説明

粘着剤除去組成物

【課題】皮膚に対する刺激が少なく、皮膚を保護しながら、皮膚表面に残っている粘着剤を効果的に除去することができる粘着剤除去組成物を得ようとする。
【解決手段】粘度が10〜50(mPa・s、25℃)の流動パラフィンと粘度が0〜5(mPa・s、25℃)の流動パラフィンを併用した混合物に、脂肪酸エステル、植物油を含有させて粘着剤除去組成物を得る。
上記粘度が10〜50(mPa・s、25℃)の流動パラフィンと粘度が0〜5(mPa・s、25℃)の流動パラフィンの混合物は、粘着剤除去組成物における全量中の70〜95質量%を占めている。そして、この粘度が10〜50(mPa・s、25℃)の流動パラフィンと粘度が0〜5(mPa・s、25℃)の流動パラフィンの混合割合は15:85〜85:15にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤除去組成物に関し、特に皮膚表面に残った医療用テープの粘着剤を除去することに適したものに関する。
【背景技術】
【0002】
被着体に貼付された工業用または文具用の粘着テープを剥がした際に、被着体に残った粘着剤を除去する方法としては、トルエン、ベンゼン、ホルマリンなどの有機溶剤を使って溶解させて除去する方法が一般的であり、こうした有機溶剤を使った除去剤は多数市販されている。
一方、皮膚表面に貼付された医療用粘着テープを剥がした際に、皮膚表面に残った粘着剤を除去するものとしては適当なものが少なく、多くの医療現場においてはベンジンなどが使用されているのが実情である。しかし、このベンジンには、皮膚刺激性があるし、安全性に対する不安も大きい。
【0003】
こうしたことから、カツラを固定した粘着剤を頭皮から除去するために、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル及びブトキシエタノールを水に混合した水性のリムーバーも提案されている。(特許文献1)
【特許文献1】特開2002−167568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、皮膚に対する刺激が少なく、皮膚を保護しながら、皮膚表面に残っている粘着剤を効果的に除去することができるものを得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、粘度が10〜50(mPa・s、25℃)の流動パラフィンと粘度が0〜5(mPa・s、25℃)の流動パラフィンを併用した混合物に、脂肪酸エステル、植物油を含有させることによって粘着剤除去組成物を得ることができる。
また、上記粘度が10〜50(mPa・s、25℃)の流動パラフィンと粘度が0〜5(mPa・s、25℃)の流動パラフィンの混合物は、粘着剤除去組成物における全量中の70〜95質量%を占めており、この粘度が10〜50(mPa・s、25℃)の流動パラフィンと粘度が0〜5(mPa・s、25℃)の流動パラフィンの混合割合は15:85〜85:15にしている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、糊残りしている粘着剤を充分に除去することができる。特に医療用テープ類を剥がした後に皮膚表面に残った粘着剤を容易に落とすことができると共に、皮膚に対する刺激も少なく、臭いも少なく、また皮膚表面の脂質を過度に除去することがなくて、皮膚表面の状態を健全に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明には、流動パラフィンを使用するが、この流動パラフィンは、粘度が10〜50(mPa・s、25℃)の流動パラフィンと、これよりも粘度が低い0〜5(mPa・s、25℃)の流動パラフィンを混合して使用する。
粘度の低い流動パラフィンは、主として粘着剤への浸透を良くするものであり、粘度の高い流動パラフィンは、主として粘着剤を柔らかくして糊落しに寄与しているものと考えられる。
粘度の低い流動パラフィンとしては、軽質流動イソパラフィンを用いることが好ましい。
この粘度の高い流動パラフィンと粘度の低い流動パラフィンの混合割合は、粘着剤の性質によって異なるが、通常、15:85〜85:15程度であり、好ましくは、20:80〜80:20程度である。
【0008】
この流動パラフィンの混合物は、粘着剤除去組成物の全量中に70〜95質量%程度の量で使用され、好ましくは、75〜90質量%程度の量で使用される。
【0009】
上記流動パラフィンの混合物には、脂肪酸エステル及び植物油を添加する。この脂肪酸エステル及び植物油は、化粧品種別許可基準の全ての範疇の化粧品で配合上制約なく使用することができるものを使用する。
こうした脂肪酸エステルとしては、一塩基酸のエステル、二塩基酸のエステル、三塩基酸のエステルなどを使用することができ、例えば、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸エチルヘキシル、クエン酸トリエチルヘキシル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、ステアリン酸コレステリル、ミリスチン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、イソオクタン酸セチル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、オリーブオレイン酸エチル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸ヘキシルデシル、ステアリン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、などを挙げることができる。
