説明

糖尿病治療剤

イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と、糖尿病薬、抗肥満薬及び糖尿病性合併症治療薬からなる群から選ばれる少なくとも1種の薬剤とを組み合わせてなることを特徴とする医薬組成物。この医薬組成物は、糖尿病、糖尿病性合併症、高インスリン血症、糖代謝異常または肥満症の予防及び/又は治療薬として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬組成物、詳しくは特定の分岐鎖アミノ酸に特定の薬剤を組み合わせてなる医薬組成物、特に糖尿病の予防又は治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、唯一の血糖降下ホルモンであるインスリンの絶対的又は相対的不足に起因する代謝異常であり、持続的な高血糖を主な特徴とする。高血糖状態の持続は、インスリン不足に起因する代謝異常をさらに増悪させるのみならず、腎臓・神経・網膜などにおける細小血管障害や、動脈硬化などの大血管障害を引き起こし、健康な生活を著しく損なうこととなる。したがって、糖尿病コントロールの目標は、この高血糖状態を是正することによって、慢性合併症の発症を予防、進展を遅延することにある。
これまでインスリン製剤、インスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善剤、α−グルコシダーゼ阻害剤などの血糖降下剤が臨床治療法として広く適用されている。これらの血糖降下剤は有用性が認められているものの、それぞれが多くの問題点を抱えている。例えば、膵臓のインスリン分泌能が著しく低下した糖尿病患者ではインスリン分泌促進剤やインスリン抵抗性改善剤の有効性は低下する。また、インスリン抵抗性が著しい糖尿病患者ではインスリン製剤やインスリン分泌促進剤の有効性は低下する。
血糖降下剤の、そのような不都合を補完する目的で、作用機序の異なる薬剤を組み合わせて用いることは有用であると考えられるが、既存の血糖降下剤を組み合わせての使用では、多様な糖尿病の病態に対応して高血糖状態を是正するには限界がある。
インスリンの血糖降下作用に関わる主要な作用の一つとして、末梢細胞の糖輸送能力を増強することにより血液中の糖分を末梢細胞へ取り込ませ、結果的に血糖値を低下させる作用があげられる。
本出願人による特許文献1には、有効成分としてロイシン、イソロイシン及びバリンの少なくとも1種を含有する耐糖能異常用薬剤について記載されているが、他剤との併用に関する記載や本発明の医薬組成物についての記載はない。
【特許文献1】特開2003−171271号公報
【発明の開示】
【0003】
本発明の目的は、例えば、優れた糖尿病予防・治療剤として使用できる医薬、特に従来の血糖降下剤の使用では得られない高血糖改善効果を有する、医薬組成物を提供することである。
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と特定の薬剤を組み合わせて使用することにより、組み合わせて使用しない場合と比較して抗糖尿病作用、特に血糖降下作用において著明な治療的効果が得られることを見いだし、本発明を完成した。
本発明は、下記のとおりの発明である。
[1]イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と、糖尿病薬、抗肥満薬及び糖尿病性合併症治療薬からなる群から選ばれる少なくとも1種の薬剤を組み合わせてなる医薬組成物。
[2]高血糖症に起因する疾患を対象とし、その予防及び/又は治療を目的とする、上記[1]記載の医薬組成物。
[3]糖尿病、糖尿病性合併症、高インスリン血症、耐糖能障害または肥満症を対象とし、その予防及び/又は治療を目的とする、上記[1]記載の医薬組成物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の医薬組成物は、イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と、糖尿病薬、抗肥満薬及び糖尿病性合併症治療薬からなる群から選ばれる少なくとも1種の薬剤を組み合わせてなるもの(すなわち、併用剤)であり、投与時にイソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と前記薬剤を組み合わすことができるものであればよい。従って、本発明の糖尿病予防・治療剤は、イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と前記薬剤を同時に製剤化して得られる単一の製剤であっても、イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と前記薬剤を別々に製剤化して得られる少なくとも2種の製剤を組み合わせたものであってもよい。
本発明におけるイソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸は、必ずしも遊離アミノ酸として用いられる必要はなく、無機酸塩、有機酸塩、生体内で加水分解可能なエステル体などの形態で用いてもよい。また、2以上のイソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸をペプチド結合させたペプチド類の形態で用いてもよい。イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸には、L−体、D−体、及びDL−体何れも使用可能であるが、天然に存在するという観点からL−体が望ましい。
【0006】
