説明

細胞、病原体又はウイルスを除去するための超常磁性ナノ粒子

その表面上に結合パートナーを発現する標的細胞、病原体、又はウイルスを対象から選択的に取り除くための、体外又はインビボ方法及び装置を提供する。一実施態様において、該装置は、体外回路を含み、体外回路は、少なくとも、磁石及び磁性ナノ材料を捕獲できる取り外し可能な磁化可能基材を含む、磁気濾過器;及び体外回路を通る流体を移動させる、該磁気濾過器と流体連通するポンプを含む。官能化超常磁性ナノ粒子は、エキソビボで、患者由来の生体液と混合されるか又は患者に注入され、標的細胞、病原体、ウイルスを複合化し、かつその後、遊離ナノ粒子が生物流体から磁気濾過器で捕獲される。任意に、官能化ナノ粒子は、治療薬を含み、送達する。一実施態様において、該治療薬は、該ナノ粒子が標的細胞、病原体、又はウイルスと結合するときに放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2008年6月17日に出願の米国仮出願U.S.S.N第61/073,161号及び2008年6月19日に出願の米国仮出願U.S.S.N第61/073,973号に対して、優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、磁性ナノ粒子を使用及び除去するための、特に癌の治療のための装置及び方法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
すべての型の癌は、米国における2番目の主な死亡原因である。大部分の癌の死亡率は、多くの場合、原発腫瘍から離れた細胞の転移性拡散に関連がある。改良された化学物質及び放射線治療が健康な細胞への少ない副次的損傷を生じるにもかかわらず、標的とされる物理療法の大きな市場は残されている。転移細胞又は腫瘍腫瘤の外科的切除後に残る細胞が、患者からより効果的に除去される場合、長期の生存率を大きく伸ばすことができる。
【0004】
腹部癌は、現在癌を抱える1000万人以上の人々の40%を占め、毎年250,000人以上が新たに腹部癌と診断され、そのうちの多くは、手術が好ましい及び推奨された治療法の選択肢であり、特に、腫瘍が外科的処置可能であり、かつ該処置により副次的損傷のリスクが低い場合の後期段階において検出される。しかし、多くの場合、外科的処置の間に悪性細胞が自由になり、腹腔内に残される。腫瘍の外科的摘出後、通常、化学療法が残存悪性細胞を殺すために推奨されるが、化学療法は完全に有効でない。
【0005】
多くの卵巣癌再発は、腹部(網、肝臓など)の第2の領域に自由に動く癌細胞の転移の結果である。手術後の卵巣及び他の癌を治療するために必要とされる予後及び療法は、腫瘍腫瘤の外科切除後に残存する細胞が患者からより効果的に除去されることができる場合、大きく改善される。
【0006】
多くの欠点は、現在利用可能な癌療法と関連している。標的化能(targetability)を改善し、健康的な細胞への副次的損傷を低減させ、かつ最終的に患者のための長期予後を改善することができる治療的アプローチが必要とされる。
【0007】
ほとんど考慮されなかった別の領域は、それらの治療的巡回が終了した後の、身体からのナノ粒子の除去である。現在、提案される処置の多くは、事実上、外科的であり、高度に侵襲的である。最小限に侵襲的な技術は、生物医学的な手順においてナノ粒子を使用する社会的受容を増加させることができる。
【0008】
従って、患者から癌細胞を取り除くための改良された装置及び方法を提供することが本発明の目的である。
本発明の更なる目的は、患者からナノ粒子を除去するための改良された方法を提供することである。
本発明の更なる目的は、患者の癌の治療及び/又は除去を改善するための方法を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
(本発明の要旨)
その表面上に結合パートナーを発現する標的細胞、病原体又はウイルスを対象から選択的に取り除くための方法及び装置を提供する。一実施態様において、該装置は、少なくとも、磁石及び磁性ナノ材料を捕獲することができる取り外し可能な磁化可能基材;及び体外回路を通る流体を移動させる、該磁気濾過器と流体連通したポンプを含む、体外回路を含む。該磁石は、磁場中において磁性ナノ材料を捕獲するのに十分な磁場を生成することができる。好ましい実施態様において、該標的細胞は、癌細胞及び/又は病原体に感染している細胞である。該装置は、体外又はインビボ使用のために設計されることができる。官能化超常磁性ナノ粒子は、エキソビボで患者由来の生体液と混合されるか、又は患者に注入される。その後、該ナノ粒子を含む該生体液は、磁気濾過器に輸送され、標的細胞、病原体又はウイルス、及び任意の遊離ナノ粒子に複合化された任意のナノ粒子を取り除く。任意に、官能化ナノ粒子は、治療薬を含み、かつ送達する。一実施態様において、該治療薬は、該ナノ粒子が標的細胞、病原体又はウイルスと結合するときに放出される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1A及び1Bは、超常磁性ナノ粒子を用いる、生物流体のエキソビボ治療のための例証的な装置の概略図である。
【図2】図2A〜Cは、超常磁性ナノ粒子を用いる、患者のインビボ治療の血液透析装置に対する例証的な変更態様の概略図である。
【図3】図3は、3匹のBalb/C雌マウスの腹膜から抽出された細胞集団のHey及びBG-1細胞の抽出効率の棒グラフである。比率は、3匹のマウスの各々に実施した5つのカウントからの平均値とした。エラーバーは、標準偏差を示す。
【図4】図4A〜Kは、患者914の腹水サンプルのフローサイトメトリ分析のドットプロットである。図4A〜Cは試験1〜3のドットプロットであり、ゲートされた集団、頻度及び集団ラベル(1〜4)を示す。図4D〜Fは、患者914(試験1〜3)の濾取サンプルのフローサイトメトリ分析のドットプロット線であり、未処置の腹水試験(試験1)、頻度及び集団ラベル(1〜4)からコピーされたゲートを示している。図4G〜Iは、ペプチド接合体を有しないナノ粒子を用いて、患者サンプル(患者914)から抽出された濾取物のドットプロットである。集団ゲートは、未治療の腹水及び純粋なナノ粒子サンプルに対して行われる、先の試験からコピーされた。図4J及びKは、グルクロン酸で被覆され且つペプチド官能基を有する(図4J)及び有しない(図4K)超常磁性ナノ粒子のドットプロットであり、未処置の腹水試験(試験1)からコピーされたゲートを示している。
【図5】図5は、実施例3において使用される実験的セットの概略図である。
【図6】図6は、コントロールAグループ(「コントロール」)(36日目で直線)、コントロールBグループ(「処置/ナノ粒子なし」)(44日目で終わる段階的な線)、及び実験グループ(処置/ナノ粒子あり)(60日目で終わる段階的な線)に対する、腹腔内注射後の日数で生存している、特定グループのマウスの%の生存曲線である。
【図7】図7は、HIV-1サンプルの試験数に対するp24のpg/mlの線グラフであり、超常磁性ナノ粒子なしでの実験、接合体を有しない高濃度の超常磁性ナノ粒子での実験、低濃度の抗cp120接合体を有する低濃度超常磁性ナノ粒子での実験、又は高濃度の抗cp120接合体を有する高濃度の超常磁性ナノ粒子での実験である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
(I.装置)
磁気濾過器/トラップを含む種類の異なる装置及びシステムを用いて、インビボ又はエキソビボにおいて患者を、その表面上で結合パートナーを発現する標的細胞、病原体又はウイルスと結合するように設計された超常磁性ナノ粒子で、治療することができる。一実施態様において、標的細胞は、特定の表面膜結合パートナーを発現する異常細胞である。一実施態様において、ナノ粒子は、一つ以上の癌細胞と特異的に結合するように設計された、一つ以上の分子によって官能化される。
【0012】
一実施態様において、装置は、体外回路を含み、該体外回路は、磁場中において磁性ナノ材料を捕獲するのに十分な磁場を生成できる磁石、及び磁性ナノ材料を捕獲することができる取り外し可能な磁化可能基材を含む、磁気濾過器;及び該体外回路を通る流体を移動させる、該磁気濾過器と流体連通しているポンプ;を含む。
【0013】
別の実施態様において、一つ以上の磁気濾過器は、磁性ナノ粒子を捕獲する既存の装置と結合される。
好ましくは、生物流体と接触する装置の要素の全ては、滅菌可能である。装置の全体にわたって使用されるチューブが滅菌可能であってもよいが、幾つかの実施態様において、典型的には、使用中にチューブを配置することができ、従って、チューブが滅菌可能であることは要件でない。
【0014】
本明細書中で用いられる「生体液」又は「生物流体」は、哺乳類由来、通常、ヒト由来の任意の流体を意味する。生体液は、血液、血清、血漿、脳脊髄液、リンパ及び腹水を含むが、これらに制限されない。
【0015】
(A.磁気濾過器)
磁気濾過器(10)は、磁性、常磁性、及び/又は超常磁性ナノ粒子の結合に適切な任意の形状又はサイズ、及びそれらと結合する材料を有することができる。
【0016】
磁気濾過器(10)は、少なくとも一つの磁石(12)を含み、好ましくは、磁化可能基材(14)も含み、任意に容器(16)を含む。
【0017】
一実施態様において、磁気濾過器は、磁化可能基材を含まない。この実施態様において、磁気濾過器は、ナノ粒子が通過する容器、及び該容器の壁の少なくとも一部分に結合した一つ以上の磁石(12)を含む。磁石は、容器の壁の外面にあってもよく、又は容器の内部表面(すなわち、ナノ粒子を含む生物流体と接触する側)にあってもよい。
【0018】
(a.磁石)
磁気濾過器(10)は、永久磁石又は電磁石などの磁石(12)を含む。磁石は、磁場中において磁性ナノ材料を捕獲するのに十分な磁場を生成することができる。
【0019】
典型的には、磁石は、超常磁性ナノ粒子と磁石又は磁化可能材料との接触の点で測定して、少なくとも約500ガウスの磁束場(magnetic flux field)を提供する。より大きな磁束場、例えば1,500ガウス以上又は2,500ガウス以上を有する磁石を用いることができるが、典型的には、それらは要求されない。
【0020】
一実施態様において、磁気濾過器は、磁場を生じる外部磁石(12)、及び磁気誘引性材料で形成されたスクリーン(14)を含む。別の実施態様において、スクリーン及び磁石は、一成分である。
【0021】
本明細書中で用いられる「磁石」は、それ自身の磁場を生じ、かつ磁場に反応する材料を意味する。磁石は、磁化を維持する永久磁石、及び以前の磁化のそれらの記録を失う一時的な磁石を含む。
【0022】
本明細書中で用いられる「磁気誘引性材料」は、磁場を生じないが、磁場に引き付けられるか又は磁場の存在下で互いに引き付けられる材料を意味し、常磁性体材料を含む。
磁気誘引性材料は、以下の材料が挙げられるが、これらに制限されない:鉄、好ましくはテフロン、ポリイミド又はパリレンで被覆された鉄、又はそれが生体適合性となる別の適切な材料、及び鋼である。
【0023】
(i.永久磁石)
任意の永久磁石を、磁気濾過器内に含ませてもよい。好適な永久磁石は、強磁性体及びフェリ磁性体を含む。磁石は、以下の材料が挙げられるが。これらに制限されない:ネオジム希土類、サマリウムコバルト希土類、セラミックフェライト、及びアルニコ(アルミニウムニッケルコバルト)である。
【0024】
(ii.電磁石)
一実施態様において、磁気濾過器は、電磁石を含む。この実施態様において、電磁石は、好ましくは、つなぎ(tether)を介してモジュラ電源に取り付けられる。つなぎは、導体を有することに加えて、電磁プローブ及びリード線を冷却するために、導管を水又はガス循環に提供することができる。安全目的のために、つなぎは、好ましくは編組接地線を有する。従って、電磁石を駆動するために高電流を輸送する導電性リード線が、何らかの形で露出した場合、つなぎは、接地点に短絡され、電源が直ちにシャットダウンされるであろう。
【0025】
永久磁石の代わりに電磁石を使用する利点は、磁場がより局在され、結果としてより集中されたより強い磁場になることである。加えて、電磁石は切換可能であり、使用中でないときに、容易に電源を切ることができる。
【0026】
加えて、電磁石は、モニタとしての機能を果たすことができる。なぜなら、それは、それに引きつけられる別の鉄材料の存在をモニタし、かつ示すことができるためである。このように、電磁石電源の数値又はグラフィックインジケータは、電磁石に引きつけられる磁性ナノ粒子の存在及び/又は相対量に関しての情報をユーザに提供できる。
【0027】
(b.スクリーン)
好ましくは、スクリーン(14)は、加圧滅菌できる材料などの滅菌可能な材料から形成される。好ましくは、磁性ナノ材料を捕獲することができる磁化可能基材は、スクリーンである。
【0028】
好ましくは、スクリーンは、容器(16)から取り外し可能であり、かつ交換可能である。これによって、濾過された粒子は、容易にスクリーンから除去され、装置の他の部分を分解することなく試験することができる。また、これによって、掃除されたフィルタを交換し、同じ患者で再利用するか、又は滅菌して別の患者で再利用することができる。
【0029】
(i.形状)
一実施態様において、スクリーン(14)は、磁石より大きな表面積を含み、磁性ナノ粒子がスクリーンの表面に接着されるように最大空間を提供する。
【0030】
一実施態様において、スクリーンは、コイルの形状である。別の実施態様において、スクリーンは、長方形の断面を有し、メッシュ又は格子の形態である。別の実施態様において、スクリーンは、ナノ粒子が付着できる複数の薄板を含む。
【0031】
(ii.材料)
スクリーンは、好ましくはスクリーンを生体適合性にするために適切な被覆材で被覆された鉄又は鋼などの磁気誘引性材料で、典型的に、形成される。
【0032】
(c.容器)
磁気濾過器のための容器(16)は、入口(17)及び出口(18)、並びにナノ粒子のための適切な容積、生体適合性懸濁流体、及び生物流体を含み、一つが用いられる場合、スクリーンを含むように形成される。一実施態様において、容器は、スクリーンを容器に取り付けるためのスロット又はクリップ(19a,b)などの取付手段を含む。容器は、所定の治療又は一連の治療に対して、要求量のナノ粒子及び生物流体を含むように適切な容積を有する。任意には、容器は、容器の内側に流体量を示す目盛りをつけられる。任意に、容器は、流体量、温度又は容器内の物質のその他の特性を示す一つ以上のセンサ(20)を含む。センサは、プロセッサで電気通信又は無線通信される。好ましくは、プロセッサは、管理コンポーネント(150)の一部である。
【0033】
任意の適切な材料を、容器の形成に用いることができる。好ましくは、容器は、滅菌可能である。典型的な材料は、ガラス、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどを含む。
【0034】
(B.エキソビボ治療のための体外装置)
一実施態様において、装置は、患者由来の一以上の流体を取り出し、(該流体を患者の外部に取り出した後)該流体に磁性ナノ粒子を加え、かつそれに結合された任意の物質とともに該磁性ナノ粒子を取り除き、最終的に、その処理された生体液を該患者に戻すように設計される。
体外装置の各種構成要素の様々な異なる構造を使用することができる。2つの例証的な構成要素は、図1A及び1Bに例示される。
【0035】
体外装置(100)は、典型的に、以下の構成要素を含む:生体液にナノ粒子を供給するためのリザーバ(120)、磁気濾過器(10)、ポンプ(130)、及び装置の各種構成要素を連結し、装置の一つ以上の要素を通って生物流体及び/又はナノ粒子の流れを可能にするチューブ(160)である。典型的には、装置は、混合チャンバー(140)をも含み、ナノ粒子及び生体液が磁気濾過器へ入る前に混合される。好ましくは、装置は、少なくとも一つの管理コンポーネント(150)をも含む。好ましくは、これらの構成要素は、ハウジング(180)内に含まれる。
【0036】
細胞表面上に結合パートナーを発現する標的細胞を選択的に取り除くための例証的な装置を、図1に示す。それは、入口及び出口を有するリザーバを含む。使用中、リザーバは通常、結合パートナーで官能化された超常磁性粒子で充填され、それは、標的細胞の表面上の結合パートナーと結合する。装置は、リザーバと流体連通している磁気濾過器を含み、該磁気濾過器は、磁性粒子を結合することができる磁石及びスクリーンを有する。最終的に、装置は、磁気濾過器と流体連通しているポンプを含み、該ポンプは、リザーバから磁気濾過器に流体を移動させる。
【0037】
(a.リザーバ)
リザーバ(120)は、ナノ粒子及び生体適合性懸濁流体を含むように設計され、任意に、該リザーバは、緩衝液又は他の試薬で充填されることができる。リザーバは、所定の治療又は一連の治療に対して、要求量のナノ粒子を含むように適切な容積を有する。任意の適切な容器(122)を、リザーバとして用いることができる。任意には、容器は、容器内の流体量を示す目盛りをつけられる。任意に、容器は、流体量、温度又は容器内の物質のその他の特性を示す一つ以上のセンサ(124)を含む。センサは、プロセッサで電気通信又は無線通信される。好ましくは、プロセッサは、管理コンポーネント(150)の一部である。
