための間隙センサとが設けられることにより、回転羽根と底板との間隙を逐次測定することが可能となる。これにより、回転羽根と底板との間隙の測定結果に基づき、ギャップが予め定められ値よりも小さくなった場合に、粉流体定量排出器の遠隔操作者にその旨を報知することが可能となるとともに、さらに、ギャップが予め定められ値よりも小さくなった場合には粉流体定量排出器の運転を停止させることが可能となる。その結果、回転羽根が底板に接触することに起因する、金属異物の混入を未然に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明に基づいた各実施の形態における粉流体定量排出器および排出間隙モニタリングシステムについて図を参照しながら説明する。なお、各実施の形態において、背景技術において説明した部分と同一または相当部分については、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0013】
<実施の形態1>
以下、実施の形態1において、本発明に基づいた粉流体定量排出器について、図を参照しながら説明する。まず、「高分子添加剤」等の粉体、および、ウェットケーキ等の流体のブリッジ防止と、定量排出用に用いられている「粉流体定量排出器」の内部回転大羽根と本体の底板との接触を未然防止し、金属異物混入防止を目的として開発した「粉流体定量排出器用のギャップセンサ」の有効性が確認されたので、以下説明する。
【0014】
<<<渦流探傷法について>>>
1.交流磁束と渦電流
図1に、渦電流の誘起原理の模式図を示す。図1に示すように渦流コイル1に交流電流2を流すと磁束3が発生する。この渦流コイル1を導体4に近づけると導体4に渦電流5が誘起される。この渦電流5の流れを妨げるように傷や材料特性(導電率、透磁率)が変化する部位(欠陥6)が存在すると、磁束3が変化し渦流コイル1に流れる電流が変化し、一般にはこの変化量から傷検出などを行なう。
2.渦流コイルの種類と特徴
図2に渦流コイル1の分類を示す。検査対象物によって、貫通コイル1A、内挿コイル1B、および、上置コイル1Cの3種類の渦流コイル1が使いわけられる。貫通コイル1Aは棒や伝熱管の製造メーカが製品出荷検査として使用されている。内挿コイル1Bは化学、電力、原子力プラントなどに設置された熱交換器伝熱管の保守検査に使用される。また、上置コイル1Cもこれらプラントの塔槽、熱交換器、配管壁面の保守検査に使用されている。
【0015】
渦流探傷法は、検査スピードが速く、超音波探傷法と違い水などの接触媒質が不要で、取扱い易い利点がある。反面、傷以外の材料特性の変化、接触面の変化などにも影響されるため検査精度が超音波法などに比べて落ちることから粗探傷法として利用されてきた。
3.渦流コイルの信号出力
図3に、市販の渦流探傷器に採用されているホイートストンブリッジ回路を示し、図4に、管8内に収容された内挿コイル7を示す。渦流探傷器に採用されるホイートストンブリッジ回路においては、差動方式の渦流コイルのそれぞれのインピーダンス(交流抵抗)をZ1、Z2、渦流探傷器が持っている固有抵抗ZM1、ZM2と平衡するように設定しておく。その状態で内挿コイル7を管8の管軸方向に移動させると(図4参照)、傷などがあれば渦電流に乱れが生じ、インピーダンス変化が渦流探傷器にリサージュ波形として表示される。
【0016】
<<<粉流体定量排出器への適用性の検討>>>
渦流探傷法は、浸炭測定や応力腐食割れ検査に適用されていることは知られている。エチレン分解炉輻射管には、高級ステンレス鋼が使用されているが、使用に伴い浸炭損傷が発生することがある。この浸炭深さを測定することで寿命予測が可能となる。また、汎用ステンレス鋼(SUS304鋼)には応力腐食割れが発生することがある。これら損傷を検出するため上置コイルデザインや測定方法を開発し、プラントの安全・安定運転を行なってきた。浸炭厚さ測定は、検出精度、推定精度ともにすぐれており、多くの工場の石油化学プラントで使用されている。
【0017】
今回の粉流体定量排出器においては、厚さ9mmのSUS316製底板の向こう側にある厚さ9mm〜16mm×幅124mmのSUS304製回転大羽根を5mm以上のギャップをあけて検出する必要がある。渦電流の非磁性体への浸透深さは、上置コイル外形の1/4といわれている。そこで、手持ちの輻射管浸炭厚さ測定用上置コイルで、最も外径の大きいφ48mmのもので検出できるか否か、その可能性を現場で確認した。
1.試験装置
(1)渦流探傷器:型式ASSORT330(アスワン電子販売(株)製)
(2)上置コイル
ボビン ;ID28mm×OD48mm×H34mm
コイル ;φ0.15mm被覆銅線×950巻き×2
コイル幅15mm×コイル間隔2mm×コイル幅15mm
永久磁石 ;コイル内側にID20mm×OD28mm×t1.9mm(CORMAX−2000(株)NEOMAX製)×2枚をJIS規格SNCM439相当品のEN25mm×OD28mm×t30mmの上下に配置して挿入
試験周波数;1kHz
(3)試験片
模擬底板 ;t9mm×SUS316製
模擬大羽根;上辺105mm×下辺142mm×L300mm×t9mmの台形状のSUS304製の板
2.試験方法
上記の模擬大羽根、模擬底板、上置コイルを用い、模擬底板の下側に上置コイルを取付け、上側に厚さを変えてアクリル板を置き、上置コイル中心上方を模擬大羽根の幅が123.5mmの位置を通過させ電圧変化を測定した。
3.試験結果
模擬試験片での試験結果を図5に示す。出力電圧(V)は、模擬底板と模擬大羽根とのギャップが5mmで3.0V、10mmで1.7V、28mmで0.5Vの出力電圧が得られた。
4.粉流体定量排出器での確認
粉流体定量排出器の回転羽根と反対側の底面に上置コイルの中心が回転大羽根の幅が123.5mmの位置に取付けた。粉流体定量排出の中に入り、回転大羽根と底板との間隔をメジャーで測定し、回転大羽根を手動で動かして電圧を測定した結果を図5に示す。図5に示すように、ギャップと出力電圧との間には比例関係が存在することが確認できた。
【0018】
<実施の形態1における粉流体定量排出器100A>
