説明

細胞死を抑制する又は細胞増殖を高めるための方法及び組成物

本発明は、細胞の生存を高める組成物及び方法を提供する。このような組成物は、少なくとGM−CSF受容体リガンド及び抗アポトーシス部分(例えばBcl−2タンパク群の構成要素)を包含するキメラポリペプチドを特徴とする。一態様では、このキメラポリペプチドはGM−CSF−Bcl−xLキメラポリペプチドである。本発明は更に、細胞死のリスクがある細胞における細胞生存を高めるか又は細胞死を抑制するためにキメラポリペプチドを使用する方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は2006年9月9日に出願された、米国仮特許出願第60/715,722号の優先権を主張し、その内容の全てを参照として本明細書に組み入れる。
【0002】
(連邦支援研究によってなされた発明に対する権利の主張)
本検討は、国立衛生研究所(National Institute of Health, Bethesda, MD)、国立神経障害及び脳卒中研究所(National Institute of Neurological Disorders and Stroke)によって支援された。政府は本発明においてある特定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
プログラム細胞死は、「アポトーシス」とも呼ばれ、動物の発達時において共通なことである。アポートシスは、正及び負の調節を受けている。この調節が機能しなくなると、病気が起こる。多くの神経変性疾患は、神経細胞死の異常活性に関連している。過度の細胞死は、Bcl−2、Bcl−xL、Mcl−l及びA1のようなBcl−2群に属するものを包含する、多種の抗アポトーシスタンパク質によって制限されている。アポトーシスが異常に抑制されると、細胞は過剰に増殖する。アポトーシスの異常抑制は、腫瘍細胞を正常に細胞を増殖させるように通常は課せられている規制の制約から解放する。多くの化学療法剤は、腫瘍細胞の増殖におけるアポトーシスを誘導することによって作用するが、それらの治療の有用性は、それらが正常細胞に対する毒性の程度によって、限定されている。生存促進因子及び抗アポトーシス剤は、ヒト細胞の放射線及び/又は化学療法剤に対する感受性を調節することができる。
【0004】
多くのタイプの化学療法は、造血を抑制して、正常な血液細胞の細胞死を誘導するが、これが化学療法の用量限定副作用をもたらしている。これらの副作用は、発熱性の好中球減少として知られる症状である、通常発熱を併発する好中球数低下を包含する多くの負の臨床転帰をもたらす。発熱及び好中球数の減少がある、化学療法中の患者は通常、感染のリスクを限定させる抗生物質投与のために入院する。ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(hGM−CSF)の投与が、骨髄前駆細胞から好中球、好酸球及びマクロファージが増殖及び成熟するのを促進するために用いられる。hGM−CSFの有効性は、多くの抗ガン剤の阻害効果によって限定されている。これらの薬剤は、GM−CSF受容体によって導入される細胞生存促進のシグナルを抑制する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
化学療法剤の毒性効果を相殺する改善された治療方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、細胞の生存を高めるか、細胞死のリスクがある細胞のアポトーシスを抑制するか、又は細胞の生育若しくは増殖を促進する組成物、及びそれを必要とする対象を治療するためにそのような組成物を治療に使用する方法を提供する。そのような組成物は、少なくともGM−CSF受容体リガンド及び抗アポトーシス部分(例えば、Bcl−2群のメンバー)を包含するキメラポリペプチドを含む。Bcl−2ポリペプチドは、Bcl−2、Bcl−xL、Mcl−l及びA1を含む。そのような組成物は、ヒト又は獣医の対象を治療するために有用である。特に、本明細書に記載される組成物及び方法は、実質的に、現在GM−CSF投与で治療されている何れかの疾患又は障害の治療に有用である。
【0007】
一態様では、本発明は、GM−CSF受容体リガンド及びBcl−xLポリペプチドを含有する、単離されたキメラポリペプチドを特徴とし、ここにおいてキメラポリペプチドは、GM−CSF受容体と特異的に結合して細胞の生存を高める。一態様では、GM−CSF受容体リガンドは、GM−CSF又はGM−CSF受容体抗体の断片の少なくとも1つである。別の態様では、キメラポリペプチドは、少なくとも1:1、1:2、又は1:3で、GM−CSF及びBcl−xLを含有する。
【0008】
別の態様では、本発明は、GM−CSFポリペプチド及びBcl−xLポリペプチドを含有する、単離されたキメラポリペプチドを特徴とし、ここにおいてキメラポリペプチドは、GM−CSF受容体と特異的に結合して、細胞の生存を高めるか又は細胞の増殖を促進する。
【0009】
更なる別の態様では、本発明は、前記態様の何れかのキメラポリペプチドをコードする、単離された核酸分子を特徴とする。一態様では、キメラポリペプチドは、細胞の生存を高めるか又は細胞の増殖を促進する、全長のBcl−xL又はその断片を含有する。一態様では、核酸分子は、SEQ ID NO:10に対して実質的に核酸配列同一性(例えば、80%、85%、90%、95%)を有する。
【0010】
関連する態様では、本発明は、SEQ ID NO:1に対して実質的に配列同一性を有するポリペプチドをコードすることが可能な単離されたポリヌクレオチドを特徴とし、ここにおいてこのポリペプチドは、細胞の生存を高めるか、細胞の増殖を促進するか、又はアポトーシスを抑制する。
【0011】
更に別の関連する態様では、本発明は、前記態様の何れかのポリペプチドをコードする核酸分子を含有するベクターを特徴としている。一態様では、このベクターは、発現ベクター(例えば、ウィルス性又は非ウィルス性の発現ベクター)である。別の態様では、ウィルス性発現ベクターは、アデノウィルス、レトロウィルス、アデノ関連ウィルス、ヘルペスウィルス、ワクチナウィルス又はポリオーマウィルス由来である。更なる別の態様では、コードされるポリペプチドは、SEQ ID NO:1を含有する融合ポリペプチドである。更なる別の態様では、融合ポリペプチドは、親和性標識又は検出可能なアミノ酸配列を含有する。
【0012】
別の態様では、本発明は、前記態様の何れかのベクターを含有する宿主細胞を特徴としており、ここにおいて、細胞は、インビトロ、インビボ、又はエキソビボに存在する哺乳動物(例えば、ヒト又は動物)の細胞である。一態様では、細胞は、造血細胞、樹枝状細胞、神経細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれる。別の態様では、細胞は、アポトーシスを受けるリスクを有している。更なる別の態様では、アポトーシスは、低酸素、虚血、再灌流、脳卒中、パーキンソン病、ルー・ゲーリック病、ハンチントン舞踏病、脊髄性筋萎縮症、脊髄損傷、幹細胞移植の処置、化学療法の治療又は放射線治療に関連する。
【0013】
別の態様では、本発明は、前記態様のキメラポリペプチド又はその断片の有効量を、薬学的に許容される賦形剤に含有する医薬組成物を特徴とする。
【0014】
更なる別の態様では、前記態様の何れかのキメラポリペプチドをコードする核酸分子の有効量を、薬学的に許容される賦形剤に含有する医薬組成物を特徴とする。一態様では、前記態様の医薬組成物は、化学療法剤、放射線療法剤、ホルモン剤、生物学的製剤、抗炎症剤、ドーパミン産生の増強薬剤、抗コリン作用薬、ドーパミン様薬、アマンタジン、抗血栓薬及び血栓溶解剤よりなる群から選ばれる薬剤を更に含有する。
【0015】
別の態様では、本発明は、細胞死のリスクがある細胞に、前記態様のキメラポリペプチドを接触させ、この接触が細胞の生存を高めるか又は細胞の生育を促進することを含む、細胞の生存を高める方法を特徴とする。
【0016】
別の態様では、本発明は、細胞死のリスクがある細胞に、前記態様の何れかのキメラポリペプチドを接触させ、この接触がアポトーシスを抑制するか又は細胞の増殖を高めることを含む、アポトーシスのリスクがある細胞のアポトーシスを抑制する方法を特徴とする。
【0017】
別の態様では、この方法は、細胞死のリスクがある細胞に、前記態様の核酸分子と接触させることを含み、この接触が、細胞の生存を高めるか、細胞の増殖を促進するか、又はアポトーシスを抑制する。一態様では、この接触が、細胞死のリスクを少なくとも15%減少するか又は細胞の増殖を高める。別の態様では、GM−CSF受容体リガンドは、GM−CSF受容体と結合するGM−CSFポリペプチドの断片の少なくとも1つであるか、又はGM−CSF受容体と結合することによって細胞の生育又は生存を高めるGM−CSF受容体抗体の断片である。一態様では、細胞(例えば、インビトロ、インビボ、又はエキソビボの細胞)は、造血細胞、樹枝状細胞、神経細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれる。別の態様では、細胞は、低酸素、虚血、再灌流、脳卒中、パーキンソン病、ルー・ゲーリック病、ハンチントン舞踏病、脊髄性筋萎縮症、脊髄損傷、幹細胞移植の処置、化学療法の治療、放射線治療に関連するアポトーシスのような、細胞死又はアポトーシスのリスクがある。
【0018】
別の態様では、本発明は、細胞の生存又は増殖を高めるのに有効な量の前記態様のキメラポリペプチドを、対象に投与することを含む、細胞死によって特徴付けられる疾患又は障害を有していると診断された対象(例えば、ヒト又は獣医の対象)における、細胞の生存を高める方法を特徴とする。
【0019】
別の態様では、本発明の方法は、細胞の生存又は増殖を高めるのに有効な量の前記態様の何れかのキメラポリペプチドをコードする核酸分子を、対象に投与することを含む、細胞死によって特徴付けられる疾患又は障害を有していると診断された対象(例えば、ヒト又は獣医の対象)における、細胞の生存を高めることを含む。一態様では、キメラポリペプチドをコードする核酸は、異種プロモーターの制御下にある。別の態様では、キメラポリペプチドは、発現構築物(例えば、アデノウィルス、レトロウィルス、アデノ関連ウィルス、ヘルペスウィルス、ワクシニアウィルス又はポリオーマウィルスのようなウィルス性又は非ウィルス性の発現構築物)から産生される。
【0020】
別の態様では、本発明は、対象における細胞の生存を高める治療の効果を評価する方法を特徴とする。本発明の方法は、治療前の1つ又はそれ以上の表現型を測定すること、前記態様の何れかのキメラポリペプチド又はそのポリペプチドをコードする核酸の治療有効量を対象に投与すること、そしてアポトーシス抑制剤による初期治療後の1つ又はそれ以上の表現型を測定すること(ここにおける1つ又はそれ以上の表現型の変化が、アポトーシスの抑制剤の治療の効果を示す)を含む。
【0021】
その他の態様では、本発明は、アポトーシスの抑制剤による治療を行うために、細胞死によって特徴付けられる疾患又は障害を有している対象を選択する方法を特徴とする。本発明の方法は、治療前の1つ又はそれ以上の表現型を測定すること、前記態様のキメラポリペプチド又はそのポリペプチドをコードする核酸の治療有効量を対象に投与すること、そしてアポトーシスの抑制剤による初期治療後の1つ又はそれ以上の表現型を測定すること(ここにおける1つ又はそれ以上の表現型の変化が、疾患がアポトーシスの抑制剤による治療に対する好ましい臨床応答を有しているであろうことの表れである)を含む。一態様では、アポトーシスの減少、細胞の生存の増加又は増殖の増加が、治療が有効であることを示す。別の態様では、本発明の方法は、アポトーシスの抑制剤による第2期治療後に、対象から生体サンプルを得ること及び対象の表現型を測定することを含む。別の態様では、本発明の方法は、対象から第2の生体サンプルを得ることを更に含む。
【0022】
別の態様では、本発明の方法は、細胞又は対象の治療又は進展を観察する方法を更に含む。別の態様では、本発明の方法は更に、化学療法剤(例えば、タモキシフェン、トラスツザマブ(trastuzamab)、ラロキシフェン、ドキソルビシン、フルオロウラシル/5−fu、パミドロン酸二ナトリウム、アナストロゾール、エキセメスタン、シクロホスファミド、エピルビシン、レトロゾール、トレミフェン、フルベストラント、フルオキシメステロン、トラスツザマブ、メトトレキサート、酢酸メゲストロール、ドセタキセル、パクリタキセル、テストラクトン、アジリジン、ビンブラスチン、カペシタビン、酢酸ゴセレリン、ゾレドロン酸、タキソール、ビンブラスチン及びビンクリスチン)、放射線療法剤、ホルモン剤、生物学的製剤、抗炎症剤、ドーパミン産生の増強薬剤、抗コリン作用薬、ドーパミン様薬、アマンタジン、抗血栓薬及び血栓溶解剤の1つ又はそれ以上を、対象に同時投与することを含む。別の態様では、本発明の方法は更に、治療前又は治療後の1つ又はそれ以上の表現型を、標準的な表現型と比較することを包み、ここおける標準的な表現型は、参照細胞(例えば、造血細胞、上皮細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、神経細胞、神経幹細胞、星状膠細胞、繊維芽細胞、内皮細胞及び乏突起膠細胞のような対象からの細胞、又は対象からの培養細胞のような培養細胞又は治療前の対象からの細胞)又は細胞集団における対応する表現型である。一態様では、サンプルは、組織サンプル、血液、唾液、気管支洗浄液、生検吸引物、管洗浄液又は神経組織生検の1つ又はそれ以上である。
【0023】
別の態様では、本発明は、細胞に、前記態様のポリペプチド又は核酸分子の有効量を接触させることにより、造血幹細胞又は前駆細胞を増大させる方法を特徴とする。
【0024】
前記態様の何れかの一態様では、キメラポリペプチドは、アポトーシスを抑制する。前記態様の何れかの更なる別の態様では、このポリペプチドは、造血細胞、樹枝状細胞、神経細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれる細胞の生存を高める。別の態様では、細胞は、インビトロ又はインビボに存在する。前記態様のその他の態様では、このポリペプチドは、全長のBcl−xL、又はアミノ酸配列GVVLLGSLFSRK、FELRYRRAFS又はSAINGNPSWHLADSPAVNGATGを含有するか又はこれより構成されている断片のような、細胞におけるアポトーシスを抑制することが可能なBcl−xLの断片の少なくとも1つを含有する。更なる別の態様では、このポリペプチドは、アミノ酸は配列APARSPSPSTQPWEHVNAIQEARRLLNLSRDTAAEMNETVEVISEMFDLQEPTCLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETSCATQTITFESFKENLKDFLLVIPFDCWEPVQE、EARRLLNLSRD又はTMMASHYKQHCPPTPETを含有するか又はこれより構成されている断片のような、GM−CSF受容体に結合するGM−CSFポリペプチドの断片の少なくとも1つを含有し、ここにおける断片は、GM−CSF受容体に結合するか又はGM−CSF生物活性を有している。前記態様の何れかの更なる他の態様では、このポリペプチドは、血液脳関門を通過するポリペプチドの移送を増強するドメイン(例えば、TATドメイン)を更に含有する。更なる別の態様では、このポリペプチドは、GM−CSF−BCL−XLアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)に対して少なくとも80%、90%又は95%のアミノ酸配列同一性を有している。前記態様の更なる他の態様では、このポリペプチドは、プロテアーゼ抵抗を増強する又は二量体の形成を促進する、変更(例えば、参照配列に関するGM−CSF又はBcl−xLのポリペプチドのアミノ酸配列における、挿入、欠失、ミスセンス又はアンチセンス変異)を含有する。更なる別の態様では、このポリペプチドは、GM−CSFポリペプチド及びBcl−xLポリペプチドを含有する。更なる別の態様では、このポリペプチドは融合タンパク質である。前記態様の更なる他の態様では、このポリペプチドは、親和性標識又は検出可能なアミノ酸配列を含有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
全体として、本発明は、抗アポトーシスのペプチド(例えば、GM−CSF−Bcl−XLキメラポリペプチド)に融合するGM−CSF受容体リガンドを包含するキメラポリペプチド、及びこれらのキメラポリペプチドを用いて、細胞死のリスクがある細胞における細胞の生存を高めるか、又はアポトーシスを抑制する方法を提供する。本発明は、GM−CSF−Bcl−xLキメラポリペプチドが、細胞死に至るリスクがある細胞において、アポトーシスを減少させるのに極めて有効であるという発見に、一部基づいている。従って、本発明は、少なくとも1つのGM−CSF受容体に結合するリガンド及び抗アポトーシス部分を含有するキメラポリペプチドを提供する。
【0026】
Bcl−2タンパク質
Bcl−2タンパク質群の1つであるBcl−XLは、造血細胞を含む多くの細胞型において、様々の刺激によって誘導される細胞死を抑制することができる。Bcl−2群のタンパク質は、プログラムされた細胞死の重要な調節因子である。それらの機能は、細胞の内外で発生し、細胞の細胞死への関与に介在する、細胞の生存と死のシグナルを統合することである。細胞がアポトーシスに一旦関与すると、その実行段階が、ミトコンドリアからのシトクロムcの放出及びカスパーゼの活性化によって開始される。カスパーゼの活性化の次に、効率的な細胞異化代謝に関連する形態学的及び生化学的な変化が引き起こされる。Bcl−2群のタンパク質は、一般にアポトーシスを促進するか又は抑制するタンパク質の何れかに分類される。Bcl−XLは、Bcl−2群の一員として特定化されており、種々の細胞型において、様々な刺激によって誘導される細胞死を抑制することができる。Bcl−XLは、細胞表面の受容体を介して特定の標的細胞に送達されて、細胞死を防止することができる。Bc1−XLを含むキメラポリペプチドは、異なるバクテリア毒素の受容体結合ドメイン、又はHIV TATタンパク質の形質導入ドメインに融合し、細胞死を誘導する軸索切断、虚血及び外傷からインビボの神経細胞を救出する。
【0027】
顆粒球マクロファージコロニーの刺激因子
ヒト顆粒球マクロファージコロニーの刺激因子(GM−CSF)は、骨髄前駆細胞から好中球、好酸球及びマクロファージの増殖及び成熟を促進するサイトカインである。顆粒球マクロファージコロニーの刺激因子(GM−CSF)は、最初はマウスの骨髄において、前駆細胞からの顆粒球及びマクロファージコロニーの生育を刺激する能力があることで発見された(Burgess, A. W. & Metcalf, D. (1980) Blood 56, 947-58)。GM−CSFが、特に免疫及び炎症反応時の顆粒球、マクロファージ及び好酸球のようなより成熟した細胞の細胞数及び活性状態に影響を及ぼす能力に関連するその他の機能を有することが続いて示された(Burgess, A. W. & Metcalf, D. (1980) Blood 56, 947-58., Simon et al., (1977) Eur J Immunol 27, 3536-9)。GM−CSFの機能は、GM−CSFに特異的なα鎖、及びヒトでは、IL−3及びIL−5受容体で共有されるシグナル伝達βサブユニットからなる特異的な受容体に結合することによって介在する(Kitamura et al., (1991) Cell 66, 1165-74; Tavernier et al., (1991) Cell 66, 1175-84; Haman et al., (1999) J Biol Chem 274, 34155-63)。GM−CSF受容体は、造血細胞由来の組織中に、更に星状膠細胞、乏突起膠細胞、骨髄由来のミクログリア及び神経細胞のような、神経系の細胞を含む他の細胞型中にも見出される(Sawada, M., Itoh, Y., Suzumura, A. & Marunouchi, T. (1993) Neurosci Lett 160, 131-4)。
【0028】
臨床的に、GM−CSFは、癌の化学療法に続いて骨髄の再生を促進するために使用される(Anaissie et al., (1996) Am J Med 100, 17-23; Antman et al., (1988) N Engl J Med 319, 593-8; Vellenga et al., (1996) J Clin Oncol 14, 619-27)。GM−CSFは、単球/マクロファージ及び樹枝状細胞(DCs)を含む、骨髄性細胞の成熟を起動し、誘導することができる(Bernasconi et al., (1995) Int J Cancer 60, 300-7; Melichar, B. & Freedman, R.S. (2002)Int J Gynecol Cancer 12, 3-17)。化学療法後に投与すると、GM−CSFは、好中球減少症の継続期間を減少して、再生を増強する。アントラサイクリンベースの化学療法剤による化学療法前に、GM−CSFで静脈内「プライミング」を実施すると、骨髄性前駆細胞の集団を拡大し、休止状態を誘発することが、その他の検討で実証されている。これらの効果は、骨髄保護を増強し、化学療法により誘発される重度の好中球減少症の継続期間を短縮させる(Vadhan-Raj et al. (1992) J Clin Oncol 10, 1266-77)。GM−CSFは、先天性又は適応的免疫系で介在される抗腫瘍効果を増強することによって、免疫系を刺激することもできる(Cortes et al., (1998) Leukemia 12, 860-4; Spitler et al., J. (2000) J Clin Oncol 18, 1614-21; Grabstein et al., (1986) Science 232, 506-8)。要するに、GM−CSFは、末梢血単球を刺激することによって、インビトロで腫瘍細胞の破壊を誘発し(Basak et al., (2002) Blood 99, 2869-79)、DCの成熟を高める(Eager, R. & Nemunaitis, J. (2005) Mol Ther 12, 18-27)。GM−CSFは、ある特定のワクチンの試用の重要な成分にもなっている(Eager, R. & Nemunaitis, J. (2005) Mol Ther 12, 18-27)。
【0029】
幹細胞移植におけるGM−CSFの使用が、幹細胞の末梢血の動員で末梢血幹細胞の回収を可能にするのか、又は自家幹細胞移植後に好中球減少症の継続期間を縮小するかのどちらかに、相当な関心が集中している(Hubel, K. Dale, D.C. & Liles, W.C. (2002) J Infect Dis 185, 1490-50)。GM−CSFは、ヒト胚幹(hES)細胞の骨髄樹枝状細胞(DCs)への定方向分化において重要な役割を果たしている。ヒト幹細胞をOP9間質細胞と一緒に培養し、次いでこれらをGM−CSFの存在下でフィーダーのない培養系で培養すると、サイトカインが、骨髄性前駆及び後前駆細胞を含む種々の発育段階で、骨髄系列細胞の増殖を促進する。骨髄性細胞を、無血清培地中でGM−CSF及び典型的な樹状形態を有するIL4産生細胞と更に培養すると、MHCのクラスI及びII分子である、CD1a、CD11c、CD80、CD86、DC−SIGN及びCD40を高レベルで発現し、そして抗原(AG)処理すること、混合リンパ球反応(MLR)における天然T細胞を誘発すること、及びMHCクラスIタンパク質を介して特定のT細胞クローンに抗原を提示することが可能となった(Slukvin et al., (2006) J Immunol 176, 2924-32)。
【0030】
以下に更に詳細に報告されているように、Bcl−XLに融合するGM−CSFを包含するキメラタンパク質が、GM−CSF受容体を発現する細胞中でアポトーシスを減少させることによって細胞の生存を高めることをもたらした。このキメラタンパク質は、単球の培養において、スタウロスポリン誘導のアポトーシスから細胞を保護し、細胞の増殖を増大させた。Jak2キナーゼの抑制剤であるTyrAg490の存在下でも、GM−CSF−Bcl−XLは、増殖を促進した。それに対して、GM−CSFサイトカイン単独では、TryAg490によって完全に抑制された。このキメラタンパク質は、化学療法剤であるシタラビン及びダウノルビシンの存在下で、細胞の生存を促進するのに有効である。GM−CSF−Bcl−XLは、シタラビン及びダウノルビシンの存在下で、CD34陽性の骨髄前駆細胞の分化を促進することもできる。Bcl−XLタンパク質のみを含有する融合タンパク質は、CD34陽性細胞の分化を誘導しないが、増殖を刺激することだけはできる。要約すると、テストした全ての条件下で、GM−CSF−Bcl−XLの抗アポトーシス活性は、GM−CSF単独の活性より高かった。このことは、組み換えGM−CSF−Bcl−XLは、ヒト単球/マクロファージ細胞及び骨髄前駆細胞上のGM−CSF受容体と結合し、そして細胞に侵入して、そこでBcl−XLが細胞死を防止し、細胞の増殖及び分化を増大することを示唆する。
【0031】
GM−CSF受容体リガンド
GM−CSF受容体リガンドは、GM−CSF受容体に選択的に結合できるポリペプチドの何れかを含有する。GM−CSF受容体リガンドは、GM−CSF受容体に結合する内因性のリガンド、又はその断片であってよいが、本発明はそのように限定するものではない。本発明は、GM−CSF受容体に選択的に結合するポリペプチドの何れかを実質的に包含する。GM−CSF受容体に「選択的に結合する」ポリペプチドは、GM−CSF受容体とは結合するが、サンプル、例えば生体サンプル中のその他の分子と実質的に結合しないものである。好ましくは、GM−CSF受容体に選択的に結合するGM−CSF受容体リガンドは、10mM以下の親和性定数で結合する。種々の態様では、GM−CSF受容体に選択的に結合するGM−CSF受容体リガンドは、1mM、100nM、10nM、1nM、0.1nM以下、又は0.01又は0.001nMよりも小さい親和性定数でGM−CSF受容体と結合する。一態様では、「GM−CSF受容体」は、GenBank受入番号第NP 000386と実質的な同一性を有するポリペプチドである。GM−CSF受容体リガンドは、内因的に発現する場合、天然のGM−CSF受容体、GM−CSF受容体と結合する抗体、及びその断片と結合するポリペプチドを含む。一態様では、天然のGM−CSF受容体と結合するポリペプチド又はその断片は、GenBank受入番号第P04141と実質的に同一であって、GM−CSF受容体と結合する。
【0032】
GM−CSF受容体に選択的に結合する抗体は、本発明の方法において有用である。好ましくは、この抗体は、Bcl−XLポリペプチド又はその断片と融合して、キメラポリペプチドを形成する。このキメラポリペプチドによるGM−CSF受容体への結合は、細胞の生存を高める。抗体を調製する方法は、免疫学の科学分野における当業者に公知である。本明細書で用いられる「抗体」という用語は、完全な抗体分子だけではなく、免疫原との結合能力を保持する抗体分子の断片も意味する。このような断片も、当該技術分野で知られており、そしてインビトロ及びインビボの両方で普通に利用されている。従って、本明細書で用いられる「抗体」という用語は、完全なイムノグロブリン分子だけではなく、公知の活性な断片F(ab’)、及びFabも意味する。完全な抗体のFc断片を欠いているF(ab’)及びFab断片は、血液循環からより速く除去されて、完全な抗体の非特異的結合組織を殆ど有していなくてもよい(Wahl et al., J. Nucl. Med. 24:316-325 (1983))。本発明の抗体は、天然の抗体の全部、二重特異性抗体、キメラ抗体、Fab、Fab’、単鎖V領域断片(scFv)、融合ポリペプチド及び特殊な抗体を、包含する。
