説明

粉砕機及びトナーの製造方法

【課題】回転子314内部に冷却用の冷媒流路を具備する大型粉砕機においても、回転子314の高速回転に伴う、本体振動値増と冷却効率低下を低減できる粉砕機を提供することである。
【解決手段】図1の粉砕機において、回転子314は内部に冷却用の冷媒流路を特定の条件で具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法、またはトナージェット方式記録法の如き画像形成方法に用いられるトナーを製造する装置及びその装置を利用してトナーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法、静電写真法及び静電印刷法の如き画像形成方法では、静電荷像を現像するためのトナーが使用される。
【0003】
トナーを製造する方法の一つに以下の方法がある。
【0004】
まず、被転写材に定着させるための結着樹脂、トナーとしての色味を出させる各種着色剤、粒子に電荷を付与させるための荷電制御剤を原料とし、更に必要に応じて、例えば、離型剤及び流動性付与剤等の他の添加剤を加えて乾式混合を行う。
【0005】
しかる後、ロールミル、エクストルーダー等の汎用混練装置にて溶融混練し、冷却固化した後、混練物を各種粉砕装置により微細化し、得られた粗粉砕物を各種風力分級機に導入して分級を行うことにより、トナーとして必要な粒径に揃えられた分級品を得る。
【0006】
更に、必要に応じて流動化剤や滑剤等を外添し、乾式混合して、画像形成に供するトナーとしている。
【0007】
また、二成分現像方法に用いるトナーの場合には、各種磁性キャリアと上記トナーとを混ぜ合わせた後、画像形成に供される。
【0008】
粉砕手段としては各種粉砕装置が用いられるが、特に近年、Co2排出量削減への対応から、装置の省エネルギー化が求められており、電力消費の少ない図4に示すような粉砕機が用いられることが多い。
【0009】
図4に示す粉砕機では、高速回転する回転子314と、回転子314の周囲に配置されている固定子310との間に形成された粉砕ゾーンに粉体原料を導入することにより被粉砕物を粉砕する。従って該粉砕機によれば、粉砕の際にジェット気流式粉砕機の様に多量のエアーを必要としない。
【0010】
そのため電力消費が極めて少なくてすみ、ジェット気流式粉砕機より格段に省エネルギーで微粉砕できる。しかも過粉砕されることが少ないため微粉の発生が少なく、後工程の分級工程において分級収率を向上させることが可能となる。
【0011】
しかしながら上述した通り図4に示す粉砕機は、高速回転する回転子314と、固定子310との間に形成された粉砕ゾーンに粉体原料を導入することで粉砕するという構成であるため、単位時間当りの処理量を決める因子の大部分は、回転子314と固定子310との最小間隔で決まると考えられる。
【0012】
そのため図4に示す粉砕機において、所望するトナー粒子径を保持しつつ、単位時間当りの処理量を上げるためには、更なる回転子314の高速化が必要となる。しかしながら、回転子314の回転数は装置構成上おのずと限界点がある。
【0013】
更に、回転子314を高速回転させた状態で、単位時間当りの処理量を上げると、粉砕時の摩擦熱等によって被粉砕物の温度や粉砕室内の空気等の温度が上昇し、品質弊害や機内融着を発生させるため、トナー生産性上好ましくない。
【0014】
また、粉砕室内温度上昇による品質弊害や機内融着を防止するために、回転子314と固定子310の最小間隔を広く取ると、単位時間当りの処理量は上げられるものの、所望するトナー粒子径を保持できない。このため、次工程の分級工程への負担が大きくなり、こちらもトナー生産性上好ましくない。
【0015】
上述した粉砕室内温度上昇を抑えるために、回転子314内部に、冷媒を循環して回転子314を冷却する内側冷媒循環路が形成されている粉砕機が提案されている(特許文献1参照)。
【0016】
特許文献1に開示されている粉砕機は、回転子314自体が同じ形状の回転子314を複数個組み合わされた一個のユニットとなっている。該ユニットには、それぞれ、外周部に沿って、該内側冷媒循環路を構成する冷媒貯留部と、この冷媒貯留部を相互に連通する連通孔とが形成されている。
【0017】
更に、該冷媒貯留部を相互に連通する該連通孔が、該ユニットの外周部に沿って複数個設けられており、該ユニットの該冷媒貯留部の内側には、該冷媒貯留部を該ユニットの外周部のみに限定するための冷媒遮蔽部が形成されている。
【0018】
特許文献1によれば回転子314内部に冷媒を循環することによって極めて高い冷却効果を得ることができ、粉砕時に、被粉砕物が溶融して相互に融着し、或いは回転子314や固定子310が融着して粉砕不能になることや、被粉砕物が熱によって劣化したりすることが防止される。さらに、熱に弱い粉粒体原料を効率よく微粉砕することができるので、生産性を向上させることができるとしている。
【0019】
しかしながら、上述した回転子314の構成で装置を大型化すると、回転子314の高速回転域での本体振動値が高く、粉砕機の安定稼動という点で問題がある。
【0020】
該粉砕機においては、粉砕粒径を決める因子の大部分は回転子314の回転数に依存していると考えられる。上述したように回転子314を安定的に高速回転できないと、近年市場から必要とされている重量平均粒径5〜7μmの小粒径トナーに対応するためには、単位時間当たりの処理量を下げざるを得ず、トナー生産性という点から満足できるものではない。
【0021】
更に、回転子314を高速回転させると、粉砕室内温度の昇温が問題となる。
【0022】
該粉砕機において粉砕室内温度の昇温は、トナーの品質弊害や機内融着に直結する。従って、トナーの品質弊害や機内融着を防止するためには、回転子314の回転数を下げるか、単位時間当りの処理量を下げざるを得ず、こちらもトナー生産性という点から満足できるものではない。
【0023】
回転子314の高速回転に伴う、振動値増と冷却効率低下の理由は定かでないが、どちらも回転子314を高速回転させた際の該冷媒貯留部での冷媒の偏りが原因ではと推測しており、大型装置における安定稼動という面で、改良の余地がある。
【0024】
【特許文献1】特開2004−42029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、従来技術の問題点を解消し、回転子314内部に冷却用の冷媒流路を具備する大型粉砕機においても、回転子314の高速回転に伴う、本体振動値増と冷却効率低下を低減できる粉砕機を提供することである。
【0026】
更に本発明の目的は、大型粉砕機においても、粉砕室内温度上昇による品質弊害や機内融着を防止でき、且つ、単位時間当りの処理量を向上させることができるトナーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明者等は、上記した従来技術の課題を解決すべく検討の結果、大型粉砕機において、回転子314の高速回転に伴う、振動値増と冷却効率低下の原因を、冷媒通水時における冷媒自体の重量変化による偏りと、回転子314内部の冷却面積の不足にあると考え本発明に至った。
【0028】
即ち、本発明は、被粉砕物を粉砕手段内に投入するための粉体投入口311と、固定子310と、少なくとも中心回転軸312に取り付けられた回転子314と、粉砕された粉体を粉砕手段から排出するための粉体排出口302とを少なくとも有し、該固定子310は該回転子314を内包しており、該固定子310表面と該回転子314表面とは、所定の間隙を有するように該回転子314は配置されて粉砕ゾーンを形成しており、該粉砕ゾーンにおいて、該回転子314の回転に伴って被粉砕物が粉砕され、該固定子310及び回転子314は、いずれも波形形状の複数の凸部と凹部とを有し、該凹凸によって形成される歯間距離が1〜10mmである粉砕機において、
該回転子314は内部に冷却用の冷媒流路を具備し、
該回転子314の表面積をA、該冷媒流路によって形成される冷却面積をB、
該回転子314の中心点pから該回転子の凹部底面rまでを直線で結んだ長さをDpr、
該回転子314の中心点pから該冷媒流路の最外殻qまでを直線で結んだ長さをDpq
とした場合、
以下の式(1)、(2)となるように、冷却用の冷媒流路を設けたことを特徴とする粉砕機に関する。
式(1) 75.5≦B/A×100≦300.0
式(2) 1.0mm≦Dpr−Dpq≦25.0mm
【0029】
更に、本発明は、結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を冷却した後、冷却物を粗粉砕し、粗粉砕物からなる粉体原料を粉砕手段によって粉砕する工程を少なくとも有する重量平均粒子径が3乃至11μmのトナーの製造方法において、
該粉砕手段は、被粉砕物を粉砕手段内に投入するための粉体投入口311と、固定子310と、少なくとも中心回転軸312に取り付けられた回転子314と、粉砕された粉体を粉砕手段から排出するための粉体排出口302とを少なくとも有する粉砕機であり、
該回転子314は内部に冷却用の冷媒流路を具備し、
該回転子314の表面積をA、該冷媒流路によって形成される冷却面積をB、
該回転子314の中心点pから該回転子の凹部底面rまでを直線で結んだ長さをDpr、
該回転子314の中心点pから該冷媒流路の最外殻qまでを直線で結んだ長さをDpq
とした場合、
以下の式(1)、(2)となるように、冷却用の冷媒流路を設けたことを特徴とするトナーの製造方法に関する。
式(1) 75.5≦B/A×100≦300.0
式(2) 1.0mm≦Dpr−Dpq≦25.0mm
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、回転子314内部に冷却用の冷媒流路を具備する大型粉砕機においても、回転子314の高速回転に伴う、振動値増と冷却効率低下を低減でき、粉砕室内温度上昇による品質弊害や機内融着を防止することができる。
【0031】
更に本発明によれば、上述した粉砕機を用いてトナー粒子を粉砕することにより、単位時間当りの処理量を向上させることができる。更には、シャープな粒度分布を有するトナー粒子を、効率良く、安定的に、トナー生産性上良好に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0033】
本発明者等は、上記した従来技術の課題を解決すべく検討の結果、大型粉砕機において回転子314の高速回転に伴う、振動値増と冷却効率低下の原因を、冷媒通水時における冷媒自体の重量変化による偏りと、回転子314内部の冷却面積の不足にあると考えた。
【0034】
つまり、冷媒自体の重量変化による偏りを解消でき、且つ、冷却面積を稼ぐことができる冷媒流路を構成すれば、回転子314の高速回転に伴う、振動値を低減でき、高い冷却効率を得ることができると考えた。
【0035】
本発明において上述した目的を達成するために好ましい装置の構成を、図1及び図2を用いて説明する。
【0036】
図1は本発明に使用する回転子314の概略的断面図の一例を示し、図2は、本発明に使用する回転子314表面凹凸部の概略的断面図の一例を示す。
【0037】
