説明

糖尿病白内障の治療剤

【課題】糖尿病白内障の進行過程に対し効果的な遅延作用を示す糖尿病白内障の治療剤の提供。
【解決手段】網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬を有効成分として含む糖尿病白内障の治療剤。特定の構造を有するフェニルアゾール化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む糖尿病白内障の治療剤が含まれる。NOラジカルスカベンジ作用及び高い網膜移行性を有する抗酸化薬が効果的な抗糖尿病白内障作用を有することを明らかにし、これまで薬物療法が困難であると考えられてきた白内障の新たな治療手段を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糖尿病白内障の治療剤に関する。さらに詳しく述べると、本発明は特定の抗酸化薬を有効成分として含む糖尿病白内障の治療剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
視機能が低下すると、生活上、大きな支障が生じる。中高年になると目の障害がおこりやすくなり、失明に至る危険性を有する病気も少なくない。中途失明する目の病気として、緑内障、白内障、糖尿病性網膜症、及び黄斑変性症が知られている。緑内障は眼圧で視神経がおかされて視野が狭くなる病気であり、白内障は眼内の水晶体が濁ってくる病気である。糖尿病性網膜症は糖尿病が原因で眼底の網膜に障害がおこる病気であり、黄斑変性症では網膜の中心にある黄斑部に異常が発生する。
【0003】
白内障は水晶体構成蛋白質の凝集によってその透明性が不可逆的に失われ、視覚が妨げられている病態である。進行にしたがい視覚機能を障害するため、患者の QOL (Quality of Life ;生活の質)を著しく低下させる。その発症原因は様々である。例えば、加齢(老人性)白内障は50歳以上で見られるようになり、高齢になるに連れて有病率も増し、80歳以上ではほぼ全例で観察されると言われている。
【0004】
白内障で水晶体が濁る原因は、水晶体を構成している蛋白質が、老化や外界からの刺激(紫外線など)によって変性するためと考えられ、白内障で最も多いのは加齢性白内障である。濁りは一部分から始まり、徐々に水晶体全体に広がる。この水晶体の濁りには、水晶体に含まれるビタミンやグルタチオンの減少、ミネラルのカリウムの減少、ナトリウムやカルシウムの増加などが関係していると考えられている。
【0005】
白内障による水晶体の混濁を透明な状態に戻す薬はなく、白内障による視力の低下を改善することも視力を回復させることもできないのが現状であり、白内障の治療では、薬による治療は、一般に、白内障の進行を少しでも遅らせる効果と、手術までの期間を延ばすことを期待して行われる。薬物療法で使われる薬としては、点眼薬が一般的であり、水晶体の主成分である蛋白質代謝の異常を改善する作用を期待するピレノキシン含有点眼薬、水晶体中に多く含まれるが白内障にかかると減少するグルタチオンを補うグルタチオン含有点眼薬がある。内服薬も用いられ、水晶体中のビタミンCの減少を防ぐチオプロニン含有内服薬やビタミンC薬、老化防止に有効なパロチンを主成分とする内服薬や老化を防ぐといわれる八味地黄丸といった漢方薬も用いられる。しかし、こうした薬を使用しても、必ず混濁の進行を遅らせることができるとは限らないことが知られている。
【0006】
近年憂慮されている事柄に糖尿病患者数の増加が挙げられる。平成14年現在で、糖尿病罹患者数は予備軍を含めると、1,620万人にも上るとされている。糖尿病は様々な合併症を引き起こすことが知られているが、白内障もまたその一つである。糖尿病に罹患すると、白内障の発症及び進行が大幅に加速されることが知られている。また、糖尿病は白内障発症の若年化及び進行の加速をもたらすリスクファクターでもある。超高齢化や糖尿病罹患者数の急激な増大が懸念されている現在、白内障患者数は増加の一途であることは疑う余地もない。
【0007】
現在、白内障の根治法は、混濁した水晶体を摘出し眼内レンズを挿入する外科的治療以外にない。医療技術の飛躍的な向上により「日帰り手術」も可能である一方、術後も感染症や後発白内障発症等のリスクは残されたままである。また、このような外科的治療は全ての患者に適用されるわけではない上、医療技術面、経済面の問題により適用が制約を受ける。よって、白内障はいまだ世界における失明原因の第1位となっている。現時点において抗白内障薬として臨床応用されているものはいくつか存在するが、いずれの薬物も、その有効性については客観的科学的根拠に欠けていることが明らかとなった。このような現状に鑑み、より安価かつ容易に白内障の発症及び進行を抑制するため、抗白内障薬の開発は急務である。
【0008】
白内障の形成過程において、酸化ストレスが重要な役割を演じるとの報告が蓄積されつつある。すなわち、老化に伴って多発する白内障など眼疾患の多くは、フリーラジカル・活性酸素が関連する酸化的ストレスがその発症要因の一つとして考えられている(非特許文献1〜3)。
【0009】
【非特許文献1】Anderson R.E.,Kretzer F.L.,Rapp L.M.「フリーラジカルと眼の疾患」Adv. Exp. Med. Biol.,第366巻,第73頁,1994年
【非特許文献2】Nishigori H.,Lee J.W.,Yamauchi Y.,Iwatsuru M.「発芽鶏胚のグルコチコイド誘発白内障における過酸化脂質変性とアスコルビン酸の効果」Curr.Eye Res.,第5巻,第37頁,1986年
【非特許文献3】Truscott R.J.W.,Augusteyn R.C.「正常又は白内障のヒト水晶体におけるメルカプト基の作用」Exp.Eye Res.,第25巻,第139項,1977年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、糖尿病白内障の進行過程に対し効果的な遅延作用を有する糖尿病白内障の治療剤の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、白内障発症メカニズムの一つに水晶体内の酸化ストレスの増大が挙げられることに着目し、鋭意研究の結果、網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬が糖尿病白内障抑制作用を有することを見出した。すなわち、本発明者らは、網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬は糖尿病白内障で生じる水晶体の混濁の進行を効果的に遅らせる作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の有効成分である網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬は、高い抗酸化作用を有し、かつ経口投与でも眼組織内への移行性に優れている。
すなわち、本発明は、以下に示される糖尿病白内障の治療剤に関する。
1.網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬を有効成分として含むことを特徴とする糖尿病白内障の治療剤。
2.式(1)
【化1】

[式中、Bは、下記式(B−1)を表し、
【化2】

{式中、Aは、下記式(A−1)、(A−2)、(A−3)又は(A−4)で表されるイミダゾリル基又はピラゾリル基を表し、
【化3】

(式中、R4及びR5は、それぞれ独立してG1で置換されていてもよいC1-6アルキル基、G1で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、G1で置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、ハロゲン原子を表し、
6は、水素原子、G1で置換されていてもよいC1-6アルキル基、G1で置換されていてもよいC1-6アルキルカルボニル基、G1で置換されていてもよいベンゾイル基又はテトラヒドロピラニル基を表し、
G1はシアノ基、ホルミル基、水酸基、C1-6アルコキシ基、アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基又はハロゲン原子を表し、
sは、0又は1〜3のいずれかの整数を表し、
tは、0、1又は2の整数を表し、
s又はtが2以上のとき、R4同士又はR5同士はそれぞれ同一でも相異なっていてもよい。)
1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、G2で置換されていてもよいC1-6アルキル基、G2で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、G2で置換されていてもよいC1-6アルキルチオ基、G2で置換されていてもよいC1-6アルキルカルボニル基、(一つ又は二つのC1-6アルキル基で置換されていてもよい)アミノ基、G2で置換されていてもよいベンゾイル基、又はG2で置換されていてもよいベンジル基を表し、
2は、G2で置換されていてもよいC1-6アルキル基を表し、
G2はシアノ基、ホルミル基、水酸基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基又はハロゲン原子を表し、
mは0又は1〜4のいずれかの整数を表し、mが2以上のとき、R1同士は、同一又は相異なっていてもよく、
nは0又は1〜10のいずれかの整数を表し、nが2以上のとき、R2同士は、同一又は相異なっていてもよく、
pは1又は2の整数を表し、
点線は単結合又は二重結合を表し、同時に二重結合となることはなく、
Yは、価数を満たす置換基又は多重結合を有してもよい炭素原子又は窒素原子を表し、
Yが炭素原子を表すとき、Eは、酸素原子、硫黄原子又は下記式(1a)を表し、
【化4】

