説明

粉粒物分離装置、その方法、気体分析装置、および、ガス処理装置

【課題】簡単な構成で混入する粉粒物を高度に分離除去できるガス処理プラントを提供する。
【解決手段】FCC反応塔で利用する触媒粒子を再生する再生装置から触媒粒子の再生の際に排出されるガスを、COボイラで燃焼して酸化処理する。酸化処理後の排ガスを沈降分離管442に渦流として流入させ、ある程度の粒径の触媒粒子を自重により沈降分離させる。沈降分離管442から流出する排ガスを、水443Aを貯溜する曝気部443に曝気する。曝気部443内に液面下に配設した網体で気泡を細かく破泡し、排ガス中に残留する細かい触媒粒子を水443Aに捕捉させ、実質的に触媒粒子が存在しない排ガスを分析部444にて組成分析し、分析結果に基づいてCOボイラの稼働状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒物が混入する気体から粉粒物を分離する粉粒物分離装置、その方法、気体分析装置、および、ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉粒物が混入する気体から粉粒物を分離除去する方法として、各種方法が知られている。これら気体から粉粒物を分離除去する方法の1つとして、渦流を生じさせて分離するサイクロン方式が広く知られている。(例えば特許文献1ないし特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1に記載のものは、流動接触分解(FCC)装置で分解された炭化水素ガスから触媒粒子を遊離するもので、触媒粒子を含有し分解された炭化水素ガスをFCC上昇管から耐圧一次サイクロンで受け取って大部分の触媒粒子を遊離する。触媒含有量が低下したガスの流れを、残留する触媒粒子を遊離して基本的に触媒の内炭化水素の流れを形成させる耐圧二次サイクロンまでプレナムにて通す。
耐圧一次サイクロンと、耐圧二次サイクロンとから、それぞれ遊離した触媒粒子を、一次ディップレッグと二次ディップレッグとにて重力によりストリッピング槽へ送り、ストリッピング槽内の触媒粒子を、ガス分配器により蒸気あるいは他のガスで対流接触させる。
ストリッピング槽からプレナムへ蒸気あるいは他のガスと炭化水素の気体とを配管により通気させ、ストリッピング槽から、ストリッピングされた触媒粒子を配管により除去している。
【0004】
特許文献2に記載のものは、FCC反応器の上端部に単一の一次サイクロンを設け、この一次サイクロンに、FCC反応容器から外部に位置せしめた流体接触ライザの下流端部に流体接続された気体−固体入口を設けるとともに、上端部にガス出口導管を設ける。ガス出口導管は、一次サイクロンとFCC反応容器の壁部との間の空間に位置せしめた1つ以上の二次サイクロン分離器に流体接続させる。
二次サイクロンに、固体をFCC反応容器の下端部に放出手段と、固体が少ない気体水蒸気をFCC反応容器のガス出口まで放出する手段とを設ける。また、一次サイクロンに、下端部に一次ストリッピング帯域を設けるとともに、事前ストリッピングされた固体を一次サイクロンからFCC反応容器の下端部まで放出させる手段を設ける。
そして、FCC容器の下端部に二次ストリッピング帯域を設けるとともに、ストリッピングされた固体をFCC反応容器から放出させる手段を設けている。
【0005】
特許文献3に記載のものは、FCC反応器の立ち上がり管の下流端を、第一サイクロンの接線方向に配置された入口と流動可能に連結する。
FCC反応器の第一サイクロンに連結する位置より下端に、ストリップ用媒体を分離された触媒粒子の濃密な流動床に供給する手段を備えたストリッピング帯と、ストリップされた触媒粒子をFCC反応器から排出する手段と、炭化水素およびストリップ用媒体蒸気をFCC反応器から排出する手段とを設けている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−143479号公報
【特許文献2】特表2004−533505号公報
【特許文献3】特表2002−537117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1ないし特許文献3に記載のようなサイクロン方式により気体から粉粒物を分離する構成では、例えば粉粒物を分離した後の気体を組成分析したり、気体を排気する排気処理したりするなどの各種処理を実施する場合、微細な粉粒物が残留し、精度の高い分析が実施できない、分析機器が粉粒物により閉塞するなどの不都合が生じたり、外気に粉粒物が排出されてしまうなどの不都合が生じるおそれがある。
特に、流動接触分解法では、触媒粒子が互いに衝突するなどにより、一部が欠けたり砕けたりして数ミクロンの粒径に微細化する場合があり、この微細化した触媒粒子をサイクロン方式で分離除去するのは極めて困難である。
このため、各種処理を実施する場合、金属フィルタを用いたり、静電気による電気集塵機を用いたりするなど、さらに微細化した粉粒物を分離する必要がある。しかしながら、金属フィルタを用いる場合には、ある程度の使用により目詰まりを生じるために定期的に運転を中断して金属フィルタを交換したり、洗浄したりするなどの保守管理を実施しなければならず、煩雑であるとともに気体の処理効率の向上が図れない。また、電気集塵機を用いる場合には、十分に粉粒物を分離するために大型となり、集塵前後で時間差が生じる。このことにより、気体の状態や性状などをリアルタイムで認識することが困難となり、各種処理の実施にタイムラグが生じて、良好な処理が実施できないおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、簡単な構成で混入する粉粒物を高度に分離除去できる粉粒物分離装置、その方法、気体分析装置、および、ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粉粒物処理装置は、略鉛直方向に長手筒状で、粉粒物が混入する気体が流入する流入口およびこの流入口から流入した前記気体を上部から流出する流出口を有し、前記粉粒物の自重により前記気体から前記粉粒物を沈降分離して底部に堆積させる沈降分離部と、液体を貯留し、前記沈降分離部の流出口に連通しこの流出口から流出する前記気体が前記液体中に曝気可能に流入する導入口および前記液体に曝気され前記気体中に残留する前記粉粒物が前記液体に捕捉された前記気体を排出する排気口を有した曝気部と、を具備したことを特徴とする。
