説明

粒子配列方法、及び、発光素子の製造方法

【課題】粒子を規則的かつ単層に配列させ得る粒子配列方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る粒子配列方法は、所定の溶液中で表面が第一の極性に帯電する材料に金属粒子を分散させた薄膜を基板の表面に形成する過程と、上記第一の極性と反対の第二の極性に帯電させた粒子を上記溶液中に分散させる過程と、上記薄膜を上記溶液中に浸漬する過程と、上記金属粒子とプラズモン共鳴する波長の光を上記薄膜に照射する過程と、を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子配列方法に関する。また、本発明は、その粒子配列方法を利用した発光素子の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
直径約100nmから数μm程度の粒子を基板表面に配列する技術として、沈降(例えば、非特許文献1参照)、電界(例えば、非特許文献2参照)、キャピラリフォース(例えば、非特許文献3参照)、メニスカスフォース(例えば、非特許文献4参照)、剪断応力(例えば、非特許文献5参照)等を利用した方法がある。
【0003】
しかし、上記方法のいずれも、粒子の配列に不規則な部分があったり、又は、粒子が完全な単層に配列されていなかったりして、理想的な粒子配列方法ではない。
【非特許文献1】K.Fukuda et.al.“Self−Organaizing Three−Dimentinal Colloidal Photonic Crystal Structure with Augmented Dielectric Contrast”:Japanese Journal of Applied Physics第37巻(Vol.37)第508頁乃至第511頁、1998年
【非特許文献2】M.Holgano et.al.“Electrophoretic Deposition To Control Artificial Opal”:Langmuir第15巻(Vol.15)第4701頁乃至第4704頁、1999年
【非特許文献3】Antony S.Dimitrov et.al.“Continuous Convective Assembling of Fine Particles into Two−Dimentinal Arrays on Solid Surfaces”:Langmuir第12巻(Vol.12)第1303頁乃至第1311頁、1996年
【非特許文献4】J.D.Joannopoulos“Self−assembly lights up”:Nature第414巻(Vol.414)第257頁乃至第258頁、2001年
【非特許文献5】P.Jiang et.al.“Large−Scale Fabrication ofWafer−Size Colloidal Crystals, Macroporous Polymers and Nanocomposites by Spin−Coating”:Journal of the American Chemical Society第126巻(Vol.126)第13778頁乃至第13786頁、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、粒子を規則的かつ単層に配列させ得る粒子配列方法、及び、その粒子配列方法を利用した発光素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る粒子配列方法によれば、所定の溶液中で表面が第一の極性に帯電する材料に金属粒子を分散させた薄膜を基板の表面に形成する過程と、上記第一の極性と反対の第二の極性に帯電させた粒子を上記溶液中に分散させる過程と、上記薄膜を上記溶液中に浸漬する過程と、上記金属粒子とプラズモン共鳴する波長の光を上記薄膜に照射する過程と、を含む粒子配列方法が提供される。
【0006】
本発明の一態様に係る発光素子の製造方法によれば、所定の溶液中で表面が第一の極性に帯電する材料に金属粒子を分散させた薄膜を基板の表面に形成する過程と、上記第一の極性と反対の第二の極性に帯電させた粒子を上記溶液中に分散させる過程と、上記薄膜を上記溶液中に浸漬する過程と、上記金属粒子とプラズモン共鳴する波長の光を上記薄膜に照射する過程と、上記薄膜及び上記基板を乾燥させる過程と、上記薄膜上に形成された上記粒子の単層上に、透明陽極電極、有機発光層及び透明陰極電極を形成する過程と、を含む発光素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る粒子配列方法は、上記構成により、粒子を規則的かつ単層に配列させることができる。
