説明

粗製グリセリン相の処理を含むアクロレインの製造方法

【解決手段】アクロレインの製造方法は、(a)アクロレイン反応領域において水性グリセリン相G1を脱水して水性アクロレイン反応相を得る工程と、(b)前記アクロレイン反応相を、アクロレイン含有量の高いアクロレイン相と、前記アクロレイン相よりもアクロレイン含有量が低く、グリセリンと、水と、グリセリン及び水以外の残留物とを含む残留物相R1と、に少なくとも部分的に分離する工程と、(c)前記残留物相R1の少なくとも一部を前記工程(a)に再循環させる工程と、を含み、i)水と、グリセリンと、グリセリン及び水以外の残留物とを含むグリセリン相G2に存在する少なくとも1種の残留物を前記グリセリン相G2から分離し、得られた精製グリセリン相G2を前記アクロレイン反応領域に直接供給するか、ii)グリセリン及び水以外の少なくとも1種の残留物を、水と、グリセリンと、グリセリン及び水以外の残留物とを含むグリセリン相G2をアクロレイン含有量の低い前記残留物相R1と混合することによって得られる混合相M1から分離し、得られた精製混合相M1を前記アクロレイン反応領域に供給する。また、本発明は、アクリル酸、吸水性ポリマー構造体、化合物及び衛生用品の製造方法、前記方法を実施するための装置、それらの使用、グリセリン相の精製方法並びにグリセリン相の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、アクロレイン、アクリル酸及び吸水性ポリマー構造体の製造方法、前記方法を実施するための装置、それらの使用、グリセリン相の精製方法並びにグリセリン相の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸は、さらに処理を行うことによってポリアクリレート及びコポリマーを生成することができるため、プラスチック業界において重要な原料である。アクロレインは、アクリル酸の工業的な合成における出発材料として使用されている。アクロレインの重要な工業的な製造方法はグリセリンの部分酸化である。グリセリドの開裂又はエステル交換によって大量のグリセリンを得ることができる。
【0003】
グリセリドの開裂又はエステル交換プロセスでは、約70〜90%、通常は75〜85%の濃度を有し、製造方法に応じて他の成分を含む粗製グリセリンが得られる。通常、最も多く含まれる二次的成分は約1〜約20%の水である。また、各種鉱酸のナトリウム及びカリウム塩、例えば、塩酸、硫酸又はリン酸塩が通常は含まれる。場合によっては、クエン酸等の有機酸の塩も含まれる。また、遊離脂肪酸と石鹸が粗製グリセリンに含まれる。望ましくない有機成分は、MONG(matter organic non−glycerol(非グリセリン有機物質))と呼ばれる。
【0004】
このように製造された粗製グリセリンを工業規模の合成プロセスにおいて使用すると、塩(特に塩化物)によって腐食が発生する。従って、塩は粗製グリセリンから除去しなければならない。アクロレインの合成では、粗製グリセリンの有機成分により、望ましくない副生成物が生成すると共に精製時に問題が生じる。また、有機成分は触媒に対して望ましくない作用を有し、炭素の析出が生じる。
【0005】
グリセリンからアクロレインを製造し、さらなる処理を行ってアクリル酸を得る方法は特許文献1に開示されている。特許文献1では、トリグリセリドの開裂によってグリセリンを製造し、さらに処理してアクロレインを得る。反応混合物からのアクロレインの分離は蒸留によって行う。この方法では、高沸点成分も除去される。水とグリセリンを多く含む混合物は、アクロレインの合成のための反応混合物に再循環する。
【0006】
特許文献2には別の方法が開示されている。特許文献2では、水性グリセリン相からアクロレインを製造する。得られる反応生成物からアクロレインを除去する。そして、アクロレインを除去した反応相を反応領域に再循環し、未反応のグリセリンをアクロレインに転化させる。
【0007】
特許文献1及び特許文献2に開示された方法は、未反応のグリセリンを合成工程に戻す回路により、使用するグリセリンの多くを反応させることができるという利点を有する。
【0008】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された方法には、望ましくない副生成物(特に塩及び塩化物イオン)の一部が長期にわたる大規模な工業的使用において問題を引き起こし、装置の停止時間が増加するという欠点がある。そのため、特許文献1は、高沸点成分分離装置からの水とグリセリンを含む混合物を膜によって精製することを提案している。しかしながら、この方法は上述した欠点を部分的に軽減するに過ぎない。そのような膜を使用しても、多くの成分、特に塩又は塩化物イオンを完全に(又は全く)除去することはできない。そのため、反応を長期間にわたって行うと、望ましくない成分が回路にますます蓄積し、反応に悪影響を与えたり、腐食によって装置の一部にダメージを与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第WO2006/092272号
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第10 2005 028 624号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術の欠点を少なくとも部分的に克服することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、工業的な使用に特に適し、改善されたアクリル酸の製造方法及びアクリル酸の重合生成物、例えば吸水性ポリマー構造体を提供することにある。すなわち、簡便かつ効率的に行うことができ、望ましくない副生成物の生成又は蓄積が非常に少ない方法を提供することを目的とする。本発明の方法は、単一の装置において反応成分を非常に効率的に利用することを可能とすることを目的とする。特に、塩及び塩化物イオンの蓄積を大きく低減し、簡単な運転により、長い停止時間を要することなく、腐食によるダメージ及び酸化反応に対する悪影響を防止又は少なくとも低減することを目的とする。
【0012】
本発明の別の目的は、理想的には回路の中断なく実施することができるアクロレイン及びアクロレインからの生成物の統合された製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、グリセリン溶液の供給時における塩及び有機成分等の副生成物の蓄積を防止し、例えばバイオディーゼルの製造における副生成物として得られる粗製グリセリンの使用を可能とすることにある。
【0014】
本発明の別の目的は、上記方法を上流及び下流の工程と最適に組み合わせることにより、上記方法を単一のプロセス及び/又は単一の装置を使用して実施できるようにすることを目的とする。これは、アクリル酸の製造方法及び吸水性ポリマー構造体等のアクリル酸の重合生成物に特に当てはまる。
【0015】
本発明の別の目的は、グリセリン含有出発溶液及び中間体、特に、脂肪の開裂又はバイオディーゼルの製造によって得られる粗製グリセリンを、工業的使用に適した非常に安価でエネルギー消費量の低い方法で精製することができ、アクロレイン及びアクロレインの生成物を製造するために使用することができる方法を提供することにある。これは、特に、製造方法を理想的には連続的に実施する際に当てはまる。
【0016】
本発明の別の目的は、グリセリン相を特に効果的に精製することができる、好ましくはグリセリドの開裂又はエステル交換によって得られたグリセリン相の精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的の少なくとも1つは、カテゴリを構成する請求項に記載された主題によって達成され、従属請求項は本発明の好適な実施形態を定義する。
【0018】
特に、本発明によれば、上記目的は、アクロレインの製造方法であって、
(a)アクロレイン反応領域において水性グリセリン相G1を脱水して水性アクロレイン反応相を得る工程と、
(b)前記アクロレイン反応相を、アクロレイン含有量の高いアクロレイン相と、前記アクロレイン相よりもアクロレイン含有量が低く、グリセリンと、水と、グリセリン及び水以外の残留物とを含む残留物相R1と、に少なくとも部分的に分離する工程と、
(c)前記残留物相R1の少なくとも一部を前記工程(a)に再循環させる工程と、を含み、
i)水と、グリセリンと、グリセリン及び水以外の残留物とを含むグリセリン相G2に存在する少なくとも1種の残留物を前記グリセリン相G2から分離し、得られた精製グリセリン相G2を前記アクロレイン反応領域に直接供給するか、
ii)グリセリン及び水以外の少なくとも1種の残留物を、水と、グリセリンと、グリセリン及び水以外の残留物とを含むグリセリン相G2をアクロレイン含有量の低い前記残留物相R1と混合することによって得られる混合相M1から分離し、得られた精製混合相M1を前記アクロレイン反応領域に供給する方法によって達成される。
【0019】
アクロレイン含有量の低い残留物相R1に存在する残留物としては、原則として、グリセリンのアクロレインへの脱水によって形成された副生成物並びに工程(a)に使用される水性グリセリン相G1に存在する副生成物及び脱水によって前記副生成物から形成される生成物が挙げられる。アクロレイン含有量の低い残留物相R1中の残留物の含有量は、通常は0.001〜20重量%、好ましくは0.001〜10重量%、特に好ましくは0.001〜5重量%である。タール生成物又は炭化生成物、アクロレインのオリゴマー、グリセリンのオリゴマー及びこれらのオリゴマーのタール生成物又は炭化生成物等の固体が特に重要である。
【0020】
また、本発明によれば、上記目的は、アクリル酸の製造方法であって、
(A1)上述した本発明に係るアクロレインの製造方法によってアクロレイン含有量の高いアクロレイン相を得る工程と、
(A2)前記工程(A1)で得られたアクロレイン含有量の高い前記アクロレイン相の酸化、好ましくは気相触媒の存在下における気相酸化を行ってアクリル酸相を得る工程と、
(A3)必要に応じて前記アクリル酸相を処理してアクリル酸を得る工程と、
を含む方法によって達成される。
【0021】
また、本発明によれば、上記目的は、ポリマーの製造方法であって、
(P1)重合相内において上述した本発明に係るアクリル酸の製造方法を行ってアクリル酸相又はアクリル酸を用意する工程と、
(P2)前記重合相を重合させてポリマーを得る工程と、
を含む方法によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
アクロレインの製造方法は一般に公知である。アクロレインの製造方法については、特許文献1及び特許文献2に記載されている。上記出願の主題、特に、上記出願に開示されたアクロレイン、アクリル酸及び吸水性ポリマー構造体の製造(合成)方法並びに装置は本願明細書に援用する。本発明に係る精製(i)及びii))はこれらの方法においても使用することができる。
【0023】
本発明のアクロレインの製造方法の工程(a)では、アクロレイン反応領域において水性グリセリン相G1を脱水して水性アクロレイン反応相を得る。「アクロレイン反応領域」という用語は、グリセリンの脱水を行ってアクロレインを生成する装置の部分を意味する。
