説明

糖尿病の診断および治療のための方法および試薬

糖尿病の診断および治療のための方法および試薬について開示する。本発明は糖尿病の診断および治療のための方法および試薬に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2001年12月3日に提出された米国仮特許出願第60/336,633号(これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、糖尿病の診断および治療のために有用な方法および試薬に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
糖尿病は、1型糖尿病および2型糖尿病という2種類の臨床的症候群に分けることができる。1型糖尿病またはインスリン依存性糖尿病(IDDM)は、膵ランゲルハンス島(本明細書では以後、「膵島細胞」または「島細胞」と呼ぶ)におけるインスリン産生性のβ細胞の高度の損失を特徴とする慢性の自己免疫疾患である。これらの細胞は進行性に破壊されるため、分泌されるインスリンの量は減少し、分泌量が正常血糖(血中グルコース濃度が正常)に必要な濃度よりも減少すると最終的には高血糖(血中グルコース濃度の異常高値)に至る。この免疫応答の厳密な誘因は不明であるが、IDDMの患者では膵β細胞に対する抗体の値が高い。しかし、これらの抗体の値が高い患者のすべてがIDDMを発症するわけではない。
【0004】
2型糖尿病は、筋肉、脂肪および肝細胞がインスリンに対して正常な応答を行えない場合に発症する。この応答性の障害(インスリン抵抗性と呼ばれる)は、これらの細胞の表面にあるインスリン受容体の数の減少、細胞内部のシグナル伝達経路の機能不全、またはその両方に起因すると考えられる。β細胞は最初のうちは、インスリン産生量を増加させることによってこのインスリン抵抗性を代償する。時間の経過に伴って、これらの細胞は正常な血糖値を維持するのに十分なインスリンを産生できないようになり、これは2型糖尿病への進行を意味する。
【0005】
2型糖尿病は、ほとんど解明されていない遺伝的な危険因子と後天性危険因子―これには高脂肪食、運動不足および加齢が含まれる―の組み合わせによって生じる。2型糖尿病は、肥満および座りがちで運動不足のライフスタイルの増加、西洋風の食事習慣の普及、および多くの国での人口の全体的高齢化のために世界的に広がっている。1985年の時点で全世界に3000万人の糖尿病患者がいると推定されており、2000年までにこの数は推定1億5400万人と5倍に増加した。糖尿病患者の数は現在から2025年までに倍増し、約3億人に達すると予想されている。
【0006】
糖尿病を根治させる治療法はない。糖尿病に対する従来の治療法は非常に限られており、合併症を最小限に抑えるとともに遅延させる目的で血糖値を抑制することを狙いとしている。本発明は上記および他の問題点を取り扱う。
【発明の開示】
【0007】
発明の簡単な概要
本発明は、アーキペリン(Archipelin)ポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、アーキペリンポリペプチドは、配列番号:2と少なくとも60%同一である。いくつかの態様において、核酸は配列番号:2をコードする。いくつかの態様において、核酸は配列番号:1を含む。いくつかの態様において、核酸は配列番号:7をコードする。いくつかの態様において、核酸は配列番号:8を含む。いくつかの態様において、核酸は配列番号:6をコードする。いくつかの態様において、核酸は配列番号:5を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、核酸は、

