説明

精密構造を有する焼結炭化物

本発明は、WC−Co焼結炭化物アロイに関する。極度に少量のTi、V、Zr、TaもしくはNb、またはこれらの組み合わせを加えることによって、より異常でないWC−粒子を有する微粒化された焼結炭化物構造が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結炭化物アロイに関する。極度に少量のTi、V、Zr、TaもしくはNb、またはこれらの組み合わせを追加することにより、より異常でないWC粒子を有する微粒化された焼結炭化物構造が得られた。
【背景技術】
【0002】
焼結炭化物の切削工具は、強靱性および耐摩耗性の両者において高い要求のある用途におけるスチールの機械加工、硬化鉄、ステンレススチール、鋳造鉄および耐熱アロイ中で使用される。WCおよびCoを除く、TiC、NbC、TaC、ZrCおよびHfCのような立方晶炭化物が、多くの場合、所望の特性を達成するために加えられる。これらの立方晶炭化物は、微細構造中に存在する第3相、しばしば、γ−相と呼ばれる面心立方炭化物(B1)を生成するであろう。焼結炭化物が微粒子化されようが、または粒子化されようが、焼結の間に粒の成長を制御することが必要である。阻害剤を有さないWC−Coグレードを焼結する場合に、WC粒子の粒子成長は、非常に急速であり、そして非常に大きいWC粒子が構造中に存在するような、異常な粒子成長が起こることが知られている。これらの異常な粒子は、それらが重大な欠陥として働き、そして破損を生じるので、切断性能に有害である場合がある。粒の成長を制御するためのある周知の方法は、一般的に炭化物、TiC、NbC、TaC、ZrC、HfCのような立方晶炭化物を生成するものを加えることである。しかし、これらの追加は、通常、立方晶炭化物相が微細構造中に存在するような量で行われる。しかし、欠点は、混ぜもののないWC−Coグレードに比較して強靭性が低下することである。
【0003】
粒子の成長を制御する別の方法は、標準的な技法による混合、粉砕に続く焼結を含む微粒子化タングステンカーバイド−コバルト焼結炭化物の製造方法を開示する欧州特許出願公開第1500713号明細書に記載されているように、窒素中で焼結することである。脱ロウ後であるが孔閉鎖前に、窒素を0.5気圧超の圧力で焼結雰囲気中に導入することによって、減少した粒径およびより異常でない粒子を含む微粒化を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際公開第2006/043421号パンフレットは、硬質相として<0.3μmの平均粒径を有するWC、およびバインダー相として5.5〜15重量%の少なくとも1種の鉄族の金属元素を含み、そして上記の硬質相およびバインダー相に加えて、0.04〜0.2のバインダー相に対する重量比で0.005〜0.06重量%のTi、Crを含む焼結炭化物を開示する。特に、上記の焼結炭化物は、Taを全く含まない。上記の焼結炭化物は、一様に微粒子を生成し、そして粗WCへの成長において効率的に抑制され、強度および強靱性の両者において、優れた焼結炭化物の提供となるアロイ中のWCからなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の問題を回避または軽減することである。
本発明のさらなる目的は、改善された機械的特性および切断特性を有する焼結炭化物ツールを与える、バインダー相の改善された分布および異常なWC粒子の量を減少させた焼結炭化物の切削工具を提供することである。
【0006】
焼結炭化物において、ppmレベルのTi、V、Nb、ZrもしくはTaまたはこれらの組み合わせの導入によって、バインダー相の改善された分布とともに、顕著な微粒化効果を得ることができることが、驚くべきことに見いだされた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、従来技術による焼結炭化物の微細構造の光学顕微鏡写真である。
【図2】図2は、本発明による焼結炭化物の微細構造の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
焼結炭化物体は、1.0〜2.5μmの粒径と、3〜15重量%のCoと、そしてこれに加えてMe/Co=(Tiの原子%+Vの原子%+Nbの原子%+Zrの原子%+Taの原子%)/原子%Cの比が、0.014−(CW)×0.008以下、かつ0.0005超、好ましくは0.0007超で、CWが0.80〜0.95、好ましくは0.83〜0.92(式中、CW=磁性Coの%/Coの重量%(式中、磁性Coの%は、磁性Coの重量パーセントであり、そしてCoの重量%は、焼結炭化物におけるCoの重量パーセントである。))であるような、ppmレベルの次の元素、Ti、V、Nb、Zr、Taまたはこれらの混合物を有するタングステンカーバイドとを含む。CWは、Coバインダー相中のWの含有量の関数である。約1のCWは、バインダー相中の非常に低いW含有量に対応し、そして0.75〜0.8のCWは、バインダー相中の高いW含有量に対応する。
【0009】
焼結体はまた、<0.5%の少量のイータ(eta)相、または立方晶のMX炭化物または炭窒化物(式中、M=(V+Zr+Ti+Ta+Nb+W)、およびX=CまたはN)等のさらなる相の析出を含むことができる。
【0010】
第1の好ましい態様では、追加の元素は、Tiである。
第2の好ましい態様では、追加の元素は、TiおよびTaの混合物である。
第3の好ましい態様では、追加の元素は、Ti、TaおよびNbの混合物である。
第4の好ましい態様では、追加の元素は、TiおよびZrの混合物である。
第5の好ましい態様では、焼結炭化物は、0.01〜0.10重量%のNを含む。
第6の好ましい態様では、追加の元素は、Ti、またはTiおよびTaの混合物であり、そして両者の場合において、Nは、0.02重量%超のN、好ましくは0.03重量%超のNであるが、0.10重量%未満である。
【0011】
本発明による焼結炭化物の製造方法は、標準的技法によるWC−Co体の混合、粉砕、圧縮および焼結を含む。上記に従ったMe/CoおよびCWの値が、焼結した焼結炭化物において達成される量で、ppmレベルのTi、V、Nb、ZrもしくはTa、またはそれらの混合物が、加えられる。Ti、V、Nb、ZrもしくはTaは、純粋な金属として、または炭化物、窒化物および/もしくは炭窒化物もしくはそれらの混合物として加えることができる。
【実施例】
【0012】
例1
9.25重量%のCoに加えて、重量%で以下の組成物、および残りとしてWCを有する焼結炭化物体1A〜1Fを調製した。
表1a(炭化物として加えられた重量%の元素)
【0013】
【表1】

