説明

粘着剤組成物およびプラズマディスプレイ用複合フィルタ

【課題】PDPのガラス基板と複合フィルタとを貼着する際に用いられる粘着剤であって、粘着力に優れるとともに、糊残りがなくリワーク性にも優れる粘着剤を提供する。
【解決手段】プラズマディスプレイのパネル前面に配置されるガラス基板と、前記ガラス基板の前面に設けられる複合フィルタとを貼着するための粘着剤組成物であって、粘着剤のガラス基板に対する剥離強度が1.0〜15.0N/25mmであり、かつ、粘着剤の破断点応力が0.15〜3.0MPaであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイのパネル前面に配置されるガラス基板と、ガラス基板の前面に設けられる複合フィルタとを貼着するための粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビやパーソナルコンピュータのモニター等の画像表示装置(ディスプレイ装置ともいう)として、例えば、陰極線管(CRT)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、プラズマディスプレイ装置(PDP)、電場発光(EL)ディスプレイ装置等が知られている。これらのディスプレイ装置のうち、大画面ディスプレイ装置の分野で注目されているプラズマディスプレイ装置は、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、プラズマディスプレイ装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの前面側(観察者側)に、漏洩する電磁波を遮蔽するためのフィルム状の電磁波遮蔽用シートを設けるのが一般的である。
【0003】
また、ディスプレイ前面より発生する波長800〜1,100nmの近赤外線も、他のVTRなどの機器を誤作動させるので、遮蔽する必要がある。さらに、画像表示装置から発生する特定波長の不要な光を遮蔽したり、画像表示装置に必要とされる各種機能を付与したりする機能が求められる場合がある。そのため、近年では、電磁波遮蔽用シートと、近赤外線吸収フィルタと、反射防止フィルタ等の複数の光学フィルタとを積層して、プラズマ表示装置から発生する不要な電磁波および特定波長の光を遮蔽し、かつ表示装置に必要とされる各種機能を付与することができる、板ないしシート状の複合フィルタをプラズマディスプレイパネルの観測者側に設けることが提案されている(特開2007−243103号公報等)。
【0004】
プラズマディスプレイパネルの前面板として設けられる複合フィルタは、プラズマ表示装置のパネル本体の前面ガラス基板に、粘着剤を塗布または粘着シートを設けた複合パネルを貼着することにより、前面ガラス基板と複合フィルタとが固定される。粘着剤ないし粘着シートは、当然のことながら、複合フィルタがガラス基板から剥がれないように、強固な粘着性を有している必要がある。
【0005】
近年、プラズマディスプレイパネルの大型化や高精細化に伴い、プラズマディスプレイパネルのガラス基板と複合フィルタとの貼り合わせの位置精度が高まっており、位置ずれ等は発生した場合には、複合フィルタを剥離して、再度の張り直しが行われることがある。この場合、使用する粘着剤によっては、複合フィルタ側の粘着剤がガラス基板側に残留する所謂「糊残り」が発生することがあり、糊残りしたガラス基板を再利用できないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−243103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、粘着剤の破断点応力および剥離強度に着目し、破断点応力と剥離強度とが特定の範囲内にあれば、粘着力に優れる一方、糊残りがなく、ガラス基板の再利用性(以下、リワーク性ともいう)にも優れる粘着剤を実現できる、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0008】
したがって、本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、単にPDPと言う場合がある)のガラス基板と複合フィルタとを貼着する際に用いられる粘着剤であって、粘着力に優れる一方、糊残りがなくリワーク性にも優れる粘着剤を提供するものである。
【0009】
また、本発明の別の目的は、上記した粘着剤を一方の表面に塗布した、プラズマディスプレイ用複合フィルタ、およびその複合フィルタを備えたプラズマディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による粘着剤組成物は、プラズマディスプレイのパネル前面に配置されるガラス基板と、前記ガラス基板の前面に設けられる複合フィルタとを貼着するための粘着剤組成物であって、
ガラス基板に対する剥離強度が1.0〜15.0N/25mmであり、かつ、破断点応力が0.15〜3.0MPaであることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の態様においては、前記剥離強度をP(N/25mm)、前記破断点応力をS(MPa)とした場合に、S/Pが0.07〜0.26(2.5×10・m−1)の関係を満足することが好ましい。
【0012】
また、本発明の態様においては、前記ガラス基板が、厚み1〜5mmを有し、かつ板厚偏差が15μm以下のソーダライムガラスまたは高歪点ガラスであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の態様においては、粘着剤がアクリル樹脂系粘着剤であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の態様においては、25℃における貯蔵弾性率が1.3×10Pa〜4.0×10Paであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の態様においては、25℃における損失弾性率が7.9×10Pa〜1.8×10Paであることが好ましい。
【0016】
また、本発明の態様においては、近赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、紫外線吸収剤および色調調整色素からなる群から選択される少なくとも1種以上の吸収剤を含んでなることが好ましい。
【0017】
本発明の別の態様においては、上記粘着剤組成物からなる粘着層が一方の面に設けられた複合フィルタも提供される。
【0018】
また、本発明による複合フィルタは、電磁波遮蔽機能、近赤外線遮蔽機能、ネオン光遮蔽機能、紫外線遮蔽機能、反射防止機能、防眩機能、耐擦傷機能、防汚機能、および帯電防止機能からなる群から選択される少なくとも1種以上の機能を備えていることが好ましい。
【0019】
本発明の別の態様においては、上記複合フィルタがガラス基板の前面に貼着されてなる、プラズマディスプレイも提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガラス基板に対する剥離強度が1.0〜15.0N/25mmであり、かつ、破断点応力が0.15〜3.0MPaである粘着剤組成物とすることにより、粘着力に優れるとともに、糊残りがなくリワーク性にも優れる粘着剤を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による複合フィルタの一実施形態を示した概略断面図である。
【図2】本発明による複合フィルタの他の実施形態を示した概略断面図である。
【図3】本発明による複合フィルタの他の実施形態を示した概略断面図である。
【図4】本発明による複合フィルタをPDP用ガラス基板に貼着したときの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<粘着剤組成物>
