粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器
【課題】従来の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器におけるガスのショートカット等の問題を解決し、その使用開始時以降、長期間にわたり安定して運転できる、改質触媒や脱硫触媒などの粒状触媒、または粒状脱硫剤などの粒状吸着剤を充填した横置き型容器を得る。
【解決手段】粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を設けることができる。
【解決手段】粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を設けることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器に関し、より詳しくは改質触媒や脱硫触媒などの粒状触媒、または粒状脱硫剤などの粒状吸着剤を充填した横置き型容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の内部に粒状触媒を充填した横置き型の改質器や脱硫器が知られている。しかし、そのような横置き型改質器や横置き型脱硫器を長時間使用すると、粒状触媒の粒が砕けて細かくなり、下方に詰まってくる。このため、図11(a)に示すように、初めは触媒の中をガスが流れるが、時間の経過とともに上部に空間ができ、図11(b)に示すように、その空間へガスがショートカットしてしまい、改質効果や脱硫効果が時間経過とともに著しく低下する。図11(c)は図11(a)の斜視図である。
【0003】
そのような問題を回避するために、図12のような形状の改質器が考えられている(特開2006−273635号公報、以下“635号公報”という)。しかしこの場合、高温の改質器内にガス流路を形成するための隔壁(413、414)を配置しなければならず、この隔壁厚さを薄く作ると熱により歪むという問題があり、隔壁厚さを厚く作ると改質器が大きくなるという問題がある。また、ガス流路が改質器内で蛇行しているため、改質器外面とガスの接触面積が小さくなり、改質器中央部まで外部からの熱が伝わりにくく、十分な改質性能が得られない可能性がある。
【0004】
【特許文献1】特開2006−273635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器における前述のような問題点を解決し、その使用開始時以降、長期間にわたり安定して運転できる、改質触媒や脱硫触媒などの粒状触媒、または粒状脱硫剤などの粒状吸着剤を充填した横置き型容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。
【0007】
本発明(2)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有するとともに、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。
【0008】
本発明(3)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に複数の盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。
【0009】
本発明(4)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に複数個の盛り上がり部を有するとともに、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。
【0010】
本発明(5)は、本発明(1)〜(4)の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、前記盛り上がり部の水平面に対する角度が30度以上であることを特徴とし、本発明(6)は、本発明(1)〜(4)の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、前記粒状触媒が粒状改質触媒または粒状脱硫触媒であることを特徴とし、本発明(7)は、本発明(1)〜(4)の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、前記粒状吸着剤が粒状脱硫剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器によると、長時間使用により粒状触媒または粒状吸着剤が細粒化して下方に沈み込んでも、容器内の上部にできるガスのショートカット経路を短くし、長時間安定した性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明においては、横置き型容器に粒状触媒または粒状吸着剤を充填する。粒状触媒または粒状吸着剤のうち、粒状触媒には粒状改質触媒、粒状脱硫触媒その他各種あるが、本発明においては、それらいずれの用途の粒状触媒も用いられる。粒状改質触媒の例としてはアルミナ等の粒状担体にNi、Ruなどの金属触媒を担持した改質触媒などがあり、また、粒状脱硫触媒の例としては、アルミナ等の粒状担体にMoとCo(Mo−Co系)、MoとNi(Mo−Ni系)を担持した脱硫触媒などがある。Co−Mo系やNi−Mo系触媒は、炭化水素系燃料中の硫黄化合物を水素によりH2Sに変える触媒である。H2Sは脱硫剤ZnOによってZnSとして除去される。
【0013】
また、粒状触媒または粒状吸着剤のうち、粒状吸着剤には脱臭用、脱湿用、脱硫用などとして活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライトその他各種あるが、本発明においては、それらいずれの用途の粒状吸着剤も用いられる。粒状脱硫剤の例としては、ゼオライトにAg、Cu等の金属を担持した粒状脱硫剤も挙げられる。
【0014】
粒状触媒の粒子の形状、粒状吸着剤の粒子の形状は、球状、顆粒状であるのが好ましいが、ペレット状、錠剤状等であってもよい。
【0015】
以下、本発明(1)〜(4)の態様を順次説明する。
【0016】
〈本発明(1)の態様〉
本発明(1)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。そして、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする。
【0017】
