説明

細胞外マトリックスの障害を治療するための方法及び組成物

本発明は、細胞が産生する細胞外マトリックス(ECM)タンパク質のレベルを改変する方法を提供し、この方法は細胞分裂自己抗原(CDA)の発現又は活性を調節することを含む。本出願人らは、驚くべきことに、哺乳動物の細胞が産生するECMタンパク質のレベルを制御する経路にCDAが関与することを見出した。本発明は、腎繊維症及びアテローム性動脈硬化症などのECMに関係のある多くの障害に関連している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合組織の生物学の分野に関する。より詳しくは、本発明は、繊維症などの細胞外マトリックス(ECM)に関連する結合組織障害、及び腎疾患、糖尿病、及びアテローム性動脈硬化症などの二次的疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
ECMは、通常結合組織内で構造上の役割を果たすゲル様物質である。ECMは、間質物質及び繊維から構成される。間質物質は間質を満たす無構造の物質であり、間質液、細胞接着タンパク質、及びプロテオグリカンから構成される。細胞接着タンパク質のために、結合組織細胞がマトリックス物質に接着することができる。プロテオグリカンは、水分を保持する働きをし、そのために半強固な水和したゲルが生じる。
【0003】
多糖類の相対量及び種類は、マトリックスの特性を決定する助けとなる。例えば、多糖類が多いほど間質物質は堅くなる。間質物質は細胞を支持し、細胞を結びつけ、栄養及び他の溶解した物質がそれを通して毛細血管と細胞との間を拡散することができる媒体として働く。
【0004】
マトリックスの繊維は強さを与える。結合組織のマトリックスには、コラーゲン繊維、弾性繊維、及び網状繊維の3つの型の繊維が見出されている。コラーゲン繊維(白色繊維)は、極めて強固であり高度の引っ張り強さを与えるが、この引っ張り強さは縦方向の張力に抵抗する能力である。新鮮なコラーゲン繊維の外観は白く輝いているため、「白色繊維」と呼ばれることもある。弾性繊維(黄色繊維)は、その長さの1から1.5倍に伸ばすことができるが、解放すると元の長さに戻る。弾性繊維は、肺及び血管壁などのより大きな弾性が必要なところに見出される。新鮮な弾性繊維の外観は黄色であり、黄色繊維とも呼ばれる。網状繊維は、細いコラーゲン性の繊維である。網状繊維は、肝臓及び脾臓などの柔軟な臓器を支持する繊細な枝分かれした網状組織を形成している。
【0005】
ECMは明らかに体内で重要な構造上の役割を果たすが、ECM障害はよく起こり重症である。繊維症は、動物においてECMの過剰産生の結果生じる瘢痕組織の生成に対する一般的な用語である。米国における死亡の45パーセントは、繊維増殖性(fibroproliferative)障害によるものと推定されている。
【0006】
繊維症は、外傷、外科手術、感染、環境汚染、アルコール、及び他のタイプの毒素を含む多様な原因によって生じる可能性がある。繊維症には、心臓のポンプ能力を損なう心臓発作後の瘢痕組織の形成など、多くの例がある。糖尿病は、進行性の腎機能喪失となる腎臓の損傷及び瘢痕化を頻繁に引き起こす。外科手術後でさえ、内部臓器間に瘢痕組織が生じ、痙縮、疼痛、及び場合によっては不妊症を引き起こすことがある。
【0007】
繊維障害は、急性のことも慢性のこともあり得るが、これらの障害は、コラーゲンが過剰に蓄積し、正常組織が瘢痕組織で置き換わると機能が付随的に喪失するという一般的な性質を共有する。
【0008】
急性繊維症(通常は、突然、重症に始まり、持続期間は短い)は、偶発的な負傷、感染、外科手術、熱傷、放射線、及び化学療法治療を含む様々な形態の外傷に対する一般的な反応として起こる。外傷により損傷を受けた組織は全て、特に損傷が繰り返される場合に、瘢痕になり易く繊維症となる。
【0009】
慢性繊維症は、組織機能の継続的な喪失を引き起こす進行性繊維症を誘発する、ウイルス感染、糖尿病、高血圧、及び他の慢性状態から生じる可能性がある。最も一般的に冒されるのは、肝臓、腎臓、及び肺である。臓器機能の喪失が進行すると、疾病、入院、透析、労作不能、及び死さえもまねくので、深部臓器の繊維症は極めて重症であることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ECM障害は、広く起こり、衰弱を起こし、生命を脅かすことも多いが、現在効果的な治療は得られていない。ECMに関連した多くの形態の障害に臨床上の有害作用があることを考慮すると、効果的な治療は明らかに必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人らは、既知の細胞タンパク質がECM障害の病態生理に関与することを発見することにより、従来技術の問題を克服又は軽減した。
【0012】
一態様では、本発明は、細胞が産生する細胞外マトリックス(ECM)タンパク質のレベルを改変する方法を提供し、この方法は細胞分裂自己抗原(CDA)の発現又は活性を調節することを含む。本出願人らは、驚くべきことに、哺乳動物細胞が産生するECMタンパク質のレベルを制御する経路にCDAが関与することを見出した。本発明は、腎繊維症及びアテローム性動脈硬化症などのECMに関係のある数々の障害に関連している。
【0013】
CDAは、細胞分裂自己抗原1(CDA1)、又はその機能的等価物又は誘導体であることができる。
【0014】
別の態様では、本発明は、ECMタンパク質の合成に関係のある状態を治療又は予防する方法を提供し、この方法はCDAの発現及び/又は活性を調節することを含む。
【0015】
