説明

糖尿病進行抑制作用を有する組成物

【課題】日常生活に多大なる支障を付する血糖値コントロールの負担を軽減し、日常的な摂取により糖尿病の進行を抑制する作用を有する組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】ハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体に由来する化合物を有効成分とすることを特徴とする糖尿病進行抑制作用を有する組成物であり、好ましくは、ハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体に由来する化合物が、G蛋白質共役受容体であるGPR40に対してアゴニストとして作用するものであり、また好ましくは、ハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体に由来する化合物が、特定の不飽和脂肪酸である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間服用に適した糖尿病進行抑制作用を有する組成物並びにそれを含有する医薬品及び飲食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の欧米化に伴ない、肥満の割合が急増している。肥満は糖尿病や動脈硬化等の原因にもなることから、その予防・改善のための薬剤、方法の開発は現代社会の大きな課題となっている。肥満や糖尿病、動脈硬化等の発症は、遺伝的要素の他に、食生活のような生活習慣、環境因子に大きく影響されることから、最近では生活習慣病と呼ばれている。また、肥満は、多くの場合、過剰摂取した食物由来のエネルギーが内臓脂肪組織へ過剰に蓄積する内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)をもたらす。近年、内臓脂肪症候群においてインスリン抵抗性が認められることが明らかになり、その重要性が広く認識されるようになってきた。
【0003】
厚生労働省の調査(平成14年度)によれば、国内で「糖尿病が強く疑われる人」は約740万人、「糖尿病の可能性を否定できない人(いわゆる予備軍)」は約880万人いると推定されている。糖尿病はインスリン依存型(IDDM)とインスリン非依存型(NIDDM)に大別され、インスリン依存型はウイルス等が原因とされる自己免疫機序によって膵臓のβ細胞が損傷され、正常なインスリン合成・分泌がなされなくなるタイプであり、患者の1割弱を占めている。一方、インスリン非依存型は加齢やストレス等の不確定な要因により生ずる組織インスリン抵抗性に起因して高血糖を示すタイプであり、患者の9割以上がこのタイプに含まれる。
【0004】
軽症または中程度のNIDDM患者における治療には、運動療法と食事療法が主に採用されており、食事のカロリー制限及び運動による糖の代謝促進で血糖値の安定が図られている。食後の血糖値の急な上昇とその持続(食後過血糖)が長年に渡って続くと糖尿病の悪化に伴い血管障害を促進し、神経症、腎症、網膜症、更には心筋梗塞、脳卒中等の合併症の発症につながる危険性を有していることから、日頃から食後過血糖の抑制等による血糖値コントロールが必要である。
【0005】
血糖値のコントロールに使用されるものとして、例えば、天然物系では茶水溶性多糖成分のテアラクトンを有効成分とする血糖値降下剤(例えば、特許文献1)、バナバ葉の熱水抽出画分を有効成分とする抗糖尿病剤(例えば、特許文献2)、センブリより抽出単離したキサントン類の血糖降下剤(例えば、特許文献3)、ローヤルゼリーに含まれるトランス−10−ヒドロキシデセン酸を有効成分とするインスリン様作用剤(例えば、特許文献4)等がある。また、化学合成物では、アカルボース等のα−グルコシダーゼ阻害剤や、モラノリンN−置換誘導体(例えば、特許文献5)、チアゾリジン化合物(例えば、特許文献6)、イミダゾリル基を有する縮合7員環系化合物(例えば、特許文献7)等がある。
【特許文献1】特開平4−124139号公報
【特許文献2】特開平7−228539号公報
【特許文献3】特開平7−206673号公報
【特許文献4】特開平9−067252号公報
【特許文献5】特公昭59−43949号公報
【特許文献6】特開平4−210977号公報
【特許文献7】特開平4−178381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの素材は効果が弱かったり、長期間摂取による安全性に問題を残していることから、より活性が高く、食経験があり安全性が高い糖尿病進行抑制素材が望まれていた。
【0007】
本発明は、日常生活に多大なる支障を付する血糖値コントロールの負担を軽減し、日常的な摂取により糖尿病の進行を抑制する作用を有する組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ハナビラタケの子実体及び/又は菌糸体から得られる抽出物が優れた糖尿病進行抑制作用を有することを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明の第一は、ハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体を含有することを特徴とする糖尿病進行抑制作用を有する組成物を要旨とするものであり、好ましくは、ハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体に含有される化合物が、G蛋白質共役受容体であるGPR40に対してアゴニストとして作用するものであり、また好ましくは、ハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体に含有される化合物が、以下の化合物I及び/又は化合物IIを含むものであり、
【0010】
【化3】