【0008】
本発明の一態様に係る発光素子の製造方法は、上記構成により、高輝度の発光素子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る粒子配列方法の実施の各形態においては、所定の溶液中で表面が負(又は正)に帯電する薄膜であって、直径数nmの金、銀等の金属ナノ粒子(金属微粒子)を膜中に分散させた薄膜を透明基板の表面に形成する。
【0010】
一方、単層かつ規則的に配列させようとする粒子は、直径100nm乃至数μmの粒子を上記所定の溶液中に正(又は負)に帯電させて分散させる。
【0011】
粒子を溶液中に単に分散させただけでは粒子の帯電は弱く、粒子を沈降させない限り、透明基板上の薄膜の表面に粒子は付着しない。
【0012】
しかし、透明基板裏面側又は表面側から薄膜に特定の波長の光を照射すると、光と金属微粒子の表面プラズモンとの間に共鳴現象が発生し、光の照射パターンに応じて薄膜表面近傍での電場が大きく増幅される。
【0013】
照射する光は、粒子を配列させようとする配列パターンに対応した照射パターンを有するパターン光とするとよい。そのようなパターン光としては、例えば、レーザの干渉パターン光を用いることが考えられる。
【0014】
干渉光と表面プラズモンとの共鳴現象が発生すると、薄膜表面近傍の電場は10倍以上に増幅されるため、干渉光の干渉パターンの明部と重なる薄膜表面に粒子が付着していく。干渉光の干渉パターンに応じて粒子が付着するため、粒子は規則的に配列していく。
【0015】
また、増幅される電場は、薄膜表面から数nm程度、最大でも干渉光の波長程度の長さの範囲内に限られるので、粒子は単層しか付着しない。
【0016】
従って、本発明に係る粒子配列方法の実施の各形態の構成により、透明基板上に粒子を規則的かつ単層に配列させることが可能となる。
【0017】
先ず、本発明に係る粒子配列方法の実施の各形態において利用される原理、即ち、透明基板上の薄膜表面近傍における電場増幅により粒子の規則的な単層配列を可能とする、金属微粒子の表面プラズモンと光との共鳴現象について説明する。
【0018】
ここでは、金属微粒子の表面プラズモンと光との共鳴現象の理解を容易にするため、最初に、平面金属表面への光の入射の場合について説明する。
【0019】
表面プラズモンとは、金属微粒子の表面近傍において金属中の自由電子が集団的に振動する現象をいい、通常の平面金属表面への光の入射では、表面プラズモンと光とが共鳴することはない。
【0020】
光と表面プラズモンとを共鳴させる方法、即ち、表面プラズモンを光により励起する方法として、プリズムを用いた全反射減衰法(Attenuated Total Reflection:ATR)がよく用いられる。
【0021】
全反射減衰法においては、プリズム底面に数10nmの金又は銀の薄膜を付着させ、入射角度を変化させながらレーザ光をプリズムに入射させる。そして、その反射光の反射強度をモニタリングすると、全反射角以上のある角度で反射光の反射強度が落ち込む。その角度でレーザ光が入射しているときに、光と表面プラズモンとの共鳴現象、即ち、表面プラズモン共鳴が発生している。その共鳴の角度は、以下の方程式(1)から求められる。
×(2π/λ)×sinθ
=(2π/λ)×(ε×ε/(ε+ε))1/2 (1)
【0022】
ここで、nはガラスの屈折率、θは入射角、εはガラスの誘電率、εは金属の誘電率、λは入射光の波長である。
【0023】
上記方程式(1)から求められる角度において表面プラズモン共鳴が発生し、入射光のエネルギが表面プラズモンに移動する。そのときの電場分布は、金属表面において増幅され、表面から遠ざかるにつれて指数関数的に減衰するため、金属表面から入射光の波長程度の長さの範囲内において増幅される。金属表面での増幅度は、銀の場合、共鳴が存在しないときの100倍にも達する。よって、光との表面プラズモン共鳴により金属表面近傍において大幅な電場増幅が可能となる。
【0024】
次に、金属微粒子の場合の表面プラズモン共鳴について説明する。
【0025】
金属微粒子の表面近傍には、表面プラズモンが局在している。表面プラズモンの局在には固有モードがあり、ウィスパリングギャラリーモードと称されている。金属球の固有モードは、モードナンバーによって区別されており、球内部、外部に存在し、球外部の表面近傍では、電場の絶対値が半径方向に減衰されることが知られている。
【0026】
即ち、表面プラズモンは球表面に局在しており、金属微粒子の表面近傍では電場が大幅に増幅される。そして、ある特定の共鳴する波長の光を入射させると、光と表面プラズモンとの共鳴が発生する。
【0027】
