説明

精液分析

【課題】精液サンプル中の運動精子濃度(MSC)を測定する方法を提供する。
【解決手段】光源と光検出器との間の透明容器にサンプルを配置し、前記サンプル中の精子の動きが透過光を変調し、これによってアナログ電圧信号の波形を生成することと、その信号をサンプリングし複数の信号サンプルを生成することと、波形選択手順により、基準を満たす信号を選択することと、基準を満たす信号サンプルの各々の絶対値を算出することと、絶対値の平均を算出することと、平均値aに基づいて運動精子濃度(MSC)を算出することと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精液分析に関する。
【背景技術】
【0002】
WTOの統計によれば、妊娠しなかった全夫婦の8%から10%は医療専門家に相談している。現在、4,000万以上の夫婦が不妊治療を受けている。これらの不妊症の夫婦の中で、40%の夫婦の不妊は男性に起因するものであり、また20%は男性および女性の複合的な要因に起因するものである、と推定される。精液分析は、男性に起因する要因の検査における主要な技術である。
【0003】
標準的な精液分析プロトコルは、少なくとも3つの主要な精液パラメータの測定を要する:
1. 総精子濃度(TSC)、
2. 運動精子率、および、
3. 正常精子形態率。
【0004】
実際上、精液分析は、人間の男性の不妊治療医学における重要な要素であるが、1930年代以来変わっておらず、今日もなお顕微鏡検査によって行なわれている。実際のところ、それは、依然としてほぼ手作業による方法だけで行われる、非常に残り少ない生体外体液分析の1つである。
【0005】
この手作業による方法には、精子細胞を慎重に観察し、計数してその濃度を測定し、その運動性を分類し、その形態を識別すること等が含まれる。この作業は高度な専門技術を必要とする、非常に大きな労力を要するものであり、標準のプロトコルに従って行われる場合には1つの検査につき少なくとも1時間はかかる。
【0006】
手作業による評価は、誤りが生じる多くの原因があるために、かなり不正確であることが知られている。誤りの主要な原因は、以下の通りである:
・評価者の主観、
・異なる研究所や異なる評価者によって用いられる基準の多様性、
・分析される精子の数が限られていることに起因する、大きな統計誤差。
【0007】
WHOマニュアル(WHO laboratory manual for the examination of human semen and sperm-cervical mucus interaction, 4th edition, Cambridge University Press, 1999)は、少なくとも200個の精子を観察し、各々の形態および運動性を分類することを推奨している。作業が単調であること、また、作業に多大の時間を要する特質を持つことにより、この作業自体が誤りを起こす手順となっている。実際、多くとも50個から100個の精子が分析される。たとえ評価者がいかなる誤りも生じさせない場合でも、統計上の誤りだけで数10パーセントに達する。
【0008】
上述の方法による結果として、精液分析検査結果は、非常に主観的であり、不正確であり、再現性に乏しいと世界的に認識されている。また、この問題が男性の不妊治療医学における大きな懸念となっており、それに関する大多数のシンポジウム、会議および会合の論議において未解決の問題となっているほど、研究室間および技術者間でばらつきがある。
【0009】
これらの問題を克服するために、医療器具会社は、画像解析(CASA - Computer Assisted Semen Analyzers)に基づいた、専用のコンピュータ化システムを採用した。その全ての結果が画像処理に基づくものであるため、これらのシステムは、極めて高品質の画像を必要とする。これらのシステムは、手作業による分析に取って代わること、業界で承認される規格を確立することを試みたが、そのいずれの目的にも成功しなかった。
【0010】
分析結果は、手作業による設定や型の異なる器具に依存し続けているため、1番目の目的を達成することはできなかった。システムは極めて高価であり、複雑であり、また、操作が難しいため、ルーチンの手作業による分析から代えることは、全く実現不可能である。実際、このようなシステムは、ルーチンの精液分析においては見受けられず、研究センター、大学病院、また、時には高度専門不妊治療センターにおいてのみ、わずかに採用されている程度にすぎない。
【0011】
精液測定のための更なる方法が、特許文献1および特許文献2において記載されており、これらの内容はここに含まれている。これらの特許には、電子光学手段およびアナログ信号解析器を用いて精子運動性を測定する方法が記載されている。精子細胞の懸濁は、精子の運動による光学濃度の変動を検出するために、所定の領域にて連続的に検査される。振幅変調されたアナログ電気記号がその変動に応じて発生し、また、この信号のピークおよび谷は、所定の期間にわたって計数され、精子運動指数(Sperm Motility Index:SMI)と称する理論的なパラメータが提供される。このパラメータは、運動性に関するものであり、運動細胞の個数にそれぞれの速度を乗じたものに比例する数値を示す。
【0012】