本発明による粘着剤組成物は、プラズマディスプレイのパネル前面に配置されるガラス基板と、前記ガラス基板の前面に設けられる複合フィルタとを貼着するためのものであって、ガラス基板に対する剥離強度が1.0〜15.0N/25mmであり、かつ、破断点応力が0.15〜3.0MPaである。剥離強度と破断点応力が上記範囲内にあることにより、粘着層を介してガラス基板と複合フィルタとを強固に貼り合わせることができるとともに、貼り合わせ後にガラス基板から複合フィルタを剥離する場合であっても、粘着剤がガラス基板に残留しないリワーク性に優れるものとなる。この理由は定かではないが以下のように考えられる。すなわち、剥離強度が1.0N/25mm以下である場合、粘着剤の破断点応力に関係なく、ガラス基板と複合フィルタとを貼着する力が弱すぎて、貼着後のPDP使用時に複合フィルタが剥がれてしまう場合がある。一方、剥離強度が15.0N/25mmを超えると、貼着力は強いものの、複合フィルタをガラス基板から剥離する際に、粘着層がガラス基板から剥離される前に、粘着層の中で破断が生じ、ガラス基板に粘着層の一部が残留(糊残り)してしまう。そして、粘着剤組成物の破断点応力が0.15MPa未満であると、剥離の際に粘着層が途中で破断し易くなる。一方、破断点応力が3.0MPaを超えると、糊残りは抑制されるものの、粘着層を打ち抜き加工等する時に負荷がかかり、加工適性が悪化する。なお、剥離強度とは、以下のような測定方法により測定された値を意味する。厚さ100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に粘着剤組成物を25g/m(乾燥時)の膜厚となるように塗工した物を、長さ150mm、幅25mmに切り抜き、これをその粘着剤組成物の塗工層が硝子板側を向くようにして、表面を脱脂した厚さ10mmの硝子板に貼り、これを引張り試験機を用いて、硝子板と2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとを両者の角度が180°となる方向に、引張速度300mm/分で、20〜25℃の雰囲気中で引っ張り、剥離した際の抗張力を意味する。また、破断応力とは、上記の粘着剤組成物の塗工層を2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離して塗工層のみの状態にし、これをロール状に丸めたものを、引張り試験機のチャックで把持し、引張速度100mm/分で、20〜25℃の雰囲気中で引張試験した時の破断点応力を意味する。なお、使用するガラス基板としては、PDP用のガラス基板、特に、厚み1〜5mmを有し、かつ板厚偏差が15μm以下のソーダライムガラスまたは高歪点ガラスを用いることが好ましい。
【0023】
本発明においては、粘着剤組成物が、剥離強度をP(N/25mm)、前記破断点応力をS(MPa)とした場合に、S/Pが0.07〜0.26(2.5×10・m−1)の関係を満足するものであることが好ましい。上記の関係を満足することにより、より一層、貼着力が強力でかつリワーク性にも優れる粘着剤組成物を実現できる。
【0024】
また、本発明においては、粘着剤組成物の25℃における貯蔵弾性率が1.3×10Pa〜4.0×10Paであることが好ましく、2.3×10Pa〜3.3×10Paであることがより好ましい。貯蔵弾性率が上記の範囲にあることにより、より一層、粘着力に優れるとともに、糊残りがなくリワーク性にも優れる粘着剤を実現できる。また、25℃における損失弾性率が7.9×10Pa〜1.8×10Paであることが好ましく、4.0×10Pa〜1.1×10Paであることがより好ましい。損失弾性率が上記の範囲にあることにより、より一層、粘着力に優れるとともに、糊残りがなくリワーク性にも優れる粘着剤を実現できる。なお、本発明における貯蔵弾性率E’、損失弾性率E’’とは、動的機械特性のひとつであり、JIS−K−7244−1に記載の通り、ねじり変形モードによって得られる値である。試料に時間によって変化(振動)する歪みまたは応力を与え、それによって発生する応力または歪みを検出することにより、試料の力学的な性質を測定する方法で得られる値のうち試料の内部に貯蔵された値のことを貯蔵弾性率E’、内部摩擦によって損失した値でのことを損失弾性率E’’と呼ぶ。また、損失正接tanδは損失弾性率E’’/貯蔵弾性率E’の比である。
【0025】
上記した範囲の剥離強度および破断点応力を有する粘着剤組成物としては、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル樹脂系、ポリビニルエーテル樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系等が挙げられる。合成ゴム系の具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリイソブチレンゴム、イソブチレン− イソプレンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体が挙げられる。シリコーン樹脂系の具体例としては、ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらの粘着剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0026】
アクリル系樹脂粘着剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含んで重合させたものである。炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体であるのが一般的である。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸をいう。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸sec−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ウンデシルおよび(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。 また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、通常は、アクリル系粘着剤中に30〜99.5質量部の割合で共重合されている。
【0027】
また、アクリル系樹脂粘着剤を形成するカルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸モノブチルおよびβ−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基を含有するモノマーを挙げることができる。
【0028】
アクリル系樹脂粘着剤には、上記の他に、アクリル系樹脂粘着剤の特性を損なわない範囲内で他の官能基を有するモノマーが共重合されていても良い。他の官能基を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルおよびアリルアルコール等の水酸基を含有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミドおよびN−エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を含有するモノマー;N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびジメチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基とメチロール基とを含有するモノマー;アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびビニルピリジン等のアミノ基を含有するモノマーのような官能基を有するモノマー; アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマーなどが挙げられる。この他にもフッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリルなどのほか、スチレンおよびメチルスチレンなどのビニル基含有芳香族化合物、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル化合物などを挙げることができる。
【0029】
