説明

精錬方法と攪拌動力密度決定方法

【課題】取鍋内の溶鋼にガスを吹き込む二次精錬において、溶鋼の攪拌によるスラグの巻き込み量を抑えることができる二次精錬方法と攪拌動力密度決定方法を提供する。
【解決手段】溶鋼にガスを吹き込んで溶鋼を攪拌することにより精錬を行う際に、溶鋼上のスラグの粘性によってスラグの巻き込み量が変化することから、スラグの粘性と相関のあるスラグの固相率を求め、その固相率を用いて溶鋼の攪拌動力密度εの上限値を算出し、その上限値を超えないようにガスを吹き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋内の溶鋼にガスを吹き込むことにより精錬を行う精錬方法と攪拌動力密度決定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
取鍋内の溶鋼にガスを吹き込むことにより精錬を行う精錬方法として、例えば、転炉から出鋼された溶鋼にガスを吹き込むことによって精錬を行う二次精錬方法がある(特許文献1)。
通常、ガスを吹き込んで溶鋼を攪拌する際、溶鋼を強く攪拌し過ぎると大量のスラグが溶鋼中に巻き込まれてしまい溶鋼内の介在物が増加することから、前記特許文献1では、溶鋼を強く攪拌し過ぎることがないように、攪拌を開始して5分後は溶鋼の攪拌動力密度を250W/t(ワット/トン-steel)以下となるように、ガスの吹き込み量、吹き込む圧力を調整している。
【特許文献1】特開平11−279630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、攪拌動力密度を250W/t以下にするだけで、ガスを吹き込む際の
スラグの粘性が考慮されていないため、スラグの粘性が低い場合には、同じ攪拌動力密度であってもスラグの巻き込み量が増加するという問題があった。
そこで、本発明は、溶鋼の攪拌によるスラグの巻き込み量を抑えることのできる精錬方法と精錬における攪拌動力密度決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。即ち、本発明は、溶鋼にガスを吹き込んで溶鋼を攪拌することにより精錬を行う精錬方法において、前記溶鋼の攪拌動力密度の上限値を、前記溶鋼上に浮いたスラグの固相率から算出して、その上限値を超えないように前記ガスを吹き込む点にある。
本発明では、溶鋼における攪拌動力密度の上限値を、溶鋼のスラグにおける固相率から算出して、その上限値を超えないように前記ガスを吹き込んでいるので、溶鋼の攪拌によるスラグの巻き込み量を抑えることができる。
【0005】
即ち、発明者らは、溶鋼にガスを吹き込んだ際、スラグの粘性が高い場合はスラグの巻き込みが少なく、一方で、スラグの粘性が低い場合はスラグの巻き込みが多いことに着目し、スラグの粘性に応じて攪拌動力密度の上限値を決めてガスの吹き込み量を調整すれば粘性の高低に関わらずスラグの巻き込み量が抑えることができると考えた。
しかしながら、スラグの粘性を測定するには、溶鋼上で浮いたスラグを採取してから粘性を測定しなければならず、その作業が面倒であるばかりか、固体と液体とが混在したスラグの場合、その粘性を測定するのは困難であった。
【0006】
そこで、発明者らは、スラグの粘性に相当するものがないかと考えたところ、スラグ中の固体の比率が増加するにつれて、スラグの見かけの粘性が大きくなると考え、スラグ固相率から攪拌動力密度の上限値を算出して、各種の実験を行ったところ、その考えの正しさが立証された。
そこで、スラグの固相率によって溶鋼の攪拌動力密度の上限値を算出し、その上限値以下のガスを吹き込むようにしていることから、粘性の高低に関わらずスラグの巻き込み量が抑えることができるようにしたのである。
【0007】
なお、前記スラグ固相率は、スラグ全体の質量に対する固体質量の割合であり、例えば100gのスラグに対してその固体質量が50gの場合には固相率は50%となる。
また、スラグの固相率は、スラグの組成と、スラグの温度を市販の熱力学平衝計算ソフトに入力することによって簡単に求めることができる。
前記溶鋼は取鍋に貯留されており、前記攪拌動力密度の上限値は式[1]を満たすことが好ましい。
