説明

精神障害を診断及び監視するための方法及びバイオマーカー

対象から採取された試料における、1つ以上のペプチドバイオマーカーのレベルを測定することを含む、精神障害又はその素因を診断又は監視する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、精神障害、特に統合失調症(及び双極性障害)を、例えば、バイオマーカーを使用して診断する方法又は監視する方法に関する。また、本発明は、臨床スクリーニング、予後評価、治療の評価、薬剤スクリーニング、及び薬剤開発におけるバイオマーカーの使用にも関する。バイオマーカー及びそれらを用いた方法は、診断を支援するため、並びに精神障害の発症及び進行を評価するために使用できる。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
統合失調症に関するバイオマーカーの同定は、診断法及び治療計画の統合を可能にする。現在、有効な治療の決定においては著しい遅延があり、薬物応答の迅速な評価は、これまで実施できていない。従来、多くの抗統合失調症治療が、所与の治療アプローチのために数週間〜数ヶ月続く治療試験を必要としてきた。
Yangらの論文((2006), Anal. Chem. 78, 3571-6)には、統合失調症患者の血漿におけるタンパク質レベルの変化が開示されている。該結果は、薬剤有効性のマーカーに関連している。治療患者と非治療患者との間には、見かけ上は差がない。定量的な結果は示されていない。
【0003】
WO2007/045865(その内容は参照により組み込まれる。)には、精神病及び他の障害並びにバイオマーカーの必要性が記載されている。そこに記載されたバイオマーカーを挙げると、ApoA1(アポリポタンパク質)ペプチドがある。
WO2008/090319(本明細書で主張する優先日で未公開;その内容は参照により組み込まれる。)には、更なるバイオマーカーが開示されている。それらを挙げると、クラスタリン前駆体、インターα-トリプシンインヒビター、アポリポタンパク質A 2H、及びα2 HS糖タンパク質がある。
【発明の概要】
【0004】
(発明の概要)
WO2007/045865に記載された様式のアプローチに基づいて、更なるバイオマーカーが同定されている。本発明の一態様よると、精神障害又はその素因を診断又は監視する方法は、対象から採取された試料中に存在する1つ以上のバイオマーカーのレベルを監視することを含み、該バイオマーカーには、本明細書中に規定される少なくとも1つのものが挙げられる。
本発明の更なる態様は、特許請求の範囲に規定され、及び/又はWO2006/045865でバイオマーカーについて記載されたものと同じ手順/生成物である。それらには、対象における統合失調症の治療の有効性を監視する方法が含まれる。本発明の監視方法を使用して、精神障害の発症、経過、安定化、回復及び/又は寛解を監視することができる。
【0005】
本発明の別の態様は、対象におけるペプチドバイオマーカーの発生を刺激、促進又は活性化することが可能な物質を同定する方法であり、試験物質を対象動物に投与すること、並びに該対象由来の試験試料中に存在する該ペプチドバイオマーカーのレベルを検出すること及び/又は定量化することを含む。本発明の更なる態様は、統合失調症又はその素因の治療における、及び医薬としての、本発明の物質又はリガンドの使用である。該物質は、統合失調症又はその素因の治療用の医薬の製造において、本発明に従って使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(発明の説明)
本発明の使用において、単独又は2つ以上のバイオマーカーを、1又は2以上の場面で、1つ以上の試料に関して使用することができることが理解されるであろう。タンパク質バイオマーカーについて言及できる場合、状況により、そのようなタンパク質への言及には、それらの断片が含まれることが理解されるであろう。
【0007】
本発明による試験において、正常な対照中のレベルと比較して、試験生体試料中の血漿タンパク質バイオマーカーのレベルが変化しているか、又は低いことは、精神障害、特に統合失調症、双極性障害、又はそれらの素因が存在することを示す。生体試料中、好ましくは、全血、血漿又は血清試料中の血漿タンパク質のレベルの経時的な低下は、該障害の発症又は経過、すなわち、悪化を示すことができ、一方血漿タンパク質のレベルの上昇は、該障害の回復又は寛解を示すことができる。
【0008】
本発明の監視方法及び診断方法は、障害若しくはその素因の存在を確認するのに、発症及び経過を評価することによって該障害の進行を監視するのに、又は該障害の回復若しくは軽減を評価するのに有用である。また、監視方法及び診断方法は、臨床スクリーニング、予後、療法の選択、治療利益の査定を評価するための方法、すなわち、薬剤スクリーニング及び薬剤開発のための方法においても有用である。
有効な診断及び監視の方法は、的確な診断を確立すること、最も適切な治療の迅速な同定を可能にすること(これにより、有害な薬物副作用に不必要に曝されることが軽減される。)、「ダウンタイム(down-time)」及び再発率を低下させることによって、予後を改善する可能性のある非常に強力な「患者の解決策」を提供する。
【0009】
治療の有効性を監視する方法を使用して、ヒト対象における、及び非ヒト動物(例えば、動物モデル)における、既存の治療及び新しい治療の治療効果を監視することができる。このような監視方法を、新しい薬用物質及び物質の組み合せのためのスクリーニングに組み込むことができる。
ペプチドバイオマーカーレベルの変調は、統合失調症又はその素因の状態の指標として有用である。ペプチドバイオマーカーのレベルの経時的な低下は、該障害の発症又は経過、すなわち、悪化を示し、一方ペプチドバイオマーカーのレベルの上昇は、該障害の回復又は寛解を示す。
【0010】
本発明のペプチドバイオマーカーの検出は、臨床試験への参加の前に、対象をスクリーニングするのに使用できる。該バイオマーカーは、治療応答、不応答、望ましくない副作用プロファイル、服薬コンプライアンスの程度、及び十分な血清薬剤レベルの達成を示すための手段を提供する。該バイオマーカーを使用して、薬物有害応答、全ての向精神薬療法が直面する主要な問題について警告を与えることができる。バイオマーカーは、応答の評価を使用して、投与量を微調整し、処方する医薬の数を最小化し、有効な治療への到達における遅延を縮小し、かつ薬物有害反応を回避することができるので、個別の脳療法の開発に有用である。このように、本発明のバイオマーカーを監視することによって、患者の介護を、該患者の障害及び薬理ゲノミクスのプロファイルで決定される要求に的確に適合したものにすることができる。したがって、該バイオマーカーを使用して、最適な用量を設定し、確かな治療応答を予測し、かつ重度の副作用の危険が高い患者を特定することができる。
【0011】
バイオマーカーベースの試験は、「新しい」患者の一次評価を提供し、現在の主観的測定を用いては達成できない、正確かつ迅速な診断のための客観的測定値を、一定期間で、かつ正確に提供する。
更に、診断用のバイオマーカー試験は、「前駆期」の家族又は患者、すなわち、顕性統合失調症を発症する危険性が高い人を特定するのに有用である。これは、適切な治療、例えば、低用量の抗精神病薬又は例えば、ストレス、違法薬物の使用、若しくはウイルス感染などの危険因子を管理する予防措置の開始を可能にする。このようなアプローチは、結果を改善させることが理解されており、かつ該障害の顕性発症を防止することができる。
【0012】
また、バイオマーカーの監視方法、バイオセンサー及びキットは、再発が、真の破綻若しくは疾患の悪化、患者コンプライアンスの低さ、又は薬物乱用によるものであるかどうかを、医師が判断できるための患者監視ツールとしても不可欠である。薬理学的治療が不十分であると評価される場合、治療を元に戻すか、又は増やすことができる。真の破綻による疾患については、適切であれば、治療に変化を与えることができる。該バイオマーカーは障害の状態に敏感であるため、薬剤療法の影響又は薬物乱用の影響の指標となる。
