説明

粒子の製造方法及び粒子の製造装置、並びにトナー及びその製造方法

【課題】今までにない単一分散性を有する粒子を効率よく長期間に亘って安定的に製造することができる粒子の製造方法及び粒子の製造装置、並びに流動性、帯電性の変動幅が少なく、高画質画像を形成できるトナー及び該トナーの製造方法の提供。
【解決手段】少なくとも樹脂を含有する粒子組成液が供給される液室及びノズルプレートのいずれかに振動を与え、複数のノズルから周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、前記放出された粒子組成液の液滴を固化させる粒子化工程とを含む粒子の製造方法において、前記周期的液滴化工程において、少なくとも前記ノズルプレートに液滴化の際の振動以外の変位を加える粒子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の製造方法及び粒子の製造装置、並びにトナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するために使用される現像剤は、その現像工程において、例えば、静電荷像が形成されている静電潜像担持体等の像担持体に一旦付着される。次に、転写工程において静電潜像担持体から転写紙等の記録媒体に転写された後、定着工程において記録媒体に定着される。
この場合、潜像保持面上に形成される静電荷像を現像するための現像剤として、キャリアとトナーからなる二成分系現像剤、及びキャリアを必要としない一成分系現像剤(磁性トナー、非磁性トナー)が知られている。
【0003】
従来より、電子写真、静電記録、静電印刷等に用いられる乾式トナーとしては、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等のトナーバインダーを着色剤等と共に溶融混練し、微粉砕した、いわゆる粉砕型トナーが広く用いられている。
また、最近では、懸濁重合法、乳化重合凝集法によるトナー製造法、いわゆる重合型トナーが検討されている。
これら以外にも、ポリマー溶解懸濁法と呼ばれる体積収縮を伴う工法も検討されている(特許文献1参照)。この方法はトナー材料を低沸点有機溶媒などの揮発性溶剤に分散し、溶解させ、これを分散剤の存在する水系媒体中で乳化し、液滴化した後に揮発性溶剤を除去するものである。
この方法は、懸濁重合法、乳化重合凝集法と異なり、用いることのできる樹脂に汎用性が広く、特に透明性や定着後の画像部の平滑性が要求されるフルカラープロセスに有用なポリエステル樹脂を用いることができる点で優れている。
【0004】
しかし、前記重合型トナーにおいては、水系媒体中で分散剤を使用することを前提としているために、トナーの帯電性を損なう分散剤がトナー表面に残存して環境安定性が損なわれるなどの不具合が発生したり、これを除去するために非常に大量の洗浄水を必要としたりすることが知られており、必ずしも製法として満足のいくものではない。
【0005】
一方、水系媒体を用いないトナーの製造方法として、古くより噴霧乾燥法が知られている(特許文献2参照)。
この噴霧乾燥法は、トナー組成分の溶融液又はトナー組成液を溶解した液体を、様々なアトマイザを用いて微粒子化して放出し、乾燥させて粒子を得るため、水系媒体を用いることによる不具合は生じない。
しかし、従来の噴霧造粒法により得られる粒子は比較的粗く大きなものであり、また、粒度分布も広いため、トナーそのものの特性を劣化させる原因となっている。
そこで、これに代わるトナーの製造方法として、圧電パルスを利用して微小液滴を形成し、これを乾燥固化してトナー化する方法及び装置が提案されている(特許文献3参照)。
また、ノズル内の熱膨張を利用し、やはり微小液滴を形成し、更にこれを乾燥固化してトナー化する工法が提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
また、前記特許文献3及び4には、ガス流供給手段を有し、このガス流供給手段から供給されたガスが、ダクトを介して、ヘッド部間に設けられた各ガス噴射口から、ほぼ均一の圧力で噴射される構成とし、これにより、吐出部から間欠的に吐出された粒状の原料の間隔を保ちつつ、原料を搬送し、固化させることが記載されている。
前記特許文献3及び4に記載のトナーの製造方法及び装置にあっては、一つの圧電体を用いて一つのノズルからの液滴吐出しか行うことができず、単位時間当たりに吐出できる液滴数が少なく、生産性が悪いという課題がある。
【0007】
そこで、本願出願人は、先に、ノズルを振動発生手段としての圧電体の伸縮で振動させることによってノズルから一定の周波数でトナー組成液の液滴を吐出させ、この液滴を固化させてトナーを製造する方法を提案している(特許文献5参照)。
また、本願出願人は、吐出孔を有する吐出部材と、該吐出部材に対して所定の周波数で振動を与える振動印加手段とを備え、前記吐出部材を振動させることで、吐出孔から液滴を吐出させ、該液滴を乾燥し、固化してトナーを製造する方法を提案している(特許文献6参照)。
【0008】
しかし、前記特許文献5及び6のように、ガス流を各吐出部毎に供給する構成では、複雑な装置構成にならざるを得ない。また、吐出された液滴は、図31に示すように、その液滴が小さいほど急速に速度を落とし、例えば0.2plの液滴は10m/secでノズルから吐出させても1.5mm後には1m/sec以下の速度になってしまう。このとき周波数100kHzを超える領域においては、液滴間の距離はわずか10μmとなり前後の液滴間の合一(合体)が避けられないという課題がある。
また、前記特許文献5に記載されているように、ノズルの周縁部に圧電体を臨ませて、圧電体の伸縮によってノズルを振動させる構成にあっては、圧電体の開口部に対応する領域のノズルの領域で振動が生じるだけであるため、ノズルの大きな変位量を得ることができないことから、粘度が高く(例えば10mPa・s)、固体分が多量に分散しているトナー組成液を吐出させた場合に目詰まりが発生し易く、安定かつ効率的にトナーを製造するには未だ不十分な構成であることが判明している。
また、前記特許文献6には、吐出部材を圧電体で振動させることが記載されているもののその具体的な構成については記載されておらず、前記特許文献5に記載の範囲を超えるものではない。
【0009】
また、本願出願人は、トナーを効率よく長期間に亘って安定に製造することができ、更に流動性や帯電性といったトナーに求められる多くの特性値において従来のトナーの製造方法にみられた粒子による変動の幅が少ないトナーを製造する方法について提案している(特許文献7参照)。
しかし、吐出された液滴に該液滴の速度を超える気流を与え、吐出された液滴の合一やヘッドへの付着を減少させることは確認できたが、ノズルの極近傍に空気流を具備させるためには複雑なノズルヘッド構造を必要とし、これがない場合には、気流に乗せる以前に液滴の合一が進行してしまう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、今までにない単一分散性を有する粒子を効率よく長期間に亘って安定的に製造することができる粒子の製造方法及び粒子の製造装置、並びに流動性や帯電性の変動幅が少なく、高画質画像を形成できるトナー及び該トナーの製造方法を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも樹脂を含有する粒子組成液が供給される液室及びノズルプレートのいずれかに振動を与え、複数のノズルから周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、
前記放出された粒子組成液の液滴を固化させる粒子化工程と、を少なくとも含む粒子の製造方法において、
前記周期的液滴化工程において、少なくとも前記ノズルプレートに液滴化の際の振動以外の変位を加えることを特徴とする粒子の製造方法である。
<2> 液滴噴射方向に対し、鉛直方向にある噴射面に水平な変位を加える前記<1>に記載の粒子の製造方法である。
<3> 液滴噴射方向に対し、鉛直方向にある噴射面に水平方向に傾きをもって変位を加える前記<1>に記載の粒子の製造方法である。
<4> 液滴噴射方向に対し、鉛直方向にある噴射面に水平方向に傾きをもって回転運動を加える前記<1>に記載の粒子の製造方法である。
<5> 液滴噴射方向下流側に配されたノズル形成領域に対応する絞り部を通じて液滴噴射方向に流れる気流を形成する前記<1>から<4>のいずれかに記載の粒子の製造方法である。
<6> 少なくとも樹脂を含有する粒子組成液が供給される貯留部及びノズルプレートのいずれかに振動を与え、複数のノズルから周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化手段と、
前記放出された粒子組成液の液滴を固化させる粒子化手段と、を少なくとも有する粒子の製造装置において、
前記周期的液滴化手段が、少なくとも前記ノズルプレートに液滴化の際の振動以外の変位を更に付与する変位付与部を有することを特徴とする粒子の製造装置である。
<7> 変位付与部が振動子である前記<6>に記載の粒子の製造装置である。
<8> 液滴噴射方向下流側に配されたノズル形成領域に対応する絞り部を有する前記<6>から<7>のいずれかに記載の粒子の製造装置である。
<9> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の粒子の製造方法を用いたトナーの製造方法であって、
粒子組成液が少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液であることを特徴とするトナーの製造方法である。
<10> 前記<9>に記載のトナーの製造方法により製造されたことを特徴とするトナーである。
<11> トナーの重量平均粒径が1μm〜20μmであり、トナーの粒度分布(重量平均粒径/数平均粒径)が1.00〜1.15である前記<10>に記載のトナーである。
【0012】
本発明のトナーの製造方法及びトナーの製造装置によれば、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液がノズルプレートの振動や液体の振動により吐出される。このとき吐出されたトナー組成液の液滴はノズル形成面に対しほぼ垂直方向に吐出するが、本発明においては、前記ノズルプレートに液滴化の際の振動以外の変位を加えることにより、ノズル面が吐出方向に鉛直方向に、振動又は傾きをもって回転するため、噴射方向が液滴毎に異なり、前後の液滴間隔を確保することができる。更に、液滴速度が低下するノズル面から2mm以降は液滴吐出方向下流側に配されたノズル形成領域に対応する絞り部を通じて滴放出方向に流れる気流を形成するので、吐出される液滴の合一を確実に防止することができ、トナーを効率よく長期間に亘って安定して生産することができ、更にこれまでにない粒度の単一分散性を有したトナーを得ることができる。
本発明のトナーは、本発明のトナーの製造方法により製造されるので、今までにない単一分散性を有し、流動性及び帯電性といったトナーに求められる多くの特性値において従来のトナーの製造方法にみられた粒子による変動の幅が少ない高品質なものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、今までにない単一分散性を有する粒子を効率よく長期間に亘って安定的に製造することができる粒子の製造方法及び粒子の製造装置、並びに流動性、帯電性の変動幅が少なく、高画質画像を形成できるトナー及び該トナーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明のトナーの製造方法を適用した本発明のトナー製造装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図2は、トナー製造装置の液滴噴射ユニットの一例の説明に供する拡大説明図である。
【図3】図3は、図2を下側から見た底面説明図である。
【図4】図4は、液滴噴射ユニットの滴吐出手段の拡大断面説明図である。
【図5A】図5Aは、液滴噴射ユニットの滴吐出手段による液滴化の動作原理の説明に供する薄膜の模式的説明図である。
【図5B】図5Bは、液滴噴射ユニットの滴吐出手段による液滴化の動作原理の説明に供する薄膜の模式的説明図である。
【図6】図6は、基本振動モードの説明に供する説明図である。
【図7】図7は、第2次振動モードの説明に供する説明図である。
【図8】図8は、第3次振動モードの説明に供する説明図である。
【図9】図9は、薄膜の中央部に凸部を形成した場合の説明図である。
【図10A】図10Aは、液滴化手段による液滴化の動作原理に供する模式的説明図である。
【図10B】図10Bは、液滴化手段による液滴化の動作原理に供する模式的説明図である。
【図11】図11は、トナー製造装置の液滴噴射ユニットの他の一例の説明に供する正面断面説明図である。
【図12】図12は、図11の左側面断面説明図である。
【図13】図13は、液滴噴射ユニットの他の一例を示す概略図である。
【図14】図14は、気流形成手段の他の一例の説明に供する模式的説明図である。
【図15】図15は、気流形成手段の更に他の一例の説明に供する模式的斜視説明図である。
【図16】図16は、気流形成手段の具体的説明に供する断面説明図である。
