糖の異性化
糖類の異性化方法について開示する。糖類をフラン誘導体に転換する方法についても開示する。でん粉をフラン誘導体に転換する方法についても開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2010年1月15日に出願され、係属中の米国仮出願第61/295,637号、「Catalysts for the Isomerization of Sugars」、2010年2月17日に出願され、係属中の米国仮出願第61/305,480号、「Catalysts for the Isomerization of Sugars」、2010年6月29日に出願され、係属中の米国仮出願第61/359,782号、「New Catalysts for the Isomerization of Sugars」、及び2010年12月10日に出願され、係属中の米国仮出願第61/421,840号、「New Catalysts for the Isomerization of Sugars」に基づく優先権を主張する。これらの出願は全体として、本明細書に援用する。
【0002】
特許法第202条(c)の下、米国政府は、本願明細書に記載の本発明に対する特定の権利を有する。本発明は、米国エネルギー省科学局基礎エネルギー科学、アワード番号DE−SC0001004の資金により一部完成した。
【0003】
本発明は、糖の異性化の分野に属するものである。
【背景技術】
【0004】
バイオマスのような再生可能原料を使用することが望ましいという観点から、炭水化物ベースの化学的工程の重要性が増してきている。糖の異性化は、さまざまな工業的な炭水化物ベースの工程において使用される反応の中でも重要な部類である。そのような反応のうち特に重要なものに、グルコースのフルクトースへの転換がある。この反応は、高フルクトースコーンシロップ(HFCS)及び、有益な化学中間体(例えば、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)及びレブリン酸)の生成に用いられてきた。
【0005】
グルコースのフルクトースへの異性化は、生物学的触媒又は化学触媒を用いる穏やかな条件で実施することができる。この反応はわずかに吸熱性(H=3 kJ/mol)で可逆性である(298KでのKeqは、〜1)。このことは、グルコースからフルクトースへの転換の最大達成率が、反応温度における両方の糖の間の熱力学平衡によって支配されることを意味する。
【0006】
工業的なグルコース異性化は、通常、固定化酵素を使用して実施されるので、転換率及び選択性が高いという利点があるが、多数のデメリットもある。酵素触媒は、複数のサイクルにわたって高い活性を持続せず、容易に再生することができず、さらに、多種多様な温度、pH、塩濃度、及びその他の処理条件を通じて機能しない。さらに、酵素の異性化触媒は、バイオマスからグルコースを生成する上流工程に組み込むことが容易ではなく、或いは、フルクトースを他の化学中間体に変換する下流工程に組み込むことが容易ではない。
【0007】
例えば、一つの好適な工業異性化方法は、333Kで、フルクトース42%(wt/wt)、グルコース50%(wt/wt)、及び他の糖類8%(wt/wt)の平衡混合物を生成する、固定化酵素(キシロースイソメラーゼ)の使用する方法である。このような、酵素による工程は、フルクトース収率が高いが、以下を含む種々の欠点を有する:(i)原料から酵素活性を強く阻害する不純物を除去するための、様々な反応前精製工程が必要である(例えば、事前のでんぷんの液状化/糖化ステップに由来するカルシウムイオンを1ppm未満のレベルに除去する必要がある)、(ii)7.0〜8.0の最適pHを維持するための緩衝溶液(Na2CO3)、酵素を活性化させる緩衝溶液(MgSO4)を使用すると、反応後にイオン交換が必要となる、(iii)生成物の収率及び酵素寿命の両方を最大化させる最適作用温度は333Kであるため、更に高温として反応速度をより速めることが難しい、(iv)酵素活性が徐々に不可逆的に劣化するため触媒床を定期的に交換するので、操業コストが比較的高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、転換効率及び選択性が高く、酵素触媒に関連した欠点を有さない、糖の異性化方法を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解消するために、本明細書において開示する方法は、水性溶媒中で、単糖類とゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトとを接触させることを含み、前記ゼオライトは前記単糖類を通過させることができる孔を有することを特徴とする、単糖類の異性化方法である。さらに、本明細書において開示する方法は、水性溶媒中で、単糖類と材料の骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む規則配列メソ多孔性シリカ材料とを接触させることを含む、単糖類の異性化方法である。
【0010】
本明細書において開示する更なる方法は、グルコースを5−ヒドロキシメチルフルフラールに転換する方法であって、水性溶媒中で、グルコースとゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトとを接触させてフルクトースを生成するステップとあって、前記ゼオライトは前記グルコースを通過させることができる孔を有することを特徴とする、ステップと、前記フルクトースを脱水するステップと、を含むことを特徴とする、方法である。また、本明細書において更に、でん粉を5−ヒドロキシメチルフルフラールに転換する方法であって、酸性水性溶媒中ででん粉を加水分解してグルコースを生成するステップと、水性溶媒中で、グルコースとゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトとを接触させてフルクトースを生成するステップであって、前記ゼオライトは前記グルコースを通過させることができる孔を有することを特徴とする、ステップと、前記フルクトースを脱水するステップと、を含むことを特徴とする、方法を開示する。
【0011】
本明細書における一般的な記載及び以下の詳細な説明は、例示及び説明のためのものであり、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲を制限するものではない。本発明の他の側面は、本明細書に記載の発明の詳細な説明の観点から、当業者には明らかである。
【0012】
発明の概要及び以下の発明の詳細な説明は、添付の図面を参照することにより理解が深まる。本発明を例示するために、本発明の例示的実施形態を図示する。しかし、本発明は、本明細書において開示される特定の方法、組成物及び装置に限定されるものではない。また、図面は常に縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】糖異性化活性に関連して合成及び試験した、様々な異なる材料の構造及び孔径を示す図である。
【図2】骨格にチタンを含むゼオライトの構造を示す図である。
【図3】スズゼオライトベータの走査型電子顕微鏡像である。
【図4】スズゼオライトベータの走査型電子顕微鏡像である。
【図5】チタンゼオライトベータ(上)及びスズゼオライトベータ(下)の走査型電子顕微鏡像である。
【図6】Sn−ベータ及びTi−ベータの紫外/可視拡散反射スペクトルを示す図である。
【図7】Ti−ベータ及びSn−ベータの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図8】二相系中でグルコースをHMFに転換した後にSn−ベータの構造に有意な変化が生じないことを説明する走査型電子顕微鏡像である。左は、反応前のSn−ベータ像であり、右は、モル比200、水:THFの体積比1:3、HCl中pHを1、100g水中NaCl35gで、Sn−ベータをグルコースに曝した後のSn−ベータ像である。
【図9】生物学的触媒又は化学触媒によって触媒されるグルコース異性化反応経路の概略図である。
【図10】(A)塩基触媒又は(B)金属触媒経路を経たグルコース異性化機構の概略図である。
【図11】(A)プロトン転位又は(B)分子内ヒドリドシフトを経たグルコース異性化機構の概略図である。
【図12】メールワイン−ポンドルフ−バーレー(MPV)反応経路を示す図である(R=アルキル又はアリル、R1及びR3=アルキル又は水素、Me=金属)。
【図13】バイオマスから、グルコース、HMF、そしてフルクトースを経て、下流製品に至る経路の概略図を示す図である。
【図14】でん粉から、グルコース、フルクトース、HMFへと至る経路の概略図を示す図である。
【図15】グルコースからフルクトースを生成し、フルクトースからHMFを生成するための反応における、二相系の使用例の概略図を示す図である。
【図16】グルコース異性化反応のための金属性ケイ酸塩のスクリーニング結果を示す図である。反応条件は、10重量%グルコース水溶液、140℃、90分、金属:グルコースのモル比=1:50であった。
【図17】様々な金属含有固体により触媒したグルコース異性化反応の結果を示す図である(グルコース転換率のバーに斜線を付し、フルクトース選択性のバーは白で示す)。反応条件は、10重量%グルコース水溶液、413K、90分、金属:グルコースのモル比=1:50であった。
【図18】グルコース異性化反応のプロファイルと、グルコース異性化反応の生成物の分布(グルコース(灰色)、フルクトース(白)、及びマンノース(黒))とを、時間を横軸として示す。温度は、363K、383K、413Kであり、触媒としてSn−ベータを用いた。反応条件は、10重量%グルコース水溶液、Sn:グルコースのモル比=1:50であった。エラーバーは、データ点よりも小さいため、図示しない。
【図19】a)未標識グルコース、b)標識グルコース−D2、c)Sn−ベータとグルコース−D2とを反応させた後に採取したグルコース画分、d)標識グルコース−D2をNaOHと反応させた後に採取したグルコース画分、e)未標識フルクトース、f)Sn−ベータとグルコース−D2とを反応させた後に採取したフルクトース画分、g)標識グルコース−D2をNaOHと反応させた後に採取したフルクトース画分の、13CNMRスペクトルを示す図である。
【図20】a)未標識グルコース、b)標識グルコース−D2、c)Sn−ベータとグルコース−D2とを反応させた後に採取したグルコース画分、d)標識グルコース−D2をNaOHと反応させた後に採取したグルコース画分、e)未標識フルクトース、f)Sn−ベータとグルコース−D2とを反応させた後に採取したフルクトース画分、g)標識グルコース−D2をNaOHと反応させた後に採取したフルクトース画分の、1HNMRスペクトルを示す図である。
【図21】(A)Sn−ベータ又はSnO2−ベータを用いて383K45分で反応させた後の、グルコース異性化反応及び生成物分布(グルコース(灰色)、フルクトース(白)、及びマンノース(黒))を示す図である。10重量%グルコース溶液、金属:グルコースのモル比=1:100を維持するために相当量の触媒を使用して反応させた。(B)Sn−ベータ及びSnO2−ベータの紫外/可視拡散反射スペクトルを示す図である。
【図22】Sn−ベータを触媒として用いた、383Kにおけるグルコース異性化転換率プロファイルを示す図である。反応条件は、10重量%グルコース水溶液(未標識及び標識)、Sn:グルコースのモル比=1:50であった。
【図23】未標識グルコース溶液に35%含まれる、a−ピラノース構造グルコースの分子構造(i)、及び、65%含まれる、b−ピラノース構造グルコースの分子構造(ii)を示す図である。標識グルコース(グルコース−D2)溶液についても、同様の比率であり、35%がa−ピラノース構造(iii)、及び、65%がb−ピラノース構造(iv)である。
【図24】未標識グルコース、加熱前のグルコース−D2、及び触媒無しで383Kに加熱した後のグルコース−D2の13CNMRスペクトルを示す図である。
【図25】二相系を使用してグルコースをHMFに転換する反応実験結果を示す図である。反応条件は、水:1−ブタノールの体積比=1:2、HCl中pH=1、100g水中NaCl35gであり(上)、水:有機相の堆積比=1:3、HCl中pH=1、T=180℃、100g水中NaCl35g(下)であった。
【図26】二相系を使用してグルコースをHMFに転換する反応実験結果を示す図である。反応条件は、Sn−ベータ:グルコースのモル比が200、水:1−ブタノールの体積比=1:3、HClのpH=1、T=160℃、100g水中塩35gであった。
【図27】二相系を使用してグルコースをHMFに転換する反応実験結果を示す図である。反応条件は、Sn−ベータ:グルコースのモル比が200、水:1−ブタノールの体積比=1:3、酸のpH=1、T=160℃、100g水中NaCl35gであった。
【図28】二相系を使用してグルコースをHMFに転換する反応実験結果を示す図である。反応条件は、Sn−ベータ:グルコースのモル比が200、水:有機相の体積比=1:3、HClのpH=1、100g水中NaCl35gであった。
【図29】二相系を使用してグルコースをHMFに転換する反応実験結果(上:反応性、下:pH=1のHClへの暴露の前後におけるX線回折(XRD)データ)を示す図である。反応条件は、温度160℃、Sn/ベータゼオライト:グルコースのモル比は1:200、HClのpH=1、水:1−ブタノールの体積比=1:2であった。
【図30】グルコースからフルクトースも異性化する差異の熱力学データを示す図である(Tewari, Y., Applied Biochemistry and Biotechnology 1990, 23, 187に基づく)。
【図31】Andy 及び Davis, Ind. Eng. Chem. Res. 2004, 43, 2922の記載に従って合成したZn−CIT−6のX線回折パターンを示す図である。
【図32】合成したZn−CIT−6の走査電子顕微鏡写真であり、結晶サイズが0.5〜0.6ミクロンであることを示す図である。
【図33】CIT−6(SnCH3Cl3)触媒を用いて、110℃で実施したグルコース異性化反応の生成物分布であり、調製そのままの触媒を使用した場合(左)及び焼成した触媒を使用した場合(右)をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、本開示の一部を構成する添付の図面及び実施例と関連させて、以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解することができる。本発明は、本明細書に記載及び/又は示した特定の装置、方法、用途、条件、又はパラメータに制限されるものではなく、さらに、本明細書において使用した用語は、特定の実施形態を説明するという目的のための者であり、特許請求の範囲に記載の発明を制限することを意図したものではない。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される時、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段のはっきりした指示がない限り、複数値を含む。本願明細書において使用する用語「複数の」は、1以上を意味する。値の範囲が記載された場合、他の実施形態は、1つの特定の値及び/又は他の特定の値までの範囲を含む。同様に、「約」を伴って近似値として値を表現する場合、特定の値は他の実施形態を形成する。全ての範囲は、包含及び結合することができる。
【0015】
明確のため、本明細書中の別々の実施形態の内容で触れられている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせることができる。また、簡潔のため、本発明の単一の実施形態で記載した、本発明の種々の特徴は、別々で、又はあらゆるサブコンビネーションで用いることができる。さらに、範囲内の値についての参照は、かかる範囲内のあらゆる値を含む。
【0016】
本明細書で使用したように、生成物yを形成するための反応物質xの化学反応性を特徴づけるにあたって、転換率は、反応したxのモル量を、初期のxのモル量で割ることにより求める。選択性は、生成されたyのモル量を、反応したxのモル量で割ることにより求める。収率は、生成されたyのモル量を、初期のxのモル量で割ることにより求める。これらの値は、分数又はパーセンテージで記載することができる。例えば、転換率をパーセンテージで記述するために、反応したxのモル量を初期のxのモル量で割った値に100を掛ける。特に明記しない限り、これらの値が1〜100である場合、分数ではなくパーセンテージである。
【0017】
本願明細書において開示されるいくつかの方法において、糖は、化学触媒作用を使用して異性化される。生物学的触媒作用と比較すると、糖を異性化するために安価な無機材料を使用している化学触媒作用は、より広い温度域で作用可能である、長持ちする、反応速度が早い(反応器内残留時間が短い)、不純物に対する耐性が高いといった、魅力的な効果を提供することができる。
【0018】
例えば、グルコースは、298から423Kの温度域で塩基触媒の存在下で異性化するが、残念なことに、単糖類はアルカリ性溶媒中で不安定であり、313Kを上回る温度では多数の副産物に直ちに分解されてしまう。したがって、基質触媒のフルクトース収率は概して<10%となってしまうので(高いフルクトース選択性[>90%]は、グルコース転換率が低い[<10%]場合にのみ得られる)、基質触媒を大規模なグルコース処理に使用する候補とはしにくい。
【0019】
本願明細書において開示されるいくつかの方法は、シリカ材料の骨格に組み込まれた場合に水性溶媒中で固体酸として作用することができるスズ(Sn)又はチタン(Ti)金属中心を利用する。例えば、この種の酸性中心を含む大孔ゼオライトはアルドース(例えば、グルコース)の異性化において活性であり、塩基触媒工程において通常生じる糖分解反応を予防する。
【0020】
金属酸性中心を使用することで、これらの種類の金属中心とアルドース中に存在するヒドロキシル基/カルボニル基部分との間の強い相互作用を活用することができる。実際に、最近の報告において、Sn-Beta ゼオライトは、カルボニル化合物のメールワイン−ポンドルフ−バーレー還元(MPV)において非常に活性であり、アルコールのヒドロキシル基からケトンのカルボニル基へのヒドリド転位を生じさせる(Corma A.ら(2002年)による、「カルボニル合成物の選択的還元触媒としてのAlフリーSn−ベータゼオライト(メールワイン−ポンドルフ−バーレー反応)Al-free Sn-Beta zeolite as a catalyst for the selective reduction of carbonyl compounds (Meerwein-Ponndorf-Verley reaction))」、J. Am. Chem. Soc. 124(13): 3194-95)。同様に、他の報告においては、Snを含有する材料が、アルコール類の存在下において、トリオース(例えばグリセルアルデヒド及びジヒドロキシアセトン)がルイス酸媒介異性化/エステル化反応シーケンスを介して乳酸アルキルに転換することを触媒する作用を有することが示されていた(Hayashi Y. 及び Sasaki Y. (2005年)、「アルコール溶液中におけるTin触媒作用によるトリオースからアルキルへの転換( Tin-catalyzed conversion of trioses to alkyl lactates in alcohol solution)」、 Chem. Commun. 21:2716-18; Taarning Eら、(2009年)、「トリオース糖類のゼオライト触媒異性化 (Zeolite-catalyzed isomerization of triose sugars)」、 ChemSusChem 2(7): 625-27)
【0021】
本願明細書で開示するいくつかの方法において、特に、水性溶媒中で単糖類を触媒と接触させることによって、単糖類を異性化する。触媒は、例えば、金属中心を含んでいる無機材料であってもよい。
【0022】
本願明細書で開示する更なる方法において、無機材料は、シリカを含む材料であってもよい。無機材料は、多孔性材料、又は、特に分子篩、又は、特に微小孔構造材料(例えばゼオライト)であってもよい。例えば、無機材料は、高シリカゼオライトであってもよい。
【0023】
