説明

精錬用上蓋の地金付着防止方法

【課題】 精錬炉や精錬容器に収容された溶融金属を精錬するに当たり、溶精錬炉や精錬容器に被せて使用される上蓋への地金やスラグの付着を効率良く防止する。
【解決手段】 精錬炉または精錬容器6に収容された溶融金属15を精錬する際に前記精錬炉または精錬容器に被せて使用される金属製上蓋11への地金またはスラグの付着を防止する方法であって、前記溶融金属の精錬終了後、吹き付けノズル17から上蓋に冷却水を噴霧して上蓋を冷却し、次いで、吹き付けノズル17から上蓋に離型剤を噴霧して該上蓋の表面に離型剤の被覆層を形成する。離型剤の被覆層によって地金またはスラグの付着が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精錬炉や精錬容器に収容された溶融金属を精錬するに当たり、溶融金属や溶融スラグなどの飛散を防止するために精錬炉や精錬容器に被せて使用される上蓋への地金及びスラグの付着を防止する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダクタイル鋳鉄管などのダクタイル鋳物は、鋼材と同等の引張強度を有し、その伸び及び靱性などの機械試験値は普通鋳鉄の十数倍に達し、更に、普通鋳鉄と同等の優れた耐食性を有していることから、これらの特性が要求される地中埋設管などの、より厳しい環境下での各種配管材などで広く利用されている。このダクタイル鋳物は、キュポラなどによって溶製された溶融鋳鉄に、金属MgやMg合金を黒鉛球状化剤として添加し、Mgを0.01〜0.06質量%含有するダクタイル鋳物用溶融鋳鉄を溶製し、これを遠心鋳造機などの鋳造設備によって鋳造することで製造されている。
【0003】
溶融鋳鉄に金属MgやMg合金を添加する方法としては、置注ぎ法、上蓋付取鍋添加法、プランジャ法、圧力添加法、ワイヤーフィーダー法などの種々の方法があるが、Mgは沸点(約1110℃)が低く、溶融鋳鉄の温度域では蒸気圧が高いため、Mgを溶融鋳鉄に添加した場合には、爆発的な発煙やこの発煙に伴う溶融鋳鉄の噴出などが発生する。従って、この溶融鋳鉄の噴出を防止するために、溶融鋳鉄に金属MgやMg合金を添加する際には、精錬容器の開口部に上蓋を設置する或いは密閉構造状の精錬容器を用いるなどの対策が採られている。
【0004】
但し、精錬容器の開口部に上蓋を設置した場合、溶融鋳鉄の噴出は防止されるが、上蓋の内面側には飛散した溶融鋳鉄が付着する。地金はMg添加処理の毎に付着し堆積していくため、処理回収に比例して地金付着層厚みが増大する。地金付着層厚みが厚くなり過ぎると、さまざまな問題が発生する。例えば、金属MgやMg合金を、上蓋に設けた貫通孔を通して精錬容器内に供給する場合には、この孔が塞がれ、Mgの添加に支障を来す。また、地金が垂れ下がった状態で上蓋に付着し、上蓋を精錬容器から分離させることが不可能になることさえもある。
【0005】
これを防止するために、特許文献1には、金属MgまたはMg合金を溶融鋳鉄に添加する際の精錬容器の上蓋として、金属製で水冷構造の上蓋が提案されている。特許文献1は、付着した地金が上蓋によって急冷されることにより、上蓋から自然に剥離することを図ったものであるが、それほど簡単には剥離せず、結局、バールなどの冶具を用いて強制的に剥離・除去せざるを得ず、剥離作業時の損傷による上蓋の使用回数の低下や操作員の作業負荷の増大、精錬設備の生産性の低下などを余儀なくされている。
【0006】
このような金属製の上蓋は、金属の溶融や精錬、或いは廃棄物の溶解に使用されているアーク炉などの電気炉でも使用されており、また、ステンレス鋼を溶製するためのAOD炉においても、炉内の圧力を調整するために、炉口を気密状に覆う上蓋を有する設備が存在する。電気炉やAOD炉であっても激しい攪拌を伴う精錬反応の場合には、溶融金属や溶融スラグの上蓋への付着が激しく、付着物の剥離作業による生産性の低下が問題となる。そこで、特許文献2には、AOD炉の上蓋に付着したスプラッシュ地金を強制的に除去するために、遠隔操作にて安全に作業できるスプラッシュ地金除去装置が提案されている。特許文献2の装置を使用することで地金の剥離作業時間は短縮されるが、特許文献2は地金の付着を防止するものではなく、地金付着を抑制するという観点から見れば十分とはいえない。