ここで、容器の基本部分とは、前述図11(c)に示すように、その横断面が4角形状または矩形状で、左右に延び、左右両端を壁部材で塞いだ形状に構成された部分である。本発明(1)においては、断面4角形状または矩形状で左右に延びた基本部分と、その上方に盛り上がり部を有し、これらを合わせた空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填するので、横断面4角形状または矩形状の4面のうち、その上面に代えて、盛り上がり部を形成した形となる。なお、その横断面は、4角形状または矩形状とは限らず、円形状、楕円形状にしてもよい。
【0018】
基本部分の横方向左右両端の壁部材にはそれぞれ被処理ガス導入管、処理済みガス導出管が配置される。被処理ガスは横方向の一方の被処理ガス導入管から導入されて容器中の粒状触媒中を流れ、相対する側の処理済みガス導出管から導出される。
【0019】
図1〜2は本発明(1)の態様を説明する図である。図1(a)〜(b)は斜視図で、図1(a)は、盛り上がり部が左右の両側から中央部に向けて平行に盛り上がった態様、図1(b)は、盛り上がり部が左右の両側から中央部に向けて先細状に盛り上がった態様である。図2は図1(a)〜(b)中A−A線断面図で、図1(a)の場合も図1(b)の場合もA−A線断面図としては図2(a)のようになる。すなわち、基本部分と盛り上がり部をその断面で言えば、図2(a)のとおり、基本部分は左右に長い断面長方形であり、盛り上がり部は三角形状である。
【0020】
そのように、容器中、それ本来の空間〔図11(c)参照〕つまり基本部分と本発明に係る盛り上がり部の空間に粒状触媒を充填した横置き型容器において、被処理ガスは、容器使用開始時以降は、図2(a)中波矢印で示すとおり、容器本来の空間に充填した粒状触媒中を流れる。被処理ガスは横方向の一方から導入されて容器中の粒状触媒中を流れ、処理ガス済みガスは相対する他方側から導出される。
【0021】
従来のように盛り上がり部がないとき、すなわち上方に盛り上がった形状でないときは、前述図11(a)のように、初めは触媒の中をガスが流れるが、時間経過とともに上部に空間(空隙)ができ、図11(b)に示すように、その空間へガスがショートカットしてしまい、容器中での触媒効果や吸着効果が時間の経過とともに著しく低下する。
【0022】
これに対して、図1〜2のように、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器を上方に盛り上がった形状とすることにより、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器の使用開始時以降長時間の経過により、触媒粒子または吸着剤粒子が細かくなっても、図2(b)に示すように、粒状触媒または粒状吸着剤がない空間が形成されるのはその頂上部のみであり、これによりガスがショートカットする長さを縮めることができる。
【0023】
〈本発明(2)の態様〉
本発明(2)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。そして、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有するとともに、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする。
【0024】
図3は本発明(2)の態様を説明する図である。粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器を、図3(a)のとおり、左右の両側から中央部に向けて先細状に盛り上げ、且つ、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を設ける。そして、基本部分、盛り上がり部および貯蔵部の空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填する。
【0025】
このうち、その盛り上がり部、すなわち左右の両側から中央部に向けて先細状に盛り上げた部分をその断面で言えば、本発明(1)の場合と同じく三角形状である。貯蔵部は円筒状、角柱状その他適宜の形状とし、その内部空間は盛り上がり部の空間に連なっている。貯蔵部の高さ、容積は適宜設定することができる。
【0026】
そのように、容器中、それ本来の空間〔図11(c)参照〕つまり基本部分、盛り上がり部および頂上部に粒状触媒の貯蔵部を設けて粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、被処理ガスは、使用開始時以降は、図3(a)中波矢印で示すとおり、容器本来の空間に充填した粒状触媒中を流れ、処理ガス済みガスは相対する側から導出される。
【0027】
従来のように上方に盛り上がった形状でないときは、前述図11(a)のように、初めは粒状触媒の中をガスが流れるが、時間経過とともに上部に空間ができ、図11(b)に示すように、その空間へガスがショートカットしてしまい、ガスが粒状触媒を通らないことになって、容器中での触媒効果や吸着効果が時間経過とともに著しく低下する。
【0028】
これに対して、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器を、図3のように、基本部分に加え、その上方に盛り上がった形状とし、且つ、頂上部に粒状触媒の貯蔵部を設けることにより、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器の使用開始時以降長時間の経過により、容器内の触媒粒子または吸着剤粒子が細かくなっても、図3(b)に示すように、貯蔵部の粒状触媒または粒状吸着剤が降下し、盛り上がり部へ流れ込むので、ガスがショートカットするのを防ぎ、またその長さを縮めることができる。
【0029】
また、その使用開始時以降、さらに長時間の経過により、触媒粒子または吸着剤粒子がさらに細かくなったとしても、前述図2(b)に示すように、触媒粒子または吸着剤粒子がない空間が形成されるのは断面三角形状の頂上部のみであり、これによりガスがショートカットする長さを縮めることができる。
【0030】
〈本発明(3)の態様〉
本発明(3)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。そして、前記容器が基本部分とその上方に複数の盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする。被処理ガスは横方向の一方から導入されて容器中の粒状触媒または粒状吸着剤中を流れ、相対する側から導出される。図4は本発明(3)の態様を説明する図である。
【0031】
粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器を、図4(a)のとおり、左右の両側から中央部に向けて先細状に盛り上げた盛り上がり部を複数個設ける。そして、それら複数個の盛り上がり部の空間にも粒状触媒または粒状吸着剤を充填する。図4には盛り上がり部が二つの場合を示しているが、容器の規模等に応じて三つ、四つというように複数個設ける。その盛り上がり部をその断面で言えば、図4(a)のとおり三角形状である。