ε≦3.5×fs+16.5 ・・・・(1)
ε=1/2×0.0285QTlog(1+H/148×760/P)
ただし、ε:攪拌動力密度(W/t)
fs:スラグの固相率(%)
Q:単位重量当たりのガス流量(Nl/分・t)
T:溶鋼温度(K)
H:溶鋼深さ(cm)
P:取鍋内の真空度(torr)
なお、攪拌動力密度εは既に公知であり、例えば、『鉄と鋼』1981年第6号P24に記載されている。攪拌動力密度εを用いる利点としては、取鍋の大きさ等に影響されることなく溶鋼の攪拌度合いを管理できる点にある。
【0008】
前記溶鋼の二次精錬を、LF装置で行った。
他の本発明は、溶鋼にガスを吹き込んで溶鋼を攪拌して精錬を行うに際し、ガス吹き込みによる溶鋼へのスラグの巻き込み量を減少させるべく溶鋼の攪拌動力密度を決定する攪拌動力密度決定方法において、前記攪拌動力密度の上限値を、スラグの固相率から決定する点にある。
これによれば、溶鋼における攪拌動力密度の上限値を、溶鋼のスラグにおける固相率から決定しているので、精錬の際に溶鋼の攪拌によるスラグの巻き込み量を抑えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、溶鋼の攪拌によるスラグの巻き込み量を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明の精錬方法及び攪拌動力密度決定方法に使用する精錬装置について説明する。
図1に示すように、精錬装置1は、転炉(図示略)から出鋼した溶鋼2を精錬する二次精錬装置である。この二次精錬装置1は電極加熱式の精錬装置(LF装置)であって、大気圧の雰囲気下で精錬を行うものであり、溶鋼2を貯留する取鍋3と、取鍋3の溶鋼2内にガスを吹き込む吹き込み装置4と、溶鋼2を加熱する電極式加熱装置5とを有している。また、二次精錬装置1は、フラックス等を添加するための供給装置6を有している。
【0011】
吹き込み装置4は、取鍋3の底部に設けられてその底部からガスを吹き込むポーラス吹込口7と、取鍋3の上部からガスを吹き込むランス9とを備えており、ランス9の先端には溶鋼2内にガスを吹き込むノズルが設けられている。なお、吹き込み装置4は、ポーラス吹込口7のみを有するものであっても、ランス9のみを有するものであってもよい。
したがって、二次精錬装置1では、電極式加熱装置5で溶鋼2を所定温度まで上げて、吹き込み装置4からガスを吹き込んで溶鋼2を攪拌することによって、溶鋼2内の介在物を浮上分離させたり、化学組成を調整したり等の精錬を行うことができるようになっている。
【0012】
また、精錬するに際し、供給装置6にフラックスを投入することによって、溶鋼2上のスラグSを所定の化学組成に調整することができるようになっている。
本発明の精錬方法は、溶鋼2にガスを吹き込んで溶鋼2を攪拌するに際し、溶鋼2の攪拌動力密度の上限値を、溶鋼2上に浮いたスラグの固相率から算出して、その上限値を超えないようにガスを吹き込むようにしている。
具体的には、攪拌動力密度の上限値は、スラグの固相率を変数とする下記の式[1]から算出しており、上記の二次精錬装置1で精錬する際には、式[1]で求めた攪拌動力密度を超えないようにArガスを吹き込むようにしている。
【0013】
ε≦3.5×fs+16.5 ・・・・(1)
ε=1/2×0.0285QTlog(1+H/148×760/P)・・・(2)
ただし、ε:攪拌動力密度(W/t)
fs:スラグの固相率(%)
Q:単位重量当たりのガス流量(Nl/分・t)
T:溶鋼温度(K)
H:溶鋼深さ(cm)
P:取鍋内の真空度(torr)
前記式[1]は、様々な実験により求めたものであり、攪拌動力密度εは上述したように公知である。
【0014】
なお、上記式[1]は、溶鋼2にガスを吹き込んで溶鋼2を攪拌して精錬を行うに際し、ガス吹き込みによる溶鋼2へのスラグSの巻き込み量を減少させるべく溶鋼2の攪拌動力密度εを決定するときに、攪拌動力密度εの上限値を、スラグの固相率fsから決定する攪拌動力密度決定方法にも適用可能である。
次に、式[1]の導出過程について図2〜7を用いて説明する。
