説明

粒状洗浄剤およびそれを用いた自動食器洗浄機の洗浄剤供給方法

【課題】自動食器洗浄機に、優れた洗浄力の洗浄剤を安定供給することを可能にする粒状洗浄剤と、この粒状洗浄剤を用いた洗浄剤の供給方法とを提供する。
【解決手段】リン酸塩、非イオン界面活性剤、水を含有し、直径0.8mm〜5.6mmに造粒された造粒組成物と、塩素剤とを配合した粒状洗浄剤を用いることを特徴とする粒状洗浄剤。リザーバーの洗剤を、スクリュー回転によって混合部へと搬送し、この混合部で水と混合して洗剤水溶液とした後、自動食器洗浄機へと供給する洗浄剤の供給方法において、この粒状洗浄剤を用いる自動食器洗浄機への洗浄剤供給方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動食器洗浄機への洗浄剤の供給に好適な粒状洗浄剤と、この粒状洗浄剤を用いた洗浄剤の供給方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動食器洗浄機に用いる洗浄剤の自動供給装置としては、リザーバー(ホッパーともいう) の洗剤を、スクリュー回転によって混合部へと搬送し、この混合部で水と混合して洗剤水溶液とするものが知られている (特許文献1参照) 。
【0003】
また、このような自動供給装置を備えた自動食器洗浄機に用いる洗浄剤としては、粉状のものを用いていた (特許文献2参照) 。
【特許文献1】特開2002−320584号公報
【特許文献2】特開平9−272896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の自動供給装置のように、粉状洗剤を混合部で水と混合して洗浄水溶液としてから自動食器洗浄機に供給する場合、粉状では流動性が悪いため、ドーム状の空洞を形成し残り易い。さらに、その状態で固まり易く、安定した量の粉状洗剤を毎回供給することができないといった不都合を生じることとなる。すなわち、スクリューの回転によって、このスクリュー周辺の粉状洗剤は安定供給され、粉状洗剤がサラサラの粉状を保っている間は、次から次へとスクリューに粉状洗剤が供給され続ける。しかし、ドーム状の空洞を形成すると、リザーバー内での粉状洗浄剤の移動がなくなり、供給不良を起こしてしまう。さらに、混合部からの水の飛沫や水蒸気、雰囲気中の湿度などの影響を受けて粉状洗剤が湿気て来ると、リザーバー内で粉状洗剤が固まってしまい、スクリュー周辺の粉状洗剤のみが供給された後、粉状洗剤は、スクリューへと供給されないこととなる。
【0005】
そのため、リザーバーに定期的に振動を与えて粉状洗剤が固まらないようにすることも提案されているが、この場合、振動によって粉状洗剤が各成分毎に分離し易くなり、均等に分散された粉状洗剤を供給することができないといった不都合を生じることとなる。
【0006】
また、粉状洗剤の各成分の粒径をそろえるといったことも考えられるが、各成分の比重や物性が異なるので、粒径をそろえただけでは、振動を加えた場合にやはり各成分毎に分離し易くなり、均等に分散された粉状洗剤を供給することができない。
【0007】
さらに、自動食器洗浄機での洗浄において、塩素剤と低泡性界面活性剤とは、洗浄に大きく寄与する。しかし、塩素剤と低泡性界面活性剤とを共存させると相互分解し、塩素の失活と低泡性の消失による洗浄力の低下および洗浄作業の妨げとなる発泡の原因となってしまう。特に、粉状洗剤の各成分の粒径をそろえた粉状にすると、粒状塩素剤と低泡性界面活性剤とが接触し易くなり、洗浄力が低下してしまうこととなる。
【0008】
本発明は、係る実情に鑑みてなされたものであって、自動食器洗浄機に、優れた洗浄力の洗浄剤を安定供給することを可能にする粒状洗浄剤と、この粒状洗浄剤を用いた洗浄剤の供給方法とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の粒状洗浄剤は、リン酸塩、非イオン界面活性剤、水を含有し、直径0.8mm〜5.6mmに造粒された造粒組成物と、粒状塩素剤とを配合した粒状洗浄剤を用いるものである。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明の自動食器洗浄機への洗浄剤供給方法は、リザーバーの洗剤を、スクリュー回転によって混合部へと搬送し、この混合部で水と混合して洗剤水溶液とした後、自動食器洗浄機へと供給する洗浄剤の供給方法において、上記粒状洗浄剤を用いるものである。
