説明

粘土鉱物分散液の製造方法

【課題】製造工程中で減粘しにくい粘土鉱物分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)成分:水膨潤性粘土鉱物と、(B)成分:水と、(C)成分:水溶性高分子化合物と、(D)成分:(ポリ)グリセリンエステルとを含有する粘土鉱物分散液の製造方法であって、前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分とを混合して粘土分散液を得る粘土分散工程と、前記粘土分散液を翼先端速度5〜25m/sで攪拌しながら、かつ平均0.01〜5℃/minの冷却速度で冷却して混合液を得る冷却混合工程と、前記混合液と、(D)成分とを混合する分散液調製工程とを有することよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘土鉱物分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スメクタイト等の粘土鉱物は、水分散液における増粘、チキソトロピー等の物性が利用されている。
例えば、浴湯に添加することで浴湯を白濁させる入浴剤には、浴湯を白濁させるための粉体あるいはカプセル化した油脂等(白濁成分)が配合され、この白濁成分の分散状態の維持等を目的とし、粘土鉱物が配合されている。
【0003】
従来、入浴剤等の粘土鉱物分散液の粘度を適度なものとするために、様々な発明がなされている。例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムで被覆された無機顔料と、水膨潤性粘土鉱物と、カルボキシメチルセルロース又はアルギン酸(塩)とを含有する液体浴用剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の発明によれば、組成物の流動性、浴湯への分散性を維持しつつ、凍結復元性が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−137849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、配合槽で調製した粘土鉱物分散液の保管中、あるいは配合槽から移送し容器に充填して製品化する間に、粘土鉱物分散液の粘度が低下(減粘)するという問題があった。加えて、製品化までの粘土鉱物分散液の減粘は一定でないため、製品の粘度にバラつきが生じやすいという問題があった。
また、粘土鉱物分散液中の粘土鉱物や水溶性高分子化合物等を単に増量して増粘を図ると、粘土鉱物分散液の流動性が低下したり、湯浴等への分散性が低下するという問題があった。
そこで、製造工程中で減粘しにくい粘土鉱物分散液の製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、予め、水溶性高分子化合物と共に粘土鉱物を水に分散した粘土分散液を調製し、特定の撹拌条件で攪拌しながら冷却する。その後、(ポリ)グリセリンエステルを混合して粘土鉱物分散液を製造することで、粘土鉱物分散液の減粘を抑制できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち、本発明の粘土鉱物分散液の製造方法は、
(A)成分:水膨潤性粘土鉱物と、(B)成分:水と、(C)成分:水溶性高分子化合物と、(D)成分:(ポリ)グリセリンエステルとを含有する粘土鉱物分散液の製造方法であって、
前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分とを混合して粘土分散液を得る粘土分散工程と、
前記粘土分散液を翼先端速度5〜25m/sで攪拌しながら、かつ平均0.01〜5℃/minの冷却速度で冷却して混合液を得る冷却混合工程と、
前記混合液と、(D)成分とを混合する分散液調製工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造工程中で減粘しにくい粘土鉱物分散液を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の粘土鉱物分散液の製造方法に用いるバッチ式混合装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の粘土鉱物分散液の製造方法に用いる連続式混合装置の一例を示す模式図である。
【図3】吐出流量の測定に用いる測定装置の模式図である。
【図4】吐出流量の測定に用いる測定装置の模式図である。
【図5】実施例に用いた混合装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(粘土鉱物分散液)
本発明の粘土鉱物分散液は、(A)成分:水膨潤性粘土鉱物と、(B)成分:水と、(C)成分:水溶性高分子化合物と、(D)成分:(ポリ)グリセリンエステルとを含有するものである。本発明の粘土鉱物分散液は、例えば、液体入浴剤、ボディローション、シャンプー、トリートメント等に用いられるものであり、中でも、水への分散性に優れることから液体入浴剤に、好適に用いられる。
【0011】
粘土鉱物分散液の粘度は、用途等を勘案して決定でき、例えば、液体入浴剤の粘度としては、400〜2000mPa・sが好ましく、800〜1500mPa・sがより好ましい。400mPa・s未満であると、保管中に(A)成分が沈降しやすくなったり、温度変化により分離しやすくなる。2000mPa・s超であると、流動性が悪く、容器から粘土鉱物分散液を注出しにくくなったり、水への分散性が低下する。
【0012】
<(A)成分:水膨潤性粘土鉱物>
本発明の(A)成分は、水膨潤性粘土鉱物である。粘土鉱物分散液は、(A)成分を含有することで、水で膨潤された(A)成分がカードハウス構造を形成し、適度な粘度を発揮する。
「水膨潤性」とは、第15改定 日本薬局方に定められたベントナイトの試験方法を準用し、粘土鉱物2gの膨潤体積(cm)で表される膨潤力が、20cm/g以上であるものをいう。膨潤力20cm/g未満の粘土鉱物は、カードハウス構造を形成しにくく、粘土鉱物分散液の増粘が不十分になる。