まず、図2のステップ1〜6に示すように、精錬の開始から終了までガスを吹き込んだ時に、スラグSの巻き込み量(後述するスラグ系介在物)が時間的にどのように変化するかを調べた。
【0015】
具体的には、転炉から取鍋3へ出鋼した後に、二次精錬を開始する前に取鍋3内の溶鋼2のサンプルを採取する(ステップ1)。
その後、不活性ガス(例えば、Arガス)を吹き込み装置4で一定量吹き込んで精錬を開始し溶鋼温度を電極式加熱装置5で所定温度(例えば1600℃)まで上げる。精錬開始から精錬終了まで10分ごとに取鍋3内の溶鋼2のサンプルを採取する(ステップ2)。
そして、ステップ1及びステップ2で採取した二次精錬開始から二次精錬終了までの複数のサンプルの溶鋼2に対して、各溶鋼2に含まれる介在物の個数と組成を測定し、各溶鋼2における介在物中のCaO濃度が5%以上ものをスラグ系介在物と定義して所定面積当たりのスラグ系介在物の個数を測定する(ステップ3)。
【0016】
図3に示すように、二次精錬開始から終了までの時間を横軸に、スラグ系介在物の個数を縦軸にとり、二次精錬において前記スラグ系介在物がどのように変化したかを示すスラグ系介在物の増減図を作成する(ステップ4)。
ステップ3,4において、各溶鋼2の介在物中のCaO濃度が5%以上ものをスラグ系介在物と定義したのは、スラグSはCaOを主成分としており、また、スラグSの巻き込み以外が原因となる介在物中のCaO濃度は5%に満たないからである。そこで、スラグSの巻き込み量を判定するために、溶鋼2内の介在物のうち、CaO濃度が5%以上の個数を計測した。
【0017】
なお、ステップ3で各溶鋼2に含まれる介在物の個数と組成を測定しているが、このように溶鋼2に含まれる介在物の個数とその組成は、EPMA(電子プローブ・マイクロアナライザー)で測定することができる。EPMAは、分析試料(溶鋼)の表面に電子線を照射してその試料から発生する特性X線を検出することにより、試料を構成している元素とその量を測定することができるものである。
そして、図3,4に示すように、二次精錬におけるガスの吹き込み量(例えば、500l/min,930l/min)を変化させて、ステップ1〜4までの実験を繰り返し、ガス吹き込み量に毎にスラグ系介在物増減図を複数作成する。
【0018】
次に、図3,4のような各スラグ系介在物増減図のスラグ系介在物の増減傾向をより明確にするためにY軸(スラグ系介在物の個数)を対数とした増減対数図を図5,6に示すように、それぞれ作成する(ステップ5)。
なお、図5は、図3のスラグ系介在物増減図に対応する増減対数図であり、図6は、4のスラグ系介在物増減図に対応する増減対数図である。
そして、上記のそれぞれの増減対数図に対し、各プロット点に対する一次の回帰直線を導出して直線の傾きを求めると共に、上記式[2]を用いて攪拌動力密度εを求め、また、スラグの固相率fsを求める(ステップ6)。
【0019】
スラグの固相率fsは、精錬を終了した後に採取したスラグSのサンプルに対してそのスラグSの組成を測定し、その組成を所定の熱力学平衝計算ソフトに入力すると共に、精錬における温度を入力して算出した。実施例の場合は、スラグSを求める時の温度を溶鋼2と同じ1600℃とした。
ステップ6で作成した増減対数図の一次回帰直線の傾きは、スラグ系介在物の増減傾向を示しており、図5に示すように、直線の傾きが時間の経過に伴って縦軸の「1」に近づくように傾いていれば(直線が右肩下がり)スラグ系介在物は減少傾向にあることを示している。即ち、スラグ系介在物の増加速度はマイナスである。
【0020】
図5のように、スラグ系介在物の巻き込み量が減少傾向となるということは、精錬のときにガスの攪拌によって混ざってしまった混合量よりも、溶鋼内におけるスラグ系介在物の分離浮上量が多いために、時間の経過に伴って溶鋼内におけるスラグ系介在物の量が減ることを意味しており、溶鋼の攪拌によるスラグの巻き込み量は抑えられている。
また、図6に示すように、直線の傾きが時間の経過に伴って縦軸の「2」に近づくように傾いていれば(直線が右肩上がり)スラグ系介在物は増加傾向にあることを示している。即ち、スラグ系介在物の増加速度はプラスである。
