粘着ラベルとその作製方法および作製装置
【課題】粘着ラベルの非粘着層に十分な大きさの高精度の開口を形成し、その開口を介して粘着剤層を露出させて大きな粘着力を得る。
【解決手段】粘着ラベル1の支持体2の一方の面に設けられている感圧性粘着剤からなる粘着剤層3の上に形成されている非粘着層4に対して熱または物理的な力を加えて、非粘着剤層4に形成されている切り込み4aを基点として開口を形成し、開口を介して粘着剤層3を露出させる。
【解決手段】粘着ラベル1の支持体2の一方の面に設けられている感圧性粘着剤からなる粘着剤層3の上に形成されている非粘着層4に対して熱または物理的な力を加えて、非粘着剤層4に形成されている切り込み4aを基点として開口を形成し、開口を介して粘着剤層3を露出させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着ラベルとその作製方法および作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などの商品のPOS(販売時点情報管理)用のバーコードの表示、配送用の荷札、または、瓶や缶などの容器の内容物表示などのために、粘着性を有する粘着ラベルが広く使われている。粘着ラベルは、一般的に、シート状の支持体の一方の面に、使用時には物品に押しつけられて貼付される感圧性粘着剤からなる感圧性粘着剤層が形成されている。そして、粘着ラベル同士が重ねて保管される際に互いに貼り付く、いわゆるブロッキング現象が生じないように、剥離紙(セパレータ)が感圧性粘着剤層を覆うように設けられている。支持体の他方の面には、文字や記号や図柄等が印刷された、または印刷が可能な印刷層(例えば感熱記録層)が形成されている。この粘着ラベルの貼り付け時には、剥離紙を剥がして露出させた感圧性粘着剤層を、被着物である物品に押しつけて貼付する。そのため、剥離紙を剥がす作業が必要であり、このことが作業効率の低下の一因となっている。また、剥離紙にはシリコンなどの剥離剤がコーティングされているため、剥がされた剥離紙は再生紙などとしてリサイクルできずに廃棄されるので、資源の無駄であるとともに環境保護からも好ましくない。
【0003】
これらの問題点を解決するために、剥離紙を用いない粘着ラベルが提案されている。例えば、支持体を挟んで感圧性粘着剤層と反対の面に位置する印刷層上に、シリコンなどからなる薄い剥離剤層が設けられた粘着ラベルがある。この粘着ラベルの剥離剤層は、剥離紙のように感圧性粘着剤層上を覆うものではないため、使用時に廃棄する必要はない。また、この剥離剤層が設けられた粘着ラベル同士を重ねて保管しても、感圧性粘着剤層と剥離剤層とが接するため、互いに貼り付いたりせず、ブロッキング現象は生じない。
【0004】
また、感圧性粘着剤層の代わりに、常温では非粘着性であるが加熱されると粘着性を発現する感熱性粘着剤層が設けられた粘着ラベルがある(例えば特許文献1,2)。具体的には、合成樹脂と固体可塑剤と粘着付与剤とを含む組成の感熱性粘着剤の層が設けられており、加熱時に、固体可塑剤が溶融して合成樹脂を膨潤または軟化させることに加えて、粘着付与剤により大きな粘着性が発現する。特許文献1,2に記載されている感熱性粘着剤層を有する粘着ラベルは、常温下では感熱性粘着剤層の粘着力は発現せず、所定温度以上に加熱することによって粘着性が発現する。従って、常温で重ねて保管する際のブロッキングの抑制が可能であるとともに、剥離紙が不要であるため環境保護や部品点数の削減に伴う低コスト化などの効果が得られる。
【0005】
また、従来の粘着ラベルの他の例として、特許文献3には、支持体(基材シート)の一方の面に感圧性粘着剤層が設けられ、この感圧粘着剤層の表面に加熱易破壊性のマイクロカプセル層が設けられた構成の粘着ラベルが開示されている。常温下ではこの粘着ラベルを重ねて保管しても、感圧性粘着剤層はマイクロカプセル層によって覆われているため、その粘着力を発揮することはできず、粘着ラベル同士が互いに貼り付くブロッキング現象が防止される。このように、保管時には感圧性粘着剤層の粘着力が発揮されず、一方、粘着力が必要な場合には加熱によってマイクロカプセル層を破壊して、その下層に位置する感圧性粘着剤層を露出させ、粘着性を発揮できるようにすることができる。
【0006】
さらに、特許文献4には、基材の一方の面に印刷層を有し、他方の面に感圧性粘着剤層と、その感圧性粘着剤層を覆う樹脂フィルム(非粘着層)とが設けられている粘着ラベルが開示されている。常温下ではこの粘着ラベルを重ねて保管しても、感圧性粘着剤層は樹脂フィルムに覆われているため、その粘着力を発揮することはできず、粘着ラベル同士が互いに貼り付くブロッキング現象が防止される。そして、粘着力が必要な場合には樹脂フィルムを加熱して熱反応により開口を形成し、この開口を介して下層の感圧性粘着剤層を露出させることにより、被着物への貼り付けを可能にしている。
【0007】
特許文献1〜4に記載された粘着ラベルは、いずれも剥離紙が不要であるため、環境保護や低コスト化の点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−103969号公報
【特許文献2】特開2006−083196号公報
【特許文献3】特開平9−111203号公報
【特許文献4】特開2006−78733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2に開示されている粘着ラベルの感熱性粘着剤に含まれる固体可塑剤は、ガラス転移点が常温以下であって、通常は常温以下で活性化する特性の材料が多い。そのため、常温で保管している状態でも、ある程度の粘着力が発現することは避けられない。すなわち、常温で保管している時点で感熱性粘着剤層を完全に非粘着状態にすることが困難であり、耐ブロッキング性が不十分である。
【0010】
この問題を解決するために、固体可塑剤のガラス転移点を常温よりも高くして、常温下での粘着性をより抑え、耐ブロッキング性を向上させることが考えられる。しかし、ガラス転移点を高くすると、粘着性発現のためにより大きな熱エネルギーが必要となる。そもそも、感熱性粘着剤の特性上、非常に強い粘着力を得ることは困難であり、特に、平滑でない粗面を有する被着体に対して十分に高い粘着力を得るためには、感熱性粘着剤層を厚く形成することが望ましい。しかし、感熱性粘着剤層が厚くなると、熱活性化のためにさらに大きな熱エネルギーが必要となり、電源容量の大きな熱源を利用しなければならなくなる。このように、常温でのブロッキング現象を防止することと、比較的低い熱エネルギーによって高い粘着力を確保することを両立させるのは困難である。
【0011】
また、感熱性粘着剤に含まれている固体可塑剤は温度に依存する結晶性を有しているため、熱活性後の再結晶化による粘着性の急激な低下を生じる。一定の粘着力を確保するためには、保管環境や使用環境に応じた固体可塑剤を選択的に用いる必要があるなど、量産性に関する問題がある。
【0012】
また、サーマルプリンター等のサーマルヘッドを熱源として感熱性粘着剤を加熱して溶融させる場合には、サーマルヘッドと感熱性粘着剤が直接接するため、溶融した感熱性粘着剤がサーマルヘッドやそれに対向するプラテンローラや給紙経路の一部に糊ゴミとして付着してしまうおそれがある。その結果、粘着ラベルの搬送不良や紙ジャム等の発生につながるという問題がある。
【0013】
これに対し、特許文献3,4に記載された粘着ラベルは、常温での耐ブロッキング性が得られるとともに、感圧性粘着層を有しているため、加熱によってマイクロカプセル層の破壊または樹脂フィルムの開口形成を行うと、強い粘着力を得ることができる。
【0014】
しかし、特許文献3の粘着ラベルのマイクロカプセル層は、個々のマイクロカプセルが球状であり、サーマルヘッド等の熱源に対して点接触状態で加熱されるため、熱の伝達効率が悪い。また、熱破壊されたマイクロカプセルの殻が粘着剤上に残留して粘着力を弱めたり、マイクロカプセルの殻が熱源のサーマルヘッド等に付着して熱効率を一層悪くしてしまうなど、熱破壊が不十分になって必要な粘着力が十分に得られない場合がある。
【0015】
一方、特許文献4の粘着ラベルでは、感圧性粘着剤層の表面上に配置されている樹脂フィルムを、サーマルヘッド等の熱源により加熱する。その際に、サーマルヘッド等の熱源による加熱点を熱のピークとした熱の分布が生じ、図18(a),(b)に示すように、その加熱点から樹脂フィルムの溶融が始まり、穴(開口)101が形成される。熱源の熱は、加熱点から周囲に次第に広がる。この穴の大きさは、樹脂の固有の熱伝導率と、加えられる熱の大きさとによって決定される。したがって、同一の樹脂フィルムにおいて、より大きな穴を形成するためには、より高い熱を必要とするという問題があった。また、本来は被着体に作用させるための感圧性粘着剤層の粘着力が、樹脂フィルムに対しても作用するため、加熱時の樹脂フィルムの熱変形や熱収縮を阻害する要因となる。そうすると、十分な大きさで高精度の開口101を形成することができず、開口101を介して露出する感圧性粘着剤層の粘着力を十分に発揮することができない場合がある。
【0016】
そこで本発明の目的は、非粘着層に十分な大きさの高精度の開口を形成し、その開口を介して感圧性粘着剤からなる粘着剤層を露出させて大きな粘着力を得ることができる粘着ラベルとその作製方法および作製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の粘着ラベルは、支持体の一方の面に、感圧性粘着剤からなる粘着剤層と、粘着剤層上に形成されており、熱または物理的な力が加えられることにより、下層に位置する粘着剤層を露出させる開口が形成される非粘着層と、が設けられており、非粘着層は開口が生じる基点となる切り込みを有している。
【0018】
本発明の粘着ラベルの作製方法は、支持体の一方の面に設けられている感圧性粘着剤からなる粘着剤層の上に形成されている非粘着層に対して熱または物理的な力を加えて、非粘着剤層に形成された切り込みを基点として開口を形成し、この開口を介して下層の粘着剤層を露出させるステップを含む。
【0019】
本発明の粘着ラベル作製装置は、支持体の一方の面に設けられている感圧性粘着剤層の上に形成されている非粘着層に対して熱または物理的な力を加えて、非粘着剤層に形成されている切り込みを基点として効率的に開口を形成し、この開口を介して下層の粘着剤層を露出させる粘着性発現部を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、粘着剤層が非粘着層に覆われている状態では、粘着ラベル同士が互いに貼り付くことが防止できる。しかも、剥離紙等が不要であるため、環境保護の観点から好ましく、また、製造コストを低く抑えられる。そして、非粘着剤層に形成された切り込みを利用して開口を形成することにより、低エネルギーで大きな開口を容易に形成でき、これにより大きな粘着力を発現させることができる。しかも、切り込みを所望の形状に形成することにより、所望の開口を形成して所望の粘着特性を容易に得られる。このように本発明は、エネルギー効率がよく、所望の粘着領域および所望の粘着力を容易に実現可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る粘着ラベルの断面図である。