【図17】図17は、図16のA−A線に沿う断面説明図である。
【図18】図18は、図16のB−B線に沿う断面説明図である。
【図19】図19は、気流形成手段の説明に供する断面説明図である。
【図20】図20は、ノズルプレートに振動子を備えた一例を示す模式的説明図である。
【図21】図21は、ノズルプレートに振動子を備えた他の一例を示す模式的説明図である。
【図22】図22は、ノズルプレートに振動子を備えた他の一例を示す模式的説明図である。
【図23】図23は、ノズルプレートに振動子を備えた他の一例を示す模式的説明図である。
【図24】図24は、ノズルプレートに振動子を備えた他の一例を示す模式的説明図である。
【図25】図25は、ノズルプレートに振動子を備えた他の一例を示す模式的説明図である。
【図26】図26は、ノズルプレートに振動子を備えた他の一例を示す模式的説明図である。
【図27】図27は、ノズルプレートに振動子を備えた他の一例を示す模式的説明図である。
【図28】図28は、ノズルプレートに振動子を備え、ノズルプレートに回転運動を与えた時の粒子の吐出を示す模式的説明図である。
【図29】図29は、実施例1の噴射ヘッドから吐出させた液滴径の分布状態を度数で表したグラフである。
【図30】図30は、比較例1の噴射ヘッドから吐出させた液滴径の分布状態を度数で表したグラフである。
【図31】図31は、速度10m/sで液滴を空気中に噴射させたときの速度減衰曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(粒子の製造方法及び粒子の製造装置)
本発明の粒子の製造方法は、周期的液滴化工程と、粒子化工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の粒子の製造装置は、周期的液滴化手段と、粒子化手段とを少なくとも有し、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
以下、本発明の粒子の製造方法及び粒子の製造装置について、詳細に説明する。
【0016】
<周期的液滴化工程及び周期的液滴化手段>
前記周期的液滴化工程は、少なくとも樹脂を含有する粒子組成液が供給される液室及びノズルプレートのいずれかに変位を与え、複数のノズルから周期的に液滴化して放出させる工程であり、周期的液滴化手段により実施することができる。
【0017】
本発明においては、前記周期的液滴化工程において、少なくともノズルプレートに液滴化の際の振動以外の変位を更に加えることを特徴とし、変位付与部により実施することができる。
前記変位付与部としては、簡便かつ低コストの点で振動子であることが好ましい。
前記振動子としては、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウムを主成分とした圧電セラミックスなどが挙げられる。
【0018】
前記少なくともノズルプレート付与する液滴化の際の振動以外の変位の与え方としては、例えば(1)液滴噴射方向に対し、鉛直方向にある噴射面に水平な変位を加える態様、(2)液滴噴射方向に対し、鉛直方向にある噴射面に水平方向に傾きをもって変位を加える態様、(3)液滴噴射方向に対し、鉛直方向にある噴射面に水平方向に傾きをもって回転運動を加える態様、(4)液滴噴射方向下流側に配されたノズル形成領域に対応する絞り部を通じて液滴噴射方向に流れる気流を形成する態様、などが挙げられる。
前記(1)の態様を実現する手段としては、例えばヘッド側面中央部にバルク型圧電セラミックスを接合配置し、他方をゴム材等の弾性体で把持し、圧電素子を励振させる方法などが挙げられる。
前記(2)の態様を実現する手段としては、例えばヘッド裏面端部にバルク型圧電セラミックスを接合配置し、圧電素子を励振させる方法などが挙げられる。
前記(3)の態様を実現する手段としては、例えばヘッド裏面四隅にバルク型圧電セラミックスを接合配置し、それぞれの素子を同期させ圧電素子を励振させる方法などが挙げられる。
前記(4)の態様を実現する手段としては、例えば図16に示すようにノズル配列部に向けて絞りを設けた覆いをSUS薄板(厚み(t)=0.5mm)にて形成し、表面層にテフロンコートを施したものなどが挙げられる。
【0019】
<粒子化工程及び粒子化手段>
前記粒子化工程は、前記放出された粒子組成液の液滴を固化させる工程であり、粒子化手段により実施することができる。
前記粒子化手段としては、液滴を固化させて粒子化できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば(1)液滴に含まれる有機溶媒を乾燥気体へ蒸発させ、乾燥による収縮固化を行う方法、(2)乾燥窒素を吹き付け、液滴を搬送する過程において液中の溶媒を奪い取る方法などが挙げられる。
【0020】
ここで、前記粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばトナー、ギャップ材、粉末状化粧品、粉末状薬剤、洗剤などが挙げられる。これらの中でも、トナーが特に好ましい。
前記粒子がトナーである場合には、本発明の粒子の製造装置は、「トナーの製造装置」として機能する。
そして、前記「粒子の製造装置」を用いて、トナーの製造を行えば、本発明の「トナーの製造方法」を実施したことになる。
【0021】
以下、本発明のトナーの製造方法を実施するトナーの製造装置の一実施形態について図1の模式的構成図を参照して説明する。
このトナーの製造装置1は、液滴化手段として液滴噴射ユニット2と、この液滴噴射ユニット2が上方に配置され、液滴噴射ユニット2から放出されるトナー組成液の液滴を固化してトナーTを形成する粒子化手段としての粒子形成部3と、粒子形成部3で形成されたトナーTを捕集するトナー捕集部4と、トナー捕集部4で捕集されたトナーTがチューブ5を介して移送され、移送されたトナーTを貯留するトナー貯留手段としてのトナー貯留部6と、トナー組成液10を収容する原料収容部(貯留タンク)7と、この原料収容部7内から液滴噴射ユニット2に対してトナー組成液10を送液する配管(送液管)8と、稼動時などにトナー組成液10を圧送供給するためのポンプ9とを備えている。
【0022】
なお、原料収容部7からのトナー組成液10は、液滴噴射ユニット2による液滴化現象により自給的に液滴噴射ユニット2に供給されるが、装置稼働時等には上述したように補助的にポンプ9を用いて液供給を行う構成としている。
また、トナー組成液10として、ここでは、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を溶剤に溶解又は分散した溶液又は分散液を用いている。
【0023】
また、ここでは、液滴噴射ユニット2が1個配置されている例で図示しているが、好ましくは、後述するように、複数、例えば制御性の観点からは100〜1,000個の液滴噴射ユニット2を、粒子形成部3の天面部に並べて配置し、各液滴噴射ユニット2には配管8を原料収容部7に通じさせてトナー組成液10を供給するようにする。
これによって、一度により多くの液滴を放出させることができて、生産効率の向上を図ることができる。
【0024】
次に、液滴噴射ユニットの一例について図2から図4を参照して説明する。
なお、図2は、同液滴噴射ユニット2の断面説明図、図3は図2を下側から見た要部底面説明図、図4は液滴化手段の概略断面説明図である。
この液滴噴射ユニット2は、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液10を液滴化して放出させる滴吐出手段11と、この滴吐出手段11にトナー組成液10を供給する貯留部(液流路)12を形成した流路部材13とを備えている。
【0025】
滴吐出手段11は、複数のノズル(吐出口)15が形成された薄膜16と、この薄膜16を振動させる円環状の振動発生手段である電気機械変換手段(素子)17とで構成されている。
ここで、薄膜16は、最外周部(図3の斜線を施して示す領域)をハンダ又はトナー組成液に溶解しない樹脂結着材料によって流路部材13に接合固定している。
電気機械変換手段17は、この薄膜16の変形可能領域16A(流路部材13に固定されていない領域)内の周囲に配されている。
この電気機械変換手段17にはリード線21、22を通じて駆動回路(駆動信号発生源)23から所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が印加されることで、例えば撓み振動を発生する。
【0026】
薄膜16の材質、ノズル15の形状としては、特に制限はなく、適宜選択した形状とすることができるが、例えば、薄膜16は厚み5μm〜500μmの金属板で形成され、かつ、ノズル15の開口径が3μm〜35μmであることが、ノズル15からトナー組成液の液滴を噴射させるときに、極めて均一な粒子径を有する微小液滴を発生させる観点から好ましい。
前記ノズル15の開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円であれば短径を意味する。
また、複数のノズル15の個数は、2個〜4,000個が好ましく、200個〜2,000個がより好ましい。
【0027】
電気機械変換手段17としては、薄膜16に確実な振動を一定の周波数で与えることができるものであれば特に制限はなく、上述したように、バイモルフ型のたわみ振動の励起される圧電体が好ましい。
前記圧電体としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、一般に変位量が小さいことから、積層して使用されることが多い。
この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO、等の単結晶、などが挙げられる。
【0028】
流路部材13には貯留部12にトナー組成液を供給する送液管8に接続された液供給チューブ18及び液循環用チューブ(又は気泡排出用チューブ)19がそれぞれ少なくとも1箇所に接続されている。
この流路部材13に取り付けた支持部材20によって粒子形成部3の天面部に設置保持されている。
なお、ここでは、粒子形成部3の天面部に液滴噴射ユニット2を配置している例で説明しているが、粒子形成部3となる乾燥部側面壁又は底部に液滴噴射ユニット2を設置する構成とすることもできる。
【0029】
このように、液滴化手段を構成している滴吐出手段11は、貯留部12に臨む複数のノズル15を有する薄膜16の変形可能領域16A内の周囲に円環状の電気機械変換手段17が配されていることによって、例えば電気機械変換手段17が薄膜16の周囲を保持している構成に比べて、相対的に薄膜16の変位量が大きくなり、この大きな変位量が得られる比較的大面積(直径1mm以上)の領域に複数のノズル15を配置することができ、これら複数のノズル15より一度に多くの液滴を安定的に形成して放出することができるようになる。
【0030】
この滴吐出手段11の動作原理について図5を参照して説明すると、図5A及び図5Bに示すような単純円形薄膜16の周辺部16Bを固定した(より具体的には、変形可能領域16Aの外周が固定された状態である)場合、この円形薄膜16に振動を与えると、基本振動は周辺が節になり、図6に示すように、薄膜16の中心Oで変位量ΔLが最大(ΔLmax)となる断面形状となり、振動方向に周期的に上下振動する。
【0031】
この図6に示すように、薄膜16を、周辺が節となり、直径方向(径方向)に節を持たない振動モードで振動させることが好ましい。
なお、図7及び図8に示すような、より高次の振動モードが存在することが知られている。
これらのモードは、円形薄膜16内に、同心円状に節を1乃至複数持ち、実質的に径方向に対称な変形形状となる。
また、図9に示すように、円形薄膜16の中心部を凸形状16Cとすることで、液滴の進行方向を制御し、かつ振動振幅量を調整することが可能となる。
【0032】
ここで、円形薄膜16の振動により、円形薄膜16に設けられた複数のノズル15近傍の液体(トナー組成液)には、薄膜16の振動速度Vmに比例した圧力Pacが与えられる。
圧力は、媒質(トナー組成液)の放射インピーダンスZrの反作用として生じることが知られており、放射インピーダンスと膜振動速度Vmの積で、下記数式1で示す方程式を用いて表すことができる。
【0033】
<数式1>
Pa(r,t)=Zr*Vm(r,t)
【0034】
薄膜16の振動速度Vmは、時間とともに周期的に変動しているため時間の関数であり、例えばサイン波形、矩形波形など、様々な周期変動を形成することが可能である。
上述したとおり、薄膜16の各部位で振動方向の振動変位は異なっており、振動速度Vmは、薄膜16上の位置座標の関数でもある。
好ましい薄膜の振動形態は、上述のとおり径方向に対称な変形形状であるので、実質的には半径座標の関数となる。
【0035】
以上のように、分布を持った薄膜16の振動変位速度に対して、それに比例する圧力が発生し、圧力の周期的変化に対応して貯留部12内のトナー組成液10が、気相へ吐出される。
そして、気相へ周期的に排出されたトナー組成液10は、液相と気相との表面張力差によって球体を形成するため、液滴化が周期的に発生し、トナー組成液10は複数のノズル15から液滴化されて放出される。
【0036】