(式中、R60は、水素原子、C1-6アルキルカルボニル基、(ニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、C1-6アルコキシ基、又はC1-6アルキル基で置換されていてもよい)ベンゾイル基を表し、
7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C2-6アルケニルオキシ基、C2-6アルキニルオキシ基、C1-6アシルオキシ基、G2で置換していてもよいC3-6シクロアルキル基、又はG2で置換していてもよいフェニル基を表し、
j及びkは、独立して、0又は1の整数を表し、
Lは0、又は1〜16のいずれかの整数を表し、
Lが2以上のとき、R7同士及びR8同士はそれぞれ同一でも相異なっていてもよい。)
Yが窒素原子を表すとき、Eは、前記式(1a)を表わす。}
Dは、酸素原子、硫黄原子又は前記式(1a)を表し、
Zは、少なくともG3で置換されたクロマン−2−イル基、少なくともG3で置換されたクロマン−4−イル基、少なくともG3で置換された2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、少なくともG3で置換された2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、少なくともG3で置換されたチオクロマン−2−イル基、少なくともG3で置換された2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、少なくともG3で置換されたチオクロマン−4−イル基、少なくともG3で置換された2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−3−イル基、又は少なくともG3で置換された1,3−ベンゾキサチオール−2−イル基を表し、
G3は、式:NHR10
{式中、R10は、水素原子、C1-6アルキルカルボニル基、(ニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、C1-6アルコキシ基、又はC1-6アルキル基で置換されていてもよい)ベンゾイル基を表す。}、
又は式:OR11
{式中、R11は、水素原子、C1-6アルキルカルボニル基、(水酸基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子、C1-6アルキル基で置換されていてもよい)ベンゾイル基を表す。}
を表す。]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む糖尿病白内障の治療剤。
3.Zが、下記式(Z−1)、(Z−2)、(Z−3)、(Z−4)又は(Z−5)
【化5】

[式中、*は、不斉炭素原子を表し、X1は、酸素原子又は硫黄原子を表し、R12〜R32は、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基を表し、G3は、前記と同じ意味を表す。]
で表される基を示す前記2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む糖尿病白内障の治療剤。
4.前記式(1)で示される化合物が、式(1−1)
【化6】

[式中、Aは、前記式(A−1)、(A−2)、(A−3)又は(A−4)で表されるイミダゾリル基又はピラゾリル基を表し、
1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、G2で置換されていてもよいC1-6アルキル基、G2で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、G2で置換されていてもよいC1-6アルキルチオ基、G2で置換されていてもよいC1-6アルキルカルボニル基、(一つ又は二つのC1-6アルキル基で置換されていてもよい)アミノ基、G2で置換されていてもよいベンゾイル基、又はG2で置換されていてもよいベンジル基を表し、
2は、G2で置換されていてもよいC1-6アルキル基を表し、
G2はシアノ基、ホルミル基、水酸基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基又はハロゲン原子を表し、
mは0又は1〜4のいずれかの整数を表し、mが2以上のとき、R1同士は、同一又は相異なっていてもよく、
nは0又は1〜8のいずれかの整数を表し、nが2以上のとき、R2同士は、同一又は相異なっていてもよく、
7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C2-6アルケニルオキシ基、C2-6アルキニルオキシ基、C1-6アシルオキシ基、G2で置換していてもよいC3-6シクロアルキル基、又はG2で置換していてもよいフェニル基を表し、
Lは0、又は1〜16のいずれかの整数を表し、
Lが2以上のとき、R7同士及びR8同士はそれぞれ同一でも相異なっていてもよく、
*は、不斉炭素原子を表し、
1は、酸素原子又は硫黄原子を表し、
16〜R19は、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基を表し、
G3は、式:NHR10
{式中、R10は、水素原子、C1-6アルキルカルボニル基、(ニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、C1-6アルコキシ基、又はC1-6アルキル基で置換されていてもよい)ベンゾイル基を表す。}、
又は式:OR11
{式中、R11は、水素原子、C1-6アルキルカルボニル基、(水酸基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子、C1-6アルキル基で置換されていてもよい)ベンゾイル基を表す。}
を表す。]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む前記2又は3に記載の糖尿病白内障の治療剤。
5.経口投与される前記1〜4のいずれか1項に記載の糖尿病白内障の治療剤。
【発明の効果】
【0012】
従来の抗白内障薬は主に点眼薬として用いられているため、水晶体への到達は、眼房水を通じて到達する。水晶体前極部は眼房水に接しているため、それなりの薬効は期待されるが、水晶体後極部は眼房水とは接していないため薬物到達が難しい部域となる。
本発明で提供される糖尿病白内障の治療剤の最大の特徴の一つは、高い網膜移行性にある。本発明の糖尿病白内障の治療剤は血中に移行した後、前眼房からのみならず、網膜に移行したのち硝子体内に拡散することが考えられる。これにより、硝子体に接する水晶体後極部からも薬物分子が作用できる。本発明により、NOラジカルスカベンジ作用及び高い網膜移行性を有する抗酸化薬が効果的な抗糖尿病白内障作用を有することを明らかにすることで、これまで薬物療法が困難であると考えられてきた白内障の新たな治療戦略を提示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬を有効成分として含むことを特徴とする糖尿病白内障の治療剤の発明である。網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬には、式(1)
【化7】

で表わされるフェニルアゾール化合物又はその薬学的に許容される塩が含まれる。
上記式(1)で表されるフェニルアゾール化合物において、式(1)中、Bは下記式(B−1)を含む。
【化8】

【0014】
上記式(B−1)中、Aは、下記式(A−1)、(A−2)、(A−3)又は(A−4)で表されるイミダゾリル基又はピラゾリル基を含む。
【化9】

(式中、R4及びR5は、それぞれ独立してG1で置換されていてもよいメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等のC1-6アルキル基;G1で置換されていてもよいメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ等のC1-6アルコキシ基;G1で置換されていてもよいメチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル等のC1-6アルキルスルホニル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を表し、
6は、水素原子;G1で置換されていてもよいメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等のC1-6アルキル基;G1で置換されていてもよいメチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、ブチルカルボニル等のC1-6アルキルカルボニル基;G1で置換されていてもよいベンゾイル基又はテトラヒドロピラニル基を表し、
G1はシアノ基;ホルミル基;水酸基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ等のC1-6アルコキシ基;アミノ基;モノメチルアミノ基;ジメチルアミノ基;又はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を表し、
sは、0又は1〜3のいずれかの整数を表し、
tは、0、1又は2の整数を表し、
s又はtが2以上のとき、R4同士又はR5同士はそれぞれ同一でも相異なっていてもよい。)
【0015】
また、上記式(A−3)、(A−4)において、R6が水素原子のとき、Aが表すイミダゾリル基又はピラゾリル基は下記に示した互変異性構造をとりうる。
【化10】

【0016】
好ましいAとして、1−H−イミダゾール−2−イル基、1−H−イミダゾール−4−イル基、1−ピラゾール基、1−メチルイミダゾール−2−イル基、1−メチルイミダゾール−5−イル基、1−メチルイミダゾール−4−イル基、1−メチルピラゾール−4−イル基、1−イミダゾリル基、1H−ピラゾール−5−イル基、1H−ピラゾール−4−イル基、1−メチルピラゾール−5−イル基、1−メチルピラゾール−3−イル基、1−ベンゾイルピラゾール−4−イル基、1−(2−テトラヒドロピラニル)−ピラゾール−3−イル基、さらに好ましいAとしては、ベンゼン環の3位又は4位に結合した1−イミダゾリル基又は1−H−ピラゾール−5−イル基を挙げることができる。
【0017】
1は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;水酸基;G2で置換されていてもよいメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等のC1-6アルキル基;G2で置換されていてもよいメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ等のC1-6アルコキシ基;G2で置換されていてもよいメチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、t−ブチルチオ等のC1-6アルキルチオ基;G2で置換されていてもよいメチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、ブチルカルボニル等のC1-6アルキルカルボニル基;(一つ又は二つのメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等のC1-6アルキル基で置換されていてもよい)アミノ基;G2で置換されていてもよいベンゾイル基;又はG2で置換されていてもよいベンジル基を表す。
【0018】
2は、G2で置換されていてもよいメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等のC1-6アルキル基を表す。
【0019】
G2はシアノ基;ホルミル基;水酸基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ等のC1-6アルコキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシ、ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等のC1-6アルコキシカルボニル基;ニトロ基;アミノ基;モノメチルアミノ基;ジメチルアミノ基;又はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を表す。
【0020】
mは0又は1〜4のいずれかの整数を表し、mが2以上のとき、R1同士は、同一又は相異なっていても良く、
nは0又は1〜10のいずれかの整数を表し、nが2以上のとき、R2同士は、同一又は相異なっていても良く、
pは1又は2の整数を表し、
点線は単結合又は二重結合を表し、同時に二重結合となることはなく、
Yは、価数を満たす置換基又は多重結合を有してもよい炭素原子又は窒素原子を表す。
【0021】
Yが炭素原子を表すとき、Eは酸素原子、硫黄原子又は下記式(1a)を表し、Yが窒素原子を表すとき、Eは下記式(1a)を表す。
【化11】