【0011】
【化4】

また好ましくは、ハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体に含有される化合物が、ハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体から溶媒抽出により得られた化合物であるものである。
【0012】
本発明の第二は、前記した糖尿病進行抑制作用を有する組成物を有効成分とすることを特徴とする医薬品を要旨とするものである。
【0013】
本発明の第三は、前記した糖尿病進行抑制作用を有する組成物を含有することを特徴とする飲食物を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた効果を発揮する糖尿病進行抑制作用を有する組成物が提供できる。また、古くから薬用・食用として利用されているハナビラタケを原料としているため、極めて安全性が高いことから、医薬品や飲食品に含ませて用いることができる。なお、本発明において糖尿病とは、インスリン依存型(IDDM)とインスリン非依存型(NIDDM)の2タイプを指し、本発明の糖尿病進行抑制作用を有する組成物は、これら糖尿病の進行を予防・緩和することにより網膜症、腎症、潰瘍などの糖尿病慢性期合併症の進行を遅らせることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明で用いられるハナビラタケは、カラマツ等の針葉樹に生えるキノコであって、非常に希少なキノコである。歯ごたえがよく、その純白の色合いと葉牡丹のような形態が特徴である食用キノコである。これまで、このハナビラタケは成長が遅く人工栽培は非常に困難であるとされてきたが、最近になって、比較的短期間で栽培可能な新しい栽培法が確立され、商業規模での供給が可能となっている。
【0017】
本発明において用いられるハナビラタケ子実体は、天然のものでも栽培されたものでもよい。人工栽培の方法としては、従来から知られている人工栽培用の菌床を作成することにより行うことができる(詳細は、例えば、特開平11−56098号公報、特許第3746440号公報、特許第3509736号公報を参照)。
【0018】
また、本発明においては、ハナビラタケの菌糸体も用いることができる。菌糸体は液体培養法によって得ることができる。培地に使用する炭素源としては、グルコースなどの単糖の他、デキストリン、グリセロールなど通常用いられる炭素源が使用できる。また、窒素源としては無機又は有機窒素源が使用できるが、生育速度の観点からは有機窒素源を用いるほうが好ましい。また、必要に応じて微量元素やビタミン等の生育因子を添加することは通常の培養と何ら変わりはない。培養温度は15℃〜30℃、好ましくは18℃〜28℃、20℃〜25℃が最も好ましい。pHは2.5〜8.0、好ましくは3.0〜7.0、最も好ましくは3.5〜5.0である。培地成分には不溶成分を添加することが均一に生育させることができることから好ましい。培養期間は培地組成や菌株により、数日から数週間程度に設定されうる。
【0019】
本発明においては、上記したハナビラタケ子実体及び又は菌糸体をそのまま、もしくは乾燥後に破砕機などを用いてハナビラタケの組織を機械的に破砕することによって得た粉砕物を以て、本発明の糖尿病進行抑制作用を有する組成物とすることができる。乾燥するには、熱風や凍結乾燥のような方法が挙げられる。また、ここで用いられる破砕機としては、ミキサーや石臼などが挙げられる。
【0020】
このようにして得られた糖尿病進行抑制作用を有する組成物は、服用することにより糖尿病の進行を防ぐ作用を有する。その場合の服用量としては、ハナビラタケ乾燥原末として、好ましくは1〜10000mg/日、特に好ましくは50〜5000mg/日を目安にすればよい。
【0021】
また、より高い効果を期待するためには、これらから有効成分を溶媒抽出することが望ましい。有効成分の抽出においては、上記のようにして得られたハナビラタケの子実体あるいは菌糸体をそのまま抽出工程に移してもよいし、まず乾燥した後、破砕機などを用いてハナビラタケの組織を機械的に破砕したものを使用してもよい。
【0022】
溶媒抽出するために使用する溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル等の溶媒を使用するとよい。これらの溶媒を2種以上混合したものを用いることもできる。好ましくは、エタノールや含水エタノールを抽出溶媒として用いるのが、有効成分の抽出効率や安全面の上で好ましい。
【0023】
このようにして得られた溶媒抽出物は使用形態に応じて濃縮や乾燥を行ってもよいし、賦形剤を添加後スプレードライや凍結乾燥を行うことにより粉末化してもよい。
【0024】
ところで、ホルモンなどの生理活性物質の多くは、受容体に結合することにより細胞に情報を伝達しいている。中でもG蛋白質と共役して情報伝達する受容体群がG蛋白質共役受容体(GPCR)と呼ばれるものである。この中でも膵臓α細胞などで発現しているGPR40は中・長鎖遊離脂肪酸をリガンドとしインシュリンの分泌に関与することが知られており、このアゴニスト(作動薬)は糖尿病進行抑制、あるいは糖尿病の予防や治療に有効であると考えられている。
【0025】
本発明における有効成分であるハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体に由来する化合物は、GPR40に対してアゴニストとして作用するものであることが明らかとなった。
【0026】
また、本発明における有効成分であるハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体に由来する化合物の構造決定を行ったところ、以下の化合物I及び化合物IIであることが明らかになった。
【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