【図2】(a)は図1に示す粘着ラベルの開口未形成時の平面図、(b)はその一例の拡大図、(c)は他の例の拡大図である。
【図3】本発明の粘着ラベル作製装置の一例の概略構成図である。
【図4】(a)は図1に示す粘着ラベルの開口形成後の平面図、(b)はその拡大図である。
【図5】粘着ラベルの非粘着層と加熱部分の相対的な移動を示す概略図である。
【図6】(a)は図5に示す非粘着層の一領域を示す拡大図、(b)〜(g)はその領域の熱収縮状態を順番に示す概略図である。
【図7】本発明の粘着ラベル作製装置の他の例の概略構成図である。
【図8】(a)〜(g)は様々な切り込みを有する本発明の粘着ラベルの開口未形成時の平面図である。
【図9】(a)は切り込みの深さが大きすぎる粘着ラベルの断面図、(b)は切り込みの深さが小さすぎる粘着ラベルの断面図である。
【図10】本発明の粘着ラベル作製装置のさらに他の例の概略構成図である。
【図11】本発明の粘着ラベル作製装置のさらに他の例の概略構成図である。
【図12】図10,11の粘着ラベル作製装置における切り込み形成ステップを示す粘着ラベルの平面図である。
【図13】本発明の粘着ラベル作製装置のさらに他の例の概略構成図である。
【図14】本発明の粘着ラベル作製装置のさらに他の例の概略構成図である。
【図15】(a)〜(c)は、図14に示す粘着ラベル作製装置による切り込み形成ステップと開口形成ステップを順番に示す概略図である。
【図16】本発明の粘着ラベル作製装置のさらに他の例の概略構成図である。
【図17】(a)〜(c)は、図16に示す粘着ラベル作製装置の残渣除去部の例を示す概略図、(d)は(c)に示す残渣除去部の搬送ローラを示す拡大平面図である。
【図18】(a)は従来の粘着ラベルの開口形成後の平面図、(b)はその拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、同一の部分には同一の符号を付与し、説明を省略することがある。
【0023】
まず、本発明の一実施形態の粘着ラベルの構成を、図1,2を参照して説明する。図1,2に示す粘着ラベル1は、紙や高分子基材などからなるシート状の非粘着性の支持体2の一方の面に、感圧性粘着剤からなる粘着剤層3と、粘着剤層3上に形成されている、オリフィン系樹脂からなる非粘着層4を有している。非粘着層4は、樹脂フィルムまたは樹脂塗布膜からなり、切り込み4aが形成されている。支持体2の他方の面には、感熱記録層等の印刷層5が形成されている。
【0024】
この粘着ラベル1は、図1,2に示す未加熱時には、粘着剤層3が非粘着層4によって覆われているため、粘着性を発揮できない状態である。従って、複数の粘着ラベル1を積み重ねて保管したり、図3に示すように長尺の粘着ラベル1を巻回してロール状にして保管したりしても互いに貼り付くことがなく、いわゆるブロッキング現象が防止できる。また、この未加熱状態でラベルを搬送しても、粘着面は非粘着状態に保たれているので、粘着ラベル作製装置内での通紙性は良好である。
【0025】
そして、この粘着ラベル1の使用時には、サーマルヘッド6等の加熱手段(図3参照)を用いて非粘着層4を選択的に加熱して、図4に示すように非粘着層4を熱収縮させて開口4bを生じさせる。これにより、非粘着層4の開口4bを介して、下層に位置する粘着剤層3を外部に露出させる。こうして外部に露出した粘着剤層3が図示しない被着物に押し付けられることにより、粘着ラベル1は被着物に貼り付けられる。粘着剤層3は感圧性粘着剤からなるため、被着物の表面が粗面であっても良好に貼り付けることができる。なお、図4に示すように、本発明において良好に非粘着層4が熱収縮した場合には、非粘着層4を構成する材料が小片4cとなって収縮し、その小片4c以外は、下層の粘着剤層3を露出する非粘着層4の開口4bとして形成される。
【0026】
なお、非粘着層4の加熱前に、粘着ラベル1の印刷層5には、非粘着層4を加熱するサーマルヘッド6と同様の構成の他のサーマルヘッド7(図3参照)による加熱によって、所望の文字や記号や図柄等の印刷が行われる。ただし、この印刷は非粘着層4の加熱後であってもよく、非粘着層4を加熱するサーマルヘッド6を印刷用に兼用することもできる。
【0027】
このような構成の粘着ラベル1において、仮に、開口4bの大きさや形状および形成位置を所望の通りに制御できなければ、粘着剤層3が外部に露出する面積や外部に露出する位置が変わってしまい、所望の粘着特性を得ることが難しくなる。また、図18(a),(b)に示すように、開口を大きく形成できない場合には、大きな粘着力は得られない。
【0028】
そこで、本発明では、開口4bを形成すべき非粘着層4に切り込み4aを形成している。この切り込み4aは、非粘着層4中で機械的強度の弱い部分となる。従って、図4に示す例において、サーマルヘッド6等の加熱手段を用いて、非粘着層4に加熱を行うと、非粘着層4は強度の弱い切り込み4aから開口4bが生じ始め、粘着剤層3による粘着力の強い方向に向かって熱収縮する。
【0029】
具体的には、図5に示すように、非粘着層4が粘着ラベル作製装置内を矢印方向に進行するにつれて、サーマルヘッド6による加熱位置Hは移動し、その間に開口4bが形成される。この時の非粘着層4の挙動について、図6を参照して説明する。
【0030】
図6(a)に示されている非粘着層4の、切り込み4aに囲まれている領域Pを見ると、サーマルヘッド6による加熱位置Hから離れている段階(図6(b)参照)から、加熱位置Hが部分Pに到達すると、加熱位置Hに接する個所から樹脂が熱収縮する(図6(c)参照)。このとき、熱収縮は切り込み4aを基点として生じ、熱収縮の方向は、加熱位置Hから離れる方向(図6下方)になる。加熱位置Hが領域Pに対して相対的に移動すると、加熱位置Hに対向して熱収縮する部分が大きくなっていく(図6(d),(e)参照)。しかし、加熱位置Hが領域Pの中心付近を通り過ぎると、加熱位置Hに対向することによって生じる熱収縮の方向が反転する。すなわち、切り込み4aを基点として、加熱位置Hの相対移動方向の上流側(図6上方)に向かって熱収縮するようになる(図6(f)参照)。これは、熱収縮は、切り込み4aの部分を基点として、複数の切り込み4aに囲まれた領域Pの中心付近に向かって生じるからである。最終的には、図6(g)に示すように、領域Pの中心付近に小片(残渣4c)が残り、それ以外の部分は開口4bになる。
【0031】
このように切り込み4aを基点とした熱収縮によって開口4bを形成するため、図18に示すような開口形成開始のために樹脂の溶融を必要とせず、開口形成時の加熱温度を低くすることが可能であり、それによって低エネルギー化を実現できる。そして、図4(a),(b)に示すように、1つの領域Pに、非粘着層4を構成する材料の小片(残渣4c)が残るのみとなる。この小片(残渣4c)が残る位置を除くほぼ全ての部分が、粘着剤層3を外部に露出させる開口4bになる。なお、図2(a)等には切り込み4aを破線で示しているが、図2(b)に示すような連続的な切り込み4aを形成することも、図2(c)に示すような断続的(不連続的)な切り込み4aを形成することも可能である。
【0032】
仮に切り込み4aが設けられていないとしたら、非粘着層4に対して、サーマルヘッド6等の加熱手段による加熱点を中心とした開口を形成させることはできるが、さほど大きな開口は形成できない。非粘着層4に同じ大きさの熱量が加えられるとしたら、切り込み4aが形成されていない場合には、本発明のように切り込み4aが形成されている場合に比べて小さな開口しか形成されない。より大きな開口を形成するためには、より大きな熱を加える必要があり、効率良く開口を形成することが難しい。これは、熱収縮の方向と開口の拡がり方向とが逆であり、開口を拡げようとする方向の力が、熱収縮を阻害することに起因する。切り込み4aが形成されていない場合に大きな開口を形成するためには、より大きな熱を加えるために加熱手段用の大きな電源が必要であり、これらは粘着ラベル作製装置本体の大型化の要因となり、携帯型の粘着ラベル作製装置を実現することを困難にしている。
【0033】
これに対し本発明では、熱収縮が切り込み4aを基点として進行し、開口4bが形成される。言い換えると、切り込み4aは非粘着層4を複数の領域に分割する分割線として機能し、切り込み4aによって分割された各領域に(概ねその領域の中央に)1つずつ非粘着層4を構成する材料の小片(残渣4c)が残る。従って、切り込み4aの形成によって、開口4bの位置、大きさ、および形状を制御することができる。その結果、粘着ラベル1の所望の粘着特性を実現することができる。なお、各領域に残る非粘着層4を構成する材料の残渣4cがスペーサとして機能し、粘着剤層3がサーマルヘッド6や他の部材と直接接触することを抑制する。従って、サーマルヘッド6や他の部材への糊ゴミの貼り付きや、その結果として発生する粘着ラベル1の紙ジャムや搬送不良等を防止することができる。
【0034】
図3は、粘着ラベル作製装置の模式図を示している。粘着ラベル作製装置は、ロール紙収納部10と、ロール紙切断部11と、記録部12と、粘着性発現部13とを含む。
【0035】
ロール紙収納部10には、ロール状に巻回された粘着ラベル1が保持されている。このロール紙収納部10から繰り出された粘着ラベル1は、搬送ローラ18によって搬送されて、ロール紙切断部11のカッタ部材14の位置に到達する。カッタ部材14の位置で、粘着ラベル1はカッタ部材14により所望の長さに切断される。切断された粘着ラベル1は記録部12に送られる。記録部12において、粘着ラベル1は、プラテンローラ15によって挟持されながら搬送され、所望の位置でサーマルヘッド7により印刷層5に所望の印刷が行われ、その後、粘着ラベル1は粘着性発現部13に搬送される。
【0036】
記録部12から搬送された粘着ラベル1は、粘着性発現部13において、プラテンローラ16とサーマルヘッド6により挟持されつつ所望の位置で加熱される。非粘着層4は、サーマルヘッド6により加熱されることにより、切り込み4aを基点として熱収縮が生じ、開口4bが形成される。言い換えると、切り込み4aによって分割された各領域(例えば図5,6に示す領域P)に非粘着層4を構成する材料の小片(残渣4c)が1つずつ残り、それ以外の部分がほぼ全て開口4bとなる。
【0037】
こうして開口4bが形成された粘着ラベル1を図示しない被着体に押し付けると、開口4bから露出する粘着剤層3が被着体に付着し、粘着剤層3の感圧性粘着剤が被着面に沿って変形しながら貼り付く。
【0038】
なお、粘着ラベル1を精度良く搬送するために、図示しないセンサ等を用いて監視してもよい。また、図7に示すように、ロール紙切断部11は、記録部12より下流側に位置していても構わない。ただし、粘着性発現部13よりも上流側であることが好ましい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の粘着ラベル1は、粘着剤層3を露出させる非粘着層4の開口4bの位置、大きさ、形状を制御することが可能である。従って、所望の粘着特性、具体的には、粘着ラベル1全体における所望の粘着力などを得ることができる。さらに、非粘着部分の形成や、その非粘着部分の位置、大きさ、形状の制御も可能である。
