紙葉類堆積装置
【課題】
搬送されてくる紙葉が順次堆積される紙葉の収納枚数を、紙葉の種類、サイズ、状態が異なる場合でも、簡素な構成にて増量を実現した紙葉類堆積装置を提供することにある。
【解決手段】
堆積収納部底面を、紙葉搬入側より遠ざかるに従い、低くなるよう傾けて構成し、また、紙葉類の堆積枚数カウント情報と、紙葉1枚あたりの厚み情報の積で求められた堆積紙葉幅を検出することにより、押板を紙葉の搬入口に近づく方向に移動制御し、紙幣を収納する。
搬送されてくる紙葉が順次堆積される紙葉の収納枚数を、紙葉の種類、サイズ、状態が異なる場合でも、簡素な構成にて増量を実現した紙葉類堆積装置を提供することにある。
【解決手段】
堆積収納部底面を、紙葉搬入側より遠ざかるに従い、低くなるよう傾けて構成し、また、紙葉類の堆積枚数カウント情報と、紙葉1枚あたりの厚み情報の積で求められた堆積紙葉幅を検出することにより、押板を紙葉の搬入口に近づく方向に移動制御し、紙幣を収納する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類堆積装置に関し、特に複数種類の紙葉類を多数枚堆積するのに好適な紙葉類堆積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ATM(現金自動取引装置)等の普及に伴い、紙幣等の紙葉類を堆積する紙葉類堆積装置は、従来の機能や性能を確保しながら、より小型、低コスト、軽量等に対するニーズが高まっている。また、国内だけでなく、外国紙葉も取り扱える装置が求められており、紙葉の折れや破れの度合いも、各国の流通事情からみると、国内よりも悪条件と考えられ、収納枚数の確保に対する悪影響は大きい。また、取り扱う紙葉のサイズが長辺、短辺方向とも大きく異なる場合が多い。そこで、紙葉類堆積装置は小型であるが、紙葉類の収納枚数は大容量であることが求められている。
【0003】
従来、この種の紙葉類堆積装置として、紙葉類堆積装置に堆積する堆積紙葉の増加に伴い、搬送されてくる進入紙葉と堆積済紙葉が干渉しないよう、押板と底面ベルトにより、堆積済紙葉を搬入口から遠ざける方向に移動制御する技術がある(特許文献1参照)。また、堆積した紙葉の先端面位置を検知する先端面検知信号により、押板の動作を制御し、堆積空間を拡大するよう制御するとともに、堆積した紙葉間に過剰な隙間が生じないようする技術がある(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000-187752号公報
【特許文献2】特開平11-71055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1においては、底面ベルト等が配置されることにより、装置内の構成が複雑となり、制御に必要構成物のためのスペース確保が必要となる。よって、部品点数削減ができないために、収納容量を増すための堆積空間を拡大ができない問題がある。また、特許文献2においては、紙葉を連続して多数枚堆積し、かつ、堆積される紙葉の状態がしわ、折れぐせにより、厚みが増え通常よりかさばった場合には、堆積済みの紙葉間に隙間が生じるため、収納枚数が低下する問題がある。また、垂直収納方式の場合は、異なる高さの紙葉下端を整列させることは、別に整列機構が必要である。
【0006】
本発明の目的は、紙葉の種類、サイズ、状態が異なる場合でも、搬送されて順次堆積される紙葉の収納枚数を、簡素な構成にて増量することを実現した紙葉類堆積装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、紙葉類が入る紙葉類入口と、搬送されてくる紙葉類を順次堆積する堆積収納部と、移動可能な押板機構と、該押板の位置を制御する押板機構部を有した紙葉類堆積装置において、前記堆積収納部の底面を、紙葉搬入口側より遠ざかるに従って低くなるよう傾けて構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紙葉の自重により、紙葉は搬入口から遠ざかる方向に移動し、かつ堆積収納部の底面方向に移動するため、紙葉自身の押し込みにより収納枚数を増やすことができ、また搬入されてくる紙葉と、堆積済紙葉が干渉しないよう制御を行う必要もない。さらに、高さ方向が異なるサイズの紙葉が搬入されても、紙葉の下端が整列させることができる。よって、構成部品点数の削減により、装置内の構成が簡素化でき、より収納容量を増すためのスペース確保が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
まず、図1は、本発明の一実施例による現金自動取引装置の外観を示す斜視図である。現金自動取引装置の本体筐体101の上部には、この筐体101の上部正面板101bに設けられたカードスロット102aと連通し利用者のカードを処理し取引明細票を印字して放出するカード・明細票処理機構102と、通帳スロット103aと連通し利用者の通帳を処理する通帳処理機構103とを備えている。また、本体筐体101の下部には、入出金口20から投入あるいは取り出される紙葉(例えば紙幣)を処理する紙幣入出金機1を備えている。また、現金自動取引装置は、取引の内容を表示および入力するタッチパネルなどの顧客操作部105と、入金・出金といった可能な取引種別を利用者に示すディスプレイなどの取引表示部106と、現金自動取引装置全体の制御を司る本体制御部107が備えている。
【0011】
図2は、本装置の制御システムの全体構成を示す機能ブロック図である。制御システムはコンピュータを用いて構成されており、本体筐体101に納められたカード・明細票処理機構102、通帳処理機構103、紙幣入出金機1および顧客操作部105が、バス107aを介して本体制御部107と接続されており、本体制御部107の制御の下に必要な動作を行う。本体制御部107は、インタフェース部107b、係員操作部107c、外部記憶装置107dともバス107aで接続されており、必要なデータのやりとりを行う。係員操作部107cは、係員によって操作され、装着される収納庫の種類や装着位置、各収納庫に収納される金種などの情報を入力する。電源部101eは、本体筐体101の各機構、構成部分に電力を供給する。
