説明

粘着ラベル及びラベル発行装置

【課題】剥離紙を用いず、資源節約や環境負荷を低減し、厚さを薄く形成することができるので長尺捲きが可能となる粘着ラベル1を提供する。
【解決手段】粘着ラベル1を、表示層2と、表示層2に設置された粘着層3と、粘着層3に設置された機能層4と、を備え、当該機能層4は、加熱することにより開口して粘着層3が露出するようにした。その結果、機能層4を低活性化エネルギーで安定して開口でき、携帯型のラベル発行装置10に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存時は非粘着性を有し、使用時に粘着性を発現させて使用する粘着ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、価格表示用ラベル、商品表示用ラベル、広告宣伝用ラベル、包装物のシール用ラベル等の用途に粘着ラベルが使用されている。粘着ラベルの記録面に記録する方式としては、インクジェット記録方式、感熱記録方式等のさまざまな方式が適用されている。
【0003】
図8は従来から使用されている粘着ラベルの断面図であり、(a)が使用前の状態であり(b)が使用時の断面図である。粘着ラベル50は、文字等を記録する表示層51と、基材52と、被着体に粘着ラベル50を粘着させる粘着層53と、剥離紙54が積層された構造を有している。表示層51と粘着層53は基材52により支持される。使用時は、剥離紙54を剥離し粘着層53を露出させた後に粘着ラベル50を被着体に粘着させる。つまり、従来型の粘着ラベル50において剥離紙54は剥離後その用途が完了し、ごみとして廃棄される。そのため、資源節減や環境負荷の低減の観点から、剥離紙54のゴミを出さない粘着ラベルが望まれている。
【0004】
これを解消するため、剥離紙を用いない粘着ラベルも提案されている。図9は特許文献1に記載されている感熱性粘着材60の側面図である。即ち、図9(a)に示されるように、感熱性粘着材60は基材シート61の下に感圧粘着層62が設けられ、感圧粘着層62の粘着表面を被覆するようにマイクロカプセル層63が設けられている。マイクロカプセル層63は粘着性を有しないので剥離紙を必要としない。マイクロカプセル層63は、中空マイクロカプセルのほぼ単層から構成され、例えば100℃〜180℃程度の融点を有している。マイクロカプセル層63は上記温度に加熱されると破壊し体積が縮小する(63a)。その結果、感圧粘着層62はその粘着表面62aが露出して粘着性を発現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−111203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の感熱性粘着材60は、マイクロカプセル層63が球形状を有しているので熱源と接触したときは点接触となることから熱伝導性が低く、マイクロカプセル層63を破壊するための大きな熱エネルギーを必要とする。そのため、低消費電力型のラベル発行には向かず、環境負荷を低減することにならない。また、従来の粘着ラベルは基材シートに表示層や感熱粘着層が形成されているので厚くなり、嵩張った。
【0007】
更に、粘着ラベルは様々な環境下で様々な被着体に使用される。そのため、使用環境や被着体の性質、使用目的に応じて粘着ラベルの粘着力や粘着領域が制御可能であることが期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の粘着ラベルは、表示層と、前記表示層に設置された粘着層と、前記粘着層表面を覆うように設置された機能層と、を備え、前記機能層は、加熱することにより開口して前記粘着層が露出することとした。
【0009】
また、前記機能層は、オレフィン系樹脂から成ることとした。
【0010】
また、前記機能層は、無機フィラーを含有することとした。
【0011】
また、前記機能層は、多孔質層から成ることとした。
【0012】
また、前記機能層と粘着層間に弱粘着層を設けることとした。
【0013】
また、前記表示層は感熱発色層から成ることとした。
【0014】
また、前記表示層の上に保護膜が形成されたこととした。
【0015】
本発明のラベル発行装置は、表示層と、前記表示層に設置された粘着層と、前記粘着層に設置された機能層とを備える粘着ラベルを搬送する搬送部と、前記表示層に記録する記録部と、前記機能層を加熱して開口させ、前記粘着層を露出させる加熱部と、を備えることとした。
【発明の効果】
【0016】