本発明においてイソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と組み合わせて使用できる薬剤である糖尿病薬としては、例えば、インスリン製剤、インスリン誘導体、インスリン様作用剤、インスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善剤、ビグアナイド剤、糖新生阻害剤、糖吸収阻害剤、腎糖再吸収阻害剤、β3アドレナリン受容体アゴニスト、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン様ペプチド−1類縁体、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3阻害薬、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬又はこれらの組み合わせが、抗肥満薬としては、例えば、抗高脂血症薬、食欲抑制剤、リパーゼ阻害薬又はこれらの組み合わせが、糖尿病性合併症治療薬としては、例えば、血圧降下剤、末梢循環改善薬、抗酸化剤、糖尿病性神経障害治療薬又はこれらの組み合わせがあげられる。これらは、1種又は2種以上の組み合わせや混合物として用いることができる。
これらのうち、糖尿病薬、抗肥満薬又はこれらの組み合わせが好ましく、さらに糖尿病薬であるのが好ましい。具体的には、β3アドレナリン受容体アゴニスト、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン様ペプチド−1類縁体、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤及び食欲抑制剤からなる群から選ばれるものが、好ましく、又、インスリン製剤、インスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善剤、糖吸収阻害剤及び腎糖再吸収阻害剤からなる群から選ばれるものが好ましい。これらのなかで特にインスリン製剤及びインスリン分泌促進剤が好ましい。
イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と上記の薬剤を1種類又はそれ以上組み合わせて使用する場合、本発明は、単一の製剤としての同時投与、別個の製剤としての同一又は異なる投与経路による同時投与、及び別個の製剤としての同一又は異なる投与経路による間隔をずらした投与のいずれの投与形態を含み、イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と上記の薬剤を組み合わせてなる医薬とは、上記の如く単一製剤としての投与形態や別個の製剤を組み合わせた投与形態を含む。
【0007】
イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と、1種類又はそれ以上の上記薬剤を適宜組み合わせて使用することにより、上記疾患の予防又は治療上相加効果以上の有利な効果を得ることができる。または、同様に、単独に使用する場合に比較して、併用する上記薬剤の副作用を回避又は軽減させることができる。
組み合わせて使用される薬剤の具体的な化合物や処置すべき好適な疾患について下記の通り例示するが、本発明の内容はこれらに限定されるものではなく、具体的な化合物においてはそのフリー体、及びその又は他の薬理学的に許容される塩を含む。
インスリン製剤としては、NPH、レンテ、ウルトラレンテ、経肺吸収可能なインスリンなどが挙げられる。
インスリン誘導体とは、インスリンから誘導されるタンパク質又はペプチドでインスリン作用を保持しているものをいい、例えばリスプロ、B10Asp、glargineなどが挙げられる。
インスリン様作用剤とは、細胞への糖取り込み促進作用などのインスリンの生理作用を、ある程度インスリンに依存せずに発揮することによって、血糖降下作用を発揮する、インスリン誘導体以外のものをいい、例えばインスリン受容体キナーゼ刺激薬(例えばL−783281、TER−17411、CLX−0901、KRX−613など)、バナジウムなどが挙げられる。
【0008】
インスリン分泌促進剤とは、膵臓β細胞に作用し、血液中へのインスリン分泌を増加させることによって、血糖降下作用を発揮するものをいい、例えばスルホニルウレア剤(例えば、トルブタミド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリクラジド、グリメピリド、グリピジド、グリベンクラミド(グリブリド)など)、メグリチニド類(例えば、ナテグリニド、レパグリニド、ミチグリニドなど)、スルホニルウレア剤・メグリチニド類以外のATP感受性カリウムチャネル阻害剤(例えばBTS−67−582など)などが挙げられる。
インスリン抵抗性改善剤とは、インスリンの標的組織におけるインスリンの作用を増強することによって、血糖降下作用を発揮するものをいい、例えば、ペルオキシソーム増殖薬活性化受容体(PPAR)γアゴニスト(例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、シグリタゾンなどのチアゾリジンジオン系化合物、あるいはGI−262570、GW−1929、JTT−501、YM−440などの非チアゾリジンジオン系化合物など)、PPARγアンタゴニスト(例えばbisphenol A diglycidyl ether、LG−100641など)、PPARαアゴニスト(クロフィブラート、ベザフィブラート、クリノフィブラートなどのフィブラート系化合物、あるいは非フィブラート系化合物など)、PPARα/γアゴニスト(例えばKRP−297など)、レチノイドX受容体アゴニスト(例えばLG−100268など)、レチノイドX受容体アンタゴニスト(例えばHX531など)、プロテインチロシンホスファターゼ−1B阻害剤(例えばPTP−112など)などが挙げられる。
【0009】
ビグアナイド剤とは、肝臓における糖新生抑制作用や組織での嫌気的解糖促進作用あるいは末梢におけるインスリン抵抗性改善作用などによって、血糖降下作用を発揮するものをいい、例えば、メトホルミン、フェンホルミン、ブホルミンなどが挙げられる。
