説明

糖尿病の治療および予防用組成物

特定の分子量を有する、ギムネマシルベスタ(Gymnema sylvestre)の葉からの単離物は、糖尿病の治療に有用である。本単離物は、分子量分画濾過によって判定した場合、少なくとも3000ダルトンの分子量を有する。ヒト患者のブドウ糖代謝は、前記のギムネマシルベスタの葉からの単離物を場合によってアオギリ科カラヤ(Sterculia urens)の滲出物などの非代謝性多糖類と併せて含有する剤形によって調節される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来の天然炭水化物を用いるヒト患者のブドウ糖代謝の調節に関する。
【背景技術】
【0002】
正常な健康を維持するためには、ヒトの血流中のブドウ糖濃度は、比較的狭い範囲(血液1デシリットルあたり60から120ミリグラム)内に制御しなければならない。血糖が低下しすぎると、低血糖として知られている状態が、失神、衰弱、頭痛、錯乱および人格変化などの症状を伴って生じることとなる。重症の低血糖は、痙攣、昏睡および死に進行することもある。血糖過剰、すなわち高血糖は、過剰尿生産、口渇、体重減少、疲労、および最も重症な症例では、脱水、昏睡および死を引き起こす。慢性高血糖は、細胞、組織および器官における過剰なブドウ糖と蛋白質との化学反応により、組織損傷を引き起こす。この損傷は、失明、腎不全、インポテンス、アテローム硬化症および感染受攻性増大といった糖尿病合併症の原因になると考えられる。
【0003】
膵臓は、血液中のブドウ糖の濃度を調節するホルモンを作る。インスリンは、血糖値を低下させる。食後、血糖値が上昇すると、膵臓はインスリンを分泌し、それに起因して筋肉および他の組織が血流からブドウ糖を吸収する。グルカゴンは、血糖値を上昇させる。血糖値が低下すると、膵臓はグルカゴンを分泌して、貯蔵ブドウ糖を利用可能にするように肝臓にシグナルを送る。
【0004】
第三のブドウ糖調節ホルモン、アミリンは、1987年に発見された。現在、一般に、生理学者は、3つのホルモンすべてが、ブドウ糖代謝の複雑な側面において一定の役割を果たしていると考えている。アミリンの化学構造ならびに筋肉および膵臓組織に対するその代謝作用が、最近解明された。アミリンは、インスリンと共に働いて、一定の状況のもとでインスリンのグルコース低下作用を和らげる、食後の肝臓グリコーゲンの補充を助ける、および過剰なブドウ糖からの脂肪の合成を促進すると言われている。結果として、アミリンは、グルカゴン同様、血糖値を上昇させ得る。
【0005】
糖尿病は、継続的かつ病的に上昇した血糖濃度を随伴する。米国では主な死亡原因の1つであり、全死亡数の約5%の原因である。糖尿病は、次の2つの主要なサブクラスに分けられる: 若年性糖尿病、すなわちインスリン依存性糖尿病(IDDM)としても知られているI型、および成人発症性糖尿病、すなわちインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)としても知られているII型。
【0006】
米国糖尿病協会(the American Diabetes Association)によると、百万人以上の若年性糖尿病患者が米国には存在する。糖尿病は、自己免疫疾患の一形態である。患者により生産される自己抗体が、膵臓のインスリン生産細胞を完全にまたは一部破壊する。従って、若年性糖尿病患者は、生涯を通じて外性インスリンを摂取しなければならない。治療しなければ、過度のアシドーシス、脱水、腎臓障害および死が、結果として生じ得る。治療したとしても、失明、アテローム性硬化症およびインポテンスなどの合併症が生じることがある。
【0007】
米国で診断されたII型(成人発症性)糖尿病患者は、五百万人を越えている。II型糖尿病は、通常、中年期の間に始まるが、その確たる原因は不明である。II型糖尿病患者では、食後の血糖値の上昇が、膵臓によるインスリン生産を適正に刺激しない。加えて、末梢組織は、インスリンの作用に対して一般に抵抗性である。その結果として生じる高い血糖値(高血糖)に起因して、広範囲の組織損傷が生じ得る。II型糖尿病患者は、多くの場合、インスリン抵抗性と呼ばれる。彼らは、身体がそのインスリン抵抗性を克服しようと試みるので、しばしば正常値より高い血漿インスリンレベルを有する(高インスリン血症)。一部の研究者は、高インスリン血症は、高血圧、高レベルの血中低密度リポ蛋白(LDL)および正常より低いレベルの有益な高密度リポ蛋白(HDL)の発現の原因因子であり得ると、現在、考えている。中等度のインスリン抵抗性は、II型糖尿病の初期段階ではインスリン分泌増加によって補うことができるが、進行した疾病状態ではインスリンの分泌も損なわれる。II型糖尿病の治療は、好ましくは、インスリン抵抗性とインスリン分泌不全の両方に対処するものである。