また、(A)成分は、カチオン化されていないものが好ましい。カチオン化されていない(A)成分は、(B)〜(D)成分とカードハウス構造を形成しやすいためである。
このような(A)成分としては、例えば、天然物、天然物の精製品、天然の膨潤性を改質したもの又は合成されたもの等が挙げられる。具体的には、上記膨潤力を有する天然又は合成されたモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ヘクトライト、スチブンサイト等のスメクタイト族の粘土鉱物や、バーミキュライト、膨潤性合成フッ素雲母(Na型、Li型合成マイカ)、膨潤性の雲母等を用いることができる。また、上記粘土鉱物をイオン交換して膨潤力を向上させた高金属イオン置換粘土鉱物等を用いることができる。本発明に用いる(A)成分は、層間に水分子を水和して取り込む交換性のイオンを含有しており、膨潤性、吸着性、結合性、懸濁性、増粘性等の性質を有し、他の粘土鉱物とは異なった性質を示すものである。(A)成分としては、スメクタイト族、スメクタイト族のモンモリロナイトを主成分とするベントナイト等が好ましい。
(A)成分としては、ポーラゲル(アメリカンコロイド社製)、ラポナイト(日本シリカ工業株式会社製)、ベンゲル(豊順鉱業社製)、ルーセンタイト(コープケミカル株式会社製)、クニピア(クニミネ工業株式会社製)、ベンクレイ(水澤化学工業株式会社製)、ビーガム(バンダービルト社製)等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0013】
これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0014】
(A)成分の平均粒径は、1〜5000nmが好ましく、1〜1000nmがより好ましく、1〜700nmがさらに好ましい。平均粒径が5000nm超であると、粘土鉱物の単位質量当たりの表面積が小さくなり、所望の粘度とするのに多量の(A)成分が必要となる。なお、(A)成分の平均粒径は、動的光散乱法により測定したメディアン径(積算粒子量が50体積%になる粒子径)であり、測定機器:島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2200で測定した値である。
【0015】
粘土鉱物分散液中の(A)成分の含有量は、粘土鉱物分散液に求める粘度等を勘案して決定でき、0.05〜3質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。0.05質量%未満であると、粘土鉱物分散液の粘度が不十分になったり、保管中に分離しやすくなったりする。3質量%超であると、粘土鉱物分散液の粘度が高くなりすぎて、流動性が低下するおそれがある。
【0016】
<(B)成分:水>
本発明の(B)成分は、水である。(B)成分は、特に限定されず、水道水、井水や、蒸留、イオン交換、ろ過又はこれらを組み合わせて処理した精製水等が挙げられる。
粘土鉱物分散液中の(B)成分の配合量は、(A)、(C)、(D)成分の配合量や、用途等を勘案して決定できる。
【0017】
<(C)成分:水溶性高分子化合物>
本発明の(C)成分は、水溶性高分子化合物である。粘土鉱物分散液は、(C)成分を含有することで、適度な粘度を発揮できる。
「水溶性」とは、水に対する溶解度(20℃)が0.1g/水100g以上のものをいう。また「高分子」とは、重量平均分子量が1000以上のものをいう。
(C)成分の重量平均分子量は、GPC−MALLS(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー−多角度光散乱検出器)を用い、0.5mol/Lの過塩素酸ナトリウム溶液を移動相とし、以下の方法で測定した値である。(A)成分の純分濃度が約1000質量ppmとなるように移動相で希釈した試料溶液について、TSK−GELαカラム(東ソー株式会社製)を用い、633nmの波長を多角度散乱検出器により測定する。標準品として、分子量既知のポリエチレングリコールを用いる。
【0018】
(C)成分としては、例えば、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム等のガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン等の合成重合物、カルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウム等のセルロース誘導体等が挙げられ、中でもガム類やセルロース誘導体が好ましい。ガム類やセルロース誘導体は、ママコが生成しにくく、取り扱いが容易なためである。
これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0019】
(C)成分の重量平均分子量は、好ましくは10000以上である。重量平均分子量が10000以上であれば、適度な粘度を発揮できるためである。また、(C)成分の重量平均分子量の上限値は、特に限定されないが、例えば、10000000とされる。10000000超であると、粘土鉱物分散液の流動性が悪くなるためである。
【0020】
粘土鉱物分散液中の(C)成分の含有量は、粘土鉱物分散液の用途等を勘案して決定でき、例えば、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。0.05質量%未満であると、粘土鉱物分散液の粘度が不十分になったり、保管中に分離しやすくなったりする。5質量%超であると、粘土鉱物分散液の粘度が高くなりすぎて、流動性が低下するおそれがある。
【0021】
<(D)成分:(ポリ)グリセリンエステル>
本発明の(D)成分は、(ポリ)グリセリンエステルである。粘土鉱物分散液は、(D)成分を含有することにより、減粘しにくいものとなる。減粘が抑制される機構は明らかではないが、(A)成分と(D)成分との会合体が形成され、この会合体がカードハウス構造と類似する構造を形成すると共に、(D)成分が(A)成分同士のバインダーとして機能するためと考えられる。また、(D)成分は、後述する任意成分の内、油性成分を粘土鉱物分散液に配合する場合、油性成分を(B)成分中に分散するための乳化剤として機能する。