【0024】
本発明の好適な実施形態では、グリセリンの脱水は液相において行うことができる。本発明に係る方法の別の好適な実施形態では、脱水は気相において行う。また、液相における脱水と気相における脱水を組み合わせて行うこともできる。
【0025】
脱水方法に関しては、特許文献1に開示された対応する方法を援用する。
【0026】
本発明では、アクロレイン反応領域内の圧力は、少なくとも50バール、好ましくは少なくとも80バール、特に好ましくは少なくとも120バール、より好ましくは少なくとも140バールであることが好ましい。アクロレイン反応領域は、入口に圧力発生器(例えば、ポンプ)が接続され、出口に圧力調整弁(例えば、圧力弁、より好ましくは圧力調整弁)が接続された圧力領域として構成されている。工程(a)における脱水反応は、アクロレイン反応領域の少なくとも一部において生じる。通常、アクロレイン反応領域は少なくとも部分的に管状であり、本発明の方法を実施するために十分な500バールの最高圧力と600℃の最高温度に耐え得るように設計されている。
【0027】
また、本発明では、アクロレイン反応領域内の温度は、少なくとも少なくとも80℃、好ましくは少なくとも180℃、特に好ましくは少なくとも230℃、より好ましくは少なくとも280℃、さらに好ましくは少なくとも320℃であることが好ましい。このような温度は、アクロレイン反応領域内の圧力条件及びアクロレイン反応領域の適切な加熱によって達成することができる。通常、アクロレイン反応相及び特にアクロレイン反応相内に存在する水が少なくとも超臨界領域となるか、少なくとも一部が超臨界領域となるように、アクロレイン反応領域内の圧力及び/又は温度条件を選択する。
【0028】
また、本発明に係る方法では、アクロレイン反応領域が反応混合物に加えて脱水触媒を含むことが好ましい。アクロレイン反応相に使用されるグリセリンの量に対する脱水触媒の量の比率は、0.001:1000〜10:1000、好ましくは0.01:1000〜5:1000、特に好ましくは0.04:1000〜1:1000であることが好ましい。
【0029】
本発明に係る方法の好適な実施形態では、脱水触媒は、酸又は塩基あるいはそれらの組み合わせであってもよい。脱水触媒が酸である場合には、酸は酸性を有する超臨界領域近傍又は超臨界領域において強酸として作用する水以外の化合物である。脱水触媒が酸である場合には、無機及び有機酸を使用することができる。無機酸としては、特に、HPO等のリン酸、HSO等の硫酸、B(OH)等のホウ素酸又はそれらの混合物が挙げられる。脱水触媒の別の実施形態では、脱水触媒は−1未満のpK値を有する超酸である。脱水触媒が有機酸である場合には、アルキルスルホン酸が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸又はそれらの混合物が特に好ましい。脱水触媒が塩基である場合には、特に、アルミニウム、ランタン、アルカリ金属又はアルカリ金属土類酸化物、水酸化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、リン酸水素、炭酸塩又はそれらの少なくとも2種の混合物が挙げられ、それらは担体上に担持されていてもよい。
【0030】
また、脱水触媒は、室温で固体又は液体であってもよい。固体の脱水触媒としては、固体担体上に固定された液体脱水触媒も挙げられる。好ましい固体の脱水触媒は、特に、ゼオライト等の酸化ケイ素含有化合物である。また、Ti、Zr又はCe酸化物、硫化酸化物及びリン酸化酸化物又はそれらの少なくとも2種の混合物も挙げられる。ドイツ特許第42 38 493号には脱水触媒が詳細に記載されている。ドイツ特許第42 38 493号の開示内容は本願明細書に援用する。
【0031】
本発明の方法では、アクロレイン反応相は水以外の液体を含むことが好ましい。液体の脱水触媒を使用する場合には、水以外の液体は触媒以外の液体である。これらの液体は、溶解性向上剤として機能する。通常、そのような液体は、20℃で水と混和し、少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくは2つのヘテロ原子を含み、アクロレイン反応相の他の成分に対して不活性な有機化合物である。そのような液体としては、例えば、ヒドロキシピペリジンや、スルホラン、ジグライム、テトラグリム、ジオキサン、トリオキサン又はγ−ブチロラクトン等の中性又は極性液体が挙げられる。また、キレート性を示す化合物又はキレート性を示す化合物の溶液も挙げられる。キレート性を示す化合物としては、例えば、Versene(登録商標)、Versenex(登録商標)、Entarex(登録商標)又はDetarex(登録商標)の商品名で入手可能なEDTA、NTA又はDPTAあるいはクラウンエーテルが挙げられる。
【0032】
また、本発明の方法では、アクロレイン反応領域が金属及び/又は金属化合物を含むことが好ましい。この場合、一価、二価又は多価金属又は金属化合物が好ましい。また、金属又は金属化合物が、アクロレイン反応領域を形成するために使用される金属とは異なることが好ましい。本発明の一実施形態では、金属又は金属化合物は、接着剤によってアクロレイン反応領域を形成するために使用する材料に直接又は間接的に固定されている。ただし、金属又は金属化合物は、アクロレイン反応領域において粒子として存在していてもよい。通常、金属又は金属化合物は、液体又は気体流によってアクロレイン反応領域から排出されないことが好ましい。金属又は金属化合物が粒子状である場合には、金属又は金属化合物を固定する代わりに、アクロレイン反応領域に設けられた篩又はフィルタを使用して金属又は金属化合物の排出を防止することができる。また、本発明の一実施形態では、金属又は金属化合物は、前記液体が金属又は金属化合物に配位又は複合化できるように選択する。また、本発明の方法では、金属が金属化合物であることが好ましく、金属塩又は配位子によって錯体を形成した金属が特に好ましい。配位子としては、特に、カルボニル等の一酸化炭素、トリフェニルホスフィン、Cp、Cp又はAcAcが挙げられる。特に、金属塩は硫酸塩又はリン酸塩として使用される。金属としては、スズ(特に硫酸スズ)、亜鉛(特に硫酸亜鉛)、マグネシウム(特に硫酸マグネシウム)、銅(特に硫酸銅)、パラジウム(例えば、特に主に酢酸塩として使用されるパラジウムカルボニル錯体)、ロジウム(特に主に酢酸塩として使用されるロジウムカルボニル錯体)、ルテニウム(特に主に酢酸塩として使用されるルテニウムカルボニル錯体)、ニッケル(特に主に酢酸塩として使用されるニッケルカルボニル錯体)、鉄(特に鉄カルボニル錯体)、コバルト(特にコバルトカルボニル錯体)、セシウム(特に酢酸セシウム)、タンタニド(特にランタン)又はそれらの少なくとも2種の混合物が挙げられる。好ましくは、金属は、通常は一酸化炭素の存在下において錯化剤を有する塩として使用される。また、ヘテロポリ酸も金属化合物の例として挙げられる。ヘテロポリ酸のうち、例えば、クロム、タングステン又はモリブデン等の金属又は非金属(好ましくはリン)の複数の酸分子が水の脱離によって結合する際に生成するヘテロポリ酸が好ましい。ヘテロポリ酸は、例えば、リンタングステン酸、ケイタングステン酸又はケイモリブデン酸又は対応するバナジウム化合物である。
【0033】
また、本発明の方法では、アクロレイン反応領域におけるアクロレイン反応相の滞留時間が1〜10,000秒、好ましくは5〜1000秒、特に好ましくは10〜500秒であることが好ましい。
【0034】
また、本発明の方法では、アクロレイン反応相が、アクロレイン反応相の0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜7重量%、より好ましくは0.005〜5重量%の一酸化炭素を含むことが有用である。これは、副次的成分の量を減少させるために有利な場合がある。
【0035】
また、本発明の方法では、アクロレイン反応領域の出口において、アクロレイン反応相が、アクロレイン反応相の50重量%未満、好ましくは25重量%未満、より好ましくは15重量%未満のグリセリンを含むことが好ましい。上記条件により、工程(b)を実施した後に、アクロレインのアクリル酸への転化を著しく悪化させることなく、本発明のアクリル酸の製造方法の工程(A2)にかなり長時間にわたって供給することができるアクロレイン相が得られる。また、本発明の方法では、通常はアクロレイン反応領域の入口におけるグリセリン濃度はアクロレイン反応領域の出口におけるグリセリン濃度よりも高く、好ましくは出口に向かって連続的に減少する。また、本発明では、アクロレイン反応領域の出口において、アクロレイン反応相が、アクロレイン反応相の0.1〜50重量%、好ましくは5〜45重量%、より好ましくは10〜40重量%のアクロレインを含むことが好ましい。
【0036】
また、本発明の方法では、アクロレイン反応相の少なくとも一部が気体であることが好ましい。また、アクロレイン反応領域内のアクロレイン反応相が少なくとも2種類の状態で存在していることが好ましい。2種類の状態は、好ましくは液体状態と気体状態である。アクロレイン反応相の少なくとも一部が気体である場合には、アクロレイン反応気相内のアクロレイン濃度が、アクロレイン反応気相とは異なる状態のアクロレイン反応相の一部におけるアクロレイン濃度よりも高いことが好ましい。アクロレイン反応気相内のアクロレイン濃度が高い場合には、アクロレインの(部分的な)除去が非常に容易となる。すなわち、アクロレイン濃度が高いアクロレイン反応気相内を適切な圧力調整によってアクロレイン反応領域から排出させ、減圧によってアクロレインを高濃度で得ることができるためである。
【0037】
このようにして得られるアクロレインの純度が高ければ、熱交換器による冷却又は例えば圧力調整弁として構成された圧力調整器によって行う減圧に加えて分離装置内における蒸留によって行われるさらなる分離による冷却が不要となる。また、アクロレイン反応領域から排出されるアクロレイン相は、処理されたアクロレイン相を分離装置に供給する前に、逃がし弁及び熱交換器を含み、直列に接続された複数の装置を通過させることもできる。アクロレイン反応領域内の圧力調整器の前後における圧力差は、好ましくは少なくとも30バール、好ましくは少なくとも60バール、より好ましくは少なくとも100バールであることが好ましい。また、本発明の方法では、アクロレイン反応領域内のアクロレインの少なくとも一部が超臨界状態にあることが好ましい。この場合、収率が向上する。
【0038】