【0008】
インスリン抵抗性および高インスリン血症は、少なからぬ健康リスクをもたらす2つの他の代謝異常、即ちグルコース耐性障害および代謝性肥満、とも関連付けられてきた。グルコース耐性障害は、食前の正常な血糖値と、食後の血糖値上昇(高血糖)への傾向を特徴とする。世界保健機構によると、20歳と74歳の間の米国人口の約11%が、グルコース耐性障害であると概算される。これらの個人は、糖尿病および冠動脈疾患に罹患する危険性が、より高いと考えられる。
【0009】
肥満もインスリン抵抗性に関連付けることができる。肥満、グルコース耐性障害およびII型糖尿病の間の原因の関連性が提案されてきたが、生理学的な根拠は、まだ確立されていない。一部の研究者は、グルコース耐性障害および糖尿病は、人がインスリン抵抗性および高インスリン血症を発現した後のその疾病過程の後期にしか臨床的に観察及び、診断されないと考えている。
【0010】
インスリン抵抗性は、しばしば、高血圧、冠動脈疾患(動脈硬化)および乳酸アシドーシスならびに関連疾病状態を随伴する。これらの疾病状態の間の基本的な関係および治療方法は、確立されていない。
【0011】
米国において今日処方されている糖尿病薬の2つの主要な類は、インスリンおよびスルホニル尿素(経口血糖降下治療薬)である。インスリンは、I型とII型、両方の糖尿病に対して処方されるが、スルホニル尿素は、通常はII型糖尿病患者に対してしか処方されない。スルホニル尿素は、自然インスリン分泌を刺激し、インスリン抵抗性を低下させる。これらの化合物は、代謝におけるインスリンの機能に取って代わるものではない。スルホニル尿素を摂取している患者の約三分の一が、それに対して抵抗性になる。一部のII型糖尿病患者は、スルホニル尿素療法には反応しない。スルホニル尿素での初期治療に反応する患者のうち、5から10%は、約10年後にスルホニル尿素有効性の喪失を経験する可能性が高い。
【0012】
インスリンそれ自体の治療窓口は、比較的狭い。インスリン用量が比較的高いと、血糖が低下しすぎるので、低血糖性ショックをもたらすことがある。用量が低い、または投薬頻度が低いと、高血糖をもたらすこともある。
【0013】
欧州では、経口血糖降下薬の他の2つの類、すなわちビグアニドおよびアルファ−グルコシダーゼ阻害剤が、利用可能である。ビグアニドは、肝臓におけるブドウ糖生産の低下およびブドウ糖吸収の制限によって作動する。ビグアニドは、カナダでも使用されているが、死亡発生率増大のため米国では禁止されている。アルファ−グルコシダーゼ阻害剤は、いくつかの欧州諸国では販売されているが、米国での使用に対するFDA認可は得ていない。これらの薬物は、消化された食物の吸収を遅速させることにより、高い血糖値を低下させる。副作用には、膨満、下痢および腹痛が挙げられる。
【0014】
ヒジ(Hiji)の米国特許第4,761,286号は、ギムネマシルベスタ(Gymnema sylvestre)の葉由来の水性抽出物を、腸管によりブドウ糖として吸収される食糧物と併用して、ブドウ糖の吸収を抑制できることを開示している。チャテルジー(Chatterji)の国際特許出願第WO95/10292号は、ヒト患者のブドウ糖代謝は、G.シルベスタ(G.sylvestre)の葉由来の抽出物を生体不活性多糖類、すなわちその患者が代謝できない多糖類、と併用で経口投与することによって有効に調節できることを報告した。
【0015】
しかし、今般、G.シルベスタの葉由来の比較的高分子量の単離物を場合によって非代謝性多糖類と併用で経口投与することにより、ヒト患者のブドウ糖代謝を有効に調節できることが、判明した。
【発明の開示】
【0016】
本発明は、ギムネマシルベスタ葉由来の比較的高分子量(HMW)の単離物を提供する。本発明は、前記単離物と非代謝性多糖類、好ましくはアオギリ科カラヤ(Sterculia urens)滲出物を好ましくは約1:2から約2:1の範囲の各重量比で含有する治療剤形も包含する。前述の単離物は、ギムネマシルベスタ葉のエタノール抽出、その後のその抽出物からのインスリン分泌刺激活性成分の単離によって得ることができる。この単離インスリン分泌刺激活性成分は、分子量分画濾過に基づき少なくとも約3000ダルトンの分子サイズを有する高分子量画分である。