本発明による粘着ラベルは、表示層と、表示層に設置された粘着層と、粘着層に設置された機能層と、を備え、当該機能層は、加熱することにより開口して粘着層が露出するようにした。これにより、剥離紙を用いない構成とすることから一般の粘着ラベルでの剥離紙の廃棄処分の手間が省けるとともに、資源節減や環境負荷の低減の観点から優れている。また、機能層は耐ブロッキング性を有する非粘着性であることからロール状に巻き取って保管することができるとともに、厚さが薄いので長尺捲きロールが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態に係る粘着ラベルの縦断面模式図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る粘着ラベルが粘着性を発現する様子を表す説明図である。
【図3】本発明に第一実施形態に係る粘着ラベルの機能層に形成した開口部の例を表す平面模式図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る粘着ラベルの縦断面模式図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る粘着ラベルが粘着性を発現する様子を表す説明図である。
【図6】本発明の第四実施形態に係る粘着ラベルの縦断面模式図である。
【図7】本発明の第五実施形態に係るラベル発行装置の模式的な構成図である。
【図8】従来公知の粘着ラベルの断面図である。
【図9】従来公知の感熱性粘着材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係る粘着ラベル1の縦断面模式図である。粘着ラベル1は、表示層2と、粘着層3と、機能層4とが積層する構造を備えている。本発明の粘着ラベル1は、機能層4を加熱することにより開口させ、粘着層3を露出させて粘着性を発現させる。機能層4は非粘着性であり、粘着ラベル1を積み重ねる、あるいはロール状に巻き取って保管してもブロッキングが発生しない。表示層2は、文字、図形等を表示するための層である。例えばラベル発行装置を使用して、表示層に文字、図形等を印刷するとともに、機能層4の特定個所を加熱して開口させ、粘着層3の一部が露出した粘着ラベル1を発行することができる。
【0019】
機能層4は、加熱されて溶融すると、溶融した材料の表面張力により拡径して開口部が形成される。この場合に開口端部に材料が流動して凝集する。機能層4としては、熱制御性が高く、粘着層3や表示層2を支持できるものであればよい。機能層4としてプラスチック材料を使用することができ、例えばオレフィン系樹脂を使用することができる。
【0020】
図2は、本発明の第一実施形態に係る粘着ラベル1が粘着性を発現する様子を表す説明図である。加熱手段としてサーマルヘッド6を使用する。図2(a)に示すように、粘着ラベル1の機能層4にサーマルヘッド6の加熱部Hを接触させる。すると、図2(b)に示すように加熱された機能層4が溶融し始め、図2(c)に示すように機能層4に開口部8が形成される。開口部8が形成されると同時にその周囲に機能層4の表面よりも高い凸部7が形成され、下層の粘着層3が露出する。そして、図2(d)に示すように、粘着ラベル1を表示層2の下方から押圧することにより開口部8を介して粘着剤が被着体9に粘着する。なお、図2に示す前後において表示層2に印字してラベルとして利用することができる。
【0021】
図3は、本発明の第一実施形態に係る粘着ラベル1の機能層4に形成した開口部8の例を表す平面模式図である。図3(a)は、サーマルヘッド6を用いて機能層4の領域R1に多数の開口部8を整列させて形成した状態を表す。図3(b)は、サーマルヘッド6を用いて機能層4の領域R2に「12」の文字を描いた状態を表す。
【0022】
図3(a)に示すように、機能層4に多数の開口部8を形成することにより粘着層3が開口部8から露出し、被着体9に粘着ラベル1を粘着させることができる。この場合に、複数の開口部8が互いに連続しないように制御して開口させることにより、機能層4を粘着層3や表示層2を支持する支持体として機能させることができる。更に、被着体9の表面状態や粘着ラベル1の使用環境に応じて、開口部8の形成密度や形成位置を制御して、被着面や使用環境に応じた粘着性を発現させることができる。
【0023】
