説明

粘着剤組成物及び積層体

【課題】本発明は、熱収縮性光学フィルム、特に偏光板積層体に使用された場合に、優れた凝集力を有すると共に、残存応力の発生に起因する剥れや光漏れの発生が抑制された粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)を含むエチレン性不飽和モノマーを重合してなる水酸基価が0.3〜30mgKOH/gであり、[X]−[Y]−[Z]で表される構造を有するブロック樹脂を含む粘着剤組成物であって、
ブロック樹脂のブロック[X]及び[Z]は、ガラス転移温度(Tg)がそれぞれ独立に10℃以上のブロックであり、ブロック[Y]は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下のブロックであり、かつ、
ブロック[X]と[Y]と[Z]との重量比が、[X]3〜40重量%、[Y]50〜94重量%、[Z]3〜40重量%である粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び該粘着剤組成物を用いてなる積層体に関する。更に詳しくは、光学材料を積層する用途に好適な粘着剤組成物に関する。又、本発明は、粘着剤組成物から形成される粘着剤層上に光学部材が積層されてなる積層体に関し、液晶表示装置に使用することができ、視認性に優れた液晶表示装置を提供することができる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
溶剤型のアクリル系粘着剤は一般的な熱ラジカル重合によって官能基を有するモノマーをラジカル重合した後、硬化剤により硬化することで、保持力・凝集力を発現することが知られている。しかし、このような粘着剤によって熱収縮する光学部材を貼り合わされた積層体は、光学部材に残存する応力が残存し光学フィルム用途などへの使用適性に劣るものであった。特にこの光学部材が偏光板である際は、残存応力によって光漏れ(熱ムラ)が生じた。
【0003】
一方、リビングラジカル重合により設計された末端近傍に官能基を有する樹脂に硬化剤を配合し粘着剤組成物として利用する検討が報告されている。このような設計を行うことで、反応性の高い樹脂末端近傍の官能基を有効に使用することができ、少量の硬化剤量で高い硬化性や凝集力を得られている。しかし、このような樹脂を上記の光学部材用の粘着剤組成物と使用しても満足な物性を得るには至らなかった。(特許文献1〜2)
【特許文献1】特開平11−236428号公報
【特許文献2】特表2002−523570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、熱収縮性光学フィルム、特に偏光板積層体に使用された場合に、優れた凝集力を有すると共に、残存応力の発生に起因する剥れや光漏れの発生が抑制された粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)を含むエチレン性不飽和モノマーを重合してなる水酸基価が0.3〜30mgKOH/gであり、[X]−[Y]−[Z]で表される構造を有するブロック樹脂と、
水酸基と反応しうる官能基を少なくとも2個有する化合物(B)と、を含む粘着剤組成物であって、
ブロック樹脂のブロック[X]及び[Z]は、ガラス転移温度(Tg)がそれぞれ独立に10℃以上のブロックであり、ブロック[Y]は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下のブロックであり、かつ、
ブロック[X]と[Y]と[Z]との重量比が、[X]3〜40重量%、[Y]50〜94重量%、[Z]3〜40重量%であり、かつ、
水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)のうち80〜100重量%がブロック[X]及び[Z]に含まれることを特徴とする粘着剤組成物に関する。
【0006】
更に本発明は、ブロック樹脂のガラス転移温度(Tg)が、−55〜0℃である上記粘着剤組成物に関する。
【0007】
更に本発明は、ブロック樹脂の重量平均分子量(Mw)が、3000〜300000である上記粘着剤組成物に関する。
【0008】
更に本発明は、ブロック樹脂の多分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]が、1.1〜2.5である上記粘着剤組成物に関する。
【0009】
更に本発明は、ブロック樹脂が、原子移動ラジカル重合法で重合してなる上記粘着剤組成物に関する。
【0010】
更に本発明は、水酸基と反応しうる官能基を少なくとも2個有する化合物(B)中の水酸基と反応しうる官能基が、ブロック樹脂中の水酸基に対して、1〜50mol%である上記粘着剤組成物に関する。
【0011】
更に本発明は、上記粘着剤組成物から形成される粘着剤層上に光学部材が積層されてなる積層体に関する。
【0012】