【0038】
任意の適切な材料を、リザーバの形成に用いることができる。好ましくは、リザーバは滅菌可能である。リザーバは、ガラス、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどから形成される。
【0039】
リザーバは、ナノ粒子、懸濁化剤、緩衝液及び/又は他の流体がリザーバに入る入口(126)を有する。また、リザーバは、ナノ粒子、懸濁化剤、緩衝液及び/又は他の流体がリザーバを出る出口(128)を含む。任意に、リザーバは、装置を通過した生物流体が必要に応じて再循環される、再循環入口(129)を含む。幾つかの実施態様において、再循環入口及び入口は同じであり、他の実施態様において、それらは別々の入口である。
【0040】
入口は、リザーバに入れられるナノ粒子、懸濁化剤、緩衝液及び/又は他の流体を含む容器、例えば、バッグ又は他の入れ物、又はシリンジなどに結合するために、任意に適切なコネクタを含む。再循環入口が同じでありかつ入口であるそれらの実施態様において、コネクタはまた、生物流体を運搬するチューブに結合することによって、該入口が、再循環される生物流体と流体連通するのを可能にする。任意に、コネクタは、2つの入口ポート及び一つの出口ポートを有するT-バルブなどのバルブである。
【0041】
(b.磁気濾過器)
磁気濾過器(10)の各種実施態様は、上記に記載されている。体外装置の好ましい実施態様において、磁気濾過器は、外部磁石(12)、好ましくは電磁石、磁気誘引性で形成されたフィルタ(14)、及び容器(16)を含む。
【0042】
いくつかの実施態様において、装置は、一つの磁気濾過器を含む。他の実施態様において、装置は、一つ以上の磁気濾過器を含む。
スクリーンは、容器(16)内に配置され、好ましくは、そこから取り外し可能である。
【0043】
容器は、入口(17)及び出口(18)を含み、該入口は、生物流体及びナノ粒子の混合物が容器に入ることを可能にし、該出口は、濾液が容器から出ることを可能にする。一実施態様において、図1Aに図示されているように、入口(17)は、チューブ(160)に連結され、生物流体及びナノ粒子の混合物を含む容器と接続される。一実施態様において、出口(18)は、チューブに連結され、ポンプ(130)と接続される。
【0044】
別の実施態様において、図1Bに図示されているように、入口(17)は、チューブ(160)と連結され、バルブ及びチューブを介してポンプ(130)に取り付けられる。一実施態様において、出口(18)は、バルブ(180b)と連結されるチューブに接続し、循環のためのリザーバへ、又は患者への輸送のための生物流体出口(174)へ、生物流体の流れを方向付ける。
【0045】
(c.ポンプ)
ポンプ(130)は、装置の様々な要素に生体液を移動させ、それを処置後に患者の体内に戻すように設計される。一実施態様において、ポンプは、典型的には、チューブを介して少なくとも磁気濾過器及びリザーバと流体連通している。別の実施態様において、ポンプは、混合チャンバー、リザーバ及び磁気濾過器と流体連通している。
所望の流速のために適切な力を提供する任意のポンプを用いることができる。
【0046】
(d.混合チャンバー)
一実施態様において、生物流体は、磁気濾過器に入る前に、混合チャンバー(140)内でナノ粒子と混合される。
混合チャンバーは、一つ以上の入口(142)及び典型的には一つの出口(144)を含む。混合チャンバーは、一つ以上の入口(142)を通って、リザーバ(120)及び生物流体入口(172)と流体連通している。
【0047】
一実施態様において、図1Aに図示されているように、混合チャンバー(140)は、出口(144)を通して磁気濾過器(10)と流体連通している。
別の実施態様において、図1Bに図示されているように、混合チャンバー(140)は、出口(144)を通してポンプ(130)と流体連通している。
【0048】
ナノ粒子及び生物流体は、2つの異なるチューブ(160a及び160b)を通して混合チャンバーに入ることができるが、一実施態様において、それらは、一つのチューブ(160c)を通して混合チャンバー(140)に入る。この実施態様において、生物流体入口(172)に連結されたチューブ(160a)は、第1のバルブ(180a)に接続し、リザーバに連結しているチューブは、同じ第1のバルブ(180a)に接続する。また、第1のバルブ(180a)は、出口(182a)を含み、チューブの近位端(162)でチューブ(160c)と接続し、チューブの遠位端(164)は、混合チャンバー(142)への入口に接続する。
【0049】
(e.管理コンポーネント)
好ましくは、装置は、一つ以上の管理コンポーネントを含み、該管理コンポーネントは、装置の様々なパラメータ、制限されないが流速、流体温度、圧力、動作時間、循環時間、及び電磁石のオン又はオフなどを制御するためのコンピュータハードウェア及びソフトウェアを有するコンピュータを含む。
また、管理コンポーネントは、典型的に、様々なパラメータをモニタ及び操作するためのユーザインタフェースを含む。
【0050】
(f.ハウジング)
ハウジング(170)は、体外装置の各種構成要素を覆う。好ましくは、ハウジングは、生物流体入口(172)及び生物流体出口(174)を含み、それらは、チューブ又は他の適切なコネクタを介して患者に接続可能である。
【0051】
ハウジングはまた、管理コンポーネントにより制御される様々なパラメータをモニタ及び操作するためのユーザインタフェースを含むことができる。これらの構成要素は、プロセッサと電気通信又は無線通信され、好ましくは管理コンポーネント内にある。
【0052】
(g.バルブ)
必要というわけではないが、典型的には、装置は、装置の様々な要素を通る流体の流れを促進し、かつ制御する、一つ以上のバルブを含む。
図1Aに示すように、好ましくは、装置は、T-バルブ(180a)などの第1のバルブを含み、該バルブは、生物流体入口に連結されるチューブ(160a)、リザーバに連結されるチューブ(160b)、及び混合チャンバーへの入口に連結されるチューブ(160c)を接続する。
【0053】
好ましくは、図1Aに示すように、装置は、T-バルブ(180b)などの第2のバルブを含み、該バルブは、磁気濾過器から濾液を運搬するポンプの出口に連結されるチューブ(160f)、濾液をリザーバに再循環させるリザーバに連結されるチューブ(160g)、及び濾過された生物流体を運搬し且つそれを患者への適切なコネクタ、例えばカテーテル又は針を介して患者に返す生物流体出口(174)に連結されるチューブを接続する。
【0054】
別の実施態様において、装置は、3つの以上バルブを含むことができる。典型的な構成は、図1Bに示され、該装置は、上記の第一のバルブを2つ含み、かつ生物流体及びナノ粒子の混合物が混合チャンバー(140)を出た後にそれを運搬するポンプの出口に連結されるチューブ(160i)、生物流体及びナノ粒子の再循環混合物を運搬するリザーバに連結されるチューブ(160k)、及び生物流体及びナノ粒子の混合物を運搬する磁気濾過器(10)に連結されるチューブ(160i)を接続する第3のバルブ(180c)を含む。
【0055】
(h.チューブ)
装置の要素を通して輸送される様々な流体は、典型的に、各要素間のチューブ(160)内に含まれる。所望の流速のための適切な直径を有する任意の医療等級のチューブを使用することができる。好適なチューブ材料は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリウレタン及びウレタンなどの熱可塑性物質を含み、チューブは、それらの混合物又は組み合わせで形成される。
適切な直径は、.350"と同じ大きさの外径、及び.005"以下の内径の範囲である。
【0056】
(i.任意の構成要素)
(i.磁気遮蔽)
任意に、磁気濾過器は、磁気遮蔽(200)によって囲まれ、患者及び医師を磁場から保護する。磁気遮蔽は、磁場をそれ自体に引き入れ、遮蔽容器周囲に磁力線のための経路を提供する。この種の遮蔽の効果は、材料の透磁率に伴って減少し、一般に、非常に低い磁場強度、及び材料が飽和する高い磁場強度の両方で衰える。低い残留磁界を達成するために、磁気遮蔽(200)は、一方が他方の内部にある幾つかの囲いを含むことができ、その各々は、その内部で磁場を連続して減少させる。
【0057】
遮蔽は、磁気濾過器を囲うために適切な幾何学を有する。磁気遮蔽のための好ましい形状は、磁気濾過器を囲う閉じた容器である。任意の適切な遮蔽材を使用することができる。典型的な材料は、Mu-metal(商標)、MuShield(商標)、高透磁性磁気遮蔽材料(非配向80%のニッケル-鉄-モリブデン合金)、GIRON(商標)磁気遮蔽フィルム、及び類似の材料が含まれる。
【0058】
(ii.加熱器)
装置は、制御される温度とすることができる。任意に、装置は、加熱器(210)を含み、装置の全体を通る流体流れ及び/又は装置を、選択された温度又は温度領域で維持する。
【0059】
(iii.センサ)
任意に、装置は、流れ回路及びバルブを通る生物流体の流体圧力を検出する一つ以上の圧力センサを含み、特にパージされた生物流体が対象の体内に再導入される場合、該回路を通る生物流体の流れを調整する。
【0060】
一実施態様において、装置は、光センサ又は類似の検出器などのセンサを含み、一以上の磁性、常磁性体、又は超常磁性ナノ粒子の存在を決定し、それによって、バルブ(180b)を通る生物流体の流れを、生物流体出口(174)へ又は再循環されるリザーバ(120)へ方向付けする。センサが、一以上の磁性、常磁性体、又は超常磁性ナノ粒子が生物流体に存在することを決定する場合、管理コンポーネントは、バルブを通る流れを、再循環されるリザーバ(120)に方向付ける。センサが、生物流体が磁性、常磁性体、又は超常磁性ナノ粒子を含まないことを決定する場合、管理コンポーネントは、バルブを通る流れを、患者に戻される生物流体出口(174)へ方向付ける。従って、このセンサは、超常磁性ナノ粒子が対象の循環系に入ることを防止する。
【0061】
一実施態様において、一以上の磁性、常磁性体、又は超常磁性ナノ粒子の存在を決定するためのセンサ(220)は、ポンプの出口(130)(例えば図1Aを参照)に連結するチューブに位置する。別の実施態様において、一以上の磁性、常磁性体、又は超常磁性ナノ粒子の存在を決定するためのセンサ(220)は、磁気濾過器の出口(10)に連結するチューブに位置する。
【0062】
一実施態様において、ナノ粒子と標的細胞又は病原体との間の十分なレベルの複合が生じたか否かを決定するためのセンサ(230)は、ポンプの出口(130)(例えば図1Aを参照)に連結するチューブに位置する。このセンサによって得られたこのデータは、典型的には、管理コンポーネントに通信され、バルブ(180c)を通る生物流体の流れを、磁気濾過器(10)へ、又は混合時間を増やし、濾過前により大きな複合を可能にするリザーバ(120)へ方向付ける。
【0063】
(iv.サイフォンチューブ又はサンプリングポート)
任意に、装置は、一つ以上の流線のサイフォンチューブ又はサンプリングポートを含み、試験のための生物流体サンプルの除去ができる。一実施態様において、装置は含む。
【0064】
(B.インビボ治療のための装置)
図1A及び1Bにおいて表した体外装置は、インビボ装置として使用することもできる。しかし、装置を使用する前に、ナノ粒子は、通常、注入などを経て患者に非経口的に投与される。
【0065】
インビボ装置のための別の実施態様は、図2A〜2Cで表される。図2A〜2Cは、標準的な血液透析又は血液濾過装置の変更態様を示し、抽出される流体から磁性ナノ粒子を除去するために、磁気濾過器(10)が透析装置の回路に導入される。
【0066】
図2Aに示すように、患者の生物流体は、患者の体に存在し、磁性ナノ粒子が除去される磁気濾過器(10)を通る。図2Aに示すように、磁気濾過器(10)は、生物流体流れと直接接触し、かつ標準的な半透膜(220)の位置に隣接して設置できる。
【0067】
磁気濾過器は、回路において、どこにでも配置されることができる。図2Bに示すように、磁気濾過器は、回路の始めに、任意の他のフィルタの前に位置できる。図2Cに示すように、磁気濾過器(10)は、回路(240)に、バイパスに含まれることができる。一実施態様において、バイパス回路は、生物流体流れを調整するために装置に含まれることができる。
【0068】
(C.別の治療システムとの一体化装置)
任意に、磁気濾過器、体外装置、又はインビボ装置のいずれか一つを、別の治療システムと組み合わせ、併用療法を提供することができる。
【0069】
(III.システム)
一実施態様において、上記のような、複数の官能化超常磁性ナノ粒子、及び体外装置、インビボ装置、及び/又は磁気濾過器を含むシステムを提供する。
【0070】
(A.超常磁性ナノ粒子)
適切な超常磁性ナノ粒子は、選択されたリガンド結合する大きい表面積を提供し、生物学的物質の低い非特異的吸収を有する。加えて、ナノ粒子は、リガンドの生物学的活性を妨げない。ナノ粒子はまた、それらが導入される生体液に十分に分散し、実用磁場がある場合でのみ凝集する。
超常磁性ナノ粒子は、一つ以上の生体適合材料で被覆することができ、生体内に導入された場合に免疫応答を発現することはない。
【0071】
ナノ粒子は、通常、独立の悪性細胞又は血液由来の癌と特異的に結合するペプチド、疑似ペプチド、抗体又は他のリガンドなどの特別な成分で官能化される。官能化粒子は、種類の方法、特に腹膜内(癌のための腹部外科後の残存悪性細胞と結合させるため)、又は静脈内(血液由来病原体又は白血病細胞と結合させるため)の方法で導入されることができる。上記の装置を用いる物理的な抽出を使用して、患者から粒子/病原体又は粒子/感染細胞の複合体を除去し、実質的に改善された予後をもたらし得る。
【0072】
他の実施態様において、超常磁性ナノ粒子は、生体外で患者の生体液に投与される。好ましくは、超常磁性ナノ粒子は、適切な担体を含む懸濁液で投与される。担体は、治療を受けている対象と生理学的に適合性であり、等張リン酸塩緩衝食塩水(PBS)溶液などの流体である。任意に、担体はまた、システムの血液の凝固を予防するためにヘパリンを含む。別の実施態様において、担体はまた、有効量の抗生物質、例えばペニシリン又はアンピシリンなどを含み、ナノ粒子と関連し得る任意の細菌生育を減らす。担体はまた、好ましくは、生理的pHとなるように製剤化される。
【0073】
ある場合において、ナノ粒子及び液体担体が流れ回路に導入され、ナノ粒子が担体に比較的均一に分散することを確実にするように、ナノ粒子懸濁液の攪拌が必要とされてもよい。
【0074】
(材料)
(a.超常磁性)
ナノ粒子は、超常磁性である。超常磁性ナノ粒子は、磁場がある場合に磁化して、それが外された場合には消磁される。従って、粒子は、磁場が適用されるまで凝集しない。超常磁性ナノ粒子は、本明細書中に記載されている装置の使用及び方法に特に適している。なぜなら、それらは、粒子が多数分散するので、比表面積優位性を維持し、かつインビボ用途にとっては、塞栓症などの不都合な生理学的作用をもたらし得る凝集を防止するためである。
【0075】
超常磁性材料は、小強磁性クラスタ(例えば結晶子)から成り、該クラスタは、熱変動下で方向をランダムに反転させることができるように非常に小さい。その結果、該材料は全体として、外部印加磁場以外に磁化しない。
【0076】
超常磁性は、磁性材料がキュリー又はネール温度未満の温度で常磁性と類似の挙動を示すことができる現象である。これは、小さい長さ-スケール現象であり、粒子の磁気モーメントの方向を変えるのに要求されるエネルギーは、周囲熱エネルギーと同等である。この点で、粒子が方向をランダムに反転させる速度が重要になる。
【0077】
超常磁性は、ヒステリシスループを用いて検証されることができる。ヒステリシスループは、通常、誘導磁化(M)を印加外部磁界(H)の強さと比較する。磁気現場密度B:は、図に示されるように誘導磁化値(M)に代わることができる。残留磁気及び保磁力は、ヒステリシスループから決定されることができる。残留磁気は、磁場が取り除かれたときの、該材料において保持されている磁化であり、保磁力は、逆方向に印加され、材料の磁化をゼロに戻すために必要な磁場の強さである。ヒステリシスは、磁石上の仕事量であり、ヒステリシスループの幅として定義される。ヒステリシス測定は、磁場の変化を検出することができる超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いて行うことができる。Gallop, J. C., SQUIDs, the Josephson Effects and Superconducting Electronics. Adam Hilger: 1990。
【0078】