本発明は、CDA1を改変されたレベルで発現することができる細胞を有するECM障害の研究に使用するためのヒト以外の動物も提供する。
【0016】
本発明の別の態様は、ECMの合成を調節することができる物質をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、
CDA1を発現することができる動物又は細胞を用意するステップと
その動物又は細胞をその物質に曝露するステップと、
その物質がCDA1の発現及び/又は活性に及ぼす影響を決定するステップと
を含む。
【0017】
本発明は、本明細書に記載されたスクリーニング方法により同定される物質、及びその物質を含む薬剤組成物をさらに含む。
【0018】
本発明は、ECMに関係のある状態を治療又は予防する方法をさらに含み、この方法は、本明細書に記載された薬剤組成物の有効量をそれを必要とする動物に投与することを含む。
【0019】
また、本発明は、細胞におけるCDA1の発現及び/又は活性を調節する方法を提供し、この方法は、アンギオテンシンII、TGFβ、及び結合組織成長因子を含む群から選択される因子の活性を調節することができる物質に細胞を曝露することを含む。
【0020】
本発明は、またさらにECMタンパク質の合成に関係のある状態を診断する方法を提供し、この方法は、
動物から生物学的サンプルを得ること、
サンプル中のCDA1のレベルを決定すること、及び
サンプル中のCDA1のレベルを基準値と比較すること
を含み、サンプル中のCDA1のレベルが基準値より統計学的に有意に高い又は低い場合に陽性と診断される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
一態様では、本発明は、細胞が産生する細胞外マトリックス(ECM)タンパク質のレベルを改変する方法を提供し、この方法は細胞分裂自己抗原(CDA)の発現又は活性を調節することを含む。本出願人らは、驚くべきことに、哺乳動物細胞が産生するECMタンパク質のレベルを制御する経路にCDAが関与することを見出した。
【0022】
ECMは、哺乳動物の組織内に見られる細胞を取り囲み、支持する複雑な構造的実体である。ECMは結合組織と呼ばれることが多い。ECMは、3つの主要なクラスの生体分子、即ち構造タンパク質(コラーゲン及びエラスチン)、特殊化タンパク質(フィブリリン、フィブロネクチン、及びラミニン)、並びにプロテオグリカンから構成される。
【0023】
したがって、本発明の好ましい形態では、ECMタンパク質は、コラーゲン、エラスチン、フィブリリン、フィブロネクチン、ラミニン、及びプロテオグリカンを含む群から選択される。より好ましくは、ECMタンパク質は、フィブロネクチン又はコラーゲンIVである。
【0024】
本明細書で用いられる「CDAの発現又は活性を調節すること」とは、CDAの発現及び/又は活性を、非調節のレベルに比べて修正又は改変することを意味する。発現を調節することは、発現及び/又は活性を誘発し又は増加させること、或いは発現及び/又は活性を減少させることを含むことができる。
【0025】
細胞におけるCDAの発現及び/又は活性の調節は、CDAの拮抗薬、阻害薬、擬似物質、又は誘導体を使用して実現することができる。本発明で用いられる「拮抗薬」又は「阻害薬」は、CDAの生物学的活性を阻害し又は調節する物質のことである。拮抗薬及び阻害薬には、タンパク質、核酸、炭水化物、抗体、又はあらゆる他の分子若しくはリガンドが含まれる。タンパク質には、CDAを分解することができ、それによって細胞内又は細胞周囲のCDAレベルに影響を及ぼす酵素が含まれることがある。CDAの活性及び/又は発現を調節する他の物質には、ある範囲の合理的に設計された合成阻害薬が含まれる。
【0026】
CDAの発現及び/又は活性の調節は、直接的又は間接的方法によって実現することができる。CDAの発現及び/又は活性の調節は、当業者には周知の直接的方法を用いて実現され、ノックアウト技術、アンチセンス技術、三重鎖技術、標的突然変異、遺伝子治療、転写に作用する物質による制御を含むがそれらだけには限定されない。CDAの発現及び/又は活性を調節する間接的方法には、サイトカインなどによる上流又は下流の制御因子のターゲティングを含むがそれらだけには限定されない。
【0027】
「活性」とは、細胞におけるCDAの機能に関し、CDAがシャペロン分子、又は上流若しくは下流のエフェクター分子と結合し、それによりECMタンパク質の生成に影響を及ぼす上流又は下流の経路を活性化又は抑制する能力を含む。
【0028】
細胞が腎組織又は血管組織に由来するものであることが好ましい。腎臓でCDA1が発現されることについては、以前に報告がない。本出願人らは、遠位尿細管及び集合管を含む腎臓でCDA1が発現されることを示している(図4)。正常ラットの遠位尿細管及び集合管におけるCDA1の発現は、細胞質におけるパターンも核におけるパターンも実証した。CDA1は、正常ラットの腎臓の糸球体で発現されることはまれであった。
【0029】
細胞が、腎有足細胞、腎近位尿細管細胞、腎集合管細胞、泡沫細胞、又はマクロファージを含む群から選択されることがより好ましい。
【0030】
腎部分切除(STNx)後の残遺腎組織において、CDA1の発現が繊維症と共に局在化することも観察された(図3)。腎重量が減少した後、糸球体の有足細胞でCDA1の発現が見られた(図6A)が、これは正常の腎臓では見られなかった。細胞質及び核の染色パターンは、特に硬化した糸球体、及び尿細管管質性繊維症の部位でははっきりとしている。我々の予備データは、AT1受容体拮抗薬のバルサルタンなどアンギオテンシンIIの作用を遮断する治療的取組みは、細胞の損傷が少なくCDA1の発現が減弱することに関連することも示している(図3B)。