更に本発明は、液晶セル用ガラス部材、上記粘着剤組成物から形成される粘着剤層、及び光学部材が、順次積層されてなる液晶セル用部材に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、優れた凝集力を有すると共に残存応力の発生に起因する剥れや光漏れの発生が抑制された粘着剤組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、本発明の粘着剤組成物に含まれる[X]−[Y]−[Z]で表される構造を有するブロック樹脂について説明する。本発明のブロック樹脂は、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)を含むエチレン性不飽和モノマーを重合してなる水酸基価が0.3〜30mgKOH/gである。更に、ブロック樹脂のブロック[X]及び[Z]は、ガラス転移温度(Tg)が10℃以上のブロックであり、ブロック[Y]は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下のブロックであり、ブロック[X]と[Y]と[Z]との重量比が、[X]3〜40重量%、[Y]50〜94重量%、[Z]3〜40重量%であり、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)のうち80〜100%がブロック[X]及び[Z]に含まれることを特徴とする。
【0015】
本発明のブロック樹脂は、周知の方法によって行うことが出来るが、リビング重合、特に原子移動ラジカル重合によるモノマーの逐次添加により合成されることが好ましい。この場合、重合の活性末端の失活を考慮し、ブロック[X]を形成するモノマーを重合(第一の工程)し、重合収率が85%〜99%を超えた後、重合系にブロック[Y]を形成するモノマーを添加して重合を行い(第二の工程)、さらに重合収率が85%〜99%を超えた後、重合系にブロック[Z]を形成するモノマーを添加して重合を行う(第三の工程)ことが好ましい。得られる樹脂は、グラジエント構造をとるブロック樹脂となる場合があり、従って本発明のブロック樹脂は、グラジエント構造を含むものである。
【0016】
このような方法で合成したブロック樹脂は、リビング重合の特性上、樹脂中に水酸基を有するブロック[X]及び[Z]と、水酸基をほとんど有しない、又は少量有するブロック[Y]から構成される。水酸基を有するブロック[X]及び[Z]は、硬化剤との架橋反応により凝集力を発現し、水酸基を有しない、又は少量有するブロック[Y]は、粘着剤組成物の粘着力や機械的特性に寄与するものである。
【0017】
又、ブロック[X]及び[Z]は、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)のみによって構成されても良いが、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)のみを重合した場合、樹脂の一般的な重合溶媒への溶解性が不足し樹脂が析出する場合があり、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)と、樹脂の溶解性を保つ水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーとを共重合してブロック[X]を形成した後、水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーと、必要に応じて少量の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)を添加し重合することでブロック[Y]を形成し、更に水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)と水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーとを添加してブロック[Z]を合成することが好ましい。
【0018】
水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)の例としては、特に限定されないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、などの水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー類が挙げられる。また、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、ヒドロキシエチルスチレン等のスチレン誘導体などの水酸基を有する芳香族ビニルモノマー類が挙げられる。更にこれらモノマーのカプロラクトン付加物なども挙げられる。これらのモノマーは、単独で用いても2種類以上を併せて使用しても良い。
【0019】
水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーとしては公知のものが使用でき、例えば、エチレン、ブタ−1,3−ジエン、2−メチルブタ−1,3−ジエン、2−クロロブタ−1,3−ジエンのようなジエン類;
スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの(メタ)アクリル酸誘導体;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;
ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾル、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;
塩化アリル、酢酸アリル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのアリル化合物;
フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのフッ素アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0020】
ブロック[Y]に使用するモノマーは、樹脂の接着性や耐熱性等によって適宜選択できるが、重合反応性の面からアルキル(メタ)アクリレートモノマーを使用するのが好ましい。
