説明

紙葉類鑑別装置及びその鑑別方法

【課題】紙葉類鑑別装置において、端部に折れがある紙葉類を正常なものとして受け付けられるようにすることである。
【解決手段】厚みセンサ処理で厚み異常が検出されているときには(図2、S14、NO)、ステップS16に進み、紙幣の端部の透過画像の画素の濃さが所定値を超えているか否かを判定する。紙幣の厚みが上限値を超えていて、紙幣の端部の透過画像の画素の濃さが所定値を超えている場合には(S16、YES)、紙幣の折れがあるものと判断して、ステップS15に進み、正常紙幣として受け付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、証券等の紙葉類の鑑別装置及びその鑑別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣を鑑別する紙幣鑑別装置が銀行等の現金自動預払機に搭載されている。現金自動預払機に投入される紙幣は、紙幣が折れ曲がっている場合があり、これらの紙幣は、たとえ真券であったとしても、真券とは判断されずリジェクトされることがあった。そのため、自動預払機で受け付けられない紙幣の割合が高くなり、顧客の利便性が低下する。
【0003】
特許文献1には、紙幣の光透過度が小である部分と光透過度が大である部分が隣接した透過急変状態が存在するか否かを調べることで、厚さ異常の原因が紙幣のスミ折れによるものかどうかを判定することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、厚み検出センサと反射透過センサを備え、それらのセンサの検出結果に基づいてコーナー折れ紙幣を正券と判別することが記載されている。
特許文献3には、紙葉類全体を透過して形状を検知する第1の検知手段と、紙葉類全体の厚みを検知する第2の検知手段とを有し、厚み検知と形状検知の判定を複合して紙葉類の正券、損券の判定を行うことが記載されている。
【0005】
特許文献4には、紙葉類を光学的に走査する光走査手段の走査出力に対して、紙葉類を検出するための第1のスライスレベルと、紙葉類の重なりまたは折れを検出する第2のスライスレベルを設定する手段を設けることで、重なりまたは折れた状態を検知できるようにすることが記載されている。
【0006】
図4は、従来の紙幣鑑別装置の鑑別処理のフローチャートである。
図4のフローチャートを用いて従来の紙幣鑑別処理について説明する。
まず、紙幣鑑別装置に投入された紙幣のイメージデータをイメージセンサにより取得する。(イメージセンサ処理:S21)。
【0007】
次に、磁気センサにより紙幣の磁気データを取得する。(磁気センサ処理:S22)
次に、厚みセンサにより紙幣の厚みデータデータを取得する。(厚みセンサ処理:S23)
そして、各ステップの処理で取得したデータと予め記憶している真贋判定用のそれぞれのデータを比較し、各々のセンサの判定結果が正常(真券)であるか否かを判定する。
【0008】
全てのセンサ処理の判定結果が正常(真券)であったと判定した場合は(S24、YES)、ステップS25に進み、投入された紙幣を正常紙幣として受け付ける。また、センサ処理の判定の結果、異常と判定されたものが一つでもある場合には(S24、NO)、S26に進み、投入された紙幣を受付不適切と判定してリジェクトする。
【0009】
図5は、偽造紙幣と折れ曲がった紙幣を示す図である。例えば、図5(A)に示すように、五千円札に白紙をテープで貼り合わせて外形寸法を一万円札と同じにして、一万札と誤認識させる方法がある。このような紙幣はテープで貼り合わせた部分の厚さが厚くなるので、厚みセンサで紙幣の厚みを検出することで偽造紙幣を検出することができる。
【0010】
しかしながら、自動預払機に投入される紙幣は、紙幣の端が折れ曲がっている場合があり、従来の鑑別処理のように、紙幣の厚みが上限値を超えているものを全てリジェクトす
ると、図5(B)に示すような正常の紙幣で端が折れ曲がったものも全てリジェクトされてしまうとう問題点があった。
【特許文献1】特開平4−242883号公報
【特許文献2】特開平7−14048号公報
【特許文献3】特開平9−203628号公報
