説明

細胞外マトリックスタンパク質の合成を誘導するペプチドフラグメント

【解決手段】短い生物活性を有するテトラペプチドを開示するものであって、テトラペプチドは、配列GxxG及びPxxPを含んでいる。但し、G(グリシン)及びP(プロリン)は一定であり、xは可変アミノ酸である。ペプチドは、単独で又は組み合わせて用いることができ、皮膚に細胞外マトリックスタンパク質の生成を刺激する。テトラペプチドの不均一組成物を短時間、低コストで生成する方法を開示するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年6月13日に提出された米国仮出願番号60/813,284の優先権の利益を主張するものであり、引用をもって全文の記載加入とする。
【0002】
本発明は、GxxG又はPxxPのアミノ酸モチーフを有するテトラペプチドに関するものであり、ここで、G(グリシン)とP(プロリン)は一定で、xは可変のアミノ酸である。本発明はまた、フレームシフト活性テトラペプチドに関するものであり、テトラペプチドは、つまりECMタンパク質の中のGxxG又はPxxPのテトラペプチドから1フレームシフトしたテトラペプチド配列である。特に、本発明は、GxxG、PxxP又はフレームシフト活性ペプチドに関するものであり、細胞外マトリックスタンパク質の生成を刺激し、切り傷のできたヒトの皮膚表皮細胞単層の傷閉鎖を増進する。ペプチド組成物は、ダメージを受けた皮膚を治したり、健康的な皮膚を維持する製剤に用いることができる。
【背景技術】
【0003】
肌年齢は、一般にしわの形成と創傷治癒を基に考えられる。創傷は、肌の上皮の完全性における破壊として定義されている。通常の創傷治癒は、傷ついた組織の修復を促す、複雑で動的ではあるが極めて組織立った一連の現象を含んでいる。通常の皮膚において最も多い構成物は細胞外マトリックス(ECM)であり、これはECMが覆う細胞によって生成されるゲル状のマトリックスである。ECMは、繊維構造タンパク質およびプロテオグリカンを含む2つの主要クラスから構成されている。ECMの構成と結合状態の変化は、老化と、様々な後天的及び先天的な皮膚病と関連していることが知られている。ECMは、構造的サポートをもたらすだけでなく分化や増殖のような細胞の行動にも影響を与えることが十分に立証されている。また、更なる研究によって、マトリックス成分が上皮細胞の増殖と移動を促進する細胞シグナルの源であり、それ故に創傷治癒を高めるかもしれないということが示唆されている。
【0004】
繊維ECM分子の最も大きなクラスは、コラーゲンファミリーであり、少なくとも16の異なる種類のコラーゲンを含んでおる。皮膚マトリックスにあるコラーゲンは主としてコラーゲンI(80‐85%)とコラーゲンIII(8‐11%)とから構成され、これら両コラーゲンは、繊維状又はロッド状のコラーゲンである。肌の引っ張り強さは主にこれらの繊維コラーゲン分子によるものであり、該繊維コラーゲン分子は、頭部を次の分子の尾部へ、横方向には側面をずらして、自己構成して、ミクロフィブリルを形成する。コラーゲン分子は、近接するコラーゲン分子と架橋し、コラーゲン繊維中で更なる強度と安定性をもたらすようになる。コラーゲンネットワークへのダメージ(例えば酵素や物理的な破壊)、又はその完全に崩壊により、修復による治癒が引き起こされる。
【0005】
ECMタンパク質の生成を刺激する様々な生物活性ペプチドについて、化学論文や特許公報で報告がある。ペプチドは、歴史的には天然物から単離されてきたが、最近では構造機能的な関係に関する研究の対象となっている。天然ペプチドは、合成ペプチドアナログを設計する出発点としても役立っている。
【0006】
ECMタンパク質に含まれる特定の配列は、皮膚中の有用な成分、例えばI型コラーゲン、III型コラーゲン、フィブロネクチンを刺激する。(Katayama et. al., J. BIOL. CHEM. 288:9941-9944(1983))。KatayamaらはI型コラーゲンのカルボキシル末端プロペプチド(197‐241残基)にあるペンタペプチド KTTKS(SEQ ID NO:17)を同定した。このプロペプチドは、成熟コラーゲンタンパク質を生成する間、開裂している。開裂プロペプチドが、活性化の働きを有するKTTKS断片と共に、生合成フィードバックメカニズムを通して、コラーゲン産出を制御するのに関わっている可能性がある。Maquartら(J SOC BIOL.193:423-28(1999))の報告ではGHKとCNYYSNSペプチドもECM合成を刺激する。これらの配列は、ECMがターンオーバー(turnover)している間に解放されている可能性があり、それ故にECMの修復が必要であることをシグナリングしているのかもしれない。いずれかのメカニズムで解離された短いペプチド配列は、マトリキンズ(matrikines)と称されることがある(Maquart et al., J. SOC. BIOL. 193:423-28 (1999))。
【0007】
多くの天然ペプチド及び合成ペプチドが存在するが、改良された生物活性ペプチドやその利用方法が必要とされている。
【発明の開示】
【0008】
発明の要旨
アミノ酸配列モチーフが、GxxG又はPxxPであることを特徴とするテトラペプチドを開示している。ここで、G(グリシン)とP(プロリン)は一定で、xは可変アミノ酸である。このテトラペプチドは、ECMタンパク質、IV型コラーゲンの主要な配列中に何度も出現する配列に由来する。開示された配列は、KTTKSを含む以前から公知のペプチド配列以上に、全タイプのコラーゲンの生成を誘導するものであり、SEDERMA SAS(フランス)から商標MATRIXYL(TM)として販売されている。さらに、種々の複数反復配列の組み合わせを含む組成物がさらなるコラーゲン合成反応を引き起こす。種々のECMタンパク質中に存在するペプチドの組み合わせは、更なる利点が期待される。