アクリル系樹脂粘着剤には、上記のような他の官能基を有するモノマーの他に、他のエチレン性二重結合を有するモノマーを使用することができる。エチレン性二重結合を有するモノマーの例としては、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチルおよびフマル酸ジブチル等のα,β−不飽和二塩基酸のジエステル; 酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル;スチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができる。また、上記のようなエチレン性二重結合を有するモノマーの他に、エチレン性二重結合を2個以上有する化合物を併用することもできる。このような化合物の例としては、ジビニルベンゼン、ジアリルマレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレ-ト、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0030】
さらに、上記のようなモノマーの他に、アルコキシアルキル鎖を有するモノマー等を使用することができる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどを挙げることができる。
【0031】
粘着剤組成物としては、上記したアクリル系樹脂粘着剤の他、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの単独重合体であっても良い。例えば、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。 アクリル酸エステル単位2種以上を含む共重合体としては、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ3−フェニルオキシプロピル共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルと他の官能性単量体との共重合体としては、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−エチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル−スチレン共重合体が挙げられる。
【0032】
上記の粘着剤は市販のものを使用してもよく、例えば、SKダイン2094(綜研化学社製)、SKダイン2147(綜研化学株式会社製)、SKダイン1811L(綜研化学社製)、SKダイン1442(綜研化学社製)SKダイン1435(綜研化学株式会社製)、SKダイン1415(綜研化学株式会社製)、オリバインEG−655(東洋インキ社製)、オリバインBPS5896(東洋インキ社製)等(以上、商品名)を好適に使用することができる。
【0033】
また、上記した粘着剤には、硬化剤を併用してもよい。硬化剤を併用することにより架橋構造が形成され、より破断点応力の高い粘着剤組成物となる。硬化剤としては、種々のものを使用でき、例えば、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、アミン系硬化剤、金属キレート系硬化剤等が挙げられるが、これらのなかでもイソシアネート系硬化剤が好ましい。イソシアネート系硬化剤としては、トリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネートや脂環式イソシアネート等のイソシアネート化合物が挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、附加体、多量体の形で用いてもよい。これら硬化剤は市販のものを使用してもよく、例えば、E−5XM(綜研化学株式会社製)、E−5C(綜研化学株式会社製)、TD75(綜研化学株式会社製)、BXX5627(東洋インキ製造株式会社製)、X−301−422SK(サイデン化学株式会社製)等(以上、商品名)を好適に使用することができる。
【0034】
<複合フィルタ>
本発明による複合フィルタ1は、図1に示すように、上記した粘着剤組成物からなる粘着層2が、後記する電磁波遮蔽フィルタおよび/または光学フィルタからなる層3の一方の面に設けられたものであり、粘着層2を介して、PDPの前面ガラス基板9の表面に直接貼着されるものである。以下、複合フィルタを構成する各層について説明する。
【0035】
<粘着層>
複合フィルタ1を構成する粘着層2は上記した粘着剤組成物からなるものである。電磁波遮蔽フィルタ4および/または光学フィルタ5からなる層3の一方の表面に、上記した粘着剤組成物を塗工し、乾燥させることにより形成できる。塗工の際に、適宜、塗布性を考慮して粘着剤組成物を溶剤で希釈して流動性を高めてもよい。溶剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、トルエン等の炭化水素系溶剤や、アセトン等のケトン系溶剤等を用いることができる。また、塗工方法としては、ロールコート、グラビアロールコート、バーコート、カーテンフローコート、ダイコート、コンマコート、スプレーコート等の従来既知の塗工装置を採用することができる。
【0036】
本発明による複合フィルタ1は、PDP前面ガラス基板9に貼着されるものであるが、複合フィルタを製造後、PDP前面ガラス基板に貼着されるまでの間に搬送や保管されることもあるため、粘着層2には、図2に示されるように、粘着層2の表面をセパレーター6で保護してもよい。このセパレーター6は、複合フィルタ1をPDP前面ガラス基板の表面に貼着する際に剥離される。また、粘着層2だけでなく、複合フィルタ1の表面を保護するために、粘着層が設けられた面とは反対側の表面をセパレーター7で保護してもよい。このようなセパレーターとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、厚さ20〜100μm程度の樹脂シート、または坪量20〜100g/mの紙が用いられる。樹脂シートとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂シートや、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂シートが挙げられる。紙としては上質紙、パーチメント紙、グラシン紙、硫酸紙等で地合のできるだけ均一なものが用いられる。
【0037】
<電磁波遮蔽フィルタ/光学フィルタ>
PDP前面ガラス基板9に貼着される複合フィルタは、電磁波遮蔽機能、近赤外線遮蔽機能、ネオン光遮蔽機能、紫外線遮蔽機能、反射防止機能、防眩機能からなる群から選択される少なくとも1種以上のフィルタ機能、ならびに、必要に応じてさらに、耐擦傷機能、防汚機能、耐衝撃機能、抗菌機能、および帯電防止機能からなる群から選択される少なくとも1種以上のフィルタ以外の機能を備えるものである。本発明の好ましい実施形態としては、図1に示すように、電磁波遮蔽フィルタ4の導電性メッシュ層40上に、上記した粘着層2が設けられていることが好ましい。導電性メッシュ層41の表面が凹凸であるため、粘着層2を設けることにより平坦化されるため、電磁波遮蔽フィルタ4をPDPのガラス基板に直接貼着することができる。粘着層2は、導電性メッシュ層40の周縁部40Aのみを露出させるように設けられることが好ましい。導電性メッシュ層40の周縁部40Aに、粘着層2が設けられていない部分を設けることのより、接地用領域として使用することができる。
【0038】
複合フィルタ1は、図1に示すように、電磁波遮蔽フィルタ4の粘着層2が設けられる側とは反対側の面に、光学フィルタ5が積層されていることが好ましい。光学フィルタ5として、例えば、電磁波遮蔽フィルタ4側に、近赤外線吸収層50を設け、観測者側に紫外線吸収層51を設けることが好ましい。このような順で近赤外線吸収層50および紫外線吸収層51を設けることにより、外光(日光や照明光)からの紫外線による光学フィルタの劣化をより効果的に抑制することができる。
【0039】
紫外線吸収層51上(観測者側の面)には、さらに、反射防止膜52を設けてもよい。この反射防止膜52には、外光を反射する機能の他、防眩機能や耐擦傷機能を備える層を兼ねてもよく、また、図3に示すように、紫外線吸収層51自体が耐擦傷機能を備え、その紫外線吸収層51の下(PDP前面ガラス基板9側)に、反射防止膜52を設けてもよい。この場合、反射防止膜52は、防眩機能を備えていてもよい。
【0040】
電磁波遮蔽フィルタ4と光学フィルタ5とは、接着層8を介して積層されている。本発明の好ましい実施態様として、上記した粘着層2、接着層8または近赤外線吸収層50のいずれか少なくとも1層以上に、ネオン光吸収色素および/または色調調整色素を含有させて、ネオン光吸収層および/または色調調整層として機能させてもよい。以下、上記した各層ないしフィルタについて説明する。