【0040】
なお、切り込み4aは、図2に示すような直線状でなく曲線状であってもよい。図8(a)〜(f)に様々な切り込み4aの例を示している。図8(a)〜(d)に示す例のように、切り込み4aが非粘着層4を複数の閉じた領域に分割するように形成されていることが好ましい。
【0041】
切り込み4aによって分割される領域が小さ過ぎると、粘着ラベル作製装置内の搬送途中で非粘着層4の一部の領域がサーマルヘッドやプラテンローラあるいは搬送路との接触中に剥がれる危険性がある。その場合、粘着ラベル作製装置内での通紙性の劣化に加えて、粘着ラベル作製装置内にゴミが散乱するという問題が生じる。一方、切り込み4aによって分割される領域が大き過ぎると、個々の領域において均一な収縮ができなくなる。その結果、開口4bの形状や大きさが乱れてしまい、所望の粘着特性が実現できなくなる。これらを考慮すると、一般的には、切り込み4aによって分割される各領域の各辺の長さが1〜10mm程度になるように切り込み4aを形成することが好ましい。
【0042】
前記したように非粘着層4の一部の領域が剥がれることを防止するためには、図8(a)〜(d),(f)〜(g)に示すように、粘着ラベル作製装置内の搬送方向と同じ方向または搬送方向に対して斜め方向に延びる切り込み4aを形成することが好ましい。また、非粘着層4の一部の領域が剥がれることを防止するために、粘着ラベル1が極端に折り曲げられたり屈曲させられたりしない状態で粘着ラベル作製装置内を搬送されることが好ましい。さらに、非粘着層4に接触する部材ができるだけ少なくなるように、粘着ラベル作製装置内の各部材をレイアウトすることが好ましい。非粘着層4に接触する部分には、低摩擦係数の材料を用いたり、樹脂コーティングを施したりすることも効果的である。
【0043】
また、印刷層5への記録時に、非粘着層4に接するプラテンローラ15から加わる圧力をできるだけ小さくすることが好ましい。そのために、搬送用のローラをサーマルヘッド7の手前に追加することが好ましい。また、サーマルヘッド7の表面に低摩擦係数の材料をコーティングすることも有効である。さらにサーマルヘッド7と印刷層5との接触面積を減らすために、端面型やニアエッジ型のサーマルヘッド7を用いてもよい。また印刷層5の表面に、摩擦を軽減するためのオーバーコート層を設けることも有効である。サーマルヘッド7と印刷層5との摩擦を軽減することは、プラテンローラ15による搬送を良好にすることに繋がる。
【0044】
非粘着層4の厚さは、サーマルヘッド6等の加熱手段によって熱収縮が生じ易いように薄い方が好ましく、また、粘着剤層3を開口4bから容易に露出させて感圧性粘着剤を滲み出させるためにも薄い方が好ましい。一例としては、非粘着層4は10μm以下の厚さに形成される。一方、粘着剤層3を覆ってブロッキングを防止するためにはある程度の厚さが必要である。製造欠陥の可能性や、製造誤差や、層形成時(特に樹脂フィルム状の非粘着層4を貼り付ける際)の取り扱い易さ等を考慮すると、非粘着層4の厚さは1μm以上であることが好ましい。
【0045】
本実施形態では、サーマルヘッド6を加熱手段として用いているため、粘着ラベル1の一部分のみに開口4bを形成して粘着力を発揮できるようにすることができる。サーマルヘッド6は熱応答性が良く、加熱手段の予備加熱等の無駄がないため、エネルギー効率がよい。また、このように無駄な加熱がないため、非粘着層4への加熱時に、支持体2の他方の面に形成される印刷層(感熱記録層)5に対し、意図しない発色を生じることが回避できる。なお、非粘着層4の一部分のみに開口4bを形成する場合には、切り込み4aによって分割される各領域の大きさが、粘着部分および非粘着部分の最小寸法となるので、それを考慮した上で、切り込み4aを形成することが好ましい。
【0046】
粘着剤層3は、複雑な形状や粗面を有する被着物に十分な粘着力で貼り付けられるように、比較的厚く形成することが好ましく、例えば5μm以上、好ましくは10μm以上に形成される。
【0047】
支持体2の他方の面に形成されている印刷層5は、感熱記録層に限られず、熱転写法やインクジェット法等によって印刷可能な層であってもよい。また、既に印刷が行われた層であってもよい。
【0048】
切り込み4aの形成は、粘着剤層3上に非粘着層4を形成した後に、カッタを駆動することで可能である。図8(b),(c),(f)に示す例のように、粘着ラベル1の搬送方向と同一方向に延びる切り込み4aを形成する場合には、固定カッタまたはリングカッタなどの、粘着ラベル1の幅方向の特定の位置に固定されたカッタ部材が利用可能である。ただし、図9(a)に示すように切り込み4aが粘着剤層3に深く形成されると、カッタ部材の刃に粘着剤が付着し、切れ味に影響を及ぼすおそれがある。また、図9(b)に示すように切り込み4aが浅すぎると、所望の開口4bが形成できなくなる可能性がある。従って、切り込み4aを適切な深さに形成できるように、カッタの寸法の規制が必要である。このような規制が難しい場合には、図2(c)に示す例のように、断続的な切り込み4aを形成してもよい。この場合、非粘着層4と反対側に位置する印刷層5に若干の凹凸が生じる可能性があるので、感熱記録層やインクジェット法等による記録可能層ではなく、既に印刷済みの印刷層5が設けられている場合に実施することが好ましい。
【0049】
図8(a)〜(e),(g)に示す例のように、粘着ラベル1の搬送方向と異なる方向に延びる切り込み4aを形成する場合には、粘着ラベル1を搬送しながらカッタを粘着ラベル1の幅方向に移動させて切り込み4aを形成することができる。切り込み4aのピッチと粘着ラベル1の搬送速度に応じて同時に駆動するカッタの数を決定すればよい。例えば、粘着ラベル1の幅方向の両端にあたる位置に複数列のカッタ8(図10,11に示す例では2つの刃からなる2組のカッタ8a,8b)を有する切り込み形成部9を設ける。なお、この切り込み形成部9は、図10に示すように記録部12よりも上流側にあっても、図11に示すように記録部12よりも下流側にあってもよい。そして、図12に示すように、粘着ラベル1を矢印A方向に搬送しながら、一方の組のカッタ8aを初期位置Bから、他方の組のカッタ8bを初期位置Cから、それぞれ粘着ラベル1の幅方向に移動させると、斜めの格子状に切り込み4aを形成することができる。図12では、便宜上、一方の組のカッタ8aによって形成された切り込み4aを破線で示し、他方の組のカッタ8bによって形成された切り込み4aを実線で示している。
【0050】
また、粘着ラベル1の幅方向の所定の位置に、例えば一定のピッチで互いに間隔をおいて配置された複数のカッタを固定させたままで、粘着ラベル1を搬送して、搬送方向と同方向に切り込み4aを形成することができる。こうして形成された切り込み4aは図8(f)に示されている。これによると、搬送時の負荷によって非粘着層4の一部が剥がれる危険性が小さくなる。ただし、切り込み4aによって分割された非粘着層4の領域は非常に細長い形態になるので、機械的に剥離して除去することが好ましい。
【0051】
また、ダイカット紙などのハーフ抜き型式のカッタを用いて、自由なレイアウトの切り込み4aを形成することもできる。
【0052】
あるいは、カッタではなく、例えば、図13に示すように、切り込み形成部9にサーマルヘッド17とプラテンローラ19を設け、このサーマルヘッド17による加熱によって、非粘着層4を溶融させて切り込み4aを形成してもよい。その場合、自由なレイアウトで切り込み4aを形成することができる。サーマルヘッド17の出力制御によって発熱温度を精度よく調整できるため、切り込み4aの大きさや深さを精度よく制御できる。切り込み形成部9と記録部12とを入れ替えて配置することも可能である。
【0053】
図示しないが、記録部12に切り込み形成機能を持たせることも可能である。その場合、記録部12の加熱手段であるサーマルヘッド7を用いて非粘着層4を加熱して開口4bを形成することにより、部品の共通化が図れ、低コスト化に寄与する。記録部12にて非粘着層4に切り込み4aを形成した後に、粘着ラベル1を反転させてからバックフィードして、切り込み4aの形成に使用したのと同じサーマルヘッド7で印刷層5に記録を行えばよい。これにより、装置の簡略化と小型化が達成できる。
【0054】
また、図14,15に示すように、粘着性発現部13に切り込み形成機能を持たせることも可能である。その場合、粘着性発現部13のサーマルヘッド6を用いて非粘着層を加熱して開口4bを形成することにより、部品の共通化が図れ、低コスト化に寄与する。図15(a)に示すように粘着性発現部13にて非粘着層4に切り込み4aを形成した後に、図15(b)に示すように粘着ラベル1をバックフィードして、図15(c)に示すように粘着性発現部13にて、再度、切り込み4aの形成に使用したサーマルヘッド6で非粘着剤層4を加熱して熱収縮させ、開口4bを形成すればよい。これにより、装置の簡略化と小型化が達成できる。この場合、粘着ラベル1を反転させる必要はない。切り込み4aの形成と開口4bの形成とは、サーマルヘッド6の駆動条件を制御することによって区別される。
【0055】
また、図示しないが、レーザを照射してその熱によって切り込み4aを形成してもよい。その場合には、レーザの出力と焦点を制御することにより、切り込み4aの大きさや深さを精度よく制御することができる。
【0056】
これらの方法によると、所望の切り込み4aを精度よく形成できる。そして、図2(b)に示すような連続的な切り込み4aに限られず、図2(c)に示すような断続的な切り込み4aを形成することもできる。そうすると、粘着ラベル作製装置内での粘着ラベル1の搬送中に非粘着層4の一部が剥がれてしまう等の危険性がさらに減少する。
【0057】
なお、図10,11,13,14等の粘着ラベル作製装置において、切り込み形成部9を記録部12よりも下流側に配置すると、記録部12においてプラテンローラ15により加わる圧力で非粘着層4の一部が剥がれしまうおそれがなくなる。
【0058】
以上説明した切り込み4aの形成方法としては、精度と構成の簡素化の点ではサーマルヘッド6などの加熱手段を用いることが好ましい。一方、消費電流の観点ではカッタ8を用いることが好ましい。特に、粘着ラベル1の搬送方向に向かって切り込み4aを形成する場合には、固定したカッタを複数並べておくだけでよいので、構成が簡単であるという利点がある。
【0059】
図16,17に示すように、開口4bを形成した後に残る、非粘着層4を構成する材料の小片(残渣4c)を除去するための残渣除去部20を、ラベル作製装置内に設けてもよい。例えば、図16に示す構成では、粘着ラベル1を搬送する搬送ローラ21a〜21dのうちの、下流側で非粘着層4に接する搬送ローラ21dを、他の搬送ローラ21a〜21cと異なる周速で回転させる。この周速の差によって、粘着ラベル1に残る非粘着層4の小片(残渣4c)を、粘着ラベル1から剥離して搬送ローラ21dの外周面に付着させることができる。さらに、移動可能な残渣取り爪22によって、搬送ローラ21dの外周面の残渣4cを強制的に掻き取ることができる。この場合、残渣4cを掻き取る際にその下層の粘着剤層3も一部掻き取られる可能性があるため、搬送ローラ21dの表面に非粘着性(低摩擦)のコーティングを施すことが好ましい。さらに、残渣取り爪22の表面にも非粘着性(低摩擦)のコーティングを施すか、あるいは残渣取り爪22を非粘着性(低摩擦)の材料で形成することが好ましい。この構成では、物理的な力で残渣4cを強制的に剥離して除去するため、ゴムなどの摩擦力を利用して除去するのでない限り、低摩擦の材料からなる部材や低摩擦のコーティングを施した部材を用いて除去を行うことができる。この残渣除去部20の内部下方に、掻き取った残渣4cを収容するトレイ等の容器23を設置しておけば、粘着ラベル作製装置の清掃が容易になる。