ハナビラタケ子実体には乾燥重量の40%強を占めるβグルカンに加えて、GPR40のアゴニストとして作用する不飽和脂肪酸が複数種含まれており、これらの成分が複合的に働いて糖尿病の進行を抑制する作用を発揮するものと考えられる。
【0029】
本発明の医薬品は、上記した本発明の糖尿病進行抑制作用を有する組成物を含有することを特徴とするものであり、作製方法としては、常法にしたがって薬学的に許容される担体を用い、種々の剤型とすることができる。
【0030】
例えば、経口用固形製剤を調製する場合には、上記糖尿病進行抑制作用を有する組成物に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されるものを用いればよく、例えば、賦形剤としては乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ぶどう糖、でんぷん、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、硅酸等、結合剤としては水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ぶどう糖液、でんぷん液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、りん酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等、崩壊剤としては乾燥でんぷん、アルギン酸ナトリウム、寒天末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等、滑沢剤としては精製タルク、ステアリン酸塩、ほう砂、ポリエチレングリコール等、矯味剤としては白糖、橙皮、くえん酸、酒石酸等が挙げられる。
【0031】
また、経口用液体製剤を調製する場合は、本発明の糖尿病進行抑制作用を有する組成物に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。この場合、矯味剤としては上記に挙げたもので良く、緩衝剤としてはくえん酸ナトリウム等が、安定化剤としてはトラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。
【0032】
本発明の飲食品は、本発明の糖尿病進行抑制作用を有する組成物を含有することを特徴とするものであり、ここで好ましい飲食品としては、乳飲料、果汁加工飲料、栄養ドリンク、クッキー、キャンディー、タブレット食品等が挙げられる。なお、飲食品には動物の飼料も含まれる。飲食品の製造方法は常法に従えばよく、上記の糖尿病進行抑制作用を有する組成物を添加して調製すればよい。
【0033】
また、飲食品の製造に際しては、その他の食品素材、すなわち各種糖質や乳化剤、増粘剤、甘味料、酸味料、果汁等を適宜添加することができる。具体的には、蔗糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール類、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム、スクラロース等の高甘味度甘味料、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、ペクチン、ローカストビーンガム等の増粘(安定)剤、くえん酸、乳酸、りんご酸等の酸味料、レモン果汁、オレンジ果汁、ベリー系果汁等の果汁類等が挙げられる。この他にも、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE等のビタミン類やカルシウム、鉄、マンガン、亜鉛等のミネラル類等を添加することが可能である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を挙げるが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0035】
製造例1〔ハナビラタケ子実体の製造〕
ハナビラタケ子実体を以下のようにして製造した。カラマツの大鋸屑、小麦粉、栄養分(バナナ、蜂蜜、エビオス、ペプトン、塩化カルシウム、ハイポネックス)及び水を、大鋸屑:小麦粉:栄養分:水=100:11.5:1.9:51の重量比で含む菌床基材を準備した。この菌床基材(520g)を、850ml容のポリプロピレン製の培養瓶に入れ、常法に従って培養瓶を滅菌した後に、ハナビラタケの種菌(16g)を接種した。その後、この培養瓶を、23℃の温度下で、56日間放置することによりハナビラタケ子実体を収穫した。子実体の重量は培養瓶1本当たり140gであった。
【0036】
製造例2〔ハナビラタケ菌糸体の製造〕
ハナビラタケ菌糸体を以下のようにして製造した。イーストエキス0.4質量%、グルコース2質量%、リン酸2水素カリウム0.1質量%、リン酸水素2ナトリウム0.1質量%となるように水に溶解し、1Nの塩化水素でpH5.0に調製し、500ml容三角フラスコに200ml入れ、常法に従って滅菌した。この液体培地にハナビラタケの種菌を生育させた平板培地から径6mmの寒天片を打ち抜き、その一片を接種し、24℃の暗黒下で、21日間振とう培養(100rpm)することによりハナビラタケ菌糸体を収穫した。菌糸体の乾燥重量は三角フラスコ1本当たり2gであった。
【0037】
実施例1
〔GPR40に対するアゴニスト活性の測定法〕
