説明

糖尿病前症、心血管疾患及びその他のメタボリックシンドローム関連障害のバイオマーカー並びにその使用方法

インスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症と関連するバイオマーカー、並びにこのようなバイオマーカーを、インスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症のバイオマーカーとして用いる方法が提供される。さらに、対象のそれぞれの障害又は状態を調節する方法が提供される。また、インスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症のバイオマーカーとして一連の小分子実体も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全文が参照として本明細書に組み込まれる2007年7月17日に出願された米国仮出願第60/950,286号及び2008年3月18日に出願された米国仮出願第61/037,628号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、概して、インスリン抵抗性、心血管疾患及びメタボリックシンドローム関連障害と相関しているバイオマーカー、バイオマーカーを同定する方法及びそれらのバイオマーカーに基づく方法に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、1型(早期発症型)又は2型(成人発症型)のいずれかに分類され、2型は、糖尿病の症例の90〜95%を含む。糖尿病は、個体に影響を及ぼし始めるのは疾患過程における最終段階であり、かなり後に糖尿病の診断がなされる。2型糖尿病は、10〜20年かけて発症し、インスリンに対する感受性の障害(インスリン抵抗性)によるグルコースを利用する能力(グルコース利用)の障害に起因する。
【0004】
糖尿病前症では、組織がグルコースを代謝するのを補助することにおいて、インスリンはあまり有効ではなくなる。糖尿病前症は、糖尿病症状が明らかとなる20年前には早くにも検出可能であり得る。研究により、この段階で、患者はほとんど症状を示さないが、長期の生理学的損傷がすでに始まっていることがわかっている。これらの個体の最大60%が、10年以内に2型糖尿病に進行する。
【0005】
米国糖尿病協会(American Diabetes Association)(ADA)は、糖尿病前症の患者を検出するためのルーチンスクリーニングを推奨している。糖尿病前症のための現在のスクリーニング法として、空腹時血漿グルコース(FPG)検査、経口グルコース負荷試験(OGTT)、空腹時インスリン検査及び高インスリン正常血糖クランプ(HIクランプ)が挙げられる。最初の2種の検査は臨床的に用いられているが、後者の2種の検査は、研究において広く用いられており、臨床では稀である。さらに、空腹時グルコース及びインスリンレベルを一緒に考慮する数学的手段(例えば、HOMA、QUICKI)が提案されている。しかし、正常血漿インスリン濃度は、個体間並びに個体内で1日を通じて大きく異なる。さらに、これらの方法は、可変性及び実験室間の方法論的な相違という問題を抱え、グルコースクランプ研究と厳密に相関しない。
【0006】
世界中で、推定1億9400万人の成人が、2型糖尿病であり、この数は、主に、西洋化した社会における肥満症の流行によって、2025年には3億3300万人に増大すると予測されている。米国では、インスリン抵抗性のレベルにもよるが、5千4百万人を超える成人が前糖尿病患者であると推測されている。米国では、年に、およそ150万の2型糖尿病の新規症例がある。毎年の糖尿病に対する米国医療費は、1740億ドルと推定される。この数字は、2002年から32%を超えて上がっている。米国などの先進工業国では、医療費の約25%が血糖コントロールを治療し、50%が糖尿病と関連している全般的な医療と関連しており、費用の残りの25%が長期の合併症、主に、心血管疾患を治療するよう回される。医療費の分布並びにインスリン抵抗性が心血管疾患及び糖尿病進行における直接の原因因子である事実を考慮すると、心血管疾患が、糖尿病患者について観察される死亡率の70〜80%を占めることは驚くべきことではない。2型糖尿病を検出及び予防することは、重要な医療の優先事項となっている。
【0007】
糖尿病はまた、その他の疾患若しくは状態の発症につながる可能性があり、又はメタボリックシンドローム及び心血管疾患などの状態の発生における危険因子である。メタボリックシンドロームは、個体における一連の危険因子の集団化である。米国心臓協会(American Heart Association)によれば、これらの危険因子として、腹部肥満症、グルコースを適切に処理する能力の低下(インスリン抵抗性又はグルコース不耐性)、異脂肪血症(高トリグリセリド、高LDL、低HDLコレステロール)、高血圧症、血栓形成促進性状態(血液中の、高フィブリノゲン又はプラスミノゲンアクチベーター阻害薬−1)及び炎症誘発性状態(血液中の、C反応性タンパク質の上昇)が挙げられる。メタボリックシンドロームはまた、シンドロームX、インスリン抵抗性症候群、肥満症候群、代謝異常症候群及びリーベン(Reaven’s)症候群としても知られている。メタボリックシンドロームであると診断された患者は、糖尿病、心疾患及び血管疾患の発症の危険が高い。米国では、成人の20%(>5000万人)がメタボリックシンドロームを有すると推測されている。年齢にかかわらず誰にも影響を及ぼし得るが、罹患率は、年齢が高まるほど、活動的ではない、大幅な過体重、特に過剰の腹部脂肪を有する個体において、増大する。
【0008】
2型糖尿病は、米国では、糖尿病の最もよくある形である。米国糖尿病基金(American Diabetes Foundation)によれば、90%を超える米国糖尿病患者が2型糖尿病を患っている。2型糖尿病の個体は、インスリン抵抗性の増大及びインスリン分泌の低下の組合せを有し、これらが組み合わさって高血糖症を引き起こす。ほとんどの2型糖尿病の人は、メタボリックシンドロームを有する。
【0009】
メタボリックシンドロームの診断は、個体における3種以上の危険因子の集団化に基づく。メタボリックシンドロームを診断するための広く受け入れられている判定基準はない。米国コレステロール教育プログラム(National Cholesterol Education Program)(NCEP)成人治療パネルIII(ATP III)によって提案される判定基準にわずかな改変を加えたものが現在推奨されており、広く用いられている。
【0010】
米国心臓協会及び米国国立心肺血液研究所(National Heart,Lung,and Blood Institute)は、メタボリックシンドロームは、これらの要素:ウエスト周囲の増大(男性−40インチ(102cm)以上)、女性−35インチ(88cm)以上;トリグリセリドの上昇(150mg/dL以上);HDL(善玉)コレステロールの低下(男性−40mg/dL未満、女性−50mg/dL未満);血圧の上昇(130/85mmHg以上);空腹時血糖の上昇(100mg/dL以上)のうち3以上の存在として同定されると推奨した。
【0011】
2型糖尿病は、ゆっくりと発生し、2型糖尿病であるということを、別の状態のために、又は定期健診の一環として行われた血液検査によって最初に知る人が多い。いくつかの場合には、2型糖尿病は、眼、腎臓又はその他の臓器に対する損傷が生じるまで検出されない場合もある。メタボリックシンドローム又は2型糖尿病を発症する危険にある個体を同定するために、プライマリーケア提供者によって施され得る、客観的な、生化学的評価(例えば、実験室試験)に対する必要性が存在する。
【0012】
糖尿病前症及び糖尿病の有病率が、世界的流行の割合でますます増大しているので、糖尿病前症及び糖尿病に対する病態生理学的進行の機序を反映する、最新の、より革新的な分子診断が必要とされている。肥満症の流行を映して、糖尿病前症及び糖尿病は、広く予防可能であるが、臨床疾患の進行の無症候性のために診断されないか、診断されるのが遅すぎることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、2型糖尿病を発症する危険にある糖尿病前症を同定でき、インスリン抵抗性の患者において疾患進行の危険を決定することができる診断用バイオマーカー及び検査に対する必要性が満たされていない。インスリン抵抗性バイオマーカー及び糖尿病検査は、糖尿病前症の対象において糖尿病発症の危険をより良好に同定及び決定でき、疾患発症及び進行及び/又は退縮をモニタリングでき、新規治療的処置が開発されるのを可能にし、糖尿病前症の逆転及び/又は糖尿病の予防に対する効力について治療薬を試験するために使用され得る。さらに、前糖尿病及び糖尿病治療薬候補の有効性及び安全性をより効率的に評価するために診断用バイオマーカーの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態では、本開示内容は、対象においてインスリン抵抗性を診断する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中のインスリン抵抗性に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7、8、9A、9B、27、28、29中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーのインスリン抵抗性陽性及び/又はインスリン抵抗性陰性参照レベルと比較して、対象がインスリン抵抗性であるかどうかを診断するステップとを含む方法を提供する。
【0015】
別の実施形態では、本開示内容は、対象における糖処理速度を予測する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中のインスリン抵抗性に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7、8、9A、9B中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの糖処理参照レベルと比較して、対象における糖処理速度を予測するステップとを含む方法を提供する。
【0016】
本開示内容はまた、対象を耐糖能に従って正常耐糖能(NGT)から空腹時耐糖能異常(IFG)又は耐糖能異常(IGT)、2型糖尿病までに分類する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中の耐糖能に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7、8、9A、9B中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの耐糖能参照レベルと比較して対象をNGT、IFG、IGT又は糖尿病を有すると分類するステップとを含む方法を提供する。
【0017】
2型糖尿病の発症に対する対象の感受性を決定する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中の糖尿病前症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7、8、9A、9B中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの糖尿病陽性及び/又は糖尿病陰性参照レベルと比較して、対象が2型糖尿病の発症に対して感受性であるかどうかを診断するステップとを含む方法をさらに提供する。
【0018】
本開示内容はまた、対象におけるインスリン抵抗性スコアを決定する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7、8、9A、9B中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーのインスリン抵抗性参照レベルと比較して、対象のインスリン抵抗性スコアを決定するステップとを含む方法を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本開示内容は、対象における糖尿病前症の進行又は退縮をモニタリングする方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中の糖尿病前症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7、8、9A、9B中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの糖尿病前症進行及び/又は糖尿病前症退縮参照レベルと比較して、対象における糖尿病前症の進行又は退縮をモニタリングするステップとを含む方法を提供する。
【0020】
さらに別の実施形態では、本開示内容は、インスリン抵抗性治療の有効性をモニタリングする方法であって、対象から得た第1の生体試料を分析して、糖尿病前症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、第1の試料が第1の時点で対象から得られ、1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7及び8中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー並びにそれらの組合せから選択されるステップと、インスリン抵抗性について対象を治療するステップと、対象から得た第2の生体試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、第2の生体試料が治療後の第2の時点で対象から得られるステップと、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較して、インスリン抵抗性を治療するための治療の有効性を評価するステップとを含む方法を提供する。
【0021】
本開示内容は、対象が、メタボリックシンドロームを有するかどうかを診断する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中のメタボリックシンドロームに関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表12及び13中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーから選択されるステップと、生体試料を分析して、糖処理、肥満症及び/又は心血管疾患に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、糖処理、肥満症及び/又は心血管疾患に関する1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28中に同定される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーのそれぞれの障害陽性及び/又は障害陰性参照レベルと比較して、対象がメタボリックシンドロームを有するかどうかを診断するステップとを含む方法をさらに提供する。
【0022】
別の実施形態では、本開示内容は、対象において心血管疾患を診断する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中の心血管疾患に関する1種又は複数のバイオマーカーレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表14、15、16、17、21、22、23、25中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの疾患陽性及び/又は疾患陰性参照レベルと比較して、対象が心筋症又はアテローム性動脈硬化症を有するかどうかを診断するステップを含む方法を提供する。
【0023】
本開示内容は、対象が肥満になる素因があるかどうかを決定する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中の肥満症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表26中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの肥満症陽性及び/又は肥満症陰性及び/又は痩せ陽性及び/又は痩せ陰性参照レベルと比較して、対象が肥満症に対して感受性であるかどうかを決定するステップとを含む方法をさらに提供する。
【0024】
なおさらなる実施形態では、本開示内容は、治療薬が対象において体重増加を誘発できるかどうかを決定する方法であって、治療薬を受けている対象から得た生体試料を分析して、試料中の肥満症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表26中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの肥満症陽性及び/又は肥満症陰性及び/又は痩せ陽性及び/又は痩せ陰性参照レベルと比較して、対象が体重増加に対して感受性があるかどうかを決定するステップとを含む方法を提供する。
【0025】
本開示内容はまた、糖尿病前症又は糖尿病のための一連の治療に対する対象の応答を予測する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、糖尿病前症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表27中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの治療の治療陽性及び/又は治療陰性参照レベルと比較して、対象が一連の治療に対して応答する可能性があるかどうかを予測するステップとを含む方法を提供する。
【0026】
本開示内容はまた、糖尿病前症又は糖尿病のための治療に対する対象の応答をモニタリングする方法であって、対象から得た第1の生体試料を分析して、糖尿病前症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、第1の試料が、第1の時点で対象から得られ、1種又は複数のバイオマーカーが、表28中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーから選択されるステップと、対象に組成物を投与するステップと、対象から得た第2の生体試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、第2の試料が、組成物の投与後の第2の時点で対象から得られるステップと、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較して、糖尿病前症又は糖尿病を治療するための組成物の有効性を評価するステップとを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】代謝産物の数の関数として、Rd相関の平均R値を示すグラフを提供する図である。化合物の数が増大するにつれ(右から左)、Rd相関のr−二乗値(Y)は、最適数(n<30)に達するまで増大し、変数選択は、およそ30の最初の変数については、おおよそ安定であることを示す。
【図2】代謝産物の数の関数として、Rd相関の平均R値を示すグラフを提供する図である。化合物の数が増大するにつれ(右から左)、Rd相関の試験誤差(Y)は、最適数(n<30)に達するまで減少し、変数選択は、およそ30の最初の変数については、おおよそ安定であることを示す。
【図3】代謝産物の数(X軸)の関数として、Rd相関の平均R−二乗値(Y軸)を示すグラフを提供する図である。
【図4】代謝産物の数(X軸)の関数として、Rd相関の平均試験誤差値(Y軸)を示すグラフを提供する図である。
【図5】「IRスコア」として報告される対象のインスリン抵抗性レベルを決定するためにインスリン抵抗性バイオマーカーを用いたアルゴリズムの予言的結果を説明し、さらなる臨床情報(例えば、BMI、人口学的情報)を含む報告の図による例を提供する図である。
【図6】インスリン抵抗性のレベルに従う患者層別化のためのバイオマーカーの使用と、インスリン抵抗性の進行についての患者危険層別化のためのバイオマーカーの使用を比較する略図を提供する図である。
【図7】糖処理を予測するための有用なバイオマーカーである代謝産物の一実施形態のランダムフォレスト重要度解析(Random Forest Analysis Importance)プロットを提供する図である。
【図8】メタボリックシンドロームを予測するための有用なバイオマーカーである血清代謝産物の一実施形態のランダムフォレスト重要度解析プロットを提供する図である。
【図9】メタボリックシンドロームを予測するための有用なバイオマーカーである血漿代謝産物の一実施形態のランダムフォレスト重要度解析プロットを提供する図である。
【図10】アテローム性動脈硬化症を疾患の初期に(開始)(図10A)、中期に(図10B)、後期に(図10C)又はすべて(図10D)の段階で予測するのに有用なバイオマーカーである血漿由来の代謝産物の実施形態のランダムフォレスト重要度解析プロットを提供する図である。
【図11】アテローム性動脈硬化症を疾患の初期に(開始)(図11A)、中期に(図11B)、後期に(図11C)又はすべて(図11D)の段階で予測するのに有用なバイオマーカーである大動脈組織由来の代謝産物の実施形態のランダムフォレスト重要度解析プロットを提供する図である。
【図12】アテローム性動脈硬化症を疾患の初期に(開始)(図12A)、中期に(図12B)、後期に(図12C)又はすべて(図12D)の段階で予測するのに有用なバイオマーカーである肝臓組織由来の代謝産物の実施形態のランダムフォレスト重要度解析プロットを提供する図である。
【図13】種々の年齢の、アテローム性動脈硬化症対象及び対照対象におけるコレステロールの血漿レベルの一例を提供する図である。
【図14】種々の年齢の、アテローム性動脈硬化症対象及び対照対象におけるドコサヘキサエン酸の血漿レベルの一例を提供する図である。
【図15】種々の年齢の、アテローム性動脈硬化症対象及び対照対象における代謝産物−7888の血漿レベルの一例を提供する図である。
【図16】種々の年齢の、アテローム性動脈硬化症対象及び対照対象における代謝産物−X8403の血漿レベルの一例を提供する図である。
【図17】種々の年齢の、アテローム性動脈硬化症対象及び対照対象における代謝産物−X1834の血漿レベルの一例を提供する図である。
【図18】種々の年齢の、アテローム性動脈硬化症対象及び対照対象におけるp−クレゾールスルフェートの血漿レベルの一例を提供する図である。
【図19】種々の年齢の、アテローム性動脈硬化症対象及び対照対象における代謝産物−4887の血漿レベルの一例を提供する図である。
【図20】DCMバイオマーカー代謝産物の再帰分割の一例を提供する図である。
【図21】メタボリックシンドローム及び健常対象由来の血漿を用いるモデル検証の一例を提供する図である。
【図22】メタボリックシンドローム及び健常対象由来の血清を用いるモデル検証の一例を提供する図である。
【図23】糖処理速度(Rd)に関する組み合わされた10のモデルの予測力を示す回帰分析の一例を提供する図である。
【図24】メタボリックシンドロームの種々の危険因子の相互関係を提供し、示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、糖尿病前症(例えば、耐糖能異常、空腹時耐糖能異常、インスリン抵抗性)及び2型糖尿病のバイオマーカー、糖尿病前症及び2型糖尿病の診断方法、糖尿病前症及び2型糖尿病の素因を決定する方法、糖尿病前症及び2型糖尿病の進行/退縮をモニタリングする方法、糖尿病前症及び2型糖尿病を治療するための組成物の有効性を評価する方法、糖尿病前症及び2型糖尿病のバイオマーカーの調節における活性について組成物をスクリーニングする方法、糖尿病前症及び2型糖尿病を治療する方法、並びに糖尿病前症及び2型糖尿病のバイオマーカーに基づくその他の方法に関する。
【0029】
インスリン抵抗性についての現在の血液検査は、インスリン抵抗性の初期検出に対しては成績が良くないか、又は相当な医療処置を含む。
【0030】
メタボロミック分析を用いて、対象の少なくとも2つの独立コホートにおける高インスリン正常血糖クランプの「ゴールドスタンダード」によって測定されるように、インスリン抵抗性を予測するために簡単な血液検査において使用できる代謝産物のパネルを発見した。
【0031】
