説明

純水製造装置

【課題】燃料電池発電装置の電気脱イオン装置に供給する水の流量制御を簡単な構造で確実に行うことの可能な純水製造装置を提供する。
【解決手段】電気脱イオン装置31は、カチオン交換膜33とアニオン交換膜35との間に脱塩室37を形成し、アニオン交換膜35と陽極33との間に濃縮室兼陽極室38を形成している。脱塩室37には、脱塩室供給管路41及び脱塩室排出管路42が設けられている。脱塩室排出管路42の末端側には第1の電磁弁43が設けられているとともに、この電磁弁43の手前で分岐していて、濃縮室兼陰極室36に連通する濃縮室供給水流路たる濃縮室供給管路44が設けられている。濃縮室供給管路44には、第2の電磁弁45が設けられている。脱塩室供給管路41の途中にはポンプ51が設けられているとともに、このポンプ51の上流には水位計53を備えた原水タンク52が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造装置に関し、特に発電反応により生成した水蒸気及び改質器における燃焼排ガス中の水蒸気の凝縮水を回収し、この回収水を水蒸気改質用の水蒸気源として使用する燃料電池発電装置において好適な、電気脱イオン装置を有する純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池発電装置は、例えば都市ガス、LPガス、メタノール等の原燃料ガスを、水蒸気改質して水素に富むガスに改質する改質器と、この改質器で得られた改質ガスを燃料として発電を行う燃料電池本体とを備えている。
【0003】
この燃料電池発電装置は、改質器で生成された改質ガスを燃料電池の負荷及び水素利用率に応じて燃料電池内部で消費し、余剰の水素を含むガスをオフガス(燃料排ガス)として改質器へ導いた上でバーナを用いて燃焼して改質エネルギーとして消費するように構成されることが多い。
【0004】
図9は、特許文献1の従来技術の欄に記載された、リン酸型燃料電池発電装置における水処理装置の基本的な系統図である。
【0005】
このリン酸型燃料電池発電装置において、燃料電池本体1は、リン酸電解質層を挟持する燃料極1b及び空気極1aからなる単位セルと、該単位セルを複数個重ねるごとに配設される冷却管を有する冷却板1cとを備えている。
【0006】
改質器2は、原燃料供給系を経て供給される天然ガス等の原燃料を、水蒸気分離器5で分離されて水蒸気供給系を経て供給される水蒸気とともに、触媒層2aの触媒の下で、バーナでのオフガス燃焼による燃焼熱により加熱して、水素に富むガスに改質して改質ガスを生成する。
【0007】
改質器2で生成された上記改質ガスは、CO変成器4を有する改質ガス供給系を経由して燃料電池本体1の燃料極1bに供給される。燃料極1bから流出する、電池反応に寄与しなかった水素を含むオフガスは、オフガス供給系を経て改質器2のバーナに燃料として供給される。
【0008】
また、改質器2のバーナへは、図示しない燃焼空気供給用のブロワが接続されている。改質器2から出た燃焼排ガスは、水回収用の凝縮器6へと送られ、水回収後、排出される。回収水は、回収水タンク7へ送られる。
【0009】
また、燃料電池本体1には、空気極1aに空気を供給するブロワ23を備えた空気供給系と、電池反応後の水蒸気を含む空気を前記水回収用の凝縮器6へ供給する空気排出系とが接続されている。
【0010】
燃料電池本体1の冷却板1cの冷却管には、燃料電池本体1の発電時に冷却水を循環するため、水蒸気分離器5、冷却水循環ポンプ22を備えた冷却水循環系が接続されている。
【0011】
上記水蒸気分離器5では、燃料電池本体1の冷却管から排出された水と蒸気との二相流を、水蒸気と冷却水とに分離する。ここで分離された水蒸気は、上記改質器2に向かう原燃料と混入するように送出される。その際、元圧の低い原燃料との混合を行うために、エゼクタポンプ3を使用している。このエゼクタポンプ3は、蒸気を駆動流体とするとともに、原燃料を被駆動流体とする。原燃料供給系は、一般に、図示しない脱硫器を備える。
【0012】
上記のように、水蒸気改質には、純水が必要となる。また、リン酸型の燃料電池では、燃料電池の冷却水として、純水の加圧水を使用するのが一般的であり、その際、冷却水としては、電気伝導度が低く、またシリカ等の鉱物系異物が少ない純水が使用される。
【0013】
燃料電池の冷却には水以外の冷媒を用いる場合もあるが、少なくとも、改質器での改質用水蒸気として純水が消費されるため、常時、純水を供給する必要がある。そのため、燃料電池の空気オフガスと改質器の燃焼排ガス中の水蒸気を、凝縮器により、凝縮水として回収した後、純水製造装置に通水して純水化するのが一般的である。