【0022】
(ポリ)グリセリンエステルは、グリセリンエステルの単量体及び重合体を含むことを意味する。
このような(D)成分としては、モノグリセリドや、酢酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド等のモノグリセリド誘導体、脂肪酸ポリグリセリンエステル等が挙げられ、中でも、脂肪酸ポリグリセリンエステルが好ましい。
脂肪酸ポリグリセリンエステルとしては、例えば、モノステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、ジステアリン酸ジグリセリル、ジステアリン酸ヘキサグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、トリステアリン酸ペンタグリセリル、トリステアリン酸ヘキサグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、テトラステアリン酸ヘキサグリセリル、テトラステアリン酸デカグリセリル、ペンタステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸ヘキサグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、ヘキサステアリン酸ペンタグリセリル、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル、オクタステアリン酸ヘキサグリセリル、デカステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸ヘキサグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ヘキサグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、トリイソステアリン酸ペンタグリセリル、トリイソステアリン酸ヘキサグリセリル、トリイソステアリン酸デカグリセリル、テトライソステアリン酸ヘキサグリセリル、テトライソステアリン酸デカグリセリル、ペンタイソステアリン酸テトラグリセリル、ペンタイソステアリン酸ヘキサグリセリル、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル、ヘキサイソステアリン酸ペンタグリセリル、ヘキサイソステアリン酸ヘキサグリセリル、オクタイソステアリン酸ヘキサグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノミリスチン酸グリセリンヘプタベヘニン酸デカグリセリル、トリオレイン酸ペンタグリセリル、トリベヘニン酸ペンタグリセリル、テトラベヘニン酸ペンタグリセリル、ペンタベヘニン酸ペンタグリセリル、ジベヘニン酸トリグリセリル、トリベヘニン酸トリグリセリル、テトラベヘニン酸トリグリセリル等が挙げられる。中でも、脂肪酸炭素数2〜22のものが好ましく、脂肪酸炭素数16〜18のものがより好ましく、構造体(分子集合体)を形成しやすい2鎖型である(ポリ)グリセリンエステルのグリセリンのOH基の内、いずれか2つが疎水基となっている脂肪酸を有するものがさらに好ましく、ジステアリン酸デカグリセル、ジイソステアリン酸ポリグリセリルが特に好ましい。
【0023】
粘土鉱物分散液中の(D)成分の含有量は、(D)成分の種類や後述する任意成分の内の油性成分の量等を勘案して決定でき、例えば、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、(A)成分との会合体が良好に形成されると共に、油性成分を適度に分散・安定化できるためである。
【0024】
<任意成分>
粘土鉱物分散液には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせ、含有させることができる。任意成分としては、糖アルコール((E)成分)、油性成分、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤等の界面活性剤、無機粉体、有機粉体等の水不溶性粉体、ビタミン類、アミノ酸類、抗炎症剤、紫外線吸収剤、冷感付与剤、酸化防止剤、着色剤、香料、制汗剤、殺菌剤、消臭剤、防腐剤、包接化合物香料、色素等が挙げられる。
【0025】
<(E)成分:糖アルコール>
本発明の(E)成分は、糖アルコールである。(E)成分を含有することで、(A)成分がママコになりにくく速やかに膨潤する。
(E)成分は、特に限定されず、例えば、ソルビット、グリセリン、キシリット、マルチット、ラクチット、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられ、中でも、ソルビット、キシリットが好ましい。ソルビット又はキシリットは、(A)成分の分散性を高めると共に、(A)成分の膨潤を阻害しにくいためである。
粘土鉱物分散液中の(E)成分の含有量は、少なすぎると(A)成分が分散しにくく、多すぎると(A)成分が膨潤しにくくなる。従って、粘土鉱物分散液中の(E)成分の含有量は、(A)成分の含有量や、(E)成分の種類等を勘案して決定でき、例えば、(E)成分としてソルビット又はキシリットを用いる場合、0.15〜24質量%が好ましく、0.3〜15質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、後述する粘土分散工程において、(A)成分の良好に分散し、かつ十分に膨潤できる。
【0026】
油性成分は、粘土鉱物分散液の用途等を勘案して決定でき、例えば、米胚芽油、米糠油、オリーブ油、大豆油、ホホバ油等の植物油、ユーカリ油、レモン油、ハッカ油、ジャスミン油、ヒノキ油、ミカン油、バラ油、タイム油、メントール、ペパーミント油等の精油類、スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素油、メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルシロキサン共重合体、デカメチルシクロペンタシロキサン、ミリスチルシリコーン、テトラデカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサンメチルシクロトリシロキサン等のシリコーン類が挙げられる。