【0013】
本発明のバイオマーカーに基づくハイスループットスクリーニング技術、本発明の使用及び方法(例えば、アレイ形式で構成される。)は、潜在的に有用な治療用化合物、例えば、天然化合物、合成化学化合物(例えば、コンビナトリアルライブラリー由来のもの)、ペプチド、モノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体、又はその断片など、バイオマーカーの発現を変調させることができるリガンドなどを同定するためのバイオマーカーを監視するのに適している。
【0014】
「バイオマーカー」という用語は、過程、事象又は状態の特有の生物学的指標又は生物学的に誘導された指標を意味する。ペプチドバイオマーカーを、例えば、臨床スクリーニング及び予後評価などの診断方法に、並びに特定の治療処置に最も応答する可能性のある患者を特定するために治療の結果を監視するのに、並びに薬剤のスクリーニング及び開発において用いることができる。バイオマーカー及びその使用は、新規の薬剤治療の同定及び薬剤治療のための新規の標的の発見に有益である。
【0015】
本明細書中で用いられる「薬剤未投与の患者(drug-naive patient)」という用語は、いかなる統合失調症治療物質による治療もなされていない個体を意味する。好ましい実施態様において、本発明は、試験試料が、初めて発症した薬剤未投与の個人である試験対象由来のものであり、かつ該試料が、抗統合失調症療法を該対象に施す前に採取される方法に関する。好ましくは、該対照試料は正常な個体からの試料である。
【0016】
本明細書中で用いられる「診断」という用語は、統合失調症又はその素因の同定、確認、及び/又は特徴付けを包含する。本明細書中で用いられる「素因」という用語は、対象が現在のところ障害を示していないが、将来的に該障害に罹患しやすいことを意味する。本発明による診断方法は、障害又はその素因の存在を確認するのに有用である。また、診断方法は、臨床スクリーニング、予後、治療の選択、治療利益の査定の評価のため、すなわち、薬剤スクリーニング及び薬剤開発のための方法にも有用である。
【0017】
本明細書中で用いられる「精神障害」という用語は、精神病として認められる症状の障害を指し、これを挙げると、神経精神病性障害(心因性うつ病及び他の精神病エピソード)及び神経発生障害(特に自閉症スペクトル障害)、神経変性障害、うつ病、躁病、及び特に統合失調症(妄想型統合失調症、緊張型統合失調症、破瓜型統合失調症、鑑別不能型統合失調症、及び残遺型統合失調症)並びに双極性障害がある。
【0018】
本発明の方法で試験することができる生体試料を挙げると、全血、血清若しくは血漿、尿、唾液、脳脊髄液(CSF)、又は他の体液(糞便、涙液、滑液、痰)、呼気(例えば、濃縮呼気として)、又はその抽出物若しくは精製物、又はそれらの希釈物がある。また、生体試料には、生きた対象の、又は死後に採取された、組織ホモジネート、組織切片及び生検標本も含まれる。該試料は、例えば、適切な場合には、希釈又は濃縮して調製し、通常の様式で保存することができる。
【0019】
本発明により、NMR分光法及び質量分析を含む、多くの分光技術を使用して、スペクトルを生成することができる。好ましい方法において、スペクトル分析は、NMR分光法、好ましくは1H NMR分光法によって行われる。1つ以上のスペクトルを生成することができ、1つは小分子用、別のものは巨大分子用のプロファイルを含む、一連のスペクトルを測定することができる。得られたスペクトルをスペクトル編集技術にかけてもよい。一次元又は二次元のNMR分光法を行うことができる。
【0020】
複雑な生体混合物を研究するためにNMR分光法を使用することの利点は、多くの場合、最小限の試料調製で(通常、5〜10%のD2Oを添加するのみで)測定を行うことができ、かつ全生体試料の詳細な分析プロファイルを得ることができる点である。
試料の容量は、通常、標準的なプローブで0.3〜0.5ml、及びマイクロプローブでわずか3μlと少量である。単純なNMRスペクトルの取得は、フローインジェクション技術を用いると迅速かつ効果的である。通常は水のNMR共鳴を抑制する必要がある。
【0021】
高分解能NMR分光法(特に、1H NMR)が、特に適切である。1H NMR分光法を使用する主な利点は、該方法の速さ(スペクトルが5〜10分で得られる。)、必要最小量のサンプル調製であること、及び代謝産物の構造型にかかわらず、生体液中の全ての代謝産物に対して非選択的な検出を提供するという事実であり、代謝産物がNMR実験の検出限界を超えて存在すること、及び代謝産物が非交換性の水素原子を含有することのみを条件とする。
【0022】
体液のNMR研究は、理想的には、最大限の分散及び感度を得るために利用可能な最も高い磁場で行うべきであり、ほとんどの1H NMR研究は、400MHz以上、例えば600MHzで行われる。
通常、1H NMRスペクトルを帰属させるために、標準物質の対照スペクトルを用いて、及び/又は該試料に信頼できる標準試料を標準添加することによって比較を行う。用いられる対照スペクトルは、正常な対象由来の生体試料のスペクトル分析によって生成される正常な対照スペクトル、及び/又は精神障害対象由来の生体試料のスペクトル分析によって生成される精神障害の対照スペクトルとし得る。
【0023】
通常、帰属の更なる確認は、他のNMR法の適用から求められ、これを挙げると、例えば、二次元(2D)NMR法、特にCOSY(相関分光法)、TOCSY(全相関分光法)、逆検出異核相関法、例えば、HMBC(異核多重結合相関)、HSQC(異核単一量子コヒーレンス)、及びHMQC(異核多重量子コヒーレンス)など、2D J分離(JRES)法、スピンエコー法、緩和編集、分散編集(例えば、分散編集TOCSYなどの1D NMR及び2D NMR)、並びに多重量子フィルタリングがある。
【0024】
正常な対照スペクトル及び/又は精神障害の対照スペクトルのスペクトル比較によって、該試験スペクトルを、正常プロファイル、精神障害プロファイル、又は精神障害素因プロファイルを有するものに分類できる。
スペクトルの比較は、全体のスペクトル又はスペクトルの選択領域で行うことができる。スペクトルの比較は、正常なスペクトルプロファイルからの逸脱に関与するスペクトル領域の変動の評価、及び特に、これらの領域内の1つ以上のバイオマーカーの変動の評価を含むことができる。
【0025】
血漿などの生体液の1D及び2Dの両方のNMRスペクトルから生化学的情報を理解することを制限している要因は、それらの複雑性にある。これらの複雑な多パラメータのデータを比較及び検討するのに最も効率的な方法は、1D又は2D NMRのメタボノミクス的アプローチを、コンピュータベースの「パターン認識」(PR)法及びエキスパートシステムと組み合わせて用いることである。
メタボノミクス的アプローチの有用性は十分に確立されているが、その潜在能力は未だ完全には引き出されていない。多くの場合、該代謝変動はわずかであり、特に、データ(例えば、NMRスペクトルなど)が非常に複雑である場合は、特定の検体の検出のために強力な分析法が必要である。
【0026】
試験集団のデータ(例えば、NMRスペクトル)を分析するメタボノミクス法(これは、多変量統計分析及びパターン認識(PR)技術、並びに場合によって、データフィルタリング技術を用いる。)からは、正確な数学モデルが得られ、これは、引き続き、試験試料又は対象を分類するために、及び/又は診断おいて使用することができる。
スペクトルの比較には、該スペクトルの1つ以上の計量化学分析を挙げることができる。「計量化学」という用語は、化学的数値データに対するパターン認識(PR)法及び関連する多変量統計アプローチの使用を説明するのに適用される。したがって、比較は、1つ以上のパターン認識分析法を含むことができ、1つ以上の教師あり法及び/又は教師なし法によって行うことができる。
【0027】