【0032】
そのように、容器中、それ本来の空間〔図11(c)参照〕つまり基本部分と本発明に係る複数個の盛り上がり部に粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、被処理ガスは、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器の使用開始時以降は、図4(a)中波矢印で示すとおり、容器本来の空間に充填した粒状触媒または粒状吸着剤中を流れる。被処理ガスは横方向の一方から導入されて容器中の粒状触媒または粒状吸着剤中を流れ、処理済みガスは相対する側から導出される。
【0033】
従来のように上方に複数個の盛り上がり部がないときは、前述図11(a)のように、初めは触媒または吸着剤の中をガスが流れるが、時間経過とともに上部に空間ができ、図11(b)に示すように、その空間へガスがショートカットしてしまい、触媒効果や吸着効果が時間の経過とともに著しく低下する。
【0034】
これに対して、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器に、図4(a)のように、それ本来の空間〔図11(c)参照〕つまり基本部分とその上方の複数個の盛り上がり部に粒状触媒または粒状吸着剤を充填することにより、長時間経過により触媒粒子または吸着剤粒子が細かくなっても、図4(b)に示すように、触媒粒子または吸着剤粒子がない空間が形成されるのは頂上部のみであり、これによりガスがショートカットする長さを縮めることができる。
【0035】
〈本発明(4)の態様〉
本発明(4)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。そして、前記容器が基本部分とその上方に複数個の盛り上がり部を有するとともに、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする。被処理ガスは横方向の一方から導入されて容器中の粒状触媒または粒状吸着剤中を流れ、相対する側から導出される。
【0036】
図5は本発明(4)の態様を説明する図である。粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器を、図5(a)のとおり、左右の両側から中央部に向けて先細状に盛り上げた盛り上がり部を複数個設け、且つ、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を設ける。そして、基本部分、盛り上がり部および貯蔵部の空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填する。
【0037】
そのように、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器本来の空間〔図11(c)参照〕つまり基本部分と複数の盛り上がり部およびそれら複数個の盛り上がり部の各頂上部の貯蔵部に粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、被処理ガスは、その使用開始時以降は、図5(a)中波矢印で示すとおり、容器本来の空間つまり基本部分に充填した粒状触媒または粒状吸着剤中を流れる。
【0038】
従来のように上方に盛り上がった形状でないときは、前述図11(a)のように、初めは粒状触媒または粒状吸着剤の中をガスが流れるが、時間経過とともに上部に空間ができ、図11(b)に示すように、その空間へガスがショートカットしてしまい、触媒効果や吸着効果が時間の経過とともに著しく低下する。
【0039】
これに対して、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器に、図5(a)のように、複数個の盛り上がり部を設け、且つ、それら複数の盛り上がり部の各頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を設けすることにより、長時間経過により、触媒粒子または吸着剤粒子が細かくなっても、図5(b)に示すように、貯蔵部の粒状触媒または粒状吸着剤が降下し、盛り上がり部へ流れ込むので、ガスがショートカットするのを防ぎ、またその長さを縮めることができる。
【0040】
さらに長時間経過により、触媒粒子または吸着剤粒子がさらに細かくなったとしても、前述図2(b)に示すように、触媒粒子または吸着剤粒子がない空間が形成されるのは頂上部のみであり、これによりガスがショートカットする長さを縮めることができる。
【0041】
〈実験1:盛り上がり部における傾斜角度についての実験〉
本発明の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器においては、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器本来の空間と盛り上がり部に粒状触媒を充填する。本実験1は、盛り上がり部の盛り上がり角度をどの程度以上にすればよいかの目安を得るための実験である。
【0042】
周囲円形の平底ガラス皿の凹部にその直上の略中央部から、粒状触媒(粒状アルミナ坦体にNiを坦持した改質触媒)を静かに流下し(垂らし)たところ、粒状触媒が自重で円錐状すなわち山の形状に広がり、水平面に対して略同じ角度の山となることが観察された。触媒粒子の直径を変えて実施しても同様であった。
【0043】
図6はその実験状況を示す図で、図6(a)は触媒粒子の直径が2mmφ(φ=直径、以下同じ)の場合、図6(b)は触媒粒子の直径が3mmφの場合である。水平面に対して傾斜角度を測定したところ、触媒粒子の直径如何に関わらずその角度は略30deg(θ)であった。この結果は、本発明における盛り上がり部についての傾斜角度を設定する際の目安とすることができる。
【0044】
〈実験2:従来の粒状触媒充填横置き型容器における触媒上面の形状変化に係る実験〉
粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器、例えば改質器や脱硫器を長時間使用すると、前述図11(b)のように触媒粒子または吸着剤粒子が砕けて細かくなり、下方に詰まってくる(粉粒化はより下層部の触媒の方がより進む)。そのため、図11(a)に示すように、初めは触媒または吸着剤の中をガスが流れるが、時間経過とともに上に空間ができ、図11(b)に示すように、その空間へガスがショートカットしてしまい、改質効果や脱硫効果が時間経過とともに著しく低下する。
【0045】