【0060】
図17(a)〜(c)には、残渣除去部20の他の例が示されている。図17(a)に記載されている例では、ブラシ状の搬送ローラ21dが用いられている。図17(b)に記載されている例では、搬送ローラ21dの外周面にへら状の複数の突起が設けられている。図17(c),(d)に記載されている例では、螺旋状のねじが設けられた搬送ローラ21dが用いられている。いずれの構成においても、搬送ローラ21dを他の搬送ローラ21a〜21cと異なる周速で回転させることにより、粘着ラベル1から非粘着層4の残渣4cを剥ぎ取る。そして、この搬送ローラ21dの外周面に当接する残渣取り爪22によって、搬送ローラ21dの外周面の残渣4cを掻き落とし、容器23に収容する。
【0061】
なお、残渣除去部20として、圧電素子や振動体による振動を作用させて残渣4cの剥離を行う構成にしてもよい。この場合、圧電素子や駆動体に接続されている触針が振動して非粘着層4の残渣4cを剥ぎ取って下方へ落下させる。
【0062】
さらに、サーマルヘッド6等の加熱手段を用いて加熱するのではなく、図示しないが、物理的に力を加えて非粘着層4の一部を機械的に剥がすことにより、開口4bを形成して粘着剤層4を露出させることもできる。その場合、仮に切り込み4aが設けられていないと非粘着層4を剥がすことは非常に困難であるため、切り込み4aが必須である。なお、粘着ラベル作製装置内において剥がされた非粘着層4の残渣4cは熱収縮しておらず比較的大きい廃棄物となるので、廃棄物捕集用の容器等を設けることが好ましい。この構成によると、開口形成のための加熱が不要であるため、さらに省エネルギー化できる。
【0063】
以上説明した本発明の粘着ラベルとその作製方法および作製装置によると、粘着ラベル1の粘着剤層1の表面全体を、樹脂フィルムあるいは樹脂塗布膜からなる非粘着層4で覆い、この非粘着層4に切込み4aを形成している。従って、非粘着層4に熱を加えたときに、切り込み4aを基点として熱収縮が生じ、所望の形状および大きさの開口4bが容易に形成される。
【0064】
そして、粘着ラベル1が離型紙を持たないため、ロール状に巻回した場合に、ロール径を小さくでき、これにより粘着ラベル作製装置を小型化できる。逆に言うと、同じ大きさであれば巻き数を多くすることができ、ロールの交換頻度を減らすことができる。また、離型紙が不要であるため、環境保護に寄与し、剥離紙の剥離および廃棄の手間を省くことができる。さらに、粘着ラベル1の粘着面の任意の位置に自由に粘着部分と非粘着部分を混在させることが容易にできる。また、切り込み4aを利用することにより、低いエネルギーで容易に大きな開口4bを形成でき、この結果、高い粘着力を得ることができ、エネルギー効率が向上する。
【0065】
なお、ロール状に巻回されている時点で、既に切り込み4aが形成されていてもよいが、ロールから引き出した粘着ラベル1に対し、粘着ラベル作製装置内で切り込みを形成することもできる。その場合、切り込み4aが予め形成された粘着ラベル1を用意する必要がないため、粘着ラベルの作製コストを低減できる。この場合、ロール状にして保管する時点では切り込み4aが存在しないため、切り込み4aから粘着剤層3の粘着剤が滲み出して、ブロッキングを生じることがなく、長期間の安定した保管が可能である。
【0066】
開口4bの形成後に残る、非粘着層4を構成する材料の小片(残渣4c)は、粘着ラベル1全体の粘着力にあまり影響しない程度の大きさになるので、必ずしも除去する必要はなく、廃棄物を発生させなくてすむ。
【0067】
一方、粘着力をより向上させるためには、非粘着層4を構成する材料の残渣4cを除去することもできる。その場合、粘着剤層3の上方に障害物がなく、従来の粘着ラベルと同様に容易に取り扱うことができる。
【0068】
[粘着ラベルの各層の材料の具体例]
粘着ラベル1の各層は、フィルムを貼り合わせることや、溶融状態の材料を塗布することや、共押出し法によって形成することができる。材料を塗布する場合には、バーコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、またはグラビアコーターなどの塗布手段のうち、材料の粘度と形成すべき厚さと乾燥プロセスとを考慮して選択された塗布手段が用いられる。
【0069】
なお、多層構造の粘着ラベル1を作製する上で、層形成と、層形成後の処理とによって、各層の材料に、残留応力や熱収縮や吸湿に起因するカールが生じる可能性がある。従って、各層の形成に当たっては、寸法安定性、表面処理、耐湿性、耐溶剤性、機械強度、平面度等を考慮する必要がある。特に、粘着ラベル1の表層となる非粘着層4は、層表面の摩擦係数と、粘着ラベル作製装置の加熱手段と接する際の柔軟性も考慮することが重要である。
【0070】
これに基づいて、本発明の粘着ラベル1の各層の材料の具体例を、以下に説明する。
非粘着層4は、汎用樹脂として多くの用途に利用されているポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)などのオリフィン系樹脂、これらの樹脂フィルム(例えばPEフィルムとPPフィルム)を積層した多層ポリオレフィン(PO)フィルム、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PSフィルムとPETフィルムを積層したハイブリッドフィルム、エチレン/酢酸ビニル共重合(EVA)系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、植物系原料であるポリ乳酸(PLA)系樹脂等からなる樹脂フィルムなどからなる。非粘着層4は、常温で化学的物理的に安定であり、かつ一般的なサーマルヘッド等の加熱手段で加熱可能な温度範囲で利用できることが好ましい。この非粘着層4が樹脂フィルムからなる場合には、一軸延伸フィルムあるいは二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0071】
粘着剤層3は、水、溶剤、熱などを用いなくても、常温でわずかな圧力を短時間加えるだけで粘着可能である感圧性粘着剤からなる。そして、この感圧性粘着剤は、凝集力と弾性を有し、高い粘着性を有する一方、硬い平滑面から剥離可能であるものが好ましい。粘着剤層3は、一般的には、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリイソブチレンゴムなどのゴム系粘着剤や、ガラス転移点の低いモノマーと架橋剤を含む架橋系のアクリル系粘着剤や、ガラス転移点の低いモノマーと高いモノマーとを共重合した非架橋系のアクリル系粘着剤や、高凝集力のシリコーンと高粘着力のシリコーンレジンからなるシリコーン系粘着剤などからなる。また、加熱によって開口4bの形成を行う場合には、粘着剤層3は、上層の非粘着層4との熱容量の差が大きい材料を選択することが好ましい。
【0072】
支持体2の他方の面に形成されている印刷層5は、サーマルヘッドを用いて感熱記録可能なものに限られず、インクジェット方式や電子写真方式などの他の印刷方式で記録可能なものであってもよく、既に印刷済みの層であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 粘着ラベル
2 支持体
3 粘着剤層
4 非粘着層
4a 切り込み
4b 開口
4c 小片(残渣)
5 印刷層
6,7,17 サーマルヘッド(加熱手段)
8,8a,8b カッタ
9 切り込み形成部
10 ロール紙収納部
11 ロール紙切断部
12 記録部
13 粘着性発現部
14 カッタ部材
15,16,19 プラテンローラ
18 搬送ローラ
20 残渣除去部
21a〜21d 搬送ローラ
22 残渣取り爪
23 容器
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着ラベルとその作製方法および作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などの商品のPOS(販売時点情報管理)用のバーコードの表示、配送用の荷札、または、瓶や缶などの容器の内容物表示などのために、粘着性を有する粘着ラベルが広く使われている。粘着ラベルは、一般的に、シート状の支持体の一方の面に、使用時には物品に押しつけられて貼付される感圧性粘着剤からなる感圧性粘着剤層が形成されている。そして、粘着ラベル同士が重ねて保管される際に互いに貼り付く、いわゆるブロッキング現象が生じないように、剥離紙(セパレータ)が感圧性粘着剤層を覆うように設けられている。支持体の他方の面には、文字や記号や図柄等が印刷された、または印刷が可能な印刷層(例えば感熱記録層)が形成されている。この粘着ラベルの貼り付け時には、剥離紙を剥がして露出させた感圧性粘着剤層を、被着物である物品に押しつけて貼付する。そのため、剥離紙を剥がす作業が必要であり、このことが作業効率の低下の一因となっている。また、剥離紙にはシリコンなどの剥離剤がコーティングされているため、剥がされた剥離紙は再生紙などとしてリサイクルできずに廃棄されるので、資源の無駄であるとともに環境保護からも好ましくない。
【0003】
これらの問題点を解決するために、剥離紙を用いない粘着ラベルが提案されている。例えば、支持体を挟んで感圧性粘着剤層と反対の面に位置する印刷層上に、シリコンなどからなる薄い剥離剤層が設けられた粘着ラベルがある。この粘着ラベルの剥離剤層は、剥離紙のように感圧性粘着剤層上を覆うものではないため、使用時に廃棄する必要はない。また、この剥離剤層が設けられた粘着ラベル同士を重ねて保管しても、感圧性粘着剤層と剥離剤層とが接するため、互いに貼り付いたりせず、ブロッキング現象は生じない。
【0004】
また、感圧性粘着剤層の代わりに、常温では非粘着性であるが加熱されると粘着性を発現する感熱性粘着剤層が設けられた粘着ラベルがある(例えば特許文献1,2)。具体的には、合成樹脂と固体可塑剤と粘着付与剤とを含む組成の感熱性粘着剤の層が設けられており、加熱時に、固体可塑剤が溶融して合成樹脂を膨潤または軟化させることに加えて、粘着付与剤により大きな粘着性が発現する。特許文献1,2に記載されている感熱性粘着剤層を有する粘着ラベルは、常温下では感熱性粘着剤層の粘着力は発現せず、所定温度以上に加熱することによって粘着性が発現する。従って、常温で重ねて保管する際のブロッキングの抑制が可能であるとともに、剥離紙が不要であるため環境保護や部品点数の削減に伴う低コスト化などの効果が得られる。
【0005】