パターン認識(PR)法を使用して、データセットの複雑性を軽減し、科学的仮説を生成し、仮説を検証することができる。一般に、パターン認識アルゴリズムの使用は、系を規定しているパラメータのノイズ又はランダムな変動によって不明瞭になるおそれがある複雑な系において、いくつかの非ランダムな挙動の同定、及びいくつかの方法で、解釈を可能にする。また、用いられるパラメータの数は非常に多いことがあり、ヒトの脳にとっては三次元以下が最良である規則性又は不規則性の可視化が困難となる場合がある。
通常、測定される記述子の数は、3よりずっと大きく、試料間の任意の類似性又は相違性を可視化するのに、あまり単純な散布図は使用できない。パターン認識法は、例えば、言語学、フィンガープリンティング、化学、及び心理学に渡る範囲の多くの異なる種類の問題を特徴付けるのに広く使用されている。
【0028】
本明細書中に記載の方法に関して、パターン認識とは、多変量統計(パラメトリック及び非パラメトリックの両方)を使用して、分光データを分析し、それにより試料を分類し、様々な観察された測定値に基づいて、いくつかの従属変数の値を予測することである。2つの主なアプローチがある。一群の方法は「教師なし」と呼ばれ、これらは、合理的な方法でデータの複雑性を単純に軽減し、かつヒトの目で解釈できる表示プロットも生成する。他のアプローチは「教師あり」と呼ばれ、それにより、既知のクラス又は結果を有する試料の訓練セットを使用して、数学的モデルを生成し、次いで、独立の検証用データセットを用いてこれを評価する。
【0029】
教師なし技術は、任意の固有のクラスタリングがデータセット内に存在するかどうかを確立するために使用され、多くの場合、他の独立した知見を考慮せず、例えば、試料分類の予備知識なしに、試料の特性に従い次元を減らすことによって、試料をマッピングする方法からなる。教師なし法の例の挙げると、主成分分析(PCA)、非線形マッピング(NLM)、及び階層的クラスター分析などのクラスタリング法がある。
【0030】
最も有用でかつ容易に適用される教師なしPR技術の1つは、主成分分析(PCA)である(例えば、Kowalskiらの文献、1986を参照されたい。)。主成分(PC)とは、適切な重み付け係数を用いて開始変数の線形結合から作り出される新しい変数である。このようなPCの特性は、以下のようなものである:(i)各PCは、他の全てのPCに対して直交(無相間に)しており、かつ(ii)第1PCは、最大部のデータセット(情報量)分散を含み、それに続くPCは、対応して、より小さい量の分散を含む。
【0031】
次元縮小法であるPCAは、K次元における値(記述子ベクトル)によって、それぞれ説明されるm個の目的物又は試料を取得し、記述子ベクトルの線形結合である一連の固有ベクトルを抽出する。該固有ベクトル及び固有値は、データの共分散行列の対角化により得られる。該固有ベクトルは、主成分(PC)と呼ばれる新しい一連の直交プロット軸と考えることができる。データにおける系統的変動の抽出は、データ行列の分散及び共分散構造の投影及びモデリングにより達成される。主軸は、データにおける最大の変動を説明する単一の固有ベクトルであり、かつ主成分1(PC1)と呼ばれる。それに次ぐPC(固有値の減少により順位付けされる。)は、連続的に、より小さい変量を表す。PCにより説明されていないデータにおける変動は残差分散と呼ばれ、該モデルがデータにどれだけよく適合するかを表す。PC上への記述子ベクトルの投影値はスコアとして定められ、これが、試料間又は目的物間の関連性を明らかにする。グラフ表示(「スコアプロット」又は固有ベクトル投影)において、類似の記述子ベクトルを有する目的物又は試料は、クラスターになって集合する。別のグラフ表示はローディングプロットと呼ばれ、これはPCを個々の記述子ベクトルに結び付け、PCの解釈に対する各記述子ベクトルの重要性及びそのPCにおける記述子ベクトル間の関連性の両方を示す。実際には、ローディング値は単に、元の記述子ベクトルがPCと成す角の余弦である。
【0032】
このプロット中の起点近くに収まる記述子ベクトルは、PC中に情報をほとんど有していないが、該起点から離れた(ローディング値の高い)記述子ベクトルは、解釈にとって重要である。したがって、最初の2又は3のPCスコアのプロットが、情報量という点から、それぞれ二次元又は三次元におけるデータセットの「最良の」表現を与える。最初の2つの主成分スコアのプロットであるPC1及びPC2は、二次元におけるデータの最大情報量を提供する。そのようなPCマップを使用して、例えば、メタボノミクス応答、したがって作用機構の類似性に基づく薬剤及び毒物に対する固有のクラスター化挙動を視覚化することができる。当然ながら、クラスター化情報は、より下位のPC中に存在することもあり、これらも調べることができる。
【0033】
別の教師なしパターン認識法である階層的クラスター分析は、ある多次元空間において互いに「近い」という特性により、類似しているデータ点を分類することを可能にする。個々のデータ点は、例えば、NMRスペクトルにおける特定の帰属ピークに対する信号強度であってよい。「類似度行列」Sは、要素ssij=1−rij/rijmax'(式中、rijは、i点とj点との間の点間距離(例えば、点間のユークリッド距離)であり、rijmaxは、全ての点について最大の点間距離である。)で構成される。
【0034】
最も離れた点の対は、rijがrijmaXと等しくなるので、sijは0に等しくなる。逆に、最も近い点の対は、最大のsijを有し、1に近づく。該類似度行列は、距離が最も近い点の対について読み取られる。点の対が、その分離距離と共に報告され、次いで、該2点を削除し、単一の併合した点で置き換える。次いで、該過程を反復して、1つの点のみが残るまで繰り返す。いくつかの異なる方法を使用して、2つのクラスターがどのように結び付くかを決定することができる。該方法を挙げると、最短距離法(単連結法としても公知)、最長距離法、重心法(重心連結、インクリメンタル連結、メジアン連結、群平均連結及び可変連結の変形を含む。)がある。
【0035】
次いで、報告された結合度をデンドログラム(クラスター化の視覚化を可能にする樹木様のチャート)としてプロットし、分離距離の増加に対する(又は同等に、類似度の低下に対する)試料−試料の結合度を示す。デンドログラムにおいて、枝の長さは様々なクラスター間の距離に比例している。したがって、1つの試料を次の試料に連結している枝の長さは、それらの類似性の尺度である。このようにして、類似するデータ点をアルゴリズムで同定することができる。
【0036】
分析の教師あり法は、試料データの訓練セット用に与えられたクラス情報を使用して、2つ以上の試料クラス間の分離を最適化する。このような手法を挙げると、SIMCA(soft independent modelling of class analogy)、PLS判別分析(projection to latent、PLS DA)などの部分的最小二乗(PLS)法、k最近傍分析、及びニューラルネットワークがある。ニューラルネットワークは、データをモデル化する非線形法である。データの訓練セットを使用して、データの構造を「学習」し、かつ複雑な関数に対処できるアルゴリズムを構築する。数種のニューラルネットワークが、スペクトル情報から毒性又は疾患を予測するのにうまく適用されている。
また、データを分析するのに、一元配置分散分析(ANOVA)などの統計学的手法を用いてもよい。
【0037】
スペクトル分析を含む本発明の方法を実施して、2以上の場面で試験対象から採取された生体試料由来のスペクトルを提供することができる。2以上の場面で試験被験体から採取された生体試料由来のスペクトルを比較して、異なる場面で採取された試料のスペクトル間の差を同定することができる。方法としては、生体試料中に存在する1つ以上のバイオマーカーのレベルを定量化して、2以上の場面で採取された生体試料中に存在する1つ以上のバイオマーカーのレベルを比較する、2以上の場面で試験対象から採取された生体試料由来のスペクトルの分析を含むことができる。
【0038】
