説明

糞尿処理残渣の乾燥処理装置

【課題】水洗排出された糞尿を分解処理して僅少量の乾燥残渣として取り出すために活用できる糞尿処理残渣の乾燥処理装置を提供する。
【解決手段】全周にわたって連続する上向きの環状表面46aを有すると共にこの環状表面46a上から水分を少なくとも外周辺から流し落とすことが可能な回転盤32と、この回転盤32の駆動手段33と、前処理槽内から汲み上げられた被処理物を回転盤32の環状表面46a上一箇所に供給するホッパー34と、回転盤32の環状表面46a上の被処理物を加熱する加熱手段47と、回転盤32の環状表面46a上から乾燥残渣を前記ホッパー34の手前で掻き出す残渣掻き出し手段35を備え、回転盤32の環状表面46a上から流れ落ちる水分が前処理槽内に戻されるように構成され、ホッパー34には、このホッパー34内の被処理物を回転盤32の環状表面46a上に送出する被処理物送出口65が設けられた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗排出された糞尿を分解処理して僅少量の乾燥残渣として取り出すために活用できる糞尿処理残渣の乾燥処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水設備のない地域でのトイレや工事現場などで一時的に設置されるトイレなどの付帯設備として使用される糞尿処理装置として、本出願人は先に特許文献1に示すような糞尿処理装置を提案している。この糞尿処理装置は、水洗排出された加水糞尿を前処理槽で加熱曝気処理して分解し、この前処理槽内の分解残渣を含む液状の被処理物を汲み上げ手段により汲み上げて乾燥処理装置部で乾燥処理し、乾燥残渣を取り出すように構成されたものであるが、その乾燥処理装置部は、縦向きの軸心の周りに回転する回転周方向複数の網目構造の乾燥室を利用するもので、前記汲み上げ手段から排出される液状の被処理物を各乾燥室内に収容し、この被処理物を収容した乾燥室が乾燥残渣取り出し位置に達するまでの時間内で、各乾燥室の網目構造を利用して当該乾燥室内の被処理物から水分を分離除去して乾燥させ、乾燥残渣取り出し位置に達した乾燥室の底を開いて内部の乾燥残渣を排出するように構成されたものであった。
【特許文献1】特開2007−130535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
而して、特許文献1に記載された糞尿処理残渣の乾燥処理装置は、前処理槽から汲み上げ手段で汲み上げた液状の被処理物を、網目構造といえども一定容積を持つ乾燥室内に収容してバッチ処理するものであるから、水分の分離除去のための網目が残渣で詰まることも原因して、被処理物からの水分の分離除去の効率が悪く、乾燥室内での被処理物の保留時間を相当長時間にしても乾燥した残渣を効率良く取り出すことは困難であった。又、網目構造の乾燥室内の通気性を維持するための保守作業も必要である。更に、前処理槽から被処理物を汲み上げる汲み上げ手段と回転する乾燥室とを同期制御する必要があり、制御も複雑になる問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る糞尿処理残渣の乾燥処理装置を提供することを目的とするものであって、請求項1に記載の本発明は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、水洗送出された加水糞尿を加熱及び曝気処理する前処理槽1内から汲み上げ手段2により汲み上げられた分解残渣を含む液状の被処理物を乾燥脱水処理し、乾燥残渣を取り出すように構成した糞尿処理残渣の乾燥処理装置であって、全周にわたって連続する上向きの環状表面46aを有すると共にこの環状表面46a上から水分を少なくとも外周辺から流し落とすことが可能な回転盤32と、この回転盤32を一方向に回転駆動する駆動手段33と、前記汲み上げ手段2から排出される被処理物を前記回転盤32の環状表面46a上一箇所に供給するホッパー34と、前記回転盤32の環状表面46a上の被処理物を加熱する加熱手段47と、前記回転盤32の環状表面46a上から乾燥残渣を前記ホッパー34の手前で掻き出す残渣掻き出し手段35を備え、前記回転盤32の環状表面46a上から流れ落ちる水分が前記前処理槽1内に戻されるように構成され、前記ホッパー34には、このホッパー34内の被処理物を前記回転盤32の環状表面46a上に送出する被処理物送出口65が設けられた構成となっている。
【0005】
上記本発明を実施する場合、具体的には、請求項2に記載のように、前記回転盤32は、前記ホッパー34から被処理物を受ける箇所の周辺部分が最も低くなるように全体を一方向に傾斜させることができる。又、請求項3に記載のように、前記回転盤32には、同心状に立ち上がる環状垂直壁50を設け、この環状垂直壁50の外側の回転盤表面で前記環状表面46aを形成し、この環状表面46a上の水分が回転盤32の外周辺から流れ落ちるように構成することができる。
【0006】
又、請求項4に記載のように、前記加熱手段47は、前記回転盤32の環状表面46aの下側に位置するように当該回転盤32に取り付けることができる。この場合、請求項5に記載のように、前記回転盤32には、円形基板42と、この円形基板42上に同心状に配置されて前記環状表面46aを形成する環状表面板46を設け、前記加熱手段47は、前記円形基板42と環状表面板46との間に挟んだ環状の面ヒーター48から構成することができる。
【0007】
又、請求項6に記載のように、前記駆動手段33は、前記回転盤32の下側で当該回転盤32に同心状に取り付けられ且つ当該回転盤32より小径の歯車54と、前記回転盤32を軸支する架台(傾斜架台27及び基板36)側に支持されたモーター55と、このモーター55で回転駆動され且つ前記歯車54と咬合する駆動歯車56とから構成することができる。又、請求項7に記載のように、前記回転盤32の上側には、この回転盤32を軸支する架台(傾斜架台27及び基板36)に当該回転盤32とほぼ平行に支持された固定上側板38を設け、前記残渣掻き出し手段35は、前記固定上側板38に設けられた円弧形のスリット69を昇降自在に貫通して下側縁が前記回転盤32の環状表面46a上に当接する円弧形帯状板70から構成し、この円弧形帯状板70の前記固定上側板38から上方に突出する上側縁に被さる押さえ板71を前記固定上側板38に取り付けることができる。
【0008】
