説明

粘着剤組成物、粘着剤層およびその製造方法、ならびに粘着シート類

【課題】架橋処理後に優れた粘着特性を発揮し、特に曲面接着性に優れるとともに、長期保存や加熱状態、高温処理においても透明性や耐候性にも優れた粘着剤組成物を提供する。また、当該粘着剤組成物により形成される粘着剤層およびその製造方法を提供する。さらに、当該粘着剤層を有する粘着シート類を提供する。
【解決手段】モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.45重量%、不飽和カルボン酸0.5〜15重量%、およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー0.05〜5重量%含有する(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤0.02〜2重量部、および過酸化物0.02〜2重量部含有してなることを特徴とする粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物に関する。さらに詳細には、架橋反応後に優れた粘着特性を発揮できる、特に曲面接着性に優れるとともに、長期の耐久性および透明性に優れる粘着剤組成物に関する。また、本発明は、前記粘着剤組成物により形成される粘着剤層およびその製造方法に関する。さらに、本発明は、前記粘着剤層を有する粘着シート類に関する。
【背景技術】
【0002】
電気電子や建築、自動車などの業界では、その多品種化に伴い各種部品の接着に粘着テープやシートが使用される場合が多くなっている。特に、その耐候性、透明性、または粘着特性を変化させることが容易であることからアクリル系の粘着剤が多く使用されている。
【0003】
一方、これらの電気製品、自動車、建築などの外観が、それらのデザイン性を重視して、曲面を採用することも多くなってきている。このような曲面構造に対して各種部品を接着すると、各種部品が元の形態に戻ろうとする力が働くため、粘着剤が抵抗できない場合には剥がれが発生する場合がある。
【0004】
さらには、これらの接着は、長期の保存でも粘着力等に変化なく、粘着特性が安定していることが必須である。また、長期の使用や加熱処理工程などにより粘着剤が着色しないことも要求される。
【0005】
このような用途に対して各種の試みが行われている。たとえば、水酸基を有しないアクリルポリマーに複数の水酸基を有するアミン化合物、ポリイソシアネート化合物からなる粘着剤が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。また、アクリルポリマーとキシレン樹脂、塩素化化合物、粘着付与剤および架橋剤からなる粘着剤組成物が開示されている(たとえば、特許文献2参照)。さらに、特定の環状アクリルアミドを共重合したアクリル粘着剤が開示されている(たとえば、特許文献3参照)。また、オレフィン系ポリマーを側鎖に有するモノマーとアクリレートを共重合したアクリル系ポリマーに、10時間半減期110℃以下の有機過酸化物を用いて架橋することで、オレフィン部も架橋して凝集力を向上させる方法が開示されている(たとえば、特許文献4,5参照)。
【0006】
しかしながら、これらの公知技術においても、長期の耐久性と曲面接着性の両立において難点があり、充分に満足するものではなかった。
【0007】
また、特許文献4および5は、過酸化物はアクリルポリマーの側鎖であるオレフィン部分の架橋と添加される粘着付与樹脂の架橋に使用され、定荷重剥離性が向上するとの記載があるが、オレフィン側鎖や粘着付与樹脂を有しない系では検討されていない。
【特許文献1】特開2003−238922号公報
【特許文献2】特開平10−158619号公報
【特許文献3】特開平6−172729号公報
【特許文献4】特開2003−13027号公報
【特許文献5】特開2003−13028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記従来の問題に対処すべく、架橋処理後に優れた粘着特性を発揮し、特に曲面接着性に優れるとともに、長期保存や加熱状態、高温処理においても透明性や耐候性にも優れた粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、当該粘着剤組成物により形成される粘着剤層およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、当該粘着剤層を有する粘着シート類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、粘着剤組成物の構成について鋭意検討した結果、特定のモノマー組成を有する(メタ)アクリル系ポリマーに、イソシアネート架橋剤および過酸化物を含む粘着剤組成物を特定量用いることにより、架橋処理後に優れた粘着特性を発揮し、特に曲面接着性に優れるとともに、長期保存や加熱状態、高温処理においても透明性や耐候性にも優れた粘着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の粘着剤組成物は、
モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.45重量%、不飽和カルボン酸0.5〜15重量%、およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー0.05〜5重量%含有する(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、
イソシアネート系架橋剤0.02〜2重量部、および過酸化物0.02〜2重量部含有してなることを特徴とする。
【0012】
本発明によると、実施例の結果に示すように、特定のモノマー組成を有する(メタ)アクリル系ポリマー、特定量のイソシアネート系架橋剤および過酸化物を含む粘着剤組成物を架橋することにより、曲面接着性に優れ、長期の過酷な状態に保存された場合、または高温・高湿条件下で保存された場合にも、耐久性に優れ、長期の透明性・非着色性を有する粘着シート類となる。
【0013】
上記粘着剤組成物が、かかる特性を発現する理由の詳細は明らかではないが、上記(メタ)アクリル系ポリマーを、特定量のイソシアネート系架橋剤および過酸化物により架橋することにより、上記(メタ)アクリル系ポリマーには過酸化物による架橋(過酸化物架橋)と、イソシアネート架橋剤による架橋(イソシアネート架橋)に両方が存在する構造になる。この際、過酸化物架橋やイソシアネート架橋の単独では上記の特性は十分に発現されず、両方の架橋構造が併せて存在する結果として、良好な長期の耐久性と曲面接着性を並立できると推測される。
【0014】
これは、過酸化物による緩和性に優れる主鎖架橋(過酸化物架橋)と、イソシアネート架橋剤による強固なウレタン結合(イソシアネート架橋)がバランスよく並存するによって、十分な凝集力と粘着剤に加わる応力を緩和できる挙動を示すものと推測される。
【0015】
なお、本発明における(メタ)アクリル系ポリマーとは、アクリル系ポリマーおよび/またはメタクリル系ポリマーをいう。また(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。
【0016】