【0014】
この純水製造装置として非再生型イオン交換式の純水製造装置を用いる場合、一般的に電気伝導率が0.5〜1μS/cm以上になったとき、2000〜3000h程度の発電時間の間隔で純水製造装置を交換する必要があり、煩雑な純水製造装置の樹脂交換が必要となるとともに、樹脂再生コストが発生する問題があった。
【0015】
そこで、図9においては、非再生型イオン交換式の純水製造装置に代えて、樹脂交換が不要な電気脱イオン装置10を採用している。
【0016】
この電気脱イオン装置10の主要部は、イオン交換膜10cにより、脱塩室10aと濃縮室10bに分離されており、回収水タンク7からポンプ20を介して導入された回収水の陰イオン及び陽イオンは、それぞれアニオン交換膜及びカチオン交換膜を通過して濃縮室10bに集まり、その後、濃縮排水として系外に排出されるように構成されている。その結果、脱塩室10aの出口側では連続的に純水が生成され、給水ポンプ21により水蒸気分離器5へ送られる。
【0017】
なお、処理室通水量を維持しつつ、純水供給量の変動に対応する目的で、ポンプ20の吸込側へ処理水(純水)をリサイクルさせている。
【0018】
この循環系に設けた逆止弁24は、回収水タンク7中の回収水が、電気脱イオン装置10を経由せずに、給水ポンプ21を介して、直接、水蒸気分離器5に供給されるのを防止するためのものである。
【0019】
濃縮排水は、処理室側通水量と比べて1/3程度と大幅に少ないため、濃縮室側系統にも、処理室側と同様に濃縮水循環ポンプ10dを設けて、濃縮水をリサイクルさせることにより、濃縮室通水量を確保しながら、濃縮排水量を適正に確保するようにしている。
【0020】
図9においては、ミネラル除去装置9が電気脱イオン装置10の入口側に設けられている。電気脱イオン装置10はイオン交換膜を使用しているため、電気脱イオン装置へ導入される被処理水中のスケーリング物質は低濃度である必要があり、例えば、シリカは数ppm以下が条件となっており、スケーリング物質除去のためにミネラル除去装置9が設けられる。
【0021】
なお、この特許文献1の図2には、この電気脱イオン装置と並列にイオン交換式水純化装置を設け、電気脱イオン装置からの脱イオン水の水質が低下してきた場合にイオン交換式水純化装置に通水して水質悪化を回避する構成が記載されている。
【0022】
このような電気脱イオン装置10においては、脱イオン水を作る脱塩室、脱塩室から移動するイオンを濃縮する濃縮室、及び通電に用いられる電極が収納される電極室それぞれに、流量のバランスを保ちながら、同時に通水する方式が一般的である。
【0023】
これらの流量は、水温の変化、電気脱イオン装置に送水するポンプの性能低下による圧力低下、あるいは電気脱イオン装置自体の圧力損失の変動等の外乱により、単純に流路を狭めて排圧を増す弁構造体では、容易に変化してしまう。そのため、各室に入る流量を監視するための流量計を設置し、弁体の開度を調節することが必要となっていた。例えば、20℃から40℃に温度が変化する場合、既存の流量調整弁では、電極室(濃縮室)に通水する流量が、50〜70%上昇する。
【0024】
電気脱イオン装置10では、例えば濃縮室への流量が低下すると、イオン類の過濃縮が起こり、カルシウムやシリカなどのスケール成分が析出し、処理水質の低下が引き起こされたり、装置の寿命が著しく低下してしまったりする。逆に濃縮室に通水する水量が上昇すると、装置からの排水が多くなり、水の利用率が低下し、脱イオン水の単価が上昇してしまう。このため、電気脱イオン装置10では、濃縮室に通水する水量及び電極室に通水する流量を厳密に管理しなければならない。さらに、95%以上の高い水利用率が求められる燃料電池内の水処理等においては、厳密な調整が必須になる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2001−176535号公報
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構発行,「家庭用燃料電池システム関連補機類の共通仕様リスト」,2009年2月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上述したような従来技術では、電気脱イオン装置10の流量調整のために、流量計や流量調整弁などを用いており、このために多くの構成要素が必要となり、これらの制御・管理に非常に手間がかかっており、設備が複雑化するうえにコストも嵩む、という問題点があった。特に、燃料電池発電装置向けなどの場合のように、流量制御の範囲が非常に微少なものになると、調整がより困難になり実用上支障が生じるおそれがある。また、流路自体が細狭化するため、供給水中に含まれる微粒子や生菌等により流量調整弁が閉塞するおそれがある、という問題点もある。