この様子を図10A及び図10Bに模式的に示している。
薄膜16の変形可能領域内の周囲に配された電気機械変換手段17に対して撓み振動を与えることによって、薄膜16は、図10Aに示すように貯留部12側と反対側に撓んだ状態と、図10Bに示すように貯留部12側に撓んだ状態との間で振動することになる。
その結果、この薄膜16の振動によってトナー組成液10が液滴化されて液滴31が噴射(吐出)される。
【0037】
ここで、液滴化を可能とする薄膜16の振動周波数としては20kHz〜2.0MHzの領域が好ましく、50kHz〜500kHzの範囲がより好ましい。
前記振動周波数が20kHz以上の振動周期であれば、液体の励振によって、トナー組成液10中の顔料やワックスなどの微粒子の分散が促進される。
また、圧力が10kPa以上となることによって、上述の微粒子分散促進作用がより好適に発生する。
【0038】
この場合、形成される液滴31の直径は、薄膜16の複数のノズル15が形成された領域における振動変位が大きいほど大きくなる傾向にあり、振動変位が小さい場合、小滴が形成されるか、又は液滴化しない。
このような、複数のノズル15が形成された領域における液滴サイズのばらつきを低減するためには、複数のノズル15の配置を薄膜16の振動変位の最適な位置に規定することが必要である。
【0039】
実験によれば、図6〜図8に示す、電気機械変換手段17によって発生する薄膜16の複数のノズル15が形成された領域における薄膜16の振動方向変位(変位量)ΔLの最大値ΔLmaxと最小値ΔLminの比R(=ΔLmax/ΔLmin)が、2.0以内である、つまり、比Rが2.0以内になる領域内に複数のノズル15を配置することにより、液滴サイズのばらつきを、高画質な画像を提供することのできるトナーとして必要な領域に保つことができる。
【0040】
更に、液滴サイズ(直径)のばらつきの大きな要因として、サテライト粒子(主に形成される液滴のおよそ10分の1の直径の粒子)の発生が挙げられる。
トナー組成液の条件を変更して実験を行ったところ、粘度20mPa・s以下、表面張力20mN/m〜75mN/mの領域においてサテライトの発生開始領域が同様であったことから、前記圧力が、10Pa以上500kPa以下の範囲内であることが好ましく、10Pa以上100kPa以下であることがより好ましい。
前記圧力をこの範囲にする、つまり、圧力がこの範囲になる薄膜16の領域内に複数のノズル15を配置することでサテライトの発生を抑制できる。
【0041】
次に、液滴噴射ユニットの他の例について図11及び図12を参照して説明する。
なお、図11は、液滴噴射ユニットの模式的正面説明図、図12は、図11の左側面説明図である。
この液滴噴射ユニット102は、複数のノズル(吐出口)115が形成された薄膜116と、この薄膜113を振動させる振動手段111と、薄膜116と振動手段111との間に少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液10を供給する貯留部(液流路)111を形成する流路部材113とを備え、貯留部114には、液供給管118を通じてトナー組成液10が供給され、また、必要に応じて液循環用管119が設けられる。
【0042】
ここで、振動手段111は、圧電体を2枚積層した振動を発生する振動発生手段121と、振動発生手段121で発生する振動を増幅するホーン形状の振動増幅手段122とを備え、振動面111aを薄膜116と平行に貯留部112のトナー組成液10を介して対向配置している。
この場合、振動発生手段121と振動増幅手段122とを結合する結合面111bの面積よりも振動増幅手段122の結合面111bと反対側の面である振動面111aの面積を広く形成している。
【0043】
また、振動面111aは、矩形状(ここでは「長方形」としている。)としている。
この場合、振動面111aの短辺よりも長辺の比(長辺/短辺)が大きいほど振動面積が大きくなる。
したがって、生産性の観点から、(長辺/短辺)>2.0の関係で形成することが好ましい。
なお、その他の構成(材料、形状、ノズル配置など)は前述した液滴噴射ユニット2と同様であるので、その説明を省略する。
【0044】
この液滴噴射ユニット102においても、振動手段111の振動発生手段121を駆動することによって振動面111aが振動し、この振動面111aの振動が薄膜116に伝播されて薄膜116を所要の振動周波数で振動させることができ、薄膜116のノズル115からトナー組成液10の液滴を周期的に放出させることができる。
【0045】
このように、振動発生手段と振動増幅手段とで振動手段を構成して薄膜を振動させることによって、より大きな変位量で薄膜を振動させることができ、単分散なトナーを効率的に製造することができる。
特に、振動面が振動発生手段と結合する結合面より広く形成されているので、小さな振動発生手段で薄膜をより大きな変位量で振動させることができる。
更に、液滴噴射ユニットの他の一例について図13を参照して説明する。図13は、噴射ヘッド201の断面斜視図であり、噴射ヘッド201の上面に配置された振動手段としてのPZT振動子202の作動により、個別液室203内の液体に振動を与え、ノズル204より、液滴を吐出させる。このとき、ノズル204は個別液室203ごとに複数個配列されていてもよい。
【0046】
図1に戻って、液滴噴射ユニット2のノズル15から放出される液滴31の放出方向に流れる気流を発生する気流形成手段50を設けている。
この気流形成手段50は、気体加圧手段51と、気流導入管52と、気流分布形成手段53によって構成されている。
【0047】
気体加圧手段51としては、工業的に一般に用いられているコンプレッサ、ブロアを好適に用いることができる。
気流分布形成手段53は、1つの液滴噴射ユニット2に対して1つ設けていることが好ましい。
したがって、図14に示すように、複数の液滴噴射ユニット2を粒子形成部3に対して配置する場合には、1つの気体加圧手段51から気流導入管52を介してそれぞれの液滴噴射ユニット2に対して設けられた気流分布形成手段53に気流を分岐して導入することが好ましい。
ただし、複数の液滴噴射ユニット2を粒子形成部3に対して配置する場合、図15に示すように、複数の液滴噴射ユニット2に対して1つの気流分布形成手段53を設ける構成とすることもできる。
【0048】
気流分布形成手段53は、気体加圧手段51から圧送される気体を導入して滴噴射ユニット2の薄膜16の滴放出方向下流側に配されたノズル形成領域に対応する絞り部54を通じて滴放出方向に流れる気流55を形成する気流路56を形成する。
【0049】
ここで、液滴噴射ユニットとして、図11及び図12で説明した液滴噴射ユニット102を用いた場合の気流形成手段の一例について図16から図18を参照して説明する。
なお、図16は、気流形成手段の気流分布形成手段の説明に供する正面断面説明図、図17は、図16のA−A線に沿う断面説明図、図18は、図16のB−B線に沿う断面説明図である。
液滴噴射ユニット102の外周部には、気流分布形成手段として気流路形成部材53が配置され、この気流路形成部材53と液滴噴射ユニット102との間に図15で上方から気体導入路57を通じて加圧された気体が導入される。
【0050】
この気流路形成部材53は、液滴噴射ユニット102の薄膜116のノズル形成領域に対応して滴放出方向(矢印Cの方向)下流側に、気流路56を絞る絞り部54を有し、導入された気体の流れ(気流55)の速度を絞り部54において増加する。
なお、「気流路を絞る」とは、図16のA−A線に沿う断面を示す図17における気流路56(網掛けを施している領域)の断面積よりも、図16のB−B線に沿う断面を示す図18における気流路56(網掛けを施している領域)の断面積が狭いことである。
【0051】
なお、図19に示すように、気流路56の形状は、上記の条件を満たしていれば様々な形状とすることができ、気流55の導入角度θ及び絞り部54の開口幅Dは液滴の合一(合体)を防ぐ最適の形態が採用される。
【0052】
したがって、図19に示すように、液滴噴射ユニット102の複数のノズル115からトナー組成液10の液滴31が放出されるとき、放出された液滴31は絞り部54で気流路56が絞られることによって液滴31の初速度よりも相対的に速い速度で流れる気流55Bに乗り、順次放出される液滴31の間隔が広げられて吐出された液滴31が合一化(合体)することが防止され、安定的にトナーを製造できるようになる。
この場合、気流路56より発生する気流55の速度は、絞り部54において放出された液滴31の初速度より速いことで、高周波数においても、液滴間隔を拡張し、液滴の衝突を防ぐことが可能となる。
【0053】
次に、図20〜図27は、ノズルプレート210に変位付与部としての振動子211を取り付けた例を示す。図20〜図27中、積層体211は振動子を表し、積層体212は弾性体を示している。
前記振動子211としては、例えばバルク型ジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウムを主成分とした圧電セラミックス素子が用いられている。
前記弾性体212としては、例えばシリコーンゴム材5mm角、厚み(t)=2mmが用いられている。
図20〜図23では、水平方向に与振させるように振動子211はノズルプレート210側面に取り付けられている。
図24〜図27では、ノズルプレート210裏面部に配置され、噴射方向に対し、角度を持つよう配置された例を示している。これによってノズルからの吐出方向を変えられた液滴はノズルプレート前の空間に三次元的に広げられ(図28参照)、液滴間隔を充分に取ることができる。その後、吐出された液滴は気流に乗せられ、乾燥固化する。
【0054】
次に、図1に戻って、トナー組成液10の液滴31を固化してトナーTを形成する粒子形成部3について説明する。
ここでは、トナー組成液10として、前述したように、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を溶剤に溶解又は分散した溶液、分散液を用いているので、液滴31を乾燥して固化することでトナーTを形成している。
つまり、この実施形態では、粒子形成部3は液滴31の溶媒を乾燥して除去することによってトナーTを形成する溶媒除去部としている(以下では、粒子形成部3を「溶媒除去部」あるいは「乾燥部」とも称する)。
【0055】
具体的には、この粒子形成部3は、液滴噴射ユニット2のノズル15から放出される液滴31を、この液滴31の飛翔方向と同方向に流れる乾燥した気体(乾燥気体)35によって搬送することで、液滴31の溶媒を除去してトナーTを形成する。
なお、乾燥気体35とは、大気圧下の露点温度が−10℃以下の状態の気体を意味する。
乾燥気体35としては、液滴31を乾燥可能な気体であればよく、例えば、空気、窒素などを用いることができる。
【0056】
次に、この粒子形成部3にて形成されたトナーTを捕集するトナー捕集手段としてのトナー捕集部4について説明する。
このトナー捕集部4は、粒子形成部3の粒子飛翔方向下流側に粒子形成部3に連続して設けられ、開口径が入口側(液体噴射ユニット2側)から出口側に向けて漸次縮小するテーパ面41を有している。
そして、例えば、図示しない吸引ポンプなどでトナー捕集部4内から吸引を行うことによってトナー捕集部4内に下流側に向かう渦流である気流42を発生させ、この気流42によってトナーTを捕集するようにしている。
このように渦流(気流42)によって遠心力を発生させてトナーTを捕集することで確実にトナーTを捕集して下流側のトナー貯留部6に移送することができる。
【0057】
また、トナー捕集部4の入口部には、粒子形成部3で形成されたトナーTの電荷を一時的に中和する(除電する)除電手段43を備えている。
この除電手段43は、トナーTに対して軟X線を照射する軟X線照射装置43Aを用いているが、除電手段43としてトナーTに対してプラズマ照射を行うプラズマ照射装置を用いることもできる。
【0058】
このトナー捕集部4で捕集されたトナーTは、渦流(気流42)によってそのままチューブ5を介してトナー貯留部6に移送されて貯留される。
この場合、トナー捕集部4、チューブ5、トナー貯留部6を導電性の材料で形成したときには、これらが接地されている(アースに接続されている)ことが好ましい。なお、この製造装置は全体が防爆仕様であることが好ましい。
また、トナー捕集部4からトナーTをトナー貯留部6に向けて圧送したり、あるいは、トナー貯留部6側からトナーTを吸い込む構成としたりすることもできる。
【0059】
次に、このように構成したトナーの製造装置1による本発明のトナーの製造方法について説明する。
なお、液滴噴射ユニットは図2及び図3の円環状振動手段17を用いた液滴噴射ユニット2の例で説明する。
前述したように液滴噴射ユニット2の貯留部12に少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を分散ないし溶解させたトナー組成液10を供給した状態で、液滴吐出手段11の電気機械変換手段17に対して所要の駆動周波数の駆動信号を印加することによって電気機械変換手段17に撓み振動が発生し、この電気機械変換手段17の撓み振動によって薄膜16が周期的に振動し、この薄膜16の振動によって複数のノズル15から貯留部12のトナー組成液10が周期的に液滴化されて液滴31として溶媒除去部としての粒子形成部3(図1参照)内に放出される。