本発明の粉砕機は、図1及び図2に示す通り、回転子314の内部に冷却用の冷媒流路を具備し、回転子314の表面積をA、該冷媒流路によって形成される冷却面積をB、回転子314の中心点pから回転子314の凹部底面rまでを直線で結んだ長さをDpr、回転子314の中心点pから該冷媒流路の最外殻qまでを直線で結んだ長さをDpqとした場合、以下の式(1)、(2)となるように、冷却用の冷媒流路を設けたことを特徴とする。
式(1) 75.5≦B/A×100≦300.0
式(2) 1.0mm≦Dpr−Dpq≦25.0mm
【0038】
更に本発明の粉砕機における回転子314は、図1に示す通り、内部に冷却用の冷媒流路を具備し、該冷媒流路は、
粉体投入口311側或いは、粉体排出口302側の一方向から、中心回転軸312を介して、冷媒を導入するための冷媒流路L、
該回転子314において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路M、
該回転子314外層部を中心回転軸312と並行に冷媒を搬送するための冷媒流路N、
該回転子314外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路O、
冷媒導入方向に対して同方向域または逆方向への冷媒を排出するための冷媒流路P
であることを特徴とする。
【0039】
更に本発明の粉砕機は、図1に示す通り、独立した複数個のディスク322を繋ぎ合せた回転子314から構成され、回転子314は内部に冷却用の冷媒流路を具備し、該冷媒流路は、
粉体投入口311側或いは、粉体排出口302側の一方向から、中心回転軸312を介して、冷媒を導入するための冷媒流路L、
各ディスク322内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路M、
各ディスク322外層部を中心回転軸312と並行に冷媒を搬送するための冷媒流路N、
各ディスク322外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路O、
冷媒導入方向に対して同方向域または逆方向への冷媒を排出するための冷媒流路P
を有することを特徴とする。
【0040】
更に本発明の粉砕機は、該各ディスク322内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路Mを、該ディスク322の枚数に合せて独立して設け、該ディスク322の枚数に合せて独立して設けた該冷媒流路Mに、該冷媒流路Lから冷媒を別々に導入することを特徴とする。
【0041】
更に本発明の粉砕機は、該各ディスク322外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路Oを、該ディスク322の枚数に合せて独立して設け、該ディスクの枚数に合せて独立して設けた該冷媒流路Oから、冷媒流路Pに冷媒を別々に戻すことを特徴とする。
【0042】
更に本発明の粉砕機は、該各ディスク322内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路M及び/または、該各ディスク322外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路Oは、独立した複数個のディスク322毎に、複数本から構成されること特徴とする。
【0043】
更に本発明の粉砕機は、該各ディスク322内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路Mにおける流路の数と、各ディスク322外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路Oにおける流路の数が、同数であること特徴とする。
【0044】
本発明者等が検討した結果、図1及び図2に示す通り、回転子314は内部に冷却用の冷媒流路を具備し、
該回転子314の表面積をA、
該冷媒流路によって形成される冷却面積をB、
該回転子314の中心点pから該回転子の凹部底面rまでを直線で結んだ長さをDpr、
該回転子314の中心点pから該冷媒流路の最外殻qまでを直線で結んだ長さをDpq
とした場合、以下の式(1)、(2)となるように、冷却用の冷媒流路を設けることにより、該回転子314の高速回転においても、振動値を低減でき、高い冷却効率を得ることができる。
式(1) 75.5≦B/A×100≦300.0
式(2) 1.0mm≦Dpr−Dpq≦25.0mm
【0045】
本発明者等が検討した結果、式(1)において、B/Aが75.5未満の場合、充分な冷却効率が得られない。逆にB/Aが300.0を超える場合、該回転子314の高速回転に伴う振動値が高くなり、どちらもトナー生産性という点から十分満足できるものではない。
【0046】
更に、式(2)において、Dpr−Dpqが1.0mm未満の場合、該回転子314の高速回転に伴う振動値が高くなる。逆にDpr−Dpqが25.0mmを超える場合、充分な冷却効果が得られず、どちらもトナー生産性という点から十分満足できるものではない。
【0047】
更に、本発明者等が検討した結果、図2に示す通り、回転子314内部に具備する冷却用の冷媒流路Nを、冷却孔とすることにより、該回転子314の高速回転に伴う、振動値を低減でき、高い冷却効率を得ることができることが分かった。
【0048】
つまり、冷媒流路Nを冷却孔とすることで、機械的強度を確保した上で冷却孔を回転子314表層近傍に近付けることができる。更に、冷却孔とすることで、必要最小限の冷媒でムラの少ない効率的な冷却を得ることができる。
【0049】
更に冷却孔の配置は、中心回転軸312と並行する複数の冷却孔を等間隔に配置することで、極めて大きな冷却面積を得ることができる。
【0050】
また、冷却孔の形状は、加工性や容積精度の面から円筒状のドリルホールが好ましいが、放電加工法やレーザー加工法等により三角形四角形或いは星形の様な多角形でも同様の効果が得られる。また、それらの組合せでも良い。
【0051】
更に、冷却孔の配置は、二列三列と複数の列を成すことで、更に冷却効率を向上することができる。
【0052】
更に本発明の粉砕機における回転子314は、内部に冷却用の冷媒流路を具備し、
該冷媒流路は、粉体投入口311側或いは、粉体排出口302側の一方向から、中心回転軸312を介して、冷媒を導入するための冷媒流路L、
該回転子314において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路M、
該回転子314外層部を中心回転軸312と並行に冷媒を搬送するための冷媒流路N、
該回転子314外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路O、
冷媒導入方向に対して同方向域または逆方向への冷媒を排出するための冷媒流路P
を具備していることが好ましい。
【0053】
更に本発明の粉砕機は、独立した複数個のディスク322を繋ぎ合せた回転子314から構成され、該回転子314は内部に冷却用の冷媒流路を具備し、
該冷媒流路は、粉体投入口側或いは、粉体排出口側の一方向から、中心回転軸312を介して、冷媒を導入するための冷媒流路L、
各ディスク322内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路M、
各ディスク322外層部を中心回転軸312と並行に冷媒を搬送するための冷媒流路N、
各ディスク322外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路O、
冷媒導入方向に対して同方向域または逆方向への冷媒を排出するための冷媒流路P
を具備していることが好ましい。
【0054】
更に本発明の粉砕機は、該各ディスク322内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路Mを、該ディスク322の枚数に合せて独立して設け、該ディスク322の枚数に合せて独立して設けた該冷媒流路Mに、該冷媒流路Lから冷媒を別々に導入する構成が好ましい。
【0055】
更に本発明の粉砕機は、該各ディスク322外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路Oを、該ディスク322の枚数に合せて独立して設け、該ディスク322の枚数に合せて独立して設けた該冷媒流路Oから、冷媒流路Pに冷媒を別々に戻す構成が好ましい。
【0056】
更に本発明の粉砕機は、該各ディスク322内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路M及び/または、該各ディスク322外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路Oは、独立した複数個のディスク322毎に、複数本から構成されることが好ましい。
【0057】
更に本発明の粉砕機は、該各ディスク322内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路Mにおける流路の数と、各ディスク322外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路Oにおける流路の数が、同数であることが好ましい。
【0058】
本発明者等が検討した結果、冷却孔Nを中心回転軸312と並行に配置したことで冷媒の揺動を抑え、回転子314を安定して高速回転させることができる。
【0059】
更に、中心回転軸312を介して冷媒を導入するための冷媒流路Lから冷却孔Nへ冷媒を導く流路M、及び冷却孔Nから中心回転軸312を介して冷媒を排出するための冷媒流路Pへ冷媒を戻す流路Oの数は、回転子314の安定回転を生み出すために各々4本以上の均等割り付けが望ましい。
【0060】
更に、上記流路M、及び上記流路Oのサイズは、各々の径と長さを等しくする事で遠心力による抵抗を相殺し、回転子314の回転数に影響されることなく安定した冷媒流量を得ることができる。
【0061】
尚、上記流路M、及び上記流路Oの加工は、表層から軸中心に向けドリルで掘り込み、後に冷却孔に交わる位置までプラグを挿し熔接にて表層を埋め戻し、後に刃の加工を施す。
【0062】
また、複数個の冷却孔Nは各々の容積を統一し等間隔に配置することが好ましい。更に冷媒供給流路M及び冷媒排出流路Oも容積を統一し各々4本以上で等間隔に配置することで、冷媒の有無によるアンバランスを解消し冷媒の有無に影響されることなく、回転子314を安定して高速回転させることができる。
【0063】
尚、冷却孔Nの両端面は、複数個の冷却孔Nを連結する空間を設けた上で、胴淵を溶接、またはプレートをOリング等のシール材によって密閉する。
【0064】
更に本発明の粉砕機は、装置本体の機内冷却手段として、ジャケット構造316を有する構造とすることが好ましい。
【0065】
更に本発明の粉砕機は、該粉砕機を構成する部材の一部が、該部材の表面硬さ(ビッカース硬さ)をAとした時、HV700<A≦HV5000であることが好ましい。
【0066】
前記部材の表面のビッカース硬さAがHV700<A≦HV5000の範囲であることにより、部材の摩耗量を少なくすることができ、交換頻度を少なくし、長時間に渡り装置をロングランすることができる。
【0067】