【0021】
又、本発明では、ブロック[X]及び[Z]のTgが10℃以上であり、ブロック[Y]のTgが0℃以下であることを特徴としている。ブロック[X]及び[Z]のTgが10℃未満であると、粘着剤の凝集力が低下する。ブロック[X]及び[Z]のTgの上限値は使用する高Tg公知モノマーにもよるが、概ね120℃までが好ましい。又、ブロック[Y]のTgが0℃を超えると、粘着剤の粘着力が低下する。ブロック[Y]のTgの下限値は使用する低Tg公知モノマーにもよるが、概ね−80℃までが好ましい。尚、本発明でいう各ブロックのTgは、下記のFoxの式で算出した値を用いた。
【0022】
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+ ・・・ +Wn/Tgn
W1からWnは、使用しているモノマーの重量分率を示し、Tg1からTgnは、各ホモポリマーのガラス転移温度(単位は絶対温度「K」)を示す。
【0023】
算出に使用する主なホモポリマーのTgを下記に例示する。
2−エチルヘキシルアクリレート:−55℃(218K)
ノルマルブチルアクリレート:−45℃(228K)
ラウリルメタクリレート:−65℃(208K)
イソデシルメタクリレート:−41℃(232K)
エチルヘキシルメタクリレート:−10℃(263K)
アクリロニトリル:96℃(369K)
メチルメタクリレート:105℃(378K)
メチルアクリレート:10℃(283K)
スチレン:100℃(373K)
アクリルアミド:153℃(426K)
ヒドロキシエチルメタクリレート:55℃(328K)
2−ヒドロキシプロピルメタクリレート:26℃(299K)
【0024】
本発明に使用する原子移動ラジカル重合では、一般的なラジカル重合中に発生する副反応を抑制するために、重合時に添加する原子移動ラジカル重合の開始剤とラジカル重合性モノマーとの仕込み比によって、樹脂の分子量やブロック[X]、[Y]、及び[Z]の比率を自由にコントロールできる。本発明の粘着剤組成物に含まれるブロック樹脂は、ブロック[X]と[Y]と[Z]との重量比が、[X]3〜40重量%、[Y]50〜94重量%、[Z]3〜40重量%であることを特徴としている。ブロック[X]、及び[Z]の重量比が3重量%未満であると、凝集力が不足し被着体に対して糊残りする、耐熱性が著しく低下する等、粘着剤としての良好な機械特性が得られない。又、ブロック[Y]の重量比が50重量%未満であると、粘着力が不足する結果となる。
【0025】
本発明では、ブロック樹脂全体に対して、ホモポリマーのTgが20℃以上であるモノマーを6〜60重量%使用することが好ましい。ホモポリマーのTgが20℃以上であるモノマーが6重量%未満であれば耐久性や凝集力が不足する場合があり、60重量%を超えると粘着力が低下する場合がある。
【0026】
本発明のブロック樹脂は、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)のうち80〜100重量%がブロック[X]及び[Z]に含まれることを特徴とする。ブロック[X]及び[Z]に含まれるエチレン性不飽和モノマー(A)が80重量%未満であると、反応性の高い樹脂末端近傍に導入される水酸基の割合が減少し、硬化剤との反応が進行せずに、粘着剤の凝集力が得られないばかりか、粘着剤の機械的特性が低下するとともに、光学用途における耐熱性、耐湿熱性、熱ムラ等の物性が悪化する。
【0027】
本発明に使用されるブロック樹脂の水酸基価は、0.3〜30mgKOH/gであることを特徴とする。より好ましくは1〜20mgKOH/gであり、特に好ましくは5〜15mgKOH/gである。樹脂の水酸基価が0.3mgKOH/g未満であると、硬化剤との反応部位が不足し凝集力や耐久性を損なうこととなり、30mgKOH/gを超えると、粘着剤としての機械特性が損なわれ、又、光学特性や耐久性が悪化してしまう。
【0028】
本発明に使用されるブロック樹脂のTgは、−55〜0℃であることが好ましい。より好ましくは、−40〜−20℃である。樹脂のTgが−55℃未満であると、粘着剤の耐熱性を損なう場合があり、0℃を超えると粘着力が不十分となる場合がある。
【0029】
本発明におけるブロック樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3000〜300000が好ましく、10000〜100000が特に好ましい。Mwが3000未満であると、粘着剤として使用した際に樹脂の凝集力が不足し硬化剤が大量に必要になる場合があり、硬化塗膜として使用した際は充分な耐性を得られない場合がある。又、Mwが300000を超えると、合成に多大な時間を要する場合がある。
【0030】
本発明におけるブロック樹脂の分子量の多分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、1.1〜2.5が好ましく、1.3〜2.3が特に好ましい。分子量の多分散度が2.5を超えると、実質的に低分子量の重合物が増え、更には[X]−[Y]−[Z]で表される構造でないブロック樹脂が混入することとなり、粘着物性に悪影響をおよぼす場合がある。
【0031】
本発明におけるブロック樹脂は、樹脂中に含まれる水酸基を利用して、新たに官能基を導入してもよい。例えば水酸基の一部を、ポリカルボン酸無水物中の酸無水物基と反応させることによりカルボキシル基へ変換することができる。この反応により、ブロック樹脂中にカルボキシル基を導入できる。
【0032】
