説明

糖尿病性神経障害を処置するためのジアリールウレア

本発明は、糖尿病性神経障害を処置するための、4{4−[3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−ウレイド]−3−フルオロフェノキシ}−ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドを、場合により少なくとも1種のさらなる治療剤と組み合わせて含む、医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病性神経障害を処置するための、4{4−[3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−ウレイド]−3−フルオロフェノキシ}−ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドを、場合により少なくとも1種のさらなる治療剤と組み合わせて含む、医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアリールウレア化合物、例えば、例えばUS20050038080に記載の4{4−[3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−ウレイド]−3−フルオロフェノキシ}−ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドは、VEGFR、PDGFR、raf、p38および/またはflt−3キナーゼシグナル伝達分子に対する阻害活性を含む様々な活性を有する、強力な抗癌および抗血管新生剤である。これらのジアリールウレア化合物は、Raf/MEK/ERK経路、rafキナーゼ、p38キナーゼ、VEGFRキナーゼ、PDGFRキナーゼの阻害を含む様々な活性を有すると、以前に特徴解析された。これらの活性および様々な疾患および症状の処置におけるそれらの使用は、例えば、WO2005/009961に開示されている。
【0003】
有痛性糖尿病性神経障害とも呼ばれる糖尿病性神経障害は、一般的な糖尿病関連現象である。神経障害の症候群としての疼痛は、全糖尿病患者の3分の1ほどに見られ得る。神経障害性疼痛は、管理が難しく、利用可能な処置選択肢は、完全な救済を殆どもたらさない(C.F. Corbett, The Diabetes Educator, Vol. 31, 2005, 4, 523-540)。その原因は不明であり、それは、伝統的な疼痛治療に良好に応答しない(R.A. Malik (2003) Treat. Endocrinol. 2(6), 339-400)。
【0004】
神経障害性疼痛の診断における最近の進歩には、神経障害性疼痛と非神経障害性疼痛とを区別できる方法が含まれる。処置の不在下で、疼痛が減少している間に、神経の損傷は進行し得る。症状管理処置は利用可能であり、鎮痛剤(NSAID)、抗鬱剤(例えば選択的セロトニン取込阻害剤、三環式抗鬱剤)、抗痙攣剤、カプサイシン局所用クリーム、ネキシレチン(nexiletine)、並びに、電気的刺激、鍼治療、磁気治療またはポリウレタンフィルムの局所使用などの物理または機械的治療の使用を含む。
【0005】
最近立証された通り (S.A Price et al. (2004) Diabetes, 53, 1851-1856)、SB239063、フィダレスタットまたはインシュリンによる糖尿病の動物の処置は、運動および感覚神経の両方の伝達速度の低下を防止する。低下した神経伝達速度(NCV)は、糖尿病性神経障害の確立された特徴である。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、式Iの化合物および場合により少なくとも1種のさらなる治療剤を含む、糖尿病性神経障害の処置用の医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明は、現行の治療と比較してより効果的に患者の神経障害性疼痛を低減する治療方法を提供するのみならず、神経機能の再構築のための治療方法も提供する。本発明による治療方法は、現行の治療よりも優れている。従って、本発明は、例えば、式Iのジアリールウレア化合物および場合によりさらなる治療剤、それらの医薬的に許容し得る塩、およびそれらの誘導体などを投与することにより、使用できる。
【0008】
式Iの構造を有する化合物、その医薬的に許容し得る塩、多形、溶媒和物、水和物、代謝物およびプロドラッグは、ジアステレオマー形(単離された立体異性体および立体異性体の混合物の両方)を含めて、集合的に本明細書において「式Iの化合物」と呼ぶ。
【0009】
式(I)は、以下の通りである:
【化1】

【0010】
化合物、塩などの単語の複数形が本明細書において使用される場合、これは、単一の化合物、塩なども意味すると解される。
【0011】