本発明者等が検討した結果、前記部材の表面のビッカース硬さAがHV700未満であると、長時間に渡る連続運転を行う場合には、部材の磨耗が進み交換を余儀なくされるため、トナー生産性という点から十分満足できるものではない。
【0068】
前記部材の表面のビッカース硬さAをHV700<A≦HV5000の範囲とする表面処理方法としては、公知の表面処理方法が挙げられるが、その中でも、該粉砕機を構成する部材の一部が、少なくとも炭化クロムを含有するクロム合金めっきでコーティングされていることが好ましい。
【0069】
該粉砕機を構成する部材の母材には、S45Cなどの炭素鋼やSCM材などのクロムモリブデン鋼などが用いられることが多い。これらの母材表面をクロム合金でコーティングすることにより、処理面の表面硬さ、耐摩耗性が高くなり、長寿命の部材が得られるため、長時間運転が可能となる。
【0070】
本発明において、炭化クロムを含有するクロム合金の母材表面へのコーティングはめっきにより処理し、表面を均一かつ滑らかに仕上げ、摩擦、係数を小さくして耐摩耗性を向上させることが可能となる。
【0071】
上述した表面処理により、前記部材の表面のビッカース硬さAをHV700より大きくすることができる。
【0072】
更に、前記部材の表面のビッカース硬さAをHV700<A≦HV5000の範囲とする表面処理方法として、該めっき処理した後の処理面に機械的表面処理としてショットピーニング加工を用いることで、処理表面の微小クラックをなくし、粉砕面の表面硬さ、耐磨耗性を更に向上させることができる。
【0073】
尚、ここでショットピーニング加工とは、例えば圧縮空気または遠心力で鉄鋼などの粒子を処理表面に噴射する加工法で、表面処理の微小クラックをなくすことができるものであり、本発明においては、好ましくはセラミック粒子の噴射によって行われる。
【0074】
表面に生成した微小クラックは、噴射圧力が高く、時間が長くなると塑性変形を受けて減少する傾向を示すことが知られており、更に、表面硬さ、耐磨耗性の更なる向上のためには、ショットピーニング加工前に焼入れを行い、めっき層を硬質化し、密着性を向上させることが好ましい。
【0075】
上述した表面処理により、前記部材の表面のビッカース硬さAをHV1800以上とすることができる。
【0076】
更に、前記部材の表面のビッカース硬さAをHV700<A≦HV5000の範囲とする表面処理方法として、処理面にダイヤモンドライクカーボンの薄膜を形成することで、粉砕面の表面硬さ、耐磨耗性を更に向上させることができる。
【0077】
尚、ここでダイヤモンドライクカーボンは、炭素または炭素と水素から構成される非晶質の物質で、ダイヤモンド結合とグラファイト結合が無秩序に混在した構造を持つ。
【0078】
ダイヤモンドライクカーボンは、窒化チタンや窒化クロムなどのセラミックスを超える硬度と、二硫化モリブデンやグラファイトなどの固体潤滑材に匹敵する潤滑性を併せ持った耐摩耗低摩擦材料である。また、低ガス透過性、高絶縁性、耐食性、高熱伝導性、赤外線透過性、水素吸蔵性など有用な機能を併せ持った多機能性材料である。
【0079】
ダイヤモンドライクカーボンは数nmから数μmの厚みを持った薄膜として形成され、イオン化蒸着法、プラズマ化学的気相蒸着法(CVD法)、スパッタリング法、アークイオンプレーティング法などの様々なドライプロセスを利用することができる。
【0080】
イオン化蒸着法やプラズマCVD法では、メタンやベンゼンなどの炭化水素系ガスをプラズマ化し、生成したイオンを50V〜1kV程度に加速して被処理物に衝突させることによりダイヤモンドライクカーボン層を形成する。
【0081】
スパッタリング法やアークイオンプレーティング法においては、イオン衝突によりカーボンターゲットから飛び出したカーボン粒子が被処理物に付着することでダイヤモンドライクカーボン層を形成する。
【0082】
上述した表面処理により、前記部材の表面のビッカース硬さAをHV3000以上とすることができる。
【0083】
次に本発明のトナーの製造方法について説明する。
【0084】
本発明のトナーの製造方法は、結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を冷却した後、冷却物を粗粉砕し、粗粉砕物からなる粉体原料を粉砕手段によって粉砕する工程を少なくとも有する重量平均粒子径が3乃至11μmのトナーの製造方法において、
該粉砕手段は、被粉砕物を粉砕手段内に投入するための粉体投入口311と、固定子310と、少なくとも中心回転軸312に取り付けられた回転子314と、粉砕された粉体を粉砕手段から排出するための粉体排出口302とを少なくとも有する粉砕機であり、
該回転子314は内部に冷却用の冷媒流路を具備し、
該回転子314の表面積をA、該冷媒流路によって形成される冷却面積をB、
該回転子314の中心点pから該回転子の凹部底面rまでを直線で結んだ長さをDpr、
該回転子314の中心点pから該冷媒流路の最外殻qまでを直線で結んだ長さをDpq
とした場合、
以下の式(1)、(2)となるように、冷却用の冷媒流路を設けたことを特徴とする。
式(1) 75.5≦B/A×100≦300.0
式(2) 1.0mm≦Dpr−Dpq≦25.0mm
【0085】
更に本発明のトナーの製造方法において、該粉砕手段は、上述した粉砕機であり、更に該粉砕機は、独立した複数個のディスク322を繋ぎ合せた回転子314から構成され、回転子314は内部に冷却用の冷媒流路を具備し、
該冷媒流路は、粉体投入口側或いは、粉体排出口側の一方向から、中心回転軸312を介して、冷媒を導入するための冷媒流路L、
各ディスク322内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路M、
各ディスク322外層部を中心回転軸312と並行に冷媒を搬送するための冷媒流路N、
各ディスク322外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路O、
冷媒導入方向に対して同方向域または逆方向への冷媒を排出するための冷媒流路Pを有することを特徴とする。
【0086】
更に本発明のトナーの製造方法における粉砕機は、該各ディスク322内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路Mを、該ディスク322の枚数に合せて独立して設け、該ディスク322の枚数に合せて独立して設けた該冷媒流路Mに、該冷媒流路Lから冷媒を別々に導入することを特徴とする。
【0087】
更に本発明のトナーの製造方法における粉砕機は、該各ディスク322外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路Oを、該ディスク322の枚数に合せて独立して設け、該ディスク322の枚数に合せて独立して設けた該冷媒流路Oから、冷媒流路Pに冷媒を別々に戻すことを特徴とする。
【0088】
更に本発明のトナーの製造方法における粉砕機は、該各ディスク322内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路M及び/または、該各ディスク322外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路Oは、独立した複数個のディスク322毎に、複数本から構成されること特徴とする。
【0089】
更に本発明のトナーの製造方法における粉砕機は、該各ディスク322内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路Mにおける流路の数と、各ディスク外層部から中心回転軸312に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路Oにおける流路の数が、同数であること特徴とする。
【0090】
本発明者が検討した結果、該粉砕機における機器構成を上述した構成とすることにより、該粉砕機におけるトナー粒子の粉砕性を向上することができることが分かった。
【0091】
つまり、該粉砕機における機器構成を上述した構成とすることにより、回転子314における冷却効率が向上することで、粉砕室内温度を上昇させることなく、単位時間当りの処理量を向上させることができる。
【0092】
また、本発明のトナーの製造方法においては、該粉砕機の回転子314及び固定子310は、いずれも波形形状の複数の凸部と凹部とを有しているが、該回転子314及び固定子310の少なくとも一方が有する凹部が底部に平坦面を有する形状としても構わない。
【0093】
図2に示す通り、回転子314及び固定子310の少なくとも一方が有する凹部が底部に平坦面を有する形状とすることで、該凹部の底部が平坦面であるが故に、冷却面積を稼ぐことができる。
【0094】
また、本発明のトナーの製造方法においては、
(1)該粉砕機の回転子314の凸部と凸部との繰り返し距離をRa、該固定子310の凸部と凸部との繰り返し距離をLaとしたとき、
(2)RaとLaとが異なる範囲が存在するよう回転子314及び固定子310の構成を設定し、
(3)該粉砕機の回転子314において、該凸部と該凸部との繰り返し距離Raが異なる範囲が存在するよう回転子314の構成を設定しても構わない。
【0095】
また、本発明のトナーの製造方法においては、該粉砕機内の回転子314表面と固定子310表面との間の最小間隔は0.5乃至10.0mmであることが好ましく、0.5乃至5.0mmとすることが更に好ましい。
【0096】
該粉砕機内の回転子314と固定子310との間の最小間隔が10.0mmより大きい場合、粉砕されずにショートパスを起こしてしまいトナー生産性という点から十分満足できるものではない。
【0097】
また該粉砕機内の回転子314と固定子310との間の最小間隔が0.5mmより小さい場合、装置自体の負荷が大きくなるのと同時に、粉砕時に過粉砕され、トナーの熱変質や機内融着を起こしやすいのでこちらもトナー生産性という点から十分満足できるものではない。
【0098】
更に、本発明のトナーの製造方法においては、回転子314の回転周速は30m/sec乃至175m/secとすることが好ましく、更には、40m/sec乃至160m/secとすることが好ましい。
【0099】
本発明者が検討した結果、回転子314の回転周速を30m/sec未満とすると、小粒径のトナーを得るためには単位時間当りの処理量を落とさなければならず、トナー生産性上十分満足できるものではない。
【0100】
また、回転子314の回転周速を175m/secを超えるものとすると、装置自体の負荷が大きくなるのと同時に、粉砕時に被粉砕物が過粉砕されると同時に、熱による表面変質や機内融着を起こしやすいので、こちらもトナー生産性という点から十分満足できるものではない。
【0101】
また、より好ましいトナーの粉砕の形態としては、該粉砕機内に+30℃以下の空気を送風することが好ましく、その空気の温度は+30乃至−50℃であることが更に好ましく、+20乃至−40℃であることが特に好ましい。
【0102】
更に、より好ましいトナーの粉砕の形態としては、該冷媒流路及びジャケット316に通水する冷媒の温度を0℃以下とすることが好ましく、更には−5℃以下とすることが好ましい。
【0103】