【0021】
図6に示すように、スラグ系介在物の巻き込み量が増加傾向となるということは、精錬のときにガスの攪拌によって混ざってしまった混合量よりも、溶鋼内におけるスラグ系介在物の分離浮上量が少ないために、時間の経過に伴って溶鋼内におけるスラグ系介在物の量が増加することを意味しており、溶鋼の攪拌によるスラグの巻き込み量は抑えられず好ましくない状態である。
図5,6のようなデータを複数集め、数々のガスの吹き込み量に対するスラグ系介在物の増減傾向、スラグの固相率fs、攪拌動力密度εをまとめたところ後述する表1で示すような結果が得られた。なお、表1において、記号「○」「×」がスラグ系介在物の増減傾向を示しており、「○」は減少傾向であることを示し、「×」は増加傾向であることを示している。
【0022】
そして、図5,6に示すような、複数の増減対数図のデータ(スラグ系介在物の増減傾向,スラグの固相率fs、攪拌動力密度ε)をまとめて図7に示すスラグ系介在物の増減傾向図を作成する。
即ち、上記で求めた固相率fsを横軸に、上記で求めた攪拌動力密度εを縦軸にとり、ガスの吹き込み量(攪拌動力密度ε)に対するスラグ系介在物の増減傾向が、増加している場合「×」と、減少している場合「○」とに区別してプロットし、スラグの固相率fs,攪拌動力密度ε,スラグ系介在物の増減傾向の関係を示すスラグ系介在物の増減傾向図を作成する(ステップ7)。
【0023】
スラグ系介在物の増減傾向図から、各プロット点における増加と減少との境界線に直線を引き、その直線の式はε=3.5fs+16.5となった。(ステップ8)。
この境界線は、ガスを吹き込んだ時にスラグの巻き込み量(攪拌動力密度ε)が増加して溶鋼内のスラグ系介在物が増加するか否かの境界を示しており、増加領域にあれば溶鋼内のスラグ系介在物が時間の経過に伴って増え、減少領域にあれば溶鋼内のスラグ系介在物が時間の経過に伴って減少する。
したがって、上記で求めた攪拌動力密度εを超えないようにガスを吹き込めば、スラグSの巻き込み量を減少させることができ、溶鋼2の攪拌によるスラグSの巻き込み量を抑えることができることを見いだした。
【実施例】
【0024】
表1,図7は、操業結果をまとめたものであり、実施例と比較例を示している。
表1の実施例1〜4は式[1]を満たすようにガスを吹き込んだものであり〔ε≦F(fs)=3.5×fs+16.5〕、表1の比較例5〜13は式[1]を満たさないようにガスを吹き込んだものである〔ε>F(fs)=3.5×fs+16.5〕。
【0025】
【表1】

【0026】
これらの操業において、溶鋼深さH(取鍋3の底部から溶鋼の浴面までの高さ)は200cm、取鍋3内の真空度Pは大気雰囲気下の760torr、溶鋼温度Tは1873.15K(1600℃)とした。
なお、ガスの吹き込みは、ポーラス吹込口7及びランス9両方を用いても良いし、ポーラス吹込口7及びランス9のどちらか一方を用いてもよい。
また、固相率fsを算出する際の組成は、CaO−Al23−SiO2−MgOの4成分を100%換算し、その組成を入力すると共に、その温度を精錬目標温度と同じ1600℃として入力し、市販されている熱力学平衝計算ソフト(例えば、ドイツのGTT−Technologies社製のChemSageやFactSage)で求めた。
【0027】
また、溶鋼2に含まれる介在物の個数と組成を測定するEPMAは、日本電子製JXA−8000シリーズを用い、測定条件を加速電圧20kV,X線種をK線、ビーム径2〜3μmとして、EDS検出器1基を使用した。
表1に示すように、実施例1のスラグ系介在物の増減傾向は減少となった。図3,図5に実施例1のスラグ系介在物の変化を示す。実施例1における固相率fsは5.1%、攪拌動力密度εは20.6(W/t)であり、図7ではプロットP1がこれを示している。
比較例9のスラグ系介在物の増減傾向は増加となった。図4,図6に比較例9のスラグ系介在物の変化を示す。比較例9における固相率fsは1.7%、攪拌動力密度εは38.4(W/t)であり、図7ではプロットP2がこれを示している。
【0028】