【0060】
そして、粒子形成部3内に放出された液滴31は、粒子形成部3内で液滴31の飛翔方向と同方向に流れる乾燥気体35によって搬送されることで、溶媒が除去され、トナーTが形成される。
この粒子形成部3にて形成されたトナーTは下流側のトナー捕集部4にて気流42にて捕集され、チューブ5を介してトナー貯留部6に送られて貯留される。
【0061】
このように、液滴噴射ユニット2の滴吐出手段11には複数のノズル15が設けられているので、同時に複数の液滴化されたトナー組成液の液滴31が連続的に多数放出されることから、トナーの生産効率が飛躍的に向上する。また、本発明においては、ノズルプレートに液滴化の際の振動以外の変位を加えることにより、ノズル面が吐出方向に鉛直方向に、振動又は傾きをもって回転するため、噴射方向が液滴毎に異なり、前後の液滴間隔を確保することができる。
加えて、前述したように、液滴化手段11は、貯留部12に臨む複数のノズル15を有する薄膜16の変形可能領域16A内の周囲に円環状の電気機械変換手段17を配した構成としているので、大きな薄膜16の変位が得られ、この大きな変位量が得られる領域に複数のノズル15を配置することによって一度に多くの液滴31をノズル15の目詰まりを発生することなく安定して放出することができ、安定して効率的なトナー製造が可能になる。
更に、これまでにない粒度の単一分散性を有したトナーを得ることができるようになることが確認された。
【0062】
なお、この実施形態では、トナー組成液10として、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を溶剤に溶解又は分散した溶液、分散液を用いて、液滴を固化する手段として、液滴に含まれる有機溶媒を溶媒除去部(粒子化手段)において乾燥気体へ蒸発させ、乾燥による収縮固化を行ってトナーを形成しているが、これに限られるものではない。
【0063】
例えば、加熱した貯留部内にトナー組成物を溶融し液状化してトナー組成液とし、液滴として吐出、放出させた後、この液滴を冷却固化してトナーを形成する構成とすることもできる。
また、熱硬化性物質を含むトナー組成液を使用して、液滴として放出させた後、加熱し硬化反応させて固化してトナーを形成する構成とすることもできる。
【0064】
<トナー>
本発明のトナーは、上述したトナーの製造装置を用いたトナーの製造方法により製造されたトナーであり、これにより、粒度分布が単分散なものが得られる。
【0065】
前記トナーの重量平均粒径は、1μm〜20μmであることが好ましく、2μm〜6μmであることがより好ましい。
前記トナーの粒度分布(重量平均粒径/数平均粒径)は、1.00〜1.15であることが好ましく、1.00〜1.05であることがより好ましい。
ここで、前記トナーの重量平均粒径及び粒度分布(重量平均粒径/数平均粒径)は、例えばレーザ回折式粒度分布測定装置(SIMAZU−SALD−2200、島津製作所製)により測定することができる。
【0066】
本発明のトナーの製造方法によって製造されたトナーは、静電反発効果により、容易に気流に再分散、即ち浮遊させることができる。
このため、従来の電子写真方式で利用されるような搬送手段を用いなくても、現像領域まで用意にトナーを搬送することができる。
即ち、微弱な気流でも充分な搬送性があり、簡単なエアーポンプでトナーを現像域まで搬送し、そのまま現像することができる。
現像は、いわゆるパワークラウド現像となり、気流による像形成の乱れがないことから、極めて良好な静電潜像の現像が行える。
また、本発明のトナーは、従来の現像方式であっても問題なく応用することができる。
このとき、キャリアや現像スリーブ等の部材は、単にトナー搬送手段として使用することになり、従来、機能分担していた摩擦帯電機構を考慮する必要が全くない。
したがって、材料の自由度が大きく増すことから、耐久性を大きく向上させたり、安価な材料を使用したりすることもでき、コストの低減を図ることもできる。
【0067】
次に、本発明で使用できるトナー材料(トナー組成液)について説明する。
まず、前記トナー組成物を溶媒に分散、溶解させたトナー組成液について説明する。
【0068】
前記トナー材料としては、従来の電子写真用トナーと全く同じ物が使用できる。即ち、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂、等のトナーバインダーを各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散、かつ、離型剤を分散又は溶解し、これを前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナーを作製することが可能である。
また、前記トナー材料を熱溶融混練し得られた混練物を各種溶媒に一度溶解乃至分散した液を、前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的のトナーを得ることも可能である。
【0069】
〔トナー材料〕
前記トナー材料としては、少なくとも樹脂と着色剤とを含有し、更に必要に応じて、キャリア、ワックス等のその他の成分を含有する。
【0070】
〔樹脂〕
前記樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばスチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。
【0071】
前記スチレン系単量体としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はこれらの誘導体、などが挙げられる。
【0072】
前記アクリル系単量体としては、例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n‐ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n‐オクチル、アクリル酸n‐ドデシル、アクリル酸2‐エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2‐クロルエチル、アクリル酸フェニル、などが挙げられる。
【0073】
前記メタクリル系単量体としては、例えばメタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、などが挙げられる。
【0074】
前記ビニル重合体、又は共重合体を形成する他のモノマーとしては、以下の(1)〜(18)が挙げられる。
(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N‐ビニルピロール、N‐ビニルカルバゾール、N‐ビニルインドール、N‐ビニルピロリドン等のN‐ビニル化合物;(8)ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステル等の不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物等のα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物又はこれらのモノエステル等のカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレン等のヒドロキシ基を有するモノマー。
【0075】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂のビニル重合体、又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。
前記架橋剤としては、芳香族ジビニル化合物として、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、などが挙げられる。
アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えばエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えばジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
【0076】
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。
ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0077】
多官能の架橋剤としては、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、又はこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0078】
前記架橋剤の添加量は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部であることが好ましく、0.03質量部〜5質量部であることがより好ましい。
これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好適に挙げられる。
これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン‐アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0079】
本発明のビニル重合体又は共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2',4'−ジメチル−4'−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ‐オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレート、などが挙げられる。
【0080】
前記結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。
また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が50%〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
【0081】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0082】
ポリエステル系樹脂を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール、などが挙げられる。
前記ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上のアルコールを併用することが好ましい。
【0083】
前記3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、などが挙げられる。
【0084】
ポリエステル系樹脂を形成する酸成分としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などが挙げられる。
また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、などが挙げられる。
【0085】
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60%〜100%となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
【0086】
結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0087】
本発明において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0088】
本発明のトナーに使用できる結着樹脂としては、前記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれか中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。
ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。
ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0089】
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50mgKOH/gを有する樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
【0090】
本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求め、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300mlのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150mlを加え溶解する。