【特許文献1】特開2004−238675号公報
【特許文献2】特開2002−243373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来の金属製上蓋に対する地金付着対策は、地金付着の抑制にその効果を十分に発揮しているとは言い難く、改善の余地が大きいのが現状である。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、精錬炉や精錬容器に収容された溶融金属を精錬するに当たり、溶精錬炉や精錬容器に被せて使用される金属製の上蓋への地金やスラグの付着を効率良く防止することのできる地金付着防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の発明に係る精錬用上蓋の地金付着防止方法は、精錬炉または精錬容器に収容された溶融金属を精錬する際に前記精錬炉または精錬容器に被せて使用される金属製上蓋への地金またはスラグの付着を防止する方法であって、前記溶融金属の精錬終了後、上蓋に冷却水を噴霧して上蓋を冷却し、次いで、上蓋に離型剤を噴霧して該上蓋の表面に離型剤の被覆層を形成することを特徴とするものである。
【0010】
第2の発明に係る精錬用上蓋の地金付着防止方法は、第1の発明において、前記冷却水及び離型剤は、同一の吹き付けノズルを介して圧縮空気とともに噴霧されることを特徴とするものである。
【0011】
第3の発明に係る精錬用上蓋の地金付着防止方法は、第2の発明において、前記圧縮空気、冷却水及び離型剤は、溶融金属の精錬終了後、自動的に噴霧されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶融金属の精錬終了後に、上蓋を冷却水の噴霧によって冷却し、冷却した上蓋に離型剤を噴霧して上蓋の表面に離型剤の被覆層を形成するので、次回の溶融金属の精錬時に溶融金属や溶融スラグが飛散しても、上蓋の表面には離型剤が存在することによって、飛散した溶融金属または溶融スラグは、上蓋とは直接接触できず、上蓋に付着することなく精錬炉内または精錬容器内に落下する。つまり、上蓋の表面に離型剤の被覆層を形成することによって、溶融金属または溶融スラグの上蓋への付着を防止することができる。また、離型剤を噴霧する前に冷却水で上蓋を冷却するので、精錬終了直後の上蓋であっても離型剤による被覆層を容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、金属MgやMg合金を溶融鋳鉄に添加してダクタイル鋳物用溶融鋳鉄を溶製する精錬に適用した場合を例として、添付図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明を適用した黒鉛球状化処理設備の1例を示す側面概略図、図2は、図1に示す吹き付けノズルへの圧縮空気、冷却水及び離型剤の供給経路を示す概略図である。
【0014】
図1に示すように、黒鉛球状化処理設備1は外殻を鉄皮2とし、この鉄皮2で覆われた中に精錬容器である取鍋6を搬入・搬出するための搬送手段として、複数個のローラー5を備えたローラーテーブル4が設置されている。ローラーテーブル4が設置された箇所には、取鍋6の通路となる、鉄皮2の開口部を覆うための昇降式のシャッター3が鉄皮2に配置されている。
【0015】
ローラーテーブル4には、ローラー駆動用電動機(図示せず)が備えられており、ローラー駆動用電動機によって駆動されるローラー5により、ローラー5の上の取鍋6が搬入・搬出されるようになっている。ローラーテーブル4には、取鍋6が黒鉛球状化処理中に移動しないように固定するためのストッパー(図示せず)が設置されているとともに、取鍋6の位置を検出するためのリミットスイッチ(図示せず)が複数設置されている。
【0016】
ローラーテーブル4によって黒鉛球状化処理設備1の内部の所定位置まで搬入された取鍋6の直上には、取鍋6の上部開口部を覆うための上蓋11が配置されている。上蓋11の平面形状は、取鍋6の開口部に倣って一般的には円形であるが、取鍋6の開口部が覆われる限り多角形であっても構わない。上蓋11は、吊金具16を介して、その他端を上蓋昇降装置12と接続するチェーン13と接続しており、上蓋昇降装置12によって巻き上げ或いは巻き下げられるチェーン13を介して上蓋11は昇降し、取鍋6の上部開口部を覆うようになっている。チェーン13は複数配置されており、それぞれのチェーン13がそれぞれ独立して上蓋昇降装置12に接続されている。上蓋昇降装置12は、電動機(図示せず)によって駆動される。