【0041】
<電磁波遮蔽フィルタ>
電磁波遮蔽フィルタ4は、透明樹脂基材41と、その透明樹脂基材41の一方の面に設けられた導電性メッシュ層40とから構成される。透明樹脂基材41は、導電性メッシュ層40を補強するために設けられるものである。導電性メッシュ層40は、図1に示すように、PDPの画像表示領域に対応した領域であるメッシュ状領域40B(開口が設けられた領域)と、その周縁部に形成される開口を有さない周縁部40Aとからなる。この周縁部40Aは、接地用領域として、PDPに複合フィルタを貼り合わせた際にアースをとりやすいために設けられるものである。この周縁部40Aは、接地抵抗を下げるため、図1に示すように、開口部の無い非メッシュ状領域とすることが好ましいが、メッシュ状領域40Bと同様なメッシュ状の形態(図示せず)とすることもできる。
【0042】
導電性メッシュ層40は、透明樹脂基材41側の面に黒化層42を有している。導電性メッシュ層40と透明樹脂基材41との間には、導電性メッシュ層40を透明樹脂基材41に貼り付けるための接着層(図示せず)を有していても良い。また、導電性メッシュ層40には、黒化層42以外にも防錆層等の他の層(図示せず)を含んでいても良い。さらに、電磁波遮蔽用フィルタ4は、導電性メッシュ層40の表裏面上に、導電性を有しない層(図示せず)が積層されて形成されていても良い。導電性を有しない層としては、例えば、防錆層や黒化層等が挙げられる。防錆層や黒化層等であっても、導電性を有する限り、本発明において導電性メッシュ層に含まれる。導電体層の表裏面上にさらに積層された導電性を有しない層は、導電性メッシュ層と一体となって、メッシュ状領域や(非メッシュ状領域)接地用領域を形成する。
【0043】
透明樹脂基材41は、上記したようにある程度の機械的強度および光透過性を有している必要がある。例えば、このような樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸− イソフタル酸− エチレングリコール共重合体、テレフタル酸− シクロヘキサンジメタノール− エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6 などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン− アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0044】
透明樹脂基材は、上記した樹脂の単独であってもよく、複数種類の混合樹脂(ポリマーアロイを含む)であってもよい。また、単層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。また、樹脂基材は、上記した樹脂からなるフィルムないしシートを1軸延伸や2軸延伸したものが機械的強度の点でより好ましい。これらの観点から、上記した樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂シートが、透明性、耐熱性、コスト等の点で好ましく、より好ましくは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートが最適である。なお、透明樹脂基材の透明性は高いほどよいが、好ましくは可視光線透過率で80%以上の光透過性の良い2軸延伸ポリエチレンテレフタレートを好適に使用できる。
【0045】
透明樹脂基材中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。また、透明樹脂基材の厚さは、用途に応じて適宜決定できるが、通常12〜500μm程度であり、好ましくは50〜200μm 、より好ましくは、50〜125μmである。12μm未満の厚さとなると機械的強度が不足して反りや弛み、破断などが起こる場合があり、500μmを超える厚さとなると過剰性能でコスト高となる上、薄型化が難しくなる。
【0046】
透明樹脂基材は、適宜その表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの公知の易接着処理を行ってもよい。
【0047】
導電性メッシュ層40は、電磁波遮蔽機能を担う層であり、またそれ自体は不透明性であるが、メッシュ状の形状で開口部を設けることで、電磁波遮蔽性能と光透過性を両立させている層である。導電性メッシュ層は、金属箔等から形成されるが、導電性メッシュ層の透明樹脂基材と貼り合わせる側の面に、黒化処理によって黒化層を形成する。
【0048】
導電性メッシュ層は、一般的には金属箔のエッチングで形成した物が代表的であるが、これ以外のものであっても、材料および形成方法は特に限定されるものでは無く、従来公知の光透過性の電磁波シールドフィルタにおける各種導電性メッシュ層を適宜採用できる。例えば、導電性組成物からなるインキの印刷や金属パターン状めっき法等を利用して透明基材上に最初からメッシュ状の形状で導電性メッシュ層を形成したものや、最初は透明基材上に全面に、蒸着、スパッタ、めっき等の物理的/化学的形成手法を用いて導電体層を形成後、エッチング等でメッシュ状の形状にして導電性メッシュ層としたもの等であってもよい。
【0049】
エッチングによる形成された導電性メッシュ層は、透明樹脂基材に積層前の金属箔単体をエッチングでパターンニングしてメッシュ状の導電性メッシュ層とすることも可能である。この層単体の導電性メッシュ層は、接着剤等で透明樹脂基材上に積層される。これらのなかでも、機械的強度が弱い導電性メッシュ層の取扱が容易で且つ生産性にも優れ、また、市販の金属箔を利用できる等の点で、金属箔を接着剤で透明基材シートに積層した後、エッチングでメッシュ状に加工することが好ましい。この場合の接着剤としては、公知の接着剤を用いることができる。
【0050】
導電性メッシュ層を形成する導電性材料としては、導電性を有する物質であれば、特に制限は無く、通常は、金属、例えば、金、銀、白金、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム等が好ましく用いられる。これらの金属を、蒸着やめっき、あるいは金属箔ラミネート等の方法により導電性メッシュ層を形成することができる。金属は合金でも良く、金属層は単層でも多層でも良い。例えば、鉄の場合には、低炭素リムド鋼や低炭素アルミキルド鋼などの低炭素鋼、Ni−Fe合金、インバー合金等が好ましい。一方、金属が銅の場合は、金属材料は銅や銅合金となり、銅箔としては圧延銅箔や電解銅箔があるが、薄さおよびその均一性、黒化層との密着性等の点からは、電解銅箔が好ましい。導電性メッシュ層を導電性組成物(導電インキ)の印刷によって形成する場合は、前記の金属あるいは黒鉛からなる導電性材料を平均粒径0.1〜10μm程度の粒子として、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等のバインダ樹脂中に、50〜95質量%程度添加し、分散させる。
【0051】
導電性メッシュ層の厚さは、1〜50μm程度、好ましくは2〜15μmである。厚さがこれより薄くなり過ぎると電気抵抗上昇により十分な電磁波遮蔽機能が得難くなり、厚さがこれより厚くなり過ぎると高精細なメッシュ形状が得難くなり、メッシュ形状の均一性が低下する。
【0052】
導電性メッシュ層となる金属層の表裏面は、透明基材と接着積層させる為の透明接着剤層等の隣接層との密着性向上が必要な場合は当該面を粗面とすると良い。透明樹脂基材側と接着させる面を黒化処理するので、表面粗さは、導電性メッシュ層となる金属層の表面の輪郭曲線として粗さ曲線を採用した時に、輪郭曲線の十点平均粗さRzJIS(JIS B0601(1994年版))が0.5〜1.5μm程度であることが好ましい。
【0053】