および

からなる群より選択されるプライマーのセットによって増幅される。
【0008】
本発明はまた、配列番号:9と少なくとも605の同一なポリペプチドをコードする核酸と機能的に結合したプロモーターを含む発現カセットも提供する。
【0009】
本発明はまた、55℃の0.2×SSC中での20分間にわたる少なくとも1回の洗浄後に、配列番号:1を含むプローブと特異的にハイブリダイズする、単離された核酸も提供する。
【0010】
本発明はまた、配列番号:9と少なくとも60%同一なアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドも提供する。いくつかの態様において、本ポリペプチドは、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本ポリペプチドは配列番号:2を含む。いくつかの態様において、本ポリペプチドは配列番号:6を含む。いくつかの態様において、本ポリペプチドは、配列番号:9に対して作製された抗体と特異的に結合する。
【0011】
本発明はまた、アーキペリンポリペプチドと特異的にハイブリダイズする抗体も提供する。いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号:9と少なくとも60%同一なアミノ酸配列を含む。
【0012】
本発明はまた、配列番号:9と少なくとも60%同一なポリペプチドをコードする核酸がトランスフェクトされた宿主細胞も提供する。いくつかの態様において、本細胞は膵島細胞である。
【0013】
本発明はまた、インスリンおよび配列番号:9と少なくとも60%同一なポリペプチドを含む薬学的組成物も提供する。いくつかの態様において、本ポリペプチドは、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本ポリペプチドは配列番号:2を含む。いくつかの態様において、薬学的組成物は注射用に適している。
【0014】
本発明はまた、患者における1型糖尿病もしくは2型糖尿病を、または1型糖尿病もしくは2型糖尿病に対する素因を診断する方法も提供する。いくつかの態様において、本方法は、患者由来の試料における、配列番号:9と少なくとも60%同一なポリペプチドのレベルを検出する段階を含み、非糖尿病個体におけるポリペプチドのレベルと比較してその試料中のポリペプチドが変化したレベルにあることにより、その患者が糖尿病であること、または糖尿病の少なくともいくつかの病的様相に対する素因があることが示される。いくつかの態様において、試料中のポリペプチドの変化したレベルは、非糖尿病個体におけるポリペプチドのレベルよりも低い。いくつかの態様において、試料中のポリペプチドの変化したレベルは、非糖尿病個体におけるポリペプチドのレベルよりも高い。いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは配列番号:2を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは抗体によって検出される。いくつかの態様において、患者におけるポリペプチドのレベルは、非糖尿病個体によるレベルの50%未満である。いくつかの態様において、患者におけるポリペプチドのレベルは、非糖尿病個体によるレベルの少なくとも150%である。
【0015】
本発明はまた、1型糖尿病または2型糖尿病と診断された患者の治療方法も提供する。いくつかの態様において、本方法は、アーキペリンのアゴニストおよびアーキペリンの発現を増強する作用物質からなる群より選択される化合物の治療的有効量を含む薬学的組成物を患者に投与する段階を含む。いくつかの態様において、化合物はアーキペリンのアゴニストである。いくつかの態様において、化合物はアーキペリンの発現を増強する作用物質である。いくつかの態様において、アゴニストは配列番号:9と少なくとも60%同一なポリペプチドである。いくつかの態様において、アゴニストは、配列番号:2を含むポリペプチドである。いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、薬学的組成物はインスリンを含む。いくつかの態様において、薬学的組成物は非経口的に投与される。いくつかの態様において、薬学的組成物は注射によって投与される。いくつかの態様において、薬学的組成物はポンプ装置によって投与される。
【0016】
本発明はまた、細胞内のアーキペリン活性を変化させる方法も提供する。いくつかの態様において、本方法は、配列番号:9と少なくとも60%同一なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に結合したプロモーターを含む発現カセットを膵島細胞に導入する段階を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは配列番号:2を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、細胞は患者の体内に導入される。いくつかの態様において、細胞はその患者に由来する。いくつかの態様において、発現カセットはウイルスベクター中に含まれる。
【0017】
本発明はまた、糖尿病の治療のために有用な作用物質を同定する方法も提供する。いくつかの態様において、本方法は、細胞を作用物質と接触させる段階;および、配列番号:9と少なくとも60%同一なポリペプチドの細胞内での発現を変化させる作用物質を選択する段階を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、細胞は糖尿病の動物に由来する。いくつかの態様において、糖尿病の動物はヒトである。いくつかの態様において、細胞は膵島細胞である。いくつかの態様において、ポリペプチドは配列番号:2を含む。いくつかの態様においては、ポリペプチドの発現が接触の段階の後に増強される。
【0018】
本発明はまた、1型糖尿病または2型糖尿病と診断された患者の治療方法も提供する。いくつかの態様において、本方法は、細胞を作用物質と接触させる段階;および配列番号:9と少なくとも60%同一なポリペプチドの細胞内での発現を変化させる作用物質を選択することによって同定された作用物質の治療的有効量を投与する段階を含む。いくつかの態様において、作用物質は患者におけるポリペプチドの発現を増強する。
【0019】
定義
「抗体」とは、分析物(抗原)と特異的に結合してそれを認識する、1つまたは複数の免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされるポリペプチドまたはその断片のことを指す。一般に認められている免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子のほか、極めて多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκまたはλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεに分類され、これによってそれぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgBという免疫グロブリンのクラスが規定される。
【0020】
典型的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は四量体から構成される。各四量体は2つの同一なポリペプチド鎖の対から構成され、それぞれの対は1つの「軽鎖」(約25kDa)および1つの「重鎖」(約50〜70kDa)を有する。各鎖のN末端には、抗原認識を主に担う約100〜110アミノ酸またはそれ以上のアミノ酸からなる可変領域が定められている。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語はそれぞれ、これらの軽鎖および重鎖のことを指す。
【0021】
抗体は、例えば、完全な免疫グロブリン、または種々のペプチダーゼによる消化によって生じる、詳細に特徴づけられているさまざまな断片として存在する。すなわち、例えばペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合の下方で抗体を切断し、ジスルフィド結合によってVH-CH1と連結した軽鎖であるFabの二量体、F(ab)'を生成する。ヒンジ領域のジスルフィド結合を切断するためにF(ab)'を穏和な条件下で還元し、それによってF(ab)'二量体をFab'単量体に変換することもできる。Fab'単量体は本質的にはヒンジ領域の一部を伴うFabである(Paul(編)「基礎免疫学(Fundamental Immunology)」第3版、Raven Press, NY (1993)を参照されたい)。さまざまな抗体断片が完全抗体の消化の見地から定義されているが、当業者は、このような断片を化学的または組換えDNA法を用いてデノボ合成しうることを理解すると考えられる。このため、本明細書で用いる抗体という用語には、抗体全体の改変によって生じる抗体断片、または組換えDNA法を用いてデノボ合成されたもの(例えば、一本鎖Fv)も含まれる。
【0022】
「ペプチド模倣物(peptidomimetic)」および「模倣物(mimetic)」という用語は、本発明のアーキペリンポリペプチドと実質的に同じ構造的および機能的な特徴を有する合成化合物のことを指す。ペプチド類似体は一般に、テンプレートペプチドと類似した特性を備えた非ペプチド薬として製薬産業で用いられている。この種の非ペプチド化合物は「ペプチド模倣物(peptide mimetic)」または「ペプチド模倣物(peptidemimetic)」と呼ばれる(Fauchere, J. Adv. Drug Res. 15: 29 (1986);VeberおよびFreidinger、TINS p. 392 (1985);およびEvansら、J. Med. Chem. 30: 1229 (1987)、これらは参照として本明細書に組み入れられる)。治療的に有用なペプチドと構造的に類似したペプチド模倣物を用いることで、同等または向上した治療効果または予防効果が得られる可能性がある。一般に、ペプチド模倣物は、アーキペリンに認められるもののような、模範ポリペプチド(すなわち、生物活性または薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、CH2NH-、-CH2S、-CH2-CH2-、-CH=CH-(シスおよびトランス)、-COCH2-、-CH(OH)CH2-およびCH2SO-などからなる群より選択される連鎖によって随意に置換された1つまたは複数のペプチド連鎖を有する。模倣物は合成性で非天然性のアミノ酸類似体からすべて構成されてもよく、または、一部が天然ペプチドアミノ酸で一部が非天然性のアミノ酸類似体であるキメラ分子であってもよい。模倣物はまた、天然アミノ酸の保存的置換物の任意の量を、このような置換が模倣物の構造および/または活性を実質的に変化させない限り、包含しうる。例えば、模倣物組成物は、それがアーキペリンの結合活性または酵素活性を達成しうるならば、本発明の範囲に含まれる。
【0023】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントのことを意味する;これには、コード領域(リーダーおよびトレーラー)の前および後の領域、さらには個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)も含まれる。
【0024】
「単離された」という用語は、核酸またはタンパク質に適用される場合、核酸またはタンパク質が、天然の状態でそれに付随する他の細胞成分を本質的に含まないことを表す。これは均一な状態にあることが好ましいが、乾燥していても水溶液中にあってもよい。純度および均一性は通常、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学の技法を用いて決定される。調製物中に存在する最も多数を占める種であるタンパク質は、実質的に精製されている。特に、単離された遺伝子は、その遺伝子に隣接して目的の遺伝子以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離されている。「精製された」という用語は、核酸またはタンパク質が、電気泳動ゲル中に本質的には1つのバンドを生じることを表す。これは詳細には、核酸またはタンパク質の純度が、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%であることを意味する。
【0025】
「核酸」という用語は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、および、一本鎖または二本鎖の形態にあるそれらの重合体のことを指す。特に限定されない限り、この用語には、参照核酸と同程度の結合特性を有し、天然ヌクレオチドと類似した様式で代謝される、天然ヌクレオチドの既知の類似体が含まれる。別に指示しない限り、個々の核酸配列には、明示的に指定された配列のほかに、保存的に改変されたそのバリアント(例えば、縮重コドン置換物)および相補的配列が暗黙的に含まれる。詳細には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択した(またはすべての)コドンの第3の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基によって置換された配列を生じさせることによって行いうる(Batzerら、Nucleic Acids Res. 19: 5081 (1991);Ohtsukaら、J. Biol. Chem. 260: 2605-2608 (1985);およびCassolら(1992);Rossoliniら、Mol. Cell. Probes 8: 91-98 (1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、および遺伝子によってコードされるmRNAと互換的に用いられる。
【0026】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書において、アミノ酸残基の重合体を指す目的で互換的に用いられる。これらの用語は、天然アミノ酸重合体および非天然アミノ酸重合体のほか、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸重合体に対しても適用される。本明細書で用いる場合、これらの用語には、アミノ酸残基が共有ペプチド結合によって連結された、完全長タンパク質(すなわち、抗原)を含む任意の長さのアミノ酸鎖が含まれる。
【0027】
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸のほか、天然のアミノ酸と類似した様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物のことも指す。天然のアミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるもののほか、その後に修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸およびO-ホスホセリンなどののこともいう。アミノ酸類似体とは、天然のアミノ酸と同じ基本的な化学構造を有する、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基と結合したα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムのことを指す。この種の類似体は、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持している。「アミノ酸模倣物」とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するものの天然アミノ酸と類似した様式で機能する化合物のことを指す。
【0028】
本明細書ではアミノ酸を、一般的に知られた三文字記号、またはIUPAC-IUBの生化学物質命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨している一文字記号のいずれかによって参照する。ヌクレオチドも同じく、一般的に認められている一文字記号によって参照する。
【0029】
本発明の「アーキペリン核酸」または「アーキペリンポリヌクレオチド配列」とは、膵島細胞で発現されるあるポリペプチドをコードする遺伝子の部分配列性または完全長のポリヌクレオチド配列のことである。本発明のアーキペリン核酸の例には、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5および配列番号:8と実質的に同一な配列が含まれる。同様に、「アーキペリンポリペプチド」または「アーキペリン」とは、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5および配列番号:8によってコードされるポリペプチド(例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:9〜14)と実質的に同一なポリペプチドもしくはその断片、または配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:9〜14と実質的に同じ活性を有するペプチド模倣物組成物のことを指す。
【0030】
「保存的に改変されたバリアント」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に対して適用される。個々の核酸配列に関して、「保存的に改変されたバリアント」とは、同一もしくは本質的に同一なアミノ酸配列をコードする核酸のことを指し、または、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には本質的に同一な配列のことを指す。遺伝暗号の縮重性のために、任意のタンパク質は多数の機能的に同一な核酸によってコードされうる。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべてアラニンというアミノ酸をコードする。このため、コドンによってアラニンが指定されるあらゆる位置で、コードされるポリペプチドを変化させずに、そのコドンを対応する上記のコドンのいずれかに変化させることができる。このような核酸変形物は「サイレント変形物」であり、保存的に改変された変形物の一種である。何らかのポリペプチドをコードする本明細書のあらゆる核酸配列は、その核酸のあらゆる可能なサイレント変形物についても述べている。当業者は、核酸内の各コドン(通常はメチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一な分子を作製しうることを理解すると考えられる。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各々のサイレント変形物は、記載する各配列に黙示的に含まれる。
【0031】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされる配列中の単一のアミノ酸または少数のアミノ酸が改変、付加または除去される、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の配列に対する個々の置換物、欠失物または付加物が、改変によってアミノ酸が化学的に類似したアミノ酸に置換されるような「保存的に改変されたバリアント」であることを理解すると考えられる。機能的に類似したアミノ酸が得られる保存的置換の表も当技術分野で周知である。このような保存的に改変されたバリアントは、本発明の多型バリアント、種間相同体および対立遺伝子に加わるものであり、それらが除外されるわけではない。
【0032】
以下の8つの群はそれぞれ、互いに保存的なアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton、「タンパク質(Proteins)」(1984)を参照されたい)。
【0033】
ポリペプチド構造などの高分子構造は、種々の構成レベルで記載可能である。このような構成に関する一般的な考察については、例えば、Albertsら、「細胞の分子生物学(Molecular Biology of the Cell)」(第3版、1994)、ならびにCantorおよびSchimmel、「生物物理化学 第I部:生体高分子の高次構造(Biophysical Chemistry Part I:The Conformation of Biological Macromolecules)」(1980)を参照されたい。「一次構造」とは、個々のペプチドのアミノ酸配列のことを指す。「二次構造」とは、ポリペプチド内部の局所的に規則立った三次元構造のことを指す。これらの構造は一般にドメインとして知られている。ドメインはポリペプチドの密集単位を形成するポリペプチドの部分であり、一般に50〜350アミノ酸長である。典型的なドメインは、β-シートおよびα-ヘリックスの連鎖などのより小規模な構成物から構成される。「三次構造」とは、ポリペプチド単量体の完全な三次元構造のことを指す。「四次構造」とは、独立した三次単位の非共有的な会合によって形成される三次元構造のことを指す。異方性の項はエネルギー項としても知られている。
【0034】
「配列一致率(percentage of sequence identity)」は、最適なアラインメントがなされた2つの配列を比較域(comparison window)にわたって比較することによって決定され、この際、比較域中のポリヌクレオチド配列の一部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(これは付加も欠失も含まない)と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでよい。この率は、両方の配列に同一の核酸塩基または残基が存在する位置の数を決定して一致する位置の数を求め、一致した位置の数を比較域における位置の総数で除算し、その結果に100を掛けて配列一致率を求めることによって算出される。
【0035】
2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、「同一である」または「一致」率という用語は、一定の比較域にわたって、または以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いるかもしくは手作業によるアラインメントおよび目視検査によって指定された領域にわたって、最大の対応関係が得られるように比較およびアラインメントを行った場合に、同じである、または同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドが指定された比率である(すなわち、指定された領域にわたって60%の同一性、選択的には65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の同一性)、2つまたはそれ以上の配列または部分配列のことを指す。このような配列を「実質的に同一である」と言う。この定義は、被験配列の相補物のことも指す。選択的には、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド長の領域にわたって、またはより好ましくは75〜100アミノ酸長もしくはヌクレオチド長の領域にわたって存在する。
【0036】
2つまたはそれ以上のポリペプチド配列の文脈において、「類似性」または「類似」率という用語は、一定の比較域にわたって、または以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いるかもしくは手作業によるアラインメントおよび目視検査によって指定された領域にわたって、最大の対応関係が得られるように比較およびアラインメントを行った場合に、同じである、または上に定義した8種の保存的アミノ酸置換の定義による類似性のあるアミノ酸残基が指定された比率である(すなわち、指定された領域にわたって60%、選択的には65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の類似性)、2つまたはそれ以上の配列または部分配列のことを指す。このような配列を「実質的に類似している」と言う。選択的には、この同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド長の領域にわたって、またはより好ましくは少なくとも約75〜100アミノ酸長の領域にわたって存在する。
【0037】
配列比較のためには、1つの配列を、被験配列と比較するための参照配列として用いることが一般的である。配列比較アルゴリズムを用いる場合には、被験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列の座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。デフォールトのプログラムパラメーターを用いることもでき、別のパラメーターを指定することもできる。続いて、プログラムのパラメーターに基づいて、参照配列に対する被験配列の配列一致率または類似率を配列比較アルゴリズムで計算する。
【0038】
本明細書で用いる「比較域(comparison window)」は、2つの配列の最適なアラインメントを行った後に、ある配列を同じ数の連続した位置を持つ参照配列と比較しうるような、20〜600個、通常は約50〜約200個、より一般的には約100〜約150個からなる群から選択される数の連続した位置のいずれか1つの区域に対する言及を含んでいる。比較のための配列のアラインメントの方法は当技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、SmithおよびWaterman (1970) Adv. Appl. Math. 2: 482cの局所的相同性アルゴリズムにより、NeedlemanおよびWunsch (1970) J. Mol. Biol. 48: 443の相同性アラインメントアルゴリズムにより、PearsonおよびLipman (1988) Proc. Nat'l. Acad. Sci.USA 85: 2444の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ・インプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)により、または手作業によるアラインメントおよび目視検査によって行うことができる(例えば、Ausubelら、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(1995年補遺)を参照されたい)。
【0039】
有用なアルゴリズムの一例がPILEUPである。PILEUPは漸進的な対形式のアラインメントを用いて一群の関連配列から多数の配列アラインメントを作成し、関連性および配列一致率を提示する。これはアラインメントを作成するために用いたクラスター化の関係を示す樹状図またはデンドログラムのプロットも行う。PILEUPは、FengおよびDoolittle、J. Mol. Evol. 35: 351-360 (1987)の漸進的アラインメント法を単純化したものを用いている。用いている方法は、HigginsおよびSharp、CABIOS 5: 151-153 (1989)と類似している。このプログラムは、それぞれ最大長が5,000ヌクレオチドまたはアミノ酸である最大300個の配列のアラインメントを行うことができる。最も類似した2つの配列の対形式のアラインメントから多数のアラインメント手順が始まり、アラインメントされた2つの配列のクラスターが作成される。続いてこのクラスターを、次に最も関連性の高い配列、またはアラインメントされた配列のクラスターに対してアラインメントを行う。2つの配列クラスターは、個々の2つの配列の対形式のアラインメントを単純に拡張することによってアラインメントを行う。最終的なアラインメントは、一連の漸進的な対形式のアラインメントを行うことによって得られる。このプログラムは、配列を比較する領域に関して特定の配列およびそのアミノ酸またはヌクレオチド座標を指定することにより、ならびにプログラムパラメーターを指定することによって実行される。PILEUPを用いる場合には、以下のパラメーターを用いて参照配列を他の被験配列と比較して、配列一致率を決定する:デフォールトのギャップウェイト(gap weight)(3.00)、デフォールトのギャップ長ウェイト(gap length weight)(0.10)および重み付けエンドギャップ(weighted end gap)。PILEUPは、GCC配列解析ソフトウエアパッケージ、例えば、バージョン7.0(Devereauxら (1984)、Nuc. Acids Res. 12: 387-395)から入手可能である。
【0040】
配列一致率および配列類似性の決定のために適したアルゴリズムの別の例が、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、それぞれAltschulら、Nuc. Acids Res. 25: 3389-3402 (1977)およびAltschulら、J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウエアは米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.n1m.nih.gov/)に公開されている。このアルゴリズムでは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列化した場合に何らかの正値の閾値スコアTと一致する、またはそれを満たす、長さWの短いワードを検索配列中に同定することにより、高スコアの配列ペア(HSP)をまず同定する。Tは近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschulら、前記)。これらの初期の近隣ワードでのヒットは、それらを含む長いHSPを見いだすための検索を開始する源となる。ワードの検索は、累積アラインメントスコアが増加する限り、各配列の両方向に対して延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合にはパラメーターM(一致する残基対に関する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基に関するペナルティスコア;常に<0)を用いて算出する。アミノ酸配列の場合には、累積スコアの算出にスコア行列を用いる。各方向へのワード検索の延長は以下の場合に停止する:累積アラインメントスコアが最大達成値に比べて量Xより低くなった場合:1つもしくは複数の負スコアの残基アラインメントの蓄積のために累積スコアがゼロまたはそれ未満になった場合;または配列のいずれかの端に達した場合。BLASTアルゴリズムのパラメーターであるW、TおよびXは整列化の感度および速度を決定する。BLASTNプログラムは(ヌクレオチド配列の場合)、デフォールトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4および両ストランドの比較を用いる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムはデフォールトとしてワード長3および期待値(E)10、ならびにBLOSUM62スコア行列(HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照)のアラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4および両ストランドの比較を用いる。
【0041】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列の間の類似性に関する統計分析も行う(例えば、KahnおよびAltschul (1993)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787を参照)。BLASTアルゴリズムによって得られる類似性の指標の1つは最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率の指標となる。例えば、ある核酸は、被験核酸と参照核酸との比較による最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の場合に、参照配列と類似しているとみなされる。
【0042】
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるという指標の1つは、以下に述べるように、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対して産生された抗体と免疫学的に交差反応することである。したがって、例えば、2つのペプチドが保存的置換のみの点で異なる場合、ポリペプチドは一般に第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるというもう1つの指標は、以下に述べるように、2つの分子またはその相補物がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であるというさらにもう1つの指標は、配列の増幅に同じプライマーを用いうることである。
【0043】
「選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」という語句は、ある分子の結合、二重鎖形成またはハイブリダイゼーションが、その配列が複合混合物(例えば、全細胞またはライブラリーのDNAまたはRNA)中に存在する場合に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特定のヌクレオチド配列のみに対して起こることを指す。