続いて、図6および図7に本実施の形態における粉流体定量排出器100Aを示す。図6は、本実施の形態における粉流体定量排出器の内部構造を示す平面図であり、図7は、本実施の形態における粉流体定量排出器の内部構造を示す縦端面図である。基本的構造は、背景技術に示す粉流体定量排出器と同様であり、回転大羽根102と回転小羽根103とを有する回転羽根が、モータ105の回転が伝達される回転軸106を軸芯(回転中心)とした片持ち梁構により軸支持されている。回転羽根の下方には、底板101が設けられ、回転羽根106の上方には、ホッパ107が配設されている。底板101の外周には、排出部104が設けられている。
【0019】
底板101の上を薄い水平な回転大羽根102が回転することにより(図6中の矢印参照)、ホッパ107内に収容された内容物は図6中の矢印で示すように、円筒外周部側に送られる。外周の内容物は外周に配置された回転小羽根103により、排出部104から定量排出される。
【0020】
この粉流体定量排出器100Aにおいて、回転大羽根102と回転小羽根103とが設けられる部分、すなわち、回転羽根の外周部の底板101を挟んだ下方に、上置コイル200を取付ける。図8は、底板101の下に配置された上置コイル200の上を、底板101を挟んで、回転大羽根102(回転小羽根103も同様)が、所定のギャップを隔てて回転通過する状態を示す拡大断面摸式図である。また、図9に、上置コイル200により検出した電圧波形を示す。図9において、大きい波形(0.75V)が回転大羽根102のものであり、小さい波形(0.4V)が回転小羽根103のものである。ギャップが同じであると波形の高さは断面積の相関し、回転小羽根103も充分検出されていることが確認された。図9で示される回転小羽根103は、同じ断面積であることことから、異なる波形の高さがギャップと相関している。
【0021】
<<<上置コイルデザイン(ギャップセンサ)の検討>>>
1.非磁性体用上置コイル
外径φ48mmの浸炭測定用コイルで、回転大羽根、回転子羽根が検出できることが確認されたが、さらなる検出性能の向上を目指して、上置コイルを試作した。検出性能の確認は模擬子羽根で行なった。
(1)試験装置
(a)渦流探傷器;型式ASSORT330(アスワン電子販売(株)製)
(b)上置コイル
(i)φ50上置コイル
ボビン ;ID38.5mm×OD50.5mm×H14.2mm
コイル ;φ0.1被覆銅線×100巻き×2
コイル幅3×コイル間隔2×コイル幅3
(ii)φ90上置コイル
ボビン ;ID48mm×OD90mm×H40mm
コイル ;φ0.15被覆銅線×180巻き×2
コイル幅5×コイル間隔4×コイル幅5
(c)試験周波数;1kHz
(d)試験片
模擬底板 ;t9×SUS316製
模擬小羽根;上辺20×下辺69×L1180×t5.9の台形状のSUS304製の板
(2)試験方法
上記の模擬小羽根、模擬底板、上置コイルを用い、模擬底板の下側に上置コイルを取付け、上側に厚さを変えてアクリル板を置き、上置コイル中心上方を模擬小羽根の幅が50mmの位置を通過させ電圧変化を測定した。
(3)試験結果
模擬試験片での試験結果を図10に示す。図10に示すように、出力電圧(V)は、コイル外形を大きくするほうが大きくなり、試験片として用いた模擬子羽根も充分検出していることから実機へは、φ90上置コイルを適用することにした。
【0022】
ここで、φ50の上置コイルでの模擬子羽根の出力電圧は、ギャップが4mm以上では1V以下であった。この出力電圧は図9に示したφ48の上置コイルによる回転小羽根の出力電圧0.4Vと比較しても同レベルの電圧であり、検出感度はコイル径に依存しているような結果となった。
2.強磁性体用上置コイル
t10mm程もある底板の炭素鋼板を磁化し、透磁率を1に近づけるには、電磁石を使用すれば容易である。しかし、粉流体定量排出器に取付けられる上置コイルは、認定済みの防爆構造容器のなかに収めることを前提で検討した。この防爆構造容器寸法は、非磁性体用の上置コイル(OD90mm×H40mm)が収められるぎりぎりの寸法であり、強磁性体用の上置コイル寸法も同寸法とし、永久磁石による磁化方式を選択し、許される寸法のなかで、どこまで炭素鋼板を磁化できるか永久磁石配置について検討した。あわせて、高感度の上置コイルを製作するため、コイルデザインの検討も行なった。
(1)コイルデザインの検討
上述したように、コイル径が大きくなれば検出感度が高くなる。しかし、どこかで、その寸法には限界があるはずであり、その確認を行なった。
【0023】
(a)試験装置
(i)計測器
渦流探傷器 ;AV100SE(日本ホッキング社製)
チャートレコーダ;メモリハイコーダー8846(日置電機社製)
(ii)上置コイル
検討用に試作した上置コイルの仕様を図11に示す。コイル外形φ60、φ80、φ100のものを製作した。コイル巻数は、渦流探傷器とのインピーダンス整合性を考慮して、空芯時、試験周波数1kHz時のコイルインピーダンスが100Ω(50Ω+50Ω)となるようにした。
【0024】
(iii)試験片
(ア)模擬底板;400mm×400mm×t1
(イ)模擬大羽根;上辺80mm×下辺120mm×L440mm×t19mmの台形状の炭素鋼板
(b)試験方法
上記の模擬大羽根、模擬底板、上置コイルを用い、下側より模擬大羽根、ギャップ調整用アクリル板、t1模擬底板、t2のアクリル板、上置コイルを配置した。永久磁石(NEOMAX−38Hφ46×t15、(株)NEOMAX製)は、上置コイルの中に収めた。そのため、永久磁石と炭素鋼製模擬底板が直接接触すると引き離すのが困難なため、t2のアクリル板を、クッション材として入れた。この状態で上置コイル中心下方を模擬大羽根の幅が100mmの位置を通過させ電圧変化を測定した。
【0025】
(c)試験結果
模擬底板と上置コイル間のギャップを8mmにしたときの模擬大羽根の検出結果を図12に示す。図12に示すように、コイル幅−間隔−コイル幅が5−4−5の上置コイルの検出感度は、コイル外径φ80>φ100>φ60の順に良かった。コイル外径を無制限に大きくしても検出感度が良くならないことが確認された。コイル外径φ80の上置コイルで、コイル間隔が4mmのものと30mmのもので検出感度を比較するとコイル間隔が30mmの方が高い検出感度を示した。
【0026】