【特許文献4】特開2000−298101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、紙葉類鑑別装置において、端部に折れがある真券の紙葉類を正常なものとして受け付け、かつ、貼り合わせを施した偽の紙葉類を確実にリジェクトするようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の紙葉類鑑別装置は、紙葉類の厚みを検出する厚みセンサと、前記紙葉類の反射画像及び透過画像を検出する画像センサと、前記厚みセンサにより前記紙葉類の厚みが上限値を超えていると検出され、さらに、前記画像センサにより前記紙葉類の端部の透過画像の画素の濃さが所定値を超えていると検出された場合は、前記紙葉類の端部に折れがあるものと判断し、投入された前記紙葉類を正常な紙葉類として受け付ける制御手段とを備える。
【0013】
この紙葉類鑑別装置によれば、端部が折れ曲がっている紙葉類を正常な紙葉類として受け付けることができる。
上記の紙葉類鑑別装置において、前記紙葉類の種類の判定の基準となる複数のテンプレートを記憶する記憶手段を有し、前記画像センサは前記紙葉類の反射画像を検出する機能を有し、前記制御手段は、前記画像センサから前記紙葉類の前記反射画像を取得し、前記透過画像の画素の濃さが所定値を超えている部分を除いた前記反射画像と、前記記憶手段に記憶されている前記複数のテンプレートを比較して、前記紙葉類の鑑別を行う。
【0014】
このように構成することで、透過画像から紙葉類に折れ曲がり部があることを検出し、その部分を除いた反射画像とテンプレートの画像を比較することができるので、鑑別精度を高めることができる。
【0015】
上記の紙葉類鑑別装置において、前記紙葉類は紙幣であり、前記制御手段は、前記画像センサで検出される反射画像により紙幣の余白部があるか否かを判定し、余白部が無い場合には、前記紙幣の厚さが上限値を超えている場合でも、投入された紙幣を正常紙幣として受け付ける。
【0016】
このように構成することで、紙幣の厚みが上限値を超えている場合でも、余白部が存在しない場合には、端部が折れ曲がっているものと判断し、正常な紙幣として受け付けることができる。
【0017】
上記の紙葉類鑑別装置において、前記制御手段は、前記画像センサで検出される反射画像から紙幣の長さが基準値より短いか否かを判定し、長さが基準値未満のときには、前記紙幣の厚さが上限値を超えている場合でも、投入された紙幣を正常紙幣として受け付ける。
【0018】
このように構成することで、紙幣の厚みが上限値を超えている場合でも、紙幣の長さが基準値未満のときには、投入された紙幣を正常な紙幣として受け付けることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、端部が折れ曲がっている真券の紙葉類を正常な紙葉類として受け付けることができ、かつ、貼り合わせを施した偽の紙葉類を確実にリジェクトするようにすることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。図1は、実施の形態の紙幣鑑別装置(紙葉類鑑別装置)11の要部の構成を示す図である。この紙幣鑑別装置11は、銀行等の現金自動預払機等に搭載される。
【0021】
図示しない投入部から投入された紙幣10は搬送路12によって搬送される。
イメージセンサ(画像センサ)13は、透過画像を検出する透過センサと、反射画像を検出する反射センサからなり、搬送路12を搬送される紙幣の反射画像と透過画像を制御部16に出力する。
【0022】
磁気センサ14は、紙幣に記録されている磁気インクの磁気データの検出を行い、磁気データを制御部16に出力する。
厚みセンサ15は、紙幣の厚みを検出し、検出した厚みデータを制御部16に出力する。
【0023】
記憶部17は、紙幣の金種の判定の基準となる画像データ(これをテンプレートと呼ぶ)と、紙幣の金種毎に磁気インクの記録されている位置及び磁気量を示すデータと、厚み判定の基準値等を記憶する。
【0024】
制御部16は、イメージセンサ13で検出される紙幣の透過画像の画素の濃さが所定値を超えている部分が紙幣の端部に存在するか否かを判定する。画素の濃さの判定基準となる所定値は、例えば、紙幣が折れ曲がって重なった場合の透過画像の画素の濃さを実測により事前に決定しておく。透過画像の画素の濃さが所定値を超えている部分が端部に存在する場合には、その部分をマスクした反射画像と、記憶部17に記憶されている複数のテンプレートを比較して紙幣の金種を判定する。これにより、紙幣の折れ曲がりの影響を除いて画像の比較を行うことができるので鑑別精度を高めることができる。なお、紙幣端部が折れ曲がって重なっていると思われる領域が、テンプレートの所定の所定割合以上を占める場合については、リジェクトすることが望ましい。なぜならば、折れ曲がって重なっている部分が多い場合、比較するための画像が少ないため、残りの部分をテンプレートと比較しても真券と判断することは困難であるためである。
