説明

紙幣処理装置

【課題】装置本体内への紙幣の取込み動作中に処理すべき紙幣を追加装填するときであっても、操作者が安心して追加装填でき、追加紙幣のセット不良を未然に防ぐことができる紙幣処理装置の提供。
【解決手段】紙幣検知手段50が紙幣保持部19と紙幣押圧部4との間に保持された紙幣を検知している状態での取込み動作中に、紙幣押圧部4が開方向に移動したことを開閉位置検知手段51が検知すると、取込み動作を中断する制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多量の紙幣を一枚ずつ分離して装置本体内に取込む処理を行う紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、受取部に受け入れた多量の紙幣を一枚ずつ分離して装置本体内に取込む処理を行う紙幣処理装置として、受取部に紙幣が無くなると、紙幣の有無を検知する紙幣検知センサからの検知信号の出力が停止され、これにより、制御手段が、紙幣を押圧する押圧部材を開閉両方向に駆動する開閉駆動手段を駆動して押圧部材を開方向に移動させ、待機位置に位置させる紙幣処理装置がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2901482号公報(段落0032−0034、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の紙幣処理装置によれば、紙幣がない状態においては、押圧部材は開方向の待機位置に位置され受取部は紙幣がそのまま装填できる状態となっているため、例えば両手で紙幣を持った状態での紙幣の装填時にも、押圧部材を開作動等させるために紙幣を一旦別の場所に置く必要等がなくなる。しかも、開閉駆動手段による押圧部材の閉方向移動中に、紙幣が抜き取られ紙幣検知センサからの検知信号の出力が停止された場合、押圧部材は停止されることになり、この状態で所定時間経過すると、押圧部材を開方向の待機位置に自動的に移動させるようになっている。
【0005】
しかしながら、押圧部材の待機位置への自動移動は、紙幣検知センサからの検知信号が出力されない状態、つまり、受取部に紙幣がない状態に限られ、受取部に紙幣がある状態での紙幣の追加装填時においては対応できず、仮に、手動で押圧部材を開方向へ移動させたとしても、既に装填されている紙幣の装置本体内への取込み動作は継続されることになる。このため、紙幣の追加装填時における操作者に与える心理的プレッシャーや、それに基づく追加装填用の紙幣のセット不良が原因の取込み不良等を生じる可能性があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、装置本体内への紙幣の取込み動作中に処理すべき紙幣を追加装填するときであっても、操作者が安心して追加装填でき、追加紙幣のセット不良を未然に防ぐことができる紙幣処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、紙幣押圧部を開閉可能に支持する開閉支持手段と、閉方向に移動した前記紙幣押圧部とで紙幣を保持する紙幣保持部と、該紙幣保持部の近傍に配置され、前記紙幣保持部側の紙幣から紙幣を一枚ずつ分離して装置本体内に繰り出す紙幣分離繰出部と、を備え、前記紙幣保持部と前記紙幣押圧部との間に保持された紙幣を、前記紙幣分離繰出部による繰り出しを含んで前記紙幣保持部側から一枚ずつ分離して前記装置本体内に取込む取込み動作を行う紙幣処理装置であって、前記紙幣保持部と前記紙幣押圧部との間に保持された紙幣を検知する紙幣検知手段と、前記紙幣押圧部の開閉方向における移動位置を検知する開閉位置検知手段と、を有し、前記紙幣検知手段が前記紙幣保持部と前記紙幣押圧部との間に保持された紙幣を検知している状態での前記取込み動作中に、前記紙幣押圧部が開方向に移動したことを前記開閉位置検知手段が検知すると、前記取込み動作を中断する制御手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記紙幣分離繰出部は、前記紙幣保持部の一部を構成するとともに、最も該紙幣保持部側の紙幣と当接して該紙幣を蹴り出す蹴出ローラを有し、前記制御手段は、前記取込み動作を中断するときには、少なくとも前記蹴出ローラの回転を停止させることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記紙幣分離繰出部は、最も前記紙幣保持部側の紙幣に当接可能な繰出ローラと、該繰出ローラと対向配置される分離ローラと、前記紙幣保持部の一部を構成するとともに、該紙幣保持部の紙幣保持面より前記紙幣押圧部側に突出することで、最も前記紙幣保持部側の紙幣と当接可能に設けられた蹴出ローラと、を有し、前記制御手段は、前記取込み動作を中断するときには、少なくとも前記蹴出ローラを、前記紙幣保持面から突出しない状態として回転を停止させることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記制御手段は、前記取込み動作を中断するときは、さらに前記繰出ローラの回転を停止させることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか一項に係る発明において、前記開閉位置検知手段は、前記紙幣押圧部の前記紙幣保持部に対する開閉角度を検知する角度検知手段であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれか一項に係る発明において、前記制御手段は、前記取込み動作を中断した後に、前記開閉位置検知手段が前記紙幣押圧部の閉方向への移動を検知し、前記紙幣押圧部が前記紙幣保持部との間に紙幣を再び保持したとみなせる状態になると、前記取込み動作を再開することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、紙幣保持部と紙幣押圧部との間に保持された紙幣を紙幣検知手段が検知している状態で、保持された紙幣を紙幣分離繰出部による繰り出しを含んで一枚ずつ装置本体内に取込む取込み動作を行っているときに、紙幣押圧部が開方向に移動したことを開閉位置検知手段が検知すると、制御手段が、取込み動作を中断する。よって、取込み動作中に、例えば紙幣を追加装填する場合には、紙幣押圧部が開方向に移動すると、自動的に取込み動作を停止させることになる。したがって、装置本体内への紙幣の取込み動作中に処理すべき紙幣を追加装填するときに、操作者が安心して追加装填でき、追加紙幣のセット不良を未然に防ぐことができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、制御手段は、取込み動作を中断するときに、蹴出ローラの回転を停止させるため、簡素な構造で、取込み動作を中断させることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、制御手段は、取込み動作を中断するときに、蹴出ローラを、紙幣保持面から突出しない状態として回転を停止させるため、取込み動作を中断させた後の追加装填時に、集積状態を乱すことなく紙幣の追加が可能となる。