{式中、R60は、水素原子;C1-6アルキルカルボニル基;(ニトロ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;水酸基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ等のC1-6アルコキシ基;又はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル等のC1-6アルキル基で置換されていてもよい)ベンゾイル基を表し、
7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子;シアノ基;水酸基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル等のC1-6アルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ等のC1-6アルコキシ基;エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−メチル−2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル等のC2-6アルケニル基;エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−メチル−2−プロピニル、2−メチル−3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−メチル−2−ブチニル、2−メチル−3−ペンチニル、1−ヘキシニル、1,1−ジメチル−2−ブチニル等のC2-6アルキニル基;アリルオキシ、2−プロペニルオキシ、2−ブテニルオキシ、2−メチル−3−プロペニルオキシ等のC2-6アルケニルオキシ基;2−プロピニルオキシ、2−ブチニルオキシ、1−メチル−2−プロピニルオキシ等のC2-6アルキニルオキシ基;アセトキシ、プロピオニロキシ、ブチリロキシ等のC1-6アシルオキシ基;G2で置換していてもよいシクロプロピル、1−メチルシクロプロピル、2−メチルシクロプロピル、2,2−ジメチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC3-6シクロアルキル基;又はG2で置換していてもよいフェニル基を表し、
j及びkは、独立して、0又は1の整数を表し、
Lは0、又は1〜16のいずれかの整数を表し、
Lが2以上のとき、R7同士及びR8同士はそれぞれ同一でも相異なっていてもよい。}
【0022】
式(1)中、Dは、酸素原子、硫黄原子又は前記式(1a)を表し、
Zは、少なくともG3で置換されたクロマン−2−イル基、少なくともG3で置換されたクロマン−4−イル基、少なくともG3で置換された2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、少なくともG3で置換された2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、少なくともG3で置換されたチオクロマン−2−イル基、少なくともG3で置換された2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、少なくともG3で置換されたチオクロマン−4−イル基、少なくともG3で置換された2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−3−イル基、又は少なくともG3で置換された1,3−ベンゾキサチオール−2−イル基を表し、好ましいものZとして、下記式(Z−1)、(Z−2)、(Z−3)、(Z−4)又は(Z−5)を挙げることができる。
【化12】

[式中、*は、不斉炭素原子を表し、
1は、酸素原子又は硫黄原子を表し、
12〜R32は、それぞれ独立して、水素原子;又はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル等のC1-6アルキル基を表し、
G3は、式:NHR10
{式中、R10は、水素原子;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシ、ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等のC1-6アルキルカルボニル基;(ニトロ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;水酸基;C1-6アルコキシ基;又はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル等のC1-6アルキル基で置換されていてもよい)ベンゾイル基を表す。}、
又は式:OR11
{式中、R11は、水素原子;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシ、ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等のC1-6アルキルカルボニル基;(水酸基;C1-6アルコキシ基;ニトロ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル等のC1-6アルキル基で置換されていてもよい)ベンゾイル基を表す。}を表す。]
【0023】
前記式(1)で表わされるフェニルアゾール化合物には、下記式(1−1)
【化13】

(式中、A、R1、R2、m、R7、R8、L、R16〜R19、X1、及びG3は、式(1)におけるA、R1、R2、m、R7、R8、L、R16〜R19、X1、及びG3とそれぞれ同じものを表し、nは0又は1〜8のいずれかの整数を表し、nが2以上のとき、R2同士は、同一又は相異なっていてもよい。)
で表されるフェニルアゾール化合物が含まれる。
【0024】
[フェニルアゾール化合物の製造方法]
式(1)で表されるフェニルアゾール化合物のうちB部がB−1である化合物は、例えば、次の製造法1〜7により製造することができる。
製造法1:工程1
【化14】

{式(2)中、A、E、Y、R1、R2、m、n及びpは、前記式(1)におけるA、E、Y、R1、R2、m、n及びpとそれぞれ同じものを表し、式(3)中、D'は式(1)におけるDに対し、Dと式(C=O)−D'との間の等価が成り立ち、Z'は、前記式:(Z−1)、(Z−2)、(Z−3)、(Z−4)又は(Z−5)におけるG3が、ニトロ基、又はOR11のときのZを表す。}
即ち、工程1により、式(3)で示されるカルボン酸と式(2)で示されるアミンとを、常法により脱水縮合させることにより、式(1')(式中、A、E、Y、R1、R2、m、n及びpは、式(2)におけるA、E、Y、R1、R2、m、n及びpとそれぞれ同じものを表し、D'及びZ'は、式(3)におけるD'及びZ'とそれぞれ同じ基を表す。)で示されるフェニルアゾール化合物を得ることができる。
【0025】
この脱水縮合反応は、適当な縮合剤の存在下に行うことができる。この場合、縮合剤としては、例えば、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン等を用いることができる。
また、この反応において、反応系に、N−ヒドロキシコハク酸イミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジンを共存させることにより、反応をより速やかに進行させることができる。
反応溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば、特に限定はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(以下THFと略記する)、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(以下DMFと略記する)、ジメチルスルホキシド(以下DMSOと略記する)、ピリジン等を挙げることができる。
反応は、−15℃〜溶媒の沸点程度、好ましくは0〜80℃で行われる。
【0026】
製造法2:
別法として、下記反応式に従って製造することもできる。
【化15】

{式(2)中、A、E、Y、R1、R2、m、n及びpは、前記式(1)におけるA、E、Y、R1、R2、m、n及びpとそれぞれ同じものを表し、式(3)中、D'は式(1)におけるDに対し、Dと式(C=O)−D'との間の等価が成り立ち、Z'は、前記式:(Z−1)、(Z−2)、(Z−3)、(Z−4)又は(Z−5)におけるG3が、ニトロ基、又はOR11のときのZを表す。}
即ち、式(3)で示されるカルボン酸誘導体を、塩化チオニル、五塩化リン、シュウ酸ジクロリド等のハロゲン化剤を用いて、酸クロリド(4)を得たのち、得られた酸クロリドを不活性有機溶媒中、塩基存在下に、式(2)で示されるアミンと反応させ、式(1')(式中、A、E、Y、R1、R2、m、n及びpは、式(2)におけるA、E、Y、R1、R2、m、n及びpとそれぞれ同じものを表し、D'及びZ'は、式(3)におけるD'及びZ'とそれぞれ同じ基を表す。)で示されるフェニルアゾール化合物を得ることができる。
【0027】
反応溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば、特に限定はないが、例えば、ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、DMF、DMSO、ピリジン等を用いることができる。
反応に用いられる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(以下DBUと略記する)等のアミン類、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基類等を挙げることができる。
反応は、−15℃〜溶媒の沸点程度、好ましくは0〜80℃で行われる。
【0028】
製造法3:
【化16】

{式(2)中、A、E、Y、R1、R2、m、n及びpは、前記式(1)におけるA、E、Y、R1、R2、m、n及びpとそれぞれ同じものを表し、式(5)中、D'は式(1)におけるDに対し、Dと式(1”)における式CH2−D'との間の等価が成り立ち、Z'は、前記式:(Z−1)、(Z−2)、(Z−3)、(Z−4)又は(Z−5)におけるG3が、ニトロ基、又はOR11のときのZを表す。}
即ち、式(5)で示されるアルデヒドと式(2)で示されるアミンとを、常法により還元的アミノ化させることにより、式(1'')(式中、A、E、Y、R1、R2、m、n及びpは、式(2)におけるA、E、Y、R1、R2、m、n及びpとそれぞれ同じものを表し、D'及びZ'は、式(5)におけるD'及びZ'とそれぞれ同じ基を表す。)で示されるフェニルアゾール化合物を得ることができる。
【0029】
この還元的アミノ化反応は、適当な酸触媒の存在下、還元剤を添加することにより行うことができる。この場合、酸触媒としては、例えば、酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸類、硫酸、塩酸等の無機酸類を挙げることができる。還元剤としては、例えば、NaBH4、ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド等を挙げることができる。
反応溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば、特に限定はないが、例えば、ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、DMF、DMSO、ピリジン等を挙げることができる。
反応は、−15℃〜溶媒の沸点程度、好ましくは室温で行われる。
【0030】
製造法4:工程2
フェニルアゾール化合物であるアニリン化合物は、以下の方法により製造することができる。
【化17】