多くのゼオライトがアルミノケイ酸塩であるにもかかわらず、例えば、亜鉛のような他の成分を組み込んでいるゼオライトが従来技術において既知であり、その合成方法も既知である。高シリカと称される一部のゼオライトは、骨格内のシリコンのアルミニウムに対する比率が高く、例えば少なくとも10:1、又は100:1程度、或いは、それよりも高い。高シリカゼオライトは、完全にアルミニウムフリーであってもよい。アルミニウムに対するシリコンの比率が高いほど、ゼオライトの骨格がより中性かつ疎水性となる。
【0024】
無機材料が多孔性材料である実施形態において、材料の孔は、単糖類、他の反応物質、又は生成物を多孔性材料内部に導くために十分な大きさとして設計されうる。例えば、無機材料がゼオライトの場合、所望の孔径を有する特定のゼオライトを選択することができる。孔径はゼオライトを分類する1つの方法であり、様々な孔径のゼオライトが従来技術で知られている。また、ゼオライトの孔径は、不要な分子や干渉分子を除去するために選択することができる。
【0025】
無機材料が多孔性材料である実施形態において、材料内部で触媒反応性が発揮されるように、材料を設計することができる。この場合、孔を経て反応物質が材料内部に入り、反応して生成物を生じ、孔を経て生成物が材料から出て行く。更なる実施形態において、表層反応性を有してもよいが、そのような反応性は、実質的でなくても、ごくわずかでも、或いは、完全に無くてもよい。一部の実施形態において、無機材料が触媒活性に関与しても良いが、他の実施形態では、金属中心が触媒活性を提供する。
【0026】
本願明細書で開示する更なる方法において、金属中心は、無機材料の骨格に組み込まれる。例えば、ゼオライトは、ゼオライトの骨格内に金属を含んでも良い。このようなゼオライトの例は、従来技術で知られている(例えば、Corma A.ら(2001)、「バイヤー・ビリガー酸化に用いる化学的選択性不均一性触媒としてのSn−ゼオライトベータ(Sn-zeolite beta as a heterogeneous chemoselective catalyst for Baeyer-Villiger oxidations, Nature 412(6845): 423-25)」)。このようなことが知られていたにも関わらず、一般的に、ゼオライトの骨格内へ金属を組み込むことが成功したか否かは、ゼオライトの特徴によって示す必要がある。
【0027】
本願明細書で開示する更なる方法において、金属中心はルイス酸として作用する。このような方法において、金属は、無機材料にルイス酸活性を付与することができる。一般的に、従来技術において、陽イオン、複合体、共有結合化合物として存在するか否かに応じて、多くのルイス酸として作用する金属(例えばアルミニウム、ホウ素、クロミウム、コバルト、鉄、チタン、スズ、その他)が知られている。本願明細書で開示する幾つかの方法において、例えば、金属中心は、スズ又はチタンである。ルイス酸活性を有することが知られている当業界で知られている他の金属についても、触媒に組み込むものとして考慮する。
【0028】
本願明細書で開示する更なる方法において、触媒は、ゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含むゼオライトであってもよい。例えば、触媒は、ゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトであってもよい。
【0029】
本願明細書で開示する幾つかの方法において、触媒はゼオライトベータを含む。通常、ゼオライトベータは構造*BEAによって定義されるゼオライトである。その特徴は、例えば、ゼオライト骨格タイプのアトラス(Atlas of Zeolite Framework Types)第6版(Baerlocherら、2007年)に記載されている。当業界で既知の他のゼオライトについても考慮する。触媒すべき反応、反応物質、及び生成物に応じて、適切な骨格サイズ、形状、及び構成要素を決定して、それ基づいてゼオライトを選択する。例えば、触媒すべき反応が、グルコースのフルクトースへの異性化である場合、グルコース及びフルクトースを通過させることができる孔径を有するゼオライトが望ましい。そのようなゼオライトは、ゼオライトベータである。より大きな反応物質及び生成物は、それに比例して、より大きな孔を有する材料を必要とする。
【0030】
本願明細書で開示する他の方法において、触媒はTS−1のようなゼオライトを含む。TS−1は、MFI構造を有するチタノシリケート材料である。その他の様々な大孔及び特大孔を有するゼオライトも考慮する。それらは、例えば、CIT−1、ZSM−12、SSZ−33、SSZ−26、CIT−5、又は高シリカFAUである。
【0031】
本願明細書で開示する更なる方法において、多孔性材料は、規則配列(ordered )メソ多孔性シリカ材料である。例えば、単糖類は、水性溶媒中で、特に、単糖類と骨格中にスズ又はチタンを規則配列メソ多孔性シリカ材料とを接触させることによって異性化される。メソ多孔性シリカ材料は、例えば、MCM−41、SBA−15、TUD−1、HMM−33、又はFSM−16であってもよい。
【0032】
本願明細書で開示するさらに他の方法では、触媒は水溶液中で単糖類と接触する。ここで、水溶液とは、溶媒が水であることを意味する。例えば、本願明細書で開示する触媒は、例えば、アルコール類のような他の溶媒中で、単糖類と接触する。本願明細書の他の箇所で開示するが、溶媒の選択は化学反応の結果にかなり影響する。
【0033】
本願明細書で開示する更なる方法において、触媒は炭水化物と接触する。例えば、触媒は、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類又は多糖類と接触することができる。さらにまた、必要に応じて、いかなる組合せの炭水化物のであっても触媒と接触させることができる。さらに、あらゆるキラリティーの炭水化物を、触媒と接触させることもできる。
【0034】
炭水化物が単糖類である場合、単糖類は、例えば 、アルドトリオース、アルドテトロース、アルドペントース、又はアルドヘキソースのようなアルドースであってもよい。特に、アルドースは、グリセルアルデヒド、エリスロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース又はタロースを含むことができる。
【0035】
また、炭水化物が単糖類である場合、単糖類は、例えば、ケトトリオース、ケトテトロース、ケトペントース、又はケトヘキソースのようなケトースであってもよい。特に、ケトースは、ジヒドロキシアセトン、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、又はタガトースを含むことができる。
【0036】
ピラノース、フラノース、アミノ糖、などを含む、他の単糖類及びそれらの誘導体も、本願明細書で開示する触媒と接触させることができる。
【0037】
炭水化物が二糖類である場合、二糖類は、例えば、蔗糖、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、コジビオース、ニゲロース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツロース、パラチノース、ゲンチオビウロース(gentiobiulose)、マンノビオース、メリビオース、メリブロース(melibulose)、ルチノース、ルチヌロース(rutinulose)又はキシロビオースのような単糖類のいかなる組合せでもあってもよい。
【0038】
でん粉及びセルロースのようなバイオマス材料の加水分解反応の副産物(例えば、マルトース及びセロビオース)の混合物を含む、炭水化物の混合物を、本願明細書で開示する触媒と接触させることができる。さらにまた、でん粉、セルロース及びキチン質と同様に、例えば、フラクトオリゴ糖及びガラクトオリゴ糖のような、オリゴ糖類及び多糖類を、本願明細書で開示する触媒と接触させることができる。
【0039】
本願明細書で開示する更なる方法において、水性溶媒は、約0.001重量パーセント〜選択された温度における溶媒の最大溶解量の間で、単糖類を含む。例えば、水性溶媒は、約0.001重量パーセント〜約50重量パーセントの間で単糖類を含むか、又は約10重量パーセント〜約50重量パーセントの間で単糖類を含むことができる。また、水性溶媒は、約25重量パーセント〜約50重量パーセントの単糖類を含むこともできる。特に、処理装置の利便性が向上することを理由に、より濃度が高いことが産業的に望ましい。特定の単糖類濃度は、選択した単糖類の可溶性にある程度依存して選択する。
【0040】
本願明細書で開示する更なる方法において、異性化反応は、ほぼ熱力学的平衡に達する。例えば、図30には、グルコースからフルクトースへの転換における平衡転換率を示す。本願明細書で開示する更なる方法において、従来技術における酵素系と同様の転換率及び選択性をもたらす化学触媒によって異性化反応を実施する。
【0041】
本願明細書で開示する他の方法において、水性溶媒のpHは酸性(7.0未満)である。例えば、本願明細書で開示するように、単糖類は、非酸性条件下で異性化できるが、酸性条件下での異性化は顕著に有用である。実際、塩基触媒作用中に直面する、いくつかの主要なボトルネックを解消するにあたり、酸性溶液中の糖を異性化する能力が重要である。これらのボトルネックには、酸性の副産物によって活性部位が中和されてしまうことや、アルカリ環境中において糖の安定性が低いことが含まれる。さらにまた、低pH値で作用することで、追加のユニット動作を用いる必要なく、上流及び下流における酸触媒反応(例えば、加水分解又は脱水)を、グルコース異性化反応と組み合わせる機会をもたらすことができる。例えば、高フルクトースコーンシロップ(HFCS)の製造において、異性化ステップの前に必要なでん粉加水分解ステップ(一般的に、酸触媒、又は酵素の組合せを使用する別個の反応器内で実施される)をグルコース異性化ステップと組み合わせることができた。同様に、HMFの生産において、酸接触媒脱水ステップを実施する前の、グルコースのフルクトースへの転換に必要な塩基触媒作用による異性化ステップは、単一の反応器に組み込んで、生成物の収率を高効率とすることができた。
【0042】
本願明細書で開示する幾つかの方法において、水性溶媒のpHは約0〜約4の間である。本願明細書で開示する更なる方法において、水性溶媒のpHは約0〜約2の間である。pH値が約0〜約2の間(2を含む)であることは、異性化と、でん粉の加水分解及び/又はHMFを生成するためのフルクトースの脱水とを組み合わせるために特に有利である。
【0043】
本願明細書で開示するさらに他の方法において、水性溶媒は塩を含む。塩は、例えば、事前のステップから持ち越される等の多くの理由により存在しうるが、塩耐性は、経済面及び効率面において有利である。もう一つの例として、複数の液相間のパーティショニングを容易にするために、意図的に塩を加えることもある。本願明細書で開示する幾つかの方法において、塩は、あらゆる金属(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リチウムその他)でありうる陽イオンを含むことができる。同様に、塩は、陰イオン(例えば、酢酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、クエン酸塩、シアン化物、ギ酸塩、グリコール酸塩、ハロゲン化物、ヘキサフルオロリン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酸化物、リン酸塩、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、トシラート、トリフラート又はビストリフオロスルホンイミド)を含むことができる。例えば、塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム又は臭化カリウムであってもよい。
【0044】
さらに、本願明細書で開示する他の方法において、約50℃~約250℃の温度域で異性化を実施する。温度域の選択は、転換率及び選択性と同様に、反応速度に影響する。水溶液の組成に応じて、反応の最大温度は、反応器における加圧の有無、及び加圧されている場合はその圧力に依存する。例えば、異性化は約90℃〜約180℃の温度域で実施することができる。さらに、例えば、異性化は約90℃〜約140℃の温度域で実施することができる。そして、実現可能であれば、エネルギーの節約の観点から、比較的低温であることが望ましい。
【0045】
本願明細書で開示する更なる方法において、約90分未満にわたり、異性化を実施することができる。一般に、所望の転換率に達するのに十分な程度の時間にわたり、反応が持続する必要がある。産業的観点から、効率の点で、反応時間が比較的短いことが望ましい。例えば、約60分未満、又は約30分未満の間、異性化を実施することができる。望ましくない劣化生成物が蓄積する可能性があるため、反応時間を比較的短くすることもある。
【0046】
また、本願明細書で開示する更なる方法において、性能を大幅に低下させること無く、焼成の必要無く、ゼオライト触媒を少なくとも3回の反応サイクルでバッチ式(回分式)に使用しうるように、単糖類異性化反応の条件を選択する。安定触媒は産業的に重要な幾つかの利点をもたらすが、それらは、効率向上、コスト削減、及び信頼性を含む。本願明細書で開示する幾つかの方法において、Sn−ベータ(Sn−Beta)触媒は、安定であり、再利用後及び焼成後にも、その活性を維持する。例えば、触媒の中間処理無しでグルコース異性化の連続サイクルを実施したところ、転換率及び選択性は維持された。本願明細書で開示する他の実施形態において、触媒の性能が劣化する場合であっても、サイクルの合間に空気中で触媒を焼成するステップを実施することで性能を回復することができる。触媒の性能の劣化の有無は、ある程度触媒及び反応条件の選択に依存する。例えば、反応時間及び反応温度が適正レベル(383K、30分)に維持された場合には、焼成のための中間ステップは不要である。
【0047】
本願明細書で開示する更なる方法では、単糖類異性化による生成物を脱水する。例えば、脱水して化学中間体として有用なフラン誘導体を生成する。さらなる例として、特に、水性溶媒中でグルコースを骨格中にスズ又はチタンが組み込まれた高シリカゼオライトと接触させて、フルクトースを生成してフルクトースを脱水することによって、グルコースを5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)に転換する。高シリカゼオライトは、グルコースを通過させる孔を有している。
【0048】
本明細書に開示した、異性化及び脱水の組み合わせの他の態様において、触媒は、ベータのようなゼオライトを含む。その他の様々な大孔及び特大孔を有するゼオライトも考慮する。それらは、例えば、CIT−1、ZSM−12、SSZ−33、SSZ−26、CIT−5、又は高シリカFAUである。本明細書に開示した、異性化及び脱水を組み合わせる更なる方法において、多孔性材料は、規則配列メソ多孔性シリカ材料である。例えば、単糖類は、水性溶媒中で、特に、単糖類と骨格中にスズ又はチタンを含む規則配列メソ多孔性シリカ材料とを接触させることによって異性化される。メソ多孔性シリカ材料は、例えば、MCM−41、SBA−15、TUD−1、HMM−33、又はFSM−16であってもよい。
【0049】
本願明細書で開示する更なる態様において、単糖類異性化生成物の脱水処理は、水性溶媒中で実施する。例えば、フルクトースの脱水処理は水性溶媒中で実施する。このような手順は、分離ステップを必要とすることなく、同じ水性溶媒中で異性化処理及び脱水処理の両方を実施することを実現する。本願明細書で開示する特定の異性化触媒は脱水のために必要な条件下で安定しているため、本願明細書で開示する方法は、このような手順に特に適している。
【0050】
概して、フラン誘導体を生成するための糖類の脱水はよく研究されており、特に、フルクトースを脱水してHMFを生成することは従来技術において既知である。本願明細書で開示する特定の方法において、酸触媒の存在下で、異性化反応生成物の脱水処理を実施する。例えば、触媒は、例えば、HClのような水性溶媒中に溶解した無機酸であってもよい。例えば、触媒は、例えば、*BEA構造を有するプロトン化高シリカゼオライトのような固体酸触媒であってもよい。他の酸供給源としては、陽イオン交換樹脂、ルイス酸、シリカ−アルミナ材料、チタニア−アルミナ材料、鉱酸、ヘテロポリ酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、シュウ酸、レブリン酸、クエン酸、ニオブ酸化物、バナジウムリン酸又はニオブリン酸も有用である。
【0051】
異性化及び脱水反応は、順番に又は同時に実施するか、或いはこれらの幾つか組合せて実施してもよい。例えば、水溶液中で単糖類を異性化触媒及び脱水触媒と接触させて、両方の反応を一緒に実施しても良い。特定の例では、酸性水溶液中でグルコースを異性化触媒と接触させた場合、グルコースはまずフルクトースを生成して、その後HMFを生成するために最初に反応する。特定の反応条件は、特に、異性化と関連して開示した条件のいずれであってもよい。
【0052】
本願明細書で開示した異性化及び脱水を組み合わせる幾つかの方法において、水性溶媒のpHは約0〜約4の間である。本願明細書で開示する更なる方法において、水性溶媒のpHは約0〜約2の間である。本願明細書で開示する異性化及び脱水を組み合わせる他の方法において、水性溶媒は塩を含み、塩は、あらゆる金属(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リチウムその他)でありうる陽イオンを含むことができる。同様に、塩は、陰イオン(例えば、酢酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、クエン酸塩、シアン化物、ギ酸塩、グリコール酸塩、ハロゲン化物、ヘキサフルオロリン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酸化物、リン酸塩、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、トシラート、トリフラート又はビストリフオロスルホンイミド)を含むことができる。例えば、塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム又は臭化カリウムであってもよい。
【0053】
本願明細書で開示する他の方法において、約50℃〜約250℃の温度域で異性化を実施する。温度域の選択は、転換率及び選択性と同様に、反応速度に影響する。水溶液の組成に応じて、反応の最大温度は、反応器における加圧の有無、及び加圧されている場合はその圧力に依存する。例えば、異性化は約90℃〜約180℃の温度域で実施することができる。さらに、例えば、異性化は約90℃〜約140℃の温度域で実施することができる。そして、実現可能であれば、エネルギーの節約の観点から、比較的低温であることが望ましい。
【0054】
本願明細書で開示する更なる方法において、約90分未満にわたり、異性化を実施することができる。一般に、所望の転換率に達するのに十分な程度の時間にわたり、反応が持続する必要がある。産業的観点から、効率の点で、反応時間が比較的短いことが望ましい。例えば、約60分未満又は約30分未満の間、異性化を実施することができる。望ましくない劣化生成物が蓄積する可能性があるため、反応時間を比較的短くすることもある。
【0055】
本願明細書で開示するさらに他の方法において、異性化反応及び脱水反応の組み合わせは、米国特許第7,572,925号明細書に記載されたように、二相系で実施することができる。二相系は、2つの実質的に混ざらない液相(1つの水性相及び1つの有機相)を含んでいる。二相系は、原則的に、転換率、選択性、及び生成効率に関して有利である。本発明の用途では、水性相において、糖類の異性化が行われ、異性化生成物の脱水反応が行われる。例えば、グルコースのフルクトースへの異性化及びフルクトースのHMFへの脱水は、水性相で行われる。さらに、これらの反応のそれぞれに関する触媒を、水性相中に提供する。そして、例えば、HMFのような脱水生成物を有機相に抽出する。このように、例えば、水性溶媒を、HMFを水性溶媒から抽出することができる有機媒体と接触させることができる。この場合、有機性溶媒は水性溶媒と実質的に混ざらない。これにより、水性層中にHMFを存在させずに、脱水反応の効率を向上させて、有機層中におけるHMF生成物を比較的純粋な状態として、精製を簡略化することができる。このように、例えば、本願明細書で開示する幾つかの方法では、水性溶媒中でHMFを精製し、そのままの状態で水性溶媒から有機性溶媒に抽出する。