黒化層42(ないし黒化処理面)は、導電性メッシュ層40の面の光反射を防ぐためのものであり、黒化処理で形成された黒化処理面により、導電性メッシュ層面での外光反射による透視画像の黒レベルの低下を防ぎ、また、透視画像の明室コントラストを向上させて、ディスプレイの画像の視認性を向上するものである。黒化層ないし黒化処理面は、導電性メッシュ層のライン部(線状部分)の全ての面に設けることが好ましいが、本発明では表裏両面のうち少なくとも透明樹脂基材と貼り合わせる側を黒化処理面とすることが好ましい。その理由は、この面側が観察者側であると共に外光入射側でもある為である。導電性メッシュ層の貼り合わせる側と反対側の表面や、側面(両側あるいは片側)がさらに黒化処理されていても良い。黒化層は、少なくとも観察側に設ければ良いが、ディスプレイ面側にも設ける場合には、ディスプレイから発生する迷光を抑えられるので、さらに画像の視認性が向上する。なお、導電メッシュ層40の向きは、図1とは逆に、画像観測者側(図1では、光学フィルタ5側)に導電メッシュ層40が位置する場合もある。この場合、黒化層ないし黒化処理面42が導電メッシュ層40の透明基材と反対側、すなわち画像観察者側に位置する(図示せず)ように設定する。
【0054】
黒化処理としては、導電性メッシュ層の表面を粗化するか、全可視光スペクトルに亘って光吸収性を付与する(黒化する)かにより行うことができる。具体的な黒化処理としては、導電性メッシュ層にメッキ等で黒化層を付加的に設ける他、エッチング等で表面から内部に向かって表面を構成する層自体を黒化層に変化させても良い。
【0055】
黒化層は、黒、濃灰色、茶褐色、紺色、臙脂色、深緑色等の暗色を呈し、密着性等の基本的物性を満足するものであれば良く、公知の黒化層を適宜採用し得る。従って、黒化層としては、金属等の無機材料、黒着色樹脂等の有機材料等を用いることができ、例えば無機材料としては、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物の金属化合物等の金属系の層として形成する。金属系の層の形成法としては、従来公知の各種黒化処理法を適宜採用できる。なかでも、めっき法による黒化処理は密着性、均一性、容易性等で好ましい。めっき法の材料は、例えば、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、モリブデン、スズ、クロム等の金属や金属化合物等を用いる。これらは、密着性、黒さ等の点でカドミウム等による場合よりも優れている。
【0056】
導電性メッシュ層が銅箔等、銅による場合、黒化層形成の為の黒化処理として好ましいめっき法として、銅からなる導電性メッシュ層(メッシュ状とする前に行うのであればその前の導電体層)を、硫酸、硫酸銅および硫酸コバルト等からなる電解液中で、陰極電解処理を行い、カチオン性粒子を付着させるカソーディック電着めっき法がある。この方法によれば、カチオン性粒子の付着で黒色と同時に粗面も得られる。カチオン性粒子としては、銅粒子、銅合金粒子を採用できる。銅合金粒子としては、銅− コバルト合金粒子が好ましく、さらにその平均粒子径は0.001〜1μmが好ましい。銅−コバルト合金粒子により、銅−コバルト合金粒子層からなる黒化層が得られる。カソーディック電着法では、付着させるカチオン性粒子の平均粒子径0.001〜1μmに揃えられる点でも好ましい。平均粒子径が上記範囲超過では、付着粒子の緻密さが低下し黒さの低下やムラが起こり、粒子脱落(粉落ち)が発生し易くなる。一方、平均粒子径が上記範囲未満でも、黒さが低下する。なお、カソーディック電着法は処理を高電流密度で行うことで、処理面がカソーディックとなり、還元性水素発生で活性化し、銅面とカチオン性粒子との密着性が著しく向上する。
【0057】
黒化層として、黒色クロム、黒色ニッケル、ニッケル合金等も好ましく、ニッケル合金としては、ニッケル−亜鉛合金、ニッケル−スズ合金、ニッケル−スズ−銅合金である。特に、ニッケル合金は黒色度合いと導電性が良い上、黒化層に防錆機能も付与でき(黒化層兼防錆層となる)、防錆層を省略することもできる。しかも、通常、黒化層の粒子は針状のために、外力で変形して外観が変化しやすいが、ニッケル合金による黒化層では粒子が変形し難く、後加工工程で外観が変化し難くい利点も得られる。なお、黒化層として、ニッケル合金の形成方法は、公知の電解または無電解メッキ法でよく、ニッケルメッキを行った後に、ニッケル合金を形成してもよい。
【0058】
導電性メッシュ層が銅の場合、これをアルカリ性溶液と反応させて酸化させ、酸化銅微粒子を表面に析出させる方法も有る。例えば、特開2002−9484号公報に記載のように、銅のメッシュ層を、ピロリン酸銅水溶液、ピロリン酸カリウム水溶液、およびアンモニア水溶液との混合液に浸漬する方法等が挙げられる。
【0059】
黒化層の好ましい黒濃度は0.6以上である。なお、黒濃度の測定方法は、COLORCONTROLSYSTEMのGRETAGSPM100−11(キモト社製、商品名) を用いて、観察視野角10度、観察光源D50、照明タイプとして濃度標準ANSITに設定し、白色キャリブレイション後に、試験片を測定する。また、黒化層の光線反射率としては5%以下が好ましい。光線反射率は、JIS−K7105に準拠して、ヘイズメーターHM150(村上色彩社製、商品名)を用いて測定する。また、反射率の測定に換えて、色差計により反射のY値で表わしてもよく、この際にはY値として10以下が好ましい。
【0060】
導電性メッシュ層としては、必要に応じ適宜その他の層を形成したり、処理を施しても良い。例えば、錆びに対する耐久性が不十分な場合は、防錆層を設けると良い。防錆層は、黒化層と同様に、メッシュ形状を維持する限り、導電性メッシュ層に含まれるものとする。
【0061】
防錆層は、それで被覆する導電性メッシュ層よりも錆び難いものであれば、金属等の無機材料、樹脂等の有機材料、或いはこれらの組合せ等、特に限定されるものではない。また場合によっては、黒化層をも防錆層で被覆することで、黒化層の粒子の脱落や変形を防止し、黒化層の黒さを高めることもできる。従って、本発明においては、黒化層の脱落や変質防止の点から、透明樹脂基材と貼り合わせる側の黒化層上に防錆層が設けられることが好ましい。
【0062】
防錆層は、従来公知のものを適宜採用すれば良く、例えば、クロム、亜鉛、ニッケル、スズ、銅等の金属乃至は合金、或いは金属酸化物の金属化合物の層等である。これらは、公知のめっき法等で形成できる。ここで、防錆効果および密着性等の点で好ましい防錆層の一例を示せば、亜鉛めっきした後、クロメート処理して得られるクロム化合物層が、挙げられる。また、防錆層中には、エッチングや酸洗浄時の耐酸性向上の為に、シランカップリング剤等のケイ素化合物を含有させることもできる。防錆層の厚さは、通常0.001〜2μm程度、好ましくは0.01〜1μmである。
【0063】
導電性メッシュ層のメッシュ状としての形状は、任意で特に限定されないが、メッシュの開口部の形状として、正方形が代表的である。開口部の平面視形状は、例えば、正三角形等の三角形、正方形、長方形、菱形、台形等の四角形、六角形等の多角形、円形、楕円形などである。メッシュはこれら形状からなる複数の開口部を有し、開口部間は通常幅均一のライン状のライン部となり、通常は、開口部およびライン部は全面で同一形状同一サイズである。具体的サイズを例示すれば、開口率およびメッシュの非視認性の点で、開口部間のライン部の幅は5〜100μm程度が良い。また、開口部サイズは、ライン間隔またはラインピッチからライン幅を引いたものであるが、ライン間隔またはラインピッチが100μm〜500μmで、かつ開口率(開口部の面積の合計/メッシュ部の全面積)を60〜97% とするのが、光透過性と電磁波遮蔽性との両立性の点で好ましい。
【0064】
導電性メッシュ層の周縁部40Aの領域は、画像に対峙するメッシュ状領域40Bの外に位置するため、光透過性が面として必要でない領域であり、通常は接地用領域として利用される。接地抵抗を減らす観点からは、周縁部は非メッシュ状領域とすることが好ましい。金属泊をフォトエッチング加工してメッシュ化する場合は、非メッシュ部の形成が容易なため、通常、周縁部は非メッシュ状領域とする。また、導電性組成物の印刷でメッシュを形成する場合は、印刷方式、導電性組成物の厚みの如何によっては非メッシュ状領域の形成が困難な場合もあり得る。その場合は、周縁部もメッシュ状とする。周縁部40Aの具体的な大きさは使われ方によるが、額縁状でアース部や外枠とする場合、額縁の幅は15〜100mm程度であり、なかでも30〜40mmとするのが一般的である。
【0065】