本発明は、また、本明細書に開示の化合物の有用な形態、例えば医薬的に許容し得る塩、代謝物およびプロドラッグなどにも関する。用語「医薬的に許容し得る塩」は、本発明の化合物の、比較的非毒性な無機または有機酸付加塩を表す。例えば、S. M. Berge, et al. "Pharmaceutical Salts," J. Pharm. Sci. 1977, 66, 1-19 参照。医薬的に許容し得る塩には、塩基として機能する主要な化合物を、無機または有機酸と反応させて、塩、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸およびクエン酸の塩を形成させることにより得られるものが含まれる。医薬的に許容し得る塩には、また、主要な化合物が酸として機能し、適当な塩基と反応して、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびコリン塩を形成するものも含まれる。当業者は、特許請求される化合物の酸付加塩は、化合物を適当な無機または有機酸と、数々の既知方法のいずれかで反応させることにより製造し得ることを、さらに認識するであろう。あるいは、アルカリおよびアルカリ土類金属塩を、本発明の化合物を適当な塩基と様々な既知方法で反応させることにより製造する。
【0012】
本発明の化合物の代表的な塩には、例えば、無機または有機の酸または塩基から、当分野で周知の手段により形成される、常套の非毒性の塩および第4級アンモニウム塩が含まれる。例えば、そのような酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、桂皮酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコへプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、イタコン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸、プロピオン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩が含まれる。
【0013】
塩基塩には、カリウムおよびナトリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミンおよびN−メチル−D−グルカミンなどの有機塩基とのアンモニウム塩が含まれる。さらに、塩基性窒素含有基は、低級ハロゲン化アルキル、例えばメチル、エチル、プロピルおよびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;硫酸ジアルキル、例えば硫酸ジメチル、ジエチルおよびジブチル;および、硫酸ジアミル、長鎖ハロゲン化物、例えばデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物、ハロゲン化アリールまたはアラルキル、例えば臭化ベンジルおよびフェネチル、および、他の一置換ハロゲン化アラルキル、または、多置換ハロゲン化アラルキルなどの物質で四級化し得る。
【0014】
本発明の目的上、溶媒和物は、溶媒分子が固体状態で錯体を形成している化合物の形態であり、例えば、エタノールおよびメタノールが含まれるがこれらに限定されない。水和物は、溶媒分子が水である、溶媒和物の特別な形態である。
【0015】
ある種の薬理的に活性な物質は、不安定な官能基でさらに改変でき、それは、インビボ投与後に切り取られて親の活性物質と医薬的に不活性な誘導体化基をもたらす。一般的にプロドラッグと呼ばれるこれらの誘導体を使用して、例えば、活性物質の物理化学的特性を変更し、活性物質を特定の組織に標的化し、活性物質の薬物動態学的および薬力学的特性を変更し、そして、望まれない副作用を低減することができる。本発明のプロドラッグには、例えば、良好に耐容され、医薬的に許容し得るエステルである本発明の適当な化合物のエステル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはペンチルエステルを含むアルキルエステルが含まれる。フェニル−C−Cアルキルなどのさらなるエステルを使用し得るが、メチルエステルが好ましい。
【0016】
他のプロドラッグを合成するのに使用できる方法は、この主題に関する以下の総説に記載されており、これらの合成方法の説明について、これらを出典明示により本明細書の一部とする:
・Higuchi, T.; Stella, V. eds. Prodrugs As Novel Drug Delivery Systems. ACS Symposium Series. American Chemical Society: Washington, DC (1975).
・Roche, E. B. Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs. American Pharmaceutical Association: Washington, DC (1977).
・Sinkula, A. A.; Yalkowsky, S. H. J Pharm Sci. 1975, 64, 181-210.
・Stella, V. J.; Charman, W. N. Naringrekar, V. H. Drugs 1985, 29, 455-473.
・Bundgaard, H., ed. Design of Prodrugs. Elsevier: New York (1985).
・Stella, V. J.; Himmelstein, K. J. J. Med. Chem. 1980, 23, 1275-1282.
・Han, H-K; Amidon, G. L. AAPS Pharmsci 2000, 2, 1- 11.
・Denny, W. A. Eur. J. Med. Chem. 2001, 36, 577-595.
・Wermuth, C. G. in Wermuth, C. G. ed. The Practice of Medicinal Chemistry Academic Press: San Diego (1996), 697-715.