これらの脂肪酸エステルは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いることもでき、粘着剤除去組成物の全量中に5〜20質量%程度、好ましくは7〜12質量%程度の量で使用するとよい。
この脂肪酸エステルは、本組成物を使用した後に、皮膚の上に残っている液をティッシュペーパー等で拭き取る際の拭き取り性を向上させることにも寄与している。
【0010】
上記植物油としては、例えば、ヤシ油、水添パーム油、アボガド油、オリーブスクアラン、オリーブ油、杏仁油、ククイナッツ油、ブドウ種子油、サフラワー油、スイートアーモンド油、トウモロコシ胚芽油、ピスタチオ種子油、ヒマワリ油、ヘーゼルナッツ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ローズヒップ油、などを挙げることができる。
これらの植物油は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いることもでき、粘着剤除去組成物の全量中に0.5〜10質量%程度、好ましくは0.7〜3質量%程度の量で使用するとよい。
上記脂肪酸エステル及び植物油は、主として、皮膚を保護し、その保湿状態を保ち、柔軟性を保つことに有効である。
【0011】
上記流動パラフィンの混合物には、更にトコフェロールを添加することが好ましい。このトコフェロールはビタミンEと言われているものであって、粘着剤除去組成物の全量中に0.01〜0.1質量%程度の微量で使用され、主として組成物の酸化を防止して保存性を高め、効果を持続させることに有効である。
【0012】
上記した粘着剤除去組成物に含まれる組成物は、何れも化粧品種別許可基準の全ての範疇の化粧品で配合上制約なく使用することができるものであって、経皮的に微量が浸透することがあっても、害を及ぼすことがなく、安全に使用することができる。
【0013】
上記した各組成物を配合し、これを良く混ぜ合わせることによって液状をした粘着剤除去組成物を得ることができる。この粘着剤除去組成物は、通常、ビンなどの容器に詰めたり、噴射剤の無いスプレー容器に詰めたり、噴射剤を使うスプレー容器に詰めたりすると使用し易い。
この粘着剤除去組成物を使用する場合、粘着剤の残っている部分に直接に振り掛けて擦って除去してもよいが、通常、ティッシュペーパー、ガーゼ、脱脂綿などにこの粘着剤除去組成物を染み込ませ、先ず、貼り残されている粘着剤の上から軽く叩くようにして粘着剤除去組成物を浸み込ませ、その後で軽く擦ることを繰り返すと、皮膚表面からもきれいに粘着剤を除去することができる。
【実施例】
【0014】
実施例及び比較例の調製にあたり、下記の組成材料を用意した。
1. 高粘度流動パラフィン(粘度:20mPa・s、25℃)
2. 軽質流動イソパラフィン(粘度:0mPa・s、25℃)
3. 脂肪酸エステル: パルミチン酸エチルヘキシル
4. 植物油(1):マカデミアナッツ油
5. 植物油(2):サフラワー油
6. トコフェロール(ビタミンE)
7. 酢酸トコフェロール
8. ベンジン(ノルマルヘキサン)
【0015】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
上記した組成材料を用いて、表1に示す組成により実施例1〜3を、表2に示す組成により比較例1〜4の粘着剤除去組成物を調製した。
【0016】
(試験)
実施例1〜3及び比較例1〜4の粘着剤除去組成物について、その性状及び性能を見るために以下の試験を行った。
また、粘着剤として次のものを用意した。
(1)ゴム系粘着剤:天然ゴム/粘着性付与樹脂=100/70(重量部)
(2)アクリル系粘着剤:イソノニルアクリレート/アクリル酸=96/4(重量部)のトルエン溶液重合+エポキシ系架橋剤(1分子4官能)0.03(重量部)
【0017】
(粘着剤除去組成物の粘度)
JIS Z 8803 に基づいて、BM型粘度計にてローター#1を用い、25℃で、60rpmの速度で粘度を測定した。
【0018】
(糊落し力・1)(対ベークライト板)
剥離紙の上に9mm×100mmの大きさで50μmの厚さに上記ゴム系粘着剤を塗布したものを用意し、これをゴム系粘着剤側から37mm×125mmのベークライト板に置いて圧着して貼付し、20分後に剥離紙を剥がしてベークライト板上に粘着剤を残したものを評価サンプルとする。
また、剥離紙の上に9mm×100mmの大きさで50μmの厚さに上記アクリル系粘着剤を塗布したものを用意し、他は上記ゴム系粘着剤の場合と同様にして評価サンプルとする。
次に、市販のティッシュペーパー(大王製紙株式会社製)に、実施例及び比較例の各粘着剤除去組成物を充分に染み込ませた後で、上記ベークライト板上の粘着剤の表面を軽く擦り、粘着剤を除去することができるまでの往復擦過回数を、糊落し力とする。
なお、ティッシュペーパーに染み込ませた粘着剤除去組成物が、粘着剤に染み込んで擦り難くなった場合には、改めて粘着剤除去組成物をティッシュペーパーに染み込ませて擦り作業を繰り返す。
