説明

紫外線照射装置

【課題】エキシマランプにおいて放電が局所的に消失したときにも、当該放電の消失によるエキシマ光の強度の低下を確実に検知することができ、しかも、エキシマランプからのエキシマ光を高い効率で放射することができる紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】放電容器および当該放電容器の内表面に形成されたアルミナを含む紫外線反射膜を有するエキシマランプを備えてなる紫外線照射装置であって、
前記紫外線反射膜におけるアルミナからの蛍光を検出する光センサが設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電容器および当該放電容器の内表面に形成された紫外線反射膜を有するエキシマランプを備えてなる紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体素子の製造工程や液晶基板の製造工程においては、紫外線を照射することによって、基板の洗浄処理、アッシング処理または成膜処理が行われており、これらの処理を行うための紫外線光源としては、放電空間を形成する放電容器の外表面に一対の電極が配置されてなるエキシマランプが用いられている。
このエキシマランプにおいては、一対の電極間に高周波交流電圧が印加されると、放電容器内の放電空間において誘電体バリア放電が発生し、この誘電体バリア放電によってエキシマ用ガスに由来するエキシマ分子が形成され、このエキシマ分子によるエキシマ光が発生して外部に放射される。
【0003】
かかるエキシマランプとしては、放電容器における光出射部以外の部分の内表面に、例えばシリカおよびアルミナよりなる紫外線反射膜が形成されてなるものが知られている(特許文献1参照。)。
このような紫外線反射膜を有するエキシマランプによれば、放電容器内において発生した紫外線のうち光出射部以外の部分に向かう紫外線を、紫外線反射膜に反射させることにより、高い効率で紫外線を光出射部から外部に放射することができる。
【0004】
また、エキシマランプを備えた紫外線照射装置としては、エキシマランプにおける紫外線反射膜に光取出口を形成し、この光取出口からのエキシマ光の強度を光センサによって検知することにより、当該エキシマランプを制御する構成のものが知られている(特許文献2参照。)。
このような紫外線照射装置によれば、エキシマランプからのエキシマ光の強度を検知することにより、このエキシマ光の強度に基づいて当該エキシマランプを制御することができるため、エキシマランプの点灯中において、当該エキシマランプから放射されるエキシマ光の強度を安定に維持することができ、或いは、エキシマランプの点灯状態を確認することができる。
【0005】
而して、最近においては、被処理物の種類に応じて、当該被処理物に照射される紫外線の照度を調整することが求められており、このため、照度の小さい紫外線を照射する場合には、エキシマランプに例えば定格電力の70%程度の電力を供給することにより、当該エキシマランプによる紫外線の照度を調整することが行われている。
【0006】
しかしながら、上記の紫外線照射装置において、エキシマランプに定格電力より小さい電力を供給した場合には、以下のような問題があることが判明した。
すなわち、エキシマランプに定格電力より小さい電力を供給すると、放電容器内の放電空間における一対の電極間の一部の領域において、誘電体バリア放電が局所的に消失する現象が生じることがある。そして、このような現象が生じた場合において、放電が消失した領域内に紫外線反射膜の光取出口が形成されていないときには、放電の消失によってエキシマ光の強度が低下したことが、光センサによって検知されず、その結果、被処理物に対する紫外線照射処理が続行されてしまうため、被処理物における一部の領域において所期の紫外線処理を達成することが困難となる。
このような問題を解決するために、エキシマランプにおける紫外線反射膜に長手方向に沿って複数の光取出口を形成し、これらの光取出口の各々からのエキシマ光を光センサによって検知する手段も考えられるが、このような手段では、光取出口から放射されたエキシマ光が犠牲となるため、高い光の利用率が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−93986号公報
【特許文献2】特開2010−214294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、エキシマランプにおいて放電が局所的に消失したときにも、当該放電の消失によるエキシマ光の強度の低下を確実に検知することができ、しかも、エキシマランプからのエキシマ光を高い効率で放射することができる紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の紫外線照射装置は、放電容器および当該放電容器の内表面に形成されたアルミナを含む紫外線反射膜を有するエキシマランプを備えてなる紫外線照射装置であって、
前記紫外線反射膜におけるアルミナからの蛍光を検出する光センサが設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の紫外線照射装置においては、前記光センサには、熱線吸収フィルタが設けられていることが好ましい。
また、前記光センサの複数が前記エキシマランプの長手方向に沿って配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の紫外線照射装置によれば、紫外線反射膜に含まれるアルミナが例えば波長250nm以下の光によって励起されて波長690〜700nmの蛍光を発する性質を利用し、光センサによって紫外線反射膜におけるアルミナからの蛍光を検出するため、例えば光センサの配置位置を選択することにより、或いは複数の光センサをエキシマランプの長手方向に沿って配置することにより、エキシマランプにおいて放電が局所的に消失したときにも、当該放電の消失によるエキシマ光の強度の低下を確実に検知することができる。しかも、紫外線反射膜に光取出口を形成することが不要であるため、犠牲となる光の量が小さく、従って、エキシマランプからのエキシマ光を高い効率で放射することができる。