この発明では、粉粒物が混入する気体を略鉛直方向に長手筒状の沈降分離部の流入口から流入させ、上部の流出口から流出するまでに粉粒物の自重により気体から粉粒物を沈降分離させて底部に堆積させる。この沈降分離部の流出口から流出する気体を、液体を貯溜する曝気部の導入口から流入させて液体中に曝気させ、気体中に残留する粉粒物を液体に捕捉させて曝気部の排気口から排気させる。
このため、微細な粉粒物が混入する気体でも沈降分離と曝気との簡単な構成で高度に粉粒物が分離除去され、実質的に粉粒物が存在しない気体として回収することが容易となる。したがって、例えば気体を組成分析するなどの次工程での処理に粉粒物による悪影響が生じず、次工程での良好な処理の実施が得られ、またそのまま排気しても粉粒物が実質的に存在しないので、粉粒物による環境への悪影響が防止される。
【0010】
そして、本発明では、請求項1に記載の粉粒物分離装置であって、前記沈降分離部は、前記流入口が長手方向の中間部に開口形成され、この流入口より底部に前記自重により沈降した前記粉粒物を排出可能に堆積させる粉粒物回収部を有した構成とすることが好ましい。
この発明では、沈降分離部の長手方向の中間部に流入口を開口形成し、この流入口より底部に自重により沈降する粉粒物を排出可能に堆積させる粉粒物回収部を設けている。
このため、流入する気体により既に沈降分離して堆積させた粉粒物を巻き上げることが防止され、効率よく粉粒物が沈降分離される。さらに、粉粒物回収部により堆積した粉粒物を排出させて回収可能となるので、例えば粉粒物として触媒粒子などの場合には再利用することも容易で、触媒粒子を利用する処理の処理コストの低減も図れる。
【0011】
また、本発明では、請求項1または請求項2に記載の粉粒物分離装置であって、前記沈降分離部は、内周面が略円筒状に形成され、前記粉粒物が混入する気体が内周面の接線方向に略沿って流入して内周面に略沿った渦流を生じさせる位置に前記流入口を有する構成とすることが好ましい。
この発明では、内周面を略円筒状に形成した沈降分離部に、内周面の接線方向に沿って粉粒物が混入する気体が流入して内周面に略沿った渦流を生じさせる位置に流入口を設けている。
このため、流入する気体が渦流として沈降分離部を流通する過程で、混入する粉粒物が内周面に衝突して沈降分離したり中心軸近傍における流速が遅くなる位置で沈降分離したりするなど、沈降分離部がサイクロンとして機能し、混入する粉粒物が効率よく沈降分離される。
【0012】
さらに、本発明では、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の粉粒物分離装置であって、前記曝気部は、前記導入口より上方で前記液体の液面より下方に位置して配設され前記導入口から前記気体が流入されて曝気された気泡を破泡する網体を備えた構成とすることが好ましい。
この発明では、曝気部の導入口より上方で貯溜する液体の液面より下方に位置して、導入口から気体が流入して曝気された気泡を破泡する網体を設けている。
このため、網体により曝気された気泡が細かく破泡されることで液体と気体との接触面積が増大し、気体中に残留する微細な粉粒物も確実に液体に捕捉され、より高度に粉粒物が分離除去され、実質的に粉粒物が存在しない状態の気体が容易に得られる。
【0013】
また、本発明では、請求項4に記載の粉粒物分離装置であって、前記網体は、JIS−Z−8801で規定されている呼び寸法20μm以上125mm以下のものである構成とすることが好ましい。
この発明では、曝気部に設ける網体として、JIS−Z−8801で規定されている呼び寸法20μm以上125mm以下としている。
このため、網体の下方に気体が網体を通過する際の透過負荷が増大することを抑制しつつ気泡が細かく破泡され、残留する粉粒物が高度に液体に捕捉され、実質的に粉粒物が存在しない気体が容易に得られる。
ここで、呼び寸法20μmより細かい網体では、網体を通過せずに網体の下方で曝気された気体が滞留するおそれがあることから、気体が網体を流通するのにある程度の送気圧力で曝気させる必要があり、構成が大型化し装置コストおよび運転コストが増大するおそれがある。一方、呼び寸法125mmより粗い網体では、曝気された気泡が十分に破泡されず、液体と気体との接触面積の増大が得られにくくなり、網体を設置する効果が得られなくなる。これらのことから、JIS−Z−8801で規定された呼び寸法20μm以上125mm以下の網体を用いることが好ましく、より好ましくは呼び寸法50μm以上180μm以下である。
【0014】
そして、本発明では、請求項4または請求項5に記載の粉粒物分離装置であって、前記曝気部は、粘度が2×10-4Pa・s以上6×10-1Pa・s以下の前記液体を貯溜する構成とすることが好ましい。
この発明では、曝気部に貯溜する液体として、粘度が2×10-4Pa・s以上6×10-1Pa・s以下のものとしている。
このため、気体中に残存する微細な粉粒物が良好に液体に捕捉され、実質的に粉粒物が存在しない気体が容易に得られる。
ここで、粘度が2×10-4Pa・sより低いと気体と液体との接触度合いが低下するので接触時間を長くするために液体の水深を深くする必要があり、装置が大型化し装置コストも増大するおそれがある。一方、粘度が6×10-1Pa・sより高いと導入口から流入して曝気する気体の気泡径が大きくなり、気体と液体との接触面積が減少し、残留する粉粒物の液体への十分な捕捉が期待できなくなるとともに、曝気のためにある程度の送気圧力が必要となり、構成が大型化し装置コストおよび運転コストが増大するおそれがある。これらのことから、液体の粘度を2×10-4Pa・s以上6×10-1Pa・s以下に設定することが好ましく、より好ましくは8×10-4Pa・s以上4×10-2Pa・s以下である。
【0015】
さらに、本発明では、請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の粉粒物分離装置であって、前記曝気部は、前記液体として水またはグリコールを貯溜することが好ましい。
この発明では、曝気部に液体として水またはグリコールを貯溜させる。
このため、比較的に入手および取扱が容易な水またはグリコールを用いるので、粉粒物を捕捉した液体を交換することも容易で装置コストも低減するとともに、粉粒物を捕捉した液体の処理が容易となる。
すなわち、液体として水を用いる場合には、水道水や地下水を用いればよく入手が極めて容易で、かつ一般的な泥水処理と同様にして処理すればよく、処理が極めて容易である。また、液体としてグリコールを用いる場合には、比較的に入手が容易である程度の粘度があることから粉粒物の捕捉効率が高く、高度な粉粒物の分離除去が得られるとともに、皮膚刺激がなく揮発しないグリコールであることから処理も比較的に容易である。