また、図3(b)に示すように、機能層4に形成した開口部8により文字や図形を表示することができる。粘着ラベル1を透明な被着体9に粘着させることにより、被着体9の粘着ラベル1側に対しては粘着ラベル1の表示層2に印刷した文字や図形が表示され、被着体9の粘着ラベル1とは反対側に対しては機能層4に形成した開口部8による文字や図形が表示される。即ち、粘着ラベル1を用いて両面表示を行うことができる。粘着層3を白色や他の色に着色すれば、被着体9の粘着ラベル1とは反対側に対して変化の富んだ表示を行うことができる。
【0024】
ここで、粘着層3として感圧型粘着剤を用いることができる。感圧型粘着剤は、水、溶剤、熱等を使用せず、常温で小さい圧力を加えただけで接着することができる。更に、凝集力と弾性を持ち、強く接着するとともに、硬い平滑面から剥がすこともできる。具体的には、用途に応じてシリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤を使用することができる。シリコーン系粘着剤には、高凝集力を持つシリコーンや高粘着力を持つシリコーンが含まれる。ゴム系粘着剤には、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソブチレン、ゴム系の材料が含まれる。アクリル系粘着剤には、ガラス転移の低いモノマーと架橋材を利用した架橋系の材料や、ガラス転移の低いモノマーと高いモノマーを共重合化した非架橋系の材料が含まれる。
【0025】
機能層4は、オレフィン系樹脂やエンジニアリングプラスチックを使用することができる。オレフィン系樹脂は汎用樹脂として多用途に使用されているので機能層4を低コストで形成することができる。オレフィン系樹脂として、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、PEやPPを重ねた多層ポリオレフィン系、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、を使用することができる。オレフィン系樹脂は、ホモ重合体及び共重合体、多段重合体等を使用することができる。これらのホモ重合体及び共重合体、多段重合体の群から選んだポリオレフィンを単独、もしくは混合して使用することもできる。上記重合体の代表例としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、ポリブテン、エチレンプロピレンラバー等が挙げられる。
【0026】
更に、機能層4として、PSとPETの積層形であるハイブリッド、エチレン/酢酸ビニル共重合(EVA)系、ポリビニルアルコール(PVA)系、植物系原料であるポリ乳酸(PLA)系、等を使用することができる。また、低コスト化が見込めるセルロース系材料を使用することができる。加熱時に隣接する粘着層3に対する接触角が大きくなる材料を選定することが好ましい。また、機能層4を形成する際に延伸プロセスを用いた一軸延伸或いは二軸延伸された材料を使用することができる。延伸フィルムを用いる場合、単一モノマーと他のモノマーを共重合化する、或いはゴムなどの異種成分をブレンドしてガラス転移点を操作し、化学的及び機械的に安定化した材料を使用することができる。
【0027】
オレフィン系の粘度平均分子量は、5万以上1200万以下が好ましく、さらに好ましくは5万以上200万未満、最も好ましくは10万以上100万未満である。粘度平均分子量が5万以上であれば、溶融成形の際のメルトテンションが大きくなり成形性が向上し、十分に絡み合い、高強度となりやすい。粘度平均分子量が1200万以下であれば、特に厚み安定性に優れている。
【0028】
なお、機能層4は熱容量の小さい特性が好ましい。つまり、機能層4の熱容量が粘着層3よりも小さい場合、機能層4を加熱したときに機能層4の昇温と溶融化が促進されるとともに、粘着層3の熱による変形や変質することを防止することができる。
【0029】
表示層2として、加熱により発色する感熱発色層を使用することができる。例えば、ロイコ染料とロイコ染料を発色させる顕色剤を混合して感熱記録層塗布液を調整し、印字記録層2に塗布して形成することができる。また、感熱発色層に代えて、インクジェット記録装置により記録可能な記録層としても良い。
【0030】
次に、粘着ラベル1の製造方法について説明する。粘着ラベル1は、粘着剤が塗布された機能層4を表示層2に、或いは粘着層3が塗布された表示層2に機能層4を貼り合わせる。貼り合わせは、共押出し手法を利用することができる。粘着剤を機能層4や表示層2に塗布する装置として、バーコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、グラビアコーター等を使用することができる。塗布の際には膜粘度、膜厚、乾燥プロセスを適切に選択する。表示層2、粘着層3及び機能層4の複数層を貼り合わせるので熱収縮や吸湿に基づく残留応力が働く。粘着ラベル1の寸法の安定性、表面の平坦性、耐湿性、耐溶剤性、機械的強度、表面の摩擦係数、熱源と接する際の柔軟性に留意する。