【0027】
粘土鉱物分散液中の油性成分の含有量は、粘土鉱物分散液の用途等を勘案して決定できる。
【0028】
(製造方法)
本発明の粘土鉱物分散液を製造方法は、(A)成分と(B)成分と(C)成分とを混合して粘土分散液を得る粘土分散工程と、得られた分散液を翼先端速度5〜25m/sで攪拌しながら、かつ平均0.01〜5℃/分の冷却速度で冷却して混合液を得る冷却混合工程と、(D)成分とを混合する分散液調製工程とを有するものである。
【0029】
<粘土分散工程>
粘土分散工程は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分を混合して粘土/高分子分散液を得る工程である。本工程を設けることで、(A)成分は、層間に十分量の水が浸透されて膨潤状態が飽和し、粘土鉱物分散液の粘度を安定させられる。
また、本工程において、(A)成分と(B)成分との混合比率は、[(A)成分/(B)成分]×100で表される質量比((A)/(B)比)を0.05〜5質量%とするのが好ましく、0.5〜4質量%とするのがより好ましい。0.05質量%未満であると、所望する粘度が得られないおそれがあり、5質量%超とすると、(A)成分が十分に膨潤できないおそれがある。
本工程において、(C)成分と(B)成分との混合比率は、(C)成分/(B)成分で表される質量比((C)/(B)比)を0.05〜5とするのが好ましく、0.5〜4とするのがより好ましい。0.05未満であると、所望する粘度が得られないおそれがあり、5超とすると(C)成分の膨潤が不十分になるおそれがある。
本工程においては、さらに(E)成分を配合すると(A)成分がママコになりにくく速やかに膨潤するので好ましい。
本工程において、(A)成分と(E)成分との混合比率は、(E)成分/(A)成分で表される質量比((E)/(A)比)を3〜8とするのが好ましく、4〜6とするのがより好ましい。3未満であると、(A)成分の膨潤が不十分になるおそれがあり、8超であると、(A)成分が膨潤しにくくなるためである。
本工程の混合は、従来公知の混合装置を用いることができ、例えば、プロペラ翼を備えたベッセル等のバッチ式混合装置や、インラインミキサー等の連続式混合装置が挙げられる。
本工程における混合温度は、特に限定されず、例えば、5〜90℃とされる。5℃未満であるとママコが発生しやすくなり、90℃超であると水分の揮発により組成のバランスが変化するおそれがあるためである。
また、混合時間は、混合装置の能力や容積等を勘案し、(A)成分、(C)成分が(B)成分中に十分に分散し、かつ膨潤する時間とされる。
粘土鉱物鉱物分散液に、水溶性の任意成分(例えば、水溶性の色素、香料、界面活性剤等)や油性成分を配合する場合、本工程で得られた粘土鉱物分散液に添加することができる。
本工程においては、予め(A)成分を分散する予備粘土分散液と、(B)成分と(C)で高分子水溶液を調製し、前記予備粘土分散液と前記高分子水溶液を混合して粘土分散液を調製してもよい。
【0030】
<冷却混合工程>
冷却混合工程は、粘土分散工程で得られた粘土分散液を、翼先端速度5〜25m/sで攪拌しながら、かつ平均0.01〜5℃/minの冷却速度で冷却して混合液を得る工程である。本発明における翼先端速度とは、各工程で使用する混合装置の攪拌翼の先端速度を指す。
本発明の粘土鉱物分散液の製造方法には、分散液調製工程の前段に冷却工程を設けることが好ましい。この冷却工程は、粘土分散液で得られた混合液を任意の温度まで冷却するものである。
冷却方法は、例えば、攪拌しながら冷却する方法や、室温で静置する方法や、熱交換器に通流させる方法が挙げられ、中でも、攪拌しながら冷却する方法(攪拌冷却法)が好ましい。攪拌冷却法を用いることで、粘土鉱物分散液の減粘を抑制できる。
攪拌冷却法における攪拌方法は、特に限定されないが、例えば、分散液調製工程で用いた混合装置を用い、好ましくは攪拌翼の先端速度5〜25m/s、より好ましくは6〜14m/sで攪拌する。
冷却速度は、平均0.01〜5℃/minであり、0.05〜4℃/minが好ましく、0.1〜3℃/minがより好ましい。この範囲内であれば、粘土鉱物分散液の減粘を抑制しつつ効率的に冷却できる。
前記冷却速度は、冷却混合工程全体の平均の冷却速度であり、具体的には前工程の粘土分散工程の後で冷却を開始した瞬間から後工程の分散液調製工程の前で冷却操作を終了するまでの平均の冷却速度であり、たとえ一時的に範囲外(冷却を一時休止または急冷)となったとしても平均して前記冷却速度の範囲内であれば構わない。
【0031】
<分散液調製工程>
粘土分散工程で得られた粘土分散液と、(D)成分とを混合して粘土鉱物分散液とする工程である。本工程により、(D)成分が混合液中に分散され、適度な粘度を備え、かつ保管・移送においても減粘しない粘土鉱物分散液が得られる。
本工程の混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。
本工程に用いる混合装置の例について、以下に図面を用いて説明する。図1は、混合装置の一例を示すバッチ式混合装置1の模式図である。バッチ式混合装置1は、撹拌槽10と、撹拌槽10の内面12を掻き取る略U字状のスクレーパー翼31に攪拌槽10の中心方向に突出する突出翼32が設けられた壁面掻取翼30と、攪拌槽10の略中心に上下方向に延びる攪拌軸22と、該攪拌軸22から内面12に向かって突設された攪拌翼20とで概略構成されている。
このバッチ式混合装置1においては、攪拌槽10内に混合液と(D)成分とを供給し、撹拌翼20及び壁面掻取翼30を回転させることで、供給された原料は、内面12と攪拌翼20との間で生じる剪断力を受けながら混合される。
【0032】
このようなバッチ式混合装置としては、アジホモミキサー(株式会社エヌ・ピー・ラボ製)、ロボミクスホモミキサー(プライミクス株式会社製)、クレアミックス(エム・テクニック株式会社製)等が挙げられる。