次に本発明のトナーの製造方法に用いる粉砕機による粉砕方法の概略を、図4を用いて説明する。
【0104】
図4は、本発明に使用する粉砕機を組込んだ粉砕システムの一例を示す。
【0105】
図4では、横型の一般的な粉砕機の概略断面図を示しているが、縦型であっても構わないし、分級ローターを内蔵していても構わない。ケーシング313、ケーシング313内にあって冷媒を通水できるジャケット316、ケーシング313内にあって中心回転軸312に取り付けられた回転体からなる高速回転する表面に多数の溝が設けられている回転子314、回転子314を内包しており、回転子314の外周に一定間隔を保持して配置されている表面に多数の溝が設けられている固定子310、更に、被処理原料を導入するための粉体投入口311、処理後の粉体を排出するための粉体排出口302とから構成されている。
【0106】
尚、前述したように、回転子314は独立した複数個のディスク322を繋ぎ合せた構成となっている。
【0107】
以上のように構成してなる粉砕機では、図4に示した定量供給機315から機械式粉砕機の粉体投入口311へ所定量の粉体原料が投入されると、被粉砕物は、回転子314と固定子310との間隙である粉砕処理室(粉砕ゾーン)内に導入される。そして、該粉砕処理室内で高速回転する表面に多数の溝が設けられている回転子314と、表面に多数の溝が設けられている固定子310との間に発生する衝撃と、この背後に生じる多数の超高速渦流、並びにこれによって発生する高周波の圧力振動によって瞬間的に粉砕される。
【0108】
その後、粉体排出口302を通り、排出される。粒子を搬送しているエアー(空気)は粉砕処理室を経由し、補集サイクロン229、バグフィルター222、及び吸引ブロワー224を通って装置システムの系外に排出される。本発明においては、この様にして、粉体原料の粉砕が行われるため、微粉及び粗粉を増やすことなく所望の粉砕処理を容易に行うことができる。
【0109】
次に、本発明のトナーの製造方法で、トナーを製造する手順について説明する。
【0110】
まず、原料混合工程では、トナー内添剤として、少なくとも樹脂、着色剤を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
【0111】
更に、上記で配合し、混合したトナー原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中の着色剤等を分散させる。該溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。
【0112】
近年では、連続生産できる等の優位性から、1軸または2軸押出機が主流となっており、例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。
【0113】
更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0114】
上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。
【0115】
粉砕工程では、通常、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等の粉砕機で粗粉砕され、更に、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)、クリプトロン(川崎重工社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボミル(ターボ工業社製)等の粉砕機で微粉砕される。
【0116】
本発明のトナーの製造方法において、粗粉砕工程で使用する粉砕機は、同軸上に配列した、一次粉砕用の複数の回転打撃子(ハンマー)と粉流を制御する邪魔板を介して、二次粉砕用の少なくとも中心回転軸に取り付けられた凹凸を有する回転体からなる回転子と、該回転子表面と一定間隔を保持して回転子(ローター)の周囲に配置されている凹凸を有する固定子とを具備する2つ以上の粉砕ゾーンを有し、且つ、粉砕ゾーンは1ユニット内に収められ、同一の動力源により、同一回転数で運転される粗粉砕機を用いる事がより好ましい。
【0117】
今回我々は、粉砕法にて製造されるトナーのトナーの微粒子化に対する製造に関して研究を進めた結果、粗粉砕→中粉砕→微粉砕と多段的にトナー粒子を粉砕する事が効率的で微粉の発生自体も抑制され、シャープな粒度分布が得られる結論に再度、行き着いた。
【0118】
しかし、先述した通り、中粉砕工程を導入する事は既存のプラントにおいては大幅なレイアウト変更が必要な点及び中粉砕機自体も粉砕エネルギーを消費する点に更なる改良が必要である事が判明した。
【0119】
つまり、中粉砕工程を導入する代わりに、粗粉砕工程にが、同軸上に配列した、一次粉砕用の複数の回転打撃子(ハンマー)と粉流を制御する邪魔板を介して、二次粉砕用の少なくとも中心回転軸に取り付けられた凹凸を有する回転体からなる回転子(ローター)と、該回転子表面と一定間隔を保持して回転子の周囲に配置されている凹凸を有する固定子とを具備する2つ以上の粉砕ゾーンを有し、且つ、粉砕ゾーンは1ユニット内に収められ、同一の動力源により、同一回転数で運転される粗粉砕機を導入する事が重要である。本装置により、中粉砕工程導入時に必要な粉砕機、移送の為の配管及び貯留ホッパー等のスペースは不要となる。又、本装置は2つ以上の粉砕ゾーンを同一ユニット内で同一動力、同一回転数での稼動が可能な為、粗粉砕機及び中粉砕機を稼動させた場合に対して10〜30%消費電力が低減出来る。
【0120】
更に、微粉砕工程へ供給する粗砕品の粒径を50〜300μm程度とする事が重要である。本装置又は、中粉砕工程を介さずに微粉砕工程とした場合には、粉砕効率として10〜30%低下し、特に微粒子化に対しては粒度分布自体もブロード化する等、収率、生産性の悪いものとなる。微粉砕工程へ供給する粗砕品の粒径が300μm以上の場合には、特に微粒子化に対して生産性向上効果が出無い場合もある。又、粗砕品の粒径が50μm以下の場合には、微粉砕工程以降への影響は少ないが、本装置における粉砕ゾーンの温度管理が困難となる。或は、温度管理の為に冷却等へ更にエネルギーを要する事となり、本発明の目的である低エネルギー生産が達成できない場合があり好ましくない。
【0121】
更に、粗粉砕機の二次粉砕ゾーン以降に、配置される固定子の内面は、ジャケット式ケーシングに密着接触し、内部を循環する冷媒により粉砕時に発生する粉砕熱をコントロールする事が重要である。槽内温度を本処置によりある程度一定とする事で、トナー粒子表面での構成成分の状態をコントロールする事及び粉砕性の違うトナー粒子に対しても同様の粉砕効果を与える事が可能である。
【0122】
更に、粗粉砕機の二次粉砕ゾーン以降に、配置される回転子の内面は、粉導入方向又は粉出口方向から内部を循環する冷媒を通すことにより、粉砕時に発生する粉砕熱をコントロールする事が重要である。先述の固定子冷却に対して、回転子内面を直接冷却する為、熱コントロールが少量のエネルギーで達成できる事及び冷媒自体の温度、量の制御により同一装置状態における回転子の回転数を変更してのトナー粒子径コントロールが容易に達成できる。
【0123】
粉砕工程で所定のトナー粒度まで粉砕した後、分級工程を経てトナー粒子を得る。尚、便宜に応じて、分級工程の前後に表面改質工程を設け、該トナー粒子を表面改質しても構わない。
【0124】
更に得られたトナー粒子に、必要に応じて無機微粒子等の外添剤を外添することでトナーを得る。
【0125】
トナー粒子に外添剤を外添処理する方法としては、トナー粒子と公知の各種外添剤を所定量配合し、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、メカノハイブリッド、ノビルタ、サイクロミックス等の粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合する。
【0126】
次に、本発明においてその目的を達成するに好ましいトナーの構成を以下に詳述する。
【0127】
本発明に用いられる結着樹脂としては、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でもビニル系樹脂とポリエステル系樹脂が帯電性や定着性でより好ましい。特にポリエステル系樹脂を用いた場合には本装置の導入による効果は大きい。
【0128】
本発明において、ビニル系モノマーの単重合体または共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等を、必要に応じて前述した結着樹脂に混合して用いることができる。
【0129】
2種以上の樹脂を混合して、結着樹脂として用いる場合、より好ましい形態としては分子量の異なるものを適当な割合で混合するのが好ましい。
【0130】
結着樹脂のガラス転移温度は好ましくは45〜80℃、より好ましくは55〜70℃であり、数平均分子量(Mn)は2,500〜50,000、重量平均分子量(Mw)は10,000〜1,000,000であることが好ましい。
【0131】
結着樹脂としては以下に示すポリエステル樹脂も好ましい。ポリエステル樹脂は、全成分中45〜55mol%がアルコール成分であり、55〜45mol%が酸成分である。
【0132】
ポリエステル樹脂の酸価は好ましくは90mgKOH/g以下、より好ましくは50mgKOH/g以下であり、OH価は好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下であることが良い。これは、分子鎖の末端基数が増えるとトナーの帯電特性において環境依存性が大きくなる為である。
【0133】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は好ましくは50〜75℃、より好ましくは55〜65℃であることが良い。さらに数平均分子量(Mn)は好ましくは1,500〜50,000、より好ましくは2,000〜20,000であり、重量平均分子量(Mw)は好ましくは6,000〜100,000、より好ましくは10,000〜90,000であることが良い。
【0134】
本発明のトナーを磁性トナーとして用いる場合、磁性トナーに含まれる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;Fe,Co,Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl,Co,Cu,Pb,Mg,Ni,Sn,Zn,Sb,Be,Bi,Cd,Ca,Mn,Se,Ti,W,Vのような金属との合金、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0135】
具体的には、磁性材料としては、四三酸化鉄(Fe34)、三二酸化鉄(γ−Fe23)、酸化鉄亜鉛(ZnFe24)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe512)、酸化鉄カドミウム(CdFe24)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe512)、酸化鉄銅(CuFe24)、酸化鉄鉛(PbFe1219)、