【0012】
図3は、紙幣入出金機1の詳細な内部構成を示す。図3において、紙幣入出金機1は、利用者が紙幣の投入・取り出しを行う入出金口20と、紙幣の判別を行う紙幣判別部30と、紙幣を収納する着脱可能な複数種類の収納庫(以下に詳述する。)と、紙幣搬送路50と、これらの機構部を制御するプロセッサなどの制御部35とから構成されている。収納庫の種類としては、入金した紙幣を取引成立までの間一旦収納する一時保管庫40と、リサイクルに使用しない紙幣を収納する入金庫(堆積庫)60と、多種類の入金紙幣を分別して収納可能な分別収納庫70と、入出金兼用のリサイクル庫80などが考えられる。
【0013】
制御部35は、バス107aを介して現金自動取引装置の本体制御部107と接続され、本体制御部107からの指令および紙幣入出金機1の状態検出に応じて紙幣入出金機1の制御を行う。また、紙幣入出金機1の状態を、必要に応じて本体制御部107に送る。また、制御部35は、紙幣入出金機1の中では、入出金口20、紙幣判別部30、一時保管庫40、紙幣搬送路50、入金庫(または堆積庫)60、分別収納庫70、リサイクル庫80等の各ユニットの駆動モータや電磁ソレノイドやセンサと接続され、取引に応じて、センサで状態を監視しながら、各アクチュエータを駆動制御する。
【0014】
図4は、図1の現金自動取引装置における紙幣入出金機1の側面図である。
【0015】
図4に示すように、紙幣入出金機1は、上部紙幣機構1aと下部紙幣機構1bから構成される。上部紙幣機構1aは、入出金口20、紙幣判別部30、一時保管庫40と、紙幣搬送路50から構成される。紙幣搬送路50は、紙幣判別部30を通り、入出金口20と各収納庫60,70,80との間で紙幣を搬送する。入金庫(堆積庫)60、分別収納庫70、リサイクル庫80の各収納庫は、それぞれ共通の筐体外形、共通の位置に設けられた紙幣の出入り口、及び共通の駆動部を持ち、紙幣入出金機1の収容装着部に対して、相互に交換して取り付け可能に構成されている。
【0016】
下部紙幣機構1bは、入金庫(堆積庫)60、分別収納庫70、リサイクル庫80および、各収納庫の前面に配する、開閉可能な搬送路90から構成される。さらに、下部紙幣機構1bは、約50mm程度の厚い鉄板で構成される金庫筐体104の中に実装されており、上部搬送機構1aの搬送路501gと下部紙幣機構1bの搬送路901aとは、連結搬送路501hで接続されている。
【0017】
連結搬送路501hは、下部紙幣機構1bを囲う金庫筐体104の上面鉄板部分で、かつ上部搬送機構1aの搬送路501gと、下部紙幣機構1bの搬送路901aが連結する位置に設けられたスリット内に配置される。上面鉄板部分にあけられたスリットは、紙幣が通過するための長さとこのスリットに搬送されてきた紙幣を挟持して繰り出すよう取り付けられた搬送ローラの幅の大きさを有する。下部紙幣機構1bを金庫筐体で囲わない構成を取る場合に、下部紙幣機構1b上に直接上部搬送機構1aが載置されるときは、必ずしもスリットを設ける必要はない。搬送路50の駆動源となる例えばモータは、上部搬送機構の搬送路と下部紙幣機構の搬送路で別々に設けてもよいが、単一の駆動源を用い、駆動力を搬送路501g−501h−901a間に設けられたギヤで伝達するようにしてもよい。
【0018】
また、紙幣搬送路50は、紙幣判別部30を双方向に通過し、矢印501a〜501hおよび901a〜901eに示す搬送路を経由して、入出金口20、一時保管庫40、入金庫(堆積庫)60、リサイクル庫80、分別収納庫70を接続する。
【0019】
紙幣搬送路50のうち、下部紙幣機構1bにあって、入金庫(堆積庫)60、リサイクル庫80、分別収納庫70の前部にある5ヶ所の紙幣搬送路901a〜eは、一体となって開閉できるようにされた開閉搬送路90を構成しており、係員は、開閉搬送路90を開いて入金庫(堆積庫)60、リサイクル庫80、分別収納庫70の操作を行うことができる。
【0020】
以下に、紙幣堆積装置の構成例と動作について説明する。
【0021】
図5は、堆積庫60の詳細構成を示す。堆積庫60のスタック機構は、堆積庫外の駆動源によってギアを介して駆動され回転するエントランスローラ601と、エントランスローラ601に対向するピンチローラ602と、エントランスローラ601からギアを介して駆動され回転するスタックローラ603と、スタックローラ603に対向するスタックピンチローラ604と、スタックローラ603と同一軸上にあって回転し、弾性部材が図示のように放射状に配置されたシートローラ605、および搬送されてきた紙幣を搬送空間に堆積するよう案内し、かつ堆積済紙幣607の先端面に接するように回転可能に支持されたスタックガイド606から構成されている。
【0022】
また、スタック済み紙幣堆積収納空間608は、天井609と下搬送ガイド610および押板611からなる。下搬送ガイド610は、紙葉搬入側より遠ざかるに従い、低くなるよう傾けて構成している。押板611は、送り込まれてくる紙幣を図の左側に堆積させて左右移動動作可能な押板で図示されていない駆動源(押板用)により駆動されている。押板611は、紙幣の搬送により移動制御を行う。なお押板611aは、下限まで押板611が後退した位置である。
【0023】
満杯検知センサ612は、堆積空間が満杯の際に、押板611の遮蔽によりダークを検知する光センサである。先端検知センサ613は、スタックガイド606の回転により遮蔽され、ダークを検知する光センサである。また、エントランスローラ601の前側には、紙幣入り口614を有している。空検知センサ617は、堆積空間が空の際に、押板611の遮蔽によりダークを検知する光センサである。
【0024】
搬送ベルト901は、図示されていない駆動源により駆動され、相対向する位置に配置され、紙幣を挟持搬送する。挟持された紙幣904は、図の下方向へ搬送される。切替えゲート903は、図示されていない駆動源により軸905を中心に回転する。
【0025】