また、本発明の方法では、工程(b)における部分的な分離前のアクロレイン反応相は、部分的な分離中よりも高い圧力下にあることが有利である。また、本発明では、工程(b)における部分的な分離前のアクロレイン反応相のアクロレイン濃度が、部分的な分離後のアクロレイン濃度よりも少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも50%高いことが好ましい。また、本発明の方法ではエントレーナガスを使用することが好ましい。エントレーナガスは好ましくはアクロレイン反応領域の上流に供給し、アクロレイン反応相を排出する機能を有する。この場合、アクロレイン反応相の気体部分に可能な限り多量のアクロレインが存在すると有利である。エントレーナガスとしては、本発明の方法に使用される化合物に対して不活性な公知のガスが挙げられる。そのようなエントレーナガスの例としては、例えば、窒素、空気、CO、水、アルゴンが挙げられる。本発明の方法では、エントレーナガスをアクロレイン反応領域を通過させた後に、エントレーナガスの少なくとも一部をアクロレイン反応領域に再供給することが好ましい。エントレーナガスは、アクロレイン反応領域の直前又はアクロレイン反応領域の上流の任意の位置に供給することができ、例えば、開始材料の予備圧力を生成するために使用することができる。予備圧力は、アクロレイン反応領域に必要な圧力条件まで適当なポンプによってさらに上昇させることができる。
【0039】
本発明のアクロレインの製造方法の工程b)では、アクロレイン反応相を、アクロレイン含有量の高いアクロレイン相と、前記アクロレイン相よりもアクロレイン含有量が低く、グリセリンと、水と、グリセリン及び水以外の残留物とを含む残留物相R1と、に少なくとも部分的に分離する。分離は、残留物相R1を好ましくは塔底留出物として得る蒸留によって行うことが好ましい。
【0040】
本発明のアクロレインの製造方法の工程(c)では、残留物相R1の少なくとも一部を工程(a)に再循環させる。
【0041】
本発明のアクロレインの製造方法では、i)水と、グリセリンと、グリセリン及び水以外の残留物とを含むグリセリン相G2に存在する少なくとも1種の残留物を前記グリセリン相G2から分離し、得られた精製グリセリン相G2を前記アクロレイン反応領域に直接供給するか、ii)グリセリン及び水以外の少なくとも1種の残留物を、水と、グリセリンと、グリセリン及び水以外の残留物とを含むグリセリン相G2をアクロレイン含有量の低い前記残留物相R1と混合することによって得られる混合相M1から分離し、得られた精製混合相M1を前記アクロレイン反応領域に供給する。
【0042】
本発明のアクロレインの製造方法のi)において、「精製グリセリン相G2をアクロレイン反応領域に直接供給する」とは、精製グリセリン相G2をさらに精製することなくアクロレイン反応領域に供給することを意味する。ただし、精製グリセリン相G2をアクロレイン反応領域に供給する前に、例えば別のグリセリン相、特に工業用グリセリン等を精製グリセリン相G2に添加することもできる。本発明のアクロレインの製造方法のii)における「精製混合相M1をアクロレイン反応領域に直接供給する」場合も同様である。
【0043】
本発明によれば、グリセリン相G2は、好ましくは、例えば、バイオディーゼルの製造時に、トリグリセリドの開裂又はエステル交換において反応生成物として得られる粗製グリセリン相である。
【0044】
グリセリン相G2は、好ましくは上記粗製グリセリン相であり、通常は、グリセリンと水に加えて、別の残留物、特に、塩、脂肪酸、石鹸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及びグリセリンの縮合物からなる群から選択される残留物を含む。粗製グリセリンの含水量は、グリセリン相G2、好ましくは粗製グリセリンに対して、通常は約5〜約25重量%、特に好ましくは約15〜約20重量%である。グリセリンの含有量は、グリセリン相G2、好ましくは粗製グリセリンに対して、通常は70〜90重量%、好ましくは75〜85重量%である。特に、塩は無機又は有機酸のアルカリ金属塩である。特に、アルカリ金属塩はナトリウム又はカリウム塩である。通常、塩は塩酸、硫酸、リン酸又はクエン酸の塩である。グリセリン相G2、好ましくは粗製グリセリン相の組成は、脂肪の開裂又は脂肪のエステル交換(例えば、バイオディーゼルの製造)に由来するものであるか否か並びに脂肪の開裂又はエステル交換に使用される動物油、植物油又は脂肪の純度に応じて異なる。
【0045】
粗製グリセリン相をグリセリン相G2として使用する場合には、グリセリン相G2又は混合相M1から残留物を分離するとは、少なくとも1種の残留物の含有量を、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも80又は90%低下させることを意味する。これは、特に塩又はイオン、特に塩化物イオンに当てはまる。本発明の好適な実施形態では、グリセリン相G2又は混合相M1における塩化物イオンの含有量を、アクロレイン反応相における塩化物イオンの含有量が<50ppm、好ましくは<20ppm、特に好ましくは<5又は<10ppmとなるように低下させる。残留物の除去後のグリセリン相G2及び/又は混合相M1は、装置の腐食が減少又は実質的に全く生じないか、及び/又はアクロレインの合成が悪影響を受けないか、アクロレインの合成に対する悪影響が減少するような純度を有する。
【0046】
本発明の一実施形態では、グリセリドの開裂による粗製グリセリンの調製並びにアクロレインを生成するためのグリセリンの処理は、単一の連続プロセスとして行う。ただし、粗製グリセリンを別途調製し、本発明の方法に供給することもできる。
【0047】
i)又はii)における残留物の除去は、(α1)蒸留、(α2)濾過、好ましくは精密濾過、限外濾過、逆浸透、ナノ濾過又はそれらの少なくとも2種からなる群から選択される濾過、(α3)電気透析、(α4)イオン交換処理、(α5)活性炭処理の少なくとも1つ、好ましくは2以上によって行うことが好ましい。
【0048】
上記分離方法は、当業者に公知であって、適当であると考えられる任意の順序で組み合わせることができる。また、1つの分離方法を、少なくとも1つの別の分離方法を間に挟んで2回以上行うこともできる。各分離方法は本発明の実施形態を表す。α1α2、α1α3、α1α4、α2α3、α2α4、α3α4、α2α5の組み合わせ(順序)も本発明の方法の実施形態を表す。本発明では、ナノ濾過又は逆浸透又はナノ濾過及び逆浸透によって分離を行うことが好ましい。また、ナノ濾過によって分離を行った後に活性炭処理を行うことも有利である。
【0049】
粗製グリセリンをグリセリン相G2として使用する場合には、上記分離方法によって、少なくとも一部、好ましくは少なくとも10重量%、特に好ましくは少なくとも60重量%の塩を粗製グリセリンから除去することが必要である。
【0050】
蒸留(α1)によって分離を行う場合には、蒸留は2段階以上で行うことができる。第2段階以降は、第1段階よりも低い圧力で行うことが好ましい。第2段階以降は、20〜400ミリバール、好ましくは30〜300ミリバール、特に好ましくは50〜150ミリバールの圧力で行うことが好ましい。通常、第1段階は、500ミリバール〜1バールの圧力で行う。
【0051】
また、濾過(α2)によって分離を行うことができる。この場合、脂肪の開裂又は脂肪のエステル交換に由来する粗製グリセリンをグリセリン相G2として使用する本発明のアクロレインの製造方法の好適な実施形態では、i)及びii)における分離は、ナノ濾過、逆浸透又はこれらの組み合わせによって行うことが好ましく、ナノ濾過によって行うことが特に好ましい。予期せぬことに、グリセリン水溶液、例えば、粗製グリセリンは、純粋なグリセリンとは異なり、ナノ濾過によって非常に高い透過流束で精製することができ、粗製グリセリン中の塩のかなりの部分を分離することができることが判明した。
【0052】
ナノ濾過(NF)は、分離限界(separation limit)が逆浸透と限外濾過との間にある膜分離法である。運転圧力は、好ましくは0.3〜4.0MPaである。排除限界(exclusion limit)は、好ましくは100〜3000ダルトン、特に好ましくは180〜2000ダルトンである。NF膜の選択性は、主として2つのパラメータによって決まる。第1に、保持率は化合物の大きさ(分子量)に依存する。ただし、NF膜の保持率と透過性は、溶液中の塩及び化合物の電荷と価数にも大きく依存する。一価イオンの希釈溶液はNF膜をほぼ通過することができるが、多価イオン(例えば、硫酸塩及び炭酸塩)はほとんどがNF膜に保持される。
【0053】
ナノ濾過は、好ましくはスパイラル型モジュールであるポリマーナノ濾過膜によって行うことが好ましい。
【0054】
クロスフロー原理に基づいて使用されるスパイラル型モジュールは、例えばドイツ特許第43 28 407 C1号に記載されている。スパイラル型モジュールは、内部にスパイラル型構造を含むハウジングを有する。そのようなスパイラル型モジュールでは、膜はバッグ状であり、内部において三辺が多孔性膜支持体によって塞がれている。膜は、穴を有する中央管の周囲に分離ブレード(フィードスペーサ)と共に巻かれている。濾過対象の溶液(例えば、粗製グリセリン(原料))は、高圧下で軸方向に膜バッグ間の間隙を流れ、水とグリセリンの一部は膜を透過してバッグに入り、膜支持体内の中央回収管の周囲を螺旋状に流れる。透過液は、中央管に隣接するバッグの塞がれていない辺を流れて中央管に入り、モジュールの外部に出る。
【0055】
スパイラル型モジュールは、少なくとも40mm、特に好ましくは少なくとも45mm、最も好ましくは少なくとも50mmの厚みを有するフィードスペーサを有することが有利である。
【0056】
本発明に使用することができるナノ濾過膜としては、特に、ポリアミド又はポリエーテルスルホンからなるポリマーナノ濾過膜が挙げられる。なお、上述した膜以外に、当業者に公知のあらゆるナノ濾過膜を使用することができる。例えば、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、テフロン(登録商標)、多孔質炭素、セラミック、酢酸セルロース、ポリ尿素、芳香族又は脂肪族ポリアミド、スルホン化ポリアリールエーテル、ポリフラン、ポリベンズイミダゾール、フルオロポリマー、ポリイミドまたはポリイミダゾピロリドン等のポリエーテル芳香族等からなる膜を使用することができる。本発明の方法に好適なその他のナノ濾過膜としては、Nadir N30F(Microdyn−Nadir社製)、DESAL 5DK、DESAL 5DL(GE Osmonics社製(米国))として入手できる膜が挙げられる。
【0057】
本発明では、2000kDa以下、特に好ましくは1500kDa以下、より好ましくは1000kDa以下、最も好ましくは500kDa以下の排除サイズを有するナノ濾過膜を使用することが有利である。
ナノ濾過による分離を行う場合には、少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%の透過液収率で分離を行うことが好ましい。
【0058】
また、ナノ濾過による分離を行う場合には、好ましくは40℃、特に好ましくは45℃、最も好ましくは50℃を超える温度及び好ましくは30バール、特に好ましくは40バール、最も好ましくは50バールを超える膜間圧(transmembrane pressure)で分離を行うことが好ましい。
【0059】
逆浸透では、圧力を使用して浸透プロセスを逆転させる。特定の材料の濃度を減少させる媒体を、半透膜によって濃度を上昇させる媒体から分離する。第1の媒体は、浸透によって濃度平衡となる圧力よりも高い圧力下に置く。その結果、溶媒の分子は自然浸透方向とは反対の方向に移動し、溶解物質が低い濃度を有する領域に入る。限外濾過は、粒径に依存し、ふるい効果に基づく圧力による分離プロセスである。限界濾過膜は、好ましくは0.5〜200nm、特に好ましくは1〜100nmの孔径を有し、200ダルトン、好ましくは300ダルトンの分子量を有する化合物を保持できることが好ましい。