【0033】
特殊な抗体は、これらに限定されないが、ナノ抗体(nanobodies)、線形抗体(Zapata et al., Protein Eng. 8(10):1057-1062, 1995)、単一ドメイン抗体、単鎖抗体及び多価を有する抗体(例えば、二価抗体(diabodies)、三価抗体(tribodies)、四価抗体(tetrabodies)及び五価抗体(pentabodies))を包含する。
ナノ抗体は、軽鎖の非存在下で十分に機能するように進化した、天然の重鎖抗体の最小断片である。ナノ抗体は、単鎖Fv断片の半分の大きさであるにも関わらず、通常抗体の親和性及び特異性を有している。ナノ抗体が、通常の抗体が到達できない治療標的に結合できるのは、その強烈な安定性とヒト抗体構造との高度な相同性と組み合わせた独特の構造の結果である。多価を有する組み換え抗体の断片は、癌細胞に対して高い結合活性及び独特な標的特異性を示す。これらの多重結合のscFv(例えば、二価抗体、四価抗体)は、約60〜100kDaと低分子量のサイズが、血液からの速い除去及び迅速な組織への取り込みをもたらすので、親抗体を凌ぐ改善をもたらす。Powerらの「Generation of recombinant multimeric antibody fragments for tumor diagnosis and therapy. Methods Mol Biol, 207, 335-50, 2003」、及びWuらの「Anti-carcinoembryonic antigen (CEA) diabody for rapid tumor targeting and imaging. Tumor Targeting, 4, 47-58, 1999」を参照されたい。
【0034】
特殊な抗体を製造するための各種技術が、以下に述べられている。ロイシンジッパーを用いて製造される二重特異性抗体は、Kostelnyらの「J. Immunol. 148(5):1547-1553, 1992」に記載されている。二価抗体の技術は、Hollingerらの「Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448,1993」に記載されている。単鎖Fv(sFv)二量体を用いることにより二重特異性抗体を作成するための別な方法は、Gruberらの「J. Immunol. 152:5368,1994」に記載されている。三重特異性抗体は、Tuttらの「J. Immunol. 147:60, 1991」に記載されている。単鎖Fvポリペプチド抗体は、Hustonらの「Proc. Nat. Acad. Sci. USA,85:5879-5883,1988」に記載されているような、V−及びV−をコードする配列を含む核酸から発現することができ、直接に結合するか又はペプチドをコードするリンカーによって結合する、共有結合VH::VLへテロダイマーを含有する。米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号及び同第4,956,778号、そして米国特許公開第2005/0196754号及び同第2005/0196754号も参照されたい。
【0035】
一態様では、GM−CSF受容体に結合する抗体はモノクローナル抗体である。或いは、抗GM−CSF受容体抗体は、ポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体の調製及びその使用も、当業者に公知である。本発明は、ハイブリッド抗体も包含し、そこでは重鎖及び軽鎖の一対が第一の抗体から得られ、その他の重鎖及び軽鎖の一対が異なる第二の抗体から得られる。このようなハイブリッドは、ヒト化重鎖及び軽鎖を用いて形成することもできる。このような抗体は、しばしば「キメラ」抗体と呼ばれている。
【0036】
一般に、完全抗体は、「Fc]及び「Fab」領域を含有すると言われている。このFc領域は、補体活性化に関与して、抗原結合に関与していない。Fc’領域が酵素的に切断されているか、又はFc’の領域なしで産生される、「F(ab’)」断片と表される抗体は、完全な抗体の抗原結合部位の両方を保持している。同様に、Fc領域が酵素的に切断されているか、又はFcの領域なしで産生される、「Fab」断片と表される抗体は、完全な抗体の抗原結合部位の1つを保持している。共有結合の抗体軽鎖及び抗体重鎖の一部よりなるFab’断片は、「Fd」と表される。このFd断片は、抗体特異性の主な決定要因である(単一のFd断片は、抗体特異性を変化させずに10本以下の異なる軽鎖と結合することができる)。単離されたFd断片は、免疫原性のエピトープと特異的に結合する能力を保持する。
【0037】
抗体は、免疫原としてGM−CSF受容体又はその免疫原の断片を用いて、当該技術分野で公知の何れかの方法によって作成することができる。抗体を得る1つの方法は、適当な宿主動物を免役原で免役にすること、そして続いてポリクローナル又はモノクローナル抗体作成の標準的な操作を行うことである。免役原は、細胞の表面に免役原を存在させることを促進する。適当な宿主動物の免役付与は、種々の方法で実施することができる。GM−CSF受容体又はその免役原性の断片をコードする核酸配列は、宿主の免役細胞に取り込まれる送達賦形剤に入れて宿主に投与することができる。細胞は、宿主において免役原の応答を引き起こしながら細胞表面に次々に受容体を発現する。また、GM−CSF受容体又はその免役原性の断片をコードする核酸配列を、インビトロで細胞中に発現することができ、続いて受容体の単離し、そして受容体を抗体が上昇している適当な宿主に投与する。
【0038】
また、GM−CSF受容体に対する抗体は、必要により、抗体ファージ表示ライブラリーから得てもよい。バクテリオファージは、細菌内で感染及び再生することができ、これは遺伝子組み換えすることができ、ヒト抗体遺伝子と結合すると、ヒト抗体タンパク質を表示する。ファージの表示は、ファージがその表面でヒト抗体タンパク質と「表示」される工程である。ヒト抗体遺伝子ライブラリーから得られる遺伝子を、ファージの集団に挿入する。各々のファージは、異なる抗体に対する遺伝子を担持しているので、その表面に異なる抗体を表示する。
【0039】
当該技術分野で公知の何れかの方法で作成された抗体は、次に宿主から精製する。抗体の精製方法は、塩沈殿法(例えば、硫酸アンモニウムで)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、カチオン又はアニオン交換カラム上で、好ましくは中性のpHで流して、イオン強度を増加するグラジュエント工程で溶出する)、ゲルろ過クロマトグラフィー(ゲルろ過HPLCを含む)、及びプロテインA、プロテインG、ヒドロキシアパタイト及び抗イムノグロブリンのような親和性樹脂でのクロマトグラフィーを包含する。
【0040】
抗体は、抗体を発現するように遺伝子組み換えされたハイブリドーマ細胞から容易に産生することができる。ハイブリドーマの作成方法は、当該技術分野において公知である。ハイブリドーマ細胞は、適当な培地で培養でき、使用済みの培地を抗体源として使用することができる。目的の抗体をコードするポリヌクレオチドは、抗体を産生するハイブリドーマから次々得られ、次いで抗体はこれらのDNA配列から合成によって又は遺伝子組み換えによって産生できる。大量の抗体を産生するために、一般に腹水を得ることがより便利である。腹水の量を増やす方法は一般に、ハイブリドーマ細胞を免疫学的に実験未使用で組織適合性の又は免疫寛容性の哺乳類、特にマウスに投与することを含んでなる。哺乳動物は、適当な組成物(例えば、プリスタン)の前投与によって、腹水の産生を引き起こすことができる。
【0041】
本発明の方法で産生されるモノクローナル抗体(Mabs)は、当該技術分野で公知の方法によって「ヒト化」することができる。「ヒト化」抗体は、配列の少なくとも一部を最初の形態からヒトイムノグロブリンにより類似するように変化させた抗体である。ヒト化抗体のための技術は、非ヒト動物(例えば、ネズミ科の動物)の抗体が産生される場合に特に有用である。ネズミ抗体をヒト化する方法の例は、米国特許第4,816,567号、同第5,530,101号、同第5,225,539号、同第5,585,089号、同第5,693,762号及び同第5,859,205号に提供されている。
【0042】
抗アポトーシス部分
GM−CSF受容体リガンドは、抗アポトーシス部分と融合して、キメラポリペプチドを形成する。本明細書に記載のように、このような融合は、抗アポトーシス部分及びGM−CSF受容体リガンドを含む単一キメラポリペプチドをコードする転写融合を生成することによって行うことができる。また、GM−CSF受容体リガンド及び抗アポトーシス部分は、同一又は異なる発現ベクター上に含まれていてもよい、別々の発現カセットから発現することができる。2つのペプチドが、別々に発現される場合には、それらの結合をもたらす二量化ドメインを含むことが好ましい。
【0043】
一態様では、二量化ドメインは、配列がGM−CSF受容体リガンドと抗アポトーシス部分との結合を促進するように、ペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端に付加されているアミノ酸配列である。好ましくは、GM−CSF受容体リガンド及び抗アポトーシス部分の各々が、インビトロ又はインビボでオリゴマー化をもたらすアミノ酸配列(例えば、長さが5、10、20、30、40、50、75又は100個のアミノ酸)を含有する。
【0044】
一態様では、二量化ドメインが、GM−CSF受容体リガンドと抗アポトーシス部分との結合をもたらす、コイルドコイルドメインである。このような標識は、タンパク質組み換え技術分野の当業者に公知で、例えば、米国特許第6,911,205号、Liuらの「PNAS, 101:16156-16161」及びZhangらの「Curr. Biol. 9:417-420, 1999」に記載されている。コイルドコイルドメインの例は、ヘテロ二量化ロイシンジッパーのコイルドコイルシステムを含む。ロイシンジッパーの二量化は、超らせん旋回して互いに巻き付いている1対のアルファらせんとの短い平行コイルドコイルの形成を介して起こる(Zhu et al., J. Mol. Biol. 300:1377-1387, 2000)。
【0045】
これらのコイルドコイル構造は、それぞれの第7番目のロイシンを優先して「ロイシンジッパー」と呼ばれるが、抗体を含むその他のタンパク質の二量化を仲介させるのにも使用されている(Hu et al., Science 250:1400-1403, 1990; Blondel and Bedouelle, Protein Eng. 4:457, 1991)。ロイシンジッパーのある種のものは、二量体及び四量体の抗体の構築に特に有用であると確認されている(Pluckthum and Pack Immunotecch. 3:83-105, 1997; Kostelny et al., J. Immunol. 148:1547-1553, 1992)。二量化ドメインは、当該技術分野において公知であって、例えば米国特許第6,790,624号、同第6,495,346号、同第6,486,303号、同第5,322,801号、及び米国特許公開第2005/0106667号、同第2005/0003431号、同第2003/0077739号、同第2003/0054409号、同第2002/0037999号に記載されている。
【0046】
別の態様では、二量化ドメインは、スルフィドリル結合形成をもたらすシステイン残基も含有する、逆帯電したポリイオン性融合ペプチドである。例えば、Kleinschmidtらは「J. Mol. Biol. 327:445-452, 2003」及びRichterらの「Protein Engineering 14:775-783, 2001」は、それらが付加するペプチドのヘテロ二量化をもたらす、「Ala−Cys−Glu」及び「Ala−Cys−Lys」のような、ポリイオン性アダプターペプチドを記載している。また、Deyevらの「Nature Biotech 21:1486-1492, 2003」に記載のように、ペプチドが多価複合体を形成できるように、そのようなドメインの1つ又はそれ以上が、それぞれのペプチドに含まれていてもよい。Deyevらは、オリゴマータンパク質の精製及び組み立てをもたらすためのバルナーゼ(barnase)及びバルスター(barstar)のモジュールの使用について記載している。
【0047】
別のアプローチでは、Asaiらの「Biomol. Eng. 21:145, 2005」に記載のように、抗アポトーシス部分とGM−CSF受容体リガンドの結合は、アビジン/ビオチン系によって促進され、そこではビオチン化融合タンパク質がアビジンと共役した融合タンパク質と結合する。更なる別のアプローチでは、Asaiらの「J. of Immunol. Methods 299:63-76, 2005」が、ヒトリボヌクレアーゼ1由来タンパク質を利用するタンパク質の二量化方法について記載している。このアプローチでは、ヒトリボヌクレアーゼ1由来の15アミノ酸ペプチド(ヒューマンSタグ)を最初のタンパク質に付加し、そしてヒトリボヌクレアーゼ1由来の21〜124残基を第2のタンパク質に付加することによって、2つのタンパク質の二量化がヒトリボヌクレアーゼアミノ酸配列によって促進される。
【0048】
抗アポトーシス部分の例としては、Bcl−2群のメンバー又はその断片を含有する。Bcl−2群のタンパク質は、多細胞器官においてプログラムされた細胞死の主要な調節因子である。この群のあるものは、アポトーシスを促進するBax、Bak、Bok/Mtd、Bad、Bik/Nbk、Bid、Blk、Bim/Bod及びHrkを含み、一方、その他のものは、アポトーシスを抑制するBcl−2、Bcl−xL、Bcl−w、Bfl−1/A1、McI−1及びBoo/Divaを含む。これらのタンパク質は、BH1、BH2、BH3及びBH4と呼ばれる、1〜4個の保存Bcl−2相同ドメイン(BH)を共有している。また、Bcl−2群のメンバーは、それらが細胞膜内、特にミトコンドリア膜の外に局在化するのを助けるC−末端の疎水性アミノ酸配列を有している(Gross et al., Genes Dev. 13:1899-1911, 1999; Adams et al., Science 281:1322-1326, 1998)。Bcl−2群のタンパク質の活性は、転写レベルを調節できるだけでなく、Bcl−2、Bcl−xL、Bid、Bax及びBadを切断する翻訳後修飾によって、強力なアポトーシス促進性の活性を有するC−末端断片を産生することもできる(Basafiez et al., J. Biol. Chem., 276:31083-31091, 2001)。一態様では、本発明の方法において有用なBcl−2タンパク質断片は、アポトーシス促進性のC−末端断片を欠いている。
【0049】
Bcl−xL
Bcl−xLは、Bcl−2から独立したアポトーシスの調節因子として働く。Bcl−xLは、ミトコンドリア膜の外に局在し、ミトコンドリアからのATP排出を調節すること及び/又はアポトーシス促進性のBcl−2関連タンパク質の活性化を抑制することにより、細胞を死から保護すると示唆されている(Basafiez et al., J. Biol. Chem., 277, 49360-49365 (2002); Vander Heiden et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 4666-4667 (2000); Zong et al., Genes Dev. 15, 1481-1486 (2001))。Bcl−xLをコードする遺伝子(例えば、GenBAnk受入番号第Z23115)の選択的スプライシングは、2つの異なるBCLXmRNAをもたらす(Boise et al., Cell 74:597-608, 1993)。大きいmRNA(Bcl−xL)が産生するタンパク質は、Bcl−2とサイズ及び予測構造が類似していて、これは少なくともBCL2と同様に、成長因子の離脱による細胞死を抑制する(Boise et al., Cell 74:597-608, 1993)。Bcl−xLポリペプチドは、GenBank受入番号第Q07817と実質的に同一の配列を有していて、アポトーシスを調節することができる。好ましくは、本発明のBcl−xLポリペプチドは、アポトーシスを減少させる。
【0050】
Mcl−1
本発明の方法で有用な、抗アポトーシスBcl−2群のその他のものは、Mcl−1及びA1を含有する。MCL1は、ヒト骨髄白血病細胞株から単離された(Kozopas, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 90:3516-3520, 1993)。MCL1の発現は、分化マーカー及び成熟形態の出現前の、ML−1分化の誘導又はプログラミングの初期に増加した。MCL1は、BCL2と、特にそのカルボキシル部位において、同様な配列を示す。酵母2−ハイブリッド分析は、350アミノ酸のMCL1タンパク質全長(MCL1L)がアポトーシス促進性のBcl−2群タンパク質と相互作用し、アポトーシスを抑制するこを示した(Bae et al., J. Biol. Chem. 275:25255-25261, 2000)。Bcl−2相同ドメイン1、2及び膜貫通ドメインを欠いている271アミノ酸の変異体は、この抗アポトーシス活性がない(Bae et al., J. Biol. Chem. 275:25255-25261, 2000)。本発明において有用なMCL1タンパク質の断片は、少なくとも1つのBcl−2相同ドメインを包含し、アポトーシスを減少させることが好ましい。
【0051】
A1
A1は、抗アポトーシス活性を有するBcl−2群のその他のタンパク質である。Linらの「J. Immun. 151:1979-1988, 1993」は、BCL2関連タンパク質A1(Bcl2a1)と呼ばれる、新規なマウスcDNA配列を単離して、これをアポトーシス調節因子のBCL2群の1つとして同定した。BCL2A1遺伝子は、BCL2L5、BFL1及びGRSとも呼ばれる。好ましくは、A1は、GenBank受入番号第NP 004040のアミノ酸配列と実質的に同一である。A1のペプチド配列は、Bcl−2及びBcl−2関連遺伝子であるMCL1と類似性を示す、80個のアミノ酸の断片を含有する(Lin et al., J. Immunol. 151(4):1979-88, 1993)。本発明の抗アポトーシス部分が、少なくとも1つのこの領域を含有していることが好ましい。
【0052】
一態様では、抗アポトーシス部分は、Bcl−2群タンパク質の少なくとも1つの断片を包含し、ここにおける断片が細胞の生存を高めることができる。「細胞の生存を高める」とは、細胞死のリスクがある細胞が生存する確率を増加させる(例えば、少なくとも10%、20%、30%に、又は50%、75%、85%又は90%程度に)ことを意味する。あるいは、この断片はアポトーシスを抑制することができる。「細胞増殖を高める」とは、細胞の生育又は増殖を増加させる(例えば、少なくとも10%、20%、30%に、又は50%、75%、85%又は90%程度に)ことを意味する。「細胞死を抑制する」とは、細胞死のリスクがある細胞がアポトーシス、壊死、又は細胞死のその他の何れかの形態に進行する確率を減少させる(例えば、少なくとも10%、20%、30%に、又は50%、75%、85%又は90%程度に)ことを意味する。
【0053】
GM−CSF−Bcl−XLキメラポリペプチド及び類似体
本発明は、少なくとも1つのGM−CSF受容体リガンド及び抗アポトーシス部分を含有するキメラポリペプチドを提供する。一態様では、キメラポリペプチドは、GM−CSF受容体リガンド及びBcl−xL部分を含有する。「GM−CSF−Bcl−xLキメラポリペプチド」は、少なくとも1つのGM−CSFポリペプチドの断片及びBcl−XLポリペプチドの断片を含有するポリペプチドであって、ここにおけるキメラポリペプチドは、GM−CSF受容体と結合し、細胞の生存を高めるか、細胞の増殖を促進するか、又はアポトーシスを減少させる。典型的なGM−CSF−Bcl−xLキメラポリペプチドの配列は、図10A(アンダーラインを付けて)及び図10Bに示される。このようなポリペプチドをコードする典型的な核酸分子の配列は、図11Aに示される。
【0054】
本発明は、これに限定されないが、1つのGM−CSF受容体リガンド及び1つの抗アポトーシス部分を包含するキメラポリペプチドを含む。一態様では、キメラポリペプチドは、それぞれが独立してGM−CSF受容体に結合することができる少なくとも2つの部分を包含する。その他の態様では、キメラポリペプチドは、それぞれが独立してアポトーシスを減少できる少なくとも2つの部分を含有する。従って、本発明は、それぞれの抗アポトーシス部分に対して1つ、2つ、3つ又はそれ以上のGM−CSF受容体リガンドを含有するキメラポリペプチドを提供する。その他の態様では、本発明は、それぞれのGM−CSF受容体リガンドに対して1つ、2つ、3つ又はそれ以上の抗アポトーシス部分を含有するキメラポリペプチドを提供する。本発明のキメラポリペプチドは、1:1、1:2、2:1、1:3又は3:1の比で、抗アポトーシス部分及びGM−CSF受容体リガンドを含有する。
【0055】
GM−CSF受容体リガンドは、Bcl−xL部分と直接融合してもよく、又は融合はリンカーを介して実施されてもよい。「リンカー」は、少なくとも2つの対象アミノ酸を結合する、アミノ酸配列の何れかである。リンカーの長さは、幅広くてもよい。リンカーは、結び付けるアミノ酸配列の独立した機能を最適化するのに十分な長さであることが望ましい。例えば、リンカーは、Bcl−xL部分の抗アポトーシス活性及び/又はGM−CSF受容体リガンドのGM−CSF受容体結合活性を増強する。所望により、リンカーは、内部でタンパク分解切断を受けやすい切断部位を含むことができる。そのような切断部位は、GM−CSF受容体リガンドを抗アポトーシス部分に結合するリンカーが、タンパク分解切断する場合に、抗アポトーシス部分を遊離することができる。あるいは、リンカーは、他のアミノ酸残基(例えば、システイン)と二量化(例えば、システイン)できるアミノ酸残基を含有することができる。
【0056】
リンカーを含有する典型的なキメラポリペプチドの構成を、下に示す。
GM−CSF−リンカー−BclxL−リンカー−GM−CSF、又は
GM−CSF−リンカー−BclxL−リンカー−GM−CSF−リンカー−BclxL。
あるいは、キメラポリペプチドのC又はNH末端に存在するアミノ酸尾部による介在によって、二量化がなされる。
【0057】
本発明には、細胞死を受けるリスクのある細胞においてアポトーシスを減少させる能力を、増強するように修飾されたキメラポリペプチド及びその断片も包含される。一態様では、本発明は、配列に変更を引き起こして、GM−CSF−Bcl−XLキメラアミノ酸配列又は核酸配列を最適化する方法提供する。このような変更は、ある特定の突然変異、欠失、挿入又は翻訳後修飾を含むことができる。これらの修飾は、GM−CSF受容体リガンド又は抗アポトーシス部分(例えば、Bcl−xL)の何れかにおいて行うことができる。一態様では、GM−CSF受容体リガンドは、GM−CSF受容体リガンド類似体である。「GM−CSF受容体リガンド様物質」は、GM−CSF受容体と結合するが、内因性GM−CSF受容体リガンド(例えば、GM−CSF)と構造類似性を有する必要はない。Bcl−xL様物質は、Bcl−xLの抗アポトーシス活性を有しているが、Bcl−xLと構造類似性を有する必要はない。
【0058】
その他の態様では、本発明は更に、本発明の何れかの天然のポリペプチドの類似体を含有する。類縁体は、アミノ酸配列の相違により、翻訳後修飾により、又はその両方により、本発明の天然のポリペプチドと異にすることができる。本発明の類縁体は一般に、本発明の天然アミノ酸配列の全て又は部分に対して少なくとも85%、より好ましくは90%、そして最も好ましくは95%又は99%もの同一性を示す。配列比較の長さは、少なくとも5、10、15又は20個のアミン酸残基、好ましくは少なくとも25,50又は75個のアミノ酸残基、そしてより好ましくは100個以上のアミノ酸残基である。
【0059】
参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載の何れかのアミノ酸配列)又は核酸配列(例えば、本明細書に記載の何れかの核酸配列)と少なくとも50%の同一性を示すタンパク質又は核酸分子は、「実質的に同一」である。好ましくは、このような配列は、比較に用いられる配列に対するアミノ酸レベル又は核酸において、少なくとも60%、より好ましくは80%又は85%、最も好ましくは90%、95%、又は更に99%同一である。
【0060】
配列同一性は一般に、配列分析ソフトウェアー(例えば、「Sequence Analysis Software Package of the Gentics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705, BLAST, BESTFIT, GAP, or PILEUP/PRETTYBOX programs」)を用いて測定される。そのようなソフトウェアーは、種々の置換、欠失及び/又はその他の修飾に対する相同性の程度を割り当てて、同一又は類似配列を一致させる。従来からの置換は一般に、以下のグループ内の置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン。同一性の程度を測定するアプローチの例では、BLASTプログラムを用いることができ、このプログラムでは、e−3とe−100の間の確率評価で近似する配列を指摘する。
【0061】
また、同一性の程度を測定するアプローチの例では、BLASTプログラムを用いることができ、このプログラムでは、e−3とe−100の間の確率評価で近似する配列を指摘する。修飾は、インビボ又はインビトロでのポリペプチドの化学誘導体化、例えばアシル化、カルボキシル化、リン酸化又はグリコシル化を含み、このような修飾は、ポリペプチド合成又は処理時、又は引き続く単離された修飾酵素での処理時に起こる。
【0062】
多種の態様では、本発明のキメラポリペプチドは、血清プロテアーゼに敏感である又はグリコシル化されるアミノ酸残基を、欠失、置換又は修飾するように改造される。プロテアーゼ耐性の組み換えタンパク質の同定方法は、例えば、「Dear et al., Biochem Biophys Res Commun. 2001 Mar 9;281(4):929-35」に記載されている。変化したキメラポリペプチドは、対応する天然のGM−CSF受容体リガンド又は抗アポトーシス部分(例えば、Bcl−xL)に比べて、タンパク分解に対する抵抗を高めたか、又はグリコシル化が低減された、GM−CSF受容体リガンド又は抗アポトーシス部分を含有するであろう。
【0063】
その他の態様では、本発明のキメラポリペプチドは、キメラポリペプチドの他のアミノ酸と二量化することが可能なアミノ酸を含有するように改造される。一態様では、このキメラポリペプチドは、キメラポリペプチド内の他のシステイン残基と内部スルフィドリル架橋を形成することができる少なくとも一つのシステインを含有するように改造される。二量体を形成する抗アポトーシス及びマルチドメインのアポトーシス促進性のBcl−2群のタンパク質は、当該技術分野で公知である(Degterev Nat. Cell Biol. 3, 173-182, 2001)。二量体を形成できるキメラポリペプチドは、増強された抗アポトーシス活性を有するものを同定するのに選択される。抗アポトーシス活性を有するキメラポリペプチドを同定するためのスクリーニング方法は、当該技術分野において公知であって、本明細書の実施例に記載されている。