また、本発明におけるイソシアネート系架橋剤とは、2以上のイソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤、数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に有するイソシアネート化合物をいう。
【0017】
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマーを主成分とする高分子量体であり、かかるポリマーを粘着剤組成物のベースポリマーとして用いることにより、粘着性、耐久性をバランスよく並立する粘着剤層を得ることができる。
【0018】
本発明の粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤0.02〜2重量部含有してなるものであるが、0.03〜1.5重量部含有してなることが好ましく、0.05〜1重量部含有してなることがより好ましい。
【0019】
また、本発明の粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、過酸化物0.02〜2重量部含有してなるものであるが、0.04〜1.5重量部含有してなることが好ましく、0.05〜1重量部含有してなることがより好ましい。
【0020】
本発明の粘着剤組成物において、上記イソシアネート系架橋剤が脂肪族および/または脂環族イソシアネート系架橋剤であることが好ましい。本発明においては過酸化物を使用するため、芳香族系のイソシアネート化合物を使用した場合には硬化後の粘着剤層が着色する場合があり、透明性が要求される用途では特に好ましい。
【0021】
また、本発明の粘着剤層は、上記いずれかに記載の粘着剤組成物を架橋してなることを特徴とする。本発明の粘着剤層によると、上記の如き作用効果を奏する粘着剤組成物を架橋してなるため、粘着剤層特性、特に曲面接着性に優れるとともに、耐久性、および長期の透明性・非着色性に優れた粘着剤層となる。
【0022】
さらに、上記粘着剤層において、上記粘着剤層のゲル分率が50〜90重量%であることが好ましい。
【0023】
一方、本発明の粘着剤層は、たとえば、支持体の片面または両面に上述のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる層を形成する工程と、前記粘着剤組成物からなる層を過酸化物架橋処理する工程とを含む製造方法を用いることにより得ることができる。かかる製造方法を用いることにより、上述の粘着剤層特性、特に曲面接着性に優れるとともに、耐久性、および長期の透明性・非着色性に優れた粘着剤層を得ることができる。
【0024】
なお、本発明において、過酸化物架橋処理とは、過酸化物を熱的または光照射などにより分解してラジカルを発生させてベースポリマーを架橋させる処理のことをいう。
【0025】
さらに、上記製造方法において得られる粘着剤層において、前記粘着剤層のゲル分率が35〜95重量%であることが好ましい。
【0026】
他方、本発明の粘着シート類は、上記の粘着剤層を支持体の片面または両面に形成してなることを特徴とする。本発明の粘着シート類によると、上記の如き作用効果を奏する粘着剤層を備えるため、粘着剤層特性、特に曲面接着性に優れるとともに、耐久性、および長期の透明性・非着色性に優れた粘着シート類となる。
【0027】
なお、本発明において、シート類とは平面状の材料を意味し、通常、フィルムまたはテープとよばれるものを含むものをいう。また、両面粘着テープ(両面テープ)、両面粘着シートなどであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
すなわち、本発明の粘着剤組成物は、
モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.45重量%、不飽和カルボン酸0.5〜15重量%、およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー0.05〜5重量%含有する(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、
イソシアネート系架橋剤0.02〜2重量部、および過酸化物0.02〜2重量部含有してなることを特徴とする。
【0030】
本発明においては、モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.45重量%、不飽和カルボン酸0.5〜15重量%、およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー0.05〜5重量%含有する(メタ)アクリル系ポリマーが用いられる。
【0031】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーは、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマーを主成分とするものである。
【0032】
上記一般式において、Rは水素またはメチル基である。また、上記一般式において、Rは炭素数2〜14のアルキル基であるが、炭素数3〜12が好ましく、4〜9のものがより好ましい。また、Rのアルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれも使用できるが、ガラス転移点が低いことから分岐鎖のものが好ましい。
【0033】
一般式CH=C(R)COORで表される(メタ)アクリル系モノマーとしては、具体的には、たとえば、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。なかでも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが好適に用いられる。
【0034】
本発明において、上述の一般式CH=C(R)COORで表される(メタ)アクリル系モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー全体において、50〜99.45重量%であり、60〜99重量%であることが好ましく、70〜98重量%であることがより好ましい。上記(メタ)アクリル系モノマーが少なすぎると接着性に乏しくなり好ましくない。
【0035】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、不飽和カルボン酸を0.5〜15重量%、好ましくは0.7〜10重量%、より好ましくは1.0〜5.0重量%含有するものである。上記不飽和カルボン酸の含有量が0.5重量%より小さくなると接着性に劣り、また耐久性に悪影響を及ぼす場合があり、一方、不飽和カルボン酸の含有量が15重量%を超えると、硬くなり曲面接着性が低下するため、好ましくない。
【0036】
上記不飽和カルボン酸としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などがあげられる。なかでも、特にアクリル酸、およびメタクリル酸が好ましく用いられる。
【0037】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー0.05〜5重量%、好ましくは0.07〜2重量%、より好ましくは0.1〜1.0重量%含有するものである。上記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーの含有量が0.05重量%より小さくなると長期の耐久性が低下し、一方、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーが5重量%を超えると、硬くなり曲面接着性が低下するため、好ましくない。