【0009】
ECMを再構築するための特定のテトラペプチドの組み合わせを生成することは、商業的に桁違いなコストがかかる。生物活性のあるテトラペプチドの組み合わせを合成する比較的簡単でコスト効果の高い方法が開示されている。GxxGモチーフ又はPxxPモチーフを有するテトラペプチドのコンビナトリアルライブラリーを生成することにより、様々な生物活性のあるテトラペプチドを同じ製造工程で作製する(例えば、GEPG、GPEG、GPPG及びGEEG)。テトラペプチドの組み合わせにより、単一のペプチドよりも多くのECMタンパク質の形成を誘導することができる可能性がある。開示されたテトラペプチドを単独で、又は、組合せで含む合成物は、スキンケアマーケット、例えば、これに限定されるものではないが、肌のしわ、色調、堅さやたるみを解決するマーケットで有用である。開示されたテトラペプチドによりコラーゲンを刺激することによって、ダメージを受けた肌や、年取った肌の健康と外見を大きく改善することができる。単独あるいは組み合わせることでスキンケア業界にとって有効なものである。スキンケア業界には肌のしわ、色調、堅さ、たるみを解決する業界を含むが、これに限定されるものではない。開示されたテトラペプチドによりコラーゲンを促進することによって、かなり傷つき、年取った肌の健康と外見を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、SEQ ID NO:45であり、GxxGのテトラペプチドの発現を示すコラーゲンIVのアミノ酸配列である。太字の配列には全てに下線を付しており、重複する配列には二重線を付している。
【0011】
【図2】図2は、SEQ ID NO:46であり、フレームシフト活性をもつPGPRとGAGPの発現を示すコラーゲンIIIのアミノ酸配列である。全てのフレームシフト活性配列には太字と下線を付し、1フレームシフトを生ずるGxxG配列は、二重線を付している。
【0012】
【図3】図3も、SEQ ID NO:45であり、テトラペプチドPGPPの発現を示すコラーゲンIVのアミノ酸配列である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は概してECMタンパク質の生成を刺激し、創傷治癒を調整するテトラペプチドと、その種テトラペプチドの使用法に関するものである。
【0014】
ペプチド
本発明の一つの実施形態は、モチーフGxxG又はモチーフPxxPを含む単離されたテトラペプチドに関する。本実施形態において、G(グリシン)とP(プロリン)は一定で、xは可変アミノ酸である。ペプチドは、一般的に上記記載のペプチドとすることができ、より好ましくはSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、又はSEQ ID NO:16とすることができる。
【0015】
本発明の他の実施形態は、モチーフGxPGを含む単離されたテトラペプチドに関し、xがいずれか可変な位置で、又は両方の位置でPである。本実施形態において、G(グリシン)とP(プロリン)は一定で、xは可変アミノ酸である。ペプチドは、一般的に上記記載のペプチドとすることができ、好ましくはSEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、又は、SEQ ID NO:7することができる。
【0016】
本発明の他の実施形態は、モチーフGExGを含む単離されたテトラペプチドに関する。本実施形態において、G(グリシン)とE(グルタミン酸)は一定で、xは可変アミノ酸である。ペプチドは通常上記記載のペプチドとすることができ、より好ましくはSEQ ID NO:5、又はSEQ ID NO:8とすることができる。
【0017】
本発明の他の実施形態は、モチーフPGxPを含む単離されたテトラペプチドに関する。本実施形態において、P(プロリン)とG(グリシン)は一定で、xは可変アミノ酸である。ペプチドは、一般的に、上記記載のペプチドとすることができ、より好ましくはSEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、又はSEQ ID NO:16とすることができる。
【0018】
本発明の他の実施形態は、モチーフPExPを含む単離されたテトラペプチドである。本実施形態において、P(プロリン)とE(グルタミン酸)は一定で、xは可変アミノ酸である。ペプチドは、一般的に、上記記載のペプチドとすることができ、より好ましくはSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:9とすることができる。
【0019】
本発明の他の実施形態はフレームシフト活性テトラペプチドに関する。本実施形態において、テトラペプチドは、ECMタンパク質中のGxxGテトラペプチド又はPxxPテトラペプチドのいずれかから1アミノ酸フレームシフトを生ずる。ペプチドは、一般的に、上記記載のペプチドとすることができ、より好ましくはSEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6とすることができる。
【0020】
上記記載の各ペプチドは、いずれも、D−アミノ酸、又は、L−アミノ酸を含むことができる。このペプチドは、すべてのD−アミノ酸またはL−アミノ酸を含むことができる。ペプチドは、C末端に酸(-CO2H)、又は、好ましくはC末端がアミド(-CONH2、-CONHR、-CONR2)であってもよい。ペプチドは、さらに化学的に、又は酵素的に増強したり、改良してもよい。例えば、ペプチドのC末端でアミノ化(-NH2)してもよく、これにより、テトラペプチドを遊離酸の形態に比べて、プロテアーゼ分解への感受性を低くしたり、溶解性を高める可能性がある。ペプチドはまた、脂質化して肌透過性を高めることもできる。
【0021】