【0017】
上蓋11は、その全体を中実の鋳鉄製とするか、或いは、水冷構造の金属製とする。但し、水冷構造の場合には製作費が高くなることから、中実の鋳鉄製とすることが好ましい。上蓋11を鋳鉄製とする場合、材質はFC250相当で十分である。鋳鉄製とする場合、吊金具16などの付属部材は鋳鉄製とする必要は全くない。上蓋11には、取鍋6の内部に鉄被覆Mgワイヤー10を供給するための貫通孔14が設けられている。
【0018】
天井側の鉄皮2の上方には、対向するピンチロール7との間に鉄被覆Mgワイヤー10を挟んで供給するための一対のピンチロール7が配置されており、ピンチロール7によって挟まれて供給される鉄被覆Mgワイヤー10は、上蓋11の貫通孔14を貫通して取鍋6の上部開口部に向かって伸びるガイドパイプ9を通って取鍋6の内部に供給される。上蓋11の貫通孔14とガイドパイプ9との間には、上蓋11が十分に昇降可能なように、間隙が設けられている。この黒鉛球状化処理設備1では、2本の鉄被覆Mgワイヤー10を同時に供給するために、一対のピンチロール7とガイドパイプ9とからなるMg供給手段が独立して一基ずつ配置されているが、Mg供給手段は1基のみであっても、或るいは3基以上であっても構わない。鉄被覆Mgワイヤー10の供給量は、メジャーロール8によって計測されており、鉄被覆Mgワイヤー10は、金属MgやFe−Si−Mg合金などのMg合金を心材とし、この心材を薄鋼鈑で覆ったクラッド線材である。
【0019】
上蓋11が所定位置まで巻き上げられたときに、上蓋11の斜め下方となる位置に、吹き付けノズル17が配置されている。吹き付けノズル17は、圧縮空気を供給するための第1の供給管18及び冷却水及び離型剤を供給するための第2の供給管19と連結されている。図1では、吹き付けノズル17が1つのみ記載されているが、上蓋11の周囲の、取鍋6の搬入・搬出を妨げない位置に、複数個配置されている。この場合、上蓋11の下面側に離型剤の被覆層を均一に形成させるためには、吹き付けノズル17は3つ以上、望ましくは4つ以上とすることが好ましい。
【0020】
ここで、本発明において離型剤として使用するに好適な材料及びその配合を表1に示す。表1に示すように、本発明における好適な離型剤は、水、カーボンブラック、ベントナイト、第一燐酸アルミニウム及びリン状黒鉛の混合物である。表1は水を200リットルとし、それに配合するカーボンブラック、ベントナイト、第一燐酸アルミニウム、リン状黒鉛の配合量を示している。この配合の混合物を24時間以上攪拌混合したものが離型剤として最適である。この離型剤において、カーボンブラック及びリン状黒鉛は溶解するわけではなく、懸濁した状態で存在するので、カーボンブラック及びリン状黒鉛が分離しないようにするために、作製した離型剤は常時攪拌することが好ましい。
【0021】
【表1】

【0022】
離型剤は、上記配合のものに限るわけではなく、黒鉛と粘結剤とを水に混合したものであって、噴霧したときに上蓋11に黒鉛が粘結剤の作用によって付着するものであれば、離型剤として使用可能である。
【0023】
図2に示すように、吹き付けノズル17は、外管17Aと内管17Bとの二重管で構成され、外管17Aと内管17Bとの間隙が圧縮空気の供給流路、内管17Bの内部が冷却水または離型剤の供給流路となっている。外管17Aと内管17Bとの間隙は第1の供給管18に連通し、内管17Bの内部は第2の供給管19に連通している。外管17Aと内管17Bとの間隙は例えば1〜5mm程度、内管17Bの内径は例えば1〜10mm程度とすればよい。
【0024】
第1の供給管18には、吹き付けノズル17の側から、流量調節弁24、バルブ23、空気タンク22、バルブ21、空気圧縮機20の順に、これらの装置が設けられており、空気圧縮機20の作動によって得られた圧縮空気は、空気タンク22に一旦収容された後、流量調節弁24で流量を調整されて、吹き付けノズル17から噴出するようになっている。