【0017】
本発明のもう一つの側面は、哺乳動物、例えばヒト患者、家庭用ペットなどのブドウ糖代謝を調節するための方法であり、この方法は、その哺乳動物の血糖値を少なくとも安定させる、好ましくは低下させるために充分である有効量の上記の成分の配合物をその哺乳動物に対して経口投与することによる。
【0018】
本発明の単離物は、糖尿病の発症を遅らせるために栄養補助食品として、また血糖値制御を補助するため、および糖尿病、コレステロール血症または肥満の遺伝的素因を有する者の糖尿病発症の可能性を低下させるためにI型糖尿病患者に対するインスリンとの補助治療として、有用である。本発明の単離物は、糖尿病性網膜症の治療にも有用である。
【0019】
(好ましい実施態様の説明)
ギムネマシルベスタは、ガガイモ科に属する植物である。この植物は、主に、中央および西インド、熱帯アフリカ、ならびにオーストラリアに生育している。G.シルベスタの葉からの水性抽出物は、甘いものに対する味覚を一時的に抑制すると報告されている。G.シルベスタの生葉は、インドでは糖尿病を含む様々な苦痛に対する民間薬として用いられてきたことも報告されている。様々な技法によりG.シルベスタの葉から単離された約14または15の異なる化合物が報告されており、これらはすべて、比較的低い分子量を有する(例えば、Stocklin,J.Agr.Food Chem.,1969,17(4):704−708、およびSinsheimer,J.Pharm.Sci.,1970,59(5):622−628参照)。米国特許第5,137,921号は、ギムネマシルベスタの葉から単離された低分子量の単糖類(M.W.146)であるコンデュリトールA(Conduritol A)が活性抗糖尿病薬であると報告している。しかし、今般、本発明の高分子量単離物は、G.シルベスタの葉の強力なインスリン分泌刺激活性成分であることが、判明した。
【0020】
G.シルベスタの葉のインスリン分泌刺激活性成分は、新鮮なG.シルベスタの葉のアルコール水溶液抽出物から、その抽出物をサイズ選別濾過に付して、選択された分子量のインスリン分泌刺激活性画分をそこから単離することによって得る。一つの好ましい実施態様において、得られる単離物は、分子量分画(MWCO)濾過によって判定した場合、少なくとも約3000ダルトンの分子量を有する。
【0021】
好ましくは、抽出物は、一価のC1からC4アルコール、例えばエタノール、イソプロパノールなど、最も好ましくはエタノール水溶液でG.シルベスタの葉を抽出することによって得る。その後、そのG.シルベスタ抽出物のインスリン分泌刺激活性部分を分子量分画濾過によって単離する。詳細には、この活性部分は、約3000ダルトンの分子量を分画する膜によりその抽出物の水溶液を濾過することによって単離し、膜に保持された少なくとも約3000ダルトンの分子量を有する材料(保持画分(retentate))を回収し、単離する。
【0022】
好ましくは、本発明の生成物は、少なくとも約4時間、周囲温度で、アルコール水溶液、好ましくは約40容量パーセントのエタノールを含有するエタノール水溶液にG.シルベスタの新鮮な葉を先ず浸漬することによって調製する。好ましい実施態様では、それらの葉は、水に少なくとも約18時間浸漬し、その後、その水にエタノールを添加して、少なくとも約40容量%のエタノール濃度にし、得られたエタノール水溶液に、その後約4時間浸漬し続ける。得られた抽出液を濾過して異質の固形物を除去し、蒸留してエタノールを追い出し、残留物水溶液を生じ、その後、それを硫酸で処理して、そのpHを約2以下の値に低下させ、生成された酸不溶性塩を沈殿させる。沈殿を濾過によって除去し、濾液を水酸化ナトリウムで中和する。その後、その中和抽出物を濃縮し、精製して、本発明の単離物をもたらす。これは、少なくとも3000ダルトンの分子量を有する、G.シルベスタの葉のインスリン分泌刺激活性因子である。
【0023】
その後、好ましくは、この単離物を凍結乾燥して、貯蔵寿命を増大させ、場合によってアオギリ科カラヤ滲出物などの非代謝性多糖類またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と併せて、本発明を具体化する経口剤形をもたらす。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、用語「非代謝性多糖類」は、ヒト患者により有意に代謝されない多糖類を指す。ホワイト(White)の米国特許第4,959,466号に開示されている部分エステル化オリゴ糖類および多糖類も、非代謝性多糖類として、本発明の目的に適する。例示となる多糖類には、例えば、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、アルジネート、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース水解産物、デンプン水解産物、インドゴムなどが挙げられる。好ましくは、非代謝性多糖類は、インドに産し、商業的に容易に購入することができるアオギリ科カラヤ(S.urens)の木の乾燥滲出物である。