【0028】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、燃料電池発電装置の電気脱イオン装置に供給する水の流量制御を簡単な構造で確実に行うことの可能な純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題を解決するために、本発明は、陽極と陰極との間にイオン交換膜を配置することにより、少なくとも陰極側濃縮室、脱塩室及び陽極側濃縮室を設けた電気脱イオン装置を有する純水製造装置において、前記脱塩室への脱塩室給排水流路及びこの給排水流路から分岐した陰極側濃縮室への濃縮室供給水流路と、前記脱塩室給排水流路及び濃縮室供給水流路への供給を切り替える切り替え機構と、前記脱塩室給排水流路へ給水する給水機構とを備えることを特徴とする純水製造装置を提供する(請求項1)。
【0030】
上記発明(請求項1)によれば、電気脱イオン装置から脱イオン水(純水)を得る際には、切り替え機構により脱塩室給排水流路を開成する一方で濃縮室供給水流路を閉鎖する。この状態で電気脱イオン装置に原水を供給すると、原水が脱塩室にのみ供給され、ここを通過することにより脱塩室から濃縮室(電極室)にイオンが移動して脱イオン水を得ることができる。このとき、脱塩室から濃縮室に移動したイオンは、濃縮室内にて濃縮され続け、例えば、陰極側濃縮室では、カルシウムやシリカ等のスケール成分が高濃度になり、電極室内で析出するおそれが出てくる。そこで、所定の時間、脱塩室への原水の供給を継続したら、切り替え機構により濃縮室供給水流路を開成することで、脱塩室給排水流路の途中から濃縮室供給水流路に流れを変更して濃縮室に通水し、濃縮室内に濃縮したイオン類を排出する。これを繰り返すことにより、電気脱イオン装置に供給する水の流量制御を簡単な構造でかつ確実に行うことができる。
【0031】
上記発明(請求項1)においては、前記切り替え機構が、前記脱塩室給排水流路及び濃縮室供給水流路にそれぞれ設けられた開閉弁であるのが好ましい(請求項2)。
【0032】
上記発明(請求項2)によれば、上述した脱塩室と濃縮室との原水の供給の切り替えを2個の開閉弁により排他的に切り替えることができる。
【0033】
また、上記発明(請求項1)においては、前記切り替え機構が、前記脱塩室給排水流路又は濃縮室供給水流路のいずれか一方に設けられた開閉弁と、他方に設けられた背圧弁とからなるのが好ましい(請求項3)。
【0034】
上記発明(請求項3)によれば、上述した脱塩室と濃縮室との原水の供給の切り替えを開閉弁の開閉と背圧弁とにより行うことができる。
【0035】
上記発明(請求項1〜3)においては、前記給水機構の上流に原水タンクを備え、前記原水タンクに水位計を備えるのが好ましい(請求項4)。
【0036】
上記発明(請求項4)によれば、原水タンクの水位の変化と、ポンプの可動時間とから電気脱イオン装置を通過する水の流量を算出し、これに基づき開閉機構の切り替え時間の比率を好適なものに設定することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の純水製造装置によれば、脱塩室への脱塩室給排水流路及びこの給排水流路から分岐した陰極側濃縮室への濃縮室供給水流路と、脱塩室給排水流路及び濃縮室供給水流路への供給を切り替える切り替え機構と、脱塩室給排水流路へ給水する給水機構とを備えるので、電気脱イオン装置から脱イオン水(純水)を得る際には、切り替え機構により脱塩室給排水流路を開成する一方で濃縮室供給水流路を閉鎖する。この状態で電気脱イオン装置に原水を供給すると、原水が脱塩室にのみ供給され、ここを通過することにより脱塩室から濃縮室(電極室)にイオンが移動して脱イオン水を得ることができる。このとき、脱塩室から濃縮室に移動したイオンは、濃縮室内にて濃縮され続け、例えば、陰極側濃縮室では、カルシウムやシリカ等のスケール成分が高濃度になり、電極室内で析出するおそれが出てくる。そこで、所定の時間、脱塩室への原水の供給を継続したら、切り替え機構により濃縮室供給水流路を開成することで、脱塩室給排水流路の途中から濃縮室供給水流路に流れを変更して濃縮室に通水し、濃縮室内で濃縮されたイオン類を排出する。これを繰り返すことにより、電気脱イオン装置に供給する水の流量制御を簡単な構造でかつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る純水製造装置を示す概略図である。
【図2】本発明の第二の実施形態に係る純水製造装置を示す概略図である。