図7に示すように、攪拌動力密度εが式[1]を満たすようにガスを吹き込めば、スラグ系介在物は時間に伴って徐々に減少することとなり、スラグSの巻き込み量を極力抑制することができることを確認した。
さらに、表1によれば、実施例2と比較例7や、実施例3と比較例5に示すように、攪拌動力密度εが互いに同じであっても、固相率fsが高い方がスラグ系介在物増加は減少傾向にあり、ガスを吹き込む際にスラグの固相率fsを考慮することで、上記のようにスラグSの巻き込み量を抑制するだけでなく、スラグSの状態を加味しながら精錬時間の短縮をすることができる。
【0029】
一般的に、精錬時間を短縮するためには、攪拌動力密度εを上げてガスの吹き込み量を増やすのが好ましいが、一方で、攪拌動力密度εを上げるとスラグSの巻き込み量が増加してしまうという問題がある。本発明の式[1]によれば、スラグの固相率fsに比例して攪拌動力密度εを上昇させることができるので、精錬時間を短縮するためにガスの吹き込み量を増やしたい場合は、式[1]で算出した攪拌動力密度εを超えないように出来るだけ吹き込み量を増加させることが可能であり、このように限界までガスの吹き込み量を上昇させてもスラグSの巻き込み量が増加傾向になることはない。
【0030】
本発明は上記で示した二次精錬装置1に限定されるものではない。即ち、溶鋼2にガスを吹き込んでスラグSと接触した状態で溶鋼2を攪拌することにより精錬を行うものであれば、本発明の精錬方法を適用することができる。
また、上記の実施の形態では、二次精錬工程においてLF装置で精錬を行っているが、この二次精錬装置1はLF装置に限らず、ガス攪拌装置付きのASEA−SKFや電極攪拌装置を具備しないArバブリングのみによる取鍋精錬やCAS等の取鍋精錬にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】精錬装置の概念図である。
【図2】本発明の式[1]を導出するフローチャートである。
【図3】スラグ系介在物が減少したスラグ系介在物増減図である。
【図4】スラグ系介在物が増加したスラグ系介在物増減図である。
【図5】スラグ系介在物が減少傾向にある増減対数図である。
【図6】スラグ系介在物が増加傾向にある増減対数図である。
【図7】スラグ系介在物の増減傾向図である。
【符号の説明】
【0032】
1 精錬装置
2 溶鋼
3 取鍋
S スラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鋼にガスを吹き込んで溶鋼を攪拌することにより精錬を行う精錬方法において、
前記溶鋼の攪拌動力密度の上限値を、前記溶鋼上に浮いたスラグの固相率から算出して、その上限値を超えないように前記ガスを吹き込むことを特徴とする精錬方法。
【請求項2】
前記溶鋼は取鍋に貯留されており、前記攪拌動力密度の上限値は式[1]を満たすことを特徴とする請求項1に記載の精錬方法。
ε≦3.5×fs+16.5 ・・・・(1)
ε=1/2×0.0285QTlog(1+H/148×760/P)
ただし、ε:攪拌動力密度(W/t)
fs:スラグの固相率(%)
Q:単位重量当たりのガス流量(Nl/分・t)
T:溶鋼温度(K)
H:溶鋼深さ(cm)
P:取鍋内の真空度(torr)
【請求項3】
前記溶鋼の精錬を、LF装置で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の精錬方法。
【請求項4】
溶鋼にガスを吹き込んで溶鋼を攪拌して精錬を行うに際し、ガス吹き込みによる溶鋼へのスラグの巻き込み量を減少させるべく溶鋼の攪拌動力密度を決定する攪拌動力密度決定方法において、
前記攪拌動力密度の上限値を、スラグの固相率から決定することを特徴とする攪拌動力密度決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−137973(P2006−137973A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326807(P2004−326807)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】