本発明の診断及び監視の方法は、精神障害の予後を評価する方法において、精神障害に罹患している、罹患の疑いがある、又はその素因のある対象における、投与された治療物質の有効性を監視する方法において、及び抗精神病物質又は精神病亢進物質を同定する方法において、有用である。そのような方法は、試験対象から採取された試験生体試料中の1つ以上のバイオマーカーのレベルを、該物質の投与前に該試験対象から採取された1つ以上の試料中、及び/又は該物質による治療期間の初期段階で該試験対象から採取された1つ以上の試料中に存在するレベルと比較することを含むことができる。加えて、これらの方法は、2つ以上の場面で試験対象から採取された生体試料中の1つ以上のバイオマーカーのレベルの変化を検出することを含むことができる。
【0039】
本発明の方法、特にスペクトル分析が用いられる方法において、及び特に生体試料が血液であるか、又は血液に由来する(例えば、血漿又は血清)場合において、適当なバイオマーカーは本明細書中に記載されたものである。
本発明の方法は、試験対象から採取された生体試料中の1つ以上のバイオマーカーのレベルを、治療の開始前に該試験対象から採取された1つ以上の試料中、及び/又は治療の初期段階で該試験対象から採取された1つ以上の試料中に存在するレベルと比較することを含むことができる。そのような方法は、2以上の場面で採取された試料中の1つ以上のバイオマーカーの量の変化を検出することを含むことができる。本発明の方法は、抗精神病療法の評価において特に有用である。
【0040】
本発明の診断方法又は監視方法は、試験対象から採取された試験生体試料中の1つ以上のバイオマーカーを定量化すること、及び前記試験試料中に存在する1つ以上のバイオマーカーのレベルを1つ以上の対照と比較することを含むことができる。該対照は、正常な対照及び/又は精神障害の対照から選択できる。本発明の方法に使用する対照は、下記からなる群から選択される1つ以上の対照とし得る:正常な対象由来の正常な対照試料中に見出されるバイオマーカーのレベル、正常なバイオマーカーレベル;正常なバイオマーカー範囲、統合失調症、双極性障害、関連の精神障害に罹患している対象、又はその素因を有すると診断された対象由来の試料中のレベル;統合失調症マーカーレベル、双極性障害マーカーレベル、関連の精神障害マーカーレベル、統合失調症マーカー範囲、双極性障害マーカー範囲、及び関連の精神障害マーカー範囲。
【0041】
生体試料は、対象の残存寿命又はその一部に渡って、間隔を置いて採取できる。好適には、診断又は監視を受けている対象からの試料採取間に経過する時間は、3日、5日、1週間、2週間、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月又は12カ月となるであろう。試料は、抗統合失調症療法又は双極性障害療法などの抗精神病療法の前、及び/又はその期間中、及び/又はその後に採取することができる。
【0042】
バイオマーカーのレベルの測定は、患者から採取された生体試料、又は該試料からの精製物若しくは抽出物、又はその希釈物中のバイオマーカーの量を同定するのに適した任意の方法によって実施できる。試料中に存在するバイオマーカーのレベルの測定としては、該試料中に存在するバイオマーカーの濃度を測定することを挙げることができる。そのような定量化は、該試料に対して直接的に、又はその抽出物若しくはその希釈物に対して間接的に実施することができる。本発明の方法において、生体試料(好ましくは、全血、血漿又は血清である。)中のバイオマーカーの濃度を測定することに加え、該試験対象から採取された異なる生体試料、例えば、CSF、尿、唾液、又は他の体液(糞便、涙液、滑液、痰)、呼気(例えば、濃縮呼気として)、又はその抽出物若しくは精製物、又はその希釈物中でバイオマーカーの濃度を試験することができる。該生体試料には、生きた対象の、又は死後に採取された、組織ホモジネート、組織切片及び生検標本も含まれる。該試料は、例えば、適切な場合には、希釈又は濃縮して調製し、通常の様式で保存することができる。
【0043】
バイオマーカーレベルは、下記からなる群から選択される1つ以上の方法によって測定できる:NMR(核磁気共鳴)又は質量分析(MS)などの分光法;SELDI(-TOF)、MALDI(-TOF)、1Dゲルベース分析、2Dゲルベース分析、液体クロマトグラフィー(例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)又は低圧液体クロマトグラフィー(LPLC))、薄層クロマトグラフィー、及びLC-MSベースの技術である。適切なLCMS技術を挙げると、ICAT(登録商標)(Applied Biosystems社、CA、USA)又はiTRAQ(登録商標)(Applied Biosystems社、CA、USA)がある。
【0044】
バイオマーカーの測定は、直接的又は間接的な検出方法によって実施することができる。バイオマーカーは、酵素、結合、受容体若しくは輸送タンパク質、抗体、ペプチド、アプタマー若しくはオリゴヌクレオチド、又は該バイオマーカーを特異的に結合させることができる任意の合成化学的な受容体若しくは化合物などの、リガンド又はリガンド類との相互作用を介して、直接的又は間接的に検出することができる。該リガンドは、発光標識、蛍光標識又は放射性標識、及び/又は親和性タグなどの検出可能な標識を有することができる。
【0045】
本明細書中で用いられる「抗体」という用語は、限定はされないが、下記を包含する:ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片及びF(ab')2断片、Fab発現ライブラリーによって作製された断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、及び上記のいずれかのエピトープ結合性断片である。また、本明細書中で用いられる「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性のある部分、すなわち、抗原を特異的に結合させる抗原結合部位を含む分子も指す。本発明の免疫グロブリン分子は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)のもの、又は免疫グロブリン分子のサブクラスとし得る。
【0046】
好適には、本明細書中に記載される代謝物バイオマーカーは、従来の化学的又は酵素的な方法(これらは、直接的又は間接的なものでもよく、及び/又は共役されていなくてもよい。)、電気化学法、蛍光測定法、発光測定法、分光光度法、蛍光測定法、発光測定法、分光測定法、旋光分析法、クロマトグラフィー法(例えば、HPLC)、又は同様の手法によって測定される。
酵素的方法について、測定の手段として、反応における基質の消費、又は該反応の生成物の生成を、直接的又は間接的に検出することができる。
【0047】
好ましくは、本発明のバイオマーカーは、質量分析に基づく手法;クロマトグラフィーに基づく手法;酵素的検出システム(直接的又は間接的な測定による);又はセンサー(例えば、電流測定、電位差測定、電導度測定、インピーダンス、磁気、光、音響又は熱変換器を備えたセンサーシステム)を用いて、検出及び測定される。
センサーは、物理的、化学的又は生物学的な検出システムを組み込むことができる。センサーの一例はバイオセンサー、すなわち、例えば、オリゴヌクレオチドプローブ若しくはアプタマーなどの核酸、又は酵素、結合タンパク質、受容体タンパク質、輸送タンパク質若しくは抗体などのタンパク質に基づく、生物学的認識システムを有するセンサーである。
【0048】
該バイオセンサーは、バイオマーカーの免疫学的な検出方法、電気、熱、磁気、光(例えば、ホログラム)又は音響による技術を組み込むことができる。そのようなバイオセンサーを用いると、生体試料中で見られると予測される濃度で標的バイオマーカーを検出できる。
本発明の方法は、臨床スクリーニング、予後評価、治療の結果の監視、特定の治療処置に最も応答する可能性のある患者の特定に、薬剤スクリーニング及び開発に、並びに薬物治療の新しい標的の同定に役立てるのに適している。ある疾患に特異的な、鍵となるバイオマーカーの同定は、診断法と治療計画との統合の中核を成すものである。