【0056】
例えば、あらゆる水非混和性、線形、分岐、環式アルコール、エーテル若しくはケトン、又は、未置換脂肪族若しくは芳香族炭化水素、又は、ハロ置換脂肪族若しくは芳香族炭化水素、又は、これらの混合物のような様々な溶媒を有機溶媒として使用することができる。例えば、本願明細書で開示する幾つか態様で、有機溶媒は、1−ブタノール又はTHFを含む。有機層の幾つかの成分は、水とある程度混合可能である化合物を含みうる。本明細書に開示の他の有機性溶媒成分は、例えば、DMSO、DMF、N−メチルピロリジノン、アセトニトリル、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン等を含む。
【0057】
本願明細書で開示するさらに他の方法において、でん粉をHMFに転換するために幾つかの反応を組み合わせる。当業界において既知であるが、でん粉を酸によって加水分解してグルコースを生成することができる。本明細書に開示したように、本明細書に開示の触媒を用いたグルコースの異性化は、酸性条件で良好に進行する。このように、本明細書に開示の方法は、特に酸性水性溶媒中ででんぷんを加水分解してグルコースを生成し、水性溶媒中でグルコースを骨格中にスズ又はチタンが組み込まれた高シリカゼオライトと接触させて、フルクトースを生成してフルクトースを脱水することによって、でんぷんを5−ヒドロキシメチルフルフラールに転換する。高シリカゼオライトは、グルコースを通過させる孔を有している。本明細書に開示の方法において、これらの3つの反応を組み合わせる事が可能であり、例えば、グルコースを酸性水性溶媒中に保持し、高シリカゼオライトと接触させ、フルクトースを生成する。同様に、本明細書に開示の方法において、フルクトースを酸性水性溶媒中に保持して、脱水して5−ヒドロキシメチルフルフラールを生成する。さらに、本明細書に開示の方法において、例えば、3つの反応全てを1つの容器内で、水溶液中で実施することもできる。この場合、最初の反応物質はでん粉であり、最終生成物はHMFである。
【0058】
本願明細書で開示する他の方法において、例えば、米国特許第7,572,925号明細書に従う二相系中で、でん粉からHMFへの転換を実施することができる。異性化反応、並びに異性化及び脱水反応の組み合わせに適用可能な本明細書に開示の方法及びその変形例は、全て、水溶液又は二相系のいずれにおいても、でんぷんからHMFへの反応系に適用することができる。したがって、例えば、酸性の水性溶媒を、5−ヒドロキシメチルフルフラールを酸性の水性溶媒から抽出することができる有機溶媒と接触させる。この場合、有機溶媒は水性溶媒と実質的に混ざらない。そして、更なる実施形態で、酸性の水性溶媒中で5−ヒドロキシメチルフルフラールを生成して、そのままの状態で水性溶媒から有機溶媒に抽出する。
【実施例1】
【0059】
Ti−ベータゼオライトは、以下の通りに調製した。水酸化テトラエチルアンモニウム溶液(シグマアルドリッチ社、35重量%、水二溶解)7.503gを、15gの水で希釈した。それから、オルトけい酸テトラエチル(シグマアルドリッチ社、98重量%)7.016g及びチタニウム(IV)イソプロポキシド(シグマアルドリッチ社、97重量%)0.201gを、溶液に加えた。オルトけい酸テトラエチル及びチタニウム(IV)イソプロポキシドが完全に加水分解するまで混合物を撹拌し、エタノール、イソプロパノール及び必要量の水を蒸発させて所望の水比率とした。最終的に、HF溶液(Mallinckrodt社、52重量%、水に溶解)0.670gを加え、粘性の高いゲル状とした。
【0060】
ゲル組成は、SiO2/0.021TiO2/0.54TEAOH/0.53HF/6.6H2Oであった。このゲルをテフロンで被覆したステンレススチールオートクレーブに移して、140℃で14日間加熱した。固体を濾過して回収して、水で十分に洗浄して100℃でオーバーナイトして乾燥した。固体材料は、ベータゼオライト構造を呈した(図7のTi−ベータXRDパターンを参照)。固体を、580℃で6時間焼成して、結晶材料中の有機成分を除去した。焼成した試料のUV−可視拡散反射スペクトルにおいて、〜200−250nmで特徴的なバンドが存在するが、これは、ゼオライト骨格中のTi四配位構造に該当するものである(図6のTi−ベータ参照)。
【実施例2】
【0061】
Sn−ベータゼオライトは以下の通りに調製した。水酸化テトラエチルアンモニウム溶液(シグマアルドリッチ社、35重量%、水に溶解)7.57gを、15gの水で希釈した。オルトけい酸テトラエチル(シグマアルドリッチ社、98重量%)7.011g及び塩化すず(IV)五水和物 (シグマアルドリッチ社、98重量部)0.121gを溶液に加えた。オルトけい酸テトラエチルが完全に加水分解するまで混合物を撹拌し、全エタノール及び若干の水を蒸発させて所望の水比率とした。最終的に、HF溶液(Mallinckrodt社、52重量%、水に溶解)0.690gを加え、粘性の高いゲル状とした。
【0062】
ゲル組成は、SiO2/0.01SnCl4/0.55 TEAOH/0.54 HF/7.52H2Oであった。このゲルをテフロンで被覆したステンレススチールオートクレーブに移して、140℃で50日間加熱した。固体を濾過して回収して、水で十分に洗浄して100℃でオーバーナイトして乾燥した。固体を、580℃で6時間焼成して、結晶材料中の有機成分を除去した。X線回折により、固体材料がベータゼオライト構造を有することを確認した(図7のSn−ベータXRDパターン参照)。焼成した試料のUV−可視拡散反射スペクトルにおいて、〜200−250nmで特徴的なバンドが存在するが、これは、ゼオライト骨格中のSn四配位構造に該当するものである(図12のSn−ベータ参照)。走査電子顕微鏡検査(SEM)によって、Sn−ベータ結晶は図3〜4に示すように、数ミクロンサイズであり、Sn−ベータ試料に関するエネルギー分散X線スペクトル(EDS)測定結果により、Si:Snの原子比率が96:1であることが明らかになった。
【実施例3】
【0063】
TS−1は、特許文献(米国特許第4,410,501明細書)に記載の方法に従って合成した。TS−1は、チタニウムブトキシド(TNBT、シグマアルドリッチ社)、オルトけい酸テトラエチル(TEOS、シグマアルドリッチ社)、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH、1M、シグマアルドリッチ社)、及び蒸留水を混合して調製した透明溶液から結晶化した。混合物を攪拌して、オルトけい酸テトラエチル及びチタニウムブトキシドを完全に加水分解した。そして、全エタノール及びブタノール、並びに若干の水を蒸発させて、所望の水比率とした。ゲル組成は、SiO2/0.03TiO2/0.44 TPAOH/30H2Oであった。TS−1反応混合物を、テフロン被覆されたオートクレーブに移し、175℃で5日間結晶化した。オートクレーブを、50rpmで回転した。冷却後、濾過した固体を回収して、水で十分に洗浄して、100℃でオーバーナイトして乾燥した。材料を580℃で6時間焼成して、結晶材料中の有機成分を除去した。
【実施例4】
【0064】
Ti−MCM−41試料は以下の通りに合成した。ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(C16TABr)溶液を調製した(水15.1gに対してC16TABr1.93g)。そして、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液(25%、アルドリッチ社)6.42gを加えた。ホモジナイズの後、オルトけい酸テトラエチル(シグマアルドリッチ社、98重量%)7.015g及びチタニウム(IV)イソプロポキシド(シグマアルドリッチ社、97重量%)0.19gを溶液に加えた。混合物を撹拌して、オルトけい酸テトラエチル及びチタニウム(IV)イソプロポキシドを完全に加水分解した。次いで、全エタノール及び全イソプロパノール、並びに若干の水を蒸発させて、所望の水比率とした。最終的な化合物は、以下の通りであった:1.0SiO2/0.02TiO2/0.16 C16TABr/0.26 TMAOH/24.8H2O。均一ゲルを、テフロン被覆ステンレススチールオートクレーブに封入して、135℃で48時間、静的条件下で加熱した。濾過して固体を回収して、水で十分に洗浄して、100℃でオーバーナイトして乾燥した。固体を、580℃で6時間焼成して、結晶材料中の有機成分を除去した。
【実施例5】
【0065】
Sn−MCM−41試料を以下の通りに合成した。ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(C16TABr)溶液を調製した(水4.3gに対して、C16TABr1.46g)。そして、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液(25%、アルドリッチ社)6.34gを加えた。ホモジナイズの後、SnCl4・5H2O(98%、アルドリッチ社)0.088g及びコロイド状シリカ溶液(Ludox AS−40、シグマアルドリッチ社)3.76gを、連続的に攪拌しつつ加えた。最終的な化合物は、以下の通りであった:1.0SiO2/0.01SnCl4/0.16 C16TABr/0.35 TMAOH/25H2O。均一ゲルを、テフロン被覆ステンレススチールオートクレーブに封入して、135℃で48時間、静的条件下で加熱した。濾過して固体を回収して、水で十分に洗浄して、100℃でオーバーナイトして乾燥した。固体を、580℃で6時間焼成して、規則配列材料中の有機成分を除去した。
【実施例6】
【0066】
様々な材料を既知の方法で合成した。下表に、合成した材料と、そのSi/金属比を示す。Si/金属比はエネルギー分散X線スペクトル(EDS)で測定した。
【0067】
【表1】
【0068】
これらの材料の合成は、実施例1〜5に記載したように、以下文献に従った。([1]Corma, A. ら, J. Phys. Chem. C, 2009, 113 (26), pp. 11306.11315;[2] C.B. Khouw, H.X. Li 及び M.E. Davis, Micropor. Mater. 2. (1994), p. 425;[3]Blasco ら, J. Catal., 1995, 156, p. 65;[4]Ti−MCM−41試料をヘキサメチルジシラザンで処理して表面上のシラノールをキャッピングした;[5]Corma, A. ら, ARKIVOC, 2005, ix, p. 124)
【0069】
粉末X線回折(XRF)パターンは、Cu,Ka放射を用いたScintag XDS 2000回折計により測定した。エネルギー分散X線スペクトル(EDS)を有する走査電子顕微鏡検査(SEM)によって、EHT(electron high tension)=10kVでの測定値をLEO1550VP FE SEMに記録した。拡散反射率セルを備えるCary3G分光光度計を用いてUV可視測定値を記録した。
【実施例7】
【0070】
デジタル攪拌ホットプレート(フィッシャーサイエンティフィック社)上に配置した温度制御油浴中で加熱される10mL厚壁ガラス反応器(VWR)中でグルコース異性化実験を実施した。典型的な実験では、10重量%グルコース及び金属:グルコースのモル比が1:50となる相当量の触媒(通常〜70mg)を含む水溶液1.5gを反応器に加え、密閉した。反応器を油浴中に配置して、特定の時間に取り出した。氷浴中で反応器を冷却して反応を停止させ、少量の分割量(aliquot)を採取して分析した。試料分析は、PDA UV(320nm)及び蒸発光散乱検出(ELS)検出器を備えるAgilent1200システム(アジレント・テクノロジーズ社)を使用した高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて実施した。グルコース及びフルクトース濃度 流速0.55mL/分、カラム温度353Kの、超高純度水(pH= 7)を移動位相として使用して、Phenomenex RHMカラム(フェノメネックス社)によってモニタリングした。
【実施例8】
【0071】
下表に、グルコース異性化実験の結果を要約する。
【0072】
【表2−1】
【表2−2】
【0073】
グルコース異性化反応における活性が種々異なるルイス酸性中心を含む一連の材料について試験した。試験は、大きな孔を有するベータゼオライトの骨格に組み込まれたタンタル(Ta)、スズ(Sn)及びチタン(Ti)金属中心、中程度の孔を有するゼオライト(TS−1)の骨格に組み込まれたTi、並びに、規則配列メソ多孔質シリカ支持体(SBA−15)に組み込まれたSn及びTiを含んだ。図16に示すように、これらの条件下において、 Sn−ベータ及びTi−ベータが、最も高い異性化活性を示し、90分140℃において50%超のグルコース転換率を呈した。対照的に、同じ反応条件下で、Sn−SBA及びTi−SBAは、中程度の異性化活性を呈し、TS−1及びTa−ベータ材料は、ほとんど異性化活性を示さないことが明らかとなった。TS−1及びTi−ベータの反応性違いは、TS−1孔の直径がグルコース分子を通過させてゼオライト内に導くためには小さすぎることを示唆している。
【0074】
2つの最も活性の高い材料の反応速度をより詳細に検討すると、Sn−ベータ触媒は、Ti−ベータよりも優れた性能でグルコースを異性化するということが明らかになった。具体的には、110℃45分及び140℃15分で、反応平衡(すなわち、グルコース転換率50%)で、フルクトース選択性が90%を上回った。フルクトース選択性の値は、反応を比較的長時間進行させた場合に、フルクトース分解反応が開始することに起因して、低下した(エントリー5d及び10e参照)。Ti−ベータ触媒は、活性ではあったが、上述の条件下において、Sn−ベータ触媒ほど有効ではなく、110℃45分の反応後には、グルコース転換率は18%でフルクトース選択性は80%であり、140℃45分の反応後には、グルコース転換率は44%でフルクトース選択性は68%であった。
【0075】
発明者らは、異性化反応におけるSn−ベータの活性に関連する、興味深い溶媒の影響を観察した。塩基性触媒とは異なり、Sn−ベータ触媒は、酸性環境下で異性化反応を実施できた。ここで、本明細書に記載の反応に使用される塩基性触媒の主な欠点は、糖分解反応の間に形成されるカルボン酸によって活性部位が中和されてしまうことに起因して触媒が非活性化してしまうことである。しかし、Sn−ベータを酸性のグルコース溶液(pH=2、HCl)に用いた場合、非酸性溶液中で実施した場合と比較して、活性又はフルクトース選択性の違いが見られなかった(エントリー5c及び6c参照)。対照的に、非プロトン性溶媒(ジメチルスルホキシド[DMSO])を水に代えて用いた場合に、Sn−ベータは異性化反応に関して活性を有さなかった(エントリー11c及び12c参照)。
【実施例9】
【0076】
下表に、水中で様々な触媒を使用して行ったグルコース異性化実験を要約する。反応は、10重量%グルコースと、金属:グルコースのモル比が1:50となる相当量の触媒とを用いて実施した。なお、エントリー10(*を付して示す)については、45重量%グルコース溶液に対して、グルコース:Snのモル比が225:1となるようにして、反応を実施した。**は、マンノース以外の未確認の糖がTi−ベータによって得られたことを示す。記載した収率5重量%は、ヘキソースに関する応答計数を用いて算出した。
【0077】
【表3】
【0078】
Sn又はTi金属中心を含む一連のシリカ材料を、グルコース異性化反応におけるそれらの活性に基づいてスクリーニングした。具体的には、Sn及びTi金属中心は大孔ゼオライト(ベータ)の骨格に組み込まれており、Tiは中程度の孔を有するゼオライト(TS−1)に組み込まれており、Sn及びTiは規則配列メソ多孔性シリカ(MCM−41)に組み込まれている。これらの条件下では、Sn−ベータ及びTi−ベータは最も高いグルコース異性化活性を示し、413K90分の反応の後のグルコース転換率は50%超であった(図17参照)。対照的に、同じ反応条件下で、Sn−MCM41及びTi−MCM41は中程度の活性を示し、TS−1は実質的に不活性であった(図17参照)。TS−1及びTi−ベータの間の反応性の違いは、グルコース分子はベータゼオライトの孔(孔直径:およそ0.8nm)は拡散することができるが、TS−1の孔(孔直径:0.5〜0.6nm)は拡散することができないことを示唆している。
【0079】
2つの最も活性の高い材料を用いた更なる反応実験において、Sn−ベータ触媒は、Ti−ベータと比較して優れた性能でグルコースを異性化することが明らかとなった。具体的には、Sn−ベータを触媒作用量(Sn:グルコースのモル比=1:50)含有する10重量%グルコース溶液について、383K及び413Kでそれぞれ30分及び12分反応させた後の収率は、グルコース約46%(w/w)、フルクトース約31%(w/w)、及びマンノース約9%(w/w)であった。383Kで、より長い時間反応を進行させた場合であっても、Ti−ベータ触媒はグルコース転換率が非常に低かった(エントリー4及び7参照)。反応時間が長くなると、自己触媒分解反応によって、全糖類の収率が低下した(図18参照)。反応温度を変化させても、所与のグルコース転換率値において失われる糖の総量に影響が無かったため、分解反応の経路は、異性化反応の経路と同様に、明らかな活性化バリアを有することが示唆された。特に、Sn−ベータ触媒は、大規模な転換において使用されるものと同様に、更に高濃度のグルコース溶液に対して使用することもできる。例えば、グルコース46%(w/w)、フルクトース29%(w/w)、及びマンノース8%(w/w)の配合からなる生成物は、383K、60分間でSn−ベータを触媒作用量(Sn:グルコースモル比=1:225)含有する45重量%グルコース溶液を反応させて得られた(エントリー4及び10参照)。このような結果は、工業的な酵素処理法で得られる結果に近く、無機触媒を用いて高濃縮グルコース溶液から得られる高いフルクトース収率である。
【0080】
このデータは、Sn−ベータの異性化反応の活性部位がゼオライトの骨格に組み込まれるSn原子であることを示唆する。SnCl4・5H2Oも、SnO2も、異性化活性を示さず(エントリー8及び9参照)、Sn−ベータに関するUVデータは、更なる骨格Snに相当する吸収バンドを呈さなかった(図6参照)。
【実施例10】
【0081】
下表に触媒安定性の実験結果を要約する。反応は、Sn:グルコースのモル比が1:50である10重量%グルコース溶液を使用して383Kで実施した(エントリー5bを除く)。実験1(エントリー1〜4)について、各サイクル後に、触媒を水で洗浄して、新たなグルコース溶液を加えて新たなサイクルを開始させた。サイクル4において、サイクル3から回収した触媒を空気中で、813Kで3時間、温度ランプ速度2K/分で焼成した。実験2(エントリー5a〜5b)について、Sn−ベータを用いた反応を、12分間継続させた(エントリー5a)。その後、熱いうちに溶液をろ過して触媒を回収し、濾過溶液をさらに30分間反応させた(エントリー5b)。
【0082】
【表4】
【0083】
Sn−ベータ触媒の安定性を試験するために、2種類の実験を行った。第1の実験では、それぞれ、383Kで30分間にわたり、4つの連続的な異性化サイクルを実行することによって、触媒の再利用性を評価した。各サイクルの後、触媒を濾過により回収して、新たなグルコース溶液を加える前に水で洗浄した。データから明らかなように、3つの反応サイクルの後に、触媒はその初期の活性及び生成物分布を維持していた。第3のサイクルの後、最後の1サイクルを実行する前に、触媒を813Kで、空気中で焼成した。サイクル4の結果により、触媒が再びその初期の活性及び生成物分布を維持したことが明らかとなった。したがって、本発明による触媒はテ印系的なゼオライト再生プロセスに耐えうることが確認された。第2の試験は、溶液に浸出する金属種に起因する均一系触媒作用の存在を確認するために設計した。具体的には、383K、15分間でSn−ベータ触媒によって異性化サイクルを初期化した。そして、溶液がまだ熱いうちに、触媒をろ過により除去した。
【0084】
冷却中に浸出した金属種が再び吸着する可能性を回避するため、濾過溶液を383K、30分間で反応させた。この反応結果は、触媒の存在下で、グルコース異性化が予想通りに進行したことを示した(生成物収率は、グルコース57%(w/w)、フルクトース27%(w/w)、及びマンノース6%(w/w)であった)。しかし、一旦触媒を除去すると、反応は持続しないということは、浸出金属イオンによって均一系触媒作用が生じていないということを示唆している(エントリー5a及び5b)。これらの2つの試験結果は、Sn−ベータが異性化反応に対して非均一触媒作用を有しており、複数の反応サイクルについて使用可能であることを示唆している。
