説明

紫外線硬化型樹脂組成物及びハードコートフィルム

【課題】 ガラス転移温度が高く、一定以上の破断伸度を持つウレタンアクリレートを主成分とする樹脂組成物を用いて、高硬度で屈曲性の高いハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】 2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール100重量部と1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン242重量部を70℃で約5時間攪拌・反応させせて生成物を得る。次いで、生成物100重量部とペンタエリスリトールトリアクリレート及びテトラエステルアクリレート202重量部を25℃で約10時間攪拌・反応させウレタンアクリレートを得る。次いでウレタンアクリレート100重量部に対し、光重合開始剤を5重量部加え、撹拌し、紫外線硬化型樹脂を得、紫外線硬化型樹脂100重量部に対し、2−ブタノンを100重量部加え撹拌したものを、バーコーターを用いて、PETフィルム200mJ/cmの紫外線を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高硬度で屈曲性の高い紫外線硬化型樹脂組成物及びハードコートフィルムに関する。金属および金属酸化物に対する密着性に優れた紫外線硬化型樹脂組成物および成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なでしたものであり、主に電子機器などに用いられ、表面の傷を防止する目的で使用される。一般的に表面硬度が高いほど、傷を防止する効果が高いため高硬度への要求は高まっている。
【特許文献1】特開2004−67950号公報
【特許文献2】特開2003−183345号公報
【特許文献3】特開平7−149869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ハードコートフィルムの用途はディスプレイ、タッチパネルや携帯電話など多岐に渡り、それに伴って、曲面への使用や、複雑な形状への加工が求められている。こうした加工の際に、フィルムに大きな変形が加わる場合もあり、屈曲性が要求されることも少なくない。硬度の高い樹脂は一般的に脆いため、曲面への加工や一時的な変形により、クラックが入りやすいという問題があった。これを解決するため、高硬度で屈曲性の高いハードコートフィルムが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、
側鎖にアルキル基が導入されたポリオールを用いたウレタンオリゴマーと水酸基を含有する多官能アクリレートを反応させたウレタンアクリレートを主成分とし、示差走査熱量計(DSC)により測定したガラス転移温度が110℃以上となる紫外線硬化型樹脂組成物である。
請求項2の発明は、
破断伸度が0.8%以上であることを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型樹脂組成物である。
請求項3の発明は、
該紫外線硬化型樹脂組成物が透明な基材フィルム上に塗布、硬化されてなることを特徴とするハードコートフィルムである。
請求項4の発明は、
請求項3記載のハードコートフィルムの鉛筆硬度がJIS K 5600−5−4に基づく測定結果で、2H以上であり、かつ耐屈曲性がJIS K 5600−5−1に基づく測定結果で、12mm以下であることを特徴とするハードコートフィルムである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ガラス転移温度が高く、一定以上の破断伸度を持つウレタンアクリレートを主成分とする樹脂組成物を用いて、高硬度で屈曲性の高いハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。ハードコートフィルムに用いられる樹脂は一般的にアクリル樹脂が多く、硬度を上げるために、架橋密度を高めることができる多官能アクリレートを原料として用いるのが一般的である。原料となるモノマー、オリゴマーはその骨格により分類できるが、中でもウレタンアクリレートは高強度で伸びのある強靭性の高い皮膜を形成する樹脂として知られている。ウレタンアクリレートは一般的にポリオール、イソシアネート及び水酸基を含有するアクリレートを反応させることで得られ、原料であるポリオール、イソシアネートの構造を選ぶことで柔軟性と硬さのバランスを取ることが可能である。本発明は柔軟性と硬さを併せ持つウレタンアクリレートを合成するために、樹脂のガラス転移温度及び破断伸度を指標として、樹脂配合を検討したものである。アクリレートを多官能(3官能以上)とすることで、架橋密度が上がり、ガラス転移温度を向上させることができる。さらにポリオールの側鎖にアルキル基を導入したものは、適度に架橋密度を下げることになり、柔軟性が向上する。
【0007】
本発明に用いる側鎖にアルキル基を導入したポリオールとしては、ネオペンチルグリコール、2−アルキル−2−アルキル−1,3−プロパンジオール、3−アルキル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジアルキル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デセニル基などを挙げられ、好ましくは、該アルキル基の炭素数が2〜4のものである。具体的には2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールが挙げられる。
【0008】
ポリイソシアネートは、例えば、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及び、これらジイソシアネートの誘導体や変性体などが挙げられる。
【0009】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等が挙げられる。
【0010】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物等が挙げられる。
【0011】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等が挙げられる。
【0012】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,5(2,6)−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどが挙げられる。
【0013】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレットジオン、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)およびクルードTDIなどが挙げられる。
【0014】
更に、ポリイソシアネートの変性体としては、例えば、上記したポリイソシアネートやポリイソシアネートの誘導体と、ポリオールとを、ポリイソシアネートのイソシアネート基が、ポリオールの水酸基よりも過剰となる当量比で反応させることによって得られる、ポリオール変性体等が挙げられる。
【0015】
水酸基を含有する多官能アクリレートとしては2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレートなどが挙げられる。
【0016】
本発明に用いる基材フィルムの材質は、透明性及び屈曲性の高いプラスチックであれば、特に限定されるものではなく、PC、アクリル、PS、PBT、PET、PEN(ポリエチレンナフレタート)、TAC(トリアセチルセルロース)などを単独あるいは2種以上をアロイ化したものが挙げられる。樹脂の密着性を向上させる目的で基材フィルム上に種々プライマー処理を施しても良い。