【0011】
本発明において、造粒組成物は、リン酸塩、非イオン界面活性剤、水を造粒機で単純に粒状に造粒することによって形成される。この際、直径0.8mm〜5.6mmとなるように造粒される。0.8mmより小さい場合、造粒による非イオン界面活性剤の封じ込めでの塩素剤の分解防止効果が十分に得られず、5.6mmを超えて大きくなると、偏りを生じ洗浄剤成分を均一に分散させることや溶解性と供給性とが十分に得られないこととなる。また、造粒組成物は、粒状洗浄剤全体の5重量部〜60重量部となるように配合される。5重量部未満だと造粒による効果が十分に得られず、60重量部を超えると、相対として洗浄力の基本のアルカリ成分が少なくなり洗浄力が確保できなくなる。
【0012】
本発明において、造粒組成物中の非イオン界面活性剤は、1.0〜24重量部となるように配合される。1.0重量部未満の場合、十分な洗浄効果が得られず、24重量部を超えると、収率が悪くなったり、ベト付いたりする。非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチル( モノテトラデシル) エーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチル( 2−エチル−ヘキシル) エーテル、ポリオキシエチレンアルキエルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ナロー型のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン( ジ) スチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンβ−ナフチル( ナフトール) エーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンフイトステロール、ポリエチレングリコールモノアルキル脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールジアルキル脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールジ−2−エチルヘキソエート、ポリエチレングリコールモノ樹脂酸エステル、ポリエチレングリコールモノトール油脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールラノリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアセチレニック・グリコールエーテル、ポリオキシエチレングリセリンモノアルキル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアリン酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、オキシエチレン鎖・オキシプロピレン鎖ブロックポリマー、オキシエチレン鎖・オキシプロピレン鎖ブロックポリマー、オキシエチレン鎖・オキシプロピレン鎖ブロックポリマー、オキシエチレン鎖・オキシプロピレン鎖ランダムポリマー、オキシプロピレン鎖・オキシエチレン鎖付加アルキルエーテル、オキシエチレン鎖・オキシプロピレン鎖付加アルキルエーテル、エチレンジアミン−ポリオキシプロピレン鎖・ポリオキシエチレン鎖ブロック、エチレンジアミン−ポリオキシエチレン鎖・ポリオキシプロピレン鎖ブロック、ソルビタンエステル、グリセライド( グリセリン( モノ、ジ) 脂肪酸エステル) 、ポリグリセリンのアルキル脂肪酸( モノ、ポリ) エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、有機酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、アルキルポリグルコシド、レシチンなどが挙げられる。