【0033】
また、本工程には、図2に示すような連続式混合装置100を用いることができる。連続式混合装置100は、略円筒状のハウジング110と、攪拌翼122を供えるローター120と、ローター120をその回転軸回りに離間して覆うステーター130とで概略構成されている。
この連続式混合装置100においては、ローター120を回転させながら吸入口112からハウジング110内に、混合液と(D)成分とを混合した流体を供給することで、供給された流体は攪拌翼122とステーター130の内面132との間で生じる剪断力を受けながら混合され、排出口114から装置外へ排出される。
【0034】
このような連続式混合装置としては、マイルダー(太平洋機工株式会社製)、ラインホモミキサー(プライミクス株式会社製)等が挙げられる。
【0035】
本工程における混合装置の運転条件は、特に限定されず、(A)成分を(B)成分で十分に膨潤できるように剪断速度等を調節する。
本工程における剪断速度は、1000〜10000sec−1が好ましく、2000〜8000sec−1がより好ましく、3000〜6000sec−1がさらに好ましい。剪断速度が1000sec−1未満であると、(D)成分を十分に分散できないおそれがある。剪断速度が10000sec−1超であると、例えば、油性成分を配合した場合、(D)成分が乳化粒子の表面に配列し、(A)成分との会合体が形成されないおそれがある。
【0036】
剪断速度とは、混合装置の攪拌翼の先端速度をv(m/s)、該先端と混合装置の内面とのクリアランスをD(m)とした場合にv/D(sec−1)で算出される値である。
【0037】
例えば、図1に示すバッチ式混合装置1における剪断速度は、攪拌翼20の先端24の先端速度と、先端24と攪拌槽10の内面12とのクリアランス(図1中のD1)とから算出できる。
また、図2に示す連続式混合装置100における剪断速度は、攪拌翼120の先端124の速度と、先端124とステーター130の内面132とのクリアランス(図2中のD2)とから算出できる。
なお、当該剪断速度は、混合装置の攪拌翼の回転速度又は攪拌翼と内面とのクリアランスの調節により調整することができる。
【0038】
また、本工程における循環回数は、1〜9が好ましく、3〜5がより好ましい。循環回数を1未満とすると、(D)成分の分散が不十分になるおそれがあり、9超とすると(D)成分が乳化粒子の表面に配列し、(A)成分との会合体が形成されないおそれがある。
循環回数とは、内容物が撹拌羽根により受ける剪断回数を示すものである。循環回数は、バッチ式混合装置を用いる場合、下記(I)で規定されるものである。
(I)本工程をバッチ式混合装置で行う場合、下記(i)式により求められる値。
循環回数=Nqd×r×d×θ÷V ・・・(i)
(式(i)中、Nqd:吐出流量係数、r:攪拌翼の回転数(rpm)、d:攪拌翼の直径(m)、θ:攪拌時間(min)、V:内容液の体積(m))
上記(I)において吐出流量係数Nqdは、攪拌翼の形式により定まる定数であり、吐出流量Qdに基づいて、下記(ア)式により算出することができる。
Nqd=Qd/NR ・・・(ア)
(式(ア)中、Qd:吐出流量(m/min)、N:攪拌翼の回転数(rpm)、R:攪拌槽の内径(m))
Qdは、「粒子が翼端から吐出され、翼からの吐出流の流れに運ばれて再び翼端に吸い込まれる」あるいは「翼からの吐出流から、翼からの吐出流によって誘起される流れに移り、翼に戻らずに循環を繰り返した後、翼からの吐出流の流れに戻り翼に吸い込まれる流れ」であると定義できる。
ここで、Qdは、攪拌翼の剪断速度に応じ、公知の方法により測定できる(参考文献1:佐藤忠正,谷山巌,「攪拌槽における吐出循環流量」,社団法人化学工学会,化学工学,第29巻,第3号,1965年、参考文献2:創業70周年記念事業特別委員会編,「乳化・分散の理論と実際」,特殊機化工業株式会社,1997年4月17日)。
【0039】
例えば、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼、ディスプロ翼、ディスパー翼等、剪断速度5500sec−1未満の攪拌翼のQdは、図3に示す測定装置200を用いて測定することができる。
【0040】
図3に示すように測定装置200は、攪拌槽202と、攪拌槽202内に設けられた攪拌翼230と、鏡240とを備えるものである。鏡240は、攪拌槽202の下方に、攪拌槽202の底面214に対し角度αの傾斜で設けられたものである。攪拌槽202は、略円筒形の水槽210と、水槽210の内周面に、開口部212から底面214に掛けて等間隔で設けられた2枚の邪魔板220とを備え、水槽210は、ガラス又は透明樹脂等、少なくとも水槽210内部を鏡240で視認できる材質のものである。攪拌翼230は、攪拌軸232と接続され、攪拌軸232は、図示されない動力と接続されている。
測定装置200は、各構成部材が下記の条件を満たすものである。
d/R=0.25〜0.5、C/R=0.1〜0.8、W/R=0.1、α=45°
(dは攪拌翼の直径(m)、Cは攪拌翼の取付高さ(m)、Wは邪魔板の幅(m)、Rは攪拌槽の内径(m)、αは攪拌槽の底面に対するミラーの角度(°)である。)
次に剪断速度が5500sec−1未満の攪拌翼のQdの測定方法について説明する。撹拌槽202内に粒子262を分散した内容液260を投入し、内容液260を攪拌翼230で攪拌した際、粒子262が測定時間Tの間に攪拌翼230を通過する回数mqを、矢印F方向で鏡240を介して目視でカウントする。そして、カウントした回数mqから、下記(イ)式により求めることができる(参考文献1のp.153〜158参照)。測定に用いられる粒子262は、球形型のポリプロピレン製粒子(球形3mm、比重1.1g/cm)であり、10個とする。内容液体は25℃、測定時間Tは10〜15分である。
Qd=mqV/T ・・・(イ)
(式(イ)中、mqは通過回数、Vは内容液260の体積(m)、Tは測定時間(min)を表す。)