【0044】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、一般的には核酸の複合混合物において、プローブがその標的部分配列とハイブリダイズするが、他の配列とはハイブリダイズしないと考えられる条件のことを指す。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、環境が異なれば異なると考えられる。配列が長いほど高い温度で特異的にハイブリダイズすると考えられる。核酸のハイブリダイゼーションに関する詳細な手引きは、Tijssen、「生化学および分子生物学の技法−核酸プローブとのハイブリダイゼーション(Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Probes)」、「ハイブリダイゼーションの原理および核酸アッセイの戦略の概要(Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays)」(1993)に記載がある。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度およびpHでの特定の配列の融点(T)よりも約5〜10℃低くなるように選択する。Tは、標的に対して相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pHおよび核酸濃度の下で)である(標的配列が過剰に存在するため、Tでは平衡状態でプローブの50%が占有される)。ストリンジェントな条件は、塩濃度がナトリウムイオン濃度で約1.0M未満、一般的にはナトリウムイオン(または他の塩の)濃度で約0.01〜1.0M、pH7.0〜8.3であり、温度は短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)に関しては少なくとも約30℃であって、(例えば、50ヌクレオチドを上回るもの)に関しては少なくとも約60℃であると考えられる。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの脱安定剤の添加によっても得られる。選択的または特異的なハイブリダイゼーションの場合、陽性シグナルはバックグラウンド値の少なくとも2倍、選択的にはバックグラウンドでのハイブリダイゼーションの10倍である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては以下のものが考えられる:50%ホルムアミド、5×SSCおよび1%SDS、42℃でインキュベートを行い、または5×SSC、1%SDS、65℃でインキュベートを行い、その上で0.2×SSCおよび0.1%SDS、65℃で洗浄する。このような洗浄は5、15、30、60、120分またはさらに多くの分数にわたって行いうる。
【0045】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸も、それらをコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、やはり実質的に同一である。これは例えば、遺伝暗号によって許容される最大のコドン縮重性を用いて生じた核酸のコピーの場合に起こる。このような場合には、核酸は一般に、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」の例には、40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS、37℃の緩衝液中でのハイブリダイゼーション、および1×SSC、45℃での洗浄が含まれる。このような洗浄は、5、15、30、60、120分またはさらに多くの分数にわたって行いうる。陽性のハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。代替的なハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を用いて同様に厳密な条件が得られることを、当業者は容易に認識すると考えられる。
【0046】
「をコードする核酸配列」という語句は、rRNA、tRNAなどの構造RNA、または特定のタンパク質もしくはペプチドの一次アミノ酸配列、またはトランス作用性調節因子の結合部位に関する配列情報を含む核酸のことを指す。この語句には特に、特定の宿主細胞におけるコドン選好性に適合するように導入しうる、1つまたは複数の天然配列の縮重コドン(すなわち、単一のアミノ酸をコードする複数種のコドン)が含まれる。
【0047】
細胞、核酸、タンパク質またはベクターなどに言及して用いる場合、「組換え」という用語は、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入または天然の核酸またはタンパク質の改変によって改変されたこと、または細胞がそのように改変された細胞に由来することを意味する。このため、例えば、組換え細胞は、天然型(非組換え型)の細胞に認められない遺伝子を発現する、または、通常であれば異常発現される、低発現される、もしくは全く発現されないような天然遺伝子を発現する。
【0048】
核酸の部分に言及して用いる場合、「異種」という用語は、核酸が、自然下ではお互いに同じ関係では認められない2つまたはそれ以上の部分配列を含むことを意味する。例えば、核酸は一般に、例えば、1つの源からのプロモーターおよび別の源からのコード領域というように、関連のない遺伝子に由来する2つまたはそれ以上の配列が新たな機能的核酸を生じるように配置された形で、組換え法によって産生される。同様に、異種タンパク質とは、タンパク質が、自然下ではお互いに同じ関係では認められない2つまたはそれ以上の部分配列を含むことを意味する(例えば、融合タンパク質)。
【0049】
「プロモーター」とは、核酸の転写を指令する一連の核酸調節配列と定義される。本明細書で用いるプロモーターには、転写開始部位の近くにある必須核酸配列、例えば、II型ポリメラーゼプロモーターの場合のTATA配列など、が含まれる。選択的には、転写開始部位から数千塩基対もの距離を隔てて位置しうる遠位エンハンサーまたはリプレッサー配列もプロモーターに含まれる。「構成性」プロモーターとは、ほとんどの環境条件および発生条件下で活性のあるプロモーターのことである。「誘導性」プロモーターとは、環境的または発生的な調節の下で活性のあるプロモーターのことである。「機能的に結合した」という用語は、発現調節配列が第2の配列に対応する核酸の転写を指令するような、核酸発現調節配列(プロモーターまたは一連の転写因子結合部位など)と第2の核酸配列との間の機能的結合のことを指す。
【0050】
「発現ベクター」とは、宿主細胞内での特定の核酸の転写を許容する一連の指定された核酸配列を有する、組換え法または合成によって作製された核酸構築物のことである。発現ベクターはプラスミド、ウイルスまたは核酸断片の部分であってもよい。発現ベクターは、プロモーターと機能的に結合した転写用の核酸を含むことが一般的である。
【0051】
「抗体と特異的に(もしくは選択的に)結合する」または「との特異的な(もしくは選択的な)免疫反応性がある」という語句は、タンパク質またはペプチドについて言及する場合、タンパク質および他の生体物質の不均一な集団の存在下でそのタンパク質の存在を決定づける結合反応のことを指す。すなわち、指示されたイムノアッセイ条件下で、指定された抗体は試料中に存在するある特定のタンパク質と結合し、他のタンパク質とは有効な量では結合しない。このような条件下での抗体に対する特異的結合には、特定のタンパク質に対する特異性の点から選択された抗体が必要と思われる。例えば、本発明のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質に対して産生された抗体を選択して、そのタンパク質とは特異的に免疫反応し、多型バリアントを除く他のタンパク質とは反応しない抗体を得ることができる。特定の抗体に対する特異的な免疫反応性のある抗原を選択するためには、さまざまなイムノアッセイ形式を用いうる。例えば、フローサイトメトリーおよびFACS分析または免疫組織化学が、あるタンパク質と特異的に免疫反応するモノクローナル抗体を選択するためにルーチン的に用いられている。特異的免疫反応性の決定に用いうるイムノアッセイの形式および条件の記載については、例えば、HarlowおよびLane、「抗体、実験マニュアル(Antibodies, Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Publications, NY (1988)を参照されたい。通常、特異的または選択的な反応は、バックグラウンドの信号または雑音の少なくとも2倍であると考えられ、より一般的にはバックグラウンドの10〜100倍を上回ると考えられる。
【0052】
アーキペリンの発現またはアーキペリンの活性の「阻害物質」「活性化物質」および「修飾物質」は、アーキペリンの発現またはアーキペリンのシグナル伝達に関するインビトロおよびインビボでのアッセイを用いて同定された、それぞれ阻害性、活性化性または修飾性の分子、例えば、リガンド、アゴニスト、アンタゴニストならびにそれらの相同体および模倣物を指して用いられる。修飾物質には阻害物質および活性化物質が含まれる。阻害物質とは、例えば、アーキペリンの発現を阻害する、またはアーキペリンと結合する、賦活を部分的もしくは完全に阻止する、活性化を軽減する、防止する、遅らせる、不活性化する、脱感作する、もしくはその活性をダウンレギュレートする、またはアーキペリンが結合する受容体と結合する、もしくはそれをダウンレギュレートする化合物、例えばアンタゴニストのことである。活性化物質とは、例えば、アーキペリンの発現の発現を誘導もしくは活性化する、またはアーキペリンと結合する、それを賦活する、増加させる、開口させる、活性化する、促通する、活性化を増強する、感作する、もしくはその活性をアップレギュレートする、またはアーキペリンが結合する受容体と結合する、もしくはそれをダウンレギュレートする化合物、例えばアゴニストのことである。修飾物質には、例えば、アーキペリンと、活性化物質または阻害物質、受容体(Gタンパク質共役受容体(GPCR)を含む)、キナーゼなどと結合するタンパク質との相互作用を変化させる作用物質が含まれる。修飾物質には、天然のアーキペリンリガンドが遺伝的に改変されたもの、例えば、活性が変化したもののほか、天然リガンドおよび合成リガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、低分子量化学物質などが含まれる。阻害物質および活性化物質に関するこの種のアッセイには、例えば、アーキペリンの存在下または非存在下で、修飾性化合物と推定されるものを膵島細胞に対して適用した後に、上記のように、アーキペリンシグナル伝達に対する機能的な影響を判定することが含まれる。阻害の程度を検討するには、活性化物質、阻害物質または修飾物質の候補によって処理したアーキペリンを含む試料またはアッセイ対象を、阻害物質、活性化物質または修飾物質を含まない対照試料と比較する。対照試料(阻害物質で処理していないもの)をアーキペリンの相対活性値100%と指定する。アーキペリンの阻害は、アーキペリンの活性値が対照に比して約80%、選択的には50%または25〜0%である場合に達成される。アーキペリンの活性化は、アーキペリンの活性値が対照に比して110%、選択的には150%、選択的には200〜500%または1000〜3000%の高さである場合に達成される。
【0053】
詳細な説明
I.序論
本発明は、アーキペリン配列と命名された新たなポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列のほか、糖尿病の診断および治療のために本配列を用いる方法を対象とする。本方法は、アーキペリンの発現および活性に対する修飾物質を同定する方法も提供する。このような修飾物質は、1型糖尿病および2型糖尿病、ならびにこうした疾患の病的様相を治療するために有用である。
【0054】
II.本発明に用いるための一般的な組換え核酸方法
本発明の数多くの態様においては、組換え方法を用いて、目的のアーキペリンをコードする核酸の単離およびクローニングを行う。この種の態様は、例えば、タンパク質発現のためもしくはアーキペリンポリペプチド(例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:9〜14)に由来するバリアント、誘導体、発現カセットもしくは他の配列の作製時にアーキペリンポリヌクレオチド(例えば、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5および配列番号:8)を単離するために、アーキペリン遺伝子の発現を観測するために、さまざまな種におけるアーキペリン配列の単離もしくは検出のために、患者における診断目的のために、例えば、アーキペリンにおける変異を検出するため、もしくはアーキペリン核酸もしくはアーキペリンポリペプチドの発現レベルを検出するために用いられる。いくつかの態様において、本発明のアーキペリンをコードする配列は、異種プロモーターと機能的に結合している。1つの態様において、本発明の核酸は、特に例えばヒト、マウス、ラットなどを含む、任意の哺乳動物に由来する。
【0055】
A.一般的な組換え核酸方法
本発明は、組換え遺伝学の分野におけるルーチン的な技法に依拠している。本発明における一般的な使用方法を開示している基本的なテキストには、Sambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning、Laboratory Manual)」(第2版、1989);Kriegler、「遺伝子の導入および発現:実験マニュアル(Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual)」(1990);および「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(Ausubelら編、1994)が含まれる。
【0056】
核酸の場合、サイズはキロベース(kb)または塩基対(bp)のいずれかによって表す。これらは、アガロースゲルまたはアクリルアミドゲルでの電気泳動、配列が決定された核酸、または公表されたDNA配列から得られる推定値である。タンパク質の場合、サイズはキロダルトン(kDa)またはアミノ酸残基数によって表す。タンパク質のサイズは、ゲル電気泳動、配列が決定されたタンパク質、導き出されたアミノ酸配列、または公表されたタンパク質配列から推定される。
【0057】
市販されていないオリゴヌクレオチドは、Beaucage & Caruthers, Tetrahedron Letts. 22: 1859-1862 (1981)によって最初に記載された固相ホスホロアミダイドトリエステル法に従って、Van Devanterら、Nucleic Acid Res. 12: 6159-6168 (1984)に記載された自動合成装置を用いて化学合成することができる。オリゴヌクレオチドの精製は、未変性アクリルアミドゲル電気泳動、またはPearson & Reanier, J. Chrom. 255: 137-149 (1983)に記載された陰イオン交換HPLCによって行う。
【0058】
クローニングされた遺伝子および合成オリゴヌクレオチドの配列は、例えば、Wallaceら、Gene 16: 21-26 (1981)による二本鎖テンプレートのシークエンシング用の連鎖停止法などを用いたクローニングの後に確認することができる。
【0059】
B.所望のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の単離のためのクローニング法
一般に、主題タンパク質をコードする核酸は、コピーDNA(cDNA)またはゲノムDNAをコードするように作製されたDNA配列ライブラリーからクローニングされる。特定の配列の位置はオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせることによって決定可能であり、後者の配列は本明細書に提供する配列から導くことができ(例えば、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5および配列番号:8)、これはPCRプライマー用の基準となる上に、アーキペリン特異的プローブを単離するのに適した領域を規定する。または、配列を発現ライブラリー中にクローニングする場合には、発現された組換えタンパク質を、目的のアーキペリンに対して作製された抗血清または精製抗体を用いて免疫学的に検出することもできる。
【0060】
ゲノムライブラリーおよびcDNAライブラリーの作製およびスクリーニングのための方法は当業者に周知である(例えば、GublerおよびHoffman、Gene 25: 263-269 (1983);BentonおよびDavis、Science, 196: 180-182 (1977);およびSambrook、前記を参照されたい)。島細胞はアーキペリンRNAおよびcDNAを単離するのに適した細胞の一例である。
【0061】
簡潔に述べると、cDNAライブラリーを作製するためには、mRNAを豊富に含む源を選択する必要がある。続いて、mRNAをcDNAにし、組換えベクター中に連結した上で、増殖、スクリーニングおよびクローニングのために組換え宿主にトランスフェクトする。ゲノムライブラリーの場合には、DNAを組織または細胞から抽出し、機械的剪断または酵素消化のいずれかにより、好ましくは約5〜100kbの断片を得る。続いて勾配遠心によって断片を望ましくないサイズのものから分離し、バクテリオファージλベクター中に構築する。これらのベクターおよびファージのパッケージングをインビトロで行い、組換えファージをプラークハイブリダイゼーションによって分析する。コロニーハイブリダイゼーションは、Grunsteinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72: 3961-3965 (1975)に一般的に記載された通りに行う。
【0062】
代替的な1つの方法では、合成オリゴヌクレオチドプライマーの使用とmRNAまたはDNAテンプレートの増幅とを組み合わせる。適したプライマーは、特定のアーキペリン配列、例えば、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5および配列番号:8に記載された配列から設計することができる。このポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法では、目的のタンパク質をコードする核酸を、mRNA、cDNA、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから直接増幅する。制限酵素部位をプライマーに組み入れることができる。ポリメラーゼ連鎖反応または他のインビトロ増幅法は、例えば、特定のタンパク質をクローニングして前駆タンパク質を発現させるため、生理的試料中の本発明のアーキペリンポリペプチドをコードするmRNAの存在を検出するためのプローブとして用いるための核酸を合成するため、核酸シークエンシングのため、またはその他の目的のためにも有用と思われる(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号を参照)。PCR反応によって増幅された遺伝子はアガロースゲルから精製し、適したベクター中にクローニングすることができる。
【0063】
本発明のアーキペリンポリペプチドをコードする遺伝子を哺乳動物組織から同定するために適切なプライマーおよびプローブは、本明細書で提供する配列、特に配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5および配列番号:8から導くことができる。PCRの一般的な概説については、Innisら、「PCRプロトコール:方法および応用への手引き(PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications)」、Academic Press、San Diego (1990)を参照されたい。
【0064】
合成オリゴヌクレオチドを遺伝子の構築に用いることができる。これは、遺伝子のセンス鎖および非センス鎖の両方に相当する、通常は長さ40〜120bpの一連の重複オリゴヌクレオチドを用いて行われる。続いて、これらのDNA断片のアニーリング、連結およびクローニングを行う。
【0065】
本発明のアーキペリンポリペプチドをコードする遺伝子を、発現のために哺乳動物細胞への形質転換導入を行う前に、中間ベクター中にクローニングすることができる。これらの中間ベクターは原核生物ベクターまたはシャトルベクターであることが一般的である。タンパク質は、当業者に周知の標準的な方法を用いて原核生物に発現させることもでき、または以下に述べるように真核生物において発現させることもできる。
【0066】
C.原核生物および真核生物における発現
アーキペリンをコードするcDNAなどの、クローニングした遺伝子の高レベルの発現を得るためには、一般に、アーキペリンをコードするポリヌクレオチドを、転写を指令する強力なプロモーター、転写/翻訳ターミネーターを含み、さらにタンパク質をコードする核酸の場合には翻訳開始のためのリボソーム結合部位も含む発現ベクター中にサブクローニングする。適した細菌プロモーターは当技術分野で周知であり、例えば、Sambrookら、およびAusubelら、に記載されている。アーキペリンを発現させるための細菌発現系としては、例えば、大腸菌、バチルス属細菌およびサルモネラ菌におけるものを用いうる(Palvaら、Gene 22: 229-235 (1983);Mosbachら、Nature 302: 543-545 (1983)。このような発現系のためのキットが市販されている。哺乳動物細胞、酵母および昆虫細胞用の真核生物発現系は当技術分野で周知であり、市販もされている。
【0067】
異種核酸の発現を指令するために用いられるプロモーターの選択は、個々の用途に応じて異なる。プロモーターは、異種転写開始部位に対して、自然下の状況における転写開始部位との距離とほぼ同じ距離を隔てて位置することが好ましい。しかし、当技術分野で知られている通り、この距離はプロモーター機能を損なわずにある程度変えることが可能である。
【0068】
発現ベクターは、プロモーターに加えて、転写単位、または、アーキペリンをコードする核酸の宿主細胞における発現のために必要なすべての追加的な要素を含む発現カセットを含むことが一般的である。このため、典型的な発現カセットは、アーキペリンをコードする核酸配列と機能的に結合したプロモーター、および、転写物の効率的なポリアデニル化のために必要なシグナル、リボソーム結合部位ならびに翻訳終結部位を含む。カセットのその他の要素としては、エンハンサーのほか、ゲノムDNAを構造遺伝子として用いる場合には機能的なスプライスドナー部位およびアクセプター部位を有するイントロンが含まれうる。
【0069】
発現カセットは、プロモーター配列に加えて、効率的な終結がなされるように、構造遺伝子の下流に転写終結領域も含む必要がある。終結領域はプロモーター配列と同じ遺伝子から入手してもよく、異なる遺伝子から入手してもよい。
【0070】
遺伝情報を細胞内に運ぶためにどのような発現ベクターを用いるかは特に重要ではない。真核細胞または原核細胞における発現に用いられる従来のベクターのうち任意のものを用いてよい。標準的な細菌発現ベクターには、pBR322をベースとするプラスミド、pSKF、pET23Dなどのプラスミド、ならびにGSTおよびLacZなどの融合発現系が含まれる。好都合な分離方法が得られるように、c-mycなどのエピトープタグを組換えタンパク質に付加することもできる。
【0071】
真核生物発現ベクターには、SV40ベクター、パピローマウイルスベクター、およびエプスタイン-バーウイルス由来のベクターなどの、真核生物ウイルス由来の調節配列を含む発現ベクターが一般に用いられる。真核生物ベクターのその他の例には、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、および、CMVプロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーターまたは真核細胞における発現に有効なことが示されている他のプロモーターの指令下でタンパク質の発現が可能となる任意の他のベクターが含まれる。
【0072】
真核生物ベクターからのタンパク質の発現を、誘導性プロモーターを用いて調節することもできる。誘導性プロモーターを用いると、発現レベルは、テトラサイクリンまたはエクジソンなどの誘導物質の濃度に拘束される(これらの物質に対する応答因子がプロモーターに組み入れられているため)。一般に、誘導性プロモーターから高レベルの発現が得られるのは誘導物質の存在下のみである;基礎的な発現レベルはごくわずかである。誘導性発現ベクターはしばしば、目的のタンパク質の発現が真核細胞にとって有害である場合に選択される。
【0073】
発現系の中には、チミジンキナーゼおよびジヒドロ葉酸レダクターゼのように遺伝子増幅をもたらすマーカーを備えたものもある。または、ポリヘドリンプロモーターまたは他の強力なバキュロウイルスプロモーターの指令下にあるアーキペリンをコードする配列を有する、昆虫細胞におけるバキュロウイルスベクターなどを用いる、遺伝子増幅を用いない高収率発現系も適している。
【0074】
発現ベクターに一般に含まれる要素には、大腸菌内で作用するレプリコン、組換えプラスミドを有する細菌の選択を可能とする抗生物質耐性をコードする遺伝子、および真核生物配列の挿入を可能とするプラスミドの非必須領域における一意的な制限部位も含まれる。どの抗生物質耐性遺伝子を選択するかは特に重要ではなく、当技術分野で知られた多くの耐性遺伝子の任意のものが適する。真核細胞におけるDNAの複製と干渉しないように、必要に応じて原核生物配列を選択することが好ましい。
【0075】
標準的なトランスフェクション法を用いて、大量のアーキペリンタンパク質を発現する細菌、哺乳動物、酵母または昆虫の細胞系を作製し、続いて標準的な技法を用いてアーキペリンタンパク質を精製する(例えば、Colleyら、J. Biol. Chem. 264: 17619-17622 (1989);「タンパク質精製の手引き(Guide to Protein Purfication)」、Methods in Enzymology、第182巻(Deutscher編、1990)を参照)。真核細胞および原核細胞の形質転換は標準的な技法に従って行う(例えば、Morrison, J. Bact. 132: 349-351 (1977);Clark-CurtissおよびCurtiss、Methods in Enzymology 101: 347-362(Wuら編、1983)を参照)。
【0076】
外来性ヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するには、周知の手法のうち任意のものを用いうる。これらには、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソーム、微量注入、プラスミドベクター、ウイルスベクター、および、ゲノムDNA、cDNA、合成 DNAもしくは他の外来遺伝物質を宿主細胞に導入するためのよく知られた他の方法のうち任意のものを用いることが含まれる(例えば、Sambrookら、前記を参照)。唯一必要なのは、用いる具体的な遺伝子工学手順が、アーキペリンを発現しうる宿主細胞に少なくとも1つの遺伝子を首尾良く導入できるという点のみである。
【0077】
発現ベクターを細胞に導入した後に、アーキペリンの発現を促す条件下でトランスフェクト細胞を培養し、それを、以下に明記する標準的な技法を用いて培養物から回収する。
【0078】
III.本発明のタンパク質の精製
天然型および組換え型のアーキペリンはいずれも、機能アッセイに用いるために精製することができる。天然型アーキペリンポリペプチドは、例えば、島細胞などのマウスもしくはヒトの組織、またはアーキペリンオルソログの任意の他の源から精製することができる。組換えアーキペリンポリペプチドは、任意の適した発現系から精製しうる。
【0079】
硫酸アンモニウムなどの物質による選択的沈殿、カラムクロマトグラフィー、免疫精製法などを含む標準的な技法により、アーキペリンタンパク質を実質的に純粋になるまで精製することもできる(例えば、Scopes, 「タンパク質精製:原理および実践(Protein Purification: Principles and Practice)」(1982);米国特許第4,673,641号;Ausubelら、前記;およびSambrookら、前記を参照)。
【0080】
組換えアーキペリンポリペプチドを精製する場合にはさまざまな方法を用いうる。例えば、分子接着特性が立証されているタンパク質をアーキペリンポリペプチドと可逆的に融合させることができる。適切なリガンドを用いて、アーキペリンポリペプチドを精製カラムに選択的に吸着させ、次にそれをカラムから比較的純粋な形で遊離させることができる。続いて、酵素活性によって融合タンパク質を分離する。イムノアフィニティーカラムを用いてアーキペリンタンパク質を精製することも可能である。
【0081】
A.組換え細菌からのアーキペリンタンパク質の精製
組換えタンパク質を形質転換細菌によって大量に発現させる場合に(通常はプロモーター誘導による、ただし発現は構成性でもよい)、タンパク質が不溶性凝集物を形成することがある。タンパク質封入体の精製に適したプロトコールがいくつかある。例えば、凝集タンパク質(本明細書では以後、封入体と称する)の精製には一般に、通常は約100〜150μg/mlリソソームおよび0.1%ノニデットP-40(非イオン性界面活性剤)を含む緩衝液中でのインキュベーションによる(ただし、これには限定されない)細菌細胞の破壊により、封入体の抽出、分離および/または精製が行われる。細胞浮遊液はPolytronグラインダー(Brinkman Instruments, Westbury, NY)を用いて破砕することができる。または、細胞を氷上で超音波処理することもできる。細菌を可溶化する代替的な方法は、Sambrookら、前記およびAusubelら、前記に記載されており、当業者には明らかであると考えられる。
【0082】
細胞浮遊液を一般的には遠心し、封入体を含むペレットを、封入体を溶解させることはないが洗浄は行える緩衝液、例えば、20mM Tris-HCl(pH 7.2)、1mM EDTA、150mM NaClおよび2%Triton-X 100(非イオン性界面活性剤)中に再懸濁する。できるだけ多くの壊死細胞片を除去するために、洗浄の段階を繰り返すことが必要なこともある。封入体の残りのペレットを、適切な緩衝液(例えば、20mMリン酸ナトリウム、pH 6.8、150mM NaCl)中に再懸濁してもよい。その他の適切な緩衝液は当業者に明らかであると考えられる。
【0083】
洗浄段階の後に、強力な水素受容体であり、かつ強力な水素供与体でもある溶媒(またはこれらの特性の一方をそれぞれが有する溶媒の組み合わせ)の添加によって封入体を可溶化する。続いて、封入体を形成したタンパク質を、適合性のある緩衝液による希釈または透析によって再生させることができる。適した溶媒には、尿素(約4M〜約8M)、ホルムアミド(容積/容積比で少なくとも約80%)および塩酸グアニジン(約4M〜約8M)が含まれる。凝集体形成性タンパク質を可溶化しうるいくつかの溶媒、例えばSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)および70%ギ酸は、タンパク質が非可逆的に変性し、免疫原性および/または活性がなくなる恐れがあるため、この手順に用いるには適していない。塩酸グアニジンおよび類似の薬剤は変性剤であるが、この変性は非可逆的ではなく、変性剤を除去(例えば、透析による)または希釈すると再生が起こり、目的の免疫学的および/または生物学的に活性のあるタンパク質が再構成される。可溶化の後には、標準的な分離法により、タンパク質を他の細菌タンパク質から分離することができる。
【0084】
または、アーキペリンポリペプチドを細菌の周辺質から精製することも可能である。タンパク質が細菌の周辺質に輸出された時点で、細菌の周辺質画分を低温浸透圧ショック、さらには当技術分野で知られた他の方法によって単離することができる(Ausubelら、前記を参照)。周辺質から組換えタンパク質を単離するためには、細菌細胞に遠心処理を行ってペレット化する。このペレットを20%スクロースを含む緩衝液中に再懸濁する。細胞を可溶化するためには、細菌を遠心し、氷冷した5mM MgSO4中にペレットを再懸濁して、氷浴中に約10分間おく。この細胞浮遊液を遠心し、上清をデカントして回収する。上清中に存在する組換えタンパク質は、当業者に知られた標準的な分離法によって宿主タンパク質から分離することができる。
【0085】
B.昆虫細胞からのタンパク質の精製
タンパク質を、例えばFernandezおよびHoeffler、「遺伝子発現系(Gene Expression Systems」(1999)に記載されたような真核生物遺伝子発現系から精製することもできる。いくつかの態様において、バキュロウイルス発現系は本発明のアーキペリンタンパク質またはその他のタンパク質を単離するために用いられる。組換えカブラオウイルス(cabulaovirus)は一般に、バキュロウイルスのポリへドロンコード配列を、発現させようとする遺伝子(例えば、アーキペリンポリヌクレオチド)で置き換えることによって作製される。ポリへドロン遺伝子を欠くウイルスは特有のプラーク形態を有しているため、認識が容易である。いくつかの態様において、組換えバキュロウイルスは目的のポリヌクレオチドを、ポリヌクレオチドがポリへドロンプロモーターと機能的に結合するように、導入ベクター(例えば、pUCをベースとするベクター)中にまずクローニングすることによって作製される。導入ベクターを野生型DNAとともに昆虫細胞(例えば、Sf9細胞、Sf21細胞またはBT1-TN-5B1-4細胞)にトランスフェクトして、野生型ウイルスDNA中のポリへドロン遺伝子と目的のポリヌクレオチドとの相同組換えおよび置換を生じさせる。続いてウイルスを生じさせ、プラークを精製することができる。昆虫細胞のウイルス感染によってタンパク質発現が起こる。発現されたタンパク質は、分泌される場合には細胞上清から収集でき、細胞内にある場合には細胞可溶化物から収集できる。例えば、Ausubelら、およびFernandezおよびHoeffler、前記を参照されたい。
【0086】
C.タンパク質を精製するための標準的なタンパク質分離法
1.溶解性による分別
しばしば最初の工程として、さらにタンパク質混合物が複合体である場合には、最初に塩分別を行うことにより、不要な宿主細胞タンパク質(または細胞培養液に由来するタンパク質)の多くを目的の組換えタンパク質から分離することができる。分別に用いられる塩は、例えば硫酸アンモニウムでありうる。硫酸アンモニウムは、タンパク質混合物中の水の量を効果的に減らすことによってタンパク質を沈殿させる。そこでタンパク質は溶解性の点から沈殿する。タンパク質の疎水性が高いほど、より低い硫酸アンモニウム濃度で沈殿する可能性が高い。典型的なプロトコールでは、タンパク質溶液に硫酸アンモニウム飽和溶液を添加し、その結果、硫酸アンモニウム濃度が20〜30%となるようにする。これによって最も疎水性の高いタンパク質が沈殿すると考えられる。次に沈殿物を廃棄し(目的のタンパク質が疎水性でない場合)、硫酸アンモニウムを上清に添加し、目的のタンパク質が沈殿することが知られた濃度にする。続いて、沈殿物を緩衝液に溶解し、必要であれば過剰な塩を透析または透析濾過によって除去する。低温エタノール沈殿法などの、タンパク質の溶解性に依拠するその他の方法も当業者に知られており、複合タンパク質混合物の分別に用いることができる。
【0087】
2.サイズの差に基づく濾過