【0013】
本発明において、造粒組成物中のリン酸塩は、造粒組成物中のリン酸塩は、56〜75重量部となるよう配合される。その量よりもリン酸塩が少ないと造粒組成物がベト付き、流動性が悪くなるため、供給不良を生じる。また、その量よりもリン酸塩が多いと、非イオン界面活性剤の配合量が少なくなり、洗剤として使用する場合に多量の造粒組成物を必要とするため、効率が悪くなる。このリン酸塩としては、例えば、トリポリリン酸ソーダ、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩などが挙げられる。
【0014】
本発明において、造粒組成物中の水は、造粒品の組成全体の12.5〜25重量部となるように調整される。造粒時は、雰囲気の温度および湿度によって、加える水の量は調整される。基本的には造粒組成物全量の約1/4を目安に配合することが好ましい。
【0015】
本発明において、塩素剤は、粒状洗浄剤全体の0.1〜10重量部となるように配合される。塩素剤が0.1重量部未満の場合、塩素剤による漂白効果は十分に得ることが出来ず、10重量部を超えると、効果が飽和して無駄になる。
【0016】
本発明において、粒状洗浄剤は、上記した塩素剤と、造流組成物以外に、必要に応じて、ケイ酸塩、炭酸塩、水溶性高分子、リン酸塩、硫酸塩がさらに配合されてもよい。
【0017】
この場合、各成分の好ましい配合量としては、ケイ酸塩が5〜40重量部、炭酸塩が1から10重量部、水溶性高分子が0.5〜5重量部、リン酸塩が上記造粒組成物に含まれている以外に0〜50重量部、硫酸塩が1〜10重量部である。これらの各成分は、全て配合されていてもよいし、少なくとも1種類以上が配合されていてもよい。ケイ酸塩としては、メタケイ酸ソーダ五水塩(アルカリ剤)、メタケイ酸ソーダ無水塩(アルカリ剤)、オルソケイ酸ソーダ(アルカリ剤)などが挙げられる。炭酸塩としては、炭酸カリウム (溶解促進剤・アルカリ剤) 、炭酸ソーダ(アルカリ剤)などが挙げられる。水溶性高分子としては、ポリアクリル酸ソーダ(キレート剤) 、アクリル酸・マレイン酸コポリマーソーダ塩(キレート剤) などが挙げられる。リン酸塩としては、トリポリリン酸ソーダ、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩などが挙げられる。硫酸塩としては、硫酸ソーダ(増量剤) などが挙げられる。
【0018】
このようにして構成される粒状洗浄剤は、非イオン界面活性剤を、リン酸塩と水とで造粒しているので、非イオン界面活性剤と塩素剤との接触を減らして相互安定性を向上させることが可能となる。また、塩素剤の分解に影響する水は、造粒組成物中に取り込まれており、塩素剤との接触を減らしているので、塩素剤の安定性をさらに安定させることができることとなる。したがって、この粒状洗浄剤は、非イオン界面活性剤と塩素剤とが有効に洗浄効果を発揮することとなるので、苛性アルカリを加えなくても、優れた洗浄力が得られ、0.1%溶液からスタートし約25倍希釈するとpH9以下にできるので、排水負荷も軽減され、優れた安全性が得られる。
【0019】
また、このようにして構成される粒状洗浄剤は、リザーバーの洗剤を、スクリュー回転によって混合部へと搬送し、この混合部で水と混合して洗剤水溶液とした後、自動食器洗浄機へと供給する洗浄剤の供給方法に用いられる。この供給方法に用いた場合、粒状洗浄剤は、直径0.8mm〜5.6mmに造粒された造粒組成物を含んでいるので、優れた流動性が得られることとなり、リザーバー内で空洞を形成することなく、安定して供給することができる。したがって、リザーバーに振動などを与えることなく容易に供給することができることとなり、振動による成分分離も防止できる。
