説明

細線供給装置

【課題】 細線に真直性を与え、細線の安定供給を可能とする細線供給装置を提供すること。
【解決手段】 マグネットワイヤーの細線1bを所定の位置に送り出す細線供給装置において、一つは、細線を把持する第一チャック2bと第二のチャック2eを配置し、両チャックで細線を把持した状態でチャック間の距離が広がるようチャックを移動させ、細線を塑性域まで延伸する細線供給装置である。二つ目は、第一の送り出しローラー3cとその前方に配置した第二の送り出しローラー3dに周速差をつけることで、細線を連続的に塑性域まで延伸しながら送り出す細線供給装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細線供給装置に関し、特に電子部品の組立工程においてボビン等に巻かれたマグネットワイヤーを引き出し所定の寸法に切断し部品に実装するのに好適な細線供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の細線供給装置の概略図である。ボビン4aに巻かれている細径の細線4bの一端を引き出し、前記細線径より僅かに大きい細径穴を有する案内部4cに通し、細線フィード4dで所定の位置に送り出し、切断部4eで切断する方法が特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−40211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
案内部4cの目的は前記細線4bを所定の位置に案内することにあり、細径穴径を大きくしすぎることは望ましくない。したがってその細径穴は一般的に前記細線4bの直径より僅かに大きい程度であり、真直性を有さない前記細線4bを細線フィード4dで送り出した場合に、細径穴の内部で抵抗が生じ細径穴の手前で容易に屈曲してしまうという欠点があった。
【0005】
このことは生産設備において稼働率低下を引き起こす。
【0006】
また一般的に前記細線4bはボビン4a等に巻かれたことによる影響で湾曲していることが多く、切断後の細線にも僅かな湾曲が残ることがあった。
【0007】
そのことは特に近年小型化が著しい電子部品等においては、組立工程における細線の実装精度等に影響し歩留まり低下の要因になる。
【0008】
そこで、本発明の技術的課題は、細線供給装置において細線に真直性を付与する機構を提供し、前記細線を所定の位置に安定供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第一の発明は、細線と嵌合する細径穴を有する案内部と、前記細線を把持するとともに前記案内部に細線を送り出す第一のチャック部と第二のチャック部と、細線を収納するボビン部と、連続する細線を切断分離する切断部いわゆるカッター部とを備える細線供給装置において、前記細線を把持する第一のチャックと第二のチャックを配置し、該両チャックで前記細線を把持した状態でチャック間の距離が一定量広がるよう前記第一のチャック部または前記第二のチャック部の少なくとも一方を移動させ、前記細線を塑性域まで延伸する機能を付与したことを特徴とする細線供給装置である。
【0010】
上記目的を達成するための第二の発明は、細線と嵌合する細径穴を有する案内部と、前記細線を把持するとともに前記案内部に細線を送り出す第一のチャック部と第二のチャック部と、細線を収納するボビン部と、連続する細線を切断分離する切断部いわゆるカッター部とを備える細線供給装置において、第一の送り出しローラーとその前方に配置した第二の送り出しローラーに周速差をつけることで、前記細線を連続的に塑性域まで延伸しながら送り出すことを可能とした細線供給装置である。
【発明の効果】
【0011】
第一の発明によれば、マグネットワイヤーの細線を所定の位置に送り出す細線供給装置において、細線を把持する第一のチャックと第二のチャックを配置し、両チャックで細線を把持した状態でチャック間の距離が、細線の材質、線径などの諸条件により設定される量広がるようチャックを移動させ、チャック間に存在する細線を塑性域まで延伸することで真直性を向上させ僅かな加工硬化により弾性限界を向上させることができるため、細線を所定の位置に安定して供給することが可能である。
【0012】
第二の発明によれば、マグネットワイヤーの細線を所定の位置に送り出す細線供給装置において、第一の送り出しローラーとその前方に配置した第二の送り出しローラーに細線の材質、線径などの諸条件により設定される周速差をつけることで、細線を連続的に塑性域まで延伸ながら送り出すことができるため、真直性と僅かな加工硬化による弾性限界を向上と一定の伸長量を付与することができ、細線を所定の位置に安定して供給することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態に係る細線供給装置を以下に実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
(実施例1)
図1は、第一の発明による細線供給装置の側面図である。
【0015】
図1に示すように、ボビン1aから引き出した細線1bを位置決めする案内部1cと、細線1bを順送する細線フィード部1dと、細線フィード部1dの近傍に細線延伸部1eと、送り出された細線1bを所定寸法に切断する切断部1fが配置されている。
【0016】
図2は、図1の細線延伸部1eの詳細図である。
【0017】