【図3】本発明の第三の実施形態に係る純水製造装置を示す概略図である。
【図4】本発明の第四の実施形態に係る純水製造装置を示す概略図である。
【図5】本発明の第五の実施形態に係る純水製造装置を示す概略図である。
【図6】本発明の第六の実施形態に係る純水製造装置を示す概略図である。
【図7】本発明の第七の実施形態に係る純水製造装置を示す概略図である。
【図8】図1に示す装置における処理水質を示すグラフである。
【図9】従来例に係る燃料電池発電装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る純水製造装置を示す概略図である。
【0040】
図1において、この電気脱イオン装置31は、陰極32と陽極33との間に、カチオン交換膜34とアニオン交換膜35とを1枚ずつ配置し、陰極32とカチオン交換膜34との間に濃縮室兼陰極室36を形成し、カチオン交換膜34とアニオン交換膜35との間に脱塩室37を形成し、アニオン交換膜35と陽極33との間に濃縮室兼陽極室38を形成している。
【0041】
濃縮室兼陰極室36にはカチオン交換樹脂(図示せず)が充填されており、脱塩室37にはカチオン交換樹脂(図示せず)とアニオン交換樹脂(図示せず)とが充填されており、濃縮室兼陽極室38には、アニオン交換樹脂が充填されている。
【0042】
上述したような電気脱イオン装置31において、脱塩室37には、脱塩室給排水流路たる脱塩室供給管路41及び脱塩室排出管路42が設けられている。脱塩室排出管路42の末端側には開閉弁たる第1の電磁弁43が設けられているとともに、この第1の電磁弁43の手前で分岐していて、濃縮室兼陰極室36に連通する濃縮室供給水流路たる濃縮室供給管路44が設けられている。この濃縮室供給管路44には、開閉弁たる第2の電磁弁45が設けられている。さらに濃縮室兼陰極室36には、濃縮室排出管路46が連通している。これら第1の電磁弁43及び第2の電磁弁45は、図示しない制御機構によりそれぞれ制御可能となっていて、これらにより切り替え機構が構成される。
【0043】
そして、脱塩室供給管路41の途中には給水機構たるポンプ51が設けられているとともに、このポンプ51の上流には水位計53を備えた原水タンク52が設けられている。この水位計53は上述した制御機構(図示せず)に接続されている。
【0044】
上記構成についてその作用を説明する。
まず、制御機構により第1の電磁弁43を開成し第2の電磁弁45を閉鎖した状態を10分間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から脱塩室37に導入すると、該脱塩室37内にはカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が充填されているので、原水中のカチオン成分は濃縮室兼陰極室36に排出される一方、アニオン成分は濃縮室兼陽極室38に排出され、脱塩室供給管路41から純水W1として取り出され、ユースポイント(UP)に供給される。
【0045】
このままでは濃縮室兼陰極室36に濃縮水としてカチオン成分が導入され続けるので、陰極32やカチオン交換膜34の表面に該カチオン成分に起因したスケールが付着するおそれがある。そこで、10分間上記純水W1をユースポイント(UP)に供給したら、制御機構により第1の電磁弁43を閉鎖し、第2の電磁弁45を開成した状態を30秒間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から脱塩室37に導入すると、同様に脱塩室供給管路41から純水W1が取り出される。今回は第1の電磁弁43が閉鎖されているので、この純水W1は濃縮室供給管路44から濃縮室兼陰極室36に送水され、濃縮室兼陰極室36内に溜まっていた濃縮水が濃縮室排出管路46から排出される。このようにして、純水W1をユースポイントUPに供給しながら、濃縮室兼陰極室36内のスケールを防止することができる。
【0046】
上述したような第一の実施形態の純水製造装置は、第1の電磁弁43と第2の電磁弁45の開閉のタイミングにより、脱塩室37と濃縮室兼陰極室36の水の供給を切り替える構造であるので、簡単な構造でかつ確実に流量制御を行うことができる。また、第1の電磁弁43及び第2の電磁弁45の開閉時間を変更するだけで流量調整もできるという、利点も有する。
【0047】