上記記載のペプチドは次のアミノ酸を含めてもよい。R(アルギニン)、L(ロイシン)、P(プロリン)、F(フェニルアラニン)、Q(グルタミン)、E(グルタミン酸)、I(イソロイシン)、K(リシン)、S(セリン)、V(バリン)、A(アラニン)、N(アスパラギン)、D(アスパラギン酸)、T(スレオニン)、Y(チロシン)、及びG(グリシン)である。上記記載のペプチドにM(メチオニン)、C(システイン)、H(ヒスチジン)、又は、W(トリプトファン)は含まれない。したがって、一つの実施形態において、xは、M(メチオニン)、C(システイン)、H(ヒスチジン)、又はW(トリプトファン)から選択されない。
【0022】
使用方法
本発明の更なる実施形態には、上記ペプチドの使用方法に関する。使用方法には、シングルペプチドの使用や、2つあるいはそれ以上のペプチドの組み合わせた使用も含むことができる。
【0023】
本発明の実施形態は、ECMタンパク質の生成を刺激するテトラペプチドを用いて、ダメージを受けた皮膚を修復したり、健康的な肌を維持することを促進する方法に関する。本方法には、一般的に皮膚細胞をペプチドを含む組成物と接触させることに関する。組成物は、エアロゾル、エマルション、液体、ローション、クリーム、ペースト、軟膏、発泡体、その他の薬学的に認められている形態とすることができる。一般に、薬学的に認められている形態には、人の肌への使用に適切な認められたキャリア、例えば美容上認められたキャリアや皮膚科学上認められたキャリアを含むことができる。組成物は、その他の生物活性剤、たとえばレチノイドや他のペプチドを含んでもよい。合成物は薬学上認められたキャリアやアジュバンドを含むこともできる。接触ステップ法は、インビボ、インサイチュ、インビトロ、又は当該分野で知られたいかなる方法でも行うことができる。最も好ましくは、接触ステップは、促進反応を引き起こすのに十分な濃度で局所的に行うことである。組成物中のペプチド濃度は、約0.01μg/mLから約100μg/mL、約0.1μg/mLから約50μg/mL、約0.1μg/mLから約1μg/mLとすることができる。接触ステップは、哺乳動物、猫、犬、牛、馬、豚、又は人に行なうことができる。ECMタンパク質の生成を促進する望ましい組成物は、SEQ ID NO:8を含み、さらに望ましくは、少なくとも1の他のテトラペプチドの異種混合物中にSEQ ID NO:8を含む組成物である。最も望ましい実施形態では、組成物中にある個々のテトラペプチドは、少なくとも48時間以上、コラーゲン生成を維持させる。
【0024】
本発明の更なる実施形態は、通常の老化、病気、けが、外傷によって、又は手術、他の医学行為によってダメージを受けた皮膚の創傷治癒を促進する方法に関する。本方法は動物のけがに、組成物を処方することも含まれ、組成物とは、上記記載のペプチドのいずれかを単独であるいは組み合わせたものを含んでいる。組成物は、液体、ローション、クリーム、ペースト、軟膏、発泡体、あるいは他の薬学上認められた形態としてとすることができる。組成物は、薬学上認められたキャリアやアジュバントを含めることができる。組成物には、他の生物活性剤、例えば抗菌剤や増殖因子を含んでもよい。組成物は、他の治療剤、例えば細胞組織片、細胞培養生成物、酸素、包帯剤、と組み合わせて用いることもできる。組成物のペプチド濃度は、約0.01μg/mLから約100μg/mL、約0.1μg/mLから約50μg/mL、約0.1μg/mLから約1μg/mLとすることができる。組成物は、傷に局所的に処方することができる。動物は一般に、あらゆる種類の動物とすることができるが、好ましくは哺乳類、さらに好ましいのは人間、牛、馬、猫、犬、豚、ヤギ、羊である。ECMタンパク質生成を促進する組成物の中で、創傷治癒に望ましい組成物は、SEQ ID NO:8を含み、より望ましくは、少なくとも1の他のテトラペプチドの異種混合物中にSEQ ID NO:8を含む組成物である。最も望ましい実施形態では、組成物中にある個々のテトラペプチドは、少なくとも48時間以上、コラーゲン生成を維持させる。
【0025】
本発明の更なる実施形態は、通常の老化、病気、けが、外傷によって又は、あるいは手術、他の医学行為によってダメージを受けた皮膚のケガを減少させる方法に関する。本方法は、動物のけがに組成物を処方することも含まれ、ここで組成物とは、上記記載のペプチドのいずれかを単独であるいは組み合わせたものを含んでいる。組成物には、液体、ローション、クリーム、ペースト、軟膏、発泡体、あるいは他の薬学上認められた形態とすることができる。組成物は薬学上認められたキャリアやアジュバンドを含めることもできる。組成物は、他の生物活性剤、例えば抗菌剤や増殖因子を含んでもよい。組成物は、他の治療剤、例えば細胞組織片、細胞培養生成物、酸素、包帯剤、と組み合わせて使ってもよい。組成物中のペプチド濃度は、約0.01μg/mLから約100μg/mL、約0.1μg/mLから約50μg/mL、約0.1μg/mLから約1μg/mLとすることができる。組成物は、傷に局所的に処方することができる。動物は一般に、あらゆる種類の動物とすることができるが、好ましくは哺乳類、さらに好ましいのは人間、牛、馬、猫、犬、豚、ヤギ、羊である。ECMタンパク質生成を促進する組成物の中で、創傷治癒に望ましい組成物は、より望ましくは、少なくとも1の他のテトラペプチドの異種混合物中にSEQ ID NO:8を含む組成物である。最も望ましい実施形態では、組成物中の単一のテトラペプチドは、少なくとも48時間以上、コラーゲン生成を維持させる。
【0026】