酸化鉄ニッケル(NiFe24)、酸化鉄ネオジム(NdFe23)、酸化鉄バリウム(BaFe1219)、酸化鉄マグネシウム(MgFe24)、酸化鉄マンガン(MnFe24)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)等が挙げられる。
【0136】
上述した磁性材料を単独で或いは2種以上の組合せて使用する。特に好適な磁性材料は、四三酸化鉄またはγ−三二酸化鉄の微粉末である。
【0137】
これらは結着樹脂100質量部に対して、磁性体20〜150質量部、好ましくは50〜130質量部、更に好ましくは60〜120質量部使用するのが良い。
【0138】
本発明のトナーに使用できる非磁性の着色剤としては、任意の適当な顔料または染料が挙げられる。
【0139】
例えば顔料として、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。
【0140】
これらは結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部の添加量が良い。また、同様に染料が用いられ、例えば、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料があり、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
【0141】
本発明のトナーは、その帯電性をさらに安定化させる為に必要に応じて荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤は、結着樹脂100質量部当り0.5〜10質量部使用するのが好ましい。
【0142】
0.5質量部未満となる場合には、十分な帯電特性が得られない場合があり好ましくなく、10質量部を超える場合には、他材料との相溶性が悪化したり、低湿下において帯電過剰になったりする場合があり好ましくない。
【0143】
荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
【0144】
トナーを負荷電性に制御する負荷電性制御剤として、例えば有機金属錯体またはキレート化合物が有効である。モノアゾ金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属錯体、芳香族ジカルボン酸系の金属錯体が挙げられる。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、その無水物、またはそのエステル類、または、ビスフェノールのフェノール誘導体類が挙げられる。
【0145】
トナーを正荷電性に制御する正荷電性制御剤としては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのキレート顔料として、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン酸、フェロシアン化合物等)、
高級脂肪酸の金属塩として、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキシド等のジオルガノスズオキサイドやジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレートが挙げられる。
【0146】
本発明において、必要に応じて一種または二種以上の離型剤を、トナー粒子中に含有させてもかまわない。離型剤としては次のものが挙げられる。
【0147】
即ち、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、また、酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、または、それらのブロック共重合物;
カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。
【0148】
更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;
ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;長鎖アルキルアルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;
リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;
エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;
ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの)、また、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;
また、ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、また、植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0149】
離型剤の量は、結着樹脂100質量部あたり0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部が好ましい。
【0150】
また本発明においては、該離型剤の示差走査型熱量計(DSC)で測定される昇温時の最大吸熱ピーク温度で規定される融点は、60乃至130℃(より好ましくは80乃至125℃)であることが好ましい。融点が60℃未満の場合は、トナーの粘度が低下し、感光体へのトナー付着が発生しやすくなり、融点が130℃超の場合は、低温定着性が悪化してしまう場合があり好ましくない。
【0151】
本発明のトナーには、トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得る微粉体を流動性向上剤として用いてもかまわない。
【0152】
例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ等をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理を施し、疎水化処理したものである。メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すように処理したものが特に好ましい。
【0153】
流動化剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものが良好な結果を与える。
【0154】
本発明のトナーには、研摩効果に加え、帯電性付与性及び流動性付与、クリーニング助剤として、上述以外の無機微粉体を添加しても良い。無機微粉体は、トナー粒子に外添することにより、添加前後を比較するとより効果が増加し得るものである。
【0155】
本発明に用いられる無機微粉体としては、マグネシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、ストロンチウム、セリウム、カルシウム、バリウム等のチタン酸塩及び/またはケイ酸塩が挙げられる。
【0156】
本発明における無機微粒子は、トナー100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜8質量部用いるのが良い。
【0157】
次に、以下の実施例中で測定した各種物性データの測定方法に関して以下に説明する。
【0158】
(1)粒度分布の測定
粒度分布については、種々の方法によって測定できるが、本発明においてはコールターカウンターのマルチサイザーを用いて行った。
【0159】
測定装置としてはコールターカウンターのマルチサイザーII型(ベックマン・コールター社製)を用いた。電解液は特級または1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTONR−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用出来る。測定法としては前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターカウンターのマルチサイザーII型により、アパーチャーとして、トナー粒径を測定するときは100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出し、重量平均径を求める。
【0160】
(2)ワックスの融点測定
示差熱分析測定装置(DSC測定装置),DSC−7(パーキンエルマー社製)を用い測定する。測定はASTM D3418−82に準じて行う。測定試料2〜10mgを精秤してアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。
【0161】
この昇温過程で、温度30〜200℃の範囲におけるメインピークの吸熱ピークが得られる。この吸熱メインピークの温度をもってワックスの融点とする。
【0162】
(3)ガラス転移温度(Tg)の測定
示差走査熱量計(DSC測定装置),DSC−7(パーキンエルマー社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
【0163】
測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。
【0164】
これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。
【0165】
この昇温過程で、温度40〜100℃の範囲におけるメインピークの吸熱ピークが得られる。
【0166】
このときの吸熱ピークが出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を本発明におけるガラス転移温度Tgとする。
【0167】
(4)結着樹脂及の分子量分布の測定
GPCによるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。
【0168】
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流す。試料をTHFに溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。
【0169】
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
【0170】
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102,2.1×103,4×103,1.75×104,5.1×104,1.1×105,3.9×105,8.6×105,2×106,4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0171】
カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組合せるのが良い。例えば、Waters社製のμ−styragel 500,103,104,105の組合せや、昭和電工社製のshodex KA−801,802,803,804,805,806,807の組合せが好ましい。