実験2は、そのような状況、事実を確認するための実験であり、以下で述べる実験3〜5の前駆的実験に相当する。図7は実験2を説明する図である。本実験では粉化して密になる分を模擬的に下方にスライドさせて触媒層上面の空隙の状況を観察した。図7は、手前側から見た状態を示しているが、斜視図で示せば前述図11(c)と同様となる。
【0046】
図7中、容器1は底面の無い蓋状の容器であり、左右に把持部材3、4を設けている。底板2は、容器1の底面の無い側に収まり、上下方向にスライド可能な底板である。容器1を把持部材3、4により固定した状態で、内部に粒状触媒を詰め、底板2を取り付けた。底板2は上下方向移動が可能な台上に載置されており、この台を上下に移動することで、底板2を容器1に対して上下方向にスライドさせることができる。最初は、底板2を触媒上面が容器1の上面に当たるまで上方に押し上げておき、その後徐々に底板2を下方にスライドし、触媒上面の形状変化を観察した。
【0047】
その結果、図7(b)に示すように、触媒上面がその形状を保ったまま下降し、触媒上面の上部に空隙が生じ、この空隙によりショートカット経路が形成されている。触媒粒子の粒径が2mmφの場合も3mmφの場合も同じであった。
【0048】
〈実験3:従来の粒状触媒充填横置き型容器に“盛り上がり部”を設けた場合における触媒上面の形状変化に係る実験(その1)〉
実験3は、容器の内部に粒状触媒が充填された横置き型容器に“盛り上がり部”を設けた場合における触媒上面の形状変化に係る実験である。図8は実験3を説明する図で、図8(a)は触媒粒子の直径が2mmφの場合、図8(b)は触媒粒子の直径が3mmφの場合である。
【0049】
実験3では“盛り上がり部”の傾斜角度、つまり水平に対する角度を20deg(α=20θ)とした。他の点は実験2、図7と同様である。
【0050】
容器1を把持部材3、4により固定した状態で、内部に粒状触媒を詰め、底板2を取り付けた。底板2は上下方向移動が可能な台上に載置されており、この台を上下に移動することで、底板2を容器1に対して上下方向にスライドさせることができる。最初は、底板2を触媒上面が容器1の上面すなわち傾斜している上面の全面に当たるまで上方に押し上げておき、その後徐々に底板2を下方にスライドし、触媒上面の形状変化を観察した。
【0051】
その結果、図8(a)中の下部図、図8(b)中の下部図のように、触媒上面が極く僅かに横方向に広がるだけで、容器の傾斜した上面と触媒上面との間に略等間隔に空隙が生じることが観察された。触媒粒子の直径が2mmφの場合も3mmφの場合も同じであった。
【0052】
〈実験4:従来の粒状触媒充填横置型容器に“盛り上がり部”を設けた場合における触媒上面の形状変化に係る実験(その2)〉
実験4は、実験3と同じく、容器の内部に粒状触媒が充填された横置き型の容器に“盛り上がり部”を設けた場合における触媒上面の形状変化に係る実験である。図9は実験4を説明する図で、図9(a)は触媒粒子の直径が2mmφの場合、図9(b)は触媒粒子の直径が3mmφの場合である。
【0053】
実験4では“盛り上がり部”の傾斜角度、つまり水平に対する角度を30deg(α=30θ)とした。他の点は実験2〜3、図7〜図8と同様である。その結果、図9(a)中の下部図、図9(b)中の下部図のように、触媒上面が横方向に広がり、空隙部は頂上部に集まることが観察された。触媒粒子の直径が2mmφの場合も3mmφの場合も同じであった。
【0054】
〈実験5:従来の粒状触媒充填横置型容器に“盛り上がり部”を設けた場合における触媒上面の形状変化に係る実験(その3)〉
実験5は、実験3〜4と同じく、容器の内部に粒状触媒が充填された横置き型の容器に“盛り上がり部”を設けた場合における触媒上面の形状変化に係る実験である。図10は実験5を説明する図で、図10(a)は触媒粒子の直径が2mmφの場合、図10(b)は触媒粒子の直径が3mmφの場合である。
【0055】
実験5では“盛り上がり部”の傾斜角度、つまり水平に対する角度を40deg(α=40θ)とした。他の点は実験2〜4、図7〜9と同様である。その結果、図10(a)中の下部図、図10(b)中の下部図のように、触媒上面が横方向に大きく広がり、空隙部は頂上部に集まっている。ショートカット経路は、頂上部のみであり、α=0θ、α=20θの場合に比べて大幅に短縮されている。触媒粒子の直径が2mmφの場合も3mmφの場合も同じであった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明(1)の態様を説明する図
【図2】本発明(1)の態様を説明する図
【図3】本発明(2)の態様を説明する図
【図4】本発明(3)の態様を説明する図
【図5】本発明(4)の態様を説明する図
【図6】実験1を説明する図
【図7】実験2を説明する図
【図8】実験3を説明する図
【図9】実験4を説明する図
【図10】実験5を説明する図
【図11】従来の横置き型改質器や脱硫器の使用態様を示す図
【図12】先行技術:635号公報に示された図
【符号の説明】
【0057】
1 容器
2 底板
3、4 把持部材
413、414 高温の改質器内にガス流路を形成するための隔壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器に関し、より詳しくは改質触媒や脱硫触媒などの粒状触媒、または粒状脱硫剤などの粒状吸着剤を充填した横置き型容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の内部に粒状触媒を充填した横置き型の改質器や脱硫器が知られている。しかし、そのような横置き型改質器や横置き型脱硫器を長時間使用すると、粒状触媒の粒が砕けて細かくなり、下方に詰まってくる。このため、図11(a)に示すように、初めは触媒の中をガスが流れるが、時間の経過とともに上部に空間ができ、図11(b)に示すように、その空間へガスがショートカットしてしまい、改質効果や脱硫効果が時間経過とともに著しく低下する。図11(c)は図11(a)の斜視図である。
【0003】
そのような問題を回避するために、図12のような形状の改質器が考えられている(特開2006−273635号公報、以下“635号公報”という)。しかしこの場合、高温の改質器内にガス流路を形成するための隔壁(413、414)を配置しなければならず、この隔壁厚さを薄く作ると熱により歪むという問題があり、隔壁厚さを厚く作ると改質器が大きくなるという問題がある。また、ガス流路が改質器内で蛇行しているため、改質器外面とガスの接触面積が小さくなり、改質器中央部まで外部からの熱が伝わりにくく、十分な改質性能が得られない可能性がある。
【0004】