更に、請求項8に記載のように、前記ホッパー34は、前記回転盤32の環状表面47aを内外両側から挟むように位置する内側板58と外側板59、及びこれら内外両側板58,59をつなぐ左右両側板60,61とから構成された上広がりの四角筒状体から構成し、前記内外両側板58,59のホッパー内部空間形成部分の下側縁は、前記回転盤32の環状表面46a上に摺接させ、前記内側板58には、このホッパー34より回転盤回転方向の下手側で当該回転盤32の環状表面46aを横断する方向に延出する延出板部58aを設け、この延出板部58aの下側辺には、前記回転盤32の環状表面46a上の被処理物が通過する切込み部62と、前記回転盤32の環状表面46aの外周辺部分と当該回転盤32の外周側面とに摺接する切欠き段部63を形成し、前記左右両側板60,61の内、回転盤回転方向の下手側の側板60が、その下側縁と前記回転盤32の環状表面46aとの間で前記被処理物送出口65を形成するように構成することができる。
【0009】
又、請求項9に記載のように、前記ホッパー34の左右両側板60,61の内、回転盤回転方向の上手側の側板61は、その下側縁と前記回転盤32の環状表面46aとの間で残留残渣通過口66を形成するように構成することができる。
【0010】
又、請求項10に記載のように、前記ホッパー34は、位置固定のホッパー取付け板部39に対し、取付け高さ調整自在に取り付けることができる。更に、請求項11に記載のように、前記回転盤32を軸支する架台(傾斜架台27及び基板36)の下側には、前記残渣掻き出し手段35で回転盤32上から掻き出される乾燥残渣を前記架台(傾斜架台27及び基板36)に設けられた開口73を通じて受け入れる容器を出し入れ自在に支持させることができる。
【発明の効果】
【0011】
上記請求項1に記載の本発明に係る糞尿処理残渣の乾燥処理装置では、前処理槽内から汲み上げ手段により汲み上げられてホッパーに供給された被処理物、即ち、分解残渣を含む液状の被処理物は、当該ホッパーの被処理物送出口から回転する回転盤の上向きの環状表面上に送り出されるが、当該被処理物が多量に含む水分は、このホッパー内から被処理物送出口及び回転盤の環状表面上を経由して少なくとも当該回転盤の外周辺から速やかに流れ落ちて前処理槽内に戻される。勿論このとき、被処理物に含まれる分解残渣(細かい浮遊固形物)の一部も水分と一緒に流れ落ちて前処理槽内に戻されるが、一部の分解残渣は水分と共に回転盤の環状表面上に残留することになる。このようにして回転盤の環状表面上に残留することになった被処理物、即ち、水分を含む分解残渣は、回転する回転盤と一体にホッパーから遠ざかる方向に移動するのであるが、この間にも重力で少しずつ分離される水分は、少なくとも当該回転盤の外周辺から流れ落ちて前処理槽内に戻され、一方、回転盤の環状表面上に残った被処理物は加熱手段によって加熱されるので、被処理物中の残留している水分が加熱されて蒸発することになる。
【0012】
従って、回転盤の回転速度、即ち、ホッパーから送り出されて回転盤上に残留した被処理物が掻き出し手段に到達するまでの所要時間と、加熱手段によって回転盤上の被処理物に与える熱量の的確な設定により、回転盤上に残留した被処理物が掻き出し手段に到達する頃には、当該被処理物の性状を、水分が完全に蒸発して乾燥した分解残渣とすることができ、この回転盤上に残留した乾燥残渣を掻き出し手段により掻き出させ、回収することができる。即ち、前処理槽内から汲み出される液状の被処理物中の分解残渣の含有率が少ない間は、前処理槽内から汲み出された被処理物の殆どが前処理槽内と回転盤上とを循環することになり、回転盤上から掻き出し手段で回収される乾燥残渣の時間当たり回収量は極少ないが、被処理物中の分解残渣の含有率が高くなれば、それに対応して乾燥残渣の時間当たり回収量が増加することになり、結果として、前処理槽内の被処理物の全量が許容範囲内に維持される限り、当該前処理槽内の被処理物中の分解残渣の含有率が増加し続けることはなく、許容値以下に保たれることになる。
【0013】
以上のように上記請求項1に記載の本発明に係る糞尿処理残渣の乾燥処理装置によれば、前処理槽内から汲み出された多量の水分を含む液状の被処理物、換言すれば、液(水)の中に分解残渣が浮遊するような性状の被処理物から、完全に乾燥した残渣を効率良く取り出すことが容易であり、しかも、被処理物を受ける回転盤上の環状表面は全周にわたって連続していて、従来のように回転周方向に区画された乾燥室ではないので、前処理槽内から被処理物を汲み上げる汲み上げ手段と回転盤とを特に一定の位相関係を保つように同期制御する必要はなく、制御も容易である。又、従来の網目構造の乾燥室を利用する場合のように網目が残渣で詰まって通気性が悪くなるようなことがなく、長期間にわたって良好な乾燥効果を維持できる。更に、構造が極めてシンプルであり、嵩低く構成することができると共に、装置全体を安価に実施することができる。
【0014】
尚、請求項2に記載の構成によれば、ホッパーから回転盤上に送り出された直後に被処理物中の大半の自由水分が重力で当該回転盤の外周辺から流れ落ちることになり、回転盤上に被処理物中の自由水分が永く残ることがなくなり、加熱手段による水分の除去を効率良く行わせることができる。
【0015】
又、回転盤を環状に形成して、被処理物を受ける環状表面の内周辺からも水が流れ落ちるように構成することも可能であるが、この構成と比較して、請求項3に記載の構成によれば、回転盤の中心側からは被処理物中の水分などが流れ落ちることがないので、当該回転盤の中心部を利用した軸支が容易であり、しかもその軸支部が、回転盤の外周辺から流れ落ちた被処理物の影響を受けることも殆どなくなる。更に、加熱手段の加熱対象領域を、回転盤の環状表面に限定することができ、回転盤の中心から外周辺までの全面を加熱対象領域としなければならない場合と比較して、加熱手段にかかるイニシャルコスト及びランニングコストの低減を図ることができる。
【0016】
加熱手段は、回転盤の上方に配設して、回転盤の環状表面上の被処理物をその上側から空気層を介して加熱するように構成することもできるが、請求項4に記載の構成によれば、回転盤の環状表面を形成する素材に高熱伝導率の金属板を使用するだけで、回転盤の環状表面上の被処理物を極めて効率良く加熱することができる。この場合、請求項5に記載の構成によれば、回転盤の環状表面を形成する板材で回転盤全体の必要強度を得るように構成する場合と比較して、回転盤の環状表面を形成する環状表面板を薄くして、その直下の面ヒーター(加熱手段)の発熱を当該環状表面板の上側の被処理物に効率良く伝達させ、効率の良い被処理物の加熱乾燥を図ることができ、しかも回転盤全体の必要強度は円形基板により確実に得ることができる。
【0017】
又、請求項6に記載の構成によれば、回転盤の駆動手段全体を回転盤の下側空間にまとめることができ、装置全体の平面視におけるサイズを小さくすることができる。
【0018】
回転盤の環状表面上の乾燥残渣を掻き出す残渣掻き出し手段は、例えば回転ブラシ方式など、如何なる構成のものでも良いが、請求項7に記載の構成によれば、常に下側縁が回転盤の環状表面上に無理なく当接する状態の位置固定掻き出し板形式の残渣掻き出し手段を簡単に構成することができ、回転盤の環状表面上の乾燥残渣を確実にしかも無理なく掻き出させることができる。