【0060】
本発明のアクロレインの製造方法のi)及びii)における分離を濾過(α2)によって行う場合には、本発明において最も好ましいナノ濾過及び限界濾過以外に、精密濾過を使用することもできる。精密濾過(MF)では、好ましく圧力を利用し、膜を使用して水溶液から粒子を分離する。精密濾過は、コロイダル粒子又は約0.02〜約10μmの直径を有する他の微細粒子の濾過である。通常、MFの運転圧力は比較的低く、0.02〜0.5MPaの範囲である。
【0061】
また、電気透析(α3)によって分離を行うことができる。電気透析は、電位の影響下において半透膜を介してイオンを輸送する分離方法である。使用する膜は、正又は負に荷電されたイオンのみを透過させる(カチオン又はアニオン選択的に作用する)。カチオン選択的な膜は、負に荷電したイオンを保持し、正に荷電したイオンを透過させる負に荷電した物質を含む高分子電解質である。アニオン選択的膜及びカチオン選択的膜によって交互に連結された複数の空間(室)を配置することにより、溶液からイオンを除去することができる。前記空間は、シート状の陽極と陰極との間に位置する。これにより、溶液のイオンがいくつかの空間において濃縮され、その他の空間において溶液からイオンが除去される。塩濃度が上昇した溶液が混合されて濃縮液が得られ、塩濃度の低い溶液は希釈液を形成する。濃縮溶液は最終濃度に達するまで循環させ、その後排出させる。この方法は、水溶液からイオンを除去する場合に特に適している。一方、荷電していない粒子は除去することができない。カチオン選択的膜はスルホン化ポリスチレンを含むことが好ましく、アニオン選択的膜は4級アミン基を有するポリスチレンからなることが好ましい。電気透析を行う前に溶液の前処理が必要な場合がある。一実施形態では、膜の孔が閉塞することを防止するために、浮遊物質、特に10mmを超える直径を有する浮遊物質を予め除去する。電気透析では、流動方向を逆転させることができる。これにより、堆積物を定期的に除去することができる。
【0062】
また、イオン交換処理(α4)による分離を行うこともできる。イオン交換処理は、水に溶解したイオンを他のイオンで置換する装置を使用して行う。例えば、イオン交換材料(イオン交換樹脂)が充填され、処理対象の溶液を流すカラムを使用する。置換されるイオンはイオン交換材料に結合し、イオン交換材料は溶液にイオンを放出する。本発明では、溶液の塩イオンをプロトン及びヒドロキシイオンで置換し、塩を溶液から除去することが好ましい。本発明の特定の実施形態では、本発明に係るイオン交換処理は電気透析ではなく、電位の印加及び/又は高い圧力の使用は行わない。
【0063】
本発明の方法の特定の実施形態では、i)及びii)において、水とグリセリン以外の残留物を、濾過、特に好ましくはナノ濾過又は逆浸透、最も好ましくはナノ濾過によって分離し、次に電気透析を行う。この場合、電気透析の後に浸透精製、好ましくは逆浸透による精製を行うことが有利であり、電気透析又は逆浸透にイオン交換処理を行うことができる。
【0064】
本発明の方法の別の特定の実施形態では、i)及びii)において、水とグリセリン以外の残留物を、濾過、特に好ましくは精密濾過、ナノ濾過又は逆浸透、最も好ましくはナノ濾過によって分離し、次に電気透析を行った後、濾過、特に好ましくはナノ濾過又は逆浸透を行い、さらにイオン交換処理を行う。
【0065】
本発明の好適な実施形態では、電気分離法を超高圧下における膜分離工程と組み合わせた塩を除去するための統合膜システムを使用して、グリセリン相G2、好ましくは粗製グリセリン又は混合相M1から残留物を分離する。電気透析は、ナノ濾過又は逆浸透と組み合わせる。適当な装置は国際公開第WO2006/074259号に開示されており、国際公開第WO2006/074259号の開示内容は本願明細書に援用する。好適な実施形態において、本発明は、本発明に係るアクロレインの製造方法であって、グリセリンを含む溶液の精製を、国際公開第WO2006/074259号に記載されている装置を使用して行う方法を提供する。予期せぬことに、そのような装置は、高濃度のグリセリン溶液を精製するために使用することができることが判明した。
【0066】
本発明のアクロレインの製造方法の特定の実施形態では、精製グリセリン相G2又は精製混合相P1に加えて、グリセリン相G3をアクロレイン反応領域に供給する。この場合、グリセリン相G3及びG2は、グリセリン含有量又は塩含有量又はグリセリン以外の有機化合物の含有量又はそれらの少なくとも2つが異なることが特に好ましい。グリセリン相G3は、グリセリン相G2よりも高いグリセリン含有量及び/又はグリセリン相G2よりも低い塩含有量及び/又はグリセリン相G2よりも低いグリセリン以外の有機化合物の含有量を有することが特に好ましい。通常、グリセリン相G2及びG3におけるグリセリン、塩及びグリセリン以外の有機化合物の含有量は、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも5重量%異なる。
【0067】
上述したように、精製グリセリン相G2又は精製混合相P1に加えて、グリセリン相G3をアクロレイン反応領域に供給する場合、粗製グリセリンをグリセリン相G2として使用する場合には、グリセリン相G3は、トリグリセリドの開裂又はエステル交換によって得られた粗製グリセリンの蒸留によって得られた蒸留液であることが好ましい。上記蒸留液は、通常は「工業用グリセリン」と呼ばれる。工業用グリセリンは、通常は少なくとも70重量%、特に少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%のグリセリン含有量を有する。含水量は、通常は30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。グリセリンと水以外の残留物として、グリセリン相G3は、塩、脂肪酸、石鹸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及びグリセリンの縮合物を含むことが好ましい。粗製グリセリン内の残留物の濃度は、工業用グリセリンよりも少なくとも10倍低い。蒸留によって工業用グリセリンの調製時に得られる塔底留出物は、塩分離装置を通過させた後、必要に応じて、粗製グリセリンの精製おいてグリセリンの収率をさらに向上させるために、少なくとも一部、好ましくは少なくとも10重量%、特に好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは20〜99.9999重量%を粗製グリセリンの蒸留工程に再供給することができる。
【0068】
また、粗製グリセリンの蒸留では、蒸留液の少なくとも一部、好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも75重量%又は60〜100重量%をイオン交換体内を通過させることが有用であることが判明した。また、第1段階と少なくとも1つの後続する段階において異なる圧力で蒸留を行うことが有利であることが判明しており、圧力差は、少なくとも0.1バール、好ましくは少なくとも1バール、特に好ましくは少なくとも2バールである。また、本発明の方法では、第1段階の蒸留は、少なくとも1つの後続する段階における圧力よりも高い圧力で行うことが好ましい。
【0069】
粗製グリセリンから得られた精製グリセリンをグリセリン相G3として使用する本発明の方法の別の実施形態では、粗製グリセリンの精製を濾過及び電気透析によって行い、その後、ナノ濾過、逆浸透、イオン交換処理又はそれらの少なくとも2つをさらなる精製として行うことが好ましい。電気透析とナノ濾過を組み合わせる場合には、HEEDR(登録商標)プロセスを利用するHEEPTM(商標)という用語は、EET Corporation社(米国)による方法の変形を意味する。これらは、塩の除去に特に推奨される。
【0070】
本発明の方法の別の実施形態では、グリセリン相G3は、粗製グリセリンに対して固体を分離するための濾過、好ましくは精密濾過を行った後、電気透析を行うことによって得られたものであることが好ましい。この場合、電気透析の後に、濾過、好ましくはナノ濾過又は逆浸透又はそれらの組み合わせを行うことが好ましい。また、濾過、好ましくはナノ濾過又は逆浸透又はそれらの組み合わせの後に、イオン交換処理を行うことが好ましい。
【0071】
通常、グリセリン相G3及び/又はグリセリン相G2は、塩、脂肪酸、石鹸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド又はグリセリンの縮合物を残留物として含む。
【0072】
1.本発明のアクロレインの製造方法の第1の好適な実施形態では、例えば、脂肪の開裂又は脂肪のエステル交換によって得られた粗製グリセリンであるグリセリン相G2を残留物相R1に添加し、濾過、特に好ましくはナノ濾過によって得られた混合相M1から残留物を分離することが好ましい。ナノ濾過による分離前に、必要に応じて、混合相中の固体を分離するために、混合相M1を前濾過によって精製することができる。また、第1の好適な実施形態では、上述した粗製グリセリンの使用に加えて、工業用グリセリンをグリセリン相G3として使用することができ、この場合には、工業用グリセリンをアクロレイン反応領域に直接供給するか、工業用グリセリンを最初に精製混合相M1に添加し、得られた組成物をアクロレイン反応領域に供給することが好ましい。本発明のアクロレインの製造方法の第1の好適な実施形態では、本発明のアクロレインの製造方法のii)をこのようにして行う。本発明の方法の第1の好適な実施形態は、低い塩化物含有量、好ましくは1g/L未満の塩化物含有量を有する粗製グリセリンを使用する場合に特に適している。
【0073】
2.本発明のアクロレインの製造方法の第2の好適な実施形態では、例えば、脂肪の開裂又は脂肪のエステル交換によって得られた粗製グリセリンであるグリセリン相G2を残留物相R1に添加し、濾過、特に好ましくはナノ濾過によって得られた混合相M1から残留物を分離することが好ましい。濾過の後に電気透析による精製を行い、必要に応じてイオン交換処理を行う。本発明の方法の第2の好適な実施形態においても、ナノ濾過によって残留物を除去する前に、必要に応じて、前濾過及び/又はイオン交換体によって混合相M1を精製して混合相中に存在する固体を分離することが有利である。また、第2の好適な実施形態においても、上述した粗製グリセリンの使用に加えて、工業用グリセリンをグリセリン相G3として使用することができ、この場合には、工業用グリセリンをアクロレイン反応領域に直接供給するか、工業用グリセリンを最初に精製混合相M1に添加し、得られた組成物をアクロレイン反応領域に供給することが好ましい。本発明のアクロレインの製造方法の第2の好適な実施形態では、本発明のアクロレインの製造方法のii)をこのようにして行う。本発明の方法の第2の好適な実施形態は、比較的高い塩化物含有量、好ましくは1g/Lを超える塩化物含有量を有する粗製グリセリンを使用する場合に特に適している。