糖新生阻害剤とは、主に糖新生を阻害することによって、血糖降下作用を発揮するものをいい、例えば、グルカゴン分泌抑制剤(例えばM&B 39890Aなど)、グルカゴン受容体アンタゴニスト(例えばCP−99711、NNC−92−1687、L−168049、BAY27−9955など)、グルコース−6−ホスファターゼ阻害剤などが挙げられる。
糖吸収阻害剤とは、食物中に含まれる炭水化物の消化管における酵素消化を阻害し、体内への糖の吸収を阻害又は遅延することによって、血糖降下作用を発揮するものをいい、例えば、α−グルコシダーゼ阻害剤(例えばアカルボース、ボグリボース、ミグリトールなど)、α−アミラーゼ阻害剤(例えばAZM−127など)などが挙げられる。
腎糖再吸収阻害剤とは、腎尿細管中の糖の再吸収を阻害することによって、血糖降下作用を発揮するものをいい、例えば、ナトリウム依存性グルコース輸送体阻害剤(例えばT−1095、フロリジンなど)などが挙げられる。
【0010】
β3アドレナリン受容体アゴニストとは、脂肪におけるβ3アドレナリン受容体を刺激し、脂肪酸酸化を亢進させてエネルギーを消費させることによって、肥満症、高インスリン血症の改善作用を発揮するものをいい、例えば、CL−316243、TAK−677などが挙げられる。
グルカゴン様ペプチド−1類縁体としては、例えば、エキセンジン−4、NN−2211などが挙げられ、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニストとしては、例えば、AZM−134などが挙げられ、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤としては、例えば、NVP−DPP−728などが挙げられる。グルカゴン様ペプチド−1類縁体、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤及びグルカゴン様ペプチド−1は細胞におけるグルカゴン様ペプチド−1の作用を模倣又は増強することによって、糖尿病改善作用を発揮するものをいう。
アルドース還元酵素阻害剤とは、糖尿病性合併症の処置に好ましいもののうち、糖尿病性合併症を発症する組織において認められる、高血糖状態の持続に起因するポリオール代謝経路の亢進によって過剰に蓄積される細胞内ソルビトールを、アルドース還元酵素を阻害することによって低下させるものをいい、例えば、エパルレスタット、トルレスタット、フィダレスタット、ゼネレスタットなどが挙げられる。
終末糖化産物生成阻害剤とは、糖尿病性合併症の処置に好ましいもののうち、糖尿病状態における高血糖状態の持続によって亢進する終末糖化産物の生成を阻害することによって細胞障害を軽減させるものをいい、例えば、NNC−39−0028、OPB−9195などが挙げられる。
【0011】
グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3阻害薬としては、例えば、SB−216763、CHIR−98014などが挙げられ、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬としては、例えばCP−91149などが挙げられる。
抗高脂血症薬としては、例えば、ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA還元酵素阻害剤(例えばプラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチンなど)、フィブラート系薬剤(例えばクロフィブラート、ベザフィブラート、シンフィブラートなど)、胆汁酸排泄促進薬などが挙げられる。
食欲抑制薬としては、例えば、シブトラミン、マジンドールなどが挙げられ、リパーゼ阻害薬としては、例えば、オルリスタットなどが挙げられる。
血圧降下剤としては、例えば、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(例えばカプトプリル、アラセプリルなど)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(例えばカンデサルタンシレキセチル、バルサルタンなど)、カルシウム拮抗薬(例えばシルニジピン、アムロジピン、ニカルジピンなど)、利尿薬(例えばトリクロルメチアジド、スピロノラクトンなど)、交感神経遮断薬(例えばクロニジン、レセルピンなど)などが挙げられる。
【0012】
末梢循環改善薬としては、例えば、イコサペント酸エチルなどが挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば、リポ酸、プロブコールなどが挙げられる。
糖尿病性神経障害治療薬としては、例えば、メコバラミン、塩酸メキシレチンなどが挙げられる。
さらに、例示した以外の血糖降下剤、抗高脂血症薬、抗肥満薬、血圧降下剤、末梢循環改善薬、抗酸化剤、糖尿病性神経障害治療薬などもイソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と組み合わせて用いられる限りは本発明に含まれる。
高血糖に起因する疾患としては、糖尿病、糖尿病性合併症(例えば、網膜症、神経障害、腎症、潰瘍、大血管症)、肥満症、高インスリン血症、糖代謝異常、高脂質血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、脂質代謝異常、アテローム性動脈硬化症、高血圧、うっ血性心不全、浮腫、高尿酸血症、痛風等が挙げられる。
例えばイソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と前記薬剤と組み合わせて使用する場合、糖尿病の処置においては、インスリン製剤、インスリン誘導体、インスリン様作用剤、インスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善剤、ビグアナイド剤、糖新生阻害剤、糖吸収阻害剤、腎糖再吸収阻害剤、β3アドレナリン受容体アゴニスト、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン様ペプチド−1類縁体、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3阻害薬、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬、食欲抑制剤及びリパーゼ阻害薬からなる群より選択される少なくとも1種の薬剤と組み合わせるのが好ましく、インスリン製剤、インスリン誘導体、インスリン様作用剤、インスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善剤、ビグアナイド剤、糖新生阻害剤、糖吸収阻害剤、腎糖再吸収阻害剤、β3アドレナリン受容体アゴニスト、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン様ペプチド−1類縁体、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3阻害薬およびグリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬からなる群より選択される少なくとも1種の薬剤と組み合わせるのが更に好ましく、インスリン製剤、インスリン誘導体、インスリン様作用剤、インスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善剤、ビグアナイド剤、糖新生阻害剤、糖吸収阻害剤および腎糖再吸収阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種の薬剤と組み合わせるのが最も好ましい。
【0013】
同様に、イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と前記薬剤と組み合わせて使用する場合、糖尿病性合併症の処置においては、インスリン製剤、インスリン誘導体、インスリン様作用剤、インスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善剤、ビグアナイド剤、糖新生阻害剤、糖吸収阻害剤、腎糖再吸収阻害剤、β3アドレナリン受容体アゴニスト、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン様ペプチド−1類縁体、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、アルドース還元酵素阻害剤、終末糖化産物生成阻害剤、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3阻害薬、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬、抗高脂血症薬、食欲抑制剤、リパーゼ阻害薬、血圧降下剤、末梢循環改善薬、抗酸化剤および糖尿病性神経障害治療薬からなる群より選択される少なくとも1種の薬剤と組み合わせるのが好ましく、アルドース還元酵素阻害剤、終末糖化産物生成阻害剤、血圧降下剤、末梢循環改善薬、抗酸化剤および糖尿病性神経障害治療薬からなる群より選択される少なくとも1種の薬剤と組み合わせるのが更に好ましい。
また、肥満症の処置においては、インスリン製剤、インスリン誘導体、インスリン様作用剤、インスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善剤、ビグアナイド剤、糖新生阻害剤、糖吸収阻害剤、腎糖再吸収阻害剤、β3アドレナリン受容体アゴニスト、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン様ペプチド−1類縁体、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3阻害薬、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬、食欲抑制剤及びリパーゼ阻害薬からなる群より選択される少なくとも1種の薬剤と組み合わせるのが好ましく、β3アドレナリン受容体アゴニスト、食欲抑制剤およびリパーゼ阻害薬からなる群より選択される少なくとも1種の薬剤と組み合わせるのが更に好ましい。
【0014】
本発明のイソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と前記薬剤を組み合わせる医薬において、その組み合わせ方は、両者を合わせて単一製剤としても良く、又、別個の製剤としてキットにして一つのパッケージにしても良いし、別々に包装しても良い。イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と前記薬剤の割合については、多くの要因、例えば所望の投与量及び使用される医薬的に許容される担体に依存しており、広範囲に変わり得るが、両者を合わせて単一製剤とする場合、別個の製剤とする場合のいずれにおいても、イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸の含量(重量)1に対して、前記薬剤は0.000001〜1程度であることが好ましい。
本医薬を単一製剤として患者に適応する場合、それぞれの成分が上記範囲になるように投与することができる。また、それぞれの有効成分を別個の製剤として投与する場合は、平均的な比率として上記比率を採用することができる。
本発明のための1製剤あたりでは、イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸を0.01〜10g程度、前記薬剤を0.001〜2000mg程度(但し、インスリン製剤、インスリン誘導体、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン様ペプチド−1類縁体いずれかの場合は、0.01U〜500U)程度含有することができる。
【0015】