【0025】
第2の供給管19は、吹き付けノズル17と連通する側の反対側で、冷却水供給管19Aと離型剤供給管19Bとに分離し、冷却水供給管19Aには、第2の供給管19と接続する側から、流量調節弁28、バルブ27、ポンプ26の順に、これらの装置が設けられており、ポンプ26の入側は貯水槽25と接続し、また、離型剤供給管19Bには、第2の供給管19と接続する側から、流量調節弁32、バルブ31、ポンプ30の順に、これらの装置が設けられており、ポンプ30の入側は離型剤収容槽29と接続している。離型剤収容槽29には攪拌羽根(図示せず)が設置されており、攪拌羽根を回転させて離型剤の固液分離が防止されている。
【0026】
貯水槽25に収容された工業用水は、ポンプ26の作動により、流量調節弁28で流量を調整されて、吹き付けノズル17から冷却水として噴出するようになっている。同様に、離型剤収容槽29に収容された離型剤は、ポンプ30の作動により、流量調節弁32で流量を調整されて、吹き付けノズル17から噴出するようになっている。この場合、各供給管に配置されたバルブ23、バルブ27、バルブ31によって、圧縮空気、冷却水、離型剤はそれぞれ独立して吹き付けノズル17から噴出できるようになっている。
【0027】
このような構成の黒鉛球状化処理設備1において、以下に示すようにして本発明を実施する。
【0028】
鉄スクラップなどの鉄源とコークスなどの炭材とを原料としてキュポラ或いは電気炉などの溶解炉で溶解され、更に必要に応じて脱硫処理して得られた溶融鋳鉄15を収容する取鍋6を、ローラーテーブル4の上に載せ、ローラー5を作動させて黒鉛球状化処理設備1の所定位置まで搬入する。取鍋6が所定位置まで搬入されたなら、上蓋昇降装置12が駆動して上蓋11を下降させ、上蓋11によって取鍋6の上部開口部を覆う。次いで、ピンチロール7が駆動し、メジャーロール8によって鉄被覆Mgワイヤー10の供給量を測定しながら、鉄被覆Mgワイヤー10が取鍋6の内部に供給される。取鍋6に収容された溶融鋳鉄15は、添加されるMgによって黒鉛球状化処理が施され、溶融鋳鉄15はMgを含有するダクタイル鋳物用溶融鋳鉄に溶製される。
【0029】
所定量の鉄被覆Mgワイヤー10が供給され、Mgによる黒鉛球状化処理が終了したならば、ピンチロール7が停止し、次いで、上蓋昇降装置12が駆動して、上蓋11を所定位置まで上昇させる。一方、上蓋11と取鍋6とが分離されたならば、ローラーテーブル4のローラー5が駆動し、取鍋6は黒鉛球状化処理設備1から搬出される。
【0030】
取鍋6が、上蓋11の直下から搬出されたなら、バルブ23及びバルブ27を「開」とし、吹き付けノズル17から圧縮空気及び冷却水を上蓋11の下面に向けて噴出する。上蓋11は、噴霧される冷却水によって冷却される。上蓋11が中実の鋳鉄製の場合、黒鉛球状化処理終了直後の上蓋11は300〜500℃程度まで加熱されており、上蓋11が200℃以下、望ましくは100〜150℃となるまで圧縮空気及び冷却水を噴出して上蓋11を冷却する。このような冷却を行うために、予め上蓋11の温度を測定しながら吹き付けノズル17による冷却の試験を数回実施し、その結果に基づき、冷却水量及び冷却時間を設定すればよい。
【0031】
上蓋11を冷却水で冷却することにより、黒鉛球状化処理中に仮に地金などが上蓋11に付着したとしても、付着した地金は急冷されて収縮し、付着地金と上蓋11との界面に間隙が発生し、付着した地金は剥離して落下する。また、上蓋11を冷却水で冷却することにより、上蓋11に離型剤の被覆層を容易に形成することができる。離型剤は前述した表1に示すように水分を含有しており、上蓋11の温度が余りに高いときに離型剤を噴霧しても、離型剤中の水分が突沸し、この突沸とともに離型剤中の固体分(黒鉛)も吹き飛んでしまい、被覆層を形成しにくくなるからである。
【0032】
上蓋11が所定の温度まで低下したなら、バルブ27を「閉」とし、バルブ31を「開」として、圧縮空気及び離型剤を上蓋11の下面に向けて噴出する。所定量の離型剤を噴霧したならば、バルブ23及びバルブ31を「閉」とし、圧縮空気及び離型剤の噴出を停止する。噴霧された離型剤によって上蓋11の下面には、離型剤の被覆層が形成される。
【0033】