【実施例11】
【0085】
下表に、413Kの酸性条件下における、水中でのSn触媒グルコース反応の結果を要約する、
【0086】
【表5】
【0087】
驚くべきことに、Sn−ベータは、高酸性環境下での異性化反応を実施することが可能である。HCl(実施例9、エントリー4及び6参照)無しで反応させた場合と比較して、酸性の10重量%グルコース溶液(pH=2、HCl)中にてSn−ベータを用いて反応させた場合の活性及び生成物の分布に差異が見られなかった。酸性環境においてSn−ベータを使用した実験では、加水分解/異性化及び異性化/脱水反応シーケンスの結果が良好であった。具体的には、10重量%でん粉溶液を、413K、90分間でHCl(pH=1)を用いて加水分解すると、グルコース87%(w/w)及びでん粉13%(w/w)の溶液を生成し、得られた酸性溶液に対して触媒作用量のSn−ベータ(Sn:グルコースのモル比=1:50 )を加えて、413Kで更に12分間加熱して異性化すると、生成物の分布がでん粉13%(w/w)、グルコース39%(w/w)、フルクトース23%(w/w)、及びマンノース7%(w/w)となった(表3、エントリー1a及び1b)。また、10重量%グルコース溶液を、HCl(pH=1)及びSn−ベータが共に存在する条件下で、413Kで120分間反応させると、HMFの収率は11%(w/w)であり、その他に、フルクトース18%(w/w)及びマンノースは2%(w/w)であった(エントリー4)。これらのデータは、水性HCl中でフルクトースを反応させた場合の脱水結果(HMF収率24%(w/w)、転換率85%;エントリー3)、及び同様の水性HCl反応条件下でグルコースを脱水させた場合の結果(HMF収率1%(w/w)未満、転換率9%;エントリー2)に匹敵しうる。このように、Sn−ベータは、異性化その他の酸性触媒反応の組み合わせを必要とするワンポット反応シーケンスの候補として魅力的である。
【実施例12】
【0088】
C−2位置重水素化グルコース(グルコースD2、図23)を用いて、異性化反応をNMR解析した。図11に示すように、反応機構がいずれの経路をたどるかに関わらず、C−2位置のプロトンは基本的な役割を果たす。実際、C−2位置の同位体置換は初期反応速度を1/2に減速させる結果となった(kH/kD=1.98、図22)。このことから、反応速度に同位体がかなり影響したことが明らかである。重要なことに、触媒がない場合の反応温度(383K)における水中でのグルコースD2の13CNMRスペクトルにより、同位体のスクランブリングが発生しないことが明らかとなった(図24)。このような結果は、反応条件下で、水中でC−D結合が不活性化することを示唆し、さらに、触媒作用のみに起因して反応中に分子内で同位体の転位が発生しないことを示唆するため、重要である。
【0089】
13C NMR及び1HNMR分光により、触媒としてSn−ベータを用いたグルコースD2の異性化を分析した。未標識グルコース及びグルコースD2原料溶液の13CNMRスペクトルを比較したところ、未標識グルコース溶液においてδ=74.1、71.3ppmで観察された共鳴は、グルコースD2溶液における低強度の1:1:1の三重線として現れることが明らかとなった(図19a、b)。この効果は、溶液中のグルコースD2の2つの構造(b−ピラノース及びa−ピラノース、存在比64:36)におけるC−2位置の重水素化原子による核オーバーハウザーエンハンスメント(NOE)の崩壊に関連する。NOEの間、1Hブロードバンドでカップリングを用いてC、Hカップリングを抑制した場合、13C共鳴強度は、13C−1Hペアの直接結合による200%まで強調されるが、この共鳴増幅は13C−1Hペアについては見られず、よって、グルコースD2のC−2に関連する共鳴は実質的に減衰する。383K15分間で、水中で、Sn−ベータの存在下で10重量%グルコースD2溶液を反応させた後に、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によりグルコース及びフルクトース画分を分離した。各画分について、13CNMRスペクトルを分析したところ、反応後に、グルコースD2は不変であったが(図19b、c)、フルクトース生成物は未標識フルクトース標準(図19e、f)と比較して有意差があったことが明らかとなった。特に、未標識フルクトース標準におけるb−ピラノース及びb−フラノース構造のC−1位置に該当するδ=63.8、62.6ppmの共鳴は、反応後に回収したフルクトース生成物の低強度三重線として表れた。両方の糖に関する、1H NMRスペクトルによりこれらの結果を確認した。反応の前後のグルコースD2の1H NMRスペクトルは一定のままであったが(図20b、c)、フルクトースのスペクトルはC−1位置の重水素原子の消滅により、δ=3.45ppmの共鳴が消失したことを示した(図20f)。これらのスペクトルの領域を統合することにより、上述のグルコース及びフルクトース画分については6つのC−Hペアが存在し、未標識グルコース又はフルクトースについては7つのC−Hペアが存在することを確認できた。このような結果は、グルコースD2のC−2位置にある重水素原子がフルクトースのC−1位置へ移動したことを明示し、したがって、純水中における固体ルイス酸触媒とのグルコース異性化反応は、分子内ヒドリドシフトによって進行するということが確実に証明された。
【0090】
塩基性触媒として水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて、同様の分光学的分析を実施した。グルコースD2の10重量%水溶液を、NaOH(0.1M)の存在下で、383Kで2分間にわたり反応させた。そして、グルコース及びフルクトース画分の13CNMR及び1H NMRスペクトルを取得すると、Sn−ベータを使用した場合の結果と比較して有意な違いを示した。第1に、未標識のフルクトースと、反応後に分離したフルクトース画分と、に関する13CNMR及び1H NMRスペクトルには差異がなかった。このことは、フルクトース画分に重水素原子が含まれなかったことを示す(図19e、g及び図20e、g)。第2に、グルコース断片の13CNMRスペクトルにおいて、δ=74.1ppmでの小さな共鳴の存在により、グルコースD2に少量の標準のグルコースが混ざっていたことが示唆された(図19dの拡大図参照)。未標識グルコースの存在は、1HNMRスペクトルにおける、C−2位置のプロトンに該当するδ=3.1ppmでの共鳴の出現によっても裏付けられる(図20d)。これらの結果は、塩基性触媒が、グルコースD2のa−カルボニル炭素から重水素が除去されて、対応するエノラートを生成し、溶液からのプロトンをグルコース分子に再度組み込んで、未標識フルクトースに伴って、幾らかの未標識グルコースを生成するプロトン移動機構を作動させることを示した(図11A)。
【0091】
この実験は、Sn−ベータが純粋な水性溶媒中のグルコースの異性化に触媒作用を及ぼすことができるルイス酸として作用することができることを示した。異性化反応の間、Sn−ベータの活性部位と、糖及び溶媒との間の相互作用の性質を理解するために更なる実験を行った。Cormaらによる報告(119Sn−NMRを使用)において、分離したゼオライト中の骨格スズ中心は、特定の反応の反応速度を促進する役割を果たすことが示された(A. Corma, Nature 2001, 412, 423)。水中でのグルコース異性化について、発明者らは、Sn−ベータが反応を触媒するために骨格スズ中心が必須であることを見出した。完全にスズを骨格に組み込むとされている手順(スズ供給源として、SnClを使用)により合成したSn−ベータは、異性化反応について高活性であったが、スズ供給源としてSnOを用いて合成したSn−ベータは、完全に不活性であった(図21A)。活性物質のUV−可視拡散反射スペクトルでは、220nmを中心とする単バンド(金属の四配位構造に該当する)が見られたが、非活性材料のスペクトルは、300nmを中心とするバンド(骨格外位置の金属の八配位構造に該当する)を呈した(図21B)。
【実施例13】
【0092】
更なるグルコース異性化実験の結果を下表に要約する。
【0093】
【表6】
【実施例14】
【0094】
グルコースからHMFへの転換実験の結果を下表に要約する。
【0095】
【表7】
【実施例15】
【0096】
ゼオライトSn−CIT−6を合成して、グルコース異性化反応を行った。文献(Andy及びDavis著, Ind. Eng. Chem. Res. 2004, 43, 2922)に記載の手順に従い、けい酸亜鉛CIT−6を合成した。合成された材料のX線回折パターンを図31に示す。合成された材料の電子顕微鏡写真を図32に示す。骨格からZnを除去するために、ゼオライト1.0gを氷酢酸60mL及び水100mLに加え、混合物を80度で3日間維持した。ろ過によりCIT−6を回収して、水で洗浄し、100℃でオーバーナイトして乾燥させた。そして、試料を130℃まで熱し、真空で2時間加熱して、吸着された水を除去した。室温、無水クロロホルム中で、相当量のグラフト化剤(Si/Sn:100〜125)の溶液中で、CIT−6のSn(SnCl3CH3)をグラフト化した。1時間後、トリエチルアミンを混合物に加えて、グラフト化プロセスで生成された塩酸をトラップした。懸濁液を2日間撹拌して維持した。試料をクロロホルムで洗浄して、100℃でオーバーナイトして乾燥させた。CIT−6(SnCl3CH3)の最終的なSi/Sn比は110であった(EDSにより算出した)。試料の一部を580℃で6時間焼成した。
【0097】
グルコース異性化のための反応条件は、糖:Sn比が100の10重量%グルコース水溶液について、温度は110度、反応時間は90分であった。図33に示すように、CIT−6(SnCH3Cl3)は焼成した場合に、グルコース異性化反応について活性になる。これは、効率的なグラフト化のためには、アルキル基を焼成によって酸化により除去する必要があることを示唆する。この傾向は、Corma らによる、 J. Catal, 2003, 219, 242にも記載されている。図33に、調製されたままのCIT−6(SnCH3Cl3)触媒(左)と、焼成したCIT−6(SnCH3Cl3)触媒(右)とを用いた110℃でのグルコース異性化反応による生成物の分布を示す。
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2010年1月15日に出願され、係属中の米国仮出願第61/295,637号、「Catalysts for the Isomerization of Sugars」、2010年2月17日に出願され、係属中の米国仮出願第61/305,480号、「Catalysts for the Isomerization of Sugars」、2010年6月29日に出願され、係属中の米国仮出願第61/359,782号、「New Catalysts for the Isomerization of Sugars」、及び2010年12月10日に出願され、係属中の米国仮出願第61/421,840号、「New Catalysts for the Isomerization of Sugars」に基づく優先権を主張する。これらの出願は全体として、本明細書に援用する。
【0002】
特許法第202条(c)の下、米国政府は、本願明細書に記載の本発明に対する特定の権利を有する。本発明は、米国エネルギー省科学局基礎エネルギー科学、アワード番号DE−SC0001004の資金により一部完成した。
【0003】
本発明は、糖の異性化の分野に属するものである。
【背景技術】
【0004】
バイオマスのような再生可能原料を使用することが望ましいという観点から、炭水化物ベースの化学的工程の重要性が増してきている。糖の異性化は、さまざまな工業的な炭水化物ベースの工程において使用される反応の中でも重要な部類である。そのような反応のうち特に重要なものに、グルコースのフルクトースへの転換がある。この反応は、高フルクトースコーンシロップ(HFCS)及び、有益な化学中間体(例えば、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)及びレブリン酸)の生成に用いられてきた。
【0005】
グルコースのフルクトースへの異性化は、生物学的触媒又は化学触媒を用いる穏やかな条件で実施することができる。この反応はわずかに吸熱性(H=3 kJ/mol)で可逆性である(298KでのKeqは、〜1)。このことは、グルコースからフルクトースへの転換の最大達成率が、反応温度における両方の糖の間の熱力学平衡によって支配されることを意味する。
【0006】
工業的なグルコース異性化は、通常、固定化酵素を使用して実施されるので、転換率及び選択性が高いという利点があるが、多数のデメリットもある。酵素触媒は、複数のサイクルにわたって高い活性を持続せず、容易に再生することができず、さらに、多種多様な温度、pH、塩濃度、及びその他の処理条件を通じて機能しない。さらに、酵素の異性化触媒は、バイオマスからグルコースを生成する上流工程に組み込むことが容易ではなく、或いは、フルクトースを他の化学中間体に変換する下流工程に組み込むことが容易ではない。
【0007】
例えば、一つの好適な工業異性化方法は、333Kで、フルクトース42%(wt/wt)、グルコース50%(wt/wt)、及び他の糖類8%(wt/wt)の平衡混合物を生成する、固定化酵素(キシロースイソメラーゼ)の使用する方法である。このような、酵素による工程は、フルクトース収率が高いが、以下を含む種々の欠点を有する:(i)原料から酵素活性を強く阻害する不純物を除去するための、様々な反応前精製工程が必要である(例えば、事前のでんぷんの液状化/糖化ステップに由来するカルシウムイオンを1ppm未満のレベルに除去する必要がある)、(ii)7.0〜8.0の最適pHを維持するための緩衝溶液(Na2CO3)、酵素を活性化させる緩衝溶液(MgSO4)を使用すると、反応後にイオン交換が必要となる、(iii)生成物の収率及び酵素寿命の両方を最大化させる最適作用温度は333Kであるため、更に高温として反応速度をより速めることが難しい、(iv)酵素活性が徐々に不可逆的に劣化するため触媒床を定期的に交換するので、操業コストが比較的高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、転換効率及び選択性が高く、酵素触媒に関連した欠点を有さない、糖の異性化方法を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解消するために、本明細書において開示する方法は、水性溶媒中で、単糖類とゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトとを接触させることを含み、前記ゼオライトは前記単糖類を通過させることができる孔を有することを特徴とする、単糖類の異性化方法である。さらに、本明細書において開示する方法は、水性溶媒中で、単糖類と材料の骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む規則配列メソ多孔性シリカ材料とを接触させることを含む、単糖類の異性化方法である。
【0010】
本明細書において開示する更なる方法は、グルコースを5−ヒドロキシメチルフルフラールに転換する方法であって、水性溶媒中で、グルコースとゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトとを接触させてフルクトースを生成するステップとあって、前記ゼオライトは前記グルコースを通過させることができる孔を有することを特徴とする、ステップと、前記フルクトースを脱水するステップと、を含むことを特徴とする、方法である。また、本明細書において更に、でん粉を5−ヒドロキシメチルフルフラールに転換する方法であって、酸性水性溶媒中ででん粉を加水分解してグルコースを生成するステップと、水性溶媒中で、グルコースとゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトとを接触させてフルクトースを生成するステップであって、前記ゼオライトは前記グルコースを通過させることができる孔を有することを特徴とする、ステップと、前記フルクトースを脱水するステップと、を含むことを特徴とする、方法を開示する。
【0011】
本明細書における一般的な記載及び以下の詳細な説明は、例示及び説明のためのものであり、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲を制限するものではない。本発明の他の側面は、本明細書に記載の発明の詳細な説明の観点から、当業者には明らかである。
【0012】
発明の概要及び以下の発明の詳細な説明は、添付の図面を参照することにより理解が深まる。本発明を例示するために、本発明の例示的実施形態を図示する。しかし、本発明は、本明細書において開示される特定の方法、組成物及び装置に限定されるものではない。また、図面は常に縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】糖異性化活性に関連して合成及び試験した、様々な異なる材料の構造及び孔径を示す図である。
【図2】骨格にチタンを含むゼオライトの構造を示す図である。
【図3】スズゼオライトベータの走査型電子顕微鏡像である。
【図4】スズゼオライトベータの走査型電子顕微鏡像である。
【図5】チタンゼオライトベータ(上)及びスズゼオライトベータ(下)の走査型電子顕微鏡像である。
【図6】Sn−ベータ及びTi−ベータの紫外/可視拡散反射スペクトルを示す図である。
【図7】Ti−ベータ及びSn−ベータの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図8】二相系中でグルコースをHMFに転換した後にSn−ベータの構造に有意な変化が生じないことを説明する走査型電子顕微鏡像である。左は、反応前のSn−ベータ像であり、右は、モル比200、水:THFの体積比1:3、HCl中pHを1、100g水中NaCl35gで、Sn−ベータをグルコースに曝した後のSn−ベータ像である。
【図9】生物学的触媒又は化学触媒によって触媒されるグルコース異性化反応経路の概略図である。
【図10】(A)塩基触媒又は(B)金属触媒経路を経たグルコース異性化機構の概略図である。
【図11】(A)プロトン転位又は(B)分子内ヒドリドシフトを経たグルコース異性化機構の概略図である。
【図12】メールワイン−ポンドルフ−バーレー(MPV)反応経路を示す図である(R=アルキル又はアリル、R1及びR3=アルキル又は水素、Me=金属)。
【図13】バイオマスから、グルコース、HMF、そしてフルクトースを経て、下流製品に至る経路の概略図を示す図である。
【図14】でん粉から、グルコース、フルクトース、HMFへと至る経路の概略図を示す図である。
【図15】グルコースからフルクトースを生成し、フルクトースからHMFを生成するための反応における、二相系の使用例の概略図を示す図である。
【図16】グルコース異性化反応のための金属性ケイ酸塩のスクリーニング結果を示す図である。反応条件は、10重量%グルコース水溶液、140℃、90分、金属:グルコースのモル比=1:50であった。
【図17】様々な金属含有固体により触媒したグルコース異性化反応の結果を示す図である(グルコース転換率のバーに斜線を付し、フルクトース選択性のバーは白で示す)。反応条件は、10重量%グルコース水溶液、413K、90分、金属:グルコースのモル比=1:50であった。
【図18】グルコース異性化反応のプロファイルと、グルコース異性化反応の生成物の分布(グルコース(灰色)、フルクトース(白)、及びマンノース(黒))とを、時間を横軸として示す。温度は、363K、383K、413Kであり、触媒としてSn−ベータを用いた。反応条件は、10重量%グルコース水溶液、Sn:グルコースのモル比=1:50であった。エラーバーは、データ点よりも小さいため、図示しない。
【図19】a)未標識グルコース、b)標識グルコース−D2、c)Sn−ベータとグルコース−D2とを反応させた後に採取したグルコース画分、d)標識グルコース−D2をNaOHと反応させた後に採取したグルコース画分、e)未標識フルクトース、f)Sn−ベータとグルコース−D2とを反応させた後に採取したフルクトース画分、g)標識グルコース−D2をNaOHと反応させた後に採取したフルクトース画分の、13CNMRスペクトルを示す図である。