【0074】
3.本発明のアクロレインの製造方法の第3の好適な実施形態では、グリセリン相G2は、例えば、脂肪の開裂又は脂肪のエステル交換によって得られた粗製グリセリンであり、最初に蒸留によって残留物を粗製グリセリンから分離した後、イオン交換体によって残留物を除去し、必要に応じて、別のグリセリン相、特に工業用グリセリンを添加し、必要に応じて、精製残留物相R1を添加した後、精製グリセリン相G2をアクロレイン反応領域に供給することが好ましい。粗製グリセリンの蒸留によって得られた残留物は、塩分離装置によって処理することができる。蒸留とイオン交換の組み合わせによるグリセリン相G2からの残留物の除去以外に、濾過、特にナノ濾過によって精製を行うことができる。次に、工程b)における水性アクロレイン反応相の分離後に得られた残留物相R1から残留物を分離して精製残留物相R1を得る。分離は、濾過、特にナノ濾過によって精製を行うことが好ましい。この場合にも、ナノ濾過による分離の前に、前濾過によって混合相M1を精製して混合相中に存在する固体を分離することが有利である。次に、精製残留物相R1をアクロレイン反応領域に直接供給するか、最初に精製残留物相R1を精製した粗製グリセリン相に添加することができる。本発明のアクロレインの製造方法の第3の好適な実施形態では、本発明のアクロレインの製造方法のi)をこのようにして行う。
【0075】
本発明のアクロレインの製造方法の第3の好適な実施形態では、本発明の方法によって精製したグリセリン溶液の少なくとも一部を、アクロレイン反応領域に再供給する前にプロセスから取り出すことができる。精製したグリセリンは、工業用グリセリンの品質を有することが好ましい。このように得られた精製グリセリン溶液は、他の用途(例えば、他の合成プロセス)に使用することができる。
【0076】
上述した方法は、蒸留装置におけるアクロレインの除去及びアクロレインを除去した反応相の除去(工程b)の後に、蒸留を行うことなくさらなる精製を行うという利点がある。この精製方法は、使用する温度が比較的低いために、比較的安価であり、消費エネルギーが低く、グリセリン含有溶液を温和な条件のみに暴露する。グリセリン含有溶液からの塩の除去は、精製工程の組み合わせによって段階的に行う。
【0077】
別の利点は、得られる精製グリセリンは熱ストレスを受けていないため、良好な色数を有するということである。また、高い純度は、本発明の精製工程の組み合わせによって得られる。本発明の方法は、塩、塩化物及び有機物質の含有量が高い粗製グリセリンを精製するために特に好適である。
【0078】
また、本発明の方法の一実施形態では、グリセリン相G1のグリセリンの一部、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも35重量%、さらに好ましくは少なくとも50重量%又は15〜35重量%を、原料流としてアクロレインの製造方法における脱水に循環させる。適切な流量を選択することにより、堆積物の生成を遅延又は完全に防止すると共に反応を正確に制御することができる。
【0079】
リサイクルモードにおける再循環では、再循環流は、非常に高い転化率で高いアクロレイン収率が得られるように設定する。再循環させるアクロレイン含有量の低い残留物相に対するグリセリン相のリサイクル比は、好ましくは0.01:10〜9:10、より好ましくは0.1:10〜5:10、特に好ましくは0.5:10〜3:10である。再循環により、出発材料の利用を最適化し、コストを削減し、環境を保護することができる。
【0080】
本発明のアクリル酸の製造方法では、工程(A2)におけるアクロレイン相が、アクロレイン相に対して0.1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは7〜20重量%のアクロレインを含むことが好ましい。酸化反応器の理想的な運転時間を考慮すると、アクロレイン相は、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、特に好ましくは2重量%未満の、アクロレインよりも高い沸点を有する成分を含むことが好ましい。また、アクロレイン相は、アクロレイン相に対して、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、特に好ましくは2重量%未満の低沸点成分(アクロレインよりも低い沸点を有する物質)を含むことが好ましい。また、アクロレイン相は、アクロレイン及び必要に応じて低沸点及び高沸点成分に加えて、実質的に不活性な成分(特に気体成分)であって、工程(A2)における酸化反応に対する悪影響の少ない成分を含むことが好ましい。
【0081】
また、本発明のアクリル酸の製造方法では、工程(A2)における酸化時にアクリル酸を含む気体状のアクリル酸相が生成し、アクリル酸をアクリル酸相から除去し、アクリル酸を除去したアクリル酸相の少なくとも一部を工程(A2)に供給することが好ましい。国際公開第WO03/051809号に記載されているように、供給前にアクリル酸を除去したアクリル酸相の一部を燃焼、好ましくは気相燃焼、特に好ましくは接触気相燃焼させることが好ましい。アクリル酸を除去したアクリル酸相は、アクリル酸を除去したアクリル酸相に対して、5重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満のアクリル酸を含むことが好ましい。アクリル酸を除去したアクリル酸相のその他の成分は、水、窒素、COである。本発明のアクリル酸の製造方法では、特に燃焼後のアクリル酸を除去したアクリル酸相の一部をエントレーナガスとして使用することが有利である。また、アクロレインの酸化に必要な酸素流又は空気流は、工程(a)においてエントレーナガスと同時に使用するか、工程(A2)においてアクリル酸を酸化するために直接供給することができる。
【0082】
また、本発明は、流体を導通するように接続された、水性グリセリン相中のグリセリンをアクロレインに転化させるための反応器と、水性グリセリン相を反応器に供給する手段と、アクロレインを除去するための蒸留装置と、アクロレインを除去したアクロレイン相を分離するための分離手段と、アクロレインを除去したアクロレイン相を精製するための精製手段と、流体を導通するように分離手段、精製手段及び反応器を接続する戻りラインと、を含むアクロレイン製造装置を提供する。
【0083】
本発明のアクロレイン製造装置の一実施形態では、グリセリンをアクロレインに転化させるための反応器は脱水触媒を含む。脱水触媒は、反応器内に固定されていることが好ましい。
【0084】
脱水触媒の固定は、脱水触媒を反応器の壁に固定するか、脱水触媒が粒子状であるか、粒子上に固定されている場合には、反応器内の適当な篩及びフィルタによってこれらの粒子が流出することを防ぐことによって行うことができる。
【0085】
反応器の下流には、アクロレイン反応相を蒸留する前にアルカリが供給される中和装置が設けられていることが好ましい。
【0086】
本発明のアクロレイン製造装置の別の実施形態では、精製手段は、濾過装置、逆浸透手段、電気透析装置、イオン交換装置及びそれらの少なくとも2つの組み合わせから選択される。
【0087】
特に、濾過装置は、高沸点成分を排出し、好ましくは、少なくとも1つの精密濾過フィルタ、限外濾過フィルタ、ナノ濾過フィルタ又はそれらの少なくとも2つ組み合わせを含み、ナノ濾過フィルタが膜として好ましい。
【0088】
本発明のアクロレイン製造装置の好適な実施形態では、精製手段はナノ濾過フィルタを含み、ナノ濾過フィルタは、好ましくはポリアミド又はポリエーテルスルホンからなるポリマーナノ濾過膜を含む。ポリマーナノ濾過膜としては、本発明のアクロレインの製造方法に関連して好ましいポリマーナノ濾過膜として挙げたポリマーナノ濾過膜が好ましい。
【0089】
また、本発明のアクロレイン製造装置では、ナノ濾過フィルタは、ポリマーナノ濾過膜を含むスパイラル型モジュール及び少なくとも40mmのフィードスペーサを含むスパイラル型モジュールからなることが好ましい。本発明のアクロレインの製造方法における好ましいスパイラル型モジュールに関する記載を参照されたい。
【0090】
本発明のアクロレイン製造装置の好適な実施形態では、濾過装置は、固体成分を分離するための上流フィルタを有し、その下流にナノ濾過フィルタ及び/又は逆浸透手段を有する。
【0091】
本発明のアクロレイン製造装置の好適な実施形態では、精製手段は、好ましくは電気透析装置の下流に、濾過装置及び/又は逆浸透手段を含む。その下流には、ナノ濾過、逆浸透及び/又はイオン交換処理のための手段が設けられている。好適な実施形態では、電気透析装置の下流にイオン交換装置が設けられている。
【0092】
本発明の装置は、反応器に供給する前に水性グリセリン相を精製するための手段を含むことが好ましい。精製手段は、濾過装置、蒸留装置、逆浸透手段、電気透析装置及びイオン交換装置から選択されることが好ましい。
【0093】
また、精製装置による精製後にアクロレインを除去したアクロレイン相を除去するための手段を設けることができる。
【0094】
別の好適な実施形態では、本発明のアクロレイン製造装置は、グリセリドからグリセリンを製造するための反応器を含む。
【0095】
また、本発明は、本発明のアクロレイン製造装置の特徴を備え、アクロレインをアクリル酸に酸化するための酸化反応器をさらに含み、アクロレイン製造装置が流体を導通するように酸化反応器に接続されている、アクリル酸製造装置を提供する。
【0096】
一実施形態では、酸化装置は、粉末、層、ペレット又はそれらの少なくとも2つの組合せである複合酸化物触媒を含む。粉末、層又はペレットは、金属板又は金属管の金属壁に配置することができる。本発明のアクリル酸製造装置では、プレート反応器(例えば熱転送シートを有するプレート反応器)又は複数の管を有する反応器(管束反応器とも呼ばれる)が好ましく、管束反応器が特に好ましい。複合酸化物触媒の組成に関しては国際公開第WO03/051809号に記載されており、国際公開第WO03/051809号の開示内容は本願明細書に援用する。なお、モリブデン、バナジウム、タングステンからなる触媒が特に好ましい。酸化反応器の下流には処理装置が設けられていることが好ましい。この場合、処理装置は急冷装置を含むことが好ましい。また、本発明のアクリル酸製造装置は、好ましくは急冷装置に接続され、アクリル酸が除去されたアクリル酸相の生成に有利に寄与する水除去装置を含むことが好ましく、水除去装置に関しては国際公開第WO03/051809号に記載されており、国際公開第WO03/051809号の開示内容は本願明細書に援用する。
【0097】
本発明のアクリル酸製造装置は、特に、回路としてのプロセスの構成、アクロレインを除去したアクロレイン反応相の精製、粗製グリセリンの精製並びに回路にグリセリンを供給する可能性に関して、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示された装置をさらに発展させたものである。特許文献1及び特許文献2に開示された装置及びそれらの特徴は本願明細書に援用する(特に、特許文献1の図1及び図5並びに明細書中の関連する記載及び特許文献2の図1及び明細書中の段落[0061]の記載)。