【0031】
次に、粘着力の発現について説明する。粘着ラベル1の粘着力は、粘着剤が被着体9の表面に開口部8を介し、粘着剤が被着体と接触することにより発現する。ここで、開口部8から流れ出す粘着剤の単位時間当たりの体積量Qは、
Q=4πPa/(8Lη0
と表される。ここで、Pは粘着体に印加される圧力、aは開口部8の半径、Lは開口部8の深さ(凸部7の頂部から機能層4と粘着層3の境界までの深さ。)、η0は粘着剤の粘性である。この式から、粘性η0が大きいほど、また開口部8の距離Lが大きいほど流れ出す粘着剤量は少なくなる。従って、機能層4の厚さと粘着剤の粘性を適切に選択する必要がある。なお、本発明の粘着ラベル1は、開口部8の半径aを高精度に制御することができるので、流れ出る粘着剤量の制御性が向上し、所定の粘着力を安定して発現させることができる。
【0032】
以上の通り、使用時に剥離紙を排出しないので剥離紙の廃棄処分の手間が省けるとともに、資源節減や環境負荷の低減の観点からも優れている。また、機能層は非粘着性であることから耐ブロッキング性を備え、機能層が粘着層や表示層の支持体として機能するので粘着ラベルの厚さを薄くすることができ、長尺捲きロールが可能となる。更に、使用環境や被着体の性質、使用目的に応じて粘着力や粘着領域を制御することができる。
【0033】
(第二実施形態)
図4は、本発明の第二実施形態に係る粘着ラベル1の断面模式図である。本発明の粘着ラベル1は、多孔質層から成る機能層4とした。機能層4は、多孔質でない同じ厚さの同じ材料から成る層と比較して熱容量が小さい。そのために、多孔質でない同じ厚さの同じ材料と比較して低い熱エネルギーで開口させることができる。機能層4は、加熱により溶融し表面張力により開口する。機能層4は多孔質でない同じ材料からなる層と比較して材料の密度が小さい。また、機能層4の表面には多数の孔20が開口する。そのため、多孔質でない同じ材料と比較して機能層4と粘着層3との間の接触面積が減少する。その結果、機能層4に対してその開口を妨げる粘着層3の粘着作用も弱くなる。
【0034】
機能層4は層内に中空領域が多数含まれるので、多孔質でない同じ材料と比較して熱拡散性が低下して熱が平面方向に広がり難い。そのため、加熱部Hが接触した領域以外の領域まで開口部8は拡張し難い。このように、多孔質でない材料と比較して多孔質層からなる材料は高い感度で粘着性を発現でき、且つ開口部8の位置や形状を高精度に制御することができる。
【0035】
ここで、機能層4は、空孔率が30%〜85%であり、平均孔径が0.01μm〜10μmとするのが好ましい。機能層4の厚さは1μm〜30μmとすることができる。なお、空孔の平均孔径は機能層4の層厚よりも小さく設定し、貫通孔が形成されないようにするのが好ましい。機能層4の厚さは、好ましくは30μm以下とする。これにより、機能層4の熱容量が低減し低熱エネルギーで開口させることができる。本発明の粘着ラベル1は、開口した機能層4の厚さでガードされ、加熱部Hと粘着層3が直接接触しない。この結果、加熱部Hに対して粘着ラベル1を相対移動させるとき粘着剤が加熱部Hに付着せず、粘着ラベル1の通紙性を確保することができる。なお、機能層4が加熱されて開口する温度は、機能層4の材料特性に依存するが概ね100℃〜200℃とする。これにより、装置の省エネルギー化及び粘着ラベルの高感度化に対応させることができる。また、機能層4の単位面積当たりの熱容量を粘着層3よりも小さくする。これにより、粘着層3の昇温が抑制され、粘着層3の熱による変形や変質することを防止することができる。
【0036】
図5は、本実施形態における粘着ラベル1が粘着性を発現する様子を表す説明図である。図5(a)に示すように、粘着ラベル1の機能層4にサーマルヘッド6の加熱部Hを接触させる。すると、図5(b)に示すように加熱された機能層4が溶融し始め、図5(c)に示すように機能層4に開口部8が形成され、下層の粘着層3が露出する。そして、図5(d)に示すように、粘着ラベル1を表示層2の下方から押圧することにより開口部8を介して粘着剤が被着体9に粘着する。この場合に、孔20を有する機能層4を用いたことにより、孔20がない場合よりも速やかに開口部8が形成される。
【0037】
(第三実施形態)
本発明の第一実施形態と異なる部分は、機能層4に無機フィラーを混入した点であり、その他の部分は第一実施形態と同様である。