【図20】a)未標識グルコース、b)標識グルコース−D2、c)Sn−ベータとグルコース−D2とを反応させた後に採取したグルコース画分、d)標識グルコース−D2をNaOHと反応させた後に採取したグルコース画分、e)未標識フルクトース、f)Sn−ベータとグルコース−D2とを反応させた後に採取したフルクトース画分、g)標識グルコース−D2をNaOHと反応させた後に採取したフルクトース画分の、1HNMRスペクトルを示す図である。
【図21】(A)Sn−ベータ又はSnO2−ベータを用いて383K45分で反応させた後の、グルコース異性化反応及び生成物分布(グルコース(灰色)、フルクトース(白)、及びマンノース(黒))を示す図である。10重量%グルコース溶液、金属:グルコースのモル比=1:100を維持するために相当量の触媒を使用して反応させた。(B)Sn−ベータ及びSnO2−ベータの紫外/可視拡散反射スペクトルを示す図である。
【図22】Sn−ベータを触媒として用いた、383Kにおけるグルコース異性化転換率プロファイルを示す図である。反応条件は、10重量%グルコース水溶液(未標識及び標識)、Sn:グルコースのモル比=1:50であった。
【図23】未標識グルコース溶液に35%含まれる、a−ピラノース構造グルコースの分子構造(i)、及び、65%含まれる、b−ピラノース構造グルコースの分子構造(ii)を示す図である。標識グルコース(グルコース−D2)溶液についても、同様の比率であり、35%がa−ピラノース構造(iii)、及び、65%がb−ピラノース構造(iv)である。
【図24】未標識グルコース、加熱前のグルコース−D2、及び触媒無しで383Kに加熱した後のグルコース−D2の13CNMRスペクトルを示す図である。
【図25】二相系を使用してグルコースをHMFに転換する反応実験結果を示す図である。反応条件は、水:1−ブタノールの体積比=1:2、HCl中pH=1、100g水中NaCl35gであり(上)、水:有機相の堆積比=1:3、HCl中pH=1、T=180℃、100g水中NaCl35g(下)であった。
【図26】二相系を使用してグルコースをHMFに転換する反応実験結果を示す図である。反応条件は、Sn−ベータ:グルコースのモル比が200、水:1−ブタノールの体積比=1:3、HClのpH=1、T=160℃、100g水中塩35gであった。
【図27】二相系を使用してグルコースをHMFに転換する反応実験結果を示す図である。反応条件は、Sn−ベータ:グルコースのモル比が200、水:1−ブタノールの体積比=1:3、酸のpH=1、T=160℃、100g水中NaCl35gであった。
【図28】二相系を使用してグルコースをHMFに転換する反応実験結果を示す図である。反応条件は、Sn−ベータ:グルコースのモル比が200、水:有機相の体積比=1:3、HClのpH=1、100g水中NaCl35gであった。
【図29】二相系を使用してグルコースをHMFに転換する反応実験結果(上:反応性、下:pH=1のHClへの暴露の前後におけるX線回折(XRD)データ)を示す図である。反応条件は、温度160℃、Sn/ベータゼオライト:グルコースのモル比は1:200、HClのpH=1、水:1−ブタノールの体積比=1:2であった。
【図30】グルコースからフルクトースも異性化する差異の熱力学データを示す図である(Tewari, Y., Applied Biochemistry and Biotechnology 1990, 23, 187に基づく)。
【図31】Andy 及び Davis, Ind. Eng. Chem. Res. 2004, 43, 2922の記載に従って合成したZn−CIT−6のX線回折パターンを示す図である。
【図32】合成したZn−CIT−6の走査電子顕微鏡写真であり、結晶サイズが0.5〜0.6ミクロンであることを示す図である。
【図33】CIT−6(SnCH3Cl3)触媒を用いて、110℃で実施したグルコース異性化反応の生成物分布であり、調製そのままの触媒を使用した場合(左)及び焼成した触媒を使用した場合(右)をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、本開示の一部を構成する添付の図面及び実施例と関連させて、以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解することができる。本発明は、本明細書に記載及び/又は示した特定の装置、方法、用途、条件、又はパラメータに制限されるものではなく、さらに、本明細書において使用した用語は、特定の実施形態を説明するという目的のための者であり、特許請求の範囲に記載の発明を制限することを意図したものではない。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される時、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段のはっきりした指示がない限り、複数値を含む。本願明細書において使用する用語「複数の」は、1以上を意味する。値の範囲が記載された場合、他の実施形態は、1つの特定の値及び/又は他の特定の値までの範囲を含む。同様に、「約」を伴って近似値として値を表現する場合、特定の値は他の実施形態を形成する。全ての範囲は、包含及び結合することができる。
【0015】
明確のため、本明細書中の別々の実施形態の内容で触れられている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせることができる。また、簡潔のため、本発明の単一の実施形態で記載した、本発明の種々の特徴は、別々で、又はあらゆるサブコンビネーションで用いることができる。さらに、範囲内の値についての参照は、かかる範囲内のあらゆる値を含む。
【0016】
本明細書で使用したように、生成物yを形成するための反応物質xの化学反応性を特徴づけるにあたって、転換率は、反応したxのモル量を、初期のxのモル量で割ることにより求める。選択性は、生成されたyのモル量を、反応したxのモル量で割ることにより求める。収率は、生成されたyのモル量を、初期のxのモル量で割ることにより求める。これらの値は、分数又はパーセンテージで記載することができる。例えば、転換率をパーセンテージで記述するために、反応したxのモル量を初期のxのモル量で割った値に100を掛ける。特に明記しない限り、これらの値が1〜100である場合、分数ではなくパーセンテージである。
【0017】
本願明細書において開示されるいくつかの方法において、糖は、化学触媒作用を使用して異性化される。生物学的触媒作用と比較すると、糖を異性化するために安価な無機材料を使用している化学触媒作用は、より広い温度域で作用可能である、長持ちする、反応速度が早い(反応器内残留時間が短い)、不純物に対する耐性が高いといった、魅力的な効果を提供することができる。
【0018】
例えば、グルコースは、298から423Kの温度域で塩基触媒の存在下で異性化するが、残念なことに、単糖類はアルカリ性溶媒中で不安定であり、313Kを上回る温度では多数の副産物に直ちに分解されてしまう。したがって、基質触媒のフルクトース収率は概して<10%となってしまうので(高いフルクトース選択性[>90%]は、グルコース転換率が低い[<10%]場合にのみ得られる)、基質触媒を大規模なグルコース処理に使用する候補とはしにくい。
【0019】
本願明細書において開示されるいくつかの方法は、シリカ材料の骨格に組み込まれた場合に水性溶媒中で固体酸として作用することができるスズ(Sn)又はチタン(Ti)金属中心を利用する。例えば、この種の酸性中心を含む大孔ゼオライトはアルドース(例えば、グルコース)の異性化において活性であり、塩基触媒工程において通常生じる糖分解反応を予防する。
【0020】
金属酸性中心を使用することで、これらの種類の金属中心とアルドース中に存在するヒドロキシル基/カルボニル基部分との間の強い相互作用を活用することができる。実際に、最近の報告において、Sn-Beta ゼオライトは、カルボニル化合物のメールワイン−ポンドルフ−バーレー還元(MPV)において非常に活性であり、アルコールのヒドロキシル基からケトンのカルボニル基へのヒドリド転位を生じさせる(Corma A.ら(2002年)による、「カルボニル合成物の選択的還元触媒としてのAlフリーSn−ベータゼオライト(メールワイン−ポンドルフ−バーレー反応)Al-free Sn-Beta zeolite as a catalyst for the selective reduction of carbonyl compounds (Meerwein-Ponndorf-Verley reaction))」、J. Am. Chem. Soc. 124(13): 3194-95)。同様に、他の報告においては、Snを含有する材料が、アルコール類の存在下において、トリオース(例えばグリセルアルデヒド及びジヒドロキシアセトン)がルイス酸媒介異性化/エステル化反応シーケンスを介して乳酸アルキルに転換することを触媒する作用を有することが示されていた(Hayashi Y. 及び Sasaki Y. (2005年)、「アルコール溶液中におけるTin触媒作用によるトリオースからアルキルへの転換( Tin-catalyzed conversion of trioses to alkyl lactates in alcohol solution)」、 Chem. Commun. 21:2716-18; Taarning Eら、(2009年)、「トリオース糖類のゼオライト触媒異性化 (Zeolite-catalyzed isomerization of triose sugars)」、 ChemSusChem 2(7): 625-27)
【0021】
本願明細書で開示するいくつかの方法において、特に、水性溶媒中で単糖類を触媒と接触させることによって、単糖類を異性化する。触媒は、例えば、金属中心を含んでいる無機材料であってもよい。
【0022】
本願明細書で開示する更なる方法において、無機材料は、シリカを含む材料であってもよい。無機材料は、多孔性材料、又は、特に分子篩、又は、特に微小孔構造材料(例えばゼオライト)であってもよい。例えば、無機材料は、高シリカゼオライトであってもよい。
【0023】
多くのゼオライトがアルミノケイ酸塩であるにもかかわらず、例えば、亜鉛のような他の成分を組み込んでいるゼオライトが従来技術において既知であり、その合成方法も既知である。高シリカと称される一部のゼオライトは、骨格内のシリコンのアルミニウムに対する比率が高く、例えば少なくとも10:1、又は100:1程度、或いは、それよりも高い。高シリカゼオライトは、完全にアルミニウムフリーであってもよい。アルミニウムに対するシリコンの比率が高いほど、ゼオライトの骨格がより中性かつ疎水性となる。
【0024】
無機材料が多孔性材料である実施形態において、材料の孔は、単糖類、他の反応物質、又は生成物を多孔性材料内部に導くために十分な大きさとして設計されうる。例えば、無機材料がゼオライトの場合、所望の孔径を有する特定のゼオライトを選択することができる。孔径はゼオライトを分類する1つの方法であり、様々な孔径のゼオライトが従来技術で知られている。また、ゼオライトの孔径は、不要な分子や干渉分子を除去するために選択することができる。
【0025】
無機材料が多孔性材料である実施形態において、材料内部で触媒反応性が発揮されるように、材料を設計することができる。この場合、孔を経て反応物質が材料内部に入り、反応して生成物を生じ、孔を経て生成物が材料から出て行く。更なる実施形態において、表層反応性を有してもよいが、そのような反応性は、実質的でなくても、ごくわずかでも、或いは、完全に無くてもよい。一部の実施形態において、無機材料が触媒活性に関与しても良いが、他の実施形態では、金属中心が触媒活性を提供する。
【0026】
本願明細書で開示する更なる方法において、金属中心は、無機材料の骨格に組み込まれる。例えば、ゼオライトは、ゼオライトの骨格内に金属を含んでも良い。このようなゼオライトの例は、従来技術で知られている(例えば、Corma A.ら(2001)、「バイヤー・ビリガー酸化に用いる化学的選択性不均一性触媒としてのSn−ゼオライトベータ(Sn-zeolite beta as a heterogeneous chemoselective catalyst for Baeyer-Villiger oxidations, Nature 412(6845): 423-25)」)。このようなことが知られていたにも関わらず、一般的に、ゼオライトの骨格内へ金属を組み込むことが成功したか否かは、ゼオライトの特徴によって示す必要がある。
【0027】
本願明細書で開示する更なる方法において、金属中心はルイス酸として作用する。このような方法において、金属は、無機材料にルイス酸活性を付与することができる。一般的に、従来技術において、陽イオン、複合体、共有結合化合物として存在するか否かに応じて、多くのルイス酸として作用する金属(例えばアルミニウム、ホウ素、クロミウム、コバルト、鉄、チタン、スズ、その他)が知られている。本願明細書で開示する幾つかの方法において、例えば、金属中心は、スズ又はチタンである。ルイス酸活性を有することが知られている当業界で知られている他の金属についても、触媒に組み込むものとして考慮する。
【0028】
本願明細書で開示する更なる方法において、触媒は、ゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含むゼオライトであってもよい。例えば、触媒は、ゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトであってもよい。
【0029】
本願明細書で開示する幾つかの方法において、触媒はゼオライトベータを含む。通常、ゼオライトベータは構造*BEAによって定義されるゼオライトである。その特徴は、例えば、ゼオライト骨格タイプのアトラス(Atlas of Zeolite Framework Types)第6版(Baerlocherら、2007年)に記載されている。当業界で既知の他のゼオライトについても考慮する。触媒すべき反応、反応物質、及び生成物に応じて、適切な骨格サイズ、形状、及び構成要素を決定して、それ基づいてゼオライトを選択する。例えば、触媒すべき反応が、グルコースのフルクトースへの異性化である場合、グルコース及びフルクトースを通過させることができる孔径を有するゼオライトが望ましい。そのようなゼオライトは、ゼオライトベータである。より大きな反応物質及び生成物は、それに比例して、より大きな孔を有する材料を必要とする。
【0030】
本願明細書で開示する他の方法において、触媒はTS−1のようなゼオライトを含む。TS−1は、MFI構造を有するチタノシリケート材料である。その他の様々な大孔及び特大孔を有するゼオライトも考慮する。それらは、例えば、CIT−1、ZSM−12、SSZ−33、SSZ−26、CIT−5、又は高シリカFAUである。
【0031】
本願明細書で開示する更なる方法において、多孔性材料は、規則配列(ordered )メソ多孔性シリカ材料である。例えば、単糖類は、水性溶媒中で、特に、単糖類と骨格中にスズ又はチタンを規則配列メソ多孔性シリカ材料とを接触させることによって異性化される。メソ多孔性シリカ材料は、例えば、MCM−41、SBA−15、TUD−1、HMM−33、又はFSM−16であってもよい。
【0032】
本願明細書で開示するさらに他の方法では、触媒は水溶液中で単糖類と接触する。ここで、水溶液とは、溶媒が水であることを意味する。例えば、本願明細書で開示する触媒は、例えば、アルコール類のような他の溶媒中で、単糖類と接触する。本願明細書の他の箇所で開示するが、溶媒の選択は化学反応の結果にかなり影響する。
【0033】
本願明細書で開示する更なる方法において、触媒は炭水化物と接触する。例えば、触媒は、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類又は多糖類と接触することができる。さらにまた、必要に応じて、いかなる組合せの炭水化物のであっても触媒と接触させることができる。さらに、あらゆるキラリティーの炭水化物を、触媒と接触させることもできる。
【0034】
炭水化物が単糖類である場合、単糖類は、例えば 、アルドトリオース、アルドテトロース、アルドペントース、又はアルドヘキソースのようなアルドースであってもよい。特に、アルドースは、グリセルアルデヒド、エリスロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース又はタロースを含むことができる。
【0035】
また、炭水化物が単糖類である場合、単糖類は、例えば、ケトトリオース、ケトテトロース、ケトペントース、又はケトヘキソースのようなケトースであってもよい。特に、ケトースは、ジヒドロキシアセトン、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、又はタガトースを含むことができる。
【0036】
ピラノース、フラノース、アミノ糖、などを含む、他の単糖類及びそれらの誘導体も、本願明細書で開示する触媒と接触させることができる。
【0037】
炭水化物が二糖類である場合、二糖類は、例えば、蔗糖、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、コジビオース、ニゲロース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツロース、パラチノース、ゲンチオビウロース(gentiobiulose)、マンノビオース、メリビオース、メリブロース(melibulose)、ルチノース、ルチヌロース(rutinulose)又はキシロビオースのような単糖類のいかなる組合せでもあってもよい。
【0038】
でん粉及びセルロースのようなバイオマス材料の加水分解反応の副産物(例えば、マルトース及びセロビオース)の混合物を含む、炭水化物の混合物を、本願明細書で開示する触媒と接触させることができる。さらにまた、でん粉、セルロース及びキチン質と同様に、例えば、フラクトオリゴ糖及びガラクトオリゴ糖のような、オリゴ糖類及び多糖類を、本願明細書で開示する触媒と接触させることができる。
【0039】
本願明細書で開示する更なる方法において、水性溶媒は、約0.001重量パーセント〜選択された温度における溶媒の最大溶解量の間で、単糖類を含む。例えば、水性溶媒は、約0.001重量パーセント〜約50重量パーセントの間で単糖類を含むか、又は約10重量パーセント〜約50重量パーセントの間で単糖類を含むことができる。また、水性溶媒は、約25重量パーセント〜約50重量パーセントの単糖類を含むこともできる。特に、処理装置の利便性が向上することを理由に、より濃度が高いことが産業的に望ましい。特定の単糖類濃度は、選択した単糖類の可溶性にある程度依存して選択する。
【0040】
本願明細書で開示する更なる方法において、異性化反応は、ほぼ熱力学的平衡に達する。例えば、図30には、グルコースからフルクトースへの転換における平衡転換率を示す。本願明細書で開示する更なる方法において、従来技術における酵素系と同様の転換率及び選択性をもたらす化学触媒によって異性化反応を実施する。
【0041】
本願明細書で開示する他の方法において、水性溶媒のpHは酸性(7.0未満)である。例えば、本願明細書で開示するように、単糖類は、非酸性条件下で異性化できるが、酸性条件下での異性化は顕著に有用である。実際、塩基触媒作用中に直面する、いくつかの主要なボトルネックを解消するにあたり、酸性溶液中の糖を異性化する能力が重要である。これらのボトルネックには、酸性の副産物によって活性部位が中和されてしまうことや、アルカリ環境中において糖の安定性が低いことが含まれる。さらにまた、低pH値で作用することで、追加のユニット動作を用いる必要なく、上流及び下流における酸触媒反応(例えば、加水分解又は脱水)を、グルコース異性化反応と組み合わせる機会をもたらすことができる。例えば、高フルクトースコーンシロップ(HFCS)の製造において、異性化ステップの前に必要なでん粉加水分解ステップ(一般的に、酸触媒、又は酵素の組合せを使用する別個の反応器内で実施される)をグルコース異性化ステップと組み合わせることができた。同様に、HMFの生産において、酸接触媒脱水ステップを実施する前の、グルコースのフルクトースへの転換に必要な塩基触媒作用による異性化ステップは、単一の反応器に組み込んで、生成物の収率を高効率とすることができた。
【0042】