【0049】
本発明の方法は、対象における精神障害を診断及び/又は監視するための1つ以上の評価を更に含むことができる。評価は、例えば、全体的機能スコア(GAF)又はSCIDなどの認められた評価プロトコールに従い臨床医によって行われる臨床評価とすることができ、及び/又は該対象による自己評価を含むこともできる。評価尺度を使用して、診断及び/又は監視に役立てることができる。GAF及びSCIDは、臨床面接に基づいて評価される。全体的機能スコアなどの評価は、該対象からの試験生体試料の採取時点(すなわち、採取と同日)又は採取の前後(すなわち、採取の数日以内)になされることが好ましい。これは、VLDL及びLDLレベルが、全体的機能スコアによって決定された臨床評価と非常に密接な逆相間を有することが見出された雌性の対象を診断及び監視するためのツールとして特に有用である。
【0050】
本明細書中に記載されるもののような予測用バイオマーカーを使用すれば、センサー及びバイオセンサーなどの適切な診断ツールを開発できる。したがって、本発明の方法及び使用において、センサー又はバイオセンサーを用いて1つ以上のバイオマーカーの検出及び定量化が実施できる。
【0051】
該センサー又はバイオセンサーは、バイオマーカーの検出について本明細書中に記載した検出方法及び検出システムを組み込むことができる。センサー又はバイオセンサーは、電気(例えば、電流測定、電位差測定、電導度測定、又はインピーダンスによる検出システム)、熱(例えば、変換器)、磁気、光(例えば、ホログラム)又は音響による技術を用いることができる。本発明のセンサー又はバイオセンサーにおいて、1、2又は3種のバイオマーカーのレベルを、下記から選択される1つ以上の方法によって検出できる:直接的、間接的、又は共役した酵素法、分光光度法、蛍光測定法、発光測定法、分光測定法、旋光分析法、及びクロマトグラフィー法である。特に好ましいセンサー又はバイオセンサーは、媒介物を介して直接的若しくは間接的に使用されるか、又は結合タンパク質、受容体タンパク質若しくは輸送タンパク質を用いて、電気、光、音響、磁気又は熱変換器に共役される、1つ以上の酵素を備える。そのようなバイオセンサーを使用すると、生体試料中で見出される予測される濃度で標的バイオマーカーのレベルを検出できる。
【0052】
本発明のバイオマーカーは、「スマート」ホログラムに基づく技術若しくは高周波音響システムを組み込んでいるセンサー又はバイオセンサーを使用して検出でき、そのようなシステムは、「バーコード」又はアレイ構成に特に適合しやすい。スマートホログラムセンサー(Smart Holograms Ltd、ケンブリッジ、UK)では、ホログラフィー画像は、バイオマーカーと特異的に反応するように感作された薄いポリマーフィルム中に格納される。露出時に、該バイオマーカーは該ポリマーと反応し、その結果、ホログラムにより表示される画像に変化が生じる。試験結果の読出しは、光学的な明るさ、画像、色、及び/又は画像位置の変化とすることができる。定性的及び半定量的な用途について、センサーホログラムは眼で読むことができるため、検出装置は必要なくなる。定量的測定が必要な場合は、単純な色彩センサーを使用して該信号を読むことができる。試料の不透明さ、又は色は、該センサーの動作を妨げない。該センサーの構成は、いくつかの物質の同時検出のための多重化を可能にする。異なる要求を満たすように可逆的及び不可逆的なセンサーを設計でき、かつ関心のある特定のバイオマーカーを連続的に監視することが可能である。
【0053】
好適には、本発明のバイオマーカーの検出用バイオセンサーは、共役されたものであり、すなわち、該バイオセンサーは、生体分子認識を適切な手段と結び付けて、試料中のバイオマーカーの存在の検出又は定量化を信号に変換する。バイオセンサーは、「代替場所」、例えば、病棟、外来患者部門、診療所、家庭、屋外、及び職場での診断試験に適合させることができる。
本発明のバイオマーカーを検出するためのバイオセンサーを挙げると、音響センサー、プラズモン共鳴センサー、ホログラフィックセンサー、及びマイクロ工学によるセンサーがある。本発明のバイオマーカーの検出のためのバイオセンサーには、インプリントされた認識素子、薄膜トランジスター技術、磁気音響共鳴装置、及び他の新規の音響−電気システムを用いることができる。
【0054】
本発明のバイオマーカーの検出及び/又は定量化を含む方法は、卓上機器を用いて実施できるか、又は実験室以外の環境、例えば、診療所又は患者のベッドサイドで使用できる使い捨て可能な診断用又は監視用プラットフォームに組み込むことができる。本発明の方法を実施するのに適したセンサーを挙げると、光学読取又は音響読取を備えた「クレジット」カードがある。センサー又はバイオセンサーは、収集したデータを解釈のために医師に電子的に送信するように構成でき、それにより、e-神経医学の基礎が形成できる。
【0055】
治療の有効性を監視する方法は、ヒト対象における、及び非ヒト動物における(例えば、動物モデルにおける)、既存の治療及び新しい治療の治療効果を監視するのに使用できる。このような監視方法は、新しい薬用物質及び物質の組み合せのためのスクリーニングに組み込むことができる。
試験試料中のペプチドバイオマーカーのレベルが、同じ試験対象からより早い時期に採取された以前の試験試料中のレベルに比べて上昇しているということは、障害、障害の疑い又はその素因に対する、前記治療の有益な効果、例えば、安定化又は改善を表している。
【0056】
好適には、診断又は監視を受けている対象からの試料採取間に経過する時間は、3日、5日、1週間、2週間、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月又は12カ月となるであろう。試料は、抗統合失調症療法の前、及び/又はその期間中、及び/又はその後に採取することができる。試料は、対象の残存寿命又はその一部に渡って、間隔を置いて採取できる。
試料中に存在するバイオマーカーの量を定量化することには、該試料中に存在するペプチドバイオマーカーの濃度を測定することを含むことができる。検出及び/又は定量化は、該試料に対して直接、又はその抽出物若しくはその希釈物に対して間接的に実施することができる。
【0057】
検出及び/又は定量化は、患者の生体試料中、又は生体試料の抽出物の精製物若しくはその希釈物中の特定のタンパク質の存在及び/又は量を同定するのに適した任意の方法で実施できる。本発明の方法において、定量化は、試料(単数又は複数)中のペプチドバイオマーカーの濃度を測定することによって実施することができる。本発明の方法において試験し得る生体試料を挙げると、脳脊髄液(CSF)、全血、血清、尿、唾液、又は他の体液(糞便、涙液、滑液、痰)、呼気(例えば、濃縮呼気として)、又はその抽出物若しくは精製物、又はそれらの希釈物がある。また、生体試料には、生きた対象の、又は死後に採取された、組織ホモジネート、組織切片及び生検標本も含まれる。好ましくは、該試料は、CSF又は血清である。該試料は、例えば、適切な場合には、希釈又は濃縮して調製し、通常の様式で保存することができる。
【0058】
ペプチドバイオマーカーの検出及び/又は定量化は、ペプチドバイオマーカーの検出又はその断片、例えば、C末端切断の断片、及び/又はN末端切断の断片の検出によって実施することができる。好適には、断片は、長さが4アミノ酸より長い。好ましくは、断片は、長さが約6〜約50アミノ酸の範囲にある。
【0059】
該バイオマーカーは、例えば、SELDI又はMALDI-TOFによって、直接検出することができる。あるいは、該バイオマーカーは、抗体又はバイオマーカーに結合するその断片、又は他のペプチドなどのリガンド若しくはリガンド類、又は例えば、アプタマー若しくはオリゴヌクレオチドなど、該バイオマーカーを特異的に結合させることができるリガンドとの相互作用を介して、直接又は間接的に検出することができる。該リガンドは、検出可能な標識、例えば、発光標識、蛍光標識若しくは放射性標識、及び/又は親和性タグを有することができる。リガンドを挙げると、例えば以下がある:
(1) インビボ:T3、T4(甲状腺ホルモン)、ビタミンA(血清レチノール結合タンパク質との相互作用によって間接的に)、アポリポタンパク質AI(ApoAI)、ノルアドレナリン酸化生成物、及びプテリンである。
(2) インビトロ(それらの大部分が薬理学的作用剤):数種の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ポリハロゲン化ビフェニル及び甲状腺ホルモン様化合物などの環境汚染物質、キサントン誘導体、並びに天然及び合成のフラボノイドである。
【0060】
例えば、検出、監視、診断、及び/又は定量化に関する方法は、下記からなる群から選択される1つ以上の方法によって実施できる:SELDI(-TOF)、MALDI(-TOF)、1Dゲルベース分析、2Dゲルベース分析、質量分析(MS)、LC及びLC-MSベースの手法である。適切なLCMS手法を挙げると、ICAT(登録商標)(Applied Biosystems社、CA、USA)又はiTRAQ(登録商標)(Applied Biosystems社、CA、USA)がある。また、液体クロマトグラフィー(例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)又は低圧液体クロマトグラフィー(LPLC))、薄層クロマトグラフィー、NMR(核磁気共鳴)分光法も使用し得る。
【0061】
本発明の診断又は監視方法は、SELDI-TOF、MALDI-TOF、及び質量分析を用いる他の方法によって、生体試料、例えば、脳脊髄液(CSF)又は血清を分析して、該ペプチドバイオマーカーの存在又はレベルを検出することを含むことができる。そのような手法は、相対的定量化及び絶対的定量化のために使用することができ、かつ本発明のバイオマーカーと存在し得る他のバイオマーカーとの比率を評価するためにも使用することができる。また、これらの方法は、臨床スクリーニング、予後、治療の結果の監視、特定の治療処置に最も応答する可能性のある患者の特定、薬剤スクリーニング及び開発に、並びに薬剤治療の新しい標的の同定にも適している。
【0062】
表面増強レーザー脱イオン/イオン化(SELDI)質量分析は、例えば、薬剤治療及び疾患などの所与の条件について、体液及び組織中のタンパク質及びペプチドの特徴的な「フィンガープリント」を同定するための強力なツールである。この技術は、タンパク質/ペプチドを捕捉するためのプロテインチップ、及び1,000Da未満の小分子及びペプチド〜最大500kDaのタンパク質までの範囲の化合物の質量を定量化及び計算するための飛行時間型質量分析計(tof-MS)を利用する。タンパク質/ペプチドパターンにおいて、定量化可能な差は、生体液スペクトル中で測定された各タンパク質/ペプチドを多次元空間における座標として現す、自動コンピュータープログラムを用いて統計学的に評価できる。このアプローチは、該バイオマーカーの独自性の知識なしに診断ツールとして使用できるので、臨床バイオマーカー発見の分野において最も成功している。また、該SELDIシステムは、1回の実験で数百の試料を処理する能力を有する。加えて、SELDI質量分析からの全ての信号は、(プロテアーゼ消化を必要とする他のいくつかのプロテオミクス技術とは異なり)天然のタンパク質/ペプチドに由来する。したがって、所与の条件の内在する生理機能を直接反映する。
【0063】
該ペプチドバイオマーカーの検出及び/又は定量化は、免疫、ペプチド、アプタマー又は合成認識に基づく任意の方法を使用して実施することができる。例えば、該方法は、該ペプチドバイオマーカーに特異的に結合することができる抗体、又はその断片を含むことができる。
任意の適当な動物を対象として使用することができる。それは、ヒト、又は非ヒト動物、例えば、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ゼブラフィッシュ、ヒツジ、イヌ、ネコ、魚類、例えば、モルモット、ラット又はマウスなどのげっ歯類、昆虫(例えば、ショウジョウバエ)、両生類(例えば、アフリカツメガエル)又はC. エレガンスであってよい。
【0064】
同定の方法に使用する場合、該試験物質は、限定はされないが、抗統合失調症治療薬、又は合成若しくは天然の化学物質などの、公知の化学物質又は医薬物質、あるいは2つ以上の先述の物質の組み合わせとし得る。
【0065】
対象においてペプチドバイオマーカーの発生を刺激、促進又は活性化することができる物質を同定することには、試験細胞を試験物質に曝露させること、及び前記試験細胞の、又は前記試験細胞によって分泌されたペプチドバイオマーカーを監視することを含むことができる。該験細胞は原核細胞であってよいが、細胞ベースの試験方法においては真核細胞を用いることが好ましい。好適には、該真核細胞は、酵母細胞、昆虫細胞、ショウジョウバエ細胞、両生類細胞(例えば、アフリカツメガエル由来)、C. エレガンス細胞であるか、又はヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、魚類、げっ歯類、又はマウス由来の細胞である。ヒトポリペプチドを発現することができる、非ヒト動物又は細胞を使用できる。
【0066】
また、スクリーニング方法は、本発明のペプチドバイオマーカーに結合することができるリガンドを同定する方法も包含する。該同定方法は、結合に適した条件下、該ペプチドバイオマーカーの存在下で試験物質をインキュベートすること、及び前記試験物質への該ペプチドの結合を検出及び/又は定量化することを含む。
本発明のバイオマーカー、使用及び方法に基づくハイスループットスクリーニング技術(例えば、アレイ、パターン又はシグネチャーの形式で構成される)は、該バイオマーカーを結合させることができる潜在的に有用な治療用化合物、例えば、天然化合物、合成化学化合物(例えば、コンビナトリアルライブラリー由来のもの)、ペプチド、モノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体、又はその断片などのリガンドの同定のためにバイオマーカーのシグネチャーを監視するのに適している。
【0067】
本発明の方法は、例えば、チップ上のアレイ、パターン若しくはシグネチャーの形式で、又はマルチウエルアレイとして実施できる。上記のように、質量分析などの他の手法も使用できる。方法は、単独試験、又は複数の同一試験若しくは複数の非同一試験用のプラットフォームに適合することができ、かつハイスループット形式で実施できる。本発明の方法は、1つ以上の付加的な異なる試験を実施して、診断を確認又は排除する、及び/又は条件を更に特徴付けることができる。
【0068】
本発明は、更に本発明の同定方法又はスクリーニング方法又は使用によって同定される、又は同定可能な物質、例えば、リガンドを提供する。そのような物質は、ペプチドバイオマーカーの活性を直接的又は間接的に刺激、促進又は活性化することができるか、又は該ペプチドバイオマーカーの発生を刺激、促進又は活性化する能力を有し得る。物質という用語には、ペプチドバイオマーカーを直接結合させ、かつ直接、該ペプチドバイオマーカーの発現を誘導する、又は機能を促進若しくは活性化することはないが、代わりに、間接的に、該ペプチドバイオマーカーの発現を誘導する、又は該ペプチドバイオマーカーの機能を促進/活性化する物質が含まれる。また、リガンドも物質という用語に含まれ;本発明のリガンド(例えば、天然化合物又は合成化学化合物、ペプチド、アプタマー、オリゴヌクレオチド、抗体又は抗体断片)は、ペプチドバイオマーカーに結合する、好ましくは、特異的に結合することができる。
【0069】
統合失調症又はその素因を診断又は監視するためのキットは、ペプチドバイオマーカーに特異的なリガンド、ペプチドバイオマーカー、対照、試薬、及び消耗品から選択される1つ以上の構成要素を含むことができ;場合によって、該キットの使用のための説明書を一緒に備えてもよい。
本発明のバイオマーカーの治療上の使用に関して本明細書中で用いられる「治療すること」又は「治療」という用語は、疾患と闘うという目的のための患者の管理又は介護を説明するものであり、例えば、症状又は合併症の発症を防ぐ(すなわち、予防)ために、無症状の個体へ活性薬剤を投与することを含む。