本発明の更なる実施形態は、開示されたテトラペプチドを組み合わせて生成する方法に関する。ペプチドは、以下で開示されているような当業者に知られたあらゆる方法を使って生成することができる。それらは、Merrifield, R.B., Solid Phase Peptide Synthesis I., J. AM. CHEM. SOC, 85:2149-2154 (1963); Carpino, L.A. et al., [(9-Fluorenylmethyl)Oxy] Carbonoyl (Fmoc) Amino Acid Chlorides: Synthesis, Characterization, And Application To The Rapid Synthesis Of Short Peptides, J.ORG. CHEM. 37:51:3732-3734; Merrifield, R.B. et al., Instrument For Automated Synthesis Of Peptides, ANAL. CHEM. 38:1905-1914 (1966); or Kent, S.B.H. et al., High Yield Chemical Synthesis Of Biologically Active Peptides On An Automated Peptide Synthesizer Of Novel Design, IN:PEPTIDES
1984 (Ragnarsson U., ed.) Almoqvist and Wiksell Int., Stockholm (Sweden), pp.185-188, であり、これらは、引用をもって全文の記載加入とする。望ましくは、伸長中のペプチド鎖にアミノ酸を逐次付加できる機械によってペプチドは生成されるであろう。しかしながら、標準溶液による位相法を用いて作製してもよい。
【0027】
ペプチド鎖合成の際に、均質なペプチド混合物の代わりに遊離アミノ酸の混合物を添加すると合成反応によって生ずるペプチド結合のような遊離酸の種々の結合がもたらされることが観察されている。合成中に添加された2あるいはそれ以上のアミノ酸の混合物中に含まれる特定のアミノ酸の相対的な結合頻度は調整することができる。調整は、混合物中の他のアミノ酸に対し、合成過程中に利用できる遊離アミノ酸の割合を改良することで可能となる(これは等速混合(isokinetic mixture)と呼ばれている)。
【0028】
次の実施例は、本発明の望ましい実施形態を示すためのものである。以下の実施例で開示される技術は、本発明を十分に実施できるようにするために、発明者が開発した代表的な技術であることは、当業者に理解されるべきであり、実施のために好ましい方法を構成するものであると考えることができるであろう。しかし、当業者は、現在開示されているものを考慮し、開示された具体的な実施例に多くの変更を行なったり、さらに本発明の精神と範囲から逸脱することなく同様の結果を得ることができることは理解されるべきである。
【実施例】
【0029】
実施例1:コラーゲン中で反復テトラペプチド配列の同定
コラーゲンIVのテトラペプチドの反復配列のうち、図1中、比較的高比率なものは、モチーフGxxGである(xは任意のアミノ酸である)。これらの多くは、図1中、SEQ ID NO:45として示された完全なコラーゲンIV全配列の一部としてインサイチュで示されている。コラーゲンIVは他の特定のECM要素と相互作用する役割があるので最初に調べた(Gregory Schultz et al.,2005を参照)。コラーゲンIV中にモチーフGxxGを有する配列があり、それらは10回以上も現れた(GxxG中、xxはvp、ek、fp、lp、pp、sp、ep、ip、pk、qp及びtpで表されている)。これらのテトラペプチド配列のうち、11配列中8配列は、位置3にプロリンを含んでおり、11配列中2配列では、位置2にプロリンを含み、11配列中1配列は、位置2と位置3にプロリンを含み、11配列中1配列には、プロリンを含んでいない。開示した配列はREPLIKINES(TM)と称されている。“REPLIKINES”は、ECMタンパク質中に何回も出現する(すなわち反復された)短い配列として定義される。この配列は、1のECMタンパク質中に存在するかもしれない(例えばコラーゲンIV)。配列は、複数のECMタンパク質(例えば全てのコラーゲン、エラスチン、ラミニンなど)に存在することが望ましい。複数のECMタンパク質に、この配列が存在することで、フラグメントが、ECM合成や修復を促進できる可能性が増大する。
【0030】
上述したコラーゲンIV中に現れる11のGxxG配列は、図1に示されたヒトコラーゲンIV配列中で強調されている。この図中、全ての太字配列には下線を付し、重複する配列には、二重線を付している。これら配列のうち1を除くすべてがまた、コラーゲンI、II、III、Vにも現れている。この事実は、開示された配列が、特にペプチドが組み合わされて用いられたときに、全てのコラーゲンタイプの生成を刺激する可能性の一因である。表1は、ECMタンパク質中における、いくつかのテトラペプチドの反復頻度を示している。表1中の太字の配列は、コラーゲンIVにおいて10回あるいはそれ以上現れたものである。
【表1】

【0031】
コラーゲンIVの配列SEQ ID NO:45の再調査から明らかなこととして、PxxPモチーフを有する配列の多くの発現がある。例えば、配列PPGPは、図3に示されたように15回以上表れている。したがって、この開示された配列もまた、REPLIKINE(TM)として称される。この配列は、複数のECMタンパク質に存在することが望ましい(例えば全てのコラーゲン、エラスチン、ラミニンなどである)。なぜならば、この配列が複数のECMタンパク質中に存在することで、フラグメントがECM合成や修復を促進できる可能性は、増大するからである。上述したコラーゲンIV中に現れる15のPPGP配列は、図3に示されたヒトコラーゲンIV配列中で強調し、下線を付している。
【0032】
実施例2:フレームシフト活性の同定