なお、第1の電磁弁43及び第2の電磁弁45の開閉のタイミングは、脱塩室37、濃縮室兼陰極室36などの圧損が異なり、単位時間当たりの通水量も異なるため、あらかじめ各室の単位時間当たりの通水量と、ユースポイントUPの要求量とから適宜設定すればよい。ただし、温度による原水Wの粘性変化や電気脱イオン装置31自体の差圧変化により、単位時間当たりの通水量は変化するため、より厳密な流量管理をするためには、原水タンク52内に設けられた水位計53が水位高(H)を示した状態から、水位低(L)を示すまでにポンプ51が稼働した時間を計測し、これに基づいて脱塩室37及び濃縮室兼陰極室36への流量を算出し、第1の電磁弁43と第2の電磁弁45の開閉時間比率を求めるのが望ましい。ただし、排水として排出可能な水量が限られている場合には、水位計53が水位高(H)を示している場合に限り、排水を続けると判断してもよい。
【0048】
次に、本発明の第二の実施形態に係る純水製造装置について、図2を参照して詳細に説明する。第二の実施形態の純水製造装置は、原水タンク52及び水位計53については、上述した第一の実施形態と同様であるので、図示を省略する。
【0049】
第二の実施形態の純水製造装置は、脱塩室供給管路41が脱塩室37の手前で分岐していて、濃縮室兼陰極室36に連通する濃縮室供給水流路たる濃縮室供給管路44Aが設けられていて、この濃縮室供給管路44Aに開閉弁たる第2の電磁弁45が設けられている以外、上述した第一の実施形態と同様の構成を有する。
【0050】
上記構成についてその作用を説明する。
まず、制御機構により第1の電磁弁43を開成し第2の電磁弁45を閉鎖した状態を10分間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から脱塩室37に導入すると、脱塩室37内にはカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が充填されているので、原水中のカチオン成分は濃縮室兼陰極室36に排出される一方、アニオン成分は濃縮室兼陽極室38に排出され、脱塩室供給管路41から純水W1として取り出され、ユースポイント(UP)に供給される。
【0051】
このままでは濃縮室兼陰極室36に濃縮水としてカチオン成分が導入され続けるので、陰極32やカチオン交換膜34の表面にスケールが付着するおそれがある。そこで、30分間上記純水W1をユースポイント(UP)に供給したら、制御機構により第1の電磁弁43を閉鎖し、第2の電磁弁45を開成した状態を30秒間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から供給すると、第1の電磁弁43が閉鎖しているので、原水Wは濃縮室供給管路44Aから濃縮室兼陰極室36に送水され、濃縮室兼陰極室36内に溜まっていた濃縮室排出管路46から排出される。このようにして、純水W1をユースポイントUPに供給しながら、濃縮室兼陰極室36内のスケールを防止することができる。
【0052】
本発明の第三の実施形態に係る純水製造装置について、図3を参照して詳細に説明する。第三の実施形態の純水製造装置は、原水タンク52及び水位計53については、上述した第一の実施形態と同様であるので、図示を省略する。
【0053】
第三の実施形態の純水製造装置は、脱塩室供給管路41に第1の電磁弁43が設けられており、この第1の電磁弁43の手前で該脱塩室供給管路41が分岐していて、濃縮室兼陰極室36に連通する濃縮室供給水流路たる濃縮室供給管路44Bが設けられているとともに、脱塩室排出管路42の電磁弁を取り外した以外、上述した第一の実施形態と同様の構成を有する。
【0054】
上記構成についてその作用を説明する。
まず、制御機構により第1の電磁弁43を開成し第2の電磁弁45を閉鎖した状態を10分間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から脱塩室37に導入すると、脱塩室37内にはカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が充填されているので、原水中のカチオン成分は濃縮室兼陰極室36に排出される一方、アニオン成分は濃縮室兼陽極室38に排出され、脱塩室供給管路41から純水W1として取り出され、ユースポイント(UP)に供給される。
【0055】
このままでは濃縮室兼陰極室36に濃縮水としてカチオン成分が導入され続けるので、陰極32やカチオン交換膜34の表面にスケールが付着するおそれがある。そこで、所定時間上記純水W1をユースポイント(UP)に供給したら、制御機構により第1の電磁弁43を閉鎖し、第2の電磁弁45を開成した状態を30秒間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から供給すると、第1の電磁弁43が閉鎖しているので、原水Wは濃縮室供給管路44Bから濃縮室兼陰極室36に送水され、濃縮室兼陰極室36内に溜まっていた濃縮水が濃縮室排出管路46から排出される。このようにして、純水W1をユースポイントUPに供給しながら、濃縮室兼陰極室36内のスケールを防止することができる。
