説明

紙製容器とその製造方法

【課題】バリア性、耐水性、レトルト耐性などの機能に優れた、また、蓋材とヒートシールした時に、シール漏れなどのシール不良が起こりにくい紙製容器を提供することを目的とする。
【解決手段】紙箱の内面及び外面に内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムを各々積層してなり、前記内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとが、紙箱に設けた開孔部において接着し、かつ、紙箱を覆うように周縁部で接着されていることを特徴とする紙製容器。および、底部に開孔部を設けた紙箱を用いて、真空成形法又は/及び圧空成形法により前記内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとを紙箱に積層、成形することを特徴とする紙製容器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、食品の流通用や食事用、トイレタリー用品の流通用に用いられる紙製容器に関し、バリア性、耐水性、レトルト耐性などの機能に優れた紙製容器とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品やトイレタリー用品の一次容器として用いられる紙製の容器は、内容物が紙製容器に直接収容されているため、内容物と紙製容器の内面が直接接触している。こうした一次容器としては、紙箱の内面に熱可塑性プラスチックシートを積層した紙製容器が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−254280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この紙製容器は、紙箱の内面にのみ熱可塑性プラスチックシートを積層しているため、紙箱の外面は、防水性などを有しておらず、温水殺菌や調理する際に、紙箱の外面が吸水してしまうという問題があった。紙箱の外面が吸水した際、紙の層間剥離などが起こり、紙製容器は強度低下による変形や、紙箱の外面が印刷層である場合には、印刷層の剥がれによる美称性や必要情報の欠損など、さまざまな不具合が生じる。
【0005】
本発明は、前記の不具合を解消し、バリア性、耐水性、レトルト耐性などの機能に優れた、また、紙製容器を蓋材とヒートシールした時に、シール漏れなどのシール不良が起こりにくい紙製容器とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1に記載の発明は、紙箱の底部に開孔部を有し、紙箱の内面及び外面に内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムを各々積層してなり、内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムが紙箱の底部の開孔部において接着しており、かつ、前記紙箱の内面に積層された内面樹脂フィルムは、前記紙箱の内面より一回り大きく、前記紙箱の外面に積層された外面樹脂フィルムは、前記紙箱の外面より一回り大きく、前記内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとが、紙箱を覆うように周縁部で接着されていることを特徴とする紙製容器である。
【0007】
この発明によれば、紙箱の内面及び外面の両面に樹脂フィルムが積層され、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとが、紙箱を覆うように周縁部で接着されているため、紙製容器の内面のみならず外面にも耐性を付与することができ、紙の端面からの吸水を防止することができる。これにより、紙製容器の強度が低下することなく容器のまま湯煎などの調理が可能となる。さらに、紙箱の外面に印刷を施した際にも、印刷剥がれを防止することができる。
【0008】
また、内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムが紙箱の底部の開孔部において、接着しているので、紙箱と内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムが固定され、また、内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムの間の気体を少なくすることができる。そのため、レトルト殺菌を行う場合にあっては、昇温、殺菌、冷却時などの圧力変動に際しても、紙箱と内