また、例えば、T.K.ホモミクサーMARK II型(プライミクス株式会社製)、ウルトラタラックス(IKA社製)、シャーフロー、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)、PVT−1−20型(みずほ工業製)等、剪断速度5500sec−1以上の攪拌翼のQdは、図4に示す測定装置300を用いて測定することができる。
図4に示すように測定装置300は、攪拌槽301と、攪拌槽301内に設けられた攪拌部304とを備えるものであり、攪拌部304は、タービン翼である攪拌翼302と、邪魔板の役目をするステーター303とで構成されている。攪拌翼302は、攪拌軸307と接続され、攪拌軸307は、図示されない動力と接続されている。攪拌槽301は、水槽305と、攪拌部304の上方に設けられた転流板306とで構成され、水槽305は、ガラス又は透明樹脂等、少なくとも水槽305内部を視認できる材質とされている。
測定装置300は、各構成部材が下記の条件を満たすものである。
d/R=0.2〜0.3、z/Z=0.5〜0.7、l/L=0.5〜0.7
(dは攪拌翼の直径(m)、Rは攪拌槽の内径(m)、z/Zは攪拌翼の取付位置(m/m)、l/Lは転流板の取付位置(m/m)である。)
次に剪断速度が5500sec−1以上の攪拌翼のQdの測定方法について説明する。撹拌槽301内に、粒子262を分散した内容液260を投入し、内容液260を攪拌翼302で攪拌する。この際、内容液260は、水面が転流板306の上方となるようにする。攪拌した際、粒子262がステーター303内に入ってから一循環して、再度、ステーター303内に戻るまでを循環1回とする。この循環1回の時間を1000回測定し、1000回分の測定値により循環時間分布を作成する。分布は、横軸を時間t[sec]とし、縦軸をg(t)=[ある時間帯の回数/全回数]とし、プロットして作成する。この循環時間分布を基に、下記(ウ)式により、Qdを求めることができる(参考文献2のp.13〜15参照)。
Qd=V/T ・・・(ウ)
式(ウ)中、Vは内容液260の体積(m)、Tは混合時間(min)を表す。
なお、Tは、下記(エ)式により、求めることができる。
=T+T ・・・(エ)
式(エ)中、Tは、g(t)分布のトップピークにあたるt軸をtとしたとき、t=0〜tまでの混合時間の平均を表す。Tは、g(t)分布トップピークにあたるt軸をtとしたとき、t=t〜∞までの時間の平均を表す。t=0〜t区間におけるg(t)、t=t〜∞におけるg(t)は、g(t)軸のプロットを基に、近似式として求めることができる。
【0041】
剪断速度が5500sec−1未満である攪拌翼、剪断速度が5500sec−1以上である攪拌翼共に、そのNqdは、回転数、つまり攪拌レイノルズ数により異なる。Nqdに対する攪拌レイノルズ数の関係は、攪拌レイノルズ数が大きくなると、Nqdも大きな値をとる。攪拌レイノルズ数が大きい乱流領域では、Nqdが一定値となるので、攪拌レイノルズ数を大きくしたときのNqdの値が10%以内であるときを確認し、その値を攪拌翼のNqdとして用いる。
例えば、バッチ式混合装置1において、攪拌翼20の直径dは、攪拌翼20の先端24が描く円形の直径(図1中のd1)である。
また、循環回数は、本工程をT.K.パイプラインホモミクサーM型(プライミクス株式会社製)等の連続式混合装置で行う場合、下記(II)で規定されるものである。
(II)下記(ii)式により求められる値。
循環回数=Nqd×r×d÷F ・・・(ii)
[式(ii)中、Nqd:吐出流量係数、r:攪拌翼の回転数(rpm)、d:攪拌翼の直径(m)、F:混合装置へ供給される流体の流量(m/min)]
上記(II)において、Nqdは、(I)の場合と同様である。
例えば、連続式混合装置100において、攪拌翼122の直径dは、攪拌翼122の先端124が描く円の直径(図2中のd2)である。
【0042】
本工程における混合温度は、特に限定されず、例えば、40〜80℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。40℃未満であると、水溶性の任意成分が十分に溶解しないおそれがあり、80℃超であると水溶性の任意成分が変性・分解するおそれがあるためである。
また、混合時間は、混合装置の能力や容積等を勘案し、(D)成分を十分に分散できる時間とされる。
【0043】
なお、(D)成分として、ジステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル等、室温(25℃)で流動性がない成分を用いる場合、予め融点以上に加温溶解した後、添加することが好ましい。
【0044】
また、本工程の後段に冷却工程を設けてもよい。この冷却工程は、分散液調製工程で得られた粘土鉱物分散液を任意の温度、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下まで冷却するものである。
【0045】
粘土鉱物分散液に水溶性の任意成分を配合する場合、予め混合液に水溶性の任意成分を溶解する(溶解操作)ことができる。
溶解操作に用いる混合装置は、従来公知の混合装置を用いることができ、例えば、プロペラ翼を備えたベッセル、ニーダー等のバッチ式混合装置や、インラインミキサー等の連続式混合装置が挙げられる。また、上述した膨潤工程で用いる混合装置と同様のものを用いてもよい。
【0046】
本操作における混合温度は、水溶性の任意成分の種類等に応じて決定でき、例えば、40〜80℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。40℃未満であると水溶性の任意成分が十分に溶解しないおそれがあり、80℃超であると水溶性の任意成分が変性するおそれがあるためである。
また、混合時間は、混合装置の能力や容積等を勘案し、水溶性の任意成分が(B)成分中に十分に溶解する時間とされる。
【0047】
また、粘土鉱物分散液に油性成分を配合する場合、本工程において配合できる。油性成分は、(D)成分と共に混合装置内に投入し、混合することで、混合液中に分散される。
こうして得られた粘土鉱物分散液は、そのままで、あるいは香料、色素等の任意成分が混合され、液体入浴剤、ボディローション等とされる。
【0048】