独立研究を実施して、多項式(polynomic)アルゴリズムとともに使用すると、対象におけるインスリン抵抗性の変化の初期検出が可能となる一連のバイオマーカーを同定した。本発明は、対象のインスリン抵抗性のレベルを示すスコア(「IRスコア」)を対象に提供する。このスコアは、臨床上大きく変化したバイオマーカー及び/又はバイオマーカーの組合せの参照レベルに基づいたものであり得る。参照レベルはアルゴリズムから導くか、又は耐糖能異常の指数からコンピュータで計算することができ、図5に示されるように報告書で示すことができる。IRスコアによって、対象は、正常から高のインスリン抵抗性の範囲に入れられる。疾患進行又は寛解は、IRスコアの定期的な測定及びモニタリングによってモニタリングできる。治療的介入に対する応答は、IRスコアをモニタリングすることによって決定することができる。IRスコアはまた、薬物有効性を評価するためにも使用できる。
【0032】
本発明はまた、メタボリックシンドローム及び心血管疾患、例えば、アテローム性動脈硬化症及び心筋症のバイオマーカー、このような疾患及び症候群の診断方法、このような疾患及び症候群の素因を決定する方法、このような疾患及び症候群の進行/退縮をモニタリングする方法、このような疾患及び症候群を治療するための組成物の有効性を評価する方法、このような疾患及び症候群のバイオマーカーの調節における活性について組成物をスクリーニングする方法、このような疾患及び症候群を治療する方法並びにこのような疾患及び症候群のバイオマーカーに基づくその他の方法にも関する。
【0033】
しかし、本発明をさらに詳細に説明する前に、まず、以下の用語を定義する。
【0034】
定義:
「バイオマーカー」とは、第2の表現型を有する(例えば、疾患を有さない)対象又は対象の群から得た生体試料と比較して、第1の表現型を有する(例えば、疾患を有する)対象又は対象の群から得た生体試料で異なった形で存在する(例えば、増加しているか、減少している)化合物、好ましくは、代謝産物を意味する。バイオマーカーは、任意のレベルで異なった形で存在し得るが、通常、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%或いはそれ以上増加しているレベルで存在するか、又は、通常、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%(即ち、存在しない)減少したレベルで存在する。バイオマーカーは、統計上有意であるレベルで(例えば、ウエルチt検定又はウィルコクソン順位和検定のいずれかを用いて決定される、0.05未満のp値及び/又は0.10未満のq値)異なった形で存在することが好ましい。或いは、バイオマーカーは、糖尿病前症又は特定のレベルの糖尿病前症との相関を示す。相関の可能性の範囲は、陰性(−)1から陽性(+)1の間である。陰性(−)1の結果とは、完全に陰性の相関を意味し、陽性(+)1は、完全に陽性の相関を意味し、0は、全く相関がないことを意味する。「実質的に陽性の相関」とは、障害と、又は臨床測定値(例えば、Rd)と+0.25〜+1.0の相関を有するバイオマーカーを指すのに対し、「実質的に陰性の相関」とは、所与の障害又は臨床測定値との−0.25〜−1.0の相関を指す。「相当に陽性の相関」とは、所与の障害又は臨床測定値(例えば、Rd)と、+0.5〜+1.0の相関を有するバイオマーカーを指すのに対し、「相当に陰性の相関」とは、所与の障害又は臨床測定値と−0.5〜−1.0の障害に対する相関を指す。
【0035】
1種又は複数のバイオマーカーの「レベル」とは、試料中のバイオマーカーの絶対又は相対量又は濃度を意味する。
【0036】
「試料」又は「生体試料」又は「試料」とは、対象から単離された生体物質を意味する。生体試料は、所望のバイオマーカーを検出するのに適した任意の生体物質を含み得、対象由来の細胞性及び/又は非細胞性物質を含み得る。試料は、任意の適した生体組織又は液体、例えば、脂肪組織、大動脈組織、肝臓組織、血液、血漿、血清又は尿などから単離され得る。
【0037】
「対象」とは、任意の動物を意味するが、例えば、ヒト、サル、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ウシ、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ又はウサギなどの哺乳類が好ましい。
【0038】
バイオマーカーの「参照レベル」とは、特定の病状、表現型又はそれらがないこと並びに病状、表現型又はそれらがないことの組合せを示すバイオマーカーのレベルを意味する。バイオマーカーの「陽性」参照レベルとは、特定の病状又は表現型を示すレベルを意味する。バイオマーカーの「陰性」参照レベルとは、特定の病状又は表現型がないことを示すレベルを意味する。例えば、バイオマーカーの「糖尿病前症陽性参照レベル」とは、対象における糖尿病前症の陽性診断を示すバイオマーカーのレベルを意味し、バイオマーカーの「糖尿病前症陰性参照レベル」とは、対象における糖尿病前症の陰性診断を示すバイオマーカーのレベルを意味する。別の例として、バイオマーカーの「糖尿病前症進行陽性参照レベル」とは、対象における糖尿病前症の進行を示すバイオマーカーのレベルを意味し、バイオマーカーの「糖尿病前症退縮陽性参照レベル」とは、糖尿病前症の退縮を示すバイオマーカーのレベルを意味する。バイオマーカーの「参照レベル」は、バイオマーカーの絶対又は相対量又は濃度、バイオマーカーの有無、バイオマーカーの量又は濃度の範囲、バイオマーカーの最小及び/又は最大量又は濃度、バイオマーカーの平均量又は濃度、及び/又はバイオマーカーの中央値量又は濃度であり得、さらに、バイオマーカーの組合せの「参照レベル」はまた、2種以上のバイオマーカーの、互いに対する絶対又は相対量又は濃度の割合であり得る。特定の病状、表現型又はそれらがないことのバイオマーカーの適当な陽性及び陰性参照レベルは、1又は複数の適当な対象において所望のバイオマーカーのレベルを測定することによって決定でき、このような参照レベルは、対象の特定の集団にあわせて調整できる(例えば、特定の年齢群における特定の病状、表現型又はそれらがないことについて、特定の年齢の対象に由来する試料中のバイオマーカーレベルと参照レベル間で比較を行うことができるよう、参照レベルは年齢を対応させてもよい)。このような参照レベルはまた、生体試料中のバイオマーカーのレベルを測定するために用いられる特定の技術(例えば、LC−MS、GC−MSなど)に合わせて調整してもよく、ここでは、バイオマーカーのレベルは、用いられる特定の技術に基づいて異なり得る。
【0039】
「非バイオマーカー化合物」とは、第2の表現型を有する(例えば、第1の疾患を有さない)対象又は対象の群から得た生体試料と比較して、第1の表現型を有する(例えば、第1の疾患を有する)対象又は対象の群から得た生体試料で異なった形で存在しない化合物を意味する。しかし、このような非バイオマーカー化合物は、第1の表現型(例えば、第1の疾患を有する)又は第2の表現型(例えば、第1の疾患を有さない)と比較して、第3の表現型を有する(例えば、第2の疾患を有する)対象又は対象の群から得た生体試料ではバイオマーカーであり得る。
【0040】
「代謝産物」又は「小分子」とは、細胞中に存在する有機及び無機分子を意味する。この用語は、大きな高分子、例えば、大きなタンパク質(例えば、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000又は10,000を上回る分子量を有するタンパク質)、大きな核酸(例えば、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000又は10,000を超える分子量を有する核酸)又は大きな多糖(例えば、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000又は10,000を超える分子量を有する多糖)を含まない。細胞の小分子は、通常、細胞質中又はミトコンドリアなどのその他の細胞小器官中の溶液中で遊離して見られ、ここで、それらは中間体のプールを形成し、中間体はさらに代謝され、高分子と呼ばれる大きな分子を生成するために使用される。用語「小分子」とは、食物に由来するエネルギーを、使用可能な形に変換する化学反応におけるシグナル伝達分子及び中間体を含む。小分子の例として、糖、脂肪酸、アミノ酸、ヌクレオチド、細胞過程の間に形成される中間体及び細胞内で見られるその他の小分子が挙げられる。
【0041】
「代謝プロフィール」又は「小分子プロフィール」とは、標的とされる細胞、組織、器官、生物又はその部分(例えば、細胞コンパートメント)内の小分子の完全な又は一部の目録を意味する。この目録は、存在する小分子の量及び/又は種類を含み得る。「小分子プロフィール」は、単一の技術又は複数の異なる技術を用いて決定できる。
【0042】
「メタボローム」とは、所与の生物中に存在する小分子のすべてを意味する。
【0043】
「代謝障害」とは、代謝(同化作用及び/又は異化作用)の変化による、ホメオスタシスの正常な生理学的状態の撹乱をもたらす障害又は疾患を指す。代謝の変化は、分解されるべき物質(例えば、フェニルアラニン)を分解(異化)できず、結果として、物質及び/又は中間体物質が毒性レベルに高まること、又はいくつかの必須物質(例えば、インスリン)を産生(同化)できないことに起因し得る。
【0044】
「メタボリックシンドローム」とは、単一の個体に集まり、糖尿病及び/又は心血管疾患の発症のハイリスクにつながる代謝危険因子の集団化という概念を意味する。メタボリックシンドロームの主な特徴として、インスリン抵抗性、高血圧症(高血圧)、コレステロール異常、異脂肪血症、トリグリセリド異常、凝固に関する危険の増大及び特に、腹部における及び過剰体重又は肥満症が挙げられる。メタボリックシンドロームはまた、シンドロームX、インスリン抵抗性症候群、肥満症症候群、代謝異常症候群及びリーベン(Reaven’s)症候群としても知られている。メタボリックシンドロームの種々の危険因子の相互関係は、図24に示されている。単一の個体における3以上の危険因子の存在は、メタボリックシンドロームを示す。米国心臓協会は、メタボリックシンドロームは、以下の要素のうち3以上の存在によって診断されると示唆している:(1)胴回り(waste circumference)の増加(男性、40インチ(102cm)以上;女性、35インチ(88cm)以上)、(2)トリグリセリドの上昇(150mg/dL以上)、(3)高密度脂質即ちHDLの低下(男性、40mg/dL未満;女性、50mg/dL未満);(4)血圧の上昇(130/85mmHg以上);及び(5)空腹時血糖の上昇(100mg/dL以上)。
【0045】
「メタボリックシンドローム関連代謝障害」とは、本明細書において、メタボリックシンドローム並びに肥満症、インスリン抵抗性、2型糖尿病、アテローム性動脈硬化症及び心筋症を指す。
【0046】
「糖尿病」とは、インスリン分泌若しくは作用又は両方の欠陥に起因する高血糖(グルコース)レベルを特徴とする代謝疾患の群を指す。
【0047】
「2型糖尿病」とは、2つの主要な型の糖尿病のうち一方、少なくとも、疾患の早期では、膵臓のβ細胞がインスリンを産生するが、身体の細胞がインスリンの作用に抵抗性であるために、身体がそれを効果的に使用できない型を指す。疾患の後期には、β細胞は、インスリンの産生を停止する場合がある。2型糖尿病はまた、インスリン抵抗性糖尿病、非インスリン依存性糖尿病及び成人発症型糖尿病としても知られている。
【0048】
「糖尿病前症」とは、グルコース利用の障害、空腹時血漿グルコースの異常又は障害、耐糖能異常、インスリン感受性異常及びインスリン抵抗性を含めた1種又は複数の初期糖尿病状態を指す。
【0049】
「インスリン抵抗性」とは、細胞がインスリン(グルコースの細胞への取り込みを調節するホルモン)の作用に対して抵抗性になった、又は産生されるインスリンの量が正常なグルコースレベルを維持するのに不十分である状態を指す。細胞は、糖グルコースの血液から筋肉及びその他の組織への輸送の促進における、インスリンの効果に応答する能力(即ち、インスリン減少に対する感受性)が減少する。最終的に、膵臓は、正常よりも遥かに多くのインスリンを産生し、細胞は抵抗性であり続ける。この抵抗性を克服する十分なインスリンが産生される限りは、血糖値は正常のままである。膵臓が、もはや維持できないと、血糖は上がり始め、糖尿病をもたらす。インスリン抵抗性は、正常(インスリン感受性)からインスリン抵抗性(IR)までさまざまである。
【0050】
「インスリン感受性」とは、インスリンの効果に応答して、グルコースの取り込み及び利用を調節する細胞の能力を指す。インスリン感受性は、正常からインスリン抵抗性(IR)までさまざまである。
【0051】
「IRスコア」とは、医師が患者を耐糖能の範囲について正常から高に入れることを可能にする、本発明のインスリン抵抗性バイオマーカー及びアルゴリズムに基づいたインスリン抵抗性の尺度である。
【0052】
「グルコース利用」とは、筋肉及び脂肪細胞による血液からのグルコースの吸収及び細胞代謝のための糖の利用を指す。細胞へのグルコースの取り込みは、インスリンによって刺激される。
【0053】
「Rd」とは、糖処理速度、グルコース利用の尺度を指す。グルコースが血液から消失する速度(処分速度)は、インスリンに応答する身体の能力(即ち、インスリン感受性)の指標である。Rdを決定するためのいくつかの方法があり、高インスリン正常血糖クランプが「ゴールドスタンダード」法と見なされている。この技術では、固定量のインスリンを注入しながら、血糖を、可変速度のグルコース注入の滴定によって所定のレベルで「クランプする」。基本原理は、定常状態に達していると、定義上、糖処理は、グルコース出現と同等であるということである。高インスリン血症の際は、糖処理(Rd)は、主に骨格筋へのグルコース取り込みによって説明され、グルコース出現は、外因性グルコース注入速度及び肝臓でのグルコース生産(HGO)速度の合計と同等である。試験の最後の30分の間のグルコース注入の速度によって、インスリン感受性が決定される。高レベル(Rd=7.5mg/分以上)が必要である場合、患者はインスリン感受性である。極めて低レベル(Rd=4.0mg/分以上)は、その身体がインスリン作用に対して抵抗性であることを示す。4.0から7.5mg/分の間のレベル(4.0mg/分及び7.5mg/分の間のRd値)は、決定的ではないが、「耐糖能異常」、インスリン抵抗性の初期徴候を示唆する。
【0054】
「空腹時血糖異常(IFG)」及び「耐糖能異常(IGT)」は、「糖尿病前症」の2つの臨床的定義である。IFGは、100〜125mg/dLの空腹時血糖濃度として定義される。IGTは、140〜199mg/dLの食後(食事後)血糖濃度として定義される。IFG及びIGTは、同じ前糖尿病集団を常に検出するわけではないことがわかっている。2つの集団間には、約60%の重複が観察される。空腹時血漿グルコースレベルは、患者の膵臓機能、即ち、インスリン分泌を推測する、より効果的な手段であるが、食後グルコースレベルが、インスリン感受性又は抵抗性のレベルを推測することと関連していることがより多い。IGTは、IFGと比較して、より大きなパーセンテージの前糖尿病集団を同定するとわかっている。IFG状態は、低いインスリン分泌と関連しているのに対し、IGT状態は、インスリン抵抗性とより強く関連していることがわかっている。正常FPG値を有するIGT個体が心血管疾患の危険が高いことを実証する多数の研究が実施されている。正常FPG値を有する患者は、異常な食後血糖値を有する場合があり、糖尿病前症、糖尿病及び心血管疾患の危険に気づいていないことが多い。
【0055】
「空腹時血漿グルコース(FPG)試験」は、8時間の絶食の後に血糖値を測定する簡単な試験である。ADAによれば、100〜125mg/dLの血糖濃度は、IFGと考えられ、糖尿病前症を規定するのに対し、≧126mg/dLは糖尿病を規定する。ADAによって述べられるように、FPGは、その使用の容易さ、患者の許容性、少ない費用及び相対再現性から、糖尿病及び糖尿病前症を診断するための好ましい試験である。FPG試験の弱点は、空腹時血漿グルコース変化の前に、患者が2型糖尿病へ完全に進行することである。
【0056】
「経口グルコース負荷試験(OGTT)」、グルコースの動的測定は、75gのグルコースドリンクの経口摂取後の患者の血糖値の食後測定である。従来の測定は、試験の開始時の空腹時血液試料、1時間の時点の血液試料及び2時間の時点の血液試料を含む。2時間の時点の患者の血糖濃度が、耐糖能のレベルを規定する:正常耐糖能(NGT)≦140mg/dL血糖;耐糖能異常(IGT)=140〜199mg/dL血糖;糖尿病≧200mg/dL血糖。ADAによって述べられるように、OGTTは、糖尿病前症及び糖尿病の診断では、より感度が高く、特異的であるとわかっているが、日常的な臨床使用には推奨されておらず、これはその再現性が悪く、実際には実施することが困難であるためである。
【0057】
「空腹時インスリン検査」は、血漿中の循環成熟型のインスリンを測定する。高インスリン血症の現在の定義は、インスリン免疫測定法の標準化がされていないこと、プロインスリン型に対する交差反応性及びアッセイのための分析上の必要条件に関するコンセンサスのために難しいものである。アッセイ内CVは3.7%〜39%に及び、アッセイ間CVは12%〜66%に及ぶ。したがって、空腹時インスリンは、臨床設定ではあまり測定されず、研究設定に限定される。
【0058】
「高インスリン正常血糖クランプ(HIクランプ)」は、患者においてインスリン抵抗性を測定するための「ゴールドスタンダード」として世界中で考えられている。研究設定で実施され、患者に2本のカテーテルを挿入することを必要とし、患者は、最大6時間固定されたままでなくてはならない。HIクランプは、インスリン注入及び並行するグルコース注入によって定常状態高インスリン血症を作製して、正常血糖(euglycemia)(正常血糖(normoglycemia)とも呼ばれる、血液中のグルコースの正常濃度)を維持するのに必要なグルコース量を定量することを含む。結果は、筋肉(主として)及び脂肪組織によるグルコースの末梢取り込みを測定する、インスリン依存性糖処理速度(Rd)の尺度である。グルコース取り込みのこの速度は、M、定常状態条件下でインスリン作用による全身グルコース代謝によって記録される。したがって、高Mは、高いインスリン感受性を示し、低M値は、インスリン感受性の低下、即ち、インスリン抵抗性を示す。HIクランプは、インスリン及びグルコースの2〜4時間にわたる同時注入及びインスリン及びグルコースレベルの分析のための5分ごとの頻繁な血液サンプリングを含めた手順を実施するために3人の訓練を受けた専門家を必要とする。HIクランプの高い費用、複雑性及び必要な時間のために、この手順は、臨床研究設定に厳しく制限される。
【0059】
「肥満症」とは、過剰量の体脂肪によって定義される慢性状態を指す。体脂肪(体重のパーセンテージとして表される)の正常量(体重のパーセンテージとして表される)は、女性では25〜30%及び男性では18〜23%である。30%を超える体脂肪を有する女性及び25%を超える体脂肪を有する男性は、肥満と考えられる。
【0060】
「肥満度指数、(又はBMI)」とは、個体の身長及び体重を使用して、個体の体脂肪量を推定する計算を指す。多すぎる体脂肪(例えば、肥満症)は、疾病及びその他の健康問題につながり得る。BMIは、肥満症を研究する多数の医師及び研究者に選択される測定値である。BMIは、個体の身長及び体重の両方を考慮する数式を用いて算出する。BMIは、二乗したメートルでの身長で除したキログラムでのヒトの体重に相当する。(BMI=kg/m)。19未満のBMIを有する対象は、低体重であると考えられ、19及び25の間のBMIを有するものは、正常体重であると考えられ、25〜29の間のBMIは、通常、過体重であると考えられ、30以上のBMIを有する個体は、通常、肥満であると考えられる。病的肥満とは、40以上のBMIを有する対象を指す。
【0061】
「心血管疾患」とは、心臓又は血管の任意の疾患を指す。心血管又は心疾患として、それだけには限らないが、例えば、狭心症、不整脈、冠動脈疾患(CAD)、冠動脈心疾患、心筋症(拡張型心筋症、拘束性心筋症、不整脈原性右室心筋症及び糖尿病性心筋症を含む)心発作(心筋梗塞)、心不全、肥大型心筋症、僧帽弁逆流、僧帽弁逸脱症、肺動脈狭窄などが挙げられる。血管疾患として、それだけには限らないが、例えば、末梢血管疾患、動脈性疾患、頚動脈疾患、深静脈血栓症、静脈性疾患、アテローム性動脈硬化症などが挙げられる。
【0062】
I.バイオマーカー
本明細書に記載されるバイオマーカーは、メタボロミクスプロファイリング技術を用いて発見した。このようなメタボロミクスプロファイリング技術は、以下に示される実施例において、並びに、その全内容が参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第7,005,255号及び同7,329,489号及び米国特許出願第11/357,732号(公開番号第2007/0026389号)、同11/301,077号(公開番号第2006/0134676号)、同11/301,078号(公開番号第2006/0134677号)、同11/301,079号(公開番号第2006/0134678号)及び同11/405,033号(公開番号US2007/0072203)においてより詳細に記載されている。
【0063】
通常、代謝プロフィールは、糖尿病前症などの状態と診断されたヒト対象由来の、並びに1つ又は複数のその他のヒト対象(例えば、正常耐糖能を有する健常対照対象、耐糖能異常の対象、インスリン抵抗性の対象)の群由来の生体試料について決定することができる。次いで、糖尿病前症障害の代謝プロフィールを、1以上のその他の対象群由来の生体試料の代謝プロフィールと比較することができる。比較は、本明細書に記載されるものなどのモデル又はアルゴリズムを用いて実施できる。糖尿病前症障害の対象由来の試料の代謝プロフィールにおいて、別の群(例えば、前糖尿病でない健常対照対象)と比較して、統計的に有意なレベルで異なった形で存在する分子を含めた、異なった形で存在するこれらの分子を、それらの群を区別するためのバイオマーカーとして同定できる。
【0064】
本明細書に開示される方法において使用するためのバイオマーカーは、糖尿病前症及び/又は2型糖尿病と関連している任意のバイオマーカーの供給源から得ることができる。糖尿病前症と関連している、本明細書に開示される方法において使用するためのバイオマーカーとして、表4、5、6、7、8、9A、9B、27、28、29に列挙されるもの及びそれらの組合せ及びサブセットが挙げられる。一実施形態では、バイオマーカーとして、表4、5、6、7、8、9A、9B、27、28中に列挙されるもの及びそれらの組合せが挙げられる。さらなるバイオマーカーとして、その全文が参照として本明細書に組み込まれる米国出願番号第60/950,286号に開示されるものが挙げられる。一態様では、バイオマーカーは、インスリン抵抗性と相関している。
【0065】
メタボリックシンドローム関連代謝障害と関連している、本明細書に開示される方法において使用するためのバイオマーカーとして、表4、5、6、7、8、9A、9B、12、13、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28、29及びそれらの組合せ中に列挙されるものが挙げられる。例えば、メタボリックシンドロームを有する対象とメタボリックシンドロームを有さない対象間を区別すること又は区別を補助することにおいて使用するためのバイオマーカーとして、表4、5、6、7、8、9A、9B、12、13、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28、29及びそれらの組合せにおいて同定されるバイオマーカーが挙げられる。一態様では、メタボリックシンドロームと関連している方法において使用するためのバイオマーカーとして、表12及び13に列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。別の態様では、対象から得られた血漿試料を用いるメタボリックシンドロームと関連している方法において使用するためのバイオマーカーとして、表12に列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。好ましい態様では、対象から得られた血漿試料を用いる、メタボリックシンドロームと関連した本明細書に開示される方法において使用するためのバイオマーカーとして、バイオマーカーN−アセチルグリシン、代謝産物−6346、代謝産物−8792、γ−glu−leu、代謝産物−4806、代謝産物−3165、代謝産物−7762、代謝産物−3030、代謝産物−5978、代謝産物−3218、代謝産物−2000、代謝産物−5848、代謝産物−3370、リンゴ酸、代謝産物−3843、代謝産物−4275、代謝産物−3094、代謝産物−4167、代謝産物−3073、アルドステロン、代謝産物−1320、代謝産物−2185、フェニルアラニン、代謝産物−2139、グルタミン酸、α−トコフェロール、代謝産物−5767、代謝産物−5346、代謝産物−9855及び1−オクタデカノール及びそれらの組合せのうち1種又は複数が挙げられる。さらに別の態様では、対象から得られた血清試料を用いるメタボリックシンドロームと関連している方法において使用するためのバイオマーカーとして、表13に列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。好ましい態様では、対象から得られた血清試料を用いる、本明細書に開示されるメタボリックシンドローム法において使用するためのバイオマーカーとして、バイオマーカー代謝産物−8792、代謝産物−5767、代謝産物−2139、代謝産物−8402、代謝産物−3073、フェニルアラニン、代謝産物−4929、代謝産物−3370、ノナネート(nonanate)、N−アセチルグリシン、代謝産物−5848、代謝産物−3077、モノパルミチン、ジオクチルフタレート、オクタデカン酸、コレステロール、代謝産物−2608、代謝産物−6272、代謝産物−3012、D−グルコース、代謝産物−2986、代謝産物−4275、代謝産物−6268、チロシン、代謝産物−10683、代謝産物−2000、α−トコフェロール、代謝産物−2469、キサンチン及び代謝産物−2039及びそれらの組合せのうち1種又は複数が挙げられる。