【0031】
以前に記載されたのと同じCDA1トランスフェクション技術を用いて(Chaiら、(2001年)「細胞の増殖を停止させるSET関連細胞分裂自己抗原1(CDA1)(SET−related Cell Division Autoantigen−1(CDA1)Arrests Cell Growth)」、J.Biol.Chem.276巻、33665〜33674頁、今後「Chaiら、2001年」と呼ぶ)、本出願人らはCDA1を近位尿細管細胞系のNRK−52Eにトランスフェクトした。我々の予備実験では、CDA1をトランスフェクトした細胞では、ビヒクルのみをトランスフェクトした細胞に比べて、コラーゲンIV(図4B)及びフィブロネクチン(図4D)を含むマトリックスタンパク質の産生が上昇したことが示されている(図4A及び4C)。この結果は、CDA1が細胞外マトリックスの産生、及びそれに続く腎繊維症の発症に直接関連する可能性があることを示唆している。
【0032】
本発明の好ましい形態では、CDAは、細胞分裂自己抗原1(CDA1)、又はそのフラグメント、機能的等価物、類似体、突然変異体、若しくは変異体である。
【0033】
CDA1は、円板状紅斑性狼瘡患者の血清を用いて最近同定された新規の核タンパク質である。本出願人らは、以前にCDA1の分子クローニング及び構造について詳細に記載している(WO02/36768として刊行されたPCT/AU01/0148を参照されたい)。簡潔に述べると、CDA1のcDNAは、2808塩基対であり、2079塩基対のオープンリーディングフレームは、CDA1と名付けられた693個のアミノ酸の予測ポリペプチドをコードしている。CDA1の予測分子量は79,430ダルトンであり、pIは4.26である。
【0034】
CDA1は、N末端のプロリンリッチドメイン、中央の塩基性ドメイン、及びC末端の二連(bipartite)酸性ドメインを含む。本出願人らの当初の研究により、CDA1には4つの推定上の核局在シグナル、並びにcAMP及びcGMP依存キナーゼ、タンパク質キナーゼC、チミジンキナーゼ、カゼインキナーゼII、及びサイクリン依存キナーゼ(CDKs)によりリン酸化を受ける潜在的部位があることが実証されている。CDA1は、HeLa細胞中で、in vitroでサイクリンD1/CDK4、サイクリンA/CDK2、及びサイクリンB/CDK1によりリン酸化される。CDA1の塩基性及び酸性ドメインは、殆どのヒト白血病関連SETタンパク質全体と相同のドメインを含む。
【0035】
CDA1の発現は細胞周期中では絶えず変化し、そのレベルは様々な細胞周期の期及び培養条件と直接関係がある。血清の飢餓細胞(G期)では、CDA1は非常に低いレベルで発現された。血清を培養液に添加して細胞周期を刺激すると(G1期)、それに関連してCDA1の発現が増加した。培養液にチミジンを2mM添加して細胞をG1/Sで阻止すると、CDA1の発現は最高に達した。コルセミド0.15μg/mlの添加により細胞をM期で停止させると、CDA1の発現は減少したが、それでもG期で検出されたものよりは高かった。
【0036】
他の研究者もその後CDA1を同定し、それがTGFβ1標的遺伝子であることを実証し、差次的に発現された核小体TGF−β1標的(Differentially Expressed Nucleolar TGF−β1 Target:DENTT)と名付けた。CDA1の発現は、in vitroでTGFβ1によって増加することが実証された。CDA1(DENTTとしても知られる)は、下垂体で高度に発現され、副腎、脳、膵島、精巣、及び卵巣で中程度に発現され、内分泌器官でこのタンパク質が優位であることが示唆される。
【0037】
より好ましくは、CDA1は、図7によるヌクレオチド配列、又はCDA1の機能的等価物若しくは誘導体をコードする配列でコードされる。CDA1は、図8によるアミノ酸配列又はその機能的等価物若しくは誘導体を有することができる。
【0038】
本明細書で用いられる「機能的等価物又は誘導体」はフラグメントを含むがそれだけには限定されず、フラグメントはCDA1又はその相同体、類似体、突然変異体、変異体、若しくは誘導体の機能上の活性を有する。これには、融合タンパク質を含めて、天然、リコンビナント、又は合成の供給源に由来する相同体、類似体、突然変異体、変異体、又は誘導体が含まれる。「相同体」と言及した場合、治療される種以外の種に由来するCDA1核酸分子又はタンパク質と理解されたい。
【0039】
誘導体には、融合タンパク質を含めた、天然、合成、又はリコンビナントの供給源由来のフラグメント、部分、一部、突然変異体、変異体、及び擬似物質が含まれる。部分又はフラグメントには、例えば、CDA1の活性領域が含まれる。誘導体は、アミノ酸の挿入、欠失、又は置換によって得られたものでよい。アミノ酸の挿入による誘導体には、アミノ末端及び/又はカルボキシル末端の融合物、並びに1個又は多数のアミノ酸の配列内挿入が含まれる。アミノ酸配列の挿入による変異体は、1個又は複数のアミノ酸残基がタンパク質の所定の部位に導入されたものであるが、得られた産物のスクリーニングが適切であればランダムな挿入も可能である。欠失による変異体は、配列から1個又は複数のアミノ酸が取り除かれることを特徴とする。置換によるアミノ酸の変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が取り除かれその場所に異なる残基が挿入されたものである。置換によるアミノ酸の変異体の例として、保存的なアミノ酸の置換がある。保存的アミノ酸の置換には、通常以下:グリシンとアラニン、バリンとイソロイシンとロイシン、アスパラギン酸とグルタミン酸、アスパラギンとグルタミン、セリンとスレオニン、リジンとアルギニン、フェニルアラニンとチロシン、のグループ内での置換が含まれる。アミノ酸配列に対する添加には、他のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質との融合が含まれる。