SMIパラメータを提供するSperm Quality Analyzer(SQA)と称する自動精液分析器は、多年にわたって市販されている。この分析器は、次のように用いられる:精子の検体は、一端にサンプルを吸引するためのゴム球を有し、また、他端に薄い測定コンパートメントを有する使い捨てのチャンバによって取り上げられる。サンプルを吸引した後に、測定コンパートメントはSQAに挿入され、サンプルのSMIは自動的に測定される。SMIパラメータは、幾つかの応用分野においては有益であるとは言え、従来の顕微鏡の精液測定に対する実現可能な代替案としては、医学会に全く受け入れられなかった。
【0013】
周知のように、獣医学の繁殖力分析の幾つかの分野では、総精子濃度(TSC)は、検体の光学的濁度を測定することによって評価される。このアプローチの根底にある物理的原理は、精子細胞が周囲の精漿より不透明であり、したがって、検体による光ビームの吸収はTSCに比例する、ということである。
【0014】
例えば、特許文献3は、サンプルを含む精子の吸光度を測定することによって精子濃度を測定し、少なくとも3つの加算チャネルを用いて吸光度出力信号と濃度とを関連づける方法を開示している。開示された方法は、牧畜業界の人工受精に用いることを意図したものであり、400〜700nmの範囲内で吸光度を測定する。
【0015】
しかしながら、以下の理由によって、この技術をヒトに利用するために採用することはなかった。また、採用することはできなかった:
(1)正常範囲の(また、たとえ正常より高い場合でも)ヒト精子濃度は、この技術が採用されている分野である、動物の同等物のほとんどよりも1桁以上も低い。
(2)精子濃度がその正常レベルよりかなり低いときでさえ、ヒトの場合は治療を受ける。もちろん、動物の場合はこの限りではない。不妊症の動物は通常は処分され−いずれにせよ不妊治療を受けることはない。
(3)ヒトのTSCは1つのパラメータであって、それだけでは不妊治療の調査には全く不十分であり、いずれにせよ、顕微鏡分析が、標準の精液分析プロトコルにおける他の全てのデータのために必要となる。これは、獣医学上の応用に有効である。この事実は、光吸収の測定を不必要なものにし、この分野において真の取り組みは行われてこなかった。
【0016】
よって、ヒト精液のTSCを測定するための容易且つ客観的な技術が必要である。
【0017】
WTOマニュアルによれば、(最も重要な単一の精液パラメータとおおかた考えられている)精子運動性評価は、顕微鏡下でグリッド方法を用いて手作業で実行されるか、または、CASAを用いて実行される。
【0018】
CASAは手作業による方法に比して幾つかの優位点がある。しかしながら、定量的なデータの精度およびその提供は、精密な精液準備技術および器具の設定に完全に依存している。このような器具類の非常に高い価格と同様に、これらの要素(高度な専門技術および先進技術環境)は、ルーチンの精液分析への応用を事実上妨げている。
【0019】
特許文献4は、液体中の精子、バクテリアおよび粒子の動きを特徴づけるための運動性スキャナを開示している。このスキャナは、コリメータレンズ、集光レンズ、撮像レンズおよび一対の反射要素を含む光学系、照明源、放射検出手段、信号処理手段ならびに表示手段、を有する。撮像レンズは、その対物面に、少なくとも約0.2mmの有効被写界深度を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第4,176,953号明細書
【特許文献2】米国特許第4,197,450号明細書
【特許文献3】米国特許第4,632,562号明細書
【特許文献4】米国特許第4,896,966号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、TSCを測定する方法を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、運動精子濃度(MSC)および運動率(% motility)を測定する方法を提供することである。
【0023】
本発明の更に他の目的は、精液パラメータの測定に用いるサンプリング装置を提供することである。
【0024】
本発明のもう1つの目的は、精液パラメータの測定のためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の第1の形態において、サンプルにおける総精子濃度(TSC)を測定する方法が提供される。その方法は、(i)共時的にパルス化された光源(共時的パルス光源)と光検出器と間の透明容器にサンプルを配置すること、および(ii)800〜1,000nmの範囲でサンプルの吸光度を測定することを有し、サンプルのTSCは、吸光度に比例する。
【0026】
本発明の方法は、画像解析に依存せず且つ人間のTSCを測定することが可能な、TSCの客観的な測定を提供する。しかしながら、この方法は、動物のTSCの測定にも用いることができる。
【0027】
本発明の第2の形態において、体液の光学的な分析に用いられるサンプリング装置が提供されており、以下を有する:
(i)自装置に体液を吸引するための吸引器、
(ii)上壁と下壁とを有し、壁の間の距離が100〜500ミクロンの範囲内である薄型測定チャンバ、
(iii)上壁と下壁とを有し、壁の間の距離が0.5〜30cmの範囲内である厚型測定チャンバ、および、
(iv)これらの測定チャンバから空気を除去する手段。
【0028】