本発明の医薬組成物を使用する場合、経口投与、静脈内投与、皮下投与、または筋肉内投与することができる。投与量は投与する患者の症状、年齢、投与方法によって異なるが、通常イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸は0.1〜30g/kg/日、前記薬剤は0.01〜20000mg(但し、インスリン製剤、インスリン誘導体、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン様ペプチド−1類縁体いずれかの場合は、0.01U〜1000U)/kg/日である。
なお、イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸の投与量(摂取量)について算出する際、本発明で目的とする疾患異常の治療、予防等の目的で使用される薬剤の有効成分として前記の算定範囲が決められているので、これとは別目的で、例えば通常の食生活の必要から、或は別の疾患の治療目的で、摂取または投与される分岐鎖アミノ酸についてはこれを前記算定に含める必要はない。例えば、通常の食生活から摂取される一日あたりのイソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸の量を前記本発明における有効成分の一日あたりの投与量から控除して算定する必要はない。
【0016】
本発明の医薬組成物は常法により製剤化することができる。製剤の形としては注射剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、クリーム剤、座剤などが挙げられ、製剤用担体としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、澱粉、結晶セルロース、炭酸カルシウム、カオリン、デンプン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、エタノール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム塩、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アセチルセルロース、白糖、酸化チタン、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル、デヒドロ酢酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガント、メチルセルロース、卵黄、界面活性剤、白糖、単シロップ、クエン酸、蒸留水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、ブドウ糖、塩化ナトリウム、フェノール、チメロサール、パラオキシ安息香酸エステル、亜硫酸水素ナトリウム等があり、製剤の形に応じて、本発明の化合物と混合して使用される。
イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と、他の少なくとも1種の薬剤を組み合わせ又は混合して含む本発明の医薬組成物によって、従来の血糖降下剤の使用では得られない抗糖尿病作用が得られることから、本発明の医薬組成物は高血糖症に起因する疾患の予防又は治療に極めて有用である。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に述べる。なお、以下の実施例は、本発明を説明するものであって、本発明をこれに限定するものではない。
【実施例1】
【0017】
ストレプトゾトシン誘発1型糖尿病ラットを用いたイソロイシン(Ile)とインスリン製剤(ins)との併用効果の検討
ストレプトゾトシン誘発1型糖尿病ラットは、7週齢雄性Sprague−Dawleyラットに体重1kgあたり75mgのストレプトゾトシン(Wako Pure Chemical,Osaka,Japan)をクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、尾静脈より投与し、一週間後の血糖値が350mg/dl以上を示すモデルを選別して用いた。17時間絶食したストレプトゾトシン誘発1型糖尿病ラットに1.5g/kg L−イソロイシン(6%溶液、対照:生理食塩水)を経口投与して、その直後に0.1U/kgのインスリンを皮下投与した後、継時的な血糖値を測定した。結果を図1に示す。
図1から明らかなようにイソロイシンとインスリン(0.1U/kg)との併用投与群は、インスリン(0.1U/kg)単独群に比べて顕著な血糖降下を示した。
【実施例2】
【0018】
II型糖尿病モデルGKラットを用いたイソロイシンとインスリン分泌促進剤(ナテグリニド)との併用効果の検討
GKラットは日本クレアから購入し、21−25週齢のものを用いた。17時間絶食したGKラットに50mg/kgナテグリニドおよび1.5g/kg L−イソロイシンを単独または併用で経口投与し、同時に1g/kgグルコース溶液を経口投与した後、継時的な血糖値、血漿インスリン値を測定した。結果を図2に示す。
図2から明らかなように、L−イソロイシン(1.5g/kg)とナテグリニド(50mg/kg)との併用投与群では、ナテグリニド(50mg/kg)単独群及び化合物1(1.5g/kg)単独群に比べて顕著な血糖降下を示した。
上記の結果からも明らかなように、本発明の医薬組成物は高血糖症に起因する疾患に対する治療を行うのに有用である。すなわち、イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と前記薬剤を適宜組み合わせて使用することにより、イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸又は他の少なくとも1種の薬剤を単独で使用する場合よりも著しい抗糖尿病作用が得られることから、本発明の医薬組成物は、糖尿病、糖尿病性合併症、高インスリン血症、糖代謝異常または肥満症の予防及び/又は治療薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1における、1型糖尿病モデルストレプトゾトシン誘発1型糖尿病ラットでのイソロイシンとインスリン製剤の併用効果を示すグラフである。(A)0分に0.1U/kgインスリン皮下投与(ins)、および1.5g/kgL−イソロイシン経口投与(Ile)または0.1U/kgインスリンと1.5g/kgL−イソロイシンの併用投与(ins+Ile)をし、継時的な血糖値を測定し、0分値からの血糖値変化率(%)で表した。(B)180分の血糖値変動を0分値からの血糖値降下率(%)で表した。(平均値±標準偏差、各群N=5)
