説明

粘着剤組成物及びそれを用いた粘着シート

【課題】環状オレフィン系樹脂フィルム等の低極性被着体の変形を起こすことがなく、粘着組成物自体の変形を生じにくく、且つ、光学用途に好ましく使用することができる低極性被着体用の粘着剤組成物および低極性被着体用の粘着シートを提供することにある。また、低極性被着体に対する初期接着性および硬化後の接着力が優れる低極性被着体用の粘着剤組成物および低極性被着体用の粘着シートを提供することにある。
【解決手段】ポリスチレンエラストマーと、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする粘着剤組成物。
低極性被着体上に粘着剤組成物が積層された粘着シートであって、該粘着剤組成物がポリスチレンエラストマーと、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及びそれを用いた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系樹脂は透明性に優れ、複屈折が比較的小さいことから、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、導光板、拡散板、液晶基板材料、光ディスク、携帯電話用のカメラ等の光学レンズ、光ファイバ、太陽電池シート(バックシート)等の光学用途に使用されている。
上記の環状オレフィン系樹脂を光学用途に使用する場合、例えば、環状オレフィン系樹脂フィルムであれば、粘着剤または接着剤を介して偏光板等と接着させることが一般的である。粘着剤は貼り合わせ作業を何度も行うことができるため、好ましく使用することができる。
【0003】
上記のような光学用途に使用する粘着剤としては、透明性に優れることからアクリル系粘着剤が汎用されている。アクリル系粘着剤としては、例えば、高分子量(メタ)アクリル系共重合体と、低分子量(メタ)アクリル系(共)重合体と、多官能性化合物とからなる粘着剤を使用することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−279907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機フィルム等の基材上に積層されたアクリル系粘着剤を環状オレフィン系樹脂フィルム等の低極性被着体に貼り合わせる場合には、特殊なラミネート(例えば、加熱や加圧を行うもの)や低極性被着体への表面処理(例えば、コロナ処理)が必要となる。これは、従来のアクリル系粘着剤では、常温常圧において低極性被着体との初期接着性が悪いためである。特殊なラミネートを行う場合、特殊な機器が必要となることから作業性に問題を有していた。
【0006】
有機フィルム等の基材上に積層されたアクリル系粘着剤と、低極性被着体とを貼り合わせた後、紫外線等のエネルギー線照射によって、有機フィルム/アクリル系粘着剤/低極性被着体が一体化された積層体を得ることができる。しかしながら、従来のアクリル系粘着剤では、粘着剤と低極性被着体との間の接着力が不十分であり、長期使用時の信頼性が低下する問題を有していた。信頼性の低下としては、例えば、低極性被着体からの粘着剤の剥がれや浮き等の他、粘着剤の発泡や黄変等の変色が挙げられる。
【0007】
また、低極性被着体として使用される環状オレフィン系樹脂フィルム上に、熱可塑性の接着剤または熱硬化性の接着剤を積層した後、加熱により一体化させると環状オレフィン系樹脂フィルムが変形することがあった。これは、環状オレフィン系樹脂フィルムが熱可塑性の樹脂であるためである。光学用途においては、フィルムのわずかな変形であっても光学特性に影響を与えることから、熱可塑性の接着剤や熱硬化性の接着剤を環状オレフィン系樹脂フィルムに適用し、且つ、光学特性を満足させることは極めて困難なものであった。
さらにまた、アクリル系粘着剤は硬化後の弾性率が低いため凹みや、粘着剤貼り合わせ品の変形を生じやすく、歩留まりの向上が求められていた。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決することを目的としてなされたものである。本発明の第1の目的は、環状オレフィン系樹脂フィルム等の低極性被着体の変形を起こすことがなく、粘着剤組成物や粘着剤貼り合わせ品の変形を生じにくく、且つ、光学用途に好ましく使用することができる低極性被着体用の粘着剤組成物および低極性被着体用の粘着シートを提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、低極性被着体に対する初期接着性および硬化後の接着力が優れる低極性被着体用の粘着剤組成物および低極性被着体用の粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の技術的構成により、上記課題を解決したものである。
【0010】
(1)ポリスチレンエラストマーと、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする粘着剤組成物。