好ましい実施の形態において、体液とは精液であり、最も好ましくはヒト精液である。この装置は、サンプラおよび二重検査チャンバの両方としての役目を果たし、TSCおよびMSCの同時検査を可能にする。いかなる測定においても希釈は不必要である。このことにより、労力が省かれるだけでなく、誤りの重大な発生源、すなわち希釈の不正確性も排除される。
【0029】
また、この装置は(必要に応じて)検体を別の観察チャンバへ移すことなく、検体の備え付けの可視化を可能にする。厚型チャンバは、光学濃度計とも称する。
【0030】
本発明の第3の形態において、精液サンプルにおける運動精子濃度(MSC)を測定する方法が提供されており、以下を有する:
(i)光源と光検出器との間の透明容器にサンプルを配置し、サンプル中の精子の動きが透過光を変調し、これによって信号を生成すること、
(ii)信号をサンプリングし複数の信号サンプルを生成すること、
(iii)基準を満たす信号を選択すること、
(iv)基準を満たす信号サンプルの各々の絶対値を算出すること、
(v)絶対値の平均aを算出すること、および、
(vi)平均aに基づいてMSCを算出すること。
【0031】
今日では、精液サンプルを通過する光線から生じるアナログ信号の波形の解析によりMSCの表示が提供されることが判明している。適切に選択された基準を用いると、波形によってカバーされる平均化領域とMSCとの間に高い相関が存在するということが判明している。精子サンプルのMSCは、本発明に従いサンプルの光学的特性を分析することによって得られ、精子の運動性のためにやがて変化する。以下に更に詳細に述べるように、実際には、これは波形の主要部分における平均信号振幅である。
【0032】
本発明の第4の形態においては、精子細胞の平均速度(AV)を測定する方法が提供されており、以下を有する:
(i)米国特許第4,176,953号において定義されている精子細胞のSperm Motility Index(SMI)を取得すること、
(ii)MSCを取得すること、および、
(iii)SMI/MSCの比率を含む代数式を用いてAVを算出すること。
【0033】
ここで、1979年12月4日発行の米国特許第4,176,953号を参照する。これは、イスラエル国、Medical Electronic Systemsにより生産されたSperm Quality Analyzersの様々なバージョンにおいて実施化されている。この特許は、精液分析に適用される場合には、SMI(Sperm Motility Index)と呼ばれるパラメータを提供する。上記特許において開示され且つ多数の裏付け研究で証明されているように、SMIとは運動細胞の濃度(MSCと称される)とそれらの平均速度(AV)との両方の関数である。簡約すると、SMIはMSC×AVの関数、または、AVはSMI/MSCの関数であると言える。精液サンプルの平均速度は、精子の運動性の品質の表示を提供することができる。
【0034】
上述したことにもかかわらず、MSCおよびAVの関数としてのSMIは、これらを直接乗算したものよりも更に複雑なものである。100個以上の精液サンプルを観察し分析し測定した後に、それらの正確な相互関係(式)が見出されている。概括的な言葉で言えば、平均速度を得るための式は、次のように定義することができる:AV=f(SMI/MSC)、なお、「f」は3次多項式である。相関係数がr=0.82の場合、f(x) =1/1000x3+1/10x2+0.89xである。
【0035】
ほとんどの精液分析プロトコルは、平均速度よりは、むしろ前進運動性を持つ精子の割合についてのデータを要する、という点に注目すべきである。前進運動性とは、5ミクロン/秒以上の平均速度を有する精子として定義される。速度の標準的な分散が平均値に近いと想定される場合、このパラメータも平均速度から容易に得ることができる。速度分布が標準的ではない場合であっても、前進運動精子の割合の算出が大きく影響を受けて誤ることはない。さらに、異なる最低速度が前進運動性と定義される場合、この変化する閾値は容易に演算に算入されるので、このパラメータの提供に、更なる柔軟性を与える。このことは、異なる希釈媒体、異なる周囲温度、または、実際、動物の測定における異なる生物種で作業する場合に、重要である。
【0036】
本発明の第5の形態において、精子の生存度を分析するシステムが提供されており、以下を有する:
(i)TSCを測定する手段、
(ii)MSCを測定する手段、および、
(iii)映像可視化システム。
【0037】
本発明のシステムは、2つの主要な精子パラメータであるTSCおよびMSCの測定を、精子の伝統的な可視化と組み合わせることにより、第3のパラメータである精子形態を得ることを可能とする。好適な実施の形態において、TSCおよび/またはMSCは、本発明の方法に従って測定される。他の好適な実施の形態においては、そのシステムは更に本発明のサンプリング装置を有する。
【0038】
本発明のシステムにおいて用いられる映像可視化システムと、その他の精子可視化システム(例えばCASA)との間には、基本的な差異があることを重視する必要がある。その他のシステムでは、全ての結果が画像処理に基づいているため、極めて高品質の画像が必要とされる。一方で本発明においては、可視化は特殊または疑わしいケースを目視検査し、処理結果に対する信頼性を高め、特殊な病理を特定し、手作業による精子形態評価を可能とするための単なる補足的なツールとして、必要に応じて用いられているにすぎない。
【0039】