次に、紙幣堆積動作における紙幣の動きについて説明する。搬送ベルト901によって挟持搬送されてきた紙幣904は、切替えゲート903により、紙幣堆積装置60に案内され、矢印902aの方向に搬送され、入り口614を経て、回転するエントランスローラ601とピンチローラ602間に送り込まれる。エントランスローラ601とピンチローラ603の間に送り込まれた紙幣は、スタックローラ603とスタックピンチローラ604間に送り込まれる。次にスタックローラ603とスタックピンチローラ604による搬送力で紙幣は、スタックガイド606に沿って進み、天井609にあたり、後端をシートローラ605に掻き落とされ、既に堆積された紙幣607の前に1枚ずつ堆積される。紙幣堆積収納空間608に進入してきた紙幣618は、紙幣618の自重と、シートローラ605が紙幣後端を掻き落とす力により、A方向に紙幣が移動することにより紙幣の堆積を行うものである。
【0026】
下搬送ガイド610を、紙葉搬入側より遠ざかるに従い、低くなるよう傾けて構成したことにより、堆積された紙幣の前倒れを抑制し、かつ異なる高さの紙幣下端を整列させることが容易となる。すなわち、垂線に対する下搬送ガイド610の傾斜角θが小さいと紙幣が前倒れし易くなり、傾斜角が大きいと堆積庫の限界高さに入りうる紙幣堆積収納空間608の幅が狭く限られてしまうため、収納効率が低下する。従来の堆積庫のような水平収納方式の場合、収納庫の下にベルトを設けて、ローラを駆動させて紙幣を押し込んでいる。また、従来の垂直収納方式の場合は、異なる高さの紙幣下端を整列させることができない。しかし、堆積収納部を斜めにすることで前倒れを防止できるため、余分な構成である下部のベルトを無くし、構造を単純化できるため、紙幣堆積収納空間608は広く構成することが可能になる。
【0027】
次に、紙幣入出金機1の紙幣収納動作中の押板位置制御動作について、図6〜10及び押板動作のフローチャート図11を用いて説明する。
【0028】
図6に示すように、紙幣が堆積可能な空間は、先端検知センサ613の切り替わり点まで押板611が前進した位置から、押板611が下限位置まで後退した位置の間であり、その最大幅は、本実施例の場合200mmである。
【0029】
紙幣収納動作開始直前には、収納準備として、図7に示すように、先端検知センサ613が、スタックガイド606の遮蔽によりダークからライトへの切り替わり点を検知する位置まで押板611は後退し、その位置からさらに25mm後退する。本押板後退制御は、収納する紙幣の進入口空間を確保し、紙幣間で干渉(ジャム)することがないよう、また紙幣が倒れないように行う制御である。よって押板611の後退距離は、紙幣が干渉せず、また倒れずに収納できるのであれば、25mmより大きくても小さくてもよい。
【0030】
また、スタックガイド606は、先端検知センサ613の切り替わり点において、紙幣を押さえることができるようスタックガイドバネ615で付勢されている。この荷重は、押板611により紙幣が圧縮された場合にも、搬送されてきた紙幣が、スタックガイド606と堆積済紙幣607の間に抵抗なく入り込めるようにし、かつ先端検知センサ613のダーク、ライトの動作を確実に行えるよう設定する。このスタックガイドバネ615の荷重を大きくした場合は、押板611により圧縮される堆積済紙幣607と、スタックガイド606間の圧力が高くなるため、搬送されてきた紙幣は、その圧力に負け、収納空間に入ることができない。または、堆積済紙幣607と、スタックガイド606に挟まれるため、シートローラ605が搬送されてきた紙幣を掻き落とすができずに、次に搬送されてくる紙幣の抵抗になる。従って、スタックガイドバネ615の荷重は、前記押板の移動動作に必要な荷重より弱く設定することにより、次に搬送される紙幣が堆積庫に入りやすくなる。
【0031】
次に、紙幣収納動作が開始され、順次紙幣を収納し始めると、図8に示すように、押板611はさらに収納紙幣1枚辺り0.2mm後退する。本押板後退制御は、収納準備時に押板が大きく後退するよう設定した場合には、紙幣の自重による圧縮効果により、後退紙幣堆積空間確保ができるため、無くてもよい。
【0032】
最後に、紙幣収納動作終了時には、図9に示す位置に押板611は前進する。押板の前進距離は、記憶装置に記憶されているカウント情報と、記憶装置に記憶されている紙幣1枚当りの厚み情報によって決まる。例えば、紙幣1枚あたりの厚み情報が0.14mm、カウント情報が200枚である場合、押板611は、堆積済みの紙幣枚数200枚と紙幣1枚当りの厚み0.14mmの積を、紙幣堆積空間幅200mmから引いた位置、つまり図9に示す押板下限位置から172mmの位置まで前進する。ここで、記憶装置は、現金自動取引装置101の外部記憶装置107dであってもよく、図3には図示されていないが、紙幣入出金機1に備えられていてもよい。また、紙幣の枚数は、例えば紙幣判別部30が計数(カウント)し、その計数結果を記憶装置に記憶してもよい。
【0033】
なお、紙幣には、折れ目やしわのない新券、流通して多少の折れ目やしわのある流通券、さらに強い折れ目やカールぐせのついた折れぐせ券、しわくちゃになったしわ券などが存在する。上記の紙幣を積層して収納した場合、新券を積層した場合は約0.1mm/枚と堆積高さは最小である。流通券では、約0.11〜0.15mm/枚、しわ券では、約0.2〜0.5mm/枚、折れぐせ券では最大20mm/枚となることがある。しかし、積層した紙幣は、押しつぶすことにより、紙幣本来の厚みに近づく。これらの紙幣に対して安定して収納枚数増量を確保するためには、カウント情報と、紙幣1枚当りの厚み情報の積で求められた堆積紙葉幅から、押板を紙葉の搬入口に近づく方向に移動制御することにより、堆積済み紙幣を検出した堆積紙葉幅、つまりしわ、折れぐせの少ない紙幣本来の厚みでの堆積に必要な真の堆積空間に紙幣を押し戻すことである。
【0034】
ここで、紙幣1枚あたりの厚み情報は、取り扱う紙幣の厚みに応じて可変に設定可能であり、運用前に、取り扱う紙幣の厚み情報を予め設定して記憶しておいても良い。また、上記紙幣1枚あたりの厚みは、紙幣判別部30等に紙幣厚み検出部を設けて厚みを測定することにより得られた紙幣1枚あたりの厚み情報を用いれば、より実際の紙幣厚さに対応した制御が可能となる。
【0035】