また、従来の粘着ラベルの他の例として、特許文献3には、支持体(基材シート)の一方の面に感圧性粘着剤層が設けられ、この感圧粘着剤層の表面に加熱易破壊性のマイクロカプセル層が設けられた構成の粘着ラベルが開示されている。常温下ではこの粘着ラベルを重ねて保管しても、感圧性粘着剤層はマイクロカプセル層によって覆われているため、その粘着力を発揮することはできず、粘着ラベル同士が互いに貼り付くブロッキング現象が防止される。このように、保管時には感圧性粘着剤層の粘着力が発揮されず、一方、粘着力が必要な場合には加熱によってマイクロカプセル層を破壊して、その下層に位置する感圧性粘着剤層を露出させ、粘着性を発揮できるようにすることができる。
【0006】
さらに、特許文献4には、基材の一方の面に印刷層を有し、他方の面に感圧性粘着剤層と、その感圧性粘着剤層を覆う樹脂フィルム(非粘着層)とが設けられている粘着ラベルが開示されている。常温下ではこの粘着ラベルを重ねて保管しても、感圧性粘着剤層は樹脂フィルムに覆われているため、その粘着力を発揮することはできず、粘着ラベル同士が互いに貼り付くブロッキング現象が防止される。そして、粘着力が必要な場合には樹脂フィルムを加熱して熱反応により開口を形成し、この開口を介して下層の感圧性粘着剤層を露出させることにより、被着物への貼り付けを可能にしている。
【0007】
特許文献1〜4に記載された粘着ラベルは、いずれも剥離紙が不要であるため、環境保護や低コスト化の点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−103969号公報
【特許文献2】特開2006−083196号公報
【特許文献3】特開平9−111203号公報
【特許文献4】特開2006−78733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2に開示されている粘着ラベルの感熱性粘着剤に含まれる固体可塑剤は、ガラス転移点が常温以下であって、通常は常温以下で活性化する特性の材料が多い。そのため、常温で保管している状態でも、ある程度の粘着力が発現することは避けられない。すなわち、常温で保管している時点で感熱性粘着剤層を完全に非粘着状態にすることが困難であり、耐ブロッキング性が不十分である。
【0010】
この問題を解決するために、固体可塑剤のガラス転移点を常温よりも高くして、常温下での粘着性をより抑え、耐ブロッキング性を向上させることが考えられる。しかし、ガラス転移点を高くすると、粘着性発現のためにより大きな熱エネルギーが必要となる。そもそも、感熱性粘着剤の特性上、非常に強い粘着力を得ることは困難であり、特に、平滑でない粗面を有する被着体に対して十分に高い粘着力を得るためには、感熱性粘着剤層を厚く形成することが望ましい。しかし、感熱性粘着剤層が厚くなると、熱活性化のためにさらに大きな熱エネルギーが必要となり、電源容量の大きな熱源を利用しなければならなくなる。このように、常温でのブロッキング現象を防止することと、比較的低い熱エネルギーによって高い粘着力を確保することを両立させるのは困難である。
【0011】
また、感熱性粘着剤に含まれている固体可塑剤は温度に依存する結晶性を有しているため、熱活性後の再結晶化による粘着性の急激な低下を生じる。一定の粘着力を確保するためには、保管環境や使用環境に応じた固体可塑剤を選択的に用いる必要があるなど、量産性に関する問題がある。
【0012】
また、サーマルプリンター等のサーマルヘッドを熱源として感熱性粘着剤を加熱して溶融させる場合には、サーマルヘッドと感熱性粘着剤が直接接するため、溶融した感熱性粘着剤がサーマルヘッドやそれに対向するプラテンローラや給紙経路の一部に糊ゴミとして付着してしまうおそれがある。その結果、粘着ラベルの搬送不良や紙ジャム等の発生につながるという問題がある。
【0013】
これに対し、特許文献3,4に記載された粘着ラベルは、常温での耐ブロッキング性が得られるとともに、感圧性粘着層を有しているため、加熱によってマイクロカプセル層の破壊または樹脂フィルムの開口形成を行うと、強い粘着力を得ることができる。
【0014】
しかし、特許文献3の粘着ラベルのマイクロカプセル層は、個々のマイクロカプセルが球状であり、サーマルヘッド等の熱源に対して点接触状態で加熱されるため、熱の伝達効率が悪い。また、熱破壊されたマイクロカプセルの殻が粘着剤上に残留して粘着力を弱めたり、マイクロカプセルの殻が熱源のサーマルヘッド等に付着して熱効率を一層悪くしてしまうなど、熱破壊が不十分になって必要な粘着力が十分に得られない場合がある。
【0015】
一方、特許文献4の粘着ラベルでは、感圧性粘着剤層の表面上に配置されている樹脂フィルムを、サーマルヘッド等の熱源により加熱する。その際に、サーマルヘッド等の熱源による加熱点を熱のピークとした熱の分布が生じ、図18(a),(b)に示すように、その加熱点から樹脂フィルムの溶融が始まり、穴(開口)101が形成される。熱源の熱は、加熱点から周囲に次第に広がる。この穴の大きさは、樹脂の固有の熱伝導率と、加えられる熱の大きさとによって決定される。したがって、同一の樹脂フィルムにおいて、より大きな穴を形成するためには、より高い熱を必要とするという問題があった。また、本来は被着体に作用させるための感圧性粘着剤層の粘着力が、樹脂フィルムに対しても作用するため、加熱時の樹脂フィルムの熱変形や熱収縮を阻害する要因となる。そうすると、十分な大きさで高精度の開口101を形成することができず、開口101を介して露出する感圧性粘着剤層の粘着力を十分に発揮することができない場合がある。
【0016】
そこで本発明の目的は、非粘着層に十分な大きさの高精度の開口を形成し、その開口を介して感圧性粘着剤からなる粘着剤層を露出させて大きな粘着力を得ることができる粘着ラベルとその作製方法および作製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の粘着ラベルは、支持体の一方の面に、感圧性粘着剤からなる粘着剤層と、粘着剤層上に形成されており、熱または物理的な力が加えられることにより、下層に位置する粘着剤層を露出させる開口が形成される非粘着層と、が設けられており、非粘着層は開口が生じる基点となる切り込みを有している。
【0018】
本発明の粘着ラベルの作製方法は、支持体の一方の面に設けられている感圧性粘着剤からなる粘着剤層の上に形成されている非粘着層に対して熱または物理的な力を加えて、非粘着剤層に形成された切り込みを基点として開口を形成し、この開口を介して下層の粘着剤層を露出させるステップを含む。
【0019】
本発明の粘着ラベル作製装置は、支持体の一方の面に設けられている感圧性粘着剤層の上に形成されている非粘着層に対して熱または物理的な力を加えて、非粘着剤層に形成されている切り込みを基点として効率的に開口を形成し、この開口を介して下層の粘着剤層を露出させる粘着性発現部を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、粘着剤層が非粘着層に覆われている状態では、粘着ラベル同士が互いに貼り付くことが防止できる。しかも、剥離紙等が不要であるため、環境保護の観点から好ましく、また、製造コストを低く抑えられる。そして、非粘着剤層に形成された切り込みを利用して開口を形成することにより、低エネルギーで大きな開口を容易に形成でき、これにより大きな粘着力を発現させることができる。しかも、切り込みを所望の形状に形成することにより、所望の開口を形成して所望の粘着特性を容易に得られる。このように本発明は、エネルギー効率がよく、所望の粘着領域および所望の粘着力を容易に実現可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る粘着ラベルの断面図である。
【図2】(a)は図1に示す粘着ラベルの開口未形成時の平面図、(b)はその一例の拡大図、(c)は他の例の拡大図である。
【図3】本発明の粘着ラベル作製装置の一例の概略構成図である。
【図4】(a)は図1に示す粘着ラベルの開口形成後の平面図、(b)はその拡大図である。
【図5】粘着ラベルの非粘着層と加熱部分の相対的な移動を示す概略図である。
【図6】(a)は図5に示す非粘着層の一領域を示す拡大図、(b)〜(g)はその領域の熱収縮状態を順番に示す概略図である。
【図7】本発明の粘着ラベル作製装置の他の例の概略構成図である。
【図8】(a)〜(g)は様々な切り込みを有する本発明の粘着ラベルの開口未形成時の平面図である。
【図9】(a)は切り込みの深さが大きすぎる粘着ラベルの断面図、(b)は切り込みの深さが小さすぎる粘着ラベルの断面図である。
【図10】本発明の粘着ラベル作製装置のさらに他の例の概略構成図である。
【図11】本発明の粘着ラベル作製装置のさらに他の例の概略構成図である。
【図12】図10,11の粘着ラベル作製装置における切り込み形成ステップを示す粘着ラベルの平面図である。
【図13】本発明の粘着ラベル作製装置のさらに他の例の概略構成図である。
【図14】本発明の粘着ラベル作製装置のさらに他の例の概略構成図である。
【図15】(a)〜(c)は、図14に示す粘着ラベル作製装置による切り込み形成ステップと開口形成ステップを順番に示す概略図である。
【図16】本発明の粘着ラベル作製装置のさらに他の例の概略構成図である。
【図17】(a)〜(c)は、図16に示す粘着ラベル作製装置の残渣除去部の例を示す概略図、(d)は(c)に示す残渣除去部の搬送ローラを示す拡大平面図である。
【図18】(a)は従来の粘着ラベルの開口形成後の平面図、(b)はその拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、同一の部分には同一の符号を付与し、説明を省略することがある。
【0023】
まず、本発明の一実施形態の粘着ラベルの構成を、図1,2を参照して説明する。図1,2に示す粘着ラベル1は、紙や高分子基材などからなるシート状の非粘着性の支持体2の一方の面に、感圧性粘着剤からなる粘着剤層3と、粘着剤層3上に形成されている、オリフィン系樹脂からなる非粘着層4を有している。非粘着層4は、樹脂フィルムまたは樹脂塗布膜からなり、切り込み4aが形成されている。支持体2の他方の面には、感熱記録層等の印刷層5が形成されている。
【0024】
この粘着ラベル1は、図1,2に示す未加熱時には、粘着剤層3が非粘着層4によって覆われているため、粘着性を発揮できない状態である。従って、複数の粘着ラベル1を積み重ねて保管したり、図3に示すように長尺の粘着ラベル1を巻回してロール状にして保管したりしても互いに貼り付くことがなく、いわゆるブロッキング現象が防止できる。また、この未加熱状態でラベルを搬送しても、粘着面は非粘着状態に保たれているので、粘着ラベル作製装置内での通紙性は良好である。
【0025】
そして、この粘着ラベル1の使用時には、サーマルヘッド6等の加熱手段(図3参照)を用いて非粘着層4を選択的に加熱して、図4に示すように非粘着層4を熱収縮させて開口4bを生じさせる。これにより、非粘着層4の開口4bを介して、下層に位置する粘着剤層3を外部に露出させる。こうして外部に露出した粘着剤層3が図示しない被着物に押し付けられることにより、粘着ラベル1は被着物に貼り付けられる。粘着剤層3は感圧性粘着剤からなるため、被着物の表面が粗面であっても良好に貼り付けることができる。なお、図4に示すように、本発明において良好に非粘着層4が熱収縮した場合には、非粘着層4を構成する材料が小片4cとなって収縮し、その小片4c以外は、下層の粘着剤層3を露出する非粘着層4の開口4bとして形成される。
