説明

紫外線照射装置

【課題】紫外線の強度分布をより均一にするとともに、紫外線ランプの端部においても、十分な照射強度を得ることができる紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】紫外線ランプ11からの紫外線を反射して集光する集光反射板12の開口部側に、上記紫外線ランプ11の延長方向に垂直な反射面を有する平板状の追加反射板13,13を配置して、上記紫外線ランプ11から上記開口部の外側に拡散する直接光をコンベヤベルト40の内側に集光するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置に関するもので、特に、ビーム状の紫外線ランプからの紫外線を集光反射板にて集光し被照射物表面に塗布されている紫外線硬化樹脂を硬化させる紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの表面を樹脂コーティングする方法の一つとして、当該ワークの表面に紫外線硬化樹脂(以下、UV樹脂という)を塗布した後、これに紫外線を照射して上記UV樹脂を硬化させる方法が行なわれている(例えば、特許文献1,2参照)。
図6(a)〜(c)はその一例を示す図で、その表面にUV樹脂が塗布されたワーク30をベルトコンベヤの搬送ベルト(コンベヤベルト)40にて搬送するとともに、上記コンベヤベルト40の上方に紫外線照射装置50を設置し、上記搬送されるワークの表面に紫外線を照射する。これにより、多数のワーク30を連続的に処理することができる。
この紫外線照射装置50は、詳細には、コンベヤベルト40の上方に設置された、上記コンベヤベルト40に平行な面内において上記コンベヤベルト40の搬送方向に沿って延長するビーム状の紫外線ランプ51と、上記紫外線ランプ51の上部側に設けられ、上記紫外線ランプ51を上部から覆う断面形状が円弧状の集光反射板52とを備えたもので、上記紫外線ランプ51から照射される紫外線は、上記集光反射板52により反射されて上記コンベヤベルト40上に集光されて、上記コンベヤベルト40により送られてくるワーク30に照射される。このように、紫外線ランプ51からの紫外線は、直接光がワーク30の表面に照射されるだけでなく反射光もワーク30の表面に集光されるので、ワークの上面側に塗布されたUV樹脂だけでなく、側面側に塗布されたUV樹脂についても効率よく硬化させることができる。
【特許文献1】特開平5−254894号公報
【特許文献2】特開平10−122958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記紫外線ランプ51の長さ(ビームの延長方向であるコンベヤベルト40の幅方向の長さ)は、通常、コンベヤベルト40の幅程度で、また、上記集光反射板52はコンベヤベルト40の幅方向端部において開口しているため、上記紫外線ランプ51からの直接光は上記集光反射板52では反射されず上記集光反射板52の外側に拡散してしまう。このため、上記紫外線ランプ51からコンベヤベルト40上に集光される紫外線は、図7に示すように、コンベヤベルト40の幅方向中央部では大きく、端部では小さくなるような強度分布を示す。したがって、コンベヤベルト40の端部側を搬送されてくるワーク30では、中央側の側面30aに比較して、端部側の側面30bの照射光量が少なくなり、そのため、端部側では塗布されたUV樹脂を十分に硬化させることができないといった問題点があった。
【0004】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、照射される紫外線の強度分布をより均一にすることのできる紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の請求項1に記載の発明は、紫外線を照射するビーム状の光源と、上記光源の少なくとも上部側を覆い上記光源からの紫外線を反射して上記光源の下部側に集光する集光反射板とを備えた紫外線照射装置であって、上記光源の延長方向の端部側に上記光源からの直接光を反射する追加反射板を更に設けたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の紫外線照射装置において、上記追加反射板を上記光源の延長方向に垂直な反射面を有する平板状の反射板としたものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の紫外線照射装置において、上記追加反射板を、紫外線を反射し可視光及び赤外線を透過する反射板としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、紫外線を照射するビーム状の光源とこの光源からの紫外線を反射して集光する集光反射板とを備えた紫外線照射装置において、上記光源の延長方向の端部側に、上記光源からの直接光を反射する追加反射板を設け、上記光源の端部から照射される直接光を反射して集光するようにしたので、紫外線の強度分布をより均一にすることができるとともに、紫外線ランプの端部側においても、十分な照射強度を得ることができる。
このとき、上記追加反射板を、上記光源の延長方向に垂直な反射面を有する平板状の反射板とすれば、簡単な構成で上記直接光を集光することができる。また、上記追加反射板を、紫外線を反射し可視光及び赤外線を透過する反射板とすれば、ワークの不要な温度上昇を抑えることができるので、紫外線照射処理を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1(a)〜(c)は、本最良の形態に係る紫外線照射装置10の概略構成を示す図で、同図において、11はその表面にUV樹脂が塗布されたワーク30を搬送するコンベヤベルト40の上方で、上記ベルト40の面に平行な面内に配置され、上記ベルト40の幅方向に沿って延長するビーム状の紫外線ランプ、12はこの紫外線ランプ11の延長方向に沿って延長し、上記紫外線ランプ11を上方から覆うように配置された集光反射板で、この集光反射板12は、紫外線ランプ11の延長方向に沿って延長し、上記ベルト40の幅方向端部にそれぞれ開口部を有している。また、13,13は上記集光反射板12の両端部である開口部側にそれぞれ配置された反射板(以下、追加反射板という)である。
上記紫外線ランプ11としては水銀ランプ、キセノンランプ等の周知の紫外線ランプが用いられる。また、集光反射板は、ガラス成形板等の、その断面形状が円弧状もしくは放物線状の基板の内側に、金属あるいは金属加工物の薄膜を形成したもので、紫外線から赤外線までを反射効率よく反射するアルミミラーや紫外線を反射し可視光や赤外線を透過させるコールドミラー等が一般に用いられている。本例では、集光反射板12として、その断面形状が円弧状のコールドミラーを用いている。