(d)上置コイルデザイン
高感度の上置コイルをデザインするうえでのパラメータとしては、次のものがあげられる。
【0027】
(i)渦流探傷器とのコイルインピーダンスのマッチング特性
市販の渦流探傷器では、通常100Ω(50Ω+50Ω)である。
【0028】
(ii)浸透深さ
コイル径×1/4を浸透深さの目安とする。
【0029】
(iii)コイル間隔
コイル径φ8、φ14.5、φ20のコイルを加えて、コイル間隔と検出感度で整理した結果を図13に示した。コイル径が変わってもコイル間隔が30mm近辺で飽和している。これは図2に示した自己比較タイプのコイルの一方を空気バランスさせたとき、コイル間隔を離すほどコイル相互間の緩衝が少なくなって、感度向上に寄与したものと考えられる。
(2)強磁性体用上置コイルの製作
非磁性体用上置コイルと同寸法のOD90mm×H40mm内に収まるようにコイル内側、コイル外側に磁石を配置した上置コイルを製作した。
【0030】
(a)試験装置
(i)計測器
渦流探傷器 ;AV10B−II(日本ホッキング社製)
チャートレコーダ;オムニライト(日本電気三栄製)
(ii)上置コイル
製作した上置コイルの各部寸法を図14に示す。図14に示したように、コイル間隔は寸法の制約上20mmとした。
【0031】
ボビン;ID47mm×OD69mm×H30mm
コイル;φ0.15被覆銅線×170巻き×2
コイル幅5×コイル間隔20×コイル幅5
永久磁石;コイル内側にφ46×t15(NEOMAX−38(株)NEOMAX製)×2個
コイル外側にODφ90×IDφ70×t5(Nd−Fe−B磁石、マスマテリアル(株)製)×6個
(iii)試験片
(ア)模擬底板;400mm×400mm×t2mm、t5mm、t6.5mm
(ロ)模擬大羽根;上辺80mm×下辺120mm×L440mm×t19mmの台形状の炭素鋼板
(b)試験方法
上記の模擬大羽根、模擬底板、上置コイルを用い、下側より模擬大羽根、ギャップ調整用アクリル板、模擬底板、t2のアクリル板、上置コイルを配置した。ここでもt2のアクリル板は、クッション材として入れた。この状態で上置コイル中心下方を模擬大羽根の幅が100mmの位置を通過させ電圧変化を測定した。
【0032】
(c)試験結果
各板厚さにおける炭素鋼鋼板と各ギャップとにおける出力信号の試験結果を図15に示す。t5mmの炭素鋼鋼板であればギャップ5mmでの検出信号は1.5V、ギャップ10mmでも1Vあり、実用上問題のない検出感度が得られた。現地に据わっている粉流体定量排出器の底板が5mmより厚いときは、設置場所を穴繰りして薄くすることが好ましい。また、永久磁石の体積としては、上記永久磁石の2倍以下であると人力で取扱いが容易な吸着力を示すことから好ましく、永久磁石の大きさ(高さ、径)としては、上記永久磁石のそれの2倍以下であると人力で取扱いが容易な吸着力を示すことから好ましい。
(実施の形態2)
<<<排出間隙オンラインモニタリングシステムの構築>>>
以下、実施の形態2において、本発明に基づいた粉流体定量排出器を用いた、排出間隙オンラインモニタリングシステム1000の構築について、図16を参照しながら説明する。計器室でギャップを監視できるような排出間隙オンラインモニタリングシステム1000を構築した。システム構成としては、上置コイルとCPU内蔵渦流探傷器、操作用のパソコン及び、ギャップ表示盤とした。全体のシステム構成と各部の詳細な機能を紹介する。
1.システム構成
システムの構成を図16に示す。渦流コイルとして上置コイル200と渦流探傷器300とで検出した回転大羽根および回転小羽根からの電気信号を渦流探傷器300に内蔵されたCPUに送り、インプットされた校正データ(φ90上置コイルの電圧vsギャップ曲線)と照合、演算処理し、表示盤500へギャップを表示させるシステムである。
【0033】
ギャップ信号には、2段階のしきい値を設け、「アラームレベル」と「トリップレベル」とした。「アラームレベル」は、ギャップが小さくなってきていることを報知する注意信号とした。「トリップレベル」は、これ以上ギャップが小さくなると接触等の問題が発生するレベルとし、このレベルになると機械を停止させるインターロック信号600を発するようにした。
【0034】
これらの信号は表示盤500とモータ105に送られ、「トリップレベル」の場合はインターロック600が作動し、粉流体定量排出器100Aの運転を停止させる。各々のアラームレベル、トリップレベル、校正データは操作用パソコン400から設定変更可能とした。
2.防爆構造
化学プラントは消防法上の危険物取扱所、または、危険物製造所に該当することが殆どであるため、上置コイルを粉流体定量排出器の底板に設置するにあたって、防爆構造が必須条件となる。電気品の防爆構造として、労働省産業安全研究所技術指針(ISSN0991-8063)、ユーザーのための工場防爆電気設備ガイド(ガス防爆1994)に合致する方法にて防爆構造の設計を進めた。図17に底板に取付けた防爆構造ケース700の外観を示す。
3.渦流探傷器
渦流探傷器は市販されている探傷器の内蔵CPU、メモリ及び入力部を用いて、ギャップセンサ専用のプログラムソフトを作製した。
4.表示盤
市販品では合致するものがないため電気端子盤をベースに製作した。盤面上には3桁LEDによりギャップを表示させる。アラーム・トリップ状態の各々の表示灯、アラーム・トリップ時のブザーを設置している。
【0035】
以上、本発明に基づく各実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】渦電流の誘起原理を示す模式図である。
【図2】渦流コイルの分類を示す図である。
【図3】市販の渦流探傷器に採用されているホイートストンブリッジ回路図である。
【図4】管内に収容された内挿コイルを示す図である。
【図5】ギャップと出力電圧との間に比例関係が存在することを示す図である。
【図6】この発明に基づいた実施の形態1における粉流体定量排出器の内部構造を示す平面図である。
【図7】この発明に基づいた実施の形態1における粉流体定量排出器の内部構造を示す縦端面図である。