算出された分子量に基づき、種々の孔径の膜(例えば、Amicon社またはMillipore社の膜)を通過させる限外濾過を用いて、それよりもサイズが大きいまたは小さいタンパク質を単離することができる。第1の工程として、分子量カットオフ値が目的のタンパク質の分子量よりも低い孔径の膜を通してタンパク質混合物の限外濾過を行う。続いて、限外濾過後の保持物質に、分子量カットオフ値が目的のタンパク質の分子量よりも高い膜に対する限外濾過を行う。組換えタンパク質はこの膜を通過して濾液に入ると考えられる。続いて、以下に述べるように濾液のクロマトグラフィーを行うことができる。
【0088】
3.カラムクロマトグラフィー
目的のタンパク質を、そのサイズ、正味の表面電荷、疎水性および異種分子に対する親和性に基づいて他のタンパク質から分離することもできる。さらに、タンパク質に対して産生された抗体をカラム基質に結合させて、タンパク質の免疫精製を行うこともできる。これらの方法はすべて当技術分野で周知である。
【0089】
クロマトグラフィー法を任意の規模で、しかもさまざまな製造者(例えば、Pharmacia Biotech)による装置を用いて行えることは、当業者には明らかであると考えられる。
【0090】
IV.遺伝子発現の検出
当業者は、アーキペリンポリヌクレオチドの発現の検出には多くの用途があることを認識すると考えられる。例えば、本明細書で考察するように、患者におけるアーキペリンレベルの検出は、糖尿病を、または糖尿病の病的な影響の少なくともいくつかに対する素因を診断するために有用である。
【0091】
核酸ハイブリダイゼーション法を用いた特定のDNAおよびRNAのさまざまな測定方法が当業者に知られている(Sambrook、前記を参照)。いくつかの方法は電気泳動分離を用いるが(例えば、DNAの検出のためのサザンブロット法、およびRNAの検出のためのノーザンブロット法)、DNAおよびRNAの測定を電気泳動分離を用いずに行うこともできる(例えば、ドットブロットによる)。ゲノムDNA(例えば、ヒトからのもの)のサザンブロット法は、本発明のアーキペリンポリペプチドに影響を及ぼす遺伝的障害の存在を検出するための制限断片長多型(RFLP)に関するスクリーニングに用いることができる。
【0092】
核酸ハイブリダイゼーションの形式の選択は特に重要ではない。さまざまな核酸ハイブリダイゼーション形式が当業者に知られている。例えば、一般的な形式にはサンドイッチアッセイおよび競合アッセイまたは置換(displacement)アッセイが含まれる。ハイブリダイゼーション法の概論は、HamesおよびHiggins、「核酸ハイブリダイゼーション、実践的アプローチ(Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach)」、IRL Press (1985);GallおよびPardue、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 63: 378-383 (1969);ならびにJohnら、Nature, 223: 582-587 (1969)に記載されている。
【0093】
ハイブリダイゼーション複合体の検出には、シグナルを生成する複合体が、標的とプローブポリヌクレオチドまたは核酸との二重鎖と結合する必要があると思われる。一般に、この種の結合は、リガンド結合プローブとシグナルが結合したアンチリガンド(anti-ligand)との間のような、リガンドとアンチリガンドとの相互作用によって生じる。シグナル生成複合体の結合は、超音波エネルギーに対する曝露による促進にも容易に適用しうる。
【0094】
標識により、ハイブリダイゼーション複合体の間接的な検出も可能となる。例えば、標識がハプテンまたは抗原である場合には、抗体を用いることによって試料を検出しうる。これらの系において、シグナルは、蛍光分子もしくは酵素分子が抗体と結合することにより、または場合によっては放射性標識との結合によって生成される(例えば、Tijssen, 「酵素イムノアッセイの実践および理論(Practice and Theory of Enzyme Immunoassays)」、「生化学および分子生物学における実験手法(Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology)」、Burdonおよびvan Knippenberg編、Elsevier (1985)、pp. 9-20を参照)。
【0095】
プローブは一般に、同位体、発色団、発光団(lumiphore)、色素体の場合のように直接標識されるか、後にストレプトアビジン複合体が結合するビオチンの場合のように間接的に標識される。このため、本発明のアッセイに用いられる検出可能な標識は、一次標識(標識が直接検出可能な因子を含むか、直接検出可能な因子を生成する場合)でも二次標識(免疫学的標識において一般的なように、検出される標識が一次標識と結合する場合)でもよい。一般に、標識されたシグナル核酸がハイブリダイゼーションの検出に用いられる。相補的核酸またはシグナル核酸は、ハイブリダイズしたポリヌクレオチドの存在の検出に通常用いられるいくつかの方法の任意の1つによって標識しうる。最も一般的な検出方法は、H、125I、35S、14Cまたは32Pで標識したプローブなどを用いるオートラジオグラフィーの使用である。
【0096】
他の標識には、例えば、標識された抗体と結合するリガンド、蛍光団、化学発光物質、酵素、および、標識されたリガンドに対する特異的な結合対のメンバーとして作用する抗体が含まれる。標識、標識手順および標識の検出に関する手引きは、PolakおよびVan Noorden、「免疫細胞化学入門(Introduction to Immunocytochemistry)」第2版、Springer Verlag、NY (1997);ならびにMolecular Probes, Inc.によって刊行された総合的なハンドブックおよびカタログであるHaugland「蛍光プローブおよび研究用化学物質のハンドブック(Handbook of Fluoroscent Probes and Research Chemicals)」(1996)に記載されている。
【0097】
一般には、検出用試薬の標識の検出には、特定のプローブまたはプローブの組み合わせを観測する検出器を用いる。典型的な検出器は、分光光度計、光電管および光ダイオード、顕微鏡、シンチレーションカウンター、カメラ、フィルムなど、さらにはそれらの組み合わせを含む。適した検出器の例は、当業者に知られたさまざまな販売元から広く入手可能である。一般的には、結合した標識部分(labeling moiety)を含む基質の光学画像を以後のコンピュータ解析のためにデジタル化する。
【0098】
最も一般的には、例えばアーキペリンRNAの量は、検出試薬の結合によって固体支持体に固定された標識の量を定量することによって測定される。一般に、インキュベーション中に修飾物質が存在することにより、固体支持体と結合した標識の量は、修飾物質を含まない対照インキュベーションと比べて、または個々の反応の種類に対して確立されたベースラインと比べて、増加または減少すると考えられる。標識の検出および定量のための手段は当業者に周知である。
【0099】
いくつかの態様においては、標的核酸またはプローブを固体支持体に対して固定化する。本発明のアッセイに用いるのに適した固体支持体は当業者に周知である。本明細書で用いる場合、固体支持体とは、実質的に固定された配置にある材料のマトリックスのことである。
【0100】
さまざまな自動化固相アッセイ法も適している。例えば、Affymetrix, Inc.(Santa Clara, CA)から入手しうる超大規模固定化ポリマーアレイ(VLSIPS(商標))を、同一の調節経路に関与する複数の遺伝子の発現レベルの変化を同時に検出するために用いることができる。Tijssen、前記.、Fodorら (1991) Science, 251: 767-777;Sheldonら (1993) Clinical Chemistry 39(4) : 718-719およびKozalら (1996) Nature Medicine 2(7): 753-759を参照されたい。
【0101】
検出は例えば、二重鎖核酸と特異的に結合する標識された検出用部分(例えば、RNA-DNA二重鎖に対して特異的な抗体)を用いて行いうる。1つの例では、抗体が酵素と結合した、DNA-RNAヘテロ二重鎖を認識する抗体を用いる(通常、組換えまたは共有化学結合による)。抗体は、酵素がその基質と反応して検出可能な生成物が生じた場合に検出される。Coutleeら(1989) Analytical Biochemistry 181: 153-162;Bogulavski (1986)ら、J. Immunol. Methods 89: 123-130;Prooijen-Knegt (1982) Exp. Cell Res. 141:397-407;Rudkin (1976) Nature 265: 472-473、Stollar (1970) PNAS 65: 993-1000;Ballard (1982) Mol. Immunol. 19: 793-799;PisetskyおよびCaster (1982) Mol. Immunol. 19:645-650;Viscidiら(1988) J Clin. Microbial. 41: 199-209;ならびにKineyら(1989) J. Clin. Microbiol. 27: 6-12は、ホモ二重鎖およびヘテロ二重鎖を含むRNA二重鎖に対する抗体を記載している。DNA:RNAハイブリッドに対して特異的な抗体を含むキットは、例えば、Digene Diagnostics, Inc.(Beltsville, MD)から入手可能である。
【0102】
入手可能な抗体に加えて、当業者は、核酸二重鎖に対して特異的な抗体を既存の技法を用いて容易に作製することができ、または商業的もしくは公的に入手可能な抗体を改変することもできる。以上に言及した技術に加えて、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製するための一般的な方法が当業者に知られている(例えば、Paul(編)、「基礎免疫学第3版(Fundamental Immunology, Third Edition)」Raven Press, Ltd., NY (1993);Coligan, 「免疫学における最新プロトコール(Current Protocols in Immunology)」、Wiley/Greene, NY (1991);HarlowおよびLane、「抗体:実験マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)」Cold Spring Harbor Press, NY (1989);Stitesら(編)「基礎および臨床免疫学(Basic and Clinical Immunology)」(第4版)Lange Medical Publications, Los Altos, CAおよびそこに引用された参考文献;Goding、「モノクローナル抗体:原理および実践(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice)」(第2版)Academic Press, New York, NY, (1986);ならびにKohlerおよびMilstein、Nature 256: 495-497 (1975)を参照されたい)。抗体調製のために適した他の技法には、ファージベクターまたは類似のベクターにおける組換え抗体ライブラリーの選択が含まれる(例えば、Huseら、Science 246: 1275-1281 (1989);およびWardら、Nature 341: 544-546 (1989)を参照)。特異的なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体ならびに抗血清は、通常、少なくとも約0.1μMのK、好ましくは少なくとも約0.01μMまたはそれ未満、最も一般的かつ好ましくは0.001μMまたはそれ未満のKで結合すると考えられる。
【0103】
本発明に用いられる核酸は、陽性プローブでも陰性プローブでもよい。陽性プローブはその標的と結合し、二重鎖形成の存在が標的の存在の証拠となる。陰性プローブは疑われる標的とは結合せず、二重鎖形成が存在しないことが標的の存在の証拠となる。例えば、野生型特異的な核酸プローブまたはPCRプライマーの使用は、目的のヌクレオチド配列のみが存在する場合、アッセイ試料における陰性プローブとして役立ちうる。
【0104】
ハイブリダイゼーションアッセイの感度を、検出しようとする標的核酸を増加させる核酸増幅システムを用いることによって高めることもできる。このようなシステムの例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)システムおよびリガーゼ連鎖反応(LCR)システムが含まれる。当技術分野で記載されているその他の方法には、核酸配列に基づく増幅(NASBA, Cangene, Mississauga, Ontario)およびQ Betaレプリカーゼシステムがある。これらのシステムは、選択した配列が存在する場合にのみPCRプライマーまたはLCRプライマーが伸長または連結するように設計されている場合、変異体を直接同定するために用いうる。または、選択した配列を、例えば非特異的なPCRプライマーを用いて全体的に増幅し、増幅された標的領域をその後、変異の指標となる特定の配列に対して検索することもできる。
【0105】
本発明の核酸の発現レベルを決定するための代替的な手段の一つは、インサイチューハイブリダイゼーションである。インサイチューハイブリダイゼーションアッセイはよく知られており、Angererら、Methods Enzymol. 152: 649-660 (1987)に概論が記載されている。インサイチューハイブリダイゼーションアッセイでは、細胞、好ましくは島細胞などのヒト膵臓細胞を固体支持体、一般的にはスライドグラスに対して固定する。DNAを検索しようとする場合には、細胞を熱またはアルカリによって変性させる。続いて細胞を、標識された特異的プローブのアニーリングを可能にする中程度の温度のハイブリダイゼーション溶液と接触させる。プローブは放射性同位体または蛍光レポーターによって標識することが好ましい。
【0106】
V.アーキペリンの免疫学的検出
核酸ハイブリダイゼーション技術を用いたアーキペリン遺伝子および遺伝子発現の検出のほかに、イムノアッセイを用いてアーキペリンポリペプチドを検出することも可能である。イムノアッセイを用いて、アーキペリンポリペプチドを定性的または定量的に分析することができる。適用可能な技術に関する一般的な概要は、HarlowおよびLane、「抗体:実験マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)」(1988)に記載がある。
【0107】
A.標的タンパク質に対する抗体
目的のタンパク質と特異的に反応するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の作製のための方法は当業者に知られている(例えば、Coligan、前記;HarlowおよびLane、前記;Stitesら、前記およびそれに引用された参考文献;Goding、前記;ならびにKohlerおよびMilstein、Nature, 256: 495-497 (1975)を参照されたい)。このような技法には、ファージベクターまたは類似のベクターにおける組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体の調製が含まれる(例えば、Huseら、前記;およびWardら、前記を参照のこと)。例えば、イムノアッセイに用いるための抗血清を作製するためには、本明細書の記載のように、目的のタンパク質またはその抗原性断片を単離する。例えば、組換えタンパク質を形質転換細胞系において産生させる。マウスまたはウサギの近交系に対して、フロイントアジュバントなどの標準的アジュバントおよび標準的な免疫処置プロトコールを用いてタンパク質の免疫処置を行う。または、本明細書に開示する配列に由来し、担体タンパク質と結合させた合成ペプチドを免疫原として用いることもできる。
【0108】
ポリクローナル血清を収集し、イムノアッセイ、例えば、固体支持体上に固定した免疫原を用いる固相イムノアッセイにおいて、免疫原に対する力価測定を行う。力価が10またはそれ以上であるポリクローナル抗血清を選択し、競合結合イムノアッセイを用いて、非アーキペリンタンパク質、または場合によっては他の相同タンパク質との交差反応性を調べる。特異的なポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は通常、少なくとも約0.1mMのK、より一般的には少なくとも約1μM、好ましくは少なくとも約0.1μMまたはそれ未満、最も好ましくは0.01μMまたはそれ未満のKで結合すると考えられる。
【0109】
抗体、例えば組換え抗体、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の調製には、当技術分野で知られた多くの技法を用いることができる(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256: 495-497 (1975);Kozborら、Immunology Today 4: 72 (1983);Coleら、pp.77-96、「モノクローナル抗体および癌療法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」、Alan R. Liss, Inc. (1985);Coligan、「免疫学における最新プロトコール(Current Protocols in Immunology)」 (1991);Harlow & Lane、「抗体、実験マニュアル(Antibodies: Laboratory Manual)」(1988);ならびにGoding、「モノクローナル抗体: 原理および実践(Monoclonal Antibodies: PrinciplesおよびPractice)」(第2版、1986)を参照されたい)。目的の抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を細胞からクローニングし、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子をハイブリドーマからクローニングして、組換えモノクローナル抗体の作製に用いることができる。モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーをハイブリドーマまたは形質細胞から作製することもできる。重鎖および軽鎖の遺伝子産物のランダムな組み合わせにより、抗原特異性の異なる抗体の大規模プールが生じる(例えば、Kuby, 「免疫学(Immunology)」(第3版、1997)を参照)。一本鎖抗体または組換え抗体の作製のための技法(米国特許第4,946,778号、米国特許第4,816,567号)は、本発明のポリペプチドに対する抗体の作製に応用しうる。また、トランスジェニックマウスまたは他の哺乳動物などの他の生物を、ヒト化抗体またはヒト抗体を発現させるために用いることもできる(例えば, 米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号、Marksら、Bio/Technology 10: 779-783 (1992);Lonbergら、Nature 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature 368: 812-13 (1994);Fishwildら、Nature Biotechnology 14: 845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14: 826 (1996);およびLonberg & Huszar、Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93 (1995)を参照されたい)。または、選択した抗原と特異的に結合する抗体およびヘテロメリックFab断片を同定するためにファージディスプレイ技術を用いることもできる(例えば、McCaffertyら、Nature 348: 552-554 (1990);Marksら、Biotechnology 10: 779-783 (1992)を参照されたい)。抗体を二重特異性のあるもの、すなわち、2つの異なる抗原を認識しうるものとして作製することもできる(例えば、国際公開公報第93/08829号、Trauneckerら、EMBO J. 10: 3655-3659 (1991);およびSureshら、Methods in Enzymology 121: 210 (1986)を参照のこと)。抗体が、ヘテロ結合物(heteroconjugate)、例えば共有結合した2つの抗体、またはイムノトキシンであってもよい(例えば、米国特許第4,676,980号、国際公開公報第91/00360号;国際公開公報第92/200373号;および欧州特許第03089号を参照のこと)。
【0110】
非ヒト抗体のヒト化または霊長類化のための方法は当技術分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、ヒト以外の源から導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒト性アミノ酸残基はしばしば移入残基と呼ばれ、これらは移入可変ドメインから採られることが一般的である。ヒト化は、齧歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに用いることにより、本質的にはWinterらの方法に従って行いうる(例えば、Jonesら、Nature 321: 522-525 (1986);Riechmannら、Nature 332: 323327 (1988);Verhoeyenら、Science 239: 1534-1536 (1988)およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593-596 (1992)を参照)。したがって、この種のヒト化抗体は、完全なヒト可変ドメインとはほど遠い箇所が非ヒト種由来の対応する配列によって置換されたキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体はいくつかのCDR残基、およびおそらくはいくつかのFR残基が、齧歯類抗体における類似部位からの残基によって置換されたヒト抗体であることが一般的である。
【0111】
免疫原を含むさまざまなタンパク質を、目的のタンパク質と特異的または選択的に反応する抗体の作製に用いることができる。組換えタンパク質は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の作製のために好ましい免疫原である。天然のタンパク質を純粋または不純な状態で用いてもよい。本明細書に記載したタンパク質配列を用いて作製した合成ペプチドを、そのタンパク質に対する抗体の作製のための免疫原として用いることもできる。組換えタンパク質を真核細胞または原核細胞において発現させ、上に一般的に述べた通りに精製することができる。続いて、抗体を産生しうる動物の体内にその生成物を注入する。タンパク質を測定するためのイムノアッセイに後で用いるために、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれを作製してもよい。
【0112】
ポリクローナル抗体の作製方法は当業者に周知である。簡潔に述べると、免疫原、好ましくは精製タンパク質をアジュバントと混合した上で、動物に免疫処置を行う。検査採血を行い、目的のアーキペリンに対する反応性の力価を測定することにより、免疫原調製物に対する動物の免疫応答を観測する。免疫原に対して適切な高い力価を持つ抗体が得られた時点で、動物から血液を採取し、抗血清を調製する。必要に応じて、タンパク質に反応する抗体を濃縮するために抗血清をさらに分画することもできる(HarlowおよびLane、前記を参照)。
【0113】
モノクローナル抗体は、当業者によく知られた種々の技法によって入手しうる。通常は、望ましい抗原による免疫処置を受けた動物から得た脾細胞を、一般的には骨髄腫細胞との融合によって不死化させる(KohlerおよびMilstein、Eur. J. Immunol. 6: 511-519 (1976)を参照)。代替的な不死化の方法には、エプスタイン-バーウイルス、癌遺伝子もしくはレトロウイルスによる形質転換、または当技術分野で周知の他の方法が含まれる。単一の不死化細胞から生じたクローンを抗原に対する望ましい特異性および親和性に関してスクリーニングし、このような細胞によって産生されるモノクローナル抗体の収量を、脊椎動物宿主の腹腔内への注射を含む種々の技法によって高めることもできる。または、Huseら、Science 246: 1275-1281 (1989)に概要が示された一般的なプロトコールに従ってヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体またはその結合性断片をコードするDNA配列を単離することもできる。
【0114】
標的タンパク質に特異的な抗体がひとたび得られれば、臨床医が利用しうる定性的および定量的な結果が得られる種々のイムノアッセイ法によってそのタンパク質を測定することができる。免疫学的手順およびイムノアッセイ手順の概説については、Stites、前記を参照されたい。さらに、本発明のイムノアッセイを、Maggio, 「エンザイムイムノアッセイ(Enzyme Immunoassay)」、CRC Press, Boca Raton, Florida (1980);Tijssen、前記;ならびにHarlowおよびLane、前記に詳細に概説がなされた複数の方式のうち任意の形式で行うこともできる。
【0115】
ヒト試料中の標的タンパク質を測定するためのイムノアッセイに、本明細書に記載の配列(例えば、配列番号:1および配列番号:8)によって少なくとも一部がコードされるタンパク質(例えば、例えば、配列番号:2、配列番号:7および配列番号:9〜14)またはその断片に対して産生されたポリクローナル抗血清を用いてもよい。この抗血清は非アーキペリンタンパク質に対する交差反応性が低くなるように選択し、イムノアッセイに用いる前にこの種の交差反応性を免疫吸着によって除去する。
【0116】
特定の種に由来する目的のアーキペリンと特異的に結合するポリクローナル抗体は、アーキペリンのホモログを用いて交差反応性抗体を取り除くことによって作製しうる。類似した様式で、他のアーキペリンを用いて交差反応性抗体を取り除くことにより、多数のアーキペリン遺伝子を有する生物において、特定のアーキペリン(例えば、ヒトアーキペリンポリペプチド)に対して特異的な抗体を入手することもできる。
【0117】
B.免疫学的結合アッセイ法
いくつかの態様において、目的のタンパク質は、よく知られたさまざまな免疫学的結合アッセイのうち任意のものを用いて検出および/または定量化される(例えば、米国特許第4,366,241号;第4,376,110号;第4,517,288号;および第4,837,168号を参照)。一般的なイムノアッセイの概説については、Asai,「細胞生物学における方法第37巻:細胞生物学における抗体(Methods in Cell Biology Volume 37: Antibodies in Cell Biology)」、Academic Press, Inc. NY (1993);Stites、前記を参照されたい。免疫学的結合アッセイ(またはイムノアッセイ)には一般に、分析物(この場合には、本発明のアーキペリン、またはその抗原性部分配列)と特異的に結合し、しばしばそれを固定化する「捕捉剤(capture agent)」が用いられる。捕捉剤は分析物と特異的に結合する部分(moiety)である。いくつかの態様において、捕捉剤は、例えば、本発明のアーキペリンポリペプチドと特異的に結合する抗体である。抗体(例えば、抗アーキペリン抗体)を、当業者に周知の数多くの手段および上記の手段のうち任意のものを用いて作製してもよい。
【0118】
イムノアッセイには、捕捉剤および分析物によって形成された複合体と特異的に結合し、それを標識する標識剤(labeling agent)もしばしば用いられる。標識剤はそれ自体が抗体/抗原複合体を含む部分の1つであってもよい。すなわち、標識剤が標識されたアーキペリンポリペプチドまたは標識された抗アーキペリン受容体抗体であってもよい。または、標識剤が、抗体/タンパク質複合体と特異的に結合する、別の抗体などの第3の部分であってもよい。
【0119】
いくつかの態様において、標識剤は、標識を有する第2の抗体である。または、第2の抗体は標識を有しておらず、その代わりに、第2の抗体の由来となった種の抗体に対して特異的な標識された第3の抗体が結合していてもよい。第2の抗体は、酵素標識ストレプトアビジンなどの第3の標識分子が特異的に結合しうる、ビオチンなどの標識可能な部分によって修飾することができる。
【0120】
免疫グロブリン定常領域と特異的に結合しうるプロテインAまたはプロテインGなどの他のタンパク質を標識剤としても用いてもよい。これらのタンパク質は、連鎖球菌の細胞壁の通常の構成要素である。それらは、さまざまな種に由来する免疫グロブリン定常領域に対して強い非免疫原性反応性を示す(例えば、概論については、Kronvalら、J. Immunol. 111: 1401-1406 (1973);およびAkerstromら、J. Immunol. 135: 2589-2542 (1985)を参照)。
【0121】
アッセイ全体を通じて、試薬の各々の組み合わせを用いた後には、インキュベーションおよび/または洗浄の工程が必要と思われる。インキュベーションの工程は、約5秒から数時間、好ましくは約5分から約24時間の範囲でさまざまでありうる。インキュベーション時間は、アッセイ形式、分析物、溶液の容積、濃度などに依存すると考えられる。通常、アッセイは室温で行うが、10℃〜40℃といった一定範囲の温度で行うこともできる。
【0122】
1.非競合アッセイ形式
組織試料から目的のタンパク質を検出するためのイムノアッセイは競合的でも非競合的でもよい。非競合イムノアッセイは、捕捉された分析物(この場合にはタンパク質)の量を直接測定するアッセイである。例えば、1つの好ましい「サンドイッチ」アッセイでは、捕捉剤(例えば、抗アーキペリン抗体)を、それを固定化するための固体基質に対して直接結合させることができる。続いて、これらの固定化された抗体は、被験試料中に存在するアーキペリンを捕捉する。このようにして固定化されたアーキペリンに対して、次に、標識を有する第2の抗アーキペリン受容体抗体などの標識剤を結合させる。または、第2の抗体には標識がなく、その代わりに、第2の抗体の由来となった種の抗体に対して特異的な第3の抗体をそれと結合させてもよい。第2の抗体は、酵素標識ストレプトアビジンなどの第3の標識分子が特異的に結合しうる、ビオチンなどの標識可能な部分によって修飾することができる。
【0123】
2.競合アッセイ形式
競合アッセイでは、試料中に存在する分析物によって捕捉剤(すなわち、抗体)から解離した(競合に敗れた)、添加した(外因性の)分析物(すなわち、目的のアーキペリン)の量を測定することにより、試料中に存在する標的タンパク質(分析物)の量を間接的に測定する。1つの競合アッセイでは、既知の量の目的のタンパク質を試料に添加し、続いて試料を捕捉剤、この場合には目的のアーキペリンと特異的に結合する抗体と接触させる。抗体と結合したアーキペリンの量は、試料中に存在するアーキペリンの濃度と反比例する。いくつかの態様では、抗体を固体基質上に固定化する。抗体と結合したアーキペリンの量は、アーキペリンタンパク質/抗体複合体中に存在する主題タンパク質の量を測定することにより、または、複合体を形成していない残ったタンパク質の量を測定することによって決定しうる。標識したアーキペリンタンパク質分子を用意することにより、アーキペリンタンパク質の量を検出することもできる。
【0124】
競合アッセイのもう1つの例はハプテン阻止アッセイである。このアッセイでは、既知の分析物、この場合には標的タンパク質を固体基質上に固定化する。既知の量の抗アーキペリン抗体を試料に添加し、次にこの試料を固定された標的と接触させる。この場合には、固定されたアーキペリンタンパク質と結合した抗アーキペリン抗体の量は、試料中に存在するアーキペリンタンパク質の量と反比例する。この場合も、固定化された抗体の量は、固定化された抗体の割合または溶液中に残った抗体の割合のいずれかを検出することによって検出しうる。検出は抗体が標識される場合には直接的でよく、上記の抗体と特異的に結合する標識部分を後に添加する場合には間接的でよい。
【0125】
競合結合形式のイムノアッセイを、交差反応性の決定に用いることもできる。例えば、本明細書に提供する配列によってコードされるタンパク質を、固体支持体上に固定化することができる。固定化された抗原に対する抗血清の結合と競合するタンパク質をアッセイ系に添加する。上記のタンパク質が、固定化されたタンパク質に対する抗血清の結合と競合する能力を、本明細書に提供するいずれかの配列によってコードされるタンパク質のものと比較する。上記のタンパク質に関する交差反応性の比率を、標準的な計算を用いて算出する。上に挙げた添加したタンパク質のそれぞれとの交差反応性が10%未満であるような抗血清を選択してプールする。交差反応性のある抗体は、選択的には、例えば近縁性の低いホモログといった考慮されたタンパク質による免疫吸着により、プールした抗血清から除去される。
【0126】
免疫吸着がなされてプールされた抗血清は次に、おそらく本発明のタンパク質であると考えられる第2のタンパク質を、免疫原タンパク質と比較するために、上記の競合結合イムノアッセイに用いられる。この比較を行うためには、この2つのタンパク質を広範囲の濃度にわたって互いにアッセイし、抗血清と固定されたタンパク質との結合の50%を抑制するのに必要な各タンパク質の量を決定する。必要な第2のタンパク質の量が、必要な本明細書の蛋白質によって部分的にコードされるタンパク質の量の10分の1未満であれば、第2のタンパク質は標的タンパク質からなる免疫原に対して産生された抗体と特異的に結合するといわれる。
【0127】
3.その他のアッセイ形式
いくつかの態様においては、ウエスタンブロット(イムノブロット)分析が、試料中の本発明のアーキペリンの存在を検出および定量化するために用いられる。この技法は一般に、試料のタンパク質を分子量に基づいてゲル電気泳動によって分離し、分離されたタンパク質を適した固体支持体(ニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルターまたは誘導体化ナイロンフィルターなど)に移行させた上で、目的のタンパク質と特異的に結合する抗体とともに試料をインキュベートすることを含む。例えば、抗アーキペリン抗体は、固体支持体上のアーキペリンと特異的に結合する。これらの抗体を直接標識してもよく、または、目的のタンパク質と特異的に結合する標識抗体(例えば、標識したヒツジ抗マウス抗体)を用いて後に検出してもよい。