つまり、蹴出ローラを紙幣保持部の紙幣保持面に対して紙幣押圧部側に突出させた状態で停止させてしまうと、紙幣保持部の紙幣保持面上にある紙幣の端部が紙幣押圧部側に持ち上がった状態になり、紙幣押圧部の開放位置によっては紙幣を追加装填するときに、装填済みの紙幣の集積状態を乱す可能性があるが、蹴出ローラを突出しない状態とすることで、装填済みの紙幣が安定状態となり、この状態での追加装填が可能になる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、蹴出ローラに加え、繰出ローラの回転を停止させるため、より安定した状態での追加装填が可能となる。よって、操作者がより安心して追加装填でき、追加紙幣のセット不良を未然に防ぐことが確実にできる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、開閉位置検知手段が、紙幣押圧部の紙幣保持部に対する開閉角度を検知する角度検知手段であるため、紙幣押圧部の紙幣保持部に対する開閉方向への移動が、紙幣保持部に対して直線移動ではなく旋回移動である場合に、良好に対応できる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、制御手段は、取込み動作を中断した後に、開閉位置検知手段が紙幣押圧部の閉方向への移動を検知し、紙幣押圧部が紙幣保持部との間に紙幣を再び保持したとみなせる状態になると、取込み動作を再開するため、取込み動作を中断した後、紙幣を追加装填して、紙幣押圧部を閉方向へ移動させて紙幣保持部とで紙幣を再び保持させれば、取込み動作の中断状態から自動復旧することになり、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る紙幣処理装置の要部を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る紙幣処理装置の要部を示す制御系ブロック図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る紙幣処理装置の要部を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る紙幣処理装置の要部を示す制御系ブロック図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る紙幣処理装置の要部を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る紙幣処理装置の要部を示す正面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る紙幣処理装置の要部を示す制御系ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1実施形態に係る紙幣処理装置を図1および図2を参照して以下に説明する。
【0021】
図1は紙幣処理装置の受取部1の周辺を示すもので、受取部1は、装置本体2(図においてはその一部のみ図示している)の上面に設けられた段部3と、該段部3に対向配置された紙幣押圧板(紙幣押圧部)4と、水平延在する底板5とを有している。紙幣押圧板4は、装置外から装填された紙幣Sを、段部3との間に保持するもので、その段部3側の押圧面8は傾斜配置されている。この押圧面8と平行をなすように、これに対向する段部3の保持面(紙幣保持面)9も傾斜配置されている。
【0022】
段部3の紙幣保持面9には、紙幣押圧板4との間に装填された紙幣Sの紙幣保持面9側のものに接触しこれを分離して下方に蹴り出す蹴出ローラ11が、周面の一部を紙幣保持面9よりも紙幣押圧板4側に突出させて設けられており、この蹴出ローラ11の下側には、該蹴出ローラ11に連動して回転する繰出ローラ12と、これに対向配置される分離ローラ13とが設けられている。ここで、蹴出ローラ11は、図示は略すが、その外周面が円周方向に摩擦係数の異なる複数の部材で構成されており、紙幣Sに振動を与え捌く作用を有する。蹴出ローラ11については、これを同一部材で構成され偏心回転するタイプとすることも可能である。
【0023】
繰出ローラ12の回転軸12aにはアーム15がその基端側において揺動可能に支持されており、蹴出ローラ11は、その回転軸11aが、このアーム15の先端側に支持されている。よって、アーム15の揺動により、蹴出ローラ11は、紙幣保持面9から紙幣押圧板4側に出没可能となっている。
【0024】
アーム15には、蹴出ローラ11を紙幣保持面9から突出させる方向に付勢する圧縮コイルバネ等の押圧バネ16の一端が連結されている。この押圧バネ16の他端はバネベース17に支持されており、このバネベース17は、段部3と紙幣押圧板4とを結ぶ方向に水平移動可能となるように図示略のフレームに支持されている。バネベース17には、押圧バネ16およびバネベース17を介して蹴出ローラ11を紙幣保持面9から突出しない状態となるように退避させるソレノイド等の強制退避部18が連結されている。蹴出ローラ11は、紙幣保持面9とともに、紙幣押圧板4との間に紙幣Sを保持する紙幣保持部19を構成している。
【0025】
上記した繰出ローラ12および分離ローラ13は、蹴出ローラ11で蹴り出された紙幣Sを、両側から挟みつつ、繰出ローラ12が回転し分離ローラ13が停止することで、一枚ずつに分離して装置本体2内に取込むものである。なお、分離ローラ13は非回転または取込み方向とは逆方向のみに回転可能になっている。そして、これらの繰出ローラ12および分離ローラ13の紙幣取込み位置が、装置本体2の繰出口22とされている。
【0026】
ここで、図中符号23は、繰出ローラ12とこれに常に同期連動して回転する蹴出ローラ11とを回転駆動および制動停止させる、モータ等を含む繰出駆動部を示している。蹴出ローラ11、繰出ローラ12、分離ローラ13、アーム15、押圧バネ16、バネベース17および繰出駆動部23が、紙幣保持部19の近傍に配置され、紙幣保持部19側の紙幣Sから紙幣Sを一枚ずつ分離して装置本体2内に繰り出す紙幣分離繰出部24を構成している。
【0027】