上述の通り、粘土分散液を予め調製し、攪拌しながら冷却し、そこに(D)成分を分散することで、粘土鉱物分散液の減粘を防止できる。粘土鉱物分散液の減粘を防止できる機構は定かではないが、(A)成分、(C)成分が冷却と同時に膨潤するに当たって、せん断を加えることによって、より十分に膨潤するため、その後の工程において、(A)成分、(C)成分の膨潤度が変動しにくい。
このような状態の粘土分散液を用いて、分散液調製工程が行われるため、(A)成分及び(C)成分の膨潤状態が確保され、粘土鉱物分散液の粘度が維持される。さらに、分散した(D)成分が(A)成分同士のバインダーとして機能することで、(A)成分と(D)成分との会合体により形成されたカードハウス類似構造は、移送・保管において破壊されない程度に強固なものになるためと考えられる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0050】
(使用原料)
各実施例及び各比較例における使用原料を以下に示す。
<(A)成分>
・ベントナイト:クニピア−G(商品名)、クニミネ工業株式会社製
・サポナイト:スメクトンSA(商品名)、クニミネ工業株式会社製
<(C)成分>
・カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na):セロゲンF−815A(商品名)、第一工業製薬株式会社製
・キサンタンガム:エコーガムT(商品名)、大日本住友製薬株式会社製
<(D)成分>
・ジステアリン酸デカグリセル:DECAGLYN 2−ISV(商品名)、日光ケミカルズ株式会社製
・ジイソステアリン酸ポリグリセル:Sフェイス IS−1002P(商品名)、阪本薬品工業株式会社製
<(E)成分>
・ソルビット:ソルビット液(70%)、NOSORB 70/02 SB(商品名)、純分70質量%、ロケットジャパン株式会社製
・キシリット:中央化成株式会社製
<共通成分>
表1に示す組成の共通成分を用いた。表1中の共通成分の組成割合(質量%)は、粘土鉱物分散液中の含有量である。
【0051】
【表1】




【0052】
(評価方法)
<減粘率の評価>
製造直後の粘土鉱物分散液の粘度を測定し、その測定結果を測定値Aとした。製造後、ポンプ(MASTER FLEX、MODEL:7523−00、供給能力:49L/分(0.65m/s)、Barnant Company製)に、ホース(40A(内径40mm)4mを接続し、粘土鉱物分散液(25℃)全量を25℃の環境下で、移送した。移送後の粘土鉱物分散液の粘度を測定し、その測定結果を測定値Bとした。測定値A及びBから、下記(1)式により減粘率を算出し、その減粘率を下記判定基準に分類した。
減粘率(%)=[(測定値A−測定値B)/測定値A]×100 ・・・(1)
≪判定基準≫
◎:減粘率が17%未満
○:減粘率が17%以上30%未満
△:減粘率が30%以上40%未満
×:減粘率が40%以上
なお、粘土鉱物分散液の粘度は、株式会社東京計器製のBL型回転式粘度計を用い、以下に示す測定条件で測定した。
ローター:No.3、回転数:60rpm、測定温度:25℃(粘土鉱物分散液の温度)、測定時間:60秒後
(実施例1〜7、9〜13、比較例1〜3)
表2〜3の組成に従い、以下の手順で各例の粘土鉱物分散液を16kg製造した。なお、表中の組成は、純分換算である。
【0053】
粘土分散工程の欄に記載の(A)成分と(B)成分と(C)成分と(E)成分とを図5に示す混合装置400と同様の混合装置(PVT−1−20型、みずほ工業製)で70℃に加温・攪拌し、混合液を得た。混合に当たっては、壁面掻取翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、中央翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、で混合装置を30分間運転した。その後任意成分を加え、壁面掻取翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、中央翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、攪拌翼:回転数7600rpm,先端速度=19m/sで混合装置を0.5分間運転した。その後、攪拌翼を停止し、混合装置を壁面掻取翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、中央翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/sで4.5分間運転した(粘土分散工程)。
【0054】
さらに、壁面掻取翼、中央翼での攪拌を続け、混合液を40℃まで冷却した。冷却に当たっては壁面掻取翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、攪拌翼:回転数7600rpm,先端速度=19m/sで攪拌を行いながら、表2〜3に記載の冷却速度(実施例1〜5、実施例9〜13、比較例1〜2は1℃/min、実施例6は0.1℃/min、実施例7は3℃/min、比較例3は0.004℃/min)で70℃から40℃に冷却を行い、水膨潤性粘土鉱物膨潤液組成物を得た(冷却混合工程)。
【0055】
冷却した混合液と、表中の分散液調製工程の欄に示した(D)成分(但し、予め60℃で加温溶解した)を混合し、粘土鉱物分散液を得た。混合に当たっては、壁面掻取翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、中央翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、攪拌翼:回転数4000rpm,先端速度=10m/sで混合装置を4分間(混合時間)運転した。その後、攪拌翼を停止し、壁面掻取翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、中央翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/sで混合装置を16分間運転した(分散液調製工程)。
【0056】