モチーフGxxGを有するコラーゲンIVのテトラペプチドの反復配列が比較的高比率のことに加えて、GxxxGやPxxPのテトラペプチド配列から1アミノ酸フレームシフトを起こした他のテトラペプチド配列は、同定されている。これら配列は、ECMタンパク質中で反復し、又は1度だけ現れている可能性があり、ここで述べたようにGxxG又はPxxPのテトラペプチド配列のいずれかから1アミノ酸位置ずれたところにある可能性がある。これらテトラペプチド配列は、フレームシフト活性と称される。このようなフレームシフト活性は、従って、フレームシフトの方向によって、2番目又は3番目の位置にGかPのいずれかをが含んでいる可能性がある。さらに、フレームシフト活性は、本出願に開示された他のテトラペプチドと結合し、コンビカイン(combikine)を形成する可能性があることが認識されている。このようなコンビカインの例は、H06とH15である。
【0033】
フレームシフト活性の一実施例は、GAGPすなわちH12(SEQ ID NO:6)である。H12(GAGP)は、図2に示すように、コラーゲンIII中のGxxGテトラペプチドであるGGAG(SEQ ID NO:46)から1残基(すなわちフレーム)シフトして現れる。この図では、すべてのフレームシフト活性配列は、太字かつ下線を付しており、アミノ酸フレームシフト離れが生じたGxxG配列には、二重線を付している。さらに、表5に示すように、このテトラペプチド(GAGP)は、48時間のコラーゲン生成の良好な結果を達成している。他の実施例は、PGPR配列であり、これはコラーゲンI〜IVの中で11回現れるH10(SEQ ID NO:4)である。それは、個々のECMタンパク質に複数回も現れるので、このテトラペプチドはさらにREPLIKINEであると考えられる。図2(SEQ ID NO:46)は、このテトラペプチドが、GxxGテトラペプチドであるGPRGから1フレームシフトを起こしているいくつかの例を示している。この特定のフレームシフト活性は、複数のECMタンパク質において現れており、それ故、フラグメントが、ECMの合成や修復を促進できる可能性を増大する。
【0034】
実施例3:コラーゲン生成を刺激する反復配列の同定
実施例1と2で同定されたいくつかの配列は、標準的なペプチド化学を用いて合成され、皮膚繊維芽細胞からコラーゲンの刺激のために分析された。合成されたペプチドはC末端でアミノ化され、遊離酸の形態と比べて、テトラペプチドのプロテアーゼ分解に対する感受性を低くしたり溶解性を高めている。ヒト表皮繊維芽細胞は、96ウェルプレートで、37℃、CO2濃度5%、24時間及び48時間低濃度の血清成長因子(Cascade Biologics, Portlamd, OR; Cat. No. S-003-10)を加えてさらに最終ペプチド濃度50μg/mLとなるようサンプルペプチドを含ませた完全細胞培養培地(Cascade Biologics, Portlamd, OR; Cat. No. M-106-500)150μL中でインキュベートした。各ウェルに10,000で種付けした。インキュベートの後、100μLの培地サンプルを各ウェルから取り出し、コラーゲン合成を分析した。
【0035】
分析は、Tebu-bio Laboratories(仏)によって、SIRCOL(TM) Collagen Assay Kit (Biocolor Assay, UK) を用いて製造社のプロトコル通りに行なった。SIRCOL(TM) Collagen Assay Kitは、生体外培養中で哺乳類の細胞から培地中に放出された溶解性コラーゲンを分析するよう作られた定量的な色素結合方法である。試験サンプルのコラーゲンは、アニオン性のSIRCOL(TM)染料に結合する。コラーゲン染料複合体は、溶液中から沈殿し、遠心により沈降する。回収されたコラーゲン染料沈殿物は、吸光度が測定する前にアルキル溶液で溶解した。2つの別々のサンプルから24時間と48時間に2回測定を行なった。各サンプルに対して4回測定を行ない、平均した。試薬なし、コラーゲン標準、サンプルの吸光度は、560nmで測定した。ブランクの吸光度は、24時間と48時間での各サンプルからの吸光度から差し引いた。
【0036】
2つの別々のデータセットを用いて、2つのコラーゲン標準較正曲線を作成した。一つ目の較正曲線は、サンプルH6(SEQ ID NO:1-4の組み合わせ)、サンプルH7-H14(各々SEQ ID NO:1-8)、及びサンプルH15(SEQ ID NO:5-8の組み合わせ)中のコラーゲン量を計算するために作成した。二つ目の較正曲線は、サンプルH16(SEQ ID NO:9)、サンプルH21-H23(各々SEQ ID NO:10-12)、サンプルH25-26(各SEQ ID NO:13-14)、又はサンプルH29-30(各々SEQ ID NO:15-16)、サンプルH32(SEQ ID NO:17)、サンプルH33(SEQ ID NO:9-12の組み合わせ)、サンプルH34(SEQ ID NO:11-14の組み合わせ)、サンプルH35(SEQ ID NO:13-16の組み合わせ)、サンプルH36(SEQ ID NO:1,6,5,8の組み合わせ)、サンプルH37(SEQ ID NO:17)、及びサンプルH38(SEQ ID NO:8)中のコラーゲン量を計算するために吸光度の測定により作成され、既知のコラーゲン標準に対する一連の分析を行なった時間毎のコラーゲン標準の各々の濃度(μg)を吸光度560nmでプロットすることにより作成した。それぞれのデータセットについて、同じ較正曲線を24時間と48時間に取られたサンプルに対して用いた(表2Aと表2B)。従って、各々一連の分析を行なう前に異なる標準曲線を直ちに準備した。
【表2A】

【表2B】

【0037】