【0064】
一態様では、二量体形成のキメラポリペプチドは、化学合成によって生成される。その他の態様では、二量体形成のキメラポリペプチドは、キメラポリペプチドをコードする異種核酸配列を発現する細胞(例えば、原核細胞又は真核細胞)によって発現される遺伝子組み換えポリペプチドである。更なる他の態様では、二量体形成のキメラポリペプチドは、それぞれのGM−CSF受容体リガンドに対して、1、2、3又はそれ以上の抗アポトーシス部分を含有するか、又はそれぞれの抗アポトーシス部分に対して、1、2、3又はそれ以上のGM−CSF受容体リガンド部分を含有する。好ましい態様では、二量化は、抗アポトーシス部分と他の抗アポトーシス部分の間で、GM−CSF受容体リガンドと他のGM−CSF受容体リガンドの間で、又はGM−CSF受容体リガンドと抗アポトーシス部分の間で起こる。
【0065】
類縁体は、本発明の天然由来ポリペプチドと、1次配列を改造して違えることができる。これらは、自然及び人工誘発(例えば、エタンメチル硫酸の照射又は曝露による、又は「Sambrook, Fritsch and Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2d ed.), CSH Press, 1989、or Ausubel et al., supra」に記載のような、部位特異的な突然変異によるランダムな変異誘発によりもたらされる)の両方の、遺伝子変異を含有する。環状ペプチド、分子、及びL−アミノ酸以外の、例えばD−アミノ酸又は非天然若しくは合成アミノ酸、例えばβ又はγアミノ酸の残基を含有する類縁体も包含される。
【0066】
アミノ酸は、天然の及び合成のアミン酸を、更に天然のアミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸類縁体及びアミノ酸様物質も含有する。天然のアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるものであり、更に、後で修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタメート、及びO−ホスホセリン、ホスホスレオニンである。アミノ酸類縁体は、天然のアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素に結合する炭素、カルボキシル基、アミノ基、R基(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)を有しているが、天然のアミノ酸では見られない幾つかの変更を含有する化合物であって、「アミノ酸様物質」という用語は、アミノ酸の一般化学構造とは異なる化学構造を有しているが、天然のアミノ酸と類似の様式で機能する化学化合物を示す。アミノ酸類縁体は、修飾したR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有することができるが、天然のアミノ酸と同じ基本骨格を保持している。一態様では、アミン酸類縁体は、D−アミノ酸、β−アミノ酸又はN−メチルアミノ酸である。
【0067】
アミノ酸及び類縁体は、当該技術分野において公知である。アミノ酸は、本明細書においては、IUPAC−IUB生物化学命名法委員会(IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commision)によって推奨されているそのよく知られている3文字記号又は1文字記号の何れかで示すことができる。ヌクレオチドも同様に、それらの一般に受け入れられている1文字のコードで示すことができる。全長のポリペプチドに加えて、本発明は、本発明のポリペプチドの何れか1つの断片も含有する。本明細書で用いられる「断片」という用語は、少なくとも5、10、13又は15個のアミノ酸を意味している。その他の態様では、断片は、少なくとも20個の連続アミノ酸、少なくとも30個の連続アミノ酸、又は少なくとも50個の連続アミノ酸であり、そしてその他の態様では少なくとも60〜80個又はそれ以上の連続アミノ酸である。本発明の断片は、当業者に公知の方法によって産生するか又は通常のタンパク質処理(例えば、生物活性には不要な未完成ポリペプチドからのアミノ酸の除去、又は選択的mRNAスプライシング又は選択的タンパク質処理によるアミノ酸の除去)によりもたらされる。
【0068】
GM−CSF−Bcl−xLの機能活性を模倣するように設計された化学構造を有する非タンパク質性のGM−CSF−Bcl−xL類縁体を、本発明の方法に従って投与することができる。GM−CSF−Bcl−xL類縁体は、元のキメラポリペプチドの生理活性を凌ぐことができる。類縁体設計の方法は、当該技術分野で公知であり、そして類縁体の合成は、得られた類縁体が参照のGM−CSF−Bcl−xLキメラポリペプチドの細胞死の調節活性を示すように、化学構造を修飾するような方法に従って実施することができる。「参照」とは、標準又は対照の状態を意味する。「参照配列」は、野生型の配列(例えば、内在性GM−CSF又はBcl−XLポリペプチドのアミノ酸又は核酸配列)である。これらの化学修飾は、これらに限定されないが、代替R基を置換すること、及び参照のGM−CSF−Bcl−xLポリペプチドの特異的な炭素原子における飽和度を変更することを含む。好ましくは、キメラポリペプチド類縁体は、インビボにおいて比較的分解されず、投与によるより長い治療効果をもたらす。機能的な活性を測定するアッセイは、これに限定されないが、以下の実施例に記載されているものを含む。
【0069】
本発明のキメラポリペプチド(例えば、GM−CSF−Bcl−xL)は、GM−CSF受容体を発現する細胞の何れかに特異的に結合することができる。このような細胞は、造血細胞、上皮細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、神経細胞、神経幹細胞、星状膠細胞、繊維芽細胞、内皮細胞、及び乏突起膠細胞を含む。「特異的に結合する」とは、キメラポリペプチドがGM−CSF受容体を発現しない細胞と結合しないか又は殆ど結合しないことを意味する。結合をアッセイする方法は、当該技術分野において公知である。「Peter Schuck, Lisa F. Boyd, and Peter S. Andersen' Current Protocols in Cell biology, Supplement 22, 17.6.1-17.6.22」を参照されたい。
【0070】
本発明の方法は、親和性標識を含有するキメラポリペプチド(例えば、GM−CSF−Bcl−xL)も包含する。「親和性標識」は、それが固定されるタンパク質又は核酸分子の精製のために用いられる何れかの部分である。実質的に当該技術分野で知られている親和性標識の何れも、実質的に本発明の方法に用いることができ、これらに限定されないが、カルモジュリン結合のタンパク質(CBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、6xHis、マルトース結合のタンパク質(MBP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ビオチン、Strep II、及びFLAGを含む。本発明の方法において、検出可能なアミノ酸配列を含有するキメラポリペプチドも有用である。「検出可能なアミノ酸配列」は、対象の核酸又はタンパク質分子と結合した場合に、分光学的、光化学的(例えば、発光酵素、GFP)、生物化学的、免疫化学的、又は化学的方法を包む、何れかの方法を介して、後で検出可能とする構成である。例えば、有用な標識は、放射性同位体、電磁ビーズ、金属ビーズ、コロイド粒子、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はハプテンを包含する。
【0071】
キメラポリペプチドをコードする核酸分子
本発明は更に、少なくともGM−CSF受容体リガンド及び抗アポトーシス部分を含有するキメラポリペプチドをコードする核酸分子を包含する。本発明の方法で特に有用なものは、GM−CSF受容体リガンド(例えば、GM−CSF)、Bcl−2群のポリペプチド(例えば、Bcl−xL)又はそれらの断片を、コードする核酸分子である。典型的な核酸分子の配列は、図11A及び11Bに示されている。本発明の方法におけるその他の有用な核酸配列は、これらに限定されないが、BCL2関連のタンパク質A1(これは、GenBank受入番号第NM 004049.2で提供される)、Bcl−xL(BCL2同類1)(これは、GenBank受入番号第NM 001191で提供される)及びMcl−1(これは、GenBank受入番号第NM 021960で提供される)の配列である。
【0072】
キメラポリペプチドの発現
一般に、本発明のキメラポリペプチドは、ポリペプチドをコードする核酸又はその断片の全部又は部分を、適当な発現媒介物中に有している適当な宿主細胞の形質転換によって産生することができる。
【0073】
分子生物学分野の当業者は、多種の発現システムの何れもが遺伝子組み換えタンパク質をもたらすために使用できることを理解するであろう。用いられる正確な宿主細胞は、本発明には重要ではない。宿主細胞は、クローニングベクター又は発現ベクターの何れかを含有する、原核細胞又は真核細胞の何れかである。この用語は、宿主細胞の染色体又はゲノム中にクローン化された遺伝子を含むように遺伝子組み換えされた原核細胞又は真核細胞も包含する。
【0074】
本発明のポリペプチドは、原核宿主細胞(例えば、大腸菌のような細菌)中に、又は真核宿主細胞(例えば、ピキア・パストリス又はサッカロミセス・セレビシア(パン酵母)のような酵母、昆虫細胞(例えば、Sf21細胞)、又は哺乳動物の細胞(例えば、NIH 3T3、HeLa又は好ましくはCOS細胞))中で産生することができる。細菌細胞中でのタンパク質の発現は、更なる分析又は抗体産生のために大量に産生することができる。大腸菌中で真核遺伝子を発現するために、目的のcDNAを、細菌細胞へ挿入された遺伝子の転写及び翻訳を促進する配列を含有するプラスミド又はファージベクター(発現ベクターと呼ばれる)にクローンする。挿入された遺伝子はしばしば、クローン遺伝子によるコードされたタンパク質が全細菌タンパク質の10%と同じ程度に対応するのに十分な高レベルで発現することができる。このようなタンパク質は一般に、誘導プロモーターの制御下で発現される。当該技術分野で公知であるこのようなプロモーターは、これらに限定されないが、T7プロモーター、T7/lacOプロモーター、PLtetO−1プロモーター、及びPlac/ara−1プロモーターを含む。T7及びT7/lacOプロモーターは、IPTGによる誘導を受けやすい。PLtetO−1プロモーターは、テトラサイクリン又は無水テトラサイクリンによって「スイッチを入れられる」と、タンパク質を産生するテトラサイクリン調節のプロモーターである。Plac/ara−1プロモーターは、lacプロモーターに基づいており、タンパク質アラビノース及びIPTGによって活性化される。
【0075】
或いは、酵母細胞(例えば、S.セレビシア、P.パストリス)で発現する適当なベクターを用いて、高レベルのタンパク質発現を達成することができる。酵母中で有用な誘導プロモーターは、当該技術分野で公知である。このようなプロモーターは、これらに限定されないが、(ガラクトースによって誘導される)GAL1、(培地に添加される銅又は銀イオンによって活性化される)CUP1、(メチオニンの存在下で不活性化される)MET3、(培地中にリン酸塩が少ないか又は無いと誘導される)PHO5プロモーター、及び(メタノールによって誘導される)AOX1を含む。必要により、このような酵母細胞を、一般にヒト細胞で観測されるグリコシル化を含む、ヒト化グリコシル化タンパク質を発現するように遺伝子組み換えすることができる。このような酵母細胞は、当該技術分野で公知であり、例えば、Hamiltonらの「Science. 301:1244-6, 2003」、及び米国特許公開第2004/0018590号及び同第2002/0137134号に記載されている。
【0076】
一般に、GM−CSF−Bcl−xLキメラポリペプチドは、当該技術分野で公知の原核細胞又は真核細胞の何れにおいて発現される。このような細胞は、広範囲の供給源(例えば、「American Type Culture Collection, Rockland, Md.」、また、Ausubelらの「Current Protocol in Molecular Biology, New York: John Wiley and Sons, 1997 」も参照されたい)から利用可能である。形質転換又はトランスフェクションの方法及び発現ベクターの選択は、選択された宿主系によって決まる。形質転換及びトランスフェクションの方法は、例えば、Ausubelらの(前記)に記載されており、発現媒介物は、例えば、「Cloning Vectors: A Laboratory Manual (P.H. Pouwels et al., 1985, Supp. 1987)」で提供されているものから選択できる。
【0077】
本発明のポリペプチドを産生するために、種々の発現系が存在する。このようなポリペプチドを産生するために有用な発現ベクターは、これらに限定しないが、染色体、エピソーム、及びウィルス由来のベクター、例えば、細菌のプラスミド由来の、バクテリオファージ由来の、トランスポゾン由来の、酵母エピソーム由来の、挿入因子由来の、酵母染色体要素由来の、(バキュロウィルス、SV40のようなパポバウィルス、ワクチナウィルス、アデノウィルス、鶏痘ウィルス、仮性狂犬病ウィルス及びレトロウィルスのような)ウィルス由来の及びこれらの組み合わせ由来のベクターを包含する。発現ベクターは、遺伝子組み換え又は合成によって作成され、宿主細胞中で特別な遺伝子を転写できる一連の特定の核酸成分を有している、核酸構築物である。一般に、遺伝子の発現は、恒常的若しくは誘導プロモーター、組織優先の調節エレメント及びエンハンサーを含む、ある特定の調節エレメントの制御下に置かれている。本発明は、発現ベクターを介する、本明細書に記載のキメラポリペプチドの発現を提供する。典型的な発現ベクターpET28b(+)及びpPICZAの配列を、それぞれ図12A及び12Bに示す。更に、本発明は、本明細書に記載のキメラポリペプチドの何れかをコードする核酸配列を含んでなる宿主細胞(例えば、真核細胞又は原核細胞)を特徴とする。
【0078】
ポリペプチド産生のための特定な細菌発現系の1つは、大腸菌pET発現系(例えば、pET−28)(Novagen, Inc., Madison, Wis)である。この発現系に従って、ポリペプチドをコードするDNAを、発現できるように適応設計されているpETベクターに挿入する。このようなポリペプチドをコードする遺伝子が、T7調節シグナルの制御下にあるので、ポリペプチドの発現は、宿主細胞中でT7RNAポリメラーゼの発現を誘導することによって達成される。これは一般に、IPTG誘導に応答してT7RNAポリメラーゼを発現する宿主細胞を用いて達成される。産生されると、組み換えポリペプチドは次に、当該技術分野で公知の標準的な方法、例えば本明細書に記載のような方法に従って単離する。
【0079】
ポリペプチド産生のためのその他の細菌発現系は、pGEX発現系(Pharmacia)である。この系は、遺伝子又は遺伝子断片を融合タンパク質として高レベルで発現するように設計されているGST遺伝子融合システムを用いるもので、機能的遺伝子産物の迅速な精製及び回収を実現する。目的のタンパク質は、日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)由来のグルタチオンS−トランスフェラーゼタンパク質のカルボキシ末端に融合しており、グルタチオンセファロース4Bを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって、細菌溶解物から容易に精製される。融合タンパク質は、グルタチオンで溶出することによる穏やかな条件下で回収することができる。融合タンパク質からグルタチオンS−トランスフェラーゼ・ドメインの切断は、このドメインの位置特異的なプロテアーゼの上流を認識する部位の存在によって促進される。例えば、pGEX−2Tプラスミドで発現するタンパク質は、トロンビンで切断でき、pGEX−3X中で発現するものは、ファクターXaで切断できる。
【0080】
或いは、本発明の組換えポリペプチドは、メチロトローフの酵母であるピキア・パストリスで発現される。ピキアは、唯一の炭素源としてメタノールを代謝できる。メタノール代謝の第1段階は、酵素であるアルコールオキシダーゼによる、メタノールのホルムアルデヒドへの酸化である。AOX1遺伝子によってコードされるこの酵素の発現は、メタノールによって誘導される。AOX1プロモーターを、ポリペプチドの発現、又は目的の遺伝子の恒常的発現のためのGAPプロモーターを誘導するために用いることができる。
【0081】
別のアプローチでは、キメラポリペプチドは、トランスジェニック植物又は動物のような、トランスジェニック生物中で産生される。「トランスジェニック」とは、細胞に意図的に挿入され、その細胞から生育した生物のゲノムの一部又は遺伝性過剰染色体配列の一部になったDNA配列を含有する何れかの細胞を意味する。本明細書で用いられるトランスジェニック生物は、家畜哺乳類(例えば、ヒツジ、ウシ、ヤギ又はウマ)、マウス、又はラットのようなトランスジェニック脊椎動物、昆虫又は線虫のようなトランスジェニック無脊椎動物、又はトランスジェニック植物の何れかである。
【0082】
本発明の組み換えポリペプチドが発現されると、それを、例えばアフィニティークロマトグラフィーを用いて単離する。一例では、本発明のポリペプチドに対して付加する抗体(例えば、本明細書に記載のようにして産生した)をカラムに付着させて、組み換えポリペプチドの単離に用いることができる。アフィニティークロマトグラフィーの前に、ポリペプチド含有細胞の溶解及び分画は標準的な方法によって実施できる(例えば、Ausubelらの前記参考を参照されたい)。
【0083】
一態様では、本発明のキメラポリペプチドは、齧歯類(例えばラット又はマウス)のようなトランスジェニック動物内で発現される。更に、当該技術分野の標準的な方法によって、これらのマウスから細胞株を確立することができる。導入遺伝子の構築は、Ausubelらの「Current protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 2000」に記載されているような、適切な遺伝子組み換え技術を用いて達成することができる。導入遺伝子構築及びトランスフェクション又は形質転換する発現構築物の多くの技術は、一般に公知であって、開示の構築物のために用いることができる。
【0084】
当業者は、プロモーターが全ての組織又は好ましい組織での選ばれた遺伝子を発現するように選ばれるのを、理解されるであろう。当業者は、転写調節因子のモジュラー性、及びエンハンサーのような幾つかの調節因子の機能の位置依存性がないことが、例えば、再配列、幾つかの因子又は外来配列の欠失、及び異種因子の挿入のような修飾を可能にすることを認識されるであろう。遺伝子の調節因子を分析して、その位置及び機能を測定することには、多くの技術が利用可能である。このような情報を、必要により、因子の修飾を実施するために用いることができる。遺伝子の転写調節因子の無傷領域を用いることが、望ましい。適切な導入遺伝子構築物が作成されると、この構築物を胚細胞に取り込む適切な技術の何れかを用いることができる。
【0085】
トランスジェニック実験に適している動物は、Taconic(Germantown, N.Y.) のような標準的な商業的供給源から得ることができる。多くの血統が適しているが、胚の回収及び移植のためには、スイス・ウェブスター(Swiss Webster:Taconic)雌マウスが望ましい。B6D2F(Taconic)雄マウスは、交配のために用いることができ、そして精管を切除したスイス・ウェブスターの種マウスは、偽妊娠を促進するために用いることができる。精管を切除したマウス及びラットは、上記の供給者から公的に入手することができる。しかしながら、当業者においては、トランスジェニックマウス又はラットの作成方法も公知であろう。トランスジェニック動物の作成に用いることができるプロトコールの一例を、以下に示す。
【0086】
トランスジェニックマウス及びラットの作成
トランスジェニックマウスを作成する望ましい方法を以下に述べるが、これはその一つに過ぎない。この一般的なプロトコールは、当業者によって修飾することができる。
6週齢の雌マウスに、妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG;Sigma)の5IU、次いで48時間後のヒト絨毛性腺刺激ホルモン(hCG;Sigma)の5IU注射(0.1cc、IP)によって過剰排卵を誘発する。hCG注射後直ちに、雌と雄を一緒にする。hCG投与21時間後に、交尾した雌を、CO窒息又は頸椎脱臼によって犠牲にし、摘出した卵管から胚を回収して、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma)を含有するダルベッコ(Dulbecco)・リン酸緩衝生理食塩水に入れる。周囲の卵丘細胞を、ヒアルロニダーゼ(1mg/ml)で除去する。次いで、前核性の胚を洗浄して、5%のCO、95%の空気の湿った雰囲気下の37.5℃のインキュベーター内の、0.5%のBSAを含有するアール(Earle)平衡塩溶液(EBSS)中に、注射する時まで入れておく。胚は、2細胞期に移植することができる。
【0087】
成熟雌マウスを、無作為に精管を切除した雄と対にする。スイス・ウェブスター及びその他のこれに匹敵する血統を、この目的のために使用できる。被移植雌マウスを、移植提供雌マウスと同じ時期に交配させる。胚の移植時に、被移植雌マウスを、体重1グラム当たり0.015mlの2.5%アバーティン(avartin)を腹腔内投与して麻酔する。一重正中線背部切開によって卵管を露出する。次いで体壁に沿って卵管上に真っ直ぐ切開を行う。次いで、時計のピンセットで卵嚢を裂く。移植する胚を、DPBS(ダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水)及び移植ピペットの先端に入れる(約10〜12個の胚)。ピペットの先端を卵管漏斗に挿入して、胚を移植する。胚を移植した後、切開部を2度縫合して閉じる。
【0088】
トランスジェニックラットを作成する好ましい手順は、マウスについての上記と同じである(Hammer et al., Cell 63:1099-112, 1990)。例えば、30日齢の雌ラットにPMSGの20IU(0.1cc)を皮下投与して、48時間後にそれぞれの雌を検定済みの、繁殖力のある雄と一緒にする。同時に、40〜80日齢の雌を、精管を切除した雄と一緒にケージの中に入れる。これらを胚移植のための養母とする。翌朝、膣栓について雌をチェックする。精管を切除した雄と交配した雌を、移植するまでわきへ置いておく。交配した移植提供雌を犠牲(CO窒息)にし、その卵管を除去し、0.5%のBSAを含有するDPBA(ダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水)に入れて、胚を採取する。胚の周りの卵丘細胞を、ヒアルロニダーゼ(1mg/ml)で除去する。胚をマイクロインジェクションする時まで、37.5℃のインキュベーター内の0.5%のBSAを含有するEBSS(アール平衡塩溶液)中に入れておく。
【0089】
胚を注入したら、生存している胚を、養母に移植するためにDPBSに移す。養母をケタミン(40mg/kg、IP)及びキシラジン(5mg/kg、IP)で麻酔する。皮膚に背部正中線切開を行い、卵巣の上方向に筋肉層を通して切開して、卵巣及び卵管を露出する。卵嚢を裂き、胚を移植ピペット中に取って入れて、移植ピペットの先端を卵管漏斗に挿入する。約10〜12個の胚を卵管漏斗を通して、それぞれのラットの卵管に移植する。切開部を縫合して閉じ、養母を個々に飼育する。
【0090】
植物遺伝子導入の構築
本明細書に記載のキメラポリペプチドをコードする導入遺伝子を含有する遺伝子組み換え植物は、組み換えポリペプチドを産生するために有用である。少なくとも1つのトランス遺伝子(例えば、GM−CSF−Bcl−xLキメラポリペプチドをコードするトランス遺伝子)を発現する、遺伝子組み換え植物、又はそのような植物の個体群は、キメラポリペプチドを産生するために有用である。一態様では、キメラポリペプチドは、安定に形質転換された植物細胞株、一過性に形質転換された植物細胞株、又は遺伝子組み換え植物によって発現される。植物細胞の安定な又は染色体外の形質転換に、又は遺伝子組み換え植物を確立するために適している多くのベクターは、一般に公開されており、そのようなベクターは、Powelsら(前記)、Weissbach及びWeissbach(前記)、及びGelvinら(前記)によって記載されている。このような細胞株を構築する方法は、例えば、Weissbach及びWeissbach(前記)、及びGelvinら(前記)によって記載されている。
【0091】
一般に、植物発現ベクターは、(1)5’及び3’調節配列の転写制御下でクローンされた植物遺伝子、及び(2)優性選択可能なマーカーを含む。このような植物発現ベクターは、必要により、プロモーター調節領域(例えば、付与誘導の又は恒常的な、病原菌又は創傷誘導の、環境的又は発生学的な調節の、又は細胞又は組織の特異的な発現)、転写開始部位、リボソーム結合部位、RNAプロセッシングシグナル、転写終止部位、及び/又はポリアデニル化シグナルを含有していてもよい。
【0092】
本明細書に記載のように所望の核酸配列が得られると、これを当該技術分野で公知の各種の方法で処理することができる。例えば、配列が非コードの隣接領域を含む場合は、この隣接領域に突然変異を誘発することができる。GM−CSF受容体リガンド又は抗アポトーシス部分をコードするDNA配列を、必要により、各種の方法でその他のDNA配列と結合させることができる。その構成部分においては、GM−CSF受容体リガンド及び抗アポトーシス部分をコードするDNA配列は、宿主細胞において転写及び翻訳を促進することができる転写開始制御領域を有するDNA構築物と一体化される。
【0093】
一般に、この構築物は、本明細書で検討されているようなキメラタンパク質の修飾産生をもたらす、植物中で機能する調節領域を含有することができる。GM−CSF受容体リガンド、抗アポトーシス部分又はそれらの断片をコードするオープンリーディングフレームは、転写開始領域とその5’末端において結合することができる。恒常的又は誘導的な調節をもたらす多数の転写開始領域が、入手可能である。
【0094】
調節転写の終止領域も、本発明のDNA構築物中に備えることができる。転写終止領域は、GM−CSF受容体リガンド又は抗アポトーシス部分をコードするDNA配列によって供給されてよく、又は手頃な転写終止領域由来であってもよい。重要なことは、本発明は、双子葉植物及び単子葉植物に適用でき、そして新規若しくは改良された形質転換又は再生方法の何れにも適用することができる。発現構築物は、少なくとも1つのGM−CSF受容体リガンド、抗アポトーシス部分、又はキメラポリペプチドと操作可能に結合する少なくとも1つのプロモーターを含有する。本発明による有用な植物プロモーターの例は、カリモウィルスプロモーター、例えば、カリフラワーモザイクウィルス(CaMV)プロモーターである。これらのプロモーターは、多くの植物組織において高レベルの発現をもたらし、そしてこれらのプロモーターの活性は、ウィルスでコードされるタンパク質に依存しない。CaMVは、35S及び19Sプロモーターの両方の供給源である。
