説明

紫外線硬化型樹脂組成物およびその硬化物

本発明は下記一般式(I)
【化7】


(式中Rはそれぞれ独立に水素原子又はC1−C3アルキル基を示し、n、mは0〜5の繰り返しの数を示す。)で示される化合物(A)及び光重合開始剤を必須成分とする紫外線硬化型樹脂組成物を用いることにより、青色レーザーの透過性、透明性、低吸水性に優れ、かつ反りの少ない高耐久性を有する高密度光ディスク用保護コート膜若しくは接着剤層を得ることができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型樹脂組成物、その硬化物及び該硬化物を有する光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、実用化されている一般的な光ディスク記録媒体としてはCD(コンパクトディスク)、MO(光磁気ディスク)、CD−R(追記型)、CD−RW(書き換え型)等がある。これらは、1.2mmのポリカーボネート基板上に記録膜、反射膜を形成し、その上に外的要因からこれらを保護する目的で紫外線硬化型コート剤の保護層が設けられている。また、近年、さらなる記憶容量の向上のためにポリカーボネートの厚さを半分の0.6mmにし、2枚の基板を貼り合わせる事でポリカーボネート基板の複屈折の問題やレーザースポット径を小さくするといった課題をクリアーしたDVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、DVD+R、DVD+RW等が実用化されている。これらは、何れも0.6mmのポリカーボネート基板上に記録膜、反射膜等を形成し、2枚の基板を貼り合わせるための接着剤層を設け、最上部に上記と同様に保護の目的で保護層が設けられている。そしてこの接着剤層及び保護層に紫外線硬化型樹脂の硬化物が使用されている。
【0003】
しかしながら、来るデジタル放送時代の大容量化に対応する記録媒体として、DVD記録媒体では未だ容量不足である。そこで、次世代の高密度光ディスクとして基板上に記録層と、100μmの透明フィルムを積層し、ポリカーボネート基板側からではなく、透明カバー層側から青色レーザー光により書き込み、読み取りを行うタイプの光ディスクが提案され(特許文献1)、実用化されている。
【0004】
この光ディスクの記録層をカバーするカバー層の形成方法としては、100μmの透明フィルムを貼り合わせる方法と紫外線硬化型樹脂を用いて記録膜上に100μmの層を形成する方法とがあり、紫外線硬化型樹脂層の形成方法としては2P法、スピンコーター法とが提案されている。このような記録膜上に形成する紫外線硬化樹脂としては、例えば、特許文献2、特許文献3等に記載されている組成物などの2P剤が提案されている。また、特許文献4や特許文献5等に記載されている組成物などの保護コート剤が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−273147号公報
【特許文献2】特開平5−059139号公報
【特許文献3】特開平5−132534号公報
【特許文献4】特開平3−131605号公報
【特許文献5】特開平3−172358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された紫外線硬化樹脂の青色レーザーにおける405nmの波長での透過率は充分でない。また、これらの紫外線硬化型樹脂組成物を高密度光ディスクの透明カバー層に使用すると硬化収縮率が大きく、反りを発生し、さらに耐久性試験後により大きな反りが発生してしまうという問題があった。従って、青色レーザーにおける波長域での透過率が高く、かつ硬化収縮率が小さく、高密度光ディスクにおいても反り小さい紫外線硬化樹脂膜を得ることができる紫外線硬化樹脂組成物の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記した課題を解決すべく鋭意検討の結果、上記性能に適する樹脂組成物を見出したものである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(14)
(1)下記一般式(I)
【0008】
【化1】

(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子又はC1−C3アルキル基を示し、n、mは0〜5の繰り返しの数を示す。)
で示される化合物(A)および光重合開始剤(B)を含有する紫外線硬化型樹脂組成物、
【0009】
(2)膜厚100μm(プラスマイナス10μm)に塗布し、硬化させた硬化物膜において、405nmの波長の光透過率が60%以上となる請求項1に記載の紫外線硬化型樹脂組成物、
(3)重合開始剤(B)が1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−[4(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフォスフィンオキサイドからなる群から選択される少なくとも1つである前記(1)又は(2)に記載の紫外線硬化型樹脂組成物、
(4)(A)成分以外のエチレン性不飽和化合物(C)を含有する前記1〜3項のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物、
(5)エチレン性不飽和化合物(C)が(A)成分以外のアクリレートである前記(4)項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物、