これらの作業を遂行するために、本発明において用いられる映像可視化システムは、小型で安価なサブシステムとして設計されており、スタンドアロンとしての限られた用途にもかかわらず、まさに本発明のシステムにおける補足的な役割を果たしている。顕微鏡による手順と比較すると、この可視化システムの更なる重要な効果とは、ピペット操作、スライドの準備、希釈、および血球計算板の充填が不必要なことである。本発明の装置を、映像可視化システムと共に用いると、完全な検査チャンバを兼ねることとなり、上述の全てを不要とする。これらの特徴により、実際にいかなる小規模のクリニック、またはオフィス環境においてもそのシステムが利用できるようになる。
【0040】
映像可視化システムによって、検査済みサンプルに関する以下の補助的情報を得ることができる:
【0041】
1. 極低精子濃度の測定
極めて低濃度(精子500万個/ml以下)での、TSCの測定は、その精度において、本質的に限界がある。このことは、かような低レベルでは、精子細胞以外の要素による光吸収が相対的に大きくなる、という事実に起因する。光吸収は、精漿可変性、または精子以外の細胞の存在に起因しても起こり得る。後者は、WBC(感染を示す白血球)、および、多様な原因による他の未分化細胞または非精子細胞等を含む。本発明によれば、TSCは光吸収によって測定されるため、上述した点を考慮すると、可視化しなければ、極めて低いレンジで精度の得られない結果となる可能性があるであろう。低いレンジにおいてTSCが重要であるとみなされるとき、可視化は、光吸収に寄与する異なる細胞の区別を可能にする。MSCが光吸収とは別に測定されるので、視覚的に測定されたTSCパラメータを用いて、運動率(MSC/TSC)を算出することができる。
【0042】
2. 精液中の異質細胞の識別
本システムは、精液の質へ影響を与え、および/または、患者の疾患の診断に役立つ他の細胞の存在を識別するのに有効である。例えば、白血球は感染を示し、未成熟細胞は精子形成における問題を示し、また、細胞の凝集反応は幾つかの原因によって起こり得る。
【0043】
3. 手作業による精子形態の評価
本発明のシステムは、正常精子形態率を自動的に評価するが、それは一定基準(例えばWHO基準)に従って行われる。残念なことに、この基準は、世界的に認められてはいない。このような世界的に認められた基準はまだ存在しておらず、しばしばその応用に委ねられている。例えば、IVFおよびICSIへの応用に対する形態基準は、通常の場合よりかなり厳しくなっている。他の国際標準(例えば厳密なまたはクルーガー基準)もまた、広く用いられている。可視化することにより、不妊治療の専門家が、自分自身の基準を選択して特定の欠陥の存在(頭部形態異常、尾部形態異常等)を特定することも可能となる。
【0044】
4. 精管切除検証および無精子症診断
精管切除の予後を十分に検証するため、または、無精子症の最終的な診断を得るために、検査対象の精液中に精子が全く存在しないことを判定する必要がある。測定する濃度が極めて低くなるので、この判定は光吸収技術を用いたのでは、一般的には不可能である。この場合、個々の精子細胞の検査において広範囲の検査視野を慎重にスキャンするために、手作業による可視化が必要である。本発明のシステムにおける精子可視化システムは、これらの応用に対して最適に対処するために、とりわけ特化されたものである。
【0045】
5. ハードコピー
映像可視化システムでは、任意の選択映像(または数個の映像)の動きを止める(フリーズする)ことができ、さらにこれを印刷して精液分析報告書に添付することができる。これは、診察や治療効果の検証において、大きな価値を持つ。フリーズオプションの副次的な成果は、静止状態で精液サンプルを観察できることである。これは、分析および計数を非常に容易にする。顕微鏡による評価では、観察前に精子の動きを停止させる(死滅させる)ことによってのみ、これを成すことができる。そのときでさえ、死滅した精子は1つの層に集中して重なり合ってしまうこととなり、通常、これは分析を複雑にしてしまう状況を作り出す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る、TSCを測定する方法の一実施の形態を示すブロック図
【図2】本発明に係るサンプリング装置の一実施の形態を示す斜視上面図
【図3】図2に示される装置の部分側面断面図
【図4】図3の視点を90度回転させた分離弁の断面図
【図5】本発明の一実施の形態に係る、精液分析のためのシステムの略図
【図6】MSCを算出するためのアルゴリズムを示すフローチャート
【図7】平均速度を算出するためのアルゴリズムを示すフローチャート
【図8】時間の関数としての運動精子の典型的なアナログ信号を示す図
【図9】平均アナログ信号のMSCとの相関曲線を示す図
【図10】本発明に係る映像可視化システムの一実施の形態を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0047】
(例1)
上述のように、動物サンプルと相反して、ヒト精液サンプルのTSCの自動光学測定は、従来、精子細胞が低濃度であるために阻まれてきた。これは、例えば精漿の可変性による高いバックグラウンドの電子的および光学的ノイズと共に、動物の受精能力分析で通常用いられる方法を応用することを妨げてきた。本発明の方法では、以下の特徴を組み合わせることによって、これらの障害を克服する:
(i)サンプルを、共時的パルス光源および共時的に使用可能な光検知器の間の透明容器に配置する。共時的パルス光源および光検知器を使用することにより、電子ノイズレベルから低濃度の精子細胞を分けて識別することが可能となる。