外面の樹脂フィルムとのずれが起こらないし、内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムの間の気体が少ないので、気体の膨張による熱の伝導の低下もない。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記紙箱がフランジを有しており、前記内面樹脂フィルムと前記外面樹脂フィルムは、紙箱のフランジを覆うように周縁部が接着されていることを特徴とする請求項1に記載の紙製容器である。
【0010】
紙箱がフランジを有しており、前記内面樹脂フィルムと前記外面樹脂フィルムが、紙箱のフランジを覆うように周縁部が接着されているので、紙製容器のフランジ部に蓋材をシールし、紙製容器を容易に密封することができる。
【0011】
次に、請求項3に記載の発明は、前記紙箱が一枚のブランクを製函してなり、前記紙箱の四側面上端縁に連結されたフランジは、隣り合うフランジどうしの端部が突合せになっており、互いに重なり合っていないことを特徴とする請求項2に記載の紙製容器である。
【0012】
通常の紙製容器では、図4に示すようなブランクを用いて、紙箱を製函している。図4に示すブランクを用いて紙箱を製函した場合、紙箱の四側面上端縁に連結されたフランジは、フランジ重ね片22により隣り合うフランジ同士が互いに重なり合う構造をしており、フランジ上面に紙1枚分の段差が生じる。段差を有するフランジ上面に蓋材を接着すると、この段差により内容物が漏れ易くなったり、蓋材の接着強度が低下するなどの不具合が生じることがあり、好ましくない。
【0013】
この発明によれば、紙箱の四側面上端縁に連結されたフランジは、隣り合うフランジどうしの端部が突合せになっており、互いに重なり合っていない。これにより、フランジ上面の段差をなくすことができる。さらに、紙箱の四側面上端縁に連結されたフランジが互いに隣接している構造であり、隣接するフランジ同士が重なり合っていなくとも、紙箱の内面及び外面の両面に樹脂フィルムを積層しているため、十分な強度を維持することが可能である。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、前記紙箱が底部と側壁からなりフランジを有さず、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムを貼り合わせることでフランジ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙製容器である。
【0015】
この発明によれば、フランジ部に紙箱のフランジがなく、フィルムのみでフランジを形成しているので、フランジ部に段差を生ずることがなく、平坦にすることができる。また、紙の使用量を減らすことができ、環境に配慮することができる。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、底部に開孔部を有する紙箱の一方の面に、該紙箱の一方の面より一回り大きな樹脂フィルムAを真空成形法又は/及び圧空成形法により積層する工程と、
前記紙箱の開孔部と対応する位置の前記樹脂フィルムAに貫通孔を設ける工程と、
該紙箱の他方の面に、該紙箱の他方の面より一回り大きな樹脂フィルムBを真空成形法又は/及び圧空成形法により積層する工程と、
前記紙箱の外周に食み出した樹脂フィルムAと樹脂フィルムBとを貼り合わせる工程を有することを特徴とする紙製容器の製造方法である。
【0017】
この発明によれば、紙箱の内面及び外面の両面に樹脂フィルムが積層され、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとが、紙箱を覆うように周縁部で接着されている紙製容器が容易に製造することができ、また、樹脂フィルムAに設ける貫通孔が、樹脂フィルムBを真空成形法又は/及び圧空成形法により積層する工程で、樹脂フィルムAと樹脂フィルムBが熱融着されて塞がれるので、該紙製容器は紙製容器の内面のみならず外面にも耐性を付与することができ、紙の端面からの吸水を防止することができる。これにより、紙製容器の強度が低下することなく容器のまま湯煎などの調理が可能となる。さらに、紙箱の外面に印刷を施した際にも、印刷剥がれを防止することができる。
【0018】
また、内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムが紙箱の底部の開孔部において、熱融着により接着しているので、紙箱と内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムが固定され、また、内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムの間の気体を少なくすることができる。そのため、レトルト殺菌を行う場合にあっては、昇温、殺菌、冷却時などの圧力変動に際しても、紙箱と内外面の樹脂フィルムとのずれが起こらないし、内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムの間の気体が少ないので、気体の膨張による熱の伝導の低下もない。