・Balant, L. P.; Doelker, E. in Wolff, M. E. ed. Burgers Medicinal Chemistry And Drug Discovery John Wiley & Sons: New York (1997), 949-982.
【0017】
本発明の化合物の代謝物には、1個またはそれ以上の窒素がヒドロキシ基で置換されている式Iの化合物の酸化誘導体が含まれる;それには、当分野で1−オキソ−ピリジンと呼ばれる、ピリジン基の窒素原子がオキシド形態である誘導体、または、当分野で1−ヒドロキシ−ピリジンと呼ばれる、ヒドロキシ置換基を有する誘導体が含まれる。
【0018】
一般的製造方法
本発明の化合物は、例えば以下の公開された国際出願WO2005/009961に記載の、既知の化学反応および方法の使用により製造し得る。
【0019】
さらなる治療剤
本発明による式Iの化合物は、鎮痛剤、抗鬱剤、抗糖尿病剤、グルコース制御剤、神経保護剤、抗痙攣剤、麻酔剤、抗炎症剤またはカプサイシンなどのさらなる治療剤と組み合わせることができる。
【0020】
鎮痛剤の例には、NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)、COX−1−またはCOX−2−阻害剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
NSAIDの例には、例えば、アセクロフェナク、アセトアミノフェン、o−アセチルサリチル酸、アルクロフェナク、アルミノプロフェン、アンフェナク、アンピロキシカム、アムトルメチングアシル(amtolmetinguacil)、アニロラク(anirolac)、アントラフェニン(antrafenin)、アザプロパゾン、ベノリラート、ベルモプロフェン(bermoprofen)、ビンダリト(bindarit)、ブロムフェナク、ブクロキシン酸(bucloxsaeure)、ブコローム、ブフェキサマク、ブマジゾン、ブチブフェン(butibufen)、ブチキシラト(butixirat)、カルバサラートカルシウム、カルプロフェン(carprofen)、シンメタシン(cinmetacin)、シンノキシカム(cinnoxicam)、クリダナク、クロブザリト(clobuzarit)、デボキサメト(deboxamet)、デクスイブプロフェン、デクスケトプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エルテナク(eltenac)、エンフェナム酸(enfenamsaeure)、エテルサラト(etersalat)、エトドラク、エトフェナメート、フェクロブゾン(feclobuzon)、フェルビナク、フェンチアザク、フェプラジノール(fepradinol)、フロブフェン(flobufen)、フロクタフェニン、フルフェナム酸(flufenam acid)、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、フルプフェナク(furpfenac)、フルプロフェン(furprofen)、グルカメタシン(glucametacin)、イブフェナク、イブプロフェン、インドブフェン、インドメタシン、インドメタジンフラネシル(indometazine franesil)、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロベンザリット、ロナゾラク、ロルノキシカム、ロキソプロフェン、メフェナム酸(mefenam acid)、メロキシカム、メサラジン、モフェゾラク、ナブメトン、ナプロキセン、ニフルミク(niflumic)、オルサラジン、オキサプロジン、ペルビプロフェン(pelubiprofen)、フェニルブタゾン、ピメプロフェン(pimeprofen)、ピラゾラク(pirazolac)、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プリフェロン(prifelon)、プリノミド(prinomid)、プログルメタシン、プロカゾン、プロチジン酸(protizin acid)、ロマザリト(romazarit)、サリチルアミド、サリチル酸、サルミステイン(salmistein)、サルナセジン(salnacedin)、サルサラート、スリンダク、スプロフェン、タルニフルマト(talniflumat)、テニダップ、テノサル(tenosal)、テノキシカム、テポキサリン(tepoxalin)、チアプロフェン酸(tiaprofensaeure)、チアラミド、チルノプロフェンアルバメル(tilnoprofen arbamel)、チメガジン(timegadin)、チノリジン、トルフェナム酸、トルメチン、ウフェナマート、キシモプロフェン(ximoprofen)、ザルトプロフェンおよびゾリプロフェン(zoliprofen)が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