【0128】
その他のアッセイ形式には、特定の分子(例えば、抗体)と結合し、封入された試薬またはマーカーを放出するように設計されたリポソームを用いるリポソームイムノアッセイ(LIA)が含まれる。続いて、放出された化学物質を標準的な技法に従って検出する(Monroeら、Amer. Clin. Prod. Rev. 5: 34-41 (1986)を参照)。
【0129】
4.標識
アッセイに用いる個々の標識または検出可能基は、アッセイに用いる抗体の特異的結合に大きな妨げとならない限り、本発明の特に重要な面ではない。検出可能基は、検出可能な物理的または化学的特性を有する任意の物質でありうる。このような検出可能な標識はイムノアッセイの分野では十分に開発されており、通常、このような方法に有用なほとんどすべての標識を本発明に適用することができる。すなわち、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電子的、工学的または化学的な手段によって検出可能な任意の組成物である。本発明において有用な標識には、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、イソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性標識(例えば、H、125I、35S、14Cまたは32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAに一般に用いられる他のもの)、およびコロイド金または着色ガラスまたはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)などの比色定量用標識が含まれる。
【0130】
標識を、当技術分野で周知の方法に従って、アッセイの望ましい構成要素に直接的または間接的に結合させてもよい。以上に示した通り、非常にさまざまな標識を用いることができ、標識の選択は必要な感度、化合物との結合の容易さ、安定性の必要条件、用いうる装置、および廃棄への対応に依存する。
【0131】
非放射性標識はしばしば間接的な手段によって結合させる。酵素または蛍光団との結合などにより、分子をシグナル生成化合物と直接結合させることもできる。種々の酵素および蛍光化合物を本発明の方法に用いることができ、これらは当業者に周知である(用いうるさまざまな標識システムまたはシグナル生成システムの概説については、例えば、米国特許第4,391,904号を参照されたい)。
【0132】
標識の検出手段は当業者に周知である。すなわち、例えば、標識が放射性標識であれば、検出のための手段には、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーの場合の写真フィルムが含まれる。標識が蛍光標識であれば、適切な波長の光で蛍光色素を励起させ、その結果生じた蛍光を検出することによってそれを検出しうる。蛍光は、肉眼的に、写真フィルムにより、電荷結合素子(CCD)または光電子増倍管などの電子検出装置の使用によって検出しうる。同様に、酵素標識は、酵素に対する適切な基質を提供し、その結果得られた反応生成物を検出することにより検出することができる。さらに、単純な比色定量標識は、標識に伴う色を単に観察することによって検出しうる。すなわち、種々の試験紙アッセイにおいて、結合した金はしばしば薄赤色に見え、一方、種々の結合ビーズはビーズの色に見える。
【0133】
いくつかのアッセイ形式には、標識成分を用いる必要がない。例えば、凝集アッセイを用いて標識抗体の存在を検出することができる。この場合には、標的抗体を含む試料により、抗原をコーティングした粒子を凝集させる。この形式では、どの成分も標識する必要はなく、単純な肉眼検査によって標的抗体の存在が検出される。
【0134】
VI.アーキペリンの修飾物質に関するスクリーニング
アーキペリンの修飾物質、すなわちアーキペリンのアゴニストもしくはアンタゴニスト、アーキペリン活性に対する作用物質、またはアーキペリンポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの発現に対する修飾物質は、糖尿病を含むさまざまなヒト疾患の治療に有用である。アーキペリンアゴニスト、またはアーキペリンの発現を増強する作用物質の投与は、糖尿病患者の治療に用いることができる。例えば、膵島の機能障害に起因するアーキペリン不足は、糖尿病に付随する病態のいくつかの原因となっている可能性がある。このため、アーキペリンの回復は、これらの病態のいくつかを改善する。
【0135】
その反対に、インスリン抵抗性状態でみられるような膵島活動亢進の条件下では、膵島の拡大がアーキペリンの過剰産生を招く可能性がある。過剰産生はさまざまな一連の有害な生理的影響を招くが、これらはアーキペリンアンタゴニストによって軽減されうる。アーキペリンアゴニストまたはアンタゴニストには、本ペプチドの内因性レベルが異常であるか否かを問わず、糖尿病において有益な生理的作用があると思われる。
【0136】
A.アーキペリンの修飾物質を同定するための方法
細胞における、特に哺乳動物細胞における、とりわけヒト細胞における、アーキペリンの発現または活性のレベルを変化させる作用物質を同定するために、数多くの種類のスクリーニングプロトコールを利用することができる。一般的には、スクリーニング方法は、例えば、アーキペリンと結合すること、阻害物質とアーキペリンとの結合を妨げること、またはアーキペリンの発現を活性化することによってアーキペリンの活性を変化させる作用物質を同定するために、複数の作用物質をスクリーニングすることを含む。
【0137】
1.アーキペリン結合アッセイ法
アーキペリンと結合しうる作用物質をスクリーニングすることにより、そのようにして同定された作用物質の少なくともいくつかはアーキペリンの修飾物質である可能性が高いことから、予備的なスクリーニングを行うことができる。結合アッセイは通常、アーキペリンタンパク質を1つまたは複数の被験作用物質と接触させ、タンパク質および被験作用物質が結合複合体を形成するのに十分な時間をおくことを含む。形成された結合複合体は、確立されたさまざまな分析技法の任意のものを用いて検出することができる。タンパク質結合アッセイには、共沈、非変性SDS-ポリアクリルアミドゲル上での共移動、ウエスタンブロット上での共移動を測定する方法(例えば、Bennet, J.P.およびYamamura, H.I. (1985)「神経伝達物質、ホルモンまたは薬物受容体の結合方法(Neurotransmitter、Hormone or Drug Receptor Binding Methods)」、「神経伝達物質受容体の結合(Neurotransmitter Receptor Binding」(Yamamura, H. I.ら編)中、pp. 61-89を参照)、ならびにファージディスプレイおよび当業者に知られたその他の結合アッセイが非制限的に含まれる。この種のアッセイに用いるアーキペリンタンパク質は、自然下で発現されるアーキペリンでもクローニングされたものでも合成されたものでもよい。いくつかの態様においては、ツーハイブリッドアッセイまたは発現に基づくその他のインビボ結合アッセイを用いることができる。例えば、Fieldsら、Nature 340(6230) : 245-6 (1989)を参照のこと。
【0138】
結合アッセイ法は、例えば、アーキペリンと相互作用する内因性タンパク質を同定するためにも有用である。例えば、アーキペリンと結合する受容体を結合アッセイで同定することができる。
【0139】
2.発現アッセイ法
ある種のスクリーニング法は、アーキペリンの発現をアップレギュレートする化合物に関するスクリーニングを含む。この種の方法は一般に、被験化合物を、アーキペリンを発現する1つまたは複数の細胞と接触させた後に、アーキペリン発現(転写物または翻訳産物)の増加または減少を検出することを含む。ある種のアッセイは、内因性アーキペリンを発現する膵島細胞または他の細胞を用いて行われる。
【0140】
アーキペリンの発現はさまざまなやり方で検出することができる。本明細書で述べるように、細胞内でのアーキペリンの発現レベルは、アーキペリンの転写物(またはそれに由来する相補的核酸)と特異的にハイブリダイズするプローブを用いて、細胞内で発現されるmRNAを検索することによって決定しうる。プローブ検索は、細胞を可溶化してノーザンブロット法を行うことによって、または細胞を可溶化せずにインサイチューハイブリダイゼーション法を用いることによって実施しうる(上記参照)。または、アーキペリンと特異的に結合する抗体を用いて細胞可溶化物を検索する免疫学的な方法を用いて、アーキペリンタンパク質を検出することもできる。
【0141】
別の細胞系アッセイ法に、アーキペリンを発現しない細胞を用いて行われるレポーターアッセイがある。これらのアッセイのある種のものは、検出可能な産物をコードするレポーター遺伝子と機能的に結合したアーキペリンプロモーターを含む異種核酸構築物を用いて行われる。さまざまなレポーター遺伝子を利用しうる。いくつかのレポーターは内在性に検出可能である。この種のレポーターの一例は、蛍光検出器を用いて検出しうる蛍光を発する緑色蛍光タンパク質である。別のレポーターは検出可能な生成物を生じる。この種のレポーターはしばしば酵素である。酵素レポーターの例には、β-グルクロニダーゼ、CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ;AltonおよびVapnek (1979) Nature 282: 864-869)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼ(Tohら (1980) Eur. J. Biochem. 182: 231-238;およびHallら (1983) J. Mol. Appl. Gen. 2: 101)が非制限的に含まれる。
【0142】
これらのアッセイ法では、レポーター構築物を有する細胞を被験化合物と接触させる。プロモーターの活性をそれとの結合によって変化させる被験化合物、またはプロモーターを変化させる分子を生成するカスケードを誘発する被験化合物は、検出可能なレポーターの発現を引き起こす。ある種の他のレポーターアッセイは、アーキペリンの発現を活性化する転写制御因子およびそれと機能的に結合したレポーターを含む異種構築物を有する細胞を用いて行われる。この場合も、転写制御因子と結合してレポーターの発現を活性化する作用物質、または転写制御因子と結合してレポーターの発現を活性化する作用物質の形成を誘発する作用物質を、レポーター発現に伴うシグナル生成によって同定することができる。
【0143】
発現または活性のレベルはベースライン値との比較が可能である。上に示したように、ベースライン値は、対照試料に関する値、または対照集団(例えば、1型糖尿病または2型糖尿病でない、またはそのリスクがない健常個体)に関するアーキペリン発現レベルを代表する統計値であってよい。陰性対照として、アーキペリンを発現しない細胞に関する発現レベルを決定することもできる。この種の細胞は一般に、他の点では実質的に被験細胞と遺伝的に同一である。
【0144】
レポーターアッセイにはさまざまな異なる種類の細胞を用いうる。上に述べた通り、ある種の細胞は、内因性アーキペリンを発現する神経細胞である。アーキペリンを発現しない細胞は原核細胞であってもよいが、好ましくは真核細胞である。真核細胞は、組換え核酸構築物を有する細胞の作製に通常用いられる細胞のうち任意のものでよい。例となる真核細胞には、酵母、ならびにCOS、CHOおよびHeLa細胞株などの種々の高等真核細胞が含まれる。
【0145】
観測された活性に信頼性があることを確認するためには、レポーター構築物を含まない細胞を用いた同時並行反応を行うこと、またはレポーター構築物を有する細胞を被験化合物と接触させないことを含め、さまざまな対照をおくことができる。化合物を以下のようにさらにバリデートすることもできる。
【0146】
3.バリデーション
前記のいずれかのスクリーニング方法によってまず同定された作用物質を、明らかな活性のバリデーションを行うためにさらに試験することができる。このような試験は、適した動物モデルを用いて行うことが好ましい。このような方法の基本形式は、初期スクリーニングの際に同定されたリード化合物を、ヒトのモデルとして役立つ動物に投与し、その後に、アーキペリンが実際に修飾作用を受けるか否かを判定することを含む。バリデーション試験に用いられる動物モデルは一般に、何らかの種類の哺乳動物である。適した動物の具体的な例には、霊長動物、マウスおよびラットが非制限的に含まれる。
【0147】
B.アーキペリンの修飾物質
アーキペリンの修飾物質として試験を行う作用物質は、ポリペプチド、糖、核酸または脂質などの任意の低分子化合物または生物的実体でよい。または、修飾物質が、遺伝的に改変された型のアーキペリン遺伝子または遺伝子産物であってもよい。一般に、被験化合物は低分子の化合物およびペプチドであると考えられる。本質的にあらゆる化合物を、本発明のアッセイにおける修飾物質またはリガンドの候補として用いることができるが、水性溶液または有機溶液(特にDMSOをベースとするもの)中に溶解しうる化合物を用いることが最も多い。アッセイは、アッセイの工程を自動化し、任意の好都合な源から化合物をアッセイに提供し、一般にはそれを平行して稼働させることにより(例えば、自動化アッセイでのマイクロタイタープレート上でのマイクロタイター形式による)、大規模化学ライブラリーをスクリーニングするように設計する。化合物の供給元が、Sigma社(St. Louis, MO)、Aldrich社(St. Louis, MO)、Sigma-Aldrich社(St. Louis, MO)、Fluka Chemika-Biochemica Analytika社(Buchs, Switzerland)などを含め、数多くあることは知られているであろう。
【0148】
いくつかの態様において、ハイスループットスクリーニング方法は、数多くの治療的化合物の候補(修飾物質またはリガンド化合物の候補)を含むコンビナトリアル化学ライブラリーまたはペプチドリガンドライブラリーを提供することを含む。続いて、このような「コンビナトリアル化学ライブラリー」または「リガンドライブラリー」を、望ましい特徴的な活性を示すライブラリーのメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を同定するために、本明細書に記載するような1つまたは複数のアッセイにおいてスクリーニングする。このようにして同定された化合物は、通常の「リード化合物」として役立ち、またはそれ自体を治療薬の候補もしくは実際の治療薬として用いることができる。
【0149】
コンビナトリアル化学ライブラリーは、試薬などの多数の化学的「構成単位(building block)」を組み合わせることにより、化学合成または生物的合成によって生成された多様な化合物からなる集成物である。例えば、ポリペプチドライブラリーなどの直鎖状コンビナトリアル化学ライブラリーは、一群の構成化学単位(アミノ酸)を所定の化合物の長さ(すなわち、ポリペプチド化合物におけるアミノ酸の数)に関して考えられるすべてのやり方で組み合わせることによって生成される。構成化学単位のこのようなコンビナトリアル混合により、何百万もの化合物を合成することができる。
【0150】
コンビナトリアル化学ライブラリーの調製およびスクリーニングは当業者に周知である。このようなコンビナトリアル化学ライブラリーには、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号、Furka, Int. J. Pept. Prot. Res. 37: 487-493 (1991)およびHoughtonら、Nature 354: 84-88 (1991)を参照)が非制限的に含まれる。多様な化学物質ライブラリーを作製するためにその他の化学物質を用いることもできる。このような化学物質には、ぺプトイド(例えば、PCT公報・国際公開公報第91/19735号)、コード化ペプチド(例えば、PCT公報・国際公開公報第93/20242号)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、PCT公報・国際公開公報第92/00091号)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチドなどのディベルソマー(diversomer)(Hobbsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6909-6913 (1993))、ビニル性ポリペプチド(Hagiharaら、J. Amer. Chem. Soc. 114: 6568 (1992))、グルコーススカフォールディングを有する非ペプチド性ペプチド模倣物(Hirschmannら、J. Amer. Chem. Soc. 114: 9217-9218 (1992))、低分子化合物ライブラリーの類似の有機合成(Chenら、J. Amer. Chem. Soc. 116: 2661 (1994))、オリゴカルバメート(Choら、Science 261: 1303 (1993))、および/またはペプチジルホスホネート(Campbellら、J. Org. Chem. 59: 658 (1994))、核酸ライブラリー(Ausubel、BergerおよびSambrook、いずれも前記、を参照)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号を参照)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughnら、Nature Biotechnology, 14(3): 309-314 (1996)およびPCT/US96/10287号を参照)、炭水化物ライブラリー(例えば、Liangら、Science, 274: 1520-1522 (1996)および米国特許第5,593,853号を参照)、有機低分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN, Jan 18, 33ページ (1993);イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および第5,519,134号;モルフィノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号などを参照)が非制限的に含まれる。
【0151】
コンビナトリアルライブラリーの調製用の装置は市販されている(例えば、357 MPS, 390 MPS, Advanced Chem Tech, Louisville KY, Symphony, Rainin, Wobum, MA, 433A Applied Biosystems, Foster City, CA, 9050 Plus, Millipore, Bedford, MAを参照)。加えて、数多くのコンビナトリアルライブラリーがそれ自体、市販されている(例えば、ComGenex, Princeton, N.J., Tripos, Inc., St. Louis, MO, 3D Pharmaceuticals, Exton, PA, Martek Biosciences, Columbia, MIDなど)。
【0152】
C.固相および溶質のハイスループットアッセイ法
本発明のハイスループットアッセイ法では、最大で数千種もの異なる修飾物質またはリガンドを1日でスクリーニングすることが可能である。詳細には、マイクロタイタープレートの各ウェルを、選択した修飾物質の候補に対して別々のアッセイを実行するために用い、または、濃度もしくはインキュベーション時間の影響を観察しようとする場合には、単一の修飾物質を試験するためにウェルを5〜10個ずつ用いることができる。このため、1枚の標準的なマイクロタイタープレートで、約100種(例えば、96種)の修飾物質をアッセイすることが可能である。1536穴のウェルプレートを用いれば、1枚のプレートで約100〜約1500種の異なる化合物をアッセイすることができる。1日当たり数枚の異なるプレートをアッセイできれば、本発明の統合システムを用いて最大で約6,000〜20,000種類の化合物をアッセイでスクリーニングすることが可能である。さらに最近では、試薬操作のためのマイクロ流体(microfluidic)アプローチが開発されている。
【0153】
目的の分子を、共有結合またはタグを介した結合などの非共有結合により、直接的または間接的に固体成分に結合させることができる。タグは種々の成分のうち任意のものでよい。一般的には、タグと結合する分子(タグ結合剤)を固体支持体に固定し、タグの付いた目的の分子(例えば、アーキペリン)を、タグとタグ結合剤との相互作用によって固体支持体に結合させる。
【0154】
文献中に詳細に記載された既知の分子相互作用に基づき、さまざまなタグおよびタグ結合剤のうち任意のものを用いることができる。例えば、ビオチン、プロテインAまたはプロテインGのようにタグが天然の結合剤を有する場合には、それを適切なタグ結合剤(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラビジン、免疫グロブリンのFc領域など)との結合に用いることができる。ビオチンなどの天然の結合剤を備えた分子に対する抗体も広く入手可能であり、適切なタグ結合剤についても同様である;例えば、SIGMA Immunochemicals 1998年カタログ、SIGMA, St. Louis MOを参照されたい)。
【0155】
同様に、任意のハプテン性化合物または抗原性化合物を適切な抗体と組み合わせて用いて、タグ/タグ結合剤の対を形成させることもできる。数千種もの特異抗体が市販されており、ほかにも多くの抗体が文献中に記載されている。例えば、1つの一般的な構成において、タグは第1の抗体であり、タグ結合剤は第1の抗体を認識する第2の抗体である。抗体-抗原相互作用以外に、細胞膜受容体のアゴニストおよびアンタゴニストなどの受容体-リガンド相互作用もタグおよびタグ結合剤の対として適している(例えば、トランスフェリン、c-kit、ウイルス受容体リガンド、サイトカイン受容体、アーキペリン、インターロイキン受容体、免疫グロブリン受容体および抗体、カドヘリンファミリー、インテグリンファミリー、セレクチンファミリーなどの細胞受容体-リガンド相互作用;例えば、Pigott & power, 「接着分子ファクトブック1(Adhesion Molecule Facts Book 1)」 (1993)を参照されたい)。同様に、毒素および毒液、ウイルスエピトープ、ホルモン(例えば、オピエート、ステロイドなど)、細胞内受容体(例えば、ステロイド、甲状腺ホルモン、レチノイドおよびビタミンD;ペプチドを含む、種々の低分子リガンドの作用を媒介するもの)、薬剤、レクチン、糖、核酸(直鎖状重合体および環状重合体の両方の形態)、オリゴ糖、タンパク質、リン脂質および抗体は、いずれも種々の細胞受容体と相互作用しうる。
【0156】
ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリールスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミドおよびポリアセテートなどの合成重合体も適切なタグまたはタグ結合剤を形成しうる。その他の多くのタグ/タグ結合剤の対も本明細書に記載のアッセイに有用であり、これは本開示を吟味することによって当業者には明らかであると考えられる。
【0157】
ペプチド、ポリエーテルなどの一般的なリンカーもタグとして有用であり、これには約5-200アミノ酸のポリgly配列などのポリペプチド配列が含まれる。このような柔軟性のあるリンカーは当業者に周知である。例えば、ポリ(エチレングリコール)リンカーは、Sheanvater Polymers, Inc(Huntsville, Alabama)から販売されている。選択的には、これらのリンカーはアミド結合、スルフヒドリル結合またはヘテロ官能性結合を有する。
【0158】
タグ結合剤を、現在用いうる種々の方法のうち任意のものを用いて、固体基質に固定する。固体基質は一般に、タグ結合剤の一部と反応する化学基を表面に固定させる化学試薬に基質の全体または一部を曝露させることにより、誘導体化または官能性付与が行われる。例えば、比較的長い連鎖部分を付着させるのに適した基には、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基およびカルボキシル基が含まれると考えられる。ガラス表面などの種々の表面に官能性を付与するためには、アミノアルキルシランおよびヒドロキシアルキルシランを用いることができる。このような固相バイオポリマーアレイの構築は文献に詳細に記載されている(例えば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85: 2149-2154 (1963)(ペプチドなどの固相合成を記載している);Geysenら、J. Immun. Meth. 102: 259-274 (1987)(ピン上での固相成分の合成を記載している);FrankおよびDoring、Tetrahedron 44: 60316040 (1988)(セルロースディスク上での種々のペプチド配列の合成を記載している);Fodorら、Science, 251: 767-777 (1991);Sheldonら、Clinical Chemistiy 39(4):718-719 (1993);ならびにKozalら、Nature Medicine 2(7): 753759 (1996)(いずれも固体基質に固定したバイオポリマーのアレイを記載している)を参照されたい。タグ結合剤を基質に固定する非化学的アプローチには、加熱、UV照射による架橋などの他の一般的な方法が含まれる。
【0159】
本発明は、アーキペリンの発現または活性を変化させうる化合物をハイスループット形式で同定するためのインビトロアッセイを提供する。アッセイ系が高度に均一であるため、修飾物質の候補を含まない反応における細胞のアーキペリン活性を測定する対照反応を随意に選択してもよい。このような随意選択的な対照反応は適切であり、アッセイの信頼性を高める。したがって、いくつかの態様において、本発明の方法はこのような対照反応を含む。記載するアッセイ形式のそれぞれについて、修飾物質を含まない「修飾物質なしの」対照反応により、結合活性のバックグラウンドレベルが得られる。
【0160】
いくつかのアッセイ法においては、アッセイの成分が適切に作用していることを確認するための陽性対照を用いることが望ましいと考えられる。少なくとも2種類の陽性対照が適している。第1に、アーキペリンの既知の活性化物質を1つのアッセイ試料とインキュベートし、アーキペリンの発現レベルまたは活性の上昇に起因する結果としての信号の増加を本明細書に記載の方法に従って決定する。第2に、アーキペリンの既知の阻害物質を添加し、アーキペリンの発現または活性に関する結果としての信号の低下を同様に検出することができる。通常であればアーキペリンの既知の修飾物質の存在によって引き起こされる上昇または存在を阻害する修飾物質を見つけ出すために、修飾物質を活性化物質または阻害物質と組み合わせてもよいことは理解されると考えられる。
【0161】
D.コンピュータを用いるアッセイ法
アーキペリンの活性を変化させる化合物に関するさらにもう1つのアッセイ法は、アミノ酸配列にコードされた構造情報に基づいてアーキペリンの三次元構造を作成するためにコンピュータシステムを用いる、コンピュータ支援による薬物設計である。入力したアミノ酸配列がコンピュータプログラム内にあらかじめ設定したアルゴリズムと直接かつ能動的に相互作用して、タンパク質の二次、三次および四次構造モデルが生成される。同様の解析を、アーキペリンの受容体候補に対して行うこともできる。続いて、例えばアーキペリンとの、結合能を有する構造領域を同定するためにタンパク質構造のモデルを検討する。次にこれらの領域を利用して、アーキペリンと結合する化合物を同定する。
【0162】
タンパク質の三次元構造モデルは、少なくとも10アミノ酸残基のタンパク質アミノ酸配列、またはアーキペリン受容体の候補をコードする対応する核酸配列をコンピュータシステムに入力することによって生成される。本明細書に提供する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列は、タンパク質の構造情報をコードする、タンパク質の一次配列または部分配列である。少なくとも10残基のアミノ酸配列(または10アミノ酸をコードするヌクレオチド配列)を、コンピュータのキーボード、さらには電子記憶媒体(例えば、磁気ディスケット、テープ、カートリッジおよびチップ)、光メディア(例えば、CD ROM)、インターネットのサイトから配付された情報、およびRAMを非制限的に含む、コンピュータで読み取れる担体から、コンピュータシステムに入力する。続いて、当業者に知られたソフトウエアを用いて、アミノ酸配列とコンピュータシステムとの相互作用により、タンパク質の三次元構造モデルを生成する。
【0163】
このアミノ酸配列は、目的のタンパク質の二次、三次および四次構造を生成するために必要な情報をコードする一次構造である。ソフトウエアは、一次配列によってコードされた特定のパラメーターを調べて構造モデルを生成する。これらのパラメーターは「エネルギー項」と呼ばれ、これには主として、静電ポテンシャル、疎水性ポテンシャル、溶媒接触表面および水素結合が含まれる。二次エネルギー項にはファンデルワールスポテンシャルが含まれる。生体分子はエネルギー項の累積値が最小となるような構造をとる。このため、コンピュータプログラムは、一次構造またはアミノ酸配列によってコードされるこれらの項を用いて二次構造モデルを生成する。
【0164】
次に、二次構造によってコードされるタンパク質の三次構造が、二次構造のエネルギー項に基づいて生成される。ユーザーはこの時点で、タンパク質が膜結合型または可溶型のいずれであるか、体内でのその位置、およびその細胞内位置、例えば細胞質、表面または核などの追加変数を入力することができる。これらの変数が二次構造のエネルギー項とともに用いられて、三次構造のモデルが生成される。三次構造のモデル化に際して、コンピュータプログラムは二次構造の疎水性表面同士を一致させるとともに、二次構造の親水性表面同士を一致させる。
【0165】
ひとたび構造が生成されれば、リガンド結合領域と考えられる部分がコンピュータシステムによって同定される。リガンド候補の三次元構造は、上記のように、化合物のアミノ酸配列もしくはヌクレオチド配列または化学式を入力することによって生成される。次にリガンド候補の三次元構造をアーキペリンのものと比較して、アーキペリンの結合部位を同定する。エネルギー項を用いてタンパク質とリガンドとの間の結合親和性を決定し、どのリガンドがタンパク質と結合する確率が高いかを判定する。
【0166】
コンピュータシステムは、本発明のアーキペリンポリペプチドをコードする遺伝子の変異、多型バリアント、対立遺伝子および種間相同体のスクリーニングにも用いられる。このような変異は疾病状態または遺伝形質と関係している可能性がある。上記の通り、ジーンチップ(GeneChip)(登録商標)および関連技術も、変異、多型バリアント、対立遺伝子および種間相同体のスクリーニングに用いることができる。ひとたびバリアントが同定されれば、診断アッセイを用いて、このような変異遺伝子を有する患者を同定することができる。変異型アーキペリン遺伝子の同定は、アーキペリンの第1のアミノ酸配列(または本発明のアーキペリンをコードする第1の核酸配列)、例えば、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5および配列番号:8に示された核酸配列によってコードされるアミノ酸配列またはそれらの保存的に改変された変形物と少なくとも60%、選択的には少なくとも85%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を入力することを含む。配列は上記のようにコンピュータシステムに入力される。続いて、第1の核酸またはアミノ酸配列を、第1の配列と実質的に同一な第2の核酸またはアミノ酸配列と比較する。第2の配列を上記の様式でコンピュータシステムに入力する。第1および第2の配列を比較すれば、配列間のヌクレオチドまたはアミノ酸の違いが同定される。このような配列は、種々のアーキペリン遺伝子における対立遺伝子の差異、ならびに疾病状態および遺伝形質と関連のある変異を表す可能性がある。
【0167】
VII.組成物、キット、および統合システム
本発明は、本発明のアーキペリンポリペプチドをコードする核酸、またはアーキペリンタンパク質、抗アーキペリン抗体などを用いて本明細書に記載したアッセイを実施するための組成物、キットおよび統合システムを提供する。
【0168】
本発明は、固相アッセイに用いるためのアッセイ組成物を提供する;このような組成物は、例えば、アーキペリンをコードする1つまたは複数の核酸が固体支持体上に固定化されたもの、および標識試薬を含みうる。それぞれの場合に、アッセイ組成物は、ハイブリダイゼーションのために望ましい別の試薬も含みうる。本発明のアーキペリンの発現または活性に対する修飾物質をアッセイに含めることもできる。固体支持体には、例えば、ペトリ皿、マイクロタイターディッシュまたはマイクロアレイが含まれる。
【0169】
本発明はまた、本発明のアッセイを行うためのキットも提供する。本キットは一般に、アーキペリンと、またはアーキペリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と特異的に結合する抗体、および作用物質の存在を検出するための標識を含む。本キットは本発明のアーキペリンポリペプチドをコードするいくつかのポリヌクレオチド配列を含みうる。キットは上記の組成物のいずれかを含むことができ、選択的にはさらに、本発明のアーキペリンポリペプチドをコードする遺伝子の発現に対する、または本発明のアーキペリンポリペプチドの活性に対する影響に関してハイスループットアッセイ方法を行うための指示書といった別の構成要素、1つまたは複数の容器または区画(例えば、プローブ、標識などを保持するための)、アーキペリンポリペプチドの発現または活性の対照修飾物質、キットの成分を混合するためのロボット型アーマチュアなども含む。
【0170】
本発明はまた、本発明のアーキペリンポリペプチドの発現または活性に対する影響に関する、修飾物質の候補のハイスループットスクリーニングのための統合システムも提供する。本システムは一般に、液体を源から目的地まで移動させるためのロボット型アーマチュア、ロボット型アーマチュアを制御するための制御装置、標識検出器、標識検出を記録するデータ記憶装置、および、反応混合物を有するウェルを含むマイクロタイターディッシュ、または固定された核酸もしくは固定化部分を含む基質などのアッセイ成分を含む。