また、次の取引により搬入される紙幣を収納する場合、まず収納準備として、搬送されてくる紙幣が、スタックガイド606と堆積済紙幣607の間に抵抗なく入り込めるよう、先端検知センサ613がスタックガイド606の遮蔽によりダークからライトへの切り替わり点を検知する位置まで押板611は後退する。図10に押板611が後退した様子を示す。図10において、押しつぶされた堆積済紙幣が、しわ・折れぐせが大きい紙幣の場合は、図9から図10の状態になったとき、堆積紙葉の厚さが、紙幣本来の厚さよりも厚くなる。しかし、図9に示すように一度押しつぶしを行うことにより、堆積済の紙葉間に生じる隙間、また堆積される紙葉のしわや折れぐせによるかさばりによる厚み増加幅分を減らすことができるため、押しつぶしを行わない場合より、堆積紙葉幅を狭くすることができる、つまり、しわや折れぐせの少ない紙幣本来の厚みでの堆積に必要な真の堆積空間に近づけることができるため、収納枚数の増量が可能となる。
【0036】
図11は、図8〜図10における堆積庫の紙幣収納動作を示すフローチャートである。図8に示すように紙幣が堆積庫に収納され、紙幣収納が完了すると(ステップ1010)、制御部35は、収納された紙幣の枚数から押板611が移動すべき距離を計算する(ステップ1020)。詳細は上述する図9の説明で示した。そして、制御部35は、押板駆動モータに対して駆動命令を行う(ステップ1030)。すると、押板611は、ステップ1020で算出された距離を移動(つまり、スタックガイド606側に前進)する(ステップ1040)。押板611が、ステップ1020で算出された距離を移動すると、制御部35は、押板駆動モータに対して駆動停止命令を行う(ステップ1050)。上記各ステップによって、図9に示す状態になる。
【0037】
また、図9の状態において、次の取引によりさらに紙幣が収納される場合は、図10に示すように、押板611が所定距離移動(つまり、スタックガイド606から離れる側に後退)する(ステップ1060)。ここで、押板611が移動(後退)することにより満杯検知センサ612がダークになると、堆積庫内に紙幣が満杯であることを検知して(ステップ1070)、制御部35は紙幣が満杯であるという情報を取得する(ステップ1080)。そして、その情報を本体制御部107に送信し、係員操作部107cはその旨を表示するなどして、係員に対して、堆積庫の回収や交換を促す表示を行う。
【0038】
本実施例により、前記堆積収納部底面(押板611)を、紙幣搬入側より遠ざかるに従って低くなるよう傾けて構成したことにより、紙幣の自重により、紙幣は搬入口から遠ざかる方向に移動し、かつ堆積収納部の底面方向に移動するため、紙幣自身の押し込みにより収納枚数を増やすことができ、また搬入されてくる紙幣と、堆積済紙幣が干渉しないよう制御を行う必要もない。さらに、高さ方向が異なるサイズの紙幣が搬入されても、紙幣の下端が整列させることができる。よって、構成部品点数の削減により、装置内の構成が簡素化でき、より収納容量を増すためのスペース確保が容易となり、かつ小型、低コスト、軽量の紙葉類堆積装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例を適用した現金自動取引装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1における現金自動取引装置の制御関係を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施例に係る紙幣入出金機構の制御関係を示すブロック図である。
【図4】紙幣入出金機構を示す側面図である。
【図5】図4における入金庫(堆積庫)の側面図である。
【図6】入金庫(堆積庫)の側面図(紙幣なし図)である。
【図7】入金庫(堆積庫)の側面図(収納準備状態図)である。
【図8】入金庫(堆積庫)の側面図(200枚収納状態図)である。
【図9】入金庫(堆積庫)の側面図(収納終了状態図)である。
【図10】入金庫(堆積庫)の側面図(紙幣圧縮後収納準備位置図)である。
【図11】入金庫(堆積庫)の押板動作のフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1:紙幣入出金機、1a:上部紙幣機構、1b:下部紙幣機構、20:入出金口、20a:紙幣スロット、30:紙幣判別部、35:制御部、40:一時保管庫、50:紙幣搬送路、60:入金庫、61:第一の分別収納庫、70:第二の分別収納庫、80:リサイクル庫、81:装填・回収庫、90:開閉搬送路、101:現金自動取引装置本体(筐体)、101b:正面板、104:金庫筐体、107:本体制御部、401:回転ドラム、402:巻き取り軸、403:誘導テープ、501a〜501h、901a〜901e:紙幣搬送路、502〜504:切り替えゲート、605:シートローラ、606:スタックガイド、607:堆積済紙幣、608:堆積収納空間、610:下搬送ガイド、611:押板、615:スタックガイドバネ
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類堆積装置に関し、特に複数種類の紙葉類を多数枚堆積するのに好適な紙葉類堆積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ATM(現金自動取引装置)等の普及に伴い、紙幣等の紙葉類を堆積する紙葉類堆積装置は、従来の機能や性能を確保しながら、より小型、低コスト、軽量等に対するニーズが高まっている。また、国内だけでなく、外国紙葉も取り扱える装置が求められており、紙葉の折れや破れの度合いも、各国の流通事情からみると、国内よりも悪条件と考えられ、収納枚数の確保に対する悪影響は大きい。また、取り扱う紙葉のサイズが長辺、短辺方向とも大きく異なる場合が多い。そこで、紙葉類堆積装置は小型であるが、紙葉類の収納枚数は大容量であることが求められている。
【0003】
従来、この種の紙葉類堆積装置として、紙葉類堆積装置に堆積する堆積紙葉の増加に伴い、搬送されてくる進入紙葉と堆積済紙葉が干渉しないよう、押板と底面ベルトにより、堆積済紙葉を搬入口から遠ざける方向に移動制御する技術がある(特許文献1参照)。また、堆積した紙葉の先端面位置を検知する先端面検知信号により、押板の動作を制御し、堆積空間を拡大するよう制御するとともに、堆積した紙葉間に過剰な隙間が生じないようする技術がある(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000-187752号公報