(6)(A)成分以外のアクリレートが分子量400〜10000のアクリレートオリゴマーである前記(5)項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物、
(7)アクリレートオリゴマーがウレタンアクリレートおよび/またはエポキシアクリレートである前記(5)に記載の紫外線硬化型樹脂組成物、
(8)B型粘度計で測定した25℃の粘度が100〜5000mPa・Sである前記(1)ないし(7)項のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物、
(9)光ディスク用保護コート剤である、前記(1)ないし(8)項のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物、
(10)前記(1)ないし(9)項のいずれか一項に記載の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物、
(11)硬化物の吸水率(測定温度25℃)が2.0%以下で、硬化収縮率が6%以下である前記(10)項に記載の樹脂組成物の硬化物、
(12)硬化物の膜厚10〜150μmにおける青色レーザーの透過性が60%以上である前記(10)または(11)項に記載の硬化物、
(13)前記(10)ないし(12)項のいずれか一項に記載の硬化物の層を有する光ディスク、
(14)記録光および/または再生光が入射する側に硬化物の層を有する前記(13)項に記載の光ディスク、
に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物およびその硬化物は、青色レーザーの透過率がよく、透明性、低吸水性に優れ、かつ反りの少ない高耐久性を有する高密度光ディスク用保護層及びそのためのコート剤として有用なものであり、特に、青色レーザーを用いて読み取りおよび/または書き込みを行う光ディスクに極めて適したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、硬化した場合、青色レーザーの透過率がよく、硬化収縮率が小さく、更に、透明性、低吸水性に優れ、かつ反りの少ない高耐久性を有する高密度光ディスク用保護層若しくは接着剤層を形成しうる樹脂組成物及び保護コート剤及びその硬化物を提供するものである。また、該組成物はその他光ファイバ、光スイッチング素子等の光学用途に関わる材料にも適用することができる。以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の樹脂組成物において下記一般式(I)で示される化合物(A)は、主として硬化物の低吸水率性能および低収縮率性能に寄与するものである。しかし、該化合物の添加の目的は必ずしもそれに限られるものではなく、硬化物の青色レーザーの透過性、透明性、硬度若しくは柔軟性等、硬化物の他の性質の改善及び該樹脂組成物の自体の安定性、粘度等の性質の改善等を目的して使用されてもよい。一般式(I)の化合物は、例えば、水添されたビスフェノールA、水添されたビスフェノールF又は水添されたビスフェノールAF等の水添されたビスフェノールとε−カプロラクトンとを縮合し、次いで(メタ)アクリレート化することにより得ることができる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」等の用語は、一般的に使用されているように、メタクリレート及びアクリレートのいずれか一方若しくはその両者の意味で使用する。
【0013】
【化2】

(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子又はC1−C3アルキル基を示し、n、mは0〜5の繰り返しの数を示す。)
【0014】
本発明におけるC1−C3アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などを挙げることができる。また、一般式(I)に存在する2つのRは同じであっても、異なっていてもよい。
好ましいRとしては、水素、メチル基などを挙げることができ、2つのRが異なる場合は、水素とメチル基などの組み合わせが好ましい。
本発明の樹脂組成物に含有される化合物(A)の代表的なものは、例えば、一般式(I)において、Rがメチル基である水添されたビスフェノールA又はRが水素原子である水添されたビスフェノールFに、直接(メタ)アクリル酸を反応させてもよいが、好ましくは前記ビスフェノールにε−カプロラクトンを縮合し、得られる縮合物に、次いで(メタ)アクリル酸を反応させ、(メタ)アクリレート化することにより得ることできる。粘度、硬度、吸水率、収縮率等のバランスをとるために任意にε−カプロラクトンの縮合数(n及びm)を調整することができる。ε−カプロラクトンの縮合数(n及びm)の調整は、反応させるε−カプロラクトンのビスフェノールに対するモル数を適宜調整することにより行うことができる。また、一般式(1)において、Rがエチル基、n−プロキル基又はi−プロピル基である化合物、2つのRが異なる化合物等も、それぞれ対応するビスフェノールを原料として用いて、上記と同様にして、得ることができる。本発明の樹脂組成物では、水添されたビスフェノールAもしくは水添されたビスフェノールFを原料として得られる化合物(A)が好ましい。
【0015】
ε−カプロラクトンの縮合数(n、m)は各々独立に0〜5であり、好ましくは、n、mが0〜3である。また、n、mは同時に0ではない方が好ましい。n及びmは原料として用いるε−カプロラクトンのビスフェノールに対するモル数に応じてほぼ決まる数値であり、必ずしも整数である必要はない。