【図8】この発明に基づいた実施の形態1における粉流体定量排出器の、底板の下に配置された上置コイルの上を、底板を挟んで回転大羽根および回転小羽根が所定のギャップを隔てて回転通過する状態を示す拡大断面摸式図である。
【図9】この発明に基づいた実施の形態1における粉流体定量排出器のφ48の上置コイルにより検出した電圧波形を示す図である。
【図10】φ50の上置コイルおよびφ90の上置コイルの検出性能の結果を示す図である。
【図11】コイル外形φ60、φ80、φ100における上置コイルの仕様を示す図である。
【図12】模擬底板と上置コイル間のギャップを8mmにしたときの模擬大羽根の検出結果を示す図である。
【図13】コイル径φ8、φ14.5、φ20のコイルを加えて、コイル間隔と検出感度との関係を整理した図である。
【図14】非磁性体用上置コイルと同寸法のOD90mm×H40mm内に収まるようにコイル内側、コイル外側に磁石を配置した上置コイルの各部寸法を示す断面図である。
【図15】各板厚さにおける炭素鋼鋼板と各ギャップとにおける出力信号の試験結果を示す図である。
【図16】本発明に基づいた実施の形態2に示す粉流体定量排出器を用いた、排出間隙オンラインモニタリングシステムを示す図である。
【図17】底板に取付けた防爆構造ケースの外観を示す図である。
【図18】背景技術として示す粉流体定量排出器の内部構造の理解を容易にするために部分的に破断した全体斜視図である。
【図19】背景技術として示す粉流体定量排出器の内部構造を示す平面図である。
【図20】背景技術として示す粉流体定量排出器の内部構造を示す縦端面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 渦流コイル、1A 貫通コイル、1B 内挿コイル、1C 上置コイル、2 交流電流、3 磁束、4 導体、5 渦電流、6 欠陥、7 内挿コイル、8 管、100A 粉流体定量排出器、101 底板、102 回転大羽根、103 回転小羽根、104 排出部、105 モータ、106 回転軸、107 ホッパ、200 上置コイル、300 渦流探傷器、400 操作用パソコン、500 表示盤、600 インターロック信号、700 防爆構造ケース、1000 排出間隙オンラインモニタリングシステム。
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉流体定量排出器の排出間隙の測定およびその測定結果に基づいた排出間隙オンラインモニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用タイヤなどのゴム類や電線被覆材などの絶縁材料等の高分子材料には、劣化防止、耐候性向上、絶縁性向上などの性能向上を目的に、粉体の添加剤が混練される。添加剤を製造する際に、添加剤を製造するプラントを構成する配管や設備に由来する錆や金属滓などの金属異物を徹底的に排除することが、混練された高分子材料に上記性能を与えるために極めて大切である。
【0003】
添加剤等の粉流体の定量排出には、下記特許文献1に開示されるような、サークルフィーダと呼ばれる粉流体定量排出器が用いられる。この粉流体定量排出器は、医薬中間体や添加物等の粉体およびウェットケーキ等の流体の定量排出に採用されている機器である。粉流体定量排出器の一般的なレイアウトは、ホッパー・サイロ底部に設置され、粉流体を定量排出する機械である。
【0004】
図18、図19、および、図20に粉流体定量排出器100の構成を示す。図18は、内部構造の理解を容易にするために部分的に破断した全体斜視図であり、図19は、内部構造を示す平面図であり、図20は、内部構造を示す縦端面図である。
【0005】
排出原理は、底板101の上を薄い水平な回転大羽根102が回転することにより(図19の矢印参照)、ホッパ107内に収容された内容物は図20内の矢印で示すように、円筒外周部側に送られ、外周の内容物は外周に配置された回転小羽根103により、排出部104から定量排出される。回転大羽根102はモータ105の回転が伝達される回転軸106を軸芯とした片持ち梁構造である。そのため、回転大羽根102には撓みが発生する。
【0006】
この撓み量を考慮した上で、回転大羽根102と底板101とのギャップ(間隙)を確実に確保しておかなければ、回転大羽根102が底板101に接触する可能性がある。これらは詳細設計時点で十分な強度、寸法を有するよう決定されている。しかし、排出部104の閉塞等が発生すると、回転大羽根102が底板101の方向へ沈み込む現象が確認されている。
【特許文献1】特開平06−64756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は粉流体定量排出器において、排出部の閉塞等が発生すると、回転大羽根が底板の方向へ沈み込み(撓み)、この沈み込み量が設計時の予測値を超えた場合には、回転大羽根が底板に接触し、回転大羽根を含む回転羽根が回転しなくなる点、さらには、回転大羽根が底板に接触することに起因する、金属異物が混入するおそれがある点にある。
【0008】
したがって、この発明の目的は、回転羽根と底板とのギャップ(間隙)を逐次測定することが可能な構成を備える粉流体定量排出器を提供することにある。また、他の目的として、回転羽根と底板とのギャップ(間隙)の測定結果に基づき、ギャップが予め定められ値よりも小さくなった場合に、粉流体定量排出器の運転を停止させることを可能とする、粉流体定量排出器の排出間隙オンラインモニタリングシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に基づいた粉流体定量排出器においては、容器内に収容された粉流体を定量排出する粉流体定量排出器であって、容器底部に設けられる底板と、上記底板の上面側において、所定の間隙を隔てて回転通過するように配置される回転羽根と、上記底板の下面側に設けられ、上記回転羽根と上記底板との間隙を測定するための間隙センサとを備えている。
【0010】
また、この発明に基づいた排出間隙オンラインモニタリングシステムにおいては、上記粉流体定量排出器と、上記間隙センサからの情報に基づき、上記回転羽根と上記底板との間隙を測定する渦流探傷器と、上記渦流探傷器により測定された間隙を表示する表示盤と、上記渦流探傷器により測定された間隙に基づき、上記間隙が第一の所定値以下の場合に注意を喚起するための報知手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