{式(1'')中、A、E、Y、R1、R2、m、n及びpは、式(1)におけるA、E、Y、R1、R2、m、n及びpとそれぞれ同じものを表し、Z'は、前記式:(Z−1)、(Z−2)、(Z−3)、(Z−4)又は(Z−5)におけるG3が、ニトロ基のときのZを表す。}
即ち、工程2により、上記製造法1〜3で得られた式(1'')で示されるニトロ基を有するフェニルアゾール化合物を触媒を用いて水素添加を行うことにより、Z'における置換基G3のニトロ基がNHR10となった式(1)で示されるフェニルアゾール系化合物であるアニリン化合物を得る。
触媒としては、パラジウム炭素、二酸化白金、ラネーニッケル等を挙げることができる。
反応溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素類、DMF等のアミド類、ギ酸、酢酸等の有機酸類、酢酸エチル等のエステル類等及びこれらの混合溶媒を用いることができる。
反応は、0℃〜溶媒の沸点程度、好ましくは20〜80℃で行われる。
【0031】
製造法5:
【化18】

{式(1'')中、A、E、Y、R1、R2、m、n及びpは、式(1)におけるA、E、Y、R1、R2、m、n及びpとそれぞれ同じものを表し、Z'は、前記式:(Z−1)、(Z−2)、(Z−3)、(Z−4)又は(Z−5)におけるG3が、ニトロ基のときのZを表す。}
即ち、式(1'')で示されるニトロ基を有するフェニルアゾール化合物を金属触媒と酸を用いて水素添加を行うことにより、Z'における置換基G3のニトロ基がNHR10となった式(1)で示されるフェニルアゾール化合物であるアニリン化合物を得るものである。
金属触媒としては、例えば、塩化第一スズ等を挙げることができる。
酸としては、例えば、硫酸、塩酸等を挙げることができる。
反応溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル,THF、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素類、DMF等のアミド類等、及びこれらの混合溶媒を用いることができる。
反応は、0℃〜溶媒の沸点程度、好ましくは60〜80℃で行われる。
【0032】
製造法6:
工程1:
【化19】

工程2:
【化20】

{式(1c')中、A、E、R1、R2、m、n及びpは、式(7a)におけるA、E、R1、R2、m、n及びpとそれぞれ同じものを表し、Dは、式(1)におけるDと同じ基を表し、Z'は、前記式:(Z−1)、(Z−2)、(Z−3)、(Z−4)又は(Z−5)におけるG3が、ニトロ基又はOR11のときのZを表す。式(6)中、E、R1、R2、m、n及びpは、式(1)におけるE、R1、R2、m、n及びpとそれぞれ同じものを表し、Yは炭素原子を表し、R34はアシル基を示し、R33はハロゲン原子を示す。式(1'b)中、R4及びsは、式(A−1)におけるR4及びsとそれぞれ同じものを表す。式(7)中、A、E、R1、R2、m、n、R34及びpは、式(6)におけるA、E、R1、R2、m、n、R34及びpとそれぞれ同じものを表し、Aは式(1'b)から誘導されるイミダゾリル基を示す。式(7a)中、A、E、R1、R2、m、n及びpは、式(7)におけるA、E、R1、R2、m、n及びpとそれぞれ同じものを表す。式(8)中、Dは、式(1)におけるDと同じ基を表し、Z'は、前記式:(Z−1)、(Z−2)、(Z−3)、(Z−4)又は(Z−5)におけるG3が、ニトロ基又はOR11のときのZを表し、R35は、パーフルオロアルキル基を表す。}
式(1c')で表されるフェニルアゾール化合物の製造は、式(6)で表される化合物と、式(1'b)で表されるイミダゾール化合物とを、溶媒中で触媒存在下で反応させ、式(7)で表される化合物を脱水及び脱アシル化して式(7a)で表される化合物を得る工程1と、式(7a)で表される化合物と、式(8)で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸エステル化合物とを、溶媒中で反応させる工程2とを有する方法によることができる。
【0033】
即ち、工程1において原料とされる式(6)で表される化合物において、R34が示すアシル基としてはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等を挙げることができ、R33が示すハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、ヨウ素原子等を挙げることができ、かかる基を有する式(6)と式(1'b)で表されるイミダゾール化合物との反応は、キシレン、トルエン、メシチレン等のBTX溶媒等の溶媒中で、触媒として1,10−フェナンスロリンと1,5−ジフェニル−1,4−ペンタジエン−3−オンと炭酸セシウムとトリフルオロメタンスルホン酸銅(I)ベンゼンコンプレックス等を用いて行うことができる。反応は、アルゴン気流中、100〜150℃等の溶媒の沸点に対応した温度で加熱還流して行い、式(7)で表される生成物を得る。式(7)で表される反応生成物の脱水は、濃塩酸等を用いて加熱還流して行うことができ、反応後、アルカリで中和し、式(7a)で表される化合物を得る。
【0034】
工程2において用いられる式(8)で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸エステル化合物としては、R35としてトリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基等を有するものを挙げることができ、これらのうちトリフルオロメチル基等が好ましい。かかるパーフルオロアルカンスルホン酸化合物と、工程1で得られた式(7a)で表される化合物との反応は、アセトニトリル、ジオキサン、THF等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン等のBTX系溶媒等の溶媒中で、触媒として炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の塩基を用い、100〜150℃で加熱還流して行うことができる。
【0035】
製造法7:
フェニルアゾール化合物であるアニリン化合物は、以下の方法により製造することができる。
工程3:
【化21】

{式(1c)中、A、E、Y、R1、R2、m、n及びpは、式(1c')におけるA、E、Y、R1、R2、m、n及びpとそれぞれ同じものを表し、Zは、式(1c')におけるZ'において、置換基G3がNHR10となった基を表す。式(1d)中、A、E、Y、R1、R2、m、n及びpは、式(1c)におけるA、E、Y、R1、R2、m、n及びpとそれぞれ同じものを表す。}
即ち、工程3により、工程2で得られた式(1c')で表されるニトロ基を有するフェニルアゾール化合物を還元し、Z'における置換基G3のニトロ基がNHR10となった式(1c)で表されるフェニルアゾール系化合物を得る。式(1c')で表されるフェニルアゾール系化合物の還元は、塩化第一スズ・2水和物等の触媒を用い酸性溶液中で、100〜150℃等の温度に加熱還流をして反応終了後、アルカリで中和する方法等によることができる。更に、工程3により得られた(1c)で表されるフェニルアゾール系化合物を還元して、式(1d)で表されるフェニルアゾール系化合物を得る反応は、パラジウム炭素等の触媒を用い、メタノール、エタノール等のアルコール、酢酸等の有機酸、これらの混合溶媒等の室温又は0〜60℃の溶媒中で、水素添加して行うことができる。このようにして、Aがベンゼン環の3位又は4位に結合した3−イミダゾール体や4−イミダゾール体、あるいは3−ピラゾール体や4−ピラゾール体についても上記と同様な方法で合成することができる。またアミドタイプについても同様な方法で合成することができる。
【0036】
反応終了後は、通常の後処理を行うことにより目的物を得ることができる。
化合物の構造は、IR、NMR及びMS等から決定した。
なお、式(1)で表されるフェニルアゾール化合物には、いくつかの光学活性体及び互変異性体が存在し得る。これらは、すべて本発明に含まれる。
式(1)で表されるフェニルアゾール化合物の薬学的に許容される塩は、式(1)で表されるフェニルアゾール化合物の塩であって薬学的に許容されるものであれば特に制限されるものではなく、かかる塩として、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸の塩や、酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、ニコチン酸、ヘプタグルコン酸等の有機酸の塩を挙げることができる。これらは、通常の合成化学的手法により容易に製造することができる。
【0037】
[フェニルアゾール化合物の製造例]
以下に本発明有効成分化合物の製造例を挙げる。
製造例1:
[工程1]
1−アセチル−4−(4−イミダゾール−1−イルフェニル)−ピペラジンの製造
【化22】

1−アセチル−4−(4−ブロモフェニル)−ピペラジン20gとイミダゾール7.9gをキシレン120mLに懸濁した反応液に、触媒として室温で1,10−フェナンスロリン16.9gと1,5−ジフェニル−1,4−ペンタジエン−3−オン1.4gと炭酸セシウム28.9gとトリフルオロメタンスルホン酸銅(I)ベンゼンコンプレックス1.8gを加え、アルゴン気流中、125℃で24時間、加熱還流する。反応終了後、反応液に塩化アンモニウム水溶液300mLを加え、クロロホルムで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させる。硫酸マグネシウムを濾別後、減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:酢酸エチル=3:1からクロロホルム:メタノール=20:1)に付し、目的とする1−アセチル−4−(4−イミダゾール−1−イルフェニル)−ピペラジン15.2g(融点181−182℃)を得る。
【0038】
1H−4−(4−イミダゾール−1−イルフェニル)−ピペラジンの製造
【化23】