【0025】
制御部16は、磁気センサ14で検出されたデータと、記憶部17に記憶されている該当する金種の磁気インクの記録位置と磁気量を示すデータを比較し、両者が一致するか否かを判定する。制御部16は、さらに、厚みセンサ15で検出される紙幣の厚さが基準値を超えているか否かを判定する。
【0026】
制御部16は、上記のイメージセンサ13の検出データの判定結果と、磁気センサ14の検出データの判定結果と、厚みセンサ15の検出データの判定結果に基づき、紙幣の真贋を鑑別する。
【0027】
図2は、実施の形態の紙幣鑑別装置11の鑑別処理のフローチャートである。
最初に、紙幣に対してイメージセンサ処理を実行する(S11)。このイメージセンサ処理では、イメージセンサ13で検出される紙幣の透過画像の画素の濃さが所定値を超えているか否かを判定する。さらに、イメージセンサ13で検出される反射画像から、透過画像の画素の濃さが所定値を超えている部分を除いた反射画像と、記憶部17に記憶され
ている複数のテンプレートとのパターンマッチングを行い、一致率の高いテンプレートの金種を投入された紙幣の金種と判定する。
【0028】
図3(A)、(B)は、従来のパターンマッチングと実施の形態のパターンマッチングの説明図である。
従来の方法は、図3(A)に示すように、イメージセンサで検出される元データ(反射画像)全体と、金種の判定の基準となる複数のテンプレートのパターンマッチングを行っている。
【0029】
実施の形態の方法は、図3(B)に示すように、透過画像の画素の濃さが所定値を超えている部分を除外した反射画像と、記憶部17に記憶されている複数のテンプレートのパターンマッチングを行って紙幣の金種を判定している。
【0030】
このように透過画像の画素の濃さが所定値を超えている部分(紙幣の折れ曲がり部と推定される)をマスクすることで、パターンマッチングを行ったときにテンプレートと不一致となる部分を予め取り除いて画像の比較を行うことができる。これにより紙幣の折れ曲がり等の影響によりパターンマッチングにより不一致となる可能性を減らすことができるので鑑別精度をより高めることができる。
【0031】
次に、磁気センサ処理を実行する(S12)。記憶部17には、金種毎の紙幣の状態(上向き、下向き、表、裏など)と対応付けて、磁気インクが記録されている位置と磁気量を示すデータが記憶されている。ステップS12の磁気センサ処理では、記憶部17に記憶されているこれらのデータと磁気センサ14で検出されたデータを比較して、両者が一致するか否かにより紙幣の真贋を鑑別する。
【0032】
次に、厚みセンサ処理を実行する(S13)。この厚みセンサ処理では、紙幣の厚みが上限値を超えているか否かを判定する。
次に、全センサ処理の結果が正常か否かを判定する(S14)。全てのセンサの検出データが正常であったときには(S14、YES)、ステップS15に進み、投入された紙幣を正常紙幣として受け付ける。
【0033】
他方、紙幣の真贋の鑑別は正常であるが、厚みセンサ処理で厚み異常が検出されているときには(S14、NO)、ステップS16に進み、紙幣の端部の透過画像の画素の濃さが所定値を超えているか否かを判定する。
【0034】
紙幣の厚みが上限値を超えていて、紙幣の端部の透過画像の画素の濃さが所定値を超えている場合には(S16、YES)、紙幣の折れがあるものと判断して、ステップS15に進み、正常紙幣として受け付ける。
【0035】
紙幣の端部の透過画像の濃さが所定値以下のときには(S16、NO)、ステップS17に進み、紙幣に余白部があるか否かを判定する。
紙幣の厚みが上限値を超えていて、紙幣に余白が無い場合には、紙幣の折れがあるために余白が存在しないものと判断して、ステップS15に進み、正常紙幣として受け付ける。
【0036】
紙幣に余白部があるときには(S17、YES)、ステップS18に進み、紙幣の長手方向の長さが規定長より短いか否かを判定する。
紙幣の厚みが上限値を超えていて、紙幣の長手方向の長さが規定長より短いときには(S18、YES)、折れがあるものと判断してステップS15に進み、正常紙幣として受け付ける。
【0037】
紙幣の厚みが上限値を超えていて、紙幣の長手方向の長さが規定長より長いときには(S18、NO)、偽造紙幣の可能性があるので、ステップS19に進み、投入された紙幣を不適切な紙幣としてリジェクトする。
【0038】