【特許文献1】特開2006−273635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器における前述のような問題点を解決し、その使用開始時以降、長期間にわたり安定して運転できる、改質触媒や脱硫触媒などの粒状触媒、または粒状脱硫剤などの粒状吸着剤を充填した横置き型容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。
【0007】
本発明(2)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有するとともに、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。
【0008】
本発明(3)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に複数の盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。
【0009】
本発明(4)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に複数個の盛り上がり部を有するとともに、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。
【0010】
本発明(5)は、本発明(1)〜(4)の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、前記盛り上がり部の水平面に対する角度が30度以上であることを特徴とし、本発明(6)は、本発明(1)〜(4)の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、前記粒状触媒が粒状改質触媒または粒状脱硫触媒であることを特徴とし、本発明(7)は、本発明(1)〜(4)の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、前記粒状吸着剤が粒状脱硫剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器によると、長時間使用により粒状触媒または粒状吸着剤が細粒化して下方に沈み込んでも、容器内の上部にできるガスのショートカット経路を短くし、長時間安定した性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明においては、横置き型容器に粒状触媒または粒状吸着剤を充填する。粒状触媒または粒状吸着剤のうち、粒状触媒には粒状改質触媒、粒状脱硫触媒その他各種あるが、本発明においては、それらいずれの用途の粒状触媒も用いられる。粒状改質触媒の例としてはアルミナ等の粒状担体にNi、Ruなどの金属触媒を担持した改質触媒などがあり、また、粒状脱硫触媒の例としては、アルミナ等の粒状担体にMoとCo(Mo−Co系)、MoとNi(Mo−Ni系)を担持した脱硫触媒などがある。Co−Mo系やNi−Mo系触媒は、炭化水素系燃料中の硫黄化合物を水素によりH2Sに変える触媒である。H2Sは脱硫剤ZnOによってZnSとして除去される。
【0013】
また、粒状触媒または粒状吸着剤のうち、粒状吸着剤には脱臭用、脱湿用、脱硫用などとして活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライトその他各種あるが、本発明においては、それらいずれの用途の粒状吸着剤も用いられる。粒状脱硫剤の例としては、ゼオライトにAg、Cu等の金属を担持した粒状脱硫剤も挙げられる。
【0014】
粒状触媒の粒子の形状、粒状吸着剤の粒子の形状は、球状、顆粒状であるのが好ましいが、ペレット状、錠剤状等であってもよい。
【0015】
以下、本発明(1)〜(4)の態様を順次説明する。
【0016】
〈本発明(1)の態様〉
本発明(1)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。そして、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする。
【0017】
ここで、容器の基本部分とは、前述図11(c)に示すように、その横断面が4角形状または矩形状で、左右に延び、左右両端を壁部材で塞いだ形状に構成された部分である。本発明(1)においては、断面4角形状または矩形状で左右に延びた基本部分と、その上方に盛り上がり部を有し、これらを合わせた空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填するので、横断面4角形状または矩形状の4面のうち、その上面に代えて、盛り上がり部を形成した形となる。なお、その横断面は、4角形状または矩形状とは限らず、円形状、楕円形状にしてもよい。
【0018】
基本部分の横方向左右両端の壁部材にはそれぞれ被処理ガス導入管、処理済みガス導出管が配置される。被処理ガスは横方向の一方の被処理ガス導入管から導入されて容器中の粒状触媒中を流れ、相対する側の処理済みガス導出管から導出される。
【0019】
図1〜2は本発明(1)の態様を説明する図である。図1(a)〜(b)は斜視図で、図1(a)は、盛り上がり部が左右の両側から中央部に向けて平行に盛り上がった態様、図1(b)は、盛り上がり部が左右の両側から中央部に向けて先細状に盛り上がった態様である。図2は図1(a)〜(b)中A−A線断面図で、図1(a)の場合も図1(b)の場合もA−A線断面図としては図2(a)のようになる。すなわち、基本部分と盛り上がり部をその断面で言えば、図2(a)のとおり、基本部分は左右に長い断面長方形であり、盛り上がり部は三角形状である。
【0020】
そのように、容器中、それ本来の空間〔図11(c)参照〕つまり基本部分と本発明に係る盛り上がり部の空間に粒状触媒を充填した横置き型容器において、被処理ガスは、容器使用開始時以降は、図2(a)中波矢印で示すとおり、容器本来の空間に充填した粒状触媒中を流れる。被処理ガスは横方向の一方から導入されて容器中の粒状触媒中を流れ、処理ガス済みガスは相対する他方側から導出される。
【0021】
従来のように盛り上がり部がないとき、すなわち上方に盛り上がった形状でないときは、前述図11(a)のように、初めは触媒の中をガスが流れるが、時間経過とともに上部に空間(空隙)ができ、図11(b)に示すように、その空間へガスがショートカットしてしまい、容器中での触媒効果や吸着効果が時間の経過とともに著しく低下する。
【0022】
これに対して、図1〜2のように、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器を上方に盛り上がった形状とすることにより、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器の使用開始時以降長時間の経過により、触媒粒子または吸着剤粒子が細かくなっても、図2(b)に示すように、粒状触媒または粒状吸着剤がない空間が形成されるのはその頂上部のみであり、これによりガスがショートカットする長さを縮めることができる。