(2)ポリスチレンエラストマーが40〜90質量%、(メタ)アクリレートモノマーが1〜30質量%、光重合開始剤が0.01〜10質量%含有されてなることを特徴とする前記(1)に記載の粘着剤組成物。
(3)前記粘着剤組成物に、粘着付与剤と柔軟付与剤の少なくとも一方が含有されてなることを特徴とする前記(1)に記載の粘着剤組成物。
(4)低極性被着体上に粘着剤組成物が積層された粘着シートであって、該粘着剤組成物がポリスチレンエラストマーと、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする粘着シート。
(5)基材上に粘着剤組成物が積層された粘着シートであって、該粘着剤組成物がポリスチレンエラストマーと、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする粘着シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、環状オレフィン系樹脂フィルム等の低極性被着体の変形を起こすことがなく、粘着組成物や、粘着剤貼り合わせ品の変形を生じにくく、且つ、光学用途に好ましく使用することができる低極性被着体用の粘着剤組成物および低極性被着体用の粘着シートを提供することができる。
また、本発明によれば、低極性被着体に対する初期接着性および硬化後の接着力が優れる低極性被着体用の粘着剤組成物および低極性被着体用の粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の粘着剤組成物(以下、粘着剤という)は、ポリスチレンエラストマーと、(メタ)アクリレートモノマーと光重合開始剤とを含有することを特徴とする。また、本発明の粘着シートは低極性被着体または基材上に上記粘着剤が積層されてなることを特徴とする。
【0013】
ここで、低極性被着体(以下、被着体という)とは環状オレフィン系樹脂からなる樹脂材料(有機フィルム等)をいう。
環状オレフィン系樹脂としては、ノルボルネン系樹脂およびシクロオレフィン系樹脂が挙げられる。
本発明の粘着剤は、特に、ノルボルネン系樹脂やシクロオレフィン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂に対して、好適な接着力を示すものである。
【0014】
ノルボルネン系樹脂およびシクロオレフィン系樹脂の市販品として具体的には、ARTON(JSR社製)、ゼオノア(日本ゼオン社製)、TOPAS(Ticona社製)等を挙げることができる。上記のARTONおよびゼオノアは樹脂フィルムとして市販されている。またTOPASはペレット状で市販されており、熱処理などの加工後に樹脂フィルムとして使用することができる。
本発明の粘着剤は、上記の市販されているノルボルネン系樹脂フィルムおよびシクロオレフィン系樹脂フィルムに対して好適な接着力を発揮する。
【0015】
本発明の粘着剤は、光照射前において、被着体に対し繰り返し貼り直すことができる粘着剤として機能する。本発明の粘着剤は被着体との親和性に優れていることから、被着体との初期接着性に優れ、本発明の粘着剤と被着体とをラミネートするには常温常圧で行えば十分である。したがって、本発明の粘着剤を被着体に貼着する際には、特殊なラミネート(例えば、加熱や加圧を行うもの)を必要としない。
本発明の粘着剤は光照射後において接着剤として機能する。したがって、被着体と粘着剤とを積層し光照射を行った後は、当該積層体が一体化される。本発明における接着力とは、被着体と粘着剤とを積層し、光照射によって当該積層体を一体化させた後において、該被着体と該粘着剤間の接着力をいう。
【0016】
被着体の表面にはコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理的な処理を施してもよい。これらの処理を施すことにより粘着剤と被着体の親和性が向上する。
【0017】
<ポリスチレンエラストマー>
ポリスチレンエラストマーは、ポリスチレンブロックと柔軟なポリオレフィン構造のエラストマーブロックとから構成され、ジブロックとトリブロックの2種類を基本とするブロック共重合体である。
ブロック共重合体として具体的には、SEP(スチレン/エチレン/プロピレンブロック共重合体)、SEPS(スチレン/エチレン/プロピレン共重合体)、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体)、SEEPS(スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロック共重合体)、SBS(スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体)、SIS(スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、ESBS(エチレン/スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体)等を挙げることができ、本発明を構成するポリスチレンエラストマーとして使用することができる。