図2に示すように、第一のチャック2bと第一のチャック2bの後方には直動ガイド2cとアクチュエータ2dからなる第二のチャック2eが第一のチャック2bとの距離Tの位置に配置されている。
【0018】
まず、第一のチャック2bで細線2aを把持する。第一のチャック2bは細線2aを把持するのみで細線の供給方向に対して平行に移動しない。次に第二のチャック2eで細線2aを把持する。第二のチャック2eは直動ガイド2cを介してアクチュエータ2dにより第一のチャック2bとの距離を広げる方向にストロークtだけ移動し、両チャックにより細線2aを延伸する。
【0019】
このとき第一のチャック2bと第二のチャック2e間に存在する細線2aには引張り荷重が加わり、塑性変形と加工硬化を生じる。したがって弾性限界が向上した真直な細線となる。
【0020】
細線として径0.2mmのマグネットワイヤーを用い、細線の累積送り長さ120mm毎に変位量10mmの延伸加工を行ったところ、8.3%の加工ひずみが付与された。細線の真直度が確保され、かつ細線が曲がりにくく、なおかつ細線に過度のストレスを与えない必要十分な加工ひずみを付与することができた。
【0021】
(実施例2)
図3は、第二の発明による細線供給装置の側面図である。
【0022】
図3に示すように、ボビン3aから引き出した細線3bを第一の送り出しローラー3cとその前方に配置した第二の送り出しローラー3dに通し、案内部3eから切断部3fに導く。
【0023】
第一の送り出しローラー3cと第二の送り出しローラー3dは、ともに等しい直径としているが、第二の送り出しローラー3dにはより歯数の少ない小径のプーリーを取り付けてあり同一のモーターでベルト駆動している。そのため第二の送り出しローラー3dの周速は第一の送り出しローラー3cの周速よりも僅かに速い。
【0024】
また、それぞれのローラーと従動ローラー3gが、細線3bを滑らせることなく押さえつけている。
【0025】
周速差があるため、第二の送り出しローラー3dの方がより多くの細線4bを送り出す。
【0026】
すなわち二つのローラー間に存在する細線3bには、常に所定のひずみが加わり塑性変形と加工硬化を生じる。したがって弾性限界が向上した真直な細線が連続的に供給される。
【0027】
細線として線径0.2mmのマグネットワイヤーを用い、第二の送り出しローラー3dと第一の送り出しローラー3cの回転比が13:12となるように構成した。これにより細線に8.3%の加工ひずみが付与された。細線の真直度が確保され、かつ細線が曲がりにくく、なおかつ細線に過度のストレスを与えない必要十分な加工ひずみを付与することができた。
【0028】
本実施例においてはプーリー径を変更しない限り一定の加工ひずみの細線が供給されることになる。
【0029】
本実施例では、プーリーにより第一及び第二送り出しローラーの回転比を決定しているが、ローラーの直径や駆動するモーターの回転数を個別に設定することでも代用可能である。
【0030】
以上のように本発明の細線供給装置によれば、細線には真直性が与えられ、且つ僅かな加工硬化により弾性限界が向上するため、所定の位置に安定して供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第一の発明による細線供給装置の側面図。
【図2】本発明の第一の発明による細線延伸部の詳細図。
【図3】本発明の第二の発明による細線供給装置の側面図。
【図4】従来の細線供給装置の概略図。
【符号の説明】
【0032】
1a ボビン
1b 細線
1c 案内部
1d 細線フィード部
1e 細線延伸部
1f 切断部
2a 細線
2b 第一のチャック
2c 直動ガイド
2d アクチュエータ
2e 第二のチャック
3a ボビン
3b 細線
3c 第一の送り出しローラー
3d 第二の送り出しローラー
3e 案内部
3f 切断部
3g 従動ローラー
4a ボビン
4b 細線
4c 案内部
4d 細線フィード
4e 切断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細線と嵌合する細径穴を有する案内部と、前記細線を把持するとともに前記案内部に前記細線を送り出す第一のチャック部と第二のチャック部と、前記細線を収納するボビン部と、連続する前記細線を切断分離するカッター部とを備える細線供給装置において、前記第一のチャック部と前記第二のチャック部で前記細線を把持した状態で前記二つのチャック部間の距離が広がるように前記第一のチャック部または前記第二のチャック部の少なくとも一方を移動させ、前記細線が塑性域まで延伸する機能を付与したことを特徴とする細線供給装置。
【請求項2】
細線と嵌合する細径穴を有する案内部と、前記細線を把持するとともに前記案内部に前記細線を送り出す第一の送り出しローラー部と第二の送り出しローラー部と、前記細線を収納するボビン部と、連続する前記細線を切断分離するカッター部とを備える細線供給装置において、前記第一の送り出しローラーとその前方に配置した前記第二の送り出しローラーに周速差をつけることで、前記細線を連続的に塑性域まで延伸しながら送り出すことを特徴とする細線供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−101394(P2009−101394A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276305(P2007−276305)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】