【0095】
これらのプロモーターを使用する植物発現構築物の例は、Fraleyらの米国特許第5,352,605号に見出される。遺伝子組み換え植物の殆どの組織では、CaMV35Sプロモーターは、強力なプロモーターである(例えば、「Odell et al., Nature 313:810, 1985」を参照されたい)。CaMVプロモーターは、単子葉植物においても高活性である(例えば、「Dekeyser et al., Plant Cell 2:591, 1990」、「Terada and Shimamoto, Mol. Genet. 220:389, 1990」を参照されたい)。また、このプロモーターの活性は、CaMV35Sプロモーターの複製によって更に増大(例えば、2〜10倍の間)させることができる(例えば、「Kay et al., Science 236:1299, 1987」、「Ow et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:4870, 1987」、「Fang et al., Plant Cell 1:141, 1989」及びMcPhersonとKayの米国特許第5,378,142号を参照されたい)。その他の有用な植物プロモーターは、これらに限定されないが、ノパリンシンターゼ(NOS)プロモーター(「An et al., Plant Physiol. 88:547, 1988」及びRodgersとFraleyの米国特許第5,034,322号)、オクトピンシンターゼプロモーター(Fromm et al., Plant Cell 1:977, 1989)、フィグワート(ゴマノハグサ)モザイクウィルス(FMV)プロモーター(Rodgersの米国特許第5,378,619号)、及びイネアクチンプロモーター(WuとMcElroyの国際特許出願公開第W091/09948号)を含有する。単葉植物プロモーターの例は、これらに限定されないが、ツユクサ黄斑ウィルスプロモーター、サトウキビバドナウィルスプロモーター、イネワイ化バチルス状(ricetungrobacilliform)ウィルスプロモーター、トウモロコシ条斑病(maize streak)ウィルス成分、及び小麦萎縮病ウィルスプロモーターを含む。
【0096】
植物発現ベクターは、RNAプロセッシングシグナル、例えば、効率的なRNA合成及び集積に対して重要であることが示されているイントロン(Callis et al., Genes and Dev. 1:1183, 1987)を包含していてもよい。RNAスプライス配列の位置が、植物におけるトランス遺伝子の発現のレベルに対して劇的に影響を及ぼす。この事実を考慮して、遺伝子発現のレベルを調節するために、トランス遺伝子中の、MLTポリペプチドをコードする配列の上流又は下流にイントロンを、位置決めすることができる。上記の5’調製制御配列に加えて、発現ベクターは、通常植物遺伝子の3’領域に存在する、調節制御領域を含有していてもよい(Thornburg et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:744, 1987; An et al., Plant Cell 1:115, 1989)。例えば、3’末端領域は、mRNAの安定性を増すために発現ベクター中に包含されていてもよい。このような末端領域の一つは、ジャガイモのPI−11末端領域由来であってもよい。更に、一般に用いられるその他の末端は、オクトピン又はノパリン合成シグナル由来である。
【0097】
植物発現ベクターは一般に、形質転換された細胞を同定するのに用いられる優性選択可能なマーカー遺伝子を含有する。植物系で有用な選択可能なマーカー遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子をコードする遺伝子、例えば、これらは、ハイグロマイシン、カナマイシン、ブレオマイシン、G418、ストレプトマイシン、又はスペクチノマイシンに対する耐性をコードするものを含む。光合成を必要とする遺伝子も、光合成欠失株において選択可能なマーカーとして用いられる。最後に、除草剤耐性をコードする遺伝子を、選択可能なマーカーとして用いることができ、有用な除草剤耐性遺伝子は、酵素ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ及び広域除草剤バスタ(Basta; Frankfurt, Germany)をコードするbar遺伝子を包含する。
【0098】
また、必要により、植物発現構築物は、植物内で遺伝子の能力を増強するように変化した配列をコードする、修飾した又は完全合成構造のキメラポリペプチドを含有していてもよい。このような修飾した又は合成の遺伝子を構築する方法は、FischoffとPerlakの米国特許第5,500,365号に記載されている。分子生物学、特に植物分子生物学の分野の当業者には、遺伝子発現のレベルが、プロモーターの組み合わせ、RNAプロセッシングシグナル、及び末端成分ばかりではなく、これらの因子が選択可能な遺伝子の発現レベルを如何に増大させるかによって決まるということが明らかであろう。
【0099】
植物の形質転換
植物発現ベクターの構築に際して、植物宿主にベクターを導入して遺伝子組み換え植物を産生するために、幾つかの標準的な方法を利用できる。これらの方法は、(1)アグロバクテリウム(アグロバクテリウム・ツメファシエンス又はアグロバクテリウム・ルチゾジェネス(A.rlzizogenes))介在の形質転換(例えば、「Lichtenstein and Fuller In: Genetic Engineering, vol. 6, PWJ Rigby, ed, London, Academic Press, 1987」及び「Lichtenstein, C.P., and Draper, J. In: DNA Cloning, Vol II, D.M. Glover, ed, Oxford, IRI Press, 1985」を参照されたい)、(2)粒子送達システム(例えば、「Gordon-Kamm et al., Plant Cell 2:603, 1980」及び「BioRad Technical Bulletin 1687(前記)」を参照されたい)。(3)マイクロインジェクション手法(例えば、「Green et al.,(前記)」を参照されたい)、(4)ポリエチレングリコール(PEG)手法(例えば、「Draper et al., Plant Cell Physiol. 23:451, 1982」又は例えば、「Zhang and Wu, Theor. Appl. Genet. 76:835, 1988」を参照されたい)、(5)リポソーム介在のDNAの取り込み(例えば、「Freeman et al., Plant Cell Physiol. 25:1353, 1984」を参照されたい)、(6)エレクトロポレーション法(例えば、「Gelvin et al., supra」、「Dekeyser et al., supra」、「Fromm et al., Nature 319:791, 1986」、「Sheen Plant Cell 2:1027, 1990」又は「Jang and Sheen Plant Cell 6: 1665, 1994」を参照されたい)、及び(7)ボルテックス法(例えば、「Kindle supra」を参照されたい)を含む。
【0100】
形質転換の方法は、本発明にとって重要ではない。効率的な形質転換をもたらす何れの方法も、使用できる。作物又はその他の宿主細胞を形質転換する新しい方法も利用可能であり、直接適用できる。本発明の実施で使用する適切な植物は、これらに限定されないが、サトウキビ、小麦、米、トウモロコシ、甜菜、ジャガイモ、大麦、マニオク、サツマイモ、大豆、ソルガム、キャッサバ、バナナ、ブドウ、オーツムギ、トマト、キビ、ココナツ、オレンジ、ライムギ、キャベツ、リンゴ、スイカ、カノーラ、ワタ、ニンジン、ニンニク、タマネギ、コショウ、イチゴ、山芋、ピーナツ、タマネギ、豆、エンドウ豆、マンゴー、柑橘類植物、クルミ、及びヒマワリを含む。
【0101】
アグロバクテリウム介在の形質転換の一つの方法の例を、以下に概説する。この方法では、植物細胞のゲノムに形質転換される遺伝子を操作する一般的な工程が、2段階で実施される。第一に、クローニング及びDNA修飾工程が、大腸菌中で行われ、対象の遺伝子構築物を含有するプラスミドが、接合又はエレクトロポレーションによって、アグロバクテリウムに移送される。第二に、得られるアグリバクテリウム株が、植物細胞を形質転換するために用いられる。このようにして、普及した植物発現ベクターでは、プラスミドはアグロバクテリウム中で複製できる複製起点、及び大腸菌中で機能する高コピー数の複製起点を含有する。このことは、その後の植物への導入のためのアグロバクテリウムへの移送前に、大腸菌中での導入遺伝子の容易な産生及びテストを可能とする。耐性の遺伝子を、ベクター上に保持させることができ、耐性の遺伝子の1つは、細菌、例えばストレプトマイシンの選択、その他は、植物中で機能する、例えばカナマイシン耐性又は除草剤耐性をコードする遺伝子である。1つ又はそれ以上のトランス遺伝子を付加するための制限エンドヌクレアーゼ部位、及びアグロバクテリウムの移送機能によって認識される場合に、植物へ移送されるDNA領域の範囲を定める、方向性T−DNA境界配列も、ベクター上に存在している。
【0102】
別の例では、植物細胞は、クローンDNAを沈着しているタングステンミクロマイクロ発射物を細胞に発射して、形質転換することができる。発射に用いられるバイオリスティック装置(Biolistic Apparatus; Bio-Rad)において、火薬の充填(22口径のパワーピストン装置充填)又は圧縮空気による発射によって銃身からプラスティックのミクロ発射物を打ち出す。DNAが沈着したタングステン粒子懸濁液のアリコートをプラスティック製のマクロ発射物の前に置く。後者は、ミクロ発射物が通過できないような小孔が開いた、アクリル製の遮断板に向かって発射される。この結果、プラスティック製のミクロ発射物は、遮断板に当たって砕け、タングステンのミクロ発射物が、遮断板の穴を通って標的に向かって進み続ける。本発明に関しては、標的はどんな植物の細胞、組織、種子又は胚でもよい。細胞に導入されたミクロ発射物上のDNAは、核又は葉緑体の何れかに取り込まれる。一般に植物細胞におけるトランス遺伝子の導入と発現は、今や、当業者にとっては日常的な操作であり、そして植物における遺伝子発現検討を行なうための、また、農業上ないし商業上有益な、改良された植物品種を得るための主要な手段になっている。
【0103】
遺伝子組み換え植物の再生
植物発現ベクターで形質転換された植物細胞は、例えば、単一の細胞、カルス組織、又は葉ディスク(discs)から、標準的な植物組織培養技術によって再生することができる。殆どすべての植物の、種々の細胞、組織又は器官をうまく培養して、完全な植物体に再生できることは、当業者によく知られている。そのような技術については、例えば、「Vasil supra」、「Green et al., supra」、「Weissbach and Weissbach, supra」及び「Gelvin et al., supra」に記載されている。ある特定な例では、35SCaMVプロモーター及びノパリン合成酵素のターミネーターで制御され、そして選択マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性)を保持する、クローン化されたキメラポリペプチド発現構築物が、アグロバクテリウムに形質転換される。葉ディスクの、アグロバクテリウム含有ベクターでの形質転換は、「Horsch et al.(Science 227:1229, 1985)」の記述に従って実施した。数週間後(例えば、3〜5週間後)、カナマイシン(例えば、100μg/ml)を含む植物組織培養培地で、推定される形質転換体を選択する。次いで、カナマイシン耐性の芽を、発根を開始させるホルモンを入れていない植物組織培養培地の上に置く。そして、温室で成長させるカナマイシン耐性の植物を選択する。必要により、次いで自殖させた遺伝子組み換え植物からの種子を、土を含まない培地に播いて、温室で育てることができる。ホルモンなしでカナマイシン含有培地に、表面を殺菌した種子を播いて、カナマイシン耐性の子孫を選択する。
【0104】
標準的な技術(例えば、「Ausubel et al. supra」、「Gelvin et al. supra」を参照されたい)用いて、トランス遺伝子の取り込みに関する解析を行なう。次いで、トランス遺伝子DNAの伝達について、標準的な免疫ブロット及びDNA検出技術によって、選択マーカーを発現する遺伝子組み換え植物をスクリーニングする。陽性の遺伝子組み換え植物及びその遺伝子組み換え植物の子孫の各々は、同じトランス遺伝子を用いて作製された他の遺伝子組み換え植物と比較すると異なっている。トランス遺伝子DNAの植物ゲノムDNAへの取り込みは、殆どの場合無作為であり、取り込まれた部位が、トランス遺伝子の発現のレベル、組織及び成長パターンに大いに影響する。そのため、トランス遺伝子について、多数のトランスジェニック系統をスクリーニングして、最も適当な発現プロフィールをもつ植物の同定および選択を行う。
【0105】
トランス遺伝子の発現レベルにおける遺伝子組み換え系統の評価
本発明のキメラポリペプチドを発現している植物を同定及び定量するために、核酸レベルでの発現を、最初に測定する。発現を分析するための標準的な技術を、用いた。このような技術には、トランス遺伝子の核酸テンプレートだけを増幅するように設計されたオリゴヌクレオチド・プライマーを用いたPCR増幅アッセイ、及びトランス遺伝子に特異的なプローブを用いた溶液ハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、「Ausubel et al., supra」を参照されたい)を包含する。次いで、本発明のキメラポリペプチドをコードするような植物は、GM−CSF受容体リガンド又は抗アポトーシス部分の特異的な抗体を用いるウェスタン免疫ブロット分析を用いてタンパク質の発現について分析する(例えば、「Ausubel et al., supra」を参照されたい)。更に、標準的な手順によるインサイチュー・ハイブリダイゼーション及び免疫細胞化学は、遺伝子組み換え組織での発現部位の位置を決めるために、トランス遺伝子特異的なヌクレオチドプローブ及び抗体をそれぞれ用いて、実施することができる。
【0106】
一旦単離されると、遺伝子組換えタンパク質は、必要によって、更に、例えば高速液体クロマトグラフィーによって、精製することができる(例えば、「Fisher, Laboratory Techniques In Biochemistry and Molecular Biology, eds., Work and Burdon, Elsevier, 1980」を参照されたい)。本発明のポリペプチド、特に短いペプチド断片は、化学合成によっても製造できる(例えば、「Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed., 1984 The Pierce Chemical Co., Rockford、Ill.」に記載の方法で)。ポリペプチドの発現及び精製のこれらの一般的な技術は、有用なペプチド断片又は類縁体を産生及び単離するためにも用いることができる(本明細書に記載)。
【0107】
スクリーニングアッセイ
GM−CSF−Bcl−xLキメラポリペプチドのGM−CSF受容体への結合は、アポトーシスになるリスクがある細胞の生存を高める。この発見の部分によれば、本発明の組成物は、活性、安定性又は血液脳関門通過能力を高める、候補化合物及びキメラポリペプチドを、高性能且つ廉価でスクリーニングするのに有用である。一態様では、新規なGM−CSF受容体リガンドは、GM−CSF受容体に結合することで単離される。好ましくは、これらのリガンドは、この受容体を活性化する。これらのリガンドは次いで、Bcl−xLポロペプチド又はその断片と融合して、細胞生存又はアポトーシスのそれらの効果をアッセイする。また、本発明の方法及び組成物は、本明細書に記載のGM−CSF−Bcl−xLキメラポリペプチドの生物活性を増強する候補化合物の単離に有用である。一態様では、このような候補化合物は、本発明のキメラポリペプチドと組み合わせて投与されると、細胞の生存を促進するか又はアポトーシスを減少させる
【0108】
細胞の生存に対するキメラポリペプチド又は候補化合物の効果は、アポトーシス促進性の薬剤で処理された組織又は細胞中で評価される。一実施例では、候補化合物又はキメラポリペプチドは、アポトーシス促進性薬剤の添加の前、同時又は後に、培養細胞の培地に、種々の濃度で添加する。次いで、標準的な方法によって、細胞の生存率を測定する。一例では、候補化合物の存在下におけるアポトーシスのレベルを、候補分子が存在していない対照培養培地で測定されたレベルと比較する。細胞生存の増加、アポトーシスの減少又は細胞増殖の増加を促進する化合物は、本発明において有用であると考えられ、このような候補化合物は、例えば、化学療法剤のような、アポトーシス促進性の薬剤の有毒作用を抑制、遅延、改善、安定化又は治療するための治療薬として用いることができる。その他の態様では、候補化合物又はキメラポリペプチドは、過剰な細胞死によって特徴付けられる疾患又は障害を、防止し、遅延させ、改善し、安定化し又は治療するか、又は骨髄前駆細胞のような、細胞死のリスクがある細胞、組織又は器官の生存若しくは増殖を促進する。このような治療化合物は、インビボ、更にエキソビボで有用である。
【0109】
ある態様では、本発明のキメラポリペプチドの生物活性の増加を促進する化合物は、有用であると考えられる。このような化合物は、本発明のキメラポリペプチドと組み合わせて添加し、その細胞の生存又は増殖に対する効果を測定し、そして候補化合物が存在していないキメラポリペプチドの効果と比較する。また、このような候補化合物は、例えば、細胞死のリスクがある細胞、組織又は器官の生存又は増殖を促進する治療剤として用いることができる。
【0110】
更なる別の実施例では、候補化合物及びキメラポリペプチドは、アポトーシスのリスクがある細胞によって発現されるGM−CSF受容体への特異的な結合についてスクリーンされる。このような候補化合物の効果は、GM−CSF受容体又はその機能的同等物と相互作用する能力によって決まる。このような相互作用は、多数の標準的な結合技術及び機能性のアッセイ(例えば、「Ausubel et al., supra」に記載のようなもの)の何れかを用いて、容易にアッセイすることができる。一態様では、この化合物又はキメラポリペプチドは、受容体結合及び細胞の生存又は増殖の促進について、インビトロでの細胞でアッセイされる。別の態様では、細胞生存の促進は、GM−CSF受容体がGM−CSF受容体のシグナル伝達経路を活性化する能力によって決まる。このような活性化は、リン酸化Jak2及びStat5レベルの増加を同定することによってアッセイされる。その他の態様では、細胞生存及び増殖の促進は、GM−CSF受容体リガンドの細胞内の転座によって決まる。
【0111】
ある特定の実施例では、GM−CSF受容体に結合するキメラポリペプチド又は候補化合物は、クロマトグラフィーに基づいた技術を用いて同定される。例えば、本発明の組み換えポリペプチドは、ポリペプチドを発現するように遺伝子組み換えされた細胞(例えば、上記のようなもの)から標準的な技術によって精製でき、そしてカラム上に固定することができる。次いで、候補化合物の溶液をカラムに通し、そしてGM−CSF受容体に特異的な化合物が、そのポリペプチドと結合する能力に基づいて同定され、カラム上に固定する。化合物を単離するために、カラムを洗浄して、特異的に結合しない分子を除去し、次いで目的の化合物をカラムから分離して、回収する。同様の方法を、ポリペプチドマイクロアレイに結合する化合物を単離するために用いることができる。このような方法を用いて同定された化合物及びキメラポリペプチドは、次いで本明細書に記載のようにして細胞の生存及び増殖に対する効果についてアッセイされる。
【0112】
別の実施例では、化合物、例えば基質は、化合物、例えば基質のGM−SCF受容体との結合が、複合体中の標識化された化合物、例えば基質を検出することによって測定できるように、放射性同位元素又は酵素標識と連結させる。例えば、化合物を、125I、35S、14C又はHで直接的又は間接的に標識でき、放射性同位元素は、放射放出を直接カウントするか、又はシンチレーションカウントによって検出される。また、化合物は、例えば、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ又はルシフェラーゼで酵素標識することができ、適切な基質の産生物への変換を測定することによって、酵素標識を検出することができる。
【0113】
更なる別の態様では、無細胞アッセイが提供され、そこではGM−CSF受容体ポリペプチド又はその生物活性部分がテスト化合物と接触させられ、テスト化合物のポリペプチドと結合する能力を評価する。
【0114】
2つの分子間の相互作用も、例えば、蛍光エネルギー移動法(FRET)を用いて、検出することができる(例えば、Lakowiczらの米国特許第5,631,169号、 Stavrianopoulosらの米国特許第4,868,103号を参照されたい)。第1の「ドナー」分子上の蛍光標識は、その放出蛍光エネルギーが第2の「アクセプター」分子上の蛍光標識を吸収し、順次、吸収されたエネルギーによって蛍光を発生できるようなものが選ばれる。また、「ドナー」タンパク質分子は、トリプトファン残基の固有の蛍光エネルギーのみを利用できる。標識は、「アクセプター」分子の標識が「ドナー」のそれと差別化できるように、異なる光波長を放出するものが選ばれる。2つの標識間のエネルギー移動の効率が、分子を隔てている距離に関連しているので、分子間の空間的な位置関係を判断することができる。分子間で結合が生じる場合には、アッセイ中の「アクセプター」分子標識の蛍光放出が最大となる。FET結合の事象は、当該技術分野で公知の標準的な蛍光分析検出方法によって(例えば、蛍光光度計を用いて)容易に測定することができる
【0115】
別の態様では、テスト化合物がGM−CSF受容体に結合する能力を測定することは、リアルタイム生体分子の相互作用分析(Biomolecular Interaction Analysis:BIA)を用いて、実施できる(例えば、「Sjolander, S. and Urbaniczky, C., Anal. Chem. 63:2338-2345, 1991」及び「Szabo et al., Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699-705, 1995」を参照されたい)。「表面プラズモン共鳴」又は「BIA」は、反応体(例えば、BIA核)の何れも標識せずに、リアルタイムで生体特異的な相互作用を検出する。表面結合時の質量変化(結合事象の表示)は、表面付近の光の屈折率の変化(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)をもたらし、生体分子間のリアルタイムの反応を示唆するものとして使用できる、検出可能なシグナルが得られる。
【0116】
キメラポリペプチド、又は候補化合物若しくはそのGM−CSF受容体標的部位の何れかを、タンパク質の片方又は両方の非複合体から複合体の分離を促進するため、さらに自動分析に対応させるために、固定化することが望ましい。候補化合物又はキメラポリペプチドのGM−CSF受容体への結合、又は候補化合物の存在下又は非存在下におけるテスト化合物又はキメラポリペプチドと標的分子の相互作用は、反応体を収容するのに適している何れの容器の中でも実施できる。このような容器の例は、マイクロタイタープレート、試験管、及び微小遠心管を含む。一態様では、片方又は両方のタンパク質が、マトリックスに結合できるようなドメインを付加している融合タンパク質を提供できる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/GM−CSF−Bcl−XLキメラポリペプチド融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, MO)又はグルタチオン誘導化されたマイクロタイタープレート上に吸着させることができ、次いでこれをテスト化合物、又はテスト化合物とGST標識のGM−CSF−Bcl−XLキメラポリペプチドを含有するサンプルと組み合わせて、混合物を複合体形成を誘導する条件下(例えば、塩及びpHのための生理学的条件で)培養する。培養に引き続き、ビーズ又はマクロタイターのウェルを洗浄して、全ての非結合成分を除去し、ビーズの場合はマトリックスを固定化して、複合体を例えば、上記のように直接的に又は間接的に測定する。
【0117】
キメラポリペプチド又はテスト化合物、及びGM−CSF受容体をマトリックス上に固定化するその他の技術には、ビオチン及びストレプトアビジンの抱合体の使用を含む。例えば、ビオチン化したタンパク質は、当該技術分野で公知の技術(例えば、ビオチン化キット(Pierce Chemicals, Rockford, IL))を用いて、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製でき、そしてストレプトアビジンでコートした96ウェルのプレートのウェルに固定化する(Pierce Chemical)。
【0118】
アッセイを実施するために、非固定化成分を、固定化成分を含有する塗布表面に添加する。反応が完了した後、形成した複合体の全てが固体表面上に固定化されて保持される条件下で、未反応成分を(例えば、洗浄して)除去する。固体表面に固定化されている複合体の検出は、多数の方法で実施できる。非固定化成分が事前に標識されている場合は、表面の固定化標識の検出が、複合体が形成されたことを示す。非固定化成分が、事前に標識されていない場合は、表面に固定化された複合体を検出するために、間接的標識が用いられる(例えば、固体化成分に特異的な標識抗体(この抗体は、順次、例えば標識の抗IG抗体で直接的に又は間接的に標識化できる)を用いる)。
【0119】
一態様では、抗GM−CSF受容体抗体が、GM−CSF受容体のエピトープと反応するものとして同定される。GM−CSF受容体抗体の受容体への結合を検出する方法は、当該技術分野で公知であり、酵素結合免疫アッセイ(ELISA)のような、複合体の免疫検出を含む。所望により、GM−CSF受容体に結合する抗体を、次いで受容体を活性化する能力についてアッセイする。GM−CSF受容体に選択的に結合する抗体は、本発明のBcl−XLタンパク質と融合させ、そして本明細書に記載のように、細胞の生存を高める活性についてアッセイすることができる。
【0120】
また、キメラポリペプチド又は候補化合物について無細胞アッセイを、液相で実施することができる。このようなアッセイでは、分画遠心法(例えば、「Rivas, G., and Minton, A.P., Trends Biochem Sci 18:284-7, 1993」を参照されたい)、クロマトグラフィー(ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー)、電気泳動及び免疫沈降(例えば、「Ausubel, F. et al., eds. (1999) Current Protocols in Molecular Biology, J. Wiley: New York」を参照されたい)を含むが、これらに限定されるものではない、多数の標準的な技術の何れかによって、反応生成物を未反応成分から分離する。このような樹脂及びクロマトグラフィーの技術は、当業者にとって公知である(例えば、「Heegaard, N.H., J Mol Recognit 11:141-8, 1998」、「Hage D.S., and Tweed, S.A., J Chromatogr B Biomed Sci Appl.699:499-525, 1997」を参照されたい)。更に、蛍光エネルギー移動法も、溶液から複合体を更に精製せずに、結合を検出するために、本明細書に記載のようにして、容易に利用することができる。好ましくは、無細胞アッセイでは、例えば膜成分又は合成膜成分を含有することによって、GM−CSF受容体の構造が保持される。