【0038】
上記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどがあげられる。
【0039】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーにおいては、上述の(メタ)アクリル系モノマー以外のモノマーとして、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移点や剥離性を調整するための重合性モノマーなどを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0040】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーにおいて用いられるその他の重合性モノマーとしては、たとえば、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエーテルモノマーなどの接着力向上や架橋化基点として働く官能基を有す成分、ならびに炭素数1または炭素数15以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーなどを適宜用いることができる。これらのモノマー化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0041】
スルホン酸基含有モノマーとしては、たとえば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などがあげられる。
【0042】
リン酸基含有モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートがあげられる。
【0043】
シアノ基含有モノマーとしては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどがあげられる。
【0044】
ビニルエステルモノマーとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ビニルピロリドンなどがあげられる。
【0045】
芳香族ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレンなどがあげられる。
【0046】
酸無水物基含有モノマーとしては、たとえば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などがあげられる。
【0047】
アミド基含有モノマーとしては、たとえば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどがあげられる。
【0048】
アミノ基含有モノマーとしては、たとえば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルなどがあげられる。
【0049】
イミド基含有モノマーとしては、たとえば、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミドなどがあげられる。
【0050】
エポキシ基含有モノマーとしては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0051】
ビニルエーテルモノマーとしては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどがあげられる。
【0052】
炭素数1または炭素数15以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0053】
本発明において、その他の重合性モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0054】
さらに、上記以外の共重合可能なモノマーとして、ケイ素原子を含有するシラン系モノマーなどがあげられる。シラン系モノマーとしては、たとえば、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシランなどがあげられる。
【0055】
前記シラン系モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.1〜3重量部であることが好ましく、0.5〜2重量部であることがより好ましい。シラン系モノマーを共重合させることは、耐久性の向上に好ましい。
【0056】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が60万以上であることが好ましく、70万〜300万であることがより好ましく、80万〜250万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が60万より小さくなると、耐久性に乏しくなり、粘着剤組成物の凝集力が小さくなることにより糊残りを生じる場合がある。一方、作業性の観点より、前記重量平均分子量は300万以下が好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0057】
また、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、前記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)が−20℃以下(通常−100℃以上)、好ましくは−30℃以下であることが望ましい。ガラス転移温度が−20℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく偏光板への濡れが不十分となり、偏光板と粘着シート類の粘着剤組成物層との間に発生するフクレの原因となる場合がある。なお、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調整することができる。
【0058】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知のラジカル重合法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0059】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、たとえば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤として、たとえば、モノマー全量100重量部に対して、アゾビスイソブチロニトリル0.01〜0.2重量部加え、通常、50〜70℃程度で、8〜30時間程度行われる。
【0060】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。
【0061】
本発明に用いられる重合開始剤としては、たとえば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0063】
また、本発明においては、重合において連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることにより、アクリル系ポリマーの分子量を適宜調整することができる。