ポリスチレンエラストマーの市販品として具体的には、例えば、SBSタフプレン、SEBSタフテック(以上、旭化成ケミカルズ社製)、SEPセプトン、SEBSセプトン、SEPSセプトン、SEEPSセプトン(以上、クラレ社製)、SEBSエラストマー(アロン化成社製)、JSR−SIS(JSR社製)、SEBSラバロン(三菱化学社製)、SEBS住友TPE−SBシリーズ(住友化学工業社製)、ESBSエポフレンド(ダイセル工業社製)、SISクインタック(日本ゼオン社製)、を使用することができる。
【0018】
本発明の粘着剤に含有するポリスチレンエラストマー量は、粘着剤の全固形分中、40〜90質量%の範囲内にあることが好ましい。さらに好ましくは45〜85質量%の範囲であり、特に好ましくは50〜80質量%の範囲である。ポリスチレンエラストマーが当該範囲にあることによって、本発明の粘着剤を紫外線により硬化した後において、当該粘着剤と被着体との接着力を好適に維持することができる。ポリスチレンエラストマーの含有量が40質量%未満であると、被着体への親和性が低下するため、被着体に対する硬化後の接着力が不足しやすくなる。ポリスチレンエラストマーの含有量が90質量%超であると、粘着剤の硬化が不十分となってしまい、被着体に対する硬化後の接着力が不足してしまう。
【0019】
<(メタ)アクリレートモノマー>
(メタ)アクリレートモノマーは、単官能(メタ)アクリレートでも2官能性以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーでもよく、極性基を有する分子構造でもよいし低極性分子構造でもよい。また、これらの(メタ)アクリレートモノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
極性基を有する分子構造の(メタ)アクリレートモノマーの極性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基等を挙げることができる。
水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。
カルボキシル基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸の他、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
アミド基含有の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類等が挙げられる。
アミノ基含有又はその他の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルの他、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
低極性分子構造の(メタ)アクリレートモノマーとしては、脂環式のものと脂環式以外のものを挙げることができる。
脂環式(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の(メタ)アクリレートとしては、例えばラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、べンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオール(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、スチレンモノマーが挙げられる。
【0022】
多官能(メタ)アクリレート系モノマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、骨格構造に環状構造を有するものを含有することが好ましい。環状構造は、炭素環式構造でも、複素環式構造でもよく、また、単環式構造でも多環式構造でもよい。このような多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えばジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート,トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート構造を有するもの、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、アダマンタンジアクリレートなどが好適である。
また、(メタ)アクリレートモノマーとして、アクリレート系オリゴマーを用いることができる。このようなアクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。
【0023】
本発明を構成する(メタ)アクリレートモノマーには、低極性分子構造を有するものを使用することが好ましい。これによって、(メタ)アクリレートモノマーを構成する低極性分子構造部分と被着体との親和性が増大するため、粘着剤を硬化させた後における当該粘着剤と被着体との接着力を好適に維持することができる。
【0024】