【0171】
さまざまなロボット型液体輸送システムが入手可能であり、または既存の構成部品を用いて容易に製造することもできる。例えば、Microlab 2200(Hamilton;Reno, NV)ピペット操作ステーション(pipetting station)を用いるZymate XP(Zymark Corporation;Hopkinton, MA)自動化ロボットを用いて、並列的な試料を96ウェルマイクロタイタープレートに移し、複数の同時並列的な結合アッセイを設定することができる。
【0172】
カメラまたはその他の記録装置(例えば、光ダイオードおよびデータ記憶装置)によって観測された(および、選択的には記録された)光学画像は、選択的にはさらに、本明細書における態様のいずれかにより、例えば、画像のデジタル化ならびにコンピュータ上での画像の記録および分析などによって処理される。PC(Intel x86またはPentiumチップ互換のDOS(登録商標)、OS2(登録商標)WINDOWS(登録商標)、WINDOWS NT(登録商標)、WINDOWS95(登録商標)、WINDOWS98(登録商標)またはWINDOWS2000(登録商標)ベースのコンピュータ)、MACINTOSH(登録商標)またはUNIX(登録商標)ベースの(例えば、SUN(登録商標)ワークステーション)コンピュータなどを用いて、デジタル化されたビデオ画像またはデジタル化された光学画像のデジタル化、保存および分析を行うための、さまざまな市販の周辺機器およびソフトエアソフトウエアが入手可能である。
【0173】
従来のシステムの一つは、標本野からの光を、当技術分野で一般的に用いられる、冷却した電荷結合素子(CCD)カメラに伝える。CCDカメラは画像素子(ピクセル)のアレイを含んでいる。標本からの光はCCD上で画像化される。標本の領域(例えば、生体重合体のアレイ上の個々のハイブリダイゼーション部位)に対応する個別のピクセルがサンプリングされ、各位置に関して光強度の読み取り値が得られる。速度を高めるために多数のピクセルが並列的に処理される。本発明の装置および方法は、蛍光顕微鏡法または暗視野顕微鏡法などにより、任意の試料を観測するために容易に用いられる。
【0174】
VIII.遺伝子治療への応用
細胞内で遺伝子が転写されて遺伝子産物が産生されるように、遺伝子をヒト細胞に安定的に導入することを含む治療的アプローチにより、さまざまなヒト疾患を治療することができる。このアプローチによる治療を適用しうる疾患には、欠陥が単一遺伝子にあるものを含む、遺伝病が含まれる。遺伝子治療は後天性疾患およびその他の状態の治療にも有用である。遺伝病ならびに後天性疾患の治療に向けての遺伝子治療の応用に関する考察については、Miller, Nature 357: 455-460 (1992);およびMulligan, Science 260: 926-932 (1993)を参照されたい。
【0175】
本発明の状況においては、遺伝子治療を、アーキペリンと関連づけられているさまざまな障害および/または疾患の治療のために用いることができる。例えば、本発明のアーキペリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの遺伝子治療による導入は、例えば、糖尿病の治療のために用いうる。
【0176】
A.遺伝子送達のためのベクター
細胞または生物に対する送達のために、本発明の核酸をベクター中に組み入れることができる。このような目的に用いられるベクターの例には、標的細胞における核酸の発現を指令しうる発現プラスミドが含まれる。別の場合には、ベクターは、標的細胞をトランスフェクトしうる核酸がウイルスゲノム中に組み入れられる、ウイルスベクター系である。これらの態様において、核酸は、所望の標的宿主細胞における遺伝子の発現を指令しうる発現配列および制御配列と機能的に結合させうる。すなわち、適切な条件下で標的細胞における核酸の発現を得ることができる。
【0177】
B.遺伝子送達システム
核酸の発現に有用なウイルスベクター系には、例えば、天然または組換え型のウイルスベクター系が含まれる。個々の用途に応じて、適したウイルスベクターには、複製型ウイルスベクター、複製能欠損ウイルスベクターおよび条件付複製型(conditionally replicating)ウイルスベクターが含まれる。例えば、ウイルスベクターは、ヒトまたはウシのアデノウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、マウス微小ウイルス(MVM)、HIV、シンドビスウイルスおよびレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスを非制限的に含む)、およびMoMLVのゲノムから導くことができる。一般的には、目的の遺伝子をこの種のベクターに挿入して、遺伝子構築物のパッケージングを行わせ(一般的には随伴性ウイルスDNAとともに)、その後に感受性宿主細胞の感染、および目的の遺伝子の発現を行わせる。
【0178】
本明細書で用いる場合、「遺伝子送達システム」とは、本発明の核酸を標的細胞に送達するための任意の手段のことを指す。本発明のいくつかの態様においては、促進取り込み(facilitated uptake)(例えば、被覆小窩の陥入およびエンドソームの内部移行)のために、核酸を、DNA連結部分(linking moiety)などの適切な連結部分を介して細胞受容体リガンドと結合させる(Wuら、J. Biol. Chem. 263: 14621-14624 (1988);国際公開公報第92/06180号)。例えば、核酸を、ポリリジン部分を介して、肝細胞のアシアロ糖タンパク質受容体に対するリガンドであるアシアロ-オロムコシド(asialo-oromucocid)と連結させることができる。
【0179】
同様に、特定細胞における受容体を介したエンドサイトーシスが可能になるように、本発明の核酸を含む遺伝子構築物のパッケージングのために用いられるウイルスエンベロープを、受容体リガンド、または受容体に対して特異的な抗体の付加によって改変することもできる(例えば、国際公開公報第93/20221号、国際公開公報第93/14188号および国際公開公報第94/06923号を参照)。本発明のいくつかの態様においては、エンドサイトーシスを促進させるために、本発明のDNA構築物をアデノウイルス粒子などのウイルスタンパク質と結合させる(Curielら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88: 8850-8854 (1991))。他の態様において、本発明の分子結合物は、微小管阻害物質(国際公開公報/第9406922号)、インフルエンザウイルス血球凝集素を模した合成ペプチド(Plankら、J. Biol. Chem. 269: 12918-12924 (1994))、およびSV40 T抗原などの核移行シグナル(国際公開公報第93/19768号)を含みうる。
【0180】
レトロウイルスベクターも、本発明の核酸を標的細胞または標的生物に導入するのに有用である。レトロウイルスベクターは、レトロウイルスを遺伝的に操作することによって作製される。レトロウイルスのウイルスゲノムはRNAである。感染すると、このゲノムRNAが逆転写されてDNAコピーとなり、これが形質導入細胞の染色体DNAに高度の安定性および効率で組み込まれる。組み込まれたDNAコピーはプロウイルスと呼ばれ、他のあらゆる遺伝子と同じように娘細胞へと遺伝する。野生型レトロウイルスゲノムおよびプロウイルスDNAはgag、polおよびenvという3種の遺伝子を有し、これらは2つの長い末端反復(LTR)配列によって挟まれている。gag遺伝子は内部構造(ヌクレオキャプシド)タンパク質をコードする;pol遺伝子はRNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)をコードする;ならびにenv遺伝子はウイルス外被糖タンパク質をコードする。5'および3' LTRはビリオンRNAの転写およびポリアデニル化を促す役割を果たす。5' LTRに隣接して、ゲノムの逆転写のため(tRNAプライマー結合部位)およびウイルスRNAの粒子内への効率的な封入のため(Psi部位)に必要な配列が存在する(Mulligan, 「遺伝子発現の実験的操作(Experimental Manipulation of Gene Expression)」、Inouye(編)、155-173 (1983);Mannら、Cell 33: 153-159 (1983);ConeおよびMulligan、Proceedings of the National Academy of Sciences、U S.A., 81: 6349-6353 (1984)を参照のこと)。
【0181】
レトロウイルスベクターの設計は当業者に周知である。簡潔に述べると、キャプシド形成(またはレトロウイルスRNAの感染性ビリオンへのパッケージング)のために必要な配列がウイルスゲノムから欠失している場合には、その結果として、ゲノムRNAのキャプシド形成を妨げるシス作用性欠陥が生じる。しかし、その結果生じた変異体はなお、すべてのビリオンタンパク質の合成を指令することができる。これらの配列が除去されたレトロウイルスゲノムのほか、染色体に安定的に込み込まれた変異型ゲノムを含む細胞系は当技術分野で周知であり、レトロウイルスベクターの構築に用いられている。レトロウイルスベクターの作製およびその用途は、例えば以下のものを含む、多くの刊行物に記載されている:欧州特許出願第0 178 220号;米国特許第4,405,712号、Gilboa, Biotechniques 4: 504-512 (1986);Mannら、Cell 33: 153-159 (1983);ConeおよびMulligan、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6349-6353 (1984);Eglitisら、Biotechniques 6: 608-614 (1988);Millerら、Biotechniques 7: 981-990 (1989);Miller (1992) 前記;Mulligan (1993) 前記;および国際公開公報第92/07943号。
【0182】
レトロウイルスベクター粒子は、所望のヌクレオチド配列をレトロウイルスベクター中に組換え的に挿入した上で、パッケージング細胞系の使用により、ベクターをレトロウイルスキャプシドタンパク質でパッケージングすることによって作製される。その結果生じたレトロウイルスベクター粒子は、宿主細胞内での複製は行えないが、所望のヌクレオチド配列を含むプロウイルス配列として宿主細胞ゲノム中に組み込まれうる。その結果、患者は、例えば目的のアーキペリンポリペプチドを産生することができ、そのため、細胞は正常な表現型へと復帰する。
【0183】
レトロウイルスベクター粒子の調製に用いられるパッケージング細胞系は、一般に、パッケージングのために必要なウイルス構造タンパク質を産生するものの感染性ビリオンを産生することはできない哺乳動物組織組換え培養細胞系である。これに対して、使用される欠損レトロウイルスベクターは、これらの構造遺伝子を欠くが、パッケージングのために必要な残りのタンパク質はコードする。パッケージング細胞系を作製するためには、パッケージング部位が除去された所望のレトロウイルスの感染性クローンを構築するとよい。この構築物を含む細胞はすべてのウイルス構造タンパク質を発現するが、導入されたDNAのパッケージングは行われないと考えられる。または、適切なコアタンパク質およびエンベロープタンパク質をコードする1つまたは複数の発現プラスミドによって細胞系の形質転換を行うことによってパッケージング細胞系を作製することもできる。これらの細胞において、gag遺伝子、pol遺伝子およびenv遺伝子は同じレトロウイルスに由来しても、異なるレトロウイルスに由来してもよい。
【0184】
本発明のために適した数多くのパッケージング細胞系は先行技術にも利用しうる。これらの細胞系には、Crip、GPE86、PA317およびPG13が含まれる(Millerら、J. Virol. 65: 2220-2224 (1991)を参照)。他のパッケージング細胞系の例は、ConeおよびMulligan、Proceedings of the National Academy of Sciences, USA, 81: 6349-6353 (1984);DanosおよびMulligan、Proceedings of the National Academy of Sciences, USA, 85: 6460-6464 (1988);Eglitisら(1988)、前記;ならびにMiller (1990)、前記に記載されている。
【0185】
キメラ性エンベロープタンパク質を有するレトロウイルスベクター粒子を産生しうるパッケージング細胞系を用いることもできる。または、PA317およびGPXパッケージング細胞系によって産生されるもののような両種指向性または異種指向性エンベロープタンパク質を、レトロウイルスベクターのパッケージングに用いることもできる。
【0186】
本発明のいくつかの態様においては、本発明のアーキペリンをコードする遺伝子またはその転写物とハイブリダイズするアンチセンス核酸を投与する。このアンチセンス核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチドとして用意しうる(例えば、Murayamaら、Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 7: 109-114 (1997))。アンチセンス核酸をコードする遺伝子を用意することもできる;この種の遺伝子は当業者に周知の方法によって細胞内に導入しうる。例えば、アンチセンス核酸をコードする遺伝子は、以下にある状態で導入することができる:例えば、B型肝炎ウイルス中(例えば、Jiら、J. Viral Hepat. 4: 167-173 (1997)を参照)、アデノ随伴ウイルス中(例えば、Xiaoら、Brain Res. 756: 76-83 (1997))などのウイルスベクター中、またはHVJ(センダイウイルス)-リポソーム遺伝子送達システム(例えば、Kanedaら、Ann. NY Acad. Sci. 811: 299-308 (1997)を参照)、「ペプチドベクター」(例えば、Vidalら、CR Acad. Sci III 32: 279-287 (1997)を参照)を非制限的に含む他の系の中にある状態で、エピソーム中またはプラスミドベクター中の遺伝子として(例えば、Cooperら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 6450-6455 (1997)、Yewら、Hum Gene Ther. 8: 575-584 (1997)を参照)、ペプチド-DNA凝集物中の遺伝子として(例えば、Niidomeら、J. Biol. Chem. 272: 15307-15312 (1997)を参照)、「裸のDNA」として(例えば、米国特許第5,580,859号および第5,589,466号を参照):脂質ベクター系(例えば、Leeら、Crit Rev Ther Drug Carrier Syst. 14: 173-206 (1997))、ポリマー被覆リポソーム(米国特許第5,213,804号および第5,013,556号)、陽イオン性リポソーム(Epandら、米国特許第5,283,185号;第5,578,475号;第5,279,833号;および第5,334,761号)、ガス充填ミクロスフェア(米国特許第5,542,935号)、リガンドターゲティング用封入巨大分子(米国特許第5,108,921号;第5,521,291号;第5,554,386号;および第5,166,320号)の中。
【0187】
C.薬学的製剤
薬学的な目的に用いる場合、遺伝子治療のために用いられるベクターは適した緩衝液中に配合されるが、これは、リン酸緩衝食塩水またはリン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム、Tris緩衝液、グリシン緩衝液、滅菌水および当業者に知られた他の緩衝液(Goodら、Biochemistry 5: 467 (1966)に記載されたものなど)などの、薬学的に許容される任意の緩衝液でありうる。
【0188】
組成物はさらに、安定剤、増強剤(enhancer)またはその他の薬学的に許容される担体または媒体を含みうる。薬学的に許容される担体には、例えば、本発明の核酸および任意の随伴ベクターを安定化する働きをする、生理的に許容される化合物が含まれうる。生理的に許容される化合物には、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストランなどの糖質、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化物質、キレート剤、低分子量タンパク質またはその他の安定剤もしくは添加剤が含まれうる。その他の生理的に許容される化合物には、湿潤剤、乳化剤、分散剤または保存料が含まれ、保存料は微生物の増殖または作用を防止するのに特に有用である。さまざまな保存料が周知であり、これには例えば、フェノールおよびアスコルビン酸が含まれる。担体、安定剤またはアジュバントの例は、「レミントン薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、Mack Publishing Company、Philadelphia, PA, 第17版 (1985)に記載されている。
【0189】
D.製剤の投与
本発明の製剤は、当業者に知られた任意の送達方法を用いて、任意の組織または臓器に送達しうる。本発明のいくつかの態様において、本発明の核酸は、粘膜製剤、外用製剤および/または口腔用製剤、特に粘膜付着ゲル製剤および外用ゲル製剤として製剤化される。経皮的送達のための透過促進性組成物、ポリマーマトリックスおよび粘膜付着ゲル製剤の例は、米国特許第5,346,701号に開示されている。
【0190】
E.治療方法
本発明の遺伝子治療用製剤は一般に、細胞に対して投与される。細胞は上皮膜などの組織の一部として用意することもでき、または組織培養下などにある単離細胞として用意することもできる。細胞はインビボ、エクスビボまたはインビトロのいずれで用意することもできる。
【0191】
製剤はさまざまな方法により、インビボまたはエクスビボで目的の組織に導入しうる。本発明のいくつかの態様において、本発明の核酸は、微量注入、リン酸カルシウム沈降、リポソーム融合またはバイオリステック法などの方法によって細胞内に導入される。さらに別の態様において、核酸は目的の組織によって直接取り込まれる。
【0192】
本発明のいくつかの態様において、本発明の核酸は、患者から外植した細胞または組織に対してエクスビボで投与された後に、患者に戻される。治療用遺伝子構築物のエクスビボ投与の例には、Noltaら、Proc Natl. Acad. Sci. USA 93(6): 2414-9 (1996);Kocら、Seminars in Oncology 23(1): 46-65 (1996);Raperら、Annals of Surgery 223(2): 116-26 (1996);Dalesandroら、J. Thorac. Cardi. Surg., 11(2) : 416-22 (1996);およびMakarovら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(1): 402-6 (1996)が含まれる。
【0193】
IX.投与および薬学的組成物
アーキペリンの修飾物質(例えば、アーキペリンポリペプチドを含むアゴニスト、およびアンタゴニスト)は、インビボでのアーキペリンシグナル伝達の修飾のために、哺乳動物対象に対して直接投与することができる。投与は、修飾性化合物を導入して、治療しようとする組織に最終的に接触させるために通常用いられる任意の経路によって行いうる。個々の化合物の投与には複数の経路を用いることができるが、ある特定の経路によて別の経路よりも即時的かつより効果的な反応が得られることがしばしばである。
【0194】
本発明の化合物を、所望の標的療法に応じた1つまたは複数の別の薬剤と併用して効果的に用いることもできる(例えば、Turner, N.ら、Prog. Drug Res. (1998) 51: 33-94;Haffher, S., Diabetes Care (1998) 21: 160-178;およびDeFronzo, R.ら(編)、「糖尿病レビュー(Diabetes Reviews」(1997) Vol.5, No.4を参照)。数多くの試験で、経口薬との併用療法の有益性が検討されている(例えば、Mahier, R., J. Clin. Endocrinol. Metab. (1999) 84: 1165-71;United Kingdom Prospective Diabetes Study Group: UKPDS 28、Diabetes Care (1998) 21: 87-92;Bardin, C. W.(編)、「内分泌学および代謝における最新療法(Current Therapy In Endocrinology and Metabolism)」第6版(Mosby-Year Book, Inc., St. Louis, MO. 1997);Chiasson, J.ら、Ann. Intern. Med. (1994) 121: 928-935;Coniff, R.ら、Am. Ther. (1997) 19: 16-26;Coniff, R.ら、Am. J. Med. (1995) 98: 443-451;およびIwamoto, Y.ら、Diabet. Med. (1996) 13365-370;Kwiterovich, P., Am. J. Cardiol (1998) 82 (12A): 3U-17Uを参照されたい)。これらの試験により、疾患の中でも特に糖尿病および高脂血症は、治療レジメンに第2の薬剤を加えることによってさらに改善されうることが示されている。併用療法には、本発明のアーキペリン修飾物質および1つまたは複数の別の薬剤を含む単一の医薬製剤の投与のほかに、アーキペリン修飾物質および別個の医薬製剤としての各々の薬剤の投与も含まれる。例えば、アーキペリン修飾物質およびチアゾリジンジオンを錠剤もしくはカプセル剤などの単一の経口投与用組成物としてヒト対象に投与することができ、または各々の薬剤を別個の経口投与用製剤として投与することもできる。別個の投与製剤を用いる場合には、アーキペリン修飾物質および1つまたは複数の別の薬剤を、本質的には同じ時に(すなわち、同時に)投与することができ、または別個に時間をずらして(すなわち、逐次的に)投与することもできる。併用療法にはこれらのレジメンのすべてが含まれるものと解釈される。
【0195】
併用療法のさらにもう1つの例は、糖尿病を変化させる(または糖尿病およびそれに関連した症状、合併症および障害を治療する)場合にみられ、この場合には、AKR1C修飾物質を例えば以下のものと効果的に併用することができる:スルホニル尿素(クロルプロパミド、トルブタミド、アセトヘキサミド、トラザミド、グリブリド、グリクラジド、グリナーゼ、グリメピリドおよびグリピジドなど)、ビグアナイド系薬剤(メトホルミンなど)、PPARβδアゴニスト、PPARαのリガンドまたはアゴニスト、例えばチアゾリジノン(シグリタゾン、ピオグリタゾン(例えば、米国特許第6,218,409号を参照)、トログリタゾンおよびロシグリタゾン(例えば、米国特許第5,859,037号を参照)など);デヒドロエピアンドロステロン(DHEAまたはその抱合硫酸エステルであるDHEA-504とも呼ばれる);アンチグルココルチコイド;TNFα阻害剤;α-グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース、ミグリトールおよびボグリボース)、アミリンおよびアミリン誘導体(プラムリンチド(pramlintide)など(米国特許第5,902,726号;第5,124,314号;第5,175,145号および第6,143,718号、第6,136,784号も参照のこと))、インスリン分泌促進物質(レパグリニド、グリキドンおよびナテグリニド(米国特許第6,251,856号;第6,251,865号;第6,221,633号;第6,174,856号も参照のこと))、インスリン、さらにはアテローム性動脈硬化を治療するための上記の薬剤。
【0196】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含みうる。薬学的に許容される担体は、一部には、投与する個々の組成物、さらには組成物の投与に用いる個々の方法によって決まる。したがって、本発明の薬学的組成物には適した製剤が広範囲にわたって存在する(例えば、「レミントン薬学(Remington 's Pharmaceutical Sciences)」第17版、1985)を参照のこと)。
【0197】
アーキペリンの発現または活性に対する修飾物質は、単独で、または他の適した成分と組み合わせて、注射用またはポンプ装置での使用のために調製することができる。ポンプ装置(「インスリンポンプ」としても知られる)は、インスリンを患者に投与するために一般的に用いられており、このため、本発明の組成物を含むように適合させることは容易である。インスリンポンプの製造元には、Animas、DisetronicおよびMiniMedが含まれる。
【0198】
アーキペリンの発現または活性に対する修飾物質は、単独で、または他の適した成分と組み合わせて吸入によって投与するためのエアロゾル製剤(すなわち、それらは「噴霧」することが可能である)の形にすることができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容される噴霧剤中に配合することができる。
【0199】
投与のために適した製剤には、水性および非水性の溶液、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および製剤を等張化する溶質を含みうる等張滅菌溶液、ならびに懸濁化剤、溶解補助剤、濃稠化剤、安定剤および保存料を含みうる水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。本発明の実践に際しては、組成物を例えば経口的、鼻腔内、局所的、静脈内、腹腔内、膀胱内または髄腔内に投与することができる。化合物の製剤は単位用量または複数回の用量がアンプルまたはバイアルなどの容器内に密封された形式で提供することができる。溶液および懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。修飾物質を調製済みの食品または薬剤の一部として投与することもできる。
【0200】
患者に投与する用量は、本発明の状況においては、一定期間にわたって対象において有益な反応を生じさせるのに十分である必要がある。用量は、用いる個々の修飾物質の有効性、対象の年齢、体重、身体活動性および食事内容を含むさまざまな要因、他の薬剤との併用の可能性、ならびに糖尿病症例の重症度に応じて決まると考えられる。修飾物質の一日投与量は、既知のインスリン組成物の場合と同様のやり方で、当業者により、個々の患者について決定することが推奨される。また、用量の程度は、個々の対象における特定の化合物またはベクターの投与に伴う何らかの有害な副作用の存在、性質および程度によっても決まると考えられる。
【0201】
投与する修飾物質の有効量を決定する際に、医師は修飾因子の循環血漿中レベル、修飾物質の毒性および抗修飾物質抗体の産生を評価すると思われる。一般に、修飾物質当量としての用量は、一般的な対象の場合、約1ng/kg〜10mg/kgの範囲である。
【0202】
投与に関しては、本発明の修飾物質を、修飾物質のLD-50、および化合物の種々の濃度での副作用を対象の体重および全般的健康状態に当てはめることによって決定される速度で投与することができる。投与は単回投与または分割投与によって行える。
【0203】
X.糖尿病の診断
本発明はまた、糖尿病、または糖尿病の病態の少なくともいくつかの素因を診断する方法も提供する。診断は、患者におけるアーキペリンのレベルを測定し、そのレベルをあるベースラインまたは範囲と比較することを含む。一般に、ベースライン値は、健常(すなわち、糖尿病でない)者におけるアーキペリンの値を代表する。以上に考察した通り、アーキペリンレベルのベースラインの範囲からの差異(高値または低値)は、その患者が糖尿病であるか、糖尿病の病態の少なくともいくつかを発症するリスクがあることを示唆する。差異は例えば、ベースラインの値または範囲少なくとも5%、10%、20%、50%、200%、400%、500%または1000%またはそれ以上でありうる。いくつかの態様において、アーキペリンのレベルは、患者から血液試料を採取して、本明細書で考察したような任意のさまざまな検出方法を用いて試料中のアーキペリンの量を測定することによって測定される。例えば、空腹時および摂食後の血中濃度または尿中濃度を検査することができる。
【0204】
アーキペリンレベルに対する血糖値の影響を検出するために耐糖能試験を用いることもできる。耐糖能試験では、血清検体および尿検体をグルコース濃度に関して評価することにより、患者が標準的なグルコース負荷に耐える能力を評価する。グルコース摂取前に血液試料を採取し、グルコースを経口投与した上で、グルコース摂取後の所定の間隔で血中または尿中のグルコース濃度を検査する。
【0205】
本明細書中に引用したすべての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が参照として組み込まれるように特定的および個別に示されている場合と同程度に参照として本明細書に組み込まれる。
【0206】
理解を容易にする目的で、上記の本発明を図面および実施例によってある程度詳細に説明してきたが、本発明の教示に鑑みて、添付する特許請求の範囲またはその精神を逸脱することなく、ある種の変更または修正を加えうることは当業者には容易に明らかになると考えられる。
【0207】
実施例
以下の実施例は、請求する本発明を例示するために提供するものであり、それを限定するものではない。
【0208】
実施例1
本実施例は、膵島に非常に多く存在し、糖尿病の治療のために重要なホルモンでもある、CRF/ウロコルチンファミリーのペプチドの新たなメンバーの発見について述べる。
【0209】
ラット膵島ジーンチップ(GeneChip)上での組織マッピング実験を用いて、ラット膵島で特異的に発現される遺伝子として、プローブセットMBXRATISL12276を同定した。より広範囲にわたる第2のラット組織マッピング実験からも、プローブセットMBXRATISL12276がラット膵島試料中に多く存在し、他の10種の組織からの10件の試料中には存在しないことが判明した。このプローブセットは5件のラット膵島試料中5件ともに存在し、その平均の平均差(Average Difference)は4000を上回ったが、他の10種の組織中には存在せず、平均差の平均値は0またはそれ未満であった。これは極めて膵島特異的な発現パターンを表す。図1参照。マウス組織マップ実験からも極めて膵島特異的な発現パターンが示された。図2参照。これらのプローブセットに対応する遺伝子の推定産物をアーキペリンと命名した。
【0210】
糖尿病動物モデルにおけるアーキペリンの発現についても評価した。このデータから、雄性のツッカー糖尿病肥満(Zucker Diabetic Fatty)ラットにおけるプローブセットMBXRATISL12276の発現はZLC対照ラットの3分の1であることが示された。このプローブセットは、糖尿病性(脂肪を摂取させた)ZDF雌性ラットでも低値である。このデータは、この遺伝子が、これらの2型糖尿病の動物モデルの膵島でダウンレギュレートされていることを示す。これらの所見は膵島がアーキペリン産生の主な部位であることを示しており、このホルモンが糖尿病個体では不適切に発現されている可能性を示唆する。1型糖尿病は膵島の破壊を特徴とし、この場合はアーキペリンレベルの低下または消失につながる可能性は非常に高いと考えられる。膵島機能不全は2型糖尿病でも極めて重要な様相であり、このため、アーキペリン産生にも影響をもたらす。
【0211】
マウス、ラットおよびヒトのアーキペリンクローンのヌクレオチド配列を決定した。配列番号:1および配列番号:8はヒト配列の2種類のバリアントを示し、配列番号:3はマウス配列を示し、配列番号:5はラット配列を示している。プロセシングを受けていないアーキペリンの推定されるアミノ酸配列を、ヒト(配列番号:2および7)、マウス(配列番号:4)およびラット(配列番号:6)について示している。シークエンシングを行ったヒトクローンに応じて、アミノ酸94はアルギニンまたはグリシンのいずれかであった。多数のクローンが各アミノ酸をコードしていた。
【0212】
ヒト膵島内分泌細胞データベースのBLAST検索にMBXRATISL12276を用いることにより、複数のヒト膵島EST間のオルソログクローンが明らかになった。アーキペリンに関するcDNAクローンはマウスおよびラットの膵島データベース中にも多く存在した。アーキペリンのラットおよびヒトcDNAクローンを用いたその後のノーザンブロットハイブリダイゼーションにより、約1.2kbのアーキペリン転写物の膵島特異的発現が確認された。
【0213】
公開データベースのBLAST検索により、フグ(fugu)ウロコルチン前駆体と命名されたswissprot+データベースのエントリーQ9i8e5(fugu rubripes(フグ)(トラフグ))との明らかな類似性が判明した。さらにアライメントを行ったところ、アーキペリンペプチドがコルチコトロピン放出因子(CRF)ファミリーとも関連していることが示唆された。CRFは視床下部-下垂体-副腎系の鍵となる調節因子である。アーキペリンのアミノ酸配列とCRFペプチドファミリーとのアラインメントを示した図3を参照されたい。配列解析を踏まえて、アーキペリンペプチドはプロセシングを受けた分泌ペプチドであることが明らかにされた。図3〜5はそれぞれ、ヒト、マウスおよびラットのアーキペリンペプチドと考えられる部位を示している。
【0214】
上に述べた通り、推定されるアーキペリンペプチド配列は、CREファミリーを特徴づけるサイン(signature)のほか、このファミリーに特徴的であってC末端アミド化をもたらすC末端タンパク質分解プロセシング配列(グリシン-塩基性-塩基性-塩基性)を有する。マウス、ラットおよびヒト由来のアーキペリンの場合、これはイソロイシル-アミドを生じる。塩基性残基はN末端プロセシング部位と推定される領域にも存在し(図4〜6)、これは50〜38アミノ酸残基を含む成熟ペプチドをもたらす。これらの複数は生理的に存在すると思われ、これらの1つまたはすべてに生物活性がある可能性がある。プロペプチドの一部またはすべてを含む、より大型のものにも生物的機能がある可能性がある。
【0215】
ラットアーキペリンの推定される成熟ペプチド配列