【0019】
また、請求項6に記載の発明は、底部に開孔部を有する紙箱の外面に該紙箱の外面より一回り大きな外面樹脂フィルムを真空成形法又は/及び圧空成形法により積層する工程と、
前記紙箱の開孔部と対応する位置の外面樹脂フィルムに貫通孔を設ける工程と、
該紙箱の内面に紙箱の内面より一回り大きな内面樹脂フィルムを真空成形法又は/及び圧空成形法により積層する工程と、
前記紙箱の外周に食み出した内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとを貼り合わせる工程を有することを特徴とする請求項5に記載の紙製容器の製造方法である。
【0020】
この発明によれば、貫通孔を外面樹脂フィルムに設けているので、内面樹脂フィルムを真空成形法又は/及び圧空成形法により積層する工程で、貫通孔が熱融着により完全に密封できなくとも内面樹脂フィルムには貫通孔を設けていないので、内容物が微生物汚染される恐れがなく、腐敗の心配がない。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、紙箱の内面及び外面の両面に樹脂フィルムを積層することにより、紙箱の内面のみならず外面にも耐性を付与することができる。しかも、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムが紙箱を覆うように接着されているため紙箱の紙の端面からの吸水も防止し、紙の層間剥離などによる、紙製容器の強度低下による変形や、紙箱の外面が印刷層である場合でも、印刷層の剥がれによる美称性や必要情報の欠損などのさまざまな不具合が生じる事がない。そのため、バリア性、耐水性、レトルト耐性などの機能に優れる。また、紙製容器を蓋材とヒートシールした時に、シール漏れなどのシール不良が起こる心配がない。レトルト殺菌を行う場合にあっては、昇温、殺菌、冷却時などでの圧力変動に際しても、紙箱と内外面の樹脂フィルムとのずれが起こらないし、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムの間の気体が少ないので、気体の膨張による熱の伝導の低下もない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る紙製容器の斜視図
【図2】図1に示す紙製容器1のA−A´線における断面図
【図3】本発明で使用するブランクの一例を示す平面図
【図4】従来の紙製容器に使用されているブランクの一例を示す平面図
【図5】本発明の紙製容器の製造工程の一例を示す断面図
【図6】本発明の紙製容器の製造工程の一例を示す断面図
【図7】本発明の紙製容器の製造工程の一例を示す断面図
【図8】本発明の紙製容器の製造工程の一例を示す断面図
【図9】本発明の他の実施形態に係る紙製容器の断面図
【図10】本発明の他の実施形態に係るカップ構造の紙箱の斜視図
【図11】本発明の他の実施形態に係る紙製容器の説明の断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る紙製容器1の斜視図である。図2は、図1に示す紙製容器1のA−A´線における断面図である。
【0024】
図1及び2に示すように、本発明の紙製容器1は、底部に開孔部を有する紙箱2の内面及び外面に内面樹脂フィルム3及び外面樹脂フィルム4を各々積層してなる。
【0025】
底部に開孔部を有する紙箱2としては、ボール紙や板紙、それらと樹脂フィルム層や金属層などを貼合せ製函してなるものや、箱型に成形されたパルプモールドなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、図1に示す紙製容器1は底が浅い四角いトレー構造であるが、その構造は、使用する目的や条件によって適宜変更される。
【0026】
底部に開孔部を有する紙箱2を構成する材料として、例えば上記した板紙を用いた場合、板紙からなるブランクを箱形状に製函する際に、接着部材を用いて重ね片13を留める必要がある。ここでの接着部材としては、酢酸ビニル系水性接着剤、ホットメルトや、エチレンと酢酸ビニルの共重合樹脂(EVA)、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとアクリル酸の共重合樹脂(EAA)、変性オレフィン系のヒートシールニスなどを用いることができる。
【0027】