また、光センサに熱線吸収フィルタが設けられることにより、光センサが加熱されて劣化または損傷することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の紫外線照射装置の一例における内部の構成を示す説明用縦断面図である。
【図2】図1に示す紫外線照射装置の内部の構成を示す説明用横断面図である。
【図3】図1に示す紫外線照射装置におけるエキシマランプの外観を示す斜視図である。
【図4】図3に示すエキシマランプを長手方向に切断して示す断面図である。。
【図5】光センサに熱線吸収フィルタが設けられた構成を示す説明用断面図である。
【図6】本発明の紫外線照射装置の他の例における内部の構成を示す説明用縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の紫外線照射装置の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の紫外線照射装置の一例における内部の構成を示す説明用縦断面図であり、図2は、図1に示す紫外線照射装置の内部の構成を示す説明用横断面図である。
この紫外線照射装置は、下面に光出射用の開口が形成された、外形が略直方体状の例えばアルミニウムよりなるランプハウス10を有し、このランプハウス10内には、当該ランプハウス10内を上下に区画する例えばアルミニウムよりなる隔壁15が設けられており、これにより、隔壁15の下方にランプ収容室S1が形成されていると共に、隔壁15の上方には、電装部収容室S2が形成されている。
ランプハウス10内におけるランプ収容室S1には、紫外線L1を放射するエキシマランプ20が収容されている。この例のエキシマランプ20は、放電空間Sを形成する扁平な直方体状の放電容器21を有し、この放電容器21の両端には、ランプベース25が設けられている。このエキシマランプ20は、リード線26を介して、電装部収容室S2に収容された電装部(図示省略)に電気的に接続されている。
ここで、「エキシマランプ」とは、キセノンガスなどの放電用ガスが充填された放電空間を有し、この放電用ガスに放電を誘起せしめるための2つの電極のうちの少なくとも一方の電極と放電用ガスとの間に誘電体材料が介在するように構成されたランプをいう。
【0014】
図3は、図1に示す紫外線照射装置におけるエキシマランプの外観を示す斜視図あり、図4は、図3に示すエキシマランプを長手方向に切断して示す断面図である。
このエキシマランプ20の放電容器21内には、エキシマ用ガスが封入され、当該放電容器21における上壁部21Aおよび下壁部21Bの各々の外表面には、高電圧給電電極として機能する一方の電極22および接地電極として機能する他方の電極23が互いに対向して配置されている。また、放電容器20内における一端側(図1および図3において左端側)には、始動電極(図示省略)が設けられている。
図示の例のエキシマランプ20においては、放電容器21における下壁部21Bが、光出射部とされており、放電容器21における下壁部21Bを除く各壁部の内表面には、紫外線反射膜24が形成されている。
【0015】
放電容器21を構成する材料としては、放電空間S内において発生するエキシマ光例えば波長250nm以下の紫外線を良好に透過するものが用いられ、その具体例としては、合成石英ガラスなどのシリカガラス、サファイアガラスなどが挙げられる。
一方の電極22および他方の電極23を構成する材料としては、アルミニウム、ニッケル、金などの金属材料を用いることができる。また、一方の電極22および他方の電極23は、上記の金属材料を含む導電性ペーストをスクリーン印刷することにより、或いは上記の金属材料を真空蒸着することにより、形成することもできる。
【0016】
放電容器21の放電空間S内に封入されるエキシマ用ガスとしては、当該エキシマ用ガスによるエキシマ光によってアルミナが励起されて蛍光を発し得るもの、例えば波長250nm以下の紫外線を放射するエキシマを生成し得るものが用いられ、その具体例としては、キセノン、アルゴン、クリプトン等の希ガス、または、これらの希ガスと、臭素、塩素、ヨウ素、フッ素等のハロゲンガスとを混合した混合ガスなどを用いることができる。エキシマ用ガスの具体的な例を、放射される紫外線の波長と共に示すと、アルゴンガスでは124nm、クリプトンガスでは153nm、キセノンガスでは172nm、アルゴンとヨウ素との混合ガスでは191nm、アルゴンとフッ素との混合ガスでは193nm、クリプトンと塩素との混合ガスでは222nmである。
また、エキシマ用ガスの封入圧は、例えば10〜100kPaである。
【0017】
紫外線反射膜24は、アルミナを含むものであり、例えばシリカとアルミナとの混合物またはシリカとアルミナとの積層体により構成されている。
紫外線反射膜24におけるアルミナの含有割合は、3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3〜10質量%である。アルミナの含有割合が過小である場合には、後述する光センサ30によって、紫外線反射膜24におけるアルミナからの蛍光を検出することが困難となることがある。
【0018】
ランプハウス10における隔壁15には、エキシマランプ20における放電容器21の上壁部21Aの他端側(図1において右端側)に対向する箇所に開口16が形成されており、電装部収容室S2内には、隔壁15の開口16を介して、エキシマランプ20における放電容器21の上壁部21Aの他端側に対向するよう、光センサ30が設けられている。