本発明の粘着剤の固形分中に含有する(メタ)アクリレートモノマーは、粘着剤の全固形分中、1〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがさらに好ましく、1〜20質量%であることが特に好ましい。当該範囲に(メタ)アクリレートモノマーがあることによって、粘着剤の架橋反応を好適に行うことができるため、本発明の粘着剤を硬化した後における当該粘着剤の弾性率を好適に維持することができるため、塗膜の変形(凹み等)を起こしにくい。
粘着剤に含有する(メタ)アクリレートモノマー量が1質量%未満であると、粘着剤の架橋が不十分となり、当該粘着剤を被着体上に積層し硬化させた後において、当該粘着剤と被着体との接着力が不十分となりやすい。(メタ)アクリレートモノマー量が30質量%超であると、光重合前の粘着剤の低粘度化を引き起こしやすい。これによって、当該粘着剤を塗布した塗膜の変形(凹み等)を起こしやすく、また、基材上に塗布した粘着剤が基材からはみ出す等の問題がある。
【0025】
また、本発明の硬化後における粘着剤と被着体との接着力を好適に維持するためには、本発明の粘着剤の固形分中に含有する(メタ)アクリレートモノマーは、粘着剤の全固形分中、1〜20質量%(ただし、20質量%を除く)にあることが好ましく、1〜19質量%であることがさらに好ましく、1〜18質量%であることが特に好ましい。
【0026】
<光重合開始剤>
本発明の粘着剤には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤を含有させることによって、光照射による粘着剤の重合硬化反応を短時間に行うことができる。また、紫外線照射による粘着剤硬化時において、粘着剤と被着体との間の接着力が増大する。
【0027】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2―クロロチオキサントン、2,4―ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2―ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2―ジメトキシ―1,2―ジフェニルエタン―1―オン、2―ヒドロキシ―2―メチル―1―フェニルプロパン―1―オン、1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2―メチル―1―[4―(メチルチオ)フェニル]―2―モルフォリノプロパノン―1、1―[4―(2―ヒドロキシエトキシ)―フェニル]―2―ヒドロキシ―2―メチル―1―プロパン―1―オン、ビス(シクロペンタジエニル)―ビス(2,6―ジフルオロ―3―(ピル―1―イル)チタニウム、2―ベンジル―2―ジメチルアミノ―1―(4―モルフォリノフェニル)―ブタノン―1、2,4,6―トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0028】
本発明の粘着剤の固形分中に含有する光重合開始剤は、粘着剤の全固形分中、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜7質量%であることがさらに好ましく、0.1〜5質量%程度配合されることが特に好ましい。光重合開始剤の含有量が0.01質量%未満では光硬化性が低下し、10質量%を超えて配合した場合には、粘着剤の着色の発生を招くと共に、光硬化反応の進行が変わらないことから経済的に好ましくない。
また、光硬化性を向上させるために公知の各種染料や増感剤を添加することも可能である。さらに粘着剤を加熱により硬化させることの出来る熱重合開始剤を光重合開始剤と共に併用することも出来る。この場合、光硬化の後に加熱することにより粘着剤の重合硬化を更に促進することが期待できる。
【0029】
上記熱重合開始剤としては、特に限定されず、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられ、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエール、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
また、熱重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(いずれも日本油脂社製)等が好適に用いられる。
これらの熱重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
<粘着付与剤および柔軟付与剤>
本発明の粘着剤には、粘着付与剤と柔軟付与剤の少なくとも一方を含有させることができる。
粘着付与剤は粘着剤に含有させることで当該粘着剤に粘着性を付与するものであればよく、例えば、炭化水素系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の他、スチレン系共重合体、アクリル系共重合体、アクリル系粘着剤等を使用することができる。本発明では、スチレン系共重合体、若しくはアクリル系共重合体を使用することが好ましい。なお、粘着付与樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