そして、底板5の側方(図1紙面手前側)には、該底板5と同方向に水平延在するよう図示略のフレームに支持されたガイド軸26が設けられており、該ガイド軸26には、ガイドブロック27が該ガイド軸26に沿って水平摺動可能となるよう設けられている。該ガイドブロック27の下部には、検知部28および突出部29が下方に突出するように形成されている。また、ガイドブロック27には、その側面(図1紙面奥側面)に紙幣押圧板4が固定されている。ガイドブロック27の上部には、これに一端が係合し、段部3側に図示略の他端が係合して、ガイドブロック27を段部3側へ付勢する引張コイルバネ等からなる付勢バネ30が設けられている。この付勢バネ30は、紙幣押圧板4と紙幣保持部19との間に装填された紙幣Sを紙幣押圧板4を介して所定の付勢力で付勢するようになっている。なお、付勢バネ30および押圧バネ16は、紙幣押圧板4と紙幣保持部19との間に紙幣Sを保持した状態で蹴出ローラ11が紙幣保持面9から突出し蹴り出しに適する接触圧で紙幣Sに接触するようにそれぞれの付勢力が設定されている。また、紙幣押圧板4の下部には、底板5上を円滑に走行するための走行ローラ31が回転自在に設けられている。
【0028】
上記したガイド軸26、ガイドブロック27、付勢バネ30および走行ローラ31が、紙幣押圧板4を、段部3および蹴出ローラ11からなる紙幣保持部19に対し離間・近接可能つまり開閉可能に支持する開閉支持機構(開閉支持手段)32を構成している。紙幣押圧板4は、閉方向に移動して紙幣保持部19とで紙幣Sを保持する。
【0029】
そして、ガイド軸26の段部3側の端部の下方には、プーリ35,36が設けられており、またガイド軸26の段部3に対し反対側の端部の下方にも、プーリ37が設けられている。これらプーリ35〜37には、無端ベルト38が、ガイド軸26に沿うようにかけられており、無端ベルト38の水平延在する上辺部38aには、上方に突出するよう規制部材40が固定されていて、さらに該規制部材40に並列して検知板41が上方に突出するよう固定されている。
【0030】
規制部材40は、ステッピングモータ等を含む開閉駆動部45でプーリ37を回転させて無端ベルト38を正逆方向に駆動することにより、ガイド軸26に沿って段部3に対し近接・離間するよう移動する。具体的に、規制部材40は、無端ベルト38の図1における時計回り回転で段部3から離間する方向に移動することにより、ガイドブロック27の突出部29に当接して、付勢バネ30の付勢力に抗してガイドブロック27および紙幣押圧板4を段部3から離間する開方向に移動させる。逆に、無端ベルト38の図1における反時計回り回転で段部3に近接する方向に移動することにより、紙幣押圧板4が紙幣Sに当接するまで突出部29に当接した状態でガイドブロック27および紙幣押圧板4を付勢バネ30の付勢力により段部3に近接する閉方向に移動させる。
【0031】
加えて、ガイド軸26の段部3側の端部近傍には、図示略のフレームに支持されるとともに検知板41の近接を検知して検知信号を出力する閉限度位置検知センサ46が設けられており、また、ガイド軸26の段部3に対し反対側の端部近傍には、図示略のフレームに支持されるとともに検知板41の近接を検知して検知信号を出力する開限度位置検知センサ47が設けられている。なお、閉限度位置検知センサ46は、検知板41を検知することで規制部材40が閉方向の限度位置にあることを検知し、開限度位置検知センサ47は、検知板41を検知することで規制部材40が開方向の限度位置にあることを検知するものであり、これらの検知位置で図2に示す制御部(制御手段)48が規制部材40の移動を停止させることにより、紙幣押圧板4の移動範囲が限定されることになる。また、紙幣Sが装填されない状態においては、紙幣押圧板4は、検知板41が開限度位置検知センサ47で検知される位置にある状態で待機するか(この位置が紙幣押圧板4の開方向の待機位置となる)、検知板41が閉限度位置検知センサ46で検知される位置にある状態で待機するか(この位置が紙幣押圧板4の閉方向の待機位置となる)のいずれか一方を設定することができる。
【0032】
上記したプーリ35〜37、無端ベルト38、規制部材40、検知板41、開閉駆動部45、閉限度位置検知センサ46および開限度位置検知センサ47が、紙幣押圧板4を開方向の待機位置に戻す開方向待機位置戻し機構49を構成している。
【0033】
ここで、受取部1には、発光・受光のいずれか一方の素子50aと発光・受光のいずれか他方の素子50bとからなり発光側から発せられ受光側で受ける光の光路50cが遮断されることで紙幣保持部19と紙幣押圧板4との間に保持された紙幣Sを検知する紙幣検知センサ(紙幣検知手段)50が、段部3の紙幣押圧板4に対し反対側に素子50aを、ガイド軸26の段部3に対し反対側の端部よりさらに外側に素子50bを、相互に水平をなすようそれぞれ配置している。ここで、素子50a,50bの光路50cが、紙幣押圧板4と紙幣保持部19との間に保持された紙幣Sにより必ず遮断される位置となりかつ紙幣押圧板4の移動方向に沿うよう、素子50a,50bは、配置されている。なお、該光路50c上に位置する紙幣押圧板4および段部3には、光路50cを遮断せぬよう図示略の孔が形成されている。
【0034】
加えて、ガイド軸26の近傍には、ガイドブロック27の検知部28を検知可能な複数の開閉位置検知センサ(開閉位置検知手段)51が紙幣押圧板4の開閉方向(スライド方向)に並んだ状態で図示略のフレームに支持されている。これら開閉位置検知センサ51は、ガイドブロック27つまりこれに固定された紙幣押圧板4の開閉方向における移動位置を検知する。
【0035】
なお、これら開閉位置検知センサ51のそれぞれの検知部28つまり紙幣押圧板4の検知タイミングから、所定の時間内に行われる一連の検知において紙幣保持部19側の開閉位置検知センサ51が先に、紙幣保持部19とは反対側の開閉位置検知センサ51が後に検知部28を検知すれば、紙幣押圧板4が紙幣保持部19から離間する開方向に移動していることを検出する。逆に、所定の時間内に行われる一連の検知において紙幣保持部19とは反対側の開閉位置検知センサ51が先に、紙幣保持部19側の開閉位置検知センサ51が後に検知部28を検知すれば、紙幣押圧板4が紙幣保持部19に近接する閉方向に移動していることを検出する。さらに、開方向移動および閉方向移動のそれぞれの検知時において、最後に検知部28を検知した開閉位置検知センサ51の次の開閉位置検知センサ51が所定時間内に検知部28を検知しなければ紙幣押圧板4が停止したことを検出する。なお、開閉位置検知センサ51は、紙幣押圧板4の開方向移動、閉方向移動および停止を検知できれば良いため、細かな位置検知は必要なく、例えば、ガイド軸26の長さ方向に1cm間隔で配置すれば良い。
【0036】
図2に示すように、上記した強制退避部18、繰出駆動部23、開閉駆動部45、閉限度位置検知センサ46、開限度位置検知センサ47、紙幣検知センサ50および複数の開閉位置検知センサ51が、制御部48に接続されている。なお、具体的な図示は略すが、装置本体2には、紙幣分離繰出部24により繰り出された紙幣Sを、搬送しつつ、例えばその種類毎に分類計数して収納等の処理を行う内部処理機構52が設けられており、これも制御部48に接続されている。