【0019】
更に、請求項8に記載の構成によれば、ホッパーの被処理物送出口から回転盤の環状表面上に送り出された被処理物中の大量の自由水分は、当該被処理物送出口から出た直後に回転盤の少なくとも外周辺から流し落とし、残った被処理物(水分を含む分解残渣)は、当該ホッパーを構成する内側板の延出板部、即ち、当該ホッパーより回転盤回転方向の下手側で当該回転盤の環状表面を横断する方向に延出する延出板部に設けられた切込み部を通過することになるが、このとき、回転盤の環状表面の外周辺部分と当該回転盤の外周側面とに付着する被処理物が前記内側板延出板部の切欠き段部で除去されて前処理槽に戻されるので、回転盤上の必要領域、即ち、回転盤の外周辺部分を除く環状表面上にのみ被処理物を残留させて加熱乾燥工程に送り込むことができ、加熱乾燥工程において回転盤の外周辺部分や外周側面に付着する被処理物が滴下するような不都合な状況になるのを抑制することができる。しかも、このような機能を、ホッパーを構成する内側板の一部分の加工で得ることができ、別の専用部材を追加しなければならない場合と比較して安価に実施することができる。
【0020】
又、請求項9に記載の構成によれば、残渣掻き出し手段によって掻き出されなくて回転盤上に残った残留乾燥残渣をホッパー内に導入させ、この残留乾燥残渣の上にホッパー内で被処理物を供給することにより、当該被処理物中の分解残渣が前記残留残渣を介して回転盤の環状表面上に付着し易くなり、被処理物中の分解残渣を効率良く回転盤の環状表面上に付着させて加熱乾燥工程に送り込むことができる。
【0021】
又、請求項10に記載の構成によれば、残渣汲み上げ手段で汲み上げられた被処理物を受けるホッパーの取付け高さを調整することができるので、当該ホッパーの四角筒状の下側縁の内、回転盤の環状表面上に当接させる必要のある下側縁を常に確実に回転盤の環状表面上に当接する状態に維持させることができ、当該下側縁が回転盤の環状表面上から浮き上がっているために当該個所から不当に被処理物が流出してしまうのを防止できる。
【0022】
更に、請求項11に記載の構成によれば、残渣掻き出し手段で回転盤上から掻き出される乾燥残渣を自動的に回収して容易に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、据え置き型(移動型)トイレに組み込むタイプの糞尿処理設備に採用した本発明の糞尿処理残渣の乾燥処理装置の具体的実施例を添付図に基づいて説明すると、図1〜図4に示すように、据え置き型トイレTに組み込むタイプの糞尿処理設備は、前処理槽1、汲み上げ手段2、及び本発明に係る乾燥処理装置3から構成される。前処理槽1は、据え置き型トイレTの床下空間内に取り付けられた上側開放の矩形箱型のものであって、当該据え置き型トイレTの後側に突出する後端部分を除く領域は、着脱自在なカバープレート4により閉じられ、このカバープレート4に、据え置き型トイレT内に設置された洋式又は和式の水洗便器Taから下向きに突出する水洗糞尿排出管Tbが入り込む水洗糞尿受入口5が設けられている。
【0024】
前処理槽1内には、その底部のほぼ全域にわたって下向きにエアーを吐出する曝気用送気管6と、ヒーター内蔵の加熱用配管7とが敷設され、この前処理槽1内を、前記カバープレート4で開閉される前処理領域部1Aと、据え置き型トイレTの後側に突出する汲み上げ領域部1Bとに区画して、粗大異物が汲み上げ領域部1B内に入り込むのを防止する仕切り網8が取り付けられている。この仕切り網8は、カバープレート4を取り付けていない状態では、前処理槽1内に対して上下に抜き差し自在に構成されている。前処理槽1には、カバープレート4に隣接する汲み上げ領域部1Bの上側前半部を塞ぐように固定架台9が左右横断方向に架設され、この固定架台9の下側に、前処理槽1内の被処理物の貯留レベルを検出する上下揺動自在なレベルセンサー用フロート10が取り付けられている。尚、このレベルセンサー用フロート10の高さから被処理物の貯留レベルを検出するレベルセンサー本体10aは、固定架台9の上側に配設されている。
【0025】
又、固定架台9の一端部上には、吸引したエアーを固定架台9の下側で下向きに吐出するブロワー11が設置され、このブロワー11からの吐出エアーを、前処理槽1内の前処理領域部1A内に向けて吐出させるためのエアー吐出エルボ12が固定架台7の一端部下側に取り付けられている。このエアー吐出エルボ12は、前処理槽1内の被処理物の貯留レベルが最高位にあるときも、当該エルボ12から吐出されるエアーが当該被処理物の上側空間で前処理槽1の一側壁に沿って吐出されるように構成されている。更に、カバープレート4の下側の左右幅方向の中央位置には、前後方向に沿って中央案内板13が垂下するように取り付けられ、前処理槽1内の前端側の左右両隅部には、円弧形の案内板14が取り付けられ、これら中央案内板13と円弧形案内板14とにより、エアー吐出エルボ12から吐出されるエアーが前処理槽1の上部空間内を当該前処理槽1の各壁面に沿って円滑に回動するように構成している。尚、加熱用配管7の両端部7a,7bは、垂直に立ち上がって固定架台9から上方に延出され、内蔵のヒーター線が前処理槽1内から上方に導出される。
【0026】
汲み上げ手段2は、先の特許文献1に記載されたものと基本的に同一構成のものであって、水平支軸15の周りで垂直面に沿って回動する回転アーム16、この回転アーム16の回転駆動手段17、及び回転アーム16の両端に設けられた汲み上げ用バケット18を備えている。前記水平支軸15は、固定架台9の下側に前後水平向きに支承され、前記レベルセンサー用フロート10の上下揺動中心支軸を兼用している。回転駆動手段17は、回転アーム16の固定架台9側に水平支軸15と同心状に取り付けられた大径の板状平歯車19と、固定架台9から立設された支柱部20に取り付けられたモーター21と、このモーター21の前後水平向きの出力軸に取り付けられて前記板状平歯車19と咬合するピニオンギヤ22とから構成されている。汲み上げ用バケット18は、回転アーム16の両端の固定架台9のある側とは反対側に、前後水平向きの支軸23により左右揺動自在に吊り下げられ、回転アーム16の回転方向とは反対側へ斜め上向きに延出する被操作片24を備えたもので、重力により支軸23から真下に垂下するように構成されている。そして、回転アーム16の回転により最高位置の直前に達した汲み上げ用バケット18の被操作片24に当接して、当該回転アーム16の回転(汲み上げ用バケット18の回動)に伴って当該汲み上げ用バケット18を回転アーム16の回転方向とは逆向きに支軸23の周りに回倒させる操作ピン25が支柱部20から突設されている。
【0027】