【0038】
本第三実施形態においては、機能層4は無機フィラーを含有する。母材として樹脂材料を使用し、この樹脂材料に無機フィラーを添加することにより熱伝導率が上昇し、樹脂材料の溶融と流動が容易となる。一方、粘着層3はその粘着力により樹脂材料の拡径を抑制する。粘着層3の粘着力は高温になると低下すると共に、機能層4に無機フィラーを含有することにより開口部8の拡径を抑制する効果は低減する。従って、粘着層3の粘着作用を低減させるためには機能層4の温度を上昇させることが必要であり、開口部8を必要な形状に安定して形成するためには、開口領域の機能層4の温度むらを低減し、均一に加熱することが必要となる。
【0039】
無機フィラーの種類は特に限定されない。例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物系セラミックス、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス、ガラス繊維等を単独または複数を混合して用いることができる。例えば、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウムのフィラーは酸化物フィラーに比べて5〜40倍の高い熱伝導率を示す。また、樹脂材用にアルミナ、シリカ等の酸化物フィラーを添加することにより熱伝導率を一桁以上高くすることができる。
【0040】
ここで、機能層4は、無機フィラーを10体積%〜90体積%含有する。10体積%未満では樹脂材料の熱伝導率が支配的となり、樹脂材料と無機材料の比例配分的な熱伝導性は現れず、熱伝導率向上の効果が薄い。90体積%を超えると機能層4の物性値が大きくばらつく。機能層4の無機フィラーは、好ましくは20体積%〜60体積%とする。機能層4は必要に応じて可塑剤等の物性値調整用の材料を添加することができる。また、無機フィラーの形状は板状であっても球状であってもよく、特に限定されないが、物性値のばらつきや分散性を考慮すると非球状よりも球状の粒子形状が好ましい。
【0041】
なお、第一実施形態と同様に、機能層4は粘着層3よりも単位面積当たりの熱容量を小さく構成することが好ましい。つまり、機能層4の熱容量を粘着層3よりも小さくすることにより、機能層4を加熱したときに粘着層3の昇温が抑制され、粘着層3の熱による変形や変質することを防止することができる。
【0042】
無機材料は樹脂材料と比較して熱伝導率が高い。例えば、高分子材料の熱伝導率は0.1W/m℃〜0.5W/m℃であるが、無機材料の熱伝導率はこれよりも一桁以上高い。そのために、機能層4の熱伝導率が向上し、機能層4の加熱領域の層厚全体に亘って速やかに温度上昇させることができる。これにより機能層4を感度良く安定して開口させることができ、粘着層3の露出領域の位置、面積を高精度に制御することが可能となる。また、開口した機能層4自体の厚み、あるいは開口部8の周囲が機能層4の表面よりも高い凸部7が形成されるため、加熱部と粘着層3が直接接触せず、粘着ラベル1の通紙性を確保することができる。
【0043】
(第四実施形態)
図6は、本発明の第四実施形態に係る粘着ラベル1の縦断面模式図である。第一実施形態と異なる点は、表示層2の上面に保護膜5を設けた点であり、その他は第一実施形態と同様である。従って、以下、主に異なる点について説明する。
【0044】
粘着ラベル1は、保護膜5と、表示層2と、粘着層3と、機能層4とが積層する構造を備えている。保護膜5は透明膜とし、表示層2を発色させたときに視認可能とする。表示層2の上面に保護膜5を設けたことにより、表示層2の耐擦過性、耐水性及び耐溶剤性を向上させ、発色性を長期間維持することができる。特に、表示層2が感熱発色層である場合に有効である。
【0045】
(第五実施形態)
図7は、本発明の第五実施形態に係るラベル発行装置10の模式的な構成図である。ラベル発行装置10は、粘着ラベル1を収納するロール紙収納部12と、粘着ラベル1を切断するロール紙切断部13と、粘着ラベル1に記録する記録部としてのラベル記録部14と、粘着ラベル1に粘着性を発現させる粘着発現部15を備えている。ロール紙収納部12はロール状に巻き取った粘着ラベル1を収納する。粘着ラベル1は、表示層2と、粘着層3と、機能層4が積層する積層構造を備えている。ロール紙切断部13は、搬送部としての搬送ローラー17から送り出される粘着ラベル1をカッタ部材16により所定の長さに切断する。ラベル記録部14は、記録用サーマルヘッド11により搬送ローラー18上に載置された粘着ラベル1の表示層2に記録する。粘着発現部15は、既に第一〜第四実施形態において説明したように、搬送ローラー19上に載置された粘着ラベル1の機能層4を加熱部Hとしてのサーマルヘッド6により加熱し、その下部の粘着層3を露出させる。