ここで、平面金属の場合と異なるのは、平面金属の場合のようにプリズム等を用いて通常では入射不可能な全反射角以上の特定の角度の光を入射させることが不要であるという点である。
【0028】
即ち、金属微粒子の場合は、ある特定の共鳴波長の光を角度に拘わらず入射させると、金属微粒子の表面近傍での電場が大幅に増幅させることができる。従って、金属微粒子を用いることにより、電場増幅が容易に可能となる。
【0029】
尚、光と表面プラズモンとの共鳴が発生する金属微粒子としては、銀、金等の金属微粒子が適当であり、大きさは直径10nm以下、例えば数nm程度が適当と考えられる。
【0030】
そこで、本発明に係る粒子配列方法の実施の各形態においては、金属微粒子の表面プラズモンと光との共鳴現象を利用して粒子を配列させる。
【0031】
図1(a)乃至図1(e)は、本発明に係る粒子配列方法の実施の各形態の概略及び原理を模式的に示す説明図である。
【0032】
本発明に係る粒子配列方法の実施の各形態においては、所定の溶液30中で表面が負(又は正)に帯電する材料に、直径数nmの金、銀等の金属ナノ粒子(金属微粒子)を分散させた薄膜20を透明基板10の表面に形成する。
【0033】
帯電する薄膜20の材料としては、例えば、溶液30の溶媒に溶けない高分子であって、末端の修飾基がイオン性のものを用いるとよい。例えば、カルボン酸であれば溶液30中で負に帯電し、アミノ基であれば溶液30中で正に帯電する。従って、溶液30中に分散させ、配列させようとする粒子40の帯電とは反対の極性の末端基を有する高分子を薄膜20の材料として選択するとよい。
【0034】
また、配列させようとする粒子40を溶液30中に正(又は負)に帯電させて分散させる。尚、薄膜20を透明基板10の表面に形成する過程と、粒子40を溶液30中に分散させる過程とは、時系列上の前後関係を問わない。
【0035】
そして、図1(a)に示すように、少なくとも薄膜20を溶液30中に浸漬した透明基板10の裏面側又は表面側から薄膜20に特定の波長の干渉光50を照射する。
【0036】
本発明に係る粒子配列方法の実施の各形態においては、金属微粒子の表面プラズモンと共鳴する光として、例えば、図1(b)に示すように、平行な複数のラインからなるライン状のレーザ光の干渉パターンを照射する。干渉パターンのピッチは、配列させようとする粒子40の大きさと同程度とする。
【0037】
上記干渉パターンを有する干渉光50を薄膜20に照射すると、干渉光50と薄膜20中の金属微粒子の表面プラズモンとの間に共鳴現象が発生し、干渉光50の干渉パターンに応じて薄膜20の表面近傍での電場が、図1(c)に示すように、大きく増幅される。即ち、レーザ光50の干渉パターンの明部に対応して、薄膜20の表面の電場が増幅される。
【0038】
すると、図1(d)、図1(e)に示すように、干渉光50の干渉パターンの明部と重なる薄膜20の表面に粒子40が付着していく。従って、粒子40の配列は、規則的なものとなる。
【0039】
尚、干渉パターンのピッチが粒子40のサイズとほぼ同一であれば、図1(e)に示すように、粒子40を三角格子状に配列することが可能となり、干渉パターンのピッチが粒子40のサイズよりわずかに大きい場合には、図1(d)に示すように、粒子40を四角格子状に配列することが可能となる。
【0040】
また、増幅される電場は、図1(c)の縦軸に示されるように、薄膜20の表面から数nm程度、最大でも干渉光50の波長程度の長さの範囲内に限られるので、粒子40は単層しか付着しない。
【0041】
結果として、本発明に係る粒子配列方法の実施の各形態によれば、粒子40を透明基板10上に規則的かつ単層に配列させることが可能となる。
【0042】
以下、本発明に係る粒子配列方法のより具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0043】
図2(a)乃至図2(d)は、本発明の第1の実施の形態に係る粒子配列方法の概略を模式的に示す説明図である。
【0044】
図2(a)に示すように、本発明の第1の実施の形態においては、直径500nmのシリカ粒子41を、pH4の分散溶液31としての水に1wt%分散させた。分散溶液31中において、シリカ粒子41は、正に弱く帯電している。
【0045】
また、透明基板としてのガラス基板11の表面に、直径5nmの銀微粒子を含む厚さ100nmのイオン性ポリマー薄膜21を形成した。
【0046】
そして、図2(b)に示すように、イオン性ポリマー薄膜21を形成したガラス基板11の薄膜形成面のみを分散溶液31に浸漬し、裏面は分散溶液31に浸漬しないようにした。このとき、イオン性ポリマー薄膜21の表面は、負に帯電している。
【0047】