【0066】
別の態様では、メタボリックシンドロームと関連している本明細書に開示される方法において使用するためのバイオマーカーとして、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28のうち1つ又は複数中の1種又は複数のバイオマーカーと組み合わせた、表12及び/又は13中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーの使用を挙げることができる。例えば、メタボリックシンドロームと関連している方法において使用するためのバイオマーカーは、インスリン抵抗性と関連している1種又は複数のバイオマーカー、例えば、表4、5、6、7、8、9A、9B、27、28又はそれらの組合せに列挙されるものと組み合わせた、表12及び/又は13中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーを挙げることができる。
【0067】
糖尿病前症状態又は糖尿病状態、例えば、インスリン感受性の障害、インスリン抵抗性又は2型糖尿病と関連している本明細書に開示される方法において使用するためのバイオマーカーとして、表4、5、6、7、8、9A、9B、27、28及びそれらの組合せ中に列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。このようなバイオマーカーによって、対象を、インスリン抵抗性、インスリンの障害又はインスリン感受性として分類することが可能となる。一態様では、インスリン感受性に障害を有する対象と、インスリン感受性に障害のない対象間を区別すること又は区別を補助することにおいて使用するためのバイオマーカーとして、表4、5、6、7、8、9A及び/又は9Bに列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。別の態様では、インスリン抵抗性を診断することにおいて使用するためのバイオマーカーとして、表4、5、6、7、8、9A及び/又は9Bに列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。別の実施例では、インスリン抵抗性を有する対象を、インスリン抵抗性を有さない対象と区別することにおいて使用するためのバイオマーカーとして、表4、5、6、7、8、9A及び/又は9Bに列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。別の実施例では、対象を、空腹時血糖異常又は耐糖能異常を有すると分類すること又は分類を補助することにおいて使用するためのバイオマーカーとして、表4、5、6、7、8、9A及び/又は9Bに列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。
【0068】
アテローム性動脈硬化症と関連している、本明細書に開示される方法において使用するためのバイオマーカーとして、表14、15、16及び/又は17及びそれらの組合せ中に列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。例えば、アテローム性動脈硬化性の対象を、アテローム性動脈硬化性でない対象と区別すること又は区別を補助することにおいて使用するためのバイオマーカーとして、表14、15、16、17に列挙されるバイオマーカー、3−メチルヒスチジン、p−クレゾールスルフェート、マンノース、グルコース及び/又はグルコン酸のうちの1種又は複数及びそれらの組合せが挙げられる。一態様では、対象から得た血漿試料を用いる、アテローム性動脈硬化症と関連している方法において使用するためのバイオマーカーとして、3−メチルヒスチジン、p−クレゾールスルフェート、マンノース、グルコース、グルコン酸並びに表14及び17に列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。別の態様では、対象から得た大動脈試料を用いる、アテローム性動脈硬化症と関連している方法において使用するためのバイオマーカーとして、表15に列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。さらに別の態様では、対象から得た肝臓試料を用いるアテローム性動脈硬化症と関連している方法において使用するためのバイオマーカーとして、表16に列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。一態様では、対象をアテローム性動脈硬化症の初期段階に関与させる方法において使用するための好ましいバイオマーカーとして、図10A、11A及び12Aにおいて同定されるバイオマーカーが挙げられる。対象をアテローム性動脈硬化症の中期段階に関与させる方法において使用するための好ましいバイオマーカーとして、図10B、11B及び12Bにおいて同定されるバイオマーカーが挙げられる。対象をアテローム性動脈硬化症の後期段階に関与させる方法において使用するための好ましいバイオマーカーとして、図10C、11C及び12Cにおいて同定されるバイオマーカーが挙げられる。対象をアテローム性動脈硬化症の任意の段階に関与させる方法において使用するための好ましいバイオマーカーとして、図10D、11D及び12Dにおいて同定されるバイオマーカーが挙げられる。
【0069】
心筋症と関連している、本明細書に開示される方法において使用するためのバイオマーカーとして、表21、22、23及び/又は25中に列挙されるバイオマーカーのうち1種又は複数が挙げられる。このようなマーカーは、例えば、心筋症を有する対象と、心筋症を有さない対象間を区別すること又は区別を補助することにおいて使用できる。一態様では、対象由来の心組織試料を用いる、心筋症と関連している方法において使用するためのバイオマーカーとして、表21に列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。別の態様では、対象由来の血漿試料を用いる心筋症と関連している方法において使用するためのバイオマーカーとして、表22及び/又は23中に列挙されるもののうち1種又は複数が挙げられる。
【0070】
肥満症と関連している、本明細書に開示される方法において使用するためのバイオマーカーとして、表26に列挙されるバイオマーカーのうち1種又は複数が挙げられる。このようなマーカーは、例えば、肥満対象を痩せた対象と区別するために使用できる。このようなマーカーはまた、糖尿病前症、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症のバイオマーカーと組み合わせて使用することもできる。別の態様では、これらのマーカーは、例えば、肥満症又は体重増加に対する感受性を決定するために使用できる。別の態様では、これらのマーカーは、例えば、治療薬が対象において体重増加を誘導する可能性があるかどうかを決定することができる。
【0071】
本明細書に開示される方法において、任意の数のバイオマーカーを使用してよい。即ち、開示される方法は、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28、29の各々又はすべての中のバイオマーカー又はその任意の部分のすべての組合せを含めた1種のバイオマーカー、2種以上のバイオマーカー、3種以上のバイオマーカー、4種以上のバイオマーカー、5種以上のバイオマーカー、6種以上のバイオマーカー、7種以上のバイオマーカー、8種以上のバイオマーカー、9種以上のバイオマーカー、10種以上のバイオマーカー、15種以上のバイオマーカーなどのレベルを決定することを含み得る。別の態様では、開示される方法において使用するためのバイオマーカーの数として、約30種以下バイオマーカー、25種以下、20種以下、15種以下、10種以下、9種以下、8種以下、7種以下、6種以下、5種以下のバイオマーカーというレベルが挙げられる。別の態様では、開示される方法において使用するためのバイオマーカーの数として、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、20種、25種又は30種のバイオマーカーというレベルが挙げられる。
【0072】
いくつかのバイオマーカー化合物の正体は、この時点ではわからないが、このような正体は、対象由来の生体試料におけるバイオマーカーの同定にとって必要ではなく、これは、このような同定を可能にする分析技術によって「名前のない」化合物として十分に特性決定されるからである。すべてのこのような「名前のない」化合物の分析に基づく特性決定は、実施例に列挙されている。このような「名前のない」バイオマーカーは、本明細書では、命名法「代謝産物」とそれに続く特異的代謝産物数を用いて命名される。
【0073】
さらに、表に列挙されるバイオマーカーを用いる、本明細書に開示される方法は、それぞれの状態の臨床診断尺度と組み合わせて使用してもよい。臨床診断との組合せは、開示された方法を容易にし、又は開示された方法の結果を確認することができる(例えば、診断を容易にすること又は確認すること、進行又は退縮をモニタリングすること、及び/又は糖尿病前症の素因を決定すること)。
【0074】
最後に、「名前のない」代謝産物について化合物の同一性の可能性が提案され、このような同一性が確認されていない場合に、「可能性」(可能性ある化合物の同一性とともに)という命名法が、「代謝産物」に続く。このような提案される同一性は、その他の点では「名前のない」化合物の分析に基づく特性決定を制限すると考えられてはならない。
【0075】
II.診断法
本明細書に記載されるバイオマーカーは、対象が、インスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態を有するかどうかを診断するために、又は診断において補助するために使用できる。例えば、対象がインスリン抵抗性を有するかどうかを診断すること又は診断において補助することにおいて使用するためのバイオマーカーとして、表4、5、6、7、8、9A、9B、27、28、29及びそれらの組合せにおいて同定されるもののうち1種又は複数が挙げられる。一実施形態では、これらのバイオマーカーとして、表4、5、6、7、8、9A、9B、27、28及びそれらの組合せにおいて同定されるもののうち1種又は複数が挙げられる。別の実施形態では、バイオマーカーの組合せとして、表4、5、6、7、8、9A、9B、27、28及び/又は29において同定される1種又は複数のバイオマーカーと組み合わせた2−ヒドロキシ酪酸などのものが挙げられる。
【0076】
対象が、糖尿病前症、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態を有するかどうかを診断する、又は診断において補助するための方法は、本明細書に提供されるそれぞれの表において同定される1種又は複数のバイオマーカーを用いて実施してよい。対象が、糖尿病前症、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態を有するかどうかを診断する(又は診断を補助する)方法は、(1)対象から得た生体試料を分析して、試料中の疾患又は状態の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップと、(2)試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの疾患若しくは状態陽性及び/又は疾患若しくは状態陰性参照レベルと比較して、対象が疾患又は状態を有するかどうかを診断する(又は診断において補助する)ステップとを含む。例えば、対象が前糖尿病であるかどうかを診断する(又は診断において補助する)方法は、(1)対象から得た生体試料を分析して、試料中の糖尿病前症の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップと、(2)試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの糖尿病前症陽性及び/又は糖尿病前症陰性参照レベルと比較して、対象が糖尿病前症を有するかどうかを診断する(又は診断において補助する)ステップとを含む。使用される1種又は複数のバイオマーカーは、表4、5、6、7、8、9A、9B及びそれらの組合せから選択される。このような方法が、インスリン抵抗性、糖尿病前症、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態の診断における補助において用いられる場合には、本方法の結果を、対象が所与の疾患又は状態を有するかどうかの臨床的判断において有用なその他の方法(又はその結果)とともに使用してもよい。対象が、糖尿病前症、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態を有するかどうかの臨床的判断において有用な方法は、当技術分野では公知である。例えば、対象が糖尿病前症を有するかどうかの臨床的判断において有用な方法として、例えば、糖処理速度(Rd)、体重測定、ウエスト周囲測定、BMI測定、ペプチドYY測定、ヘモグロビンA1C測定、アディポネクチン測定、空腹時血漿グルコース測定、遊離脂肪酸測定、空腹時血漿インスリン測定などが挙げられる。対象におけるアテローム性動脈硬化症及び/又は心筋症の臨床的判断にとって有用な方法として、血管造影、ストレス試験、血液検査(例えば、ホモシステイン、フィブリノゲン、リポタンパク質(a)、小さいLDL粒子及びC反応性タンパク質レベルを測定するための)、心電図検査、心エコー検査法、コンピュータ断層撮影法(CT)スキャン、足関節/上腕血圧指数及び血管内超音波検査が挙げられる。
【0077】
別の実施例では、インスリン抵抗性、糖尿病前症、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症などの疾患又は状態のバイオマーカーの同定によって、疾患又は状態の1種又は複数の症状を示す対象における、このような疾患又は状態の診断(又は診断における補助)が可能となる。例えば、対象がインスリン抵抗性を有するかどうかを診断(又は診断において補助)する方法は、(1)対象から得た生体試料を分析して、試料中のインスリン抵抗性の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップと、(2)試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーのインスリン抵抗性陽性及び/又はインスリン抵抗性陰性参照レベルと比較して、対象がインスリン抵抗性を有するかどうかを診断(又は診断において補助)するステップとを含む。使用される1種又は複数のバイオマーカーは、表4、5、6、7、8、9A及び/又は9Bから選択される。インスリン抵抗性のバイオマーカーを用いて、対象を、インスリン抵抗性、インスリン感受性又はインスリン感受性に障害を有するのいずれかであると分類することもできる。以下の例2に記載されるように、対象をインスリン抵抗性、インスリン感受性又はインスリン感受性に障害を有すると分類するために使用してよいバイオマーカーが同定される。また、表4、5、6、7、8、9A及び/又は9B中のバイオマーカーを用いて、対象を、空腹時血糖異常又は耐糖能異常又は正常耐糖能を有すると分類することもできる。したがって、バイオマーカーは、糖処理速度が高まるにつれ、増大又は減少する化合物を示し得る。各群(インスリン抵抗性、インスリンの障害、インスリン感受性)のバイオマーカーの適当な参照レベルを決定することによって、対象を適切に診断することができる。インスリン抵抗性の診断において補助するために、又は対象をNGT、IFG又はIGTを有すると分類するために、この方法の結果を臨床測定値の結果と組み合わせてもよい。
【0078】
インスリン抵抗性の増大は、HIクランプによって測定される糖処理速度(Rd)と相関している。以下に示されるように、メタボノミクス分析を実施して、糖処理速度(Rd)と相関するバイオマーカーを同定した。これらのバイオマーカーを、数学モデルにおいて使用し、対象の糖処理速度を求めることができる。個体のインスリン感受性は、このモデルを用いて決定することができる。メタボロミック分析を用いて、少なくとも2つの独立コホートの対象における高インスリン正常血糖クランプの「ゴールドスタンダード」によって測定されるようなインスリン抵抗性を予測するための簡単な血液検査において使用できる代謝産物のパネルを発見した。別の実施例では、対象を正常耐糖能(NGT)、空腹時血糖異常(IFG)又は耐糖能異常(IGT)を有すると分類することにおいて使用するための、経口グルコース負荷試験(OGTT)の結果と相関するバイオマーカーが同定される。
【0079】
独立研究を実施して、多項式(polynomic)アルゴリズムとともに使用すると、対象におけるインスリン抵抗性の変化の初期検出が可能となる一連のバイオマーカーを同定した。一態様では、本発明は、対象のインスリン抵抗性のレベルを示すスコア(「IRスコア」)を対象に提供する。このスコアは、臨床上大きく変化したバイオマーカー及び/又はバイオマーカーの組合せの参照レベルに基づいたものであり得る。参照レベルはアルゴリズムから導くか、又は耐糖能異常の指数からコンピュータで計算することができ、図5に示されるように報告書で示すことができる。IRスコアによって、対象は、正常(即ち、インスリン感受性)から高のインスリン抵抗性の範囲に入れられる。疾患進行又は寛解は、IRスコアの定期的な測定及びモニタリングによってモニタリングできる。治療的介入に対する応答は、IRスコアをモニタリングすることによって決定することができる。IRスコアはまた、薬物有効性を評価するためにも使用できる。
【0080】
対象のインスリン抵抗性スコア(IRスコア)を決定する方法は、本明細書に提供されるそれぞれの表において同定される1種又は複数のバイオマーカーを用いて実施できる。例えば、対象のIRスコアを決定する方法は、(1)対象から得た生体試料を分析して、試料中の、1種又は複数のインスリン抵抗性バイオマーカーのレベルを決定するステップと、(2)試料中の、1種又は複数のインスリン抵抗性バイオマーカーを、1種又は複数のバイオマーカーのインスリン抵抗性参照レベルと比較して、対象のインスリン抵抗性スコアを決定するステップとを含む。使用される1種又は複数のバイオマーカーは、表4、5、6、7、8、9A、9B及びそれらの組合せから選択され得る。本方法は、表4、5、6、7、8、9A及び/又は9Bから選択される任意の数のマーカー、例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種又はそれ以上のマーカーを使用してよい。複数のバイオマーカーを、回帰分析などの統計的手法をはじめとする任意の方法によって、所与の状態、例えば、インスリン抵抗性と相関させることができる。
【0081】
また、以下に示されるように、メタボロミック分析を実施して、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症、心筋症及びその他の疾患又は状態と相関するバイオマーカーを同定した。このようなバイオマーカーを本発明の方法に用いて、生体試料を分析し、試料中のバイオマーカーのレベルを同定又は測定してもよい。
【0082】
任意の適した方法を用いて、生体試料を分析し、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定してもよい。適した方法として、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー)、質量分析(例えば、MS、MS−MS)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、抗体結合、その他の免疫化学的技術及びそれらの組合せが挙げられる。さらに、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、例えば、測定されることが望まれるバイオマーカー(複数可)のレベルと相関する化合物(又は複数の化合物)のレベルを測定するアッセイを用いることによって間接的に測定してもよい。
【0083】
1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定した後、レベルを比較し、1種又は複数のバイオマーカーの疾患又は状態参照レベルと比較して、試料中の1種又は複数のバイオマーカーの各々の評点を決定する。任意のアルゴリズムを用いて評点を集め、対象のスコア、例えば、インスリン抵抗性(IR)スコアを作製する。アルゴリズムは、バイオマーカーの数、バイオマーカーの疾患又は状態との相関などを含めたインスリン抵抗性などの疾患又は障害と関連している任意の因子を考慮し得る。
【0084】
一実施例では、対象のインスリン抵抗性スコアを、レベルインスリン抵抗性レベル、正常耐糖能からインスリン抵抗性を示す任意の指数と相関させてもよい。例えば、25未満のインスリン抵抗性スコアを有する対象は、対象が正常耐糖能を有することを示し得、26から50の間のスコアは、対象が低い耐糖能異常を有することを示し得、51から75の間のスコアは、対象が中程度の耐糖能異常を有することを示し得、76から100の間のスコアは、対象が高い耐糖能異常を有することを示し得、100を超えるスコアは、対象が2型糖尿病を有することを示し得る。
【0085】
III.疾患又は状態進行/退縮のモニタリング
本明細書におけるバイオマーカーの同定によって、対象におけるそれぞれの疾患又は状態(例えば、糖尿病前症、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症、心筋症、インスリン抵抗性など)の進行/退縮をモニタリングすることが可能となる。対象における糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症などの疾患又は状態の進行/退縮をモニタリングする方法は、(1)対象から得た第1の生体試料を分析して、第1の時点で対象から得られた第1の試料中の、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28及びそれらの組合せから選択されるそれぞれの疾患又は状態の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップと、(2)対象から得た第2の生体試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカー、第2の時点で対象から得られた第2の試料のレベルを決定するステップと、(3)第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較して、対象における疾患又は状態の進行/退縮をモニタリングするステップとを含む。本方法の結果は、対象における疾患又は状態の経過(即ち、変化があるとすれば、進行又は退縮)を示す。
【0086】