好ましいのは、アセトアミノフェン、o−アセチルサリチル酸、クリダナク、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェンおよびスリンダクからなる群から選択されるNSAIDである。より好ましくは、o−アセチルサリチル酸をNSAIDとして使用する。
【0023】
麻酔剤の例には、例えば、メリキセチン(melixetine)、リドカインおよびベンゾカインが含まれるが、これらに限定されない。好ましいのは、メリキセチンである。
【0024】
抗鬱剤の例には、例えば、選択的セロトニン取込阻害剤および三環式抗鬱剤、例えばデュロキセチン、トラゾドンおよびベンラファキシンが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
抗痙攣剤の例には、例えば、ガバペンチン、ラモトリジン、アミトリプチリンおよびプレガバリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
抗糖尿病剤の例には、例えば、インシュリン、CB−1アンタゴニスト、例えばリモナバンまたはSLV−319、5HT取込阻害剤、例えばシブトラミン、リパーゼ阻害剤、例えばオーリスタットまたはALT−962、CNTFアゴニスト、例えばアキソキン(axokine)、DGAT阻害剤、例えばBAY74−4113、DPP IV阻害剤、例えばビルダグリプチン、シタグリプチン、サキサグリプチン(saxagliptin)、LAF−237、MK−0431またはBMS−477118、GLP−1類似体、例えばエクセナチド、ベタトロピン(betatropin)、BIM−51077、CJC−1131またはリラグルチド、PPARαγアゴニスト、例えばBAY62−9069、BAY68−2959、テサグリタザル、ムラグリタザル(muraglitazar)、ONO−5129、LY−510929、LY−519818、GW−677954、TAK−559、ナバグリタザル(naveglitazar)またはAVE−0847、PPARγアゴニスト、例えばピオグリタゾン、ロシグリタゾン、R−483、バラグリタゾン(balaglitazone)、リボグリタゾン(rivoglitazone)またはTAK−654が含まれるが、これらに限定されない。好ましいのは、BAY74−4113、BAY62−9069、BAY68−2959、リモナバン、SLV−319、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、オーリスタット、テサグリタザル、ムラグリタザルおよびエクセナチドである。
【0027】
適応症
本発明による化合物および組合せは、糖尿病性神経障害の処置用の医薬の製造に使用できる。また、本発明は、有効量の本発明による少なくとも1種の式Iの化合物および場合により少なくとも1種のさらなる治療剤を投与することを含む、糖尿病性神経障害の処置方法を提供する。「有効量」は、所望の結果を達成するために、例えば、疾患または症状を処置するために有用である、化合物の量である。糖尿病性神経障害は、有痛性糖尿病性神経障害としても知られている。
【0028】
投与
本発明の化合物または薬物の組合せは、例えば、経口で、非経腸で、経腸で、静脈内に、腹腔内に、局所に、経皮(例えば、任意の標準的パッチを使用する)で、眼に、鼻腔に、局所で、非経口で、例えばエアロゾルで、吸入で、皮下に、筋肉内に、頬側に、舌下に、直腸に、膣に、動脈内に、そして、くも膜下腔内になどを含む、任意の有効な経路により、任意の形態で投与できる。それらは、単独で、または、活性または不活性な任意の成分と組み合わせて、投与できる。
好ましいのは、経口投与である。
【0029】
本発明の化合物または薬物の組合せは、既知の方法で、通常の製剤に変換でき、これらは、液体または固体製剤、例えば、限定ではないが、通常および腸溶性被覆錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、固体および液体エアロゾル並びに乳剤であり得る。
【0030】
本発明の組合せは、任意の時間および任意の有効な形態で投与できる。例えば、化合物は、同時に、例えば、単一の組成物または投薬単位(例えば、両方の組成物を含有する丸剤または液剤)として、投与できるか、または、それらは、分離した組成物として、しかし同時に、投与できる(例えば、一方の薬物を静脈内に投与し、他方を経口または筋肉内に投与する)。連続的に異なる時間に薬物を投与することもできる。物質を従来法で製剤化し、例えば、12時間、24時間の延長された期間にわたり所望の放出速度を達成できる。これは、適する代謝半減期を有する物質および/またはそれらの誘導体を使用することにより、かつ/または、制御放出製剤を使用することにより、達成できる。
【0031】