1−アセチル−4−(4−イミダゾール−1−イルフェニル)−ピペラジン15.2gに濃塩酸100mLを加え、3時間加熱還流を行う。反応終了後、反応液を冷却し1N水酸化ナトリウム水溶液で中和し結晶を析出させる。得られる結晶を濾過し、少量の水で水洗、乾燥することで、目的とする1−(4−イミダゾール−1−イルフェニル)−ピペラジン12g(融点177−180℃)を得る。
【0039】
4−(±)−(5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチルジヒドロベンゾフラン−2−イルメチル)−1−(4−イミダゾール−1−イルフェニル)ピペラジンの製造
【化24】

1H−4−(4−イミダゾール−1−イルフェニル)−ピペラジン0.7gと2,4,6,7−テトラメチル−5−ニトロジヒドロベンゾフラン−2−アルデヒド0.7gを塩化メチレン20mLに溶解し、触媒として酢酸1mLを添加し、室温で30分攪拌する。得られる反応液にナトリウムトリアセトキシボロハイドライド1.2gを添加し、室温で30分攪拌する。反応終了後、反応液を水にあけ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した後、クロロホルムで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させる。硫酸マグネシウムを濾別後、減圧濃縮し、目的物1.3gを得る。
【0040】
製造例2:
[工程2]
4−(±)−(5−アミノ−2,4,6,7−テトラメチルジヒドロベンゾフラン−2−イルメチル)−1−(4−イミダゾール−1−イルフェニル)ピペラジンの製造
【化25】

4−(±)−(5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチルジヒドロベンゾフラン−2−イルメチル)−1−(4−イミダゾール−1−イルフェニル)ピペラジン1.3gにエタノール30mLを加え、塩化第一スズ・2水和物4.4gと濃塩酸15mLを添加し、6時間加熱還流を行う。反応液を水にあけ1N水酸化ナトリウム溶液で中和し、クロロホルム抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させる。硫酸マグネシウムを濾別後、減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=30:1)に付し、目的物0.5g融点165−167℃を得る。
【0041】
先の製造法1〜7のいずれかにより、又はいずれかと同様にして得られる本発明有効成分化合物(フェニルアゾール化合物)(1)の具体例を第1表(表1)及び第1表(つづき)(表2)に示す。表中の物理恒数に& NMRと記載した化合物については、表の最後にNMRデーターを示す。表中のdecomp.は分解を表す。表中の略号、記号は下記の意味を表す。
Me:メチル,Et:エチル,Bu:ブチル,Ph:フェニル,
a1:1−イミダゾリル,
a2:1H−ピラゾール−5−イル.
なお、A欄の、a1、a2に付した数字は結合するフェニル基の位置を表す。また、Z欄のh1〜h7は、下式で表わされる基h1〜h7を示す。
【化26】

【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
[1H−NMRデータ(重クロロホルム溶媒、内部標準TMS)]
単位はδ、なお括弧内の数値はプロトン比を表し、記号はs:シングレット、d:ダブレット、t:トリプレット、q:カルテット、m:マルチプレット、br:ブロード、brs:ブロードシングレットを表す。
化合物B−1−11
1.7(s,3H),2.0(s,6H),2.1(s,3H),2.3(s,3H),2.9(d,1H),3.0−3.4(m,4H),3.7(m,1H),3.9(m,2H),4.0(d,1H),4.3(m,1H),6.9(d,2H),7.2(d,2H),7.25(s,1H),7.3(s,1H),7.8(s,1H)
化合物B−1−13
1.6(s,3H),1.8(m,2H),1.9(s,3H),2.0(s,3H),2.1(s,3H),2.3(s,3H)2.5(m,2H),2.7(m,1H),3.0−4.2(m,8H),6.9(d,2H),7.2(d,2H),7.25(s,1H)7.3(s,1H),7.7(s,1H)
化合物B−1−28
1.4(s,3H),1.92(s,3H),1.97(s,3H),2.0(s,3H),2.3(s,3H),2.6(m,4H),2.7(m,3H),3.0(d,1H),3.1(m,4H),6.7(m,3H),7.2(m,3H),7.7(s,1H)
化合物B−1−37
1.7(s,3H),2.1(s,3H),2.15(s,6H),2.9(d,1H),3.0−3.4(m,4H),3.7(m,1H),3.9(m,2H),3.9(d,1H),4.2(m,1H),6.5(d,1H),6.9(d,2H),7.55(d,1H),7.6(d,2H)
化合物B−1−39
1.6(s,3H),1.7(m,2H),2.0(s,3H),2.1(s,3H),2.15(s,3H),2.5−2.6(m,2H),2.7−2.8(m,1H),3.0−4.2(m,8H),6.5(d,1H),6.8(d,2H),7.1(d,1H),7.6(d,2H)
【0045】
フェニルアゾール化合物(1)は、抗酸化作用を有していて、その抗酸化活性により種々の活性酸素や過酸化脂質を除去し、網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬として知られている。以下に、本発明有効成分化合物の抗酸化作用、網膜移行性、及び経口毒性の具体例を示す。
[In vivo抗酸化作用]
本発明有効成分化合物のIn vivo抗酸化作用をジャーナル・オブ・メディシナル・ケミスリー(J.Med.Chem.、1997年、第40巻、p.559−573)記載の方法に準じて、塩化第一鉄のマウス脊髄くも膜下腔内投与による異常行動や死亡率の抑制効果から評価する。Slc:ICR系雄性マウス(5週)(日光SLC株式会社より入手)、一群3〜7匹を用い、50mM塩化第一鉄の生理食塩水溶液をマウスの第5−第6腰椎間より脊柱管に5μL投与する。症状観察は、塩化第一鉄投与20分から60分行い、第32表に示す症状から60分後のスコアを求める。試験化合物は生理食塩水溶液又は1%ポリエチレン硬化ヒマシ油(日光ケミカルズ社製 NIKKOL HCO−60)生理食塩水溶液に溶解又は懸濁し、塩化第一鉄投与30分前に腹腔内或いは経口投与する。
本発明有効成分化合物の50%阻害用量(以下ID50と略記する)は対照群(生理食塩水投与群)のスコアと試験化合物投与群のスコアから求める。結果を第33表に示す。結果から、本発明有効成分化合物はin vivo抗酸化作用を有する。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
[網膜移行性]
本発明有効成分化合物の網膜移行性を評価する。一群3匹のSD系雄性ラット(6週齢)に、0.1N塩酸溶液或いは1%ポリエチレン硬化ヒマシ油(NIKKOL HCO−60)溶液に溶解或いは懸濁した試験化合物を経口投与し、30分後に両眼を摘出し、氷冷下で網膜を分離する。網膜を氷冷下、0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)中、ポリトロン微量ホモジナイザー(NS−310E:日音医理科器機社製)で、5%ホモジネート液を調製し、37℃で、1時間自動酸化させ、生成した過酸化脂質量をチオバルビツール酸法(真杉ら、ビタミン51、21−29、1977)で定量する。各投与量における阻害率から30%阻害する投与量(ID30)を求める。その結果を第34表に示す。結果から、本発明有効成分化合物はex vivo網膜過酸化脂質生成抑制作用を有し、網膜移行性が高い。
【表5】

【0049】
[経口毒性]
雄性マウスに本発明有効成分化合物の一回用量を経口投与した後、7日間観察し死亡率を求める。結果を第37表に示す。結果から本発明有効成分化合物は急性経口毒性が低い。
【0050】
【表6】