【0023】
〈本発明(2)の態様〉
本発明(2)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。そして、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有するとともに、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする。
【0024】
図3は本発明(2)の態様を説明する図である。粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器を、図3(a)のとおり、左右の両側から中央部に向けて先細状に盛り上げ、且つ、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を設ける。そして、基本部分、盛り上がり部および貯蔵部の空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填する。
【0025】
このうち、その盛り上がり部、すなわち左右の両側から中央部に向けて先細状に盛り上げた部分をその断面で言えば、本発明(1)の場合と同じく三角形状である。貯蔵部は円筒状、角柱状その他適宜の形状とし、その内部空間は盛り上がり部の空間に連なっている。貯蔵部の高さ、容積は適宜設定することができる。
【0026】
そのように、容器中、それ本来の空間〔図11(c)参照〕つまり基本部分、盛り上がり部および頂上部に粒状触媒の貯蔵部を設けて粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、被処理ガスは、使用開始時以降は、図3(a)中波矢印で示すとおり、容器本来の空間に充填した粒状触媒中を流れ、処理ガス済みガスは相対する側から導出される。
【0027】
従来のように上方に盛り上がった形状でないときは、前述図11(a)のように、初めは粒状触媒の中をガスが流れるが、時間経過とともに上部に空間ができ、図11(b)に示すように、その空間へガスがショートカットしてしまい、ガスが粒状触媒を通らないことになって、容器中での触媒効果や吸着効果が時間経過とともに著しく低下する。
【0028】
これに対して、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器を、図3のように、基本部分に加え、その上方に盛り上がった形状とし、且つ、頂上部に粒状触媒の貯蔵部を設けることにより、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器の使用開始時以降長時間の経過により、容器内の触媒粒子または吸着剤粒子が細かくなっても、図3(b)に示すように、貯蔵部の粒状触媒または粒状吸着剤が降下し、盛り上がり部へ流れ込むので、ガスがショートカットするのを防ぎ、またその長さを縮めることができる。
【0029】
また、その使用開始時以降、さらに長時間の経過により、触媒粒子または吸着剤粒子がさらに細かくなったとしても、前述図2(b)に示すように、触媒粒子または吸着剤粒子がない空間が形成されるのは断面三角形状の頂上部のみであり、これによりガスがショートカットする長さを縮めることができる。
【0030】
〈本発明(3)の態様〉
本発明(3)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。そして、前記容器が基本部分とその上方に複数の盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする。被処理ガスは横方向の一方から導入されて容器中の粒状触媒または粒状吸着剤中を流れ、相対する側から導出される。図4は本発明(3)の態様を説明する図である。
【0031】
粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器を、図4(a)のとおり、左右の両側から中央部に向けて先細状に盛り上げた盛り上がり部を複数個設ける。そして、それら複数個の盛り上がり部の空間にも粒状触媒または粒状吸着剤を充填する。図4には盛り上がり部が二つの場合を示しているが、容器の規模等に応じて三つ、四つというように複数個設ける。その盛り上がり部をその断面で言えば、図4(a)のとおり三角形状である。
【0032】
そのように、容器中、それ本来の空間〔図11(c)参照〕つまり基本部分と本発明に係る複数個の盛り上がり部に粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、被処理ガスは、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器の使用開始時以降は、図4(a)中波矢印で示すとおり、容器本来の空間に充填した粒状触媒または粒状吸着剤中を流れる。被処理ガスは横方向の一方から導入されて容器中の粒状触媒または粒状吸着剤中を流れ、処理済みガスは相対する側から導出される。
【0033】
従来のように上方に複数個の盛り上がり部がないときは、前述図11(a)のように、初めは触媒または吸着剤の中をガスが流れるが、時間経過とともに上部に空間ができ、図11(b)に示すように、その空間へガスがショートカットしてしまい、触媒効果や吸着効果が時間の経過とともに著しく低下する。
【0034】
これに対して、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器に、図4(a)のように、それ本来の空間〔図11(c)参照〕つまり基本部分とその上方の複数個の盛り上がり部に粒状触媒または粒状吸着剤を充填することにより、長時間経過により触媒粒子または吸着剤粒子が細かくなっても、図4(b)に示すように、触媒粒子または吸着剤粒子がない空間が形成されるのは頂上部のみであり、これによりガスがショートカットする長さを縮めることができる。
【0035】
〈本発明(4)の態様〉
本発明(4)は、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器である。そして、前記容器が基本部分とその上方に複数個の盛り上がり部を有するとともに、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする。被処理ガスは横方向の一方から導入されて容器中の粒状触媒または粒状吸着剤中を流れ、相対する側から導出される。
【0036】