又、樹脂中に含まれる水酸基の一部は、アルコキシシリル基および、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物中の水酸基と反応しうる官能基、と反応させることによりアルコキシシリル基へ変換される。この反応により、ブロック樹脂中にアルコキシシリル基を導入できる。
【0033】
上記の方法によって水酸基から変換された置換基を公知の触媒や硬化剤を使用して硬化せしめることができる。
【0034】
又、反応性官能基を有する開始剤を使用して重合する、又は公知の方法でポリマーの重合停止末端に官能基を導入して硬化剤との反応に利用することができる。
【0035】
本発明のブロック樹脂の合成にはリビング重合が使用されるのが好ましく、特に合成の簡便さ、極性基を持ったモノマーを直接重合できる等の点からリビングラジカル重合を使用するのが好ましく、重合速度などの面から原子移動ラジカル重合法を使用するのが特に好ましい。原子移動ラジカル重合については公知の方法を使用し、合成および触媒の除去を行うことができる。
【0036】
触媒の処理工程により樹脂溶液に水分が混入する場合は、本発明のブロック樹脂と硬化剤との反応を阻害する場合があるため、水と混和する溶剤を樹脂溶液に添加し、共沸脱水するなどの処理で樹脂溶液から水分を除去するのが望ましい。
【0037】
又、得られたブロック樹脂の溶液粘度は特に制限はなく、樹脂の用途により選択されるが、好ましくは、100〜50000mP・s(25℃)であり、粘着剤組成物として使用する場合には、500〜50000mP・s(25℃)である。粘度が50000mP・s(25℃)を超えると塗加工が困難になり、粘度が100mP・s(25℃)より低いと塗工時に樹脂が流れてしまい、塗工が困難になる場合がある。
【0038】
本発明の粘着剤組成物は、上記ブロック樹脂と、硬化剤として水酸基と反応しうる官能基を少なくとも2個有する化合物(B)と含むことを特徴とする。更に、必要に応じて硬化触媒を配合して粘着剤組成物とすることができる。この時、塗工時の粘度を調整する為に適宜溶剤を添加しても良い。
【0039】
上記粘着剤組成物において、化合物(B)の配合量は、ブロック樹脂中の水酸基に対して、化合物(B)中の水酸基と反応しうる官能基を、1〜50mol%になるように配合するのが好ましく、5〜30mol%であることがより好ましい。化合物(B)を添加することにより、ブロック樹脂の架橋密度を適度な値に調節することができるので、粘着剤としての各種物性をより一層向上させることができる。1mol%未満であると凝集力や耐熱性が不足する場合があり、50mol%を超えると架橋密度が高くなり過ぎ、良好な機械特性を得られない場合がある。特に、光学部材貼りあわせ用の粘着剤組成物として使用した場合、良好な力学的特性を得られない場合がある。
【0040】
化合物(B)中の水酸基と反応しうる官能基としては、イソシアネート基、メチロール基、酸無水物基等が挙げられる。その例としては、ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂、フェノール樹脂、多官能ポリカルボン酸無水物が挙げられる。
【0041】
ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上有する化合物である。ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基は、ブロック樹脂が有する反応性官能基、例えば水酸基や、カルボキシル基と反応し得る。
【0042】
ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を分子内に複数有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物、およびこれらポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体、さらにはこれらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。
【0043】
アミノ樹脂、フェノール樹脂としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、フェノール、クレゾール類、ビスフェノール類等の化合物とホルムアルデヒドとの付加化合物または、その部分縮合物が挙げられる。
【0044】
多官能ポリカルボン酸無水物は、カルボン酸無水物基を2つ以上有する化合物であり特に限定されるものではないが、テトラカルボン酸二無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸二無水物、無水マレイン酸共重合樹脂などの多価カルボン酸無水物類等が挙げられる。また、反応中に脱水反応を経由して無水物と成りうるポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハーフエステルなどは、本発明でいう2つ以上のカルボン酸無水物基を有する化合物に含まれる。
【0045】
更に詳しく例示すると、テトラカルボン酸二無水物としては、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、新日本理化株式会社製「リカシッドTMTA−C」、「リカシッドMTA−10」、「リカシッドMTA−15」、「リカシッドTMEGシリーズ」、「リカシッドTDA」などが挙げられる。
【0046】