【0051】
[本発明の糖尿病白内障の治療剤]
本発明の糖尿病白内障の治療剤は、網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬を有効成分として含むものであれば、特に限定されるものではなく、前記有効成分としては、網膜の酸化障害を抑制する抗酸化作用を有する有効成分化合物又はその薬学的に許容される塩が含まれ、前記有効成分化合物には式(1)で示されるフェニルアゾール化合物が含まれる。例えば、前記フェニルアゾール化合物又はその薬学的に許容される塩の1種又は2種以上を有効成分として含有するものを糖尿病白内障の治療用の医薬として、任意の様式で投与することができる。例えば、経口、経鼻、非経口、局所、経皮又は経直腸で投与することができ、その形態も、固体、半固体、凍結乾燥粉末又は液体の剤形、例えば、錠剤、坐薬、丸薬、軟質及び硬質カプセル、散薬、液剤、注射剤、懸濁剤、エアゾル剤、持続放出製剤等とすることができ、正確な投与量を処方でき、かつ、簡便に投与することができる適当な剤形とすることができる。
【0052】
また、本発明の糖尿病白内障の治療剤は、有効成分と、慣用の医薬用担体又は賦形剤の他、他の薬剤、アジュバント等を他の成分と反応しない範囲で含有する組成物とすることができる。かかる組成物は、投与様式に応じて、有効成分を1〜99重量%、適当な医薬用担体又は賦形剤を99〜1重量%含有するものとすることができ、好ましくは、有効成分を5〜75重量%、残部を適当な医薬用担体又は賦形剤とするものである。
【0053】
本発明の糖尿病白内障の治療剤には、投与様式に拘わらず、所望により、少量の補助物質、例えば、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、抗酸化剤等、他の成分と反応しない範囲で、例えば、クエン酸、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、ブチル化ヒドロキシトルエン等を添加することもできる。このような製剤は、通常の方法、例えば、レミントン・ファルマスーテイカル・サイエンス(Remington's Pharmaceutical Sciences)第18版、マック・パブリシング・カンパニー、イーストン、ペンシルバニア(Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania)1990年刊等に教示される記載に従って製造することができる。
【0054】
本発明の糖尿病白内障の治療剤において、式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の治療有効量は、個人及び処置される疾病の病状により変動される。通常、治療有効1日用量は、体重1kgあたり、式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される1種又は2種以上の塩0.14mg〜14.3mg/日とすることができ、好ましくは、体重1kgあたり0.7mg〜10mg/日、より好ましくは、体重1kgあたり1.4mg〜7.2mg/日とすることができる。例えば、体重70kgのヒトに投与する場合、式(1)の化合物又はその薬学的に許容される塩の用量範囲は、1日10mg〜1.0g、好ましくは、1日50mg〜700mg、より好ましくは、1日100mg〜500mgとなるが、これは飽く迄目安であって、処置の病状によってはこの範囲以外の用量とすることができる。
【0055】
本発明の糖尿病白内障の治療剤の好ましい投与経路は経口であり、これに適用される賦形剤としては、任意の通常用いられる賦形剤、例えば、医薬用のマニトール、乳糖、デンプン、ゼラチン化デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロースエーテル誘導体、グルコース、ゼラチン、スクロース、クエン酸塩、没食子酸プロピル等を挙げることができる。また、希釈剤として、例えば、乳糖、スクロース、リン酸二カルシウム等を、崩壊剤として、例えば、クロスカルメロースナトリウム又はその誘導体等を、結合剤として、例えば、ステアリン酸マグネシウム等を、滑沢剤として、例えば、デンプン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロースエーテル誘導体等を含有させることができる。
【0056】
注射剤とする場合には、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を包含することが好ましい。水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えば注射剤用蒸留水及び生理食塩水を用いることができる。非水溶性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート(商品名)等を用いることができる。このような注射剤は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えば、ラクトース)、可溶化ないし溶解補助剤のような添加剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
【0057】
また、坐剤とする場合には、担体として体内で徐々に溶解する担体、例えば、ポリオキシエチレングリコール又はポリエチレングリコール(以下PEGと略記する)、具体的には、PEG1000(96%)又はPEG4000(4%)を使用し、かかる担体に式(1)の化合物又はその薬学的に許容される塩0.5〜50重量%を分散したものを挙げることができる。
【0058】
液剤とする場合は、担体として水、食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノール等を使用し、かかる担体に式(1)の化合物又はその薬学的に許容される塩を0.5〜50重量%と共に、任意の医薬アジュバントを溶解、分散させる等の処理を行い、溶液又は懸濁液としたものが好ましい。
【0059】
本発明の糖尿病白内障の治療剤は、また、上記の他に、他の薬効を有する成分を適宜含有させてもよい。また、投与形態としては、上記と同様の投与形態の他、点眼剤、眼軟膏剤とすることができる。点眼剤とする場合は、フェニルアゾール化合物を通常使用される基剤溶媒に加え水溶液又は懸濁液とし、pHを4〜10、好ましくは5〜9に調整することができる。点眼剤は無菌製品とするため滅菌処理を行なうことが好ましく、かかる滅菌処理は製造工程のいずれの段階においても行うことができる。点眼剤のフェニルアゾール化合物の濃度は、0.001〜3%(W/V)、好ましくは0.01〜1%(W/V)であり、投与量も症状の程度、患者の体質等の種々の状態により1日1〜4回、各数滴等とすることができる。上記投与量は飽く迄目安であり、この範囲を超えて投与することもできる。
【0060】
上記点眼剤には、フェニルアゾール化合物と反応しない範囲の緩衝剤、等張化剤、防腐剤、pH調整剤、増粘剤、キレート剤、可溶化剤等の各種添加剤を適宜、添加してもよい。かかる緩衝剤としては、例えば、クエン酸塩緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、アミノ酸等を挙げることができ、等張化剤としては、例えば、ソルビトール、グルコース、マンニトール等の糖類、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、塩化ナトリウム等の塩類等を挙げることができ、防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等のパラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ソルビン酸又はその塩等を挙げることができ、pH調整剤としては、例えば、リン酸、水酸化ナトリウム等を挙げることができ、増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースやその塩等を挙げることができ、キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合リン酸ナトリウム等を挙げることができ、可溶化剤としては、例えば、エタノール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等を挙げることができる。
【0061】
また、眼軟膏剤とする場合、フェニルアゾール化合物を通常使用される眼軟膏基剤、例えば、精製ラノリン、白色ワセリン、マクロゴール、プラスチベース、流動パラフィン等と混合したものとすることができ、無菌製品とするため滅菌処理をしたものが好ましい。眼軟膏剤におけるフェニルアゾール化合物の濃度は、0.001〜3%(W/W)、好ましくは0.01〜1%(W/W)であり、投与量も症状の程度、患者の体質等の種々の状態により1日1〜4回等とすることができる。上記投与量は飽く迄目安であり、この範囲を超えて投与することもできる。
【0062】
網膜の酸化障害抑制薬を有効成分として含む本発明の糖尿病白内障の治療剤は、効果的な抗糖尿病白内障作用を有するので、糖尿病白内障の予防を含めて治療に有効である。
【0063】
[本発明有効成分化合物を含有する製剤の調製例]
経口剤(有効成分10mg錠)
本発明有効成分化合物 10mg
乳糖 81.4mg
コンスターチ 20mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 4mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
合計 120mg
上記のような組成となるように、本発明有効成分化合物50g、乳糖407g及びコンスターチ100gを、流動造粒コーティング装置(大川原製作所(株)製)を使用して、均一に混合する。これに、10%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液200gを噴霧して造粒する。乾燥後、20メッシュの篩を通し、これに、カルボキシメチルセルロースカルシウム20g、ステアリン酸マグネシウム3gを加え、ロータリー打錠機(畑鉄工所(株)製)で7mm×8.4Rの臼杵を使用して、一錠当たり120mgの錠剤を得る。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実験目的]
白内障発症メカニズムの一つに、水晶体内の酸化ストレスの増大が挙げられる。そこで、本発明者らは、高い抗酸化作用を有し、かつ経口投与でも眼組織内への移行性に優れた抗酸化薬に着目し、網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬が糖尿病白内障抑制作用を有するか否かを明らかにすることを目的に実験した。網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬としてA−3922(化合物番号B−1−18,日本曹達株式会社製)を用い、網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬が糖尿病白内障抑制作用を有するか否かをin vivo 実験系で調べた。
【0065】
[実験方法]
1.実験動物(使用動物)
Wistar 系雄性ラット(6週齢、日本医科学動物資材、東京)を北里大学薬学部処置動物実験室に搬入した。5日間の馴化の後、実験に供した。
実験期間中は、温度23±2℃,湿度55±5%,明暗サイクル12時間(明期:午前8時〜、暗期:午後8時〜)に管理された同実験室で飼育した。固形飼料(5L37,日本エスエルシー,静岡)および飲水はそれぞれ自由に摂取させた。
【0066】
2.糖尿病白内障モデルラットの作製
ぺントバルビタールナトリウム(50mg/kg,i.p.)麻酔下、ラットにストレプトゾトシン(STZ)65mg/kgを単回尾静脈内投与し、1型糖尿病を誘導した。対照群にはSTZ溶液の溶媒を同量投与した。なお、STZは10mMクエン酸緩衝生理食塩水pH4.5)に溶解し、65mg/mLとして調製し、調製後5分以内に投与した。
STZ投与後2日目の血糖値が350mg/dL程度のものをその後の実験に使用した。糖尿病白内障を再現性よく且つ短期間に惹起する目的で、飼育期間中は5%グルコース水溶液を飲水として与え、血糖値を約800〜1100mg/dLの範囲に保った。
【0067】
3.実験プロトコール
上述のラットを以下の3群に割り付けた;
健常群:水道水 + 1%メチルセルロース(MC)(n=4)
糖尿病(DM)群:5%グルコース水溶液 + 1%MC(n=7)
DM + A−3922群:5%グルコース水溶液 + A−3922(30mg/kg,P.0.)(n=7)
STZ投与後から10週間経時的変化について観察した。A−3922は1%MC生理食塩水中に乳鉢を用いて懸濁し、1日1回強制経口投与した。
体重は毎日、飲水量と摂食量は週に4回測定した。水晶体の観察・撮影、血糖値および血圧・心拍数は毎週測定した。
【0068】
4.水晶体像の取得
ラットの両眼に予め1%硫酸アトロピンを一滴点眼して散瞳させた後、ジエチルエーテルによる吸入麻酔下、水晶体の観察および撮影を行った。角膜の保護および角膜表面における照明光の鏡面反射を防止する目的で、撮影を行う際に特殊コンタクトレンズ角膜装着補助剤スコピゾル15を点眼した。
撮影には北里大学薬学部分子薬理学研究室で独自に構築したラット水晶体平面像撮影装置を用いた。
すなわち、市販の高解像度デジタルカメラ(CoolPix5000,Nikon,東京)にリレーレンズおよびマクロレンズを接続し、ラット水晶体に焦点が合うよう調整した。さらに先端にはラット眼球照明用ライトガイドを取り付けた。このライトガイド中央部の円窓にアクリル樹脂製リング(内径:糖尿病群φ6.1、健常群φ6.8〜7.1)を取り付け、このリング内にラットの眼球を保定した。ライトガイド円窓の内側にはプラスチックファイバーが円周上に16本配列されており、ラット眼球の側面から照明されるようになっている。これにより、照明用ハロゲン光源(Fiber optic light source,Nikon,東京)の映り込みのない鮮明な画像の取得が可能である。
以下の条件で撮影した;
シヤッター速度:1/60,1/37,1/23.8 秒
絞り:6.8
水晶体撮影装置しぼり:3.5
露出モード:マニュアル
採光方式:マルチスポット
フォーカスモード:遠景モード
ホワイトバランス:電球
ISO感度:100
画質モード:Raw(NEF 形式)
これらの画像をコンピューターに取り込み、画像変換用ソフトウェア(Nikon Capture Editor Ver.3.5.0,Nikon,東京)によりJPEG形式およびTIFF形式に変換し保存した。
白内障スコアについては、Cotlier の方法(Arch Ophthalmol.67:116−122,1962)を参考に、独自に作成した判断基準に準じて評価した(表4)。
【0069】
【表7】