この場合に、ローラーテーブル4、ピンチロール7、上蓋昇降装置12、バルブ23、バルブ27、バルブ31は、リミットスイッチ、タイマーなどによって、一連の作業を全て自動的に運転するようになっている。
【0034】
そして、黒鉛球状化処理を施した取鍋6を、次工程の遠心鋳造機などの鋳造設備にクレーンや搬送台車などの適宜の搬送手段を用いて搬送したなら、新に、溶融鋳鉄15を収容する取鍋6をローラーテーブル4の上に載せ、上記に沿って黒鉛球状化処理を実施する。この黒鉛球状化処理中に地金が飛散しても、飛散した溶融鋳鉄15は、上蓋11とは直接接触できず、上蓋11に付着することなく取鍋6に落下する。つまり、上蓋11への溶融鋳鉄15の付着を防止しつつ、溶融鋳鉄15の黒鉛球状化処理を実施することが可能となる。
【0035】
このように、本発明によれば、金属製の上蓋への溶融金属や溶融スラグの付着を防止することができるので、付着物除去のための剥離時間が不要となり、稼働率を大幅に高めることが可能となる。また、溶融金属や溶融スラグの付着が未然に防止されるので、剥離作業による上蓋への損傷が起こらず、上蓋の使用回数を大幅に伸ばすことが可能となる。
【0036】
尚、本発明は上記説明に限るものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記説明では、圧縮空気とともに冷却水及び離型剤を噴霧しているが、圧縮空気は必ずしも必要ではなく、冷却水のみ及び離型剤のみを噴霧しても構わない。また、圧縮空気、冷却水、離型剤の供給流路も上記説明に限るものではなく、冷却水と離型剤とを独立して供給することができる限りどのような形態であっても構わない。また更に、上記説明は黒鉛球状化処理設備1の上蓋11に関して行ったが、電気炉の上蓋などであっても上記に沿って本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を適用した黒鉛球状化処理設備の1例を示す側面概略図である。
【図2】図1に示す吹き付けノズルへの圧縮空気、冷却水及び離型剤の供給経路を示す概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1 黒鉛球状化処理設備
2 鉄皮
3 シャッター
4 ローラーテーブル
5 ローラー
6 取鍋
7 ピンチロール
8 メジャーロール
9 ガイドパイプ
10 鉄被覆Mgワイヤー
11 上蓋
12 上蓋昇降装置
13 チェーン
14 貫通孔
15 溶融鋳鉄
16 吊金具
17 吹き付けノズル
17A 外管
17B 内管
18 第1の供給管
19 第2の供給管
19A 冷却水供給管
19B 離型剤供給管
20 空気圧縮機
21 バルブ
22 空気タンク
23 バルブ
24 流量調節弁
25 貯水槽
26 ポンプ
27 バルブ
28 流量調節弁
29 離型剤収容槽
30 ポンプ
31 バルブ
32 流量調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精錬炉または精錬容器に収容された溶融金属を精錬する際に前記精錬炉または精錬容器に被せて使用される金属製上蓋への地金またはスラグの付着を防止する方法であって、前記溶融金属の精錬終了後、上蓋に冷却水を噴霧して上蓋を冷却し、次いで、上蓋に離型剤を噴霧して該上蓋の表面に離型剤の被覆層を形成することを特徴とする、精錬用上蓋の地金付着防止方法。
【請求項2】
前記冷却水及び離型剤は、同一の吹き付けノズルを介して圧縮空気とともに噴霧されることを特徴とする、請求項1に記載の精錬用上蓋の地金付着防止方法。
【請求項3】
前記圧縮空気、冷却水及び離型剤は、溶融金属の精錬終了後、自動的に噴霧されることを特徴とする、請求項2に記載の精錬用上蓋の地金付着防止方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−223099(P2008−223099A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64343(P2007−64343)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000231877)日本鋳鉄管株式会社 (48)
【Fターム(参考)】