上記構成の汲み上げ手段2によれば、モーター21を稼働させ、ピニオンギヤ22と板状平歯車19を介して回転アーム16を所定方向(図4に矢印で示す方向)に回転させ、2つの汲み上げ用バケット18を垂直面に沿って回動させることにより、前処理槽1の汲み上げ領域部1B内を円弧状に回動通過する汲み上げ用バケット18が、当該前処理槽1内の被処理物を汲み上げ、この汲み上げ用バケット18が、回転アーム16の回転により最高位置の直前に達した時点から、位置固定の操作ピン25に汲み上げ用バケット18の被操作片24が当接し、この後の回転アーム16の回転(汲み上げ用バケット18の回動)に伴って操作ピン25が被操作片24を介して当該汲み上げ用バケット18を回転アーム16の回転方向とは逆向きに支軸23の周りに回倒させるので、当該汲み上げ用バケット18内から被処理物が重力で排出されることになる。回転アーム16の回転(汲み上げ用バケット18の回動)が進んで操作ピン25が被操作片24から離れると、回倒していた汲み上げ用バケット18が重力で元の垂下姿勢に自動復帰する。
【0028】
前処理槽1の後側壁、即ち、汲み上げ領域部1Bに隣接する前処理槽後側壁26には、その上側辺から斜め上方後方に延出する傾斜架台板27が一体に折曲連設され、この傾斜架台27の上側空間と、汲み上げ手段2の回転アーム16及び汲み上げ用バケット18が回動する空間を含む前処理槽1の汲み上げ領域部1Bの上側空間とを一体に覆うドーム形カバー28が着脱自在に設けられ、前処理槽1は、前処理領域部1Aの上側解放部を閉じるカバープレート4とドーム形カバー28とで上側全体が閉塞される。而して、固定架台9のブロワー11のある側とは反対側の端部の後側辺には、垂直に起立する支柱部29aと当該支柱部29aの上端から水平後方に折曲連設された水平板部29bとを有する倒立L形の支持部材29が取り付けられ、この支持部材29の上端水平板部29bの下側に、吸引したエアーを水平板部29bの上側で上向きに吐出する換気用ブロワー30が取り付けられ、ドーム形カバー28には、その天井板部を貫通し且つ下端開口が前記換気用ブロワー30の上向きのエアー吐出開口と同心状につながる排気管31が取り付けられている。
【0029】
本発明に係る乾燥処理装置3は、前記ドーム形カバー28内で傾斜架台27上に設けられている。この乾燥処理装置3は、回転盤32と、この回転盤32を一方向に回転駆動する回転盤駆動手段33と、前記汲み上げ手段2の汲み上げ用バケット18から排出される被処理物を受けて前記回転盤32上の一箇所に供給するホッパー34と、回転盤32上から乾燥残渣を掻き出す残渣掻き出し手段35を備えている。
【0030】
以下、乾燥処理装置3を、図5〜図11に基づいて詳細に説明すると、この乾燥処理装置3は、前記傾斜架台27上に取り付けられる横長矩形の基板36と、この基板36と平行に配置され且つ四隅を基板36に支柱部材37を介して連結一体化された固定上側板38と、この固定上側板38の前側辺から上向きに折曲連設されたホッパー取付け板部39を介してユニット化されており、傾斜架台27に対する基板36の着脱により、乾燥処理装置3の全体を前処理槽1に対して着脱することができる。
【0031】
回転盤32は、円形平板状のものであって、基板36と固定上側板38との中間位置に、当該基板36及び固定上側板38と平行に且つ前処理槽1の後側壁26の真上位置より汲み上げ領域部1Bの方に一側辺が張り出すように配置され、基板36上に垂直に固着立設された固定支軸40に回転自在に外嵌された回転筒軸41の上端部に取り付けられている。従って回転盤32は、前処理槽1の汲み上げ領域部1Bの上方に張り出す一側辺部が傾斜下端となるように全体が傾斜している。この回転盤32は、前記回転筒軸41の上端部に同心状に固着された強度部材としての円形基板42と、この円形基板42上に内外2つの環状スペーサー43a,43bを介して同心状に重ねられた状態でビス44とボルト45で円形基板42に固定された、外径が円形基板42の直径と同一で内径が円形基板42の直径の半分程度の環状表面板46とから構成され、内外2つの環状スペーサー43a,43bの中間で円形基板42と環状表面板46との間に、当該環状表面板46を下側から加熱する加熱手段47を構成する環状の面ヒーター48が挟まれている。49は、面ヒーター48の下側に取り付けられた温度調節器であって、円形基板42に設けられた開口から下側に突出している。
【0032】
更に回転盤32は、環状表面板46の内周辺上から同心状に立ち上がる環状垂直壁50が設けられている。この環状垂直壁50は、下側辺から内側に張り出す環状水平板部50aを有する断面アングル状のもので、前記環状水平板部50a、環状表面板46の内周辺部、及び内側環状スペーサー43aがボルト45により円形基板42に共締め固定され、この環状垂直壁50の外側に位置する環状表面板46の表面が被処理物を受ける環状表面46aを形成している。従って、環状表面板46の外周辺に位置するビス44には、頭部が環状表面46aと面一になる皿ビスが使用されている。
【0033】
尚、温度調節器49を経由して面ヒーター48へ給電する給電路は、回転盤32の上方に位置する固定上側板38に固定支軸40と同心状に取り付けられた通電用スリップリング51を経由するように構成される。52は、外側固定電極が固定上側板38に固定された前記通電用スリップリング51の内側回転電極を回転盤32と同心一体に回転させるための筒体であって、固定支軸40の真上に同心状に配置され且つ支持板53により回転盤32(環状垂直壁50の環状水平板部50a)に固定され、当該筒体52に設けられた開口52aを通じて通電用スリップリング51の内側回転電極と面ヒーター48(温度調節器49)との間の配線が行われる。
【0034】
回転盤32の駆動手段33は、回転盤32と一体に回転する回転筒軸41に回転盤32の下側で同心状に固着され且つ回転盤32より小径の板状平歯車54と、基板36の下側に取り付けられ且つ当該基板36の下側に重なっている傾斜架台27に設けられた開口から当該傾斜架台27の下側に突出するモーター55と、基板36から上方に突出する当該モーター55の出力軸に取り付けられ且つ前記板状平歯車54と咬合する駆動歯車(ピニオンギヤ)56とから構成されている。尚、基板36上には、回転盤32の外周縁から流れ落ちる被処理物の水分が流動する可能性があるので、この水分がモーター55の出力軸を貫通させるために基板36に設けられた開口からモーター55上に滴下するのを防止するため、前記基板36上には、駆動歯車56の周囲を取り囲む環状の止水用突出部57を、例えばシリコン樹脂などの合成樹脂により形成しておくことができる。勿論、板状平歯車54と回転盤32との間の上下間隔を広げて板状平歯車54より上側にモーター55を配置するなどして、モーター55を基板36より上方に浮かして配置し、このモーター55を適当なブラケットにより基板36に支持させることにより、当該モーター55に対する防水対策を講じなくとも良いように構成することもできる。