この発明に基づいた粉流体定量排出器および排出間隙オンラインモニタリングシステムによれば、底板の下面側に回転羽根と底板との間隙を測定するための間隙センサとが設けられることにより、回転羽根と底板との間隙を逐次測定することが可能となる。これにより、回転羽根と底板との間隙の測定結果に基づき、ギャップが予め定められ値よりも小さくなった場合に、粉流体定量排出器の遠隔操作者にその旨を報知することが可能となるとともに、さらに、ギャップが予め定められ値よりも小さくなった場合には粉流体定量排出器の運転を停止させることが可能となる。その結果、回転羽根が底板に接触することに起因する、金属異物の混入を未然に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明に基づいた各実施の形態における粉流体定量排出器および排出間隙モニタリングシステムについて図を参照しながら説明する。なお、各実施の形態において、背景技術において説明した部分と同一または相当部分については、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0013】
<実施の形態1>
以下、実施の形態1において、本発明に基づいた粉流体定量排出器について、図を参照しながら説明する。まず、「高分子添加剤」等の粉体、および、ウェットケーキ等の流体のブリッジ防止と、定量排出用に用いられている「粉流体定量排出器」の内部回転大羽根と本体の底板との接触を未然防止し、金属異物混入防止を目的として開発した「粉流体定量排出器用のギャップセンサ」の有効性が確認されたので、以下説明する。
【0014】
<<<渦流探傷法について>>>
1.交流磁束と渦電流
図1に、渦電流の誘起原理の模式図を示す。図1に示すように渦流コイル1に交流電流2を流すと磁束3が発生する。この渦流コイル1を導体4に近づけると導体4に渦電流5が誘起される。この渦電流5の流れを妨げるように傷や材料特性(導電率、透磁率)が変化する部位(欠陥6)が存在すると、磁束3が変化し渦流コイル1に流れる電流が変化し、一般にはこの変化量から傷検出などを行なう。
2.渦流コイルの種類と特徴
図2に渦流コイル1の分類を示す。検査対象物によって、貫通コイル1A、内挿コイル1B、および、上置コイル1Cの3種類の渦流コイル1が使いわけられる。貫通コイル1Aは棒や伝熱管の製造メーカが製品出荷検査として使用されている。内挿コイル1Bは化学、電力、原子力プラントなどに設置された熱交換器伝熱管の保守検査に使用される。また、上置コイル1Cもこれらプラントの塔槽、熱交換器、配管壁面の保守検査に使用されている。
【0015】
渦流探傷法は、検査スピードが速く、超音波探傷法と違い水などの接触媒質が不要で、取扱い易い利点がある。反面、傷以外の材料特性の変化、接触面の変化などにも影響されるため検査精度が超音波法などに比べて落ちることから粗探傷法として利用されてきた。
3.渦流コイルの信号出力
図3に、市販の渦流探傷器に採用されているホイートストンブリッジ回路を示し、図4に、管8内に収容された内挿コイル7を示す。渦流探傷器に採用されるホイートストンブリッジ回路においては、差動方式の渦流コイルのそれぞれのインピーダンス(交流抵抗)をZ1、Z2、渦流探傷器が持っている固有抵抗ZM1、ZM2と平衡するように設定しておく。その状態で内挿コイル7を管8の管軸方向に移動させると(図4参照)、傷などがあれば渦電流に乱れが生じ、インピーダンス変化が渦流探傷器にリサージュ波形として表示される。
【0016】
<<<粉流体定量排出器への適用性の検討>>>
渦流探傷法は、浸炭測定や応力腐食割れ検査に適用されていることは知られている。エチレン分解炉輻射管には、高級ステンレス鋼が使用されているが、使用に伴い浸炭損傷が発生することがある。この浸炭深さを測定することで寿命予測が可能となる。また、汎用ステンレス鋼(SUS304鋼)には応力腐食割れが発生することがある。これら損傷を検出するため上置コイルデザインや測定方法を開発し、プラントの安全・安定運転を行なってきた。浸炭厚さ測定は、検出精度、推定精度ともにすぐれており、多くの工場の石油化学プラントで使用されている。
【0017】
今回の粉流体定量排出器においては、厚さ9mmのSUS316製底板の向こう側にある厚さ9mm〜16mm×幅124mmのSUS304製回転大羽根を5mm以上のギャップをあけて検出する必要がある。渦電流の非磁性体への浸透深さは、上置コイル外形の1/4といわれている。そこで、手持ちの輻射管浸炭厚さ測定用上置コイルで、最も外径の大きいφ48mmのもので検出できるか否か、その可能性を現場で確認した。
1.試験装置
(1)渦流探傷器:型式ASSORT330(アスワン電子販売(株)製)
(2)上置コイル
ボビン ;ID28mm×OD48mm×H34mm
コイル ;φ0.15mm被覆銅線×950巻き×2
コイル幅15mm×コイル間隔2mm×コイル幅15mm
永久磁石 ;コイル内側にID20mm×OD28mm×t1.9mm(CORMAX−2000(株)NEOMAX製)×2枚をJIS規格SNCM439相当品のEN25mm×OD28mm×t30mmの上下に配置して挿入
試験周波数;1kHz
(3)試験片
模擬底板 ;t9mm×SUS316製
模擬大羽根;上辺105mm×下辺142mm×L300mm×t9mmの台形状のSUS304製の板
2.試験方法
上記の模擬大羽根、模擬底板、上置コイルを用い、模擬底板の下側に上置コイルを取付け、上側に厚さを変えてアクリル板を置き、上置コイル中心上方を模擬大羽根の幅が123.5mmの位置を通過させ電圧変化を測定した。
3.試験結果
模擬試験片での試験結果を図5に示す。出力電圧(V)は、模擬底板と模擬大羽根とのギャップが5mmで3.0V、10mmで1.7V、28mmで0.5Vの出力電圧が得られた。
4.粉流体定量排出器での確認
粉流体定量排出器の回転羽根と反対側の底面に上置コイルの中心が回転大羽根の幅が123.5mmの位置に取付けた。粉流体定量排出の中に入り、回転大羽根と底板との間隔をメジャーで測定し、回転大羽根を手動で動かして電圧を測定した結果を図5に示す。図5に示すように、ギャップと出力電圧との間には比例関係が存在することが確認できた。