一方、追加反射板13,13は、光源である紫外線ランプ11の延長方向に垂直な反射面を有する平板状の反射板で、本例では、上記集光反射板12と同様のコールドミラーを用いている。
【0008】
本発明による紫外線照射装置10は、集光反射板12の開口部側に追加反射板13,13が設けられているので、図1(c)に示すように、集光反射板12の開口部側から外側に拡散しようとする紫外線ランプ11からの直接光は、上記追加反射板13,13の反射面で反射され、コンベヤベルト40の内側に集光される。図2はコンベヤベルト40上の紫外線の強度分布を示す図で、実線は図1に示した本発明による紫外線照射装置10を用いたときの強度分布、破線は図6に示した従来の紫外線照射装置10を用いたときの強度分布で、本発明による紫外線照射装置10を用いた方が、コンベヤベルト40上の紫外線の強度分布が均一になるだけでなく、全体の紫外線強度についても高めることができる。
したがって、本発明の紫外線照射装置10を用いれば、コンベヤベルト40の端部側を搬送されるワーク30の端部側の側面30bでも、中央側の側面30aとほぼ同等の照射光量を得ることができるので、UV樹脂を均一にかつ十分に硬化させることができる。また、全体の紫外線強度も高くなるので、UV処理を効率的に行うことができる。
また、本例では、追加反射板13,13として反射板を用いているので、簡単な構成で上記直接光を集光することができる。また、追加反射板13,13として、上記集光反射板12と同様のコールドミラーを用いるようにすれば、ワークの不要な温度上昇を抑えることができるので、紫外線照射処理を効率よく行うことができる。
【0009】
なお、上記最良の形態では、反射面が平面状の追加反射板13,13を用いた場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、図3に示すような、曲面状の反射面を有する追加反射板14,14を用いてもよい。なお、曲面の形状としては、紫外線ランプ11からの直接光がコンベヤベルト40の内側に集光されるものであれば、特に限定されるものではない。
また、本例の紫外線照射装置10では、コンベヤベルト40の搬送方向とは直交する方向に沿って延長するビーム状の紫外線ランプ11を配置したが、図4に示すような、紫外線ランプ11をコンベヤベルト40の搬送方向に沿って配置した構成の紫外線照射装置10Lの場合でも、集光反射板12の開口部側に反射面が平面状の追加反射板13,13を配置するようにすれば、コンベヤベルト40上の紫外線強度を高めることができるので、UV処理を効率的に行うことができる。
【実施例】
【0010】
図5(a)に示すようなHDD用ガスケット(シール材)の、同図の斜線部で示す部位にUV樹脂を塗布し、これを追加反射板のない従来の紫外線照射装置と追加反射板を設けた本発明による紫外線照射装置を用いてUV処理し、そのタッグ性能と接着力とを評価した。その結果を図5(b),(c)に示す。なお、試験に用いた本発明による紫外線照射装置では、従来の紫外線照射装置に対して、ピーク強度が10%程度向上し、ベルト中央部と端部の紫外線強度の差が約20%小さくなっていることが確認された(図2参照)。
タッグ性能は、カバーと基板とをガスケットでシールしたときのカバーの繰返し開閉(リワーク)に対する基板への密着性を、カバーを開ける際の荷重値で表わしたもので、上記荷重値をタッグという。ガスケットと基板とが過度に密着すると、ガスケットがカバーから剥離する恐れがある。図5(b)に示すように、本発明による紫外線照射装置を用いてUV処理したガスケットは、繰返しリワーク数に関わらず、従来のものに比べてタッグが小さく、タッグ性能が向上していることが分かる。
また、接着力は、硬化した樹脂を、図5(a)の矢印A及び矢印Bで示すベルト中央部側と矢印Cで示すベルト端部側において、ガスケットから引き剥がしたときの力(ピーリング力)の大きさにより評価した。その結果、本発明の紫外線照射装置を用いたUV処理では、ベルトの中央部(A,B)での接着力は現行のUV処理とほぼ同等であるが、端部(C)では現行のUV処理よりも高い接着力を得ることができた。これは、コンベヤベルトの端部においてUV効果が促進されたためであると考えられる。また、A,B,Cの各部におけるピーリング力の大きさの差も小さくなっていることから、本発明による紫外線照射装置では紫外線強度についてもより均一になったことが製品面からも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、紫外線の強度分布をより均一にすることができるだけでなく、紫外線ランプの端部側においても、十分な照射強度を得ることができるので、紫外線照射処理を効率よく行うことができるとともに、製品のバラツキを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の最良の形態に係る紫外線照射装置の構成を示す図である。
【図2】本最良の形態に係る紫外線照射装置のUV強度分布を示す図である。
【図3】本発明による追加反射板の他の例を示す図である。
【図4】本発明による紫外線照射装置の他の例を示す図である。
【図5】追加反射板の取付け効果を説明するための図である。
【図6】従来の紫外線照射装置の構成を示す図である。
【図7】従来の紫外線照射装置のUV強度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0013】
10 紫外線照射装置、11 紫外線ランプ、12 集光反射板、13 追加反射板、30 ワーク、40 コンベヤベルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を照射するビーム状の光源と、上記光源の少なくとも上部側を覆い上記光源からの紫外線を反射して上記光源の下部側に集光する集光反射板とを備えた紫外線照射装置において、上記光源の延長方向の端部側に上記光源からの直接光を反射する追加反射板を設けたことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
上記追加反射板を、上記光源の延長方向に垂直な反射面を有する平板状の反射板としたことを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
上記追加反射板を、紫外線を反射し可視光及び赤外線を透過する反射板としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紫外線照射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−221170(P2008−221170A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66002(P2007−66002)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】