細胞捕獲のために、通常、Fe3O4より強い磁気的性質を有するナノ粒子を使用することが要求される。コバルトスピネルフェライト(Cobalt spinel ferrite)、CoFe2O4ナノ粒子は、磁鉄鉱と同じスピネルフェライト材料群に属する。一実施態様において、それらは好まれる。それらが外界温度でFe3O4より非常に強い磁気反応を示すためである。(Liu, C.らの文献, 「原子レベルの磁気結合を介した、マグネシウム及びコバルトスピネルフェライトナノ粒子の超常磁性特徴の化学的制御(Chemical Control of Superparamagnetic Properties of Magnesium and Cobalt Spinel Ferrite Nanoparticles through Atomic Level Magnetic Couplings)」, JACS, 122 (26) (2000); Song, Q.; Zhang, Z. J., Journal of Physical Chemistry B, 110 (2006)を参照されたい。)
【0079】
超常磁性粒子を形成する他の例証的な超常磁性スピネルフェライトは、Cu1-xZnxFe2-yGayO4(0.0≦x≦0.5, 0≦y≦2)、CuFe2O4、NiFe2O4、CoFe2O4、MgFe2O4、及びNi0.5Cu0.5Fe2O4、及び酸化マンガン(Mn3O4)を含むが、これらに制限されない。
【0080】
超常磁性特性の発現に要求される粒子サイズは、材料に基づいて異なる。例えば、Satoらの文献, J. Magn. Magn. Mater., 65, 252 (1987)を参照されたい。典型的には、超常磁性は、最高100nmのサイズを有する粒子で発揮される。例えば、超常磁性ナノ粒子は、最高50nmの粒径を有するMgFe2O4スピネルフェライトナノ粒子であってもよい。
【0081】
(官能化超常磁性ナノ粒子のサイズ)
官能化ナノ粒子は通常、サイズにおいて1ミクロン未満である。典型的には、約20nmから約1ミクロンの範囲であり、使用される被覆に依存する。
しかし、官能化超常磁性ナノ粒子は、幾つかの実施態様において、1ミクロンより大きくてもよい。
【0082】
(形状)
ナノ粒子の形状は、ナノ粒子の表面への結合パートナーの結合を最大にするように選択される。従って、好ましい実施態様において、ナノ粒子は、滑らかな球体の形状である。
少なくとも一つの結合パートナーが、官能化ナノ粒子に結合される。しかし、一実施態様において、ナノ粒子上の結合パートナーの被覆は、好ましくはナノ粒子の実質的に全ての官能化表面を覆う。
【0083】
該粒子は、球形又は非球形であってもよい。好ましい実施態様において、該粒子は球形である。他の実施態様において、該粒子は、非球形であってもよい。例えば、ナノ粒子は、長楕円形、又は伸びたナノチューブ、ナノロッドであってもよく、又はS. Mitragotriらによる米国公開番号第2008/0112886号及びWO 2008/031035, 表題「重合体マイクロ及びナノ粒子の工学的形状(Engineering Shape of Polymeric Micro- and Nanoparticles)」、及び/又はJ. Lahannらによる米国公開番号第2006/0201390号, 表題「多面的ナノ粒子(Multi-phasic Nanoparticles)」に開示されているような他の形状を有してもよい。
【0084】
非球形状粒子の平均直径は、非球形状粒子と同じ体積を有する完全球形の直径である。該粒子が非球状である場合、該粒子は、例えば楕円体、立方体、繊維、管、ロッド又は異形の形状を有することができる。場合によっては、該粒子は、中空又は多孔性であってもよい。
【0085】
他の形状も可能であり、例えば、コア/シェル構造(例えば、異なる組成を有する)、矩形ディスク、高アスペクト比の矩形ディスク、高アスペクト比のロッド、ワーム、偏楕円、長楕円、楕円ディスク、UFO、円形ディスク、バレル、弾丸、ピル、プーリー、両凸面レンズ、リボン、ラビオリ、平坦なピル、双円錐、ダイヤモンドディスク、凹形ディスク、細長い六角形のディスク、タコス、ひだのある長楕円、ひだのある偏楕円、多孔質楕円ディスクである。
【0086】
(生体適合性被覆)
ナノ粒子は、それらの生互換性を増加させるために、多糖ポリマー又は単糖で被覆することができる。この技術は、粒子に免疫応答を減少させる利点を提供する。なぜなら、グリカンが典型的にはこの種の反応を認めないからである(Lacavaらの文献、Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 272-276, 2434-2435 (2004))。ポリマー被覆はまた、水溶液中で水素結合を積極的に形成する多数の遊離ヒドロキシルを含む。協力して、多くの表層ヒドロキシルは、無期限に懸濁液中の粒子及び表面被覆を保つ。被覆は、ナノ粒子が体循環又は腹腔の腹水流体に注入される実施態様において好ましい。
【0087】
適切な被覆材料は、制限されないが、シラン、例えば、ポリジメチルシロキサン、シリコーン油、シリコーン、生体適合材料が上記のものなどのビニルシランに移植されるビニルシラングラフト共重合体;糖類、多糖及びそれらの誘導体、例えば、デキストラン、グルクロン酸、ポリガラクツロ酸、キトサン、ノイラミン酸、寒天、アガロース、アルギナート、カラゲナン、セルロース及び改質セルロース、コンドロイチン、ヒアルロン酸、ペクチン、デンプン、キサンタン及びそれらの組合せを含む。別の被覆材料は、制限されないが、非分解性、生体適合性ポリマー、例えば、ポリ(アルキレンオキシド)、例えば、PEG、PPO及びそれらのコポリマー、ポリウレタン、生体適合性アクリレート及びアルキルアクリレート、例えば、メタクリレート及びヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリアルキレン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(エチレン-共-酢酸ビニル)、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(スルホン)を含む。別の被覆材料は、制限されないが、生物分解性、生体適合性ポリマー、例えば、PLA、PGA及びそれらのコポリマー、ポリ(p-ジオキサノン)及びそのコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファジン、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、及びタンパク質、例えば、ゼラチンを含む。更に、被覆は、界面活性剤、例えば、Tweens、ポロキサマー、プルロニック、テトロニクス(tetronics)を含むことができる。
【0088】
(官能化)
ナノ粒子は、対応する表面膜結合パートナーを発現又は表示する標的細胞、例えば、癌細胞に、又は特定の病原性物質若しくは病原性物質により感染した細胞への、一つ以上の結合パートナーで官能化されることができる。
【0089】
本明細書中に使用される用語「結合パートナー」は、別の特定の分子と結合することができる分子を指す。例えば、該結合は、高度に特異的、及び/又は非共有的であってもよい。互いに高度に特異的、非共有的、生理化学的な相互作用を形成する結合パートナーは、本明細書中において、「相補的結合パートナー」として定義される。非限定的な例を挙げると、核酸-核酸結合、核酸-タンパク質結合、タンパク質-タンパク質結合、酵素-基質結合、レセプタ-リガンド結合、レセプタ-ホルモン結合、抗体-抗原結合などがある。
【0090】
さらなる例として、結合パートナーは、抗体/抗原対、リガンド/レセプタ対、酵素/基質対、及び相補的核酸、又はアプタマーを含むことができる。結合パートナーとしての使用に適切な抗体は、抗原結合断片を含み、個々の重鎖、軽鎖Fab、Fab'、F(ab’)2、Fabc、及びFvなどがある。また、抗体は、二重特異性又は二官能価抗体を含む。
【0091】
結合パートナーは、共有結合、又は非共有結合方法を介して結合されることができ、制限されないが、ジカルコゲニド結合などがある。
本明細書中で用いられる「第1の結合パートナー」は、一般に、超常磁性ナノ粒子に結合、又は付随する結合パートナーを意味する。
本明細書中で用いられる「官能化超常磁性ナノ粒子」は、該ナノ粒子の表面に結合、又は付随する複数の結合パートナーを含む、超常磁性ナノ粒子を意味する。
【0092】
本明細書中で用いられる用語「病原性物質」は、広義に定義され、制限されないが、ウイルス、ウイルス感染細胞、細菌、及び他の粒子若しくは生物体を含み、その存在が生物学的宿主において有毒であるか又は望ましくないものである。ナノ粒子を、癌細胞又は病原性物質若しくは病原性物質で感染された細胞へ標的化する一つの方法は、該細胞により優先的に発現される抗原に特異的な結合パートナーを、該ナノ粒子に結合させることである。
【0093】
腫瘍により発現される抗原は、腫瘍に特有であり得るか、又は非腫瘍細胞と比較して、腫瘍細胞上に高レベルで発現され得る。ナノ粒子への結合パートナーの結合は、共有結合又はイオン結合又は他の非共有結合の相互作用によって可能である。米国特許第5,601,800号は、生物学的活性薬、例えば、診断薬、造影剤、受容体作用薬、及び放射性核種などを粒子に結合する幾つかの方法が記載されている。
【0094】
有用なリンカー及び使用方法は、例えば、米国特許第5,824,805号;米国特許第5,817,742号;及び米国特許第6,339,060号に記載されている。ナノ粒子は、該ナノ粒子被覆上の官能基に直接的な共有結合を経て、官能化されることができる。また、結合パートナーは、リンカーを介してナノ粒子に共有結合的に結合、接合、又はリンクすることができる。リンカーは、合成又は天然であってもよく、トリエチレングリコールポリマー、又はポリエチレングリコールポリマーなどの短ペプチド又は小ポリマーを含むことができる。
【0095】
(a.ナノ粒子に結合される結合パートナー)
ナノ粒子に結合される結合パートナーは、特定の表面抗原を認識する抗体又はその断片であってもよい。この種の免疫複合体は、官能化超常磁性ナノ粒子を、抗原を発現又は表示する標的細胞に選択的に送達することを可能にする。(例えば、Hermentin及びSeiler, Behringer Insti. Mitl., 82:197-215 (1988); Gallegoらの文献, Int. J. Cancer 33:773744 (1984); Amonらの文献, Immunological Rev. 62:5-27 (1982)を参照されたい。)。抗原は、ペプチド、タンパク質、多糖、サッカライド、脂質、核酸又はそれらの組み合わせであり得る。抗原は、ウイルス、バクテリア、寄生虫、植物、原生動物、真菌、組織又は形質転換細胞、例えば、癌又は白血病細胞などから誘導されることができ、細胞全体又はその免疫原成分、例えば、細胞壁成分又はその分子成分であり得る。
【0096】
適切な抗原は、当該技術分野において公知であり、商業的な政府及び科学的提供先から入手可能である。一実施態様において、抗原は、全体を不活性化又は弱毒化した生物体である。これらの生物体は、感染生物体、例えばウイルス、寄生虫及び細菌などであってもよい。これらの微生物は、腫瘍細胞であってもよい。抗原は、腫瘍又はウイルス又は細菌源から誘導された、精製又は部分的に精製されたポリペプチドであってもよい。抗原は、非相同的発現系において、ポリペプチド抗原をコードしているDNAを発現して生成した、組換えポリペプチドであってもよい。抗原は、抗原タンパク質の全部又は一部をコードしているDNAであってもよい。DNAは、プラスミドDNAなどのベクターDNAの形態であってもよい。
【0097】
抗原は、単一抗原として提供されるか、又は組み合わせて提供され得る。抗原は、ポリペプチド又は核酸の複雑混合物として提供されてもよい。
例えば、ナノ粒子に結合される結合パートナーは、腫瘍抗原を認識する抗体又は抗体断片であってもよい。その後、抗体含有ナノ粒子は、磁場及び抗体-リガンド相互作用の双方によって、腫瘍部位に局在することができる。
【0098】
選択された抗原を認識するモノクローナル抗体、抗イディオタイプ抗体、及びFab、Fab'、F(ab')2断片、又は任意の他の抗体断片を含む、抗体及び抗体断片は、抗体のスクリーニング、及び高親和性を有するものを選択することにより得ることができる。(一般に、米国特許第RE 32,011号; 第4,902,614号; 第4,543,439号及び第4,411,993号を参照されたい。また、「モノクローナル抗体、ハイブリドーマ:生物学的分析の新次元(Monoclonal Antibodies, Hybridonzas: A New Dimension in Biological Analyses)」, Plenum Press, Kennett, McKeam, and Bechtol (編集), 1980;「抗体:実験室マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)」, Harlow及びLane (編集), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988を参照されたい。)。
【0099】
あるいは、抗体又は抗体断片は、組換え技術を利用して製造及び選択されることもできる。(例えば、Huseらの文献, Science 246:1275-1281 (1989); Sastryらの文献, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 86:5728-5732 (1989); Alting-Meesらの文献, Strategies in Molecular Biology, 3:1-9 (1990)を参照されたい。)。加えて、公知の病原体上の表面タンパク質の抗原決定基(例えば、HIVウイルスコート上のgp 120)に選択的に結合する抗体は、商業的に入手可能であり、又は従来技術を用いて製造されることができる。
【0100】
ナノ粒子に結合される結合パートナーは、細胞に特有のレセプタにより認識されるリガンドであることができる。例えば、ノイラミン酸又はシアリルルイスXは、超常磁性ナノ粒子に結合されることができる。この種のリガンド含有ナノ粒子は、その後、磁場及びリガンド-選択相互作用の双方によって、内皮部位など特定の部位に局在することができる。この種の接合体は、細菌若しくはウイルス感染、炎症プロセス、又は転移性腫瘍を含む、疾患の治療又は予防に適している。
【0101】
レセプタにより認識されるタンパク質又は合成分子などの他のリガンドは、超常磁性ナノ粒子と結合することができる。さらに、超常磁性ナノ粒子に結合又は付随する結合パートナーは、ペプチド、DNA、及び/又はRNA認識配列であってもよい。
【0102】
本明細書中で使用される用語「アプタマー」は、特定の標的分子と結合する核酸(典型的にはDNA、RNA又はオリゴヌクレオチド)、又はペプチドを意味する。アプタマーの製造及び修飾方法、及びアプタマーの標的分子への結合のアッセイ方法は、当業者に公知である(例えば、米国特許第6,111,095号、第5,861,501号、第5,840,867号、第5,792,613号、第5,780,610号、第5,780,449号、第5,756,291号、第5,631,146号及び第5,582,981号;並びにPCT公開番号WO92/14843、WO91/19813、及びWO92/05285を参照されたい。これらの各々は本明細書中に引用により取り込まれている。)。アプタマーを結合するリガンドは、制限されないが、小分子、ペプチド、タンパク質、炭水化物、ホルモン類、糖、代謝副産物、及び毒素を含む。特定の標的と結合するように構成されるアプタマーは、例えば、オリゴヌクレオチドの第一の不均一な集団を合成し、その後、特定の標的分子と強く結合する該集団内のオリゴヌクレオチドを選択することによって、選択されることができる。特定の標的分子と結合するアプタマーが同定されている場合、それを、生物学的及び他の技術において公知の様々な技術を用いて、例えば、クローニング及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、続いて転写によって、繰り返すことができる。
【0103】
(b.標的細胞の表面膜上の結合パートナー)
標的細胞は、その表面上に一つ以上の結合パートナーを含み得る。細胞の表面に存在し得る結合パートナーは、限定はされないが、癌抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、原生動物抗原及び真菌抗原が挙げられる。
【0104】
(i.癌抗原)
開示されたナノ粒子は、癌細胞の表面上のタンパク質と結合し且つ非癌細胞の表面上に存在しない、結合パートナーで官能化されることができる。例証的な、癌に特有のタンパク質は、腫瘍特異的抗原とも呼ばれる癌抗原を含むが、こらに限定されない。例えば、受容体型チロシンキナーゼ(EphA2)は、卵巣癌患者において多く発現される。ペプチド配列
【化1】