【0040】
CDA1の核酸又はタンパク質分子の化学的及び機能的等価物は、これらの分子の任意の1つ又は複数の機能上の活性を示す分子を含むということを理解すべきであり、化学的に合成されたもの、又は天然産物のスクリーニングなどのスクリーニングプロセスで同定されたものなどのあらゆる供給源に由来するものでもよい。
【0041】
誘導体には、ペプチド、ポリペプチド、又は他のタンパク質若しくは非タンパク質の分子に融合したタンパク質全体の特別なエピトープ又は部分を有するフラグメントが含まれる。
【0042】
本明細書で企図される類似体には、側鎖の修飾、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の合成中の非天然アミノ酸及び/又はその誘導体の取込み、並びにタンパク質分子又はその類似体に対して立体配座の束縛を強制する架橋剤及び他の方法の使用が含まれるが、それらだけには限定されない。
【0043】
核酸配列の誘導体は、同様に、他の核酸分子との融合を含めた、1個又は多数のヌクレオチドの置換、欠失、及び/又は付加に由来するものでもよい。本発明の核酸分子の誘導体には、オリゴヌクレオチド、PCRプライマー、アンチセンス分子、核酸分子の共抑制(cosuppression)及び融合に使用するのに適する分子が含まれる。核酸配列の誘導体には、縮重変異体も含まれる。
【0044】
本発明で企図される側鎖の修飾の例には、アルデヒドとの反応による還元的アルキル化及びそれに続くNaBHによる還元、メチルアセトイミデートによるアミジノ化などによるアミノ基の修飾;無水酢酸によるアシル化、シアナートによるアミノ基のカルバモイル化、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化、無水コハク酸及び無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化、ピリドキサル−5−リン酸によるリジンのピリドキシル化及びそれに続くNaBHによる還元が含まれる。
【0045】
アルギニン残基のグアニジン基は、2,3−ブタンジオンフェニルグリオキサール及びグリオキサールなどの試薬で複素環縮合産物を形成して修飾することができる。
【0046】
カルボキシル基は、O−アシルイソウレアの形成によるカルボジイミドの活性化、及びそれに続き対応するアミドなどに誘導して修飾することができる。
【0047】
スルフヒドリル基は、ヨード酢酸又はヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化、システイン酸への過ギ酸酸化、他のチオール化合物によるジスルフィド混合物の形成、マレイミド、無水マレイン酸、又は他の置換されたマレイミドとの反応、4−クロロメルクリ安息香酸、4−クロロマーキュリフェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール、及び他の水銀剤を用いた水銀誘導体の形成、アルカリ側のpHにおけるシアネートによるカルバモイル化などの方法により修飾することができる。
【0048】
トリプトファン残基は、例えば、N−ブロモスクシンイミドによる酸化、又は2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジルブロミド若しくはハロゲン化スルフェニルによるインドール環のアルキル化により修飾することができる。一方、チロシン残基は、テトラニトロメタンでニトロ化して3−ニトロチロシン誘導体を形成することにより改変することができる。
【0049】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体によるアルキル化、又はジエチルピロカーボネートによるN−カーボエトキシ化により行うことができる。
【0050】
タンパク質合成中に非天然アミノ酸及び誘導体を取込むことの例には、ノルロイシン、4−アミノ酪酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸、6−アミノヘキサン酸、t−ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸、2−チエニルアラニン、及び/又はアミノ酸のD異性体の使用が含まれるが、それらだけには限定されない。
【0051】
別の態様においては、本発明は、ECMタンパク質の合成に関係のある状態を治療又は予防する方法を提供し、この方法はCDAの発現及び/又は活性を調節することを含む
【0052】
ECMタンパク質の合成に関係のある状態には、外傷の結果としての繊維症、並びに特に脊椎及び中枢神経系の損傷が含まれる。熱傷及び他の肥厚性瘢痕、心臓発作後の心臓の瘢痕化、血液療法薬物が誘発する繊維症、放射線が誘発する繊維症、肺繊維症(急性呼吸器不全症候群)及び外科手術の瘢痕化もまた含まれる。
【0053】
この状態は、腎疾患(例えば、糖尿病又は高血圧症によるもの)、肝繊維症(例えば、ウイルス性肝炎又はアルコール乱用によるもの)、肺繊維症、心臓繊維症、黄斑変性、網膜及び硝子体網膜症などを含めた主要な臓器の繊維症でもよい。
【0054】