(3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をSmlとし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をBmlとし、以下の式で算出する。
ただし、fは、KOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35℃〜80℃であるのが好ましく、40℃〜75℃であるのがより好ましい。
前記ガラス転移温度(Tg)が35℃より低いと、高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。
また、ガラス転移温度(Tg)が80℃を超えると、定着性が低下することがある。
【0091】
本発明で使用できる磁性体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライ等の磁性酸化鉄、他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金、(3)又はこれらの混合物、などが用いられる。
【0092】
前記磁性体としては、例えばFe、γ‐Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe12O、NiFe、NdFeO、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、四三酸化鉄、γ‐三二酸化鉄の微粉末が好適に挙げられる。
【0093】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。
異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。
好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。
異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0094】
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。
また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
前記磁性体の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10質量部〜200質量部が好ましく、20質量部〜150質量部がより好ましい。
これらの磁性体の個数平均粒径としては、0.1μm〜2μmが好ましく、0.1μm〜0.5μmがより好ましい。
前記個数平均粒径は、例えば透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
【0095】
また、磁性体の磁気特性としては、10kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20エルステッド〜150エルステッド、飽和磁化50emu/g〜200emu/g、残留磁化2emu/g〜20emu/gのものが好ましい。
なお、前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0096】
〔着色剤〕
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン又はこれらの混合物、などが挙げられる。
【0097】
前記着色剤の含有量としては、前記トナーに対して1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。
【0098】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
前記マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性ポリエステル樹脂、未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0099】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合し、混練して得ることができる。
この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。
また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。
混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
【0100】
前記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましい。
【0101】
また、前記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下、アミン価が1〜100で、着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20mgKOH/g以下、アミン価が10〜50で、着色剤を分散させて使用することがより好ましい。
前記酸価が30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となることがある。
また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。
前記酸価は、例えばJIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0102】
また、分散剤は、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ株式会社製)、「Disperbyk‐2001」(ビックケミー社製)、「EFKA‐4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。
【0103】
前記分散剤は、トナー中に、着色剤に対して0.1質量%〜10質量%の割合で配合することが好ましい。前記配合量が、0.1質量%未満であると、顔料分散性が不十分となることがあり、10質量%を超えると、高湿下での帯電性が低下することがある。
【0104】
前記分散剤の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算質量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100,000が好ましく、顔料分散性の観点から、3,000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000が更に好ましく、5,000〜30,000が特に好ましい。
前記質量平均分子量が、500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、100,000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
【0105】
前記分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1質量部〜200質量部であることが好ましく、5質量部〜80質量部であることがより好ましい。前記添加量が、1質量部未満であると、分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると、帯電性が低下することがある。
【0106】
〔その他の成分〕
<キャリア>
本発明のトナーは、キャリアと混合して2成分現像剤として使用してもよい。
前記キャリアとしては、通常のフェライト、マグネタイト等のキャリアも樹脂コートキャリアも使用することができる。
【0107】
前記樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなる。
【0108】
被覆材に使用する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が好適に挙げられる。
この他にも、アイオモノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等のキャリアの被覆(コート)材として使用できる樹脂が挙げられる。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。
【0109】
樹脂コートキャリアにおいて、キャリアコアの表面を少なくとも樹脂被覆剤で被覆する方法としては、樹脂を溶剤中に溶解若しくは懸濁せしめて塗布したキャリアコアに付着せしめる方法、あるいは単に粉体状態で混合する方法が適用できる。
【0110】
前記樹脂コートキャリアに対する樹脂被覆材の割合としては、適宜決定すればよいが、樹脂コートキャリアに対し0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.1質量%〜1質量%がより好ましい。
【0111】
2種以上の混合物の被覆(コート)剤で磁性体を被覆する使用例としては、(1)酸化チタン微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコンオイル(質量比1:5)の混合物12質量部で処理したもの、(2)シリカ微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコンオイル(質量比1:5)の混合物20質量部で処理したものが挙げられる。
【0112】
前記樹脂中、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物、シリコーン樹脂が好適に使用され、特にシリコーン樹脂が好ましい。含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンとスチレン−メタクリ酸メチル共重合体との混合物、ポリテトラフルオロエチレンとスチレン−メタクリル酸メチル共重合体との混合物、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合(共重合体質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体(共重合質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2‐エチルヘキシル−メタクリル酸メチル共重合体(共重合体質量比20〜60:5〜30:10:50)との混合物などが挙げられる。
【0113】
前記シリコーン樹脂としては、含窒素シリコーン樹脂及び含窒素シランカップリング剤と、シリコーン樹脂とが反応することにより生成された、変性シリコーン樹脂が挙げられる。
キャリアコアの磁性材料としては、例えば、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄等の酸化物、鉄、コバルト、ニッケルのような金属、又はこれらの合金を用いることができる。
【0114】
また、これらの磁性材料に含まれる元素としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムなどが挙げられる。これらの中でも、銅、亜鉛、及び鉄成分を主成分とする銅‐亜鉛‐鉄系フェライト、マンガン、マグネシウム及び鉄成分を主成分とするマンガン−マグネシウム−鉄系フェライトが特に好ましい。
【0115】
前記キャリアの抵抗値としては、キャリアの表面の凹凸度合い、被覆する樹脂の量を調整して10Ω・cm〜1010Ω・cmとすることが好ましい。
前記キャリアの粒径は、4μm〜200μmが好ましく、10μm〜150μmがより好ましく、20μm〜100μmが更に好ましい。
特に、樹脂コートキャリアは、50%粒径が20μm〜70μmであることが好ましい。
【0116】
2成分系現像剤では、キャリア100質量部に対して、本発明のトナー1質量部〜200質量部で使用することが好ましく、キャリア100質量部に対して、トナー2質量部〜50質量部で使用するのがより好ましい。
【0117】
<ワックス>
本発明のトナーでは、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有させることもできる。
前記ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができ、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、脱酸カルナバワックス等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの、などが挙げられる。
【0118】
前記ワックスとしては、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸、プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール、ソルビトール等の多価アルコール、リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'‐ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N‐ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0119】