【0172】
(5)樹脂の酸価の測定
結着樹脂の「酸価」は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。
【0173】
試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を酸価といい、次によって試験を行う。
【0174】
(1)試薬
(a)溶剤エチルエーテル−エチルアルコール混液(1+1または2+1)またはベンゼン−エチルアルコール混液(1+1または2+1)で、これらの溶液は使用直前にフェノールフタレインを指示薬としてN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液で中和しておく。
(b)フェノールフタレイン溶液 フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。
(c)N/10水酸化カリウム−エチルアルコール溶液 水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしエチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2〜3日放置後ろ過する。標定はJIS K 8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行う。
【0175】
(2)操作 試料1〜20gを正しくはかりとり、これに溶剤100mlおよび指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後これをN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いたときを中和の終点とする。
【0176】
(3)計算式 つぎの式によって酸価を算出する。
【0177】
【数1】

[A:酸価
B:N/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:N/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)]
【0178】
(6)結着樹脂の水酸基価の測定
結着樹脂の「水酸基価」は以下のように求められる。基本操作は、JIS=K0070に準ずる。
【0179】
試料1gを規定の方法によってアセチル化するとき水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を水酸基価といい、つぎの試薬、操作および計算式によって試験を行う。
【0180】
(1)試薬
(a)アセチル化試薬 無水酢酸25gをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜる(場合によっては、ピリジンを追加しても良い)。アセチル化試薬は、湿気、炭酸ガスおよび酸の蒸気に触れないようにし、褐色びんに保存する。
(b)フェノールフタレイン溶液 フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。
(c)N/2水酸化カリウム−エチルアルコール溶液 水酸化カリウム35gをできるだけ少量の水に溶かし、エチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2〜3日間放置後ろ過する。標定はJIS K 8006によって行う。
【0181】
(2)操作
試料0.5〜2.0gを丸底フラスコに正しくはかりとり、これにアセチル化試薬5mlを正しく加える。フラスコの口に小さな漏斗をかけ、95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首が浴の熱をうけて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円盤をフラスコの首の付根にかぶせる。
【0182】
1時間後フラスコを浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。さらに分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エチルアルコール5mlで漏斗およびフラスコの壁を洗い、フェノールフタレイン溶液を指示薬としてN/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定する。
【0183】
尚、本試験と並行して空試験を行う。場合によっては、指示薬としてKOH−THF溶液にしても構わない。
【0184】
(3)計算式 つぎの式によって水酸基価を算出する。
【0185】
【数2】

[A:水酸基価
B:空試験のN/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
C:本試験のN/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:N/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
D:酸価]
【0186】
(7)磁性酸化鉄粒子の分析方法
(a)平均粒子径
走査型電子顕微鏡(30000倍)の写真を撮影し、フェレ径にて算出した。
(b)磁気特性
東英工業製振動試料型磁力計VSM−P7を使用して、外部磁場796kA/mにて測定した。
【実施例】
【0187】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0188】
<実施例1>
(トナーの製造例:T−1)
・結着樹脂(ポリエステル樹脂):100部
(Tg60℃、酸価19.5mgKOH/g、水酸基価24.8mgKOH/g、分子量:Mp7400、Mn2900、Mw57000)
・酸化鉄粒子:90部
(平均粒子径0.18μm、795.8kA/m磁場での特性Hc11.2kA/m、σs83.6Am2/kg、σr13.2Am2/kg)
・アゾ系鉄錯体化合物:2部
(保土ヶ谷化学社製、商品名T−77)
・フィッシャートロプシュワックス:3部
(日本精蝋社製、商品名FT−100、融点98℃)
上記の処方の材料を、ヘンシェルミキサーでよく混合した後、温度130℃に設定した2軸混練機にて混練した。得られた混練物を冷却し、同軸上に配列した、一次粉砕用の複数の回転打撃子(ハンマー)と粉流を制御する邪魔板を介して、二次粉砕用の少なくとも中心回転軸に取り付けられた凹凸を有する回転体からなる回転子(ローター)と、該回転子表面と一定間隔を保持して回転子の周囲に配置されている凹凸を有する固定子とを具備する2つ以上の粉砕ゾーンを有し、且つ、粉砕ゾーンは1ユニット内に収められ、同一の動力源により、同一回転数で運転される事を特徴とする粗粉砕装置で粗粉砕し、粗粉砕物を得た。
【0189】
得られた粗粉砕物を本実施例においては、図3に示す回転子314を設置した粉砕機を用いて粉砕を行い、下記の条件で粉砕を行った。
【0190】
図3に示す回転子314は、表1に示す通り、外径を750mmとし、全長を440mmとした。従って、該回転子314の表面積Aは1036200mm2となった。尚、ディスク322の段数は2段とした。
【0191】
また、該回転子314表面及び固定子310表面に波型形状の複数の凸部と凹部を有し、図2に示す該凸部の高さを2mmとし、該凹凸によって形成される歯間距離を3mmとした。また図1に示す該回転子314と固定子310との間隔を1mmとした。
【0192】
尚、本実施例で用いた機械式粉砕機は、回転子314及び固定子310の表面に硬質炭化クロム合金めっきをコーティングし、更に、処理面に機械的表面処理としてショットピーニング加工を用い焼入れした後に、ダイヤモンドライクカーボンの薄膜を形成することで表面硬さHVを3000とした。
【0193】
更に、図3に示す回転子314は、内部に冷却用の冷媒流路Nを具備し、該冷媒流路Nはその形状を冷却孔とした。更に冷却孔を等間隔に、一列に配列させた。また、該冷媒流路M及びOの本数を4本とし、系統数をディスク322の段数に合せて2系統とした。
【0194】
また、該冷却孔の外径を10mmとし、本数を75本、該冷媒流路Nの全長を360mmとした。従って、該冷媒流路Nによって形成される冷却面積Bは、847800mm2となった。その結果本実施例においては、(B/A)×100は、81.8%となった。
【0195】
更に図2に示す該回転子314中心点Pから、該回転子314表面凹部底面rまでの距離であるDprを373mmとし、同じく該回転子314中心点Pから、該冷媒流路Nの最外殻qまでの距離であるDpqを357mmとした。従って、本実施例におけるDpr−Dpqは16mmとなった。
【0196】
また粉砕条件として、図1に示す冷風発生手段319により発生する冷風温度を−15℃とし、吸引ブロワーの流量を18m3/minとし、定量供給機315からの被粉砕物の供給量を250kg/hrとした。
【0197】
更に、図1に示すジャケット316に通す冷媒温度及び図3に示す冷媒流路Lに通す冷媒温度を−10℃とし、該ジャケット316に通す冷媒流量及び該冷媒流路Lに通す冷媒流量を10m3/minとした。
【0198】
上述した粉砕機構成及び粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、以下の項目で粉砕機の粉砕状態を評価した。
【0199】
尚、上述した冷風温度とは、図1に示す粉体投入口311の口内温度を示し、粉砕室内温度とは、同じく図1に示す粉体排出口302の口内温度を示す。
【0200】
(評価−1:本体振動値評価)
回転子314の回転周速10m/secにおける振動値(S−0)を測定する。次に回転周速25m/sec、50m/sec、100m/sec、125m/sec、150m/secにおける各振動値(S−1)を測定する。各回転周速におけるS−1とS−0との振動差を確認し、以下の基準で評価した。
A:25μm未満
B:25μm以上、50μm未満
C:50μm以上、75μm未満
D:75μm以上、100μm未満
E:100μm以上
【0201】
尚、振動測定は、IMV社製ポータバイブロ(型式VM−3004SI)を用いて行った。
【0202】
結果を表2に示すが、本実施例における振動差の評価はAであった。
【0203】
(評価−2:粉砕室内温度評価)
粉砕物の所望の重量平均径を5.5±0.2μmとし、該粒径が得られる回転周速を確認する。その際、被粉砕物の投入を停止した状態での粉砕室内温度(T−OFF)を確認する。その後60分間のロングラン運転を行い、安定した状態での粉砕室内温度(T−ON)を確認する。T−ONとT−OFFの温度差を確認し、以下の基準で評価した。
A:15℃未満
B:15℃以上、20℃未満
C:20℃以上、25℃未満
D:25℃以上、30℃未満
E:30℃以上
【0204】
結果を表3に示すが、本実施例においては回転子314の回転周速を150m/secで、重量平均径が5.5μmのトナー粒子を得られ、温度差の評価はAであった。
【0205】
<実施例2>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本実施例においては、図3に示す回転子314を以下のように改造した。尚、その他は実施例1と同様とした。