一実施形態では、本方法の結果は、対象におけるインスリン抵抗性を示し、経時的にモニタリングできるインスリン抵抗性(IR)スコアに基づくものであり得る。第1の時点の試料から得たIRスコアを、少なくとも第2の時点の試料から得たIRスコアと比較することによって、IRの進行又は退縮を決定することができる。対象における糖尿病前症及び/又は2型糖尿病の進行/退縮をモニタリングするこのような方法は、(1)対象から得た第1の生体試料を分析して、第1の時点で対象から得た第1の試料のIRスコアを決定するステップと、(2)対象から得た第2の生体試料を分析して、第2のIRスコア、第2の時点で対象から得た第2の試料を決定するステップと、(3)第1の試料中のIRスコアを、第2の試料中のIRスコアと比較して、対象における糖尿病前症及び/又は2型糖尿病の進行/退縮をモニタリングするステップとを含む。
【0087】
進行モニタリングのために本発明のバイオマーカー及びアルゴリズムを用いることは、食事制限、運動又は初期段階薬物治療などの予防的手段を実施するよう医師の決定を導く、又は補助し得る。
【0088】
IV.疾患又は状態の素因の決定
本明細書において同定されるバイオマーカーを、対象が、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態の何らかの症状を示していないかどうかの決定において用いてもよい。バイオマーカーはまた、例えば、対象が、インスリン抵抗性の発生の素因があるかどうかを決定するために使用してもよい。糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの特定の疾患又は状態の症状が全くない対象が、特定の疾患又は状態の発症の素因があるかどうかを決定するこのような方法は、(1)対象から得た生体試料を分析して、試料中の、それぞれの表(例えば、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26及びそれらの組合せ)中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップと、(2)試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの疾患若しくは状態陽性及び/又は疾患若しくは状態陰性参照レベルと比較して、対象がそれぞれの疾患又は状態の発症の素因があるかどうかを決定するステップとを含む。例えば、インスリン抵抗性のバイオマーカーの同定によって、インスリン抵抗性の症状のない対象が、インスリン抵抗性の発症の素因があるかどうかを決定することが可能となる。インスリン抵抗性の症状がない対象が、インスリン抵抗性の発症の素因があるかどうかを決定する方法は、(1)対象から得た生体試料を分析して、試料中の、表4、5、6、7、8、9A及び9B及びそれらの組合せ中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップと、(2)試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーのインスリン抵抗性陽性及び/又はインスリン抵抗性陰性参照レベルと比較して、対象がインスリン抵抗性の発症の素因があるかどうかを決定するステップとを含む。この方法の結果は、対象が疾患又は状態の発症の素因があるかどうかの臨床的判断において有用なその他の方法(又はその結果)とともに用いてもよい。
【0089】
試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定した後、レベルを疾患又は状態陽性及び/又は疾患又は状態陰性参照レベルと比較して、対象が糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態の発症の素因があるかどうかを予測する。疾患又は状態陽性参照レベルに対応する、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、参照レベルと同様、実質的に、参照レベルと同様、参照レベルの最小及び/若しくは最大を上回る、及び/若しくは下回る、並びに/又は参照レベルの範囲内であるレベル)は、疾患又は状態の発症の素因がある対象を示す。疾患又は状態陰性参照レベルに対応する、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、参照レベルと同様、実質的に、参照レベルと同様、参照レベルの最小及び/若しくは最大を上回る、及び/若しくは下回る、並びに/又は参照レベルの範囲内であるレベル)は、疾患又は状態の発症の素因がない対象を示す。さらに、疾患又は状態陰性参照レベルと比較して、試料中に異なった形で存在する(特に、総計的に有意であるレベルで)1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、疾患又は状態の発症の素因がある対象を示し得る。疾患又は状態陽性参照レベルと比較して、試料中に異なった形で存在する(特に、総計的に有意であるレベルで)1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、疾患又は状態の発症の素因がない対象を示す。
【0090】
例として、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定した後に、そのレベル(複数可)を、インスリン抵抗性陽性及び/又はインスリン抵抗性陰性参照レベルと比較し、対象がインスリン抵抗性の発症の素因があるかどうかを予測する。インスリン抵抗性陽性参照レベルに対応する、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、参照レベルと同様、実質的に、参照レベルと同様、参照レベルの最小及び/若しくは最大を上回る、及び/若しくは下回る、並びに/又は参照レベルの範囲内であるレベル)は、インスリン抵抗性の発症の素因がある対象を示す。インスリン抵抗性陰性参照レベルに対応する、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、参照レベルと同様、実質的に、参照レベルと同様、参照レベルの最小及び/若しくは最大を上回る、及び/若しくは下回る、並びに/又は参照レベルの範囲内であるレベル)は、インスリン抵抗性の発症の素因がない対象を示す。さらに、インスリン抵抗性陰性参照レベルと比較して、試料中に異なった形で存在する(特に、総計的に有意であるレベルで)1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、インスリン抵抗性の発症の素因がある対象を示す。インスリン抵抗性陽性参照レベルと比較して、試料中に異なった形で存在する(特に、総計的に有意であるレベルで)1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、インスリン抵抗性の発症の素因がない対象を示す。この実施例では、インスリン抵抗性が論じられているが、上記で示される1種又は複数のそれぞれのバイオマーカーを用い、この方法に従って、その他の疾患又は状態の素因も決定できる。
【0091】
さらに、インスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態を有さない対象が、疾患又は状態の発症の素因があるかどうかを評価することに対して特異的な参照レベルを決定することも可能である。例えば、疾患又は状態の発症に対する対象における種々の程度の危険を評価するためのバイオマーカーの参照レベルを決定することも可能である。このような参照レベルは、対象から得た生体試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較するために使用することもできる。
【0092】
V.治療効力のモニタリング:
また、提供されるバイオマーカーによって、インスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態を治療するための組成物の有効性の評価が可能となる。例えば、インスリン抵抗性のバイオマーカーの同定によってまた、インスリン抵抗性を治療するための組成物の有効性の評価並びにインスリン抵抗性を治療するための2種以上の組成物の相対有効性の評価も可能となる。このような評価は、例えば、疾患又は状態を治療するための組成物の有効性研究に、並びにリード選択に用いてもよい。
【0093】
したがって、インスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態を治療するための組成物の有効性を評価する方法であって、(1)糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態を有し、組成物を用いて現在又はかつて治療された対象(又は対象の群)由来の生体試料(又は試料の群)を分析して、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27及び28並びにそれらの組合せから選択される障害の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップと、(2)試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、(a)対象から先に採取した生体試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと(ここで、先に採取した生体試料は、組成物で治療される前の対象から得た)、(b)1種又は複数のバイオマーカーの疾患又は状態陽性参照レベルと、(c)1種又は複数のバイオマーカーの疾患又は状態陰性参照レベルと、(d)1種又は複数のバイオマーカーの疾患又は状態進行陽性参照レベルと、(e)1種又は複数のバイオマーカーの疾患又は状態退縮陽性参照レベルと比較するステップとを含む方法も提供される。比較の結果は、それぞれの疾患又は状態を治療するための組成物の有効性を示す。
【0094】
経時的な、1種又は複数のバイオマーカーのレベルの変化(もしあれば)は、対象における疾患又は状態の進行又は退縮を示し得る。対象における所与の疾患又は状態の経過を特性決定するために、第1の試料中の1種若しくは複数のバイオマーカーのレベル、第2の試料中の1種若しくは複数のバイオマーカーのレベル並びに/又は第1及び第2の試料中のバイオマーカーのレベルの比較の結果を、1種若しくは複数のバイオマーカーのそれぞれの疾患若しくは状態陽性及び/又は疾患若しくは状態陰性参照レベルと比較してもよい。比較が、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが、経時的に増大又は減少(例えば、第1の試料と比較して第2の試料において)して、疾患又は状態陽性参照レベルに対して、より類似するように(又は、疾患又は状態陰性参照レベルに対して、より類似しないように)なっていることを示す場合には、結果は、疾患又は状態の進行を示す。比較が、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが、経時的に増大又は減少して、疾患又は状態陰性参照レベルに対して、より類似するようになっている(又は、疾患又は状態陽性参照レベルに対して、より類似しないように)なっていることを示す場合には、結果は、疾患又は状態の退縮を示す。
【0095】
例えば、対象におけるインスリン抵抗性の経過を特性決定するために、第1の試料中の1種若しくは複数のバイオマーカーのレベル、第2の試料中の1種若しくは複数のバイオマーカーのレベル並びに/又は第1及び第2の試料中のバイオマーカーのレベルの比較の結果を、1種又は複数のバイオマーカーのインスリン抵抗性陽性及び/又はインスリン抵抗性陰性参照レベルと比較してもよい。比較が、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが、経時的に増大又は減少(例えば、第1の試料と比較して第2の試料において)して、インスリン抵抗性陽性参照レベルに対して、より類似するように(又は、インスリン抵抗性陰性参照レベルに対して、より類似しないように)なっていることを示す場合には、結果は、インスリン抵抗性の進行を示す。比較が、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが、経時的に増大又は減少して、インスリン抵抗性陰性参照レベルに対して、より類似するように(又は、インスリン抵抗性陽性参照レベルに対して、より類似しないように)なっていることを示す場合には、結果は、インスリン抵抗性の退縮を示す。
【0096】
第2の試料は、第1の試料を得た後、任意の期間、対象から得ることができる。一態様では、第2の試料を、第1の試料後又は組成物の投与の開始後1、2、3、4、5、6日又はそれ以上に得る。別の態様では、第2の試料を、第1の試料後又は組成物の投与の開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週又はそれ以上に得る。別の態様では、第2の試料を、第1の試料後又は組成物の投与の開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12カ月又はそれ以上に得てもよい。
【0097】
対象における、インスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態の経過もまた、第1の試料中の、1種若しくは複数のバイオマーカーのレベル、第2の試料中の1種若しくは複数のバイオマーカーのレベル並びに/又は第1及び第2の試料中のバイオマーカーのレベルの比較の結果を、疾患若しくは状態の進行陽性及び/又は疾患若しくは状態の退縮陽性参照レベルと比較することによって特性決定できる。比較が、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが、経時的に増大又は減少(例えば、第1の試料と比較して第2の試料において)して、疾患又は状態の進行陽性参照レベルに対して、より類似するように(又は、疾患−又は状態の退縮陽性参照レベルに対して、より類似しないように)なっていることを示す場合には、結果は、疾患又は状態の進行を示す。比較が、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが、経時的に増大又は減少(例えば、第1の試料と比較して第2の試料において)して、疾患又は状態の退縮陽性参照レベルに対して、より類似するように(又は、疾患又は状態の進行陽性参照レベルに対して、より類似しないように)なっていることを示す場合には、結果は、疾患又は状態の退縮を示す。
【0098】
本明細書に記載されるその他の方法と同様に、対象におけるインスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態の進行/退縮をモニタリングする方法において行われる比較は、単純比較、1種又は複数の統計的分析及びそれらの組合せをはじめ、種々の技術を用いて実施してもよい。
【0099】
本方法の結果は、対象における疾患又は状態の進行/退縮の臨床モニタリングにおいて有用なその他の方法(又はその結果)とともに用いてもよい。
【0100】
上記のように、インスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態を診断(又は診断において補助)する方法に関連して、任意の適した方法を用いて、生体試料を分析し、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定することができる。さらに例えば、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27及び/又は28中のバイオマーカー又はその任意の部分のすべての組合せを含めた1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定し、対象におけるそれぞれの疾患又は状態の進行/退縮をモニタリングする方法において用いることができる。
【0101】
このような方法を実施して、対象における疾患又は状態の発症の経過、例えば、糖尿病前症を有する対象における糖尿病前症から2型糖尿病の経過をモニタリングしてもよく、又は、疾患又は状態を有さない対象(例えば、疾患又は状態の発症の素因があると疑われる対象)において使用して、疾患又は状態の素因のレベルをモニタリングしてもよい。
【0102】
メトホルミン又はアカルボースなどの抗糖尿病治療が、前糖尿病患者において糖尿病進行を予防できるかどうかを決定するために、世界各国から臨床研究が実施されてきた。これらの研究によって、このような治療が、糖尿病発病を予防し得ることがわかった。米国糖尿病予防プログラム(U.S.Diabetes Prevention Program)(DPP)によれば、メトホルミンは、糖尿病への進行率を38%低減し、ライフスタイル及び運動介入が、糖尿病への進行率を56%低減した。このような成功のために、ADAは、その2008Standards of Medical Care in Diabetesを見直し、2型糖尿病の予防/遅延に関する節に以下の意見を含めた。「危険の極めて高く(組み合わせたIFG及びIGT及びその他の危険因子)、肥満であり、60才未満である人においては、ライフスタイルカウンセリングに加え、メトホルミンが検討され得る。」
【0103】
製薬会社は、PPARγクラスのインスリン増感剤などの特定のクラスの薬物が、糖尿病進行を予防できるかどうかを評価するための研究を実施してきた。DPP治験と同様に、これらの研究のうちいくつかは、糖尿病の予防にとって大いに有望であり成功を示したが、その他のものは、現在のIR診断によって定義される一般的な前糖尿病集団に投与された場合に、抗糖尿病薬物療法に伴われる特定の量の危険を顕在化させた。製薬会社は、ハイリスク糖尿病前症を同定及び層別化でき、その前糖尿病治療候補の有効性をより効率的かつ安全に評価できる診断学を必要としている。
【0104】
臨床状況における経口グルコース負荷試験(OGTT)手順の低頻度を考慮すると、絶食時試料でのインスリン抵抗性を直接測定する新規診断検査によって、医師が、糖尿病前症及び心血管疾患の病因へと向かっている患者を、より早く同定し、層別化することが可能となるであろう。
【0105】
VI.治療に対するレスポンダー及びノンレスポンダーの同定
また、提供されるバイオマーカーによって、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態を治療するための組成物が有効である対象(即ち、患者が治療に応答する)の同定が可能となる。例えば、インスリン抵抗性のバイオマーカーの同定によってまた、インスリン抵抗性を治療するための組成物に対する対象応答の評価並びにインスリン抵抗性を治療するための2種以上の組成物に対する相対的な患者応答の評価も可能となる。このような評価を、例えば、特定の対象の疾患又は状態を治療するための組成物の選択に用いてもよい。
【0106】
したがって、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態を治療するための組成物に対する患者の応答を予測する方法であって、(1)糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態を有し、組成物を用いて現在又はかつて治療された対象(又は対象の群)由来の生体試料(又は試料の群)を分析して、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27及び28並びにそれらの組合せから選択される障害の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップと、(2)試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、(a)対象から先に採取した生体試料中の1種若しくは複数のバイオマーカーと(ここで、先に採取した生体試料は、組成物で治療される前の対象から得た)(b)1種若しくは複数のバイオマーカーの疾患又は状態陽性参照レベルと、(c)1種若しくは複数のバイオマーカーの疾患若しくは状態陰性参照レベルと、(d)1種若しくは複数のバイオマーカーの疾患若しくは状態進行陽性参照レベルと、並びに/又は(e)1種若しくは複数のバイオマーカーの疾患若しくは状態退縮陽性参照レベルと比較するステップとを含む方法も提供される。比較の結果は、それぞれの疾患又は状態を治療するための組成物に対する患者の応答を示す。
【0107】
経時的な、1種又は複数のバイオマーカーのレベルの変化(もしあれば)は、治療に対する対象の応答を示し得る。対象における所与の治療の経過を特性決定するために、第1の試料中の1種若しくは複数のバイオマーカーのレベル、第2の試料中の1種若しくは複数のバイオマーカーのレベル並びに/又は第1及び第2の試料中のバイオマーカーのレベルの比較の結果を、1種若しくは複数のバイオマーカーのそれぞれの疾患若しくは状態陽性及び/又は疾患若しくは状態陰性参照レベルと比較してもよい。比較が、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが、経時的に増大又は減少(例えば、第1の試料と比較して第2の試料において)して、疾患又は状態陽性参照レベルに対して、より類似するように(又は、疾患又は状態陰性参照レベルに対して、より類似しないように)なっていることを示す場合には、結果は、治療に対して応答しない患者を示す。比較が、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが、経時的に増大又は減少して、疾患又は状態陰性参照レベルに対して、より類似するようになっている(又は、疾患又は状態陽性参照レベルに対して、より類似しないように)なっていることを示す場合には、結果は、治療に対して応答する患者を示す。
【0108】
例えば、インスリン抵抗性のための治療に対する患者応答を特性決定するために、第1の試料中の1種若しくは複数のバイオマーカーのレベル、第2の試料中の1種若しくは複数のバイオマーカーのレベル並びに/又は第1及び第2の試料中のバイオマーカーのレベルの比較の結果を、1種又は複数のバイオマーカーのインスリン抵抗性陽性及び/又はインスリン抵抗性陰性参照レベルと比較してもよい。比較が、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが、経時的に増大又は減少(例えば、第1の試料と比較して第2の試料において)して、インスリン抵抗性陽性参照レベルに対して、より類似するように(又は、インスリン抵抗性陰性参照レベルに対して、より類似しないように)なっていることを示す場合には、結果は、治療に対する無応答を示す。比較が、1種又は複数のバイオマーカーのレベルが、経時的に増大又は減少して、インスリン抵抗性陰性参照レベルに対して、より類似するように(又は、インスリン抵抗性陽性参照レベルに対して、より類似しないように)なっていることを示す場合には、結果は、治療に対する応答を示す。
【0109】
第2の試料は、第1の試料を得た後、任意の期間、対象から得ることができる。一態様では、第2の試料を、第1の試料後、1、2、3、4、5、6日又はそれ以上に得る。別の態様では、第2の試料を、第1の試料後又は組成物での治療の開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週又はそれ以上に得る。別の態様では、第2の試料を、第1の試料後又は組成物での治療の開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12カ月又はそれ以上に得てもよい。
【0110】
本明細書に記載されるその他の方法と同様に、対象におけるインスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態の治療に対する患者応答を決定する方法において行われる比較は、単純比較、1種又は複数の統計的分析及びそれらの組合せをはじめ、種々の技術を用いて実施してもよい。
【0111】
本方法の結果は、対象における疾患又は状態の治療に対する患者応答を決定することにおいて有用なその他の方法(又はその結果)とともに用いてもよい。
【0112】
上記のように、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態を診断(又は診断において補助)する方法に関連して、任意の適した方法を用いて、生体試料を分析し、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定することができる。さらに、例えば、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27及び/又は28中のバイオマーカー又はその任意の部分のすべての組合せを含めた1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定し、対象におけるそれぞれの疾患又は状態の進行/退縮をモニタリングする方法において用いることができる。