【0016】
そして、本発明では、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の粉粒物分離装置であって、前記気体は、流動接触分解に利用される触媒粒子を再生する再生装置から排出されたガスを燃焼により酸化処理した後の排ガスである構成とすることが好ましい。
この発明では、流動接触分解に利用される触媒粒子を再生する再生装置から排出されたガスを燃焼により酸化処理した後の排ガスを、粉粒物が混入する気体として処理する構成とすることが好ましい。
このため、流動接触分解時や再生時に触媒粒子が破砕して再生装置で回収できずに排出され比較的に微細な触媒粒子を含有するガスで燃焼により酸化処理された排ガスでも、触媒粒子の破砕した微細な粉粒物も実質的に存在しない気体として回収され、例えば排ガスを排気するための管理として組成分析する場合でも粉粒物に悪影響を受けることなく良好な分析が得られる。
【0017】
本発明の粉粒物分離方法は、粉粒物が混入する気体から前記粉粒物を分離する粉粒物分離方法であって、前記粉粒物が混入する気体を略鉛直方向に長手状の流路内を流通させて前記粉粒物の自重により前記粉粒物を沈降分離される沈降分離工程と、この沈降分離工程で前記粉粒物を沈降分離した前記気体を液体中に曝気して前記気体中に残留する前記粉粒物を前記液体に捕捉させる曝気工程と、を実施することを特徴とする。
この発明では、粉粒物が混入する気体を略鉛直方向に長手状の流路内を流通させ、粉粒物の自重により粉粒物を気体から沈降分離させる沈降分離工程を実施する。この沈降分離工程で粉粒物を沈降分離した気体を、液体中に曝気して気体中に残留する粉粒物を液体に捕捉させて分離する曝気工程を実施する。
このため、請求項1に記載の装置構成の発明と同様な作用効果、すなわち、微細な粉粒物が混入する気体でも沈降分離と曝気との簡単な処理で高度に粉粒物が分離除去され、実質的に粉粒物が存在しない気体として回収することが容易となる。したがって、例えば気体を組成分析するなどの次工程での処理に粉粒物による悪影響が生じず、次工程での良好な処理の実施が得られ、またそのまま排気しても粉粒物が実質的に存在しないので、粉粒物による環境への悪影響が防止される。
【0018】
本発明の気体分析装置は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の粉粒物分離装置と、この粉粒物分離装置の曝気部から排出される前記気体の組成を分析する分析部と、を具備したことを特徴とする。
この発明では、簡単な構成で実質的に粉粒物が存在しない状態に高度に粉粒物を分離除去できる請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の粉粒物分離装置の曝気部から排出される気体の組成を分析部にて分析する。
このため、分析する気体に実質的に粉粒物が存在しないので、粉粒物が混入する気体でも粉粒物による悪影響がなく良好な気体の組成分析結果が容易に得られる。
【0019】
本発明のガス処理装置は、流動接触分解に利用される触媒粒子を再生する再生装置から排出されるガスを燃焼により酸化処理するボイラと、このボイラで酸化処理した後の気体からこの気体中に混入する粉粒物を分離する請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の粉粒物分離装置と、この粉粒物分離装置の曝気部から排出される前記気体の組成を分析する分析部と、この分析部で分析した前記気体の組成に基づいて前記ボイラにおける燃焼による酸化処理状況を制御する制御装置と、を具備したことを特徴とする。
この発明では、流動接触分解に利用される触媒粒子を再生する再生装置から排出されるガスをボイラで燃焼により酸化処理した後の気体から、簡単な構成で実質的に粉粒物が存在しない状態に高度に粉粒物を分離除去できる請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の粉粒物分離装置により、混入する粉粒物を分離する。この粉粒物分離装置の曝気部から排出される気体の組成を分析部により分析し、制御装置により分析した気体の成分に基づいてボイラにおける燃焼による酸化処理状況を制御する。
このため、ボイラから排出され触媒粒子の粉粒物が混入する気体でも、粉粒物による悪影響がなく良好に気体の組成分析結果が容易に得られ、ボイラの燃焼による酸化処理状況が適切に制御され、良好に再生装置から排出されるガスが処理される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施の形態では、原料油である重質油の分解反応に用いる触媒粒子を再生処理した後の排ガスを処理するガス処理装置としてのガス処理プラントを例示して説明するが、各種気相接触反応、焙焼、乾燥などの処理ガス、ごみ焼却後の排ガスなどを処理する各種構成に適用できる。
図1は、本実施の形態におけるガス処理プラントの概略構成を示すブロック図である。図2は、ガス処理プラントを構成する排ガス分析手段の概略構成を示す概念図である。図3は、排ガス分析手段を構成する沈降分離管の概略構成を示す一部を切り欠いた側面図である。図4は、排ガス分析手段を構成する曝気部の概略構成を示す一部を切り欠いた断面図である。図5は、曝気部における排ガスの曝気前後の組成状態を表形式で示す説明図である。
【0021】
〔ガス処理プラントの構成〕
図1において、100は重質油処理プラントで、この重質油処理プラント100は、重質油を流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking:FCC)によりC4ガス、ナフサ、軽油、重油などの分解油に分解するプラントである。
この重質油処理プラント100は、FCC反応塔200と、再生装置300と、ガス処理プラント400と、を備えている。
【0022】
FCC反応塔200は、下端部から重質油が流入され触媒粒子とともに上昇させつつ流動接触分解させ、分解生成した分解油を上部から流出する反応塔である。なお、触媒粒子は、例えばシリカ−アルミナ系で30μm以上200μm以下の球状微粉末の触媒が用いられる。
再生装置300は、FCC反応塔200に接続され、FCC反応塔200で流動接触分解反応に用いた触媒粒子を、送風機310により下部から再生用空気が導入されて再生処理し、再びFCC反応塔200へ投入する装置である。
ガス処理プラント400は、再生装置300に接続され、再生装置300から排出されるガスを処理して外気へ排気させるプラントである。このガス処理プラント400は、ボイラであるCO(一酸化炭素)ボイラ410と、電気集塵機420と、煙突430と、気体分析装置としての排ガス分析手段440と、制御装置450と、を備えている。