柔軟付与剤としては、例えば、熱可塑性樹脂やゴムに配合される可塑剤、プロセスオイルなどの軟化剤、オリゴマー、動物油、植物油などの油分、灯油、重油、軽油、ナフサなどの石油留分などの化合物が挙げられる。
プロセスオイルとしては例えば、パラフィンオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどの石油系プロセスオイルなどが挙げられる。
【0032】
本発明の粘着剤に含有する粘着付与剤と柔軟付与剤とを併せた配合量は、粘着剤の全固形分中、5〜50質量%の範囲内にあることが好ましい。さらに好ましくは10〜45質量%の範囲であり、特に好ましくは10〜40質量%の範囲である。粘着付与剤と柔軟付与剤とを併せた配合量が当該範囲にあることによって、粘着剤の使用部位に応じて粘着性をコントロールすることができる。
また、粘着付与剤と柔軟付与剤の分子量は必要に応じて設計することができる。
【0033】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、例えば次のようにして得ることができる。本発明の粘着剤をコンマコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーターなど一般に公知の方法にしたがって、各種の基材上に適宜の厚さで塗工して乾燥させて粘着剤層を形成し、次いで必要に応じ粘着剤層上に離型シートを貼り合わせる。そして、該離型シートを剥離した後、該粘着剤層上に被着体を積層して得ることができる。また、粘着剤を介して被着体を任意の対象物に貼り合わせる場合は基材を剥離する。基材として離型シートを使用してもよい。
【0034】
各種基材上に粘着剤を設けるには、粘着剤を溶剤に溶解したものを基材上に塗布すればよい。溶剤としては、粘着剤を溶解させることができるものであればよい。溶剤としては例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、クロロホルム、四塩化炭素、二硫化炭素、石油エーテル等を使用することができる。これらの溶剤は単独で使用してもよいし混合して使用してもよい。
【0035】
粘着剤層の厚さは、用途によって様々であるが、通常は5〜50μm、好ましくは10〜40μm程度であり、粘着剤層の厚さが薄くなると被着体との接着力が低下するおそれがある。
本発明に係る粘着シートの形状は、テープ状、ラベル状などあらゆる形状をとりうる。
【0036】
上記基材としては例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢ビフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等ならびに、これらの架橋フィルムやガラス板等が用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。さらに必要に応じ、上記フィルムを着色したフィルム、フッ素樹脂フィルム等を用いることができる。また、基材の厚さは、通常は50〜500μm、好ましくは80〜300μm程度であり、基材の厚さが薄くなるとハンドリング性が低下するおそれがある。
【0037】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
図1を用いて実施例1を説明する。
下記組成からなる粘着剤(いずれも固形分質量)を固形分17質量%となるようにトルエンにて溶解させ、塗料を作製した。得られた塗料を厚さ38μmのシリコーン系剥離フィルムからなる基材10上に塗布して、粘着剤層20を形成させた後、熱風循環型乾燥機中にて80℃で3分間乾燥させた(図1(a))。乾燥後の粘着剤層20の厚さは20μmであった。
乾燥させた粘着剤層20上に、厚さ38μmのシリコーン系剥離フィルムからなる基材11を貼り合わせた後、1日放置した(図1(b))。
・スチレンエラストマー 65質量部
・(メタ)アクリレートモノマー 10質量部
・粘着付与剤 22質量部
・光重合開始剤 3質量部
【0039】
シリコーン系剥離フィルムからなる基材10を粘着剤層20から剥離した後、粘着剤層20上に厚さ100μmのシクロオレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン社製 商品名:ZF14−100)からなる低極性被着体30を貼り合わせた後、1日放置したものを実施例1の粘着シート1とした(図1(c))。
【実施例2】
【0040】
下記組成からなる粘着剤(いずれも固形分質量)を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例2の粘着シートを作製した。
・スチレンエラストマー 55質量部
・(メタ)アクリレートモノマー 20質量部
・粘着付与剤 22質量部
・光重合開始剤 3質量部
【実施例3】
【0041】
粘着付与剤の種類を変更した以外は実施例1と同一の組成・配合量からなる粘着剤を使用し、実施例1と同様にして、実施例3の粘着シートを作製した。
【実施例4】
【0042】