内面樹脂フィルム3及び外面樹脂フィルム4としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン共重合体、ブロックポリプロピレン共重合体などのポリプロピレン(PP)や、エチレンビニルアルコール(EVOH)、エチレンとアクリル酸の共重合樹脂(EAA)、ナイロン(NY)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などの樹脂を用いることができ、これらを単層で用いてもよく、これらを組み合わせた多層で用いることもできる。
【0028】
紙製容器1へ積層した後の各樹脂フィルムの膜厚としては、30μm以上、500μm以下であることが好ましい。膜厚が500μmよりと厚いと、積層時にフィルム膜厚が不均一になることがあり、好ましくない。また、30μm未満ではピンホールが発生する危険性が高い。
【0029】
本発明における紙製容器の製造について説明する。
【0030】
まず、図3に示すようなブランク10を紙箱2に組み立てる。ブランク10は、底面11、側面12、側面12に連結した重ね片13、側面上端縁に連結されたフランジ14とから成り、底面11には開孔部16が設けられ、紙からなるブランク10を打ち抜いて各部が構成され、これを折り曲げ線15に沿って折り込み組み立てて紙箱2とする。重ね片13は隣接する側面へ接着部材を用いて接着されても良いが、接着せず単に折り曲げ組み立てられているものでも良い。
【0031】
ここで、本発明では、紙箱の四側面上端縁に連結されたフランジ14は、隣り合うフランジどうしの端部が突合せになっており、互いに重なり合っていないことが好ましい。図3に示すブランク10では、図4に示すようなフランジ重ね片22を有していない。紙箱を組み立てた際、図3の紙箱では、図4の紙箱と比較して、隣り合うフランジ同士が固定されていない分、形状安定性に劣っている。しかし、紙箱の内面及び外面の両面に樹脂フィルムを積層することで十分な強度、形状安定性を付与することができる。さらに、従来の方法では解決できない、フランジ上面の平滑化という課題を解決することができる。
【0032】
次に、底部に開孔部を有する紙箱2の内面及び外面に内面樹脂フィルム3及び外面樹脂フィルム4を各々積層する。このとき、以下に示すように、外面樹脂フィルム4、内面樹脂フィルム3の順に積層するのが好ましいが、この順番が逆であってもよい。
積層方法は、真空成形法又は/及び圧空成形法により積層される。以下、真空成形法での実施例を説明する。
【0033】
組み立てられた底部に開孔部16を有する紙箱2の断面図を図5に示す。図5は上下逆に示しているが、この状態で組み立てられた底部に開孔部を有する紙箱2の上方に外面樹脂フィルム4を載置し、熱風で外面樹脂フィルム4を加熱軟化させる。熱接着条件、熱風温度等は使用する外面樹脂フィルム4の材質、厚さ等によって適宜変更される。
【0034】
その後、例えば真空ポンプのような真空源より吸引管、吸引孔を通じて型内の空気を吸引すると、型内の空気は底部に開孔部を有する紙箱2の開孔部16を通して吸引され、その内部は真空状態になるので、加熱軟化された外面樹脂フィルム4は圧力により湾曲して紙箱の内面に密着成形され、底部に開孔部を有する紙箱2と一体的に形成され、図6に示すように紙箱2に外面樹脂フィルム4が積層された状態となる(真空成形法)。
【0035】
なお、底部に開孔部を有する紙箱2と外面樹脂フィルム4の積層、成形は、上記した真空成形法、又は圧空成形法、あるいは真空成形法と圧空成形法を併用した成形法により行われることが好ましい。これにより、外面樹脂フィルム4は、底部に開孔部を有する紙箱2の形状に追随するように精度良く積層することが可能である。
【0036】
次に、外面樹脂フィルム4を積層した底部に開孔部を有する紙箱2の開孔部16に位置する範囲内の外面樹脂フィルム4に貫通孔17を設け、半製品18を作成する。
【0037】
開孔部16においては、少なくとも紙の厚み分樹脂フィルムが伸びる必要があり、その為樹脂フィルムが紙に接しない部分に規制され、開孔部の一端から反対端までの距離は紙の厚みの1.5倍以上必要である。また、貫通孔17の大きさは、真空引きを充分にでき、かつ、樹脂フィルム同士がシールされた際のシールの強度が必要であり、また、大きすぎると樹脂フィルム同士のシールができない、そのため、貫通孔の一端から反対端までの距離は0.05〜0.2mmが望ましい。開孔部16の位置は、紙箱2の底面の端の近傍に25〜35mm間隔で開けるとエアーの残存が少ない。
【0038】
外面樹脂フィルム4が積層され紙箱2の開孔部の位置の範囲内に貫通孔が設けられた積層体18を図7に示す。
【0039】
次に積層体18に内面樹脂フィルム3を積層する。積層方法は、真空成形法又は/及び圧空成形法により積層される。