本願明細書で開示する幾つかの方法において、水性溶媒のpHは約0〜約4の間である。本願明細書で開示する更なる方法において、水性溶媒のpHは約0〜約2の間である。pH値が約0〜約2の間(2を含む)であることは、異性化と、でん粉の加水分解及び/又はHMFを生成するためのフルクトースの脱水とを組み合わせるために特に有利である。
【0043】
本願明細書で開示するさらに他の方法において、水性溶媒は塩を含む。塩は、例えば、事前のステップから持ち越される等の多くの理由により存在しうるが、塩耐性は、経済面及び効率面において有利である。もう一つの例として、複数の液相間のパーティショニングを容易にするために、意図的に塩を加えることもある。本願明細書で開示する幾つかの方法において、塩は、あらゆる金属(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リチウムその他)でありうる陽イオンを含むことができる。同様に、塩は、陰イオン(例えば、酢酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、クエン酸塩、シアン化物、ギ酸塩、グリコール酸塩、ハロゲン化物、ヘキサフルオロリン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酸化物、リン酸塩、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、トシラート、トリフラート又はビストリフオロスルホンイミド)を含むことができる。例えば、塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム又は臭化カリウムであってもよい。
【0044】
さらに、本願明細書で開示する他の方法において、約50℃~約250℃の温度域で異性化を実施する。温度域の選択は、転換率及び選択性と同様に、反応速度に影響する。水溶液の組成に応じて、反応の最大温度は、反応器における加圧の有無、及び加圧されている場合はその圧力に依存する。例えば、異性化は約90℃〜約180℃の温度域で実施することができる。さらに、例えば、異性化は約90℃〜約140℃の温度域で実施することができる。そして、実現可能であれば、エネルギーの節約の観点から、比較的低温であることが望ましい。
【0045】
本願明細書で開示する更なる方法において、約90分未満にわたり、異性化を実施することができる。一般に、所望の転換率に達するのに十分な程度の時間にわたり、反応が持続する必要がある。産業的観点から、効率の点で、反応時間が比較的短いことが望ましい。例えば、約60分未満、又は約30分未満の間、異性化を実施することができる。望ましくない劣化生成物が蓄積する可能性があるため、反応時間を比較的短くすることもある。
【0046】
また、本願明細書で開示する更なる方法において、性能を大幅に低下させること無く、焼成の必要無く、ゼオライト触媒を少なくとも3回の反応サイクルでバッチ式(回分式)に使用しうるように、単糖類異性化反応の条件を選択する。安定触媒は産業的に重要な幾つかの利点をもたらすが、それらは、効率向上、コスト削減、及び信頼性を含む。本願明細書で開示する幾つかの方法において、Sn−ベータ(Sn−Beta)触媒は、安定であり、再利用後及び焼成後にも、その活性を維持する。例えば、触媒の中間処理無しでグルコース異性化の連続サイクルを実施したところ、転換率及び選択性は維持された。本願明細書で開示する他の実施形態において、触媒の性能が劣化する場合であっても、サイクルの合間に空気中で触媒を焼成するステップを実施することで性能を回復することができる。触媒の性能の劣化の有無は、ある程度触媒及び反応条件の選択に依存する。例えば、反応時間及び反応温度が適正レベル(383K、30分)に維持された場合には、焼成のための中間ステップは不要である。
【0047】
本願明細書で開示する更なる方法では、単糖類異性化による生成物を脱水する。例えば、脱水して化学中間体として有用なフラン誘導体を生成する。さらなる例として、特に、水性溶媒中でグルコースを骨格中にスズ又はチタンが組み込まれた高シリカゼオライトと接触させて、フルクトースを生成してフルクトースを脱水することによって、グルコースを5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)に転換する。高シリカゼオライトは、グルコースを通過させる孔を有している。
【0048】
本明細書に開示した、異性化及び脱水の組み合わせの他の態様において、触媒は、ベータのようなゼオライトを含む。その他の様々な大孔及び特大孔を有するゼオライトも考慮する。それらは、例えば、CIT−1、ZSM−12、SSZ−33、SSZ−26、CIT−5、又は高シリカFAUである。本明細書に開示した、異性化及び脱水を組み合わせる更なる方法において、多孔性材料は、規則配列メソ多孔性シリカ材料である。例えば、単糖類は、水性溶媒中で、特に、単糖類と骨格中にスズ又はチタンを含む規則配列メソ多孔性シリカ材料とを接触させることによって異性化される。メソ多孔性シリカ材料は、例えば、MCM−41、SBA−15、TUD−1、HMM−33、又はFSM−16であってもよい。
【0049】
本願明細書で開示する更なる態様において、単糖類異性化生成物の脱水処理は、水性溶媒中で実施する。例えば、フルクトースの脱水処理は水性溶媒中で実施する。このような手順は、分離ステップを必要とすることなく、同じ水性溶媒中で異性化処理及び脱水処理の両方を実施することを実現する。本願明細書で開示する特定の異性化触媒は脱水のために必要な条件下で安定しているため、本願明細書で開示する方法は、このような手順に特に適している。
【0050】
概して、フラン誘導体を生成するための糖類の脱水はよく研究されており、特に、フルクトースを脱水してHMFを生成することは従来技術において既知である。本願明細書で開示する特定の方法において、酸触媒の存在下で、異性化反応生成物の脱水処理を実施する。例えば、触媒は、例えば、HClのような水性溶媒中に溶解した無機酸であってもよい。例えば、触媒は、例えば、*BEA構造を有するプロトン化高シリカゼオライトのような固体酸触媒であってもよい。他の酸供給源としては、陽イオン交換樹脂、ルイス酸、シリカ−アルミナ材料、チタニア−アルミナ材料、鉱酸、ヘテロポリ酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、シュウ酸、レブリン酸、クエン酸、ニオブ酸化物、バナジウムリン酸又はニオブリン酸も有用である。
【0051】
異性化及び脱水反応は、順番に又は同時に実施するか、或いはこれらの幾つか組合せて実施してもよい。例えば、水溶液中で単糖類を異性化触媒及び脱水触媒と接触させて、両方の反応を一緒に実施しても良い。特定の例では、酸性水溶液中でグルコースを異性化触媒と接触させた場合、グルコースはまずフルクトースを生成して、その後HMFを生成するために最初に反応する。特定の反応条件は、特に、異性化と関連して開示した条件のいずれであってもよい。
【0052】
本願明細書で開示した異性化及び脱水を組み合わせる幾つかの方法において、水性溶媒のpHは約0〜約4の間である。本願明細書で開示する更なる方法において、水性溶媒のpHは約0〜約2の間である。本願明細書で開示する異性化及び脱水を組み合わせる他の方法において、水性溶媒は塩を含み、塩は、あらゆる金属(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リチウムその他)でありうる陽イオンを含むことができる。同様に、塩は、陰イオン(例えば、酢酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、クエン酸塩、シアン化物、ギ酸塩、グリコール酸塩、ハロゲン化物、ヘキサフルオロリン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酸化物、リン酸塩、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、トシラート、トリフラート又はビストリフオロスルホンイミド)を含むことができる。例えば、塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム又は臭化カリウムであってもよい。
【0053】
本願明細書で開示する他の方法において、約50℃〜約250℃の温度域で異性化を実施する。温度域の選択は、転換率及び選択性と同様に、反応速度に影響する。水溶液の組成に応じて、反応の最大温度は、反応器における加圧の有無、及び加圧されている場合はその圧力に依存する。例えば、異性化は約90℃〜約180℃の温度域で実施することができる。さらに、例えば、異性化は約90℃〜約140℃の温度域で実施することができる。そして、実現可能であれば、エネルギーの節約の観点から、比較的低温であることが望ましい。
【0054】
本願明細書で開示する更なる方法において、約90分未満にわたり、異性化を実施することができる。一般に、所望の転換率に達するのに十分な程度の時間にわたり、反応が持続する必要がある。産業的観点から、効率の点で、反応時間が比較的短いことが望ましい。例えば、約60分未満又は約30分未満の間、異性化を実施することができる。望ましくない劣化生成物が蓄積する可能性があるため、反応時間を比較的短くすることもある。
【0055】
本願明細書で開示するさらに他の方法において、異性化反応及び脱水反応の組み合わせは、米国特許第7,572,925号明細書に記載されたように、二相系で実施することができる。二相系は、2つの実質的に混ざらない液相(1つの水性相及び1つの有機相)を含んでいる。二相系は、原則的に、転換率、選択性、及び生成効率に関して有利である。本発明の用途では、水性相において、糖類の異性化が行われ、異性化生成物の脱水反応が行われる。例えば、グルコースのフルクトースへの異性化及びフルクトースのHMFへの脱水は、水性相で行われる。さらに、これらの反応のそれぞれに関する触媒を、水性相中に提供する。そして、例えば、HMFのような脱水生成物を有機相に抽出する。このように、例えば、水性溶媒を、HMFを水性溶媒から抽出することができる有機媒体と接触させることができる。この場合、有機性溶媒は水性溶媒と実質的に混ざらない。これにより、水性層中にHMFを存在させずに、脱水反応の効率を向上させて、有機層中におけるHMF生成物を比較的純粋な状態として、精製を簡略化することができる。このように、例えば、本願明細書で開示する幾つかの方法では、水性溶媒中でHMFを精製し、そのままの状態で水性溶媒から有機性溶媒に抽出する。
【0056】
例えば、あらゆる水非混和性、線形、分岐、環式アルコール、エーテル若しくはケトン、又は、未置換脂肪族若しくは芳香族炭化水素、又は、ハロ置換脂肪族若しくは芳香族炭化水素、又は、これらの混合物のような様々な溶媒を有機溶媒として使用することができる。例えば、本願明細書で開示する幾つか態様で、有機溶媒は、1−ブタノール又はTHFを含む。有機層の幾つかの成分は、水とある程度混合可能である化合物を含みうる。本明細書に開示の他の有機性溶媒成分は、例えば、DMSO、DMF、N−メチルピロリジノン、アセトニトリル、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン等を含む。
【0057】
本願明細書で開示するさらに他の方法において、でん粉をHMFに転換するために幾つかの反応を組み合わせる。当業界において既知であるが、でん粉を酸によって加水分解してグルコースを生成することができる。本明細書に開示したように、本明細書に開示の触媒を用いたグルコースの異性化は、酸性条件で良好に進行する。このように、本明細書に開示の方法は、特に酸性水性溶媒中ででんぷんを加水分解してグルコースを生成し、水性溶媒中でグルコースを骨格中にスズ又はチタンが組み込まれた高シリカゼオライトと接触させて、フルクトースを生成してフルクトースを脱水することによって、でんぷんを5−ヒドロキシメチルフルフラールに転換する。高シリカゼオライトは、グルコースを通過させる孔を有している。本明細書に開示の方法において、これらの3つの反応を組み合わせる事が可能であり、例えば、グルコースを酸性水性溶媒中に保持し、高シリカゼオライトと接触させ、フルクトースを生成する。同様に、本明細書に開示の方法において、フルクトースを酸性水性溶媒中に保持して、脱水して5−ヒドロキシメチルフルフラールを生成する。さらに、本明細書に開示の方法において、例えば、3つの反応全てを1つの容器内で、水溶液中で実施することもできる。この場合、最初の反応物質はでん粉であり、最終生成物はHMFである。
【0058】
本願明細書で開示する他の方法において、例えば、米国特許第7,572,925号明細書に従う二相系中で、でん粉からHMFへの転換を実施することができる。異性化反応、並びに異性化及び脱水反応の組み合わせに適用可能な本明細書に開示の方法及びその変形例は、全て、水溶液又は二相系のいずれにおいても、でんぷんからHMFへの反応系に適用することができる。したがって、例えば、酸性の水性溶媒を、5−ヒドロキシメチルフルフラールを酸性の水性溶媒から抽出することができる有機溶媒と接触させる。この場合、有機溶媒は水性溶媒と実質的に混ざらない。そして、更なる実施形態で、酸性の水性溶媒中で5−ヒドロキシメチルフルフラールを生成して、そのままの状態で水性溶媒から有機溶媒に抽出する。
【実施例1】
【0059】
Ti−ベータゼオライトは、以下の通りに調製した。水酸化テトラエチルアンモニウム溶液(シグマアルドリッチ社、35重量%、水二溶解)7.503gを、15gの水で希釈した。それから、オルトけい酸テトラエチル(シグマアルドリッチ社、98重量%)7.016g及びチタニウム(IV)イソプロポキシド(シグマアルドリッチ社、97重量%)0.201gを、溶液に加えた。オルトけい酸テトラエチル及びチタニウム(IV)イソプロポキシドが完全に加水分解するまで混合物を撹拌し、エタノール、イソプロパノール及び必要量の水を蒸発させて所望の水比率とした。最終的に、HF溶液(Mallinckrodt社、52重量%、水に溶解)0.670gを加え、粘性の高いゲル状とした。
【0060】
ゲル組成は、SiO2/0.021TiO2/0.54TEAOH/0.53HF/6.6H2Oであった。このゲルをテフロンで被覆したステンレススチールオートクレーブに移して、140℃で14日間加熱した。固体を濾過して回収して、水で十分に洗浄して100℃でオーバーナイトして乾燥した。固体材料は、ベータゼオライト構造を呈した(図7のTi−ベータXRDパターンを参照)。固体を、580℃で6時間焼成して、結晶材料中の有機成分を除去した。焼成した試料のUV−可視拡散反射スペクトルにおいて、〜200−250nmで特徴的なバンドが存在するが、これは、ゼオライト骨格中のTi四配位構造に該当するものである(図6のTi−ベータ参照)。
【実施例2】
【0061】
Sn−ベータゼオライトは以下の通りに調製した。水酸化テトラエチルアンモニウム溶液(シグマアルドリッチ社、35重量%、水に溶解)7.57gを、15gの水で希釈した。オルトけい酸テトラエチル(シグマアルドリッチ社、98重量%)7.011g及び塩化すず(IV)五水和物 (シグマアルドリッチ社、98重量部)0.121gを溶液に加えた。オルトけい酸テトラエチルが完全に加水分解するまで混合物を撹拌し、全エタノール及び若干の水を蒸発させて所望の水比率とした。最終的に、HF溶液(Mallinckrodt社、52重量%、水に溶解)0.690gを加え、粘性の高いゲル状とした。
【0062】
ゲル組成は、SiO2/0.01SnCl4/0.55 TEAOH/0.54 HF/7.52H2Oであった。このゲルをテフロンで被覆したステンレススチールオートクレーブに移して、140℃で50日間加熱した。固体を濾過して回収して、水で十分に洗浄して100℃でオーバーナイトして乾燥した。固体を、580℃で6時間焼成して、結晶材料中の有機成分を除去した。X線回折により、固体材料がベータゼオライト構造を有することを確認した(図7のSn−ベータXRDパターン参照)。焼成した試料のUV−可視拡散反射スペクトルにおいて、〜200−250nmで特徴的なバンドが存在するが、これは、ゼオライト骨格中のSn四配位構造に該当するものである(図12のSn−ベータ参照)。走査電子顕微鏡検査(SEM)によって、Sn−ベータ結晶は図3〜4に示すように、数ミクロンサイズであり、Sn−ベータ試料に関するエネルギー分散X線スペクトル(EDS)測定結果により、Si:Snの原子比率が96:1であることが明らかになった。
【実施例3】
【0063】
TS−1は、特許文献(米国特許第4,410,501明細書)に記載の方法に従って合成した。TS−1は、チタニウムブトキシド(TNBT、シグマアルドリッチ社)、オルトけい酸テトラエチル(TEOS、シグマアルドリッチ社)、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH、1M、シグマアルドリッチ社)、及び蒸留水を混合して調製した透明溶液から結晶化した。混合物を攪拌して、オルトけい酸テトラエチル及びチタニウムブトキシドを完全に加水分解した。そして、全エタノール及びブタノール、並びに若干の水を蒸発させて、所望の水比率とした。ゲル組成は、SiO2/0.03TiO2/0.44 TPAOH/30H2Oであった。TS−1反応混合物を、テフロン被覆されたオートクレーブに移し、175℃で5日間結晶化した。オートクレーブを、50rpmで回転した。冷却後、濾過した固体を回収して、水で十分に洗浄して、100℃でオーバーナイトして乾燥した。材料を580℃で6時間焼成して、結晶材料中の有機成分を除去した。
【実施例4】
【0064】
Ti−MCM−41試料は以下の通りに合成した。ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(C16TABr)溶液を調製した(水15.1gに対してC16TABr1.93g)。そして、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液(25%、アルドリッチ社)6.42gを加えた。ホモジナイズの後、オルトけい酸テトラエチル(シグマアルドリッチ社、98重量%)7.015g及びチタニウム(IV)イソプロポキシド(シグマアルドリッチ社、97重量%)0.19gを溶液に加えた。混合物を撹拌して、オルトけい酸テトラエチル及びチタニウム(IV)イソプロポキシドを完全に加水分解した。次いで、全エタノール及び全イソプロパノール、並びに若干の水を蒸発させて、所望の水比率とした。最終的な化合物は、以下の通りであった:1.0SiO2/0.02TiO2/0.16 C16TABr/0.26 TMAOH/24.8H2O。均一ゲルを、テフロン被覆ステンレススチールオートクレーブに封入して、135℃で48時間、静的条件下で加熱した。濾過して固体を回収して、水で十分に洗浄して、100℃でオーバーナイトして乾燥した。固体を、580℃で6時間焼成して、結晶材料中の有機成分を除去した。
【実施例5】
【0065】
Sn−MCM−41試料を以下の通りに合成した。ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(C16TABr)溶液を調製した(水4.3gに対して、C16TABr1.46g)。そして、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液(25%、アルドリッチ社)6.34gを加えた。ホモジナイズの後、SnCl4・5H2O(98%、アルドリッチ社)0.088g及びコロイド状シリカ溶液(Ludox AS−40、シグマアルドリッチ社)3.76gを、連続的に攪拌しつつ加えた。最終的な化合物は、以下の通りであった:1.0SiO2/0.01SnCl4/0.16 C16TABr/0.35 TMAOH/25H2O。均一ゲルを、テフロン被覆ステンレススチールオートクレーブに封入して、135℃で48時間、静的条件下で加熱した。濾過して固体を回収して、水で十分に洗浄して、100℃でオーバーナイトして乾燥した。固体を、580℃で6時間焼成して、規則配列材料中の有機成分を除去した。
【実施例6】
【0066】
様々な材料を既知の方法で合成した。下表に、合成した材料と、そのSi/金属比を示す。Si/金属比はエネルギー分散X線スペクトル(EDS)で測定した。
【0067】
【表1】
【0068】
これらの材料の合成は、実施例1〜5に記載したように、以下文献に従った。([1]Corma, A. ら, J. Phys. Chem. C, 2009, 113 (26), pp. 11306.11315;[2] C.B. Khouw, H.X. Li 及び M.E. Davis, Micropor. Mater. 2. (1994), p. 425;[3]Blasco ら, J. Catal., 1995, 156, p. 65;[4]Ti−MCM−41試料をヘキサメチルジシラザンで処理して表面上のシラノールをキャッピングした;[5]Corma, A. ら, ARKIVOC, 2005, ix, p. 124)