【0048】
(ii)800〜1,000nmの範囲内でサンプルの吸光度を測定する。近赤外線域において吸光度の測定を行なうことで、精子細胞による強い吸光および精漿による弱い吸光を得るための光学的条件が得られることが判明した。好ましくは、測定範囲は、850〜950nmである。最も好ましい範囲は、880〜900nmである。
【0049】
本発明の方法を用いることにより、サンプルのTSCを吸光度関数として測定することができる。本発明の方法は、望ましくはヒト精液またはヒト精子のサンプルに用いられるものであるが、動物精液や動物精子にも、できれば適度に希釈した後で用いることができる。
【0050】
図1は、本発明の方法の一実施の形態を用いた光学システムの例を示す。全体として参照符号2で示されるこのシステムは、光源4、光検出器6、および、その間に設けられたサンプルホルダ8を有する。好適な光源は、近赤外線域の光を発する高速スイッチング共時パルス発光ダイオード(LED)であってもよい。光源は、順に変調器12によって調整される光強度制御器10によって制御される。光検出器は、共時的パルス光を検出することができる。光検出器は、測定されたアナログ信号を、同様に変調器12によって調整される復調器14に送信し、そこからディジタル信号出力部16へ送る。
【0051】
サンプルを通過するビーム路は、好ましくは垂線形である。サンプルを通過するビーム路の長さは、通常5mmから15mmの間であるが、好ましくは10mmである。サンプルホルダは、800nmおよび1,000nmの間の近赤外線領域の光波を完全に透過せねばならない。サンプルホルダが作られる塑性材料は、精子に対して全く無毒である必要があり、好適な材料は、ポリスチレンPG−79である。サンプルホルダは、好ましくは光測定を妨げる、サンプルへの空気の侵入や気泡の形成を完全に防ぐように、設計されねばならない。
【0052】
本発明の方法を用いることによって、およそ、細胞200万個/mlにまでTSC検出レベルを下げることが達成された。このレベルは、すでに極度の精液病理を示唆している。
【0053】
(例2)
図2は、本発明に係る精液測定に用いるサンプリング装置20の一実施の形態を示している。その装置は、前方に光学的観察部22、後方に吸引器24、および、中間に排除部26を有する。
【0054】
この光学的観察部22は、薄型測定チャンバ28と、厚型測定チャンバ30とを有する。薄型チャンバは、MSC測定および/または可視化のために用いられ、一方、厚型チャンバはTSC測定に用いられる。このような方法で、複数のパラメータを、同じサンプリング装置、および、サンプリングステップを用いて、同時に測定することができる。
【0055】
吸引器24は、シリンダ32と、その中に摺動しながら挿入されるプランジャ34とを有する。これらのパーツは、相互にぴったり組み合わされ、普通のシリンジとしての機能を果たす。この吸引器は、測定チャンバに精液サンプルを吸引する役割を果たす。
【0056】
排除部26は、測定チャンバと充填後のシリンダの内容物を分離するための分離弁36を有する。吸引器、薄型測定チャンバ、厚型測定チャンバ、および、排除部は、それらのすべてが、流体が流れるように連通している。
【0057】
矩形横棒状のアダプタ38は、装置20の一方に沿って延びるように設けられており、サンプルを検査する光学機器へ挿入する際に、正確に機器へスライドさせ、位置決めを行なう役割を果たす。更に、それは電気光学測定を精密にするために必要とされる機械的サポートと安定性を提供する。
【0058】
装置の各部は、図3に更に明確に示されている。薄型測定チャンバ28は、光ビームを透過する平行で透明な上壁40および下壁42を有する内空洞である。壁の間の距離は、100〜500ミクロン、好ましくは250〜350ミクロンの範囲であり、最も好ましくは、およそ300ミクロンである。この後者のケースにおいては、チャンバ内の液体容量は、およそ25μlである。チャンバの前端44は、サンプルを装置に吸引する開口部を有する。図示された実施の形態では、チャンバの幅はほぼ4mmである。
【0059】
薄型測定チャンバは、精子運動性の評価を行ない、例えば下壁42に対向する光源と、上壁40に対向する光検出器との間に位置する。また、光源と光検出器とを、これとは逆になるようにチャンバを介して位置させることもできることが理解できるであろう。光ビームは、精液サンプルが入っているチャンバを通過する。チャンバの反対側の検出器は、精子細胞の運動によって生じる光学濃度の変動をレジスタする。光学濃度の変動は、光検出器によって電気信号に変換され、次に、フィルタリング、ディジタル化、処理のために電子回路へ送られて、MSCが表示される。以下に更に説明するように、薄型測定チャンバはまた、映像可視化システムと共に用いることもできる。
【0060】
厚型測定チャンバ30は、光ビームが通過できる透明な上壁46および下壁48を有する。壁間の距離は、0.5〜3cm、好ましくは0.8〜1.2cmの範囲であり、最も好ましくはおよそ1cmである。この後者のケースでは、厚型チャンバに入る容量は、ほぼ0.5mlである。
【0061】
このチャンバは、精子濃度の電気光学吸収度測定を行なう役割を果たす。薄型チャンバ28の光ビームと同じまたは異なる光ビームは、チャンバの上下の壁を通過し、光検出器によって検出される。チャンバの容積は、気泡に起因する誤りを回避するために、精子サンプルで完全に満たされなければならない。チャンバを通過する際の光ビームの減衰量は、精子濃度に比例する。光ビーム強度は、チャンバを通過後に測定され、電子的方法によって、TSCの単位に変換される。サンプリング装置内のチャンバの順序は、交換することができる。