図5の混合装置400は、撹拌槽410と、壁面掻取翼430と、中央翼420と、ホモジナイザーである攪拌部440と、ジャケット部450とで概略構成されている。壁面掻取翼430は、略U字状のアンカー翼431と、アンカー翼431の外側に複数設けられ、攪拌槽410の内面を掻き取る掻取板433と、アンカー翼431から攪拌槽410の中心方向に突出するように設けられた突出翼432とで概略構成され、中央翼420は、攪拌槽410の略中心に上下方向に延びる攪拌軸422から攪拌槽410の内面に向かって突設されたものである。攪拌部440は、攪拌軸422の下端に設けられ、タービン翼である攪拌翼444と、攪拌翼444をその回転軸回りに離間して覆うステーター442とで概略構成されている。ジャケット部450は、攪拌槽410の外面に設けられたものであり、内部に熱媒を通流させて、攪拌槽410内を任意の温度に調節するものである。
この混合装置400は、壁面掻取翼430と、中央翼420との回転により、攪拌槽410内の被混合物を流動させると共に、攪拌部440により被混合物に剪断力を与えるものである。
図中、符号D3は、攪拌翼444の先端とステーター442の内面とのクリアランスを表わし、符合d3は、攪拌翼444の直径を表わす。
なお、本実施例に用いた混合装置(PVT−1−20型、みずほ工業製)は、図5中のD3=0.5mm、d3=44mm、吐出流量係数(Nqd)=0.1のものである。
【0057】
(実施例8)
表2の組成に従い、粘土鉱物分散液を得た。
粘土分散工程の欄に記載の(A)成分と(B)成分と(E)成分とを10Lビーカー中で70℃に加温し、プロペラ攪拌翼(600rpm、プロペラ攪拌翼の先端速度:1.4m/s)により30分間攪拌して予備粘土分散液を得た。高分子分散工程の欄に記載の(B)成分と(C)成分と(B)成分とを2Lビーカー中で70℃に加温し、プロペラ攪拌翼(600rpm、プロペラ攪拌翼の先端速度:1.4m/s)により30分間攪拌して高分子水溶液を得た。
図5に示す混合装置400と同様の混合装置(PVT−1−20型、みずほ工業製)で、高分子水溶液と共通成分と混合し、これに予備粘土分散液を混合して粘土分散液を得た。混合に当たっては、壁面掻取翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、中央翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、攪拌翼:回転数7600rpm,先端速度=19m/sで混合装置を0.5分間運転した。その後、攪拌翼を停止し、混合装置を壁面掻取翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、中央翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/sで4.5分間運転した(粘土分散工程)。
さらに、壁面掻取翼、中央翼での攪拌を続け、混合液を40℃まで冷却した。冷却に当たっては壁面掻取翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、攪拌翼:回転数7600rpm,先端速度=19m/sで攪拌を行いながら、冷却速度1℃/minで70℃から40℃に冷却を行い、混合液を得た(冷却混合工程)。
冷却した混合液と、表中の分散液調製工程の欄に示した(D)成分(但し、予め60℃で加温溶解した)を混合し、粘土鉱物分散液を得た。混合に当たっては、壁面掻取翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、中央翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、攪拌翼:回転数4000rpm,先端速度=10m/sで混合装置を4分間(混合時間)運転した。その後、攪拌翼を停止し、壁面掻取翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/s、中央翼:回転数=53rpm,先端速度=0.86m/sで混合装置を16分間運転した。さらに、壁面掻取翼、中央翼での攪拌を続け、粘土鉱物分散液を40℃まで冷却した(分散液調製工程)。
【0058】
【表2】




【0059】
【表3】




【0060】
表2〜3に示すように、本発明を適用した実施例1〜13は、いずれも減粘率評価が「○」又は「◎」であった。
これに対し、冷却混合工程での撹拌翼先端速度が範囲外である比較例1〜2、冷却混合工程での冷却速度が範囲外である比較例3は、いずれも減粘率が「△」又は「×」であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、移送中に減粘しにくい粘土鉱物分散液が得られることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:水膨潤性粘土鉱物と、(B)成分:水と、(C)成分:水溶性高分子化合物と、(D)成分:(ポリ)グリセリンエステルとを含有する粘土鉱物分散液の製造方法であって、
前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分とを混合して粘土分散液を得る粘土分散工程と、
前記粘土分散液を翼先端速度5〜25m/sで攪拌しながら、かつ平均0.01〜5℃/minの冷却速度で冷却して混合液を得る冷却混合工程と、
前記混合液と、(D)成分とを混合する分散液調製工程とを有することを特徴とする粘土鉱物分散液の製造方法。
【請求項2】
さらに(E)成分:糖アルコールを含有し、前記粘土分散工程において前記(A)成分と前記(E)成分とを(E)成分/(A)成分=3〜8(質量比)で混合することを特徴とする請求項1に記載の粘土鉱物分散液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101985(P2012−101985A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253379(P2010−253379)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】