は、エフリン模倣体として作用し、EphA2に対して高度に選択的である。このペプチド配列
【化2】

の誘導体で官能化されたナノ粒子は、EphA2発現の陽性反応を示す集団の細胞に優先的に結合する。
【0105】
その他の癌抗原には、漿液性滲出液の悪性腺癌を同定するための潜在的診断エイズとして広範囲に調査された、ヒト上皮抗原(HEA)及びMUC16細胞表面タンパク質、CA125の細胞外ドメインがある。ヒト上皮抗原(HEA)は、転移性腺癌において高発現レベルを示す、糖タンパク質エピトープである。Ber-EP4は、HEAに対して高親和性を有し、HEA発現の検証に一般に使用される。Ber-EP4細胞で官能化されたナノ粒子は、CA125を発現している細胞を優先して結合するであろう。
CA125の血清レベルは、卵巣癌患者の90%において上昇する。HEA及びCA125レベルは、高レベルのEphA2を発現している同じ細胞集団において上昇すると予測された。
【0106】
増加したEphA2発現は、卵巣癌と関連しているが、それは、この細胞型によってのみ発現されるものではない。Ephレセプタファミリーは、最大のRTKファミリーのうちの一つであり、Eph/エフリンレセプタシグナル伝達は、細胞運動、細胞境界の維持、及び血管リモデリングと親密に連動する。エフリン模倣体は、Ephレセプタを発現している任意の細胞を結合すると予測されるが、より高Eph発現の細胞を優先的に結合するとも予測される。
【0107】
癌細胞に特有の他の抗原は、同様に、これらの抗原と特異的に結合するリガンドを用いて標的化される。例えば、多くの癌細胞に過剰発現するトランスフェリンレセプタへのリガンド又は抗体を有するナノ粒子は、ナノ粒子をそれらの細胞に標的化する。同様に、MUC1、MUC1、ErbBレセプタ又は任意の他の成長因子レセプタに対する抗体を有するナノ粒子は、ナノ粒子を癌細胞に標的化する際に役立つであろう。治療薬を含むナノ粒子と結合する物質のための所望の標的を作る細胞表面タンパク質は、PSA、TACE、MMP-14、CEA(多種類の細胞において広く過剰発現する癌胎児性抗原)、ウロキナーゼレセプタ(過剰発現は、様々な悪性腫瘍の予後不良と強く相関している)、及びCXCR4(乳癌浸潤及び転移にリンクされる)を含む。治療薬の標的送達ための所望の標的を作る他のタンパク質は、免疫系標識、例えばCD3、CD2、FcガンマR III活性化レセプタ(CD16)、幾つかの超抗原、グリコシルトランスフェラーゼ-1,4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(GalNAc)(Hoonらの文献, Int. J. Cancer, 43:857-62 (1989); Andoらの文献, Int. J. Cancer, 40:12-17 (1987); Tsuchidaらの文献, J. Natl. Cancer, 78:45-54 (1987); Tsuchidaらの文献, J. Natl. Cancer, 78:55-60 (1987)); NUC18(Lehmannらの文献, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:9891-95 (1989); Lehmannらの文献, Cancer Res., 47:841-45 (1987)); メラノーマ抗原gp75(Vijayasardahiらの文献, J. Exp. Med. , 171:1375-80 (1990); GenBank Accession No. X51455); ヒトサイトケラチン8; 高分子量メラノーマ抗原(Nataliらの文献, Cancer, 59:55-63 (1987); ケラチン19(Dattaらの文献, J. Clin. Oncol., 12:475-82 (1994))を含む。
【0108】
また、標的とされ得る腫瘍関連抗原は、例えば、細胞の癌遺伝子-コード産物、又は異常発現される癌原遺伝子-コード産物(例えば、neu、ras、trk、及びkit遺伝子によりコードされた産物)、又は成長因子レセプタ若しくはレセプタ様細胞表面分子(例えば、c-erb B遺伝子によってコードされた表面レセプタ)の変異形態を含む。モノクローナル抗体K-1との反応性により定義される腫瘍関連抗原、メソテリンは、上皮卵巣、頸部及び食道腫瘍などの扁平上皮癌の大部分、及び中皮腫に存在する(Changらの文献, Cancer Res., 52:181 (1992); Changらの文献, Int. J. Cancer, 50:373 (1992); Changらの文献, Int. J. Cancer, 51:548 (1992); Changらの文献, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:136 (1996); Chowdhuryらの文献, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:669 (1998))。MAb K-1を用いて、メソテリンは、細胞関連の腫瘍標識としてのみ検出可能であり、卵巣癌患者由来の血清中又はOVCAR-3細胞により調整された培地中において、可溶化形態では見出されなかった(Changらの文献, Int. J. Cancer, 50:373 (1992))。
【0109】
公知の構造及び公知又は記載されている機能を有する腫瘍抗原は、以下の細胞表面レセプタを含む:H ER1(GenBank Accession No. U48722)、HER2(Yoshinoらの文献、J. Immunol., 152:2393 (1994);Disisらの文献, Canc. Res. , 54:16 (1994);GenBank Acc. Nos. X03363及びM17730)、HER3 (GenBank Acc. Nos. U29339及びM34309)、HER4 (Plowmanらの文献, Nature, 366:473 (1993); GenBank Acc. Nos. L07868及びT64105)、上皮成長因子レセプタ(EGFR) (GenBank Acc. Nos. U48722及びKO3193)、血管内皮細胞成長因子(GenBank番号M32977)、血管内皮細胞成長因子レセプタ(GenBank Acc.Nos. AF022375、1680143、U48801、及びX62568)、インスリン様増殖因子-I (GenBank Acc. Nos. X00173、X56774、X56773、X06043、欧州特許GB 2241703)、インスリン様増殖因子-II(GenBank Acc.Nos. X03562、X00910、M17863、及びM17862)、トランスフェリンレセプタ(Trowbridge及びOmary, Proc. Nat. Acad. USA, 78:3039 (1981);GenBank Acc.Nos. X01060及びM11507)、エストロゲンレセプタ(GenBank Acc. Nos. M38651、X03635、X99101、U47678、及びM12674)、プロゲステロンレセプタ(GenBank Acc. Nos. X51730、X69068、及びM15716)、卵胞刺激ホルモンレセプタ(FSH-R)(GenBank Acc. Nos. Z34260及びM65085);レチン酸受容体(GenBank Acc. Nos. L12060、M60909、X77664、X57280、X07282、及びX06538)、MUC-1 (Barnesらの文献, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 86:7159 (1989);GenBank Acc. Nos. M65132及びM64928)、NY-ESO-1 (GenBank Acc. Nos. AJ003149及びU87459)、NA 17-A (PCT公報WO 96/40039)、Melan-A/MART-1 (Kawakamiらの文献, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 91:3515 (1994);GenBank Acc. Nos. U06654及びU06452)、チロシナーゼ(Topalianらの文献, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 91:9461 (1994);GenBank Acc. No. M26729; Weberらの文献, J. Clin. Invest, 102:1258 (1998)), Gp-100 (Kawakamiらの文献, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 91:3515 (1994);GenBank Acc. No. S73003, Ademaらの文献, J. Biol. Chem., 269:20126 (1994)), MAGE (van den Bruggenらの文献, Science, 254:1643 (1991));GenBank Acc. Nos. U93163, AF064589, U66083, D32077, D32076, D32075, U10694, U10693, U10691, U10690, U10689, U10688, U10687, U10686, U10685, L18877, U10340, U10339, L18920, U03735及びM77481)、BAGE (GenBank Acc. No. U19180;米国特許第5,683,886号及び第5,571,711号)、GAGE (GenBank Acc. Nos. AF055475, AF055474, AF055473, U19147, U19146, U19145, U19144, U19143及びU19142)、SSX2遺伝子によってコード化される、特にHOM-MEL-40抗原などのレセプタのCTAクラスのいずれか(GenBank Acc. Nos. X86175, U90842, U90841及びX86174)、癌胎児性抗原(CEA, Gold及びFreedman, J. Exp. Med., 121:439 (1985);GenBank Acc. Nos. M59710, M59255及びM29540)、及びPyLT (GenBank Acc. Nos. J02289及びJ02038);p97(メラノトランスフェリン)(Brownらの文献, J. Immunol., 127:539-46 (1981);Roseらの文献, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:1261-61 (1986))。他の腫瘍関連及び腫瘍特異性抗原は、当業者に公知であり、開示されたナノ粒子を用いる標的に適している。
【0110】
(ii.ウイルス抗原)
ウイルス抗原は、制限されないが以下のウイルスファミリーのいずれかのウイルスを含む、任意のウイルスから単離されることができる:アレナウイルス科、アルテリウイルス、アストロウイルス科、バキュロウイルス科、バドナウイルス、バルナウイルス、ビルナウイルス科、ブロモウイルス科、ビニヤウイルス科、カリチウイルス科、カピロウイルス、カーラウイルス、コーリモウィルス、シルコウイルス科、クロステロウイルス、コモウイルス科、コロナウイルス科(例えば、コロナウィルス、例えば重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス)、コルチコウイルス科、シストウイルス科、デルタウイルス、ダイアンソウイルス、エナモウイルス、フィロウイルス科F(例えば、マールブルグウィルス及びエボラウィルス(例えば、Zaire、Reston、Ivory Coast又はSudan株)、フラビウイルス科、(例えば、C型肝炎ウイルス、デング熱ウィルス1、デング熱ウィルス2、デング熱ウィルス3及びデング熱ウィルス4)、ヘパドナウイルス科、ヘルペスウイルス科(例えば、ヒトヘルペスウイルス1、3、4、5、及び6及びサイトメガロウィルス)、ハイポウイルス科、イリドウイルス科、レヴィウイルス科、リポスリックスウイルス科、ミクロウイルス科、オルソミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルスA及びB及びC)、パポバウイルス科、パラミクソウイルス科(例えば、嚢尾虫、耳下腺炎及びヒト呼吸器合胞体ウィルス)、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウィルス、ライノウィルス、肝ウイルス及びアフタウイルス)、ポックスウイルス科(例えば、ワクシニア及び天然痘ウィルス)、レオウイルス科(例えば、ロタウィルス)、レトロウイルス科(例えば、レンチウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)1及びHIV 2)、ラプドウイルス科(例えば、狂犬病ウィルス、はしかウィルス、呼吸器合胞体ウィルスなど)、トガウイルス(例えば、風疹ウィルス、デング熱ウィルスなど)及びトティウイルス科。また、好適なウイルス抗原は、デング熱タンパク質M、デング熱タンパク質E、デング熱D1NS1、デング熱D1NS2及びデング熱D1NS3の全部又は一部を含む。
【0111】
ウイルス抗原は、パピローマウィルス、ヘルペスウィルス、すなわち単純ヘルペス1及び2;肝炎ウィルス、例えば、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウィルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、δD型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)及びG型肝炎ウイルス(HGV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス;パラインフルエンザ、水痘帯状ヘルペス、サイトメガロウイルス、エプスタイン-バー、ロタウィルス、ライノウィルス、アデノウィルス、コクスサッキーウイルス、ウマ脳炎、日本脳炎、黄熱、リフトバレー熱、及びリンパ球性脈絡髄膜炎などの特定の株から誘導可能である。
【0112】
(iii.細菌抗原)
細菌抗原細菌抗原は、制限されないが以下を含む任意の細菌を起源とすることができる:放線菌、アナベナ属、バシラス、バクテロイデス科、ブデロビブリオ属、ボルデテラ属、ボレリア属、カンピロバクター、コーロバクター属、クラミジア、クロロビウム属、クロマティウム、クロストリジウム、コリネバクテリウム、サイトファーガ属、デイノコックス、エシェリヒア属、フランキセラ属、好塩性細菌、ヘリオバクター、ヘモフィルス属、ヘモフィルスインフルエンザB型(HIB)、ヒフォミクロビウム属、レジオネラ、レプトスピロシス、リステリア、髄膜炎菌A、B及びC、メタノバクテリウム属、球菌、ミオバクテリア、マイコプラズマ、ミクソコッカス属、ナイセリア属、硝酸菌属、ユレモ、プロクロロン、プロテウス属、シュードモナス、ホドスピリルム(Phodospirillum)、リケッチア、サルモネラ、赤痢菌、螺旋菌、スピロヘータ属、スタフィロコッカス、ストレプトコッカス、ストレプトマイセス、スルフォロブス属、サーモプラズマ属、チオバチルス及びトレポネーマ、ビブリオ及びエルシニア。
【0113】
(iv.寄生虫の抗原)
寄生虫の抗原は、制限されないが、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ヒストプラスマ・カプスラーツム、鵞口瘡カンジダ、カンジダ・トロピカリス、ノカルジア・アステロイデス、リケッチア・リケッチイ、発疹熱リケッチア、肺炎マイコプラズマ、オウム病クラミジア、クラミジア・トラコマチス、熱帯熱マラリア原虫、トリパノソーマ・ブルーセイ、赤痢アメーバ、トキソプラズマ、膣トリコモナス、及びマンソン住血吸虫から誘導される抗原など、寄生虫から得ることができる。これらは、スポロゾイト周囲タンパク、スポロゾイト表面タンパク質、肝臓期抗原、頂端膜関連のタンパク質、又はメロゾイト表面タンパク質の全部又は一部などの胞子虫の抗原、プラスモジウムの抗原を含む。
【0114】
(治療薬又は診断薬)
幾つかの実施態様において、一以上の治療薬が、磁場の制御下で特定の部位に送達するための超常磁性ナノ粒子と組み合わされる。治療薬は、超常磁性ナノ粒子と結合によって組み合わされる。例えば、治療薬は、ポリマーに、直接又はリンカーを介して、共有結合されることができる。あるいは、治療薬は、ポリマーに、直接又はリンカー若しくは誘導体を介して、イオン的に連結又は結合されることができる。
【0115】
治療薬は、制限されないが、小分子、巨大分子、ペプチド、タンパク質、酵素、DNA、RNA、遺伝子、細胞又は放射性核種が挙げられる。治療薬は、有効量で患者に投与されるときに、一つ以上の治療的な特性を有する。治療的な特性の非限定的な例は、抗代謝、抗菌、抗炎症、抗腫瘍、抗感染、又は抗生物質である。ナノ粒子と結合した治療薬の治療的有効量は、特定の疾患又は状態の治療に効果をもたらす必要な量として、患者の体重、年齢、及び全身の健康、薬剤の治療特性、並びに疾患の性質及び重症度を考慮して、当業者によって決定されるであろう。
【0116】
治療薬の腫瘍細胞への標的化は、治療薬を、癌関連酵素により切断可能なペプチド配列を介してナノ粒子に連結することにより達成することができる。例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP-9)、マトリックスメタロプロテアーゼ13(MMP-13)、及びマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-2)などのマトリックスメタロプロテアーゼの発現が、胸部(Daviesらの文献, British Journal of Cancer 67:1126, 1993); 前立腺(Harndyらの文献, British Journal of Cancer 69:177, 1994); 大腸(Levyらの文献, Cancer Research 51:439, 1991); 卵巣(Naylorらの文献, International Journal of Cancer 58:50, 1994); 膀胱(Daviesらの文献, British Journal of Cancer 67:1126, 1993);及び胃癌(d'Erricoらの文献, Mod Pathol. 4:239, 1991)を含む、多くのヒト上皮癌において上昇することが見出されている。
【化3】

などの最適MMP-2切断モチーフは、Turkらの文献, Nature Biotechnology 19:661, (2001)において開示されている。従って、治療薬を、
【化4】