【0035】
ホッパー34は、傾斜架台27(基板36)上から前処理槽1の汲み上げ領域部1B上に張り出す回転盤32の環状表面46a上に配設されたもので、回転盤32の環状表面46aを内外両側から挟むように位置する内側板58と外側板59、及びこれら内外両側板58,59をつなぐ左右両側板60,61とから構成された上広がりの四角筒状体から成り、前記内外両側板58,59のホッパー内部空間形成部分の下側縁は、回転盤32の環状表面46a上に摺接し、前記内側板58は、このホッパー34より回転盤回転方向の下手側及び上手側で当該回転盤32の環状表面46aを横断する方向に延出する延出板部58a,58bを有し、回転盤回転方向の下手側の延出板部58aの下側辺には、回転盤32の環状表面46a上の被処理物が通過する切込み部62と、回転盤32の環状表面46aの外周辺部分と当該回転盤32の外周側面とに摺接する切欠き段部63が形成され、回転盤回転方向の上手側の延出板部58bの下側辺には、回転盤32の環状表面46aとの間に残留残渣が通過する隙間を形成するように切込み部64が形成され、前記左右両側板60,61の内、回転盤回転方向の下手側の側板60は、その下側縁と回転盤32の環状表面46aとの間に被処理物送出口65を形成し、回転盤回転方向の上手側の側板61は、その下側縁と回転盤32の環状表面46aとの間に残留残渣通過口66を形成している。
【0036】
上記構成のホッパー34は、その内側板58のホッパー内部空間形成部分から左右両外側に張り出す個所に設けられた複数個の縦長取付け孔67とボルトナット68を利用して、固定上側板38に連設のホッパー取付け板部39に取付け高さ調整自在に取り付けられている。換言すれば、内外両側板58,59のホッパー内部空間形成部分の下側縁が回転盤32の環状表面46a上に摺接するように、ホッパー取付け板部39に対するホッパー34の取付け高さ調整が行われる。
【0037】
残渣掻き出し手段35は、固定上側板38に設けられた円弧形のスリット69を昇降自在に貫通して下側縁が回転盤32の環状表面46a上に当接する円弧形帯状板70から成り、この円弧形帯状板70の前記固定上側板38から上方に突出する上側縁70aに被さる複数の押さえ板71が前記固定上側板38にボルトナット72により取り付けられている。前記円弧形帯状板70は、回転盤32の中心から見てホッパー34に対し回転盤回転方向の上手側へほぼ90度手前の位置に配設されたもので、その回転盤回転方向の上手側の内端部70bが回転盤32上の環状垂直壁50の外周面と摺接し、この内端部70bから回転盤回転方向の下手側の外端部70cに至る部分が回転盤32の外周辺に向かって膨らむように湾曲し、外端部70cが回転盤32の外周縁より少し外側に突出するように構成されている。そして、基板36とその下側に重なる傾斜架台27には、円弧形帯状板70によって回転盤32の外周縁から外側へ掻き出される乾燥残渣を傾斜架台27の下方へ落下させるための長方形の開口73が設けられている。
【0038】
更に、傾斜架台27の下側には、この傾斜架台27を支持する左右一対の垂直支持板74に取り付けられた左右一対のレール材75により、当該傾斜架台27の傾斜方向と平行に出し入れ自在に支持された乾燥残渣受入れ容器76が設けられ、この乾燥残渣受入れ容器76に、前記開口73を経由して落下する乾燥残渣が収容されるように構成している。又、傾斜架台27の下側には、前記左乾燥残渣受入れ容器76と並列するように、圧力空気送出装置77が支持され、この圧力空気送出装置77からの送気管78が前処理槽後側壁26を跨ぐようにして前処理槽1内に垂下し、前処理槽1内の前記曝気用送気管6に接続されている。
【0039】
尚、乾燥処理装置3をカバーするドーム形カバー28には、当該乾燥処理装置3の回転盤32上の様子を点検するための点検窓79を設けることができる。
【0040】
上記構成の糞尿処理設備の使用方法について説明すると、使用に先立って前処理槽1内には最低設定レベルLを超えるレベルまで給水しておく。而して、水洗便器4から前処理槽1の前処理領域部1A内に洗浄水と共に送り込まれた加水糞尿は、被処理物として前記予備水と共に当該前処理槽1内の全域にわたって貯留され、加熱用配管7内のヒーターによって加熱されて設定温度に保たれると共に、曝気用送気管6から噴出する圧力空気送出装置77からの加圧空気によって撹拌と曝気作用を受け、この被処理物中に増殖される好気性バクテリアによって分解される。この分解作用によりガス化した固形有機物量と被処理物の表面から蒸発する水分量だけ時間の経過と共に被処理物の量が減少するが、水洗便器Taの使用の度に未分解の加水糞尿が加えられるので、水洗便器Taの使用頻度によっては前処理槽1内の被処理物のレベル(貯留量)が漸増する。そして前処理槽1内の被処理物のレベルが最高設定レベルHに達すると警告ランプが点灯し、以降の水洗便器Taの使用が中止され、前処理槽1内の被処理物のレベルが最高設定レベルH以下に下がると、水洗便器Taの使用が再開される。この前処理槽1内の被処理物のレベル検出は、レベルセンサー用フロート10の上下動を利用してレベルセンサー本体10aで行わせる。
【0041】
上記のようにして前処理槽1内では、貯留された被処理物が周知の如く加熱、撹拌、曝気の作用を受けて分解処理されるが、被処理物中の好気性バクテリアが十分に増殖し活性化していると、新たに前処理槽1内に送り込まれた未分解の糞尿も数分で完全に分解させることができる。この分解残渣は、細かな粒状乃至細片状の比重の軽いもので、被処理物の表面層乃至内部で浮遊する状態になる。
【0042】
一方、前処理槽1内の被処理物より上側の空間には、常時作動しているブロワー11からエアー吐出エルボ12を経由して前処理槽1の一側壁に沿って外気が送り込まれると同時に、当該被処理物上側空間内の空気が、前記エアー吐出エルボ12とは反対側の位置にあって常時作動している換気用ブロワー30により、排気管31を経由して槽外に排出されているので、前記被処理物上側空間内には、取り入れられた新鮮な外気による水平回転気流が中央案内板13の周囲を回るように常時形成されている。このとき、ブロワー11の送気能力より換気用ブロワー30の排気能力を高くして、前記被処理物上側空間内を大気圧より若干負圧の状態としておく。この結果、被処理物表面からの分解生成ガスの放散と水分の蒸発とが活発に行われると同時に、被処理物の表面層が前記水平回転気流によって水平旋回力を受け、結果的に前処理槽1内の被処理物が前記水平回転気流と同一方向に水平旋回することになる。この被処理物の水平旋回は又、被処理物の表面層を浮遊する分解残渣を或る程度の大きさまで集合させると共に、当該被処理物の撹拌を促す結果になり、被処理物の分解作用が良好に行われる。