無水マレイン酸共重合樹脂としては、サートマー社製SMAレジンシリーズ、株式会社岐阜セラック製造所製GSMシリーズなどのスチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、p−フェニルスチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、ポリエチレン−無水マレイン酸などのα−オレフィン−無水マレイン酸共重合樹脂、ダイセル化学工業株式会社製「VEMA」(メチルビニルエ−テルと無水マレイン酸の共重合体)、無水マレイン酸アクリル変性ポリオレフィン(「アウローレンシリーズ」:日本製紙ケミカル株式会社製)、無水マレイン酸共重合アクリル樹脂などが挙げられる。
【0047】
これら化合物(B)は、一種類のみを用いてもよく、又、二種類以上を併用してもよい。
【0048】
硬化触媒は使用する硬化剤によって適宜選択され、公知の硬化触媒種および添加量さらには硬化時間が選択される。又、硬化剤は粘着剤組成物のハンドリングに問題がなければ、樹脂合成時に添加しても良い。
【0049】
本発明の粘着剤組成物に使用される有機溶剤としては、ブロック樹脂が溶解するものであれば限定されないが、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチルなどの酢酸エステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのグリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セロソルブ、酢酸メトキシブチルなどのグリコールエステル類などが挙げられる。
【0050】
又、粘着剤組成物にシランカップリング剤、有機フィラー、無機フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、タッキファイアーなどの公知の添加剤を添加しても良い。
【0051】
本発明の粘着剤組成物には、粘着付与、ブロッキング防止、カーリング防止、表面光沢の調整、耐候性の向上、濡れ性の改善等を図るべく、本発明の目的を妨げない範囲で1種類あるいは2種類以上の他の樹脂を配合することができる。
【0052】
さらに本発明の粘着組成物に、公知の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などを添加して、粘着組成物の物性のコントロールや、光硬化性などを付与することができる。
【0053】
他の樹脂の例としては、アクリル樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリイソブチレン、石油樹脂、ロジン、ニトロセルロース、しょ糖エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体、エチレン/酢酸ビニル系共重合体、α−オレフィン/無水マレイン酸系共重合体、スチレン/無水マレイン酸系共重合体等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂等の他、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ホスファゼン樹脂等の紫外線又は電子線により硬化する樹脂があり、これらを1種又は2種以上配合することができる。又、必要に応じて、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等の充填剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤等の蛍光染料、着色染料、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、クレーター防止剤、沈降防止剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、ワックス、熱安定剤等の添加剤も、適宜1種又は2種以上添加することができる。
【0054】
本発明の粘着剤組成物を用いて種々の粘着シートを得ることができる。例えば、種々のシート状基材に粘着剤組成物を塗工、乾燥・硬化することによって粘着シートを得ることができる。シート状基材としては、紙、金属板、合成樹脂フィルム、ガラス板等のいわゆる板状やフィルム状の物の他、棒状物、その他種々の形状のものが挙げられる。又、各種基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。更に表面を剥離処理したものを用いることもできる。金属板としては、ステンレス板、アルミニウム板、鋼板、銅板等が挙げられる。合成樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シクロオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、トリアセテートフィルム等の合成樹脂フィルムが挙げられる。
【0055】
本発明の粘着剤組成物を使用する場合、粘着剤層の形成は、通常使用されている塗布装置を用いて行うことができる。塗布装置としては、例えば、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディッピング、ブレードコーター等があげられる。又、粘着剤層の乾燥膜厚は、偏光板に代表されるシート状光学部材の伸縮に起因する応力集中を吸収、緩和するのに適切な膜厚と経済性を考慮して、5〜100μmであることが好ましい。
【0056】