【0064】
連鎖移動剤としては、たとえば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどがあげられる。
【0065】
これらの連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.01〜0.1重量部程度である。
【0066】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0067】
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、具体的には、たとえば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(旭電化工社製)などがある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー100重量部に対して、0.3〜5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
【0068】
本発明の粘着剤組成物は、上記のような(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとするものである。
【0069】
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤を含有することを特徴とする。これらの架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0070】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどがあげられる。
【0071】
より具体的には、たとえば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどをあげることができる。
【0072】
上記イソシアネート系架橋剤のなかでも、特に透明性が要求される用途などでは、脂肪族および/または脂環族イソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。これらの架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0073】
脂肪族イソシアネート系架橋剤としては、脂肪族イソシアネート化合物があげられる。たとえば、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,3−ジイソシアネート、ブチレン−1,4−ジイソシアネートなどのブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,2−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−2,5−ジイソシアネートなどのヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)などのジイソシアネート類、各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0074】
脂環族(脂環式)イソシアネート系架橋剤としては、脂環族イソシアネート化合物があげられる。たとえば、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアネートなどのシクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネートなどのシクロヘキシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネート類、各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0075】
上記のイソシアネート系架橋剤の使用量は、架橋すべき(メタ)アクリル系ポリマーとのバランスにより、さらには、粘着シート類としての使用用途によって適宜選択される。
【0076】
本発明の粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記イソシアネート系架橋剤0.02〜2重量部含有してなることが好ましく、0.03〜1.5重量部含有してなることがより好ましく、0.05〜1.0重量部含有してなることがさらに好ましい。0.02重量部未満では、凝集力が不十分となり、耐久性に劣る場合があり、一方、2重量部を越えると、架橋形成が過多となり、接着性に劣る場合がある。
【0077】
本発明の過酸化物としては、加熱または光照射によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃〜160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃〜140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。1分間半減期温度が低すぎると、塗布乾燥する前の保存時に反応が進行し、粘度が高くなり塗布不能となる場合があり、一方、1分間半減期温度が高すぎると、架橋反応時の温度が高くなるため副反応が起こり、また未反応の過酸化物が多く残存して経時での架橋が進行する場合があり、好ましくない。
【0078】
本発明に用いられる過酸化物としては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などがあげられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)などが好ましく用いられる。
【0079】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
【0080】
前記過酸化物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記過酸化物0.02〜2重量部含有してなることが好ましく、0.04〜1.5重量部含有してなることがより好ましく、0.05〜1重量部含有してなることがさらに好ましい。0.02重量部未満では、架橋形成が不十分となり、耐久性に劣る場合があり、一方、2重量部を越えると、架橋形成が過多となり、接着性に劣る場合がある。
【0081】
また、重合開始剤として過酸化物を使用した場合には、重合反応に使用されずに残存した過酸化物を架橋反応に使用することも可能であるが、その場合は残存量を定量し、必要に応じて再添加し、所定の過酸化物量にして使用することができる。
【0082】
なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、たとえば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0083】
より具体的には、たとえば、反応処理後の粘着剤組成物を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
【0084】
本発明においては、架橋された粘着剤層のゲル分率が、50〜90重量%となるようにイソシアネート系架橋剤および過酸化物の添加量を調整することが好ましく、52〜85重量%となるように架橋剤の添加量を調整することがより好ましく、55〜80重量%となるように架橋剤の添加量を調整することがさらに好ましい。ゲル分率が50重量%より小さくなると、凝集力が低下するため耐久性や曲面接着性に劣る場合があり、90重量%を超えると、接着性に劣る場合がある。