【0018】
<実施の形態1における粉流体定量排出器100A>
続いて、図6および図7に本実施の形態における粉流体定量排出器100Aを示す。図6は、本実施の形態における粉流体定量排出器の内部構造を示す平面図であり、図7は、本実施の形態における粉流体定量排出器の内部構造を示す縦端面図である。基本的構造は、背景技術に示す粉流体定量排出器と同様であり、回転大羽根102と回転小羽根103とを有する回転羽根が、モータ105の回転が伝達される回転軸106を軸芯(回転中心)とした片持ち梁構により軸支持されている。回転羽根の下方には、底板101が設けられ、回転羽根106の上方には、ホッパ107が配設されている。底板101の外周には、排出部104が設けられている。
【0019】
底板101の上を薄い水平な回転大羽根102が回転することにより(図6中の矢印参照)、ホッパ107内に収容された内容物は図6中の矢印で示すように、円筒外周部側に送られる。外周の内容物は外周に配置された回転小羽根103により、排出部104から定量排出される。
【0020】
この粉流体定量排出器100Aにおいて、回転大羽根102と回転小羽根103とが設けられる部分、すなわち、回転羽根の外周部の底板101を挟んだ下方に、上置コイル200を取付ける。図8は、底板101の下に配置された上置コイル200の上を、底板101を挟んで、回転大羽根102(回転小羽根103も同様)が、所定のギャップを隔てて回転通過する状態を示す拡大断面摸式図である。また、図9に、上置コイル200により検出した電圧波形を示す。図9において、大きい波形(0.75V)が回転大羽根102のものであり、小さい波形(0.4V)が回転小羽根103のものである。ギャップが同じであると波形の高さは断面積の相関し、回転小羽根103も充分検出されていることが確認された。図9で示される回転小羽根103は、同じ断面積であることことから、異なる波形の高さがギャップと相関している。
【0021】
<<<上置コイルデザイン(ギャップセンサ)の検討>>>
1.非磁性体用上置コイル
外径φ48mmの浸炭測定用コイルで、回転大羽根、回転子羽根が検出できることが確認されたが、さらなる検出性能の向上を目指して、上置コイルを試作した。検出性能の確認は模擬子羽根で行なった。
(1)試験装置
(a)渦流探傷器;型式ASSORT330(アスワン電子販売(株)製)
(b)上置コイル
(i)φ50上置コイル
ボビン ;ID38.5mm×OD50.5mm×H14.2mm
コイル ;φ0.1被覆銅線×100巻き×2
コイル幅3×コイル間隔2×コイル幅3
(ii)φ90上置コイル
ボビン ;ID48mm×OD90mm×H40mm
コイル ;φ0.15被覆銅線×180巻き×2
コイル幅5×コイル間隔4×コイル幅5
(c)試験周波数;1kHz
(d)試験片
模擬底板 ;t9×SUS316製
模擬小羽根;上辺20×下辺69×L1180×t5.9の台形状のSUS304製の板
(2)試験方法
上記の模擬小羽根、模擬底板、上置コイルを用い、模擬底板の下側に上置コイルを取付け、上側に厚さを変えてアクリル板を置き、上置コイル中心上方を模擬小羽根の幅が50mmの位置を通過させ電圧変化を測定した。
(3)試験結果
模擬試験片での試験結果を図10に示す。図10に示すように、出力電圧(V)は、コイル外形を大きくするほうが大きくなり、試験片として用いた模擬子羽根も充分検出していることから実機へは、φ90上置コイルを適用することにした。
【0022】
ここで、φ50の上置コイルでの模擬子羽根の出力電圧は、ギャップが4mm以上では1V以下であった。この出力電圧は図9に示したφ48の上置コイルによる回転小羽根の出力電圧0.4Vと比較しても同レベルの電圧であり、検出感度はコイル径に依存しているような結果となった。
2.強磁性体用上置コイル
t10mm程もある底板の炭素鋼板を磁化し、透磁率を1に近づけるには、電磁石を使用すれば容易である。しかし、粉流体定量排出器に取付けられる上置コイルは、認定済みの防爆構造容器のなかに収めることを前提で検討した。この防爆構造容器寸法は、非磁性体用の上置コイル(OD90mm×H40mm)が収められるぎりぎりの寸法であり、強磁性体用の上置コイル寸法も同寸法とし、永久磁石による磁化方式を選択し、許される寸法のなかで、どこまで炭素鋼板を磁化できるか永久磁石配置について検討した。あわせて、高感度の上置コイルを製作するため、コイルデザインの検討も行なった。
(1)コイルデザインの検討
上述したように、コイル径が大きくなれば検出感度が高くなる。しかし、どこかで、その寸法には限界があるはずであり、その確認を行なった。
【0023】
(a)試験装置
(i)計測器
渦流探傷器 ;AV100SE(日本ホッキング社製)
チャートレコーダ;メモリハイコーダー8846(日置電機社製)
(ii)上置コイル
検討用に試作した上置コイルの仕様を図11に示す。コイル外形φ60、φ80、φ100のものを製作した。コイル巻数は、渦流探傷器とのインピーダンス整合性を考慮して、空芯時、試験周波数1kHz時のコイルインピーダンスが100Ω(50Ω+50Ω)となるようにした。
【0024】
(iii)試験片
(ア)模擬底板;400mm×400mm×t1
(イ)模擬大羽根;上辺80mm×下辺120mm×L440mm×t19mmの台形状の炭素鋼板
(b)試験方法
上記の模擬大羽根、模擬底板、上置コイルを用い、下側より模擬大羽根、ギャップ調整用アクリル板、t1模擬底板、t2のアクリル板、上置コイルを配置した。永久磁石(NEOMAX−38Hφ46×t15、(株)NEOMAX製)は、上置コイルの中に収めた。そのため、永久磁石と炭素鋼製模擬底板が直接接触すると引き離すのが困難なため、t2のアクリル板を、クッション材として入れた。この状態で上置コイル中心下方を模擬大羽根の幅が100mmの位置を通過させ電圧変化を測定した。
【0025】
(c)試験結果