【0062】
シリンダ32は、2つの測定チャンバ28および30と流体連通しており、プランジャ34を引くことによって、流体はチャンバに吸引される。この吸引方法によって、多量のサンプルを装置に吸引することができる。気泡が測定チャンバに残ることを防止するために、分離弁36が、シリンダと測定チャンバの間に配置されており、それらと流体連通している。弁は図4に詳細に示されており、弁筐体52に摺動しながら入るピストン50を有する。測定チャンバ30とシリンダ32を接続している接続孔54は、ピストン50を通り抜ける。
【0063】
弁が上部に位置するときには、測定チャンバと吸引シリンダとの間が接続している。弁を押し下げることにより、その接続を遮断し、サンプルを測定する測定チャンバに空気が残存しないこと、また、温度変化があった場合でさえも漏出が起こらないことを確実にする。この技術は、空気が測定された流体内容物(前端44を除く)から排除されるため、ポジティブディスプレースメントと同等である。この設計は、実質的にあらゆる粘度を持つサンプルでの作業を可能にすると共に、同時に、分析される検体物からの漏出や気泡浸入を防止する。
【0064】
測定チャンバから空気を排除する方法は、分離弁によって例示されているが、ポジティブディスプレースメントピペットなどの他の方法を用いても良い。
【0065】
装置の全ての部分は、測定細胞に対して無毒の材料により製造されねばならない。好ましくは、材料はプラスチック材のように比較的安価であり、装置が使い捨て可能であることが好ましい。装置の製造に用いるポリマーの例として、ポリスチレンPG−79がある。分離弁、シリンダ、および、ピストンは、ポリプロピレンからなる。薄型測定コンパートメントは、その部分の精液の容積比が非常に高い領域であるため、装置の中で最も毒性に対して敏感な部分である。
【0066】
装置20にサンプルを吸引するために、薄型測定コンパートメント28の先端部44は、約5mmの深さまで精液サンプルに浸液され、それから分離弁36を通過して装置に吸引される。装置を完全に充填するには、約0.6ccだけが必要である。次に分離弁が押し下げられ、装置は光測定器に挿入される。
【0067】
(例3)
上述のように、本発明に係るMSCの測定は、MSCに比例する電圧信号の発生を必要とする。図5は、このような信号を生成することのできる精液分析システムの一実施の形態を示す。
【0068】
矩形の横断面を有する光キャピラリ100は、精液サンプル102を入れるために用いられる。キャピラリ100は、光源110が発する入射光ビーム105で照射される。キャピラリ100は、光ビーム105が通過する300μmの光路長を有する。キャピラリを通過後、拡散ビーム106は、70μmの直径を持つ円形の開口部108によって平行となる。平行ビーム107は、光検出器115に当たる。光検出器115が、ビーム107の強度に比例したアナログ電圧記号120を発する。アナログ信号は、例えば図8に示されるように、精液サンプル102の精子運動性によって、時間と共に変化する。アナログ信号120は、例えば8,000Hzのレートでアナログ信号120をサンプリングしてディジタル出力信号128を生成するアナログ/ディジタル変換器125に入力される。ディジタル出力信号は、メモリ130に記憶される。サンプル102の精子運動は、ビーム107の強度の変化をもたらし、アナログ信号120、および、ディジタル信号128に順番に影響を及ぼす。
【0069】
プロセッサ135は、精液サンプル102の分析を実行するために、メモリ130に記憶されるデータの分析を行なう構成を採る。分析結果は、パーソナルコンピュータ145のCRTスクリーン140などの表示装置、または内部のLCDスクリーン148上に表示される。
【0070】
図6は、例えば図5のプロセッサ135によって行なわれるように、本発明に従い、MSCを算出するアルゴリズムの一実施の形態を示すフローチャートである。
【0071】
ステップ200において、図5のディジタル信号128は、精液サンプル102の運動特性によって決まる信号の主要な周波数に該当しない高周波数および低周波を除去するために、ディジタル的にフィルタされる。これは、信号対雑音比を最適化するために行なわれる。信号128のDC成分もまた、除去される。ヒト精子サンプルには、例えば、最適の周波数範囲は、5〜30Hzの間であることが判明した。ステップ205において、経験的に決められる第1の所定の閾値より低い絶対値を有するディジタルサンプルは除外される。ステップ210において、同じ閾値が、全ての残留サンプルから減算される。
【0072】
ステップ215では、例えば無関係な細胞からの影響(アーティファクト)による全ての波形を除くために、波形選択手順が実行される。ヒト精子に関する波形選択の好ましい実施の形態は、以下の基準を満たさない全ての波形を除外することである:
最小高さ−10ミリボルト
最小幅−37.5ミリ秒
最大幅−500ミリ秒
最小上昇/落下時間−2.5ミリ秒
【0073】