【0037】
以下に、第1実施形態における制御部48の制御内容を説明する。
【0038】
ここで、前回の取込み動作終了後、制御部48は、検知板41が開限度位置検知センサ47で検知される状態で停止させており、よって、紙幣押圧板4は全開位置で停止している。この待機状態から、紙幣Sの処理を行うにあたって、操作者は、受取部1の紙幣保持部19と紙幣押圧板4との間に紙幣Sを、これらを結ぶ方向に集積させた状態で装填することになる。紙幣Sの装填が行われると、この装填を制御部48は、紙幣検知センサ50の光路50cの遮断により検知することになる。このようにして受取部1に紙幣Sの装填が行われたことを検知すると、制御部48は、開閉駆動部45を駆動して、無端ベルト38を、その上辺部38aが段部3に近接する方向に走行するよう回転させる。これにより、規制部材40が、段部3に近接する方向に移動し、突出部29で係止しているガイドブロック27および紙幣押圧板4を閉方向に、付勢バネ30の付勢力で移動させる。規制部材40の移動中、紙幣押圧板4が紙幣Sに当接し紙幣Sを紙幣保持部19とで保持する状態となると、紙幣押圧板4は停止して規制部材40のみが移動することになる。
【0039】
そして、閉限度位置検知センサ46が検知板41を検知すると、制御部48は、開閉駆動部45の駆動つまり無端ベルト38の駆動を停止させるとともに、紙幣保持部19と紙幣押圧板4との間に紙幣Sが保持された状態となったと判断して、装置本体2内への紙幣Sの取込み動作をスタートさせるスタートボタン押圧等のスタート操作を受け付ける状態となる。操作者により、スタート操作が入力されると、繰出駆動部23および内部処理機構52を駆動する。これにより、紙幣保持部19と紙幣押圧板4との間に保持された紙幣Sを、紙幣分離繰出部24による繰り出しを含んで紙幣保持部19側から一枚ずつ分離して装置本体2内に繰出口22から取込む取込み動作を行う。
【0040】
つまり、蹴出ローラ11は押圧バネ16の付勢力で紙幣保持面9から突出しており、よって、繰出駆動部23が駆動されると、蹴出ローラ11が紙幣保持部19と紙幣押圧板4との間に保持された紙幣Sのうちの最も紙幣保持部19側の紙幣Sと当接してこの紙幣Sを繰出口22に向けて蹴り出すことになり、蹴り出された最も紙幣保持部19側の紙幣Sが繰出ローラ12に当接して繰出口22から内部処理機構52に受け渡される。このとき繰出ローラ12と対向配置された分離ローラ13は停止しており、最も紙幣保持部19側の紙幣Sに引きずられて繰出ローラ12側に移動するそれ以外の紙幣Sを停止させることになり、その結果、繰出ローラ12に当接する最も紙幣保持部19側の紙幣Sのみが繰出口22から内部処理機構52に受け渡され、内部処理機構52で引き込まれる。
【0041】
そして、上記の取込み動作中に、紙幣検知センサ50が紙幣保持部19と紙幣押圧板4との間に保持された紙幣Sを検知しなくなると、制御部48は、繰出駆動部23を停止させて取込み動作を終了するとともに、開方向の待機位置を設定した場合には、開閉駆動部45を駆動して、無端ベルト38を、その上辺部38aが段部3から離間する方向に走行するよう回転させる。これにより、規制部材40が、段部3から離間する方向に移動し、突出部29で当接するガイドブロック27および押圧板4を開方向に移動させる。そして、制御部48は、検知板41が開限度位置検知センサ47で検知されると、開閉駆動部45を停止させて、紙幣押圧板4を全開位置で停止する待機状態とする。
【0042】
ここで、操作者が、上記の取込み動作中に、受取部1内に紙幣Sを追加する場合には、付勢バネ30の付勢力に抗して紙幣押圧板4を紙幣保持部19から離間する開方向に手動により移動させる。このとき、取込み動作中であることから、紙幣保持部19と紙幣押圧板4との間に紙幣Sが残存しており、制御部48は、紙幣検知センサ50が紙幣Sを検知している状態で、ガイドブロック27の検知部28を検知する各開閉位置検知センサ51の検知信号から紙幣押圧板4が開方向に移動させられたことを検出する。
【0043】
このように、紙幣検知センサ50が紙幣Sを検知している状態での取込み動作中に、複数の開閉位置検知センサ51が紙幣押圧板4が開方向に移動させられたことを検知すると、制御部48は、取込み動作を中断する。つまり、制御部48は、繰出駆動部23つまり蹴出ローラ11および繰出ローラ12を停止させるとともに強制退避部18を駆動して蹴出ローラ11を紙幣保持面9から退避させる。これにより、装填済みの紙幣Sを平坦な紙幣保持面9のみで支持可能となり、装填済みの紙幣Sが安定状態となる。操作者は、この状態で紙幣Sを基本的にすでに装填済みの紙幣Sと紙幣押圧板4との間に追加装填することになる。なお、取込み動作の中断時、内部処理機構52については、すでに取り込んだ紙幣Sについての処理が終了すると、動作が中断させられることになる。
【0044】
操作者は、取込み動作の中断後、紙幣Sを追加装填すると、紙幣押圧板4を付勢バネ30の付勢力で閉方向に移動させることになり、その後、紙幣押圧板4が紙幣保持面9との間に紙幣Sを保持して停止する状態となる。制御部48は、このときに各開閉位置検知センサ51の検知信号から紙幣押圧板4が閉方向に移動したこと、および停止したことを検出する。すると、制御部48は、紙幣押圧板4が紙幣保持部19との間に紙幣Sを再び保持する状態となったとみなして、強制退避部18の駆動を停止させて蹴出ローラ11を紙幣保持面9から突出させ、その後、内蔵タイマの計時により所定時間待ってから、繰出駆動部23つまり蹴出ローラ11および繰出ローラ12を駆動するとともに、内部処理機構52を駆動して、取込み動作を再開する。
【0045】
なお、取込み動作の終了後、制御部48は、紙幣処理装置を即座に動作可能な動作準備モードとし、その後、開方向の待機位置を設定した状態で所定時間にわたり紙幣検知センサ50が紙幣Sを検知しない場合や、閉方向の待機位置を設定した状態で所定時間にわたり開閉位置検知センサ51が紙幣押圧板4の開方向への移動を検知しない場合や、操作者による何れかの操作が行われない場合等に紙幣処理装置を、即座に動作不可であるものの動作準備モードよりも消費電力の少ない省エネモードに切り替えるようになっているが、この省エネモード中に、紙幣Sの処理を行うにあたっての操作である、紙幣検知センサ50が紙幣Sを検知したこと、あるいは開閉位置検知センサ51が紙幣押圧板4が閉方向へ移動したことを検出すると、省エネモードから動作準備モードに自動復帰させるようになっている。つまり、装置を使い慣れた操作者にとっては、スタート操作よりも先に、計数すべき紙幣を受取部1にセットすることを優先するため、スタート操作前に行われる紙幣装填に関連する操作を検知すると省エネモードから動作準備モードに自動復帰させる。
【0046】