樹脂組成物中の化合物(A)の含量は、本発明の効果が達成される量であれば特に制限はなく、通常該樹脂組成物全体に対して5〜98重量%程度の範囲であり、場合によっては10〜96重量%(以下%は特に断りのない限り、重量%を表す)程度である。硬化物の低吸水率性能および低収縮率性能を高めるためには、該化合物(A)の含量を多くする方が好ましく、その場合、該化合物(A)の含量は20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%であり、50%以上が特に好ましい。上限は場合により99.5%程度まで可能であるが、実用的には97若しくは98%程度までである。
【0016】
本発明の樹脂組成物に含有される光重合開始剤(B)としては、通常の光ディスク用等としては、特に制限なく使用でき、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えばイルガキュア184;商品名;チバ・スペシャルティーケミカル社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュアー1173;商品名;チバ・スペシャルティーケミカル社製)、イルガキュア651(商品名;チバ・スペシャルティーケミカル社製)、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げることができる。しかし、種類によって青色レーザーの透過性等に影響を及ぼすので、青色レーザーの透過性のよいものが必要な場合は予め予備試験等で、青色レーザーの吸収性の少ないものを選択するするのがよい。例えば光重合開始剤の必要量を添加した該樹脂組成物を、ディスク基板上等に、例えば100μm(プラスマイナス10μm)程度に塗り、硬化させ、その硬化膜の405nmでの透過率が60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは75%以上になるように選択するのが好ましい。例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えばイルガキュア184;商品名)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(例えばダロキュアー1173;商品名等)、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン又は2,4,6−トリメチルベンゾイルジフォスフィンオキサイド等が好ましい。これらの光重合開始剤は、1種でも、2種以上でも、任意の割合で混合使用することも出来る。また、アミン類などの光重合開始助剤と併用することもできる。
樹脂組成物中の光重合開始剤(B)の含量は通常0.5〜20%程度であり、好ましくは1〜10%、より好ましくは2%〜10%程度、更に好ましくは3%〜10%程度である。
【0017】
本発明で使用してもよいアミン類等の光重合開始助剤としては、例えば、ジエタノールアミン、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等が挙げられる。光重合開始助剤の組成物中の含量は、0〜5%程度であり、含有しなくてもよいが含有するときは、0.1〜3%程度が好ましい。
【0018】
本発明の樹脂組成物においては、前記化合物(A)以外のエチレン性不飽和化合物(C)を含有することが出来る。
該エチレン性不飽和化合物(C)としては、エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されないが、前記化合物(A)以外の(メタ)アクリレート化合物が好ましく、例えば、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー等を挙げることができ、それらは必要により適宜単独で若しくは併用により使用することができる。(C)成分の含量は該樹脂組成物全体に対して0〜94.5%の範囲で含有しうる。含有する場合、その含量は1以上、好ましくは2%以上、更に好ましくは4%以上であり、そして88%以下、好ましくは85%以下である。他の成分含量が多い場合には78%以下、好ましくは58%以下、更に好ましくは48%以下であり、場合により40%以下、若しくは30%以下でもよい。
【0019】
エチレン性不飽和化合物(C)としての(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に1個の(メタ)アクリレート基を有する単官能モノマーであっても、また、分子中に2個以上の(メタ)アクリレート基を有する多官能モノマーであってもよい。これらのアクリレートモノマーとしては例えば置換基としてヒドロキシ基、炭素数1〜15程度のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基等の基を有してもよい炭素数1〜30程度、好ましくは炭素数1〜15程度のモノまたは多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を挙げることができ、これらは単官能若しくは多官能モノマーいずれであってもよい。また、多価アルコールがポリC1〜C5アルキレングリコール又はC2〜C4アルキレンオキサイド変性多価アルコールの場合は総炭素数が上記を超えるものであっても支障はない。これら場合のアルキレングリコール又はC2〜C4アルキレンオキサイドの縮合鎖におけるこれらの繰り返し単位数は大凡1〜4程度が好ましい。