【0113】
このような方法を実施して、対象における疾患又は状態の発症のための治療に対する患者応答、例えば、糖尿病前症を有する対象における糖尿病前症から2型糖尿病の経過をモニタリングしてもよく、又は、疾患又は状態を有さない対象(例えば、疾患又は状態の発症の素因があると疑われる対象)において使用して、疾患又は状態の素因のレベルをモニタリングしてもよい。
【0114】
製薬会社は、PPARγクラスのインスリン増感剤などの特定のクラスの薬物が、糖尿病進行を予防できるかどうかを評価するための研究を実施してきた。これらの研究のうちいくつかは、糖尿病の予防にとって大いに有望であり成功を示したが、その他のものは、現在のIR診断によって定義される一般的な前糖尿病集団に投与された場合に、特定の抗糖尿病薬物療法に伴われる特定の量の危険を顕在化させた。製薬会社は、レスポンダー及びノンレスポンダーを同定し、ハイリスク糖尿病前症を層別化し、その前糖尿病治療候補の有効性をより効率的かつ安全に評価できる診断学を必要としている。治療に対する非応答患者と応答患者を区別する新規診断検査によって、製薬会社が、治療薬に対して応答する可能性が高い患者を同定及び層別化し、治療に対して応答する可能性が高い特定のコホートのための特異的治療薬を標的とすることが可能となる。
【0115】
VII.バイオマーカーの調節における活性について組成物をスクリーニングする方法
本明細書に提供されるバイオマーカーによってまた、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症などの疾病又は状態と関連しているバイオマーカーの調節(疾患又は状態の治療において有用であり得る)における活性について組成物をスクリーニングすることが可能となる。このような方法は、それぞれの表中に列挙されるそれぞれのバイオマーカーから選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベルの調節における活性について、試験化合物をアッセイすることを含む。このようなスクリーニングアッセイは、in vitro及び/又はin vivoで実施でき、試験組成物の存在下で、このようなバイオマーカーの調節をアッセイするのに有用な、当技術分野で公知の任意の形、例えば、細胞培養アッセイ、器官培養アッセイ及びin vivoアッセイ(例えば、動物モデルを用いるアッセイ)などであり得る。例えば、インスリン抵抗性のバイオマーカーの同定によって、インスリン抵抗性と関連しているバイオマーカーの調節(インスリン抵抗性の治療において有用であり得る)における活性について組成物をスクリーニングすることが可能となる。インスリン抵抗性の治療にとって有用な組成物をスクリーニングする方法は、表4、5、6、7、8、9A、9B、27及び/又は28中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルの調節における活性について、試験組成物をアッセイすることを含む。この例では、インスリン抵抗性が論じられているが、上記で示される1種又は複数のそれぞれのバイオマーカーを用い、この方法に従って、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症などのその他の疾患及び状態も、診断され得る、又は診断されるのを補助され得る。
【0116】
インスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症などの疾患又は状態の1種又は複数のバイオマーカーの調節における活性について組成物をスクリーニングする方法は、(1)1種又は複数の細胞を組成物と接触させるステップと、(2)1種又は複数の細胞又は細胞と関連している生体試料の少なくとも一部を分析して、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25及び/又は26中に提供されるバイオマーカーから選択される、疾患又は状態の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップと、(3)1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの所定の標準レベルと比較して、組成物が、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを調節したかどうかを決定するステップとを含む。一実施形態では、インスリン抵抗性の1種又は複数のバイオマーカーの調節における活性について組成物をスクリーニングする方法は、(1)1種又は複数の細胞を、組成物と接触させるステップと、(2)1種又は複数の細胞又は細胞と関連している生体試料の少なくとも一部を分析して、表4、5、6、7、8、9A及び/又は9Bから選択されるインスリン抵抗性の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップと、(3)1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの所定の標準レベルと比較して、組成物が、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを調節したかどうかを決定するステップとを含む。上記で論じたように、細胞は、組成物とin vitro及び/又はin vivoで接触させてもよい。1種又は複数のバイオマーカーの所定の標準レベルは、組成物の不在下での1種又は複数の細胞中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルであり得る。1種又は複数のバイオマーカーの所定の標準レベルはまた、組成物と接触させていない対照細胞中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルであり得る。
【0117】
さらに、本方法は、1種又は複数の細胞又は細胞と関連している生体試料の少なくとも一部を分析して、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症などの疾患又は状態の、1種又は複数の非バイオマーカー化合物のレベルを決定するステップをさらに含み得る。次いで、非バイオマーカー化合物のレベルを、1種又は複数の非バイオマーカー化合物の所定の標準レベルと比較してもよい。
【0118】
任意の適した方法を用いて、1種又は複数の細胞又は細胞と関連している生体試料の少なくとも一部を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベル(又は非バイオマーカー化合物のレベル)を決定することができる。適した方法として、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー)、質量分析(例えば、MS、MS−MS)、ELISA、抗体結合、その他の免疫化学技術、生化学若しくは酵素反応又はアッセイ及びそれらの組合せが挙げられる。さらに、1種又は複数のバイオマーカーのレベル(又は非バイオマーカー化合物のレベル)は、例えば、測定されることが望まれるバイオマーカー(単数又は複数)(又は非バイオマーカー化合物)のレベルと相関する化合物(単数又は複数)のレベルを測定するアッセイを用いることによって間接的に測定してもよい。
【0119】
VIII.可能性ある薬物標的を同定する方法
本開示内容はまた、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27及び/又は28に列挙されるバイオマーカーを用いて、インスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症などの疾患又は状態の可能性ある薬物標的を同定する方法を提供する。糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症などの疾患又は状態の可能性ある薬物標的を同定する方法は、(1)それぞれの表(表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27及び/又は28)から選択される、メタボリックシンドローム関連代謝障害の1種又は複数のバイオマーカーと関連している1種又は複数の生化学経路を同定するステップと、(2)1種又は複数の同定された生化学経路のうち少なくとも1種に影響を及ぼすタンパク質(例えば、酵素)を同定し、このタンパク質が疾患又は状態の可能性ある薬物標的であるステップとを含む。例えば、インスリン抵抗性のバイオマーカーの同定によって、インスリン抵抗性の可能性ある薬物標的の同定も可能となる。インスリン抵抗性の可能性ある薬物標的を同定する方法は、(1)表4、5、6、7、8、9A、9B、27及び/又は28から選択される、インスリン抵抗性の1種又は複数のバイオマーカーと関連している1種又は複数の生化学経路を同定するステップと、(2)1種又は複数の同定された生化学経路のうち少なくとも1種に影響を及ぼすタンパク質(例えば、酵素)を同定し、タンパク質がインスリン抵抗性の可能性ある薬物標的であるステップとを含む。この例では、インスリン抵抗性が論じられているが、上記で示される1種又は複数のそれぞれのバイオマーカーを用い、この方法に従って、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症などのその他の疾患又は状態も、診断され得る、又は診断されるのを補助され得る。
【0120】
糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症などの疾患又は状態の可能性ある薬物標的を同定するための別の方法は、(1)それぞれの表(表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27及び/又は28)から選択されるメタボリックシンドローム関連代謝障害の1種又は複数のバイオマーカー及び疾患又は状態の1種又は複数の非バイオマーカー化合物と関連している、1種又は複数の生化学経路を同定するステップと(2)1種又は複数の同定された生化学経路のうち少なくとも1種に影響を及ぼすタンパク質を同定し、このタンパク質が、疾患又は状態の可能性ある薬物標的であるステップとを含む。例えば、インスリン抵抗性の可能性ある薬物標的を同定する方法は、(1)表4、5、6、7、8、9A、9B、27及び/又は28から選択される、インスリン抵抗性の1種又は複数のバイオマーカー及びインスリン抵抗性の1種又は複数の非バイオマーカー化合物と関連している1種又は複数の生化学経路を同定するステップと、(2)1種又は複数の同定された生化学経路のうち少なくとも1種に影響を及ぼすタンパク質を同定し、このタンパク質が、インスリン抵抗性の可能性ある薬物標的であるステップとを含む。
【0121】
1種又は複数のバイオマーカー(又は非バイオマーカー化合物)と関連している、1種又は複数の生化学経路(例えば、生合成及び/又は代謝(異化)経路)を同定する。生化学経路を同定した後、経路の少なくとも1種に影響を及ぼす、1種又は複数のタンパク質を同定する。経路のうち2種以上に影響を及ぼすタンパク質が同定されることが好ましい。
【0122】
代謝産物(例えば、経路中間体)の蓄積は、代謝産物の下流の「ブロック」の存在を示し得、このブロックは、下流代謝産物(例えば、生合成経路の生成物)が低レベルであること/下流代謝産物がないことをもたらし得る。同様に、代謝産物がないことは、不活性若しくは非機能的酵素に起因する、又は生成物を産生するのに必要な基質である生化学中間体を利用できないことに起因する代謝産物の上流の経路における「ブロック」の存在を示し得る。或いは、代謝産物のレベルの増大は、異常なタンパク質を生じさせる遺伝子突然変異を示し得、異常なタンパク質は、代謝産物の過剰産生及び/又は蓄積をもたらし、これが、その他の関連生化学経路の変更につながり、経路を通る正常な流れの調節不全をもたらし、さらに、生化学的中間体代謝産物の蓄積は毒性であり得、関連経路の必要な中間体の産生を損ない得る。経路間の関連性が現在わかっておらず、このデータがこのような関連性を示し得るということがあり得る。
【0123】
次いで、可能性ある薬物標的として同定されたタンパク質を用いて、インスリン抵抗性などの特定の疾患又は状態を治療するための可能性ある候補であり得る組成物、例えば、遺伝子療法のための組成物を同定できる。
【0124】
IX.治療方法
別の態様では、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症などの疾患又は状態を治療する方法が提供される。この方法は、概して、糖尿病前症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症などの疾患又は状態を有する対象を、疾患又は状態を有していない健常な対象と比較して、疾患又は状態を有する対象では低下している、1種又は複数のバイオマーカーの有効量を用いて治療することを含む。投与され得るバイオマーカーは、その疾患又は状態を有していない対象と比較して、疾患又は状態の状況では減少している、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28及び/又は29中の1種又は複数のバイオマーカーを含み得る。このようなバイオマーカーは、バイオマーカー化合物の同定(即ち、化合物名)に基づいて単離できる。現在名前のない代謝産物であるバイオマーカーは、以下の実施例(例えば、表29)に列挙されるバイオマーカーの分析的特性決定に基づいて単離できる。いくつかの実施形態では、投与されるバイオマーカーは、メタボリックシンドローム関連代謝障害において減少しており、ウエルチt検定又はウィルコクソン順位和検定を用いることによって求められる、0.05未満のp値若しくは0.10未満のq値、又は0.05未満のp値及び0.10未満のq値の両方を有する、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28及び/又は29中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーである。その他の実施形態では、投与されるバイオマーカーは、疾患又は状態において減少しており、疾患又は状態と正相関又は逆相関のいずれかを有する、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28及び/又は29中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーである。一実施形態では、バイオマーカーは、疾患又は状態と、それぞれ≧+0.5又は≦−0.5いずれかの正相関又は逆相関を有する。その他の実施形態では、投与されるバイオマーカーは、疾患又は状態において、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%(即ち、存在しない)減少している、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28及び/又は29中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーである。一実施例では、インスリン抵抗性のバイオマーカーの同定によってまた、インスリン抵抗性の治療が可能となる。例えば、インスリン抵抗性を有する対象を治療するために、インスリン抵抗性を有さない健常対象と比較してインスリン抵抗性を有する対象では低下している、1種又は複数のインスリン抵抗性バイオマーカーの有効量を、対象に投与してもよい。投与してもよいバイオマーカーは、インスリン抵抗性を有する対象では減少している、表4、5、6、7、8、9A、9B、27、28及び/又は29中の1種又は複数のバイオマーカーを含み得る。この例では、インスリン抵抗性が論じられているが、上記で示される1種又は複数のそれぞれのバイオマーカーを用い、この方法に従って、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症及び心筋症などのその他の疾患又は状態も治療できる。
【0125】
X.その他の疾患又は状態のバイオマーカーを用いる方法
別の態様では、特定の疾患又は状態の本明細書に開示されるバイオマーカーの少なくとも一部はまた、その他の疾患又は状態のバイオマーカーでもあり得る。例えば、インスリン抵抗性バイオマーカーの少なくとも一部は、その他の疾患又は状態(例えば、メタボリックシンドローム)について本明細書に記載される方法において使用できるということが考えられる。即ち、インスリン抵抗性に関して本明細書に記載される方法を、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症又は心筋症などの疾患又は状態の診断(又は診断における補助)、このような疾患又は状態の進行/退縮をモニタリングする方法、このような疾患又は状態を治療するための組成物の有効性を評価する方法、このような疾患又は状態と関連しているバイオマーカーの調節における活性について組成物をスクリーニングする方法、このような疾患及び状態のための可能性ある薬物標的を同定する方法、このような疾患及び状態を治療する方法のために用いてもよい。このような方法は、インスリン抵抗性に関して本明細書に記載されるように実施できる。
【0126】
XI.その他の方法
本明細書に開示されるバイオマーカーを用いるその他の方法も企図される。例えば、米国特許第7,005,255号及び米国特許出願第11/357,732号、同10/695,265号(公開番号第2005/0014132号)、同11/301,077号(公開番号第2006/0134676号)、同11/301,078号(公開番号第2006/0134677号)、同11/301,079号(公開番号第2006/0134678号)及び同11/405,033号に記載される方法は、本明細書に開示される1種又は複数のバイオマーカーを含む小分子プロフィールを用いて実施してもよい。
【0127】
本明細書に列挙される方法のいずれかにおいて、使用されるバイオマーカーは、障害と、0.05未満のp値を有する、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28及び/若しくは29中のバイオマーカー並びに/又は0.10未満のq値を有し、並びに/又はそれぞれ≧+0.5若しくは≦−0.5いずれかの正相関若しくは逆相関を有する、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28及び/若しくは29中のバイオマーカーから選択され得る。本明細書に記載される方法のいずれかにおいて使用されるバイオマーカーはまた、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは100%(即ち、存在しない)、メタボリックシンドローム関連代謝障害において減少している(対照又は寛解と比較して)若しくは寛解において減少している(対照又は特定の疾患若しくは状態と比較して)、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28及び/若しくは29中のバイオマーカー;並びに/又は少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%若しくはそれ以上、所与の疾患若しくは状態において増大している(対照又は寛解と比較して)若しくは寛解において増大している(対照又は所与の疾患若しくは状態と比較して)、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28及び/若しくは29中のバイオマーカーから選択され得る。
【実施例】
【0128】
I.一般法
A.代謝プロフィールの同定
各試料を分析して、数百種の代謝産物の濃度を決定した。GC−MS(ガスクロマトグラフィー−質量分析)及びLC−MS(液体クロマトグラフィー質量分析)などの分析技術を用いて代謝産物を分析した。複数のアリコートを同時に、並行して分析し、適当な品質管理(QC)後、各分析から得られた情報を再結合させた。どの試料も、数千の特徴に従って特性決定し、最終的に、数百種の化学種になった。用いた技術は、新規の、化学的に名前のない化合物を同定できた。
【0129】
B.統計分析:
データを、いくつかの統計的手法を用いて分析し、限定できる集団間(例えば、インスリン抵抗性及び対照、インスリン抵抗性及び寛解、寛解及び対照)を区別するのに有用な、限定できる集団又は亜集団において異なるレベルで存在する分子(既知の、名前のついた代謝産物又は名前のない代謝産物のいずれか)(例えば、対照生体試料と比較した、又はインスリン抵抗性からの寛解にある患者と比較したメタボリックシンドローム生体試料のバイオマーカー)を同定した。限定できる集団又は亜集団中のその他の分子(既知の、名前のついた代謝産物又は名前のない代謝産物のいずれか)も同定した。
【0130】
試料の群(例えば、疾患又は健常、インスリン抵抗性又は正常インスリン感受性、アテローム性動脈硬化症又は正常、メタボリックシンドローム又は肥満であるがメタボリックシンドロームでない)への分類には、ランダムフォレスト解析を用いた。ランダムフォレストは、2つの集団の未知の平均が異なっているか否かを検定するt検定とは対照的に、新規データセット中の個々のものを各群に、どの程度上手く分類できるかについて推定値を与える。ランダムフォレストは、実験単位及び化合物の連続サンプリングに基づいて一連の分類木を作製する。次いで、各観察結果が、すべての分類木からの多数決に基づいて分類される。
【0131】
回帰分析は、ランダムフォレスト回帰法及び一変量相関/線形回帰法を用いて実施し、疾患又は疾患指標(例えば、アテローム性動脈硬化症、メタボリックシンドローム、Rd)と関連しているバイオマーカー化合物を同定するのに有用であるモデルを構築し、次いで、例えば、グルコース利用のレベルに従って個々のものを、正常、インスリンの障害又はインスリン抵抗性と分類するのに有用なバイオマーカー化合物を同定した。これらの分析では、疾患又は疾患の程度(例えば、アテローム性動脈硬化症、メタボリックシンドローム、Rd)を予測するのに有用であるバイオマーカー及び疾患又は疾患の程度(例えば、アテローム性動脈硬化症、メタボリックシンドローム、Rd)と正相関又は逆相関するバイオマーカー化合物を同定した。これらの分析において同定されたバイオマーカー化合物のすべてが統計的に有意であった。(p<0.05、q<0.1)。
【0132】
再帰分割は、「従属」変数(Y)を、独立(予測因子)変数(X)の収集物と関連付けて、分かりにくい関連性を明らかにする−又は簡単に理解する、Y=f(X)。分析は、JMPプログラム(SAS)を用いて実施し、決定木を作製した。p値をコンピュータで算出することによって、データの「分割」の統計的有意性は、より定量的なものになり得、これによって分割の性質は偶発的な事象に対して区別される。木の節又は枝へのデータの各「分割」の有意水準を、p値としてコンピュータで算出し、これによって、分割の性質は偶発的な事象に対して区別される。未加工p値の負のlog10であるLogWorthとして与えた。
【0133】
統計分析は、ワールドワイドウェブでウェブサイトcran.r−project.orgで、またJMP6.0.2((SAS登録商標Institute、Cary、NC)において利用可能なプログラム「R」を用いて実施した。
【0134】
(例2)
糖尿病前症のバイオマーカー
2A:糖処理と相関するバイオマーカーの同定
あるアルゴリズムにおいて使用されると、糖処理速度(即ち、Rd)と相関するバイオマーカーの組合せを発見した。さらに、バイオマーカーの最初のパネルを、15〜30種の候補代謝産物を含む標的とされるアッセイの開発のために縮小してもよい。インスリン抵抗性を予測するアルゴリズムを開発した。
【0135】
いくつかの研究を実施し、糖処理と相関するバイオマーカーを同定した。第1の研究では、血漿試料を、3種の異なるチアゾリンジンジオン薬(T=トログリタゾン、R=ロシグリタゾン又はP=ピオグリタゾン)のうち1種で治療を受けた、113人の痩せた、肥満又は糖尿病の対象から採取した(表1)。治療の前に対象から得たベースライン試料(S=ベースライン)は対照として用いた。各対象から1〜3の血漿試料を得、試料は、ベースライン(すべての対象;A)及び薬物治療の12週間後(B)又は4週間後(C)に採取した(表2)。どの対象においても、糖処理速度は、採血後、高インスリン血症正常血糖(HI)クランプによって測定した。分析のために、合計198の血漿試料を採取した。
表1 研究1コホートの性別及び処理
【表1】