【発明の効果】
【0020】
以上述べたように、本発明によると、非イオン界面活性剤を、造粒組成物内に配合することにより、塩素剤と非イオン界面活性剤との接触を減らして相互接触による有効成分の分解を抑制することができる。したがって、洗浄剤の組成から苛性アルカリを除くことが可能となり、安全に使用できるとともに、排水負荷を減らして公害の発生も防止することができる。また、造粒組成物の優れた流動性が得られるので、リザーバーの洗剤を、スクリュー回転によって混合部へと搬送し、この混合部で水と混合して洗剤水溶液とした後、自動食器洗浄機へと供給する洗浄剤の供給方法に用いた場合には、リザーバーに振動を与えることなく粒状洗浄剤を安定供給することができ、安定した組成および濃度の洗浄剤で洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、実施例を比較例とともに挙げ、本発明の効果をより具体的に説明をする。ただし、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(1)粒状洗浄剤の調製
(実施例1)
メタケイ酸無水塩 25.0重量部
炭酸カリウム 5.0重量部
水溶性高分子 3.0重量部
トリポリリン酸ソーダ 41.0重量部(うち24重量部は造粒)
塩素剤 5.0重量部
芒硝 5.0重量部
非イオン界面活性剤 6.0重量部
水 10.0重量部
合計 100.0重量部
上記各配合成分のうち、固体のものについては、直径0.1mm以下の粉状にしたものを用意した。
【0022】
上記各配合成分のうち、トリポリリン酸ナトリウム24重量部と、非イオン界面活性剤6重量部と、水10.0重量部とを、造粒機によってあらかじめ直径0.8mm〜5.6mmの造粒組成物に造粒した。得られた造粒組成物を他の成分と常温下で均一に混合して、本発明に係る粒状洗浄剤を得た。
【0023】
(実施例2)
メタケイ酸無水塩 25.0重量部
炭酸カリウム 5.0重量部
水溶性高分子 3.0重量部
トリポリリン酸ソーダ 46.7重量部(うち23.8重量部は造粒)
塩素剤 5.0重量部
芒硝 5.0重量部
非イオン界面活性剤 6.0重量部
水 4.3重量部
合計 100.0重量部
上記各配合成分のうち、固体のものについては、直径0.1mm以下の粉状にしたものを用意した。
【0024】
上記各配合成分のうち、トリポリリン酸ナトリウム23.8重量部と、非イオン界面活性剤6重量部と、水4.3重量部とを、造粒機によってあらかじめ直径0.8mm〜5.6mmの造粒組成物に造粒した。得られた造粒組成物を他の成分と常温下で均一に混合して、本発明に係る粒状洗浄剤を得た。
【0025】
(実施例3)
メタケイ酸無水塩 25.0重量部
炭酸カリウム 5.0重量部
水溶性高分子 3.0重量部
トリポリリン酸ソーダ 45.0重量部(うち45.0重量部は造粒)
塩素剤 5.0重量部
芒硝 2.0重量部
非イオン界面活性剤 6.0重量部
水 9.0重量部
合計 100.0重量部
上記各配合成分のうち、固体のものについては、直径0.1mm以下の粉状にしたものを用意した。
【0026】
上記各配合成分のうち、トリポリリン酸ナトリウム45.0重量部と、非イオン界面活性剤6重量部と、水9.0重量部とを、造粒機によってあらかじめ直径0.8mm〜5.6mmの造粒組成物に造粒した。得られた造粒組成物を他の成分と常温下で均一に混合して、本発明に係る粒状洗浄剤を得た。
【0027】
(実施例4)
メタケイ酸無水塩 25.0重量部
炭酸カリウム 5.0重量部
水溶性高分子 3.0重量部
トリポリリン酸ソーダ 46.0重量部(うち14.0重量部は造粒)
塩素剤 5.0重量部
芒硝 5.0重量部
非イオン界面活性剤 6.0重量部
水 5.0重量部
合計 100.0重量部
上記各配合成分のうち、固体のものについては、直径0.1mm以下の粉状にしたものを用意した。
【0028】