上記した透明樹脂基材と導電性メッシュ層とを接着するのに、接着剤層(図示せず)を介してもよい。接着剤層も耐エッチング性を有することが好ましく、このような接着剤としては、具体的には、ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、ポリエーテルウレタン等のポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル− 酢酸ビニル共重合体、エチレン− 酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、接着剤は、紫外線硬化型であってもよく、また熱硬化型であってもよい。特に、透明基材との密着性の観点からアクリル樹脂もしくはポリエステル樹脂が好ましい。
【0066】
接着剤層の膜厚は、1μm〜50μm、好ましくは5μm〜20μmである。これにより、透明樹脂基材と導電性メッシュ層とを強固に接着することができ、また、導電性メッシュ層を形成するエッチングの際に透明樹脂基材が塩化第2鉄水溶液等のエッチング液の影響を受けること等を防ぐことができる。
【0067】
<光学フィルタ>
本発明による複合フィルタ1は、図1に示すように、電磁波遮蔽フィルタ4上(観測者側)に、光学フィルタ5を備えていてもよい。光学フィルタ5としては、反射防止機能、防眩機能、近赤外線吸収、紫外線吸収機能等の光学フィルタ機能を有する層、ならびに、必要に応じてさらに、耐擦傷機能、防汚機能、帯電防止機能、耐衝撃機能、抗菌機能等の光学フィルタ以外の機能を有する層のなかから選択された1または2以上の層を少なくともすることが好ましい。また、光学フィルタ5においては、近赤外線吸収層50よりも観察側に配置される層51、52の中に紫外線吸収剤を含有することが、近赤外線吸収層中の近赤外線吸収色素の劣化をより効果的に防止する点から好ましい。
【0068】
光学フィルタ5は、個々の機能層ごとに透明樹脂基材を有しており、透明樹脂基材を有する個々の光学フィルタ機能層が複数貼り合わされた積層体とすることもできる。ただし、総厚および製造原価の低減のため、一つの透明樹脂基材の両面に各種機能層が塗工等の湿式成膜法やスパッタ等の乾式成膜法の手段により積層されているものが好ましい。透明樹脂基材は、各種機能層を形成するための支持体として機能するものであるが、後記するように、この透明樹脂基材中に、紫外線吸収剤等を含有させて、紫外線吸収層51を兼ねる層としてもよい。透明樹脂基材としては、電磁波遮蔽フィルタを構成する透明樹脂基材と同様のものを使用することができる。
【0069】
光学フィルタの総膜厚は、実質的に基材を1つとすることにより薄くすることができるが、50〜500μmの範囲、好ましくは100〜200μmの範囲ある。このような範囲にすることにより、連続帯状として最小直径が15センチ以下のロール状に巻くことが可能となるため、連続帯状の光学フィルタと連続帯状の電磁波遮蔽シートを張り合わせることが可能になり、生産効率が向上する。
【0070】
光学フィルタの層構成としては、以下の態様が挙げられる。「/ 」はその左右の層が積層一体化されている事を示す。
観測者側から順に、
(1)反射防止層/紫外線吸収層を兼用した透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(2)反射防止層/耐擦傷機能層/紫外線吸収層を兼用した透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(3)防眩層/紫外線吸収層を兼用した透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(4)防眩層/耐擦傷機能層/紫外線吸収層を兼用した透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(5)紫外線吸収層を兼用した反射防止層/透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(6)紫外線吸収層を兼用した反射防止層/耐擦傷機能層/透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(7)紫外線吸収層を兼用した防眩層/透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(8)紫外線吸収層を兼用した防眩層/耐擦傷機能層/透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(9)反射防止層/紫外線吸収層/透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(10)反射防止層/紫外線吸収層を兼用した耐擦傷機能層/透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(11)反射防止層/紫外線吸収層/耐擦傷機能層/透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(12)防眩層/紫外線吸収層/透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(13)防眩層/紫外線吸収層を兼用した耐擦傷機能層/透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(14)防眩層/紫外線吸収層/耐擦傷機能層/透明樹脂基材/近赤外線吸収層、
(15)反射防止層/透明樹脂基材/紫外線吸収層/近赤外線吸収層
【0071】
上記した層構成のなかでも、必要な光学機能を少ない積層数で得られる点から、(1)〜(8)の層構成が好ましい。以下、各機能層について説明する。
【0072】
<近赤外線吸収層>
近赤外線吸収層50としては、近赤外線吸収色素をバインダへ含有させて上記透明樹脂基材上に塗工等の湿式成膜法により形成することができる。近赤外線吸収色素としては、光学フィルタがプラズマディスプレイパネルの前面に適用される場合、プラズマディスプレイパネルはキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長域を吸収するもの、この帯域の近赤外線の透過率が20%以下、特に10%以下であることが好ましい。同時に近赤外線吸収層は、可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長域で、十分な光線透過率を有することが好ましい。
【0073】
近赤外線吸収色素としては、具体的には、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類の有機系近赤外線吸収色素、酸化スズ、酸化インジウム、セシウム含有酸化タングステン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の無機系近赤外線吸収色素、を1種または2種以上を併用することができる。また、バインダ樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が用いられる。又バインダ樹脂の乾燥、硬化方式としては、溶液(またはエマルジョン)からの溶媒(または分散媒) の乾燥による乾燥固化方式、熱、紫外線、電子線などのエネルギーによる重合、架橋反応を利用した硬化方式、或いは樹脂中の水酸基、エポキシ基等の官能基と硬化剤中のイソシアネート基などとの架橋、重合等の反応を利用した硬化方式などが適用できる。
【0074】
本発明においては、近赤外線吸収層50には、上記した粘着層において述べたようなネオン光吸収色素および/ または色調調整色素を含有させて、ネオン光吸収機能および/または色調調整機能を兼用しても良い。
【0075】
<反射防止層>
反射防止層52(AR層)は、低屈折率層の単層、または低屈折率層と高屈折率層とを、低屈折率総が最表面に位置するようにして交互に積層した多層構成が一般的であり、蒸着やスパッタ等の乾式成膜法や塗工等の湿式成膜法を利用して形成することができる。低屈折率層は、ケイ素酸化物、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、氷晶石、フッ素含有樹脂等が用いられ、高屈折率層には、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ等が用いられる。ここで高(低)屈折率層とは、これらの層と隣接する層(例えば、透明樹脂基材や低(高) 屈折率層) と比較して屈折率が相対的に高(低)いことを意味する。
【0076】
<耐擦傷層(ハードコート層)>