表2 研究1コホートの治療及び採取時間
【表2】

【0136】
第2の研究では、血漿試料を、年齢及び性別についてバランスのとれた402人の対象から採取した。対象は、各個体の糖処理速度(Rd)を決定するためにHIクランプを受けた。経口グルコース負荷試験(OGTT)又は空腹時血漿グルコース検査(FPGT)に基づいて、対象の耐糖能を正常耐糖能(NGT)、I空腹時血糖異常(IFG)又は耐糖能異常(IGT)と表した。コホートは表3に記載されている。
表3 コホート説明、研究2
【表3】


略語
Rd:糖処理速度
NGT:正常耐糖能(OGTT、<140mg/dL又は<7.8mmol/L)
IFG:空腹時血糖異常(空腹時血漿グルコース、100〜125mg/dL又は5.6〜6.9mmol/L)
IGT:耐糖能異常(OGTT、140〜199mg/dL又は7.8〜11.0mmol/L)
【0137】
両研究のすべての試料を、GC−MS及びLC−MSによって分析し、試料中に存在する小分子を同定し、定量化した。試料中に400種を超える化合物を検出した。
【0138】
統計分析を実施し、バイオマーカーとして有用である化合物を決定した。線形回帰を用いて、個々の化合物のベースラインレベルを、個々のもの各々の正常血糖高インスリン血症クランプによって測定されるような糖処理速度(Rd)と相関させた。この解析に、ランダムフォレスト解析が続いて、Rdモデリングに最も有用である変数を同定した。次いで、LASSO回帰分析を、ランダムフォレスト解析からの交差検定された変数で実施し、Rdを予測するのに有用な変数の組合せを選定した。
【0139】
2B:グルコース利用のバイオマーカー、糖処理速度(Rd)と正相関及び逆相関する分子
(1)ヒト対象の種々の群から採取した血液試料を分析して、試料中の代謝産物のレベルを決定するステップと、次いで、(2)結果を統計的に分析して、対象の群中に異なった形で存在した代謝産物及び糖処理速度、インスリン感受性の指標と相関する代謝産物を決定するステップとによって、バイオマーカーを発見した。
【0140】
分析に使用した血漿試料は、表1、2及び3に記載されるコホートに由来するものであり、対象は、種々の速度の糖処理(Rd)を有していた。Rd値に基づいて、対象をインスリン抵抗性(Rd≦4)、インスリンの障害(4<Rd<7.5)又はインスリン感受性(Rd>7.5)として分類した。代謝産物のレベルを決定した後、一変量相関/線形回帰を用いてデータを分析した。
【0141】
以下の表4に列挙されるように、糖処理速度(Rd)、インスリン感受性の指標と相関したバイオマーカーを発見した。
【0142】
表4は、列挙されるバイオマーカー各々について、バイオマーカーに関するデータの統計分析において決定されたp値及びRdとの相関(Corr)を含む。正相関は、糖処理速度が増大するにつれ、バイオマーカーのレベルが増大することを示す。逆相関は、糖処理速度が増大するにつれ、バイオマーカーのレベルが低減することを示す。あり得る相関の範囲は、負(−)1.0から正(+)1.0の間である。負(−)1.0の結果は、完全な逆相関を意味し、正(+)1.0は、完全な正相関を意味し、0は、相関が全くないことを意味する。表中に使用される用語「同重体」は、分析において使用した分析プラットフォームでは互いに区別できない化合物を示す(即ち、同重体中の化合物は、ほぼ同じ時間に溶出し、同様の(全く同一である場合もある)定量イオンを有し、従って、区別できない)。
【0143】
この分析の結果、研究1及び研究2においてRdと相関している個々の化合物がわかり、これらのバイオマーカーは表4に列挙されている。各バイオマーカーについて、研究、化合物名、データベース識別子、メジアン重要度が与えられている。ライブラリーID(LIB_ID)は、バイオマーカー化合物を測定するために使用された分析プラットフォームを示す。GC−MSは、ライブラリーID(Lib_ID)50によって示され、LC−MSは、ライブラリーID61、200及び201によって示される。バイオマーカー化合物は、相関の統計的有意性(P値)によって表中で順序付けられている。「RF_Rank」は、ランダムフォレスト解析からのバイオマーカーについて得られた重要度スコアを指す。「Comp_ID」とは、内部化合物ライブラリー中のその化合物の内部データベース識別子を指す。
表4 Rdとのバイオマーカー相関性
【表4−1】


【表4−2】


【表4−3】


【表4−4】


【表4−5】


【表4−6】


【表4−7】


【表4−8】

【0144】
2C:Rdモデリングのためのランダムフォレストを用いる変数選択
完全5倍交差検定回帰を含む50反復のランダムフォレスト解析(研究1について、この解析は、ベースラインデータ、n=111のみを含んでいたが、研究2については、すべての試料を含めた、n=402)を以下のとおりに実施した:
【0145】
データの80%を、トレーニングセットとして使用して、1000回の回帰ランダムフォレストを実施し、重要度スコアを記録し、その重要度スコアに従って、変数をランキングした。
【0146】
次いで、最低にランクされた変数から出発して4種の変数を一度に削除し、次いで、トレーニングセットで残りの変数を用いてランダムフォレストを実施し、残りの20%のデータ(即ち、試験セット)を予測した。各々のエラー及びR二乗を記録した。
【0147】
各変数について、平均/メジアン重要度スコア及びランクをすべての実施にわたって算出した。
【0148】
変数選択は、およそ30〜60の最初の変数についてはおおよそ安定である。
【0149】
2D:Rd相関に関して有意であると考えられる代謝産物の数の推定
代謝産物の数が約30又はそれ以上に達する時は、平均R二乗値は、常に高いままであり、対応するエラーは、一貫して低いままであり(図1及び2)、このことは、約30種の代謝産物は、Rdと相関させるアルゴリズムを構築するのに十分であり得るが、また、7種未満の代謝産物の組合せに基づいてRdと相関させるためのアルゴリズムを構築することが可能であり得ることを示唆する。結果として、上位30〜50の交差検定された化合物を回帰分析のために選択した。
【0150】
ランダムフォレスト変数選択手順に基づいて、Rd相関のためのアルゴリズムの構築にとって確実に有意と考えられるバイオマーカー化合物を同定した。各バイオマーカー化合物のRFスコアは、表4中、「RFランク」と見出しのついた列に列挙されている。
【0151】
2E:上位化合物を用いるRd相関のモデリング
モデリング実験に基づいて、代謝産物の数が、7以上に達する時は、平均R二乗値は、常に高いままであり、対応するエラーは一貫して低いままであり(図3及び4)、このことは、7種の代謝産物の組合せは、Rdと相関させるアルゴリズムを構築するのに十分であり得るが、また、7種未満の代謝産物の組合せに基づいてRdと相関させるアルゴリズムを構築することも可能であり得ることを示唆する。
【0152】
2F:LASSO回帰
上記のランダムフォレスト解析からの交差検定された変数のみを、LASSO回帰に用い、Rdを予測するための変数の最良の組合せを選んだ。LASSO回帰のために、交差検定された変数の最も適当な変換も検討した。
【0153】
研究1におけるコホートに基づくLASSO回帰分析によって、3〜9種の変数及び相関のために交差検定されたr二乗値を用いて、Rd回帰の最良モデルの1種が提供された。最良のr二乗値は、非変換データを用いて、7〜8種の代謝産物で0.68に達し(表5)、各変数の適当な変換を用い、同数の代謝産物で0.69〜0.70に達する(表6)。
表5 非変換データを用いるLASSO回帰
【表5】


注記:**同重体56は、分離され得る、DL−ピペコリン酸及び1−アミノ−1−シクロペンタンカルボン酸を含む。
表6 変換データを用いるLASSO回帰
【表6】


注記:**同重体56は、DL−ピペコリン酸及び1−アミノ−1−シクロペンタンカルボン酸を含む。
【0154】
Rdの7〜8種の代謝産物との相関のR二乗は、独立コホートにおいて交差検定を用いて0.70に達する。
【0155】
表7に示されるように、研究1におけるコホートに基づくLASSO分析によって、3〜9種の変数及び別のセットの相関のために交差検定されたr二乗値を用いて、Rd回帰の最良のモデルが提供され、非変換データを用い、7〜8種の代謝産物で0.68に達した。
表7 非変換データを用いるLASSO回帰
【表7】

【0156】
2G:インスリン抵抗性を予測するモデル
研究2において、ランダムフォレスト及びLasso回帰によってRdを予測するためのモデルの構築において重要と同定された化合物が、表4に列挙されている。次いで、交差検定された化合物を、臨床測定値とともに(例えば、空腹時インスリン、空腹時プロインスリン、空腹時遊離脂肪酸(FFA)、空腹時C−ペプチド、HDLコレステロール、LDLコレステロール、空腹時血漿グルコース、アディポネクチン、BMI、PYYなど)回帰分析のために選択した。次いで、各々回帰法及び一変量相関/線形回帰法モデルを用いて、個々のものの各々のRdを予測し、次いで、これを用いて、グルコース利用のレベルに従って個々のものを、正常、インスリンの障害又はインスリン抵抗性と分類した。90パーセントの対象から得た試料を用いて、モデルを構築し、残りの10パーセントの対象から得た試料を用いて、モデルの予測力を試験した。これらの分析において、Rdを予測するために有用であるバイオマーカー化合物及びRdと正相関又は逆相関するバイオマーカー化合物を同定した。これらのマーカーは、インスリン抵抗性を予測するために有用である。バイオマーカー化合物のすべては、回帰モデルの各々において統計的に有意である(p<0.05)。
【0157】
これらの分析的アプローチを用いて作製されたモデルが表8に要約されている。モデルの感受性、特異性及び予測力(正、PPV及び負、NPV)が、表8に示されている。モデル範囲の感受性は、約54%〜約63%に及び、特異性は約63%〜95%を超えるものにまで及ぶ。PPV範囲は、約78%〜約94%であり、NPVは約79%を超えるものから約83%を超えるものである。
表8 糖処理速度(Rd)によって決定されるようなインスリン抵抗性を予測する代謝産物バイオマーカー及びモデル
【表8−1】


【表8−2】


【表8−3】


【表8−4】


【表8−5】


【表8−6】


【表8−7】


【表8−8】


略語:BMI、肥満度指数;FFA、遊離脂肪酸;FPG、空腹時血漿グルコース
【0158】
2H:相関するバイオマーカー化合物:
表9A及び9Bに示されるように、多数のバイオマーカー化合物が相関した。表9Aは、研究1において同定されたバイオマーカーのペアワイズ相関分析を含み、表9Bは、研究2において同定されたバイオマーカーのペアワイズ相関分析を含む。相関する化合物は、回帰モデルでは互いに排反することが多く、従って、上記の表8に示されるような同様の予測力を有していた異なるモデルにおいて使用することができる(即ち、相関する化合物のために置換することができる)。特定のバイオマーカーは、その他のバイオマーカーよりもアッセイ開発に従い得るので、この態様は、特異的バイオマーカーを標的とする生化学アッセイを開発する場合に有用である。
表9A 研究1における相関バイオマーカー
【表9−1】


【表9−2】


【表9−3】


【表9−4】


【表9−5】


【表9−6】


【表9−7】


【表9−8】


表9B 研究2における相関バイオマーカー
【表10−1】


【表10−2】


【表10−3】


【表10−4】

【0159】
2I:インスリン抵抗性の予測及びモニタリング:
バイオマーカーパネル及びアルゴリズムは、2型糖尿病の主要因であるインスリン抵抗性(IR)を評価する。結果は、対象のインスリン抵抗性のレベルを表す「IRスコア(商標)」として示される。IRスコアは、正常耐糖能(NGT)から増大するレベル(低、中、高)の耐糖能異常(IGT)に及ぶ。IRスコア(商標)によって、医師が患者を耐糖能の範囲、正常から高に入れることが可能になる。例えば、25のIRスコア(商標)は患者を低IGTカテゴリーに入れ、他方、80のIRスコア(商標)は、患者を高IGTカテゴリーに入れる。
【0160】
年間ベース又は半年ベースでIRスコアを決定することによって、医師は、糖尿病への患者の進行をモニタリングできる。例えば、第1の時点で25のIRスコアが得られ、第2の時点で34のIRスコアが得られ、第3の時点で40のIRスコアが得られ、第4の時点で55のIRスコアが得られ、第4の時点で80のIRスコアが得られ、このことはIRの増大及び正常から高度に耐糖能異常への疾患の進行を示す。進行モニタリングに本発明のバイオマーカー及びアルゴリズムを用いることが、食事制限、運動又は初期段階での薬物治療などの予防策を実施するという医師の決定を導く。経時的にIR状況をモニタリングするためにIRスコアの使用を実証する報告の一例が図5に示されている。
表10:IRスコア
【表11】

【0161】
2J:グルコース負荷試験と相関するバイオマーカー
新規コホートを用いて本発明において発見されたバイオマーカーを試験するために、高インスリン血症正常血糖(HI)クランプによって測定されるようなインスリン感受性(IS)及びインスリン抵抗性(IR)と相関するさらなる生化学的バイオマーカーを発見するために別の研究を実施する(表11)。以下の研究デザインを用いて、NGT、IGT、IFG IGT/IFG及び糖尿病の対象から集めたベースライン空腹時EDTA血漿試料(合計=250)を分析する。
表11:研究対象の概要
【表12】


略語
NGT:正常グルコース耐性(OGTT、<140mg/dL又は<7.8mmol/L)
IGT:耐糖能異常(OGTT、140〜199mg/dL又は7.8〜11.0mmol/L)
IFG:空腹時血糖異常(空腹時血漿グルコース、100〜125mg/dL又は5.6〜6.9mmol/L)
IGT/IFG:IGT及び/又はIFG
T2D:II型糖尿病(OGTT、≧200mg/dL又は≧11.1mmol/L)
【0162】
(例3)
メタボリックシンドローム関連障害のバイオマーカー
3A:メタボリックシンドロームのバイオマーカー
(1)種々の群の対象から得た血漿及び血清試料を分析して、試料中の代謝産物のレベルを決定するステップと、(2)結果を統計的に分析して、2群において異なった形で存在していた代謝産物を決定するステップとによってバイオマーカーを発見した。
【0163】
分析に用いた試料は、メタボリックシンドロームと診断されている18〜39才、平均年齢25.6才の19人の白人男性及び19人の健常な、年齢を対応させた白人男性から得た。
【0164】
t検定を用いて、2集団(即ち、メタボリックシンドローム対健常対照)間の代謝産物の平均レベルの相違を決定した。
【0165】
バイオマーカー:
表12及び13において以下で列挙されるように、メタボリックシンドロームの対象及び対照(健常)対象から得た試料間で異なった形で存在するバイオマーカーを発見した。
【0166】
表12及び13は、列挙されたバイオマーカー各々について、バイオマーカーに関するデータの統計分析において決定されたp値及びq値及びメタボリックシンドロームにおける平均レベル、対照における平均レベルを示すもの並びに血漿における(表12)、及び血清における(表13)、健常平均レベルと比較したメタボリックシンドローム平均レベルにおける相違パーセンテージを含む。表中に使用される場合、用語「同重体」は、分析に使用した分析プラットフォームでは互いに区別できない化合物を示す(即ち、同重体中の化合物は、ほぼ同じ時間に溶出し、同様の(全く同一である場合もある)定量イオンを有し、従って、区別できない)。Comp_IDとは、社内化学データベース中のその化合物の主キーとして用いられる化合物識別番号を指す。ライブラリーは、化合物を同定するために使用した化学ライブラリーを示す。数値50とは、GCライブラリーを指し、数値61とは、LCライブラリーを指す。
表12 血漿におけるメタボリックシンドロームの代謝産物バイオマーカー
【表13−1】