【0085】
本発明における粘着剤組成物のゲル分率とは、粘着剤層の乾燥重量W(g)を酢酸エチルに浸漬した後、前記粘着剤層の不溶分を酢酸エチル中から取り出し、乾燥後の重量W(g)を測定し、(W/W)×100として計算される値をゲル分率(重量%)とした。
【0086】
より具体的には、たとえば、架橋後の粘着剤層をW(g)(約500mg)採取した。次いで、前記粘着剤層を酢酸エチル中に約23℃下で7日間浸漬し、その後、前記粘着剤層を取り出し、130℃で2時間乾燥し、得られた粘着剤層のW(g)を測定した。このWおよびWを上記の式に当てはめることにより、ゲル分率(重量%)を求めた。
【0087】
所定のゲル分率に調整するためには、過酸化物やイソシアネート系架橋剤の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮する必要がある。
【0088】
架橋処理温度や架橋処理時間の調整は、たとえば、粘着剤組成物に含まれる過酸化物の分解量は50重量%以上になるように設定することが好ましく、60重量%以上になるように設定することがより好ましく、70重量%以上になるように設定することがさらに好ましい。過酸化物の分解量が50重量%より少ないと、粘着剤組成物中に残存する過酸化物の量が多くなり、架橋処理後も経時での架橋反応が起こる場合などがあり、好ましくない。
【0089】
より具体的には、たとえば、架橋処理温度が1分間半減期温度では、1分間で過酸化物の分解量は50重量%であり、2分間で過酸化物の分解量は75重量%であり、1分間以上の架橋処理時間が必要となる。また、たとえば、架橋処理温度における過酸化物の半減期(半減時間)が30秒であれば、30秒以上の架橋処理時間が必要となり、また、たとえば、架橋処理温度における過酸化物の半減期(半減時間)が5分であれば、5分間以上の架橋処理時間が必要となる。
【0090】
このように、使用する過酸化物によって架橋処理温度や架橋処理時間は、過酸化物が一次比例すると仮定して半減期(半減時間)から理論計算により算出することが可能であり、添加量を適宜調節することができる。一方、より高温にするほど、副反応が生じる可能性が高くなることから、架橋処理温度は170℃以下であることが好ましい。
【0091】
また、かかる架橋処理は、粘着剤層の乾燥工程時の温度で行ってもよいし、乾燥工程後に別途架橋処理工程を設けて行ってもよい。
【0092】
また、架橋処理時間に関しては、生産性や作業性を考慮して設定することができるが、通常0.2〜20分間程度であり、0.5〜10分間程度であることが好ましい。
【0093】
本発明における粘着剤組成物は、上記の架橋剤と過酸化物にて架橋することにより、これらの特性が塗布、乾燥、架橋、転写の工程を経た後にエージングなどを必要とせず、打ち抜き加工やスリット加工が速やかに行えるという、優れた生産性、ならびに着色もなく透明性に優れた粘着剤層となる。
【0094】
かかる理由については明確ではないが、以下のように推測している。かかる過酸化物架橋は、まず過酸化物から発生したラジカル(活性種)により、ポリマー骨格の水素引き抜き反応が生じてポリマー骨格にラジカルが発生し、それらポリマー骨格上のラジカルがカップリング等して架橋を形成し、ポリマー骨格全体が架橋構造に取り込まれ、粘着剤全体が均一に架橋されることとなる。その結果、架橋処理後速やかに打ち抜き加工などの加工処理を行っても、切断刃に粘着剤が付着したり、加工後の糊はみだしがないなどの性能が発揮でき、かつ所定の架橋処理することで、経時での架橋反応が起こらないので特性が安定化すると推定している。
【0095】
本発明の粘着剤組成物にはガラス板への接着力を上げる目的でシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤としては、公知のものを特に制限なく適宜用いることができる。
【0096】
具体的には、たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのインシアネート基含有シランカップリング剤などがあげられる。このようなシランカップリング剤を使用することは、耐久性の向上に好ましい。
【0097】
前記シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記シランカップリング剤0.01〜1重量部含有してなることが好ましく、0.02〜0.6重量部含有してなることがより好ましく、0.05〜0.3重量部含有してなることがさらに好ましい。0.01重量部未満では、耐久性に劣る場合があり、一方、1重量部を越えると、曲面接着性が低下する場合がある。
【0098】
さらに本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。
【0099】
一方、本発明の粘着剤層は、上記のような粘着剤組成物を架橋してなるものである。その際、粘着剤組成物の架橋は、粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を支持体などに転写することも可能である。
【0100】
支持体(またはセパレーターなど)上に粘着剤層を形成する方法は特に問わないが、たとえば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレーターなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を支持体に転写する方法、または支持体に前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を支持体に形成する方法などにより作製される。また、粘着剤組成物を支持体(またはセパレーターなど)上に塗布して粘着シート類を作製する際には、支持体(またはセパレーターなど)上に均一に塗布できるよう、該組成物中に重合溶剤以外の一種以上の溶媒(溶剤)を新たに加えてもよい。
【0101】
本発明の粘着シート類に用いられる支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルフィルムなどのプラスチック基材や、紙、不織布などの多孔質材料などがあげられる。
【0102】
プラスチック基材としては、シート状やフィルム状に形成できるものであれば特に限定されるものでなく、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミドなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどがあげられる。前記フィルムの厚みは、通常4〜100μm、好ましくは4〜25μm程度である。
【0103】
プラスチック基材には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの静電防止処理をすることもできる。
【0104】
本発明において用いられる溶媒としては、たとえば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロへキサノン、n−へキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、水などがあげられる。これらの溶剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0105】