ガラス基板11の薄膜形成面のみを分散溶液31に浸漬した後、図2(c)に示すように、ガラス基板11の裏面から波長500nmのレーザ干渉光51を10分間照射した。すると、分散溶液31中のシリカ粒子41がレーザ干渉光51の干渉パターンに応じて薄膜21の表面に付着した。
【0048】
その後、ガラス基板11を分散溶液31から引き上げて乾燥させると、図2(d)に示すように、レーザ干渉光51を照射した部分に、シリカ粒子41が単層かつ三角格子状に配列していることが確認された。
【0049】
図3(a)乃至図3(d)は、本発明の第2の実施の形態に係る粒子配列方法の概略を模式的に示す説明図である。
【0050】
図3(a)に示すように、本発明の第2の実施の形態においては、直径480nmのシリカ粒子42を、pH4の分散溶液32としての水に1wt%分散させた。分散溶液32中において、シリカ粒子42は、正に弱く帯電している。
【0051】
また、透明基板としてのガラス基板12の表面に、直径5nmの銀微粒子を含む厚さ100nmのイオン性ポリマー薄膜22を形成した。
【0052】
そして、図3(b)に示すように、イオン性ポリマー薄膜22を形成したガラス基板12の薄膜形成面のみを分散溶液32に浸漬し、裏面は分散溶液32に浸漬しないようにした。このとき、イオン性ポリマー薄膜22の表面は、負に帯電している。
【0053】
ガラス基板12の薄膜形成面のみを分散溶液32に浸漬した後、図3(c)に示すように、ガラス基板12の裏面から波長500nmのレーザ干渉光52を10分間照射した。すると、分散溶液32中のシリカ粒子42がレーザ干渉光52の干渉パターンに応じて薄膜22の表面に付着した。
【0054】
その後、ガラス基板12を分散溶液32から引き上げて乾燥させると、図3(d)に示すように、レーザ干渉光52を照射した部分に、シリカ粒子42が単層かつ四角格子状に配列していることが確認された。
【0055】
本発明の第2の実施の形態においては、シリカ粒子42の直径をレーザ干渉光52の波長よりもわずかに小さくしたため、単層のシリカ粒子42は、四角格子状に配列する結果となった。
【0056】
図4(a)乃至図4(d)は、本発明の第3の実施の形態に係る粒子配列方法の概略を模式的に示す説明図である。
【0057】
図4(a)に示すように、本発明の第3の実施の形態においては、直径500nmのシリカ粒子43を、pH10の分散溶液33としての水に1wt%分散させた。分散溶液33中において、シリカ粒子43は、負に弱く帯電している。
【0058】
また、透明基板としてのガラス基板13の表面に、直径5nmの銀微粒子を含む厚さ100nmのイオン性ポリマー薄膜23を形成した。
【0059】
そして、図4(b)に示すように、イオン性ポリマー薄膜23を形成したガラス基板13の薄膜形成面のみを分散溶液33に浸漬し、裏面は分散溶液33に浸漬しないようにした。このとき、イオン性ポリマー薄膜23の表面は、負に帯電している。
【0060】
ガラス基板13の薄膜形成面のみを分散溶液33に浸漬した後、図4(c)に示すように、ガラス基板13の裏面から波長500nmのレーザ干渉光53を10分間照射した。すると、分散溶液33中のシリカ粒子43がレーザ干渉光53の干渉パターンに応じて薄膜23の表面に付着した。
【0061】
その後、ガラス基板13を分散溶液33から引き上げて乾燥させると、図4(d)に示すように、レーザ干渉光53を照射した部分に、シリカ粒子43が単層かつ三角格子状に配列していることが確認された。
【0062】
本発明の第3の実施の形態においては、シリカ粒子43及びイオン性ポリマー薄膜23の帯電の極性が第1の実施の形態とは逆になっているが、シリカ粒子43を第1の実施の形態と同様に単層かつ三角格子状に配列させることができた。
【0063】
図5(a)乃至図5(d)は、本発明の第4の実施の形態に係る粒子配列方法の概略を模式的に示す説明図である。
【0064】
図5(a)に示すように、本発明の第4の実施の形態においては、直径500nmのシリカ粒子44を、pH4の分散溶液34としての水に1wt%分散させた。分散溶液34中において、シリカ粒子44は、正に弱く帯電している。
【0065】
また、透明基板としてのガラス基板14の表面に、直径5nmの金微粒子を含む厚さ100nmのイオン性ポリマー薄膜24を形成した。
【0066】
そして、図5(b)に示すように、イオン性ポリマー薄膜24を形成したガラス基板14の薄膜形成面のみを分散溶液34に浸漬し、裏面は分散溶液34に浸漬しないようにした。このとき、イオン性ポリマー薄膜24の表面は、負に帯電している。
【0067】
ガラス基板14の薄膜形成面のみを分散溶液34に浸漬した後、図5(c)に示すように、ガラス基板14の裏面から波長500nmのレーザ干渉光54を20分間照射した。すると、分散溶液34中のシリカ粒子44がレーザ干渉光54の干渉パターンに応じて薄膜24の表面に付着した。