【0019】
この光センサ30は、紫外線反射膜24におけるアルミナからの蛍光L2、具体的には波長690〜700nmの光を検出するシリコンフォトダイオードによって構成されている。
また、図5に示すように、光センサ30の受光面31には、例えば波長800nmを超える熱線を吸収する熱線吸収フィルタ35が設けられていることが好ましい。
【0020】
上記の紫外線照射装置においては、電装部(図示省略)からエキシマランプ20に給電され、当該エキシマランプ20における一方の電極22と他方の電極23との間に、高周波交流電圧が印加されることによって、放電容器21内の放電空間Sにおいて誘電体バリア放電が発生し、この誘電体バリア放電によってエキシマ用ガスに由来するエキシマ分子が形成されてエキシマ光が発生し、このエキシマ光による紫外線L1が、直接または紫外線反射膜24に反射されて放電容器21の下壁部21Bを介して下方に出射され、更にランプハウス10の外部に出射される。このとき、エキシマランプ20における紫外線反射膜24にエキシマ光が照射されると、当該紫外線反射膜24におけるアルミナが励起されて蛍光L2を発し、この蛍光L2が光センサ30によって検出される。
【0021】
以上において、電装部からエキシマランプ20に供給される電力が、当該エキシマランプ20の定格電力より低い電力例えば定格電力の70%の電力である場合には、放電容器21内の放電空間Sにおける一方の電極22および他方の電極23の間の一部の領域において、誘電体バリア放電が局所的に消失することがある。このような放電の消失は、放電容器21内における始動電極(図示省略)が設けられた一端側(図1において右端側)とは反対の他端側において生じやすい。
【0022】
而して、上記の紫外線照射装置によれば、放電容器21における上壁部21Aの他端側に対向するよう、紫外線反射膜24に含まれるアルミナからの蛍光を検出する光センサ30が設けられていることにより、放電容器21における上壁部21Aの他端側において放電が局所的に消失したときには、紫外線反射膜24における上壁部21Aの他端側に位置する部分から発する蛍光の強度も低下するため、当該放電の消失によるエキシマ光の強度の低下を確実に検知することができる。しかも、紫外線反射膜24に光取出口を形成することが不要であるため、犠牲となる光の量が小さく、従って、放電容器21内において発生するエキシマ光を高い効率で放射することができる。
また、光センサ30に熱線吸収フィルタ35が設けられることにより、光センサ30がエキシマランプ20からの光によって加熱されて劣化または損傷することを防止することができる。
【0023】
以上、本発明のフィルム用光照射装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
(1)図6に示すように、ランプハウス10における隔壁15に、エキシマランプ20における放電容器21の長手方向に沿って複数の開口16を形成し、電装部収容室S2内に、隔壁15の開口16の各々を介してエキシマランプ20における放電容器21の上壁部21Aに対向するよう、複数の光センサ30をエキシマランプの長手方向に沿って配置することができる。このような構成によれば、放電容器21内の放電空間Sのいずれの領域において誘電体バリア放電が局所的に消失したときにも、当該放電の消失によるエキシマ光の強度の低下を確実に検知することができる。
(2)エキシマランプ20は、図3および図4に示す構成のものに限定されず、例えば特開2010−56007号公報における図5に示す円筒状の放電容器を有するものであっても、同公報における図4に示す二重管構造の放電容器を有するものであってもよい。
(3)エキシマランプ20には、放電容器21の内表面における紫外線反射膜24が形成されていない領域および紫外線反射膜24の表面を覆うよう、蛍光体層が形成されることにより、当該蛍光体層からの光が外部に放射されるものであってもよい。このようなエキシマランプ20において、蛍光体層を構成する蛍光体としては、放電容器21内において発生するエキシマ光によって励起されて例えば波長250nm以下の蛍光を発するものが用いられる。
【符号の説明】
【0024】
10 ランプハウス 15 隔壁
16 開口
20 エキシマランプ
21 放電容器
21A 上壁部
21B 下壁部
22 一方の電極
23 他方の電極
24 紫外線反射膜
25 ランプベース
26 リード線
30 光センサ
31 受光面
35 熱線吸収フィルタ
L1 紫外線
L2 蛍光
S 放電空間
S1 ランプ収容室
S2 電装部収容室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電容器および当該放電容器の内表面に形成されたアルミナを含む紫外線反射膜を有するエキシマランプを備えてなる紫外線照射装置であって、
前記紫外線反射膜におけるアルミナからの蛍光を検出する光センサが設けられていることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記光センサには、熱線吸収フィルタが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記光センサの複数が前記エキシマランプの長手方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−98015(P2013−98015A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239866(P2011−239866)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】