を求め、さまざまな生物学的検討に用いた。本発明の範囲を限定する意図はないが、このペプチドはプロセシングを受けた成熟型のペプチドに相当すると推定される。
【0216】
さらに、ラットおよびマウスの双方のアーキペリン前駆体のコード配列の残基137〜149に相当するペプチド配列

を、抗血清の作製に用いた。アフィニティー精製を行ったこの抗体は、インビトロで翻訳させた160アミノ酸のラットアーキペリン前駆体分子を認識する。この抗血清は、ラットアーキペリンcDNAによるHEK 293細胞のトランスフェクションによって発現されたアーキペリン前駆体もウエスタンブロット上で認識し、さらに40-mer型のアーキペリン

も認識した。
【0217】
これらの抗体を用いた免疫組織化学試験により、アーキペリンが膵島細胞、特にβ細胞で高発現されることが示された。
【0218】
さらに、糖尿病動物モデル系において、動物は通常、インスリン濃度の低下の前に血中アーキペリン濃度の低下を示した。これらの結果は、アーキペリンレベルの観測が糖尿病の素因の初期指標として特に有用であることを示している。
【0219】
ヒト血清試料におけるアーキペリン
アフィニティー精製した抗アーキペリン抗体をコーティングした表面に特異的に捕捉されたペプチドの表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)質量分析法を用いて、正常ヒト血清試料中のヒトアーキペリンペプチドを検出した(図7)。これはCiphergenプロテインチップ読み取り装置(Series PBS II)を用いて行った。アフィニティー精製した抗体は、アーキペリンの親和性捕捉のためにPS20プレ活性化チップ表面と共有結合した。抗体をチップ表面にある状態で2〜8℃で一晩インキュベートした。続いて、8スポット式チップを、1Mエタノールアミン溶液からの遊離アミンを用いて30分間ブロックした。次に、.05%Triton Xを含むPBS中にヒト血清を希釈したもの(1:70)を各スポットに適用し、室温で2時間インキュベートした。非特異的なタンパク質は.05%triton-Xを含むPBSによる結合後洗浄によって除去した。エネルギー吸収分子CHCAをチップ表面に適用し、結晶面を形成させた。結晶形成が起こったところで、捕捉されたタンパク質をイオン化し、プロテインチップリーダーを用いて読み取った。その結果、質量4472〜4476(単量体)および8932〜8936(二量体)の箇所に非常に再現性の高いピークが認められた。このサイズは40アミノ酸または41アミノ酸であるアーキペリンペプチドの主な血清型