図5は本発明(4)の態様を説明する図である。粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器を、図5(a)のとおり、左右の両側から中央部に向けて先細状に盛り上げた盛り上がり部を複数個設け、且つ、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を設ける。そして、基本部分、盛り上がり部および貯蔵部の空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填する。
【0037】
そのように、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器本来の空間〔図11(c)参照〕つまり基本部分と複数の盛り上がり部およびそれら複数個の盛り上がり部の各頂上部の貯蔵部に粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、被処理ガスは、その使用開始時以降は、図5(a)中波矢印で示すとおり、容器本来の空間つまり基本部分に充填した粒状触媒または粒状吸着剤中を流れる。
【0038】
従来のように上方に盛り上がった形状でないときは、前述図11(a)のように、初めは粒状触媒または粒状吸着剤の中をガスが流れるが、時間経過とともに上部に空間ができ、図11(b)に示すように、その空間へガスがショートカットしてしまい、触媒効果や吸着効果が時間の経過とともに著しく低下する。
【0039】
これに対して、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器に、図5(a)のように、複数個の盛り上がり部を設け、且つ、それら複数の盛り上がり部の各頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を設けすることにより、長時間経過により、触媒粒子または吸着剤粒子が細かくなっても、図5(b)に示すように、貯蔵部の粒状触媒または粒状吸着剤が降下し、盛り上がり部へ流れ込むので、ガスがショートカットするのを防ぎ、またその長さを縮めることができる。
【0040】
さらに長時間経過により、触媒粒子または吸着剤粒子がさらに細かくなったとしても、前述図2(b)に示すように、触媒粒子または吸着剤粒子がない空間が形成されるのは頂上部のみであり、これによりガスがショートカットする長さを縮めることができる。
【0041】
〈実験1:盛り上がり部における傾斜角度についての実験〉
本発明の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器においては、粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器本来の空間と盛り上がり部に粒状触媒を充填する。本実験1は、盛り上がり部の盛り上がり角度をどの程度以上にすればよいかの目安を得るための実験である。
【0042】
周囲円形の平底ガラス皿の凹部にその直上の略中央部から、粒状触媒(粒状アルミナ坦体にNiを坦持した改質触媒)を静かに流下し(垂らし)たところ、粒状触媒が自重で円錐状すなわち山の形状に広がり、水平面に対して略同じ角度の山となることが観察された。触媒粒子の直径を変えて実施しても同様であった。
【0043】
図6はその実験状況を示す図で、図6(a)は触媒粒子の直径が2mmφ(φ=直径、以下同じ)の場合、図6(b)は触媒粒子の直径が3mmφの場合である。水平面に対して傾斜角度を測定したところ、触媒粒子の直径如何に関わらずその角度は略30deg(θ)であった。この結果は、本発明における盛り上がり部についての傾斜角度を設定する際の目安とすることができる。
【0044】
〈実験2:従来の粒状触媒充填横置き型容器における触媒上面の形状変化に係る実験〉
粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器、例えば改質器や脱硫器を長時間使用すると、前述図11(b)のように触媒粒子または吸着剤粒子が砕けて細かくなり、下方に詰まってくる(粉粒化はより下層部の触媒の方がより進む)。そのため、図11(a)に示すように、初めは触媒または吸着剤の中をガスが流れるが、時間経過とともに上に空間ができ、図11(b)に示すように、その空間へガスがショートカットしてしまい、改質効果や脱硫効果が時間経過とともに著しく低下する。
【0045】
実験2は、そのような状況、事実を確認するための実験であり、以下で述べる実験3〜5の前駆的実験に相当する。図7は実験2を説明する図である。本実験では粉化して密になる分を模擬的に下方にスライドさせて触媒層上面の空隙の状況を観察した。図7は、手前側から見た状態を示しているが、斜視図で示せば前述図11(c)と同様となる。
【0046】
図7中、容器1は底面の無い蓋状の容器であり、左右に把持部材3、4を設けている。底板2は、容器1の底面の無い側に収まり、上下方向にスライド可能な底板である。容器1を把持部材3、4により固定した状態で、内部に粒状触媒を詰め、底板2を取り付けた。底板2は上下方向移動が可能な台上に載置されており、この台を上下に移動することで、底板2を容器1に対して上下方向にスライドさせることができる。最初は、底板2を触媒上面が容器1の上面に当たるまで上方に押し上げておき、その後徐々に底板2を下方にスライドし、触媒上面の形状変化を観察した。
【0047】
その結果、図7(b)に示すように、触媒上面がその形状を保ったまま下降し、触媒上面の上部に空隙が生じ、この空隙によりショートカット経路が形成されている。触媒粒子の粒径が2mmφの場合も3mmφの場合も同じであった。
【0048】
〈実験3:従来の粒状触媒充填横置き型容器に“盛り上がり部”を設けた場合における触媒上面の形状変化に係る実験(その1)〉
実験3は、容器の内部に粒状触媒が充填された横置き型容器に“盛り上がり部”を設けた場合における触媒上面の形状変化に係る実験である。図8は実験3を説明する図で、図8(a)は触媒粒子の直径が2mmφの場合、図8(b)は触媒粒子の直径が3mmφの場合である。
【0049】
実験3では“盛り上がり部”の傾斜角度、つまり水平に対する角度を20deg(α=20θ)とした。他の点は実験2、図7と同様である。
【0050】
容器1を把持部材3、4により固定した状態で、内部に粒状触媒を詰め、底板2を取り付けた。底板2は上下方向移動が可能な台上に載置されており、この台を上下に移動することで、底板2を容器1に対して上下方向にスライドさせることができる。最初は、底板2を触媒上面が容器1の上面すなわち傾斜している上面の全面に当たるまで上方に押し上げておき、その後徐々に底板2を下方にスライドし、触媒上面の形状変化を観察した。
【0051】