【0121】
本発明の方法(又はその他の適当な方法)で単離された、化合物、キメラポリペプチド、GM−CSF受容体抗体及びその他のGM−CSF受容体リガンドは、所望により、更に精製(例えば、高速液体クロマトグラフィーによって)することができる。一態様では、これらの候補化合物を、Bcl−XLポリペプチド又はその断片と融合させて、その融合物を、細胞の生存を促進する又はアポトーシスのようなリスクのある細胞(例えば、本明細書に記載されているような)におけるアポトーシスを減少させる能力についてテストすることができる。このアプローチで単離された化合物は、例えば、対象における過剰な細胞死によって特徴付けられる疾患又は障害の何れかを治療するための治療剤としても用いることができる。「対象」は一般に、ヒト又は獣医の患者(例えば、マウス又はラットのような齧歯類、ネコ、イヌ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、又はその他の家畜)のような、治療を必要とする哺乳動物である。
【0122】
親和性定数10mM以下で本発明のポリペプチドと結合するものとして同定される化合物は、本発明において特に有用であると考えられる。また、インビボでのタンパク質相互作用検出システムの何れか、例えば、ツーハイブリッドアッセイの何れかを、用いることができる。
【0123】
別の態様では、候補化合物は、GM−CSF−Bcl−XLキメラポリペプチドの細胞の生存を促進する活性を増強する能力についてテストされる。GM−CSF−Bcl−XLキメラポリペプチドの細胞の生存を促進する活性は、標準的な方法の何れかを用いてアッセイされる。
【0124】
本明細書に挙げられているDNA配列の各々は、細胞の生存を促進するキメラポリペプチドのような、治療化合物の発見及び開発においても、用いることができる。
【0125】
本発明の低分子化合物は、好ましくは2,000ダルトンより下の、より好ましくは300〜1,000ダルトンの範囲、そして最も好ましくは400〜700ダルトンの分子量を有している。これらの低分子化合物は、有機分子であることが好ましい。
【0126】
テスト化合物及び抽出物
一般に、本発明のキメラポリペプチド(例えば、GM−CSF−Bcl−xL)の活性を増強できる化合物は、天然物又は合成(又は半合成)抽出物の両方のライブラリー又は化学物質ライブラリーから、又はポリペプチド又は核酸ライブラリーから、当該技術分野において公知の方法に従って、同定することができる。薬剤の発見及び開発分野の当業者は、抽出物又は化合物の正確な供給源が本発明のスクリーニング方法にとって重要ではないということを理解するであろう。スクリーニングに用いられる化合物は、公知の化合物(例えば、その他の疾患又は障害に用いられている公知の治療薬)を含んでいてもよい。また、殆ど全ての未知の化学抽出物及び化合物は、本明細書に記載の方法を用いてスクリーニングすることができる。このような抽出物又は化合物の例には、これらに限定されないが、植物、真菌、原核生物、又は動物に基づく抽出物、発酵培養液及び合成化合物、更に現存化合物の修飾体も含まれる。
【0127】
これらに限定されないが、糖、油脂及び核酸ベースの化合物を含む、多くの化学化合物の何れかを、無作為又は有向の合成(例えば、半合成又は全合成)を生成するために、多くの方法がまた利用可能である。合成化合物のライブラリーは、「Brandon Associates (Merrimack, N.H.)」及び「Aldrich Chemical (Milwaukee, Wis.)」から市販されている。また、候補化合物として用いられる化学化合物は、容易に入手可能な出発物質から当業者に公知の標準的な合成技術及び手順を用いて合成することができる。本明細書に記載されている方法によって同定される化合物の合成に有用な、合成化学変換及び保護基の手順(保護及び脱保護)は、当該技術分野において公知であり、例えば、「R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989)」、「T.W. Green and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed., John Wiley and Sons (1991)」、「L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synteheis, John Wiley and Sons (1994)」及び「L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)」、更にその続版に記載されているようなものを含む。
【0128】
また、細菌、真菌、植物及び動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーは、「Biotics (Sussex, UK)」、「Xenova (Slough, UK)」、「Harbor Branch Oceangraphics Institute (Ft. Pierce,Fla)」及び「PharmaMar, U.S.A. (Cambridge, Mass.)」を含む多くの供給源から市販されている。さらに、天然及び合成産生物ライブラリーは、必要により、当該技術分野で公知の方法、例えば標準的な抽出及び分画方法に従って生成される。分子ライブラリーの合成方法の例は、文献中に、例えば、「DeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909, 1993」、「Erb et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422, 1994」、「Zuckermann et al., J. Med. Chem. 37:2678, 1994」、「Cho et al., Science 261:1303, 1993」、「Carrell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059, 1994」、「 Carell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061, 1994」及び「Gallop et al., J. Med. Chem. 37:1233, 1994」中に見出すことができる。さらに、必要により、ライブラリー及び化合物の何れかは、標準的な化学的、物理的又は生物化学的な方法を用いて容易に修飾される。
【0129】
化合物のライブラリーを溶液中(例えば、「Houghten, Biotechniques 13:412-421, 1992」)、又はビーズ上(Lam, Nature 354:82-84, 1991)、チップ上(Fodor, Nature 364:555-556,1993)、細菌上(Ladnerの米国特許第5,223,409号)、胞子上(Ladnerの米国特許第5,223,409号)、プラスミド上(Cull et al., Proc Natl Acad Sci USA 89:1865-1869, 1992)又はファージ上(Scott and Smith, Science 249:386-390, 1990; Devlin, Science 249:404-406, 1990; Cwirla et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6378-6382, 1990; Felici, J. Mol. Biol. 222:301-310, 1990; Ladner supra)に存在させることができる。
【0130】
更に、薬剤の発見及び開発分野の当業者は、既知物質同定(dereplication)(例えば分類上の、生物学上の、及び化学上の同定又はこれらの何れかの組み合わせ)、複製の欠失又は活性が既知の物質を反復する方法が可能な限り利用できるということを、容易に理解されるであろう。
【0131】
粗製の抽出物は、本発明のキメラポリペプチドの活性を増加すること、又はGM−CSF受容体に結合することが見い出されたら、観測された効果に応答する化学成分を単離するために、陽性主導の抽出物の更なる分別が必要である。従って、抽出、分別及び精製工程のゴールは、本発明のキメラポリペプチド(例えば、GM−CSF−Bcl−xL)の活性を増強する粗製抽出物中に存在する化学物質の、注意深い特定化及び同定することである。このような外来の抽出物を分別及び精製する方法は、当該技術分野において公知である。必要に応じて、化合物は、細胞死に関連する疾患又は障害の何れかを治療する治療薬として有用であることが示される。
【0132】
細胞の生存又は増殖を高める治療
本発明のキメラポリペプチド及び関連化合物は、GM−CSF受容体を発現する実質上全ての種類の細胞の生存又は増殖を高めるのに有用である。GM−CSF受容体を発現する細胞が細胞死のリスクがある場合には、本明細書に記載されているキメラポリペプチドの投与が、細胞死に関連する疾患又は障害を防止又は治療するのに有用である。一態様では、細胞死は、化学療法剤のような、薬剤の毒性と関連している。例えば、本発明のキメラポリペプチドは、アポトーシス促進性の事象(例えば、化学療法、放射線照射、虚血性障害又は神経変性疾患)に応答するアポトーシスを受けるリスクのある細胞型の細胞死(例えば、アポトーシス細胞死)を防止又は治療する(例えば、改善する、安定にする、回復する又は遅延させる)のに有用である。一態様では、アポトーシスを受けるリスクのある細胞は、化学療法に応答するアポトーシスのリスクがある単球又は造血細胞型である。その他の態様では、本発明の方法及び組成物は、脳卒中、虚血性障害又は再灌流のような低酸素に関連する細胞死の治療又は防止に有用である。その他の態様では、この方法及び組成物は、細胞死を減少させるばかりではなく、細胞増殖を促進する。
【0133】
本発明のキメラポリペプチド及び関連する組成物は、インビトロ及びインビボの細胞の生存又は増殖を高めるのにも有用である。例えば、キメラポリペプチドは、幹細胞治療を受けている患者の治療のために、又は移植細胞、組織又は臓器の生存を高めることが望ましい患者の何れかに投与することができる。その他の態様では、本発明の方法及び組成物は、培養細胞、組織又は器官(特に細胞が、幹細胞、又は幹細胞を含有する組織又は器官である)のエキソビボ増殖に有用である。例えば、本発明は、血液又は神経幹細胞又は樹枝状細胞を含有する培養物の増殖を提供する。
【0134】
医薬組成物
本発明の組成物(例えば、キメラポリペプチド及びそれらをコードする核酸分子)は、水、食塩水、ブドウ糖水溶液、グリセロール又はエタノールのような、薬学的に許容される賦形剤に存在させて投与することができる。組成物は、その他の薬剤、医薬品、アジュバント、担体、及び湿潤又は乳化剤及びpH緩衝剤のような補助剤も含有することができる。本明細書に組み込まれている「Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 17th edition, Mack Publishing Company」のような標準的なテキストを、過度な実験を行わずに投与に適した組成物及び製剤を調製するために、参考にすることができる。適切な用量もこのテキスト及び本明細書で引用されている文献をベースにすることができる。適切な用量の投与の決定は、本明細書に記載のパラメーターが与えられた当業者の技術範囲内である。
【0135】
「治療有効量」は、有益又は望ましい臨床結果をもたらすのに十分な量である。治療有効量は、1回又はそれ以上の用量で投与することができる。治療面で言うと、有効量は、細胞死によって特徴付けられる疾患を軽くし、改善し、安定化し、回復し又は進行を遅延させるか、又はアポトーシスの病理学的結末を低減するのに十分である量である。別の態様では、有効量は、望ましい細胞型(例えば、神経細胞又は細胞死のリスクがある細胞)の増殖又は生育を促進するのに十分な量である。治療有効量は、一回又は一連の投与で与えることができる。有効量は一般に、ケースバイケースの原則で医者により決定され、それは当業者の技術範囲内である。
【0136】
一般に、インビボ治療又は診断のための用量は様々である。適切な用量を決定するときには、いくつもの因子が考慮に入れられる。これらの因子には、患者の年齢、性及び体重、治療される症状、症状の重症度、及び投与されている抗体の形態が含まれる。
【0137】
キメラポリペプチド組成物の用量は、約0.01mg/m〜約500mg/m、好ましくは約0.1mg/m〜約200mg/m、最も好ましくは約0.1mg/m〜約10mg/mに変えることができる。また、キメラポリペプチド組成物の用量は、1日当たり約0.01〜約1000mg/kgに変えることができる。約50〜約2000mg/kgが適切であろうと予想される。各種の態様では、約0.5〜約100mg/体重kgの投与範囲が有用であり、又は範囲の最低が、0.1mg/kg/日〜90mg/kg/日の範囲の何れかであり、そして範囲の最高が、1mg/kg/日〜100mg/kg/日の範囲の何れかである(例えば、0.5mg/kg/日及び5mg/kg/日、25mg/kg/日及び75mg/kg/日)。
【0138】
投与は、病気の症状の軽減のような、望ましい、測定可能なパラメーターが検出されるまで、低頻度で、又は定期的に週に1回の頻度で行うことができる。次いで投与を、必要に応じて、2週に1回又は月に1回の頻度に減らすことができる。
【0139】
本発明の組成物は、組成物の形態にふさわしい方法で投与される。利用できる投与経路は、単独又は腫瘍破壊の抗体との併用で、皮下、筋肉内、腹腔内、皮内、経口、経鼻、肺内(すなわち、エアロゾルで)、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、腔内、髄腔内又は経皮投与を含む。キメラポリペプチドの治療用組成物は、しばしば注射又は段階的灌流によって投与される。
【0140】
経口、経鼻又は局所投与用の組成物は、錠剤、カプセル剤、粉剤、液剤及び懸濁剤を含む、固体、半固体又は液体の形態で供給することができる。注射用の組成物は、液体溶液又はエマルジョンのような懸濁剤、又は注射の前に液体に溶解又は懸濁するのに適した固体形態で、供給することができる。気道を介して投与するための好ましい組成物は、適当なエアロゾル化器具と一緒に用いる場合に、固体、粉末又は液体エアロゾルを供給するものである。必須ではないが、好ましい組成物は、正確な量の投与に適している単位投与形態で供給される。持続放出性又は徐放性形態も本発明で意図されており、それによって比較的一定なレベルの活性化合物が、長期間にわたって供給される。
【0141】
投与のその他の方法は、例えば、直接アポトーシス組織中に、細胞の生育が要求されている部位に、又は細胞、組織又は器官が細胞死のリスクがある部位に、直接注射することによる投与である。また、キメラポリペプチド又は関連化合物は、全身投与される。化学療法剤と組み合わせてキメラポリペプチドを投与することを包含する併用療法については、組成物を投与する順序はどちらでもよい。同時投与も、想定される。
【0142】
本発明の方法は、中枢神経系(CNS)の細胞の生存又は増殖を高めることにおいて使用するのに特に適している。送達する部位が脳である場合は、治療薬が脳に送達可能でなければならない。脳血液関門は、多くの治療薬が通常の血液循環から脳及び脊髄へ取り込まれるのを制限している。脳血液関門を通過する分子は、2つの主要なメカニズムである、自由拡散及び促進された輸送を用いている。脳血液関門の存在により、投与された薬剤がCNS中で有効な濃度になるためには、特殊な薬剤輸送方法を用いることも必要であろう。治療薬のCNSへの送達は、多くの方法で達成することができる。
【0143】
一つの方法は、脳神経外科の技術によることである。例えば、治療薬剤は、脳室内、病変内又は髄腔内注射のように、CNSに直接物理的に導入することによって、送達できる。脳室内注入は、例えばオマヤ槽(Ommaya reservoir)のような容器に取り付けた、脳室内カテーテルによって容易に実施することができる。導入方法は、充電式又は生物分解性のデバイスによってももたらされる。その他のアプローチは、脳血液関門の透過性を増加する物質による、脳血液関門の破壊である。例には、マンニトールのような拡散性の低い試薬の動脈内注入、エトポシドのような脳血管透過性を増加する薬剤、ロイコトリエンのような血管作用薬、又は慣例のカテーテルによる増大した送達(CED)の動脈内注入が含まれる。更に、組成物を、治療を必要とする領域に局所的に投与することが望ましく、これは例えば、手術中の局所注入によって、注射によって、カテーテル法によって、又は移植片の手段によって達成され、この移植片は、シラスティック膜又は繊維のような膜を含む、多孔性、非多孔性又はゲル状物質である。適切なこのような膜は、Guilford Pharmaceuticals Inc.によって供給されているGliadel(登録商標)である。
【0144】
その他の送達システムは、時間放出、持続放出又は徐放送達のシステムを含むことができる。このようなシステムは、本発明の化合物の反復投与を避けることができ、対象及び医師にとって利便性が増す。多種の放出送達システムが入手でき、当業者にとって公知である。これらは、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号;ヨーロッパ特許第58,481号)、ポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリステラミド、ポリオルソエステル、ポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(ヨーロッパ特許第133,988号)のようなポリヒドロキシ酪酸、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタミン酸の共重合体(Sidman, K.R. et al., Biopolymers 22:547-556)、ポリ(2−ヒドロキシエチル メタアクリレート)又はエチレン酢酸ビニル(Langer, R. et al., J. Biomed. Mater. Res. 15:267-277; Langer, R. Chem. Tech. 12:98-105)、及びポリアンハイドライドのような、ポリマーベースのシステムを含有する。
【0145】
徐放組成物のその他の例は、成形した品物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態で半透過性ポリマーマトリックスを含む。送達システムは、コレステロール、コレステロールエステルのようなステロール類、及びモノ−、ジ−及びトリ−グリセリドのような脂肪酸又は中性脂肪を含む脂質類;生物学的に誘導された生物吸収性ヒドロゲル(すなわち、キチンヒドロゲル又はキトサンヒドロゲル)のようなヒドロゲル放出システム;シラスティックシステム;ペプチドベースのシステム;ワックス被覆;通常の結合材及び賦形剤を用いる圧縮錠;部分融合移植片;及びその他である、非ポリマーベースのシステムも含む。特定の例は、これらに限定されないが、(a)米国特許第4,452,775号、同第4,667,014号、同第4,748,034号及び同第5,239,660号に記載のような、薬剤がマトリックス中に含まれるような浸食性のシステム、及び(b)米国特許第3,832,253号及び同第3,854,480号に記載のような、活性成分が制御された速度でポリマーから浸透する拡散システムを含む。
【0146】
本発明の方法及び組成物と使用できるその他のタイプの送達システムは、コロイド分散システムである。コロイド分散システムは、水中油性型乳剤、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含む脂質ベースのシステムを含む。リポソームは、人工膜の容器であって、インビボ又はインビトロで送達ベクターとして有用である。0.2〜4.0μmのサイズ幅がある、大きな単層の容器(LUV)は、大きな巨大分子を水溶液の内面にカプセル化でき、生物学的に活性な形態で細胞に送達できる(Fraley, R., and Papahadjopoulos, D., Trends Biochem. Sci. 6:77-80)。
【0147】
リポソームは、リポソームをモノクローナル抗体、糖、糖脂質又はタンパク質のような特定のリガンドと結合させることによって、特定の組織に狙いを絞ることができる。リポソームは、Gibco BRLから、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)及びLIPOFECTACE(登録商標)として、市販されており、これはN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)−プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)及びジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド(DDAB)のような、陽イオン性脂質の形態である。リポソームの作成法は、当該技術分野で公知であり、多くの文献、例えば、ドイツ特許第DE3,218,121号、「Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 82:3688-3692(1985)」、「Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 77:4030-4034(1980)」、ヨーロッパ特許第EP52,322号、同第EP36,676号、同第EP88,046号、同第EP143,949号、同第EP142,641号、日本特許出願83−118008号、米国特許第4,485,045号、同第4,544,545号及びヨーロッパ特許第EP102,324号に記載されている。リポソームは、「Gregoriadis, G. Trends Biotechnol., 3:235-241」によっても概説されている。
【0148】
賦形剤のその他のタイプは、哺乳類の受容者に移植するのに適している、生体適合性のあるマイクロ粒子又は移植片である。本発明の方法で有用な生体分解性の移植片は、PCT国際特許出願第PCT/US/03307号(公開第WO95/24929号、標題「ポリマー遺伝子送達システム」)に記載されている。第PCT/US0307号は、適切なプロモーターで制御されている外来遺伝子を入れるための、生体適合性の、好ましくは生体分解性のポリマーマトリックスを記載している。ポリマーマトリックスは、対象内での、外来遺伝子又は遺伝子産物の持続放出を達成するために使用することができる。
【0149】
ポリマーマトリックスは、ミクロスフェア(ここでは、薬剤がポリマーマトリックス中に拡散する)又はマイクロカプセル(ここでは、薬剤がポリマーシェルの内部に貯蔵される)のようマイクロ粒子の形態であることが好ましい。薬剤を含有する前記ポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。薬剤を含有するためのポリマーマトリックスのその他の形態には、フィルム、被覆物、ゲル、移植片、及びステントが含まれる。ポリマーマトリックスデバイスの大きさ及び組成は、マトリックスが導入される組織において有益な放出速度をもたらすように選択される。ポリマーマトリックスの大きさは更に、用いられる送達方法に従って選択される。エアロゾル投与法を用いるときは、ポリマーマトリックス及び組成物を界面活性剤成分中に取り込ませる。ポリマーマトリックス組成物は、有利な分解速度を有すること、そして更に移送効率を増加させるように生体接着性の材料で形成されることの両方を有するように選択される。マトリックス組成物は、分解せずに、長期間にわたる拡散によって放出するように選択することができる。送達システムは、局所的、部位特定送達に適している生体適合性のミクロスフェアであってもよい。このようなミクロスフェアは、「Chickering, D.E., et al., Biotechnol. Bioeng., 52:96-101」及び「Mathiowitz, E., et al., Nature 386:410-414」に開示されている。
【0150】
非生体分解性及び生体分解性のポリマーマトリックスの両方が、本発明の組成物を対象に移送するために用いることができる。このようなポリマーは、天然又は合成のポリマーである。ポリマーは、放出が望まれる期間(一般に、数時間から1年又はそれ以上の範囲で)に基づいて選択される。一般に、数時間と3〜12ヶ月の範囲の期間にわたる放出が最も望ましい。ポリマーは、その重量の最大90%まで吸水できるヒドロゲルの形態であってもよく、そしてさらに、多価イオン又はその他のポリマーと架橋していてもよい。
【0151】
生物分解性の送達システムを形成するのに用いることができる合成ポリマーの例は、ポリアミド、ポリカルボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びその共重合体、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル及びメタクリルエステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、乳酸とグリコール酸のポリマー、ポリアンハイドライド、ポリ(オルト)エステル、ポリ(酪酸)、ポリ(バレリアン酸)及びポリ(ラクチド−コカプロラクトン)を含む。そしてアルギネート及びデキストランとセルロースを包含するその他の多糖類、コラーゲン、それらの化学誘導体(置換、化学基、例えばアルキル、アルキレンの付加、水酸化、酸化、及び当業者が通常実施しているその他の修飾)、アルブミン及びその他の親水性タンパク質、ゼイン、他のプロラミン及びその他の疎水性タンパク質、それらの共重合体及び混合物のような天然ポリマーも含まれる。一般に、これらの物質は、酵素的な加水分解、又はインビボで水に曝露されて表面又はバルクの浸食の何れかで分解される。
【0152】
本明細書に開示されているキメラポリペプチド(例えば、GM−CSF−BclxL)を、1個又はそれ以上の化学部位をタンパク質部位に連結させることによって、誘導体化することができる。化学的に修飾された誘導体は、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、静脈内、経口、経鼻、直腸、口腔、舌下、肺、局所、経皮又はその他の投与経路用に、更に製剤化することができる。生物学的に活性なタンパク質の化学修飾は、治療用タンパク質の安定性及び循環時間の増加、及び免疫原性の低減のように、ある特定の状況下で付加的な利益をもたらすことが見い出されている。誘導化に適している化学的な部位は、水溶性ポリマーの中から選ぶことができる。連結されるタンパク質が、生理的な環境のような、水性環境において沈殿しないように、選ばれるポリマーは水溶性でなければならない。最終の生成調製物が治療に使用されるためには、このポリマーが薬学的に許容されるものであることが好ましい。当業者は、ポリマー/ポリペプチド接合体が治療的に用いられるか否か、そしてそうならば、望ましい用量、循環時間、タンパク分解に対する耐性及びその他の事項に対する配慮に基づいて、望ましいポリマーを選ぶことができる。
【0153】