【0040】
図7の積層体18の上下を反転させ、成形型に設置し、積層体18の上方に内面樹脂フィルム3載置し、熱風で内面樹脂フィルム3を加熱軟化させる。熱接着条件、熱風温度等は使用する内面樹脂フィルム3の材質、厚さ等によって適宜変更される。
【0041】
その後、例えば真空ポンプのような真空源より吸引管、吸引孔を通じて型内の空気を吸引すると、型内の空気は積層体18の外面フィルム4の貫通孔17を通して吸引され、その内部は真空状態になるので、加熱軟化された内面樹脂フィルム3は圧力により湾曲して積層体18の内面に密着成形され、積層体18と一体的に形成され、図8に示すように積層体18に内面樹脂フィルム3が積層された状態となる(真空成形法)。
【0042】
このとき、内面樹脂フィルム3は、開孔部16において、外面樹脂フィルム4と融着し外面樹脂フィルム4に設けられた貫通孔17が封鎖される。
【0043】
なお、積層体18と内面樹脂フィルム3の積層、成形は、上記した真空成形法、又は圧空成形法、あるいは真空成形法と圧空成形法を併用した成形法により行われることが好ましい。これにより、内面樹脂フィルム3は、底部に開孔部を有する紙箱2の形状に追随するように精度良く積層することが可能である。
【0044】
また、本発明では、内面樹脂フィルム3と外面樹脂フィルム4は底部に開孔部を有する紙箱2のフランジ14を覆うように接着することが好ましい。このとき、底部に開孔部を有する紙箱2の内面に積層された内面樹脂フィルム3は、底部に開孔部を有する紙箱2の内面より一回り大きく、底部に開孔部を有する紙箱2の外面に積層された外面樹脂フィルム4は、底部に開孔部を有する紙箱2の外面より一回り大きいものである。
【0045】
内面樹脂フィルム3と外面樹脂フィルム4が紙箱2のフランジ14を覆うように接着する方法としては、以下に挙げる方法を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0046】
内面樹脂フィルム3と外面樹脂フィルム4の少なくとも一方の内側に接着層を形成することで、内面樹脂フィルム3と外面樹脂フィルム4を紙箱2に積層した際に、底部に開孔部を有する紙箱2のフランジ14からはみ出した内面樹脂フィルム3と外面樹脂フィルム4が、互いに接着層を挟んで重なり合い、底部に開孔部を有する紙箱2のフランジ14を覆うように接着することができる。
【0047】
また、内面樹脂フィルム3と外面樹脂フィルム4の熱溶融性樹脂層により、内面樹脂フィルム3と外面樹脂フィルム4を底部に開孔部を有する紙箱2に積層した後、紙箱2のフランジ14から食み出し重なり合った内面樹脂フィルム3と外面樹脂フィルム4をヒートシールして、底部に開孔部を有する紙箱2のフランジ14を覆うように接着することができる。
【0048】
上記の説明においてはフランジ付き紙箱で説明したが、フランジのない紙箱を用いてもよい。たとえば、図3のブランク10からフランジ14を取り除いた形状であってもよく、その場合、図9のように内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムのヒートシール部でフランジを形成してもよい。また、本発明の紙箱の形状としては、上記した四角いトレー構造の他に、多角形のトレー構造であってもよい。
【0049】
更には、図10に示すようなカップ構造であってもよい。ここで、図10は、本発明の他の実施形態に係るカップ構造の紙箱30の斜視図であり、図11は、図10に示すカップ構造の紙箱30を用いた紙製容器31の断面図である。
【0050】
図11に示す紙製容器31は、フランジ37を有する胴部材36と底部材35からなるカップ構造の紙箱30の内面及び外面に内面樹脂フィルム33及び外面樹脂フィルム34を各々積層してなる。カップ構造の紙箱30の下部には、胴部材36と底部材35からなる脚部38を有している。
【0051】
図10に示すカップ構造の紙箱30の作製は次の通り行う。まず、胴部材ブランクの端縁を重ね合わせてテーパーを有する円筒形状の胴部材36を形成する。加えて、円形状の底部材ブランクの周縁を下向きに起立させた周縁部を有する底部材35を形成する。
【0052】
次に、胴部材36の下部内面に、底部材35の周縁部の外面を接合する。その後に、周縁部を覆うように、胴部材36の下端縁部を内方に折り曲げ、底部材35の周縁部内面に接合させて脚部38を形成する。
【0053】
次に、胴部材36の上部周縁を外方に、折り曲げフランジ37を形成する。ここで、図11に示すように、胴部材36の上部周縁は外方に1周以上巻き込んでもよい。さらに、胴部材36を1周以上巻き込んだフランジ37を上下から加圧圧着などの方法を用いて、平坦にしてもよい。その後、底部材35には開孔部が設けられる。