【0068】
その後、ガラス基板14を分散溶液34から引き上げて乾燥させると、図5(d)に示すように、レーザ干渉光54を照射した部分に、シリカ粒子44が単層かつ三角格子状に配列していることが確認された。
【0069】
本発明の第4の実施の形態においては、イオン性ポリマー薄膜24に含有される金属微粒子を銀微粒子ではなく金微粒子とした。
【0070】
金微粒子は、銀微粒子と比較すると電場増幅度は小さいが、レーザ干渉光54の照射時間を10分間から20分間に延長したので、シリカ粒子44を第1の実施の形態と同様に単層かつ三角格子状に配列させることができた。
【0071】
図6(a)乃至図6(d)は、本発明の第5の実施の形態に係る粒子配列方法の概略を模式的に示す説明図である。
【0072】
図6(a)に示すように、本発明の第5の実施の形態においては、直径500nmのシリカ粒子45を、pH4の分散溶液35としての水に1wt%分散させた。分散溶液35中において、シリカ粒子45は、正に弱く帯電している。
【0073】
また、透明基板としてのガラス基板15の表面に、直径5nmの銀微粒子を含む厚さ100nmのイオン性ポリマー薄膜25を形成した。
【0074】
そして、図6(b)に示すように、イオン性ポリマー薄膜25を形成した表面(front side)が底面となるようにしてガラス基板15の全部を分散溶液35の適当な深さに浸漬した。このとき、イオン性ポリマー薄膜25の表面は、負に帯電している。
【0075】
ガラス基板15の全部を分散溶液35に浸漬した後、図6(c)に示すように、ガラス基板15の上の分散溶液35を介してガラス基板15の裏面から波長500nmのレーザ干渉光55を15分間照射した。すると、分散溶液35中のシリカ粒子45がレーザ干渉光55の干渉パターンに応じて薄膜25の表面に付着した。
【0076】
その後、ガラス基板15を分散溶液35から引き上げて乾燥させると、図6(d)に示すように、レーザ干渉光55を照射した部分に、シリカ粒子45が単層かつ三角格子状に配列していることが確認された。
【0077】
図7(a)乃至図7(d)は、本発明の第6の実施の形態に係る粒子配列方法の概略を模式的に示す説明図である。
【0078】
図7(a)に示すように、本発明の第6の実施の形態においては、直径480nmのシリカ粒子46を、pH4の分散溶液36としての水に1wt%分散させた。分散溶液36中において、シリカ粒子46は、正に弱く帯電している。
【0079】
また、透明基板としてのガラス基板16の表面に、直径5nmの銀微粒子を含む厚さ100nmのイオン性ポリマー薄膜26を形成した。
【0080】
そして、図7(b)に示すように、イオン性ポリマー薄膜26を形成した表面(front side)が底面となるようにしてガラス基板16の全部を分散溶液36の適当な深さに浸漬した。このとき、イオン性ポリマー薄膜26の表面は、負に帯電している。
【0081】
ガラス基板16の全部を分散溶液36に浸漬した後、図7(c)に示すように、ガラス基板16の下の分散溶液36を介してガラス基板16の表面(front side)から波長500nmのレーザ干渉光56を15分間照射した。すると、分散溶液36中のシリカ粒子46がレーザ干渉光56の干渉パターンに応じて薄膜26の表面に付着した。
【0082】
その後、ガラス基板16を分散溶液36から引き上げて乾燥させると、図7(d)に示すように、レーザ干渉光56を照射した部分に、シリカ粒子46が単層かつ四角格子状に配列していることが確認された。
【0083】
本発明の第6の実施の形態においては、イオン性ポリマー薄膜26を形成したガラス基板16の表面(front side)側からレーザ干渉光56を照射しても、シリカ粒子46を単層かつ規則的に配列させることが可能であることが確認された。
【0084】
また、分散溶液36を介してレーザ干渉光56を照射しているので、分散溶液36の屈折率の分だけレーザ干渉光56の波長が実効的に短くなる。
【0085】
従って、本発明の第6の実施の形態においては、第1の実施の形態よりも小さい直径480nmのシリカ粒子46を、単層かつ四角格子状に配列させることができた。
【0086】
尚、本発明の第6の実施の形態においては、ガラス基板16の表面(front side)側からレーザ干渉光56を照射しているので、基板16は不透明基板であってもよい。
【0087】
図8(a)乃至図8(d)は、本発明の第7の実施の形態に係る粒子配列方法の概略を模式的に示す説明図である。尚、この本発明の第7の実施の形態に係る粒子配列方法は、本発明の実施の一形態に係る発光素子の製造方法として利用されるものである。