・回転子314中心点Pから、回転子314表面凹部底面rまでの距離Dpr=373mm
・回転子314中心点Pから、冷媒流路Nの最外殻qまでの距離Dpq=348mm
・従って、Dpr−Dpq=25mm
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0206】
<実施例3>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本実施例においては、図3に示す回転子314を以下のように改造した。尚、その他は実施例1と同様とした。
・回転子314中心点Pから、回転子314表面凹部底面rまでの距離Dpr=373mm
・回転子314中心点Pから、冷媒流路Nの最外殻qまでの距離Dpq=370mm
・従って、Dpr−Dpq=3mm
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0207】
<実施例4>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本実施例においては、図3に示す回転子314を以下のように改造した。尚、その他は実施例1と同様とした。
・回転子314におけるディスク322の段数を1段とし、冷媒流路Nの系統数を1系統とした。
・冷却孔の外径を10mmとし、本数を75本、該冷媒流路Nの全長を400mmとした。従って、該冷媒流路Nによって形成される冷却面積Bは、94200mm2となった。
・その結果本実施例においては、(B/A)×100は90.9%となった。
【0208】
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0209】
<実施例5>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本実施例においては、図3に示す回転子314を以下のように改造した。尚、その他は実施例1と同様とした。
・回転子314におけるディスク322の段数を4段とし、冷媒流路Nの系統数を4系統とした。
・冷却孔の外径を5mmとし、冷却孔を等間隔に二列に配列させ、本数を300本、該冷媒流路Nの全長を280mmとした。従って、該冷媒流路Nによって形成される冷却面積Bは、1318800mm2となった。
【0210】
その結果本実施例においては、(B/A)×100は127.3%となった。
【0211】
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0212】
<実施例6>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本実施例においては、図3に示す回転子314を以下のように改造した。尚、その他は実施例1と同様とした。
・回転子314におけるディスク322の段数を2段とし、冷媒流路Nの系統数を2系統とした。
・冷却孔の外径を5mmとし、冷却孔を等間隔に二列に配列させ、本数を300本、該冷媒流路Nの全長を360mmとした。従って、該冷媒流路Nによって形成される冷却面積Bは、1695600mm2となった。
・その結果本実施例においては、(B/A)×100は163.6%となった。
【0213】
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0214】
<実施例7>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本実施例においては、図3に示す回転子314を以下のように改造した。尚、その他は実施例1と同様とした。
・回転子314におけるディスク322の段数を2段とし、冷媒流路Nの系統数を2系統とした。
・冷却孔の外径を5mmとし、冷却孔を等間隔に二列に配列させ、本数を450本、該冷媒流路Nの全長を360mmとした。従って、該冷媒流路Nによって形成される冷却面積Bは、2543400mm2となった。
・その結果本実施例においては、(B/A)×100は245.5%となった。
【0215】
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0216】
<実施例8>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本実施例においては、図3に示す回転子314を以下のように改造した。尚、その他は実施例1と同様とした。
・回転子314におけるディスク322の段数を2段とし、冷媒流路Nの系統数を2系統とした。
・冷却孔の外径を10mmとし、本数を70本、該冷媒流路Nの全長を360mmとした。従って、該冷媒流路Nによって形成される冷却面積Bは、791280mm2となった。
・その結果本実施例においては、(B/A)×100は76.4%となった。
【0217】
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0218】
<実施例9>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本実施例においては、図3に示す回転子314を以下のように改造した。尚、その他は実施例1と同様とした。
【0219】
図3に示す回転子314は、表1に示す通り、外径を1000mmとし、全長を440mmとした。従って、該回転子314の表面積Aは1381600mm2となった。尚、ディスク322の段数は2段とした。
【0220】
また、該冷却孔の外径を10mmとし、本数を100本、該冷媒流路Nの全長を360mmとした。従って、該冷媒流路Nによって形成される冷却面積Bは、1130400mm2となった。その結果本実施例においては、(B/A)×100は81.8%となった。
【0221】
更に図2に示す該回転子314中心点Pから、該回転子314表面凹部底面rまでの距離であるDprを498mmとし、同じく該回転子314中心点Pから、該冷媒流路Nの最外殻qまでの距離であるDpqを472mmとした。従って、本実施例におけるDpr−Dpqは16mmとなった。
【0222】
粉砕条件として、図1に示す冷風発生手段319により発生する冷風温度を−15℃とし、吸引ブロワーの流量を36m3/minとし、定量供給機315からの被粉砕物の供給量を400kg/hrとした。尚、その他は実施例1と同様とした。
【0223】
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0224】
<実施例10>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本実施例においては、図3に示す回転子314を以下のように改造した。尚、その他は実施例1と同様とした。
【0225】
図3に示す回転子314は、表1に示す通り、外径を150mmとし、全長を440mmとした。従って、該回転子314の表面積Aは207240mm2となった。尚、ディスク322の段数は2段とした。
【0226】
また、該冷却孔の外径を10mmとし、本数を15本、該冷媒流路Nの全長を360mmとした。従って、該冷媒流路Nによって形成される冷却面積Bは、169560mm2となった。その結果本実施例においては、(B/A)×100は81.8%となった。
【0227】
更に図2に示す該回転子314中心点Pから、該回転子314表面凹部底面rまでの距離であるDprを73mmとし、同じく該回転子314中心点Pから、該冷媒流路Nの最外殻qまでの距離であるDpqを57mmとした。従って、本実施例におけるDpr−Dpqは16mmとなった。
【0228】
粉砕条件として、図1に示す冷風発生手段319により発生する冷風温度を−15℃とし、吸引ブロワーの流量を3m3/minとし、定量供給機315からの被粉砕物の供給量を30kg/hrとした。尚、その他は実施例1と同様とした。
【0229】
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0230】
<実施例11>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本実施例においては、粉砕条件として、図1に示す冷風発生手段319により発生する冷風温度を11℃とし、吸引ブロワーの流量を18m3/minとし、定量供給機315からの被粉砕物の供給量を230kg/hrとした。
【0231】
更に、図1に示すジャケット316に通す冷媒温度及び図3に示す冷媒流路Lに通す冷媒温度を−15℃とし、該ジャケット316に通す冷媒流量及び該冷媒流路Lに通す冷媒流量を15m3/minとした。
【0232】
上述した粉砕機構成及び粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。
【0233】
粉砕機の粉砕状態を実施例1と同様に評価した結果、本体振動値評価はAであり、粉砕室内温度評価はBであった。
【0234】
<比較例1>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本比較例においては、図3に示す回転子314を以下のように改造した。尚、その他は実施例1と同様とした(表1参照)。
・回転子314中心点Pから、回転子314表面凹部底面rまでの距離Dpr=373mm
・回転子314中心点Pから、冷媒流路Nの最外殻qまでの距離Dpq=343mm
・従って、Dpr−Dpq=30mm
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0235】
<比較例2>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本比較例においては、図3に示す回転子314を以下のように改造した。尚、その他は実施例1と同様とした(表1参照)。
【0236】
図3に示す回転子314は、表1に示す通り、外径を750mmとし、全長を440mmとした。従って、該回転子314の表面積Aは1036200mm2となった。尚、ディスク322の段数は2段とした。
【0237】
また、該冷却孔の外径を10mmとし、本数を65本、該冷媒流路Nの全長を360mmとした。従って、該冷媒流路Nによって形成される冷却面積Bは、734760mm2となった。その結果本実施例においては、(B/A)×100は、70.9%となった。
【0238】
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0239】
<比較例3>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本比較例においては、図3に示す回転子314を以下のように改造した。尚、その他は実施例1と同様とした(表1参照)。
【0240】
図3に示す回転子314は、表1に示す通り、外径を750mmとし、全長を440mmとした。従って、該回転子314の表面積Aは1036200mm2となった。尚、ディスク322の段数は2段とした。
【0241】
また、該冷却孔の外径を5mmとし、該冷却孔を等間隔に三列に配列させ、本数を600本とした。更に、該冷媒流路Nの全長を360mmとした。従って、該冷媒流路Nによって形成される冷却面積Bは、3391200mm2となった。その結果本実施例においては、(B/A)×100は70.9%となった。