【0098】
好適な実施形態において、本発明のアクリル酸製造装置は、出発材料供給部を有する脱水装置と、脱水装置の下流に配置された気相酸化装置と、気相酸化装置の下流に配置されたアクロレイン反応領域と、アクロレイン反応領域の下流に配置された圧力調整器と、圧力調整器の下流に配置され、流体を導通するように気相酸化装置に接続された除去装置と、本発明に係る精製手段(5)と、戻りライン(6)と、が流体を導通するように接続され、気相酸化装置が、除去装置の下流に、複合酸化物触媒を含む反応器と、処理装置と、を含むことを特徴とする。
【0099】
一実施形態では、水性グリセリン相を供給するための手段(出発材料供給部)は、グリセリン又はグリセリン水溶液を収容することができるタンクから出発材料を取り込むことによって実現される。アクロレイン反応領域に関しては上述した通りである。また、管状に形成された領域におけるアクロレイン反応領域の直径が管の断面よりも長いことが好ましい。
【0100】
出発材料供給部から見た場合にアクロレイン反応領域の下流に配置された圧力調整器は、出発材料及び反応生成物の流れの点から、好ましくは少なくとも1つ、必要に応じて2つ以上の好ましくは圧力調整弁(例えば逃がし弁)として構成されている。圧力調整器の下流には除去装置が設けられている。本発明の装置の好適な実施形態では、圧力調整器の直後に除去装置を設けることができる。この構成は、アクロレイン反応相の減圧によって圧力調整器の上流に存在するアクロレイン反応相からアクロレインを除去する場合に特に好ましい。これらの手段により、アクロレイン相のさらなる反応を低減又は完全に防止し、望ましくない副生成物の生成を防止することができる。
【0101】
本発明の装置の別の実施形態では、除去装置は熱交換器を含むことができる。熱交換器は、除去装置の入口に設けることが好ましい。本発明の装置の別の実施形態では、膜又は結晶化装置(特に蒸留塔)として構成された分離装置を熱交換器の下流に設ける。また、本発明の装置では、アクロレイン反応領域内及び/又はアクロレイン反応領域の上流に発熱体を設けることが有利である。発熱体は、除去装置内に設けられた熱交換器に熱的に接続することが好ましい。
【0102】
また、本発明は、本発明のアクリル酸製造装置の特徴を備え、重合反応器をさらに含み、好ましくは処理装置が挿入された状態で、アクリル酸製造装置が流体を導通するように重合反応器に接続されている、吸水性ポリマー構造体の製造装置を提供する。
【0103】
また、本発明は、本発明に係る装置を使用するグリセリン、アクロレイン、アクリル酸又は吸水性ポリマー構造体の合成方法を提供する。
【0104】
また、本発明は、アクリル酸の重合による吸収性ポリマー構造体の製造方法を提供する。好適な実施形態では、本発明は、アクリル酸のフリーラジカル重合によって、ポリマー、特に吸水性ポリマー構造体を製造するための方法であって、i)上述した方法によって得られ、任意に部分的に中和されたアクリル酸並びに架橋剤を含むモノマー相を用意する工程と、ii)前記モノマー相をフリーラジカル重合させてヒドロゲルを得る工程と、iii)必要に応じて前記ヒドロゲルを粉砕する工程と、iv)前記ヒドロゲルを乾燥して粒子状吸水性ポリマー構造体を得る工程と、v)必要に応じて前記粒子状吸水性ポリマーを粉砕する工程と、vi)前記粒子状吸水性ポリマー構造体の表面変性を行う工程と、を含む方法を提供する。
【0105】
フリーラジカル重合は、架橋剤の存在下で少なくとも部分的に中和されたアクリル酸を使用して行うことが好ましく、それによって架橋された吸水性ポリマー構造体が得られる。アクリル酸からなる吸水性ポリマー構造体の製造に関する詳細については、「Modern Superabsorbent Polymer Technology)」、F.L.Buchholz及びA.T.Graham、Wiley−VCH−Verlagを参照されたい。架橋ポリアクリレートからなる超吸収体の製造に関する上記文献の開示内容は本願明細書に援用する。また、本発明では、工程i)において、モノマーに対して、少なくとも20モル%、特に好ましくは少なくとも50モル%のアクリル酸が塩として存在することが好ましい。
【0106】
また、上述した目的は、上記方法によって得られる吸水性ポリマー構造体によって達成される。
【0107】
また、上述した目的は、少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%のアクリル酸を含む吸水性ポリマー構造体であって、前記吸水性ポリマー構造体の製造に使用するアクリル酸モノマーの少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%が、上記方法によってグリセリンから中間体としてのアクロレインを介して得られ、吸水性ポリマー構造体の重量に対して、0.01〜10重量%の被覆剤で被覆されている吸水性ポリマー構造体によって達成される。なお、被覆剤としては、本発明の吸水性ポリマー構造体の製造方法に関して上述した被覆剤が好ましい。被覆剤は表面後架橋剤ではないことが好ましい。
【0108】
本発明の吸水性ポリマー構造体の一実施形態では、吸水性ポリマー構造体は、少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも35重量%、最も好ましくは少なくとも45重量%の天然又は生分解性ポリマー、好ましくはセルロース又は澱粉等の炭水化物を含む。
【0109】
また、上述した目的は、上記吸水性ポリマー構造体又は上記方法によって得られる吸水性ポリマー構造体を含む衛生用品によって達成される。
【0110】
また、上述した目的は、本発明のアクロレインの製造方法によって得られるアクロレイン及び/又は本発明のアクリル酸の製造方法で得られるアクリル酸の、繊維、フィルム、成形体、織物及び皮革助剤、凝集剤、コーティング、塗料、ワニス、発泡体、フィルム、ケーブル、封止材、液体吸収性衛生用品、特におむつ及び生理用ナプキン、植物・菌類生育調節剤用又は植物防疫剤用の担体、建設材料の添加剤、包装材料又は土壌添加剤における使用によって達成される。
【0111】
また、上述した目的は、本発明のアクロレインの製造方法によって得られるアクロレイン又は本発明のアクリル酸の製造方法で得られるアクリル酸を含む、繊維、フィルム、成形体、織物及び皮革助剤、凝集剤、コーティング、塗料、ワニス、発泡体、フィルム、ケーブル、封止材、液体吸収性衛生用品、特におむつ及び生理用ナプキン、植物・菌類生育調節剤用又は植物防疫剤用の担体、建設材料の添加剤、包装材料又は土壌添加剤によって達成される。
【0112】
また、上述した目的は、グリセリンと、水と、グリセリン及び水以外の残留物とを含み、グリセリン相G4の全重量に対して、20〜80重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40重量%、さらに好ましくは少なくとも50重量%のグリセリンを含むグリセリン相G4を精製するための方法であって、前記グリセリン相G4に対してナノ濾過を行って精製グリセリン相G5を得ることを含む方法によって達成される。
【0113】
グリセリン相G4は、本発明のアクロレインの製造方法に関連して上述した粗製グリセリン相であることが好ましい。従って、少なくとも1種の付随する塩をナノ濾過によって粗製グリセリン相から少なくとも部分的に除去する。
【0114】
この場合、ナノ濾過は、好ましくはスパイラル型モジュールであるポリマーナノ濾過膜によって行うことが好ましい。ポリマーナノ濾過膜及びスパイラル型モジュールとしては、本発明のアクロレインの製造方法に関連して上述したポリマーナノ濾過膜及びスパイラル型モジュールが好ましい。
【0115】
また、本発明のグリセリン相G4の精製方法では、本発明のアクロレインの製造方法並びにナノ濾過によるグリセリン相G2及び混合相M1の精製に関連して上述した好ましい圧力及び温度条件下で精製を行うことが好ましい。
【0116】
また、本発明のグリセリン相G4の精製方法では、透過液収率は、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%である。
【0117】
グリセリンと、水と、グリセリン及び水以外の残留物とを含むグリセリン相G4の精製方法の変形例では、ナノ濾過の後に、透過液の活性炭処理を行う。
【0118】
また、上述した目的は、グリセリン相G4の精製方法によって得られるグリセリン相G5の、本発明のアクロレインの製造方法におけるグリセリン相G3としての使用によって達成される。
【0119】
図面を参照して本発明についてさらに説明する。図1〜9は、本発明の実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、本発明に係る装置1を概略的に示す。グリセリンのアクロレインへの転化は反応器(1)内で生じる。水性グリセリン相は、手段(2)を介して反応器に供給される。アクロレイン反応相は蒸留装置(3)に供給される。アクロレイン反応相は、アルカリを供給する中和装置(20)を通過させることが好ましい。アクロレインは蒸留後に除去し、酸化反応器(10)においてさらに処理してアクリル酸を得る。アクリル酸は重合反応器(11)においてさらに処理し、例えば、吸水性ポリマーを得ることができる。アクロレインを除去したアクロレイン反応相は、除去手段(4)を介して蒸留装置(3)から取り出す。除去手段(4)は、フィルタ又は濾過装置を含むことができる。アクロレインを除去したアクロレイン反応相は、精製手段(5)に供給される。精製された溶液は戻りライン(6)を介して反応器(1)に戻される。
【0121】
本発明の好適な実施形態では、粗製グリセリンを供給するための手段(2)を使用することができる。別の好適な実施形態では、反応器に供給された水性グリセリン相を、グリセリドからグリセリンを製造するための反応器(9)から取り出す。本発明の別の実施形態では、供給されたグリセリンは、反応器(1)に供給する前に精製手段(7)において精製する。
【0122】
【図2】図2は、本発明のアクロレインの製造方法のii)に対応し、アクロレイン反応相を精製するための精製手段(5)の好ましい構成を示す。アクロレインを除去したアクロレイン反応相は、濾過装置(12)、電気透析装置(14)及びイオン交換装置(15)によって精製する。この実施形態では、濾過装置(12)は、好ましくは、前置フィルタと、ナノ濾過フィルタ又は逆浸透手段(好ましくはナノ濾過フィルタ)と、を含む。
【0123】
【図3】図3は、本発明のアクロレインの製造方法のi)に対応し、反応器(1)に供給する前にグリセリン相を精製するための手段(7)の好ましい構成を示す。粗製グリセリンは蒸留装置(19)に供給される。蒸留によって精製されたグリセリンはイオン交換装置(15)に供給される。このようにして精製されたグリセリンは反応器(1)に供給される。濾過装置(12)において、蒸留残渣から高沸点成分と塩を除去する。濾過装置(12)は、ナノ濾過フィルタ及び/又は逆浸透装置に接続された前置フィルタを含む。精製された蒸留残渣は蒸留に再循環させる。
【0124】