【0023】
COボイラ410は、再生装置300から排出されるガスを燃料により酸化処理する。このCOボイラ410は、再生装置300の上部に開口するガス排気口301に送気管320を介して接続され、再生装置300から排出されたガスが送気管320を介して流入される。COボイラ410には、ガスを燃焼により酸化処理する図示しないバーナと、燃焼したガスを例えば水冷により冷却する図示しない冷却装置とを備えている。そして、COボイラ410は、バーナの燃焼状態が制御装置により制御されることで、ガスの酸化処理状況が制御される。
電気集塵機420は、COボイラ410に流通管411を介して接続され、COボイラ410で酸化処理されて流通管411を介して排出される排ガスから、この排ガス中に混入する粉粒物である触媒粒子を静電気により分離除去する。この電気集塵機420の底部には、分離除去して底部に回収した触媒粒子を、別途再生処理するために外部へ排出する図示しないコンベアが設けられている。
煙突430は、電気集塵機420に排気管421を介して接続され、電気集塵機420で触媒粒子を分離除去して排気管421を介して排出される排ガスを外気へ排出する。なお、この煙突430は、他のプラントや装置から排出される排ガスも排出可能としてもよい。
排ガス分析手段440は、COボイラ410から排出される排ガスの一部を抽出し組成を分析する。この排ガス分析手段440で分析した分析結果は制御装置450へ送信され、分析結果に基づいて制御装置450によりCOボイラ410における酸化処理状況を制御させる。この排ガス分析手段440は、図2に示すように、排ガス抽出部441と、流路である沈降分離部としての沈降分離管442と、曝気部443と、分析部444と、などを備えている。
【0024】
(排ガス分析手段の構成)
排ガス抽出部441は、流通管411の上流側に設けられ、流通する排ガスの一部を抽出すなわち流通管411外へ流出する抽出弁441Aを有している。
また、排ガス抽出部441は、抽出弁441Aに接続され、抽出弁441Aを介して抽出した排ガスを冷却する冷却部441Bを備えている。
【0025】
沈降分離管442は、排ガス抽出部441で抽出して冷却した排ガスを流通させ、この排ガス中に混入する触媒粒子を沈降分離する。この沈降分離管442は、略鉛直方向に長手状で内周面が略円筒形に形成された長手円筒状に形成されている。
そして、沈降分離管442の長手方向の中間部には、排ガス抽出部441に接続され、排ガス抽出部441で抽出し冷却した排ガスを流入する流入口442Aを開口する流入管442Bが設けられている。流入管442Bは、沈降分離管442の内周面の接線方向に軸方向が略沿い、図3に示すように、排ガスを沈降分離管442内に内周面に略沿った渦流を生じさせる状態に設けられている。すなわち、沈降分離管442がサイクロンとして機能する状態に流入管442Bが設けられている。
また、沈降分離管442の上部には、流入した排ガスを排出する流出口442Cを開口する流出管442Dが上部に設けられている。この流出管442Dは、流入管442Bと同様に、内周面の接線方向に軸方向が略沿う状態に設けられている。なお、流出管442Dは、軸方向が接線方向に略沿う状態に設ける構成に限らず、例えば軸方向が沈降分離管442の軸方向と直交する状態としたり、上端部から上方に向けて流出する状態に設けたりするなどしてもよい。なお、サイクロン機能により良好に触媒粒子を沈降分離する構成、すなわち沈降分離管442で沈降分離させる高さ寸法を短く設定でき小型化が図れるために、接線方向に略沿う状態に設けることが好ましい。
【0026】
そして、沈降分離管442は、流入管442Bから流出管442Dまでの沈降分離高さ寸法H1が、触媒粒子を十分に沈降分離させるのに必要な寸法に設定されている。なお、十分に沈降分離させる触媒粒子としては、流動接触分解で触媒として利用する触媒粒子の径である30μm以上を対象として、Zenz−WeilによるFCC粒子についての実測からガス流速および塔径との関係として導かれた沈降分離高さ寸法H1が設定される。
具体的には、排ガス中に含まれる触媒濃度Nと、沈降分離管442を流通するガス流速Vと、沈降分離管442の径寸法Dとに基づいて、以下の式(1)から演算されて設定される。
(式1)
H1=(2.7D-0.36−0.7)exp(0.75×V×D-0.23)×D…(1)
なお、本実施の形態において、触媒濃度Nが0.035g/Nm3、ガス流速Vが12m/s、径寸法Dが0.0527mである場合を例示すると、沈降分離高さ寸法H1は、約44cmに設定される。そして、この条件では、流動接触分解で触媒として利用する粒径である30μm以上の触媒粒子の大半が沈降分離する。
【0027】
また、沈降分離管442は、流入管442Bから下方が沈降分離する触媒粒子を堆積させて貯溜する粉粒物回収部442Eとなる。この粉粒物回収部442Eの底部は、図2に示すように、堆積する触媒粒子を沈降分離管442から排出する排出部442Fが設けられている。
そして、沈降分離管442の底部から流入管442Bまでの高さ寸法、すなわち粉粒物回収部442Eの深さ寸法H2は、例えば重質油処理プラント100で重質油の分解反応を実施する期間である連続運転時間Tで排ガス抽出部441により抽出するガスの流量Wと触媒濃度Nとから算出される触媒粒子の容積を回収できる容積に基づいて設定される。
なお、本実施の形態において、連続運転時間Tが2年、触媒濃度Nが0.035g/Nm3、ガスの流量Vが0.12m/s、径寸法Dが52.7mmである場合を例示すると、深さ寸法H2は、約30cmに設定される。
【0028】
曝気部443は、沈降分離管442から流出する排ガスを液体中に曝気させて残留する触媒粒子を液体に捕捉させて排ガスから分離除去する。この曝気部は、図2および図4に示すように、略円筒で液体として水443Aを貯溜するタンク形状に構成されている。
そして、曝気部443は、下部周面に沈降分離管442の流出口442Cに連結され沈降分離管442から流出する排ガスが流入する導入口443Bを開口形成している。なお、この導入口443Bは、流入する排ガスが貯溜する水443Aに曝気可能で、かつ水443Aが逆流しないように図示しない逆止弁などを設けるとよい。また、曝気部443は、上端部に曝気された排ガスを流出する排気口443Cを開口形成している。
【0029】