【0043】
上記の被処理物の加熱曝気分解処理は、前処理槽1内の全域によって行われるが、前記被処理物の表面層の水平旋回流によって、前処理領域部1A内において発生したものであっても汲み上げ領域部1B内を流動する機会が与えられる。一方、汲み上げ手段2は、間欠的又は連続的な自動運転により、一定時間間隔で汲み上げ領域部1B内の被処理物を乾燥処理装置3へ汲み上げる。即ち、先に説明したように、回転駆動手段17により回転アーム16を所定の方向に回転駆動し、2つの汲み上げ用バケット18で前処理槽1の汲み上げ領域部1B内から被処理物を汲み上げさせる。この汲み上げ手段2の2つの汲み上げ用バケット18は、先に説明したように垂直面に沿った回転経路中の最高位置で自動的に回倒して、汲み上げた被処理物を当該汲み上げ用バケット18内から排出するが、この汲み上げ用バケット18内から排出された被処理物が乾燥処理装置3のホッパー34内に投入されるように構成されている。
【0044】
尚、汲み上げ手段2による乾燥処理装置3への被処理物の汲み上げの時間間隔は、先に説明した前処理槽1内に新たに送り込まれた未分解の糞尿が、前処理槽1内において完全に分解するまでに要すると見られる時間(数分間)より少し長い目(例えば7〜10分間隔)に設定しておくのが望ましい。勿論、この糞尿処理設備が新規に使用開始されてから、前処理槽1内の被処理物中に好気性バクテリアが十分に増殖し活性化するまでの期間(数日間)は、汲み上げ手段2による乾燥処理装置3への被処理物の汲み上げを行わないように制御しても良いが、実際には、糞尿処理設備の新規の使用開始当初は未分解糞尿の量も僅かであり、しかも塊状有機物は、汲み上げ領域部1B内に達するまでに、上記のように曝気による攪拌作用で物理的に分解して細かい粉粒状乃至細片状となっているから、仮に糞尿処理設備の新規の使用開始当初から汲み上げ手段2を作動させても、後述するように乾燥処理装置3のホッパー34から回転盤32上に流出した被処理物のほぼ全量が当該回転盤32上から流れ落ちて前処理槽1内に戻されるので、問題はない。又、仮に粉粒状乃至細片状の未分解の有機物が乾燥処理装置3の回転盤32上に残留したとしても、後述するように回転盤32上で完全に加熱乾燥されて掻き出されるので、臭気などの問題を伴う恐れは殆どない。
【0045】
汲み上げ手段2により乾燥処理装置3のホッパー34内に投入された被処理物は、当該ホッパー34の被処理物送出口65から回転盤32の環状表面46a上に流れ出るが、回転盤32が、このホッパー34の真下位置の外周辺が最も低くなるように傾斜していることと、ホッパー34内に投入される被処理物が、粉粒状乃至細片状の分解残渣が混在浮遊する水状のものであることから、ホッパー34の被処理物送出口65から回転盤32の環状表面46a上に流れ出た被処理物は、重力で殆どが回転盤32の外周縁から外に流れ落ち、少しの粉粒状乃至細片状の分解残渣が回転盤32の環状表面46a上に残留するだけである。而して、回転盤32の環状表面46a上の外周辺部分と当該回転盤32の外周側面に付着して残留する残渣は、ホッパー34の回転盤回転方向の下手側に少し離れて位置するホッパー内側板58の切欠き段部63によって掻き落とされ、真下の前処理槽1内に戻される。
【0046】
尚、ホッパー34には、回転盤回転方向の上手側にも残留残渣通過口66が存在するので、汲み上げ手段2の汲み上げ用バケット18からホッパー34内に排出される被処理物が、ホッパー34の前記残留残渣通過口66を形成する側の側板61上に投入されるように、汲み上げ用バケット18の回倒向きと回倒位置とを考慮するか又は、ホッパー34自体の形状を考慮して構成することにより、ホッパー34内に排出される被処理物を側板61上で被処理物送出口65に向かう方向に案内して、前記残留残渣通過口66からの被処理物の流出量を抑えることができる。
【0047】
回転盤32は、回転盤駆動手段33により所定方向に一定速度で回転駆動され、同時に加熱手段47により環状表面46aが所定温度に加熱されている。即ち、モーター55により駆動歯車56が回転駆動され、板状平歯車54及び回転筒軸41を介して回転盤32が回転駆動されると共に、通電用スリップリング51及び温度調節器49を介して給電される電力で環状の面ヒーター48が発熱し、当該面ヒーター48の上側に重なる環状表面板46が加熱されている。而して、ホッパー34の被処理物送出口65から回転盤32の環状表面46a上に流出した被処理物の水分は、前記のように当該回転盤32(環状表面46a)の外周縁から流れ落ちて、真下に位置する前処理槽1の汲み上げ領域部1B内に直接戻され、回転盤32の環状表面46a上に残留した粉粒状乃至細片状の分解残渣は、回転盤32の回転に伴ってホッパー34の被処理物送出口65から遠ざかる方向に回動しながら、当該環状表面46aから熱を受けて加熱され、含有する水分が蒸発する。従って、面ヒーター48の発熱量(環状表面46aの設定温度)と回転盤32の回転速度とを適宜設定することにより、回転盤32の環状表面46a上に残留した含水分解残渣を、残渣掻き出し手段35の円弧形帯状板70で掻き出される位置に達するまでに完全に乾燥させることができる。尚、面ヒーター48による加熱効率を高めるために、面ヒーター48と基板36との間又は基板36の下側面に、断熱層を設けることができる。
【0048】
回転盤32の回転により、当該回転盤32の環状表面46a上の乾燥残渣が残渣掻き出し手段35の円弧形帯状板70のある位置に到達すると、回転盤32の回転に伴って環状表面46a上の乾燥残渣が位置固定の円弧形帯状板70によって自動的に回転盤32の外周縁側に掻き出され、基板36及び傾斜架台27に設けられた開口73から乾燥残渣受入れ容器76内に収集される。従って、汲み上げ手段2を継続的に作動させて所要時間間隔で前処理槽1内の被処理物を汲み出し、乾燥処理装置3のホッパー34内に供給することにより、乾燥処理装置3の回転盤32上(環状表面46a上)から連続的に乾燥残渣を取り出し、乾燥残渣受入れ容器76で収集することができる。
【0049】
尚、ホッパー34の被処理物送出口65から回転盤32の環状表面46a上に流出した被処理物中の分解残渣が当該環状表面46a上に残留し易いように、例えば環状表面46aを粗面加工したり、環状表面46aに細かい凹溝を加工することができる。勿論、環状表面46aに凹溝が加工されていると、この凹溝内に入り込んで乾燥した残渣は、円弧形帯状板70で構成された残渣掻き出し手段35では掻き出すことができずに残留してしまうことになるが、仮にこのような状況になっても、この凹溝内の残留乾燥残渣は、この上にホッパー34から供給される被処理物中の残渣との親和性が高く、当該ホッパー34から供給される被処理物中の残渣を回転盤32上に効率良く残留させることに役立つ。又、上記のような特殊な表面状態の環状表面46aとする場合、面ヒーター48を保護する環状表面板46自体の表面に特殊加工を施しても良いが、特殊な表面状態の別プレートを環状表面板46の表面に添着して構成することもできる。