精子に関連する波形の先端と末端の正しい定義(および検波)は、波形方向に著しい変化が起こるところと定義される。このような2ポイント間の時間差により、所与の波の時間幅が定義される。選択方法は、図8(目盛りに示さない)を一例として参照して、理解することができ、これは時間関数としてのアナログ信号(図5における120)の振幅を示す。閾値302は、出力信号と顕微鏡によって測定されたMSCとの間の最適な線形性を提供するために経験的に決められる。MSCの算出に用いられる波形は、304、305、306、および、307で示されている。その他の波形は、様々な理由により採用されなかった:308は、そのピークが閾値未満である;310は、広すぎる;また、312は、狭すぎる。
【0074】
図6のステップ220では、選択された全てのサンプルの絶対値が算出され、ステップ225では、絶対値の平均値aが算出される。ステップ230では、サンプル102のMSCが平均値aを基に算出される。例えば、MSCのaへの依存性は、1次方程式の形式で表現することができる。:
MSC=αa
【0075】
ここでは、αは、経験的に得られた定数である。好ましい実施の形態において、MSCのaへの依存性は、2次方程式の形式で表現することができる:
MSC=Aa2+Ba
【0076】
図9を参照する。特定のヒト精子サンプルが、本発明に基づいて分析された。MSCのaaへの依存性は、以下の代数式により表現できることが判明された:
MSC=0.0047a2+0.869a (I)
【0077】
小さい値のaに関しては、望ましい線形相関が存在することが判明した。式(I)を用いると、全範囲にわたる未処理の精子の相関因数(r)は、0.98より大きかった。
【0078】
変化する粘性を持つ処理精子サンプルの分析は、粘性を人工的に高くされた20%グリセロールを含むサンプルと合わせて、解凍サンプル、洗浄精子、希釈サンプル(3%のクエン酸ナトリウムおよびテストヨークバッファ内)を用いて行なわれた。変化するサンプル粘性(したがって、精子速度)は、MSCと平均信号との間の相関に著しい影響を及ぼさない(すべてのケースにおいて、「r」は依然として0.96以上である)ことが分かった。
【0079】
遠心性の濃縮技術を用いて、非常に広範囲の運動型ヒト精子濃度が測定された(最高250M/ml)が、著しい飽和度は見られなかった。最も高い範囲でのわずかな非線形性は、上述の簡単な2次多項式による補正によって、容易に修正される。
【0080】
また、ウシ精液の分析も行なわれ、ウシのMSCと全く同様に平均化された信号との間の相関因子(ヒトに関するものと同様の手順)は、同じように優れた結果を出した。しかしながら、ウシ精液は、測定前に希釈されねばならないことに留意すべきである。これは、一般的にウシ精液のMSCが、ヒトのそれより桁違いに大きいことによるものである。
【0081】
(例4)
上述のとおり、平均速度はSMIおよびMSCの関数である。図7を参照すると、SMIはステップ235で算出される。これは、例えば米国特許第4,176,953号に開示されるように、またはSQA分析器を用いて行なわれる。ステップ240において、MSCは周知のいかなる方法によっても算出される。好ましい実施の形態においては、MSCは本発明のアルゴリズムにより算出される(上述の例3を参照)。ステップ245では、SMI/MSC比を含む代数式を用いて、平均速度AVが算出される。一実施の形態において、AVは、その代数式を用いて算出される:
【数1】

【0082】
ステップ250では、算出結果が表示装置145または148(図5)に表示される。
【0083】
(例5)
本発明の分析システムと共に用いられる、映像可視化サブシステム(VVS)の一実施の形態が図10に示されている。精液サンプル300は、拡散位相造影反射鏡305の前に配置される。サンプルは標準の実験用スライドまたはスミアに入れられるか、または本発明のサンプリング装置に入れられる。反射鏡305からの光は、サンプル300、および、好ましくは20および40の増幅を有する切替可能な二相レンズシステム310を通過する。増幅された光は、次に小型のCCDビデオカメラ315へ伝達される。結果として生じる画像は、内蔵された観察スクリーン320に、または、例えばPC、スクリーン、印刷装置等の外部表示手段325に表示される。
【0084】
好ましい実施の形態において、VVSは本発明のサンプリング装置、特に薄型測定コンパートメントの周辺に組み込まれる。この特徴の目的は、通常の検査手順にこの機能を取り入れるための特別な準備を不必要にすることである。単に、自動検査が行われる、精液で満たされた装置を取り、それを観察ポートに挿入すれだけである。しかしながら、VVSは本発明のサンプリング装置と共にのみ用いられるとは限られておらず、標準の実験用スライドまたはスミアと共に用いることもできる。
【0085】
VVSの前端は、顕微鏡の前端と同様である。2つの対物レンズは、適用(20倍または40倍)に応じて、倍率および検査視野を最適化するために選択可能である。しかしながら、顕微鏡の接眼レンズではなく対物レンズからの画像が、小型のCCDビデオカメラへ送られる。CCDの寸法(対角)は6mmであり、観察スクリーンは、100mmのLCDである。これにより、約17倍の拡大映像が得られる。そしてこれにより、実質上、潜在的な全体の増幅が340または680となる。200および400の増幅係数が要求されるだけであるにもかかわらずこの設定が選択され、非常に小さな構成で上記の増幅に達することができる。これは、例えば小型且つ丈夫なデスクトップユニットにとって望ましい(特定の像距離を縮めることは、必要とされるところまで増幅を減少させる)。