【0069】
粉末X線回折(XRF)パターンは、Cu,Ka放射を用いたScintag XDS 2000回折計により測定した。エネルギー分散X線スペクトル(EDS)を有する走査電子顕微鏡検査(SEM)によって、EHT(electron high tension)=10kVでの測定値をLEO1550VP FE SEMに記録した。拡散反射率セルを備えるCary3G分光光度計を用いてUV可視測定値を記録した。
【実施例7】
【0070】
デジタル攪拌ホットプレート(フィッシャーサイエンティフィック社)上に配置した温度制御油浴中で加熱される10mL厚壁ガラス反応器(VWR)中でグルコース異性化実験を実施した。典型的な実験では、10重量%グルコース及び金属:グルコースのモル比が1:50となる相当量の触媒(通常〜70mg)を含む水溶液1.5gを反応器に加え、密閉した。反応器を油浴中に配置して、特定の時間に取り出した。氷浴中で反応器を冷却して反応を停止させ、少量の分割量(aliquot)を採取して分析した。試料分析は、PDA UV(320nm)及び蒸発光散乱検出(ELS)検出器を備えるAgilent1200システム(アジレント・テクノロジーズ社)を使用した高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて実施した。グルコース及びフルクトース濃度 流速0.55mL/分、カラム温度353Kの、超高純度水(pH= 7)を移動位相として使用して、Phenomenex RHMカラム(フェノメネックス社)によってモニタリングした。
【実施例8】
【0071】
下表に、グルコース異性化実験の結果を要約する。
【0072】
【表2−1】
【表2−2】
【0073】
グルコース異性化反応における活性が種々異なるルイス酸性中心を含む一連の材料について試験した。試験は、大きな孔を有するベータゼオライトの骨格に組み込まれたタンタル(Ta)、スズ(Sn)及びチタン(Ti)金属中心、中程度の孔を有するゼオライト(TS−1)の骨格に組み込まれたTi、並びに、規則配列メソ多孔質シリカ支持体(SBA−15)に組み込まれたSn及びTiを含んだ。図16に示すように、これらの条件下において、 Sn−ベータ及びTi−ベータが、最も高い異性化活性を示し、90分140℃において50%超のグルコース転換率を呈した。対照的に、同じ反応条件下で、Sn−SBA及びTi−SBAは、中程度の異性化活性を呈し、TS−1及びTa−ベータ材料は、ほとんど異性化活性を示さないことが明らかとなった。TS−1及びTi−ベータの反応性違いは、TS−1孔の直径がグルコース分子を通過させてゼオライト内に導くためには小さすぎることを示唆している。
【0074】
2つの最も活性の高い材料の反応速度をより詳細に検討すると、Sn−ベータ触媒は、Ti−ベータよりも優れた性能でグルコースを異性化するということが明らかになった。具体的には、110℃45分及び140℃15分で、反応平衡(すなわち、グルコース転換率50%)で、フルクトース選択性が90%を上回った。フルクトース選択性の値は、反応を比較的長時間進行させた場合に、フルクトース分解反応が開始することに起因して、低下した(エントリー5d及び10e参照)。Ti−ベータ触媒は、活性ではあったが、上述の条件下において、Sn−ベータ触媒ほど有効ではなく、110℃45分の反応後には、グルコース転換率は18%でフルクトース選択性は80%であり、140℃45分の反応後には、グルコース転換率は44%でフルクトース選択性は68%であった。
【0075】
発明者らは、異性化反応におけるSn−ベータの活性に関連する、興味深い溶媒の影響を観察した。塩基性触媒とは異なり、Sn−ベータ触媒は、酸性環境下で異性化反応を実施できた。ここで、本明細書に記載の反応に使用される塩基性触媒の主な欠点は、糖分解反応の間に形成されるカルボン酸によって活性部位が中和されてしまうことに起因して触媒が非活性化してしまうことである。しかし、Sn−ベータを酸性のグルコース溶液(pH=2、HCl)に用いた場合、非酸性溶液中で実施した場合と比較して、活性又はフルクトース選択性の違いが見られなかった(エントリー5c及び6c参照)。対照的に、非プロトン性溶媒(ジメチルスルホキシド[DMSO])を水に代えて用いた場合に、Sn−ベータは異性化反応に関して活性を有さなかった(エントリー11c及び12c参照)。
【実施例9】
【0076】
下表に、水中で様々な触媒を使用して行ったグルコース異性化実験を要約する。反応は、10重量%グルコースと、金属:グルコースのモル比が1:50となる相当量の触媒とを用いて実施した。なお、エントリー10(*を付して示す)については、45重量%グルコース溶液に対して、グルコース:Snのモル比が225:1となるようにして、反応を実施した。**は、マンノース以外の未確認の糖がTi−ベータによって得られたことを示す。記載した収率5重量%は、ヘキソースに関する応答計数を用いて算出した。
【0077】
【表3】
【0078】
Sn又はTi金属中心を含む一連のシリカ材料を、グルコース異性化反応におけるそれらの活性に基づいてスクリーニングした。具体的には、Sn及びTi金属中心は大孔ゼオライト(ベータ)の骨格に組み込まれており、Tiは中程度の孔を有するゼオライト(TS−1)に組み込まれており、Sn及びTiは規則配列メソ多孔性シリカ(MCM−41)に組み込まれている。これらの条件下では、Sn−ベータ及びTi−ベータは最も高いグルコース異性化活性を示し、413K90分の反応の後のグルコース転換率は50%超であった(図17参照)。対照的に、同じ反応条件下で、Sn−MCM41及びTi−MCM41は中程度の活性を示し、TS−1は実質的に不活性であった(図17参照)。TS−1及びTi−ベータの間の反応性の違いは、グルコース分子はベータゼオライトの孔(孔直径:およそ0.8nm)は拡散することができるが、TS−1の孔(孔直径:0.5〜0.6nm)は拡散することができないことを示唆している。
【0079】
2つの最も活性の高い材料を用いた更なる反応実験において、Sn−ベータ触媒は、Ti−ベータと比較して優れた性能でグルコースを異性化することが明らかとなった。具体的には、Sn−ベータを触媒作用量(Sn:グルコースのモル比=1:50)含有する10重量%グルコース溶液について、383K及び413Kでそれぞれ30分及び12分反応させた後の収率は、グルコース約46%(w/w)、フルクトース約31%(w/w)、及びマンノース約9%(w/w)であった。383Kで、より長い時間反応を進行させた場合であっても、Ti−ベータ触媒はグルコース転換率が非常に低かった(エントリー4及び7参照)。反応時間が長くなると、自己触媒分解反応によって、全糖類の収率が低下した(図18参照)。反応温度を変化させても、所与のグルコース転換率値において失われる糖の総量に影響が無かったため、分解反応の経路は、異性化反応の経路と同様に、明らかな活性化バリアを有することが示唆された。特に、Sn−ベータ触媒は、大規模な転換において使用されるものと同様に、更に高濃度のグルコース溶液に対して使用することもできる。例えば、グルコース46%(w/w)、フルクトース29%(w/w)、及びマンノース8%(w/w)の配合からなる生成物は、383K、60分間でSn−ベータを触媒作用量(Sn:グルコースモル比=1:225)含有する45重量%グルコース溶液を反応させて得られた(エントリー4及び10参照)。このような結果は、工業的な酵素処理法で得られる結果に近く、無機触媒を用いて高濃縮グルコース溶液から得られる高いフルクトース収率である。
【0080】
このデータは、Sn−ベータの異性化反応の活性部位がゼオライトの骨格に組み込まれるSn原子であることを示唆する。SnCl4・5H2Oも、SnO2も、異性化活性を示さず(エントリー8及び9参照)、Sn−ベータに関するUVデータは、更なる骨格Snに相当する吸収バンドを呈さなかった(図6参照)。
【実施例10】
【0081】
下表に触媒安定性の実験結果を要約する。反応は、Sn:グルコースのモル比が1:50である10重量%グルコース溶液を使用して383Kで実施した(エントリー5bを除く)。実験1(エントリー1〜4)について、各サイクル後に、触媒を水で洗浄して、新たなグルコース溶液を加えて新たなサイクルを開始させた。サイクル4において、サイクル3から回収した触媒を空気中で、813Kで3時間、温度ランプ速度2K/分で焼成した。実験2(エントリー5a〜5b)について、Sn−ベータを用いた反応を、12分間継続させた(エントリー5a)。その後、熱いうちに溶液をろ過して触媒を回収し、濾過溶液をさらに30分間反応させた(エントリー5b)。
【0082】
【表4】
【0083】
Sn−ベータ触媒の安定性を試験するために、2種類の実験を行った。第1の実験では、それぞれ、383Kで30分間にわたり、4つの連続的な異性化サイクルを実行することによって、触媒の再利用性を評価した。各サイクルの後、触媒を濾過により回収して、新たなグルコース溶液を加える前に水で洗浄した。データから明らかなように、3つの反応サイクルの後に、触媒はその初期の活性及び生成物分布を維持していた。第3のサイクルの後、最後の1サイクルを実行する前に、触媒を813Kで、空気中で焼成した。サイクル4の結果により、触媒が再びその初期の活性及び生成物分布を維持したことが明らかとなった。したがって、本発明による触媒はテ印系的なゼオライト再生プロセスに耐えうることが確認された。第2の試験は、溶液に浸出する金属種に起因する均一系触媒作用の存在を確認するために設計した。具体的には、383K、15分間でSn−ベータ触媒によって異性化サイクルを初期化した。そして、溶液がまだ熱いうちに、触媒をろ過により除去した。
【0084】
冷却中に浸出した金属種が再び吸着する可能性を回避するため、濾過溶液を383K、30分間で反応させた。この反応結果は、触媒の存在下で、グルコース異性化が予想通りに進行したことを示した(生成物収率は、グルコース57%(w/w)、フルクトース27%(w/w)、及びマンノース6%(w/w)であった)。しかし、一旦触媒を除去すると、反応は持続しないということは、浸出金属イオンによって均一系触媒作用が生じていないということを示唆している(エントリー5a及び5b)。これらの2つの試験結果は、Sn−ベータが異性化反応に対して非均一触媒作用を有しており、複数の反応サイクルについて使用可能であることを示唆している。
【実施例11】
【0085】
下表に、413Kの酸性条件下における、水中でのSn触媒グルコース反応の結果を要約する、
【0086】
【表5】
【0087】
驚くべきことに、Sn−ベータは、高酸性環境下での異性化反応を実施することが可能である。HCl(実施例9、エントリー4及び6参照)無しで反応させた場合と比較して、酸性の10重量%グルコース溶液(pH=2、HCl)中にてSn−ベータを用いて反応させた場合の活性及び生成物の分布に差異が見られなかった。酸性環境においてSn−ベータを使用した実験では、加水分解/異性化及び異性化/脱水反応シーケンスの結果が良好であった。具体的には、10重量%でん粉溶液を、413K、90分間でHCl(pH=1)を用いて加水分解すると、グルコース87%(w/w)及びでん粉13%(w/w)の溶液を生成し、得られた酸性溶液に対して触媒作用量のSn−ベータ(Sn:グルコースのモル比=1:50 )を加えて、413Kで更に12分間加熱して異性化すると、生成物の分布がでん粉13%(w/w)、グルコース39%(w/w)、フルクトース23%(w/w)、及びマンノース7%(w/w)となった(表3、エントリー1a及び1b)。また、10重量%グルコース溶液を、HCl(pH=1)及びSn−ベータが共に存在する条件下で、413Kで120分間反応させると、HMFの収率は11%(w/w)であり、その他に、フルクトース18%(w/w)及びマンノースは2%(w/w)であった(エントリー4)。これらのデータは、水性HCl中でフルクトースを反応させた場合の脱水結果(HMF収率24%(w/w)、転換率85%;エントリー3)、及び同様の水性HCl反応条件下でグルコースを脱水させた場合の結果(HMF収率1%(w/w)未満、転換率9%;エントリー2)に匹敵しうる。このように、Sn−ベータは、異性化その他の酸性触媒反応の組み合わせを必要とするワンポット反応シーケンスの候補として魅力的である。
【実施例12】
【0088】
C−2位置重水素化グルコース(グルコースD2、図23)を用いて、異性化反応をNMR解析した。図11に示すように、反応機構がいずれの経路をたどるかに関わらず、C−2位置のプロトンは基本的な役割を果たす。実際、C−2位置の同位体置換は初期反応速度を1/2に減速させる結果となった(kH/kD=1.98、図22)。このことから、反応速度に同位体がかなり影響したことが明らかである。重要なことに、触媒がない場合の反応温度(383K)における水中でのグルコースD2の13CNMRスペクトルにより、同位体のスクランブリングが発生しないことが明らかとなった(図24)。このような結果は、反応条件下で、水中でC−D結合が不活性化することを示唆し、さらに、触媒作用のみに起因して反応中に分子内で同位体の転位が発生しないことを示唆するため、重要である。
【0089】
13C NMR及び1HNMR分光により、触媒としてSn−ベータを用いたグルコースD2の異性化を分析した。未標識グルコース及びグルコースD2原料溶液の13CNMRスペクトルを比較したところ、未標識グルコース溶液においてδ=74.1、71.3ppmで観察された共鳴は、グルコースD2溶液における低強度の1:1:1の三重線として現れることが明らかとなった(図19a、b)。この効果は、溶液中のグルコースD2の2つの構造(b−ピラノース及びa−ピラノース、存在比64:36)におけるC−2位置の重水素化原子による核オーバーハウザーエンハンスメント(NOE)の崩壊に関連する。NOEの間、1Hブロードバンドでカップリングを用いてC、Hカップリングを抑制した場合、13C共鳴強度は、13C−1Hペアの直接結合による200%まで強調されるが、この共鳴増幅は13C−1Hペアについては見られず、よって、グルコースD2のC−2に関連する共鳴は実質的に減衰する。383K15分間で、水中で、Sn−ベータの存在下で10重量%グルコースD2溶液を反応させた後に、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によりグルコース及びフルクトース画分を分離した。各画分について、13CNMRスペクトルを分析したところ、反応後に、グルコースD2は不変であったが(図19b、c)、フルクトース生成物は未標識フルクトース標準(図19e、f)と比較して有意差があったことが明らかとなった。特に、未標識フルクトース標準におけるb−ピラノース及びb−フラノース構造のC−1位置に該当するδ=63.8、62.6ppmの共鳴は、反応後に回収したフルクトース生成物の低強度三重線として表れた。両方の糖に関する、1H NMRスペクトルによりこれらの結果を確認した。反応の前後のグルコースD2の1H NMRスペクトルは一定のままであったが(図20b、c)、フルクトースのスペクトルはC−1位置の重水素原子の消滅により、δ=3.45ppmの共鳴が消失したことを示した(図20f)。これらのスペクトルの領域を統合することにより、上述のグルコース及びフルクトース画分については6つのC−Hペアが存在し、未標識グルコース又はフルクトースについては7つのC−Hペアが存在することを確認できた。このような結果は、グルコースD2のC−2位置にある重水素原子がフルクトースのC−1位置へ移動したことを明示し、したがって、純水中における固体ルイス酸触媒とのグルコース異性化反応は、分子内ヒドリドシフトによって進行するということが確実に証明された。
【0090】
塩基性触媒として水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて、同様の分光学的分析を実施した。グルコースD2の10重量%水溶液を、NaOH(0.1M)の存在下で、383Kで2分間にわたり反応させた。そして、グルコース及びフルクトース画分の13CNMR及び1H NMRスペクトルを取得すると、Sn−ベータを使用した場合の結果と比較して有意な違いを示した。第1に、未標識のフルクトースと、反応後に分離したフルクトース画分と、に関する13CNMR及び1H NMRスペクトルには差異がなかった。このことは、フルクトース画分に重水素原子が含まれなかったことを示す(図19e、g及び図20e、g)。第2に、グルコース断片の13CNMRスペクトルにおいて、δ=74.1ppmでの小さな共鳴の存在により、グルコースD2に少量の標準のグルコースが混ざっていたことが示唆された(図19dの拡大図参照)。未標識グルコースの存在は、1HNMRスペクトルにおける、C−2位置のプロトンに該当するδ=3.1ppmでの共鳴の出現によっても裏付けられる(図20d)。これらの結果は、塩基性触媒が、グルコースD2のa−カルボニル炭素から重水素が除去されて、対応するエノラートを生成し、溶液からのプロトンをグルコース分子に再度組み込んで、未標識フルクトースに伴って、幾らかの未標識グルコースを生成するプロトン移動機構を作動させることを示した(図11A)。
【0091】
この実験は、Sn−ベータが純粋な水性溶媒中のグルコースの異性化に触媒作用を及ぼすことができるルイス酸として作用することができることを示した。異性化反応の間、Sn−ベータの活性部位と、糖及び溶媒との間の相互作用の性質を理解するために更なる実験を行った。Cormaらによる報告(119Sn−NMRを使用)において、分離したゼオライト中の骨格スズ中心は、特定の反応の反応速度を促進する役割を果たすことが示された(A. Corma, Nature 2001, 412, 423)。水中でのグルコース異性化について、発明者らは、Sn−ベータが反応を触媒するために骨格スズ中心が必須であることを見出した。完全にスズを骨格に組み込むとされている手順(スズ供給源として、SnClを使用)により合成したSn−ベータは、異性化反応について高活性であったが、スズ供給源としてSnOを用いて合成したSn−ベータは、完全に不活性であった(図21A)。活性物質のUV−可視拡散反射スペクトルでは、220nmを中心とする単バンド(金属の四配位構造に該当する)が見られたが、非活性材料のスペクトルは、300nmを中心とするバンド(骨格外位置の金属の八配位構造に該当する)を呈した(図21B)。
【実施例13】
【0092】
更なるグルコース異性化実験の結果を下表に要約する。
【0093】
【表6】
【実施例14】
【0094】
グルコースからHMFへの転換実験の結果を下表に要約する。
【0095】
【表7】
【実施例15】
【0096】
ゼオライトSn−CIT−6を合成して、グルコース異性化反応を行った。文献(Andy及びDavis著, Ind. Eng. Chem. Res. 2004, 43, 2922)に記載の手順に従い、けい酸亜鉛CIT−6を合成した。合成された材料のX線回折パターンを図31に示す。合成された材料の電子顕微鏡写真を図32に示す。骨格からZnを除去するために、ゼオライト1.0gを氷酢酸60mL及び水100mLに加え、混合物を80度で3日間維持した。ろ過によりCIT−6を回収して、水で洗浄し、100℃でオーバーナイトして乾燥させた。そして、試料を130℃まで熱し、真空で2時間加熱して、吸着された水を除去した。室温、無水クロロホルム中で、相当量のグラフト化剤(Si/Sn:100〜125)の溶液中で、CIT−6のSn(SnCl3CH3)をグラフト化した。1時間後、トリエチルアミンを混合物に加えて、グラフト化プロセスで生成された塩酸をトラップした。懸濁液を2日間撹拌して維持した。試料をクロロホルムで洗浄して、100℃でオーバーナイトして乾燥させた。CIT−6(SnCl3CH3)の最終的なSi/Sn比は110であった(EDSにより算出した)。試料の一部を580℃で6時間焼成した。
【0097】