本発明に用いる樹脂は紫外線にて硬化させるため光重合開始剤を配合する。光重合開始剤は、例えば、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン、アシルフォスフィンオキサイド、チタノセン系化合物、オキシムエステルなどを用いることができる。
【0017】
これらの光重合開始剤の市販品としてはIRGACURE184、369、651、DAROCUR1116、1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)、LucirinLR8728(BASF社製、商品名)、ユベクリルP36(UCB社製、商品名)などが挙げられる。
【0018】
本発明において、樹脂組成物を基材フィルム上に形成する方法は、特に制限されるものではなく、公知のスプレーコート、ディッピング、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などを用いることができる。フィルム上に形成する樹脂組成物の硬化後の厚さは1μm〜15μmが好ましい。厚さが1μm未満であると、十分な硬度が発現せず、15μmを越えると基材フィルムの屈曲性を損なうだけではなく、カールが発生したり、わずかな変形でクラックが入りやすくなったりするなど、作業性を著しく悪化させるため好ましくない。
【0019】
本発明で用いる紫外線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂等の樹脂や、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛、珪砂、クレー、タルク、シリカ化合物、二酸化チタン等の無機充填剤の他、シラン系やチタネート系などのカップリング剤、殺菌剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、帯電防止剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、レベリング調整剤、消泡剤、着色顔料、防錆顔料等の配合材料を添加してもよい。また、耐光性向上を目的に酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加しても良い。
【0020】
紫外線を照射する場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用い、100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域で、50〜400mJ/cmのエネルギーを有する紫外線を照射する。
【0021】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
【実施例1】
【0022】
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール100重量部と1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン242重量部を70℃で約5時間攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基のピークが1/2になった時点で反応を終了させた。
【0023】
上記反応物100重量部とペンタエリスリトールトリアクリレート及びテトラエステルアクリレート(新中村化学工業株式会社製 NKエステル A−TMM−3LM−N、商品名)202重量部を25℃で約10時間攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基のピークがなくなった時点で反応を終了させ、ウレタンアクリレートを得た。
【0024】
次いでウレタンアクリレート100重量部に対し、光重合開始剤としてDAROCUR1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)を5重量部加え、撹拌し、紫外線硬化型樹脂を得た。上記紫外線硬化型樹脂を200mJ/cmの紫外線で硬化させ、厚さ0.2mmの樹脂シートを得た。
【0025】
また、上記紫外線硬化型樹脂100重量部に対し、2−ブタノンを100重量部加え撹拌したものを、バーコーターを用いて、PETフィルム(100μm厚)上に製膜した後、温風循環式乾燥機にて80℃で1分間乾燥させ、200mJ/cmの紫外線を照射して、膜厚7μmの樹脂硬化膜を形成したハードコートフィルムを得た。
【実施例2】
【0026】
実施例1の2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールの代わりに2,2−ジエチルー1,3−プロパンジオール83重量部を用い、同様の方法で厚さ0.2mmの樹脂シート及びハードコートフィルムを得た。
【0027】
比較例1
実施例1の2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールの代わりに1,3−プロパンジオール48重量部を用い、同様の方法で厚さ0.2mmの樹脂シート及びハードコートフィルムを得た。
【0028】
比較例2
実施例1の2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールの代わりに1,5−ペンタンジオール65重量部を用い、同様の方法で厚さ0.2mmの樹脂シート及びハードコートフィルムを得た。
【0029】
比較例3
実施例1のウレタンアクリレートをポリエステルアクリレート(東亞合成株式会社製 アロニックスM−8100K、商品名)に変更し、同様の方法で厚さ0.2mmの樹脂シート及びハードコートフィルムを得た。
【0030】
シートの評価方法
上記、実施例及び比較例にて作製した樹脂シートについて下記の測定を行った。
(1)ガラス転移温度の測定
JIS K 7121に基づき、示差走査熱量測定(DSC)により、樹脂のガラス転移温度を測定した。
(2)破断伸度の測定
JIS K 7127に基づき、樹脂の破断伸度を測定した。(温度23±2℃、湿度50±5%)
(ハードコートフィルムの評価方法)
上記、実施例及び比較例にて作製したハードコートフィルムについて下記の測定を行った。
(3)屈曲性の測定
JIS K 5600−5−1に基づき、ハードコートフィルムの耐屈曲試験を行った(温度23±2℃、湿度50±5%)。マンドレルの直径は6、8、10、12、16、20、25、32mmとし、直径の大きいものから順に試験を行い、ハードコート層に初めてクラックが発生したマンドリルの直径を屈曲性の値とした。
(4)鉛筆硬度の測定
JIS K 5600−5−4の規定に基づき、ハードコートフィルムの鉛筆硬度を測定した。測定装置は、株式会社東洋精機製作所製の鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P)を用いた。

上記の評価結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
上記の評価結果より、実施例1及び2のハードコートフィルムは、鉛筆硬度と屈曲性の両方で高い値を示し、高硬度で屈曲性の高いハードコートフィルムとして好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖にアルキル基が導入されたポリオールを用いたウレタンオリゴマーと水酸基を含有する多官能アクリレートを反応させたウレタンアクリレートを主成分とし、示差走査熱量計(DSC)により測定したガラス転移温度が110℃以上であることを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
破断伸度が0.8%以上であることを特徴とする請求項1記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
該紫外線硬化型樹脂組成物が透明な基材フィルム上に塗布、硬化されてなることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項4】
該ハードコートフィルムの鉛筆硬度がJIS K 5600−5−4に基づく測定結果で、2H以上であり、かつ耐屈曲性がJIS K 5600−5−1に基づく測定結果で、12mm以下であることを特徴とするハードコートフィルム。


【公開番号】特開2009−62499(P2009−62499A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234002(P2007−234002)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】