水溶性のポリマーは、例えば、ポリエチレングリコール、エチレグリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキサン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(単一の共重合体又はランダム共重合体の何れか)、デキストラン又はポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、及びポリビニルアルコールよりなる群から選ぶことができる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水に対する安定性により、製造に利益をもたらすことができる。
【0154】
ポリマーは、どのような分子量であってもよく、そして分枝していても分枝していなくてもよい。一態様では、ポリマーは、取り扱い及び製造が容易であるので、約2kDa〜約100kDaの範囲の好ましい分子量を有するポリエチレングリコールである(「約」という用語は、ポリエチレングリコールの製造において、ある分子が規定された分子量よりも多い、ある場合は少ない重さであることを示している)。望ましい治療の側面(例えば、望まれる徐放の期間、もしあるなら生物活性の治療効果、取り扱いの容易性、抗原性の程度又は欠如、及びポリエチレングリコールの治療タンパク質又は類縁体に対するその他の知られている影響)に基づいて、その他のサイズのものを用いることができる。
【0155】
ポリエチレングリコール分子(又はその他の化学成分)は、タンパク質の機能的な活性に対する効果を考慮してタンパク質に結合させなければならない。一例では、ポリエチレングリコールは、遊離のアミノ基又はカルボキシル基のような、反応基を介してアミノ酸残基と共有結合する。反応基は、活性化されたポリエチレングリコールに結合できるようなものである。遊離のアミノ基を有するアミノ酸残基は、リジン残基及びN−末端アミノ酸残基を含むことができ、遊離のカルボキシル基を有するものは、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基及びC−末端アミノ酸残基を含むことができる。スルフヒドリル基もポリエチレングリコール分子(複数を含む)を連結させるための反応基として用いることができる。治療目的に好ましいのは、N−末端又はリジンに連結するような、アミノ基で連結することである。GM−CSF受容体結合に重要な残基で連結することは、避けなければならない。
【0156】
その他の態様では、本発明の医薬組成物は、GM−CSF受容体を誘導するサイトカインを更に含む。このようなサイトカインは、これらに限定されないが、IL−1β及びTNF−αを含む。このような組成物は、インビボ(例えば、アポトーシスを調節するために対象に投与するため)、又はインビトロ(例えば、インビトロで細胞のアポトーシスを調節するため)で用いるのに適している。
【0157】
GM−CSF−Bcl−XL発現の治療
GM−CSF−Bcl−XLキメラポリペプチド又はその断片のインビボ又はインビトロでの発現は、細胞死を受けるリスクのある細胞の生存又は増殖を促進するための、その他の治療的なアプローチである。本発明のキメラポリペプチドをコードする核酸分子を、アポトーシスのリスクがある対象の細胞に送達することができる。細胞におけるキメラポリペプチドの発現は、その細胞又は標的細胞若しくは組織の増殖を、促進し、アポトーシスを防止し、又はアポトーシスのリスクを減少させる。核酸分子は、対象の細胞に、治療有効レベルのキメラポリペプチドを産生できるように取り込まれる形態で送達されなければならない。形質転換ウィルス(例えば、レトロウィルス、アデノウィルス及びアデノ関連ウィルス)ベクターは、特にその感染の高効率性、及び安定な組み込み及び発現によって、体細胞遺伝子治療に使用することができる(例えば、「Cayouette et al., Human Gene Therapy 8:423-430, 1997」、「Kido et al., Current Eye Research 15:833-844, 1996」、「Bloomer et al., Journal of Virology 71:6641-6649, 1997」、「Naldini et al., Science 272:263-267, 1996」及び「Miyoshi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:10319, 1997」を参照されたい)。
【0158】
例えば、キメラタンパク質、変異体又はその断片をコードするポリヌクレオチドは、レトロウィルスベクター中にクローンして、内在性プロモーター、レトロウィルスの末端反復配列、又は対象とする標的細胞に対して特異的なプロモーターから発現を促進することができる。使用できるその他のウィルスベクターは、例えば、ワクチナウィルス、ウシパピローマウィルス、又はエプスタイン−バール(Epstein-Barr)ウィルスのようなヘルペスウィルスを含む(例えば、「Miller, Human Gene Therapy 15-14, 1990」、「Friedman, Science 244:1275-1281, 1989」、「Eglitis et al., Bio Techniques 6:608-614,1988」、「Tolstoshev et al., Current Opinion in Biotechnology 1:55-61, 1990」、「Sharp, The Lancet 337:1277-1278, 1991; Cornetta et al., Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311-322, 1987」、「Anderson, Science 226:401-409,1984」、「Moen, Blood Cells 17:407-416, 1991」、「Miller et al., Biotechnology 7:980-990, 1989」、「Le Gal La Salle et al., Science 259:988-990, 1993」及び「Johnson, Chest 107:77S-83S, 1995」のベクターも参照されたい)。レトロウィルスベクターは、特によく開発されていて、臨床で用いられている(「Rosenberg et al., N. Engl. J. Med. 323:370, 1990」及びAndersonらの米国特許第5,399,346号)。最も好ましくは、ウイルスベクターは、キメラポリペプチドを標的細胞、組織、又は全身に投与するために用いる。
【0159】
非ウィルスのアプローチも、細胞死の調節を必要とする細胞(例えば、患者の細胞)に対する治療の導入に用いることができる。例えば、核酸分子は、リポフェクチン(Feigner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:7413, 1987; Ono et al., Neuroscience Letters 17:259, 1990; Brigham et al., Am. J. Med. Sci. 298:278, 1989: Staubinger et al., Methods in Enzymology 101:512, 1983)、アシアロオロソムコイド−ポリリジン接合体(Wu et al., Journal of Biological Chemistry 263:14621, 1988; Wu et al., Journal of Biological Chemistry 264:16985, 1989)の存在下、又は手術条件下でのミクロ注入(Wolff et al., Science 247:1465, 1990)によって核酸分子を投与することによって、細胞内に導入することができる。核酸を、リポソーム及びプロタミンと組み合わせて投与することが好ましい。
【0160】
遺伝子の導入は、インビトロでのトランスフェクションを含む非ウィルスの手法を用いても実施できる。このような方法は、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、及びプロトプラスト融合の使用を含む。リポソームも、DNAを細胞に送達するために有益である可能性がある。患者の疾患に冒された組織へのキメラポリペプチドの移植も、正常の核酸をエキソビボで培養可能な細胞型(例えば、自己又は異種の初代細胞又はその継代細胞)に転移して、その後にその細胞(又はその子孫)を標的組織に注入することにより達成できる。
【0161】
ポリヌクレオチド治療法の利用でのcDNAの発現は、適切なプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウィルス(CMV)、サルウィルス40(SV40)又はメタロチオネインプロモーター)の何れかから指示され、そして適切な哺乳動物の調節因子によって調節することができる。例えば、必要により、特定の細胞型内で遺伝子発現を選択的に指示することが知られているエンハンサーを、核酸の発現を指示するために用いることができる。用いられるエンハンサーには、限定することなく、組織又は細胞の特異的なエンハンサーであると特定化されているものを含むことができる。また、遺伝子クローンを治療用構築物として用いる場合には、調節は、同種の調節配列、所望により、上記のプロモーター又は調節因子の何れかを含む異種源由来の調節配列を介在させることができる。
【0162】
本発明に含まれる別の治療アプローチは、組み換えキメラGM−CSF−Bcl−XLタンパク質、変異体又はその断片のような組み換え治療薬を、潜在的に又は現に疾患に冒されている組織の部位に直接、又は全身に投与すること(例えば、通常の組み換えタンパク質の投与技術の何れかで)を含む。投与されるタンパク質の用量は、個々の患者のサイズ及び健康状態を含む、多くの因子によって決まる。特定の対象に対しては、個々の必要性及び組成物を投与し、投与を管理するヒトの専門的判断に従って、特別な用量計画を調整すべきであろう。
【0163】
細胞の生存能力をアッセイする方法
細胞死のリスクがある細胞の生存を高める、キメラポリペプチド、ポリペプチド類縁体及び関連化合物は、本発明の方法における治療剤として有用である。細胞の生育又は生存率を測定するためのアッセイは、当該技術分野において公知であり、本明細書に記載されている。「Crouch et al. (J. Immunol. Meth. 160, 81-8)」、「Kangas et al. (Med. Biol. 62, 338-43, 1984)」、「Lundin et al., (Meth. Enzymol. 133, 27-42, 1986)」、「Petty et al. (Comparison of J. Biolum Chemilum. 10, 29-34, 1995)」及び「Cree et al. (AntiCancer Drugs 6:398-404, 1995)」も参照されたい。細胞の生存率は、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾリル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(Barltrop, Bioorg. & Med. Chem. Lett. 1:611, 1991; Cory et al., Cancer Comm. 3, 207-12, 1991; Paull J. Heterocyclic Chem. 25, 911, 1988)を含む多くの方法を用いてアッセイすることができる。細胞生存能のアッセイも、商業的に利用可能である。これらのアッセイは、これらに限定されないが、ATPを検出して培地中の健常細胞又は細胞を定量するためにルシフェラーゼ技術を用いる、CELLTITER−GLO(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay (Promega)、及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)細胞傷害性アッセイである、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を包含する。
【0164】
細胞死を減少させる(例えば、アポトーシスを減少させることにより)キメラポリペプチド及び候補化合物も、本発明の方法において有用である。細胞のアポトーシスを測定するアッセイは、当業者にとって公知である。アポトーシス細胞は、光学顕微鏡検査を用いて明確に観察できるクロマチン凝縮、細胞収縮及び膜の小疱形成を含む、特徴的な形態学的変化によって特徴付けられる。アポトーシスの生化学的な特徴は、DNAの分解、特定部位におけるタンパク質の開裂、ミトコンドリア膜浸透性の増加、及び細胞膜表面上のホスファチジルリジンの出現を含む。アポトーシスのアッセイは、当該技術分野において公知である。典型的なアッセイは、TUNEL(Terminal deoxynucleotidyl Transferase Biotin-dUTP Nick End Labeling)アッセイ、カスパーゼ活性(特に、カスパーゼ−3)アッセイ、及びfasリガンド及びアネキシンVのアッセイを含む。アポトーシスを検出するための市販製品は、例えば、Apo−ONE(登録商標)Homogeneous Caspase−3/7Assay、FragEL TUNEL kit(ONCOGENE RESEARCH PRODUCTS, San Diego, CA)、ApoBrdU DNA Fragmentation Assay(BIOVISION, Mountain View, CA)、 及びQuick Apoptotic DNA Ladder Detection kit(BIOVISION, Mountain View, CA)を含む。
【0165】
樹枝状細胞ワクチン
本発明は、治療又は予防のワクチンの産生中に、樹枝状細胞のアポトーシスを抑制又は増殖を促進する方法も提供する。一般に、ワクチンは、ワクチンの接種を必要とする対象由来の細胞(例えば、樹枝状細胞)を含んでいる。一般に、この細胞は、血液サンプル又は骨髄サンプルのような対象の生体サンプルから得られる。好ましくは、樹枝状細胞又は樹枝状幹細胞を対象から得て、細胞をインビトロで培養して樹枝状細胞の集団を得る。培養した細胞を、本発明のキメラポリペプチドの存在下に、抗原(例えば、癌抗原)と接触させる。望ましくは、キメラポリペプチドの存在下で抗原と接触させた細胞は、キメラポリペプチドの非存在下で接触させた樹枝状細胞に比べてアポトーシスのリスクが減少している。接触させた細胞は、状況に応じてインビトロで数を増やす。次いで、この細胞を対象に再導入し、そこで細胞は目的の抗原(例えば、癌抗原)に対する免疫応答を高める又は発現させる。このようなワクチンを作成する方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、「Zhu et al., J. Neurooncol. 2005 Aug; 74(1):9-17」、「Nair et al., Int. J. Cancer. 1997:70:706-715」及び「Fong et al., Annu. Rev. Immunol. 2000; 18:245-273」に記載されている。
【0166】
一般的なワクチンは、液体溶液又は懸濁液の何れかの注射用の形態で製造される。注射に適した固体の形態も、エマルジョンとして、又はリポソームにカプセル化されているポリペプチドと一緒に製造される。細胞は、当該技術分野で公知の適当な担体と共に注射される。適切な担体は一般に、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸共重合体、脂質凝集体及び不活性ウィルス粒子のような、ゆっくり代謝する大きいマクロ分子を包含している。このような担体は、当業者に公知である。これらの担体は、アジュバントとしても機能する。
アジュバントは、ワクチンの効果を増強する免疫刺激剤である。有効なアジュバントは、これらに限定されないが、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウムのようなアルミニウム塩、ムラミルペプチド、細菌の細胞壁成分、サポニンアジュバント、及び組成物の有効性を高める免疫刺激剤として作用するその他の物質を含む。
【0167】
ワクチンは、投与形態に適合した方法で投与される。有効量とは、疾患又は障害を治療又は予防するのに有効である、単回用量又は複数投与計画によって投与されるワクチンを意味する。この用量が、腫瘍の成長を抑制するのに有効であることが好ましい。投与される用量は、治療される対象、対象の健康及び体力の状態、抗体を産生する対象の免疫系の能力、必要とする防御の程度、及びその他の関連因子によって、変えることができる。必要とする活性成分の正確な量は、医師の判断によって変えることができる。
【0168】
使用
本発明の方法は、アポトーシスを調節する、又は増殖を促進するための手段を提供する。この調節は、インビボ又はインビトロで実施することができる。インビボでの治療的な使用のために、本明細書に記載の組成物又は薬剤は、例えば生理食塩水のような薬学的に許容される緩衝液中に製剤化して、全身投与することができる。本発明の組成物及び方法は、GM−CSFの投与が有用である殆ど全ての疾患の治療に用いることができる。このような疾患には、骨髄移植後の骨髄再生、冠動脈疾患、クローン病、細胞毒性薬剤治療、血行動態性の脳梗塞、感染症(例えば、HIV)、リンパ性白血病、粘膜炎、骨髄移植、骨髄異形成症候群、好中球減少、関節リウマチ、幹細胞移植(例えば、造血幹細胞移植)、白血球不足、創傷治癒が含まれる。
【0169】
特に、本発明の組成物は、感染症(例えば、AIDS、移植時)と闘う免疫系を後押しするために、癌及び感染性疾患の治療用ワクチンアジュバントとして、細胞ベースのワクチンを刺激するために、神経系損傷(外傷、脊髄損傷、虚血性障害、卒中)の治療のために、幹細胞の生育及び/又は分化を刺激するために、樹枝状細胞を刺激するために、下痢及び/又は粘膜炎の症状を緩和するか又は期間を短縮するために、用いることができる。好ましい態様では、本発明の組成物は、血液脳関門を通過する送達をもたらす形態で、投与される。神経変性疾患、又は低酸素症、虚血、再灌流、卒中又は脊髄損傷に関連する細胞死の治療に関しては、キメラポリペプチドが、細胞死を減少させる、生育を促進する、又は神経細胞死に関連する症状を軽減するのに十分な量で投与される。骨髄移植患者又は幹細胞移植患者の治療に関しては、本発明のキメラポリペプチドが、移植された細胞の生存率を高めるのに十分な量で投与される。特に、細胞死によって特徴付けられる疾患又は障害に既に罹っている患者には、細胞死に関連する症状を治すか又は部分的であっても進行を止めるのに、又は細胞の生育を増強するのに十分な量で、組成物を投与する。
【0170】
インビトロでの使用については、培養細胞(例えば、幹細胞、神経細胞、樹枝状細胞)に、インビトロにおける細胞の生存を高めるのに十分な量の、本発明のキメラポリペプチドを接触させる。本発明のキメラポリペプチドと接触したインビトロの細胞は、同じ条件で培養したがキメラポリペプチドと接触していない細胞よりも、アポトーシスを受ける可能性が少ない。キメラポリペプチドは、培養細胞の生存又は増殖を有利に促進し、培養細胞のインビトロでの拡大をもたらす。培養細胞は、キメラポリペプチドと組み合わせて、それを必要とする患者に状況に応じて投与してもよい。
【0171】
併用療法
本明細書に記載のように、本発明のキメラポリペプチドは、アポトーシスを減少させる又は増殖を促進するのに有用である。従って、本発明の組成物は、必要により、過剰な細胞死によって特徴付けられている疾患又は障害の治療に一般に用いられている標準的な治療の何れかと組み合わせることができる。一態様では、標準的な治療は、低酸素症、虚血、再灌流、卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、ルー・ゲリック病、ハンチントン舞踏病、脊髄性筋萎縮症、脊髄損傷、幹細胞移植の処置、化学療法の治療又は放射線治療に関連する細胞死又はアポトーシスの治療に有用である。特に、パーキンソン病のようなドーパミン作動性細胞の死によって特徴付けられる疾患については、本発明のキメラポリペプチドが、ドーパミンの産生を促進する薬剤又はドーパミン模倣薬、アマンタジンのような抗運動障害薬剤又は抗コリン薬と、組み合わせて投与することができる。血栓症の存在と関連する虚血障害については、本発明のキメラポリペプチドが、抗血栓剤又は血栓溶解剤と組み合わせて投与することができる。このような方法は、当業者にとって公知であり、E.W.Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0172】
中枢神経系に影響を及ぼす疾患又は障害の治療については、キメラポリペプチドが、血液脳関門を通過する送達を増強する薬剤と組み合わせて投与される。このような薬剤は、当該技術分野で公知であり、そして例えば、米国特許公開第20050027110号、同第20020068080号及び同第20030091640号に記載されている。血液脳関門を通過する活性薬剤の送達を増強するその他の組成物及び方法は、以下の刊行物に記載されており、「Batrakova et al., Bioconjug Chem. 2005 Jul-Aug;16(4):793-802」、「Borlongan et al., Brain Res Bull. 2003 May 15;60(3):297-306」、「Kreuter et al., Pharm Res. 2003 Mar;20(3):409-16」及び「Lee et al., J Drug Target. 2002 Sep;10(6):463-7」を参照されたい。血液脳関門移送を増強するその他の方法は、浸透性崩壊又は生化学的開口を介して堅い結合を透過できる薬剤の使用を包含し、このような薬剤は、RMP−7(Alkermes)及び血管作用化合物(例えば、ヒスタミン)を含む。血液脳関門を通過する移送を増強するその他の薬剤は、内皮細胞を通過してその下にある脳細胞への経細胞輸送(トランスサイトーシス)を増強する。経細胞輸送の増強は、目的の薬剤を装填しているリポソーム又はナノ粒子を用いて、エンドサイトーシス(すなわち、小細胞外分子の内部移行)を増強することによって実施することができる。
【0173】
また、本発明のキメラポリペプチド又はその他の組成物は、キメラポリペプチドが化学療法剤に一般に付随する有毒作用を低減するように、化学療法剤と組み合わせて投与される。例えば、化学療法剤及び本発明のキメラポリペプチドを投与されている患者は、化学療法剤のみを投与されている患者よりも、正常細胞のアポトーシスに付随する副作用を受ける可能性が少ない。本発明の組成物は、化学療法剤、放射線療法剤、ホルモン剤、生物学的製剤及び抗炎症剤の何れか1つ又はそれ以上の投与の前、同時又はその後に投与される。化学療法剤の例としては、タモキシフェン、トラスツザマブ、ラロキシフェン、ドキソルビシン、フルオロウラシル/5−fu、パミドロン酸二ナトリウム、アナストロゾール、エキセメスタン、シクロホスファミド、エピルビシン、レトロゾール、トレミフェン、フルベストラント、フルオキシメステロン、トラスツザマブ、メトトレキサート、酢酸メゲストロール、ドセタキセル、パクリタキセル、テストラクトン、アジリジン、ビンブラスチン、カペシタビン、酢酸ゴセレリン、ゾレドロン酸、タキソール、ビンブラスチン及びビンクリスチンが含まれる。
【0174】
その他の態様では、本発明のキメラポリペプチド(例えば、GM−CSF−Bcl−xL)は、GM−CSF発現を上方調節するサイトカイン(例えば、TNFα、IL−1β)と組み合わせて提供される。
【0175】
患者の観察
キメラポリペプチドを含有する本発明の組成物を投与されている患者の治療又は病状は、患者の細胞、組織又は器官に存在する細胞死又はアポトーシスのレベルを評価することによって観察することができる。過剰な細胞死によって特徴付けられる疾患又は障害(例えば、神経変性疾患)に罹っている患者に対しての観察は、一般的に神経細胞の死に特に関連する神経症状の観察を含む。神経変性疾患に付随する神経症状には、次の、アポトーシスのレベル;振戦(震え);硬直;黒質機能障害;うつ;反射消失;低血圧;線維束収縮;筋萎縮;頭、胴及び手足の不随意運動;運動神経生存因子1(SMN1)遺伝子の変性;突発性のしびれ(知覚麻痺)又は脱力;突発性錯乱;突発性発話困難;突発性会話理解困難;突発性片目又は両目視覚困難;突発性歩行困難;目まい;平衡感覚障害;協調運動障害;病因不明の突発性頭痛;動作緩慢;姿勢の不安定;意識消失;精神攪乱;立ちくらみ(浮遊感);目まい;視力障害;疲れ目;耳鳴り;あと味の悪さ;倦怠感;無気力;睡眠パターンの変化;行動変化;気分の変容;記憶障害;集中力障害;注意欠陥障害;認知障害;嘔吐;悪心;けいれん;発作;目覚まし不能;瞳孔拡張;不明瞭な発語;四肢の衰弱又はしびれ;情動不安;及び興奮の何れか1つ又はそれ以上が含まれていてもよい。前記の症状の何れかの1つ又はそれ以上の重症度の減少をもたらす組成物は、本発明の方法において有用であると考えられる。
【0176】
化学療法の毒性に付随する副作用を受けている患者に対して、有効な組成物は、化学療法の毒性の副作用を減少させるようなものである。一般的には、化学療法を受けている患者における組成物の有効性は、正常細胞の死を観察して評価される。例えば、造血を高める(例えば、患者サンプル中の造血細胞の数を増加させる)組成物は、本発明の方法において有用である。
【0177】
以下の実施例は、本発明を限定することなく、説明するために提供される。以下に示す特別な構成が、化合物又はその組み合わせの重要な特性を保持して、上記の発明に沿って、多くの方法で変更されることは、当業者には理解されるであろう。
(実施例)
【実施例1】
【0178】
大腸菌でのGM−CSFの発現
Bcl−XLを骨髄系列の細胞に送達するために、ヒトBcl−XLのcDNAを、ヒト顆粒球マクロファージコロニーの刺激因子(GM−CSF)の遺伝子のC−末端に融合させた。ヒスチジン標識がキメラタンパク質のN−末端に存在しており、この構築物を発現プラスミドpET28(+)(図1A)にクローン化した。図1Aは、GM−CSF融合タンパク質の構築物を説明する概略図を提供する。この構築物を、2つの異なる発現プラスミドにクローン化した。1番目のプラスミドのpET28(+)は、細菌(大腸菌)中で発現するために用いた。2番目のプラスミドのpPICZAは、酵母ピキア・パストリスで発現するために用いた。大腸菌中で発現したタンパク質は、不溶性で、封入体中に見出された。融合タンパク質を変性して、His結合カラムで精製した後、タンパク質をグルタチオン及びアルギニンの存在下で、希釈によってリフォールディングした。精製後、タンパク質は、SDS−PAGE及びウェスタンブロット(図1B)で示されるように、≧90%の同一性があって、予期された分子量を有していた。
【実施例2】
【0179】
GM−CSF−Bcl−XLのHL−60増殖の促進
GM−CSF−Bcl−XLキメラタンパク質は、GM−CSF単独よりもより効果的に、細胞をアポトーシスから保護する。ヒト骨髄細胞株のHL−60の増殖でのGM−CSF−Bcl−XLの効果も試験した。GM−CSF−Bcl−XLは、48時間後に最大効果を示して増殖を増加させた。その時点での活性は、同モル量のサイトカインGM−CSFで処理された細胞で測定した活性よりも30%高かった(図1C)。
【0180】