上記の処理では、紙幣の端部の透過画像の画素が濃さが所定値を超えている場合、紙幣の余白部が無い場合、あるいは紙幣が規定長より短い場合に正常紙幣として受け付けているが、条件を絞込み、例えば、紙幣の端部の透過画像の画素の濃さが所定値を超えている場合のみ正常紙幣として受け付けるようにしても良い。
【0039】
上述した実施の形態によれば、紙幣の厚みが上限値を超えている場合でも、紙幣の端部の透過画像の画素の濃度が所定値を超えている場合、紙幣に本来ある余白部が存在しない場合、あるいは、紙幣の長さが規定長より短い場合に、正常な紙幣として受け付けることができる。これにより、折れがある正規の紙幣を受け付け、白紙を切り継ぎした偽造紙幣等はリジェクトすることができる。このようにすることで、折れ曲がった紙幣が現金自動預払機等でリジェクトされることが減るので、折れ曲がった紙幣が多数流通している海外などで特に効果が大きい。
【0040】
紙葉類は、紙幣に限らず、証券証書等であっても良い。また、紙幣鑑別装置が搭載される装置は、現金自動預払機に限らず、自動販売機等の他の装置でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施の形態の紙幣鑑別装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態の鑑別処理のフローチャートである。
【図3】従来のパターンマッチングと実施の形態のパターンマッチングの説明図である。
【図4】従来の鑑別処理のフローチャートである。
【図5】偽造紙幣と折れ曲がり部のある紙幣を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
11 紙幣鑑別装置
12 搬送路
13 イメージセンサ
14 磁気センサ
15 厚みセンサ
16 制御部
17 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の厚みを検出する厚みセンサと、
前記紙葉類の透過画像を検出する画像センサと、
前記厚みセンサにより前記紙葉類の厚みが上限値を超えていると検出され、さらに、前記画像センサにより前記紙葉類の端部の透過画像の画素の濃さが所定値を超えていると検出された場合は、前記紙葉類の端部に折れがあるものと判断し、投入された前記紙葉類を正常な紙葉類として受け付ける制御手段とを備える紙葉類鑑別装置。
【請求項2】
紙葉類の種類の判定の基準となる複数のテンプレートを記憶する記憶手段を有し、
前記画像センサは前記紙葉類の反射画像を検出する機能を有し、
前記制御手段は、前記画像センサから前記紙葉類の前記反射画像を取得し、前記透過画像の画素の濃さが所定値を超えている部分を除いた前記反射画像と、前記記憶手段に記憶されている前記複数のテンプレートを比較して、前記紙葉類の鑑別を行う請求項1記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項3】
前記紙葉類は紙幣であり、前記制御手段は、前記画像センサで検出される前記反射画像により紙幣の余白部があるか否かを判定し、余白部が無い場合には、前記紙幣の厚さが上限値を超えている場合でも、投入された紙幣を正常紙幣として受け付ける請求項1または2記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記画像センサで検出される前記反射画像から紙幣の長さが基準値より短いか否かを判定し、長さが基準値未満のときには、前記紙幣の厚さが上限値を超えている場合でも、投入された紙幣を正常紙幣として受け付ける請求項3記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項5】
紙葉類を鑑別する鑑別装置の紙葉類鑑別方法であって、
紙葉類の厚みを厚みセンサで検出し、
前記紙葉類の透過画像を画像センサで検出し、
前記厚みセンサにより前記紙葉類の厚さが上限値を超えていると検出され、さらに、前記画像センサにより前記紙葉類の端部の透過画像の画素の濃さが所定値を超えていると検出された場合は、前記紙葉類の端部に折れがあるものと判断し、投入された前記紙葉類を正常な紙葉類として受け付ける紙葉類鑑別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−238090(P2009−238090A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85731(P2008−85731)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】