模擬底板と上置コイル間のギャップを8mmにしたときの模擬大羽根の検出結果を図12に示す。図12に示すように、コイル幅−間隔−コイル幅が5−4−5の上置コイルの検出感度は、コイル外径φ80>φ100>φ60の順に良かった。コイル外径を無制限に大きくしても検出感度が良くならないことが確認された。コイル外径φ80の上置コイルで、コイル間隔が4mmのものと30mmのもので検出感度を比較するとコイル間隔が30mmの方が高い検出感度を示した。
【0026】
(d)上置コイルデザイン
高感度の上置コイルをデザインするうえでのパラメータとしては、次のものがあげられる。
【0027】
(i)渦流探傷器とのコイルインピーダンスのマッチング特性
市販の渦流探傷器では、通常100Ω(50Ω+50Ω)である。
【0028】
(ii)浸透深さ
コイル径×1/4を浸透深さの目安とする。
【0029】
(iii)コイル間隔
コイル径φ8、φ14.5、φ20のコイルを加えて、コイル間隔と検出感度で整理した結果を図13に示した。コイル径が変わってもコイル間隔が30mm近辺で飽和している。これは図2に示した自己比較タイプのコイルの一方を空気バランスさせたとき、コイル間隔を離すほどコイル相互間の緩衝が少なくなって、感度向上に寄与したものと考えられる。
(2)強磁性体用上置コイルの製作
非磁性体用上置コイルと同寸法のOD90mm×H40mm内に収まるようにコイル内側、コイル外側に磁石を配置した上置コイルを製作した。
【0030】
(a)試験装置
(i)計測器
渦流探傷器 ;AV10B−II(日本ホッキング社製)
チャートレコーダ;オムニライト(日本電気三栄製)
(ii)上置コイル
製作した上置コイルの各部寸法を図14に示す。図14に示したように、コイル間隔は寸法の制約上20mmとした。
【0031】
ボビン;ID47mm×OD69mm×H30mm
コイル;φ0.15被覆銅線×170巻き×2
コイル幅5×コイル間隔20×コイル幅5
永久磁石;コイル内側にφ46×t15(NEOMAX−38(株)NEOMAX製)×2個
コイル外側にODφ90×IDφ70×t5(Nd−Fe−B磁石、マスマテリアル(株)製)×6個
(iii)試験片
(ア)模擬底板;400mm×400mm×t2mm、t5mm、t6.5mm
(ロ)模擬大羽根;上辺80mm×下辺120mm×L440mm×t19mmの台形状の炭素鋼板
(b)試験方法
上記の模擬大羽根、模擬底板、上置コイルを用い、下側より模擬大羽根、ギャップ調整用アクリル板、模擬底板、t2のアクリル板、上置コイルを配置した。ここでもt2のアクリル板は、クッション材として入れた。この状態で上置コイル中心下方を模擬大羽根の幅が100mmの位置を通過させ電圧変化を測定した。
【0032】
(c)試験結果
各板厚さにおける炭素鋼鋼板と各ギャップとにおける出力信号の試験結果を図15に示す。t5mmの炭素鋼鋼板であればギャップ5mmでの検出信号は1.5V、ギャップ10mmでも1Vあり、実用上問題のない検出感度が得られた。現地に据わっている粉流体定量排出器の底板が5mmより厚いときは、設置場所を穴繰りして薄くすることが好ましい。また、永久磁石の体積としては、上記永久磁石の2倍以下であると人力で取扱いが容易な吸着力を示すことから好ましく、永久磁石の大きさ(高さ、径)としては、上記永久磁石のそれの2倍以下であると人力で取扱いが容易な吸着力を示すことから好ましい。
(実施の形態2)
<<<排出間隙オンラインモニタリングシステムの構築>>>
以下、実施の形態2において、本発明に基づいた粉流体定量排出器を用いた、排出間隙オンラインモニタリングシステム1000の構築について、図16を参照しながら説明する。計器室でギャップを監視できるような排出間隙オンラインモニタリングシステム1000を構築した。システム構成としては、上置コイルとCPU内蔵渦流探傷器、操作用のパソコン及び、ギャップ表示盤とした。全体のシステム構成と各部の詳細な機能を紹介する。
1.システム構成
システムの構成を図16に示す。渦流コイルとして上置コイル200と渦流探傷器300とで検出した回転大羽根および回転小羽根からの電気信号を渦流探傷器300に内蔵されたCPUに送り、インプットされた校正データ(φ90上置コイルの電圧vsギャップ曲線)と照合、演算処理し、表示盤500へギャップを表示させるシステムである。
【0033】
ギャップ信号には、2段階のしきい値を設け、「アラームレベル」と「トリップレベル」とした。「アラームレベル」は、ギャップが小さくなってきていることを報知する注意信号とした。「トリップレベル」は、これ以上ギャップが小さくなると接触等の問題が発生するレベルとし、このレベルになると機械を停止させるインターロック信号600を発するようにした。
【0034】
これらの信号は表示盤500とモータ105に送られ、「トリップレベル」の場合はインターロック600が作動し、粉流体定量排出器100Aの運転を停止させる。各々のアラームレベル、トリップレベル、校正データは操作用パソコン400から設定変更可能とした。
2.防爆構造
化学プラントは消防法上の危険物取扱所、または、危険物製造所に該当することが殆どであるため、上置コイルを粉流体定量排出器の底板に設置するにあたって、防爆構造が必須条件となる。電気品の防爆構造として、労働省産業安全研究所技術指針(ISSN0991-8063)、ユーザーのための工場防爆電気設備ガイド(ガス防爆1994)に合致する方法にて防爆構造の設計を進めた。図17に底板に取付けた防爆構造ケース700の外観を示す。
3.渦流探傷器
渦流探傷器は市販されている探傷器の内蔵CPU、メモリ及び入力部を用いて、ギャップセンサ専用のプログラムソフトを作製した。
4.表示盤
市販品では合致するものがないため電気端子盤をベースに製作した。盤面上には3桁LEDによりギャップを表示させる。アラーム・トリップ状態の各々の表示灯、アラーム・トリップ時のブザーを設置している。
【0035】
以上、本発明に基づく各実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】渦電流の誘起原理を示す模式図である。
【図2】渦流コイルの分類を示す図である。
【図3】市販の渦流探傷器に採用されているホイートストンブリッジ回路図である。
【図4】管内に収容された内挿コイルを示す図である。
【図5】ギャップと出力電圧との間に比例関係が存在することを示す図である。