本発明の粘着剤組成物は、光学部材に塗工することにより、光学部材用の積層体とすることができる。本発明の積層体は、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等の光学特性を持つ、いわゆるシート(又はフィルムともいう)状の光学部材に、上記本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層が積層された状態のものである。粘着剤層の他の面には、剥離処理されたシート状基材を積層することができる。本発明の積層体は、(ア)剥離処理されたシート状基材の剥離処理面に粘着剤組成物を塗工、乾燥し、シート状の光学部材を粘着剤層の表面に積層したり、(イ)シート状の光学部材に粘着剤組成物を塗工、乾燥し、粘着剤層の表面に剥離処理されたシート状基材の剥離処理面を積層したりすること、によって得ることができる。粘着剤組成物には硬化剤を配合することができるが、ブロック樹脂とポリイソシアネート化合物等硬化剤との硬化反応は、粘着剤組成物の乾燥、及び粘着剤層表面にシート状の光学部材や剥離処理されたシート状基材を積層する際及び積層した後に進行する。
【0057】
このようにして得た積層体から粘着剤層の表面を覆っていた剥離処理されたシート状基材を剥がし、粘着剤層を液晶セル用ガラス部材に貼着することによって、シート状の光学部材/粘着剤層/液晶セル用ガラス部材という構成の液晶セル部材を得ることができる。
【実施例】
【0058】
以下実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。また、樹脂の重量平均分子量MwはGPC測定により求めたポリスチレン換算の値である。
【0059】
<合成例1>
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、メチルエチルケトン20部、メチルメタクリレート7.1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.9部、ブロモイソ酪酸エチル0.4部、テトラメチルエチレンジアミン0.6部を仕込み、40℃に昇温して30分窒素を導入した。塩化第一銅0.3部を投入し、窒素気流下で70℃まで昇温して重合を開始した。2時間重合後、重合溶液をサンプリングし、溶液の乾燥固形分から重合収率が95%以上であることを確認した(ブロック[X]Mw=5400、Mw/Mn=1.2)。次にラウリルメタクリレート55部とエチルヘキシルメタクリレート29部、メチルエチルケトン27部を投入し80℃に昇温した。さらに4時間重合後、重合溶液をサンプリングし、溶液の乾燥固形分から重合収率が96%以上であることを確認した(ブロック[X]−[Y]Mw=45100、Mw/Mn=1.2)。さらにメチルメタクリレート7.1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.9部、メチルエチルケトン20部を投入し2時間重合を行った(ブロック[X]−[Y]−[Z]Mw = 55100、Mw/Mn=1.3 )。溶液の乾燥固形分から算出した最終の重合収率は97%であった。
【0060】
重合溶液にメチルエチルケトン83部を加え室温に冷却し、陽イオン交換樹脂 ダイアイオンPK228LH(三菱化学製)24部を投入して1時間攪拌した後、酸吸着剤としてキョーワード500(協和化学製)6.1部を添加し1時間攪拌した。濾過により陽イオン交換樹脂、酸吸着剤を除去し、重合溶液を濃縮し淡黄色の透明なブロック樹脂(a)を得た。
【0061】
<合成例2>
合成例1のブロック[X]の合成をメチルメタクリレート7.6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.9部、ブロック[Y]の合成をラウリルメタクリレート67部とエチルヘキシルメタクリレート16部、ブロック[Z]の合成をメチルメタクリレート7.6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.9部と変えて行った以外は同様の方法でブロック樹脂(b)を得た。
【0062】
<合成例3>
合成例1のブロック[X]の合成をノルマルブチルメタクリレート37.6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.9部、ブロック[Y]の合成をラウリルメタクリレート56.6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.2部ブロック[Z]の合成をノルマルブチルメタクリレート3.8部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.9部と変えて行った以外は同様の方法でブロック樹脂(c)を得た。
【0063】
<合成例4>
合成例1のブロック[X]の合成をメチルメタクリレート6.8部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.2部、ブロック[Y]の合成をイソデシルメタクリレート18部とエチルヘキシルメタクリレート68部、ブロック[Z]の合成をメチルメタクリレート6.8部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.2部と変えて行った以外は同様の方法でブロック樹脂(d)を得た。
【0064】
<合成例5>
合成例1のブロック[X]の合成をメチルメタクリレート3.2部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート2.9部、ブロック[Y]の合成をラウリルメタクリレート86.7部と2−ヒドロキシプロピルメタクリレート1.3部、ブロック[Z]の合成をチルメタクリレート3.2部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート2.9部と変えて行った以外は同様の方法でブロック樹脂(e)を得た。