【0056】
本発明の第四の実施形態に係る純水製造装置について、図4を参照して詳細に説明する。第四の実施形態の純水製造装置は、原水タンク52及び水位計53については、上述した第一の実施形態と同様であるので、図示を省略する。
【0057】
第四の実施形態の純水製造装置は、濃縮室供給管路44が第2の電磁弁45の下流側でさらに分岐しており、濃縮室兼陰極室36と濃縮室兼陽極室38との両方に連通していて、濃縮室兼陽極室38に排出管路47が設けられている以外、上述した第一の実施形態と同様の構成を有する。
【0058】
上記構成についてその作用を説明する。
まず、制御機構により第1の電磁弁43を開成し第2の電磁弁45を閉鎖した状態を10分間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から脱塩室37に導入すると、脱塩室37内にはカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が充填されているので、原水中のカチオン成分は濃縮室兼陰極室36に排出される一方、アニオン成分は濃縮室兼陽極室38に排出され、脱塩室供給管路41から純水W1として取り出され、ユースポイント(UP)に供給される。
【0059】
このままでは濃縮室兼陰極室36に濃縮水としてカチオン成分が導入され続けるので、陰極32やカチオン交換膜34の表面にスケールが付着するおそれがある。また、濃縮室兼陽極室38では陰イオン成分に起因して塩素ガスや炭酸ガスなどが発生し、このガスがイオンの移動効率が低下するおそれがある。そこで、所定時間上記純水W1をユースポイント(UP)に供給したら、制御機構により第1の電磁弁43を閉鎖し、第2の電磁弁45を開成した状態を30秒間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から脱塩室37に導入すると、脱塩室供給管路41から純水W1が取り出される。この純水W1は第1の電磁弁43が閉鎖しているので、濃縮室供給管路44から濃縮室兼陰極室36と濃縮室兼陽極室38の両方に供給される。その結果、濃縮室兼陰極室36内に溜まっていた濃縮水が濃縮室排出管路46から排出される。このようにして、純水W1をユースポイントUPに供給しながら、濃縮室兼陰極室36内のスケールを防止することができる。また、濃縮室兼陽極室38内のガスを排出することができる。
【0060】
さらに、本発明の第五の実施形態に係る純水製造装置について図5を参照して詳細に説明する。第五の実施形態の純水製造装置は、原水タンク52及び水位計53については、上述した第一の実施形態と同様であるので、図示を省略する。
【0061】
第五の実施形態の純水製造装置は、ユースポイントUPを経由して残存した純水W1を濃縮室兼陽極室38に供給する濃縮室兼陽極室供給管路48が設けられていて、さらに濃縮室兼陽極室38に排出管路49が設けられている以外、上述した第一の実施形態と同様の構成を有する。
【0062】
上記構成についてその作用を説明する。
まず、制御機構により第1の電磁弁43を開成し第2の電磁弁45を閉鎖した状態を10分間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から脱塩室37に導入すると、脱塩室37内にはカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が充填されているので、原水中のカチオン成分は濃縮室兼陰極室36に排出される一方、アニオン成分は濃縮室兼陽極室38に排出され、脱塩室供給管路41から純水W1として取り出され、ユースポイント(UP)に供給される。
【0063】
このままでは濃縮室兼陰極室36に濃縮水としてカチオン成分が導入され続けるので、陰極32やカチオン交換膜34の表面にスケールが付着するおそれがある。そこで、所定時間上記純水W1をユースポイント(UP)に供給したら、制御機構により第1の電磁弁43を閉鎖し、第2の電磁弁45を開成した状態を30秒間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から脱塩室37に導入すると、脱塩室供給管路41から純水W1が取り出される。この純水W1は第1の電磁弁43が閉鎖しているので、濃縮室供給管路44から濃縮室兼陰極室36に供給される。その結果、濃縮室兼陰極室36内に滞留している濃縮水が濃縮室排出管路46から排出される。このようにして、純水W1をユースポイントUPに供給しながら、濃縮室兼陰極室36内のスケールを防止することができる。また、濃縮室兼陽極室38では陰イオン成分に起因して塩素ガスや炭酸ガスなどが発生し、このガスがイオンの移動効率が低下するおそれがある。そこで、ユースポイントUPで残存した純水W1を濃縮室兼陽極室38に供給することにより、濃縮室兼陽極室38内のガスを排出することができる。