吸光度560nmの値に対する各々のコラーゲン標準の濃度をMICROSOFT EXCEL(TM)を用いてプロットし、線系回帰を行った。回帰は、表2Aに示すように、両培養時間に対して式y=0.013xで示される直線となった。結果が同じだったので、24時間のみを二回目の較正曲線のために用いた。第2のサンプル群の分析データ1と分析データ2で得られた直線式はそれぞれy=0.0178x、y=0.0162xであった。ペプチドLL-37(SEQ ID NO:18)は、ヒトの創傷治癒に影響を与えるとして広く報告されているので(Heilborn et al., The Cathelicidin Anti-Microbial Peptide LL-37 Is Involved In The Re-Epithelialization Of Human Skin Wounds And Is Lacking In Chronic Ulcer Epithelium, J. Invent Dermato. 120:379-89 (2003))、ポジティブコントロールとして用いた。製造会社が定めた分析検出限界は、2.5μgである。
【0038】
ペプチドを含むサンプル中で生成されたコラーゲンの総量は、標準曲線から得られた直線式を用いて、24時間(表3A)と48時間(表3B)で測定された平均吸光度値から計算した。ペプチドH16(SEQ ID NO:9)、H21-H23(各々SEQ ID NO:10-12)、H25-26(各々SEQ ID NO:13-14)、又は、H29-30(各々SEQ ID NO:15-16)、H32(SEQ ID NO:17)、H33(SEQ ID NO:9-12の組み合わせ)、H34(SEQ ID NO:11-14の組み合わせ)、H35(SEQ ID NO:13-16の組み合わせ)、H36(SEQ ID NO:1,6,5,8の組み合わせ)、H37(SEQ ID NO:17)、及び、H38(SEQ ID NO:8)を含むサンプルで生成されたコラーゲン総量は、標準曲線から得られた直線式を用いて、24時間(表4A)と48時間(表4B)に得られた吸光度の値から計算した。これらの値は、ペプチドLL37(SEQ ID NO:18)であるコラーゲンを促進するものして知られているポジティブコントロールとして比較した。それぞれの表において、アスタリスク(*)を付したサンプルは、分析検出限界が2.5μgなので有意でない可能性がある。
【表3A】

【表3B】

【表4A】

【表4B】

【0039】
サンプル量が100μLであるため、μg/mLで表される各サンプル中で生成されたコラーゲンの濃度は、検出されたコラーゲン量に10を掛けることにより決定される。試験された全てのサンプルの結果を、表5にまとめている。
【表5】

【0040】
試験された全てのテトラペプチドは、溶解性を有するコラーゲンの生成を刺激した。試験された配列のうち、位置2にグルタミン酸を有するGxxGテトラペプチドは、24時間と48時間の両方で最もコラーゲンを刺激した。これらの配列は、H11(GEPG; SEQ ID NO:5)、H14 (GEKG; SEQ ID NO:8)、及び、H38 (GEKG; SEQ ID NO:8)である。ペプチドは、最初に50μg/mLのペプチド濃度で検査した。コラーゲン生成を刺激する効果的な濃度を調べるために、H38と同様にH14(SEQ ID NO:8)も0.3μg/mLで試験した。表5に示すように、H38誘導コラーゲン刺激は、低濃度でも減少することはなく、SEQ ID NO:8の最大刺激濃度は0.3μg/mL、又は、それより低いことが示されている。
【0041】
その効果を調べるために、SEQ ID NO:8(H14とH38)について、コラーゲン生成を刺激すると知られているペプチドLL37(SEQ ID NO:8)と比較した。LL37に反応して繊維芽細胞によって放出されたコラーゲン量に基づき、25μg/mlがテトラペプチドと接触することによる有意な放出コラーゲン量であると考察された。SEQ ID NO:8は、24時間でLL37(SEQ ID NO:18)とほぼ同等の量のコラーゲンを誘導した。重要なことは、SEQ ID NO:8との接触の結果として生成されたコラーゲンは、少なくとも48時間は実質的に維持された。SEQ ID NO:8は、コラーゲン生成を刺激することで知られているスキンケアぺプチド、KTTKS(SEQ ID NO:17)(Katayama et. Al., J. BIOL. CHEM. 288:9941-9944(1983))とも比較した。KTTKSは、製品MATRIXYL(TM)(SEDERMA SAS, France)の成分である。SEQ ID NO:8は、24時間と48時間において、KTTKS (SEQ ID NO:17) ペプチド(表5)よりもより多くのコラーゲン生成を刺激した。
【0042】
実施例4:相乗的にコラーゲン刺激を強めるペプチドの組み合わせの同定―コンビキン(COMBIKINES)
活性テトラペプチドの不均一集団はテトラペプチドの均一試料よりも高レベルでコラーゲン生成を刺激する可能性がある。不均一組成物の成分は、コンビキン(COMBIKINES(TM))と呼ばれている。コンビキンは、一又はそれ以上のターゲット細胞タイプに、より強く広範囲に影響を与えるために生成するよう結合したREPLILINESのグループである。ペプチドH11(SEQ ID NO:5)、H12(SEQ ID NO:6)、H13(SEQ ID NO:7)、H14(SEQ ID NO:8)は、最終濃度50μg/mLに結合され、個々のペプチドと同じプロトールを用いて分析した。予想通り、24時間時点での結果は、個々の誘導物の平均値と等しかった。しかしながら、48時間でのペプチドの組合せは、43μg/mLのレベルまでコラーゲンを誘導した。驚くべきことにこの量は、4つの個々のペプチドの予想平均値(21μg/mL)をはるかに上回っていた(表5を参照)。このように、ペプチドの特定の組み合わせは、同一濃度における個々のペプチドよりもかなりの程度でコラーゲン生成を刺激する可能性がある。さらにコラーゲン、ラミニン、エラスチンのような様々なECM源からのテトラペプチドは、様々なECMタンパク質の誘導を高める可能性がある(表1、表5を参照)。
【0043】
実施例5:コラーゲン生成の刺激を高めるコスト効果のよいコンビキンの製造