なお、液体としての水443Aとしては、水道水や地下水、純水や蒸留水、イオン交換水など、いずれのものを適用できる。また、液体としては、水に限らず、例えばエチレングリコールなどのグリコールが例示できる。なお、揮発性を有しない液体が選定される。
さらに、液体としては、水やグリコールに限らず、例えば粘度が2×10-4Pa・s以上6×10-1Pa・s以下のもの、好ましくは8×10-4Pa・s以上4×10-2Pa・s以下のものが利用できる。
ここで、粘度が2×10-4Pa・sより低いと排ガスと液体との接触度合いが低下するので接触時間を長くするために液体の水深を深くする必要があり、曝気部443が大型化し装置コストも増大するおそれがある。一方、粘度が6×10-1Pa・s以下より高いと導入口443Bから流入して曝気する排ガスの気泡径が大きくなり、排ガスと液体との接触面積が減少し、残留する触媒粒子の液体への十分な捕捉が期待できなくなるとともに、曝気のためにある程度の送気圧力が必要となり、排ガス分析手段440の構成が大型化し装置コストおよび運転コストが増大するおそれがある。さらには、水面にて消泡せずに泡として残留してしまい排気口が閉塞されてしまうおそれがあり、消泡のための機構や消泡剤を投入するなどが必要となり、装置の複雑化や運転コストの増大を生じるおそれがある。これらのことから、液体の粘度を2×10-4Pa・s以上6×10-1Pa・s以下、より好ましくは8×10-4Pa・s以上4×10-2Pa・s以下に設定する。
【0030】
さらに、曝気部443内には、導入口443Bから排ガスが曝気されて生じる気泡を破泡するための網体443Dが配設されている。この網体443Dは、導入口443Bより上方で貯溜する水443Aの液面より下方に位置して貯溜する水443Aを上下方向で区分する状態に配設され、導入口443Bから曝気されて生じた気泡が通過する際に細かい泡状に破泡する。
この網体443Dは、例えばJIS−Z−8801で規定されている呼び寸法20μm以上125mm以下のもの、好ましくは呼び寸法50μm以上180μm以下、特にガス流速Vが約0.12m/sの場合には100メッシュのものが好ましい。
【0031】
分析部444は、曝気部443から排出される排ガスの組成を分析する装置で、沈降分離管442および曝気部443とにより本発明の気体分析装置を構成する。この分析部444は、例えば排ガス中の成分ガスである酸素(O2)濃度、一酸化炭素(CO)濃度、窒素酸化物(NOX)濃度などを分析する。この分析部444は、分析機器の保護などのため、図2に示すように、ドレン部444Aを介して混入するおそれのある水分を除去した後の排ガスが流入される。
なお、排ガスは、再生装置300から排出されるガス中の比較的に高い濃度の一酸化炭素が、COボイラ410におけるバーナの燃焼により二酸化炭素に酸化処理されているので、二酸化炭素が大半である。そして、排ガスは、曝気部443で水443Aを通過するので一酸化炭素の一部が水443Aに溶解されることから、ヘンリーの法則に基づき、分析結果を補正して排ガスの組成として検出する。
具体的には、以下に示す式(2)を用い、ヘンリー定数(化学工学便覧に記載の値)を利用して、分析する成分ガスである酸素、一酸化炭素、窒素酸化物の水443Aに対する溶解度に基づいて補正する。
(式2)
C=KP …(2)
C:成分ガスの濃度
K:ヘンリー定数
P:分圧
なお、本実施の形態では、排ガスを水443Aに通過させることによる成分ガスの濃度変化は、図5に示すようになる。この成分ガスの濃度変化に基づいて、分析部444は、分析結果を補正して排ガスの組成分析結果として制御装置450へ出力する。
【0032】
〔ガス処理プラントにおける排ガス分析手段の動作〕
FCC反応塔200に触媒粒子を再生装置300から投入して重質油を流動接触分解させつつ、FCC反応塔200から触媒粒子を再生装置300に回収して再生させ、再び投入して触媒粒子を循環させる。再生装置300で送風機310により下部から再生用空気が導入されて触媒粒子を再生させた後に再生装置300から排出される再生処理後のガスを、ガス処理プラント400のCOボイラ410によりバーナの燃焼にて酸化処理、すなわちガス中の比較的に高濃度の一酸化炭素を二酸化炭素に酸化させる。このCOボイラにおけるバーナの燃焼は、制御装置450により適宜制御される。
そして、COボイラ410で酸化処理して排出される排ガスは、一部が排ガス分析手段440へ流入され、残部は電気集塵機420へ流入される。そして、電気集塵機420に流入した排ガスは、この排ガス中に混入する触媒粒子が静電気により分離除去され、煙突430から外気へ排気される。
【0033】
また、排ガス分析手段440へ流入する排ガス、すなわちCOボイラ410から流通管411へ排出される排ガスは、排ガス抽出部441の抽出弁441Aを介して流通管411の上流部から排ガス分析手段440へ一部流入する。この排ガス分析手段440に流入した排ガスは、排ガス抽出部441の冷却部441Bで冷却された後、沈降分離管442に流入され、排ガス中に混入する触媒粒子を沈降分離する沈降分離工程が実施される。
すなわち、排ガス抽出部441で抽出され冷却された排ガスは、流入管442Bの流入口442Aから沈降分離管442内に内周面に沿った上方への渦流として流入される。この流入した排ガスは、沈降分離管442内を上方へ渦流で流過する際、混入する触媒粒子が、内周面に衝突して自重により沈降したり、沈降分離管442の中心軸近傍における流速が遅くなる位置で自重により沈降したりするなどして、自重により粒径30μm以上の触媒粒子の大半が沈降し、粉粒物回収部442Eに堆積して回収される。
この粉粒物回収部442Eに回収された触媒粒子は、排出部442Fから沈降分離管442外へ排出され、適宜再生処理される。
【0034】
そして、自重により大半の触媒粒子が沈降分離された排ガスは、流出管442Dの流出口442Cから排出され、曝気部443へ流過し、排ガス中に残留する触媒粒子を分離除去する曝気工程が実施される。
この曝気工程における曝気部443へ流過した排気ガスは、導入口443Bから曝気部443内に流入され、この曝気部443内に貯溜する水443A内に曝気される。この曝気により排ガスは、気泡として水443A内を上方へ流過し、網体443Dを通過する際に細かい泡状に破泡される。
なお、FCC反応塔200での流動接触分解反応の際や再生装置300での再生処理の際などに触媒粒子同士や装置壁面との衝突などにより、一部の触媒粒子は破砕し、粒径が30μmより細かくなっている。このため、粒径が30μmより細かい破砕した触媒粒子は、沈降分離管442では十分に除去されず、排ガスとともに曝気部443に流入する。