【0065】
<合成例6>
合成例1のブロック[X]の合成をメチルメタクリレート8.1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.4部、ブロック[Y]の合成をラウリルメタクリレート64部とエチルヘキシルメタクリレート11部、ブロック[Z]の合成をメチルメタクリレート8.1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.4部と変えて行った以外は同様の方法でブロック樹脂(f)を得た。
【0066】
<合成例7>
合成例1のブロック[X]の合成をメチルメタクリレート7.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.01部、ブロック[Y]の合成をラウリルメタクリレート58部とエチルヘキシルメタクリレート27部、ブロック[Z]の合成をメチルメタクリレート7.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.01部と変えて行った以外は同様の方法でブロック樹脂(g)を得た。
【0067】
<合成例8>
合成例1のブロック[X]の合成をメチルメタクリレート1.7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1.1部、ブロック[Y]の合成をラウリルメタクリレート94.4部、ブロック[Z]の合成をメチルメタクリレート1.7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1.1部と変えて行った以外は同様の方法でブロック樹脂(h)を得た。
【0068】
<合成例9>
上記合成例1のブロック[X]の合成をエチルメタクリレート47.2部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.9部、ブロック[Y]の合成をラウリルメタクリレート35.7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.9部、ブロック[Z]の合成をエチルメタクリレート14.4部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.9部と変えて行った以外は同様の方法でブロック樹脂(i)を得た。
【0069】
<合成例10>
合成例1のブロック[X]の合成をエチルヘキシルメタクリレート9.6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.8部、ブロック[Y]の合成をラウリルメタクリレート48部とエチルヘキシルメタクリレート31部、ブロック[Z]の合成をエチルヘキシルメタクリレート9.6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.8部と変えて行った以外は同様の方法でブロック樹脂(j)を得た。
【0070】
<合成例11>
合成例1のブロック[X]の合成をメチルメタクリレート12.8部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.2部、ブロック[Y]の合成をノルマルブチルメタクリレート70部、ブロック[Z]の合成をメチルメタクリレート12.8部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.2部と変えて行った以外は同様の方法でブロック樹脂(k)を得た。
【0071】
<合成例12>
合成例1においてブロモイソ酪酸エチルに代えて4−ブロモプロピオン酸ヒドロキシヒドロキシブチルを1.6部、テトラメチルエチレンジアミンに代えてビピリジンを3.3部、塩化銅に代えて臭化第一銅1.0部を使用し、ブロック[X]の合成をノルマルブチルアクリレート99部、ブロック[Y]の合成を4−ヒドロキシブチルアクリレート1.0部を使用して行い、ブロック[Z]の合成は行わなかった以外は同様の方法でブロック樹脂(l)を得た。
【0072】
<合成例13>
合成例1のブロック[X]の合成をイソブチルメタクリレート11部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート11部、ブロック[Y]の合成をイソブチルメタクリレート50部、ブロック[Z]の合成を2−ヒドロキシプロピルメタクリレート28部と変えて行った以外は同様の方法でブロック樹脂(m)を得た。
【0073】
上記で合成した樹脂を表1に示す。尚、合成に使用したモノマーによるホモポリマーのガラス転移温度を欄外に記す。
【0074】
【表1】

【0075】
メチルメタクリレート:105℃
エチルメタクリレート:65℃
イソブチルメタクリレート:67℃
ノルマルブチルメタクリレート:20℃
ラウリルメタクリレート:−65℃
エチルヘキシルメタクリレート:−10℃
イソデシルメタクリレート:−41℃
ヒドロキシエチルメタクリレート:55℃
ヒドロキシプロピルメタクリレート:26℃
【0076】
<実施例1〜7、及び比較例1〜9>
合成例1〜13で得られたアクリル樹脂100部、酢酸エチル70部の混合物に対して、表2のように硬化剤を添加してよく撹拌して粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を剥離紙にアプリケータを用いて20g/m2となる量を塗工し、100℃、2分乾燥し、塗工物を作成した。25℃で1週間経過したものを以下の測定に用いた。結果を表2に併せて示す。