【0088】
図8(a)に示すように、本発明の第7の実施の形態においては、直径500nmのシリカ粒子46を、pH4の分散溶液37としての水に1wt%分散させた。分散溶液37中において、シリカ粒子47は、正に弱く帯電している。
【0089】
また、透明基板としてのガラス基板17の表面に、反射鏡としての厚さ500nmのアルミニウム膜67をスパッタリング法により形成し、さらに、アルミニウム膜67の表面に、直径5nmの銀微粒子を含む厚さ50nmのイオン性ポリマー薄膜27を形成した。
【0090】
そして、図8(b)に示すように、アルミニウム膜67及びイオン性ポリマー薄膜26を形成した表面(front side)が底面となるようにしてガラス基板17の全部を分散溶液37の適当な深さに浸漬した。このとき、イオン性ポリマー薄膜27の表面は、負に帯電している。
【0091】
ガラス基板17の全部を分散溶液37に浸漬した後、図8(c)に示すように、ガラス基板17の下の分散溶液37を介してガラス基板17の表面(front side)から波長500nmのレーザ干渉光57を15分間照射した。すると、分散溶液37中のシリカ粒子47がレーザ干渉光57の干渉パターンに応じて薄膜27の表面に付着した。
【0092】
その後、ガラス基板17を分散溶液37から引き上げて乾燥させると、図8(d)に示すように、レーザ干渉光57を照射した部分に、シリカ粒子47が単層かつ四角格子状に配列した。
【0093】
尚、本発明の第7の実施の形態においても、第6の実施の形態と同様に、ガラス基板17の表面(front side)側からレーザ干渉光57を照射しているので、基板17の裏面側から照射光を透過させる必要がない。従って、基板17と薄膜27との間にアルミニウム膜67を形成することが可能であり、また、基板17は不透明基板であってもよい。
【0094】
次に、単層かつ四角格子状に配列しているシリカ粒子47からなるシリカ粒子層上に、陽極としての厚さ150nmのITO層77をスパッタリング法により堆積し形成した。
【0095】
また、ITO層77上に、正孔注入層としてのN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン[N,N’−diphenyl−N,N’−bis(3−methylphenyl)−1,1’−biphenyl−4,4’−diamine](略称「TPD」)の層87を蒸着法により厚さ50nmに形成した。
【0096】
そして、TPD層87上に、発光層としてのトリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム[tris−(8−hydroxyquinoline)aluminum](略称「Alq3」)の層97を蒸着法により厚さ100nmに形成した。
【0097】
最後に、Alq3層97上に、陰極としての厚さ150nmのITO層107をスパッタリング法により堆積し形成して、図8(e)に示すような有機EL(electroluminescence)素子を作製した。
【0098】
尚、この発光素子は、トップエミッション型の有機EL素子であり、そのピーク波長は、530nmであった。この有機EL素子の発光方向は、図8(e)における上方であり、従って、シリカ粒子層は、発光方向とは反対側の面に形成されていることになる。
【0099】
作製した有機EL素子の性能評価を行ったところ、シリカ粒子層47を含まない通常の有機EL素子と比較して1.5倍の輝度向上が確認された。この輝度向上は、シリカ粒子層47によって生じる回折効果により、有機層内の導波光の一部が外部に放出されるようになったことによる効果と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施の各形態の概略及び原理を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の概略を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の概略を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態の概略を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態の概略を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態の概略を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明の第6の実施の形態の概略を模式的に示す説明図である。