【0064】
次に本発明の第六の実施形態に係る純水製造装置について、図6を参照して詳細に説明する。第六の実施形態の純水製造装置は、原水タンク52及び水位計53については、上述した第一の実施形態と同様であるので、図示を省略する。
【0065】
第六の実施形態の純水製造装置は、第1の電磁弁43の代わりに、背圧弁43Aを設けた以外、上述した第一の実施形態と同様の構成を有する。
【0066】
上記構成についてその作用を説明する。
まず、制御機構により第2の電磁弁45を閉鎖した状態を10分間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から脱塩室37に導入すると、脱塩室37内にはカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が充填されているので、原水中のカチオン成分は濃縮室兼陰極室36に排出される一方、アニオン成分は濃縮室兼陽極室38に排出され、脱塩室供給管路41から純水W1が排出され、背圧弁45Aに抗してユースポイント(UP)に供給される。
【0067】
このままでは濃縮室兼陰極室36に濃縮水としてカチオン成分が導入され続けるので、陰極32やカチオン交換膜34の表面にスケールが付着するおそれがある。そこで、所定時間上記純水W1をユースポイント(UP)に供給したら、制御機構により第2の電磁弁45を開成した状態を30秒間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から供給すると、濃縮室排出管路46から純水W1が排出される。このとき、脱塩室排出管路42には背圧弁43Aが設けられているので、純水W1は背圧弁43Aを透過するよりも、濃縮室供給管路44を通過する方に多量に流れ、濃縮室兼陰極室36に送水される。この結果、濃縮室兼陰極室36内に滞留した濃縮水が濃縮室排出管路46から排出される。このようにして、純水W1をユースポイントUPに供給しながら、濃縮室兼陰極室36内のスケールを防止することができる。
【0068】
このように、第六の実施形態によれば、第2の電磁弁45を制御するだけでよいので、流量制御をより簡便に行うことができる。
【0069】
さらに本発明の第七の実施形態に係る純水製造装置について、図7を参照して詳細に説明する。第七の実施形態の純水製造装置は、原水タンク52及び水位計53については、上述した第一の実施形態と同様であるので、図示を省略する。
【0070】
第七の実施形態の純水製造装置は、第2の電磁弁45の代わりに、背圧弁45Aを設けた以外、上述した第一の実施形態と同様の構成を有する。
【0071】
前記構成についてその作用を説明する。
まず、制御機構により第1の電磁弁43を開成した状態を10分間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から脱塩室37に導入すると、脱塩室37内にはカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が充填されているので、原水中のカチオン成分は濃縮室兼陰極室36に排出される一方、アニオン成分は濃縮室兼陽極室38に排出され、脱塩室排出管路42から純水W1が排出される。このとき、濃縮室供給管路44Aには背圧弁45Aが設けられているので、純水W1は背圧弁45Aを透過するよりも、脱塩室排出管路42を通過する方に多量に流れ、第1の電磁弁43を通過して、ユースポイント(UP)に供給される。
【0072】
このままでは濃縮室兼陰極室36に濃縮水としてカチオン成分が導入され続けるので、陰極32やカチオン交換膜34の表面にスケールが付着するおそれがある。そこで、所定時間上記純水W1をユースポイント(UP)に供給したら、制御機構により第1の電磁弁43を閉鎖した状態を30秒間維持する。そして、電気脱イオン装置31に通電した状態で、原水Wを脱塩室供給管路41から供給すると、脱塩室排出管路42から純水W1が排出される。このとき、第1の電磁弁43が閉鎖されているので、背圧弁45Aに抗して濃縮室供給管路44から濃縮室兼陰極室36に送水され、濃縮水が排出され、濃縮室排出管路46から純水W1が排出される。このようにして、純水W1をユースポイントUPに供給しながら、濃縮室兼陰極室36内のスケールを防止することができる。