高コストなペプチド合成が、生物活性のあるペプチドの不均一組成物を作製する実現可能性を制約している。本発明は、この制約を大いに軽減するものである。なぜなら、ここで開示している配列は共通性を有し(例えばグリシン又はプロリンが両端にある)、範囲が位置2と位置3で異なるテトラペプチドは、一つの製造ラインで合成できるからである。合成ペプチドは、当業者の既知のいかなる方法でも作製することができる(Benoiton, N., Chemistry of Peptide Synthesis, CRC (2005))。ペプチド製造中、アミノ酸混合物が均一サンプルに代えて添加される。得られるペプチドを所望の割合で獲得するために、混合位置に加えられるアミノ酸濃度の正確な比率を決定するための化学反応は前述されている(Greenbaum et al., Molecular and Cellular Proteomics 1:60-68, 2002; Krstenansky et al., Letters in Drug Design and Discovery 1:6-13, 2004;これらの文献は、引用をもって全文の記載加入とする)。この方法論を用いて、不均一ペプチドのライブラリーは、一のペプチドを合成する費用とほぼ同様に作製することができる。
【0044】
この製造工程を利用することで、生物活性のあるコンビキンをコスト効果よく製造することができる。これは、開示されたテトラペプチドの独特な成分により可能となる。テトラペプチド混合物は、ペプチドよりも長い局所的に用いられる製剤に組み入れるのに適している。その長さゆえ、以下の点で、テトラペプチドは、より長いペプチドよりも実用的かつ化学的に有利である。それは、製剤へのより容易な混入、溶解、肌や毛穴への高い浸透性、ペプチド化合物に対するより簡単な製造方法による高生産収率である。必須ではないが、理想的な単一あるいは組み合わせによるテトラペプチド製剤は、24時間時点から48時間まで十分なコラーゲン生成を維持できる製剤である。製剤は、24時間時点よりも48時間までで、より多くのコラーゲンを生成するように、48時間全体でECMの合成を誘導することが更に望ましい。現在の発明の範囲内であっても、24時間でECMタンパク質の合成を促進するが、48時間では生成量の減少が見られるテトラペプチドはあまり好ましいものではない。この点について、表6は、現在開示されているペプチドの結果を示している。好ましいペプチドは太字にしている。
【表6】

【0045】
実施例6:コラーゲン刺激剤は皮膚上皮細胞の閉鎖を高める複合エフェクター分子としても作用する例
コラーゲンは、損傷治癒の全ての段階において鍵となる成分である。コラーゲン生成の促進は、コラーゲンネットワークにダメージが生ずること(例えば酵素や物理的な破壊)に影響する。実際、事実上のコラーゲンネットワークの総合的な崩壊により治癒が引き起こされる。したがって、コラーゲン刺激剤は、あるマトリックスの再構築を調整し、損傷治癒を高める複合エフェクター分子としても働く可能性がある。
【0046】
損傷治癒実験は、12ウェルプレート上に置かれたヒトの皮膚上皮細胞(CRL-2592)の単層で行なった。細胞は、実験前に24時間血清飢餓にした。CRL-2592の融合性単層は、P200(200μL)のピペットチップを使って傷つけた。傷は、ペプチド処置の前に、洗浄し、写真を撮った。ペプチドは、20から40μg/mLの最終濃度で添加した。細胞は、短時間室温で写真を撮っているときを除いて、37℃、CO2濃度5%、湿度92%のインキュベーターで保たれた。傷閉鎖は6時間時点、10時間時点で調査した。PBSで処理された傷を、比較目的でネガティブコントロールとして用いた。
【表7】

【0047】
生体外での単層の傷閉鎖は細胞が移動した結果であり、胚形成、血管形成、炎症反応、創傷修復のような多くの生物学的過程において重要である。このプロセスは、他の細胞、サイトカイン、ECMタンパク質との相互作用により規定されていると考えられている。表7に示すように、SEQ ID NO:14は、PBSのみの効果に比べてかなり傷閉鎖を誘導している。このような活性は、細胞特異的であるのと同じようにペプチド特異的である。なぜなら、SEQ ID NO:14は、ヒトの皮膚の繊維芽細胞単層では、傷閉鎖を誘導しなかったからである(データは載せていない)。SEQ ID NO:5もまたコラーゲン誘導剤であるが、PBSのみの効果に比べて全く傷閉鎖や上皮細胞の移動を高めなかった。SEQ ID NO:14が、細胞移動や傷閉鎖をある程度特定の皮膚上皮細胞に特異的に誘導した事実(すなわち、繊維芽細胞を回復させなかった)は、このペプチドをスキンケアに用いる利点として加えられるかもしれない。なぜならば、傷部のある多く活性繊維芽細胞の回復により、細胞の過剰な堆積と修飾がもたらされ、結果として傷後が残ると考えられているからである。
【0048】
ここに開示し、請求した全ての組成物や方法は、本開示を考慮すれば、過度の実験をすることなく作製し、実行できる。本発明の組成物や方法は、好ましい実施形態について記載したものであるが、当業者は、本発明の概念と精神、範囲から逸脱することなく、ここに記載された組成物及び/又は方法、方法のステップ、方法のステップの順序を変化させうることは明白である。より具体的には、化学上、生理学上の両方に関係を有するある薬剤が、同一または同様の結果が達成するために、ここに記載された薬剤に代用されるであろうことは明白である。当業者にとって明白なこのような同等の代替物、改良物すべては、本発明の精神、範囲と概念の範囲内であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式GxxG(但し、Gはグリシンであり、xは可変アミノ酸である)を含む細胞外マトリックスタンパク質の生成を誘導することのできるテトラペプチド。
【請求項2】
テトラペプチドは、さらに、式GExG(但し、Eはグルタミン酸である)を含んでいる請求項1に記載のテトラペプチド。