を含むリンカーを有するナノ粒子に官能化することは、MMP-2により、ナノ粒子から薬剤の放出をもたらす。リンカーは、メタロプロテイナーゼ-13酵素によって切断可能な
【化5】

配列を含むことができる(Kimらの文献, Biomacromolecules 4(4):1214-1223 (2003)。メタロプロテアーゼによって切断可能なさらなるペプチドは、WO 01/68145に開示されている。他の例は、他の癌細胞特異的又は過剰発現するプロテアーゼ、例えば、配列特異的タンパク分解性能力を有する前立腺特異抗原(PSA)に標的化された結合を含む。
【0117】
(a.化学療法薬)
特に、ナノ粒子に結合され得る治療薬は、以下などの化学療法薬を含む:アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、シスプラチン、アシビシン、アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン(ambomycin);アメタントロン・アセテート;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ(azetepa);アゾトマイシン(azotomycin);バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィドジメシラート;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン(carubicin hydrochloride);カルゼレシン;セデフィンゴール;クロランブシル;シロレマイシン(cirolemycin);クラドリビン;クリスナトールメシラート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニンメシラート;ジアジコン;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン (duazomycin);エダトレキセート;eflomithine塩酸塩;エルサミトルシン(elsamitrucin);エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール(erbulozole);塩酸エソルビシン(esorubicin hydrochloride);エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン(etoprine);塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルオロシタビン(fluorocitabine);ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;インターロイキンII(組換インターロイキンII又はrIL2を含む)、インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-n1;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム(lometrexol sodium);ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン(mitocarcin);ミトクロミン (mitocromin);マイトジリン;ミトマルシン(mitomalcin);マイトマイシン;ミトスパー(mitosper);ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール。
【0118】
他の化学療法薬は、以下などの抗体を含む:転移性乳癌患者の治療のためのヒト化抗HER2モノクローナル抗体であるHERCEPTIN(登録商標)(Trastuzumab)(Genentech, CA);血塊形成の防止のための血小板上の抗糖タンパク質IIb/IIIaレセプタであるREOPRO(登録商標)(アブシキシマブ)(Centocor);急性同種移植腎拒絶反応の防止のための免疫抑制ヒト化抗CD25モノクローナル抗体であるZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ)(Roche Pharmaceuticals, Switzerland);マウス抗-17-IA細胞表面抗原IgG2a抗体であるPANOREX(商標)(Glaxo Wellcome/Centocor);マウス抗イディオタイプ(GD3エピトープ)IgG抗体であるBEC2(ImClone System);キメラ抗EGFR IgG抗体であるIMC-C225(ImClone System);ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体であるVITAXIN(商標)(Applied Molecular Evolution/MedImmune);ヒト化抗CD52 IgG1抗体であるCampath 1H/LDP-03(Leukosite);ヒト化抗CD33 IgG抗体であるSmart M195(Protein Design Lab/Kanebo);キメラ抗CD20 IgG1抗体であるRITUXAN(商標)(IDEC Pharm/Genentech, Roche/Zettyaku);ヒト化抗CD22 IgG抗体であるLYMPHOCIDE(商標)(Immunomedics);LYMPHOCIDE(商標)Y-90(Immunomedics);Lymphoscan(Tc-99mラベル化;ラジオイメージング;Immunomedics);Nuvion(CD3に対して;Protein Design Labs);ヒト化抗ICAM3抗体であるCM3(ICOS Pharm);霊長類化(primatied)抗CD80抗体であるIDEC-114(IDEC Pharm/Mitsubishi);放射性標識化マウス抗CD20抗体であるZEVALIN(商標)(IDEC/Schering AG);ヒト化抗CD40L抗体であるIDEC-131(IDEC/Eisai);霊長類化抗CD4抗体であるIDEC-151(IDEC);霊長類化抗CD23抗体であるIDEC-152(IDEC/Seikagaku);ヒト化抗CD3 IgGであるSMART抗CD3(Protein Design Lab);ヒト化抗補体要因5(C5)抗体である5G1.1(Alexion Pharm);ヒト化抗-TNF-α抗体であるD2E7(CAT/BASF);ヒト化抗-TNF-αFab断片であるCDP870(Celltech);霊長類化抗CD4 IgG1抗体であるIDEC-151(IDEC Pharm/SmithKline Beecham);ヒト抗CD4 IgG抗体であるMDX-CD4(Medarex/Eisai/Genmab);CD20-スレプトダビジン(sreptdavidin)(+ビオチン-イットリウム90; NeoRx);ヒト化抗-TNF-αIgG4抗体であるCDP571(Celltech);ヒト化抗α4β7抗体であるLDP-02(LeukoSite/Genentech);ヒト化抗CD4 IgG抗体であるOrthoClone OKT4A(Ortho Biotech);ヒト化抗CD40L IgG抗体であるANTOVA(商標)(Biogen);ヒト化抗-VLA-4 IgG抗体であるANTEGREN(商標)(Elan);及びヒト抗-TGF-β2抗体であるCAT-152(Cambridge Ab Tech)。
【0119】
標的可能なナノ粒子のための治療薬は、放射性同位体でもよい。この種の放射性同位体は、α、β又はγ線を発し、診断及び/又は治療的な目的に役立つ化学物質又は要素である。適切な放射性同位体の選択に使用される一つの要因は、半減期が、標的による最大の取込み時に検出可能又は治療的であるように十分に長いが、宿主に対する有害な放射線が最小であるように十分に短いことである。適切な放射性同位体の選択は、当業者にとって容易に理解できるであろう。通常、α及びβ線放射は、局所療法に役立つと考えられる。有用な治療化合物の例を挙げると、例えば、32P、186Re、188Re、123I、125I、131I、90Y、166Ho、153Sm、142Pr、143Pr、149Tb、161Tb、111In、77Br、212Bi、213Bi、223Ra、210Po、195PT、195mPt、255Fm、165Dy、109Pd、121Sn、127Te、103Pd、177Lu及び211Atがある。放射性同位体は、一般に、塩内部のラジカルとして存在するが、ヨウ素及びラジウムなどの例外は、ラジカルがイオン形態でなく存在する。
【0120】
(a.蛍光、好ましくは、癌細胞又は他の病原体と結合後の蛍光)
診断又はイメージング目的のために、ナノ粒子に結合される結合パートナーは、診断アイソトープ又は蛍光団などの物質に官能化されることができ、癌細胞と結合後に視覚化することができる。この実施態様において、蛍光化合物は、短いアミノ酸鎖によって、リガンドの結合領域から切り離されることができる。例えば、ローダミンタグは、リガンドのN末端基、及びローダミンを結合領域から遠ざけて、結合している抗原性の薬剤の立体障害を防止するために使用される4つのN末端グリシン残基に接合されることができる。イメージング目的のために使用される多くのローダミン誘導体があり、例えば、テトラメチルローダミン(TAMRA)及びそのイソチオシアネート誘導体(TRITC)、並びにスルホローダミン101(及びその塩化スルホニル形態のテキサスレッド)及びローダミンレッドがある。TRITCは、その構造の下の環上の水素原子の代わりに、イソチオシアネート基(-N=C=S)で官能化された塩基ローダミン分子である。この誘導体は、細胞内部のタンパク質のアミン基に反応する。NHS-ローダミンを作り出す、ローダミン核に結合したスクシンイミジル-エステル官能基は、別の一般のアミン反応性誘導体を形成する。ローダミンの他の誘導体は、Alexa 546、Alexa 555、Alexa 633、DyLight 549、及びDyLight 633などのより新規な蛍光団を含み、より高い光安定性、増加した輝度、異なるスペクトル特性、又は異なる結合基が必要である、様々な化学及び生物学的用途のために調整することができる。
有用な診断放射性同位体が存在し、当業者に周知である。有用な診断及び治療的な放射性同位体は、単独又は併用して使用することができる。
【0121】
(III.装置及び/又は磁性ナノ粒子の使用方法)
本明細書中に記載した装置及びナノ粒子を用いて、身体の血液、腹水、リンパ、脳脊髄液、又は他の漿液を濾過することができる。一実施態様において、装置及びナノ粒子を用いて、血液循環又は腹腔から癌細胞を取り除くことができる。あるいは、装置及び官能化された超常磁性ナノ粒子を用いて、血液由来癌転移及び白血病を治療及び取り除くことができる。
【0122】
一実施態様において、インビボ装置又は体外装置を用いて、患者から癌細胞を抽出することができる。インビボ装置及び体外装置の双方は、転移性癌細胞の除去に特に適している。適切に官能化された超常磁性ナノ粒子と組み合わせた装置の使用は、原発癌から癌細胞の転移性拡散を減らすことができる。
【0123】
一実施態様において、装置は、他の治療方法、例えば、腫瘍を取り出す手術及び/又は腫瘍を縮小する化学療法と組み合わせることができる。
別の実施態様において、磁気濾過器による生物流体からの癌細胞の除去の後、該細胞は、該濾過器から適切な方法によって取り出され、分析され、かつ特徴付けされる。この工程を用いて、付加的な癌治療の種類が患者にとって有用であるかどうか/付加的な癌治療のどの種類が患者にとって有用であるかどうかを決定することができる。
【0124】
(卵巣癌)
卵巣癌は、最も致死的な婦人科悪性腫瘍のうちの一つである。後期病患者の生存率は、約20%である。卵巣癌の早期診断が困難なため、全ケースの81%は、悪性細胞の転移性拡散を伴う後期段階で検出される。拡散する卵巣腫瘍の最も重要な経路は、悪性細胞の原発腫瘍部位からの剥離を介して生じ、腹腔の全体にわたって癌細胞の播種をもたらし(Chi及びHoskins, W. J., Ovarian Cancer Methods and Protocols. Humana Press: 2000; p 75)、癌患者の予後を悪化させる(Hanahan及びWeinberg, Cell, (1): 57-70 (2000), Fidler, Nat. Rev. Cancer, 3(6):453-8 (2003))。加えて、幾つかの癌細胞は、原発腫瘍切除の間に散在する可能性があり、現在の化学療法に対するこれらの細胞の抵抗の発生は、腫瘍細胞集団の再成長をもたらし得る。また、悪性上皮卵巣癌の手術時の破裂により、初期卵巣癌患者の予後を悪化させることが示されている(de la Cuestaらの文献, Obstet. Gynecol. 84(1):1-7 (1994))。従って、ルーチン治療手順の一部として、残余の腫瘍細胞の摘出を組み合わせて、転移性拡散を制限することが、癌患者の長期生存を改善する戦略であった。
【0125】
卵巣癌ケースにおいて、腹腔から播種性癌細胞の有効な除去は、悪性細胞集団の減少をもたらし、転移性拡散の可能性を低下させることができる。磁性ナノ粒子からの毒作用の評価などの他の研究が、この方法が臨床試験段階に進む前に必要とされる。この構想の更なる改良は、患者に特異的な腫瘍タンパク質発現プロフィールを用いて、ペプチドのアレイを使用する摘出工程の改良を含み得る。小ペプチドが、マウスモデルの組織上への腫瘍細胞接着を抑制することが膀胱腫瘍細胞系を用いて報告された(Goldsteinらの文献, J Endourol., 7(3):237-41 (1993))。そのため、これらを磁性細胞摘出技術に組み込み、腫瘍インプラントの可能性を減らすことができ、結果、癌の転移性拡散の防止の効率を大きく向上させることができる。EphA2が他の種類の癌においても高度に発現されるため、YSAペプチド-磁性ナノ接合体の用途は、卵巣癌の域を越えて拡張することができる。
【0126】
任意の癌は、本明細書中に記載されている官能化ナノ粒子を用いて治療されることができる。これらは、以下を含むがを含むが、これらに制限されない:副腎皮質癌、肛門、膀胱癌、胸部、食道、大腸、子宮内膜、食道、肝外胆管、目、胆嚢、胃、頭頸部、下咽頭癌、腎臓、喉頭、唇及び口腔、肝臓、肺、鼻又は口咽頭、経口、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、褐色細胞腫、下垂体、前立腺、直腸、皮膚、甲状腺、膣又は外陰癌、脳腫瘍、カルチノイド腫瘍、胃腸癌、ユーイング肉腫(PNET)、頭蓋外胚細胞腫瘍、児童眼癌、眼内黒色腫、胚細胞腫瘍、性腺外妊娠性栄養胚芽性腫瘍、島細胞癌、白血病、リンパ腫、ホジキン及び非ホジキン疾患、中皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、神経芽細胞腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、悪性胸腺腫、及びウィルムス腫瘍。
【0127】
さらに、超常磁性ナノ粒子を利用するこのインビボ摘出方法はまた、ウィルス病の治療の原理において、ウイルス及びウイルス感染細胞を標的化及び除去することによって、使用することもでき、従って、感染症と戦う免疫系を強化することもできる。
【0128】
(A.エキソビボ装置)
以下の方法は、装置に関して図1Aの概略図の装置に関連して説明した。好ましくは、生物流体は、チューブに接続されている入口、例えば、針又はカテーテル等を介して対象から取り出される。チューブは、入口に対してその近位端で、及び装置に対してその遠位端で結合する。典型的には、このチューブは、装置から取り外し可能であり、対象による使用後の処理を容易にする。
一実施態様において、該方法は、対象からの生物流体の潅流、及び複数の官能化超常磁性ナノ粒子の生物流体への導入を含む。
【0129】
対象からの生物流体の流れは、第1のバルブ(180a)によって、好ましくは制御される。この実施態様において、方法及び装置は、流れ回路によって、対象からの生物流体の持続的な流れを提供し、それによって、パージされた生物流体は、それが対象から出るのと実質的に同じ流速で、対象に戻される。官能化超常磁性ナノ粒子は、リザーバ(120)からポンプ輸送され、生物流体と混合される。典型的には、図1Aに示したように、ナノ粒子は、第1のバルブ(180a)を通過し、生物流体及びナノ粒子は、第1のバルブを出て、混合を確実にするために混合チャンバー(140)に入る。
【0130】
生物流体に導入される官能化超常磁性ナノ粒子の量又は数は、転移性癌細胞又はウイルスに感染した細胞のレベルに依存して異なるであろう。従って、転移性癌細胞又はウイルスに感染した細胞のレベルは、好ましくは、官能化超常磁性ナノ粒子の生物流体への導入前に決定される。必要に応じて、追加の官能化超常磁性ナノ粒子をリザーバに加えることができ、各癌細胞又はウイルス感染細胞が少なくとも一つの官能化超常磁性ナノ粒子と結合されるのを確実にする。
複数の官能化超常磁性ナノ粒子の流れシステムへの導入及び測定を容易にするために、官能化超常磁性ナノ粒子の懸濁液を調製し、リザーバ(120)に保存することが好ましい。
【0131】
次に、生物流体及び官能化超常磁性ナノ粒子は、生物流体を官能化超常磁性ナノ粒子と混合し、又は撹拌するために、混合チャンバー(140)に流れ込み、リガンドによる癌細胞の接触を促進する。生物流体及び官能化超常磁性ナノ粒子の混合物は、適切な期間、混合チャンバーに維持され、標的細胞が一つ以上の官能化超常磁性ナノ粒子と接触し、かつ結合して、錯体を形成するのを確実にする。接触時に結合する確率、及びナノ粒子に結合した結合パートナーと細胞表面上のレセプタとの間の結合の強さは、結合パートナーのレセプタへの親和性とそれらが互いに接触する時間との関数である。好ましくは少なくとも50%、より好ましくは50%を超える標的細胞が、一つ以上の官能化超常磁性ナノ粒子と結合し、複合体を形成し、流体を完全に濾過するのに必要なサイクル数を減らす。例として、研究は、EphA2を発現している100%の癌細胞が、ペプチド機能によって15分後に、体外装置に隔離できることを示した。
【0132】
次の工程、生物流体、ナノ粒子-細胞複合体、及び遊離ナノ粒子、及び未複合細胞は、非混合チャンバーから流れ出て、磁気濾過器の容器の入口に流れる。
磁気濾過器は、入口及び出口を有する容器を含む。好ましくは、容器は、スクリーンも含む。好ましくは、磁石は、容器の外側にある。磁石は、磁場を生成する。一実施態様において、磁石は、一つ以上の永久磁石である。別の実施態様において、磁石は、電磁石である。好ましくは、磁場は、ナノ粒子が結合できる大きな表面積を提供するスクリーンを磁化させる。
【0133】
ナノ粒子-細胞複合体を有する生物流体がスクリーンと接触するときに、遊離ナノ粒子及び/又はナノ粒子-細胞複合体はスクリーンに接着する。この方法において、複合体は、磁気濾過器を通る生物流体の連続前進流に対して制止される。任意に、流れは、所定の地点で止めることができ、該濾過器は、遊離ナノ粒子及びナノ粒子-細胞複合体の除去及び任意にナノ粒子-細胞複合体の試験のために、装置から取り外されることができる。
【0134】
任意の遊離ナノ粒子及び/又はナノ粒子-細胞複合体がスクリーンに接着しない場合、それらは濾液とともに磁気濾過器から流出し、任意に、リザーバに導入され、混合チャンバー及び磁気濾過器を1回以上通して再循環させて、患者に濾液を返す前に、全てのナノ粒子が除去されたことを確実にすることができる。パージされた生物流体とともに磁気濾過器を出る超常磁性ナノ粒子がないことを確認するために、光センサ又は類似の検出器(220)を設けることができる。センサ(220)が一つ以上の超常磁性ナノ粒子を検出する場合、センサは管理コンポーネントに信号を送り、第2のバルブ(180b)は、濾液が再循環のためにリザーバ(120)に送られるように、患者に生物流体を送るラインを閉じる。これは、超常磁性粒子が対象の循環系に入ることを防止する。
【0135】
任意には、装置は、一つ以上の磁気濾過器を含む。任意に、磁気濾過器は、並列関係で構成され、方向付けバルブ系は、濾過器の間のナノ粒子-細胞複合体を含む生物流体の流れを交替させ、磁石によって接着した複合体が一つの磁気濾過器から除去され、一方で、さらなる複合体が第2の濾過器に回収される。換言すれば、生物流体は、二つ以上の磁気濾過器の間に断続的に向けられることができ、回路を通る生物流体流れを中断させることなく、濾過器を清掃することができる。
【0136】
最後に、生物流体が一つ以上の磁気濾過器を去るときに、予め選択された癌細胞が実質的に一掃される。生物流体が適切に一掃されたことを確かめるために、装置は、磁気濾過器の後の第2のサイフォンチューブ又はサンプリングポートを含むことができる。
流れライン(x)は、対象に直接的に導かれ、全システムが血液透析システムで用いられるものと類似の連続する流れ回路であるように設けられる。
【0137】
(a.超常磁性ナノ粒子の投与)
官能化超常磁性粒子の任意の適切な濃度及び量を、本明細書中に記載されている装置及び方法で使用することができる。使用する量及び容量は、必要とされる治療の機能である。例として、一実施態様において、ナノ粒子の濃度は、標的細胞又は病原体当たり1〜100ナノ粒子を提供するのに十分なものである。
【0138】
(b.流速)
流速は、治療に基づいて選択される。それらは、血液濾過、血液透析及び腹膜潅流手順のために概説される認められた標準と一致するように設計され、流体の型及び物性(すなわち粘度)及び患者の物性(すなわち年齢、体重、身長、性別)に応じて異なる。
【0139】
(B.インビボ治療)
インビボ治療工程は、装置が典型的に混合チャンバーを含まず、従って、複合化を可能にするために適切な期間の間の混合工程を含まない点を除いて、エキソビボ治療工程と類似する。更に、患者から生物流体を取り出す前に、最初に、官能化超常磁性ナノ粒子を患者に、典型的には注入を経て投与する。癌細胞を超常磁性粒子と複合化させるために、適切な期間が経過した後、生物流体の一部を患者から適切な流速で取り出し、超常磁性ナノ粒子及びその複合体の除去のためにインビボ装置に施される。
【0140】
(a.官能化超常磁性ナノ粒子の投与)
官能化超常磁性粒子の任意の適切な濃度及び量を、本明細書中に記載される装置及び方法で使用することができる。使用する量及び容量は、必要とされる治療の機能である。例として、一実施態様において、ナノ粒子の濃度は、標的細胞又は病原体当たり1〜100ナノ粒子を提供するのに十分なものである。
【0141】
(b.流速)
流速は、治療に基づいて選択される。それらは、血液濾過、血液透析及び腹膜潅流手順のために概説される認められた標準と一致するように設計され、流体の型及び物性(すなわち粘度)及び患者の物性(すなわち年齢、体重、身長、性別)に応じて異なる。
【0142】
(C.超常磁性ナノ粒子の除去)
一実施態様において、インビボ装置は、患者に投与された磁性、常磁性、又は超常磁性ナノ粒子を除去するように使用することができる。別の実施態様において、超常磁性ナノ粒子は、磁気濾過器を既存の血液濾過又は透析装置に追加することによって、患者から除去されることができる(例えば、図2A〜2C参照)。
【0143】
別の実施態様において、体外装置は、以前に磁性、常磁性体、又は超常磁性ナノ粒子を投与した患者から生体液を取り出すために用いることができる。この実施態様において、リザーバは、必要に応じて、化学療法薬を加え、腹膜のような体腔の流体レベルを制御(すなわち、体腔から排液及び充填する)するために使用される。リザーバが要求されない場合、バルブ(180a)は、リザーバに対して閉じることができる。この実施態様において、混合チャンバーは、任意であってもよい。
【0144】
一実施態様において、磁性、常磁性体、又は超常磁性ナノ粒子は、最初に患者に投与され、治療又は診断薬を送達する。一実施態様において、磁性、常磁性体、又は超常磁性ナノ粒子は、患者の動脈の閉塞を解く血栓溶解剤とともに、蛍光色素及び適切なリガンドを含むことができる。該閉塞に対して有効量の血栓溶解剤の送達後、凝血塊が溶け、磁性、常磁性体、又は超常磁性ナノ粒子を患者の体内に残す。これらの粒子は、本明細書中に記載されている装置のいずれかを用いて除去することができる。
【0145】
当業者は、単にルーチン実験操作を用いて、本明細書中に記載された発明の特定の実施態様の多くの均等物を認識又は確認することができる。この種の均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図する。
【実施例】
【0146】
(実施例1)
(ペプチドで被覆した超常磁性CoFe2O4ナノ粒子を用いるマウス癌細胞のインビトロ捕獲)
(生体適合性ポリマー被覆及びYSAペプチド接合を有するCoFe2O4ナノ粒子の調製)
超常磁性CoFe2O4ナノ粒子をミセル方法により合成し、平均粒径は、15%未満の粒度分布を有する8nmであった。詳細な実験手順は、Scarberryらの文献, 「インビトロ及びインビボ標的及び癌細胞摘出のための磁性ナノ粒子-ペプチド接合体(Magnetic Nanoparticle-Peptide Conjugates for in Vitro and in Vivo Targeting and Extraction of Cancer Cells)」, J. Amer. Chem. Soc'y., 130 (31), 10258-10262 (2008)に報告されている。
【0147】
該ナノ粒子(200mg)及びポリガラクツロ酸(600mg, Alfa Aesar)を、80mlの5M NaOH溶液に、周囲温度で加えた。モデル60ソニックディスメンブレイター(Model 60 Sonic Dismembrator)(Fisher Scientific)を用いて5時間の音波処理後、被覆ナノ粒子を、磁石を用いて溶液から分離した。2、3回水で洗浄した後、被覆ナノ粒子を蒸留水中に再懸濁した。
【0148】
また、グルクロン酸を、類似の手順を用いて、生体適合性被覆として試験した。1.9 mgの
【化6】