グルコース異性化のための反応条件は、糖:Sn比が100の10重量%グルコース水溶液について、温度は110度、反応時間は90分であった。図33に示すように、CIT−6(SnCH3Cl3)は焼成した場合に、グルコース異性化反応について活性になる。これは、効率的なグラフト化のためには、アルキル基を焼成によって酸化により除去する必要があることを示唆する。この傾向は、Corma らによる、 J. Catal, 2003, 219, 242にも記載されている。図33に、調製されたままのCIT−6(SnCH3Cl3)触媒(左)と、焼成したCIT−6(SnCH3Cl3)触媒(右)とを用いた110℃でのグルコース異性化反応による生成物の分布を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性溶媒中で、単糖類とゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトとを接触させることを含み、前記ゼオライトは前記単糖類を通過させることができる孔を有することを特徴とする、単糖類の異性化方法。
【請求項2】
前記ゼオライトは、*BEA構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単糖類は、ペントース又はヘキソースであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記単糖類は、グルコース、フルクトース、又はマンノースであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水性溶媒は、約10重量パーセント〜約50重量パーセントの単糖類を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記異性化は、実質的に熱力学的平衡に達することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水性溶媒のpHは、酸性であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水性溶媒のpHは、約0〜約2であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水性溶媒は、塩を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記塩は、酢酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、クエン酸塩、シアン化物、ギ酸塩、グリコール酸塩、ハロゲン化物塩、ヘキサフルオロリン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酸化物、リン酸塩、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、トシラート、トリフラート又はビストリフオロスルホンイミドを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム又は臭化カリウムであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記異性化は、約90℃〜約180℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記異性化は、約90分未満の間実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
性能を大幅に低下させること無く、焼成の必要無く、ゼオライト触媒を少なくとも3回の反応サイクルでバッチ式に使用しうるように、反応条件が選択される、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
水性溶媒中で、単糖類と材料の骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む規則配列メソ多孔性シリカ材料とを接触させることを含む、単糖類の異性化方法。
【請求項16】
前記規則配列メソ多孔性シリカ材料は、MCM−41であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
グルコースを5−ヒドロキシメチルフルフラールに転換する方法であって、
水性溶媒中で、グルコースとゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトとを接触させてフルクトースを生成するステップとあって、前記ゼオライトは前記グルコースを通過させることができる孔を有することを特徴とする、ステップと、
前記フルクトースを脱水するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項18】
前記フルクトースの脱水中に、前記フルクトースを前記水性溶媒中に保持するステップを更に含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記脱水ステップは、酸触媒の存在下で実施されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒は、前記水性触媒に溶解された無機酸であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記触媒は、固体酸触媒であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記触媒は、*BEA構造を有するプロトン化された高シリカゼオライトであることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記水性溶媒のpHは、約0〜約2であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記水性溶媒は、塩を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記塩は、酢酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、クエン酸塩、シアン化物、ギ酸塩、グリコール酸塩、ハロゲン化物塩、ヘキサフルオロリン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酸化物、リン酸塩、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、トシラート、トリフラート又はビストリフオロスルホンイミドを含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム又は臭化カリウムであることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ゼオライトは、*BEA構造を有することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記水性溶媒は、約10重量パーセント〜約50重量パーセントのグルコースを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記水性溶媒を、5−ヒドロキシメチルフルフラールを前記水性溶媒から抽出することができる有機溶媒と接触させること、及び、前記有機溶媒は前記水性溶媒と実質的に混ざらないこと、を特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記5−ヒドロキシメチルフルフラールは前記水性溶媒中で生成され、生成されたままの状態で、該水性溶媒から前記有機性溶媒に抽出されることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記有機溶媒は、水非混和性、線形、分岐、環式アルコール、エーテル又はケトンである溶媒を含むことを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記有機溶媒は、未置換脂肪族若しくは芳香族炭化水素、又は、ハロ置換脂肪族若しくは芳香族炭化水素である溶媒を含むことを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記有機溶媒は、1−ブタノール又はTHFを含むことを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
でん粉を5−ヒドロキシメチルフルフラールに転換する方法であって、
酸性水性溶媒中ででん粉を加水分解してグルコースを生成するステップと、
水性溶媒中で、グルコースとゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトとを接触させてフルクトースを生成するステップであって、前記ゼオライトは前記グルコースを通過させることができる孔を有することを特徴とする、ステップと、
前記フルクトースを脱水するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項35】
前記グルコースを前記高シリカゼオライトと接触させてフルクトースを生成する間、前記グルコースを酸性水性溶媒中に保持することを更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記フルクトースを脱水して5−ヒドロキシメチルフルフラールを生成する間、前記フルクトースを前記酸性水性溶媒中に保持することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記酸性水性溶媒を5−ヒドロキシメチルフルフラールを前記酸性水性溶媒から抽出することができる有機溶媒と接触させること、及び、前記有機溶媒は前記酸性水性溶媒と実質的に混ざらないこと、を特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記5−ヒドロキシメチルフルフラールは前記酸性水性溶媒中で生成され、生成されたままの状態で、該水性溶媒から前記有機性溶媒に抽出されることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項1】
水性溶媒中で、単糖類とゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトとを接触させることを含み、前記ゼオライトは前記単糖類を通過させることができる孔を有することを特徴とする、単糖類の異性化方法。
【請求項2】
前記ゼオライトは、*BEA構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単糖類は、ペントース又はヘキソースであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記単糖類は、グルコース、フルクトース、又はマンノースであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水性溶媒は、約10重量パーセント〜約50重量パーセントの単糖類を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記異性化は、実質的に熱力学的平衡に達することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水性溶媒のpHは、酸性であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水性溶媒のpHは、約0〜約2であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水性溶媒は、塩を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記塩は、酢酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、クエン酸塩、シアン化物、ギ酸塩、グリコール酸塩、ハロゲン化物塩、ヘキサフルオロリン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酸化物、リン酸塩、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、トシラート、トリフラート又はビストリフオロスルホンイミドを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム又は臭化カリウムであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記異性化は、約90℃〜約180℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記異性化は、約90分未満の間実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
性能を大幅に低下させること無く、焼成の必要無く、ゼオライト触媒を少なくとも3回の反応サイクルでバッチ式に使用しうるように、反応条件が選択される、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
水性溶媒中で、単糖類と材料の骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む規則配列メソ多孔性シリカ材料とを接触させることを含む、単糖類の異性化方法。
【請求項16】
前記規則配列メソ多孔性シリカ材料は、MCM−41であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
グルコースを5−ヒドロキシメチルフルフラールに転換する方法であって、
水性溶媒中で、グルコースとゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトとを接触させてフルクトースを生成するステップとあって、前記ゼオライトは前記グルコースを通過させることができる孔を有することを特徴とする、ステップと、
前記フルクトースを脱水するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項18】
前記フルクトースの脱水中に、前記フルクトースを前記水性溶媒中に保持するステップを更に含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記脱水ステップは、酸触媒の存在下で実施されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒は、前記水性触媒に溶解された無機酸であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記触媒は、固体酸触媒であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記触媒は、*BEA構造を有するプロトン化された高シリカゼオライトであることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記水性溶媒のpHは、約0〜約2であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記水性溶媒は、塩を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記塩は、酢酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、クエン酸塩、シアン化物、ギ酸塩、グリコール酸塩、ハロゲン化物塩、ヘキサフルオロリン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酸化物、リン酸塩、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、トシラート、トリフラート又はビストリフオロスルホンイミドを含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム又は臭化カリウムであることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ゼオライトは、*BEA構造を有することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記水性溶媒は、約10重量パーセント〜約50重量パーセントのグルコースを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記水性溶媒を、5−ヒドロキシメチルフルフラールを前記水性溶媒から抽出することができる有機溶媒と接触させること、及び、前記有機溶媒は前記水性溶媒と実質的に混ざらないこと、を特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記5−ヒドロキシメチルフルフラールは前記水性溶媒中で生成され、生成されたままの状態で、該水性溶媒から前記有機性溶媒に抽出されることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記有機溶媒は、水非混和性、線形、分岐、環式アルコール、エーテル又はケトンである溶媒を含むことを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記有機溶媒は、未置換脂肪族若しくは芳香族炭化水素、又は、ハロ置換脂肪族若しくは芳香族炭化水素である溶媒を含むことを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記有機溶媒は、1−ブタノール又はTHFを含むことを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
でん粉を5−ヒドロキシメチルフルフラールに転換する方法であって、
酸性水性溶媒中ででん粉を加水分解してグルコースを生成するステップと、
水性溶媒中で、グルコースとゼオライト骨格に組み込まれたスズ又はチタンを含む高シリカゼオライトとを接触させてフルクトースを生成するステップであって、前記ゼオライトは前記グルコースを通過させることができる孔を有することを特徴とする、ステップと、
前記フルクトースを脱水するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項35】
前記グルコースを前記高シリカゼオライトと接触させてフルクトースを生成する間、前記グルコースを酸性水性溶媒中に保持することを更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記フルクトースを脱水して5−ヒドロキシメチルフルフラールを生成する間、前記フルクトースを前記酸性水性溶媒中に保持することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記酸性水性溶媒を5−ヒドロキシメチルフルフラールを前記酸性水性溶媒から抽出することができる有機溶媒と接触させること、及び、前記有機溶媒は前記酸性水性溶媒と実質的に混ざらないこと、を特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記5−ヒドロキシメチルフルフラールは前記酸性水性溶媒中で生成され、生成されたままの状態で、該水性溶媒から前記有機性溶媒に抽出されることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図33】
【図3】
【図4】
【図32】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図33】
【図3】
【図4】
【図32】
【公表番号】特表2013−517288(P2013−517288A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549112(P2012−549112)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2011/021301
【国際公開番号】WO2012/050625
【国際公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508032284)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (17)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2011/021301
【国際公開番号】WO2012/050625
【国際公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508032284)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (17)
【Fターム(参考)】
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