【0077】
粘着剤組成物の試験方法は次の通りである。
<粘着力>
剥離紙に樹脂溶液を塗工した粘着シートを、PETフィルム(膜厚50μm)に転写し、ガラス板に23℃、65%RHにて貼着し、JISに準じてロール圧着し、20時間後、ショッパー型剥離試験器にて剥離強度(180度ピール、引っ張り速度300mm/分;単位g/25mm幅)を測定した。また剥離後のガラス板上の樹脂の残り具合を5(良)〜1(不良)で評価した。
【0078】
<耐湿熱性能・光学特性(光漏れ防止性)>
上記の様に作製した粘着シートを偏光フィルムの片面に転写して、偏光フィルムを粘着加工した。この粘着加工された偏光フィルムを温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成させて偏光板を得た。粘着加工した偏光板を150mm×80mmの大きさにカットし、厚さ1.1mmのフロートガラス板の両面に、偏光板の吸収軸が直交するようにラミネーターを用いて貼り付けた。続いて、この偏光板を貼り付けたガラス板を50℃5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させてガラス板に密着させた。更に、この偏光板とガラス板の構成物を80℃、相対湿度90%で100時間放置した後の発泡、浮きハガレ(耐湿熱性)、およびこの80℃相対湿度90%で100時間放置した後の偏光板とガラス板の構成物に光を透過させたときの光漏れを目視で観察し、三段階で評価した。
【0079】
◎は「発泡・浮きハガレ・光漏れが全く認められない」、
○は「若干発泡・浮きハガレ・光漏れが認められるが、実用上問題がない」、
△は「明らかに浮きハガレ・光漏れが認められ、実用上問題がある」
【0080】
【表2】

【0081】
硬化剤:XDI/TMP(キシリレンジイソシネートのトリメチローププロパンアダクト体)の酢酸エチル溶液 NCO価 103mgKOH/g
表2に示すように、実施例1〜7の粘着剤組成物は、粘着力、保持力があり、剥離後の糊残りも少ない。更に、光漏れ防止性に優れ、耐湿熱性の要求される光学用途に適していることが示された。一方、比較例1〜9では、特に光漏れ防止性が劣り、光学用途への適性がないことが示された。
【0082】
本発明の粘着剤組成物は粘着力があり、光漏れ防止性に優れ、良好な保持力を示すことから熱収縮を引き起こす光学部材、特に偏光フィルム貼り合わせ用の粘着剤組成物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)を含むエチレン性不飽和モノマーを重合してなる水酸基価が0.3〜30mgKOH/gであり、[X]−[Y]−[Z]で表される構造を有するブロック樹脂と、
水酸基と反応しうる官能基を少なくとも2個有する化合物(B)と、を含む粘着剤組成物であって、
ブロック樹脂のブロック[X]及び[Z]は、ガラス転移温度(Tg)がそれぞれ独立に10℃以上のブロックであり、ブロック[Y]は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下のブロックであり、かつ、
ブロック[X]と[Y]と[Z]との重量比が、[X]3〜40重量%、[Y]50〜94重量%、[Z]3〜40重量%であり、かつ、
水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A)のうち80〜100重量%がブロック[X]及び[Z]に含まれることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
ブロック樹脂のガラス転移温度(Tg)が、−55〜0℃である請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
ブロック樹脂の重量平均分子量(Mw)が、3000〜300000である請求項1又は2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
ブロック樹脂の多分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]が、1.1〜2.5である請求項1〜3いずれか記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
ブロック樹脂が、原子移動ラジカル重合法で重合してなる請求項1〜4いずれか記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
水酸基と反応しうる官能基を少なくとも2個有する化合物(B)中の水酸基と反応しうる官能基が、ブロック樹脂中の水酸基に対して、1〜50mol%である請求項1〜5いずれか記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の粘着剤組成物から形成される粘着剤層上に光学部材が積層されてなる積層体。
【請求項8】
液晶セル用ガラス部材、請求項1〜6いずれか記載の粘着剤組成物から形成される粘着剤層、及び光学部材が、順次積層されてなる液晶セル用部材。

【公開番号】特開2008−291071(P2008−291071A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136080(P2007−136080)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】