【特許文献2】特開平11-71055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1においては、底面ベルト等が配置されることにより、装置内の構成が複雑となり、制御に必要構成物のためのスペース確保が必要となる。よって、部品点数削減ができないために、収納容量を増すための堆積空間を拡大ができない問題がある。また、特許文献2においては、紙葉を連続して多数枚堆積し、かつ、堆積される紙葉の状態がしわ、折れぐせにより、厚みが増え通常よりかさばった場合には、堆積済みの紙葉間に隙間が生じるため、収納枚数が低下する問題がある。また、垂直収納方式の場合は、異なる高さの紙葉下端を整列させることは、別に整列機構が必要である。
【0006】
本発明の目的は、紙葉の種類、サイズ、状態が異なる場合でも、搬送されて順次堆積される紙葉の収納枚数を、簡素な構成にて増量することを実現した紙葉類堆積装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、紙葉類が入る紙葉類入口と、搬送されてくる紙葉類を順次堆積する堆積収納部と、移動可能な押板機構と、該押板の位置を制御する押板機構部を有した紙葉類堆積装置において、前記堆積収納部の底面を、紙葉搬入口側より遠ざかるに従って低くなるよう傾けて構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紙葉の自重により、紙葉は搬入口から遠ざかる方向に移動し、かつ堆積収納部の底面方向に移動するため、紙葉自身の押し込みにより収納枚数を増やすことができ、また搬入されてくる紙葉と、堆積済紙葉が干渉しないよう制御を行う必要もない。さらに、高さ方向が異なるサイズの紙葉が搬入されても、紙葉の下端が整列させることができる。よって、構成部品点数の削減により、装置内の構成が簡素化でき、より収納容量を増すためのスペース確保が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
まず、図1は、本発明の一実施例による現金自動取引装置の外観を示す斜視図である。現金自動取引装置の本体筐体101の上部には、この筐体101の上部正面板101bに設けられたカードスロット102aと連通し利用者のカードを処理し取引明細票を印字して放出するカード・明細票処理機構102と、通帳スロット103aと連通し利用者の通帳を処理する通帳処理機構103とを備えている。また、本体筐体101の下部には、入出金口20から投入あるいは取り出される紙葉(例えば紙幣)を処理する紙幣入出金機1を備えている。また、現金自動取引装置は、取引の内容を表示および入力するタッチパネルなどの顧客操作部105と、入金・出金といった可能な取引種別を利用者に示すディスプレイなどの取引表示部106と、現金自動取引装置全体の制御を司る本体制御部107が備えている。
【0011】
図2は、本装置の制御システムの全体構成を示す機能ブロック図である。制御システムはコンピュータを用いて構成されており、本体筐体101に納められたカード・明細票処理機構102、通帳処理機構103、紙幣入出金機1および顧客操作部105が、バス107aを介して本体制御部107と接続されており、本体制御部107の制御の下に必要な動作を行う。本体制御部107は、インタフェース部107b、係員操作部107c、外部記憶装置107dともバス107aで接続されており、必要なデータのやりとりを行う。係員操作部107cは、係員によって操作され、装着される収納庫の種類や装着位置、各収納庫に収納される金種などの情報を入力する。電源部101eは、本体筐体101の各機構、構成部分に電力を供給する。
【0012】
図3は、紙幣入出金機1の詳細な内部構成を示す。図3において、紙幣入出金機1は、利用者が紙幣の投入・取り出しを行う入出金口20と、紙幣の判別を行う紙幣判別部30と、紙幣を収納する着脱可能な複数種類の収納庫(以下に詳述する。)と、紙幣搬送路50と、これらの機構部を制御するプロセッサなどの制御部35とから構成されている。収納庫の種類としては、入金した紙幣を取引成立までの間一旦収納する一時保管庫40と、リサイクルに使用しない紙幣を収納する入金庫(堆積庫)60と、多種類の入金紙幣を分別して収納可能な分別収納庫70と、入出金兼用のリサイクル庫80などが考えられる。
【0013】
制御部35は、バス107aを介して現金自動取引装置の本体制御部107と接続され、本体制御部107からの指令および紙幣入出金機1の状態検出に応じて紙幣入出金機1の制御を行う。また、紙幣入出金機1の状態を、必要に応じて本体制御部107に送る。また、制御部35は、紙幣入出金機1の中では、入出金口20、紙幣判別部30、一時保管庫40、紙幣搬送路50、入金庫(または堆積庫)60、分別収納庫70、リサイクル庫80等の各ユニットの駆動モータや電磁ソレノイドやセンサと接続され、取引に応じて、センサで状態を監視しながら、各アクチュエータを駆動制御する。
【0014】
図4は、図1の現金自動取引装置における紙幣入出金機1の側面図である。
【0015】
図4に示すように、紙幣入出金機1は、上部紙幣機構1aと下部紙幣機構1bから構成される。上部紙幣機構1aは、入出金口20、紙幣判別部30、一時保管庫40と、紙幣搬送路50から構成される。紙幣搬送路50は、紙幣判別部30を通り、入出金口20と各収納庫60,70,80との間で紙幣を搬送する。入金庫(堆積庫)60、分別収納庫70、リサイクル庫80の各収納庫は、それぞれ共通の筐体外形、共通の位置に設けられた紙幣の出入り口、及び共通の駆動部を持ち、紙幣入出金機1の収容装着部に対して、相互に交換して取り付け可能に構成されている。
【0016】
下部紙幣機構1bは、入金庫(堆積庫)60、分別収納庫70、リサイクル庫80および、各収納庫の前面に配する、開閉可能な搬送路90から構成される。さらに、下部紙幣機構1bは、約50mm程度の厚い鉄板で構成される金庫筐体104の中に実装されており、上部搬送機構1aの搬送路501gと下部紙幣機構1bの搬送路901aとは、連結搬送路501hで接続されている。