ヒトGPR40のアミノ末端にFLAG tagのついた配列をpcDNA5/FRT/TO(インビトロゲン)に組み込み、T−REx293細胞(インビトロゲン)に導入して安定発現細胞を作製した。この細胞に10マイクログラム/mLのドキシサイクリンで48時間処理することにより、受容体を発現誘導させた。GPR40発現T−REx293細胞に試料を添加し細胞内カルシウム濃度をFluorometric Imaging Plate Reader(モレキュラーデバイス)により測定した。測定データからピーク値を抽出し、3×10−5Mのα―リノレン酸添加時のピーク値によって標準化した。
【0038】
〔ハナビラタケからの抽出〕
製造例1で得られたハナビラタケ子実体の乾燥粉末1.0Kgをメタノールに3ヶ月間浸漬しハナビラタケのメタノール抽出液を得た。このメタノール抽出液の減圧乾燥残渣を酢酸エチルと水で分配し、酢酸エチル可溶部41.6gを得た。この酢酸エチル可溶部を順相シリカゲルカラムクロマトグラフィーにてヘキサン:酢酸エチル:メタノール=9:1:0〜0:1:9のグラジェントにより分画した。得られた分画物のアゴニスト活性を上記の測定法で測定したところ、アゴニスト活性を有する2つの化合物I及び化合物IIを得た。NMR、MSなどの各種機器分析の結果、化合物I及び化合物IIは上述した構造を有していることが明らかになった。化合物I及び化合物IIを3×10−5M添加時のアゴニスト活性はそれぞれ0.11及び0.57であった。
【0039】
試験例1〔I型糖尿病進行抑制作用〕
ストレプトゾトシン(STZ、シグマ社)をSD系雄性ラット(日本チャールズリバー)に65mg/kg静脈投与し、1週間後の採血にて血糖値が300mg/dL以上を呈したものをI型糖尿病モデルラットとして使用した。対象としてSTZを投与しないラットも使用した。これらのラットを、血糖値を指標に群分けし、製造例1で得られたハナビラタケ子実体の乾燥粉末をCE-2(日本クレア)に配合して混餌投与(1000mg/kg/day)した。その後、経時的に血糖値をモニターした。図1に示すように、正常(STZ非投与)ラット群では、ハナビラタケ投与は血糖値に影響を与えないが、STZ投与群においては、ハナビラタケの投与は血糖値の上昇を有意に抑制することが示された。
【0040】
試験例2〔II型糖尿病進行抑制作用〕
II型糖尿病モデルマウスであるKK-Ay雄性マウス(日本クレア製、4週齢)を、CE-2(日本クレア)を給餌した群((1)群)、製造例1で得られたハナビラタケ子実体の乾燥粉末をCE-2に2%添加して給餌した群((2)群)、製造例1で得られたハナビラタケ子実体の乾燥粉末をCE-2に5%添加して給餌した群((3)群)に分け6週間飼育した。糖尿病関連指標(常時血糖値、空腹時血糖値、空腹時インスリン濃度、血漿アディポネクチンなど)を径時的に測定した。
【0041】
ハナビラタケの投与は、KK-Ayマウスの体重には影響を与えなかったが、(3)群においては常時血糖値が有意に低値で推移した。また、空腹時インスリンや空腹時血糖値もハナビラタケ投与によって低下し、アディポネクチン値は投与量依存的に増加した。さらに、剖検時に採取した血清のTG値は、(3)群において有意に低値を示した。以上より、ハナビラタケの投与はII型糖尿病に対して有効的に働く可能性が示唆された。また、血清脂質の上昇についても抑制的に作用する可能性が考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ハナビラタケの経口投与が、I型糖尿病ラットの糖尿病進行を抑制することを示した図である。
【図2】ハナビラタケの経口投与が、II型糖尿病マウスの糖尿病進行を抑制することを示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体を含有することを特徴とする糖尿病進行抑制作用を有する組成物。
【請求項2】
ハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体に含有される化合物が、G蛋白質共役受容体であるGPR40に対してアゴニストとして作用するものである請求項1記載の糖尿病進行抑制作用を有する組成物。
【請求項3】
ハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体に含有される化合物が、以下の化合物I及び/又は化合物IIを含むものである請求項1又は2記載の糖尿病進行抑制作用を有する組成物。
【化1】

【化2】

【請求項4】
ハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体に含有される化合物が、ハナビラタケ子実体及び/又は菌糸体から溶媒抽出により得られたものである請求項1〜3のいずれかに記載した糖尿病進行抑制作用を有する組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載した糖尿病進行抑制作用を有する組成物を有効成分とすることを特徴とする医薬品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載した糖尿病進行抑制作用を有する組成物を含有することを特徴とする飲食物。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−59106(P2010−59106A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227107(P2008−227107)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)日本薬学会第128年会組織委員会発行,日本薬学会第128年要旨集,平成20年3月5日発行,第104頁 (2)日本薬学会第128年会,社団法人日本薬学会主催,平成20年3月26日開催
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】