図3参照。
【0070】
5.血糖値の測定
尾静脈上にカミソリで小傷をつけ、出血させた。血液は、へパリン処理済へマトクリット毛細管(VC−HO75H,テルモ,東京)採取した。毛細管の一端を粘土(テルモシール,テルモ,東京)で塞ぎ、へマトクリット管用遠心分離機(HEMATOCRIT RC−24BN,トミー精工,東京)で室温にて、12,000回転/分で5分間遠心分離し、血漿を採取した。得られた血漿中のグルコース濃度は、市販のキット(グルコースCII−テストワコー,和光純薬,大阪)を用い定量した。なお、反応系の容量については、付属のプロトコールの1/4スケールで行った。
【0071】
6.血圧及び心拍数の測定
Tail−Cuff法により測定した。すなわち、静穏な環境下、37℃に設定した保温筒内にラットを保定した。ラットが落ち着いたところで、尾の付け根から約1cm離れた位置に非観血式自動血圧測定装置(BP−98A,ソフトロン,東京)のカフセンサーを留置し、心拍数および収縮期血圧を測定した。測定は12〜15回繰り返し、その平均値を算出した。
【0072】
7.使用薬物
A−3922(日本曹達株式会社、東京)
Streptozotocin(STZ,ナカライテスク株式会社,京都)
D−(+)glucose(ナカライテスク株式会社、京都)
Sodium citrate(和光純薬工業株式会社、大阪)
Methylcellulose 100cp(和光純薬工業株式会社、大阪)
1% Atropine sulfate(株式会社日本点眼薬研究所、名古屋)
スコピゾル15(千寿製薬株式会社、大阪)
Nembutal(大日本住友製薬株式会社、大阪)
Diethyl ether(関東化学株式会社、東京)
Hydrochloric acid(関東化学株式会社、東京)
Sodium chloride(ナカライテスク株式会社、京都)
【0073】
8.統計処理
実験結果は平均値 ± 標準誤差で示した。反復測定−二元配置分散分析法により解析し、群間因子に有意差が検出された場合は Bonferroni/Dunn 法もしくはSheffe 法により多重比較を行った。なお、統計処理の結果、有意水準Pが0.05未満である場合を有意差と判断した。
【0074】
[実験結果]
1.実験終了時における生存率
観察期間終了時点における各群の生存率は以下の通りであった;
健常群:100%(4/4)
DM群: 57%(4/7)
DM + A−3922群:71.4%(5/7,死亡例2例とも麻酔時による死亡)
【0075】
2.体重
健常群では経時的かつ持続的な体重増加が認められた。一方、DM群およびDM + A−3922群では、糖尿病誘導以降、顕著な体重増加は観察されなかった。
観察期間終了時における体重はそれぞれ、健常群,375±10g(n=4);DM群,241±6g(n=4);DM + A−3922群,253±6g(n=5)であった。DM群とDM + A−3922群の間に有意差は検出されなかった。体重の推移を図4に示す。
【0076】
3.血糖値
DM群およびDM + A−3922群の血糖値は、健常群と比較し、有意に高値を示した。実験期間を通した平均値はそれぞれ、健常群,163±25mg/dL;DM群,939±89mg/dL;DM + A−3922群,893±38mg/dLであった。血糖値の推移(図5参照)の様式について検討したところ、DM群とDM + A−3922群との間に有意差は検出されなかった。
【0077】
4.飲水量
健常群に比較し、DM群およびDM + A−3922群では著しく飲水量が増大した。実験期間を通した飲水量の平均値はそれぞれ、健常群,101±4mL/kg/day;DM群,1355±68mL/kg/day;DM + A−3922群,1267±61mL/kg/dayであった。飲水量の推移(図6参照)につき検討したところ、DM群とDM + A−3922群との間に有意な差は検出されなかった。
【0078】
5.摂餌量
健常群に比較し、DM群およびDM + A−3922群では著しく摂餌量が増大した。実験期間を通した摂餌量の平均値はそれぞれ、健常群,75±4g/kg/day;DM群,160±10g/kg/day;DM + A−3922群,161±7g/kg/dayであった。摂餌量の推移(図7参照)につき検討したところ、DM群とDM + A−3922群との間に有意差は検出されなかった。
【0079】
6.心拍数および収縮期血圧
心拍数:各群とも実験期間を通して大きな変動は観察されなかった。
実験期間中の平均値はそれぞれ、健常群,355±13 beats/min;DM群,294±9 beats/min;DM + A−3922群,293±8 beats/minであり、STZ両群では、健常群と比較し低値を示した。なお、A−3922の投与は心拍数に影響を与えなかった。
収縮期血圧:各群とも実験期間を通して大きな変動は観察されなかった。
実験期間中の平均値はそれぞれ、健常群,126±4mmHg;DM群,122±5mmHg;DM +A −3922群,132±5mHgであり、各群間に有意な差は認められなかった。図8、図9参照。
【0080】
7.糖尿病白内障に対する効果
抗酸化薬A−3922の抗糖尿病白内障作用の有無を、糖尿病白内障ラットを用いて検討した。
Wistar系ラット(雄、7週齢)にストレプトゾトシン(65mg/kg,i.v.)を投与して1型糖尿病を誘発した。さらに5%ぶどう糖溶液を飲水として与え、血糖値を750mg/dL以上に保つことにより、ラットに再現性よく糖尿病白内障を惹起した。A−3922(30mg/kg)は1日1回経口投与した。水晶体は独自に構築した無影照明撮影装置ならびに細隙灯顕微鏡を用いて10週間後まで経時的に観察し、水晶体混濁の程度を平面像と垂直光学断面像とから総合的に解析した。
【0081】
A−3922無処置群では、糖尿病誘発3週後から水晶体表層部に水疱または混濁が生じた。その後、白内障は急速に進行し、8週後に核白内障例が現れ、10週後には全水晶体の62.5%が過熟白内障となった。A−3922処置群の場合も、3週後から前白内障所見が観測され、症状は無処置群と同様に進行した。しかし、7週以後の進行は有意に抑制され、10週目における過熟白内障水晶体は20%に留まった。
【0082】
白内障の度合いは、Kyselovaら(Molecular Vision, 11 : 56-65, 2005)の方法を参考に、表4に示す症状からスコア化を行い(図3)、その後回帰解析による評価を行った。結果を図1,2に示す。図1は、対照群(DM)のスコアとA−3922投与群(DM + A−3922)のスコアの推移を示し、図2は、対照群(DM)に生じた混濁とA−3922投与群(DM + A−3922)に生じた混濁の推移を示している。なお、図1の縦軸はスコア(Score)を、図2の縦軸は混濁の割合(Opacity(%))を表し、図1及び図2の各横軸は週(Week(s))を表している。
【0083】
スコアの推移(図1)に着目すると、DM群およびDM + A−3922群の両群とも、実験開始から2週目から軽微な混濁を呈し始めた後、実験開始6週までは、両群の白内障スコアはほぼ同様に推移した。しかし、実験開始7週辺りから両群間のスコアの推移に差が生じ始めた。実験終了時におけるスコアはそれぞれ、DM群,4.4±0.3;DM+ A −3922群,3.4±0.3であり、DM群に比較しDM + A−3922投与群では有意に低値であった。このように、経口投与可能な抗酸化薬A−3922は、飲水量、摂餌量、体重、血糖値、血圧、心拍数に影響を与えることなく、糖尿病白内障の進行を遅延させる効果を有することが示された。なお、健常群のスコアはスコア0で推移し、実験終了時においてもスコア0であった。
【0084】
これらの結果は、網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬は糖尿病白内障の進行過程に対して遅延効果を有することを示している。また、糖尿病白内障の進行過程において、網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬に感受性のある酸化ストレスが重要な役割を演じることを支持する。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、糖尿病白内障で生じる水晶体の混濁の進行を効果的に遅らせる作用を有する糖尿病白内障の治療剤を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】対照群(DM)のスコアとA−3922投与群(DM + A−3922)のスコアの推移を示すグラフ。
【図2】対照群(DM)に生じた混濁とA−3922投与群(DM + A−3922)に生じた混濁の推移を示すグラフ。
【図3】表4に示す症状からスコア化を行った白内障の度合いを示す。
【図4】本発明の実施例に係る体重の推移を示すグラフ。
【図5】本発明の実施例に係る血糖値の推移を示すグラフ。
【図6】本発明の実施例に係る飲水量の推移を示すグラフ。
【図7】本発明の実施例に係る摂餌量の推移を示すグラフ。
【図8】本発明の実施例に係る心拍数の推移を示すグラフ。
【図9】本発明の実施例に係る収縮期血圧の推移を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜の酸化障害を抑制する抗酸化薬を有効成分として含むことを特徴とする糖尿病白内障の治療剤。
【請求項2】
式(1)
【化1】