薬物の組合せは、例えば、薬物の協同的作用が、組み合わされた効果がそれらの個々の効果の代数的合計よりも大きいものである場合、相乗的であり得る。従って、少ない量の薬物を投与して、例えば、毒性または他の有害もしくは望まれない作用を低減し、かつ/または、物質が単独で投与される場合に使用されるのと同じ量を使用するが、より大きい効力を達成することができる。
【0032】
本発明の化合物または薬物の組合せは、さらに、任意の他の適する添加物または医薬的に許容し得る担体と組み合わせることができる。そのような添加物には、既に言及された物質のいずれも、並びに、常套に使用されるもののいずれも、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro and Gennaro, eds, 20th edition, Lippincott Williams & Wilkins, 2000); Theory and Practice of Industrial Pharmacy (Lachman et al., eds., 3rd edition, Lippincott Williams & Wilkins, 1986); Encyclopedia of Pharmaceutical Technology (Swarbrick and Boylan, eds., 2nd edition, Marcel Dekker, 2002)に記載のものが含まれる。これらは、本明細書において、それらが活性薬物と組み合わせられ、治療目的で安全に対象に投与され得ることを示すために、「医薬的に許容し得る担体」と呼ばれ得る。
【0033】
加えて、本発明の化合物または薬物の組合せは、上述の疾患および/または症状のいずれかの処置に利用される他の活性物質または他の治療剤と共に投与できる。
【0034】
本発明による他の治療には、電気的刺激、鍼治療、磁気治療またはポリウレタンフィルムの局所使用などの物理または機械的治療が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明は、また、疾患または障害の処置に有用な、少なくとも1種の式Iの化合物と少なくとも1種の上記の他の治療剤の組合せも提供する。本発明の目的上、「組合せ」には、以下のものが含まれる:
−少なくとも1種の式Iの化合物および少なくとも1種の上述の他の治療剤を含有する単一の組成物または投与形;
−同時または連続的に投与されるべき少なくとも1種の式Iの化合物および少なくとも1種の上述の他の治療剤を含有する組合せパック;
−単位用量または独立単位用量として相互に分離して包装された少なくとも1種の式Iの化合物および少なくとも1種の上述の他の治療剤を含み、それらが同時または連続的に投与されるとの指示書を含むか、または含まない、キット;および、
−同時または連続的に投与されると、協同して治療効果、例えば、同じ疾患の処置、を達成する、少なくとも1種の式Iの化合物および少なくとも1種の上述の他の治療剤の分離した独立の投与形。
【0036】
組合せの各物質の投与量は、所望の治療活性を提供するために、他の疾患および/または疾患のタイプおよび/または疾患の状態を参照して選択できる。例えば、組合せ中の活性物質は、固定された組合せで存在および投与できる。「固定された組合せ」は、本明細書で、成分が所望の効力を提供する固定された比率で存在する医薬形を意味すると企図している。これらの量は、特定の患者のために日常的に決定でき、ここで、適当な投与量を選択するために様々なパラメーター(例えば、疾患のタイプ、患者の年齢、疾患の状態、患者の健康、体重など)が利用されるか、または、量は比較的標準的であり得る。
【0037】
投与する有効成分の量は、用いる特定の化合物および投与単位、投与の様式および時間、処置期間、年齢、性別、および処置される患者の全般的状態、処置される症状の性質および程度、薬物代謝および排出の速度、起こり得る薬物の組合せおよび薬物−薬物相互作用などの考慮事項によって、幅広く変動し得る。
【0038】
好ましいのは、20ないし2000mg、好ましくは40ないし800mg、より好ましくは50ないし600mgの式Iの化合物の量である。
【0039】
特に好ましいのは、医薬組成物中に、20ないし3000mg、好ましくは50ないし1500、より好ましくは60ないし1000mgの4{4−[3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−ウレイド]−3−フルオロフェノキシ}−ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドの量である。
【0040】
本発明の他の実施態様では、式Iの化合物を、少なくとも1種のさらなる治療剤と、当業者が彼らの職業的判断により決定できる量で、組み合わせて投与する。
【0041】
本発明による医薬組成物は、1日に1回またはそれ以上、好ましくは3回まで、より好ましくは2回まで投与する。好ましいのは、経口経路による投与である。各投与において、同時に摂取される錠剤またはカプセル剤の数は、2個を超えるべきではない。