【0050】
残渣掻き出し手段35は如何なる構成のものでも良い。例えば回転駆動されるブラシを利用した残渣掻き出し手段なども利用できるが、完全に掻き出されないで回転盤32の環状表面46a上に乾燥残渣が残留する可能性は否定できない。この場合、上記実施形態によれば、掻き出されないで回転盤32の環状表面46a上に残留した乾燥残渣は、ホッパー34の内側板58の切り込み部64下とホッパー34の側板61下の残留残渣通過口66を経由してホッパー34内に導入され、上記のようにホッパー34から供給される被処理物中の残渣を回転盤32上に効率良く残留させることに役立つ。
【0051】
回転盤32の外周縁からの水分の流れ落ちは、当該回転盤32の傾斜下端部付近の外周縁からだけでなく、ホッパー34から回転方向下手側に離れた回転盤32の外周縁からも発生するが、このときの回転盤32の外周縁から流れ落ちる水分は、回転盤32の下側で当該回転盤32と平行に傾斜している基板36上又は傾斜架台27上で受け止められ、これら基板36上又は傾斜架台27上を傾斜下方に流動して前処理槽1の汲み上げ領域部1B内に戻されることになる。尚、回転盤32の外周縁から流れ落ちる水分が当該回転盤32の裏面側に回り込んで軸受部などに影響を及ぼさないように、回転盤32の外周に、当該回転盤32の裏面より下方に垂下する水切り用環状垂直板を取り付けても良い。
【0052】
本発明は、糞尿処理残渣の乾燥処理装置に係るものであって、この本発明の糞尿処理残渣の乾燥処理装置の被処理物を受け入れるホッパー34に前処理槽1内の被処理物を供給する汲み上げ手段や、当該汲み上げ手段を含む糞尿処理設備全体の構成は、上記実施形態に示したものに限定されない。例えば、図11及び図12に示すように、水洗糞尿を直接放流できる下水設備のない地域などに設置されるトイレからの糞尿処理を行う固定式糞尿処理設備にも、本発明の糞尿処理残渣の乾燥処理装置を組み込むことができる。
【0053】
図11及び図12に示す固定式糞尿処理設備は、使用方法及び作用が先に説明した実施形態と基本的に同一のものであるから、使用方法及び作用の説明は省略するが、構造的に異なる点を説明すると、地面下に埋設される円筒形の前処理槽80と、この円筒形前処理槽80の上に被せられる円筒形カバーケース81と、円筒形前処理槽80の上端開口部から外に張り出すフランジ部80aと円筒形カバーケース81の下端開口部から外に張り出すフランジ部81aとの間に挟まれて共締め固定される中間架台板82を備えたものであって、本発明に係る乾燥処理装置3は前記中間架台板82に設置される。
【0054】
即ち、前処理槽80の周側壁の一箇所には、トイレからの水洗糞尿排出管が接続される水洗糞尿受入れ管83が取り付けられるが、この前処理槽80内の底部に曝気用送気管6と加熱用配管7とが敷設されると共に、この前処理槽80内を前記水洗糞尿受入れ管83を備えた前処理領域部1Aと、汲み上げ手段2を備えた汲み上げ領域部1Bとに二分割する仕切り網8が設けられる点は、先の実施形態と同一である。前記汲み上げ手段2は、中間架台板82のほぼ中央位置に取り付けられ、この汲み上げ手段2の一側方に乾燥処理装置3が設置され、他側方に、曝気用送気管6へエアーを供給する圧力空気送出装置77が設置されている。又、換気用ブロワー30は、円筒形カバーケース81の中央直下に位置するように中間架台板82に支持され、円筒形カバーケース81の中央を上下方向に貫通するように排気管31が取り付けられている。更に、レベルセンサー用フロート10及びレベルセンサー本体10aは、中間架台板82に取り付けられている。
【0055】
中間架台板82には、そのほぼ中央位置を横断するように長方形状の開口84が設けられ、汲み上げ手段2の回転アーム16は、前記開口84を上下に貫通するように中間架台板82に取り付けられた支柱部材85の下端部に水平支軸15により軸支され、当該回転アーム16と汲み上げ用バケット18が、前記開口84を経由して、前処理槽80の汲み上げ領域部1B内と中間架台板82の上側空間内とにわたって回動するように構成されている。前記支柱部材85は、先の実施形態における支柱部20に相当するもので、その上端部に汲み上げ用バケット18を回倒させるための操作ピン25が突設されるが、この実施形態では、前記換気用ブロワー30を支持する支持部材29が前記支柱部材85の上端部に取り付けられている。又、円筒形カバーケース81には換気用吸気管86が取り付けられ、この換気用吸気管86と接続される垂直の吸気用配管87が中間架台板82を上下に貫通するように配設されている。従って、換気用ブロワー30を作動させると、中間架台板82の開口84を介して当該中間架台板82より下側の前処理槽80内が負圧になるので、外気が換気用吸気管86から吸気用配管87を経由して前処理槽80内の被処理物の上側空間内に取り入れられ、開口84、円筒形カバーケース81内、換気用ブロワー30、及び排気管31を経由して外に排出される。
【0056】
乾燥処理装置3の構造は、先の実施形態のものと基本的に同一であり、平面視において固定上側板38と同一形状の傾斜架台27は、中間架台板82上に据え付けられている。又、乾燥残渣受入れ容器76は、傾斜架台27と中間架台板82との間で当該傾斜架台27下に、円筒形カバーケース81の側壁に設けられた開口を通じて横方向に出し入れ自在に支持されている。
【0057】
この固定式糞尿処理設備の特徴は、前処理槽80、汲み上げ手段2、及び乾燥処理装置3を含む設備全体が、下半部が地面下に埋設される円筒形のハウジング内で構成され、前処理槽80に設けられた水洗糞尿受入れ管83にトイレからの水洗糞尿排出管が接続可能であることと、乾燥残渣受入れ容器76の出し入れが可能であることの2条件を満足しさえすれば、建物の周辺如何なる個所にも設置できる点にある。又、1つの円筒形カバーケース81を開くだけで、前処理槽80をカバーしている中間架台板82上の機器が全て露出し、保守点検作業も容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る糞尿処理残渣の乾燥処理装置を組み込んだ糞尿処理設備の全体を示す縦断側面図である。
【図2】同設備のカバー類を取り外した状態の平面図である。
【図3】同設備のドーム形カバーを取り外した状態の正面図である。
【図4】同設備の汲み上げ手段を示す位置での縦断正面図である。
【図5】同設備における本発明に係る糞尿処理残渣の乾燥処理装置の詳細構造を示す一部縦断側面図である。
【図6】図5の要部を示す正面図である。
【図7】図5の横断平面図である。