下記組成からなる粘着剤(いずれも固形分質量)を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例4の粘着シートを作製した。
・スチレンエラストマー 55質量部
・(メタ)アクリレートモノマー 15質量部
・粘着付与剤 22質量部
・光重合開始剤 3質量部
・柔軟付与剤(オリゴマー) 5質量部
【0043】
[比較例1]
温度計、撹拌機、窒素導入管及び還流冷却管等を備えた反応器内に下記組成の材料を投入し、下記組成の材料が固形分25質量%となるように酢酸エチルにて希釈した。反応器内を窒素雰囲気とした後、65度に加温して12時間重合反応を行った。12時間後の質量平均分子量が80万のアクリルポリマーを得た。なお、上記アクリルポリマーの質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
・n−ブチルアクリレート 76質量部
・メチルメタアクリレート 20質量部
・アクリル酸 4質量部
・アゾビスイソブチロニトリル 0.15質量部
【0044】
上記のアクリルポリマーを含む反応液に、該アクリルポリマー100質量部に対して、架橋剤としてN,N,N’,N’,テトラグリシジルメタキシリレンジアミンを0.054質量部添加し、粘着剤とした。
【0045】
上記の粘着剤を厚さ38μmのシリコーン系剥離フィルムからなる基材10に塗布して粘着剤層20を形成させた後、熱風循環型乾燥機中にて80度で3分間乾燥させた(図1(a))。乾燥後の粘着剤層20の厚さは20μmであった。
乾燥後の粘着剤層20上に、厚さ38μmのシリコーン系剥離フィルムからなる基材11を貼り合わせた後、1日放置したものを比較例1の粘着シートとした(図1(b))。
【0046】
シリコーン系剥離フィルムからなる基材10を粘着剤層20から剥離した後、粘着剤層20上に厚さ100μmのシクロオレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン社製 商品名:ZF14−100)からなる低極性被着体30を貼り合わせた後、1日放置したものを比較例1の粘着シート1とした(図1(c))。
【0047】
[比較例2]
架橋剤の添加量が0.162質量部であった以外は比較例1と同様にして、比較例2の粘着シートを作製した。
【0048】
[比較例3]
架橋剤の添加量が0.27質量部であった以外は比較例1と同様にして、比較例3の粘着シートを作製した。
【0049】
[比較例4]
架橋剤の添加量が0.54質量部であった以外は比較例1と同様にして、比較例4の粘着シートを作製した。
【0050】
<評価>
(評価試料の作製)
前記実施例1〜4および比較例1〜4で作製した粘着シートにおいて、各粘着シートのシリコーン系剥離フィルムからなる基材11を剥離した後、粘着剤層20に、厚さ100μmのシクロオレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン社製 商品名:ZF14−100)からなる低極性被着体31を貼着し、低極性被着体30/粘着剤層20/低極性被着体31からなる積層体2を作製した(図2)。実施例1〜4および比較例1〜4において、粘着剤層20とシクロオレフィン樹脂フィルムからなる低極性被着体31との貼り合わせは常温常圧下(加熱及び加圧を行わない条件)でラミネーターを用いて行った。
次に、シクロオレフィン樹脂フィルムからなる低極性被着体30側から高圧水銀灯(120mW/cm)で照射距離10cm、積算光量800mJ/cmで紫外線照射した後、24時間放置したものを実施例および比較例の評価試料とした。
【0051】
(接着力の測定)
実施例1〜4および比較例1〜4の評価試料を、万能型引張試験機(株式会社オリエンテック社製、商品名:TENSILON RTC−1210A)を用いて剥離速度300mm/分で180度剥離接着力(N/25mm)を測定した。
結果を表1に示した。
【0052】
(貯蔵弾性率の測定)
実施例1〜4および比較例1〜4で使用した粘着剤を厚さ1000μmになるように積層し、これを粘着剤サンプルとした。この粘着剤サンプルに高圧水銀灯(120mW/cm)で照射距離10cm、積算光量4000mJ/cmで紫外線照射した後、24時間放置した。硬化・放置後の粘着剤サンプルをレオストレス試験機(製品名:Rheo Stress RS75、HAAKE社製)に設置し、以下の条件により測定を実施した。粘着剤サンプルを85℃、加振周波数1Hzの条件下にて、20mmφのプローブにより粘着剤サンプルに対し3Nの加重を加え、得られた値を貯蔵弾性率(Pa)とした。
【0053】
【表1】

※比較例1についてはジッピング剥離を起こし、測定値が得られなかった。ジッピング剥離とは、連続的かつ円滑に剥がれずに剥離音が生じ、断続的に剥離するものをいう。
【0054】
実施例の評価試料の光学特性を調べるために、評価試料作製時のヘイズ、全光線透過率および色度を測定した。
ヘイズおよび全光線透過率は、JIS K7105に準じて測定した。
色度は、分光光度計(島津製作所社製 商品名:UV−3150)にて、D65光源、視野角2度の条件で測定した。なお、色度においてL*は明度、a*は緑−赤方向の色相と彩度、b*は黄−青方向の色相と彩度を示す。L*が100に近く、且つ、a*およびb*が0に近いほど無色透明性が高いことを示す。