この状態には、全身性及び局所性の強皮症、ケロイド及び肥厚性瘢痕、アテローム性動脈硬化症又は再狭窄などの障害も含まれることがある。
【0055】
本発明のより好ましい形態では、この状態は、糖尿病の結果としての腎繊維症である。出願人らは、8週齢の糖尿病ラットにおいてCDA1の発現が増加することを発見した(図6)。その上、糖尿病誘発32週後に腎臓のCDA1の発現がさらに増加した。尿細管及び間質において、CDA1の発現が増加することが見出されている。
【0056】
特に興味深いのは、正常ラットからの腎臓では見られなかったCDA1の新たな発現が、糖尿病ラットからの有足細胞にあったことである(図2)。本出願人らは、糖尿病性腎症では有足細胞の損傷が起こること、及びネフリンのようなスリット膜タンパク質の不十分な発現が糖尿病で見られるアルブミン尿の一因である可能性があることを実証している。CDA1及び糖尿病性腎症の周知の病態生理学的側面に関するこれらのデータに基づき、この新規のタンパク質は糖尿病性腎症の機能上の発現と構造上の発現との間の重要なリンクであると、本出願人らは提唱する。
【0057】
理論によって限定されることを望まないが、アンギオテンシンII、TGFβ、及びCTGFを介して糖尿病で活性化される血行力学的経路及び代謝経路は、CDA1の発現を増加させ、それによってフィブロネクチン及びコラーゲンIVなどのECMタンパク質の産生を増加させることが提唱されている。
【0058】
本発明のさらに好ましい実施形態では、この状態はアテローム性動脈硬化症である。本出願人らは、糖尿病のApo Eノックアウトマウスの大動脈におけるアテローム硬化プラークでCDA1染色が増加することを示しているが(図6)、これはCDA1がアテローム性動脈硬化症の発症においてある役割を果たしている可能性があることを示唆している。アテローム性動脈硬化症は、動脈によく起こる疾患である。脂肪、コレステロール、及び他の物質が動脈壁に蓄積し、「粥腫(atheromas)」即ちプラークを形成する。最終的に、脂肪組織が動脈壁を侵食し、動脈の弾力性を減少させ、血流を妨害することがある。
【0059】
プラーク堆積物の周囲に凝血塊が生じ、さらに血流を妨害することがある。心筋へ向かう動脈の血流が大きく制限されるようになると、心筋に対する損傷は避けられない。
【0060】
危険因子には、喫煙、糖尿病、肥満、高血圧、血中高コレステロール、脂肪の多い食事、及び心臓疾患の個人的病歴又は家族歴を有することが含まれる。脳血管疾患、末梢血管疾患、及び透析を必要とする腎臓疾患もまた、アテローム性動脈硬化症と関連することのある障害である。本発明は、アテローム性動脈硬化症の治療又は予防を企図するものである。
【0061】
本方法は、ECMタンパク質の増加が望ましい状態、例えば動脈瘤、より詳しくは腹部大動脈瘤の治療のためにも使用される。
【0062】
本発明は、改変されたレベルでCDA1を発現することのできる細胞を有する、ECM障害を研究に使用するヒト以外の動物も提供する。この動物は、「ノックアウト」動物であって、CDA1を全く発現しないものでもよい。この動物は、低減した活性でCDA1を発現するものでもよい。このような動物はECMに関係のある状態を研究するための、又はECMに関係のあるあらゆる状態の治療又は予防に有用な物質をスクリーニングするためのモデルとして有用であることが企図される。
【0063】
本発明の別の態様では、ECM合成を調節することのできる物質をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、
CDA1を発現することができる動物又は細胞を用意するステップと、
この動物又は細胞をこの物質に曝露するステップと、
この物質がCDA1の発現及び/又は活性に及ぼす影響を決定するステップと
を含む。
【0064】
本発明はさらに、本明細書に記載されるスクリーニング方法によって同定される物質、及びECMに関係のある状態を治療するのに有用な物質を含む薬剤組成物を含む。薬剤組成物及び化粧用の組成物を調製するための方法及び担体は、「Remingtonの薬剤科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、18版、米国ペンシルバニア州、Easton、Mack Publishing Company刊などの教科書で述べられている通り当業者にはよく知られており、この本の内容は本明細書に組み込まれる。
【0065】
薬剤組成物は、ECMに関係のある状態を治療又は予防するために、治療又は予防有効量で投与することができる。本明細書で用いられる「治療又は予防有効量」とは、望まれる効果を少なくとも部分的に達成するために、或いはECMに関係のある状態の始まりを遅らせるために、進行を阻止するために、又は始まり若しくは進行を完全に止めるために必要な量を意味する。このような量は、勿論、治療する特定の状態、状態の重症度、並びに、年齢、身体の状態、大きさ、体重、及び他の併用療法を含む個々のパラメータに依存することがある。これらの因子は、当業者にはよく知られており、ルーチンの実験だけで対処することができる。最小有効量が、確実な医療上の又は治療上の判断により決定されることが概ね好ましい。しかし、医療上の又は他の理由でより高用量を投与することがあることを、当業者は理解されたい。当業者であれば、また、本発明の状況に有用な投与経路及び投与計画の範囲に精通している。所与の臨床上の適用に対する最適の製剤、投与経路、又は投与計画を確実にするには、ルーチンの実験だけが必要である。
【0066】