より好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒等の触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基等の官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸等のビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0120】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0121】
前記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るため、70℃〜140℃であることが好ましく、70℃〜120℃であることがより好ましい。
前記融点が、70℃未満であると、耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。
【0122】
可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば、融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のもの、などが挙げられる。
離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。
使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10℃〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ、などが挙げられる。
【0123】
2種のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。
この時、融点の差が10℃〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。前記融点の差が、10℃未満であると、機能分離効果が表れにくいことがあり、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくいことがある。
このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70℃〜120℃であることが好ましく、70℃〜100℃であることがより好ましい。
【0124】
前記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。
好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシートロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
【0125】
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70℃〜110℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70℃〜110℃の領域に最大ピークを有しているのがより好ましい。
【0126】
前記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2質量部〜20質量部が好ましく、0.5質量部〜10質量部がより好ましい。
【0127】
本発明では、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
【0128】
前記ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。
測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。
本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0129】
<流動性向上剤>
本発明に係るトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。
該流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
【0130】
前記流動性向上剤としては、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ,処理酸化チタン,処理アルミナ、などが挙げられる。
これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
【0131】
前記流動性向上剤の平均一次粒径は、0.001μm〜2μmであることが好ましく、0.002μm〜0.2μmであることがより好ましい。
【0132】
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
【0133】
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社製、商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社製、商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社製、商品名)−N20、−V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFine Si1ica(ダウコーニング社製、商品名):Franso1(Fransi1社製、商品名)、などが挙げられる。
【0134】
更には、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。
処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30%〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。
疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。
好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
【0135】
有機ケイ素化合物としては、例えばヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ‐メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α‐クロルエチルトリクロロシラン、β‐クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3‐ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3‐ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。
更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0136】
流動性向上剤の個数平均粒径としては、5nm〜100nmになるものが好ましく、5〜50nmになるものがより好ましい。
【0137】
BET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30m/g以上が好ましく、60m/g〜400m/gがより好ましい。
表面処理された微粉体としては、20m/g以上が好ましく、40〜300m/gがより好ましい。
【0138】
これらの微粉体の適用量としては、トナー100質量部に対して0.03質量部〜8質量部が好ましい。
【0139】
本発明に係るトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体・キャリアの保護、クリーニング性の向上、熱特性・電気特性・物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。
これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。
また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナーと逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0140】
現像剤を調製する際には、現像剤の流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。
外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。
外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中又は漸次外添剤を加えていけばよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。
【0141】
使用できる混合機としては、例えばV型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、などが挙げられる。
【0142】
得られたトナーの形状を更に調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結着樹脂、着色剤からなるトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤化して球形トナーを得る方法、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法、などが挙げられる。
【0143】
前記外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。
前記無機微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、などが挙げられる。
前記無機微粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmであることが好ましく、5nm〜500nmであることがより好ましい。
【0144】
前記BET法による比表面積は、20m/g〜500m/gであることが好ましい。
【0145】
前記無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01質量〜5質量%であることが好ましく、0.01質量%〜2.0質量%であることがより好ましい。
【0146】
この他、高分子系微粒子例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0147】
このような外添剤は、表面処理剤により、疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自身の劣化を防止することができる。
【0148】
前記表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが好適に挙げられる。
【0149】
前記無機微粒子の一次粒子径としては、5nm〜2μmであることが好ましく、5nm〜500nmであることがより好ましい。
また、BET法による比表面積としては、20m/g〜500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合としては、トナーの0.01質量%〜5質量%であることが好ましく、0.01質量%〜2.0質量%であることがより好ましい。
【0150】
静電潜像担持体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子、などを挙げることかできる。
前記ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01μm〜1μmのものが好ましい。
【0151】
本発明のトナーを用いた現像方法は、従来の電子写真法に使用する静電潜像担持体が全て使用できるが、例えば、有機静電潜像担持体、非晶質シリカ静電潜像担持体、セレン静電潜像担持体、酸化亜鉛静電潜像担持体、などが好適に使用可能である。
【0152】
次に、粒子化手段(粒子化工程)で冷却固化を行う場合に使用するトナー組成液について説明する。
加熱溶融して冷却固化して得るトナー組成物としては、以下のようにして低粘度の溶融液が得られる材料を主成分として用いることが好ましい。
【0153】
具体的には、モノアミド、ビスアミド、テトラアミド、ポリアミド、エステルアミド、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、アクリル酸系及びメタクリル酸系高分子、スチレン系高分子、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリケトン、シリコーン、クマロン、脂肪酸エステル、トリグリセライド、天然樹脂、天然ワックス、合成ワックス等から選択された1乃至多成分からなることが可能である。