スタウロスポリンは、速やかにアポトーシスを誘導し、広い特異性がある種々のサイトカインの一つの特異的な抑制剤である。GM−CSF−Bcl−XLは、HL−60細胞の生存を、スタウロスポリンの存在下で24時間から少なくとも72時間に延長した。図1Cに示すように、48時間では、GM−CSF−Bcl−XL及びスタウロスポリンで処理した培養物は、スタウロスポリンなしの対照の培養物とほぼ同じ数の細胞を含有していた。培養72時間後では、50%の対照の細胞が細胞死を受けたのに対して、GM−CSF−Bcl−XL及びスタウロスポリンで処理した細胞では、20%のみの細胞死であった。このことは、GM−CSF−Bcl−XL処理によって、細胞死の30%が減少したことを示す。その一方で、GM−CSFはスタウロスポリンの細胞毒性を防止できないが、GM−CSF−Bcl−XLは、スタウロスポリンの細胞毒活性を少なくとも72時間減少させている。
【0181】
Bcl−XLのC末端に欠失があるGM−CSF−Bcl−XLキメラタンパク質(GM−CSF−Bcl−XL△C)は、Bcl−XLの全長に融合するキメラタンパク質と全く同様に効果があった。このことは、Bcl−XLのC末端は、キメラタンパク質の生存促進性の活性に対して必須ではないことを示す。GM−CSF−Bcl−XLキメラタンパク質の収率は、GM−CSF−Bcl−XL△Cの収率よりも高かった。
【実施例3】
【0182】
GM−CSF−Bcl−XLによる細胞のTRy−Ag490誘導のアポトーシスからの保護
キメラタンパク質の生存促進性の活性における、融合タンパク質のBcl−XL部分の重要性を評価するために、キナーゼ抑制剤であるスタウロスポリンとSgTry490を用いて、GM−CSF部分の活性を抑制した。スタウロスポリンは、プロテインCキナーゼの抑制剤として最初に記載されたが、最近はスタウロスポリンが、異なるキナーゼの種々の配列に広く特異的な抑制剤であることが明確になった。GM−CSFがその受容体に結合する高い親和性は、受容体サブユニットのオリゴマー形成後に、キナーゼのリン酸転移手段によって、受容体関連のJak2キナーゼの活性化を誘発する。チロホスチン(tyrphostin)AG490(AG490)は、インビボ及びインビトロで白血病細胞の成長を阻止するJak2の活性を特異的に抑制する(Meydan et al., (1996) Nature 379, 645-8; Quelle et al., (1994) Mol Cell Biol 14, 4335-41)。末梢血単核細胞(PBMC)は、これら2つの抑制剤の存在下に48時間、異なる濃度のGM−CSF−Bcl−XLと培養した。
【0183】
図2Aで示すように、過剰GM−CSFの生存促進性の活性は、スタウロスポリンによって大きく抑制された。GM−CSFの生存促進活性だけが、Ag490により完全に抑制された。一方、GM−CSF−Bcl−XLは、用量依存的に両方のキナーゼ抑制剤からPBMCを保護した。GM−CSF−Bcl−XLは、この実験で用いたGM−CSFのモル濃度と同程度である0.24μMで、スタウロスポリン及びAG409の存在下でそれぞれ50%及び30%の細胞生存能率を増加させた。従って、GM−CSF、又は炭疽毒素の致死因子のドメイン(Lfn−Bcl−XL)と融合したBcL−XLは、PBMCのアポトーシスを抑制する。GM−CSF−Bcl−XLは、キメラポリペプチドのGM−CSF部分によって活性化される生存促進性の経路が抑制された場合も、アポトーシスから細胞を保護した。
【0184】
GM−CSFの生存促進性の活性がアポトーシスの抑制に起因するのか否かを確認するために、シタラビン/AraC及びダウノルビシンで処理した細胞において、GM−CSFとGM−CSF−Bcl−XLの細胞生存能に対する効果をアッセイした。シタラビン/AraC及びダウノルビシンのアポトーシス誘導因子は、白血病及び固形癌の治療に用いられている(Bruserud et al., (2000) Stem Cells 18, 343-51; Guchelaar et al., (1998) Cancer Chemother Pharmacol 42, 77-83; Guthridge et al., (1998) Stem Cells 16, 301-13; Masquelier et al., (2004) Biochem Pharmacol 67, 1047-56)。カスパーゼ3/7活性を、アポトーシスの基準として用いた(図2B及び図2C)。単球を、GM−CSF−Bcl−XLの存在下又は非存在下で、シタラビン/AraC又はダウノルビシンで処理した。GM−CSF−Bcl−XLは、シタラビン/AraC又はダウノルビシンの何れかで処理した単球のカスパーゼ3/7アポトーシス活性を減少させることができた。GM−CSF−Bcl−XLは、それぞれが同じ濃度で用いられた場合に、GM−CSF単独よりもカスパーゼ3/7活性の抑制がより効果的であった(図2B)。カスパーゼ3/7の触媒的な活性の減少は、用量依存的であり、GM−CSF−Bcl−XLの2.4μM濃度が、カスパーゼ活性を50%以上減少させた。
【0185】
このことは、GM−CSF−Bcl−XLがアポトーシスを抑制し、それにより細胞毒性剤で処理された細胞の生存能を増加させたことを意味する。GM−CSF−Bcl−XLは、2つの活性、GM−CSFのキナーゼ活性及びBcl−XLのアポトーシス抑制の2つの活性を組み合わせて、骨髄を保護するユニークなアプローチを提供する。
【実施例4】
【0186】
GM−CSF−Bcl−XL及びGM−CSF−Bcl−XLの変異体のアポトーシス抑制
抗アポトーシス効果を介在するBcl−XLのC−末端アミノ酸(210〜37)の発現、効能及び重要性を比較するために、異なる構築物を形成した。これらの構築物は、GM−CSFのN−末端又はC−末端にBcl−XLを持つか、又はBcl−XLのC−末端に変異を含んでいる。これらの構築物は、大腸菌で発現される。Bcl−XLのC−末端の膜アンカーの発現、効能及び重要性を比較するために、C−末端(アミノ酸210〜37)に28個のアミノ酸欠失を有しているBcl−XL(1〜209)を持つ構築物を、GM−CSFのC−末端に融合させた。このタンパク質も大腸菌で発現される。
【0187】
図3A及び3Bにおいて、次の精製タンパク質:GM−CSF−Bcl−XL及びキメラ変異体であるGM−CSF−Bcl−XL△C、GM−CSF−Bcl−XL△L及びBcl−XL△L−GM−CSFの生存促進性の効果が示されている。GM−CSF−Bcl−XLΔL及びBcl−XLΔL−GM−CSFは、Leu380(キメラ中)の欠失を有している。GM−CSF−Bcl−XL△Cは、断片FNRWFLTGMTVAGVVLLGSLFSRKの欠失を有している。Bcl−XL全長のC−末端を有するキメラ体の抗アポトーシス活性は、C−末端(アミノ酸210〜37)(△C)欠失を含むBcl−XLの活性に匹敵した(図3B)。
【実施例5】
【0188】
GM−CSF−Bcl−XL及びCD34陽性細胞
造血に対するGM−CSF−Bcl−XLの効果は、CD34陽性細胞のコロニーアッセイを用いて試験した。細胞を、メチルセルロース半固体培地中で保存した。骨髄から単離したCD34陽性細胞は、幹細胞因子(SCF)、エリスロポエチン及びサイトカインを補完した培地に蒔いた。培地へGM−CSF−Bcl−XLを添加すると、コロニーの数が2倍に増加した(図4A)。委託顆粒球−単球系前駆細胞(committed granulocyte-monocyte progenistor;CFU−GM)の生育及び赤芽球バースト形成細胞(BFU−E)のコロニーが、シタラビンによって大幅に減少した。CD34陽性細胞のGM−CSF−Bcl−XLとの培養は、GFU−Eに比べてCFU−GMを選択的に保護した(図4A)。サイトカインの欠乏は、コロニーの完全喪失を引き起こした(図4B)。GM−CSF−Bcl−XLは、コロニーの総数が減少した場合でも、サイトカインの欠乏から骨髄先駆細胞を保護した。GM−CSF−Bcl−XLの活性は、サイトカイン欠乏の影響から更にシタラビンの細胞毒性効果からも細胞を保護し、そして単球/マクロファージ系列の前駆細胞の分化を促進した。
【0189】
生存促進性因子としてBcl−XLのみを含んでいるLfn−Bcl−XLの存在下で培養されたCD34陽性細胞は、シタラビン細胞毒性効果から細胞を保護したが、このキメラ体は必須培地での生育又は分化を誘発できない。細胞が生育因子をサイトカインで奪われる場合は、Lfn−Bcl−XLを含有するウェルにはコロニーを見いだせなかった(図5)。添加培地では、融合タンパク質のBcl−XL部分は、対照(PBSの存在又は存在なしで培養した細胞)に比べて、分化した細胞型が大きく異なることなく、コロニーの数を増加した。
【0190】
図6Aでは、接着単球アフェレーシス(adhesion monocyte aphaeresis)で精製したマクロファージ/単球を、スタウロスポリン(0.1μM)の存在下(黒又は灰色の棒)又は非存在下(白棒)に、5μg/mlのヒトGM−CSF、0.1mg/mlのGM−CSF−Bcl−XL、0.01mg/mlのGM−CSF−Bcl−XL、又は0.001mg/mlのGM−CSF−Bcl−XL、及び炭疽菌致死因子(LF)の保護抗原結合ドメインを含有するキメラタンパク質及びヒトBcl−XL(30μg/ml)プラス炭疽菌保護抗原(28μg/ml)で処理した。
図6Bでは、精製したマクロファージ/単球を、Jak2キナーゼ抑制因子であるTryAg−490(0.5μM)の非存在下(白棒)又は存在下(縞の棒)で72時間処理した。細胞を、14C−ロイシンと1時間パルス振動させ、そして回収した。ロイシンの取り込みを測定して、PBSで処理した対照細胞に対するパーセントで示した。3回の測定から平均値を決定して、融合タンパク質の濃度に対してプロットした。
GM−CSF−Bcl−XLは、GM−CSF受容体に結合して、細胞に移行してそこで細胞死を阻止する。
【実施例6】
【0191】
GM−CSF−Bcl−XLの抗アポトーシス活性の経時変化
図7A、7B及び7Cに、スタウロスポリンの存在下でのGM−CSF−Bcl−XLの効果の経時変化を示す。GM−CSF−Bcl−XLタンパク質は、スタウロスポリン誘発アポトーシスから細胞を、アポトーシス誘発後24時間から少なくとも72時間まで保護する。
【実施例7】
【0192】
ピキア・パストリスでのGM−CSFの発現
ピキアにおいて、GM−CSF−Bcl−XLは、細胞内で発現する。発現を、ウェスタン・ブロットで観察した。キメラ体の産生を、24時間後に観察した(図8)。高濃度のプロテアーゼ抑制剤を使用しても、GM−CSF−Bcl−XLは、タンパク質分解に対して敏感であって、プロテアーゼ抑制剤の使用が必ずしも分解を完全に除去するのに十分であるとは限らなかった。GM−CSF−Bcl−XLキメラポリペプチドのプロテアーゼに対する敏感性は、本発明のキメラポリペプチドの細胞生存増強活性を保持するプロテアーゼ耐性の変異体を選択によって克服することができる。そのようなポリペプチドを選択する方法は、当該技術分野において公知であり、本明細書に記載されている。
【実施例8】
【0193】
抗アポトーシス活性を有するピキア及び大腸菌産生のGM−CSF−Bcl−XL
精製タンパク質の量は、ピキアが産生したGM−CSF−Bcl−XLの抗アポトーシス活性が、大腸菌から精製したGM−CSF−Bcl−XLの活性に匹敵することを確認するのに十分であった(図9)。抗アポトーシス効果は、Bcl−XLがGM−CSFと融合してGM−CSF−Bcl−XLを形成したときに増強された。予想通り、一般的なキナーゼ抑制剤であるスタウロスポリンは、高レベルでアポトーシスを誘発した。GM−CSFサイトカインをスタウロスポリンと共に投与したときにカスパーゼ活性は減少したが、Bcl−XLのC−末端(アミノ酸210〜37)に欠失があるGM−CSF−Bcl−XLをスタウロスポリンと共に投与したときにはカスパーゼ活性のレベルは更に20%減少した(図2)。
上記の実験は、以下の方法及び物質を用いて実施した。
【0194】
Bcl−XLとGM−CSFの融合タンパク質の構築物及び発現
ヒトGM−CSFに対するcDNAは、NdeI及びBamHIで分解され、次いでBglII及びEcoRIで分解された、ヒトBcl−XLのcDNA(野生型、又はC−末端膜アンカーが欠如している切断型)と融合させた。2つのcDNAの連結に、グリシン、セリン及びスレオニンを2つのタンパク質間のリンカーとして導入した。次いで、融合した遺伝子を、大腸菌のベクターpET28(+)に挿入して、His標識配列をGM−CSF−Bcl−XL(Bcl−XL△C)cDNAに導入した。
【0195】
大腸菌での2つのタンパク質の発現は、封入小体中に存在する融合タンパク質の産生をもたらした。精製タンパク質を、SDS−PAGE(4〜20%)に付して、クーマシーブリリアントブルー染色によって可視化した。N−端末にHis標識を有するGM−CSF−Bcl−XL融合遺伝子を、ピキア・パストリスの発現ベクターpPICZAにクローン化して、Bcl−XLの最終コドンの後ろに終止コドンを挿入した。タンパク質発現のレベルを、抗His−Tag抗体を用いるウェスタンブロット分析で観察した。精製タンパク質を、SDS−PAGE(4〜20%)に付して、クーマシーブリリアントブルー染色によって可視化した。
【0196】
GM−CSF−Bcl−XLの細菌発現
大腸菌BL21 DE3(OneShot(登録商標)BL21DE3株、Invitorgen)は、GM−CSF−Bcl−XLを発現させるために用いた。GM−CSF−Bcl−XLをコードするcDNAを含有する発現プラスミドpET28+で変換された遺伝子組み換え細菌は、2リットルのフラスコ内の50μg/mlのアンピシリン(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)を含有する1Lのスーパーブロス(3.2%のトリプトン、2.0%の酵母エキス、0.5%のNaCl、pH7.5(KD Medical, Columbia, MD))中で、37℃で生育させた。OD600が0.8〜1ODに達した時に、1mMのIPTG(Sigma)を添加してタンパク質の発現を誘発した。培養3時間後に、5,000Gで遠心分離して細胞を採取して、結合緩衝液(5mMのイミダゾール、20mMのTris/Cl(pH7.9)、0.5MのNaCl)に再懸濁した後、フレンチ・プレスを用いてペレットを溶解した。5,000Gで遠心分離して、封入小体を細胞残屑と共に採取して、20mlの結合緩衝液で4回洗浄した。
【0197】
最終の遠心分離からの上澄液を除去して、封入小体を、6Mの塩酸グアニジンを含有する結合緩衝液30mlに溶解した(3ml×培養容量100ml)。氷の上で1時間定温放置してタンパク質を完全に溶解した後、16,000Gで30分遠心分離して不溶物質を除去した。His−結合精製を行う前に、上澄液を0.45ミクロンの膜でろ過した。
【0198】
His−結合クロマトグラフィー
ポリヒスチジン(6×His)配列を含有する組み換えタンパク質の精製に用いられるニッケル添加の親和性樹脂である、PROBOND Resin(Invitrogen)の2.5mlを、0.5×5cmのカラムに重力流で詰めた。樹脂を、5倍容量の発熱性物質及びヌクレアーゼを含まない超高純度の水、及び6M塩酸グアニジンを含有する5倍容量の結合緩衝液で洗浄した。カラムに調製した抽出液を詰めて、6Mグアニジンを含有する5倍容量の結合緩衝液及び6M塩酸グアニジンを含有する10倍容量の洗浄緩衝液(60mMのイミダゾール、20mMのTris−Cl(pH7.9)、0,5MのNaCl)で洗浄した。結合タンパク質を6M塩酸グアニジンを含有する4倍容量の溶出緩衝液(1Mのイミダゾール、20mMのTris−Cl(pH7.9)、0,5MのNaCl)で溶出した。クロマトグラフィー時の流速は、0.5ml/minであった。
【0199】
GM−CSF−Bcl−XLの変性及びリホールディング
25mMのDTTを6Mのグアニジン緩衝液中に溶出されたタンパク分画に加えて、溶出タンパク質を完全に変性し、そして10倍容量のリホールディング緩衝液(0.1MのTris/Cl(pH8.0)、0.5Mのアルギニン、1mMの酸化グルタチオン)中に滴下希釈してリホールドし、次いで48〜72時間25℃で培養した。タンパク質を、遠心ろ過装置Amicon Ultra 15 MWCO 10000(Millipore, Bedford MA)で、濃度が≧1mg/mlになるまで濃縮して、PBSに対して透析した。精製したタンパク質の量を、ブリリアントブルーRで染色して4〜20%のSDS−PAGEで、及びHis−Tag第1抗体(Novagen, Madison MA)を用いるウェスタン・ブロットで分析した。
【0200】
GM−CSF−Bcl−XLの濃度を、比色分析(BCA kit,Pierce)で測定した。GM−CSF−Bcl−XLの最終的な収率は、培養物の2〜5mg/リットルの範囲であった。タンパク質を、0.22ミクロンの膜でのろ過により滅菌して、4℃で保存した。
【0201】
ピキア・パストリスでのタンパク質の発現
GM−CSF−Bcl−XLをコードするcDNAは、AOX1プロモーターの制御下で、N−末端のHis−Tagを有するピキア細胞内発現ベクター(Invitrogen)のEcoRI部位に挿入した。Bcl−XLの最終コドンの後に、終止コドンを挿入した。ピキアX−33株は、線状化プラスミドで電気穿孔法によって形質変換して、形質変換体を100μg/mlのゼオシンを含有するYPDS(east/eptone/extrose/orbital)プレート上に蒔いて、組み換えクローンを単離した。
【0202】
GM−CSF−Bcl−XLを発現すると既に特徴付けられている、ピキア組み換え細胞は、14mlのファルコン丸底管(Becton Dickson Labware)内の5mlのBMGY(1%の酵母エキス、2%のペプトン、100mMのリン酸カリウム、pH6.0、1.34%の硫酸アンモニウムを含みアミノ酸を含まない酵母窒素塩基(Yeast Nitrogen Base)、4×10〜5%のビオチン、1%のグリセロール)中で、振動させた培養器(250rpm)中、30℃で1晩生育させた。3000Gで5分間遠心分離して細胞を採取して、2Lのバッフル付きフラスコ中の200mlのBMMY培地(1%の酵母エキス、2%のペプトン、100mMのリン酸カリウム、pH6.0、1.34%の硫酸アンモニウムを含みアミノ酸を含まない酵母窒素塩基、4×10〜5%のビオチン、0.5%のメタノール)のOD1に再懸濁して、発現を誘発した。培養物を激しく振動させて(300rpm)48〜72時間、30℃で培養した。24時間毎に100%のメタノールを、最終濃度が0.5%になるまで加えた。24時間毎に1mlの発現培養物は、発現レベルを分析して、発現誘導後の採取する最適時間を決定するために用いた。
【0203】
5,000Gで遠心分離して、細胞を採取し、そして、2個のプロテアーゼ抑制剤錠剤であるCOMPLETE PROTEASE INHIBITOR COCKTAIL EDTA−free(Roche Diagnostics, Indianapolis,IN)/50mlの緩衝液を含有する結合緩衝液(5mMのイミダゾール、20mMのTris/Cl(pH7.9)、0.5MのNaCl)で洗浄した。細胞を、混合ミル(Retsch MM200, Haan, DE)中で、振動数30Hz、1サイクル5分で、100gの酸で洗浄したガラスビーズ(初期培養物1ml当たり0.5g)を加えて溶解した。4℃で18,000Gで5分間遠心分離して、細胞残屑を除去した。His結合精製を実施する前に、上澄液を0.45ミクロンの膜でろ過した。
【0204】
タンパク質の精製
クロマトグラフィーは、大腸菌からのGM−CSF−Bcl−XLの精製と同じ条件下の同じ変更で実施した。用いた全ての緩衝液は、グアニジンを含まずに、COMPLETE PROTEASE INHIBITOR COCKTAIL EDTA−free/50mlの緩衝液を含有した。フラクションを集めて、4℃でPBSに対して透析した。GM−CSF−Bcl−XLの濃度を、比色分析(BCA kit, Pierce)によって測定した。GM−CSF−Bcl−XLの最終収率は、培養液1リットル当たり約5mgであった。次いでこのタンパク質を、0.22ミクロンの膜でのろ過により滅菌して、4℃で保存した。
【0205】
細胞株及び細胞生存アッセイ
HL−60細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)から入手した。単球アフェレーシスは、NIH Blood Bankから入手した。組み換えタンパク質の効果を評価するために、細胞タンパク質合成抑制及び細胞増殖の2種類のアッセイを実施した。
【0206】
アフェレーシスからの単球
正常健常提供者のアフェレーシス由来のバフィーコート及び単球は、NIH Blood Bankから入手した。PBMCは、フィコールグラジュエントで単離した。単核細胞を、10%のFCS(Biofluids, Rockville MD)を含むRPMIに再懸濁して、150×25mmの組織培養皿で2時間培養する。接着細胞を含んでいない培地を除去し、細胞を完全RPMIで2回洗浄した。付着した単球/マクロファージを徐々に解体して、遠心分離した。組み換えタンパク質の効果を評価するために、細胞増殖及びカスパーゼ3/7活性の2種類のアッセイを実施した。単球/マクロファージ細胞を、96ウェルのマイクロタイター中で、1晩、1×10細胞/mlの濃度で培養して、イスコフ培地(20%のFCS、10ng/mlのIL3、10ng/mlのIL6、10ng/mlのG−CSF)中で、必要な時間、各種濃度の精製タンパク質で処理した。細胞の生存能を、Celltiter 96Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay kit(Promega, Madison WI)で測定した。生存する細胞の数を、代謝的に活性な細胞の存在を示すATP存在量を定量して測定した。与えられた値は、平均値の標準偏差と共に3つのサンプルの平均値を示す。アポトーシス細胞の計算は、ApoOne Homogeneous Caspase 3/7 Assay kit(Promega)を用いて実施した。カスパーゼ3/7プロテアーゼ活性を、基質Z−DEVDローダミン110の開裂後の蛍光強度として、測定した。
【0207】
細胞タンパク質合成の抑制
細胞タンパク質合成の抑制を、以下のようにして測定した。100μlの培地中の細胞を、1×10細胞/mlの濃度で、96ウェルのマイクロタータープレート中で1晩培養し、そしてロイシンを含んでいないRPMI1640中で、必要な時間、各種濃度の精製タンパク質で処理した後、0.1mCi[14C]−ロイシンと1時間パルス振動させた。その後、細胞を、市販の細胞自動採取器PHD cell harvester(Cambridge Technology, Watertown, MA)を用いて、グラスファイバーのフィルター上に採取した。液体シンチレーション計測によって放射能を計測した。結果を、PBSで処理した対照細胞による放射性標識ロイシンの取り込みに対するパーセントとして表した。
【0208】
細胞の生存能を、生存する細胞数を測定する比色法のCelltiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay kit(Promega, Madison WI)を用いて測定した。与えられた値は、平均値の<10%標準誤差と共に3つのサンプルの平均値を示す。カスパーゼ3/7プロテアーゼ活性を、ApoOne Homogeneous Caspase 3/7 Assay kit(Promega)を用いて測定した。
【0209】
その他の態様
上記より、種々の変更及び修飾を本明細書に記載の発明に実施して、各種の用途及び条件を導入することができることは、明らかであろう。このような態様も本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【0210】
本明細書に記載の変数の幾つかの定義における成分のリストの詳述は、単独の成分又はリストされている成分の組み合わせ(又はサブコンビネーション)としての変数の定義を含む。本明細書に記載の態様の詳述は、単独の態様又はその他の態様若しくはその一部分との組み合わせの何れかの態様を含む。
【0211】
本明細書中で述べられている全ての特許及び刊行物は、それぞれの独立した特許及び刊行物が引例として具体的に個々に組み込まれることを示すように、同じ範囲を参照することによって本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】図1A〜1Cは、GM−CSF−Bcl−XLキメラタンパク質の構築物、発現及び活性を説明する。 図1Aは、GM−CSF−Bcl−XLキメラタンパク質をコードする発現ベクターの構築物を説明する略図である。Nde I及びBam HIで分解されるヒトGM−CSFをコードするcDNAを、BGI II及びEco RIで分解されるヒト全長Bcl−XLをコードするcDNAと融合した。2つのcDNAの連結に、グリシン、セリン及びスレオニンを2つのタンパク質間のリンカーとして導入した。融合遺伝子を、GM−CSF−Bcl−XLcDNAのN−末端にHis標識配列をコードする配列を含む大腸菌のベクターpET28(+)に挿入した。 図1Bは、クーマシーブリリアントブルー染色によって可視化したSDS−PAGE(4〜20%)上で精製したタンパク質を示す。抗His−Tagモノクローナル抗体を用いるウェスタンブロット分析を実施した。
【図2】図2A〜2Cは、ヒト血液単核細胞に対するGM−CSF−Bcl−XLの効果を示す。 単球アフェレーシスから接着によって精製したマクロファージ/単球を、5μg/mlのヒトGM−CSF、異なる濃度のGM−CSF−Bcl−XL、及びLfn−Bcl−XL△C(30μg/ml)、炭疽菌致死因子の保護抗原結合ドメインを含むキメラタンパク質、ヒトBcl−XL、及び炭疽菌保護抗原(28μg/ml)で処理して、これをスタウロスポリン(0.1μM)及びJak2キナーゼ抑制因子であるTryAg−490(0.5μM)の存在下又は非存在下で72時間培養した。細胞の生存能を代謝活性細胞中のATP存在量を定量して測定した。3回測定して平均値を計算した。PBSで処理した対照細胞に対するパーセントとして、値を示した。 図2Bは、細胞毒性薬である、シタラビン、ダウノルビシン又はスタウロスポリンの存在下で培養した単球/マクロファージの測定したカスパーゼ3/7活性を示すグラフである。細胞は、異なる濃度のGM−CSF−Bcl−XLの存在下でも48時間培養した。カスパーゼに対する蛍光発生基質である、1Xローダミン110、ビス(N−CBZ−Lアスパルチル−L−グルタミル−L−バリル−L−アスパラギン酸アミド(Z−DEVD−R110)(Songzhu et al., J. Biol Chem 275, 288(2000))をそれぞれのウェルに加えて、プレートを室温で1時間培養した。各ウェルの蛍光発光を、Wallack Victor 1420 Multilabel Counterを用いて、励起波長485nm及び放出波長535nmで測定した。
【図3A】図3A及び3Bは、大腸菌で発現するGM−CSF−Bcl−XLの異なる組み換え変異体の効果を示すグラフである。 図3Aは、以下の試薬の存在下で、0.1μMのスタウロスポリン(STS)と培養したHL−60細胞におけるタンパク質合成(対照に対するパーセントで計算した)を示す:STS+ヒトGM−CSF(5μg/ml);STS+大腸菌GM−CSF−Bcl−XL;STS+C−末端に欠失がある(△C)大腸菌GM−CSF−Bcl−XL;STS+GM−CSF−Bcl−XL(△L)(100μg/ml);及びSTS+Bcl−XL△L−GM−CSF。次いで、細胞を、14C−ロイシンと1時間パルス振動させ、そして採取した。ロイシンの取り込みを測定して、PBSで処理した細胞と比べたパーセントで示した。誤差バーは、平均値の標準誤差を示す。