そして、曝気された排ガスの気泡は、水443Aと接触、特に網体443Dにより細かく破砕されて水443Aとの十分な接触面積で上方へ流過する。この流過の際に、排ガス中に残留する触媒粒子は、細かい粒径のものでも十分に水443Aと接触され、水443A中に分散される状態に捕捉される。そして、十分に水443Aと接触して残留する触媒粒子が水443A中に捕捉されて分離除去された気泡は、水面にて破泡して上部の排気口から排出される。
なお、触媒粒子を捕捉した水443Aは、フィルトレーションやデカンテーションなどにより触媒粒子が分離される汚水処理が実施される。この汚水処理では、分離した触媒粒子は適宜再生処理され、触媒粒子を分離した汚水分はそのまま雨水として下水処理したりする。
【0035】
さらに、曝気部443から排出される排ガスは、ドレン部444Aを介して混入するおそれのある水分が適宜除去されて分析部444へ流入され、酸素、一酸化炭素および窒素酸化物などの成分ガスの濃度が分析される分析工程が実施される。そして、分析工程では、分析部444が分析結果をヘンリーの法則に基づいて補正し、排ガスの組成結果として制御装置450へ出力する。なお、分析後の排ガスは、そのまま外気へ排出される。なお、そのまま外気へ排出する構成に限らず、COボイラ410に返送してさらに酸化処理させたり、煙突430から排出させたりしてもよい。
この分析部444からの組成分析結果を取得した制御装置450は、残留する一酸化炭素が十分に二酸化炭素に酸化される状態にCOボイラのバーナによる燃焼状態を制御する。
【0036】
〔ガス処理プラントにおける排ガス分析手段の作用〕
次に、排ガス分析手段440の作用として、触媒粒子の分離除去効率の実験について説明する。この触媒粒子の分離除去効率の実験としては、実際に稼働しているガス処理プラントを利用し、上述した実施の形態の排ガス分析手段440を備えた場合の稼働時間を測定した。なお、比較例として、排ガス抽出部441の抽出弁441Aの位置に金属フィルタを設けて排ガス分析手段440の沈降分離管442および曝気部443の代わりにドレントラップを設けた従来の構成(比較例1)と、従来の構成における金属フィルタを設けず、排ガス分析手段440の曝気部443の代わりに比較例1のドレントラップを設けた構成(比較例2)と、についても同様に稼働時間を測定し、比較した。
ガス処理プラントの稼働条件としては、1回/月の分析機器の定期点検を基準に、次の定期点検までFCC反応塔200で連続運転させる条件とした。そして、金属フィルタの目詰まりによるアラーム発報および分析部444における排ガスの流量が確保できないことによるアラーム発報を稼働限界とした。
【0037】
これら各プラント構成での稼働状況を観察した結果、比較例1では、金属フィルタの目詰まりによるアラーム発報が101回/年発生し、稼働を継続させるために、金属フィルタに窒素ガスを逆流させて目詰まりを防止する窒素ブロー処理を、1回当たり30分間で90回/年実施することとなり、窒素ブロー処理を実施しても目詰まりが解消されず金属フィルタの分解掃除を11回/年実施する状況であった。なお、金属フィルタの分解掃除には約1時間を要していた。
また、比較例2では、分析部444におけるアラーム発報が5回/年で発生した。そして、稼働を停止して排ガスの流路を分解して観察した結果、沈降分離管442の流出口442Cとドレントラップとの間の配管で触媒粒子の詰まりが発生していた。
一方、蒸気実施の形態の排ガス分析手段440を備えた稼働状況では、アラーム発報は生じず、安定して排ガスの組成分析が実施できた。
【0038】
〔ガス処理プラントにおける排ガス分析手段の作用効果〕
上述したように、上記実施の形態によれば、触媒粒子が混入する排ガスを略鉛直方向に長手筒状の沈降分離管442の流入口442Aから流入させ、上部の流出口442Cから流出するまでに触媒粒子の自重により排ガスから触媒粒子を沈降分離させて底部の粉粒物回収部442Eに堆積させる。この沈降分離管442の流出口442Cから流出する排ガスを、水443Aを貯溜する曝気部443の導入口443Bから流入させて水443A中に曝気させ、排ガス中に残留する触媒粒子を水443Aに捕捉させて曝気部443の排気口443Cから排気させる。
このため、微細な触媒粒子が混入する排ガスでも、沈降分離と曝気との簡単な構成で高度に粉粒物が分離除去され、実質的に触媒粒子が存在しない排ガスを容易に回収できる。したがって、触媒粒子が流路中で閉塞するなどを防止でき、安定した排ガス処理が実施でき、また例えば排ガスを分析部444で組成分析するなどの次工程での処理に触媒粒子による悪影響が生じず、次工程での良好な処理の実施が得られ、またそのまま排気しても触媒粒子が実質的に存在しないので、触媒粒子による環境への悪影響が防止される。
すなわち、電気集塵機420にて処理した後に排ガスの組成分析を実施することも考えられるが、電気集塵機420で十分に触媒粒子を除去するのにある程度の時間を要するので、その後に排ガスの組成分析を実施するとCOボイラ410での酸化処理状態とに生じるタイムラグが大きく、良好なCOボイラ410の稼働制御ができなくなるおそれがある。一方、COボイラ410から排出された排ガスを沈降分離の後に水中曝気する上記実施の構成では、分析までに時間を要さずに実質的に触媒粒子が存在しない状態に分離除去でき、次工程での良好な処理が容易に得られる。
【0039】
そして、沈降分離管442として、長手方向の中間部に流入口442Aを開口形成し、この流入口442Aより底部に自重により沈降する触媒粒子を排出可能に堆積させる粉粒物回収部442Eを設けている。
このため、流入する排ガスにより既に沈降分離して堆積させた触媒粒子が巻き上げられることを防止でき、効率よく触媒粒子を沈降分離できる。さらに、粉粒物回収部442Eにより堆積した触媒粒子を排出させて回収できる排出部442Fを底部に設けている。このため、回収した触媒粒子を再処理して再利用することが容易にでき、触媒粒子の再利用による流動接触分解の処理コストも低減できるとともに、例えばスクリュコンベヤなどにより排出できる構成とすることで、粉粒物回収部442Eに堆積した触媒粒子を稼働中でも系外に排出して再処理させることも容易にできる。
【0040】
また、内周面を略円筒状に形成した沈降分離管442に、内周面の接線方向に沿って触媒粒子が混入する排ガスが流入して内周面に略沿った渦流を生じさせる位置に流入口442Aを開口する流入管442Bを設けている。
このため、流入する排ガスが渦流として沈降分離管442内を流通する過程で、混入する触媒粒子が内周面に衝突して沈降分離したり中心軸近傍における流速が遅くなる位置で沈降分離したりするなど、沈降分離管442がサイクロンとして機能し、混入する触媒粒子を効率よく沈降分離できる。