【0019】
(糊落し力・2)(対皮膚表面)
剥離紙の上に上記と同様にゴム系粘着剤を塗布したものを用意し、これをゴム系粘着剤側から上腕部の皮膚表面に圧着して貼付し、20分後に剥離紙を剥がして皮膚表面上に粘着剤を残したものを評価サンプルとする。
他は、上記の糊落し力・1の場合と同様にして糊落し力を測定する。
【0020】
(滑り性試験)
粘着剤の上を粘着剤除去組成物を染み込ませたティッシュペーパーで擦ったときの滑り抵抗の強弱を測定した。
評価は、下記の基準に基づいて行った。
滑り抵抗がない・・・・・◎
滑り抵抗が少ない・・・・○
滑り抵抗がややある・・・△
滑り抵抗が強い・・・・・×
【0021】
(臭い試験)
粘着剤除去組成物の臭いについて官能試験を行った。
評価は、下記の基準に基づいて行った。
良い臭い又は臭わない・・・◎
やや良い臭いがある・・・・○
やや不快な臭いがある・・・△
不快な臭いがある・・・・・×
【0022】
(皮膚刺激性試験)
上記「糊落し力・2(対皮膚表面)」の試験を行ったときの皮膚に対する刺激性の有無について観察した。
評価は、下記の基準に基づいて行った。
刺激性が無い・・・・・・・◎
刺激性がほとんど無い・・・○
刺激性がある・・・・・・・△
刺激性が強い・・・・・・・×
【0023】
(試験結果)
各試験の結果を表1、表2に示す。
【0024】
(考察)
表1の実施例1〜3に示すものでは、糊落し力・1、糊落し力・2の何れも良く、滑り性も良く、臭いも少なく、皮膚刺激性も少なくて、良好な結果が得られている。特に、実施例1、2のものが使用し易い。
これに対して、表2に示す比較例1の高粘度流動パラフィンを使用したものでは、滑り性、臭い、皮膚刺激性は良いが、糊落し力・1、糊落し力・2が低くて好ましくない。比較例2の軽質流動イソパラフィンを使用したものでは、糊落し力・1、糊落し力・2が高いが、皮膚刺激性があって良好ではない。比較例3のものは、糊落し力・1、糊落し力・2が低く、滑り性も劣っている。比較例4のベンジンは、滑り性は良く、糊落し力・1、糊落し力・2も高いが、不快な臭いもあり、皮膚刺激性も強くて好ましくないことがわかる。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度が10〜50(mPa・s、25℃)の流動パラフィンと粘度が0〜5(mPa・s、25℃)の流動パラフィンの混合物に、脂肪酸エステル、植物油を含有させた粘着剤除去組成物。
【請求項2】
上記粘度が10〜50(mPa・s、25℃)の流動パラフィンと粘度が0〜5(mPa・s、25℃)の流動パラフィンの混合物が粘着剤除去組成物全量中の70〜95質量%であり、粘度が10〜50(mPa・s、25℃)の流動パラフィンと粘度が0〜5(mPa・s、25℃)の流動パラフィンの混合割合が15:85〜85:15である請求項1に記載の粘着剤除去組成物。
【請求項3】
上記粘度が0〜5(mPa・s、25℃)の流動パラフィンが軽質流動イソパラフィンである請求項1又は2に記載の粘着剤除去組成物。
【請求項4】
上記脂肪酸エステルは、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸エチルヘキシル、クエン酸トリエチルヘキシル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、ステアリン酸コレステリル、ミリスチン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、イソオクタン酸セチル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、オリーブオレイン酸エチル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸ヘキシルデシル、ステアリン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピルの群から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤除去組成物。
【請求項5】
上記植物油は、ヤシ油、水添パーム油、アボガド油、オリーブスクアラン、オリーブ油、杏仁油、ククイナッツ油、ブドウ種子油、サフラワー油、スイートアーモンド油、トウモロコシ胚芽油、ピスタチオ種子油、ヒマワリ油、ヘーゼルナッツ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ローズヒップ油の群から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤除去組成物。
【請求項6】
上記粘着剤除去組成物は、皮膚表面に残留する医療用テープの粘着剤を除去するものである請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤除去組成物。

【公開番号】特開2008−208169(P2008−208169A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43988(P2007−43988)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【出願人】(393008821)日進化学株式会社 (16)
【Fターム(参考)】