【0014】
混合物を、それぞれ湿式粉砕し、乾燥し、圧縮し、そして1410℃で、Arの保護的な雰囲気において、40mbarの圧力で、1時間焼結した。CW、Me/Coを焼結後に、0.014−(CW)×0.008および焼結後の粒径を決定し、そして表1b中に示した。
表1b
【0015】
【表2】

【0016】
NA=適用できず
立方晶炭化物を生成するものを少し追加した、焼結後のWC粒径サイズへの驚くべき効果が明確に示された。
【0017】
例2
例1と同様な方法により、表2aに示される組成を有する焼結炭化物の変化物2A〜2Eを調製した。両者ともにH.C.Starckから供給された、0.08重量%のNを有するWC−粉末および1.3μmのFSSS粒径のWC粉末を、OMGからの微粒子コバルト粉末、およびH.C.Starckからの微粒子TiC、TaC、NbCとともに使用した。
表2a 重量%での元素
【0018】
【表3】

【0019】
混合物を湿式粉砕し、乾燥し、圧縮し、そしてそれぞれ、1450℃で、Arの保護的雰囲気下、40mbarの圧力下で、1時間焼結した。CWを焼結後に、Me/Co、0.014−(CW)×0.008および焼結後の粒径を決定し、そして表2bに示した。
【0020】
さらに焼結体を、切断し、粉砕し、そして研磨し、そしてエッチングした。断面を光学顕微鏡によって調べ、そして任意の方向において10μmより大きいWC粒子の数を計算した。結果を表2bに示す。
表2b
【0021】
【表4】

【0022】
例1および2から、本発明による変化物は、遙かに少ない大粒子、およびTi、Ta、Zr、NbまたはVを少し追加した強い微細化効果による全体的に微粒子径を有する微細構造を有することが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.0〜2.5μmのWC粒径、ならびに3〜15重量%のCo含有量、およびそれに加えて、Me/Co=(Tiの原子%+Vの原子%+Nbの原子%+Zrの原子%+Taの原子%)/Coの原子%の比が、0.014−(CW)×0.008以下で、かつ0.0005超で、CWが0.80〜0.95(式中、CW=磁性Coの%/Coの重量%(式中、磁性Coの%は、磁性Coの重量パーセントであり、そしてCoの重量%は、焼結炭化物中のCoの重量パーセントである。))であるような、ppmレベルの次の元素、Ti、V、Nb、ZrもしくはTaまたはこれらの混合物、
を特徴とする、WC−Co焼結炭化物。
【請求項2】
該追加の元素が、Tiであることを特徴とする、請求項1に記載の焼結炭化物。
【請求項3】
該追加の元素が、TiおよびTaの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の焼結炭化物。
【請求項4】
該追加の元素が、Ti、TaおよびNbの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の焼結炭化物。
【請求項5】
該追加の元素が、TiおよびZrの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の焼結炭化物。
【請求項6】
0.01〜0.10重量%のNを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の焼結炭化物。
【請求項7】
該追加の元素が、Ti、またはTiおよびTaの混合物であり、いずれの場合でも0.02重量%超のNの含有量を有する、ことを特徴とする、請求項1による焼結炭化物。
【請求項8】
WCおよびCoを粉末の混合し、そして湿式粉砕して、加圧し、そして焼結することを含んで成る、WC−Co焼結炭化物の製造方法であって、
純粋な金属として、または炭化物、窒化物および/もしくは炭窒化物またはそれらの混合物として、ppmレベルのTi、V、Nb、ZrもしくはTaまたはそれらの混合物を、Me/Co=(Tiの原子%+原子%V+Nbの原子%+Zrの原子%+Taの原子%)/Coの原子%が0.014−(CW)×0.008以下で、かつ0.0005超で、CW=0.80〜0.95(式中、CW=磁性Coの%/Coの重量%(式中、磁性Coの%は、磁性Coの重量パーセントであり、そしてCoの重量%は、該焼結炭化物中のCoの重量パーセントである。))であるような量で、粉末混合物に追加することを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−540129(P2009−540129A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515351(P2009−515351)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050413
【国際公開番号】WO2007/145585
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】