【図4】図4は、本発明のアクロレインの製造方法のi)に対応し、反応器(1)に供給する前にグリセリン相を精製するための手段(7)の別の好ましい構成を示す。粗製グリセリンは、前置フィルタを含むことができる電気透析装置(14)によって精製する。次に、前置フィルタと、ナノ濾過フィルタ又は逆浸透手段(好ましくはナノ濾過フィルタ)と、を含む濾過装置(12)によってさらに精製する。次に、溶液はイオン交換装置(15)において精製される。
【0125】
【図5】図5は、アクロレイン反応相及び粗製グリセリンの精製に適した(本発明のアクロレインの製造方法のi)及びii)に適した)本発明に係る精製手段(5)又は(7)の好適な実施形態を示す。精製するグリセリン溶液は、フィルタ(23)によって濾過され、電気透析装置(14)に供給され、ナノ濾過フィルタ(18)及び/又は逆浸透手段(13)(好ましくはナノ濾過フィルタ(18))によって処理され、イオン交換装置(15)に供給される。精製グリセリン溶液は、ライン(24)を介して取り出される。塩、固体、その他の成分等の副生成物はライン(25)を介して排出される。
【0126】
【図6】図6では、グリセリンをアクロレインに転化させるための反応器(1)に、通常は窒素をグリセリンの反応のための反応器(1)に供給する不活性ガス供給部(26)と、通常は液体触媒をグリセリンをアクロレインに転化させるための反応器(1)に供給する触媒供給部(27)とが接続されている。グリセリンをアクロレインに転化させるための反応器(1)の下流には、ラインを介して反応器(1)に接続された中和装置(20)が設けられ、中和装置はラインを介して蒸留装置(3)に接続されている。蒸留装置(3)の上部に接続されたラインにより、蒸留装置はアクリル酸を酸化させるための酸化反応器(10)に接続されている。上記ラインは、蒸留装置(3)からの気体成分を分割し、周囲に放出する。アクリル酸を酸化させるための酸化反応器(10)から、アクリル酸は、別のラインを介して例えば重合反応器(11)(図示せず)に供給される。蒸留装置(3)の下部領域はラインを介してフィルタ(23)に接続され、フィルタ(23)の下流には、高沸点成分と塩を排出するための分離装置(30)が設けられている。分離装置(30)は、ナノ濾過装置又は逆浸透装置(好ましくはナノ濾過装置)とすることができる。高沸点成分及び塩は、高沸点成分排出ライン(29)によって回路から取り出される。分離装置(30)は、グリセリンをアクロレインに転化させるための反応器(1)に接続された工業用グリセリン供給部(28)に接続されている。図6に示す装置によって本発明のアクロレインの製造方法のii)を行うことができる。
【0127】
【図7】図7では、図6に示す本発明に係る実施形態の構成要素に加えて、工業用グリセリン供給部(28)に接続されたイオン交換装置(15)に接続された電気透析装置(14)が、分離装置の下流(30)において、分離装置(30)と工業用グリセリン供給部との間に設けられている。図7に示す装置によって本発明のアクロレインの製造方法のii)を行うことができる。
【0128】
【図8】図8では、図6に示す本発明に係る実施形態において、塩含有グリセリンを粗製グリセリン供給ライン(31)を介して粗製グリセリン蒸留器(32)に供給する。粗製グリセリン蒸留器(32)には、フィルタ(23)からの流れの少なくとも一部も供給される。粗製グリセリン蒸留器(32)で得られた塔底留出物は、少なくとも部分的に塩分離装置(33)に供給され、少なくとも部分的に塩が除去されたされたグリセリンは、塩分離装置(33)から粗製グリセリン蒸留器(32)に戻され、粗製グリセリン蒸留器(32)の下流にはグリセリン蒸留器(34)が設けられている。粗製グリセリン蒸留器(32)及びグリセリン蒸留器(34)における条件(特に圧力及び/又は温度)は異なることが好ましい。グリセリン蒸留器(34)の下流には粗製グリセリンイオン交換体(35)が設けられ、精製されたグリセリンは、粗製グリセリンイオン交換体(35)からグリセリンをアクロレインに転化させるための反応器に供給される。図8に示す装置によって本発明のアクロレインの製造方法のi)及びii)を行うことができる。
【0129】
【図9】図9では、図6に示す本発明に係る実施形態において、塩含有粗製グリセリンを粗製グリセリン供給ライン(31)及び粗製グリセリンフィルタ(36)を介して粗製グリセリン逆浸透装置(37)に供給する。粗製グリセリン逆浸透装置(37)の下流には、工業用グリセリン供給部に接続された粗製グリセリンイオン交換体(35)に接続された塩分離装置(33)が設けられている。図9に示す装置によって本発明のアクロレインの製造方法のi)及びii)を行うことができる。
【符号の説明】
【0130】
1 グリセリンをアクロレインに転化させるための反応器
2 反応器に水性グリセリン相を供給する手段
3 蒸留装置
4 除去手段
5 アクロレイン反応相を精製するための精製手段
6 戻りライン
7 反応器への供給前にグリセリン相を精製するための手段
8 精製グリセリン相を取り出すための手段
9 グリセリドからグリセリンを製造するための反応器
10 アクリル酸を酸化させるための酸化反応器
11 重合反応器
12 濾過装置
13 逆浸透手段
14 電気透析装置
15 イオン交換装置
16 精密濾過フィルタ
17 限外濾過フィルタ
18 ナノ濾過フィルタ
19 蒸留装置
20 中和装置
21 反応成分の供給ライン
22 粗製グリセリンを供給するための手段
23 フィルタ
24 グリセリン溶液の排出ライン
25 塩、固体、副生成物の排出ライン
26 不活性ガスの供給ライン
27 触媒の供給ライン
28 工業用グリセリンの供給ライン
29 高沸点成分排出ライン
30 分離装置
31 粗製グリセリン供給部
32 粗製グリセリン蒸留器
33 塩分離装置
34 グリセリン蒸留器
35 粗製グリセリンイオン交換体
36 粗製グリセリンフィルタ
37 粗製グリセリン逆浸透装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクロレインの製造方法であって、
(a)アクロレイン反応領域において水性グリセリン相G1を脱水して水性アクロレイン反応相を得る工程と、
(b)前記アクロレイン反応相を、アクロレイン含有量の高いアクロレイン相と、前記アクロレイン相よりもアクロレイン含有量が低く、グリセリンと、水と、グリセリン及び水以外の残留物とを含む残留物相R1と、に少なくとも部分的に分離する工程と、
(c)前記残留物相R1の少なくとも一部を前記工程(a)に再循環させる工程と、を含み、
i)グリセリンと、水と、グリセリン及び水以外の残留物とを含むグリセリン相G2に存在する少なくとも1種の残留物を前記グリセリン相G2から分離し、得られた精製グリセリン相G2を前記アクロレイン反応領域に直接供給するか、
ii)グリセリン及び水以外の少なくとも1種の残留物を、グリセリンと、水と、グリセリン及び水以外の残留物とを含むグリセリン相G2をアクロレイン含有量の低い前記残留物相R1と混合することによって得られる混合相M1から分離し、得られた精製混合相M1を前記アクロレイン反応領域に供給する方法。
【請求項2】
(A1)請求項1に記載の方法によってアクロレイン含有量の高いアクロレイン相を得る工程と、
(A2)前記工程(A1)で得られた前記アクロレイン含有量の高いアクロレイン相を酸化させてアクリル酸相を得る工程と、
(A3)必要に応じて前記アクリル酸相を処理してアクリル酸を得る工程と、
を含むアクリル酸の製造方法。
【請求項3】
(P1)重合相内において請求項2に記載のアクリル酸の製造方法を行ってアクリル酸相又はアクリル酸を得る工程と、
(P2)前記重合相の重合を行ってポリマーを得る工程と、
を含むポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記精製グリセリン相G2又は前記精製混合相P1に加えて、グリセリン相G3を前記アクロレイン反応領域に供給する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記グリセリン相G3及びG2が、グリセリン含有量又は塩含有量又はグリセリン以外の有機化合物の含有量又はそれらの少なくとも2つにおいて異なる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記グリセリン相G3が、前記グリセリン相G2よりも高いグリセリン含有量を有する、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記グリセリン相G3が、前記グリセリン相G2よりも低い塩含有量を有する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記グリセリン相G3が、前記グリセリン相G2よりも低いグリセリン以外の有機化合物の含有量を有する、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記グリセリン相G2が、トリグリセリドの開裂又はエステル交換における反応生成物として得られた粗製グリセリン相である、請求項4〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記グリセリン相G3及び/又は前記グリセリン相G2が、塩、脂肪酸、石鹸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及びグリセリンの縮合物を残留物として含む、請求項4〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記グリセリン相G3が、トリグリセリドの開裂又はエステル交換において得られた粗製グリセリンの蒸留による蒸留液として得られたものである、請求項4〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記粗製グリセリンの蒸留によって得られた塔底留出物の少なくとも一部を塩分離装置内を通過させ、前記粗製グリセリンの蒸留に再供給する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記i)又はii)における除去を、(α1)蒸留、(α2)濾過、好ましくはナノ濾過又は逆浸透、(α3)電気透析及び(α4)イオン交換処理の少なくとも1つによって行う、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記濾過が、精密濾過、限外濾過、逆浸透、ナノ濾過及びそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ナノ濾過及び/又は逆浸透によって前記分離を行う、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記i)又はii)における分離によって、少なくとも1種の付随する塩を少なくとも部分的に除去する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記i)又はii)における分離をポリマーナノ濾過膜によって行う、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ポリマーナノ濾過膜を含むスパイラル型モジュールによって前記分離を行う、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