または

と一致する。
【0220】
ラットアーキペリンのトリプシン消化パターン
PS20プレ活性化Ciphergenチップを用いた、ラット血清由来のアーキペリンの抗体捕捉の後に、ペプチドを改良シークエンシング用グレードのトリプシンによって消化した。その結果生じたピークを、ペプチドカッター(expasy.org)による推定配列に基づいて同定した(図8)。38アミノ酸のペプチドであるラット由来のラットアーキペリンの質量は4172ダルトンであった。血清由来の天然型アーキペリンの捕捉では約4150ダルトンであり、これは推定された質量の0.5%の範囲内にあった。したがって、ラットアーキペリンの主な血清型は38-merであった:

推定されたトリプシン消化産物は観測されたアーキペリン消化物と非常によく一致した。
【0221】
本明細書中に説明した実施例および態様は例示のみを目的としており、当業者にはそれに鑑みてさまざまな修正または変更が想起されると考えられるが、これらは本出願の精神および範囲ならびに添付する特許請求の範囲に含まれるものとする。本明細書に引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、その全体がすべての目的に関して参照として本明細書に組み入れられる。
【0222】
配列表
配列番号:1 ヒトアーキペリンAの完全長コードcDNA

配列番号:2 プロセシングを受けていないヒトアーキペリンA

配列番号:3 マウスアーキペリンの完全長mRNA

配列番号:4 プロセシングを受けていないマウスアーキペリンのアミノ酸配列

配列番号:5 ラットアーキペリンの完全長mRNA

配列番号:6 プロセシングを受けていないラットアーキペリンのアミノ酸配列

配列番号:7 プロセシングを受けていないヒトアーキペリンBのアミノ酸配列

配列番号:8 ヒトアーキペリンBの完全長コードcDNA

配列番号:9 ヒトアーキペリンの分解産物

配列番号:10 ヒトアーキペリンの分解産物

配列番号:11 ヒトアーキペリンの分解産物

配列番号:12 ヒトアーキペリンの分解産物

配列番号:13 ヒトアーキペリンの分解産物

配列番号:14 ヒトアーキペリンの分解産物

配列番号:15 ヒトアーキペリン配列1〜21に対応する逆方向プライマー

配列番号:16 ヒトアーキペリン配列498〜513に対応する順方向プライマー

【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】ラットの種々の組織におけるプローブセットMBXRATISL12276の発現パターンを示している。
【図2】マウスの種々の組織におけるプローブセットMBXRATISL12276の発現パターンを示している。
【図3】CRFペプチドファミリーのペプチドと比較したアーキペリン配列のアミノ酸アライメントを示している。
【図4】ヒトのアーキペリンプロタンパク質のアミノ末端切断部位およびカルボキシル末端切断部位と考えられるものを示している。アミノ末端切断部位と考えられるものは「/」印で示している。カルボキシル末端切断部位と考えられるものは「!」印で示している。
【図5】マウスのアーキペリンプロタンパク質のアミノ末端切断部位およびカルボキシル末端切断部位と考えられるものを示している。アミノ末端切断部位と考えられるものは「/」印で示している。カルボキシル末端切断部位と考えられるものは「!」印で示している。
【図6】ラットのアーキペリンプロタンパク質のアミノ末端切断部位およびカルボキシル末端切断部位と考えられるものを示している。アミノ末端切断部位と考えられるものは「/」印で示している。カルボキシル末端切断部位と考えられるものは「!」印で示している。
【図7】表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)質量分析法を用いた、ヒト血清中のアーキペリンの検出を示している。
【図8】表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)質量分析法を用いた、ラット血清中のアーキペリンの検出を示している。
【配列表】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:9と少なくとも60%同一なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸。
【請求項2】
ポリヌクレオチドが配列番号:2をコードする、請求項1記載の核酸。
【請求項3】
ポリヌクレオチドが配列番号:1を含む、請求項1記載の核酸。
【請求項4】
ポリヌクレオチドが配列番号:7をコードする、請求項1記載の核酸。
【請求項5】
ポリヌクレオチドが配列番号:8を含む、請求項1記載の核酸。
【請求項6】
ポリヌクレオチドが配列番号:6をコードする、請求項1記載の核酸。
【請求項7】
ポリヌクレオチドが配列番号:5を含む、請求項1記載の核酸。
【請求項8】
ポリペプチドが、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の核酸。
【請求項9】
配列番号:15および配列番号:16を含むプライマーを用いて増幅される、請求項1記載の核酸。
【請求項10】
請求項1記載の核酸と機能的に結合したプロモーターを含む発現カセット。
【請求項11】
55℃の0.2×SSC中での20分間にわたる少なくとも1回の洗浄後に、配列番号:1を含むプローブと特異的にハイブリダイズする、単離された核酸。
【請求項12】
配列番号:9と少なくとも60%同一なアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項13】
配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項12記載のポリペプチド。
【請求項14】
配列番号:2を含む、請求項12記載のポリペプチド。
【請求項15】
配列番号:6を含む、請求項12記載のポリペプチド。
【請求項16】
配列番号:9に対して作製された抗体と特異的に結合する、請求項12記載のポリペプチド。
【請求項17】
請求項12記載のポリペプチドと特異的にハイブリダイズする抗体。
【請求項18】
請求項1記載の核酸がトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項19】
膵島細胞である、請求項1記載の宿主細胞。
【請求項20】
インスリンおよび配列番号:9と少なくとも60%同一なポリペプチドを含む薬学的組成物。
【請求項21】
ポリペプチドが、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項20記載の薬学的組成物。
【請求項22】
ポリペプチドが配列番号:2を含む、請求項20記載の薬学的組成物。
【請求項23】
注射用に適している、請求項20記載の薬学的組成物。
【請求項24】
患者における1型糖尿病もしくは2型糖尿病を、または1型糖尿病もしくは2型糖尿病に対する素因を診断する方法であって、
患者由来の試料における、配列番号:9と少なくとも60%同一なポリペプチドのレベルを検出する段階を含み、非糖尿病個体におけるポリペプチドのレベルと比較して該試料中のポリペプチドが変化したレベルにあることにより、該患者が糖尿病であること、または糖尿病の少なくともいくつかの病的様相に対する素因があることが示される方法。
【請求項25】
試料中のポリペプチドの変化したレベルが、非糖尿病個体におけるポリペプチドのレベルよりも低い、請求項24記載の方法。
【請求項26】
試料中のポリペプチドの変化したレベルが、非糖尿病個体におけるポリペプチドのレベルよりも高い、請求項24記載の方法。
【請求項27】
ポリペプチドが、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
ポリペプチドが配列番号:2を含む、請求項24記載の方法。
【請求項29】
ポリペプチドが抗体によって検出される、請求項24記載の方法。
【請求項30】
患者におけるポリペプチドのレベルが、非糖尿病個体によるレベルの50%未満である、請求項25記載の方法。
【請求項31】
患者におけるポリペプチドのレベルが、非糖尿病個体によるレベルの少なくとも150%である、請求項26記載の方法。
【請求項32】
1型糖尿病または2型糖尿病と診断された患者の治療方法であって、
アーキペリンのアゴニストおよびアーキペリンの発現を増強する作用物質からなる群より選択される化合物の治療的有効量を含む薬学的組成物を患者に投与する段階を含む方法。
【請求項33】
化合物がアーキペリンのアゴニストである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
化合物が、アーキペリンの発現を増強する作用物質である、請求項32記載の方法。
【請求項35】
アゴニストが、配列番号:9と少なくとも60%同一なポリペプチドである、請求項32記載の方法。
【請求項36】
アゴニストが、配列番号:2を含むポリペプチドを含む、請求項32記載の方法。
【請求項37】
ポリペプチドが、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項32記載の方法。
【請求項38】
薬学的組成物がインスリンを含む、請求項32記載の方法。
【請求項39】
薬学的組成物が非経口的に投与される、請求項32記載の方法。
【請求項40】
薬学的組成物が注射によって投与される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
薬学的組成物がポンプ装置によって投与される、請求項39記載の方法。
【請求項42】
細胞内のアーキペリン活性を変化させる方法であって、
配列番号:9と少なくとも60%同一なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に結合したプロモーターを含む発現カセットを膵島細胞に導入する段階を含む方法。
【請求項43】
ポリペプチドが配列番号:2を含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
ポリペプチドが、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項42記載の方法。
【請求項45】
細胞が患者の体内に導入される、請求項42記載の方法。
【請求項46】
細胞が患者に由来する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
発現カセットがウイルスベクター中に含まれる、請求項42記載の方法。
【請求項48】
糖尿病の治療のために有用な作用物質を同定する方法であって、
細胞を作用物質と接触させる段階;および、配列番号:9と少なくとも60%同一なポリペプチドの細胞内での発現を変化させる作用物質を選択する段階
を含む方法。
【請求項49】
ポリペプチドが、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、および配列番号:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
細胞が糖尿病の動物に由来する、請求項48記載の方法。
【請求項51】
糖尿病の動物がヒトである、請求項50記載の方法。
【請求項52】
細胞が膵島細胞である、請求項48記載の方法。
【請求項53】
ポリペプチドが配列番号:2を含む、請求項48記載の方法。
【請求項54】
ポリペプチドの発現が接触段階の後に増強される、請求項48記載の方法。
【請求項55】
1型糖尿病または2型糖尿病と診断された患者の治療方法であって、
請求項48記載の方法によって同定された作用物質の治療的有効量を投与する段階を含む方法。
【請求項56】
作用物質が患者におけるポリペプチドの発現を増強する、請求項55記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2006−500002(P2006−500002A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−548687(P2003−548687)
【出願日】平成14年12月2日(2002.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2002/038556
【国際公開番号】WO2003/047421
【国際公開日】平成15年6月12日(2003.6.12)
【出願人】(504214280)メタボレックス インコーポレーティッド (21)
【Fターム(参考)】