その結果、図8(a)中の下部図、図8(b)中の下部図のように、触媒上面が極く僅かに横方向に広がるだけで、容器の傾斜した上面と触媒上面との間に略等間隔に空隙が生じることが観察された。触媒粒子の直径が2mmφの場合も3mmφの場合も同じであった。
【0052】
〈実験4:従来の粒状触媒充填横置型容器に“盛り上がり部”を設けた場合における触媒上面の形状変化に係る実験(その2)〉
実験4は、実験3と同じく、容器の内部に粒状触媒が充填された横置き型の容器に“盛り上がり部”を設けた場合における触媒上面の形状変化に係る実験である。図9は実験4を説明する図で、図9(a)は触媒粒子の直径が2mmφの場合、図9(b)は触媒粒子の直径が3mmφの場合である。
【0053】
実験4では“盛り上がり部”の傾斜角度、つまり水平に対する角度を30deg(α=30θ)とした。他の点は実験2〜3、図7〜図8と同様である。その結果、図9(a)中の下部図、図9(b)中の下部図のように、触媒上面が横方向に広がり、空隙部は頂上部に集まることが観察された。触媒粒子の直径が2mmφの場合も3mmφの場合も同じであった。
【0054】
〈実験5:従来の粒状触媒充填横置型容器に“盛り上がり部”を設けた場合における触媒上面の形状変化に係る実験(その3)〉
実験5は、実験3〜4と同じく、容器の内部に粒状触媒が充填された横置き型の容器に“盛り上がり部”を設けた場合における触媒上面の形状変化に係る実験である。図10は実験5を説明する図で、図10(a)は触媒粒子の直径が2mmφの場合、図10(b)は触媒粒子の直径が3mmφの場合である。
【0055】
実験5では“盛り上がり部”の傾斜角度、つまり水平に対する角度を40deg(α=40θ)とした。他の点は実験2〜4、図7〜9と同様である。その結果、図10(a)中の下部図、図10(b)中の下部図のように、触媒上面が横方向に大きく広がり、空隙部は頂上部に集まっている。ショートカット経路は、頂上部のみであり、α=0θ、α=20θの場合に比べて大幅に短縮されている。触媒粒子の直径が2mmφの場合も3mmφの場合も同じであった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明(1)の態様を説明する図
【図2】本発明(1)の態様を説明する図
【図3】本発明(2)の態様を説明する図
【図4】本発明(3)の態様を説明する図
【図5】本発明(4)の態様を説明する図
【図6】実験1を説明する図
【図7】実験2を説明する図
【図8】実験3を説明する図
【図9】実験4を説明する図
【図10】実験5を説明する図
【図11】従来の横置き型改質器や脱硫器の使用態様を示す図
【図12】先行技術:635号公報に示された図
【符号の説明】
【0057】
1 容器
2 底板
3、4 把持部材
413、414 高温の改質器内にガス流路を形成するための隔壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【請求項2】
粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有するとともに、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【請求項3】
粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に複数の盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【請求項4】
粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に複数個の盛り上がり部を有するとともに、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、前記盛り上がり部の水平面に対する角度が30度以上であることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、前記粒状触媒が粒状改質触媒または粒状脱硫触媒であることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、前記粒状吸着剤が粒状脱硫剤であることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【請求項1】
粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【請求項2】
粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に盛り上がり部を有するとともに、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【請求項3】
粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に複数の盛り上がり部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【請求項4】
粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器であって、前記容器が基本部分とその上方に複数個の盛り上がり部を有するとともに、その盛り上がり部の頂上部に粒状触媒または粒状吸着剤の貯蔵部を有し、それらの空間に粒状触媒または粒状吸着剤を充填してなることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、前記盛り上がり部の水平面に対する角度が30度以上であることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、前記粒状触媒が粒状改質触媒または粒状脱硫触媒であることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器において、前記粒状吸着剤が粒状脱硫剤であることを特徴とする粒状触媒または粒状吸着剤を充填した横置き型容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−125690(P2009−125690A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304927(P2007−304927)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【出願人】(000129231)株式会社ガスター (277)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【出願人】(000129231)株式会社ガスター (277)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]