[式中、Bは、下記式(B−1)を表し、
【化2】

{式中、Aは、下記式(A−1)、(A−2)、(A−3)又は(A−4)で表されるイミダゾリル基又はピラゾリル基を表し、
【化3】

(式中、R4及びR5は、それぞれ独立してG1で置換されていてもよいC1-6アルキル基、G1で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、G1で置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、ハロゲン原子を表し、
6は、水素原子、G1で置換されていてもよいC1-6アルキル基、G1で置換されていてもよいC1-6アルキルカルボニル基、G1で置換されていてもよいベンゾイル基又はテトラヒドロピラニル基を表し、
G1はシアノ基、ホルミル基、水酸基、C1-6アルコキシ基、アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基又はハロゲン原子を表し、
sは、0又は1〜3のいずれかの整数を表し、
tは、0、1又は2の整数を表し、
s又はtが2以上のとき、R4同士又はR5同士はそれぞれ同一でも相異なっていてもよい。)
1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、G2で置換されていてもよいC1-6アルキル基、G2で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、G2で置換されていてもよいC1-6アルキルチオ基、G2で置換されていてもよいC1-6アルキルカルボニル基、(一つ又は二つのC1-6アルキル基で置換されていてもよい)アミノ基、G2で置換されていてもよいベンゾイル基、又はG2で置換されていてもよいベンジル基を表し、
2は、G2で置換されていてもよいC1-6アルキル基を表し、
G2はシアノ基、ホルミル基、水酸基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基又はハロゲン原子を表し、
mは0又は1〜4のいずれかの整数を表し、mが2以上のとき、R1同士は、同一又は相異なっていてもよく、
nは0又は1〜10のいずれかの整数を表し、nが2以上のとき、R2同士は、同一又は相異なっていてもよく、
pは1又は2の整数を表し、
点線は単結合又は二重結合を表し、同時に二重結合となることはなく、
Yは、価数を満たす置換基又は多重結合を有してもよい炭素原子又は窒素原子を表し、
Yが炭素原子を表すとき、Eは、酸素原子、硫黄原子又は下記式(1a)を表し、
【化4】

(式中、R60は、水素原子、C1-6アルキルカルボニル基、(ニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、C1-6アルコキシ基、又はC1-6アルキル基で置換されていてもよい)ベンゾイル基を表し、
7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C2-6アルケニルオキシ基、C2-6アルキニルオキシ基、C1-6アシルオキシ基、G2で置換していてもよいC3-6シクロアルキル基、又はG2で置換していてもよいフェニル基を表し、
j及びkは、独立して、0又は1の整数を表し、
Lは0、又は1〜16のいずれかの整数を表し、
Lが2以上のとき、R7同士及びR8同士はそれぞれ同一でも相異なっていてもよい。)
Yが窒素原子を表すとき、Eは、前記式(1a)を表わす。}
Dは、酸素原子、硫黄原子又は前記式(1a)を表し、
Zは、少なくともG3で置換されたクロマン−2−イル基、少なくともG3で置換されたクロマン−4−イル基、少なくともG3で置換された2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、少なくともG3で置換された2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、少なくともG3で置換されたチオクロマン−2−イル基、少なくともG3で置換された2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、少なくともG3で置換されたチオクロマン−4−イル基、少なくともG3で置換された2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−3−イル基、又は少なくともG3で置換された1,3−ベンゾキサチオール−2−イル基を表し、
G3は、式:NHR10
{式中、R10は、水素原子、C1-6アルキルカルボニル基、(ニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、C1-6アルコキシ基、又はC1-6アルキル基で置換されていてもよい)ベンゾイル基を表す。}、
又は式:OR11
{式中、R11は、水素原子、C1-6アルキルカルボニル基、(水酸基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子、C1-6アルキル基で置換されていてもよい)ベンゾイル基を表す。}
を表す。]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む糖尿病白内障の治療剤。
【請求項3】
Zが、下記式(Z−1)、(Z−2)、(Z−3)、(Z−4)又は(Z−5)
【化5】

[式中、*は、不斉炭素原子を表し、X1は、酸素原子又は硫黄原子を表し、R12〜R32は、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基を表し、G3は、前記と同じ意味を表す。]
で表される基を示す請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む糖尿病白内障の治療剤。
【請求項4】
前記式(1)で示される化合物が、式(1−1)
【化6】

[式中、Aは、前記式(A−1)、(A−2)、(A−3)又は(A−4)で表されるイミダゾリル基又はピラゾリル基を表し、
1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、G2で置換されていてもよいC1-6アルキル基、G2で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、G2で置換されていてもよいC1-6アルキルチオ基、G2で置換されていてもよいC1-6アルキルカルボニル基、(一つ又は二つのC1-6アルキル基で置換されていてもよい)アミノ基、G2で置換されていてもよいベンゾイル基、又はG2で置換されていてもよいベンジル基を表し、
2は、G2で置換されていてもよいC1-6アルキル基を表し、
G2はシアノ基、ホルミル基、水酸基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基又はハロゲン原子を表し、
mは0又は1〜4のいずれかの整数を表し、mが2以上のとき、R1同士は、同一又は相異なっていてもよく、
nは0又は1〜8のいずれかの整数を表し、nが2以上のとき、R2同士は、同一又は相異なっていてもよく、
7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C2-6アルケニルオキシ基、C2-6アルキニルオキシ基、C1-6アシルオキシ基、G2で置換していてもよいC3-6シクロアルキル基、又はG2で置換していてもよいフェニル基を表し、
Lは0、又は1〜16のいずれかの整数を表し、
Lが2以上のとき、R7同士及びR8同士はそれぞれ同一でも相異なっていてもよく、
*は、不斉炭素原子を表し、
1は、酸素原子又は硫黄原子を表し、
16〜R19は、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基を表し、
G3は、式:NHR10
{式中、R10は、水素原子、C1-6アルキルカルボニル基、(ニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、C1-6アルコキシ基、又はC1-6アルキル基で置換されていてもよい)ベンゾイル基を表す。}、
又は式:OR11
{式中、R11は、水素原子、C1-6アルキルカルボニル基、(水酸基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子、C1-6アルキル基で置換されていてもよい)ベンゾイル基を表す。}
を表す。]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む請求項2又は3に記載の糖尿病白内障の治療剤。
【請求項5】
経口投与される請求項1〜4のいずれか1項に記載の糖尿病白内障の治療剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−195655(P2008−195655A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32923(P2007−32923)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(598041566)学校法人北里研究所 (180)
【Fターム(参考)】