【0026】
なお、非粘着層4の加熱前に、粘着ラベル1の印刷層5には、非粘着層4を加熱するサーマルヘッド6と同様の構成の他のサーマルヘッド7(図3参照)による加熱によって、所望の文字や記号や図柄等の印刷が行われる。ただし、この印刷は非粘着層4の加熱後であってもよく、非粘着層4を加熱するサーマルヘッド6を印刷用に兼用することもできる。
【0027】
このような構成の粘着ラベル1において、仮に、開口4bの大きさや形状および形成位置を所望の通りに制御できなければ、粘着剤層3が外部に露出する面積や外部に露出する位置が変わってしまい、所望の粘着特性を得ることが難しくなる。また、図18(a),(b)に示すように、開口を大きく形成できない場合には、大きな粘着力は得られない。
【0028】
そこで、本発明では、開口4bを形成すべき非粘着層4に切り込み4aを形成している。この切り込み4aは、非粘着層4中で機械的強度の弱い部分となる。従って、図4に示す例において、サーマルヘッド6等の加熱手段を用いて、非粘着層4に加熱を行うと、非粘着層4は強度の弱い切り込み4aから開口4bが生じ始め、粘着剤層3による粘着力の強い方向に向かって熱収縮する。
【0029】
具体的には、図5に示すように、非粘着層4が粘着ラベル作製装置内を矢印方向に進行するにつれて、サーマルヘッド6による加熱位置Hは移動し、その間に開口4bが形成される。この時の非粘着層4の挙動について、図6を参照して説明する。
【0030】
図6(a)に示されている非粘着層4の、切り込み4aに囲まれている領域Pを見ると、サーマルヘッド6による加熱位置Hから離れている段階(図6(b)参照)から、加熱位置Hが部分Pに到達すると、加熱位置Hに接する個所から樹脂が熱収縮する(図6(c)参照)。このとき、熱収縮は切り込み4aを基点として生じ、熱収縮の方向は、加熱位置Hから離れる方向(図6下方)になる。加熱位置Hが領域Pに対して相対的に移動すると、加熱位置Hに対向して熱収縮する部分が大きくなっていく(図6(d),(e)参照)。しかし、加熱位置Hが領域Pの中心付近を通り過ぎると、加熱位置Hに対向することによって生じる熱収縮の方向が反転する。すなわち、切り込み4aを基点として、加熱位置Hの相対移動方向の上流側(図6上方)に向かって熱収縮するようになる(図6(f)参照)。これは、熱収縮は、切り込み4aの部分を基点として、複数の切り込み4aに囲まれた領域Pの中心付近に向かって生じるからである。最終的には、図6(g)に示すように、領域Pの中心付近に小片(残渣4c)が残り、それ以外の部分は開口4bになる。
【0031】
このように切り込み4aを基点とした熱収縮によって開口4bを形成するため、図18に示すような開口形成開始のために樹脂の溶融を必要とせず、開口形成時の加熱温度を低くすることが可能であり、それによって低エネルギー化を実現できる。そして、図4(a),(b)に示すように、1つの領域Pに、非粘着層4を構成する材料の小片(残渣4c)が残るのみとなる。この小片(残渣4c)が残る位置を除くほぼ全ての部分が、粘着剤層3を外部に露出させる開口4bになる。なお、図2(a)等には切り込み4aを破線で示しているが、図2(b)に示すような連続的な切り込み4aを形成することも、図2(c)に示すような断続的(不連続的)な切り込み4aを形成することも可能である。
【0032】
仮に切り込み4aが設けられていないとしたら、非粘着層4に対して、サーマルヘッド6等の加熱手段による加熱点を中心とした開口を形成させることはできるが、さほど大きな開口は形成できない。非粘着層4に同じ大きさの熱量が加えられるとしたら、切り込み4aが形成されていない場合には、本発明のように切り込み4aが形成されている場合に比べて小さな開口しか形成されない。より大きな開口を形成するためには、より大きな熱を加える必要があり、効率良く開口を形成することが難しい。これは、熱収縮の方向と開口の拡がり方向とが逆であり、開口を拡げようとする方向の力が、熱収縮を阻害することに起因する。切り込み4aが形成されていない場合に大きな開口を形成するためには、より大きな熱を加えるために加熱手段用の大きな電源が必要であり、これらは粘着ラベル作製装置本体の大型化の要因となり、携帯型の粘着ラベル作製装置を実現することを困難にしている。
【0033】
これに対し本発明では、熱収縮が切り込み4aを基点として進行し、開口4bが形成される。言い換えると、切り込み4aは非粘着層4を複数の領域に分割する分割線として機能し、切り込み4aによって分割された各領域に(概ねその領域の中央に)1つずつ非粘着層4を構成する材料の小片(残渣4c)が残る。従って、切り込み4aの形成によって、開口4bの位置、大きさ、および形状を制御することができる。その結果、粘着ラベル1の所望の粘着特性を実現することができる。なお、各領域に残る非粘着層4を構成する材料の残渣4cがスペーサとして機能し、粘着剤層3がサーマルヘッド6や他の部材と直接接触することを抑制する。従って、サーマルヘッド6や他の部材への糊ゴミの貼り付きや、その結果として発生する粘着ラベル1の紙ジャムや搬送不良等を防止することができる。
【0034】
図3は、粘着ラベル作製装置の模式図を示している。粘着ラベル作製装置は、ロール紙収納部10と、ロール紙切断部11と、記録部12と、粘着性発現部13とを含む。
【0035】
ロール紙収納部10には、ロール状に巻回された粘着ラベル1が保持されている。このロール紙収納部10から繰り出された粘着ラベル1は、搬送ローラ18によって搬送されて、ロール紙切断部11のカッタ部材14の位置に到達する。カッタ部材14の位置で、粘着ラベル1はカッタ部材14により所望の長さに切断される。切断された粘着ラベル1は記録部12に送られる。記録部12において、粘着ラベル1は、プラテンローラ15によって挟持されながら搬送され、所望の位置でサーマルヘッド7により印刷層5に所望の印刷が行われ、その後、粘着ラベル1は粘着性発現部13に搬送される。
【0036】
記録部12から搬送された粘着ラベル1は、粘着性発現部13において、プラテンローラ16とサーマルヘッド6により挟持されつつ所望の位置で加熱される。非粘着層4は、サーマルヘッド6により加熱されることにより、切り込み4aを基点として熱収縮が生じ、開口4bが形成される。言い換えると、切り込み4aによって分割された各領域(例えば図5,6に示す領域P)に非粘着層4を構成する材料の小片(残渣4c)が1つずつ残り、それ以外の部分がほぼ全て開口4bとなる。
【0037】
こうして開口4bが形成された粘着ラベル1を図示しない被着体に押し付けると、開口4bから露出する粘着剤層3が被着体に付着し、粘着剤層3の感圧性粘着剤が被着面に沿って変形しながら貼り付く。
【0038】
なお、粘着ラベル1を精度良く搬送するために、図示しないセンサ等を用いて監視してもよい。また、図7に示すように、ロール紙切断部11は、記録部12より下流側に位置していても構わない。ただし、粘着性発現部13よりも上流側であることが好ましい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の粘着ラベル1は、粘着剤層3を露出させる非粘着層4の開口4bの位置、大きさ、形状を制御することが可能である。従って、所望の粘着特性、具体的には、粘着ラベル1全体における所望の粘着力などを得ることができる。さらに、非粘着部分の形成や、その非粘着部分の位置、大きさ、形状の制御も可能である。
【0040】
なお、切り込み4aは、図2に示すような直線状でなく曲線状であってもよい。図8(a)〜(f)に様々な切り込み4aの例を示している。図8(a)〜(d)に示す例のように、切り込み4aが非粘着層4を複数の閉じた領域に分割するように形成されていることが好ましい。
【0041】
切り込み4aによって分割される領域が小さ過ぎると、粘着ラベル作製装置内の搬送途中で非粘着層4の一部の領域がサーマルヘッドやプラテンローラあるいは搬送路との接触中に剥がれる危険性がある。その場合、粘着ラベル作製装置内での通紙性の劣化に加えて、粘着ラベル作製装置内にゴミが散乱するという問題が生じる。一方、切り込み4aによって分割される領域が大き過ぎると、個々の領域において均一な収縮ができなくなる。その結果、開口4bの形状や大きさが乱れてしまい、所望の粘着特性が実現できなくなる。これらを考慮すると、一般的には、切り込み4aによって分割される各領域の各辺の長さが1〜10mm程度になるように切り込み4aを形成することが好ましい。
【0042】
前記したように非粘着層4の一部の領域が剥がれることを防止するためには、図8(a)〜(d),(f)〜(g)に示すように、粘着ラベル作製装置内の搬送方向と同じ方向または搬送方向に対して斜め方向に延びる切り込み4aを形成することが好ましい。また、非粘着層4の一部の領域が剥がれることを防止するために、粘着ラベル1が極端に折り曲げられたり屈曲させられたりしない状態で粘着ラベル作製装置内を搬送されることが好ましい。さらに、非粘着層4に接触する部材ができるだけ少なくなるように、粘着ラベル作製装置内の各部材をレイアウトすることが好ましい。非粘着層4に接触する部分には、低摩擦係数の材料を用いたり、樹脂コーティングを施したりすることも効果的である。
【0043】
また、印刷層5への記録時に、非粘着層4に接するプラテンローラ15から加わる圧力をできるだけ小さくすることが好ましい。そのために、搬送用のローラをサーマルヘッド7の手前に追加することが好ましい。また、サーマルヘッド7の表面に低摩擦係数の材料をコーティングすることも有効である。さらにサーマルヘッド7と印刷層5との接触面積を減らすために、端面型やニアエッジ型のサーマルヘッド7を用いてもよい。また印刷層5の表面に、摩擦を軽減するためのオーバーコート層を設けることも有効である。サーマルヘッド7と印刷層5との摩擦を軽減することは、プラテンローラ15による搬送を良好にすることに繋がる。
【0044】
非粘着層4の厚さは、サーマルヘッド6等の加熱手段によって熱収縮が生じ易いように薄い方が好ましく、また、粘着剤層3を開口4bから容易に露出させて感圧性粘着剤を滲み出させるためにも薄い方が好ましい。一例としては、非粘着層4は10μm以下の厚さに形成される。一方、粘着剤層3を覆ってブロッキングを防止するためにはある程度の厚さが必要である。製造欠陥の可能性や、製造誤差や、層形成時(特に樹脂フィルム状の非粘着層4を貼り付ける際)の取り扱い易さ等を考慮すると、非粘着層4の厚さは1μm以上であることが好ましい。
【0045】
本実施形態では、サーマルヘッド6を加熱手段として用いているため、粘着ラベル1の一部分のみに開口4bを形成して粘着力を発揮できるようにすることができる。サーマルヘッド6は熱応答性が良く、加熱手段の予備加熱等の無駄がないため、エネルギー効率がよい。また、このように無駄な加熱がないため、非粘着層4への加熱時に、支持体2の他方の面に形成される印刷層(感熱記録層)5に対し、意図しない発色を生じることが回避できる。なお、非粘着層4の一部分のみに開口4bを形成する場合には、切り込み4aによって分割される各領域の大きさが、粘着部分および非粘着部分の最小寸法となるので、それを考慮した上で、切り込み4aを形成することが好ましい。