そしてさらに、沈降分離管442に排ガスを流出する流出口442Cを開口する流出管442Dも、流入管442Bと同様に、内周面の接線方向に軸方向が略沿う状態に設けている。
このため、流出口442Cを流出するまで排ガスが内周面に略沿う状態で渦流として流通する状態となり、沈降分離管442内を流通する距離が長くなって、触媒粒子の沈降分離の割合が増大することとなり、沈降分離管442で沈降分離させる高さ寸法を短く設定でき、より小型化が図れる。
【0041】
さらに、曝気部443の導入口443Bより上方で貯溜する水443Aの液面より下方に位置して、導入口443Bから排ガスが流入して曝気された気泡を破泡する網体443Dを設けている。
このため、網体443Dにより曝気された気泡が細かく破泡されることで水443Aと排ガスとの接触面積が増大し、排ガス中に残留する微細な触媒粒子も確実に水443Aに捕捉でき、より高度に触媒粒子を分離除去でき、実質的に触媒粒子が存在しない状態の排ガスが容易に得られる。したがって、次工程での分析部444における排ガスの組成分析も触媒粒子による悪影響がなく良好に実施でき、制御装置450によるCOボイラの安定した稼働状態の制御も良好に実施できる。
【0042】
そして、曝気部443に設ける網体443Dとして、JIS−Z−8801で規定されている呼び寸法20μm以上125mm以下、好ましくは呼び寸法50μm以上180μm以下としている。
このため、網体443Dの下方に排ガスが網体443Dを通過する際の透過負荷が増大することを抑制しつつ曝気による気泡を細かく破泡でき、残留する触媒粒子を高度に水443Aに捕捉でき、実質的に触媒粒子が存在しない排ガスが容易に得られ、上述したように、良好な分析およびCOボイラの制御ができる。
【0043】
また、曝気部443に水443Aを貯溜させている。
このため、比較的に入手および取扱が容易な水を用いるので、触媒粒子を捕捉した水443Aを交換することも容易で装置コストも低減できるとともに、触媒粒子を捕捉した水443Aの処理が容易にでき、保守管理が容易にできる。すなわち、水道水や地下水などを用いればよく、入手が極めて容易で、かつ一般的な泥水処理と同様にして処理すればよく、極めて容易に処理できる。
なお、上述したように、水443Aの代わりにエチレングリコールなどのグリコールを用いてもよい。グリコールを用いた場合では、比較的に入手が容易で、ある程度の粘度があることから触媒粒子の捕捉効率が水443Aより高く期待でき、高度な触媒粒子の分離除去が得られるとともに、皮膚刺激がなく揮発しないグリコールであることから処理も比較的に容易にできる。
特に、曝気部443に貯溜する液体として、粘度が2×10-4Pa・s以上6×10-1Pa・s以下のものの場合、液体中に残存する微細な触媒粒子を良好に液体に捕捉でき、実質的に粉粒物が存在しない排ガスが容易に得られる。
【0044】
そして、流動接触分解に利用される触媒粒子を再生する再生装置300から排出されたガスを燃焼により酸化処理した後の排ガスを処理する構成に適用している。
このため、流動接触分解時や再生時に触媒粒子が破砕して再生装置300で回収できずに排出され比較的に微細な触媒粒子を含有するガスで燃焼により酸化処理された排ガスでも、触媒粒子の破砕した微細な粉粒物も実質的に存在しない排ガスとして回収でき、例えば排ガスを排気するためのCOボイラの稼働状態を制御するなどの管理として組成分析する場合でも触媒粒子による悪影響を受けることなく良好な分析が実施でき、良好な管理が得られる。
特に、沈降分離で粒径が30μm以上の触媒粒子を除去し、30μmより細かい触媒粒子を水中曝気により除去しているため、触媒粒子を除去するための構成における排ガスの流通負荷の増大や触媒粒子の捕捉負荷の増大などが生じずに、細かい触媒粒子でも確実に除去して実質的に触媒粒子が混入しない排ガスに処理できる。
【0045】
〔実施の形態の変形〕
なお、本発明は、好適な実施の形態を挙げて説明したが、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示されるような変形をも含むものである。
【0046】
例えば、石油を流動接触分解する重質油処理プラント100における触媒粒子を再生した後の排ガスを処理するガス処理プラント400での稼働状態を制御するために排ガスの組成を分析する構成に適用して説明したが、上述したように、例えば各種気相接触反応、焙焼、乾燥などの処理ガス、ごみ焼却後の排ガスなど、粉粒物が混入する気体から粉粒物を除去する各種構成に適用できる。
そして、粉粒物を分離除去した後に分析部444にて組成分析する構成に限らず、例えばそのまま排気するなどしてもよい。なお、排気する構成とすることで、分離除去する粉粒物の量があまり多くなければ、電気集塵機420などの大型の装置も不要となり、プラント構成の簡略化も図れる。
また、分離除去する粉粒物としても、触媒粒子に限らず、例えばカーボンや砂塵など、各種固体を対象とすることができる。
【0047】
そして、粉粒物を沈降分離する沈降分離部として、円筒状に限らず、角筒状などとしてもよい。
さらには、内部に乱流を生じさせるための羽状物を突設するなどしてもよい。
また、流入口442Aとして円筒状の沈降分離管442の内周面の接線方向に略沿って気体が流入して渦流を生じさせる構成に限らず、単に周面に開口、すなわち流入管442Bの中心軸が沈降分離管442の中心軸に交差する状態に設けるなどしてもよい。同様に、流出口442Cを開口する流出管442Dも内周面の接線方向に略沿った位置に設ける場合に限られない。
そして、沈降分離管442の底部に排出部442Fを有した粉粒物回収部442Eを設けて説明したが、排出部442Fを有さない構成としてもよい。
【0048】
また、曝気部443として水443A中に排ガスを曝気する構成で説明したが、上述したように、水443Aに限らず、例えばエチレングリコールなどのグリコールなど、実質的に揮発性を有しない各種液体が適用できる。特に、排ガスの組成を変更しないもの、もしくは変更しても演算にて分析結果を容易に補正できる液体が好ましい。
さらに、液体として粘度が2×10-4Pa・s以上6×10-1Pa・s以下のものに限られない。
【0049】
そして、網体443Dを配設して説明したが、網体443Dを配設しなくてもよい。なお、例えば乱流を生じさせて曝気による気泡を破泡する羽状物を設けるなど、曝気による気泡を破泡する各種構成を設けることが好ましい。さらには、破泡する構成を設ける構成のみならず、例えば導入口として曝気部443に排ガスを導入する配管の端部を波形状に扁平して曝気の際に比較的に細かい気泡が発生するようにしてもよい。