結果を表2に示した。
【0055】
【表2】

【0056】
実施例の評価試料においては、評価試料作成168時間後におけるヘイズ、全光線透過率および色度を測定した。
なお、168時間の放置は、60℃/95%RH雰囲気下で放置したものと、85℃雰囲気下で放置したものを行った。
結果を表3に示した。
【0057】
【表3】

【0058】
本実施例1〜4の粘着剤は、紫外線照射により低極性被着体と粘着剤とを接着させるため、該低極性被着体の変形を起こすことはなかった。また、本実施例1〜4の粘着剤は、ポリスチレンエラストマーと、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有するため、比較例1〜4の粘着剤に比べ、その貯蔵弾性率が高いものであった。したがって、本実施例1〜4の粘着剤は比較例1〜4の粘着剤に比べ、粘着剤自体や粘着剤貼り合わせ品の変形(凹み等)を生じにくいものであった。したがって、本実施例1〜4の粘着剤は光学用途に好ましく使用することができるものであった。
【0059】
本実施例1、3、4の粘着剤は、常温常圧で低極性被着体であるシクロオレフィン樹脂フィルムと接着させることができ、初期接着に優れるものであった。一方、比較例1〜4の粘着剤はシクロオレフィン樹脂フィルムとの接着が弱く、容易に剥がれてしまった。
したがって、本実施例1、3、4における粘着剤は、粘着剤と低極性被着体を貼着する際に、特殊なラミネートを必要としないため作業性に優れるものであった。
【0060】
表1に示すように本実施例1、3、4の粘着剤は、紫外線照射により低極性被着体であるシクロオレフィン樹脂フィルムとの接着力が向上するものであった。したがって、長期使用時においても低極性被着体からの粘着剤の剥がれや浮き等の他、粘着剤の発泡や黄変等の変色を防ぐことができるものであった。
一方、比較例2、3、4の粘着剤は、シクロオレフィン樹脂フィルムと低接着力であり、比較例1の粘着剤は接着力測定の際はジッピング剥離を起こし、その接着力の測定値を得ることはできなかった。
【0061】
さらにまた、表2および表3に示すように、本実施例の粘着剤はヘイズが1%以下、全光線透過率が90%以上であり、色度の変化もほとんどなかったことから、長期使用時においても光学用途に好ましく使用できることを確認した。また、実施例の粘着剤は目視による黄変の発生もほとんど認められなかった。
【0062】
上記のように、本実施例1〜4によれば、第1の目的である環状オレフィン系樹脂フィルム等の低極性被着体の変形を起こすことがなく、粘着組成物自体や、粘着剤貼り合わせ品の変形を生じにくく、且つ、光学用途に好ましく使用することができる低極性被着体用の粘着剤組成物および低極性被着体用の粘着シートを提供することができる。
また、本実施例1、3、4によれば、第2の目的である低極性被着体に対する初期接着性および硬化後の接着力が優れる低極性被着体用の粘着剤組成物および低極性被着体用の粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態を示す断面図である。(a)基材上に本発明を構成する粘着剤を積層した断面図(b)粘着剤上にさらに基材を積層した断面図(c)本発明の粘着シートの一実施形態を示す断面図
【図2】本発明を評価するための積層体の断面図
【符号の説明】
【0064】
1 粘着シート
2 積層体
10、11 基材
20 粘着剤層
30、31 低極性被着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレンエラストマーと、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
ポリスチレンエラストマーが40〜90質量%、(メタ)アクリレートモノマーが1〜30質量%、光重合開始剤が0.01〜10質量%含有されてなることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記粘着剤組成物に、粘着付与剤と柔軟付与剤の少なくとも一方が含有されてなることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
低極性被着体上に粘着剤組成物が積層された粘着シートであって、
該粘着剤組成物がポリスチレンエラストマーと、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする粘着シート。
【請求項5】
基材上に粘着剤組成物が積層された粘着シートであって、
該粘着剤組成物がポリスチレンエラストマーと、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−235205(P2009−235205A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81919(P2008−81919)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】