また、本発明の粘着剤層の形成方法としては、粘着シート類の製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、たとえば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0106】
また、たとえば、支持体(シート)上の片面または両面に上述のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる層を形成する工程と、前記粘着剤組成物からなる層を加熱処理する工程とを含む製造方法を用いることによって本発明の粘着剤層を得ることができる。かかる製造方法を用いることにより、上述の優れた粘着特性、特に曲面接着性、ならびに耐久性、および長期の透明性・非着色性をバランスよく並立する粘着剤層を得ることができる。
【0107】
また、前記粘着剤層の表面にはコロナ処理、プラズマ処理などの易着処理をおこなってもよい。
【0108】
なお、本発明においては、前記粘着剤層の乾燥後の厚みが2〜500μm、好ましくは5〜100μm程度となるように作製する。
【0109】
このような表面に粘着剤が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(剥離シート、セパレーター、剥離ライナー)で粘着剤層を保護してもよい。
【0110】
セパレーター(剥離シート、剥離ライナー)の構成材料としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0111】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0112】
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。
【0113】
前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレーターの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0114】
なお、上記の製造方法において、剥離処理したシート(剥離シート、セパレーター、剥離ライナー)は、そのまま粘着シート類のセパレーターとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0115】
また、本発明の粘着シート類は、上記の構成を有する粘着剤層を支持体の片面または両面に形成してなるものである。本発明の粘着シート類は、上記の如き作用効果を奏する粘着剤層を備えるため、粘着剤層特性、特に曲面接着性に優れるとともに、耐久性、および長期の透明性・非着色性に優れたものとなる。
【実施例】
【0116】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0117】
<分子量の測定>
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
【0118】
分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
データ処理装置:東ソー社製、GPC−8020
カラム:
サンプルカラム;
東ソー社製、G7000HXL−H+GMHXL−H+GMHXL
カラムサイズ;各7.8mmφ×30cm(計90cm)
流量:0.8ml/min
注入試料濃度:約0.1重量%
注入量:100μl
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折計(RI)
なお、分子量はポリスチレン換算により算出した。
【0119】
<過酸化物分解量の測定>
熱分解処理後の過酸化物分解量は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定した。
【0120】
分解処理前後の粘着剤組成物をそれぞれ約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置した。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、分解処理前後の過酸化物量の減少を過酸化物分解量とした。
【0121】
装置:東ソー社製、HPL CCPM/UV8000
カラム:
サンプルカラム;MACHEREY−NAGEL社製、NUCLEOSIL 7C 18(4.6mmφ×250mm)
流量:1.0ml/min
カラム圧力:41kg/cm
カラム温度:40℃
溶離液:水/アセトニトリル=30/70
注入量:10μl
注入試料濃度:0.01重量%
検出器:UV検出器(230nm)
【0122】
<ゲル分率の測定>
各実施例・比較例で作製した粘着剤層をWg(約0.1g)取り出し、酢酸エチルに室温(約25℃)下で1週間浸漬した。その後、浸漬処理した粘着剤層(不溶分)を酢酸エチル中から取り出し、130℃で2時間乾燥後の重量Wgを測定し、(W/W)×100として計算される値をゲル分率(重量%)とした。
【0123】
<接着力の測定>
作製した両面粘着テープをポリエステルフィルム(厚み:38μm)に貼り付けて裏打ちフィルムとし、縦幅20mm×横幅100mmのサイズに切断し、被着体としてサンドペーパー(#280)でサンディングしたステンレス板に2kgのロール1往復で貼り付け、23℃×50%RHで20分間保存し、評価用サンプルを得た。
【0124】
上記評価用サンプルを万能引張試験機にて剥離速度300mm/分剥離角度180°で剥離したときの接着力(N/20mm)を測定した。測定は23℃×50%RHの環境下で行った。
【0125】
<曲面接着性の測定>
作製した両面粘着テープをアルミニウム板(10mm×90mm、厚み:0.5mm)に貼り付けた後、直径300mmのアクリル円柱に貼り付け、アルミニウム板が元に戻る力を両面粘着テープがどの程度緩和できるのかについて測定・評価した。評価基準は以下のとおりである。
円柱から浮いた距離が1mm未満であった場合:○
円柱から浮いた距離が1mm以上であった場合:×
【0126】
<耐久性の評価>
作製した両面粘着テープをアルミニウム板(10mm×90mm、厚み:0.5mm)に貼り付けた後、直径300mmのアクリル円柱に貼り付け、100℃の雰囲気下で300時間保存してから、室温(約25℃)に戻し、評価用サンプルを得た。
【0127】
上記評価用サンプルの曲面接着性を測定・評価した。評価基準は以下のとおりである。
円柱から浮いた距離が1mm未満であった場合:○
円柱から浮いた距離が1mm以上であった場合:×
【0128】
<着色性の評価>
作製した粘着剤層(厚さ:50μm)を3層積層して厚さ150μmの粘着剤層を作製した。この粘着剤層を縦幅50mm×横幅100mmのサイズにカットし、加熱処理前の評価用サンプルとした。また、粘着剤層の両面にシリコーン処理しポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合せた状態で、110℃で100時間加熱処理を行った。その後、室温(約25℃)に戻し、加熱処理後の評価用サンプルとした。
【0129】
上記粘着剤層のみの評価用サンプルの色差を瞬間マルチ測光計(大塚電子社製、MCPD3000、標準光源:CIE−D65、視野角:2°)により測定し、加熱処理前後の評価用サンプルを用いて着色性の評価をおこなった。なお、色差の算出方法および着色性の評価基準は以下のとおりである。