【0017】
連結搬送路501hは、下部紙幣機構1bを囲う金庫筐体104の上面鉄板部分で、かつ上部搬送機構1aの搬送路501gと、下部紙幣機構1bの搬送路901aが連結する位置に設けられたスリット内に配置される。上面鉄板部分にあけられたスリットは、紙幣が通過するための長さとこのスリットに搬送されてきた紙幣を挟持して繰り出すよう取り付けられた搬送ローラの幅の大きさを有する。下部紙幣機構1bを金庫筐体で囲わない構成を取る場合に、下部紙幣機構1b上に直接上部搬送機構1aが載置されるときは、必ずしもスリットを設ける必要はない。搬送路50の駆動源となる例えばモータは、上部搬送機構の搬送路と下部紙幣機構の搬送路で別々に設けてもよいが、単一の駆動源を用い、駆動力を搬送路501g−501h−901a間に設けられたギヤで伝達するようにしてもよい。
【0018】
また、紙幣搬送路50は、紙幣判別部30を双方向に通過し、矢印501a〜501hおよび901a〜901eに示す搬送路を経由して、入出金口20、一時保管庫40、入金庫(堆積庫)60、リサイクル庫80、分別収納庫70を接続する。
【0019】
紙幣搬送路50のうち、下部紙幣機構1bにあって、入金庫(堆積庫)60、リサイクル庫80、分別収納庫70の前部にある5ヶ所の紙幣搬送路901a〜eは、一体となって開閉できるようにされた開閉搬送路90を構成しており、係員は、開閉搬送路90を開いて入金庫(堆積庫)60、リサイクル庫80、分別収納庫70の操作を行うことができる。
【0020】
以下に、紙幣堆積装置の構成例と動作について説明する。
【0021】
図5は、堆積庫60の詳細構成を示す。堆積庫60のスタック機構は、堆積庫外の駆動源によってギアを介して駆動され回転するエントランスローラ601と、エントランスローラ601に対向するピンチローラ602と、エントランスローラ601からギアを介して駆動され回転するスタックローラ603と、スタックローラ603に対向するスタックピンチローラ604と、スタックローラ603と同一軸上にあって回転し、弾性部材が図示のように放射状に配置されたシートローラ605、および搬送されてきた紙幣を搬送空間に堆積するよう案内し、かつ堆積済紙幣607の先端面に接するように回転可能に支持されたスタックガイド606から構成されている。
【0022】
また、スタック済み紙幣堆積収納空間608は、天井609と下搬送ガイド610および押板611からなる。下搬送ガイド610は、紙葉搬入側より遠ざかるに従い、低くなるよう傾けて構成している。押板611は、送り込まれてくる紙幣を図の左側に堆積させて左右移動動作可能な押板で図示されていない駆動源(押板用)により駆動されている。押板611は、紙幣の搬送により移動制御を行う。なお押板611aは、下限まで押板611が後退した位置である。
【0023】
満杯検知センサ612は、堆積空間が満杯の際に、押板611の遮蔽によりダークを検知する光センサである。先端検知センサ613は、スタックガイド606の回転により遮蔽され、ダークを検知する光センサである。また、エントランスローラ601の前側には、紙幣入り口614を有している。空検知センサ617は、堆積空間が空の際に、押板611の遮蔽によりダークを検知する光センサである。
【0024】
搬送ベルト901は、図示されていない駆動源により駆動され、相対向する位置に配置され、紙幣を挟持搬送する。挟持された紙幣904は、図の下方向へ搬送される。切替えゲート903は、図示されていない駆動源により軸905を中心に回転する。
【0025】
次に、紙幣堆積動作における紙幣の動きについて説明する。搬送ベルト901によって挟持搬送されてきた紙幣904は、切替えゲート903により、紙幣堆積装置60に案内され、矢印902aの方向に搬送され、入り口614を経て、回転するエントランスローラ601とピンチローラ602間に送り込まれる。エントランスローラ601とピンチローラ603の間に送り込まれた紙幣は、スタックローラ603とスタックピンチローラ604間に送り込まれる。次にスタックローラ603とスタックピンチローラ604による搬送力で紙幣は、スタックガイド606に沿って進み、天井609にあたり、後端をシートローラ605に掻き落とされ、既に堆積された紙幣607の前に1枚ずつ堆積される。紙幣堆積収納空間608に進入してきた紙幣618は、紙幣618の自重と、シートローラ605が紙幣後端を掻き落とす力により、A方向に紙幣が移動することにより紙幣の堆積を行うものである。
【0026】
下搬送ガイド610を、紙葉搬入側より遠ざかるに従い、低くなるよう傾けて構成したことにより、堆積された紙幣の前倒れを抑制し、かつ異なる高さの紙幣下端を整列させることが容易となる。すなわち、垂線に対する下搬送ガイド610の傾斜角θが小さいと紙幣が前倒れし易くなり、傾斜角が大きいと堆積庫の限界高さに入りうる紙幣堆積収納空間608の幅が狭く限られてしまうため、収納効率が低下する。従来の堆積庫のような水平収納方式の場合、収納庫の下にベルトを設けて、ローラを駆動させて紙幣を押し込んでいる。また、従来の垂直収納方式の場合は、異なる高さの紙幣下端を整列させることができない。しかし、堆積収納部を斜めにすることで前倒れを防止できるため、余分な構成である下部のベルトを無くし、構造を単純化できるため、紙幣堆積収納空間608は広く構成することが可能になる。
【0027】
次に、紙幣入出金機1の紙幣収納動作中の押板位置制御動作について、図6〜10及び押板動作のフローチャート図11を用いて説明する。
【0028】
図6に示すように、紙幣が堆積可能な空間は、先端検知センサ613の切り替わり点まで押板611が前進した位置から、押板611が下限位置まで後退した位置の間であり、その最大幅は、本実施例の場合200mmである。
【0029】
紙幣収納動作開始直前には、収納準備として、図7に示すように、先端検知センサ613が、スタックガイド606の遮蔽によりダークからライトへの切り替わり点を検知する位置まで押板611は後退し、その位置からさらに25mm後退する。本押板後退制御は、収納する紙幣の進入口空間を確保し、紙幣間で干渉(ジャム)することがないよう、また紙幣が倒れないように行う制御である。よって押板611の後退距離は、紙幣が干渉せず、また倒れずに収納できるのであれば、25mmより大きくても小さくてもよい。