【図3B】図3A及び3Bは、大腸菌で発現するGM−CSF−Bcl−XLの異なる組み換え変異体の効果を示すグラフである。 図3Bは、0.1μMのスタウロスポリンで処理したHL−60細胞における細胞の増殖をロイシンの取り込みとして測定したグラフであり、細胞は以下の試薬と培養する;PBS;スタウロスポリン(0.1μM);ヒトGM−CSF(5μg/ml);ヒトGM−CSF−Bcl−XL(−His tag)(100μg/ml);ヒトGM−CSF−Bcl−XL(−His tag)(10μg/ml);ヒトGM−CSF−Bcl−XL(+His tag)(100μg/ml);ヒトGM−CSF−Bcl−XL(+His tag)(10μg/ml);Lfn−Bcl−XL△C。3回の測定値からの平均値を、ロイシンの取り込みに対してプロットしてある。誤差バーは、平均値の標準誤差を示す。
【図4】図4A及び4Bは、GM−CSF−Bcl−XLの存在下又は非存在下で行った造血細胞コロニーアッセイの結果を示すグラフである。 図4Aは、添加培地でCD34陽性細胞を用いた造血細胞コロニーアッセイの結果を示す。 図4Bは、必須培地に置いた細胞に対するアッセイ結果を示す。どちらの場合も、細胞をシタラビンの存在下(右のパネル)に異なる濃度のGM−CSF−Bcl−XLと培養した。CFU−GM及びBFU−Eコロニーの数を、カウントした。これらの結果は、異なる3つの実験のコロニー数の平均を示す。CD34陽性細胞単独又はPBSと一緒での培養は、対照生育値を設定するために用いた。
【図5】Lfn−Bcl−XLの存在下又は非存在下で行った造血細胞コロニーアッセイを示す。CD34陽性細胞を添加培地に置いて、シタラビンの存在下(右のパネル)で異なる濃度のLfn−Bcl−XLと培養した。CFU−GM及びBFU−Eコロニーは、添加培地中のみで見出され、これらをカウントした。結果は、異なる3つの実験のコロニー数の平均を示す。CD34細胞単独又はPBSと一緒での培養は、正常な生育値を設定するために用いた。
【図6】図6A及び6Bは、ヒト血液単核細胞に対するGM−CSF−Bcl−XLの効果を示すグラフである。 図6Aでは、単球アフェレーシスからの接着によって精製したマクロファージ/単球を、スタウロスポリン(0.1μM)の存在下(黒及び灰色の棒)又は非存在(白色の棒)に、以下の試薬;ヒトGM−CSF(5μg/ml);GM−CSF−Bcl−XL(0.1mg/ml);GM−CSF−Bcl−XL(0.01mg/ml);又はGM−CSF−Bcl−XL(0.001mg/ml);及び炭疽菌致死因子(LF)の保護抗原結合ドメインを含有するキメラタンパク質及びヒトBcl−XL(30μg/ml)プラス炭疽菌保護抗原(28μg/ml)で処理した。 図6Bでは、精製したマクロファージ/単球を、Jak2キナーゼ抑制因子であるTryAg−490(0.5μM)の非存在下(白棒)又は存在下(縞の棒)で72時間処理した。細胞を、14C−ロイシンと1時間パルス振動させ、そして回収した。ロイシンの取り込みを測定して、PBSで処理した対照細胞に対するパーセントで示した。3回の測定から平均値を決定して、融合タンパク質の濃度に対してプロットした。
【図7】図7A、7B及び7Cは、0.1μMのスタウロスポリンの存在下又は非存在下での、5μg/mlのヒトGM−CSF、各種濃度のGM−CSF−Bcl−XLで、24、48又は72時間処理したHL−60細胞における、細胞増殖(対照に対するパーセントで表現)を示すグラフである。それぞれのウェルにMTSを加えて、プレートを37℃で1時間培養した。EIA Multiwell Reader(Sigma Diagnostics) を用いて490nmにおける吸収を測定した、PBS処理細胞と比較したパーセントとして示した。3回の測定から平均値を決定して、融合タンパク質の濃度に対してプロットした。誤差バーは、平均値の標準誤差を示す。
【図8】図8は、pPICZ−Aベクターの概略図を示し、そしてピキア・パストリスでのGM−CSF−Bcl−XL融合タンパク質発現及びウェスタンブロット(左)及びSDS PAGEゲル(右)の写真を描写する。培養24、48、及び72時間後のタンパク質発現レベルを、抗His−Tag抗体を用いるウェスタンブロットで測定した。右側のSDS PAGEゲルは、クーマシーブリリアントブルーで可視化した適当な大きさのGM−CSF−Bcl−XL精製タンパク質を示す。
【図9】図9は、以下の試薬;PBS(陰性対照);スタウロスポリン(STS);アポトーシス促進性の試薬;ヒトGM−CSF(5μg/ml);STS及びヒトGM−CSF;大腸菌からのGM−CSF−Bcl−XL(100μg/ml);STS及び大腸菌からのGM−CSF−Bcl−XL;ピキアからのGM−CSF−Bcl−XL(100μg/ml);ピキアからのGM−CSF−Bcl−XL及びSTS:で48時間培養したHL−60細胞のカスパーゼ3/7活性のパーセントを示すグラフである。アポトーシス細胞におけるカスパーゼ3/7活性を測定するために用いられる試薬(1X Z−DEVD−R110)を、それぞれのウェルに加えた。次いでプレートを室温で1時間培養した。カスパーゼ活性を、各ウェルの蛍光発生をWallack Victor2 1420 Multilabel Counterを用い、励起波長485nm及び及び放出波長535mmで測定して検出した。
【図10】図10A及び10Bは、GM−CSF−Bcl−XLキメラタンパク質及びその断片のアミノ酸配列を描く。 図10Aは、GM−CSF−Bcl−XLキメラタンパク質の配列(SEQ ID NO:1)を提供する。タンパク質の全長Bcl−XLは、太字で示す。タンパク質の活性な断片は、下線で示す(SEQ ID NO:2〜8)。図10Bは、GM−CSFの別の活性な断片を提供する(SEQ ID NO:9)。
【図11】図11A及び11Bは、核酸配列を提供する。 図11Aは、GM−CSF−Bcl−XLポリペプチドをコードする核酸配列(SEQ ID NO:10)である。Bcl−XLの配列は、太字であり、GM−CSF又はBclXLの活性な断片をコードする配列は、下線を引いてある(SEQ ID NO:11〜15)。GM−CSF−Bcl−XLの拡張された活性な断片をコードする核酸配列には、灰色の陰を付けて示す。図11Bは、全長Bcl−XL核酸配列(SEQ ID NO:16)である。
【図12A−1】図12Aは、pet28(+)のベクター配列(SEQ ID NO:17)を提供し、図12A−1は、pet28(+)のベクター配列(SEQ ID NO:17)の前半部を示す。
【図12A−2】図12Aは、pet28(+)のベクター配列(SEQ ID NO:17)を提供し、図12A−2は、pet28(+)のベクター配列(SEQ ID NO:17)の後半部を示す。
【図12B】図12Bは、pPICZAのベクター配列(SEQ ID NO:18)を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GM−CSF受容体と特異的に結合して細胞の生存を高めるキメラペプチドであって、GM−CSF受容体リガンド及びBcl−xLポリペプチドを含んでなる、単離されたキメラペプチド。
【請求項2】
前記GM−CSF受容体リガンドが、少なくとも1つのGM−CSFの断片である、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項3】
前記GM−CSF受容体リガンドが、少なくとも1つのGM−CSF受容体抗体の断片である、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項4】
少なくとも1:1の比でGM−CSF及びBcl−XLを包含する、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項5】
少なくとも1:2の比でGM−CSF及びBcl−XLを包含する、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項6】
少なくとも1:3の比でGM−CSF及びBcl−XLを包含する、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項7】
GM−CSF受容体と特異的に結合して細胞の生存を高めるキメラペプチドであって、GM−CSFポリペプチド及びBcl−xLポリペプチドを含んでなる、単離されたキメラペプチド。
【請求項8】
細胞死を抑制する、請求項1又は7に記載の単離されたキメラポリペプチド。
【請求項9】
ポリペプチドが、造血細胞、樹枝状細胞、神経細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれる細胞の生存を高める、請求項1又は7に記載のキメラポリペプチド。
【請求項10】
前記細胞が、インビトロに存在する、請求項9に記載のキメラポリペプチド。
【請求項11】
前記細胞が、インビボでの細胞である、請求項9に記載のキメラポリペプチド。
【請求項12】
Bcl−xLの全長を包含する、請求項1又は7に記載のキメラポリペプチド。
【請求項13】
細胞死を抑制できるBcl−xLの断片の少なくとも1つを包含する、請求項1又は7に記載のキメラポリペプチド。
【請求項14】
i.GVVLLGSLFSRK、
ii.FELRYRRAFS、及び
iii.SAINGNPSWHLADSPAVNGATG、
よりなる群から選ばれるBcl−xLの断片を包含する、請求項13に記載のキメラポリペプチド。
【請求項15】
実質的に、
i.GVVLLGSLFSRK、
ii.FELRYRRAFS、及び
iii.SAINGNPSWHLADSPAVNGATG、
よりなる群から選ばれるBcl−xLの活性断片からなる、請求項13に記載のキメラポリペプチド。
【請求項16】
GM−CSF受容体に結合するGM−CSFポリペプチドの断片の少なくとも1つを包含する、請求項1又は7に記載のキメラポリペプチド。
【請求項17】
i.APARSPSPSTQPWEHVNAIQEARRLLNLSRDTAAEMNETVEVISEMFDLQEP
TCLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETSCATQTITFES
FKENLKDFLLVIPFDCWEPVQE、
ii.EARRLLNLSRD、及び
iii.TMMASHYKQHCPPTPET、
よりなる群から選ばれる断片を包含する、請求項1又は7に記載のキメラポリペプチド。
【請求項18】
実質的に、
i.APARSPSPSTQPWEHVNAIQEARRLLNLSRDTAAEMNETVEVISEMFDLQEPT
CLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETSCATQTITFESF
KENLKDFLLVIPFDCWEPVQE、
ii.EARRLLNLSRD、及び
iii.TMMASHYKQHCPPTPET、
よりなる群から選ばれるGM−CSFの活性断片からなる、請求項1又は7に記載のキメラポリペプチド。
【請求項19】
血液脳関門を通過するポリペプチドの移送を増強するドメインを更に包含する、請求項1〜18の何れか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項20】
前記ドメインが、TATドメインである、請求項19に記載のキメラポリペプチド。
【請求項21】
GM−CSF−BCL−XLアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有している、請求項1〜18の何れか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項22】
GM−CSF−BCL−XLアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有している、請求項21に記載のキメラポリペプチド。
【請求項23】
GM−CSF−BCL−XLアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)に対して少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有している、請求項11に記載のキメラポリペプチド。
【請求項24】
プロテアーゼ抵抗を増強するアミノ酸配列において、変更、翻訳後の修飾又はその他の修飾を包含する、請求項1〜23の何れか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項25】
二量体の形成を促進するアミノ酸配列において、変更、翻訳後の修飾又はその他の修飾を包含する、請求項1〜23の何れか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項26】
変更が、野生型参照配列に関するGM−CSF又はBcl−xLのポリペプチドのアミノ酸配列において、挿入、欠失、ミスセンス又はアンチセンス変異である、請求項24又は25に記載のキメラポリペプチド。
【請求項27】
GM−CSFポリペプチド及びBcl−xLポリペプチドを含んでなる、請求項24又は25に記載のキメラポリペプチド。
【請求項28】
融合タンパク質である、請求項1〜27の何れか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項29】
親和性標識を包含する、請求項28に記載のキメラポリペプチド。
【請求項30】
検出可能なアミノ酸配列を包含する、請求項28に記載のキメラポリペプチド。
【請求項31】
請求項1〜30の何れか一項に記載のキメラポリペプチドをコードする、単離された核酸分子。
【請求項32】
キメラポリペプチドが細胞の生存を高める全長Bcl−xL又はその断片を包含する、請求項31に記載の単離された核酸分子。
【請求項33】
Bcl−xLの断片が、
i.GVVLLGSLFSRK、
ii.FELRYRRAFS、及び
iii.SAINGNPSWHLADSPAVNGATG、
よりなる群から選ばれる、請求項32に記載の単離された核酸分子。
【請求項34】
GM−CSF受容体に結合するGM−CSFの断片の少なくとも1つをコードする、請求項31に記載の単離された核酸分子。
【請求項35】
前記断片が、
i.APARSPSPSTQPWEHVNAIQEARRLLNLSRDTAAEMNETVEVISEMFDLQEPT
CLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETSCATQTITFESF
KENLKDFLLVIPFDCWEPVQE、
ii.EARRLLNLSRD、及び
iii.TMMASHYKQHCPPTPET、
よりなる群から選ばれる、請求項34に記載の単離された核酸分子。
【請求項36】
コードされるポリペプチドが細胞死を抑制する、請求項35に記載の単離された核酸分子。
【請求項37】
SEQ ID NO:10に対して実質的に核酸配列同一性を有している、請求項36に記載の単離された核酸分子。
【請求項38】
SEQ ID NO:10に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有している、請求項37に記載の単離された核酸分子。
【請求項39】
SEQ ID NO:10に対して少なくとも90%の核酸配列同一性を有している、請求項38に記載の単離された核酸分子。
【請求項40】
SEQ ID NO:10に対して少なくとも95%の核酸配列同一性を有している、請求項39に記載の単離された核酸分子。
【請求項41】
SEQ ID NO:1に対して実質的にアミノ酸配列同一性を有しているポリペプチド(ここにおけるポリペプチドは、細胞の生存を高め、増殖を促進し、又は細胞死を抑制する)をコードすることが可能な単離されたポリヌクレオチド。
【請求項42】
請求項1〜30の何れか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなる、ベクター。
【請求項43】
前記ベクターが発現ベクターである、請求項42に記載のベクター。
【請求項44】
発現ベクターが、ウィルス性又は非ウィウス性の発現ベクターである、請求項43に記載のベクター。
【請求項45】
ウィルス性の発現ベクターが、アデノウィルス、レトロウィルス、アデノ関連ウィルス、ヘルペスウィルス、ワクシニアウィルス又はポリオーマウィルス由来である、請求項44に記載のベクター。
【請求項46】
コードされるポリペプチドが、SEQ ID NO:1を包含する融合ポリペプチドである、請求項42に記載のベクター。
【請求項47】
融合ポリペプチドが、親和性標識又は検出可能なアミノ酸配列を包含する、請求項43に記載のベクター。
【請求項48】
請求項42〜47の何れか一項に記載のベクターを包含する、宿主細胞。
【請求項49】
インビトロに存在する、請求項48に記載の宿主細胞。
【請求項50】
インビボ又はエキソビボに存在する、請求項48に記載の宿主細胞。
【請求項51】
哺乳類の細胞である、請求項48に記載の宿主細胞。
【請求項52】
ヒトの細胞である、請求項48に記載の宿主細胞。
【請求項53】
造血細胞、樹枝状細胞、神経細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれる、請求項48〜52の何れか一項に記載の宿主細胞。
【請求項54】
細胞死に至るリスクがある、請求項48〜53の何れか一項に記載の宿主細胞。
【請求項55】
細胞死が、低酸素、虚血、再灌流、脳卒中、パーキンソン病、ルー・ゲーリック病、ハンチントン舞踏病、脊髄性筋萎縮症、脊髄損傷、幹細胞移植の処置、化学療法の治療又は放射線治療に関連する、請求項54に記載の宿主細胞。
【請求項56】
請求項1〜30の何れか一項に記載のキメラポリペプチド又はその断片の有効量を、薬学的に許容される賦形剤に含んでなる医薬組成物。
【請求項57】
請求項1〜30の何れか一項に記載のキメラポリペプチドをコードする核酸分子の有効量を、薬学的に許容される賦形剤に含んでなる医薬組成物。
【請求項58】
化学療法剤、放射線療法剤、ホルモン剤、生物学的製剤、抗炎症剤、ドーパミン産生の増強薬剤、抗コリン作用薬、ドーパミン様薬、アマンタジン、抗血栓薬及び血栓溶解剤よりなる群から選ばれる薬剤を更に含んでなる、請求項56又は57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
細胞死のリスクがある細胞に、請求項1〜30の何れか一項に記載のキメラポリペプチドを接触させ、この接触が細胞の生存を高めることを含んでなる、細胞の生存を高める方法。
【請求項60】
細胞死のリスクがある細胞に、請求項1〜30の何れか一項に記載のキメラポリペプチドを接触させ、この接触が細胞死を抑制することを含んでなる、細胞死のリスクがある細胞における細胞死を抑制する方法。
【請求項61】
細胞死のリスクがある細胞に、請求項28〜38の何れか一項に記載の核酸分子を接触させ、この接触が細胞の生存を高めることを含んでなる、細胞の生存を高める方法。
【請求項62】
細胞死のリスクがある細胞に、請求項28〜38の何れか一項に記載の核酸分子を接触させて、この接触が細胞死を抑制することを含んでなる、細胞死のリスクがある細胞における細胞死を抑制する方法。
【請求項63】
前記接触が、細胞死のリスクを少なくとも15%減少させる、請求項59〜62の何れか一項に記載の方法。
【請求項64】
GM−CSF受容体リガンドが、GM−CSF受容体と結合するGM−CSFポリペプチドの断片の少なくとも一つである、請求項59〜62の何れか一項に記載の方法。
【請求項65】
GM−CSF受容体リガンドが、GM−CSF受容体と結合することによって細胞の生育又は細胞の生存を高める、GM−CSF受容体抗体の断片の少なくとも一つである、請求項59〜62の何れか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記細胞が、造血細胞、樹枝状細胞、神経細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれる、請求項59〜62の何れか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記細胞が、インビトロに存在する、請求項59〜62の何れか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記細胞が、インビボ又はエキソビボに存在する、請求項59〜62の何れか一項に記載の方法。
【請求項69】
細胞死又はアポトーシスのリスクが、低酸素、虚血、再灌流、脳卒中、パーキンソン病、ルー・ゲーリック病、ハンチントン舞踏病、脊髄性筋萎縮症、脊髄損傷、幹細胞移植の処置、化学療法の治療又は放射線治療に関連する、請求項59〜62の何れかに記載の方法。
【請求項70】
細胞の生存を高めるのに有効な量の請求項1〜30の何れか一項に記載のキメラポリペプチドを、対象に投与することを含んでなる、細胞死によって特徴付けられる疾患又は障害を有していると診断された対象における、細胞の生存を高める方法。
【請求項71】
細胞の生存を高めるのに有効な量の請求項1〜30の何れか一項に記載のキメラポリペプチドをコードする核酸分子を、対象に投与することを含んでなる、細胞死によって特徴付けられる疾患又は障害を有していると診断された対象における、細胞の生存を高める方法。
【請求項72】
キメラポリペプチドをコードする核酸分子が、異種プロモーターの制御下にある、請求項59〜62又は71の何れか一項に記載の方法。
【請求項73】
キメラポリペプチドが、発現構築物から産生される、請求項59〜62又は71の何れか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記発現構築物が、ウィルス性又は非ウィルス性の発現構築物である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記発現構築物が、アデノウィルス、レトロウィルス、アデノ関連ウィルス、ヘルペスウィルス、ワクシニアウィルス又はポリオーマウィルスである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
治療前の1つ又はそれ以上の表現型を測定すること、
請求項1〜30の何れか一項に記載のキメラポリペプチド又はそのポリペプチドをコードする核酸の治療有効量を、対象に投与すること、そして
細胞死の抑制剤による初期治療後の1つ又はそれ以上の表現型を測定すること(ここにおける1つ又はそれ以上の表現型の変化が、細胞死の抑制剤治療の効果を示す)、
を含んでなる、対象における細胞の生存を高める治療の効果を評価する方法。
【請求項77】
治療前の1つ又はそれ以上の表現型を測定すること、
請求項1〜30の何れか一項に記載のキメラポリペプチド又はそのポリペプチドをコードする核酸の治療有効量を、対象に投与すること、そして
細胞死の抑制剤による初期治療後の1つ又はそれ以上の表現型を測定すること(ここにおける1つ又はそれ以上の表現型の変化が、疾患が細胞死の抑制剤による治療に対する好ましい臨床応答を有しているであろうことの表れである)、
を含んでなる、細胞死の抑制剤による治療を行うために、細胞死によって特徴付けられる疾患又は障害を有している対象を選択する方法。
【請求項78】
細胞死の減少又は細胞生存の増加が、治療が有効であることを示す、請求項59〜77の何れか一項に記載の方法。
【請求項79】
対象から生体サンプルを得ることを更に含んでなる、請求項59〜77の何れか一項に記載の方法。
【請求項80】
細胞死の抑制剤による第2期治療後に対象の表現型を測定することを更に含んでなる、請求項59〜77の何れか一項に記載の方法。
【請求項81】
対象から第2生体サンプルを得ることを更に含んでなる、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
細胞又は対象の治療又は進展を観察することを更に含んでなる、請求項59〜77の何れか一項に記載の方法。
【請求項83】
化学療法剤、放射線療法剤、ホルモン剤、生物学的製剤、抗炎症剤、ドーパミン産生の増強薬剤、抗コリン作用薬、ドーパミン様薬、アマンタジン、抗血栓薬及び血栓溶解剤の1つ又はそれ以上を、対象に同時投与することを更に含んでなる、請求項59〜77の何れか一項に記載の方法。
【請求項84】
化学療法剤が、タモキシフェン、トラスツザマブ(trastuzamab)、ラロキシフェン、ドキソルビシン、フルオロウラシル/5−fu、パミドロン酸二ナトリウム、アナストロゾール、エキセメスタン、シクロホスファミド、エピルビシン、レトロゾール、トレミフェン、フルベストラント、フルオキシメステロン、トラスツザマブ、メトトレキサート、酢酸メゲストロール、ドセタキセル、パクリタキセル、テストラクトン、アジリジン、ビンブラスチン、カペシタビン、酢酸ゴセレリン、ゾレドロン酸、タキソール、ビンブラスチン及びビンクリスチンよりなる群から選ばれる、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
治療前又は治療後の1つ又はそれ以上の表現型を、標準的な表現型と比較することを更に含んでなる、請求項59〜77の何れか一項に記載の方法。
【請求項86】
標準的な表現型が、参照細胞又は細胞集団における対応する表現型である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
参照細胞が、対象からの細胞、培養細胞、対象からの培養細胞又は治療前の対象からの細胞の1つ又はそれ以上である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
対象からの細胞が、造血細胞、上皮細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、神経細胞、神経幹細胞、星状膠細胞、繊維芽細胞、内皮細胞及び乏突起膠細胞よりなる群から選ばれる、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
対象又は細胞が、哺乳動物である、請求項59〜77の何れか一項に記載の方法。
【請求項90】
対象からサンプルを得ることを更に含んでなる、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
サンプルが、組織サンプル、血液、唾液、気管支洗浄液、生検吸引物、管洗浄液又は神経組織生検の1つ又はそれ以上である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
細胞に、請求項1〜47の何れか一項に記載のポリペプチド又は核酸分子の有効量を接触させることを含んでなる、造血幹細胞又は前駆細胞を増大させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A−1】
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【図12A−2】
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【図12B】
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【公表番号】特表2009−507520(P2009−507520A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536580(P2008−536580)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/035070
【国際公開番号】WO2008/039173
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(506200382)ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ・アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー・デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ (4)
【Fターム(参考)】