【0046】
粘着剤層3は、複雑な形状や粗面を有する被着物に十分な粘着力で貼り付けられるように、比較的厚く形成することが好ましく、例えば5μm以上、好ましくは10μm以上に形成される。
【0047】
支持体2の他方の面に形成されている印刷層5は、感熱記録層に限られず、熱転写法やインクジェット法等によって印刷可能な層であってもよい。また、既に印刷が行われた層であってもよい。
【0048】
切り込み4aの形成は、粘着剤層3上に非粘着層4を形成した後に、カッタを駆動することで可能である。図8(b),(c),(f)に示す例のように、粘着ラベル1の搬送方向と同一方向に延びる切り込み4aを形成する場合には、固定カッタまたはリングカッタなどの、粘着ラベル1の幅方向の特定の位置に固定されたカッタ部材が利用可能である。ただし、図9(a)に示すように切り込み4aが粘着剤層3に深く形成されると、カッタ部材の刃に粘着剤が付着し、切れ味に影響を及ぼすおそれがある。また、図9(b)に示すように切り込み4aが浅すぎると、所望の開口4bが形成できなくなる可能性がある。従って、切り込み4aを適切な深さに形成できるように、カッタの寸法の規制が必要である。このような規制が難しい場合には、図2(c)に示す例のように、断続的な切り込み4aを形成してもよい。この場合、非粘着層4と反対側に位置する印刷層5に若干の凹凸が生じる可能性があるので、感熱記録層やインクジェット法等による記録可能層ではなく、既に印刷済みの印刷層5が設けられている場合に実施することが好ましい。
【0049】
図8(a)〜(e),(g)に示す例のように、粘着ラベル1の搬送方向と異なる方向に延びる切り込み4aを形成する場合には、粘着ラベル1を搬送しながらカッタを粘着ラベル1の幅方向に移動させて切り込み4aを形成することができる。切り込み4aのピッチと粘着ラベル1の搬送速度に応じて同時に駆動するカッタの数を決定すればよい。例えば、粘着ラベル1の幅方向の両端にあたる位置に複数列のカッタ8(図10,11に示す例では2つの刃からなる2組のカッタ8a,8b)を有する切り込み形成部9を設ける。なお、この切り込み形成部9は、図10に示すように記録部12よりも上流側にあっても、図11に示すように記録部12よりも下流側にあってもよい。そして、図12に示すように、粘着ラベル1を矢印A方向に搬送しながら、一方の組のカッタ8aを初期位置Bから、他方の組のカッタ8bを初期位置Cから、それぞれ粘着ラベル1の幅方向に移動させると、斜めの格子状に切り込み4aを形成することができる。図12では、便宜上、一方の組のカッタ8aによって形成された切り込み4aを破線で示し、他方の組のカッタ8bによって形成された切り込み4aを実線で示している。
【0050】
また、粘着ラベル1の幅方向の所定の位置に、例えば一定のピッチで互いに間隔をおいて配置された複数のカッタを固定させたままで、粘着ラベル1を搬送して、搬送方向と同方向に切り込み4aを形成することができる。こうして形成された切り込み4aは図8(f)に示されている。これによると、搬送時の負荷によって非粘着層4の一部が剥がれる危険性が小さくなる。ただし、切り込み4aによって分割された非粘着層4の領域は非常に細長い形態になるので、機械的に剥離して除去することが好ましい。
【0051】
また、ダイカット紙などのハーフ抜き型式のカッタを用いて、自由なレイアウトの切り込み4aを形成することもできる。
【0052】
あるいは、カッタではなく、例えば、図13に示すように、切り込み形成部9にサーマルヘッド17とプラテンローラ19を設け、このサーマルヘッド17による加熱によって、非粘着層4を溶融させて切り込み4aを形成してもよい。その場合、自由なレイアウトで切り込み4aを形成することができる。サーマルヘッド17の出力制御によって発熱温度を精度よく調整できるため、切り込み4aの大きさや深さを精度よく制御できる。切り込み形成部9と記録部12とを入れ替えて配置することも可能である。
【0053】
図示しないが、記録部12に切り込み形成機能を持たせることも可能である。その場合、記録部12の加熱手段であるサーマルヘッド7を用いて非粘着層4を加熱して開口4bを形成することにより、部品の共通化が図れ、低コスト化に寄与する。記録部12にて非粘着層4に切り込み4aを形成した後に、粘着ラベル1を反転させてからバックフィードして、切り込み4aの形成に使用したのと同じサーマルヘッド7で印刷層5に記録を行えばよい。これにより、装置の簡略化と小型化が達成できる。
【0054】
また、図14,15に示すように、粘着性発現部13に切り込み形成機能を持たせることも可能である。その場合、粘着性発現部13のサーマルヘッド6を用いて非粘着層を加熱して開口4bを形成することにより、部品の共通化が図れ、低コスト化に寄与する。図15(a)に示すように粘着性発現部13にて非粘着層4に切り込み4aを形成した後に、図15(b)に示すように粘着ラベル1をバックフィードして、図15(c)に示すように粘着性発現部13にて、再度、切り込み4aの形成に使用したサーマルヘッド6で非粘着剤層4を加熱して熱収縮させ、開口4bを形成すればよい。これにより、装置の簡略化と小型化が達成できる。この場合、粘着ラベル1を反転させる必要はない。切り込み4aの形成と開口4bの形成とは、サーマルヘッド6の駆動条件を制御することによって区別される。
【0055】
また、図示しないが、レーザを照射してその熱によって切り込み4aを形成してもよい。その場合には、レーザの出力と焦点を制御することにより、切り込み4aの大きさや深さを精度よく制御することができる。
【0056】
これらの方法によると、所望の切り込み4aを精度よく形成できる。そして、図2(b)に示すような連続的な切り込み4aに限られず、図2(c)に示すような断続的な切り込み4aを形成することもできる。そうすると、粘着ラベル作製装置内での粘着ラベル1の搬送中に非粘着層4の一部が剥がれてしまう等の危険性がさらに減少する。
【0057】
なお、図10,11,13,14等の粘着ラベル作製装置において、切り込み形成部9を記録部12よりも下流側に配置すると、記録部12においてプラテンローラ15により加わる圧力で非粘着層4の一部が剥がれしまうおそれがなくなる。
【0058】
以上説明した切り込み4aの形成方法としては、精度と構成の簡素化の点ではサーマルヘッド6などの加熱手段を用いることが好ましい。一方、消費電流の観点ではカッタ8を用いることが好ましい。特に、粘着ラベル1の搬送方向に向かって切り込み4aを形成する場合には、固定したカッタを複数並べておくだけでよいので、構成が簡単であるという利点がある。
【0059】
図16,17に示すように、開口4bを形成した後に残る、非粘着層4を構成する材料の小片(残渣4c)を除去するための残渣除去部20を、ラベル作製装置内に設けてもよい。例えば、図16に示す構成では、粘着ラベル1を搬送する搬送ローラ21a〜21dのうちの、下流側で非粘着層4に接する搬送ローラ21dを、他の搬送ローラ21a〜21cと異なる周速で回転させる。この周速の差によって、粘着ラベル1に残る非粘着層4の小片(残渣4c)を、粘着ラベル1から剥離して搬送ローラ21dの外周面に付着させることができる。さらに、移動可能な残渣取り爪22によって、搬送ローラ21dの外周面の残渣4cを強制的に掻き取ることができる。この場合、残渣4cを掻き取る際にその下層の粘着剤層3も一部掻き取られる可能性があるため、搬送ローラ21dの表面に非粘着性(低摩擦)のコーティングを施すことが好ましい。さらに、残渣取り爪22の表面にも非粘着性(低摩擦)のコーティングを施すか、あるいは残渣取り爪22を非粘着性(低摩擦)の材料で形成することが好ましい。この構成では、物理的な力で残渣4cを強制的に剥離して除去するため、ゴムなどの摩擦力を利用して除去するのでない限り、低摩擦の材料からなる部材や低摩擦のコーティングを施した部材を用いて除去を行うことができる。この残渣除去部20の内部下方に、掻き取った残渣4cを収容するトレイ等の容器23を設置しておけば、粘着ラベル作製装置の清掃が容易になる。
【0060】
図17(a)〜(c)には、残渣除去部20の他の例が示されている。図17(a)に記載されている例では、ブラシ状の搬送ローラ21dが用いられている。図17(b)に記載されている例では、搬送ローラ21dの外周面にへら状の複数の突起が設けられている。図17(c),(d)に記載されている例では、螺旋状のねじが設けられた搬送ローラ21dが用いられている。いずれの構成においても、搬送ローラ21dを他の搬送ローラ21a〜21cと異なる周速で回転させることにより、粘着ラベル1から非粘着層4の残渣4cを剥ぎ取る。そして、この搬送ローラ21dの外周面に当接する残渣取り爪22によって、搬送ローラ21dの外周面の残渣4cを掻き落とし、容器23に収容する。
【0061】
なお、残渣除去部20として、圧電素子や振動体による振動を作用させて残渣4cの剥離を行う構成にしてもよい。この場合、圧電素子や駆動体に接続されている触針が振動して非粘着層4の残渣4cを剥ぎ取って下方へ落下させる。
【0062】
さらに、サーマルヘッド6等の加熱手段を用いて加熱するのではなく、図示しないが、物理的に力を加えて非粘着層4の一部を機械的に剥がすことにより、開口4bを形成して粘着剤層4を露出させることもできる。その場合、仮に切り込み4aが設けられていないと非粘着層4を剥がすことは非常に困難であるため、切り込み4aが必須である。なお、粘着ラベル作製装置内において剥がされた非粘着層4の残渣4cは熱収縮しておらず比較的大きい廃棄物となるので、廃棄物捕集用の容器等を設けることが好ましい。この構成によると、開口形成のための加熱が不要であるため、さらに省エネルギー化できる。
【0063】
以上説明した本発明の粘着ラベルとその作製方法および作製装置によると、粘着ラベル1の粘着剤層1の表面全体を、樹脂フィルムあるいは樹脂塗布膜からなる非粘着層4で覆い、この非粘着層4に切込み4aを形成している。従って、非粘着層4に熱を加えたときに、切り込み4aを基点として熱収縮が生じ、所望の形状および大きさの開口4bが容易に形成される。
【0064】
そして、粘着ラベル1が離型紙を持たないため、ロール状に巻回した場合に、ロール径を小さくでき、これにより粘着ラベル作製装置を小型化できる。逆に言うと、同じ大きさであれば巻き数を多くすることができ、ロールの交換頻度を減らすことができる。また、離型紙が不要であるため、環境保護に寄与し、剥離紙の剥離および廃棄の手間を省くことができる。さらに、粘着ラベル1の粘着面の任意の位置に自由に粘着部分と非粘着部分を混在させることが容易にできる。また、切り込み4aを利用することにより、低いエネルギーで容易に大きな開口4bを形成でき、この結果、高い粘着力を得ることができ、エネルギー効率が向上する。
【0065】