【0030】
また、スタックガイド606は、先端検知センサ613の切り替わり点において、紙幣を押さえることができるようスタックガイドバネ615で付勢されている。この荷重は、押板611により紙幣が圧縮された場合にも、搬送されてきた紙幣が、スタックガイド606と堆積済紙幣607の間に抵抗なく入り込めるようにし、かつ先端検知センサ613のダーク、ライトの動作を確実に行えるよう設定する。このスタックガイドバネ615の荷重を大きくした場合は、押板611により圧縮される堆積済紙幣607と、スタックガイド606間の圧力が高くなるため、搬送されてきた紙幣は、その圧力に負け、収納空間に入ることができない。または、堆積済紙幣607と、スタックガイド606に挟まれるため、シートローラ605が搬送されてきた紙幣を掻き落とすができずに、次に搬送されてくる紙幣の抵抗になる。従って、スタックガイドバネ615の荷重は、前記押板の移動動作に必要な荷重より弱く設定することにより、次に搬送される紙幣が堆積庫に入りやすくなる。
【0031】
次に、紙幣収納動作が開始され、順次紙幣を収納し始めると、図8に示すように、押板611はさらに収納紙幣1枚辺り0.2mm後退する。本押板後退制御は、収納準備時に押板が大きく後退するよう設定した場合には、紙幣の自重による圧縮効果により、後退紙幣堆積空間確保ができるため、無くてもよい。
【0032】
最後に、紙幣収納動作終了時には、図9に示す位置に押板611は前進する。押板の前進距離は、記憶装置に記憶されているカウント情報と、記憶装置に記憶されている紙幣1枚当りの厚み情報によって決まる。例えば、紙幣1枚あたりの厚み情報が0.14mm、カウント情報が200枚である場合、押板611は、堆積済みの紙幣枚数200枚と紙幣1枚当りの厚み0.14mmの積を、紙幣堆積空間幅200mmから引いた位置、つまり図9に示す押板下限位置から172mmの位置まで前進する。ここで、記憶装置は、現金自動取引装置101の外部記憶装置107dであってもよく、図3には図示されていないが、紙幣入出金機1に備えられていてもよい。また、紙幣の枚数は、例えば紙幣判別部30が計数(カウント)し、その計数結果を記憶装置に記憶してもよい。
【0033】
なお、紙幣には、折れ目やしわのない新券、流通して多少の折れ目やしわのある流通券、さらに強い折れ目やカールぐせのついた折れぐせ券、しわくちゃになったしわ券などが存在する。上記の紙幣を積層して収納した場合、新券を積層した場合は約0.1mm/枚と堆積高さは最小である。流通券では、約0.11〜0.15mm/枚、しわ券では、約0.2〜0.5mm/枚、折れぐせ券では最大20mm/枚となることがある。しかし、積層した紙幣は、押しつぶすことにより、紙幣本来の厚みに近づく。これらの紙幣に対して安定して収納枚数増量を確保するためには、カウント情報と、紙幣1枚当りの厚み情報の積で求められた堆積紙葉幅から、押板を紙葉の搬入口に近づく方向に移動制御することにより、堆積済み紙幣を検出した堆積紙葉幅、つまりしわ、折れぐせの少ない紙幣本来の厚みでの堆積に必要な真の堆積空間に紙幣を押し戻すことである。
【0034】
ここで、紙幣1枚あたりの厚み情報は、取り扱う紙幣の厚みに応じて可変に設定可能であり、運用前に、取り扱う紙幣の厚み情報を予め設定して記憶しておいても良い。また、上記紙幣1枚あたりの厚みは、紙幣判別部30等に紙幣厚み検出部を設けて厚みを測定することにより得られた紙幣1枚あたりの厚み情報を用いれば、より実際の紙幣厚さに対応した制御が可能となる。
【0035】
また、次の取引により搬入される紙幣を収納する場合、まず収納準備として、搬送されてくる紙幣が、スタックガイド606と堆積済紙幣607の間に抵抗なく入り込めるよう、先端検知センサ613がスタックガイド606の遮蔽によりダークからライトへの切り替わり点を検知する位置まで押板611は後退する。図10に押板611が後退した様子を示す。図10において、押しつぶされた堆積済紙幣が、しわ・折れぐせが大きい紙幣の場合は、図9から図10の状態になったとき、堆積紙葉の厚さが、紙幣本来の厚さよりも厚くなる。しかし、図9に示すように一度押しつぶしを行うことにより、堆積済の紙葉間に生じる隙間、また堆積される紙葉のしわや折れぐせによるかさばりによる厚み増加幅分を減らすことができるため、押しつぶしを行わない場合より、堆積紙葉幅を狭くすることができる、つまり、しわや折れぐせの少ない紙幣本来の厚みでの堆積に必要な真の堆積空間に近づけることができるため、収納枚数の増量が可能となる。
【0036】
図11は、図8〜図10における堆積庫の紙幣収納動作を示すフローチャートである。図8に示すように紙幣が堆積庫に収納され、紙幣収納が完了すると(ステップ1010)、制御部35は、収納された紙幣の枚数から押板611が移動すべき距離を計算する(ステップ1020)。詳細は上述する図9の説明で示した。そして、制御部35は、押板駆動モータに対して駆動命令を行う(ステップ1030)。すると、押板611は、ステップ1020で算出された距離を移動(つまり、スタックガイド606側に前進)する(ステップ1040)。押板611が、ステップ1020で算出された距離を移動すると、制御部35は、押板駆動モータに対して駆動停止命令を行う(ステップ1050)。上記各ステップによって、図9に示す状態になる。
【0037】
また、図9の状態において、次の取引によりさらに紙幣が収納される場合は、図10に示すように、押板611が所定距離移動(つまり、スタックガイド606から離れる側に後退)する(ステップ1060)。ここで、押板611が移動(後退)することにより満杯検知センサ612がダークになると、堆積庫内に紙幣が満杯であることを検知して(ステップ1070)、制御部35は紙幣が満杯であるという情報を取得する(ステップ1080)。そして、その情報を本体制御部107に送信し、係員操作部107cはその旨を表示するなどして、係員に対して、堆積庫の回収や交換を促す表示を行う。