【0154】
前記ポリアミド樹脂として、例えばバーサミド711、バーサミド725、バーサミド930、バーサミド940、バーサロン1117、バーサロン1138、バーサロン1300(以上、ヘンケル社製)、トーマイド391、トーマイド393、トーマイド394、トーマイド395、トーマイド397、トーマイド509、トーマイド535、トーマイド558、トーマイド560、トーマイド1310、トーマイド1396、トーマイド90、トーマイド92(以上、富士化成株式会社製)、ポリエステルとして、KTR2150(以上、花王株式会社製)、ポリ酢酸ビニルとして、AC401、AC540、AC580(以上、アライドケミカル社製)、シリコーンとして、シリコーンSH6018(東レシリコーン社製)、シリコーンKR215、シリコーンKR216、シリコーンKR220(以上、信越シリコーン社製)、クマロンとして、エスクロンG−90(新日鐵化学株式会社製)、などが挙げられる。
【0155】
脂肪酸類としては、例えばステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、及びメリシン酸から選ばれる酸又はそれらのエステル類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0156】
脂肪酸アミドとしては、例えばラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸エステルアミド、パルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド、ブラシジン酸アミドなどが挙げられる。N−置換脂肪酸アミドとしては、例えばN,N’−2−ヒドロキステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−キシレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸モノメチロールアミド、N‐オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N´−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、2−ステアラミドエチルステアレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0157】
N−置換脂肪酸アミドとしては、例えばN,N’−2−ヒドロキステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−キシレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸モノメチロールアミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0158】
脂肪酸エステルとしては、一価又は多価アルコール脂肪酸エステルが好ましい。例えば、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、などが挙げられる。
【0159】
具体的には、レオドールSP−S10、レオドールSP−S30、レオドールSA10、エマゾールP−10、エマゾールS−10、エマゾールS−20、エマゾールB、レオドールスーパSP−S10、エマノーン3199、エマノーン3299、エキセパールPE−MS(いずれも、花王株式会社製)などが挙げられる
【0160】
更に好ましいのは、グリセリンの脂肪酸エステルであり、例えば、ステアリン酸モノグリセライド、パルミチンモノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライドなどが挙げられる。
具体的には、レオドールMS‐50、レオドールMS‐60、レオドールMS‐165、レオドールMO‐60、エキセパールG‐MB(以上、花王株式会社製)、脱臭精製カルナバワックスNo.1、精製キャンデリラワックスNo.1(以上、野田ワックス社製)、シンクロワックスERL−C、シンクロワックスHR−C(以上、クローダ社製)、KF2(川研ファインケミカル社製)が使用できる。
また、特殊エステル系ワックスとして、例えばエキセパールDS−C2(花王株式会社製)、カワスリップ−L、カワスリップ−R(以上、川研ファインケミカル社製)等も選ばれる。
また、セロチン酸ミリシル、セロチン酸セリル、モンタン酸セリル、パルミチン酸ミリシル、ステアリン酸ミリシル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸セチル等の高級脂肪酸の高級アルコールエステル類などが挙げられる。
【0161】
ここで、アルキル基は、脂肪酸及びアルコールの両方に存在する。
これらの脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種、又は2種以上を混合して用いることができる。
この脂肪酸エステル類は溶融粘度が低く、インク溶融時の流動性が安定している他に、炭素−炭素の結合に比べて、可撓性が高く表面保護力が強いため、印刷画像の折り曲げにも耐える。
好ましい脂肪酸エステルは、針入度が1より大きく加圧処理し易いものである。更に、噴射時の粘度が20mPa・sより小さいものが適している。
【0162】
ポリアミド類は、一般に芳香族ポリアミドとダイマー酸ポリアミドに大別されるが、本発明では、特にダイマー(二量体)酸ベースのポリアミドが好ましい。
更に、このベースとなる酸がオレイン酸、リノール酸、リノレイン酸又はエレオステアリン酸であることが最適である。
具体的には、Macromelt 6030、Macromelt 6065、Macromelt 6071、Macromelt 6212、Macromelt 6217、Macromelt 6224、Macromelt 6228、Macromelt 238、Macromelt 6239、Macromelt 6240、Macromelt 6301、Macromelt 6900、DPX 335−10、DPX H−415、DPX 335−11、DPX 830、DPX 850、DPX 025、DPX 927、DPX 1160、DPX 1163、DPX 1175、DPX 1196、DPX 1358(以上、ヘンケル白水社製)、SYLVAMIDE−5(アリゾナケミカル社製)、UNIREZ 2224、UNIREZ 2970(以上、ユニオンキャンプ社製)、などが挙げられる。
【0163】
グリセライドとしては、例えばロジンエステル、ラノリンエステル、硬化ひまし油、部分水添ひまし油、大豆油の極度硬化油、ナタネ油の極度硬化油、植物性極度硬化油などから選ばれる少なくても1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0164】
ワックス系としては、例えばパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックスに代表される植物系ワックス、ポリエチレンワックス、硬化ひまし油、ステアリン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸、高級アルコール、ステアロン、ラウロン等のケトン、特に脂肪酸エステルアミド、飽和あるいは不飽和脂肪酸アミド、脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0165】
更に、前記脂肪酸、脂肪酸アミド、グリセライド、ワックス等の他のインク成分と適応性である限り、考えられるどの組み合わせにおいても使用できる。なお、着色剤等は前述したと同様である。
【0166】
前記成分の混合、分散には周知の各種の粉砕又は分散装置が、特に制限なく使用できる。これらには、高速回転ミル、ローラーミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル等の区分ないしは回転円筒式ミル、振動ボールミル、遠心式ボールミル、媒体撹拌式ミル及びコロイドミル等の区分があり、例えばカッターミル、ケージミル、ハンマーミル、遠心分級ミル、スタンプミル、フレットミル、遠心ミル、ボールベアリングミル、リングロールミル、テーブルミル、転動ボールミル、チューブミル、コニカルミル、トリコンミル、ポットミル、カスケードミル、遠心流動化ミル、アニュラーミル、ハイスピードデイスパーサ、インペラデイスパーザ、ゲートミキサ、ビーズミル、サンドミル、パールミル、コブラミル、ピンミル、モリネックスミル、撹拌ミル、ユニバーサルミル、センチュリーミル、プレッシャミル、アジテータミル、2本ロールエクストルーダ、2本ロールミル、3本ロールミル、ニッチェミル、ニーダ、ミキサ、ストーンミル、ケーデイミル、遊星ミル、ハイスイングミル、環状ミル、撹拌槽型撹拌ミル、竪型流通管撹拌ミル、ボールミル、パドルミキサ、タワーミル、アトライタ、セントリミル、サンドグラインダ、グレンミル、アトリションミル、プラネタリーミル、振動ミル、フロージェットミキサ、スラッシャーミル、ペグミル、マイクロフルダイザ、クレアミックス、ライノミル、ホモジナイザ、ピン付きビーズミル、横型ビーズミル、ピンミル、マジャックミルなどが挙げられる。
【0167】
前記粉砕又は分散装置で、トナー材料を混合、粉砕、分散したトナー組成液を、融解状態を維持したまま貯留部12に導入して液滴化手段11のノズル15から吐出して液滴を形成してもよいし、あるいは、前記粉砕又は分散装置で得られたトナー組成液をいったん冷却し固化し粗粉砕して取り置き、該粗粉砕物を貯留部12に導入加熱溶融した後、液滴化手段11のノズル15から吐出して液滴を形成してもよい。
【0168】
次に、放射線硬化性物質を含むトナー組成液を粒子化して、光照射し硬化反応させて、微粒子を形成させる場合のトナー組成液について説明する。
ここで、前記放射線硬化性物質としては、一般に感放射線性樹脂あるいは放射線硬化性樹脂として知られている還化ポリイソプレン、還化ポリブタジエン、ポリエーテルのポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリビニルアルコールの桂皮酸エステル、ノボラック樹脂、ポリメタクリル酸グリシジル、塩素化ポリメチルスチレン、などが挙げられる。
【0169】
これらの放射線硬化性物質は、溶媒又は重合性単量体によって希釈され、放射線架橋剤あるいは放射線重合開始剤が加えられる。
前記重合性単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ジビニルベンゼン等のビニル芳香族単量体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、エチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル等のアクリル系単量体;蟻酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系単量体;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、などが挙げられる。
【0170】
これらの重合性単量体は、単独でも、2種以上の組み合わせで用いてもよく、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、ジビニルベンゼンを0.05質量部〜3質量部含有することが、定着性を維持しつつオフセット現象を防止できるため好適である。
【0171】
前記放射線架橋剤又は放射線重合開始剤としては、例えば芳香族アジド、トリクロロメチルトリアジド等のアジド化合物、ハロゲン化銀、ビスイミダゾール誘導体、シアニン色素、ケトクマリン色素、などが挙げられる。
また、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾ系ラジカル重合開始剤を用いることもできる。
【0172】
また、放射線硬化性物質を含むトナー組成液の液滴31を浮遊中に硬化させるための光の波長は、紫外〜480nmが好ましく、250nm〜410nmがより好ましく、光源として高圧あるいは低圧水銀灯を用いることができる。
前記硬化に要するエネルギーは、数mJ/cm〜数J/cmが好ましい。
【実施例】
【0173】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、この実施例は、本発明の「粒子の製造装置」を「トナーの製造装置」として使用する例であり、該「トナーの製造装置」を用いて行ったトナーの製造が、本発明の「トナーの製造方法」に該当する。
【0174】
(実施例1)
−着色剤分散液の調製−
まず、着色剤としての、カーボンブラックの分散液を調製した。
カーボンブラック(Regal400、Cabot社製)17質量部、顔料分散剤(アジスパーPB821、味の素ファインテクノ株式会社製)3質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。