上記各配合成分のうち、トリポリリン酸ナトリウム14.0重量部と、非イオン界面活性剤6重量部と、水5.0重量部とを、造粒機によってあらかじめ直径0.8mm〜5.6mmの造粒組成物に造粒した。得られた造粒組成物を他の成分と常温下で均一に混合して、本発明に係る粒状洗浄剤を得た。
【0029】
(実施例5)
メタケイ酸無水塩 25.0重量部
炭酸カリウム 5.0重量部
水溶性高分子 3.0重量部
トリポリリン酸ソーダ 45.0重量部(うち18.0重量部は造粒)
塩素剤 5.0重量部
芒硝 5.0重量部
非イオン界面活性剤 6.0重量部
水 6.0重量部
合計 100.0重量部
上記各配合成分のうち、固体のものについては、直径0.1mm以下の粉状にしたものを用意した。
【0030】
上記各配合成分のうち、トリポリリン酸ナトリウム18.0重量部と、非イオン界面活性剤6重量部と、水6.0重量部とを、造粒機によってあらかじめ直径0.8mm〜5.6mmの造粒組成物に造粒した。得られた造粒組成物を他の成分と常温下で均一に混合して、本発明に係る粒状洗浄剤を得た。
(比較例1)
上記実施例1の粒状洗浄剤に苛性ソーダ5重量部をさらに配合して常温下で均一に混合する方法によって粒状洗浄剤を得た。
(比較例2)
メタケイ酸無水塩 25.0重量部
炭酸カリウム 5.0重量部
水溶性高分子 3.0重量部
トリポリリン酸ソーダ 41.0重量部(うち造粒は無し)
塩素剤 5.0重量部
芒硝 15.0重量部
非イオン界面活性剤 6.0重量部
水 0.0重量部
合計 100.0重量部
上記各配合成分のうち、固体のものについては、直径0.1mm以下の粉状にしたものを用意した。
【0031】
上記の各配合成分を、常温下で均一に混合する方法によって、粉状洗浄剤を得た。
(比較例3)
メタケイ酸無水塩 5.0重量部
炭酸カリウム 0.0重量部
水溶性高分子 0.0重量部
トリポリリン酸ソーダ 72.7重量部(うち72.7重量部は造粒)
塩素剤 5.0重量部
芒硝 0.0重量部
非イオン界面活性剤 6.0重量部
水 11.3重量部
合計 100.0重量部
上記各配合成分のうち、固体のものについては、直径0.1mm以下の粉状にしたものを用意した。
【0032】
上記各配合成分のうち、トリポリリン酸ナトリウム72.7重量部と、非イオン界面活性剤6重量部と、水11.3重量部とを、造粒機によってあらかじめ直径0.8mm〜5.6mmの造粒組成物に造粒した。得られた造粒組成物を他の成分と常温下で均一に混合して粒状洗浄剤を得た。
(比較例4)
トリポリリン酸ナトリウム50.0重量部と、非イオン界面活性剤30.0重量部と、水20.0重量部とを、造粒機によって造粒しようとしたが、ベトベトの状態になり粒状洗浄剤としては使用不可能だった。
【0033】
次に、これらの洗浄剤について、洗浄力テストを次の方法によって行なった。
(1)有効塩素残存率の測定
上記実施例1、比較例1、比較例2の各洗浄剤を、ビーカーに密閉した状態で60℃の温度で1週間静置させた後、それぞれの塩素剤の有効塩素残存率を測定した。測定は、試料を約1g採取し、よう化カリウム約50ミリリットルを加え、次に氷酢酸を約10ミリリットル加えた。その後、デンプン溶液を指示薬としてN/10チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、溶液が無色になった点を終点とした。
次式により有効塩素濃度を計算した。
有効塩素濃度(%)=滴定量(ミリリットル)×0.3546/サンプル(g)
その結果、造粒組成物を含む実施例1および比較例1の洗浄剤は、98%残存していたのに対して造粒組成物を含まない比較例2の洗浄剤は、半分以下の46%に低下し、塩素剤が有効に含有されず分解されていることが確認された。
(2)供給安定性の測定