【0086】
レンズおよびそれらの倍率設定は、薄型測定コンパートメント(例えば300ミクロン)の深さ全域にわたる走査を可能にするために(対象物からレンズまでの)「作動距離」を変更できるよう選択される。これは、このような走査を必要としない通常の顕微鏡観察に相反する。通常、対象物は、深さがたった20ミクロンのスライドに入れられ、走査または再フォーカスすることなく深さ全域を観察できるからである。
【0087】
上述したように、200または400の全体増幅係数が選択される。非精子細胞(白血球、円形細胞、等)の識別が必要なとき、また、精子細胞の各種形態上の病理(凝集反応、未成熟細胞、精子の頭部または尾部の欠損、等)の調査および評価が必要なとき、400の増幅が選択されることになる。200の増幅は、それらが精子であるかまたは他細胞であるかにかかわらず、細胞数の計数に好適である。低い方の増幅は、より広い視野(4倍以上広い)を提供し、それによって、計数統計が改善された。画像をフリーズする可能性は、双方の適用を大いに良くする。
【0088】
VVSを用いることによって細胞計数を容易にして真に定量的な結果を得るために、好ましい実施の形態においては、目盛り付きのグリッドが、LCD観察スクリーンに直接示される。グリッドは2cmの正方形から成り、これは精液が充填された測定コンパートメントにおける、増幅前のサイズで0.1mmに相当する(増幅係数は200)。この方法により、測定コンパートメント自体に細かいグリッドを正確に記録するという、非常に困難な作業が不要となる。後者の高価な解決策は、他の幾つかの血球計数器と同様にマックラー血球計算板に盛り込まれており、使い捨てとして使用することを妨げている。本発明においては、これは不要であり、VVSによって、グリッドが観察スクリーンの一部分となることを可能とする。
【0089】
VVSは、以下の応用に有効である:
(a) 非常に低い精子濃度の測定、
(b) 精液中の異質細胞(精子細胞以外)の識別、
(c) 任意の選択基準に従った手作業による形態分析、
(d) 精管切除術の有効性確認、
(e) 無精子症の診断、
(f) 視覚的な分析を伴うコンピュータ化された結果の実地比較、および、
(g) 様々な精液層の運動停止状態の画像のハードコピー「スナップショット」の提供。運動停止状態は、画像の動きを電子的に止めることによって達成される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
精液サンプル中の運動精子濃度(MSC)を測定する方法であって、
(i) 光源と光検出器との間の透明容器に前記サンプルを配置し、前記サンプル中の精子の動きが透過光を変調し、これによってアナログ電圧信号の波形を生成することと、
(ii) その信号をサンプリングし複数の信号サンプルを生成することと、
(iii) 波形選択手順により、基準を満たす信号を選択することと、
(iv) 基準を満たす信号サンプルの各々の絶対値を算出することと、
(v) 絶対値の平均を算出することと、
(vi) 平均値aに基づいて運動精子濃度(MSC)を算出することと、
を有する、方法。
【請求項2】
運動精子濃度(MSC)は、代数式MSC=Aa2+Baに従って算出される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
運動精子濃度(MSC)は、代数式MSC=0.0047a2+0.869aに従って算出される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
精子細胞の平均速度(AV)を測定する方法であって、
(i) 米国特許第4,176,953号において定義されている、精子細胞の精子運動指数(SMI)を取得することと、
(ii) 運動精子濃度(MSC)を取得することと、
(iii) 精子運動指数/運動精子濃度(SMI/MSC)比を含む代数式を用いて平均速度(AV)を算出することと、
を有する、方法。
【請求項5】
運動精子濃度(MSC)は、請求項1の方法に従って測定される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
平均速度(AV)は、等式AV=0.001X3+0.1X2+0.89Xから算出され、X=SMI/MSCである、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前進運動性を持つサンプル中の精子の割合を測定する方法であって、
請求項4の方法に従って精子細胞の平均速度(AV)を測定し、前記サンプル内で平均速度(AV)>5ミクロン/秒である精子の割合を測定する、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−118083(P2012−118083A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3160(P2012−3160)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【分割の表示】特願2002−591802(P2002−591802)の分割
【原出願日】平成13年5月24日(2001.5.24)
【出願人】(503431781)エムイーエス メディカル エレクトロニック システムズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】