の配列を有するペプチドを、10mlのポリガラクツロ酸被覆を有するナノ粒子の水性懸濁液(〜1.7×1015粒子/mL)に加えた。該混合物を、数分間、超音波処理した。溶液を光から保護し、4℃で一晩貯蔵し、ポリマー被覆上のカルボキシル基とC末端リジン残基上の一級アミンとの間にアミド結合の形成を完成させた。
【0149】
YSAペプチドは、Clarkらの文献, J. Biol. Chem., 276: 37431 - 37435 (2001)に報告されているように、標準Fmoc化学を用いて合成した。ローダミンタグをN末端基に接合し、4つのN末端グリシン残基を、ローダミンを結合領域から遠ざけ、レセプタ結合に立体障害を防止するために用いた。
【0150】
(細胞生育)
BG-1細胞系は、Julie M. Hall及びKenneth S. Korach of the Environmental Disease and Medicine Program, Research Triangle Park, NC.によって提供された。BG-1細胞を、10%の熱不活化ウシ胎児血清(FBS)(Invitrogen)、100 U/mLのペニシリン及び100 μg/mLのストレプトマイシン(Mediatech, Inc., Herndon, VA)で補充したDMEM:F12/50:50 (Invitrogen)中、37℃、5%のCO2雰囲気下で培養した。
【0151】
Hey細胞系は、Gordon Mills, Department of Molecular Therapeutics, The University of Texas, MD Anderson Cancer Centerにより提供された。Hey細胞は、2 mMのL-グルタミン(Sigma)、ペニシリン、ストレプトマイシン、及び10%の熱不活化FBSで補充したRPMI 1640(Mediatech)中、37℃、5%のCO2雰囲気下で増殖した。
【0152】
(細胞染色)
細胞を、20 mg/mLのフルオレセインジアセテート(FDA)(Research Organics)、又は20 mg/mLの5(6)-カルボキシエオシンジアセテート(Research Organics)を用いて、37℃、5%のCO2雰囲気下で一晩インキュベートした。細胞を、トリプシン+EDTAを有する細胞培養フラスコから取り出し、PBSで一回洗浄し、2.8×106細胞/mLに再懸濁した。共焦点イメージングのために、細胞を、チャンバースライド(Laboratory Tek)上で一晩インキュベートし、翌日にPBSで洗浄した。接合YSAペプチドを有する又は有しないローダミン標識化ナノ粒子を該細胞に加え、1時間、37℃、5%のCO2雰囲気下でインキュベートした。細胞を洗浄し、その後、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、イメージング分析のためにカバースリップで覆った。
【0153】
(マウス研究)
メスのnu/nuマウスを、Taconic(Hudson, NY)から得て、Balb/cマウスをHarlan(Indianapolis, IN)から得た。全ての実験は、動物実験委員会Institutional Animal Care and Use Committee at the Georgia Institute of Technology (Atlanta, GA)の承認を得て行った。
【0154】
(顕微鏡検査)
インビトロ実験は、緑及び赤フィルタ、並びに水銀短アークHBOランプを有するオリンパスIX71倒立顕微鏡で、40X対物レンズを用いて行った。イメージ及びビデオは、オリンパスDP71 1250万ピクセルのデジタルカメラを用いて撮影した。共焦点イメージは、40X対物レンズによって、Zeiss LSM 510レーザー自動読取り共焦点顕微鏡を用いて得られた。
【0155】
(結果及び分析)
磁気CoFe2O4ナノ粒子を、不都合な免疫応答を減らし、更に表面修飾を容易にするために、生体適合性ポリガラクツロ酸で被覆した。ポリマーの被覆の後、該粒子は、形状において不規則になり、範囲100〜200 nmの寸法を有していた。また、グルクロン酸は、生体適合性被覆として非常によく作用し、それは各ナノ粒子周囲に5〜10 nmの厚さを有するシェルを形成した。
【0156】
Hey及びBG-1卵巣癌細胞系を実施例1において使用した。Hey及びBG-1細胞系は、EphA2の発現を示したが、該発現は、Hey細胞系において数倍高かった。インビトロで細胞標的化及び磁気吸引の試験をするために、これらの癌細胞系を、515nmで緑発光するフルオレセインアセテート(FDA)とともにインキュベートした。それは、610nmで赤発光するローダミンタグを有するナノ粒子接合体と区別することができる。
【0157】
標識化されたHey細胞を、ぺリスタポンプによって駆動される循環系に導入し、EphA2発現細胞が流れから抽出されることができるかどうかを測定した。キャピラリチューブを、〜1.22 mL/分以内の流速で、回路の中心とし、顕微鏡対物レンズより上に配置した。緑蛍光性Hey細胞の継続的な流れを、該チューブを通して観察した。
【0158】
ローダミンタグ化磁性ナノ粒子-YSAペプチド接合体の導入の約2分後に、〜2600ガウスの磁場強度を有する磁石を、該キャピラリの一側面に配置し、Hey細胞を該磁石に最も近いチューブ壁に蓄積した。磁石が除去されたときに、蓄積されたHey細胞集塊は、急速に循環流れの中へ戻り、分散した。
【0159】
該細胞は、YSAペプチドリガンドなく、同じ磁性ナノ粒子を用いた場合、磁石に任意の反応を示さなかった。
磁石による癌細胞の捕獲は、細胞が磁気的な引き付けを生じるペプチド官能化ナノ粒子によって証明した。
【0160】
YSA接合磁性ナノ粒子のHey細胞への特異的結合は、共焦点顕微鏡研究を用いて検証した。Hey細胞を、チャンバースライド中でインキュベートし、一晩、該スライドに接着させた。翌日に、細胞を洗浄し、ローダミンタグ化磁性ナノ粒子又はローダミンタグ化磁性ナノ粒子とYSAペプチドとの接合体とともにインキュベートした。その後、細胞を固定し、磁性ナノ粒子の細胞への結合を蛍光下で調べた。
【0161】
ローダミンタグ化ナノ粒子とともにインキュベートした細胞は、ほとんど該粒子への結合はなく、一方で、ローダミンタグ化ナノ粒子-YSAペプチド接合体とともにインキュベートした細胞は、大量の細胞表面積に渡って該粒子の結合を示した(200x倍率での視界)。ローダミンタグ化ナノ粒子-YSAペプチド接合体を有するHey細胞は、より高い倍率(400x)でも見られた。高倍率は、磁性ナノ粒子のHey細胞へのYSAペプチド/EphA2相互作用を介した特異的結合を証明し、非YSAタグ化粒子の非特異的結合がバックグラウンドレベルに近づくことを証明した。
【0162】
インビボで細胞捕獲を試験するために、500μLのPBS中の約1.4×106のFDA充填Hey細胞を、注射によって、麻酔したメスnu/nuマウスの腹膜に導入し、穏やかな腹部マッサージで5分間、細胞拡散を促進するために分散させた。
【0163】
マウスの腹部を、立体顕微鏡下で488nmの光に曝露した。可視蛍光発光は注射部位又はその周辺に存在しなかった。この工程の後に、500μLのローダミンタグ化磁性ナノ粒子-YSAペプチド接合体を注射した。
腹部マッサージでインキュベーションのさらに5分後に、マウスの腹部を、顕微鏡下で調査した。可視蛍光発光は、観察されなかった。
【0164】
〜1cm3のサイズを有する2600ガウス磁石を腹部の皮膚上に30秒間配置し、その後、取り外した後、マウスを再び488nm光に曝露した。FDA充填Hey細胞からの緑発光は、磁石配置部位で皮膚を通してはっきりと可視化されこの部位でのHey細胞の多くの蓄積を示した。励起波長をローダミンタグの励起のために530nmに切替えたときに、赤発光が同じ部位で皮膚を通して可視化され、ローダミンタグ化ナノ粒子接合体の存在が示された。これは、明視野下で暗い腫瘤の存在と一致する。
【0165】
磁石を該領域に渡って移動させ、その後、約1cm離れて最初の凝集部位から引き離したところ、緑及び赤蛍光点は新しい位置にシフトした。マウス上に磁石を適用する前の任意の可視蛍光発光の欠如は、細胞及びナノ接合体の分散を示した。
【0166】
適用した磁石によって得られた結果は、Hey細胞が、マウスの腹腔において、磁性ナノ粒子接合体によって、YSAペプチド/EphA2認識を介して捕獲され、その後、該腹腔の上部へ磁石により集約されたことを示している。
【0167】
同じ研究を、FDA充填BG-1卵巣細胞で行った。インビトロでのBG-1細胞の蛍光は、Hey細胞のそれと同程度の強度であったが、皮膚を通しての可視蛍光発光は、マウスの腹部を488nm励起光で曝露したときには観察されなかった。蛍光は、外側の腹部皮膚を取り出したときに、腹膜を介して可視化された。該発光は、同数のHey細胞によって生成されるものと比較して、非常により弱かった。強い赤蛍光は、励起波長を530nm範囲に切替えたときに明確に見られ、ナノ粒子は明視野下で容易に見られた。
【0168】
これは、BG-1細胞集塊の不足が、ローダミンタグ化磁性粒子接合体の不足に起因しないことを示した。従って、BG-1細胞からの蛍光発光の低い強度は、BG-1細胞系の比較的低いEphA2レセプタ発現のため、ナノ粒子接合体によって隔離される細胞数が少ないことに起因し得る。
全4回の試験は、各細胞系について類似の結果をもたらした。
【0169】
Hey及びBG-1細胞の抽出効率の違いは、YSAペプチドの特異性を意味する。それは、腹腔内のHey及びBG-1細胞の混合物集団の磁気抽出のインビボ実験によって確認された。Hey細胞を、FDAとともにインキュベートし、BG-1細胞を、560nm発光を有する5(6)-カルボキシエオシンジアセテート(CDA)とともにインキュベートした。各細胞系からの等しい数の細胞を混合し、3匹のBalb/cメスマウスの腹腔に導入した。細胞インキュベーション及び腹部マッサージの5分後、磁性ナノ粒子接合体を腹腔に注射し、5分間インキュベートした。腹水を抽出し、磁気的に濾過し、その後、血球計数器を用いて検査し、緑蛍光(Hey)及び赤蛍光(BG-1)細胞の数を測定した。
【0170】
初めに混合した細胞集団が、50%のHey及び50%のBG-1細胞を含んでいたにもかかわらず、Hey細胞は、3回の試験(図3を参照)からの平均で、抽出された細胞集団の95〜100%を占めていた。抽出された細胞集団のBG-1細胞の不足は、YSAペプチド-磁性ナノ接合体の特異性と一致した。YSAペプチドのEphA2レセプタへの高度な特異的結合は、磁性接合体が、EphA2の豊富な卵巣癌細胞をEphA2に乏しい細胞と区別できるようにしている。
【0171】
(実施例2)
(ペプチドで被覆した超常磁性CoFe2O4ナノ粒子の、ヒト腹水サンプルの細胞へのインビトロ結合)
(ナノ粒子合成)
超常磁性CoFe2O4ナノ粒子を、マイクロエマルジョン技術により合成し、平均粒径は15%未満の粒度分布を有する8nmであった。詳細な実験手順は、Scarberryらの文献, 「インビトロ及びインビボ標的及び癌細胞摘出のための磁性ナノ粒子-ペプチド接合体(Magnetic Nanoparticle-Peptide Conjugates for in Vitro and in Vivo Targeting and Extraction of Cancer Cells)」, J. Amer. Chem. Soc'y., 130 (31), 10258-10262 (2008)に報告されている。
【0172】
(ナノ粒子被覆及びペプチド接合)
600mgのCoFe2O4ナノ粒子を、300mlの5M NaOHに加え、10分間、超音波処理した(モデル60ソニックディスメンブレイター(Fisher Scientific)-パワー設定19)。1800mgのグルクロン酸を、該溶液に加え、1.5時間、音波処理を続けた。生成物を5000ガウス磁石を用いて磁気的に分離し、PBSで3回洗浄し、600mlの蒸留H2Oに再懸濁し、ナノ粒子濃度を約1mg/mLにした。対照実験に使用する粒子を、この原液から取った。
【0173】
ペプチド接合体を加えるために、グルクロン酸で被覆したナノ粒子を、300mlの原液から磁気的に濾過し、30mlの0.2M炭酸水素ナトリウム(pH 9.6)に再懸濁した。0.088Mの過ヨウ素酸ナトリウムの溶液から3mlを加え、暗下で20分間反応させた。ナノ粒子を再び溶液から5000ガウス磁石を用いて磁気的に濾過し、30mlの0.2M炭酸水素ナトリウム(pH 9.6)に再懸濁した。60mgのN-末端ローダミン接合ペプチド
【化7】