【0038】
本実施例により、前記堆積収納部底面(押板611)を、紙幣搬入側より遠ざかるに従って低くなるよう傾けて構成したことにより、紙幣の自重により、紙幣は搬入口から遠ざかる方向に移動し、かつ堆積収納部の底面方向に移動するため、紙幣自身の押し込みにより収納枚数を増やすことができ、また搬入されてくる紙幣と、堆積済紙幣が干渉しないよう制御を行う必要もない。さらに、高さ方向が異なるサイズの紙幣が搬入されても、紙幣の下端が整列させることができる。よって、構成部品点数の削減により、装置内の構成が簡素化でき、より収納容量を増すためのスペース確保が容易となり、かつ小型、低コスト、軽量の紙葉類堆積装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例を適用した現金自動取引装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1における現金自動取引装置の制御関係を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施例に係る紙幣入出金機構の制御関係を示すブロック図である。
【図4】紙幣入出金機構を示す側面図である。
【図5】図4における入金庫(堆積庫)の側面図である。
【図6】入金庫(堆積庫)の側面図(紙幣なし図)である。
【図7】入金庫(堆積庫)の側面図(収納準備状態図)である。
【図8】入金庫(堆積庫)の側面図(200枚収納状態図)である。
【図9】入金庫(堆積庫)の側面図(収納終了状態図)である。
【図10】入金庫(堆積庫)の側面図(紙幣圧縮後収納準備位置図)である。
【図11】入金庫(堆積庫)の押板動作のフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1:紙幣入出金機、1a:上部紙幣機構、1b:下部紙幣機構、20:入出金口、20a:紙幣スロット、30:紙幣判別部、35:制御部、40:一時保管庫、50:紙幣搬送路、60:入金庫、61:第一の分別収納庫、70:第二の分別収納庫、80:リサイクル庫、81:装填・回収庫、90:開閉搬送路、101:現金自動取引装置本体(筐体)、101b:正面板、104:金庫筐体、107:本体制御部、401:回転ドラム、402:巻き取り軸、403:誘導テープ、501a〜501h、901a〜901e:紙幣搬送路、502〜504:切り替えゲート、605:シートローラ、606:スタックガイド、607:堆積済紙幣、608:堆積収納空間、610:下搬送ガイド、611:押板、615:スタックガイドバネ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される紙葉類を堆積する紙葉類堆積装置において、
前記搬送される紙葉類が入る紙葉類入口と、
該入口から入る紙葉類を堆積する堆積収納部と、
前記堆積収納部内に設置された移動可能な押板と、
該押板の位置を制御する制御部とを備え、
前記堆積収納部を、前記紙葉類入口から遠ざかるに従って低くなるように傾けることを特徴とする紙葉類堆積装置。
【請求項2】
前記堆積収納部は、該堆積収納部に堆積した紙葉類の先端面の位置を検知する先端検知手段を備えることを特徴とする請求項1記載の紙葉類堆積装置。
【請求項3】
前記紙葉類堆積装置はさらに、
搬送される紙葉類の通過を検出する紙葉類通過センサと、
該センサによって検出された紙葉類の枚数をカウントするカウント手段と、
該紙葉類の堆積枚数カウント情報と、該紙葉類1枚あたりの厚み情報とを記憶する記憶手段とを備え、
前記制御部は、前記記憶手段に記憶されているカウント情報及び紙葉類1枚あたりの厚み情報に基づいて堆積紙葉類の堆積幅を検出することを特徴とする請求項2記載の紙葉類堆積装置。
【請求項4】
前記搬送された紙葉類が収納された後に、前記検出された堆積幅の位置まで、前記押板は紙葉の搬入口に近づく方向に移動することを特徴とする請求項3記載の紙葉類堆積装置。
【請求項5】
前記堆積収納部に紙葉類が堆積された状態で、紙葉類が搬入される場合、前記押板は、前記紙葉類入口から遠ざかる方向に移動することを特徴とする請求項1記載の紙葉類堆積装置。
【請求項1】
搬送される紙葉類を堆積する紙葉類堆積装置において、
前記搬送される紙葉類が入る紙葉類入口と、
該入口から入る紙葉類を堆積する堆積収納部と、
前記堆積収納部内に設置された移動可能な押板と、
該押板の位置を制御する制御部とを備え、
前記堆積収納部を、前記紙葉類入口から遠ざかるに従って低くなるように傾けることを特徴とする紙葉類堆積装置。
【請求項2】
前記堆積収納部は、該堆積収納部に堆積した紙葉類の先端面の位置を検知する先端検知手段を備えることを特徴とする請求項1記載の紙葉類堆積装置。
【請求項3】
前記紙葉類堆積装置はさらに、
搬送される紙葉類の通過を検出する紙葉類通過センサと、
該センサによって検出された紙葉類の枚数をカウントするカウント手段と、
該紙葉類の堆積枚数カウント情報と、該紙葉類1枚あたりの厚み情報とを記憶する記憶手段とを備え、
前記制御部は、前記記憶手段に記憶されているカウント情報及び紙葉類1枚あたりの厚み情報に基づいて堆積紙葉類の堆積幅を検出することを特徴とする請求項2記載の紙葉類堆積装置。
【請求項4】
前記搬送された紙葉類が収納された後に、前記検出された堆積幅の位置まで、前記押板は紙葉の搬入口に近づく方向に移動することを特徴とする請求項3記載の紙葉類堆積装置。
【請求項5】
前記堆積収納部に紙葉類が堆積された状態で、紙葉類が搬入される場合、前記押板は、前記紙葉類入口から遠ざかる方向に移動することを特徴とする請求項1記載の紙葉類堆積装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−62918(P2007−62918A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250519(P2005−250519)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
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