【0070】
本明細書中で用いられる「治療物質」という用語は、治療的、すなわち、治癒的/有益な特性を有し、統合失調症を治療し、その症状を緩和し、又は統合失調症の発症を防止する物質を規定するものである。したがって、該物質は、統合失調症の治療において使用するためのものである。
下記の実施例には、本発明が基礎としている根拠が含まれる。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
この実施例は、体液中の多数の標的タンパク質の正確な定量化を可能にする高感度アッセイシステムである、小型化及び並列化したサンドイッチイムノアッセイ、例えば、多検体プロファイル試験(Multi-Analyte Profiling test)の有用性を例示する。これらの多重アッセイシステムは、従来の単独試験に取って代わるものであり、かつ微量な試料から多数のパラメータの同時測定を可能とする。
Luminex社XMap(登録商標)技術のプラットフォームを用いて156の生化学的マーカーの発現レベルを測定する多検体プロファイル(maps)を、初発、薬剤未投与の統合失調症患者(n=33)、前駆患者(n=17)、及び十分に適合した健常対照(n=30)から採取した血清試料で行った。いくつかの生化学的マーカーは、初発の統合失調症患者及び/又は前駆患者において、対照と比較して、顕著に上方又は下方に制御された。したがって、統合失調症に罹患する可能性のある患者の初期診断に使用する候補バイオマーカーが表された。また、これらのマーカーは、治療中の患者を監視すること、又は薬剤応答、有効性、副作用、及びコンプライアンスを実際に予測若しくは監視することにおける有用性を有し得る。統計的に有意な候補バイオマーカー及び関連の発現データを表1〜3に要約する。最も有意に変化しているバイオマーカー18種を用いる主成分分析(PCA)では、統合失調症の試料が75%の感度及び79%の選択性で、対照から離れてクラスター化する。前駆患者の試料で同じ主成分を用いると、それらは統合失調症と対照との間でクラスター化する。
【表1】

【表2】

【表3】

【0072】
実施例1のデータ分析から、急性期反応(APR)の成分の一部が、統合失調症患者及び前駆患者の両方で著しく変化することが示唆された。正及び負の両方の急性期反応タンパク質が、著しく変化した:薬剤未投与、初発の統合失調症と対照との間で、ハプトグロビンは1.39倍増加(p≦0.029)、フィブリノゲンは-1.89倍低下(p≦0.02)、ICAM-1は-1.2倍低下(p≦0.010)、α-1アンチトリプシンは-1.76倍低下(p=0.058)、及び血清アミロイドPは-1.43倍低下(p≦0.033)した。
【0073】
(実施例2)
更なる候補バイオマーカーを同じ方法で同定した。結果は以下である。
【表4】




【0074】
本明細書中で同定された候補バイオマーカーの一部又は全部は、初発の統合失調症、急性精神病エピソード、又は他の関連する精神障害の患者の診断及び監視における潜在的な有用性を有するであろう。これらのバイオマーカーは、様々な生化学的経路:急性期反応、酸化ストレス、マクロファージ応答、脂質代謝;細胞成長及び増殖;並びに甲状腺ホルモンの制御と関係がある。これらの生化学的経路の分析から、初発の統合失調症、急性精神病エピソード、又は他の関連する精神障害の患者の診断及び監視に潜在的に有用な、他の有望な候補バイオマーカーが示される。
統合失調症と対照との比較において、他の免疫応答系の変化が見られた。例えば、G-CSF(対照の74%;P<0.034)、ICAM-1(83%;P<0.010)、IL-3(32%;P<0.074)、 IL-7(76%;P<0.009)、IL-13(74%;P<0.001)及びIL-15(76%;P<0.009)の発現の著しい低下、並びにIL-1RA(1.76倍;P<0.036)の大きな増加が見られた。そのような変化は、初発の統合失調症において、白血球生成、炎症(マクロファージ応答及びヒスタミン放出)、B細胞増殖、及びRA応答が低下したことを示している。
加えて、Q-tof MS/MSを用いた別の研究から、健常対照と比較して、統合失調症の対象では、CD5Lが大きく低下(43% p≦0.002)したことが示された。CD5Lは、免疫系の特定の細胞(単球及びリンパ球)を結合させ、かつ活性化することができ、この系の制御に重要な役割を果たしている。
【0075】
また、該データは、これらの候補バイオマーカー(IL-1RAの発現を低下させたG- CSF、ICAM-1、3、7、13及び15)の全部又は一部を、統合失調症の早期発見のためのバイオマーカーアッセイパネルの一部として使用できることを示している。
また、本研究から判断すると、初発の統合失調症患者は、マクロファージ細胞、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、及びB細胞の応答の変化を示し得る。したがって、これらの細胞を分類する、又は特徴付けるためにすでに使用されている他の有望なマーカーが、それらの統合失調症診断への潜在的な適用について研究されるであろう。これらを挙げると、マクロファージ活性化及び分化についての27E10及び第XIII-A因子、マクロファージ成熟についてのCPM、マクロファージ刺激についてのキトトリオシダーゼ及びCD14、並びにキラーT細胞分化についてのCD4及びCD8、キラーT細胞活性化についてのCD28、CD80及びCD86がある。そのような候補バイオマーカーは、統合失調症の早期発見のためのバイオマーカーアッセイパネルの一部として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象から採取された試料における、下記から選択される1つ以上の第1のペプチドバイオマーカーのレベルを測定することを含む、精神障害又はその素因を診断又は監視する方法:
α1アンチトリプシン
アンジオポエチン2
アンジオテンシノーゲン
抗核抗体
アポリポタンパク質A1
アポリポタンパク質CIII
サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)抗体
ベータセルリン
BMP6
C.トラコマティス(C. trachomatis)
C反応性タンパク質
カルシトニン
癌胎児性抗原
CD40
CD40リガンド
コレラ毒素
4型コラーゲン抗体
補体3
コルチゾール
サイトメガロウイルス
ENA78
エンドセリン1
EN-RAGE
エオタキシン3
エプスタイン・バーウイルス早期抗体
エリスロポエチン
第VII因子
GM-CSF
成長ホルモン
ピロリ菌
A型肝炎
B型肝炎 コア
B型肝炎 表面 Ad
B型肝炎 表面 Ay
C型肝炎 コア
C型肝炎 NS3
C型肝炎 NS4
D型肝炎
E型肝炎ウイルスorf2 6KD
E型肝炎ウイルスorf3 3KD
単純ヘルペスウイルス1型、2型
肝細胞増殖因子
ヒストンH4抗体
ヒストンH2b抗体
HIV1 gp120
HIV1 p24
HSC70
HSP32 HO抗体
HSP71抗体
IL-12 p40
IL-16
IL-17
IL-5
IL-1ra
IL-3
IL-7
A型インフルエンザH3N2
Jo-1抗体
ドノバンリーシュマニア(L. donovani)
レプチン
ライム病
リンホタクチン
マイコプラズマ・ニューモニエ(M. pneumoniae)
MDC
MIP1β
ミトコンドリア抗体
ムンプ抗体
ミエロペルオキシダーゼ
ミエロペルオキシダーゼpANCA抗体
PAI1
膵島細胞GAD抗体
膵ポリペプチド
パラインフルエンザ1型
パラインフルエンザ2型
パラインフルエンザ3型
PDGF
ペプチドYY
PM1抗体
ポリオウイルス
プロラクチン
前立腺酸性ホスファターゼ
プロテイナーゼ3(cANCA)抗体
RANTES
レジスチン
呼吸器多核体ウイルス
RNP(c)抗体
RNP抗体
風疹
麻疹
Scl70抗体
SGOT
SHBG
スミス抗体
sRAGE
幹細胞因子