分子中に1個の(メタ)アクリレート基を有する単官能モノマーとしては、例えば、ラウリルアクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルフォリン(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
また、分子中に2個以上(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレートモノマー(C)としては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス{(メタ)アクリロキシエチル}イソシアヌレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
これらアクリレートモノマーは1種でも、2種以上でも任意の割合で混合使用してもかまわない。アクリレートモノマーの該樹脂組成物中の含量は、組成物全体に対して0〜90%の範囲であり、場合により、1〜90%、好ましくは2〜85%である。場合により、0〜60%程度、好ましくは0〜50%程度である。また、場合により、上限は30%若しくは40%程度でもよい。
【0022】
エチレン性不飽和化合物(C)としてのアクリレートオリゴマーとしては、例えば、分子量400〜10000程度のアクリレートオリゴマーが挙げられ、具体的には分子量400〜10000のウレタンアクリレート及び分子量400〜10000のエポキシアクリレートを挙げることができる(分子量は光散乱法による重量平均分子量)。これらは単独でも、両者を併用してもよい。該(C)成分として、該オリゴマーを該樹脂組成物に含有するとき、好ましい効果を達成する場合がある。これらオリゴマーの含量は該樹脂組成物全体に対して0〜90%の範囲で含有しうる。含有する場合、その含量は1%以上、好ましくは2%以上、更に好ましくは4%以上であり、そして90%以下、好ましくは85%以下である。実用的には70%以下、好ましくは60%以下、更に好ましくは50%以下であり、場合により40%以下でもよい。
【0023】
分子量400〜10000のウレタン(メタ)アクリレートは、下記多価アルコールと有機ポリイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物との反応によって得られる。
多価アルコールとしては、例えば(1)脂肪族ポリオール、好ましくはC1〜C15より好ましくはC2〜C12脂肪族ポリオール、具体的にはネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール又は1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール及びその他の脂肪族アルコール例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリシクロデカンジメチロール、ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン等が挙げられ、また(2)前記脂肪族ポリオールと多塩基酸、好ましくはC3〜C12の多塩基酸(例えば、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等)との反応によって得られるポリエステルポリオール、及び(3)前記脂肪族ポリオールとε−カプロラクトンとの反応によって得られるカプロラクトンアルコール、及びポリカーボネートポリオール(例えば、前記脂肪族ポリオール、例えば1,6−ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートジオール等)、及び(3)ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコール等のポリC1〜C6アルキレングリコール、及びエチレンオキサイド変性ビスフェノール類、例えばエチレンオキサイド変性ビスフェノールA等があげられる。
有機ポリイソシアネートとしては、例えば、炭素数1〜20好ましくはC6〜C15の炭化水素残基にイソシアネート基が2以上、好ましくは2〜4個のイソシアネート基が結合した化合物が挙げられ、具体的にはイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルイソシアネート等が挙げられる。
ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物としては、例えばヒドロキシ置換C1〜C15炭化水素(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシ置換C2〜C10炭化水素(メタ)アクリレート、具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチロールシクロヘキシルモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシカプロラクトン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
分子量400〜10000のウレタン(メタ)アクリレートの含量は該樹脂組成物全体に対して0〜90%の範囲であり、含有する場合、その含量は1〜90%、好ましくは2〜85重量%である。また、前記オリゴマーの含量として記載した含量がそのまま適用できる。
【0024】