【0242】
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0243】
<比較例4>
実施例1で得られた粗粉砕物を、実施例1と同様に粉砕した。その際、本比較例においては、図3に示す該冷媒循環路Lに冷媒を通水しない以外は実施例1と同様とした(表1参照)。
【0244】
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0245】
<比較例5>
実施例1で得られた粗粉砕物を、図4に示す回転子314を設置した粉砕機を用いて粉砕を行い、下記の条件で粉砕を行った。
【0246】
図4に示す回転子314は、表3に示す通り、外径を1000mmとし、全長を600mmとした。従って、該回転子314の表面積Aは188400mm2となった。尚、ディスク322の段数は5段とした。
【0247】
また、該回転子314表面及び固定子310表面に波型形状の複数の凸部と凹部を有し、図2に示す該凸部の高さを2mmとし、該凹凸によって形成される歯間距離を3mmとした。また図1に示す該回転子314と固定子310との間隔を1mmとした。
【0248】
更に、図4に示す回転子314は、中心回転軸312の外周部に沿って冷媒遮蔽部を形成し、更に該冷媒遮蔽部の外周部に沿って、該回転子314の内側を冷却するための冷媒循環路を構成する冷媒貯留部を形成した。更に、該冷媒貯留部を相互に連通する連通孔を形成した。
【0249】
更に、図4に示す回転子314は、該冷媒貯留部に冷媒を、回転子314軸端部の回転体継手より回転軸内部の通冷媒経路を介して端回転子から導入し、逆の端回転子から再び回転軸の通冷媒経路に戻す冷媒循環を設けた。
【0250】
また、該冷媒貯留部の外径を950mmとし、該冷媒貯留部の全長を475mmとした。従って、該冷媒貯留部によって形成される冷却面積Bは、1416925mm2となった。その結果本比較例においては、(B/A)×100は75.2%となった。
【0251】
粉砕条件として、図1に示す冷風発生手段319により発生する冷風温度を−15℃とし、吸引ブロワーの流量を36m3/minとし、定量供給機315からの被粉砕物の供給量を400kg/hrとした。尚、その他は実施例1と同様とした。
【0252】
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。
【0253】
本比較例においても実施例と同様、粉砕物の所望の重量平均径を5.5±0.2μmとし、該粒径が得られる回転周速を確認しようとしたが、回転子314の周速が100m/secを超えたところから振動値が大きくなり、回転子314の周速が125m/secを超えたところで、振動値が100μmを超えたため、粉砕を停止した(表3参照)。
【0254】
<比較例6>
実施例1で得られた粗粉砕物を、図4に示す回転子314を設置した粉砕機を用いて粉砕を行い、下記の条件で粉砕を行った。
【0255】
図4に示す回転子314は、表2に示す通り、外径を150mmとし、全長を600mmとした。従って、該回転子314の表面積Aは282600mm2となった。尚、ディスク322の段数は5段とした。
【0256】
また、該冷媒貯留部の外径を143mmとし、該冷媒貯留部の全長を475mmとした。従って、該冷媒貯留部によって形成される冷却面積Bは、212539mm2となった。その結果本比較例においては、(B/A)×100は75.2%となった。
【0257】
粉砕条件として、図1に示す冷風発生手段319により発生する冷風温度を−15℃とし、吸引ブロワーの流量を3m3/minとし、定量供給機315からの被粉砕物の供給量を30kg/hrとした。尚、その他は実施例1と同様とした。
【0258】
上述した粉砕機構成及び実施例1と同じ粉砕条件で被粉砕物を粉砕し、実施例1と同様に粉砕機の粉砕状態を評価した。結果を表3に示す。
【0259】
【表1】

【0260】
【表2】

【0261】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0262】
【図1】本発明において使用される回転子の概略的断面図である。
【図2】本発明において使用される回転子表面凹凸部の概略的断面図である。
【図3】従来の粉砕工程において使用される回転子の一例の概略的断面図である。
【図4】本発明において使用される一例の粉砕機の概略的断面図である。
【符号の説明】
【0263】
222 バグフィルター
224 吸引ブロワー
229 捕集サイクロン
240 ホッパー
301 粉砕機
302 粉体排出口
310 固定子
311 粉体投入口
312 中心回転軸312
313 ケーシング
314 回転子
315 定量供給機
316 ジャケット
317 冷却水供給口
318 冷却水排出口
319 冷風発生装置
320 ブラインチラー
322 ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被粉砕物を粉砕手段内に投入するための粉体投入口と、固定子と、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転子と、粉砕された粉体を粉砕手段から排出するための粉体排出口とを少なくとも有し、該固定子は該回転子を内包しており、該固定子表面と該回転子表面とは、所定の間隙を有するように該回転子は配置されて粉砕ゾーンを形成しており、該粉砕ゾーンにおいて、該回転子の回転に伴って被粉砕物が粉砕され、該固定子及び回転子は、いずれも波形形状の複数の凸部と凹部とを有し、該凹凸によって形成される歯間距離が1〜10mmである粉砕機において、
該回転子は内部に冷却用の冷媒流路を具備し、
該回転子の表面積をA、該冷媒流路によって形成される冷却面積をB、
該回転子の中心点pから該回転子の凹部底面rまでを直線で結んだ長さをDpr、
該回転子の中心点pから該冷媒流路の最外殻qまでを直線で結んだ長さをDpq
とした場合、
以下の式(1)、(2)となるように、冷却用の冷媒流路を設けたことを特徴とする粉砕機。
式(1) 75.5≦B/A×100≦300.0
式(2) 1.0mm≦Dpr−Dpq≦25.0mm
【請求項2】
該回転子は内部に冷却用の冷媒流路を具備し、
該冷媒流路は、
粉体投入口側或いは、粉体排出口側の一方向から、中心回転軸を介して、冷媒を導入するための冷媒流路L、
該回転子において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路M、
該回転子外層部を中心回転軸と並行に冷媒を搬送するための冷媒流路N、
該回転子外層部から中心回転軸に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路O、
冷媒導入方向に対して同方向域または逆方向への冷媒を排出するための冷媒流路P
であることを特徴とする請求項1に記載の粉砕機。
【請求項3】
該粉砕機は、独立した複数個のディスクを繋ぎ合せた回転子から構成され、該回転子は内部に冷却用の冷媒流路を具備し、
該冷媒流路は、
粉体投入口側或いは、粉体排出口側の一方向から、中心回転軸を介して、冷媒を導入するための冷媒流路L、
各ディスク内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路M、
各ディスク外層部を中心回転軸と並行に冷媒を搬送するための冷媒流路N、
各ディスク外層部から中心回転軸に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路O、
冷媒導入方向に対して同方向域または逆方向への冷媒を排出するための冷媒流路P
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の粉砕機。
【請求項4】
該各ディスク内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路Mを、該ディスクの枚数に合せて独立して設け、
該ディスクの枚数に合せて独立して設けた該冷媒流路Mに、該冷媒流路Lから冷媒を別々に導入することを特徴とする請求項3に記載の粉砕機。
【請求項5】
該各ディスク外層部から中心回転軸に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路Oを、該ディスクの枚数に合せて独立して設け、
該ディスクの枚数に合せて独立して設けた該冷媒流路Oから、冷媒流路Pに冷媒を別々に戻すことを特徴とする請求項3又は4に記載の粉砕機。
【請求項6】
該各ディスク内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路M及び/または、該各ディスク外層部から中心回転軸に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路Oは、独立した複数個のディスク毎に、複数本から構成されること特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の粉砕機。
【請求項7】
該各ディスク内において外層部へ冷媒を搬送するための冷媒流路Mにおける流路の数と、各ディスク外層部から中心回転軸に向けて冷媒を搬送するための冷媒流路Oにおける流路の数が、同数であること特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の粉砕機。
【請求項8】
結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を冷却した後、冷却物を粗粉砕し、粗粉砕物からなる粉体原料を粉砕手段によって粉砕する工程を少なくとも有する重量平均粒子径が3乃至11μmのトナーの製造方法において、
該粉砕手段は、被粉砕物を粉砕手段内に投入するための粉体投入口と、固定子と、少なくとも中心回転軸に取り付けられた回転子と、粉砕された粉体を粉砕手段から排出するための粉体排出口とを少なくとも有する粉砕機であり、
該回転子は内部に冷却用の冷媒流路を具備し、
該回転子の表面積をA、該冷媒流路によって形成される冷却面積をB、
該回転子の中心点pから該回転子の凹部底面rまでを直線で結んだ長さをDpr、
該回転子の中心点pから該冷媒流路の最外殻qまでを直線で結んだ長さをDpq
とした場合、
以下の式(1)、(2)となるように、冷却用の冷媒流路を設けたことを特徴とするトナーの製造方法。
式(1) 75.5≦B/A×100≦300.0
式(2) 1.0mm≦Dpr−Dpq≦25.0mm
【請求項9】
該トナーはワックスを含有し、該ワックスはDSCの吸熱ピークが60〜130℃であることを特徴とする請求項8に記載のトナーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−100188(P2008−100188A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285993(P2006−285993)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】