記スパイラル型モジュールが、少なくとも40mmのフィードスペーサを有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーナノ濾過膜がポリアミド又はポリエーテルスルホンからなる、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも90重量%の透過液収率で前記分離を行う、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマーナノ濾過膜による分離を40℃を超える温度で行う、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマーナノ濾過膜による分離を30バールを超える膜間圧で行う、請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記i)又はii)における分離を濾過によって行った後、電気透析を行う、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記電気透析を行った後、浸透精製を行う、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記電気透析又は浸透精製を行った後、イオン交換処理を行う、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記アクロレインの製造方法における前記グリセリン相G1のグリセリンの一部を循環させる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記アクロレイン反応領域が脱水触媒を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記アクロレイン反応領域が水以外の液体を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記アクロレイン反応領域が金属及び/又は金属化合物を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記アクロレイン反応領域の出口における前記アクロレイン反応相が、50重量%未満のグリセリンを含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記アクロレイン反応領域の出口における前記アクロレイン反応相が、0.1〜50重量%のグリセリンを含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記工程(b)における分離前の前記アクロレイン反応相が、前記分離中よりも高い圧力下にある、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記工程(b)における分離前の前記アクロレイン反応相のアクロレイン濃度が、前記分離後よりも少なくとも5%高い、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
エントレーナガスを使用する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
流体を導通するように接続された、グリセリン相中のグリセリンをアクロレインに転化させるための反応器(1)と、水性グリセリン相を前記反応器(1)に供給する手段(2)と、アクロレインを除去するための蒸留装置(3)と、アクロレインを除去した前記アクロレイン相を分離するための分離手段(4)と、アクロレインを除去した前記アクロレイン相又は前記水性グリセリン相を精製するための精製手段(5)と、流体を導通するように前記分離手段(4)、前記精製手段(5)及び前記反応器(1)を接続する戻りライン(6)と、を含むアクロレイン製造装置。
【請求項37】
前記精製手段(5)が、濾過装置(12)、逆浸透手段(13)、電気透析装置(14)、イオン交換装置(15)及びそれらの少なくとも2つの組み合わせから選択される、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記濾過装置が、少なくとも1つの精密濾過フィルタ(16)、限外濾過フィルタ(17)、ナノ濾過フィルタ(18)又はそれらの少なくとも2つの組み合わせを含む、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記精製手段(5)がナノ濾過フィルタ(18)を含む、請求項36〜38のいずれか1項に記載の装置。
【請求項40】
前記ナノ濾過フィルタ(18)がポリマーナノ濾過膜を含む、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記ナノ濾過フィルタが、前記ポリマーナノ濾過膜を含むスパイラル型モジュールからなる、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記スパイラル型モジュールが、少なくとも40mmのフィードスペーサを有する、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記ポリマーナノ濾過膜がポリアミド又はポリエーテルスルホンからなる、請求項40〜42のいずれか1項に記載の装置。
【請求項44】
グリセリドからグリセリンを製造するための反応器(9)を含む、請求項36〜43のいずれか1項に記載の装置。
【請求項45】
請求項36〜43のいずれか1項に記載のアクロレイン製造装置が、アクロレインを酸化させるための酸化反応器(10)に流体を導通するように接続されたアクリル酸製造装置。
【請求項46】
請求項45に記載の装置が重合反応器(11)に流体を導通するように接続されたポリマー製造装置。
【請求項47】
請求項36〜46のいずれか1項に記載の装置を使用する、請求項1〜35のいずれか1項に記載のアクロレインの合成方法。
【請求項48】
請求項47に記載の装置を使用する、請求項2〜35のいずれか1項に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項49】
請求項48に記載の装置を使用する、請求項3〜35のいずれか1項に記載のポリマーの製造方法。
【請求項50】
請求項3〜35及び49のいずれか1項に記載の方法によって得られるポリマー、好ましくは吸水性ポリマー構造体を含む衛生用品。
【請求項51】
請求項1〜35及び47のいずれか1項に記載の方法によって得られるアクロレイン及び/又は請求項2〜35及び48のいずれか1項に記載の方法によって得られるアクリル酸の、繊維、フィルム、成形体、織物及び皮革助剤、凝集剤、コーティング、塗料、ワニス、発泡体、フィルム、ケーブル、封止材、液体吸収性衛生用品、特におむつ及び生理用ナプキン、植物・菌類生育調節剤用又は植物防疫剤用の担体、建設材料の添加剤、包装材料又は土壌添加剤における使用。
【請求項52】
請求項1〜35及び47のいずれか1項に記載の方法によって得られるアクロレイン及び/又は請求項2〜35及び48のいずれか1項に記載の方法によって得られるアクリル酸を含む、繊維、フィルム、成形体、織物及び皮革助剤、凝集剤、コーティング、塗料、ワニス、発泡体、フィルム、ケーブル、封止材、液体吸収性衛生用品、特におむつ及び生理用ナプキン、植物・菌類生育調節剤用又は植物防疫剤用の担体、建設材料の添加剤、包装材料又は土壌添加剤。
【請求項53】
グリセリンと、水と、グリセリン及び水以外の残留物とを含み、グリセリン相G4の全重量に対して、20〜80重量%のグリセリンを含むグリセリン相G4を精製するための方法であって、前記グリセリン相G4に対してナノ濾過を行って精製グリセリン相G5を得ることを含む方法。
【請求項54】
前記グリセリン相G4が、前記グリセリン相G4の全重量に対して、30重量%を超えるグリセリン含有量を有する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記グリセリン相G4が、前記グリセリン相G4の全重量に対して、40重量%を超えるグリセリン含有量を有する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記グリセリン相G4が、前記グリセリン相G4の全重量に対して、50重量%を超えるグリセリン含有量を有する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記精製によって、少なくとも1種の付随する塩を前記グリセリン相G4から少なくとも部分的に除去する、請求項53〜56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記精製をポリマーナノ濾過膜によって行う、請求項53〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記ポリマーナノ濾過膜を含むスパイラル型モジュールによって前記精製を行う、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記スパイラル型モジュールが、少なくとも40mmのフィードスペーサを有する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ポリマーナノ濾過膜がポリアミド又はポリエーテルスルホンからなる、請求項58〜60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記ポリマーナノ濾過膜による精製を40℃を超える温度で行う、請求項58〜61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記ポリマーナノ濾過膜による精製を30バールを超える膜間圧で行う、請求項58〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
透過液収率が少なくとも90重量%である、請求項58〜63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
請求項53〜64のいずれか1項に記載の方法によって得られる精製グリセリン相G5の、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法におけるグリセリン相G3としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−511505(P2012−511505A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538921(P2011−538921)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064500
【国際公開番号】WO2010/066513
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(504341139)エボニック ストックハウゼン ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】