本発明の樹脂組成物で使用する分子量400〜10000のエポキシアクリレートとしては、特に制限はないが、ビスフェノール型エポキシアクリレートを用いることが好ましく、例えば、油化シェルエポキシ社製エピコート802、1001、1004等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びエピコート4001P、4002P、4003P等のビスフェノールF型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応によって得られるエポキシアクリレートが挙げられる。また、上記を水添した脂環式エポキシアクリレートも使用しても良い。分子量400〜10000のビスフェノール型エポキシアクリレートの含量は該樹脂組成物全体に対して0〜90%の範囲であり、含有する場合、その含量は1〜90%、好ましくは2〜85重量%である。また、前記オリゴマーの含量として記載した含量がそのまま適用できる。
【0025】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて高分子ポリマーとして、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリビニル系樹脂を含有することもできる。さらに、有機溶剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、レベリング剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、充填剤などの添加剤も併用することができる。これらの添加剤含量は該樹脂組成物全体に対して0〜30%の範囲であり、好ましくは0〜10%程度である。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、各成分を常法により20〜80℃で混合溶解して得ることができる。また、本発明の硬化物は、常法により紫外線、可視光線などの光線を樹脂組成物に照射することにより得ることができる。
次に本発明の樹脂組成物の好ましい組成の一例を下記する。
化合物(A) :5〜99.5%好ましくは20%〜98%、
より好ましくは40〜98%、更に好ましくは50%〜98%
光重合開始剤(B):0.5〜20%、好ましくは2%〜10%
化合物(C) :0〜94.5%、好ましくは0〜78%
より好ましくは0〜58%、更に好ましくは0〜48%
上記組成において化合物(C)を含む場合、化合物(A)と化合物(C)の好ましい組み合わせは、化合物(A)が、ビスフェノールA若しくはビスフェノールFを原料とした一般式(I)の化合物であり、化合物(C)が、少なくともアクリレートオリゴマーを48%以下の量において含む場合であり、この場合、化合物(C)として、更にアクリレートモノマーを含有してもよい。
【0027】
本発明の樹脂組成物の光照射硬化は、紫外〜近紫外の光線を照射するランプであれば光源を問わない。例えば、低圧、高圧または超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、(パルス)キセノンランプ、また無電極ランプなどが挙げられる。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、好ましくは、B型粘度計で測定した25℃の粘度が100〜5000mPa・S、より好ましくは200〜3000mPa・Sのものが望ましい。また、本発明の樹脂組成物においては、硬化収縮率が6%以下、好ましくは5.5%以下で、硬化物の吸水率(測定温度25℃)が2.0%以下、好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1.2%以下であるであることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は保護コート剤、特に光ディスク用保護コート剤として使用することが出来る。該樹脂組成物で保護コートを形成する場合、該樹脂組成物を、膜厚が10〜150μm、一般的には50〜100μmとなるように塗工するのが好ましく、塗工方法は問わない。一般的な塗工方法としてはスピンコート法、2P法、ロールコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0029】
本発明における樹脂組成物の硬化物層を有する光ディスクは、通常接着剤層若しくは保護膜(層)などとして、該樹脂組成物の硬化物を持つもので、一般的には基板上に記録膜、反射膜等を形成した後、最上部に該樹脂組成物を、好ましくは10〜150μmの厚さで塗工し、前記方法で該樹脂組成物層を硬化させ、保護膜を形成するか、または2枚の基板を貼り合わせる光ディスクの場合には、上記保護膜の他に、更に2枚の基板の貼り合わせ用の接着剤層を、該樹脂組成物を用いて形成させ、硬化させることにより得ることができる。また、次世代の高密度光ディスクの場合には、記録層をカバーするためのカバー層を該樹脂組成物で形成させ、硬化させるか、前記と同様にして、保護層を形成させ、硬化させることにより、得ることができる。なお、カバー層又は保護層の形成は、該樹脂組成物を、それらの層を形成する個所に常法により塗工し、硬化させることにより行えばよい。
また、次世代の高密度光ディスクには読み取りおよび/または書き込みに400nm前後の青色レーザーが使用されることから、膜厚10〜150μmの硬化物膜において380〜500nm付近の光透過率が60%以上であることが好ましい。より好ましくは70%以上、更に好ましくは75%以上である。特に本発明の組成物を100μmプラスマイナス10μmの膜にしたときの405nmの波長での透過率が上記のものである時より好ましい。