以上に述べた第1実施形態によれば、紙幣検知センサ50が紙幣保持部19と紙幣押圧板4との間に保持された紙幣Sを検知している状態で、保持された紙幣Sを紙幣分離繰出部24による繰り出しを含んで一枚ずつ装置本体2内に取込む取込み動作を行っているときに、紙幣押圧板4が開方向に移動したことを開閉位置検知センサ51が検知すると、制御部48が、取込み動作を中断する。よって、取込み動作中に、例えば紙幣Sを追加装填する場合には、紙幣押圧板4が開方向に移動すると、自動的に取込み動作を停止させることになる。したがって、装置本体2内への紙幣Sの取込み動作中に処理すべき紙幣Sを追加装填するときには、取込み動作が中断した受取部1へ操作者が安心して追加装填でき、追加紙幣Sのセット不良を未然に防ぐことができる。
【0047】
また、制御部48は、取込み動作を中断するときに、装填紙幣Sに振動を与えて捌く作用を与える蹴出ローラ11を、紙幣保持面9から突出しない状態として回転を停止させるため、取込み動作を中断させた後の追加装填時に、集積状態を乱すことなく紙幣Sの追加が可能になる。つまり、蹴出ローラ11を紙幣保持部19の紙幣保持面9に対して紙幣押圧板4側に突出させた状態で停止させてしまうと、紙幣保持部19の紙幣保持面9上にある紙幣Sの端部が紙幣押圧板4側に持ち上がった状態になり、紙幣押圧板4の開放位置によっては紙幣Sを追加装填するときに、装填済みの紙幣Sの集積状態を乱す可能性があるが、蹴出ローラ11が突出しない状態とすることで、装填済みの紙幣Sが安定状態となり、この状態での追加装填が可能になる。
【0048】
また、取込み動作を中断するときに、蹴出ローラ11に加え、繰出ローラ12および分離ローラ13の回転を停止させるため、より安定した状態での追加装填が可能となる。よって、操作者がより安心して追加装填でき、追加紙幣Sのセット不良を未然に防ぐことが確実にできる。
【0049】
また、制御部48は、取込み動作を中断した後に、開閉位置検知センサ51が紙幣押圧板4の閉方向への移動を検知し、紙幣押圧板4が紙幣保持部19との間に紙幣Sを再び保持したとみなせる状態になると、取込み動作を再開するため、取込み動作を中断した後、紙幣Sを追加装填して、紙幣押圧板4を閉方向へ移動させて紙幣保持部19とで紙幣Sを再び保持させれば、取込み動作の中断状態から自動復旧することになり、作業効率を向上させることができる。
【0050】
また、制御部48は、取込み動作の中断後、開閉位置検知センサ51が紙幣押圧板4の閉方向への移動を検知し、紙幣押圧板4が紙幣保持部19との間に紙幣Sを再び保持したとみなせる状態になると、所定時間経過後に、取込み動作を再開するため、直ちに取込み処理を再開するのではなく、ワンテンポ遅れて再開することになり、再開動作までに一拍置くことになる。よって、操作者にさらに安心感を与えることができる。
【0051】
なお、取込み動作を中断するときに、蹴出ローラ11を紙幣保持面9から突出する状態のままとしても良い。この場合、強制退避部18が不要となり構造の簡素化が図れる。
【0052】
また、取込み動作を中断するときに、繰出ローラ12を停止させずに、蹴出ローラ11の回転のみを停止させても良い。この場合、繰出駆動部23と蹴出ローラ11との間に駆動力を切断するクラッチを設けるとともにクラッチ切断時に蹴出ローラ11を制動するブレーキを設けたり、蹴出ローラ11と繰出ローラ12とを別々のモータ(駆動手段)で駆動することになる。
【0053】
また、開閉位置検知センサ51にかえて、ガイド軸26と平行にラックギヤを設け、このラックギヤに噛み合うピニオンギヤを有するロータリエンコーダをガイドブロック27に設けて紙幣押圧板4の開閉方向における移動位置を検知して、紙幣押圧板4の開方向移動、閉方向移動および停止を検出するようにしても良い。
【0054】
また、上記した開方向待機位置戻し機構49は設けなくても良い。この場合、紙幣押圧板4は最も紙幣保持部19側に位置して蹴出ローラ11に当接する状態が待機位置となり、紙幣Sの処理を行うにあたって、操作者が、付勢バネ30の付勢力に抗して紙幣押圧板4を紙幣保持部19から離間する開方向に手動で移動させて紙幣Sを装填し紙幣押圧板4を閉方向に移動させることになる。このため、制御部48は、待機状態から、各開閉位置検知センサ51の検知信号から紙幣押圧板4が開方向に移動させられたことを検出し、その後、紙幣検知センサ50の光路50cの遮断により紙幣Sの装填を検知し、各開閉位置検知センサ51の検知信号から紙幣押圧板4が閉方向に移動したこと、および停止したことを検出すると、紙幣保持部19と紙幣押圧板4との間に紙幣Sが保持された状態となったと判断して、装置本体2内への紙幣Sの取込み動作をスタートさせるスタート操作を受け付ける状態となる。また、紙幣検知センサ50で紙幣Sが検知されない状態となり、取込み動作を終了すると、紙幣押圧板4が最も紙幣保持部19側に位置して蹴出ローラ11に当接する待機位置で待機することになる。よって、制御部48は、省エネモード中に、紙幣押圧板4が開方向へ移動したことの検出を開閉位置検知センサ51の検知信号に基づいて行うと、スタート操作を待たずに省エネモードから動作準備モードに自動復帰するようになる。
【0055】
本発明の第2実施形態に係る紙幣処理装置を主に図3および図4を参照して説明する。
第2実施形態において、受取部60は、装置本体61の上面に設けられた略水平方向に沿って延在する載置部62と、この載置部62の紙幣取込み側の後端位置から略鉛直上方に立ち上がる当接部63とを有している。載置部62は若干後下がりに傾斜している。受取部60は、載置部62に対向可能となるように載置部62の上方で旋回する紙幣押圧板(紙幣押圧部)64を有しており、この紙幣押圧板64は、装置外から上下方向に集積された状態で装填される紙幣を、載置部62との間に保持する。
【0056】
載置部62の上面である紙幣保持面69には、紙幣押圧板64との間に装填された紙幣の紙幣保持面69側のものに接触しこれを分離して後方に蹴り出す蹴出ローラ71が、周面の一部を紙幣保持面69よりも紙幣押圧板64側に突出可能となるように設けられており、この蹴出ローラ71の後側には、蹴出ローラ71に連動して回転する繰出ローラ72と、これに対向配置される分離ローラ73とが設けられている。これら蹴出ローラ71、繰出ローラ72および分離ローラ73は第1実施形態と同様のものであり、繰出ローラ72および分離ローラ73の紙幣取込み位置が、装置本体61の繰出口74とされている。繰出口74には紙幣の取込みを検知する繰出センサ(紙幣検知手段)74aが設けられている。繰出センサ74aは、紙幣の繰り出しが、連続的に行われている状態にあるか、停止した状態にあるかによって、蹴出ローラ71および載置部62からなる紙幣保持部79と紙幣押圧板64との間に保持された紙幣の有無を検知する。
【0057】
繰出ローラ72の回転軸72aにはアーム75がその基端側において揺動可能に支持されており、蹴出ローラ71は、その回転軸71aが、このアーム75の先端側に支持されている。よって、アーム75の揺動により、蹴出ローラ71は、紙幣保持面69から紙幣押圧板4側に出没可能となっている。