(2127.9 g/mol)を、6mlの0.2M炭酸水素ナトリウム(pH 9.6)に溶解し、その後、30mLのナノ粒子溶液でプールした。反応を、プラットフォーム振盪器で室温及び減光下で2時間、進行させた。360μLのナトリウムシアノボロヒドリド(5M)をヒュームフード内で該溶液に加え、反応を、さらに30分間同じ状態下で進行させた。
その後、1.8 mLの2-アミノエタノールを、未反応アルデヒドをキャップするために加え、反応をさらに30分間進行させた。最終生産物を、該溶液から5000ガウス磁石を用いて磁気的に分離し、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液で10回洗浄し、300mlの蒸留H2Oに再懸濁した。
ナノ粒子の平均径(約8nm)、粒子の密度(5.29 g/mL)、及びペプチド塊(2127.9Da)を用いて、約81:1の粒子比率に近似のペプチドを算出し、総反応物消費を仮定した。
【0174】
(ペプチド合成)
【化8】

ペプチドを、標準Fmoc化学を用いて合成した。例えば、Clarkらの文献, J. Biol. Chem., 276: 37431 - 37435 (2001)を参照されたい。ローダミンタグは、N末端基に接合し、4つのN末端グリシン残基を用いて、ローダミンを結合領域から遠ざけ、EphA2受容体結合の立体障害を防いだ。
【0175】
(腹水液調製)
腹水サンプルは、ジョージア州アトランタ卵巣癌研究所(Ovarian Cancer Institute of Atlanta, Georgia)から得た。腹水サンプルは、10% DMSO中−80℃で保存し、使用に向けて37℃水浴で解凍した。
【0176】
(細胞抽出)
試験される試料ごとに、5つの12×75mm丸底チューブを、以下のように標識した:チューブ1−純粋な腹水、チューブ2−濾取物、チューブ3−濾液、チューブ4−濾取物コントロール、チューブ5−濾液コントロール。
【0177】
500μLの腹水液を、チューブ1、2及び4に加えた。700μLの氷冷PBS(10%FBS、1%アジ化ナトリウム)をチューブ1に加え、それは分析のために氷上で保存した。200μLのペプチド接合磁性ナノ粒子(1mg/mL)、及び500μLの氷冷PBS(10%FBS、1%アジ化ナトリウム)をチューブ2に加えた。チューブ2を、15秒間ボルテックスし、10分間手で振盪した。その後、チューブ2を10分間、5000ガウス磁石に付着させた。該チューブに磁石を付着させて、流体をチューブ2からピペットで取り、チューブ3に入れ、チューブ3を分析のために氷上で保存した。捕獲された磁性ナノ粒子を、無菌PBSで3回洗浄し、300μLの同じものに再懸濁した。300μLのナノ粒子溶液を、12×75mmの丸底チューブのキャップを通して濾過し、量を無菌PBSを用いて1200μLに増やし、チューブ2を分析のために氷上で保存した。200μLのペプチド接合体を有しない磁性ナノ粒子(1mg/mL)、及び500μLの氷冷PBS(10%FBS、1%アジ化ナトリウム)をチューブ4に加えた。チューブ4を15秒、ボルテックスし、10分間手で振盪させ、その後、10分間、5000ガウス磁石に付着させた。磁石に付着させて、流体をチューブ4からピペットで取り、チューブ5に入れ、チューブ5を分析のために氷上で保存した。捕獲された磁性ナノ粒子を、無菌PBSで3回洗浄し、300μLの同じものに再懸濁した。300μLのナノ粒子溶液を、12×75mmの丸底チューブのキャップを通して濾過し、量を無菌PBSを用いて1200μLに増やし、チューブ4を分析のために氷上で保存した。チューブ1〜5を、すぐに、BD LSRフローサイトメータ(BD Biosciences)を用いて分析した。
【0178】
(細胞表面染色)
300μLの腹水液を、500μLの氷冷PBS(10%FBS、1%アジ化ナトリウム)を含む12×75mmの丸底チューブにおいて再懸濁した。蛍光団接合抗体を含む全ての操作は、暗下で行った。サンプルを、800 RPM、4℃で5分間、遠心分離し、上清の量を、チューブ底の300μL印にまで減少させた。100μLの氷冷PBS(10%FBS、1%アジ化ナトリウム)を該サンプルに加え、該チューブを穏やかに動かして、細胞を再懸濁した。10μLの一次抗体を加え、サンプルを氷上で30分間インキュベートを維持した。500μLの氷冷PBS(10%FBS、1%アジ化ナトリウム)を各サンプルに加え、該サンプルを800 RPM、4℃で5分間、遠心分離した。
【0179】
(a.直接的染色)
先の洗浄工程を3回行い、該細胞を1200μLの氷冷PBS(10%FBS、1%アジ化ナトリウム)に再懸濁し、BD LSRフローサイトメータ(BD Biosciences)を用いてすぐに分析した。
【0180】
(b.間接的染色)
洗浄工程を3回行い、該細胞を100μLの氷冷PBS(10%FBS、、1%アジ化ナトリウム)に再懸濁した。10μLの二次抗体を加え、サンプルを氷上で30分間インキュベートを維持した。500μLの氷冷PBS(10%FBS、1%アジ化ナトリウム)を各サンプルに加え、該サンプルを800 RPM、4℃で5分間、遠心分離した。この洗浄工程を3回行い、該細胞を1200μLの氷冷PBS(10%FBS、1%アジ化ナトリウム)に再懸濁し、BD LSRフローサイトメータ(BD Biosciences)を用いてすぐに分析した。
【0181】
(フローサイトメトリ)
BD LSRフローサイトメータ(BD Biosciences)を用いる各サンプル分析のために、ソフトウェア構成(BD Facs/Diva, BD Biosciences)は一致させた。前方散乱光(FSC)及び側方散乱光(SSC)パターンは、4ディケードログアンプ(four decade log amplifier)で記録した。閾値を2000に設定し、FSC、SSC、FITC、及びPE-Aパラメータの電圧を、それぞれ505、236、500、及び401に設定した。
各試験ごとに、10,000イベントを記録した。集団の開閉(Gating of populations)を、特定の患者サンプルについて確立し、統計的生存度を維持するために、続く試験にコピーした。
【0182】
(蛍光顕微鏡)
フローサイトメトリ分析のために使用する各チューブからの溶液100μLを、10μLのトリパンブルーファルコンチューブに加え、少量を観察のためにプレート上に塗布した。2500ガウス磁石を用いて、チューブ2から溶液中の磁性ナノ粒子を凝集させ、凝集体及び流体を観察(オリンパスX51倒立蛍光顕微鏡)及びイメージング(オリンパスDP-71)するために顕微鏡スライドに配置した。
【0183】
(結果)
フローサイトメトリを用いて純粋な腹水サンプルを分析し、濾取物を、ペプチド接合頂上磁性ナノ粒子及び非ペプチド接合超常磁性ナノ粒子を用いてこれらのサンプルから除去し、濾取物の除去後、濾液はサンプル中に残存していた。
【0184】
二変量解析を用いて、ペプチド接合ナノ粒子を用いて抽出した細胞の数と、ペプチド接合のないナノ粒子を用いて抽出した細胞の数との間の、有意な変動を確立した。
免疫表現型検査技術を用いて、抽出された細胞が、これらの標識を示している可能性がある卵巣腺癌細胞又は抗原提示細胞と関連する標識の陽性を示している集団に存在するか否かを検証した。
【0185】
(抽出された細胞集団の同定)
腹水サンプル中に存在する細胞集団のベースラインを、BD LSRフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いて、未処置サンプルを分析した場合に生じる前方及び側方散乱パターンの二変量の表示を観察することにより決定した。患者サンプル914及び923に行われる3つの個別試験について、ドットプロットを準備した。散布図の分布は、各試験全体の形態学的整合性を示した。この整合性の定量的確認は、各患者において、最初の試験の密度プロットの視覚的に目立たない集団をゲート付けし、続く次の各試験に対してこれらのゲートをコピーし、かつ各ゲート集団に対して全記録イベントの割合(%総量)を示すことにより得た。
【0186】
グルクロン酸で被覆し、N-末端にローダミン接合17残基ペプチド機能
【化9】

を有する超常磁性CoFe2O4ナノ粒子(200μL〜1 mg/mL)を、無菌PBS(希釈比1:2)に希釈した1.0mlの腹膜滲出液サンプルに加え、外界温度で10分インキュベートした。超常磁性ナノ粒子接合体(濾取物)を、5000ガウス磁石への10分の暴露の間に、該サンプルから磁気的に濾過した。濾取物を、無菌PBSで3回洗浄し、300μLの同一液に再懸濁し、800 RPM(4℃)で5分間、12×75mmのファルコンチューブキャップを通して濾過した。該濾取サンプルの量を、1200μLに増やした。抽出から残存する濾液を、12×75mmファルコンチューブに加えた。濾取物及び濾液は、BD LSRフローサイトメータ(BD Biosciences)を用いて分析した。
【0187】
濾取物及び濾液サンプルのフローサイトメトリ分析についてのドットプロットの形態は、患者914及び923からの未治療腹水サンプルについてのフローサイトメトリ分析(試験1〜3)のドットプロットと異なっていた。各患者の未処置腹水試験からのゲートは、濾取物及び濾液サンプルから得られたドットプロットに重ね合わせ、各集団の%総量変化(δ)を決定した。
【0188】
該被覆磁性ナノ粒子単独の凝集により生じるバックグラウンド干渉を減らすために、ペプチド接合体を有する又は有しないグルクロン酸被覆ナノ粒子の200μLを、1.0mL無菌PBSを含む個々の12×75mmファルコンチューブに加え、該サンプルをBD LSRフローサイトメータ(BD Biosciences)を用いて分析した。ナノ粒子によって作られる二変量プロットをゲート付けし、腹水サンプルの集団2及び3のゲートを調整して、この領域を有する重なりを最小化した。
該実験を、各患者サンプルで3回繰り返し、その後、ペプチド接合のないグルクロン酸被覆超常磁性ナノ粒子を用いて、更に3回行った。
【0189】
表1は、未処置の腹水サンプル(患者914及び923)のゲート付けした集団の平均細胞数(試験1〜3)を、ペプチド接合を有する又は有しないナノ粒子を用いて抽出された平均細胞数と比較する。EphA2、HEA、CA125、MAC387及びCD83を発現している各集団の細胞に対して、「%総量」値も表す。ゲートP1のペプチド接合ナノ粒子を用いて取り除かれた細胞数は、異常に高くみえるが、ナノ粒子単独からこのゲートに示されるバックグラウンド干渉により説明することができる。
図4A〜Kは、1人の患者のフローサイトメトリ分析のドットプロットを示す。
【0190】
【表1】

【0191】
各患者の未治療の腹水サンプルの前方散乱(FSC)対側方散乱(SSC)のプロットの外観検査は、少なくとも4つの異なった小集団を与え、ゲート集団1(「P1」)及び集団1(「P2」)によって包含される領域は、初め、イベントの最大平均数を保持していた(表1を参照)。濾取物及び濾取物制御試験からの各集団の平均%総量値は、表1において、同様に特徴付けされる。
【0192】
患者914からの腹水サンプルの細胞の5.60%+/-1.54%(平均+/-標準偏差)、17.97%+/-2.81%、89.84%+/-20.58%、及び4.81%+/-0.56%の平均は、ペプチド接合ナノ粒子を用いて、それぞれ、集団P1、P2、P3及びP4から抽出し、一方、0.19%+/-0.13%、0.46%+/-0.19%、4.53%+/-0.74%、及び0.27%+/-0.27%は、ペプチド接合のないナノ粒子を用いて、同じそれぞれのゲート集団から抽出した。
【0193】
患者923サンプルについて、細胞の13.70%+/-1.0%、20.92%+/-2.24%、32.05%+/-2.37%、及び2.13%+/-0.87%の平均は、ペプチド接合ナノ粒子を用いて抽出し、かつ細胞の2.45%+/-0.64%、5.02%+/-0.45%、6.58%+/-0.91%、及び0.00%は、ペプチド接合体のないナノ粒子を用いて、それぞれ、集団P1、P2、P3及びP4から抽出された。
【0194】
(卵巣癌細胞のペプチド接合ナノ粒子への結合の実証)
上記の還元アミノ化技術を用いる、ナノ粒子への
【化10】