更には、本発明による光ディスクにおいては、記録光および/または再生光が入射する側に当該紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物層が構成されているものが好適なものとして挙げられる。
【0030】
以下、本発明について合成例、実施例を用いて詳細に説明する。
【0031】
合成例1
還流冷却器、攪拌機、温度計、温度調節装置および水分離機を備えた反応器に、水添ビスフェノールAとε−カプロラクトンの(モル比1:1)の縮合物113.44g、アクリル酸56.2g、硫酸2.8g、ハイドロキノン0.84g、トルエン157.5g、シクロヘキサン67.5gを仕込み、反応温度95〜105℃で生成水を溶媒と共沸留去しながら反応させ、生成水が11mlに達したところで反応の終点とした。反応混合物をトルエン140g及びシクロヘキサン60gの混合液に溶解し、25%苛性ソーダ水溶液で中和した後、15%食塩水50gで3回洗浄した。溶媒を減圧留去して下記構造式(A−1)の透明液体151gを得た。
【0032】
【化3】

【0033】
合成例2
還流冷却器、攪拌機、温度計、温度調節装置、および水分離機を備えた反応器に、水添ビスフェノールAとε−カプロラクトンの(1:2)の縮合物149.97g、アクリル酸56.2g、硫酸2.8g、ハイドロキノン0.84g、トルエン157.5g、シクロヘキサン67.5gを仕込み、反応温度95〜105℃で生成水を溶媒と共沸留去しながら反応させ、生成水が11mlに達したところで反応の終点とした。反応混合物をトルエン140g及びシクロヘキサン60gに溶解し、25%苛性ソーダ水溶液で中和した後、15%食塩水50gで3回洗浄した。溶媒を減圧留去して下記構造式(A−2)の透明液体186gを得た。
【0034】
【化4】

【0035】
合成例3
還流冷却器、攪拌機、温度計、温度調節装置、および水分離機を備えた反応器に、水添ビスフェノールFとε−カプロラクトンの(1:2)の縮合物141.01g、アクリル酸56.2g、硫酸2.8g、ハイドロキノン0.84g、トルエン157.5g、シクロヘキサン67.5gを仕込み、反応温度95〜105℃で生成水を溶媒と共沸留去しながら反応させ、生成水が11mlに達したところで反応の終点とした。反応混合物をトルエン140g及びシクロヘキサン60gに溶解し、25%苛性ソーダ水溶液で中和した後、15%食塩水50gで3回洗浄した。溶媒を減圧留去して下記構造式(A−3)の透明液体177gを得た。
【0036】
【化5】

【実施例】
【0037】
実施例1〜6及び比較例1〜2
上記の合成例1〜3で得られた化合物を使用して、以下の実施例及び比較例をおこなった。表1中の部は、重量部である。表1に示した組成からなる紫外線硬化型樹脂組成物を常法(撹拌混合)により、調製した。
【0038】
【表1】


【0039】
なお、表中に示した各成分の略号は下記の通りである。
UX−6101:ポリエステル系ウレタンアクリレート(分子量;2700±500)、日本化薬社製
UX−0937:ポリエーテル系ウレタンアクリレート(分子量;1500±500)、日本化薬社製
R−115:ビスフェノールA型エポキシアクリレート(分子量;550±100)、日本化薬社製
R−604:ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、日本化薬社製
PEG−400DA:ポリエチレングリコールジアクリレート、日本化薬社製
LA:ラウリルアクリレート、日本油脂社製
イルガキュアー184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・スペシャルティーケミカル社製 光重合開始剤
ダロキュアー1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン チバ・スペシャルティーケミカル社製 光重合開始剤
BP−100:ベンゾフェノン、日本化薬社製
EPA:4−ジメチルアミノエチルベンゾエート、日本化薬社製
【0040】
本発明の発明において、粘度はB型粘度計で測定したものを基準とした。
本発明において収縮率とは、25℃における硬化前の液比重と硬化して得られる25℃における膜比重から下記の数式(1)から算出した値とした。
【0041】
【数1】

【0042】
本発明において吸水率とは、JIS K−7209 7.2.1に準拠の方法により得られた値とした。即ち、サンプルとして硬化物膜を約0.5g取り、0.1mgの単位まで秤量する(その重量をmlとする)。23℃プラスマイナス1℃の蒸留水に24時間浸漬後試験片を水から取り出し、表面の水分をキムワイプで拭き取り、1分以内に、該サンプルの重量を0.1mg単位まで秤量する(その重量をm2とする)。そして、下記式によって吸水率を求めた。
吸水率=(m2−m1)×100/ミリリットル
m1:初期重量
m2:浸漬後の試験片重量
本発明の紫外線樹脂組成物においては、硬化収縮率が6%以下で、硬化物の吸水率(測定温度25℃)が2.0%以下であることが好ましい。
また、透過率の測定は、ポリカーボネート基盤にスピンコートで樹脂を100±10μm塗布し、UV硬化後、ポリカーボネートの基盤をリファレンスとして405nmの波長の透過率を測定することにより行った。
なお、実施例2において、イルガキュアー184の代わりに、イルガキュアー651を用いる以外は実施例2と同様にして、得られた硬化物膜の405nmの波長の透過率を測定したところ、該透過率は50%と低いものであり、青色レーザー光ディスク用に使用するにはやや不満足なものであった。
なお硬化物膜の透過率は下記のようにして求めた。
ブランクのポリカーボネート基盤の透過率をT1