ハードコート層(HC層)は、例えば、ポリエステル( メタ) アクリレート、ウレタン( メタ) アクリレート、エポキシ( メタ) アクリレート等の多官能( メタ) アクリレートプレポリマー、或いは、トリメチロールプロパントリ(メタ) アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ( メタ) アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ( メタ) アクリレート等の3 官能以上の多官能( メタ) アクリレートモノマーを、単独またはこれらの中から2種以上選択して組み合わせて配合した電離放射線硬化性樹脂を用いた塗膜として形成するとことができる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する複合的表記である。耐擦傷層(ハードコート層)も上記材料を必要に応じて溶剤で希釈して、透明樹脂基材上にロールコート、バーコート等の塗工法により塗工し、塗膜に電子線や紫外線等の電離放射線を照射して架橋、硬化させることにより形成することができる。
【0077】
<防眩層>
防眩層(AG層)は、樹脂バインダ中にシリカなどの無機フィラーを添加した塗膜形成や、賦形版等を用いた賦形加工により、層表面に外光を乱反射する微細凹凸を設けた層として形成することができる。樹脂バインダの樹脂としては、表面層として表面強度が望まれる関係上、硬化性アクリル樹脂や、上記耐擦傷層と同様に電離放射線硬化性樹脂等が好適には使用される。
【0078】
<紫外線吸収層>
紫外線吸収層は、独立した層として前述の近赤外線吸収層よりも観察側、すなわち、日光等の外来赤外線の入射側に配置される層であっても良いし、前述の近赤外線吸収層よりも観察側に配置される他の機能層中に紫外線吸収層を含有させた、他の機能層と紫外線吸収層を兼ねる層であっても良い。また、透明樹脂基材中に紫外線吸収剤を含有させたものであっても良い。紫外線吸収剤を含有させた透明樹脂基材としては、例えば、帝人(株)製の「テトロンフィルムHBタイプ」等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の有機系化合物、微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム等からなる無機系化合物からなるものが挙げられる。独立した層とする場合に用いられるバインダ樹脂としては、近赤外線吸収層の欄で挙げたような樹脂を用いることができる。
【0079】
<その他の層>
その他の層としては、例えば、ネオン光吸収層、色調調整層、防汚層等が挙げられる。しかしながら、ネオン光吸収層および色調調整層は、生産効率の点から、単独の層として形成されるよりも、上記のように、粘着層、接着層、近赤外線吸収層に、ネオン光吸収色素や色調調整色素を含有させて、兼用する層とする方が好ましい。単独の層として形成される場合であっても、ネオン光吸収色素や色調調整色素としては、前述のようなものを用いることが出来る。
【0080】
防汚層は、一般的に、撥水性、撥油性のコートで、シロキサン系、フッ素化アルキルシリル化合物などが適用できる。撥水性塗料として用いられるフッ素系或いはシリコーン系樹脂を好適に用いることができる。例えば、反射防止層の低屈折率層をSiOにより形成した場合には、フルオロシリケート系撥水性塗料が好ましく用いられる。
【0081】
上記した光学フィルタ層は、電磁波遮蔽フィルタ層と接着剤を介して貼り合わせて一体化することができる。接着剤には、上記したネオン光吸収色素および/または色調調整色素を含有させて、ネオン光吸収機能および/または色調調整機能を兼用しても良い。接着剤としては、上記したような接着剤と同様のものを使用することができる。
【0082】
<プラズマディスプレイ>
上記した複合フィルタは、テレビジョン受像装置、各種測定機器や計器類の表示部、各種事務用機器や電算機器の表示部、電話機等に用いられるプラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管ディスプレイ(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、電場発光(EL)ディスプレイなどの画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にプラズマディスプレイ用として好適である。
【0083】
プラズマディスプレイは、隙間を空けて配置された二枚のガラス基板の間に、プラズマディスプレイの各画素にそれぞれ対応した多数の放電セルが形成された構成を有する。各放電セル内には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガスが封入されているとともに、各放電セルの内壁には、放電で生じた赤外線を赤、緑、青の可視光線に変換する蛍光体が塗られており、放電セル毎に、電圧をかけることができるようになっている。そして、電圧をかけられた放電セル内では、放電が起こるとともに紫外線が発生する。発生した紫外線は当該放電セル内の蛍光体にあたり、これにより、各放電セルから、赤、緑、青の3原色の可視光が発光されるようになる。このようにして、各放電セルからの可視光の発光を制御することにより、所望の映像を表示することができる。
【0084】
本発明による複合フィルタ1は、図4に示されるように、上記した粘着層2を介して、プラズマディスプレイの観測者側のガラス基板9(前面のガラス基板)上に貼着される。本発明においては、粘着層2が上記した粘着剤組成物からなるため、貼り合わせ位置がずれた場合に、一旦、複合フィルタをガラス基板から剥離しても、ガラス基板に糊残りが起こらず、剥離性やリワーク性に優れているため、ガラス基板を再利用することができる。
【実施例】
【0085】
<粘着剤組成物の準備>
下記の6種類の粘着剤を準備した。
【0086】
実施例1
アクリル系粘着剤(商品名:サンビノールOC3949,固形分:19.5%,サイデン化学社製)100質量部に対して、硬化剤(商品名:K−130,固形分:80%,サイデン化学社製)を0.41質量部、シランカップリング剤(商品名:S−1,固形分:6.3%,サイデン化学社製)を0.32質量部配合し、トルエン25質量部で希釈し、十分に分散させて粘着剤層形成用塗工液を調製した。
【0087】
実施例2
アクリル系粘着剤(商品名:サイビノールOC3949,固形分:19.5%,サイデン化学社製)100質量部に対して、硬化剤(商品名:K−130,固形分:80%,サイデン化学社製)を0.41質量部、シランカップリング剤(商品名:S−1,固形分:6.3%,サイデン化学社製)を0.32質量部、紫外線吸収剤(商品名:TINUVIN 109,固形分:100%,BASFジャパン社製)を25質量部配合し、トルエン25質量部で希釈し、十分に分散させて粘着剤層形成用塗工液を調製した。
【0088】
実施例3
アクリル系粘着剤(商品名:サイビノールOC3949,固形分:19.5%,サイデン化学社製)100質量部に対して、硬化剤(商品名:K−130,固形分:80%,サイデン化学社製)を0.41質量部、シランカップリング剤(商品名:S−1,固形分:6.3%,サイデン化学社製)を0.32質量部、紫外線吸収剤(商品名:TINUVIN 109,固形分:100%,BASFジャパン社製)を75質量部配合し、トルエン25質量部で希釈し、十分に分散させて粘着剤層形成用塗工液を調製した。
【0089】
比較例1
アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン2094,固形分:25%,綜研化学社製)100質量部に対して、硬化剤(商品名:E−5XM,固形分:5%,綜研化学社製)を0.054質量部配合し、トルエン25質量部で希釈し、十分に分散させて粘着剤層形成用塗工液を調製した。
【0090】
比較例2
アクリル系粘着剤(商品名:サイビノールATR−340,固形分:42%,サイデン化学社製)100質量部に対して、硬化剤(商品名:K−200,固形分:1%,サイデン化学社製)を2.38質量部、シランカップリング剤(商品名:M−2,固形分:0.25%,サイデン化学社製)を0.60質量部配合し、トルエン25質量部で希釈し、十分に分散させて粘着剤層形成用塗工液を調製した。
【0091】
比較例3