【図8】本発明の第7の実施の形態の概略を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0101】
10,11,12,13,14,15,16,17 透明基板
20,21,22,23,24,25,26,27 金属微粒子を含む透明薄膜
30,31,32,33,34,35,36,37 水溶液
40,41,42,43,44,45,46,47 配列させる粒子
51,52,53,54,55,56,57 干渉光
67 アルミニウム膜
77,107 ITO層
87 TPD層
97 Alq3層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の溶液中で表面が第一の極性に帯電する材料に金属粒子を分散させた薄膜を基板の表面に形成する過程と、
前記第一の極性と反対の第二の極性に帯電させた粒子を前記溶液中に分散させる過程と、
前記薄膜を前記溶液中に浸漬する過程と、
前記金属粒子とプラズモン共鳴する波長の光を前記薄膜に照射する過程と、
を含むことを特徴とする粒子配列方法。
【請求項2】
前記粒子の直径は、前記光の波長と同等であることを特徴とする請求項1に記載の粒子配列方法。
【請求項3】
前記粒子の直径は、前記光の波長よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の粒子配列方法。
【請求項4】
前記金属粒子は、銀であることを特徴とする請求項1に記載の粒子配列方法。
【請求項5】
前記金属粒子は、金であることを特徴とする請求項1に記載の粒子配列方法。
【請求項6】
前記金属粒子の直径は、10nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の粒子配列方法。
【請求項7】
前記基板は透明基板であり、前記光の照射は、前記基板の裏面側から行われることを特徴とする請求項1に記載の粒子配列方法。
【請求項8】
前記光の照射は、前記基板の表面側から行われることを特徴とする請求項1に記載の粒子配列方法。
【請求項9】
前記光は、レーザ干渉光であることを特徴とする請求項1に記載の粒子配列方法。
【請求項10】
前記光は、平行な複数のラインからなるライン状のレーザ干渉光であることを特徴とする請求項9に記載の粒子配列方法。
【請求項11】
前記光は、前記粒子を配列させようとする配列パターンに対応した照射パターンを有するパターン光であることを特徴とする請求項1に記載の粒子配列方法。
【請求項12】
前記薄膜の前記材料は、前記溶液に不溶であって、末端にイオン性修飾基を有する高分子であることを特徴とする請求項1に記載の粒子配列方法。
【請求項13】
前記薄膜の前記材料は、カルボン酸であることを特徴とする請求項12に記載の粒子配列方法。
【請求項14】
前記薄膜の前記材料は、末端にアミノ基を有する高分子であることを特徴とする請求項12に記載の粒子配列方法。
【請求項15】
前記薄膜及び前記基板を乾燥させる過程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の粒子配列方法。
【請求項16】
所定の溶液中で表面が第一の極性に帯電する材料に金属粒子を分散させた薄膜を基板の表面に形成する過程と、
前記第一の極性と反対の第二の極性に帯電させた粒子を前記溶液中に分散させる過程と、
前記薄膜を前記溶液中に浸漬する過程と、
前記金属粒子とプラズモン共鳴する波長の光を前記薄膜に照射する過程と、
前記薄膜及び前記基板を乾燥させる過程と、
前記薄膜上に形成された前記粒子の単層上に、透明陽極電極、有機発光層及び透明陰極電極を形成する過程と、
を含むことを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項17】
前記金属膜は、反射鏡として機能するものであることを特徴とする請求項16に記載の発光素子の製造方法。
【請求項18】
前記金属膜は、アルミニウム膜であることを特徴とする請求項16に記載の発光素子の製造方法。
【請求項19】
前記有機発光層は、正孔注入層としてのTPD層と、発光層としてのAlq3層とを含むことを特徴とする請求項16に記載の発光素子の製造方法。
【請求項20】
前記透明陽極電極及び前記透明陰極電極は、ITO層であることを特徴とする請求項16に記載の発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−80461(P2008−80461A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265428(P2006−265428)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】