【0046】
ここで、サーマルヘッド6は、複数の発熱体を並設した発熱部Hとすることにより同時に複数の開口部8を並列に形成することができる。また、粘着ラベル1の搬送方向に開口部8を連続的に形成することができる。即ち、粘着ラベル1の必要な位置に必要な数の開口部8を形成することができる。これにより粘着ラベル1の粘着性を発現させる領域の位置や大きさを制御することができるので、粘着力を安定して発現させることができる。
【0047】
また、機能層4に開口部8を設ける際に、機能層4の厚み、あるいは開口部8外周に形成される凸部7により、サーマルヘッド6の加熱部Hと粘着層3の上面との間に隙間が形成される。そのため、粘着層3がサーマルヘッド6に付着することが無く、粘着ラベル1の通紙性を維持することができる。更に、本発明に係る粘着ラベル1は機能層4を低活性化エネルギーで感度良く安定して開口させて粘着性を発現できるので、携帯型のラベル発行装置10を構成するのに好適である。
【0048】
(第六実施形態)
本発明の上記実施形態と異なる部分は、粘着層3と、機能層4との間に、粘着層よりも粘着力の弱い弱粘着層を形成したことにある。
第一実施形態の粘着ラベルにおいて粘着性を発現させるためには、機能層をサーマルヘッド等により加熱開口し、開口部から下層の粘着層を露出させて粘着力を得ているが、粘着層の粘着力が機能層を開口するための抵抗となって作用し、十分な開口が形成されなかったり、粘着抵抗のため、開口と同時にランダムな亀裂やちぎれが発生したり、さらに、ちぎれた機能層のかけらが粘着層上に散乱して粘着力を低下させることもある。本発明においては、粘着層と機能層との間に弱粘着層を設けたことで、機能層の粘着層に対する張り付き抵抗を緩和したので、所望の開口を持続して精度良く形成するのに有効である。
【符号の説明】
【0049】
1 粘着ラベル
2 表示層
3 粘着層
4 機能層
5 保護膜
6 サーマルヘッド
7 凸部
8 開口部
9 被着体
10 ラベル発行装置
11 記録用サーマルヘッド
12 ロール紙収納部
13 ロール紙切断部
14 ラベル記録部
15 粘着発現部
16 カッタ部材
17、18、19 搬送ローラー
20 孔
50 粘着ラベル
51 表示層
52 基材
53 粘着層
54 剥離紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示層と、
前記表示層に設置された粘着層と、
前記粘着層に設置された機能層と、を備え、
前記機能層は、加熱することにより開口して前記粘着層が露出する粘着ラベル。
【請求項2】
前記機能層は、オレフィン系樹脂から成る請求項1に記載の粘着ラベル。
【請求項3】
前記機能層は、無機フィラーを含有する請求項1または2に記載の粘着ラベル。
【請求項4】
前記機能層は、多孔質層から成る請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着ラベル。
【請求項5】
前記粘着層と機能層との間に、前記粘着層よりも粘着力の弱い弱粘着層を設けた請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着ラベル。
【請求項6】
前記表示層は感熱発色層から成る請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着ラベル。
【請求項7】
前記表示層の上に保護膜が形成された請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着ラベル。
【請求項8】
表示層と、前記表示層に設置された粘着層と、前記粘着層に設置された機能層とを備える粘着ラベルを搬送する搬送部と、
前記表示層に記録する記録部と、
前記機能層を加熱して開口させ、前記粘着層を露出させる加熱部と、を備えるラベル発行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−45036(P2013−45036A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184376(P2011−184376)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】