また、網体443Dとしては、例えばJIS−Z−8801で規定されている呼び寸法20μm以上125mmのものに限らない。
さらには、網体443Dの配設位置としては、例えば導入口443Bに設けて曝気する際に細かい泡となるように配設してもよい。なお、網体443Dに粉粒物が目詰まりするおそれもあることから、上述した実施の形態のように、導入口443Bと液面との中間位置に配設することが好ましい。
【0050】
その他、本発明は上述の実施の形態における具体的な構造および手順に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、設計の変更などは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態におけるガス処理プラントの概略構成を示すブロック図である。
【図2】前記実施の形態におけるガス処理プラントを構成する排ガス分析手段の概略構成を示す概念図である。
【図3】前記実施の形態における排ガス分析手段を構成する沈降分離管の概略構成を示す一部を切り欠いた側面図である。
【図4】前記実施の形態における排ガス分析手段を構成する曝気部の概略構成を示す一部を切り欠いた断面図である。
【図5】前記実施の形態における曝気部における排ガスの曝気前後の組成状態を表形式で示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
300……再生装置
400……ガス処理装置としてのガス処理プラント
440……気体分析装置としての排ガス分析手段
442……流路である沈降分離部としての沈降分離管
442A…流入口
442C…流出口
443……曝気部
443A…液体としての水
443B…導入口
443C…排気口
443D…網体
444……分析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略鉛直方向に長手筒状で、粉粒物が混入する気体が流入する流入口およびこの流入口から流入した前記気体を上部から流出する流出口を有し、前記粉粒物の自重により前記気体から前記粉粒物を沈降分離して底部に堆積させる沈降分離部と、
液体を貯留し、前記沈降分離部の流出口に連通しこの流出口から流出する前記気体が前記液体中に曝気可能に流入する導入口および前記液体に曝気され前記気体中に残留する前記粉粒物が前記液体に捕捉された前記気体を排出する排気口を有した曝気部と、
を具備したことを特徴とした粉粒物分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粉粒物分離装置であって、
前記沈降分離部は、前記流入口が長手方向の中間部に開口形成され、この流入口より底部に前記自重により沈降した前記粉粒物を排出可能に堆積させる粉粒物回収部を有した
ことを特徴とした粉粒物分離装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の粉粒物分離装置であって、
前記沈降分離部は、内周面が略円筒状に形成され、前記粉粒物が混入する気体が内周面の接線方向に略沿って流入して内周面に略沿った渦流を生じさせる位置に前記流入口を有する
ことを特徴とした粉粒物分離装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の粉粒物分離装置であって、
前記曝気部は、前記導入口より上方で前記液体の液面より下方に位置して配設され前記導入口から前記気体が流入されて曝気された気泡を破泡する網体を備えた
ことを特徴とした粉粒物分離装置。
【請求項5】
請求項4に記載の粉粒物分離装置であって、
前記網体は、JIS−Z−8801で規定されている呼び寸法20μm以上125mm以下のものである
ことを特徴とした粉粒物分離装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の粉粒物分離装置であって、
前記曝気部は、粘度が2×10-4Pa・s以上6×10-1Pa・s以下の前記液体を貯溜する
ことを特徴とした粉粒物分離装置。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の粉粒物分離装置であって、
前記曝気部は、前記液体として水またはグリコールを貯溜する
ことを特徴とした粉粒物分離装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の粉粒物分離装置であって、
前記気体は、流動接触分解に利用される触媒粒子を再生する再生装置から排出されたガスを燃焼により酸化処理した後の排ガスである
ことを特徴とした粉粒物分離装置。
【請求項9】
粉粒物が混入する気体から前記粉粒物を分離する粉粒物分離方法であって、
前記粉粒物が混入する気体を略鉛直方向に長手状の流路内を流通させて前記粉粒物の自重により前記粉粒物を沈降分離される沈降分離工程と、
この沈降分離工程で前記粉粒物を沈降分離した前記気体を液体中に曝気して前記気体中に残留する前記粉粒物を前記液体に捕捉させる曝気工程と、を実施する
ことを特徴とする粉粒物分離方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の粉粒物分離装置と、
この粉粒物分離装置の曝気部から排出される前記気体の組成を分析する分析部と、
を具備したことを特徴とした気体分析装置。
【請求項11】
流動接触分解に利用される触媒粒子を再生する再生装置から排出されるガスを燃焼により酸化処理するボイラと、
このボイラで酸化処理した後の気体からこの気体中に混入する粉粒物を分離する請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の粉粒物分離装置と、
この粉粒物分離装置の曝気部から排出される前記気体の組成を分析する分析部と、
この分析部で分析した前記気体の組成に基づいて前記ボイラにおける燃焼による酸化処理状況を制御する制御装置と、
を具備したことを特徴としたガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−136340(P2007−136340A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333714(P2005−333714)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】