本発明は、ECMに関係のある状態を治療又は予防する方法をさらに含み、この方法は、本明細書に記載されている薬剤組成物の有効量をそれを必要とする動物に投与することを含む。ECMに関係のある状態は、本明細書にすでに記載されている状態のあらゆるものでよい。
【0067】
本発明は、細胞におけるCDA1の発現及び/又は活性を調節する方法も提供し、この方法は、アンギオテンシンII、TGFβ、及び結合組織成長因子を含む群から選択される因子の活性を調節することができる物質に細胞を曝露することを含む。
【0068】
出願人らは、アンギオテンシンII注入後にCDA1の発現が増加することを示している(図5B)。CDA1を免疫組織化学的に染色すると、近位尿細管では細胞質染色も核染色もレベルが増加することが示される。アンギオテンシンII注入後のCDA1の発現の増加は、AT1受容体拮抗薬であるバルサルタンで治療することにより防止される(データは示さず)。
【0069】
アンギオテンシンII注入後に尿細管でCDA1の発現が増加するパターン(図5B)は、TGFβ(図2C)及びTGFβ2(図2D)のものと類似している。さらに、2つの重要なプロアポトーシスタンパク質であるp53及びbaxの発現が増加したのと同じ部位で、近位尿細管のCDA1の発現の増加が観察された(データは示さず)。p53及びbaxの共発現は、CDA1が細胞増殖の阻害に関与することと一致している。
【0070】
本発明は、ECMタンパク質の合成に関係のある状態を診断する方法をさらにまた提供し、この方法は、
動物から生物学的サンプルを得ること、
サンプル中のCDA1のレベルを決定すること、及び
サンプル中のCDAの1レベルを基準値と比較すること
を含み、サンプル中のCDA1のレベルが基準値より統計学的に有意に高い又は低い場合に陽性と診断される。
【0071】
この方法は、本明細書に記載したようにECFの異常に関係のあるあらゆる疾患を診断する際に有用であることが企図される。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
CDA1の発現及びAngII:時間と投与量の関係
8週齢のオスSprague Dawley(SD)ラットに、皮下に埋植したミニポンプにより3日間又は14日間、昇圧作用のある投与量(60ng/分)及び昇圧作用のない投与量(6ng/分)のAng IIを継続的に注入した(CaoらZ、「成年ラットの腎臓においてアンギオテンシン2型受容体が発現し、細胞増殖及びアポトーシスを促進する(The angiotensin type 2 receptor is expressed in adult rat kidney and promotes cellular proliferation and apoptosis.)」、Kidney Int.、2000年、58巻、2437〜2451頁)。結果を図2に示す。
【0073】
(実施例2)
残遺腎臓におけるCDA1の発現及び繊維症
右腎切除により腎部分切除(STNx)を行い、その後、左腎の約3分の2に梗塞が形成され、1匹以外の選択的結紮を行ったもの全ての左腎動脈に腎臓外分枝が見られた(CIA40)。ペントバルビトンナトリウム(pentobarbitone sodium)(60mg/kg)を腹腔内注射し、麻酔を行った。対照に偽手術を行ったラットを用いた。手術後1、2、4、8、及び12週目に動物を屠殺し、組織を収集して、CDA1の発現、繊維成長因子、及びマトリックスタンパク質の評価を行った。結果を図3に示す。
【0074】
(実施例3)
Ang II、TGFβ、及びCTGF刺激の存在下又は存在なしで、CDA1の過剰発現がコラーゲン、オステオポンチン、フィブロネクチンの発現に及ぼす影響
培養した正常ラット腎上皮細胞系にCDA1をトランスフェクションすることにより、CDA1の過剰発現を実現した。培養した正常ラット腎上皮細胞系にCDA1をトランスフェクションすることにより、CDA1の過剰発現を実現した(NRK52E)。Mycでタグ付けしたCDA1を発現する構成物、即ちCDNA3−2M−CDA1及びpCDNA3−2MベクターコントロールDNAを用いて、以前にHeLa細胞のトランスフェクションで記載された電気穿孔法により、NRK52E細胞をトランスフェクトした(Chaiら、2001年)。
【0075】
トランスフェクトした細胞をカバーガラス上に塗抹し、ウシ胎児血清を含まないDMEM中で3日間培養した。フィブロネクチン及び他のマトリックスタンパク質を、免疫組織化学的方法により評価した。TGFβ、コラーゲンI、及びフィブロネクチンの遺伝子発現は、以下の引用文献に記載されているように、リアルタイムRT−PCR又は免疫化学的方法により評価することができる:Caoら、「進行性腎損傷におけるレニンアンギオテンシン系及びエンドセリン系の阻害(Blockade of the renin angiotensin and endothelin systems on progressive renal injury)」、Hypertension 2000年、36巻、561〜568頁;Twiggら、「実験的糖尿病における腎結合組織成長因子の誘導はアミノグアニジンにより妨害される(Renal connective tissue growth factor induction in experimental diabetes is prevented by aminoguanidine)」Endocrinology、2002年、143巻、4909〜4913頁。
【0076】
細胞外マトリックスタンパク質は、免疫組織化学的方法によりCDA1、又はビヒクルをトランスフェクトした細胞の存在下で又は存在なしに評価した。結果を図4に示す。
【0077】