【0024】
好ましくは、本単離物は、凍結乾燥し、非代謝性多糖類とそれぞれ約2:1から約1:2の範囲の重量比で併せる。さらに好ましくは、本単離物の非代謝性多糖類に対する重量比は、約1:1.5である。その後、得られた配合物を経口投与用の硬質ゼラチンカプセルに充填することができる。本発明を具体化する典型的なゼラチンカプセルは、約100から約200ミリグラムの本凍結乾燥単離物および約150から約300ミリグラムのアオギリ科カラヤ滲出物を含有する。
【0025】
ヒト患者に対してその患者のブドウ糖代謝を調節するために投与することができる投与量および治療有効量は、とりわけ患者の年齢、体重および状態に依存して、変化するだろう。通常の日用量は、好ましくはアオギリ科カラヤ滲出物などの非代謝性多糖類約300ミリグラムから約1350ミリグラムと併用で、1日当たり本凍結乾燥単離物約200ミリグラムから約900ミリグラムの範囲である。
【0026】
本明細書で用いられる場合、用語「治療有効量」は、臨床家によって探られることとなる、患者の生物学的または医学的反応を惹起するであろう本単離物の量を意味する。
【0027】
約100ミリグラムの本凍結乾燥単離物および約150ミリグラムのアオギリ科カラヤ滲出物を含有するカプセルを用いる好ましい投与計画を下の表1に提供する。
【0028】
【表1】

【0029】
本発明の経口剤形は、糖尿病、コレステロール血症または肥満の遺伝的素因を有する患者用の予防薬として非常によく適する。例えば、家族歴を基にそうした素因を有する可能性が高いと特定された妊婦は、彼女たちそれぞれの全妊娠期間を通じて経口量の上述の凍結乾燥単離物を摂取することができる。前記妊婦および彼女たちの新生児の血糖値上昇の可能性は、この方法で顕著に最小化される。妊婦についての好ましい経口投与量は、本凍結乾燥単離物約200ミリグラムと共にアオギリ科カラヤ滲出物約300ミリグラム、1日2回であり、すなわち、本発明の凍結乾燥単離物およびアオギリ科カラヤ滲出物を約2:3の各重量比で含有する500ミリグラムカプセル、1日2回である。本発明の単離物は、糖尿病性網膜症の治療にも有用である。
【0030】
本発明の単離物のインスリン分泌刺激活性は、当該技術分野においてよく知られている様々な手順によって評価することができる。例えば、インスリン生産細胞を本発明の単離物で処理し、それらの細胞のインスリン生産を、Morganら,Diabetes 12:115−126(1963)の二重抗体法によってモニターすることができる。前記文献の該当する開示は、本明細書中に引用により組み込まれる。ラットインスリノーマ(RIN)細胞は、哺乳動物のインスリン生産に対する本発明の単離物などの製剤の効果を研究するために適便なモデルである。ブドウ糖(典型的には約0.1から約0.5重量%)および約10重量%のウシ胎仔血清(FCS)を含有し、哺乳動物細胞代謝に適するブドウ糖、アミノ酸およびビタミンなどの栄養を供給するダルベッコ変性イーグル培地(D−MEM)などの高ブドウ糖培地でRIN細胞を培養する。
【0031】
以下の非限定的実施例により、本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0032】
抽出物および単離物の調製
ギムネマシルベスタの新鮮な葉を購入し、植物学者が同定した。それらの新鮮な葉を約18時間、周囲温度で水道水に浸漬した(およそ葉1kg/水道水4L)。エチルアルコール水溶液(約90容量パーセントのエタノール)を、正味のアルコールパーセントレベルを約40容量%にするために充分な量でそれに添加し、攪拌しながら全バッチを10個のエルレンマイヤーフラスコに分配した。フラスコを振盪台上に配置し、約4時間振盪した。
【0033】