【0058】
アーム75には、蹴出ローラ71を紙幣保持面69から突出させる方向に付勢する圧縮コイルバネ等の押圧バネ76の一端が連結されている。この押圧バネ76の他端はバネベース77に支持されており、このバネベース77は、載置部62と紙幣押圧板64とを結ぶ方向に鉛直移動可能となるように図示略のフレームに支持されている。バネベース77には、押圧バネ76およびバネベース77を介して蹴出ローラ71を紙幣保持面69から突出しない状態となるように退避させるソレノイド等の強制退避部78が連結されている。
【0059】
ここで、図中符号83は、繰出ローラ72とこれに常に同期連動して回転する蹴出ローラ71とを回転駆動および制動停止させる、モータ等を含む繰出駆動部を示している。蹴出ローラ71、繰出ローラ72、分離ローラ73、アーム75、押圧バネ76、バネベース77および繰出駆動部83が、紙幣保持部79の近傍に配置され、紙幣保持部79側の紙幣から紙幣を一枚ずつ分離して装置本体61内に繰り出す紙幣分離繰出部84を構成している。
【0060】
当接部63の後方には、分離ローラ73等と平行に水平延在するよう図示略のフレームに支持された支持軸86が設けられており、該支持軸86には、コ字状の連結アーム87が固定されている。この連結アーム87は、支持軸86から径方向外側に延出する腕部88を有しており、その先端に揺動軸89が支持軸86と平行に設けられ、この揺動軸89に、紙幣押圧板64が揺動可能に支持されている。これにより、紙幣押圧板64は支持軸86を中心に公転的に旋回し、揺動軸89を中心に自転的に揺動する。その結果、紙幣押圧板64は、上側に位置するとともに鉛直方向に沿う姿勢となって当接部63に形成された凹部91内に入り込む状態と、下側に位置するとともに略水平方向に沿う姿勢となって載置部62に当接する状態との間で旋回および揺動する。
【0061】
上記した支持軸86、連結アーム87および揺動軸89が、紙幣押圧板64を、載置部62および蹴出ローラ71からなる紙幣保持部79に対し離間・近接可能つまり開閉可能に支持する開閉支持機構(開閉支持手段)92を構成している。紙幣押圧板64は、紙幣押圧板64、連結アーム87および揺動軸89の重量のみによって閉方向に移動して紙幣を上方から押圧し紙幣保持部79とで保持する。
【0062】
そして、第2実施形態においては、支持軸86にその回転角度を検知するロータリエンコーダ(紙幣検知手段,開閉位置検知手段,角度検知手段)95が取り付けられている。このロータリエンコーダ95は、紙幣押圧板64の開閉方向における移動位置および開閉移動方向を検知する。
【0063】
図4に示すように、上記した強制退避部78、繰出駆動部83、繰出センサ74aおよびロータリエンコーダ95は、制御部98に接続されている。なお、装置本体61には、紙幣分離繰出部84により繰り出された紙幣を、搬送しつつ、例えばその種類毎に分類計数して収納等の処理を行う内部処理機構99が設けられており、これも制御部98に接続されている。
【0064】
以下に、第2実施形態における制御部98の制御内容を説明する。
【0065】
第2実施形態において、紙幣押圧板64は、紙幣保持部79側に位置する状態が待機位置となる。そして、紙幣の処理を行うにあたって、操作者が、自重に抗して紙幣押圧板64を紙幣保持部79から離間する開方向に手動で移動させて紙幣を上下方向に集積した状態で紙幣保持部79上に載置して紙幣押圧板64を閉方向に移動させることになる。このため、制御部98は、ロータリエンコーダ95の検知信号から、紙幣押圧板64が開方向に移動させられたことを検出した後、閉方向に移動させられ、停止したことを検出する。すると、制御部98は、紙幣保持部79と紙幣押圧板64との間に紙幣が保持された状態となったと判断して、装置本体61内への紙幣の取込み動作をスタートさせるスタート操作を受け付ける状態となる。操作者により、スタート操作が入力されると、繰出駆動部83および内部処理機構99を駆動する。これにより、紙幣保持部79と紙幣押圧板64との間に保持された紙幣を、紙幣分離繰出部84による繰り出しを含んで紙幣保持部79側から一枚ずつ分離して装置本体61内に繰出口74から取込む取込み動作を行う。
【0066】
つまり、蹴出ローラ71は押圧バネ76の付勢力で紙幣保持面69から突出可能となっており、よって、繰出駆動部83が駆動されると、蹴出ローラ71が紙幣保持部79と紙幣押圧板64との間に保持された紙幣のうちの最も紙幣保持部79側の紙幣を繰出口74に向けて蹴り出すことになり、蹴り出された紙幣が繰出ローラ72に当接し分離ローラ73で分離されて一枚ずつ繰出口74から内部処理機構99に受け渡される。そして、制御部98は、繰出センサ74aが紙幣の取込みを所定時間継続して検知しなくなると、受取部60に紙幣がなくなったと判断して、繰出駆動部83を停止させて、取込み動作を終了する。
【0067】
ここで、操作者が、上記の取込み動作中に、受取部60に紙幣を追加する場合には、紙幣押圧板64を紙幣保持部79から離間する開方向に手動により移動させる。このとき、取込み動作中であることから、紙幣保持部79と紙幣押圧板64との間に紙幣が残存しており、制御部98は、繰出センサ74aが紙幣の繰り出しを検出していることから、受取部1に紙幣が残存している状態であることを検出するとともに、ロータリエンコーダ95の検知信号から紙幣押圧板64が開方向に移動させられたことを検出する。
【0068】
このように、受取部60の残存紙幣を検知している状態での取込み動作中に、ロータリエンコーダ95が紙幣押圧板64が開方向に移動させられたことを検知すると、制御部98は、取込み動作を中断する。つまり、制御部98は、繰出駆動部83つまり蹴出ローラ71および繰出ローラ72を停止させるとともに強制退避部78を駆動して蹴出ローラ71を紙幣保持面69から退避させる。これにより、装填済みの紙幣を平坦な紙幣保持面69のみで支持可能となり、装填済みの紙幣が安定状態となる。操作者は、この状態で紙幣を基本的にすでに装填済みの紙幣と紙幣押圧板64との間に追加装填することになる。なお、取込み動作の中断時、内部処理機構99については、すでに取り込んだ紙幣についての処理が終了すると、動作が中断させられることになる。
【0069】
操作者は、取込み動作の中断後、紙幣を追加装填すると、紙幣押圧板64を閉方向に移動させることになり、その後、紙幣押圧板64が紙幣保持面69との間に紙幣を保持して停止する状態となる。制御部98は、このときにロータリエンコーダ95の検知信号から紙幣押圧板64が閉方向に移動したこと、および停止したことを検出する。すると、制御部98は、紙幣押圧板64が紙幣保持部79との間に紙幣を再び保持する状態となったとみなして、強制退避部78の駆動を停止させて蹴出ローラ71を紙幣保持面69から突出させ、その後、内蔵タイマの計時により所定時間待ってから、繰出駆動部83つまり蹴出ローラ71および繰出ローラ72を駆動するとともに、内部処理機構99を駆動して、取込み動作を再開する。