上記実施例1、比較例2の各洗浄剤を、図1に示す自動供給装置1を用いて自動食器洗浄機に供給した。この自動供給装置1は、リザーバー2に貯留した洗浄剤を、このリザーバー2の底に設けられたスクリュー3の回転によって混合部4へと搬送し、この混合部4で給水管5から供給される水と混合して洗剤水溶液とした後、図2に示す自動食器洗浄機10へと供給するようになされている。この測定では、スクリュー3から搬送される各洗浄剤を、混合部4に供給せず、その供給量を測定した。自動供給装置1の運転は、10秒運転後5分休みを反復して繰り返し、数日にわたって同じ運転を繰り返した。各洗浄剤の供給量と時間との関係を示すグラフを図3に示す。また、運転時のリザーバー2内の様子を一定時間毎に撮影した。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
これらの結果から、本発明に係る実施例1の洗浄剤は、リザーバー2で停滞することなく、安定した洗浄剤の供給が行われているのに対し、比較例2の洗浄剤は、スクリュー3近傍の洗浄剤だけが供給された以外は、リザーバー2で空洞を形成してしまい、安定した洗浄剤の供給が行えなかった。
(3) 洗浄試験
(a)被洗浄食器に対する前処理
先ず、ガラスコップおよび弁当箱を5%水酸化ナトリウム水溶液中に約2時間浸漬し、次いで、これらを取り出して湯水ですすぎ洗いを行なった後、100℃の恒温乾燥機内で1時間に亘って乾燥処理し、これを常温にまで放冷して処理対象とした。
(b)汚垢材料の調製
小麦粉、牛乳、卵黄、バターおよび天ぷら油を汚垢材料とした。なお、小麦粉についてはその10gを精製水90g中に加えて攪拌し、これを加熱して80〜90℃の温度状態で約10分間保ち小麦粉を糊化させ、その後これを常温にまで放冷した。また牛乳、卵黄、バター及び天ぷら油をそれぞれ20gずつ順に同一のビーカー内に加入して混合した。この混合材中に前記した小麦粉の糊化材20gを混入して混合し、これを30〜40℃の温度状態で混ぜて液状汚垢材料とした。
(c)汚垢の塗布
前記(a)において処理したガラスコップおよび弁当箱に対し上記(b)の汚垢材料を塗布した。先ず、前記の液状汚垢材料の約1gを丸筆にてガラスコップおよび弁当箱の内面上に口縁部から底部に向ってラセン状に塗布し、これを被洗浄食器とした。
(d)洗浄操作
実施例1ないし比較例4の各洗浄剤をそれぞれ用いて、上記の被洗浄食器に対する洗浄操作を次のように実行した。
【0036】
この洗浄操作は、図2に示した自動食器洗浄機10(ホシザキ電気(株)製JW- 650UF)を利用した。
【0037】
この洗浄機10は、機枠11内に洗浄及びすすぎ操作をバッチ式に行なう室部12のみからなり、ドアタイプと呼ばれている。またこの室部12内には、上方部に洗浄ノズル13、14が上下に離間して、またこれらに並設してすすぎノズル15、16が上下に離間してそれぞれ配設され、下方部にはポンプ21を伴う24l容量の洗浄液タンク22とポンプ23を伴うすすぎ水タンク24とが並設されている。また各洗浄ノズル13、14とすすぎノズル15、16との中間位置には被洗浄食器A、Bを支持する網材からなるラック25を備えている。また自動供給装置1は機枠11の外側面上に固設され、その供給用ホース17は洗浄タンク22内に通ずるように配されている。
【0038】
この洗浄機10では、洗浄時において、洗浄液タンク22内の洗浄液をポンプ21により洗浄ノズル13、14に送り出して被洗浄物A、Bに噴射する。この際の噴射液は再度洗浄タンク22内に流入する。この操作が一定時間繰り返えされた後、今度はすすぎ操作される。このすすぎ時においては、すすぎタンク24内のすすぎ水をすすぎノズル15、16に送り出して被洗浄物A、Bに噴射する。このすすぎに係る噴射液も洗浄液タンク22内に流入する。このため、すすぎ操作の度に洗浄液濃度は低下することになる。
【0039】
なお、すすぎタンク24内においてすすぎ水は常時外部から補給されるため、その水量は常に一定量が確保される。また自動供給装置1からは、前記した機能により洗浄液が設定濃度となるようにリザーバー2内から洗浄剤を補給する。
【0040】
この洗浄操作においては、先ず、洗浄液タンク22内に湯水(50±3℃)を給入し、これに前記した洗浄剤を24g加えて0.10%濃度の洗浄液とした。また前記した被洗浄食器であるガラスコップAおよび弁当箱Bのそれぞれの1つをその口部が下向きとなるようにラック25上にセットした。