【表13−2】


【表13−3】


【表13−4】


【表13−5】


【表13−6】


【表13−7】


【表13−8】


【表13−9】


表13 血清におけるメタボリックシンドロームの代謝産物バイオマーカー
【表14−1】


【表14−2】


【表14−3】


【表14−4】


【表14−5】


【表14−6】


【表14−7】


【表14−8】


【表14−9】


【表14−10】

【0167】
血漿及び血清バイオマーカーのランダムフォレストが作製された。血清バイオマーカーのモデルは、81.5%の対象を、健常であるか、メタボリックシンドロームを有するのいずれかとして正しく分類し、健常対象の83%が正しく分類され、メタボリックシンドロームを有する対象の77%が正しく分類された。血漿由来のバイオマーカーに基づいたモデルについては、89%の対象が、健常であるか、メタボリックシンドロームを有するのいずれかとして正しく分類され、健常対象の100%が正しく分類され、メタボリックシンドロームを有する対象の77%が正しく分類された。最も重要なバイオマーカーは、図8(血清)及び図9(血漿)における重要度プロットにおいて示されている。
【0168】
3B:アテローム性動脈硬化症のバイオマーカー
(1)アテローム性動脈硬化症の対象及び健常対象から取り出した血漿、大動脈及び肝臓試料を分析して、試料中の代謝産物のレベルを決定するステップと、次いで、(2)結果を統計的に分析して、2群において異なった形で存在する代謝産物を決定するステップとによって、バイオマーカーを発見した。
【0169】
分析に使用した試料は、それぞれ、野生型及びトランスジェニックマウス、C57BL/6及びLDbから得たものであった。トランスジェニックLDbマウスは、ヒト対象におけるアテローム性動脈硬化症のモデルを提供する。これまでの研究によって、C57BL/6バックグラウンドのLDbトランスジェニックマウスは、C57BL/6野生型マウスよりも、約5倍高い血漿コレステロール及びトリグリセリドレベルを有し、約3カ月齢でアテローム性動脈硬化性病変が発生し始めることがわかっている。2、5又は8カ月のマウスの各群から得た、血漿、上行大動脈及び下行大動脈組織及び肝臓組織を、メタボノミクス分析に付した。これらの採取時点は、トランスジェニックモデルにおけるアテローム性動脈硬化症の初期(開始)、中期及び後期段階に相当する。
【0170】
t検定を用いて、2集団(即ち、LDb対C57BL/6)間の代謝産物の平均レベルの相違を決定した。再帰分割及びランダムフォレスト解析を用いて分類分析を実施し、2群のマウスを最良に区別できるバイオマーカーを明らかにした。再帰分割は、「従属」変数(Y)を、独立(「予測因子」)変数(X)の収集物と関連付けて、分かりにくい関連性を明らかにする−又は簡単に理解する、Y=f(X)。JMPプログラム(SAS)を用いて実施し、決定木を作製した。p値をコンピュータで算出することによって、データの「分割」の統計的有意性は、より定量的なものになり得、これによって分割の性質は偶発的な事象に対して区別される。木の節又は枝へのデータの「分割」の有意水準を、p値としてコンピュータで算出し、これによって、分割の性質は偶発的な事象に対して区別される。未加工p値の負のlog10であるLogWorthとして与えた。統計分析は、ワールドワイドウェブでウェブサイトcran.r−project.orgで利用可能なプログラム「R」を用いて実施した。
【0171】
ランダムフォレストは、2つの集団の未知の平均が異なっているか否かを検定するt検定とは対照的に、新規データセット中の個々のものを各群に、どの程度上手く分類できるかについて推定値を与える。ランダムフォレストは、実験単位及び化合物の連続サンプリングに基づいて一連の分類木を作製する。次いで、各観察結果が、すべての分類木からの多数決に基づいて分類される。統計分析は、ワールドワイドウェブでウェブサイトcran.r−project.orgで利用可能なプログラム「R」を用いて実施した。
【0172】
バイオマーカー:
表14、15及び16において以下で列挙されるように、LDb(アテローム性動脈硬化性の)対象及びC57BL/6(健常)対象から得た試料間で異なった形で存在するバイオマーカーを発見した。
【0173】
表14、15及び16は、列挙されたバイオマーカー各々について、バイオマーカーに関するデータの統計分析において決定されたp値及びq値並びに血漿(表14)、大動脈(表15)及び肝臓(表16)における、健常平均レベルと比較したアテローム性動脈硬化性平均レベルの相違パーセンテージを示すものを含む。表中に使用される場合、用語「同重体」は、分析に使用した分析プラットフォームでは互いに区別できない化合物を示す(即ち、同重体中の化合物は、ほぼ同じ時間に溶出し、同様の(全く同一である場合もある)定量イオンを有し、従って、区別できない)。Comp_IDとは、社内化学データベース中のその化合物の主キーとして用いられる化合物識別番号を指す。ライブラリーは、化合物を同定するために使用した化学ライブラリーを示す。数値50とは、GCライブラリーを指し、数値61とは、LCライブラリーを指す。
表14 血漿におけるアテローム性動脈硬化症の代謝産物バイオマーカー
【表15−1】


【表15−2】


【表15−3】


【表15−4】


【表15−5】


【表15−6】


[1]同重体71は、コンデュリトール−β−エポキシド−3−デオキシグルコソンを含む
[2]同重体56は、DL−ピペコリン酸−1−アミノ−1−シクロペンタンカルボン酸を含む
[3]同重体59は、N−6−トリメチル−L−リシン−H−ホモarg−OHを含む
[4]同重体21は、γ−アミノブチリル−L−ヒスチジン−L−アンセリンを含む
[5]同重体6は、バリン−ベタインを含む
[6]同重体1は、マンノース、フルクトース、グルコース、ガラクトース、α−L−ソルボピラノース、イノシトール、D−アロース、D−アルトロース、D−プシコン(psicone)、L−グロース、アロイノシトールを含む
表15 大動脈におけるアテローム性動脈硬化症の代謝産物バイオマーカー
【表16−1】


【表16−2】


【表16−3】


【表16−4】


[1]おそらくはギ酸塩二量体のCl−付加物
[2]同重体19は、1,5−無水−D−グルシトール、2’−デオキシ−D−ガラクトース、2’−デオキシ−D−グルコース、L−フコース、L−ラムノースを含む
[3]同重体4は、グルコン酸、DL−アラビノース、D−リボース、L−キシロース、DL−リキソース、D−キシルロース、ガラクトン酸を含む
[4]同重体58は、ビシン、2−メチルアミノメチル−タルトロン酸を含む
[5]同重体6は、バリン−ベタインを含む
[6]同重体13は、5−ケト−D−グルコン酸、2−ケト−L−グロン酸、D−グルクロン酸、D−ガラクツロン酸を含む
[7]同重体1は、マンノース、フルクトース、グルコース、ガラクトース、α−L−ソルボピラノース、イノシトール、D−アロース、D−アルトロース、D−プシコン(psicone)、L−グロース、アロイノシトールを含む
[8]同重体22は、グルタミン酸−O−アセチル−L−セリンを含む
[9]同重体10は、グルタミン−H−β−ala−gly−OH−1−メチルグアニン−H−Gly−Sar−OH−リシンを含む
[10]同重体71は、コンデュリトール−β−エポキシド−3−デオキシグルコソンを含む
表16 肝臓におけるアテローム性動脈硬化症の代謝産物バイオマーカー
【表17−1】


【表17−2】


[1]同重体56は、DL−ピペコリン酸−1−アミノ−1−シクロペンタンカルボン酸を含む
[2]5−メチル−デオキシシチジン一リン酸の可能性
[3]同重体24は、L−アラビトール、アドニトール、キシリトールを含む
[4]同重体1は、マンノース、フルクトース、グルコース、ガラクトース、α−L−ソルボピラノース、イノシトール、D−アロース、D−アルトロース、D−プシコン(psicone)、L−グロース、アロイノシトールを含む
【0174】
アテローム性動脈硬化症の開始及び/又は進行を示す血漿バイオマーカーの同定は、この疾患を有するヒト患者の診断及び治療に役立つであろう。血漿代謝産物の再帰分割によって、予想通り、LDb及びC57BL/6マウスを完全に区別できるバイオマーカーとしてコレステロールが同定された。3種の他の代謝産物も、LDb及びC57BL/6マウスを区別するために再帰分割することによって同定された(表17)。これらの代謝産物の血漿レベルは、血漿コレステロールのように、2カ月齢であってもLDbマウスにおいて高く、その後、6カ月間、一貫して高いままであり、このことは、これらの代謝産物の初期構築が、アテローム性動脈硬化症の発症に関与している可能性が高く、進行のバイオマーカーを提供することを示唆する(図13、14、15及び16)。
表17 血漿中の、アテローム性動脈硬化症対象(LDb)及び健常対照対象(C57BL/6マウス)をエラーなく区別するアテローム性動脈硬化症バイオマーカー
【表18】

【0175】
代謝産物−1834は、2カ月齢マウスにおいてLDb及びC57BL/6群を分離しなかったが、5カ月齢を分離し始め、8カ月齢を完全に分離した(図17)。この代謝産物は、アテローム性動脈硬化症進行のバイオマーカーの1種である。
【0176】
数種の代謝産物(p−クレゾールスルフェート、代謝産物−4887、代謝産物−5386)が、対象を、2カ月齢でLDb又はC57BL/6と極めて良好に分類したが、区別力はマウスが高齢になるにつれて減少し、8カ月齢マウスでは分離しなかった(図18及び19)。これらの代謝産物は、アテローム性動脈硬化症開始のバイオマーカーである。
【0177】
ランダムフォレスト結果は、試料は、バイオマーカーを用い、種々の正確性の程度で正しく分類され得ることを示す。混同行列は、LDb対象は、血漿(表18)、大動脈(表19)及び肝臓(表20)試料を用いてC57BL/6対象と区別され得ることを実証する。「Out−of−Bag」(OOB)エラー率は、ランダムフォレストモデルを用いて、どの程度正確に新規観察結果が予測され得るか(例えば、試料が、アテローム性動脈硬化症を有する対象又は対照対象に由来するかどうか)について推定値を与える。
表18 血漿におけるアテローム性動脈硬化症のランダムフォレスト混同行列
【表19】


表19 大動脈組織におけるアテローム性動脈硬化症のランダムフォレスト混同行列
【表20】


表20 肝臓におけるアテローム性動脈硬化症のランダムフォレスト混同行列
【表21】

【0178】
さらに、アテローム性動脈硬化症(n=15)又は健常対象(n=14)を患うヒト対象で研究を実施した。バイオマーカー3−メチルヒスチジン、p−クレゾールスルフェート、マンノース、グルコース及びグルコン酸は、ヒト血漿において、疾患対健常対象へ、マウスモデルにおいて見られたものと同様の変化を示した。したがって、これらの化合物を、アテローム性動脈硬化症を有する個体を健常対象と区別するのに有用な重要なバイオマーカーと同定した。
【0179】
3C:心筋症のバイオマーカー
(1)種々の群のマウス対象から得た心組織試料(表21)又は血漿試料(表22)を分析して、試料中の代謝産物のレベルを決定するステップと、次いで、(2)結果を統計的に分析して、2群において異なった形で存在していた代謝産物を決定するステップとによって、バイオマーカーを発見した。これらの対象は、ヒトDCMの動物(マウス)モデルを提供した。
【0180】
2群の対象を使用した。一方の群は、心エコー検査法によって調べられるような、心拡大及び左室収縮能の低下(0.40未満の駆出率)を示す8匹の対象からなる(cTnT−W141トランスジェニックマウス)。13匹の齢及び性別を対応させた対象(非トランスジェニック(野生型バックグラウンド系統)マウス)を対照として使用した。すべてのマウスが、7〜19カ月齢であり、23〜40gmの体重であった。
【0181】
t検定を用いて、2つの集団(即ち、拡張型心筋症、DCM対健常対照)間で代謝産物の平均レベルの相違を決定した。再帰分割及びランダムフォレスト解析を用いて分類分析を実施し、2群を最良に区別できるバイオマーカーを明らかにした。再帰分割は、「従属」変数(Y)を、独立(「予測因子」)変数(X)の収集物と関連付けて、分かりにくい関連性を明らかにする−又は簡単に理解する、Y=f(X)。JMP program(SAS)を用い実施し、決定木を作製した。p値をコンピュータで算出することによって、データの「分割」の統計的有意性は、より定量的なものになり得、これによって分割の性質は偶発的な事象に対して区別される。木の節又は枝へのデータの各「分割」の有意水準を、p値としてコンピュータで算出し、これによって、分割の性質は偶発的な事象に対して区別される。未加工p値の負のlog10であるLogWorthとして与えた。
【0182】
バイオマーカー:
表21及び22において以下で列挙されるように、拡張型心筋症対象及び健常対象から採取した、心組織及び血漿試料それぞれの間で異なった形で存在していたバイオマーカーを発見した。
【0183】
表21及び22は、列挙されたバイオマーカー各々について、バイオマーカーに関するデータの統計分析において決定されたp値及びq値並びに心組織(表21)又は血漿(表22)における、健常平均レベルと比較した拡張型心筋症平均レベルの相違パーセンテージを示すものを含む。表中に使用される場合、用語「同重体」は、分析に使用した分析プラットフォームでは互いに区別できない化合物を示す(即ち、同重体中の化合物は、ほぼ同じ時間に溶出し、同様の(全く同一である場合もある)定量イオンを有し、従って、区別できない)。Comp_IDとは、社内化学データベース中のその化合物の主キーとして用いられる化合物識別番号を指す。ライブラリーは、化合物を同定するために使用した化学ライブラリーを示す。数値50とは、GCライブラリーを指し、数値61とは、LCライブラリーを指す。
表21 心組織における拡張型心筋症(DCM)の代謝産物バイオマーカー
【表22−1】


【表22−2】


【表22−3】


【表22−4】


[1]同重体56は、DL−ピペコリン酸、1−アミノ−1−シクロペンタンカルボン酸を含む。
[2]メチルテストステロン及びその他の可能性。
[3]イソロビニン(isolobinine)又は4−アミノエストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオールの可能性。
[4]スタキドリンの可能性。
[5]同重体−52は、イミノ二酢酸、L−アスパラギン酸を含む。
[6]尿酸のCl付加物の可能性。
[7]同重体13は、5−ケト−D−グルコン酸、2−ケト−L−グロン酸、D−グルクロン酸,D(+)−ガラクツロン酸を含む。
[8]同重体48は、セリン−2,2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール,ジエタノールアミンを含む。
表22 血漿における、拡張型心筋症(DCM)の代謝産物バイオマーカー
【表23−1】


【表23−2】


【表23−3】


【表23−4】


【表23−5】


【表23−6】


【表23−7】


【表23−8】


【表23−9】


【表23−10】


【表23−11】


【表23−12】


【表23−13】


【表23−14】

【0184】
正常及びDCM対象間で心組織において、すべての代謝産物の再帰分割統計分析によって、代謝産物−3808(代謝産物−3808)が、対象の両群を完全に分離した化合物として同定された(LogWorth=6.61)。具体的には、DCM表現型を有するすべての対象は、629275のカットオフ値を上回る代謝産物−3808のレベルを有していたが、正常表現型を有するすべての対象は、カットオフ値を下回る代謝産物−3808のレベルを有していた(図20)。図20中のグラフ中のカットオフ値は、破線によって示される。
【0185】
DCMのマウスモデルにおいて発見されたバイオマーカーを評価するために、ヒト対象の分析を実施した。(1)種々の群のヒト対象から得た血漿試料を分析し、試料中の代謝産物のレベルを決定するステップと、次いで、(2)結果を統計的に分析して、2群において異なった形で存在していた代謝産物を決定するステップとによって、バイオマーカーを発見した。
【0186】
2群の対象を使用した。一方の群は、拡張型心筋症(DCM)の39人の対象(18人の男性、21人の女性)からなる。第2の群は、31人の健常対照対象(14人の男性、17人の男性)からなる。対象は、年齢及び性別についてバランスをとり、対照女性の平均年齢は、50.1+/−10.1であり、DCM女性は、50.0+/−11.3であり、一方で、対照男性の平均年齢は42.7+/−11.3であり、DCM男性は、45.8+/−10.9であった。
【0187】
t検定(表23)を用いて、2つの集団(即ち、拡張型心筋症、DCM対健常対照)間で代謝産物の平均レベルの相違を決定した。ランダムフォレスト解析を用いて分類分析を実施し、2群を最良に区別できるバイオマーカーを明らかにした。ランダムフォレスト解析の結果は表24に示されており、対象を健常又はDCMと分類するのに有用な、最も重要なバイオマーカーが、表25に列挙されている。
【0188】
バイオマーカー:
表23において以下で列挙されるように、拡張型心筋症対象及び健常対象から採取した血漿試料間で異なった形で存在していたバイオマーカーを発見した。
【0189】
表23は、列挙されたバイオマーカー各々について、バイオマーカーに関するデータの統計分析において決定されたp値及びq値並びに血漿における、健常平均レベルと比較した拡張型心筋症平均レベルの相違パーセンテージを示すものを含む。「ID」とは、社内化学データベース中のその化合物の主キーとして用いられる化合物識別番号を指す。「ライブラリー」は、化合物を同定するために使用した化学ライブラリーを示す。数値50とは、GCライブラリーを指し、数値200及び201は、LCライブラリーを指す。「マウス」は、DCMのマウスモデルにおいて発見されたバイオマーカーでもあった化合物を示す。
表23 DCMのバイオマーカー
【表24−1】


【表24−2】


【表24−3】


【表24−4】


【表24−5】


【表24−6】


【表24−7】


【表24−8】


【表24−9】


【表24−10】


【表24−11】

【0190】
経路傾向分析は、エネルギー及び脂質経路においてDCM患者の強力な区別を示し、このことは、TCA回路阻害、糖原性アミノ酸動員及びβ−酸化増大を示唆する。DCM患者では、一般的ストレスと一致して、アドレナリン作動性のステロイド(コルチゾール、コルチゾン)が増大し、アンドロゲン代謝産物(DHEA−S)が大きく減少し、DCM男性の明らかな代謝「女性化」をもたらした。
【0191】
これまでのトランスジェニックマウスDCMモデル血漿研究との比較によって、両研究において、尿酸、リンゴ酸、チロシン、フェニルアラニン、エリトリトール及びその他のものをはじめとする8種の化合物が、同様の応答を示し、大きく有意であることが示された。ヒト研究において大きく有意であった別の16種は、マウス研究においてと同様の傾向があった。これらは、α−ケトグルタル酸、イソクエン酸、パントテン酸、ミオイノシトール及びグルタミン酸を含んでいた。データによって、血漿のメタボロミクスプロフィールが、ヒトDCM患者における病状を反映すること及びトランスジェニックマウスモデルが、ヒト疾患と関連する多数のバイオマーカー変化を共有することが確認される。
【0192】
t検定を用いて、集団平均が異なっているかどうかを決定したが、個体の観察結果については教えられなかった。ランダムフォレスト解析は、群を区別する化合物を同定するための多変量技術である。ランダムフォレストは、個体を分類するために使用される。ランダムフォレストは、多数の決定木というコンセンサスに基づいており、極めて効果的な多変量技術であり、異常値に抵抗性があり、標準化の方法に対して反応しにくく、新規試料に対して高い予測力を有する。対象を「健常」又は「DCM」として分類するために表23に列挙されるバイオマーカーを用いた結果が、表24に示されている。対象は、81%の確率で健常(対照)と正しく分類され、72%の確率でDCMを有すると正しく分類されている。対象は、全体で>75%の正確度で正しく分類されている。
表24 DCM及び健常対象のランダムフォレスト分類
【表25】

【0193】
対象を正しく分類するために最も重要であるバイオマーカーが、表25に示されており、重要度プロットが図#に示されている。
表25 重要なDCMバイオマーカー
【表26】

【0194】
3D:肥満症のバイオマーカー;肥満対象と比較して痩せた対象において異なった形で存在する代謝産物
(1)種々の群のヒト対象から取り出した血液試料を分析し、試料中の代謝産物のレベルを決定するステップと、次いで、(2)結果を統計的に分析して、2群において異なった形で存在していた代謝産物を決定するステップとによって、バイオマーカーを発見した。
【0195】
分析に使用した血漿試料は、年齢及び性別を対応させておいた、40人の痩せた対象(BMI<25)及び40人の肥満対象(BMI>30)から得たものであった。代謝産物のレベルを決定した後、データを一変量t検定(即ち、ウエルチt検定)を用いて分析した。
【0196】
t検定を用いて、2つの集団(即ち、肥満対痩せ)間で代謝産物の平均レベルの相違を決定した。
【0197】
バイオマーカー:
表26において以下で列挙されるように、肥満対象及び痩せた対象から得た試料間で異なった形で存在していたバイオマーカーを発見した。
【0198】
表26は、列挙されたバイオマーカー各々について、バイオマーカーに関するデータの統計分析において決定されたp値及びq値及び肥満平均レベル、痩せ平均レベルを示すもの及び痩せ平均レベルに対する肥満平均レベルの割合を含む(表26)。表中に使用される場合、用語「同重体」は、分析に使用した分析プラットフォームでは互いに区別できない化合物を示す(即ち、同重体中の化合物は、ほぼ同じ時間に溶出し、同様の(全く同一である場合もある)定量イオンを有し、従って、区別できない)。Comp_IDとは、社内化学データベース中のその化合物の主キーとして用いられる化合物識別番号を指す。ライブラリーは、化合物を同定するために使用した化学ライブラリーを示す。数値50とは、GCライブラリーを指し、数値61とは、LCライブラリーを指す。
表26 痩せた対象と比較して肥満において異なった形で存在する代謝産物バイオマーカー
【表27−1】