【0070】
なお、制御部98は、第1実施形態と同様、取込み動作の終了後、紙幣処理装置を動作準備モードとし、その後、所定時間にわたり紙幣押圧板64の開方向への移動がない場合や操作者による何れかの操作が行われない場合等に紙幣処理装置を省エネモードに切り替えるようになっているが、この省エネモード中に、紙幣の処理を行うにあたっての操作である、紙幣押圧板4が開方向へ移動したことの検出をロータリエンコーダ95で行うと、省エネモードから動作準備モードに自動復帰するようになっている。
【0071】
以上に述べた第2実施形態によれば、紙幣押圧板64の紙幣保持部79に対する開閉角度を検知するロータリエンコーダ95で、紙幣押圧板64の開閉方向における移動位置および開閉移動方向を検知するため、紙幣押圧板64の紙幣保持部79に対する開閉方向への移動が、紙幣保持部79に対して直線移動ではなく上記のように旋回移動である場合に、良好に対応できる。
【0072】
本発明の第3実施形態に係る紙幣処理装置を主に図5〜図7を参照して第2実施形態との相違部分を中心に説明する。
【0073】
第3実施形態においては、図5に示すように、紙幣押圧板64が支持部材103に固定されており、この支持部材103が連結アーム87に揺動軸89で支持されている。そして、支持部材103には、当接部63の前面に沿って走行するガイドローラ100が回転可能に取り付けられている。
【0074】
また、図6に示すように、連結アーム87を支持する支持軸86のロータリエンコーダ95とは反対側の端部に係合レバー101が固定されている。係合レバー101には、支持軸86を所定方向に回転付勢する捻りバネからなる付勢バネ102が連結されており、この付勢バネ102は、紙幣押圧板64が閉方向に旋回する方向に支持軸86を付勢する。
【0075】
また、係合レバー101を紙幣押圧板64の開方向に回転させる開閉駆動部105が設けられている。この開閉駆動部105は、モータ106とモータ106の駆動力を伝達する一対のギヤ107,108とギヤ108に固定されて係合レバー101を回転させる作動ピン109と、ギヤ107の回転を検知するロータリエンコーダ110とを有している。
【0076】
開閉駆動部105は、作動ピン109を正逆方向に駆動することにより、係合レバー101、支持軸86および連結アーム87を介して、紙幣押圧板64を開閉方向に駆動する。具体的に、作動ピン109が上方向に移動すると、作動ピン109に上側で当接する係合レバー101と一体の連結アーム87が紙幣押圧板64を開方向に旋回させることになり、作動ピン109が下方向に移動すると、作動ピン109に上側で当接する係合レバー101と一体の連結アーム87が紙幣押圧板64を閉方向に旋回させることになる。
【0077】
以下に、第3実施形態における制御部98の制御内容を説明する。
【0078】
前回の取込み動作終了後、制御部98は、ロータリエンコーダ110の検知信号に基づいて開閉駆動部105を、作動ピン109を上方向の旋回限度位置に位置させ、紙幣押圧板64を開方向の端部位置に位置させた待機状態で停止させており、紙幣押圧板4は全開位置で停止している。この待機状態から、紙幣の処理を行うにあたって、操作者は、紙幣保持部79上に紙幣を上下方向に集積させた状態で装填し、図示略のスタートボタンを操作する。すると、制御部98は、開閉駆動部105を駆動して作動ピン109を下方向に旋回させる。これにより、作動ピン109に当接する係合レバー101と、これに一体の支持軸86および連結アーム87が、付勢バネ102の付勢力等で、紙幣押圧板64を閉方向に旋回させる。係合レバー101の回転中、紙幣押圧板64が紙幣に当接し紙幣を紙幣保持部79とで保持する状態となると、紙幣押圧板64は停止して作動ピン109が係合レバー101から離間しつつ旋回することになる。
【0079】
そして、制御部98は、ロータリエンコーダ110の検知信号に基づいて、作動ピン109が閉方向の限度位置に位置したことを検知すると、開閉駆動部105の駆動つまり作動ピン109の旋回を停止させるとともに、紙幣保持部79と紙幣押圧板64との間に紙幣が保持された状態となったと判断して、繰出駆動部23および内部処理機構99を駆動する。これにより、紙幣保持部79と紙幣押圧板64との間に保持された紙幣を、紙幣分離繰出部84による繰り出しを含んで紙幣保持部79側から一枚ずつ分離して装置本体2内に繰出口22から取込む取込み動作を行う。
【0080】
そして、制御部98は、繰出センサ74aが紙幣の取込みを所定時間継続して検知しなくなると、受取部60に紙幣がなくなったと判断して、繰出駆動部83を停止させ、開閉駆動部105を駆動して、作動ピン109を上方向に旋回させる。これにより、作動ピン109が、係合レバー101に当接して、係合レバー101と、これに一体の支持軸86および連結アーム87とを回転させ、紙幣押圧板64を開方向に旋回させる。ロータリエンコーダ110の検知信号に基づいて開閉駆動部105が作動ピン109を上方向の旋回限度位置に位置させ、紙幣押圧板64を開方向の端部位置に位置させた待機状態となると、制御部98は、開閉駆動部105の駆動を停止させて、取込み動作を終了する。
【0081】
ここで、操作者が、上記の取込み動作中に、受取部60内に紙幣を追加する場合には、付勢バネ102の付勢力に抗して紙幣押圧板64を紙幣保持部79から離間する開方向に手動により移動させる。このとき、取込み動作中であることから、紙幣保持部79と紙幣押圧板64との間に紙幣が残存しており、制御部98は、繰出センサ74aが紙幣の繰り出しを検知していることから、受取部60の紙幣を検知している状態であると判定するとともに、ロータリエンコーダ95の検知信号から紙幣押圧板64が開方向に移動させられたことを検出する。
【0082】
このように、受取部60の残存紙幣を検知している状態での取込み動作中に、ロータリエンコーダ95が紙幣押圧板64が開方向に移動させられたことを検知すると、制御部98は、取込み動作を中断する。つまり、制御部98は、繰出駆動部83つまり蹴出ローラ71および繰出ローラ72を停止させるとともに強制退避部78を駆動して蹴出ローラ71を紙幣保持面69から退避させる。これにより、装填済みの紙幣を平坦な紙幣保持面69のみで支持可能となり、装填済みの紙幣が安定状態となる。操作者は、この状態で紙幣を基本的にすでに装填済みの紙幣と紙幣押圧板64との間に追加装填することになる。なお、取込み動作の中断時、内部処理機構99については、すでに取り込んだ紙幣についての処理が終了すると、動作が中断させられることになる。
【0083】