【図6】この発明に基づいた実施の形態1における粉流体定量排出器の内部構造を示す平面図である。
【図7】この発明に基づいた実施の形態1における粉流体定量排出器の内部構造を示す縦端面図である。
【図8】この発明に基づいた実施の形態1における粉流体定量排出器の、底板の下に配置された上置コイルの上を、底板を挟んで回転大羽根および回転小羽根が所定のギャップを隔てて回転通過する状態を示す拡大断面摸式図である。
【図9】この発明に基づいた実施の形態1における粉流体定量排出器のφ48の上置コイルにより検出した電圧波形を示す図である。
【図10】φ50の上置コイルおよびφ90の上置コイルの検出性能の結果を示す図である。
【図11】コイル外形φ60、φ80、φ100における上置コイルの仕様を示す図である。
【図12】模擬底板と上置コイル間のギャップを8mmにしたときの模擬大羽根の検出結果を示す図である。
【図13】コイル径φ8、φ14.5、φ20のコイルを加えて、コイル間隔と検出感度との関係を整理した図である。
【図14】非磁性体用上置コイルと同寸法のOD90mm×H40mm内に収まるようにコイル内側、コイル外側に磁石を配置した上置コイルの各部寸法を示す断面図である。
【図15】各板厚さにおける炭素鋼鋼板と各ギャップとにおける出力信号の試験結果を示す図である。
【図16】本発明に基づいた実施の形態2に示す粉流体定量排出器を用いた、排出間隙オンラインモニタリングシステムを示す図である。
【図17】底板に取付けた防爆構造ケースの外観を示す図である。
【図18】背景技術として示す粉流体定量排出器の内部構造の理解を容易にするために部分的に破断した全体斜視図である。
【図19】背景技術として示す粉流体定量排出器の内部構造を示す平面図である。
【図20】背景技術として示す粉流体定量排出器の内部構造を示す縦端面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 渦流コイル、1A 貫通コイル、1B 内挿コイル、1C 上置コイル、2 交流電流、3 磁束、4 導体、5 渦電流、6 欠陥、7 内挿コイル、8 管、100A 粉流体定量排出器、101 底板、102 回転大羽根、103 回転小羽根、104 排出部、105 モータ、106 回転軸、107 ホッパ、200 上置コイル、300 渦流探傷器、400 操作用パソコン、500 表示盤、600 インターロック信号、700 防爆構造ケース、1000 排出間隙オンラインモニタリングシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に収容された粉流体を定量排出する粉流体定量排出器であって、
容器底部に設けられる底板(101)と、
前記底板(101)の上面側において、所定の間隙を隔てて回転通過するように配置される回転羽根(102,103)と、
前記底板(101)の下面側に設けられ、前記回転羽根(102,103)と前記底板(101)との間隙を測定するための間隙センサ(200)と、
を備える、粉流体定量排出器。
【請求項2】
前記間隙センサ(200)は、渦流探傷法により前記回転羽根(102,103)と前記底板(101)との間隙を測定するための渦流コイルである、請求項1に記載の粉流体定量排出器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粉流体定量排出器と、
前記間隙センサからの情報に基づき、前記回転羽根(102,103)と前記底板(101)との間隙を測定する渦流探傷器(300)と、
前記渦流探傷器(300)により測定された間隙を表示する表示盤(500)と、
前記渦流探傷器(300)により測定された間隙に基づき、前記間隙が第一の所定値以下の場合に注意を喚起するための報知手段と、
を備える、排出間隙オンラインモニタリングシステム。
【請求項4】
前記渦流探傷器(300)により測定された間隙に基づき、前記間隙が第一の所定値よりも小さい第二の所定値以下の場合に、前記粉流体定量排出器の運転を停止させる停止手段をさらに備える、請求項3に記載の排出間隙オンラインモニタリングシステム。
【請求項1】
容器内に収容された粉流体を定量排出する粉流体定量排出器であって、
容器底部に設けられる底板(101)と、
前記底板(101)の上面側において、所定の間隙を隔てて回転通過するように配置される回転羽根(102,103)と、
前記底板(101)の下面側に設けられ、前記回転羽根(102,103)と前記底板(101)との間隙を測定するための間隙センサ(200)と、
を備える、粉流体定量排出器。
【請求項2】
前記間隙センサ(200)は、渦流探傷法により前記回転羽根(102,103)と前記底板(101)との間隙を測定するための渦流コイルである、請求項1に記載の粉流体定量排出器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粉流体定量排出器と、
前記間隙センサからの情報に基づき、前記回転羽根(102,103)と前記底板(101)との間隙を測定する渦流探傷器(300)と、
前記渦流探傷器(300)により測定された間隙を表示する表示盤(500)と、
前記渦流探傷器(300)により測定された間隙に基づき、前記間隙が第一の所定値以下の場合に注意を喚起するための報知手段と、
を備える、排出間隙オンラインモニタリングシステム。
【請求項4】
前記渦流探傷器(300)により測定された間隙に基づき、前記間隙が第一の所定値よりも小さい第二の所定値以下の場合に、前記粉流体定量排出器の運転を停止させる停止手段をさらに備える、請求項3に記載の排出間隙オンラインモニタリングシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−63102(P2008−63102A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244174(P2006−244174)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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