アクリル系粘着剤(商品名:サイビノールOC3949,固形分:19.5%,サイデン化学社製)100質量部に対して、硬化剤(商品名:K−130,固形分:80%,サイデン化学社製)を0.41質量部、シランカップリング剤(商品名:S−1,固形分:6.3%,サイデン化学社製)を0.32質量部、紫外線吸収剤(商品名:TINUVIN 109,固形分:100%,BASFジャパン社製)を100質量部配合し、トルエン25質量部で希釈し、十分に分散させて粘着剤層形成用塗工液を調製した。
【0092】
上記のようにして得られた粘着剤を、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム,商品名:コスモシャインA4100,膜厚:100μm,全光線透過率:92%,東洋紡績社製)の易接着面側上に25g/m(乾燥時)の膜厚となるように塗工し、十分に乾燥させた後、剥離フィルム(PETセパレーター,商品名:セラピールBX9A(RX),膜厚:38μm,東レフィルム加工社製)をラミネートし、粘着シートを得た。さらに、長さ150mm、幅25mmに切り抜き、これをその粘着剤組成物の塗工層が硝子板側を向くようにして、表面を脱脂した厚さ10mmの硝子板(PD200、旭硝子株式会社製)に貼り、これを引張り試験機を用いて、硝子板と2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとを両者の角度が180°となる方向に、引張速度300mm/分で、20〜25℃の雰囲気中で引っ張り、剥離した際の抗張力を測定した。
【0093】
また、準備した上記粘着剤を、剥離フィルム(PETセパレーター,商品名:セラピールBX9A(RX),膜厚:38μm,東レフィルム加工社製)の剥離処理面側上に25g/m(乾燥時)の膜厚となるように塗工し、十分に乾燥させた後、剥離フィルム(PETセパレーター,商品名:セラピールMFA(RX),膜厚:38μm,東レフィルム加工社製)をラミネートし、粘着シートを得た。各粘着剤の塗工層をセパレーターから剥離して塗工層のみの状態にし、これをロール状に丸めたものを、引張り試験機のチャックで把持し、引張速度100mm/分で、20〜25℃の雰囲気中で引張試験した時の破断点応力を測定した。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
【0094】
【表1】

【0095】
<複合フィルタの作製>
先ず、導電性メッシュ層とする金属箔として、一方の面に銅−コバルト合金粒子からなる黒化層が電解メッキ形成された厚さ10μmの連続帯状の電解銅箔を用意した。この銅箔の両面に対して、亜鉛めっき後、ディッピング法にて公知のクロメート処理を行い、表裏両面に防錆層を形成した。また、透明樹脂基材として厚さ100μmで一方の面上にポリエステル樹脂系プライマー層を形成した、連続帯状の無着色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。
【0096】
次いで、この銅箔をその黒化層面側で透明樹脂基材プライマー層上に、主剤が平均分子量3万のポリエステルポリウレタンポリオール12質量部からなり、硬化剤がキシレンジイソシアネート系プレポリマー1質量部とからなる透明な2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤でドライラミネートした後、50℃で3日間養生して、銅箔(防錆層)と透明樹脂基材間に厚さ7μmの透明接着剤層を有する連続帯状の電磁波遮蔽シートを得た。
【0097】
次いで、連続帯状の電磁波遮蔽シートに対して、その導電体層、黒化層、および防錆層をフォトリソグラフィー法を利用したエッチングにより、メッシュ状領域およびメッシュ状領域の外縁部に額縁状のメッシュ非形成の接地用領域を有する導電性メッシュ層を形成した。エッチングは、具体的には、カラーTVシャドウマスク用の製造ラインを利用して、マスキングからエッチングまでを一貫して行った。すなわち、導電体層面全面に感光性のエッチングレジストを塗布後、所望のメッシュパターンを密着露光し、現像、硬膜処理、ベーキングして、レジスト層を加工した後、塩化第二鉄水溶液で、導電体層および黒化層をエッチング除去して、メッシュ状の開口部を形成し、次いで、水洗、レジスト剥離、洗浄、乾燥を順次行った。
【0098】
得られた電磁波遮蔽シートの導電性メッシュ層上に、上記した粘着剤を25g/m(乾燥時)の膜厚となるように塗工し、粘着層を形成し、複合フィルタとした。
【0099】
<貼着性評価>
PDP用のガラス基板(PD200、旭硝子株式会社製)に、長さ150mm、幅25mmに加工した複合フィルタを、粘着層を介して貼着した。これを引張り試験機を用いて、ガラス基板と複合フィルタとを両者の角度が180°となる方向に、引張速度300mm/分で、20〜25℃の雰囲気中で引っ張り、貼着力を測定した。測定結果は下記の表2に示される通りであった。
【0100】
<リワーク性の評価>
PDP用ガラス基板から複合フィルタを剥離し、ガラス基板に残留する粘着層の有無を目視により調べた。リワーク性を以下の基準で評価した。
○:ガラス基板上に全く粘着剤が残留していない。
△:ガラス基板上に全く粘着剤が残留していないが、貼着力が1.0N/25mm未満、または15.0N/25mmを超える。
×:ガラス基盤上に粘着物が残留し、粘着層が凝集破壊している。
【0101】
評価結果は、下記の表1に示される通りであった。
【表2】

【符号の説明】
【0102】
1 複合フィルタ
2 粘着層
3 電磁波遮蔽/光学フィルタ
4 電磁波遮蔽フィルタ
5 光学フィルタ
6,7 セパレーター
8 接着層
9 PDP前面ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイのパネル前面に配置されるガラス基板と、前記ガラス基板の前面に設けられる複合フィルタとを貼着するための粘着剤組成物であって、
ガラス基板に対する剥離強度が1.0〜15.0N/25mmであり、かつ、破断点応力が0.15〜3.0MPaであることを特徴とする、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記剥離強度をP(N/25mm)、前記破断点応力をS(MPa)とした場合に、S/Pが0.07〜0.26(2.5×10・m−1)の関係を満足する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記ガラス基板が、厚み1〜5mmを有し、かつ板厚偏差が15μm以下のソーダライムガラスまたは高歪点ガラスである、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
粘着剤がアクリル樹脂系粘着剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
25℃における貯蔵弾性率が1.3×10Pa〜4.0×10Paである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
25℃における損失弾性率が7.9×10Pa〜1.8×10Paである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
遠赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、紫外線吸収剤および色調調整色素からなる群から選択される少なくとも1種以上の吸収剤を含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物からなる粘着層が一方の面に設けられた複合フィルタ。
【請求項9】
電磁波遮蔽機能、近赤外線遮蔽機能、ネオン光遮蔽機能、紫外線遮蔽機能、反射防止機能、防眩機能、耐擦傷機能、防汚機能、および帯電防止機能からなる群から選択される少なくとも1種以上の機能を備えた、請求項8に記載の複合フィルタ。
【請求項10】
請求項8または9に記載の複合フィルタがガラス基板の前面に貼着されてなる、プラズマディスプレイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−116940(P2012−116940A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267538(P2010−267538)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】