【図8】図5のホッパーと回転盤を示す正面図である。
【図9】図5の掻き出し手段を示す平面図である。
【図10】図9のA−A線での拡大縦断面図である。更に別の実施形態を示す一部切欠き平面図である。
【図11】他の実施形態を示す縦断側面図である。
【図12】同上実施形態の円筒形カバーケースを取り外し且つ換気用ブロワーを取り外した状態の平面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 矩形箱型前処理槽
1A 前処理領域部
1B 汲み上げ領域部
2 汲み上げ手段
3 乾燥処理装置
5 水洗糞尿受入口
6 曝気用送気管
7 加熱用配管
8 仕切り網
10 レベルセンサー用フロート
11 ブロワー
13 中央案内板
27 傾斜架台
28 ドーム形カバー
30 換気用ブロワー
31 排気管
32 回転盤
33 回転盤駆動手段
34 ホッパー
35 残渣掻き出し手段
36 基板
37 支柱部材
38 固定上側板
39 ホッパー取付け板部
40 固定支軸
41 回転筒軸
42 円形基板
43a,43b 環状スペーサー
46 環状表面板
46a 回転盤の環状表面
47 加熱手段
48 環状の面ヒーター
49 温度調節器
50 環状垂直壁
51 通電用スリップリング
54 板状平歯車
55 モーター
56 駆動歯車(ピニオンギヤ)
58,59 ホッパーの内外両側板
58a,58b ホッパー内側板の延出板部
60,61 ホッパーの左右両側板
62,64 切り込み部
63 切欠き段部
65 被処理物送出口
66 残留残渣通過口
69 円弧形のスリット
70 円弧形帯状板
71 押さえ板
73 開口
76 乾燥残渣受入れ容器
77 圧力空気送出装置
80 円筒形前処理槽
81 円筒形カバーケース
82 中間架台板
83 水洗糞尿受入れ管
84 開口
85 支柱部材
86 換気用吸気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗送出された加水糞尿を加熱及び曝気処理する前処理槽内から汲み上げ手段により汲み上げられた分解残渣を含む液状の被処理物を乾燥脱水処理し、乾燥残渣を取り出すように構成した糞尿処理残渣の乾燥処理装置であって、全周にわたって連続する上向きの環状表面を有すると共にこの環状表面上から水分を少なくとも外周辺から流し落とすことが可能な回転盤と、この回転盤を一方向に回転駆動する駆動手段と、前記汲み上げ手段から排出される被処理物を前記回転盤の環状表面上一箇所に供給するホッパーと、前記回転盤の環状表面上の被処理物を加熱する加熱手段と、前記回転盤の環状表面上から乾燥残渣を前記ホッパーの手前で掻き出す残渣掻き出し手段を備え、前記回転盤の環状表面上から流れ落ちる水分が前記前処理槽内に戻されるように構成され、前記ホッパーには、このホッパー内の被処理物を前記回転盤の環状表面上に送出する被処理物送出口が設けられている、糞尿処理残渣の乾燥処理装置。
【請求項2】
前記回転盤は、前記ホッパーから被処理物を受ける箇所の周辺部分が最も低くなるように全体が一方向に傾斜している、請求項1に記載の糞尿処理残渣の乾燥処理装置。
【請求項3】
前記回転盤には、同心状に立ち上がる環状垂直壁が設けられ、この環状垂直壁の外側の回転盤表面が前記環状表面を形成し、この環状表面上の水分が回転盤の外周辺から流れ落ちるように構成されている、請求項1又は2に記載の糞尿処理残渣の乾燥処理装置。
【請求項4】
前記加熱手段は、前記回転盤の環状表面の下側に位置するように当該回転盤に取り付けられている、請求項1〜3の何れか1項に記載の糞尿処理残渣の乾燥処理装置。
【請求項5】
前記回転盤は、円形基板と、この円形基板上に同心状に配置されて前記環状表面を形成する環状表面板とを備え、前記加熱手段は、前記円形基板と環状表面板との間に挟んだ環状の面ヒーターから構成されている、請求項4に記載の糞尿処理残渣の乾燥処理装置。
【請求項6】
前記駆動手段は、前記回転盤の下側で当該回転盤に同心状に取り付けられ且つ当該回転盤より小径の歯車と、前記回転盤を軸支する架台側に支持されたモーターと、このモーターで回転駆動され且つ前記歯車と咬合する駆動歯車とから構成されている、請求項1〜5の何れか1項に記載の糞尿処理残渣の乾燥処理装置。
【請求項7】
前記回転盤の上側には、この回転盤を軸支する架台に当該回転盤とほぼ平行に支持された固定上側板が設けられ、前記残渣掻き出し手段は、前記固定上側板に設けられた円弧形のスリットを昇降自在に貫通して下側縁が前記回転盤の環状表面上に当接する円弧形帯状板から成り、この円弧形帯状板の前記固定上側板から上方に突出する上側縁に被さる押さえ板が前記固定上側板に取り付けられている、請求項1〜6の何れか1項に記載の糞尿処理残渣の乾燥処理装置。
【請求項8】
前記ホッパーは、前記回転盤の環状表面を内外両側から挟むように位置する内側板と外側板、及びこれら内外両側板をつなぐ左右両側板とから構成された上広がりの四角筒状体から成り、前記内外両側板のホッパー内部空間形成部分の下側縁は、前記回転盤の環状表面上に摺接し、前記内側板は、このホッパーより回転盤回転方向の下手側で当該回転盤の環状表面を横断する方向に延出する延出板部を有し、この延出板部の下側辺には、前記回転盤の環状表面上の被処理物が通過する切込み部と、前記回転盤の環状表面の外周辺部分と当該回転盤の外周側面とに摺接する切欠き段部が形成され、前記左右両側板の内、回転盤回転方向の下手側の側板は、その下側縁と前記回転盤の環状表面との間に前記被処理物送出口を形成している、請求項1〜7の何れか1項に記載の糞尿処理残渣の乾燥処理装置。
【請求項9】
前記ホッパーの左右両側板の内、回転盤回転方向の上手側の側板は、その下側縁と前記回転盤の環状表面との間に残留残渣通過口を形成している、請求項1〜8の何れか1項に記載の糞尿処理残渣の乾燥処理装置。
【請求項10】
前記ホッパーは、位置固定のホッパー取付け板部に対し、取付け高さ調整自在に取り付けられている、請求項1〜9の何れか1項に記載の糞尿処理残渣の乾燥処理装置。
【請求項11】
前記回転盤を軸支する架台の下側には、前記残渣掻き出し手段で回転盤上から掻き出される乾燥残渣を前記架台に設けられた開口を通じて受け入れる容器が出し入れ自在に支持されている、請求項1〜10の何れか1項に記載の糞尿処理残渣の乾燥処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−254991(P2009−254991A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108425(P2008−108425)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(593193631)
【Fターム(参考)】