【請求項3】
テトラペプチドは、SEQ ID NO:5又はSEQ ID NO:8である請求項2に記載のテトラペプチド。
【請求項4】
テトラペプチドは、さらに、式GxPG(但し、Pはプロリンである)を含んでいる請求項1に記載のテトラペプチド。
【請求項5】
テトラペプチドは、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5及びSEQ ID NO:7からなる群より選択される請求項4に記載のテトラペプチド。
【請求項6】
テトラペプチドは、カルボキシ末端でアミド化されている請求項1に記載のテトラペプチド。
【請求項7】
xは、R、L、P、F、Q、E、I、K、S、V、A、N、D、T、Y及びGからなる群より選択される請求項1に記載のテトラペプチド。
【請求項8】
細胞外マトリックスタンパク質は、コラーゲンである請求項1に記載のテトラペプチド。
【請求項9】
請求項1に記載の少なくとも1のテトラペプチドと、薬学的に認められたキャリアを含んでいる組成物。
【請求項10】
テトラペプチドは、有効濃度約0.01μg/mLから約100μg/mLの範囲で存在する請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
テトラペプチドは、有効濃度約0.1μg/mLから約1μg/mLの範囲で存在する請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
組成物は、エアロゾル、エマルション、液体、ローション、クリーム、ペースト、軟膏、又は、発泡体の形態である請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
ヒトのコラーゲンの生成を刺激する方法であって、ヒトに請求項9に記載の組成物を治療上有効な量投与することを含んでいる、ヒトのコラーゲンの生成を刺激する方法。
【請求項14】
治療上有効な濃度は、テトラペプチドが、約0.1μg/mLから約50μg/mLの範囲である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ヒトに、組成物を治療上有効な量投与することで、ダメージを受けた皮膚の創傷治癒を促進する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
細胞外マトリックスタンパク質の生成を誘導することのできるテトラペプチドであって、式PxxP(但し、Pはプロリンであり、xは可変アミノ酸である)を含むテトラペプチド。
【請求項17】
テトラペプチドは、さらに、式PGxP(但し、Gはグリシンである)を含んでいる請求項16に記載のテトラペプチド。
【請求項18】
テトラペプチドは、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14及びSEQ ID NO:16からなる群より選択される請求項17に記載のテトラペプチド。
【請求項19】
テトラペプチドは、さらに、式PExP(但し、Eはグルタミン酸である)を含んでいる請求項16に記載のテトラペプチド。
【請求項20】
テトラペプチドは、SEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:9である請求項19に記載のテトラペプチド。
【請求項21】
テトラペプチドは、カルボキシ末端でアミド化されている請求項16に記載のテトラペプチド。
【請求項22】
xは、R、L、P、F、Q、E、I、K、S、V、A、N、D、T、Y及びGからなる群より選択される請求項16に記載のテトラペプチド。
【請求項23】
細胞外マトリックスタンパク質は、コラーゲンである請求項16に記載のテトラペプチド。
【請求項24】
請求項16に記載の少なくとも1のテトラペプチドと、薬学的に認められたキャリアを含んでいる組成物。
【請求項25】
テトラペプチドは、有効濃度約0.1μg/mLから約50μg/mLの範囲で存在する請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
組成物は、エアロゾル、エマルション、液体、ローション、クリーム、ペースト、軟膏、又は、発泡体の形態である請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
ヒトのコラーゲンの生成を刺激する方法であって、ヒトに請求項24に記載の組成物を治療上有効な量投与することを含んでいる、ヒトのコラーゲンの生成を刺激する方法。
【請求項28】
治療上有効な濃度は、テトラペプチドが、約0.1μg/mLから約50μg/mLの範囲である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ヒトに、組成物を治療上有効な量投与することで、ダメージを受けた皮膚の創傷治癒を促進する請求項27に記載の方法。
【請求項30】
細胞外マトリックスタンパク質の生成を促進することのできるテトラペプチドであって、式PGPR又はGAGPを含んでいるテトラペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−539987(P2009−539987A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515450(P2009−515450)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/013748
【国際公開番号】WO2007/146269
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(309021490)へリックス バイオメディックス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】