なお、ロール状に巻回されている時点で、既に切り込み4aが形成されていてもよいが、ロールから引き出した粘着ラベル1に対し、粘着ラベル作製装置内で切り込みを形成することもできる。その場合、切り込み4aが予め形成された粘着ラベル1を用意する必要がないため、粘着ラベルの作製コストを低減できる。この場合、ロール状にして保管する時点では切り込み4aが存在しないため、切り込み4aから粘着剤層3の粘着剤が滲み出して、ブロッキングを生じることがなく、長期間の安定した保管が可能である。
【0066】
開口4bの形成後に残る、非粘着層4を構成する材料の小片(残渣4c)は、粘着ラベル1全体の粘着力にあまり影響しない程度の大きさになるので、必ずしも除去する必要はなく、廃棄物を発生させなくてすむ。
【0067】
一方、粘着力をより向上させるためには、非粘着層4を構成する材料の残渣4cを除去することもできる。その場合、粘着剤層3の上方に障害物がなく、従来の粘着ラベルと同様に容易に取り扱うことができる。
【0068】
[粘着ラベルの各層の材料の具体例]
粘着ラベル1の各層は、フィルムを貼り合わせることや、溶融状態の材料を塗布することや、共押出し法によって形成することができる。材料を塗布する場合には、バーコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、またはグラビアコーターなどの塗布手段のうち、材料の粘度と形成すべき厚さと乾燥プロセスとを考慮して選択された塗布手段が用いられる。
【0069】
なお、多層構造の粘着ラベル1を作製する上で、層形成と、層形成後の処理とによって、各層の材料に、残留応力や熱収縮や吸湿に起因するカールが生じる可能性がある。従って、各層の形成に当たっては、寸法安定性、表面処理、耐湿性、耐溶剤性、機械強度、平面度等を考慮する必要がある。特に、粘着ラベル1の表層となる非粘着層4は、層表面の摩擦係数と、粘着ラベル作製装置の加熱手段と接する際の柔軟性も考慮することが重要である。
【0070】
これに基づいて、本発明の粘着ラベル1の各層の材料の具体例を、以下に説明する。
非粘着層4は、汎用樹脂として多くの用途に利用されているポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)などのオリフィン系樹脂、これらの樹脂フィルム(例えばPEフィルムとPPフィルム)を積層した多層ポリオレフィン(PO)フィルム、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PSフィルムとPETフィルムを積層したハイブリッドフィルム、エチレン/酢酸ビニル共重合(EVA)系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、植物系原料であるポリ乳酸(PLA)系樹脂等からなる樹脂フィルムなどからなる。非粘着層4は、常温で化学的物理的に安定であり、かつ一般的なサーマルヘッド等の加熱手段で加熱可能な温度範囲で利用できることが好ましい。この非粘着層4が樹脂フィルムからなる場合には、一軸延伸フィルムあるいは二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0071】
粘着剤層3は、水、溶剤、熱などを用いなくても、常温でわずかな圧力を短時間加えるだけで粘着可能である感圧性粘着剤からなる。そして、この感圧性粘着剤は、凝集力と弾性を有し、高い粘着性を有する一方、硬い平滑面から剥離可能であるものが好ましい。粘着剤層3は、一般的には、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリイソブチレンゴムなどのゴム系粘着剤や、ガラス転移点の低いモノマーと架橋剤を含む架橋系のアクリル系粘着剤や、ガラス転移点の低いモノマーと高いモノマーとを共重合した非架橋系のアクリル系粘着剤や、高凝集力のシリコーンと高粘着力のシリコーンレジンからなるシリコーン系粘着剤などからなる。また、加熱によって開口4bの形成を行う場合には、粘着剤層3は、上層の非粘着層4との熱容量の差が大きい材料を選択することが好ましい。
【0072】
支持体2の他方の面に形成されている印刷層5は、サーマルヘッドを用いて感熱記録可能なものに限られず、インクジェット方式や電子写真方式などの他の印刷方式で記録可能なものであってもよく、既に印刷済みの層であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 粘着ラベル
2 支持体
3 粘着剤層
4 非粘着層
4a 切り込み
4b 開口
4c 小片(残渣)
5 印刷層
6,7,17 サーマルヘッド(加熱手段)
8,8a,8b カッタ
9 切り込み形成部
10 ロール紙収納部
11 ロール紙切断部
12 記録部
13 粘着性発現部
14 カッタ部材
15,16,19 プラテンローラ
18 搬送ローラ
20 残渣除去部
21a〜21d 搬送ローラ
22 残渣取り爪
23 容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一方の面に、感圧性粘着剤からなる粘着剤層と、該粘着剤層上に形成されており、熱または物理的な力が加えられることにより、下層に位置する前記粘着剤層を露出させる開口が形成される非粘着層と、が設けられており、
前記非粘着層は前記開口が形成される基点となる切り込みを有している、粘着ラベル。
【請求項2】
前記非粘着層は、樹脂フィルムまたは樹脂塗布膜からなる、請求項1に記載の粘着ラベル。
【請求項3】
複数の前記切り込みが、前記非粘着層を複数の領域に分割するように形成されている、請求項1または2に記載の粘着ラベル。
【請求項4】
前記支持体の他方の面に印刷層が設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の粘着ラベル。
【請求項5】
支持体の一方の面に設けられている感圧性粘着剤からなる粘着剤層の上に形成されている非粘着層に対して熱または物理的な力を加えて、前記非粘着剤層に形成されている切り込みを基点として開口を形成し、該開口を介して前記粘着剤層を露出させるステップを含む、粘着ラベルの作製方法。
【請求項6】
前記非粘着層に対して熱または物理的な力を加える前に、前記非粘着層に前記切り込みを形成するステップを含む、請求項5に記載の粘着ラベルの作製方法。
【請求項7】
前記支持体の他方の面に設けられている印刷層に印刷を行うステップをさらに含む、請求項5または6に記載の粘着ラベルの作製方法。
【請求項8】
支持体の一方の面に設けられている感圧性粘着剤からなる粘着剤層の上に形成されている非粘着層に対して熱または物理的な力を加えて、前記非粘着剤層に形成されている切り込みを基点として開口を形成し、該開口を介して前記粘着剤層を露出させる粘着性発現部を有する、粘着ラベル作製装置。
【請求項9】
前記非粘着層に切り込みを形成する切り込み形成部をさらに有する、請求項8に記載の粘着ラベル作製装置。
【請求項10】
前記切り込み形成部は、前記非粘着層を切るカッタを有している、請求項9に記載の粘着ラベル作製装置。
【請求項11】
前記粘着性発現部は、前記非粘着層を加熱するためのサーマルヘッドを有している、請求項8から10のいずれか1項に記載の粘着ラベル作製装置。
【請求項12】
前記粘着性発現部の前記サーマルヘッドは、前記支持体の他方の面に設けられている印刷層を加熱して該印刷層に印刷を行う、請求項11に記載の粘着ラベル作製装置。
【請求項13】
前記粘着性発現部は、前記非粘着層に物理的な力を加えて開口を形成する機構を有している、請求項8から10のいずれか1項に記載の粘着ラベル作製装置。
【請求項14】
前記支持体の他方の面に設けられている印刷層を加熱するためのサーマルヘッドを有し該サーマルヘッドによる加熱によって前記印刷層に印刷を行う記録部をさらに有する、請求項11または13に記載の粘着ラベル作製装置。
【請求項1】
支持体の一方の面に、感圧性粘着剤からなる粘着剤層と、該粘着剤層上に形成されており、熱または物理的な力が加えられることにより、下層に位置する前記粘着剤層を露出させる開口が形成される非粘着層と、が設けられており、
前記非粘着層は前記開口が形成される基点となる切り込みを有している、粘着ラベル。
【請求項2】
前記非粘着層は、樹脂フィルムまたは樹脂塗布膜からなる、請求項1に記載の粘着ラベル。
【請求項3】
複数の前記切り込みが、前記非粘着層を複数の領域に分割するように形成されている、請求項1または2に記載の粘着ラベル。
【請求項4】
前記支持体の他方の面に印刷層が設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の粘着ラベル。
【請求項5】
支持体の一方の面に設けられている感圧性粘着剤からなる粘着剤層の上に形成されている非粘着層に対して熱または物理的な力を加えて、前記非粘着剤層に形成されている切り込みを基点として開口を形成し、該開口を介して前記粘着剤層を露出させるステップを含む、粘着ラベルの作製方法。
【請求項6】
前記非粘着層に対して熱または物理的な力を加える前に、前記非粘着層に前記切り込みを形成するステップを含む、請求項5に記載の粘着ラベルの作製方法。
【請求項7】
前記支持体の他方の面に設けられている印刷層に印刷を行うステップをさらに含む、請求項5または6に記載の粘着ラベルの作製方法。
【請求項8】
支持体の一方の面に設けられている感圧性粘着剤からなる粘着剤層の上に形成されている非粘着層に対して熱または物理的な力を加えて、前記非粘着剤層に形成されている切り込みを基点として開口を形成し、該開口を介して前記粘着剤層を露出させる粘着性発現部を有する、粘着ラベル作製装置。
【請求項9】
前記非粘着層に切り込みを形成する切り込み形成部をさらに有する、請求項8に記載の粘着ラベル作製装置。
【請求項10】
前記切り込み形成部は、前記非粘着層を切るカッタを有している、請求項9に記載の粘着ラベル作製装置。
【請求項11】
前記粘着性発現部は、前記非粘着層を加熱するためのサーマルヘッドを有している、請求項8から10のいずれか1項に記載の粘着ラベル作製装置。
【請求項12】
前記粘着性発現部の前記サーマルヘッドは、前記支持体の他方の面に設けられている印刷層を加熱して該印刷層に印刷を行う、請求項11に記載の粘着ラベル作製装置。
【請求項13】
前記粘着性発現部は、前記非粘着層に物理的な力を加えて開口を形成する機構を有している、請求項8から10のいずれか1項に記載の粘着ラベル作製装置。
【請求項14】
前記支持体の他方の面に設けられている印刷層を加熱するためのサーマルヘッドを有し該サーマルヘッドによる加熱によって前記印刷層に印刷を行う記録部をさらに有する、請求項11または13に記載の粘着ラベル作製装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−88400(P2012−88400A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232906(P2010−232906)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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