得られた一次分散液を、ダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、粒径5μm以上の凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。
【0175】
−ワックス分散液の調製−
カルナバワックス18質量部、ワックス分散剤2質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。
この一次分散液を攪拌しながら80℃まで昇温し、カルナバワックスを溶解した後、室温まで液温を下げ、最大径が3μm以下となるようワックス粒子を析出させた。
前記ワックス分散剤としては、ポリエチレンワックスにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体をグラフト化したものを使用した。
得られた分散液を、更にダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、最大径が2μm以下になるように調整した。
【0176】
−トナー組成液の調製−
次に、下記組成からなるトナー組成液を調製した。
〔トナー組成液の組成〕
結着樹脂としてのポリエステル樹脂100質量部、前記着色剤分散液30質量部、前記ワックス分散液30質量部、及び酢酸エチル840質量部を、攪拌羽を有するミキサーを使用して10分間攪拌を行い、均一に分散させた。
なお、溶媒希釈によるショックにより顔料及びワックス粒子が凝集することはなかった。
【0177】
−トナーの作製−
得られたトナー組成液を、図1のトナーの製造装置に図11のホーン型振動子を用いた液滴噴射ユニット102に供給した。
直径8.0μmのノズル115を複数有した薄膜116を電鋳法による加工で作製した。
各ノズル115間の距離が100μmとなるように千鳥格子状に、薄膜116の長さ120mm、幅5mmの矩形状(長方形状)の範囲にノズル115を形成した。
この実施例では、図20に示すように、超音波洗浄用バルク振動子211(共振周波数28kHz)をノズルプレート210の側面に4つ取り付け、振動周波数は28kHz、振幅は約10μmとした。
【0178】
気流形成手段50では、図16で説明した構成とし、気体として窒素を用い、気流分布形成手段としての気流路形成部材53への気流導入口57における圧力を5kPaとし、気流55の導入角θは135度、絞り部54の開口幅Dは10mmとした。
【0179】
トナー組成液を調製後、以下のようなトナー作製条件で、液滴を吐出させた後、該液滴を乾燥固化することにより、トナーを作製した。
〔トナー作製条件〕
・分散液比重:ρ=1.154g/cm
・乾燥空気流量:装置内乾燥窒素30.0L/分
・乾燥入口温度:60℃
・乾燥出口温度:45℃
・露点温度:−20℃
・振動信号波形:100kHz
なお、振動信号波形とは、振動発生手段121に与える駆動信号の波形である。
【0180】
乾燥固化したトナーは、1μmの細孔を有するフィルタで吸引捕集して、トナーが得られた。なお、2時間の連続運転後も、薄膜116へのトナー組成液の付着が認められなかった。
【0181】
次に、吐出された液滴をレーザによる液滴観測システム(LaVision、LaVisionGMBH製)にて測定した結果を図29に示す。観測位置はノズルプレートから約2mmの位置で百回の画像をサンプリングしている。図29の結果から、単一分散性の粒度分布を示すことが分かった。
【0182】
(実施例2)
実施例1において、図21に示すように、ノズルプレート210の側面に、2つの超音波洗浄用バルク振動子211(共振周波数28kHz)と、2つの弾性体(バルク型シリコーンゴム5mm角、厚み(t)=2mm)212を取り付けた以外は、実施例1と同様にして、トナーを作製した。
【0183】
(実施例3)
実施例1において、図24に示すように、ノズルプレート210の上面に、1つの超音波洗浄用バルク振動子211(共振周波数28kHz)と、1つの弾性体(バルク型シリコーンゴム5mm角、厚み(t)=2mm)212を取り付けた以外は、実施例1と同様にして、トナーを作製した。
【0184】
(実施例4)
実施例1において、図25に示すように、ノズルプレート210の上面に、2つの超音波洗浄用バルク振動子211(共振周波数28kHz)を取り付けた以外は、実施例1と同様にして、トナーを作製した。
【0185】
(実施例5)
実施例1において、図26に示すように、ノズルプレート210の上面に、4つの超音波洗浄用バルク振動子211(共振周波数28kHz)を取り付けた以外は、実施例1と同様にして、トナーを作製した。
【0186】
(実施例6)
実施例1において、図27に示すように、ノズルプレート210の上面に、2つの超音波洗浄用バルク振動子211(共振周波数28kHz)と、2つの弾性体(バルク型シリコーンゴム5mm角、厚み(t)=2mm)212を取り付けた以外は、実施例1と同様にして、トナーを作製した。
【0187】
(比較例1)
実施例1において、ノズルプレート210に超音波洗浄用バルク振動子211を取り付けない以外は、実施例1と同様にして、トナーを作製した。
次に、吐出された液滴をレーザによる液滴観測システム(LaVision、LaVisionGMBH製)にて測定した結果を図30に示す。この図30の結果から、明らかに合一したと見られる粒子を含んでいることが分かった。
【0188】
次に、作製した実施例1〜6及び比較例1のトナーについて、以下のようにして、トナーの重量平均粒径(D4)、及び粒度分布(D4/Dn)を評価した。結果を表1に示す。
【0189】
<トナーの重量平均粒径(D4)及び粒度分布(D4/Dn)>
トナーの重量平均粒径(D4)及び粒度分布(D4/Dn)は、東亜医用電子社株式会社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定した。
測定は、フィルタを通して微細なごみを取り除き、その結果、10−3cmの水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60μm以上159.21μm未満)の粒子数が20個以下の水10ml中にノニオン系界面活性剤(和光純薬工業株式会社製、コンタミノンN)を数滴加え、更に、測定試料を5mg加え、超音波分散器STM社製UH−50で20kHz,50W/10cmの条件で1分間分散処理を行い、さらに、合計5分間の分散処理を行い測定試料の粒子濃度が4000〜8000個/10−3cm(測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の粒度分布を測定する。
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出した。
約1分間で、1200個以上の粒子の円相当径を測定することができ、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定できる。結果(頻度%及び累積%)は、0.06μm〜400μmの範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができる。実際の測定では、円相当径が0.60μm以上159.21μm未満の範囲で粒子の測定を行う
【0190】
【表1】

表1の結果から、本発明のトナーの製造方法、及びそれにより製造されたトナーは、トナーを効率よく生産することができる。更にこれまでにない粒度の単一分散性を有した粒子であることにより、流動性や帯電性といったトナーに求められる多くの特性値において、これまでの製造方法にみられた粒子による変動の幅が全くないか、非常に少ない、電子写真、静電記録、静電印刷等に於ける静電荷像を現像するための現像剤に使用可能である。
具体的には、これまでの粉砕型トナーやケミカルトナーにおける製造方法にみられた粒子のバラツキによる変動幅が全くないか、あっても殆ど無視できる程度に極端に変動が少ないものであるといった大きな特徴を有する。
これらの特徴の実現は、本発明でしか得ることができない特性といえるが、この特性の実現によりはじめて、感光体に形成された潜像に殆ど忠実な画像を形成することが可能となった。
また同様の特徴から長期間に亘ってその効果が持続することを可能とした。即ち、粒度分布の均一性、形状の均一性、表面状態の均一性の達成により、電子写真プロセス上設定されたトナー帯電量に達するために必要な機械的ストレスが非常に少なく、かつ無駄がなくなり、トナー寿命が飛躍的に伸びたことによるものと推察される。このことにより、画質に優れた画像を長期間にわたり形成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明の粒子の製造方法及び粒子の製造装置は、今までにない単一分散性を有する粒子を効率よく長期間に亘って安定的に製造することができ、特にトナーの製造に好適である。
【符号の説明】
【0192】
1 トナーの製造装置
2 液滴噴射ユニット
3 粒子形成部(溶媒除去部)
4 トナー捕集部
5 チューブ
6 トナー捕集部
7 原料収容部
8 配管
10 トナー組成液
11 滴吐出手段
12 貯留部
13 流路部材
15 ノズル
16 薄膜
16A 変形可能領域
17 電気機械変換手段(振動発生手段)
31 液滴
35 乾燥気体
42 気流(渦流)
43 除電手段
50 気流形成手段
51 気体加圧手段
53 気流分布形成手段(気流路形成手段)
54 絞り部
55 気流
56 気流路
T トナー粒子
102 液滴噴射ユニット
111 振動手段
112 貯留部
115 ノズル
116 薄膜
121 振動発生手段
122 振動増幅手段
201 噴射ヘッド
202 振動子
203 個別液室
204 ノズル
210 ノズルプレート
211 振動子
212 弾性体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0193】
【特許文献1】特開平7−152202号公報
【特許文献2】特公昭57−201248号公報
【特許文献3】特許第3786034号公報
【特許文献4】特許第3786035号公報
【特許文献5】特開2006−293320号公報
【特許文献6】特開2006−297325号公報
【特許文献7】特開2008‐286947号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂を含有する粒子組成液が供給される液室及びノズルプレートのいずれかに振動を与え、複数のノズルから周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、
前記放出された粒子組成液の液滴を固化させる粒子化工程と、を少なくとも含む粒子の製造方法において、
前記周期的液滴化工程において、少なくとも前記ノズルプレートに液滴化の際の振動以外の変位を加えることを特徴とする粒子の製造方法。
【請求項2】
液滴噴射方向に対し、鉛直方向にある噴射面に水平な変位を加える請求項1に記載の粒子の製造方法。
【請求項3】
液滴噴射方向に対し、鉛直方向にある噴射面に水平方向に傾きをもって変位を加える請求項1に記載の粒子の製造方法。
【請求項4】
液滴噴射方向に対し、鉛直方向にある噴射面に水平方向に傾きをもって回転運動を加える請求項1に記載の粒子の製造方法。
【請求項5】
液滴噴射方向下流側に配されたノズル形成領域に対応する絞り部を通じて液滴噴射方向に流れる気流を形成する請求項1から4のいずれかに記載の粒子の製造方法。
【請求項6】
少なくとも樹脂を含有する粒子組成液が供給される液室及びノズルプレートのいずれかに振動を与え、複数のノズルから周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化手段と、
前記放出された粒子組成液の液滴を固化させる粒子化手段と、を少なくとも有する粒子の製造装置において、
前記周期的液滴化手段が、少なくとも前記ノズルプレートに液滴化の際の振動以外の変位を更に付与する変位付与部を有することを特徴とする粒子の製造装置。
【請求項7】
変位付与部が振動子である請求項6に記載の粒子の製造装置。
【請求項8】
液滴噴射方向下流側に配されたノズル形成領域に対応する絞り部を有する請求項6から7のいずれかに記載の粒子の製造装置。
【請求項9】
請求項1から5のいずれかに記載の粒子の製造方法を用いたトナーの製造方法であって、
粒子組成液が少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のトナーの製造方法により製造されたことを特徴とするトナー。
【請求項11】
トナーの重量平均粒径が1μm〜20μmであり、トナーの粒度分布(重量平均粒径/数平均粒径)が1.00〜1.15である請求項10に記載のトナー。

【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−126073(P2011−126073A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285026(P2009−285026)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】