【図2】実施例2における、II型糖尿病モデルGKラットでのイソロイシンとナテグリニドの併用効果を示すグラフである。0分において、1g/kgグルコース経口投与と共に、1.5g/kgL−イソロイシン経口投与(Ile)または50mg/kgナテグリニド経口投与(NAT)、および1.5g/kgL−イソロイシンと50mg/kgナテグリニド併用投与(NAT+Ile)し、継時的な血糖値変動を測定した。(平均値±標準偏差、各群N=5)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソロイシン、ロイシンまたはバリンから選択される少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸と、糖尿病薬、抗肥満薬及び糖尿病性合併症治療薬からなる群から選ばれる少なくとも1種の薬剤を組み合わせてなる医薬組成物。
【請求項2】
糖尿病薬が、インスリン製剤、インスリン誘導体、インスリン様作用剤、インスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善剤、ビグアナイド剤、糖新生阻害剤、糖吸収阻害剤、腎糖再吸収阻害剤、β3アドレナリン受容体アゴニスト、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン様ペプチド−1類縁体、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3阻害薬及びグリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬からなる群から選ばれ、抗肥満薬が、抗高脂血症薬、食欲抑制剤及びリパーゼ阻害薬からなる群から選ばれ、糖尿病性合併症治療薬が、血圧降下剤、末梢循環改善薬、抗酸化剤、糖尿病性神経障害治療薬からなる群から選ばれる請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
高血糖症に起因する疾患を対象とし、その予防及び/又は治療を目的とする、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
糖尿病、糖尿病性合併症、高インスリン血症、耐糖能障害または肥満症を対象とし、その予防及び/又は治療を目的とする、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項5】
薬剤が、糖尿病薬、抗肥満薬又はこれらの組み合わせから選ばれる請求項1〜4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
薬剤が、糖尿病薬である請求項1〜4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
薬剤が、β3アドレナリン受容体アゴニスト、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン様ペプチド−1類縁体、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤及び食欲抑制剤からなる群から選ばれる請求項1〜4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
薬剤が、インスリン製剤、インスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善剤、糖吸収阻害剤及び腎糖再吸収阻害剤からなる群から選ばれる請求項1〜4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
薬剤が、インスリン製剤又はインスリン分泌促進剤である請求項1〜4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】
薬剤が、インスリン製剤である請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
薬剤が、インスリン分泌促進剤である請求項9記載の医薬組成物。
【請求項12】
分岐鎖アミノ酸が、イソロイシンである請求項1〜11のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項13】
分岐鎖アミノ酸が0.1〜30g/kg/日、薬剤が0.01〜20000mg/kg/日で投与される形態にある請求項1〜12のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項14】
分岐鎖アミノ酸と薬剤が単一製剤の形態にある請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
分岐鎖アミノ酸と薬剤が別個の製剤の形態にある請求項13記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【国際公開番号】WO2005/049006
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515678(P2005−515678)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017336
【国際出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】