ペプチド接合を、PBSで複数回洗浄して精製した磁気的に凝集された粒子を得ること、及び蛍光顕微鏡法を用いてそれらを観察することにより検証した。ローダミン接合ペプチドを有する磁性ナノ粒子の凝集は、オリンパスX51倒立蛍光顕微鏡のオリンパスローダミンフィルタを用いて観察した。凝集によって生じる赤蛍光を、ペプチドがうまく連結されている確認と受け止めた。
【0195】
フローサイトメトリ分析後にナノ粒子への細胞の吸着を視覚的に確認するために、濾取物の100μLのサンプルを、10μLのトリパンブルーで染色し、明視野顕微鏡を用いてイメージ化した。先に−80℃で保存していたので、該腹水サンプルが死細胞集団を含むと仮定した。死細胞は、もはや細胞膜全体に渡ってトリパンブルーの通過を抑制することができず、この技術を用いる明視野イメージング下で視覚的に強調されるであろう。2500ガウス磁石を用いて、該磁性ナノ粒子を大きいクラスタに凝集させ、更なるイメージ強調を提供した。該ナノ粒子凝集体は青く見え、死細胞の該ナノ粒子への付着を示唆した。
【0196】
(ペプチド接合ナノ粒子が、ヒト腹水液由来の卵巣癌細胞を首尾よく抽出できることの実証)
抽出された細胞数を、各患者及び試験に対して、実験サンプルとコントロールサンプルとの間で、カイ二乗分析を使用して比較した。試験した帰無仮説は、各ゲート集団について、実験群とコントロール群とにおいて収集された細胞数の間の有意差がなかったものとした。グルクロン酸で被覆し且つ17残基ペプチド配列
【化11】

に接合された超常磁性ナノ粒子を用いて得られた濾取物の細胞数は、実験データセット(a)からなり、及びグルクロン酸で被覆し且つペプチド接合のない超常磁性ナノ粒子を用いて得られた濾取物の細胞数は、コントロールデータセット(c)からなる。有意な最小の許容されるp値を、0.05とした。p値が0.05を超えた場合、該接合ペプチドが、抽出された細胞数に対して有意な影響を有しないと結論した。p値0.05未満に関しては、細胞数が該ペプチド接合体を用いて著しく増加したと結論した。
【0197】
それぞれの開始集団の調査は、各試験に使用した純粋な腹水サンプルのフローサイトメトリ分析から行った(それぞれ実験群及びコントロール群のH1及びH0)。大部分の患者試験のp値は、十分に0.05未満に落ち、17残基ペプチド接合を有する超常磁性ナノ粒子が、ペプチド接合のない粒子よりも有意に多い数を抽出することができたと結論した。
【0198】
0.05を超えるp値をとなる唯一の試験は、患者923から分析したサンプルの集団4からもたらされた。この集団から抽出した任意の細胞が非特異的に捕獲されたと決定した。
17残基ペプチド
【化12】

の、腺癌によって共通に発現される標識を発現する標的細胞集団への傾向を検査するために、腹膜滲出液を、それらの標識に高親和性を有するモノクローナル抗体のパネルを用いて免疫染色した。
【0199】
単一パラメータ頻度ヒストグラムを用いて、コントロール及び実験サンプルを分析した。各患者の未処置の腹水サンプルをコントロールサンプルとして用い、自己蛍光レベルを4ディケードログアンプ(four decade log amplifier)を用いて記録した。各患者からの腹膜滲出液の実験サンプルを、抗CD83、抗MAC387、BerEP4、抗EphA2及び抗CA125を用いる個別試験に取り組んだ。各モノクローナル抗体は、FITC接合体又はフィコエリトリン接合体(EphA2)を有する二次抗体を有した。
【0200】
実験サンプルからのヒストグラムを、コントロールのものに重ね合わせ、2つの間に幾つかの相違があったかどうかを決定した。これらのグラフから、患者914サンプルについて計数した10,000イベントの0.22%が、EphA2レセプタに対して陽性発現を示し、かつゲート付けされた集団P1内に存在していた。P2、P3及びP4の値は、それぞれ16.15%、12.87%及び0.30%であった。患者923からのサンプルにおいて、陽性EphA2発現を示す割合は、0.36%(ゲートP1)、5.6%(ゲートP2)、2.71%(ゲートP3)、及び0.58%(ゲートP4)であった。
【0201】
EphA2及びCA125の発現レベル間の共分散は、患者914からのサンプルのゲート付け集団P1、P2及びP3、及び患者923からのサンプルのゲート付け集団P1、P2、P3及びP4において、陽性であるように見えた。例えば、CA125及びEphA2は、患者914からのサンプルのP1において、ごくわずかに発現され(それぞれ0.16%及び0.22%)、ゲート付け集団P2においては、より大きな数(CA125について30.90%、及びEphA2について16.15%)で発現された。
【0202】
CA125、EphA2、HEA及びMAC387を発現している細胞の最も多い数は、患者914からのサンプルのゲートP2及びP3からもたらされた。しかし、まれなHEA発現が、両方のこれらの集団において、1.43%及び0.75%として相応して見られた。
【0203】
患者923からのサンプルにとって、HEAを発現している細胞の数は、P2について8.06%及びP3について1.52%であった。また、P2、P3、及びP4において、EphA2、HEA、CA125及びMAC387を発現している細胞数と、P2からもたらされたこれらの標識を発現している最も多い細胞数との間の陽性共分散があった。
【0204】
CD83の発現レベルは、両方の患者サンプルについて非常に低かった。患者914からのサンプルにおいて、全4つの集団全体の平均CD83+細胞の数は、0.12%+/-0.14%(平均+/-標準偏差)であり、患者923では0.19%+/-0.28%であり、これは、成熟した樹状細胞がこれらの腹水サンプルにほとんど無かったことを示唆している。
【0205】
(実施例3)
(マウスの卵巣癌研究)
卵巣癌生存研究を行い、播種性腫瘍細胞の捕獲及び除去が、治療の手段として使用され、転移を緩和して、それによって長命を増加させることができるか否かを評価した。緑色蛍光タンパク質(GFP)及び血管内皮成長因子(VEGF)発現のための遺伝子でトランスフェクションしたマウス卵巣癌細胞系(ID8 GFP VEGF)を、研究に使用した。VEGF発現は、血管形成を刺激すること、及び免疫応答を弱めることにより、腫瘍発達を促進できる。GFPの発現を、定性的及び定量的に分析することができ、悪性細胞の転移を追跡する手段を提供する。
【0206】
該研究に使用するマウスは、2つのコントロール群及び一つの実験群に分けた。各群に、700万個のID8 GFP VEGF細胞を腹腔内(I.P.)注射した。第1のコントロール群(コントロールA)は、7匹のメスC57BL/6マウス(5〜8週齢)を含み、これらは、更なる処置を受けず、かつ観察のために準備した。第2のコントロール群(コントロールB)は、9匹のメスC57BL/6マウス(5〜8週齢)を含み、これらは、2及び4週の時点で、ナノ粒子なく体外装置で部分的な処置を受けさせた。実験群(実験)は、8匹のメスC57BL/6マウス(5〜8週齢)を含み、これらは、2及び4週の時点で、10mg/mLのグルクロン酸被覆超常磁性ナノ粒子の4mLで完全な処置を受けさせた。
【0207】
実験群のために構成される「完全な処置」を、図5に示す。それは、腹膜を通る流体の循環に使われる、入口(図5、要素#6)及び出口(図5、要素#5)カニューレを、マウスに挿管することを含む。
【0208】
カニューレ挿管の前に、体外回路に、無菌PBS又はリンガー液を入れた。卵巣癌細胞表面レセプタに選択的なペプチドで官能化したナノ粒子を、混合チャンバー(図5、要素#3)に加えた。一旦作動すると、ポンプ(図5、要素#4)は、腹水を混合チャンバーに循環させた。流体の転移細胞は、混合チャンバー内の官能化磁性ナノ粒子によって捕獲され、悪性細胞/磁性ナノ粒子接合体が、磁気濾過チャンバー(図5、要素#1及び2)に循環され、それらは隔離され滞在した。濾過した溶液(すなわち、悪性細胞及び磁性ナノ粒子なし)は、対象の腹膜の中に戻して循環させた。
【0209】
各処置を約20分持続した。それは、記載されている構成を用いてマウス腹腔の平均容積(約2ml)を10回循環させるのに必要な計算された時間である。
手術後に、マウスを体外回路から分離し、該ラインを排液した。該排液を遠心分離し、回路内に残された任意の細胞を再捕獲し、ペレットをマウスに再び腹膜内注射した。この最終工程を行い、実験に付加的な変数をもたらす可能性をなくした。この工程を行わないことにより、腹膜の転移細胞の数は、単にそれらを、マイクロ転移の数に影響を及ぼす回路に引き込むことによって事実上減少する。
【0210】
記載したような同じ処置を、一つ変更して、群コントロールBで行った。ナノ粒子は用いなかった。この群の腹水を、回路を通して単に循環させ、該装置自体が対象に治療効果を有したかどうかを決定した。磁気濾過器含有物の定性分析を、手術後に蛍光顕微鏡を用いて行った。磁気濾過器により隔離された該磁性ナノ粒子の明視野イメージ、及び該粒子に結合した緑色蛍光タンパク質の存在を示している暗視野イメージを、蛍光顕微鏡を用いて可視化した。これらのイメージは、該回路から転移細胞の捕獲を質的に確認した。
【0211】
該処置を、ID8 GFP VEGF細胞系の最初の腹腔内注射の2及び4週後に行った。これは、悪性細胞が対象の腹膜の範囲内に移植及び増殖するのに2週を有することを意味する。この方法は、コントロール及び実験群の双方が、最終的に腫瘍を呈するという可能性を増加させた。従って、該処置は、このモデルの腫瘍成長を予防するとは予想しなかった。しかし、その拡散を遅延させると予想した。
この研究のマウスを、体重が最初に悪性細胞に注入された時に記録された腫瘤の150%に達したときに安楽死させた。
【0212】
ID8 GFP VEGF細胞系を用いる予備研究は、細胞が最終的に対象の腹水のかなりの量の蓄積を生じることを示した。この終点を用いて、生存曲線を構築した(図6を参照)。コントロールA群の対象の100%は、36日目に安楽死させなければならなかった。コントロールB群からの対象のわずか11.1%は、43日目でまだ危険性があり、44日目で安楽死させる最終的な対象を有する。対照的に、実験群からの対象の12.5%は、49日目でまだ危険性があり、60日目に安楽死させる最終的な対象を有する。
【0213】
ログランク(log-rank)(マンテル-コックス(Mantel-Cox))試験を用いて3つの群の生存曲線を比較し、実験群が官能化超常磁性ナノ粒子を用いる処置から有意に利益を得たという定量的なサポートを示す、0.0228のp値を得た。
【0214】
(実施例4)
(HIV-1捕獲)
(HIV-1サンプル)
HIV-1のサンプルは、疾病管理センター(Centers for Disease Control)(Atlanta, GA)から得た。
【0215】
(HIV-1検出)
RPMI増殖培地中のp24タンパク質の濃度を、抗gp120接合体を有する及び有しない磁性ナノ粒子で処置する前後において、ZeptoMetrix HIV-1 p24抗原ELISAを用いて検出した。
【0216】
(結果)
HIV-1ウイルスの濃度は、抗gp120接合体を有する磁性ナノ粒子を用いて、HIV-1サンプル培地で著しく低下した。図6は、抗体接合体を含まない磁性ナノ粒子、及び抗gp120で官能化した少数及び多数の磁性ナノ粒子で処置する前後の、HIV-1を含むサンプルのp24濃度の比較を示す。
実験条件及び使用する磁性ナノ粒子数は、表2において、フィーチャーされる。各群の平均を、一元配置ANOVAを用いて分析し、統計的有意差を決定した。
【0217】
【表2】

【図1A】

【図1B】

【図2A−B】

【図2C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面上に結合パートナーを発現する標的細胞、病原体、又はウイルスを選択的に取り除くための装置において:
磁場中において磁性ナノ材料を捕獲するのに十分な磁場を生成できる磁石と、磁性ナノ材料を捕獲することができる取り外し可能な磁化可能基材とを含む磁気濾過器を含む、体外回路;及び
該磁気濾過器と流体連通するポンプであって、該体外回路を通る流体を移動させるポンプ;を含む、前記装置。
【請求項2】
前記磁化可能基材が、スクリーンである、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記磁気濾過器と流体連通するリザーバをさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記リザーバと前記磁気濾過器との間にあり、前記リザーバ及び前記磁気濾過器と流体連通する混合チャンバーをさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記装置を移動する流体を加熱するための加熱器をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記流体の流速をモニター又は維持するための、前記ポンプと電気通信又は無線通信する管理コンポーネントを更に含む、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記流体を予め定められた温度に維持するための、前記加熱器と電気通信又は無線通信する管理コンポーネントをさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記磁化可能基材が、前記磁気濾過器から取り外し可能である、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記リザーバ及び磁化可能基材が滅菌可能である、請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記リザーバが、前記標的細胞、病原体、又はウイルスの表面上の結合パートナーに結合する第1の結合パートナーで官能化された超常磁性ナノ粒子を含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記標的細胞上の結合パートナーが、前記第1の結合パートナーに結合できる腫瘍特異的抗原又はその断片を含む、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記超常磁性ナノ粒子上の第1の結合パートナーが、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー、擬似ペプチド、前記標的のために選択される合成リガンド、及び抗体又はその抗原結合断片からなる群から選択される、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記超常磁性ナノ粒子が、該粒子の単位表面積あたり少なくとも一つの結合パートナーを含む、請求項10〜12のいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
治療の必要がある対象から標的細胞、生物体、又はウイルスを取り除くためのエキソビボ方法であって、該患者から生物流体を取り出すこと、及び該生物流体を請求項10〜13のいずれか1項記載の装置に輸送すること、超常磁性ナノ粒子と生物流体との混合物を磁気濾過器に通すこと、及びリザーバ又は患者に濾液を戻すことを含み、該標的細胞が癌細胞である、前記方法。
【請求項15】
前記対象に代替流体を投与することをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記生物流体が、血液、血清、脳脊髄液、リンパ、及び腹水からなる群から選択される流体である、請求項14記載の方法。
【請求項17】
治療の必要がある対象から標的細胞、生物体又はウイルスを取り除くためのエキソビボ方法であって、該患者から生物流体を取り出すこと、及び該生物流体を請求項10〜13のいずれか1項記載の装置に輸送すること、超常磁性ナノ粒子と生物流体との混合物を磁気濾過器に通すこと、及びリザーバ又は患者に濾液を戻すことを含み、該標的細胞が感染細胞である、前記方法。
【請求項18】
前記感染細胞が、ウイルス、バクテリア、原生動物、又は真菌によって感染されている、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記対象に代替流体を投与することをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記超常磁性ナノ粒子上の結合パートナーが、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー、疑似ペプチド、及び標的のために選択される合成リガンドからなる群から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項21】
対象から標的細胞、生物体、又はウイルスを取り除くためのインビボ方法であって;
該対象から生物流体を得ること;
該生物流体を請求項10〜13のいずれか1項記載の装置に輸送すること;
超常磁性ナノ粒子と生物流体との混合物を磁気濾過器に通すこと;及び
リザーバ又は患者に濾液を戻すこと;を含む、前記方法。
【請求項22】
濾液をサンプル採取し、該濾液をリザーバ又は患者に戻す前に、超常磁性ナノ粒子がそこに存在するかを決定することをさらに含む、請求項14、17又は21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
対象から磁気的性質を有するナノ材料を取り除くためのエキソビボ方法であって:
該対象から磁気的性質を有するナノ材料を含む生物流体を得ること;
該生物流体を請求項1〜9のいずれか1項記載の装置に輸送すること、ここで、該生物流体中のナノ材料は磁気濾過器により捕獲される;及び
リザーバ又は患者に濾液を戻すこと;を含む、前記方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−526799(P2011−526799A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514790(P2011−514790)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/047717
【国際公開番号】WO2009/155384
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(505477235)ジョージア テック リサーチ コーポレイション (12)
【Fターム(参考)】