【0130】
色差はΔEabで表される値とし、
ΔEab=〔(L−L+(a−a+(b−b1/2
により算出した。
ここで、L、a、bはCIE 1976表色系で定義される値をいい、
、a、bは、それぞれ110℃で100時間加熱処理後の評価用サンプルのL、a、bであり、
、a、bは、それぞれ110℃で100時間加熱処理前の評価用サンプルのL、a、bである。
【0131】
また、色差および着色性の評価基準は以下のとおりである。
色差(ΔEab)が1.5未満であった場合:○
色差(ΔEab)が1.5〜2.0であった場合:△
色差(ΔEab)が2.0を超えた場合:×
【0132】
<(メタ)アクリル系ポリマーの調製>
〔アクリル系ポリマー(A)〕
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート45重量部、ブチルアクリレート50重量部、アクリル酸5重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.2重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、酢酸エチル233重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って15時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(A)溶液を調製した。上記アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は92万であった。
【0133】
〔アクリル系ポリマー(B)〕
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート69重量部、ブチルアクリレート30重量部、アクリル酸1重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.3重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、酢酸エチル233重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って15時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(B)溶液を調製した。上記アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量は87万であった。
【0134】
〔アクリル系ポリマー(C)〕
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた反応容器に、ブチルアクリレート80重量部、エチルアクリレート15重量部、アクリル酸5重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.2重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部、酢酸エチル233重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って15時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(C)溶液を調製した。上記アクリル系ポリマー(C)の重量平均分子量は110万であった。また、残存過酸化物の定量をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)により行ったところ、0.06重量部残存していた。
【0135】
〔参考例1〕
(粘着剤溶液の調製)
上記アクリル系ポリマー(A)溶液の固形分100重量部に対して、架橋剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)0.8重量部、およびジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)0.1重量部を加えて均一に混合撹拌し、アクリル系粘着剤溶液(1)を調製した。
【0136】
(粘着剤層の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(1)を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、140℃で3分間(理論計算により算出される過酸化物の分解量は約99重量%)加熱して、乾燥後の厚さが50μmの粘着剤層を形成した。なお、上記粘着剤層のゲル分率は65重量%であった。
【0137】
(両面粘着テープの作製)
次いで、不織布(坪量14g/m)の両面に上記粘着剤層を転写し、両面粘着テープを作製した。
【0138】
〔実施例1〕
(粘着剤溶液の調製)
上記トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物0.8重量部に代えて、架橋剤としてイソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井武田ケミカル社製、タケネート D−140N)0.6重量部を用いたこと以外は、参考例1と同様の方法によりアクリル系粘着剤溶液(2)を調製した。
【0139】
(粘着剤層および両面粘着テープの作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(1)に代えて、上記アクリル系粘着剤溶液(2)を用いたこと以外は、参考例1と同様の方法により粘着剤層および両面粘着テープを作製した。なお、上記粘着剤層のゲル分率は63重量%であった。
【0140】
〔実施例2〕
(粘着剤溶液の調製)
上記アクリル系ポリマー(B)溶液の固形分100重量部に対して、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環3量体(日本ポリウレタン工業社製、コロネートHX)0.8重量部、およびジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)0.2重量部を加えて均一に混合撹拌し、アクリル系粘着剤溶液(3)を調製した。
【0141】
(粘着剤層の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(3)を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、140℃で3分間(理論計算により算出される過酸化物の分解量は約99重量%)加熱して、乾燥後の厚さが50μmの粘着剤層を形成した。なお、上記粘着剤層のゲル分率は71重量%であった。
【0142】
(両面粘着テープの作製)
次いで、不織布(坪量14g/m)の両面に上記粘着剤層を転写し、両面粘着テープを作製した。
【0143】
〔実施例3〕
(粘着剤溶液の調製)
上記ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)0.2重量部に代えて、架橋剤としてジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)0.2重量部を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法によりアクリル系粘着剤溶液(4)を調製した。