【0041】
次いで、前記した洗浄処理を60秒間、その後すすぎタンク24内のすすぎ水( 70〜85℃) によるすすぎ洗いを10秒間行なわせ、さらにその後2分間放置することを1サイクルとし、計5サイクルを繰り返すように動作させた。なお、この間、洗浄剤については補給することはないが、被洗浄食器については1サイクル毎に取り替えた。また、1サイクル毎に、すすぎ前の泡立ち具合を確認した。
【0042】
この洗浄処理の結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
なお、洗浄度につき、◎は汚れが全く付着していないとき、○は汚れが僅かに付着しているがほとんど除去されているとき、△は汚れが少量残留しているとき、×は汚れが多量に残留しているとき、である。
【0045】
また、泡立ち具合の評価は、20mm未満が○、20mm以上25mm未満が△、25mm以上が×である。
【0046】
表2の結果から、本発明に係る実施例1ないし実施例5の粒状洗浄剤によれば、比較例1の苛性ソーダを含むものに匹敵する洗浄効果が得られることを確認することができた。したがって、洗浄剤の組成から苛性ソーダ、苛性カリウムを除くことが可能となり、安全に使用できるとともに、排水負荷を減らして公害の発生も防止することができる。
【0047】
また、本発明に係る実施例1ないし実施例5の粒状洗浄剤は、比較例2に係る洗浄剤より泡立ちを抑えて優れた洗浄効果が得られることも確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
自動食器洗浄機用の粒状洗浄剤として利用でき、自動食器洗浄機への洗浄剤の安定供給に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る自動食器洗浄機への洗浄剤供給方法に用いる粒状洗浄剤の自動供給装置の全体構成の概略を示す断面図である。
【図2】本発明に係る自動食器洗浄機への洗浄剤供給方法に用いる自動食器洗浄機の全体構成の概略を示す断面図である。
【図3】実施例1および比較例2に係る洗浄剤を自動供給装置で供給した際の洗浄剤の経時的供給量の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
1 自動供給装置
2 リザーバー
3 スクリュー
4 混合部
5 給水管
10 自動食器洗浄機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸塩、非イオン界面活性剤、水を含有し、直径0.8mm〜5.6mmに造粒された造粒組成物と、塩素剤とを配合した粒状洗浄剤を用いることを特徴とする粒状洗浄剤。
【請求項2】
造粒組成物は、1.0〜24重量部が非イオン界面活性剤、56〜75重量部がリン酸塩、水が12.5〜25重量部となるように造粒された請求項1記載の粒状洗浄剤。
【請求項3】
塩素剤0.1〜10重量部、造粒組成物5〜60重量部の割合で配合された請求項1または2記載の粒状洗浄剤。
【請求項4】
ケイ酸塩、炭酸塩、水溶性高分子、リン酸塩、硫酸塩、アミノカルボン酸塩、キレート剤、金属セッケン、シリコーンがさらに配合された請求項1ないし3の何れか1記載の粒状洗浄剤。
【請求項5】
リザーバーの洗剤を、スクリュー回転によって混合部へと搬送し、この混合部で水と混合して洗剤水溶液とした後、自動食器洗浄機へと供給する洗浄剤の供給方法において、
請求項1ないし4の何れか1記載の粒状洗浄剤を用いる自動食器洗浄機への洗浄剤供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−81657(P2008−81657A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265071(P2006−265071)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000190736)株式会社ニイタカ (33)
【Fターム(参考)】