フラスコの内容物を濾過し、回収した抽出液を数バッチに分けて蒸留してエチルアルコールを除去した。得られた残留物水溶液を併せ、希硫酸(約1から2モル濃度)をそれに添加して、最終pHを約2にした。酸不溶性塩から成るスラッジが形成され、それを濾過によって除去した。葉からの固有の可溶性ナトリウムおよびカリウム塩が、その濾液に残った。その濾液を希水酸化ナトリウムで中和し、イオン交換カラムに通すことによって脱イオン化した。得られた溶液(溶離液)は、真空ポンプを装備したロータリーフラスコを用い、約55から70℃の温度に加熱した水浴で、そのロータリーフラスコを45度の角度で回転させることにより濃縮して、淡褐色の半固体の塊(糖蜜の固さのシロップ状の塊)にした。
【0034】
その後、その半固体濃縮物を、攪拌Amicon濾過セルおよび分子量分画(MWCO)膜を用いる限外濾過に付した。詳細には、得られた半固体濃縮物を、200mL Amicon攪拌限外濾過セル(Milliporeカタログ番号5123)および適合する3000 MWCO膜(Millipore カタログ番号PLBC 06210)を用いて分画して、約3000ダルトン未満の分子量を有する透過画分と、少なくとも約3000ダルトンの分子量を有する保持画分(本単離物)を得た。
【実施例2】
【0035】
ギムネマシルベスタ単離物のバイオアッセイ
実施例1で得られた透過画分および保持画分のインスリン放出活性を、ラットインスリノーマ(RIN−58)細胞、I−125標識インスリン、ラットインスリン抗血清、およびMorganら,Diabetes 12:115−126(1963)の二重抗体法を利用して、ミズーリ州セントルイスのLinco Research,Inc.から購入したRIAキット(カタログ番号RI−13K)を使用する、ラジオイムノアッセイによって試験した。主活性は、少なくとも約3000ダルトンのMWCOを有する保持画分で見出された。
【0036】
ラットインスリノーマ細胞(RIN−58)を6ウエルプレートにプレーティングし、ブドウ糖を含有する組織培養培地で成長させた。集密度80%で、培地をブドウ糖非含有培地と交換した。約24時間後、10mMのブドウ糖を含有する新鮮な無血清培地を、アッセイすべき画分とともに添加した。それらの細胞を3時間インキュベートした。各25μLの正副2つのアリコートをRIAのためにそのウエルから抜き取った。アッセイの結果を下の表2に報告する。
【0037】
【表2】

【0038】
上記考察および実施例は、本発明の例示を意図し、限定とは取るべきではない。本発明の精神および範囲内でさらに他の変形が可能であり、当業者にはすぐに明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギムネマシルベスタ(Gymnema sylvestre)の葉をエタノール水溶液で抽出すること;
得られたエタノール水溶液抽出物から酸不溶性塩類を除去すること;
得られた脱塩抽出物を濃縮すること;および
分子量分画濾過によって判定した場合に少なくとも約3000ダルトンの分子量を有するインスリン分泌刺激活性成分を前記濃縮抽出物から単離すること
によって得られる、ギムネマシルベスタの葉からの単離物。
【請求項2】
ギムネマシルベスタの葉をエタノール水溶液で抽出すること;
得られたエタノール水溶液抽出物から、その抽出物のpHを約2に調整すること、生成する不溶性塩類を濾過して除去すること、及び濾液を中和することにより、酸不溶性塩を除去すること;
得られた脱塩中和抽出物を濃縮すること;および
3000ダルトン分子量分画膜による抽出物の限外濾過により濃縮抽出物から高分子量のインスリン分泌刺激活性成分を単離すること
によって得られる、ギムネマシルベスタの葉からの単離物。
【請求項3】
請求項1記載の凍結乾燥単離物および非代謝性多糖類を含む、糖尿病の治療に有用な治療剤形。
【請求項4】
前記凍結乾燥単離物と多糖類が、約2:1から約1:2の範囲の各重量比で前記剤形中に存在する、請求項3に記載の治療剤形。
【請求項5】
前記凍結乾燥単離物と多糖類が、約1:1.5の各重量比で前記剤形中に存在する、請求項3に記載の治療剤形。
【請求項6】
前記非代謝性多糖類が、アオギリ科カラヤ(Sterculia urens)の滲出物である、請求項3に記載の治療剤形。
【請求項7】
患者に対し請求項1に記載の単離物をその患者の血糖値を所定の値で維持するために充分な量および頻度で経口投与することを含む、ヒト患者のブドウ糖代謝を調節するための方法。
【請求項8】
患者に対し請求項1に記載の単離物を非代謝性多糖類と共に約2:1から約1:2の範囲の各重量比で、ならびにその患者の血糖値を所定の値で維持するために充分な量および頻度で経口投与することを含む、ヒト患者のブドウ糖代謝を調節するための方法。