【0073】
このように、第七の実施形態によれば、第1の電磁弁43を制御するだけでよいので、流量制御をより簡便に行うことができる。
【0074】
以上、本発明について添付図面を参照して説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば、開閉弁としては、電磁弁43,45に限らず、制御機構により開閉を制御可能であれば種々の弁体を適用することができる。また、背圧弁43A,45Aとしては、ニードル弁や、キャピラリなど圧力を抑制する種々の構造体を適用することができる。さらに、電気脱イオン装置31としては、種々のタイプのものを用いることができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例について説明する。なお、この実施例では図1に示す純水装置で試験を行った。
【0076】
[実施例1]
電気伝導度10μS/cmの原水を50mL/minで定体積ポンプ51により脱塩室37に供給し、電極に500mA/dmの直流電流を印加して通水を開始した。そして、制御機構により第1の電磁弁43を開成し第2の電磁弁45を閉鎖した状態を10分間維持し、次に第1の電磁弁43を閉鎖し第2の電磁弁45を開成した状態を30秒間維持するサイクルを1時間繰り返した。このときの第1の電磁弁43を通過して脱塩室排出管路42から供給された純水W1の比抵抗値の変動と、第2の電磁弁45を通過して濃縮室兼陰極室36内の濃縮水とともに濃縮室排水管路46から排出された排水の電気伝導度の変動を計測した結果を図8に示す。また、電気脱イオン装置31の脱塩室37の入口の圧力を測定した結果を図8に合わせて示す。
【0077】
図8から明らかなように、電気脱イオン装置31の脱塩室37の入口の圧力は、第1の電磁弁43を開成し第2の電磁弁45を閉鎖した状態では約7kPa程度で安定しているが、第1の電磁弁43を閉鎖し第2の電磁弁45を開成している間は45kPa程度にまで上昇していることがわかる。また、実施例1の純水製造装置によれば5MΩ・cmの比抵抗値の純水W1を製造することができ、弁の切り替えにより、濃縮室兼陰極室36内に溜まったイオン類が排出されて、濃縮室兼陰極室36の電気伝導度も回復することが確認された。
【符号の説明】
【0078】
31…電気脱イオン装置
32…陰極
33…陽極
34…カチオン交換膜
35…アニオン交換膜
36…濃縮室兼陰極室
37…脱塩室
38…濃縮室兼陽極室
41…脱塩室供給管路(脱塩室給排水流路)
42…脱塩室排出管路(脱塩室給排水流路)
43…第1の電磁弁(開閉弁)
43A,45A…背圧弁
44…濃縮室供給管路(濃縮室供給水流路)
45…第2の電磁弁(開閉弁)
51…ポンプ(給水機構)
52…原水タンク
53…水位計
W…原水
W1…純水(脱イオン水)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間にイオン交換膜を配置することにより、少なくとも陰極側濃縮室、脱塩室及び陽極側濃縮室を設けた電気脱イオン装置を有する純水製造装置において、
前記脱塩室への脱塩室給排水流路及びこの給排水流路から分岐した陰極側濃縮室への濃縮室供給水流路と、
前記脱塩室給排水流路及び濃縮室供給水流路への供給を切り替える切り替え機構と、
前記脱塩室給排水流路へ給水する給水機構と
を備えることを特徴とする純水製造装置。
【請求項2】
前記切り替え機構が、前記脱塩室給排水流路及び濃縮室供給水流路にそれぞれ設けられた開閉弁であることを特徴とする請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項3】
前記切り替え機構が、前記脱塩室給排水流路又は濃縮室供給水流路のいずれか一方に設けられた開閉弁と、他方に設けられた背圧弁とからなることを特徴とする請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項4】
前記給水機構の上流に原水タンクを備え、前記原水タンクに水位計を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の純水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−125738(P2012−125738A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281618(P2010−281618)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】