ストレプトリジンO
T3抗体
TECK
トロンボポエチン
サイログロブリン抗体
チロキシン結合グロブリン
組織因子
TNFα
TNF-RII
TRAIL R3
TSP1
V. 帯状疱疹
VEGF
フォン・ヴィルブランド因子。
【請求項2】
対象から採取された試料における、下記から選択される2つ以上の第2のペプチドバイオマーカーのレベルを測定することを含む、精神障害又はその素因を診断又は監視する方法:
α2マクログロブリン
アポリポタンパク質A1
アポリポタンパク質H
脳由来神経栄養因子
β2ミクログロブリン
セントロメアタンパク質B抗体
クロモグラニンA
2型コラーゲン抗体
結合組織成長因子
EGF
EGF R
Fasリガンド
フェリチン
塩基性FGF
フィブリノゲン
卵胞刺激ホルモン
GST
ハプトグロビン
ヒストン抗体
ヒストンH1抗体
ヒストンH2a抗体
ヒストンH3抗体
HSP90α抗体
HSP90β抗体
ICAM1
IgA
IGF BP2
IL-8
IL-10
IL-13
IL-15
IL-18
IL-6
A型インフルエンザ
インスリン
インスリン抗体
黄体ホルモン(βポリペプチド)
MIF
MIP1α
NrCAM
リボソームP抗体
血清アミロイドP
ソルチリン
SSB抗体
TIMP1
組織トランスグルタミナーゼセリアック病抗体。
【請求項3】
前記第1のペプチドバイオマーカーが下記から選択される、請求項1記載の方法:
α1アンチトリプシン
アポリポタンパク質A1
カルシトニン
4型コラーゲン抗体
EN-RAGE
成長ホルモン
ヒストンH4抗体
HSC70
HSP71抗体
IL-1ra
IL-7
Jo-1抗体
レプチン
リンホタクチン
MDC
ムンプ抗体
PAI1
前立腺酸性ホスファターゼ
プロテイナーゼ3(cANCA)抗体
RANTES
RNP(c)抗体
風疹
SHBG
幹細胞因子
T3抗体
チロキシン結合グロブリン
組織因子
TNF-RII
V. 帯状疱疹。
【請求項4】
対象から採取された試料における、請求項1に規定された第1のペプチドバイオマーカーのレベル及び請求項2に規定された第2のペプチドバイオマーカーのレベルを測定することを含む、精神障害又はその素因を診断又は監視する方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の方法を含む、精神障害を有する、有する疑いがある、又はその素因のある対象において治療の有効性を監視する方法。
【請求項6】
2以上の場面で前記対象から採取された試料中に存在する、前記/又は各バイオマーカーのレベルを測定することを含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記対象から採取された試料中の前記又は各バイオマーカーのレベルを、治療の開始前に該対象から採取された試料中に存在するレベル、及び/又は治療の初期段階で該対象から採取された試料中に存在するレベルと比較することを含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記治療が、抗精神障害治療である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
2以上の場面で採取された試料中の前記バイオマーカーの量の変化を検出することを含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
試料中に存在する前記バイオマーカーのレベルを、対照のレベルと比較することを含む、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記対照が、正常な対照及び/又は精神障害の対照である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記又は各レベルが、NMRスペクトルの分析によって検出される、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記又は各レベルが、NMR、SELDI(-TOF)、MALDI(-TOF)、1Dゲルベース分析、2Dゲルベース分析、質量分析(MS)及びLC-MSベース技術から選択される方法によって検出される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記又は各レベルが、直接又は間接的、共役又は非共役の酵素的方法、電気化学法、分光光度法、蛍光測定法、発光測定法、分光測定法、旋光分析法及びクロマトグラフィー法、又はELISAなどの免疫学的方法から選択される方法によって検出される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
血漿タンパク質のレベルが、紫外吸光及び比色法から選択される1つ以上の方法によって検出される、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記又は各レベルが、前記バイオマーカーの直接又は間接的検出のために、1つ以上の酵素、結合、受容体若しくは輸送タンパク質、抗体、合成受容体、又は他の選択的結合分子を含むセンサー又はバイオセンサーを使用して検出され、前記検出が電気、光、音響、磁気又は熱変換器と共役している、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記試料が、全血、血清、血漿、又はそれらの抽出物若しくは精製物、又はそれらの希釈物から選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記対象から採取された更なる試料中において、1つ以上のバイオマーカーを定量化することを含む、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記更なる生体試料が、CSF、尿、唾液若しくは他の体液、又は呼気、濃縮呼気、又はそれらの抽出物若しくは精製物、又はそれらの希釈物から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、薬剤未投与である、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記精神障害が、統合失調症である、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記統合失調症が、妄想型統合失調症、緊張型統合失調症、破瓜型統合失調症、鑑別不能型統合失調症、及び残遺型統合失調症から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記精神障害が、双極性障害である、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
請求項1及び3に規定された1つ以上の第1のペプチドバイオマーカーを検出すること及び/又は定量化することができるバイオセンサーを含む、精神障害を監視又は診断するためのキット。
【請求項25】
請求項2に規定された1つ以上の第2のペプチドバイオマーカーを検出すること及び/又は定量化することができるバイオセンサーを更に含む、請求項24記載のキット。
【請求項26】
請求項2に規定された2つ以上の第2のペプチドバイオマーカーを検出すること及び/又は定量化することができるバイオセンサーを含む、精神障害を監視及び診断するためのキット。

【公表番号】特表2011−506995(P2011−506995A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538894(P2010−538894)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/004186
【国際公開番号】WO2009/077763
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(510171575)
【出願人】(510171586)ケンブリッジ エンタープライズ リミテド (1)
【Fターム(参考)】