【請求項9】
前記非代謝性多糖類が、アオギリ科カラヤの滲出物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記単離物と多糖類が、約2:1から約1:2の単離物対多糖類の重量比で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記単離物と多糖類が、約1:1.5の単離物対多糖類の重量比で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
患者に対し請求項1に記載の単離物をその患者の血糖値を所定の値で維持するために充分な量および頻度で経口投与することを含む、糖尿病の遺伝的素因を有するヒト患者を治療するための方法。
【請求項13】
患者に対し前記患者の血糖値の異常上昇を防止するために充分な量で請求項1に記載の単離物をアオギリ科カラヤの滲出物と共に経口投与することを含む、糖尿病の遺伝的素因を有するヒト患者を治療するための方法。
【請求項14】
患者に対しインスリン療法の補助剤として請求項1に記載の単離物をその患者の血糖値を所定の値で維持するために充分な量および頻度で経口投与することを含む、I型糖尿病に罹患しており、インスリン療法を受けているヒト患者を治療するための方法。
【請求項15】
患者に対しインスリン療法の補助剤として請求項1に記載の単離物およびアオギリ科カラヤ滲出物をそれぞれ約2:1から約1:2の重量比で経口投与することを含み、その単離物の日用量が、約100ミリグラムから約600ミリグラムの範囲である、I型糖尿病に罹患しており、インスリン療法を受けている患者を治療するための方法。
【請求項16】
患者に対し治療有効量の請求項1に記載の単離物を経口投与することを含む、コレステロール血症の素因を有するヒト患者を治療するための方法。
【請求項17】
前記単離物が、アオギリ科カラヤ滲出物と共に投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者に対し治療有効量の請求項1に記載の単離物を経口投与することを含む、肥満の素因を有するヒト患者を治療するための方法。
【請求項19】
前記単離物が、アオギリ科カラヤ滲出物と共に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
患者に対し治療有効量の請求項1に記載の単離物を経口投与することを含む、ヒト患者の糖尿病性網膜症を治療するための方法。
【請求項21】
前記単離物が、アオギリ科カラヤ滲出物と共に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物に対し請求項1に記載の単離物をその患者の血糖値を所定の値で維持するために充分な量および頻度で経口投与することを含む、哺乳動物のブドウ糖代謝を調節するための方法。
【請求項23】
哺乳動物に対し請求項1に記載の単離物を非代謝性多糖類と共に約2:1から約1:2の範囲の各重量比で、ならびにその哺乳動物の血糖値を所定の値で維持するために充分な量および頻度で経口投与することを含む、哺乳動物のブドウ糖代謝を調節するための方法。
【請求項24】
前記非代謝性多糖類が、アオギリ科カラヤの滲出物である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記単離物と多糖類が、約2:1から約1:2の単離物対多糖類の重量比で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記単離物と多糖類が、約1:1.5の単離物対多糖類の重量比で投与される、請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2006−508135(P2006−508135A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552039(P2004−552039)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/035885
【国際公開番号】WO2004/043393
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505171654)アユールベデイツク−ライフ・インターナシヨナル・エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】