8週齢のSprague Dawley(SD)ラットにストレプトゾトシン(STZ)を静脈注射することにより、糖尿病を誘発した(Allenら、「実験的糖尿病性腎症におけるアンギオテンシンII及びブラジキニンの役割−機能上及び構造上の研究(Role of angiotensin II and bradykinin in experimental diabetic nephropathy−functional and structural studies)」Diabetes、1997年、46巻、1612〜1618頁)。糖尿病誘発8及び32週後に動物を屠殺し、その後のCDA1の免疫組織化学検査用に腎臓を摘出した。結果を図5に示す。
【0078】
apo EノックアウトマウスにSTZ糖尿病を誘発し(STZを6日間毎日注射)、糖尿病誘発20週後に、免疫組織化学検査用に大動脈を摘出した。結果を図6に示す。
【0079】
(実施例4)
CDA1免疫組織化学検査の方法
パラフィンで固定した切片に、ウサギ抗ヒトCDA1血清を用いてCDA1染色を行った(Chaiら、2001年)。簡潔に述べると、脱ロウ後、パラフィンで固定した切片を、10mmol/Lクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中、電子レンジの低出力で10分間処理した。3%過酸化水素(H)のメタノール溶液を用い、20分間内因性のパーオキシダーゼを不活性化した。切片を、タンパク質ブロック剤で20分間ブロックした。切片を、ウサギ抗ヒトCDA1血清と室温で2時間インキュベートした。ビオチン化したヤギ抗ウサギ免疫グロブリン(DAKO A/S)を、第2抗体として使用し、その後アビジンビオチン西洋ワサビペルオキシダーゼ混合物(ABC Elite kit、カリフォルニア州、Burlingame、Victor Laboratories製)を用いた。3,3’−ジアミノベンチジンテトラヒドロクロリドと反応させて検出を行った(DAB、ミズーリ州、St Louis、Sigma Chemical社製)(Caoら、「成年マウスの腎臓においてアンギオテンシン2型受容体が発現し、細胞増殖及びアポトーシスを促進する(The angiotensin type 2 receptor is expressed in adult rat kidney and promotes cellular proliferation and apoptosis.)」、Kidney Int.、2000年、58巻、2437〜2451頁)。
【0080】
最後に、本明細書に概説した本発明の精神から逸脱することなく、他の様々な修正及び/又は改変を行うことができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】遠位尿細管及び集合管におけるCDA1の発現を示す。切片は、HEで対比染色してある(核が青色に染まっている)。パネルA、ヒト組織。パネルB、ラット腎組織。
【図2】in vivoにおけるAng II刺激に反応して腎臓内でCDA1の発現が増加することを示す。パネルA、CDA1発現対照。パネルB、アンギオテンシンIIに曝露後のCDA1の発現。パネルC、アンギオテンシンIIに曝露後のTGF−β1発現。パネルD、アンギオテンシンIIに曝露後のTGF−β2発現。
【図3】腎臓重量減少後のCDA1の発現の増加及び繊維症を示す。切片は、HEで対比染色してある(核が青色に染まっている)。パネルA、腎部分摘出におけるCDA1の発現。パネルB、バルサルタンに曝露後の腎部分摘出におけるCDA1の発現。
【図4】近位尿細管細胞における、CDA1の過剰発現及び細胞外マトリックスタンパク質の産生を示す。パネルA、ビヒクルをトランスフェクトしたNRK細胞のコラーゲンIV染色。パネルB、CDA1をトランスフェクトしたNRK細胞のコラーゲンIV染色。パネルC、ビヒクルをトランスフェクトしたNRK細胞のフィブロネクチン染色。パネルD、CDA1をトランスフェクトしたNRK細胞のフィブロネクチン染色。
【図5】糖尿病ラットの腎臓におけるCDA1の発現を示す。切片は、HEで対比染色してある(核が青色に染まっている)。パネルA、対照の腎臓におけるCDA1の発現。パネルB、8週間後のCDA1の発現。パネルC、32週間後のCDA1の発現。
【図6】アテローム硬化プラークにおけるCDA1の発現を示す。CDA1は茶色に染色し、核は青色に染色している。パネルA、糖尿病ではないマウスの大動脈。パネルB、糖尿病(apoE)マウスの大動脈。
【図7】ヒトCDA1をコードするDNA配列を示す。
【図8】ヒトCDA1に対するタンパク質配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞が産生する細胞外マトリックス(ECM)タンパク質のレベルを改変する方法であって、細胞分裂自己抗原(CDA)の発現又は活性を調節することを含む方法。
【請求項2】