【0042】
それにも拘わらず、体重、有効成分に対する個体の挙動、製剤のタイプおよび投与を行う時間または間隔に応じて、特定された量から逸脱することが有利な場合があり得る。例えば、上述の最小量より少なくても十分な場合があり得、一方、特定された上限を超えなければならない場合もある。比較的大量に投与する場合、これらをその日にわたる数回の個別投与に分割するのが望ましいことがある。
【0043】
組合せは、有効量の少なくとも1種の式Iの化合物および少なくとも1種の上述の他の治療剤を含むことができ、それは、いずれかの化合物が単独で使用されるときよりも大きい治療効力を達成する。組合せは、各物質を単独で使用すると治療効果が観察されない場合に、または、組合せを投与すると効果の増強が観察される場合に、糖尿病性神経障害の処置に有用であり得る。
【0044】
組合せ中の各化合物の相対比は、それらの各々の作用メカニズムおよび疾患の生物学に基づいて選択することもできる。各化合物の相対比は、幅広く変動でき、本発明は、式Iの化合物および他の治療剤の量を、一方がより多い量で存在するように日常的に調節できる、糖尿病性神経障害を処置するための組合せを含む。
【0045】
組合せの1種またはそれ以上の物質の放出は、必要に応じて、単一の投与形、組合せパック、キット中にあるとき、または、分離した独立の投与形にあるとき、所望の治療活性を提供するために制御することもできる。
【0046】
好ましいのは、式Iの化合物および少なくとも1種のNSAIDを含む組合せである。より好ましくは、4{4−[3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−ウレイド]−3−フルオロフェノキシ}−ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドおよび少なくとも1種のNSAIDを含む組合せを使用する。最も好ましくは、4{4−[3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−ウレイド]−3−フルオロフェノキシ}−ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドおよびo−アセチルサリチル酸を含む組合せを使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病性神経障害の処置用の医薬を製造するための、式Iの化合物またはその医薬的に許容し得る塩、多形、溶媒和物、水和物、代謝物、プロドラッグもしくはジアステレオ異性体の使用であって、該式Iの化合物が、
【化1】

である、使用。
【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも1種の式Iの化合物、並びに、鎮痛剤、抗鬱剤、抗糖尿病剤、グルコース制御剤、神経保護剤、抗痙攣剤、麻酔剤、抗炎症剤およびカプサイシンからなる群から選択される少なくとも1種の治療剤を含む組合せ。
【請求項3】
さらなる治療剤がNSAIDまたは抗糖尿病剤である、請求項2に記載の組合せ。
【請求項4】
さらなる治療剤が、o−アセチルサリチル酸である、請求項3に記載の組合せ。
【請求項5】
糖尿病性神経障害の処置用の医薬を製造するための、請求項2ないし請求項4のいずれかの組合せの使用。
【請求項6】
請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の組合せを含む医薬組成物。
【請求項7】
糖尿病性神経障害の処置用の請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
糖尿病性神経障害の処置を必要としている対象において、糖尿病性神経障害を処置する方法であって、有効量の式Iの化合物またはその医薬的に許容し得る塩、多形、溶媒和物、水和物、代謝物、プロドラッグもしくはジアステレオ異性体を投与することを含み、該式Iの化合物が、
【化2】

である、方法。
【請求項9】
式Iの化合物が、鎮痛剤、抗鬱剤、抗糖尿病剤、グルコース制御剤、神経保護剤、抗痙攣剤、麻酔剤、抗炎症剤およびカプサイシンからなる群から選択される少なくとも1種の治療剤と組み合わせられる、請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2009−514921(P2009−514921A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539336(P2008−539336)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010747
【国際公開番号】WO2007/054303
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】