【0054】
なお、本発明におけるカップ構造の紙箱30は、テーパー状のカップ形状に限定されず、円筒状のカップ形状であっても同様である。
本発明における紙製容器の形状としては、上記に記載した形状に限定されるものではなく、本発明の要件を満たす紙製容器であればよい。これにより、バリア性、耐水性、レトルト耐性などの機能に優れた紙製容器を得ることができる。更には、蓋材とヒートシールした時にフランジが平坦であれば、シール漏れにより内容物が漏れ出す恐れがない。そして、本発明における紙製容器の製造方法によれば、前記の紙製容器が容易に精度良く、すなわち、内面樹脂フィルムおよび外面樹脂フィルムを紙箱の形状に追随するように精度良く積層することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・紙製容器
2・・・フランジ付き紙箱
3・・・内面樹脂フィルム
4・・・外面樹脂フィルム
10・・・ブランク
11・・・底面
12・・・側面
13・・・重ね片
14・・・フランジ
15・・・折り曲げ線
16・・・開孔部
17・・・貫通孔
20・・・ブランク
21・・・重ね片
22・・・フランジ重ね片
30・・・カップ構造の紙箱
31・・・紙製容器
33・・・内面樹脂フィルム
34・・・外面樹脂フィルム
35・・・底部材
36・・・胴部材
37・・・フランジ
38・・・脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙箱の底部に開孔部を有し、紙箱の内面及び外面に内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムを各々積層してなり、内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムが紙箱の底部の開孔部において接着しており、かつ、前記紙箱の内面に積層された内面樹脂フィルムは、前記紙箱の内面より一回り大きく、前記紙箱の外面に積層された外面樹脂フィルムは、前記紙箱の外面より一回り大きく、前記内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとが、紙箱を覆うように周縁部で接着されていることを特徴とする紙製容器。
【請求項2】
前記紙箱がフランジを有しており、前記内面樹脂フィルムと前記外面樹脂フィルムは、紙箱のフランジを覆うように周縁部が接着されていることを特徴とする請求項1に記載の紙製容器。
【請求項3】
前記紙箱が一枚のブランクを製函してなり、前記紙箱の四側面上端縁に連結されたフランジは、隣り合うフランジどうしの端部が突合せになっており、互いに重なり合っていないことを特徴とする請求項2に記載の紙製容器。
【請求項4】
前記紙箱が底部と側壁からなりフランジを有さず、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムを貼り合わせることでフランジ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙製容器。
【請求項5】
底部に開孔部を有する紙箱の一方の面に、該紙箱の一方の面より一回り大きな樹脂フィルムAを真空成形法又は/及び圧空成形法により積層する工程と、
前記紙箱の開孔部と対応する位置の前記樹脂フィルムAに貫通孔を設ける工程と、
該紙箱の他方の面に、該紙箱の他方の面より一回り大きな樹脂フィルムBを真空成形法又は/及び圧空成形法により積層する工程と、
前記紙箱の外周に食み出した樹脂フィルムAと樹脂フィルムBとを貼り合わせる工程を有することを特徴とする紙製容器の製造方法。
【請求項6】
底部に開孔部を有する紙箱の外面に該紙箱の外面より一回り大きな外面樹脂フィルムを真空成形法又は/及び圧空成形法により積層する工程と、
前記紙箱の開孔部と対応する位置の外面樹脂フィルムに貫通孔を設ける工程と、
該紙箱の内面に紙箱の内面より一回り大きな内面樹脂フィルムを真空成形法又は/及び圧空成形法により積層する工程と、
前記紙箱の外周に食み出した内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとを貼り合わせる工程を有することを特徴とする請求項5に記載の紙製容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−93538(P2011−93538A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246410(P2009−246410)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】