前記ECMタンパク質が、コラーゲン、エラスチン、フィブリリン、フィブロネクチン、ラミニン及びプロテオグリカンからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ECMタンパク質がフィブロネクチン又はコラーゲンIVである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が腎組織又は血管組織に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が、腎有足細胞、腎近位尿細管細胞、腎集合管細胞、泡沫細胞及びマクロファージ細胞からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記CDAが、N末端のプロリンリッチドメイン、中央の塩基性ドメイン、及びC末端の二連酸性ドメインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記CDAが、細胞分裂自己抗原1(CDA1)、又はそのフラグメント、機能的等価物、類似体、突然変異体若しくは変異体である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記CDA1が、図7によるヌクレオチド配列でコードされる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記CDA1が、図8によるアミノ酸配列、又はその機能的等価物若しくは誘導体を有する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
ECMタンパク質の合成に関係のある状態を治療又は予防する方法であって、CDAの発現及び/又は活性を調節することを含む方法。
【請求項11】
前記状態が繊維症である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記繊維症が、熱傷、心臓発作、化学療法薬による治療、放射線への曝露、又は外科手術によるものである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記繊維症が主要臓器の繊維症である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記主要臓器が、腎臓、肝臓、心臓及び眼からなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記主要臓器の繊維症が、糖尿病、高血圧症、ウイルス性肝炎、アルコール乱用、黄斑変性症、網膜の網膜症及び硝子体網膜症からなる群から選択される状態によるものである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記状態が、糖尿病の結果としての腎繊維症である、請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記状態が、全身性及び局所性強皮症、ケロイド、肥厚性瘢痕、アテローム性動脈硬化症並びに再狭窄を含む群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項18】
前記状態が、アテローム性動脈硬化症である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記状態が動脈瘤である、請求項10記載の方法。
【請求項20】
前記動脈瘤が腹部大動脈瘤である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記CDAがCDA1である、請求項10記載の方法。
【請求項22】
ECM障害を研究に使用するためのヒト以外の動物であって、改変されたレベルのCDAを発現することのできる細胞を有する動物。
【請求項23】
前記CDAがCDA1である、請求項22記載のヒト以外の動物。
【請求項24】
ECM合成を調節することができる物質をスクリーニングする方法であって、
CDAを発現することができる動物又は細胞を用意するステップ、
前記動物又は細胞を前記物質に曝露するステップ、及び
前記物質がCDA発現及び/又は活性に及ぼす影響を決定するステップ、
を含む方法。
【請求項25】
前記CDAがCDA1である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
請求項24記載の方法により同定される物質。
【請求項27】
請求項26記載の物質を含む薬剤組成物。
【請求項28】
ECMタンパク質に関係のある状態を治療又は予防する方法であって、請求項27記載の薬剤組成物の有効量をそれを必要とする動物に投与することを含む方法。
【請求項29】
細胞におけるCDAの発現及び/又は活性を調節する方法であって、アンギオテンシンII、TGFβ、及び結合組織成長因子からなる群から選択される因子の発現及び/又は活性を調節することができる物質に前記細胞を曝露することを含む方法。
【請求項30】
前記CDAがCDA1である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
動物におけるECMタンパク質の合成に関係のある状態を診断する方法であって、
前記動物から生物学的サンプルを得ること、
前記サンプル中のCDAのレベルを決定すること、及び
前記サンプル中のCDAのレベルを基準値と比較すること、
を含み、前記サンプル中のCDAのレベルが基準値より統計学的に有意に高い又は低い場合に陽性と診断される、方法。
【請求項32】
前記CDAがCDA1である、請求項31記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−500264(P2008−500264A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517893(P2006−517893)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000873
【国際公開番号】WO2005/002614
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(307041012)ダイア − ビー テック リミテッド (1)
【Fターム(参考)】