操作者は、取込み動作の中断後、紙幣を追加装填すると、紙幣押圧板64を付勢バネ102の付勢力等で閉方向に移動させることになり、その後、紙幣押圧板64が紙幣保持面69との間に紙幣を保持して停止する状態となる。制御部98は、このときにロータリエンコーダ95の検知信号から紙幣押圧板64が閉方向に移動したこと、および停止したことを検出する。すると、制御部98は、紙幣押圧板64が紙幣保持部79との間に紙幣を再び保持する状態となったとみなして、強制退避部78の駆動を停止させて蹴出ローラ71を紙幣保持面69から突出させ、その後、内蔵タイマの計時により所定時間待ってから、繰出駆動部83つまり蹴出ローラ71および繰出ローラ72を駆動するとともに、内部処理機構99を駆動して、取込み動作を再開する。
【0084】
以上、本発明の第1実施形態に係る紙幣処理装置、第2実施形態に係る紙幣処理装置および第3実施形態に係る紙幣処理装置のいずれにおいても、蹴出ローラ11,71,71は、揺動可能なアーム15,75,75の先端に、その周面の一部を紙幣保持面9,69,69よりも紙幣押圧板4,64,64側に突出させて設けられ、これを強制退避部18,78,78を駆動することで、紙幣保持面9,69,69から退避させるものとして説明したが、必ずしも、このような構成に限るものではない。すなわち、蹴出ローラ11,71,71の回転軸11a,71a,71aを機体に位置固定に設けるとともに、蹴出ローラ11,71,71を、蹴り出し作用をなす径大部と、紙幣保持面9,69,69よりも紙幣押圧板4,64,64側に突出することのない径小部で構成し、且つ、蹴出ローラ11,71,71の回転位置を検出するセンサを設けることで、制御部48,98,98によって取込み動作を中断させる際、蹴出ローラ11,71,71の径小部が紙幣保持面9,69,69側に位置するように停止制御して、蹴出ローラ11,71,71の径大部を紙幣保持面9,69,69から退避させるようにすることもできる。または、蹴出ローラ11,71,71の回転軸11a,71a,71aを機体に位置固定に設けるとともに、蹴出ローラ11,71,71を、偏心回転するローラ体で構成して、蹴り出し作用をなす径大部分と、紙幣保持面9,69,69よりも紙幣押圧板4,64,64側に突出することのない径小部分として構成し、且つ、蹴出ローラ11,71,71の回転位置を検出するセンサを設けることで、制御部48,98,98によって取込み動作を中断させる際、蹴出ローラ11,71,71の径小部分が紙幣保持面9,69,69側に位置するように停止制御して、蹴出ローラ11,71,71の径大部分を紙幣保持面9,69,69から退避させるようにすることもできる。これらの場合、蹴出ローラ11,71,71の支持機構が簡略化され、また、強制退避部18,78,78が不要となって、構造の簡素化が図れる。
【符号の説明】
【0085】
2,61 装置本体
4,64 紙幣押圧板(紙幣押圧部)
9,69 紙幣保持面
11,71 蹴出ローラ
12,72 繰出ローラ
13,73 分離ローラ
19,79 紙幣保持部
24,84 紙幣分離繰出部
32,92 開閉支持機構(開閉支持手段)
48,98 制御部(制御手段)
50 紙幣検知センサ(紙幣検知手段)
51 開閉位置検知センサ(開閉位置検知手段)
74a 繰出センサ(紙幣検知手段)
95 ロータリエンコーダ(紙幣検知手段,開閉位置検知手段,角度検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣押圧部を開閉可能に支持する開閉支持手段と、
閉方向に移動した前記紙幣押圧部とで紙幣を保持する紙幣保持部と、
該紙幣保持部の近傍に配置され、前記紙幣保持部側の紙幣から紙幣を一枚ずつ分離して装置本体内に繰り出す紙幣分離繰出部と、を備え、
前記紙幣保持部と前記紙幣押圧部との間に保持された紙幣を、前記紙幣分離繰出部による繰り出しを含んで前記紙幣保持部側から一枚ずつ分離して前記装置本体内に取込む取込み動作を行う紙幣処理装置であって、
前記紙幣保持部と前記紙幣押圧部との間に保持された紙幣を検知する紙幣検知手段と、
前記紙幣押圧部の開閉方向における移動位置を検知する開閉位置検知手段と、を有し、
前記紙幣検知手段が前記紙幣保持部と前記紙幣押圧部との間に保持された紙幣を検知している状態での前記取込み動作中に、前記紙幣押圧部が開方向に移動したことを前記開閉位置検知手段が検知すると、前記取込み動作を中断する制御手段を備えることを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
前記紙幣分離繰出部は、前記紙幣保持部の一部を構成するとともに、最も該紙幣保持部側の紙幣と当接して該紙幣を蹴り出す蹴出ローラを有し、
前記制御手段は、前記取込み動作を中断するときには、少なくとも前記蹴出ローラの回転を停止させることを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記紙幣分離繰出部は、最も前記紙幣保持部側の紙幣に当接可能な繰出ローラと、
該繰出ローラと対向配置される分離ローラと、
前記紙幣保持部の一部を構成するとともに、該紙幣保持部の紙幣保持面より前記紙幣押圧部側に突出することで、最も前記紙幣保持部側の紙幣と当接可能に設けられた蹴出ローラと、を有し、
前記制御手段は、前記取込み動作を中断するときには、少なくとも前記蹴出ローラを、前記紙幣保持面から突出しない状態として回転を停止させることを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記取込み動作を中断するときは、さらに前記繰出ローラの回転を停止させることを特徴とする請求項3に記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
前記開閉位置検知手段は、前記紙幣押圧部の前記紙幣保持部に対する開閉角度を検知する角度検知手段であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の紙幣処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記取込み動作を中断した後に、前記開閉位置検知手段が前記紙幣押圧部の閉方向への移動を検知し、前記紙幣押圧部が前記紙幣保持部との間に紙幣を再び保持したとみなせる状態になると、前記取込み動作を再開することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−180993(P2011−180993A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46815(P2010−46815)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(500267170)ローレル機械株式会社 (86)
【Fターム(参考)】