【0144】
(粘着剤層の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(4)を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、130℃で3分間(理論計算により算出される過酸化物の分解量はほぼ100重量%)加熱して、乾燥後の厚さが50μmの粘着剤層を形成した。なお、上記粘着剤層のゲル分率は75重量%であった。
【0145】
(両面粘着テープの作製)
次いで、不織布(坪量14g/m)の両面に上記粘着剤層を転写し、両面粘着テープを作製した。
【0146】
〔実施例4〕
(粘着剤溶液の調製)
上記アクリル系ポリマー(C)溶液の固形分100重量部に対して、架橋剤としてイソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井武田ケミカル社製、タケネート O−140N)0.6重量部、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)0.14重量部を加えて均一に混合撹拌し、アクリル系粘着剤溶液(5)を調製した。
【0147】
(粘着剤層の作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(5)を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、140℃で3分間(理論計算により算出される過酸化物の分解量は約99重量%)加熱して、乾燥後の厚さが50μmの粘着剤層を形成した。なお、上記粘着剤層のゲル分率は70重量%であった。
【0148】
(両面粘着テープの作製)
次いで、不織布(坪量14g/m)の両面に上記粘着剤層を転写し、両面粘着テープを作製した。
【0149】
〔比較例1〕
(粘着剤溶液の調製)
上記トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物0.8重量部を用いなかったこと、および上記ジベンゾイルパーオキシドの使用量を0.25重量部に変更して用いたこと以外は、参考例1と同様の方法によりアクリル系粘着剤溶液(6)を調製した。
【0150】
(粘着剤層および両面粘着テープの作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(1)に代えて、上記アクリル系粘着剤溶液(6)を用いたこと以外は、参考例1と同様の方法により粘着剤層および両面粘着テープを作製した。なお、上記粘着剤層のゲル分率は67重量%であった。
【0151】
〔比較例2〕
(粘着剤溶液の調製)
上記トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の使用量を2.5重量部に変更して用いたこと、および上記ジベンゾイルパーオキシドを用いなかったこと以外は、参考例1と同様の方法によりアクリル系粘着剤溶液(7)を調製した。
【0152】
(粘着剤層および両面粘着テープの作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(1)に代えて、上記アクリル系粘着剤溶液(7)を用いたこと以外は、参考例1と同様の方法により粘着剤層および両面粘着テープを作製した。なお、上記粘着剤層のゲル分率は63重量%であった。
【0153】
〔比較例3〕
(粘着剤溶液の調製)
上記トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の使用量を0.3重量部に変更して用いたこと、および上記ジベンゾイルパーオキシドの使用量を0.01重量部に変更して用いたこと以外は、参考例1と同様の方法によりアクリル系粘着剤溶液(8)を調製した。
【0154】
(粘着剤層および両面粘着テープの作製)
上記アクリル系粘着剤溶液(1)に代えて、上記アクリル系粘着剤溶液(8)を用いたこと以外は、参考例1と同様の方法により粘着剤層および両面粘着テープを作製した。なお、上記粘着剤層のゲル分率は31重量%であった。
【0155】
上記方法に従い、作製した両面粘着テープの接着力の測定、ならびに曲面接着性、耐久性、および着色性の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0156】
【表1】

【0157】
上記表1の結果より、本発明によって作製された両面粘着テープを用いた場合(実施例1〜4)、いずれの実施例においても、曲面接着性に優れていることがわかる。また、長期の高温高湿処理後の耐久性を有し、粘着剤層の着色もみられないことが明らかとなった。また、参考例1では実施例に比べて着色性が若干劣るものの、比較例に比べて曲面接着性および耐久性をバランスよく並立でき、使用用途によれば問題なく使用できるものであった。
【0158】
これに対して、本発明の構成を満たさない両面粘着テープを用いた場合(比較例1〜3)、いずれの比較例においても、高温高湿処理後の耐久性、着色性および曲面接着性を並立することができない結果となり、粘着シート類には適さないことが明らかとなった。
【0159】
以上により、本発明の粘着シート類は、優れた粘着特性を発揮し、特に曲面接着性に優れるとともに、長期保存や加熱状態、高温処理においても透明性や耐候性にも優れたものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー単位として、一般式CH=C(R)COOR(ただし、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル系モノマー50〜99.45重量%、不飽和カルボン酸0.5〜15重量%、およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー0.05〜5重量%含有する(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、
イソシアネート系架橋剤0.02〜2重量部、および過酸化物0.02〜2重量部含有してなることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート系架橋剤が、脂肪族および/または脂環族イソシアネート系架橋剤である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粘着剤組成物を架橋してなることを特徴とする粘着剤層。
【請求項4】
前記粘着剤層のゲル分率が50〜90重量%である請求項3に記載の粘着剤層。
【請求項5】
支持体の片面または両面に請求項1または2に記載の粘着剤組成物からなる層を形成する工程と、前記粘着剤組成物からなる層を過酸化物架橋処理する工程とを含む粘着剤層の製造方法。
【請求項6】
前記粘着剤層のゲル分率が50〜90重量%である請求項5に記載の粘着剤層の製造方法。
【請求項7】
請求項3または4に記載の粘着剤層を支持体の片面または両面に形成してなることを特徴とする粘着シート類。

【公開番号】特開2006−274151(P2006−274151A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98103(P2005−98103)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】