【表27−2】


【表27−3】


【表27−4】


【表27−5】


【表27−6】


【表27−7】


【表27−8】

【0199】
3E:メタボリックシンドローム及びメタボリックシンドロームの素因(インスリン感受性)を診断するためのアルゴリズム(モデル)
バイオマーカー代謝産物を、単独及び/又はメタボリックシンドロームの臨床的尺度(例えば、BMI、Rd)と組み合わせて用い、インスリン感受性(Rd)及びメタボリックシンドロームを予測する能力を試験するためにモデルを開発した。分析に使用した血漿試料は、種々の速度の糖処理(Rd)を有する対象に由来するものであった。
【0200】
代謝産物バイオマーカーの測定値と組み合わせた、グルコース利用速度(即ち、Rd)の回帰分析の複数の反復によって、インスリン感受性を決定するためのアルゴリズムを開発した。試料を2群に分割した。最初の群を「トレーニング」セットとして使用し、第2の群を「試験」セットとして使用した。次いで、トレーニングセットを用いてモデルを開発し、得られたモデルの予測力を、試験セットを用いて決定した。インスリン感受性を予測するのに最も重要なバイオマーカー代謝産物を同定するために数種のモデルを開発し、それによってアプローチ及びこれらのバイオマーカー代謝産物の有用性を実証した。
【0201】
種々のレベルのインスリン感受性並びに27.9未満のBMI及び27.9を超えるBMIを有するコホートから採取した血漿試料を使用して、インスリン感受性(即ち、Rd)を予測するモデルを開発した。このモデルについて、トレーニング群は、血漿試料の半分を含み、BMI及びRdのバランスをとった。次いで、試料のもう半分を含み、BMI及びRdのバランスをとった試験群を用いてモデルを試験した。この分析の結果は、インスリン感受性を予測するための最良モデルは、BMI及びバイオマーカー代謝産物グルコース、3−メチル−2−オキソ酪酸、1,5−無水グルシトール及び代謝産物−6268を含むことを示した。
【0202】
種々のレベルのインスリン感受性及び27.9未満のBMIを有するコホートから採取した血漿試料を使用して、インスリン感受性(即ち、Rd)を予測する別のモデルを開発した。このモデルについて、トレーニング群は、血漿試料の半分を含み、インスリン感受性(Rd)についてバランスをとった。次いで、血漿試料のもう半分を含み、Rdについてバランスをとった試験群を用いてモデルを試験した。この分析の結果は、インスリン感受性を予測するための最良モデルは、バイオマーカー代謝産物:グルコース、代謝産物−2546、代謝産物−2853、代謝産物−2370及び代謝産物−2386を含むことを示した。
【0203】
種々のレベルのインスリン感受性並びに27.9を超えるBMIを有するコホートから採取した血漿試料を使用して、インスリン感受性(即ち、Rd)を予測する、さらなる別のモデルを開発した。このモデルについて、トレーニング群は、血漿試料の半分を含み、インスリン感受性(Rd)についてバランスをとった。次いで、血漿試料のもう半分を含み、Rdについてバランスをとった試験群を用いてモデルを試験した。この分析の結果は、インスリン感受性を予測するための最良モデルは、バイオマーカー代謝産物:3−メチル−2−オキソブチリック(oxobutyric)、代謝産物−3097、代謝産物−4020、代謝産物−3056及び代謝産物−1831を含むことを示した。
【0204】
モデル:BMI及びバイオマーカー代謝産物グルコース、3−メチル−2−オキソ酪酸、1,5−無水グルシトール及び代謝産物−6268を、新規コホートで使用して、インスリン感受性(Rd)を予測した。上記のように、種々のレベルのインスリン感受性並びに27.9未満のBMI及び27.9を超えるBMIを有するコホートから採取した血漿試料を使用して、インスリン感受性(即ち、Rd)を予測するモデルを開発した。この分析についてモデルを試験するために使用した試料は、メタボリックシンドロームと診断されている18〜39才、平均年齢25.6才の19人の白人男性及び19人の健常な、年齢を対応させた白人男性から得た。血漿試料及び血清試料を評価した。この分析の結果は、このモデルは、血漿(図21)又は血清(図22)試料のいずれかを用い、この新規コホートにおいてインスリン感受性を正しく予測することができたことを示す。
【0205】
(例4)
治療応答バイオマーカー
「ノンレスポンダー」であった(即ち、ベースライン及び治療の12週後間でRdがほとんど、又は全く変化しない(<15%))対象及び治療に応答した対象(即ち「レスポンダー」)を比較することによって、治療に対する応答を予測するバイオマーカーを同定した。対象を、治療レスポンダー又はノンレスポンダーと予測したバイオマーカーは、ベースラインのみでの化合物レベルに基づいていた。レスポンダーは、35%以上のRd変化を有するか、又は15%以上のRd変化を有する対象のいずれかと定義された。データは、ノンレスポンダーを両クラスのレスポンダーと比較することによって分析した。次いで、両分析(即ち、15%を下回るRd変化を有するノンレスポンダー対35%を上回るRd変化を有するレスポンダー、15%を下回るRd変化を有するノンレスポンダー対15%を上回るRd変化を有するレスポンダー)を合わせ、2種の分析のいずれかで<0.1のp値を有するバイオマーカーを同定した。バイオマーカーは、表27に列挙されている。治療前のバイオマーカー測定値は、チアゾリンジンジオン(TZD)応答を予測し、従って、これを用いて、TZD薬で治療のための患者を選択できる。実験は、その他の治療薬(例えば、メトホルミンなど)などの、インスリン感受性、糖尿病前症及び糖尿病コントロールのためのその他の治療、減量、栄養摂取及びその他のライフスタイル改善を予測するバイオマーカーを評価するよう計画されている。この群の予測的バイオマーカーは、個別医療にとって極めて価値のあるツールを提供する。
表27 治療のレスポンダー又はノンレスポンダーを分類するためのバイオマーカー
【表28−1】


【表28−2】

【0206】
対象で再帰分割分析を実施した。バイオマーカー化合物のベースラインレベル(即ち、治療前)を、レスポンダー(治療後Rdが≧35%増大する対象、N=28)及びノンレスポンダー(治療後Rdが<15%増大する対象、N=14)において決定した。この分析の結果は、対象は、0.8214のAUCで分類されることを示した。この分析によって、「代謝産物−11737」が、レスポンダー及びノンレスポンダーの分類において特に重要であるバイオマーカーとしてさらに同定された。このバイオマーカーのみのベースラインレベルを用いて、28人のレスポンダーのうち22人が正しく分類され、14人のノンレスポンダーのうち12人が正しく分類された。このマーカーは単独で、78.6%の感受性及び85.7%の特異性を有していた。陽性予測値(PPV)は91.7%であり、陰性予測値(NPV)は66.7%であった。
【0207】
治療有効性の薬力学的(PD)バイオマーカーであるバイオマーカーを、ノンレスポンダー(即ち、ベースラインと12週間の治療後の間でRdがほとんど又は全く変化しない(<15%)人)対レスポンダーの比較によって同定した。PDバイオマーカーは、ベースラインと12週間の治療後の間の相違に基づいていた。TZD治療でベースラインレベルから変化を示したバイオマーカーを同定し、それらの対象におけるインスリン感受性の変化とともに追跡した。これらのバイオマーカーは表28に列挙されている。
表28 治療応答の薬力学的バイオマーカー
【表29−1】


【表29−2】

【0208】
対象で再帰分割分析を実施した。バイオマーカー化合物のベースラインレベル(即ち、治療前)及び治療後レベルを、レスポンダー(治療後Rdが≧35%増大する対象、N=28)及びノンレスポンダー(治療後Rdが<15%増大する対象、N=14)において決定した。この分析の結果は、対象は、0.7679のAUCで分類されることを示した。さらなる実験は、その他のインスリン感受性、糖尿病前症及び糖尿病治療薬(例えば、メトホルミンなど)並びに食事の改変(例えば、減量、栄養摂取)及びライフスタイル(例えば、運動)を含む治療のPDバイオマーカーとしてバイオマーカーを評価するよう計画されている。
【0209】
(例5)
名前のないバイオマーカー化合物の分析的特性決定
以下の表29は、上記の表に列挙される名前のない代謝産物各々の分析的特徴を含む。この表は、列挙される代謝産物各々について、上記の分析法を用いて得られた保持時間(RT)、保持指数(RI)、質量、定量質量及び極性を含む。「質量」とは、化合物の定量に用いた親イオンのC12同位体の質量を指す。「極性」とは、正(+)又は負(−)のいずれかである定量イオンの極性を示す。
表29 バイオマーカー代謝産物の分析的特徴
【表30−1】


【表30−2】


【表30−3】


【表30−4】


【表30−5】


【表30−6】


【表30−7】


【表30−8】


【表30−9】


【表30−10】


【表30−11】

【0210】
本発明を、その特定の実施形態に関連して詳細に説明したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変法及び改変を行ってもよいことは、当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における糖処理速度を予測する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中のインスリン抵抗性に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7、8、9A、9B中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの糖処理参照レベルと比較して、対象における糖処理速度を予測するステップとを含む方法。
【請求項2】
1種又は複数のバイオマーカーが、表4に列挙される1種又は複数のバイオマーカーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生体試料を分析して、表4、5、6、7、8、9A及び9Bから選択される2種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生体試料を分析して、表4、5、6、7、8、9A及び9Bから選択される3種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
生体試料を分析して、表4、5、6、7、8、9A及び9Bから選択される4種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
生体試料を分析して、表4、5、6、7、8、9A及び9Bから選択される5種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
生体試料を分析して、表4、5、6、7、8、9A及び9Bから選択される10種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生体試料を分析して、表4、5、6、7、8、9A及び9Bから選択される1種又は複数のバイオマーカーと組み合わせて、2−ヒドロキシ酪酸のレベルを決定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
空腹時血漿インスリン、空腹時血漿グルコース、空腹時血漿プロインスリン、空腹時遊離脂肪酸、HDL−コレステロール、LDL−コレステロール、C−ペプチド、アディポネクチン、ペプチドYY、ヘモグロビンA1C、ウエスト周囲、体重又は肥満度指数の対象の測定値を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
表8に列挙されるモデルを用いて、対象及び対象から得た生体試料を分析するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
糖処理速度を用いて、対象のインスリン感受性のレベルを決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
対象のインスリン感受性が、糖処理速度と相関している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
対象を耐糖能に従って正常耐糖能(NGT)から空腹時耐糖能異常(IFG)又は耐糖能異常(IGT)、2型糖尿病までに分類する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中の耐糖能に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7、8、9A、9B中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの耐糖能参照レベルと比較して対象をNGT、IFG、IGT又は糖尿病を有すると分類するステップとを含む方法。
【請求項14】
生体試料を分析して、表4、5、6、7、8、9A及び9Bから選択される2種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
生体試料を分析して、表4、5、6、7、8、9A及び9Bから選択される3種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
生体試料を分析して、表4、5、6、7、8、9A及び9Bから選択される4種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
生体試料を分析して、表4、5、6、7、8、9A及び9Bから選択される5種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
空腹時血漿インスリン、空腹時血漿グルコース、空腹時血漿プロインスリン、空腹時遊離脂肪酸、HDL−コレステロール、LDL−コレステロール、C−ペプチド、アディポネクチン、ペプチドYY、ヘモグロビンA1C、ウエスト周囲、体重又は肥満度指数の対象の測定値を決定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
表8に列挙されるモデルを用いて、対象及び対象から得た生体試料を分析するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
2型糖尿病に対する対象の感受性を決定する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中の糖尿病前症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7、8、9A、9B中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの糖尿病陽性及び/又は糖尿病陰性参照レベルと比較して、対象が2型糖尿病の発症に対して感受性であるかどうかを診断するステップとを含む方法。
【請求項21】
生体試料を分析して、表4、5、6、7、8、9A及び9Bから選択される、2種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
空腹時血漿インスリン、空腹時血漿グルコース、空腹時血漿プロインスリン、空腹時遊離脂肪酸、HDL−コレステロール、LDL−コレステロール、C−ペプチド、アディポネクチン、ペプチドYY、ヘモグロビンA1C、ウエスト周囲、体重又は肥満度指数の対象の測定値を決定するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
表8に列挙されるモデルを用いて、対象及び対象から得た生体試料を分析するステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
対象におけるインスリン抵抗性スコアを決定する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7、8、9A、9B中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーのインスリン抵抗性参照レベルと比較して、対象のインスリン抵抗性スコアを決定するステップとを含む方法。
【請求項25】
インスリン抵抗性スコアを用いて、対象におけるインスリン抵抗性進行又は退縮をモニタリングする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
インスリン抵抗性スコアを用いて、対象における治療の経過をモニタリングする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
対象における糖尿病前症の進行又は退縮をモニタリングする方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中の糖尿病前症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7、8、9A、9B中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの糖尿病前症進行及び/又は糖尿病前症退縮参照レベルと比較して、対象における糖尿病前症の進行又は退縮をモニタリングするステップとを含む方法。
【請求項28】
インスリン抵抗性治療の有効性をモニタリングする方法であって、対象から得た第1の生体試料を分析して、糖尿病前症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、第1の試料が第1の時点で対象から得られ、1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7及び8中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー並びにそれらの組合せから選択されるステップと、インスリン抵抗性について対象を治療するステップと、対象から得た第2の生体試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、第2の試料が治療後の第2の時点で対象から得られるステップと、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較して、インスリン抵抗性を治療するための治療の有効性を評価するステップとを含む方法。
【請求項29】
生体試料を分析して、表4、5、6、7及び8に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択される2種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
治療が、対象に治療薬を投与することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
治療薬がインスリン増感剤である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
インスリン増感剤がチアゾリンジンジオンである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
治療が対象のライフスタイル改善を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
ライフスタイル改善が、対象の栄養摂取、食事、又は運動ルーチンの改善を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項35】
対象が、メタボリックシンドロームを有するかどうかを診断する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中のメタボリックシンドロームに関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表12及び13中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーから選択されるステップと、生体試料を分析して、糖処理、肥満症及び/又は心血管疾患に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、糖処理、肥満症及び/又は心血管疾患に関する1種又は複数のバイオマーカーが、表4、5、6、7、8、9A、9B、14、15、16、17、21、22、23、25、26、27、28中に同定される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、
試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーのそれぞれの障害陽性及び/又は障害陰性参照レベルと比較して、対象がメタボリックシンドロームを有するかどうかを診断するステップとを含む方法。
【請求項36】
生体試料が、メタボリックシンドローム、肥満症、心血管疾患及び糖処理異常からなる群から選択される3種以上の状態のバイオマーカーについて陽性である場合に、対象がメタボリックシンドロームを有すると診断される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
生体試料が、メタボリックシンドローム、肥満症、心血管疾患及びインスリン感受性の障害からなる群から選択される2種以上の状態のバイオマーカーについて陽性である場合に、対象がメタボリックシンドロームに対して感受性であると診断される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
空腹時血漿インスリン、空腹時血漿プロインスリン、空腹時血漿グルコース、空腹時遊離脂肪酸、HDL−コレステロール、LDL−コレステロール、C−ペプチド、アディポネクチン、ペプチドYY、ヘモグロビンA1C、ウエスト周囲、体重又は肥満度指数からなる群から選択される対象の臨床測定値を決定するステップをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
対象において心血管疾患を診断する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中の心血管疾患に関する1種又は複数のバイオマーカーレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表14、15、16、17、21、22、23、25中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの疾患陽性及び/又は疾患陰性参照レベルと比較して、対象が心筋症又はアテローム性動脈硬化症を有するかどうかを診断するステップを含む方法。
【請求項40】
生体試料を分析して、表14、15、16、17、21、22、23及び/又は25から選択される2種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
生体試料を分析して、表14、15、16、17、21、22、23及び/又は25から選択される3種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
生体試料を分析して、表14、15、16、17、21、22、23及び/又は25から選択される4種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
生体試料を分析して、表14、15、16、17、21、22、23及び/又は25から選択される5種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
生体試料を分析して、表14、15、16、17、21、22、23及び/又は25から選択される10種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
心血管疾患が心筋症である、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
1種又は複数のバイオマーカーが、表21、22、23及び/又は25中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
心血管疾患がアテローム性動脈硬化症である、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
1種又は複数のバイオマーカーが、表14、15、16及び/又は17中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
生体試料が、バイオマーカー3−メチルヒスチジン、p−クレゾールスルフェート、マンノース、グルコース及びグルコン酸の各々について分析される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
対象が肥満になる素因があるかどうかを決定する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、試料中の肥満症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表26中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの肥満症陽性及び/又は肥満症陰性及び/又は痩せ陽性及び/又は痩せ陰性参照レベルと比較して、対象が肥満症に対して感受性であるかどうかを決定するステップとを含む方法。
【請求項51】
治療薬が対象において体重増加を誘発できるかどうかを決定する方法であって、治療薬を受けている対象から得た生体試料を分析して、試料中の肥満症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表26中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの肥満症陽性及び/又は肥満症陰性及び/又は痩せ陽性及び/又は痩せ陰性参照レベルと比較して、対象が体重増加に対して感受性があるかどうかを決定するステップとを含む方法。
【請求項52】
糖尿病前症又は糖尿病のための一連の治療に対する対象の応答を予測する方法であって、対象から得た生体試料を分析して、糖尿病前症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、1種又は複数のバイオマーカーが、表27中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーから選択されるステップと、試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、1種又は複数のバイオマーカーの治療の治療陽性及び/又は治療陰性参照レベルと比較して、対象が一連の治療に対して応答する可能性があるかどうかを予測するステップとを含む方法。
【請求項53】
生体試料を分析して、表27中に列挙される1種又は複数のバイオマーカー及びそれらの組合せから選択される2種以上のバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
一連の治療が治療薬である、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
治療薬がインスリン増感剤である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
治療薬がチアゾリンジンジオンである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
空腹時血漿インスリン、空腹時血漿プロインスリン、空腹時血漿グルコース、空腹時遊離脂肪酸、HDL−コレステロール、LDL−コレステロール、C−ペプチド、アディポネクチン、ペプチドYY、ヘモグロビンA1C、ウエスト周囲、体重又は肥満度指数の対象の測定値を決定するステップをさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
糖尿病前症又は糖尿病のための治療に対する対象の応答をモニタリングする方法であって、対象から得た第1の生体試料を分析して、糖尿病前症に関する1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、第1の試料が、第1の時点で対象から得られ、1種又は複数のバイオマーカーが、表28中に列挙される1種又は複数のバイオマーカーから選択されるステップと、対象に組成物を投与するステップと、対象から得た第2の生体試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップであって、第2の試料が、組成物の投与後の第2の時点で対象から得られるステップと、第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較して、糖尿病前症又は糖尿病を治療するための組成物の有効性を評価するステップとを含む方法。
【請求項59】
組成物がインスリン増感剤である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
インスリン増感剤がチアゾリンジンジオンである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
空腹時血漿インスリン、空腹時血漿プロインスリン、空腹時血漿グルコース、空腹時遊離脂肪酸、HDL−コレステロール、LDL−コレステロール、C−ペプチド、アディポネクチン、ペプチドYY、ヘモグロビンA1C、ウエスト周囲、体重又は肥満度指数の対象の測定値を決定するステップをさらに含む、請求項58に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2010−537157(P2010−537157A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517019(P2010−517019)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/008756
【国際公開番号】WO2009/014639
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(502373592)メタボロン インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】