硬化物膜を有するポリカーボネート基盤の透過率をT2
とすると、
硬化物膜の透過率(%)=100−(T1−T2)
【0043】
本発明において反りの評価は、アルミをスパッタしたDVD基板を使用した。表1記載の組成物を各々スピンコーターによりアルミスパッタされたDVD基板上に塗布し、平均膜厚が100μmの塗膜とした。その塗膜をUV照射機(日本電池社製CS−30L、80w/cm高圧水銀灯)のランプ高さを10cmに設定し、積算光量1000mj/cm2のエネルギー量で硬化させた。得られた試験片を24時間放置後、ガラス板上にのせ、反りの評価を行った。
○・・・ほとんど反りが認められない。
△・・・試験片の片側を指で押さえると、反対側が持ち上がるが2mm以下である。
×・・・試験片の片側を指で押さえると、反対側が5mm以上持ち上がる。
【0044】
本発明において耐久性の評価は、反りの評価に用いた試験片を使用し80℃、85%RH環境下、500時間放置した。目視による反射膜の状態を観察した。
○・・・接着直後から反射膜に変化が見られない。
△・・・反射膜に変色または、ピンホールが少し見られる。
×・・・反射膜に変色または、ピンホールが大きく見られる。
【0045】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物およびその硬化物は、透明性、低吸水性に優れ、かつ反りの少ない高耐久性を有する高密度光ディスク用保護コート剤とその硬化物を提供することを可能にしたものであり、青色レーザーを用いて読み取りおよび/または書き込みを行う光ディスクに極めて有用である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物およびその硬化物は、主として、光ディスク用保護コート剤とその硬化物を提供するものであるが、その他、光ファイバ、光スイッチング素子等の光学用途に関わる材料にも適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化6】

(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子又はC1−C3アルキル基を示し、n、mは0〜5の繰り返しの数を示す)
で示される化合物(A)および光重合開始剤(B)を含有する紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
膜厚100μm(プラスマイナス10μm)に塗布し、硬化させた硬化物膜において、405nmの波長の光透過率が60%以上となる請求項1に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
光重合開始剤(B)が1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフォスフィンオキサイドからなる群から選択される少なくとも1つである請求項1に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分以外のエチレン性不飽和化合物(C)を含有する請求項1に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
エチレン性不飽和化合物(C)が(A)成分以外のアクリレートである請求項4に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分以外のアクリレートが分子量400〜10000のアクリレートオリゴマーである請求項5に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
アクリレートオリゴマーがウレタンアクリレートおよび/またはエポキシアクリレートである請求項6に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
B型粘度計で測定した25℃の粘度が100〜5000mPa・Sである請求項1ないし7のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
光ディスク用保護コート剤である、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項11】
硬化物の吸水率(測定温度25℃)が2.0%以下で、硬化収縮率が6%以下である請求項10に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項12】
硬化物の膜厚10〜150μmにおける青色レーザーの透過性が60%以上である請求項9に記載の硬化物。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる層を有する光ディスク。
【請求項14】
記録光および/または再生光が入射する側に硬化物からなる層を有する請求項13に記載の光ディスク。

【国際公開番号】WO2005/019282
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513334(P2005−513334)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012117
【国際出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(500538092)株式会社日本化薬福山 (14)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】